説明

光学的に純粋な4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造方法

【課題】光学的に純粋なキラル4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの製造方法の提供。
【解決手段】(a)キラルエピクロロヒドリン溶液にシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、前記キラルエピクロロヒドリンの開環反応によりキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得て、(b)得られた生成物を塩酸ガスの含まれたC−Cのアルコールと反応させて、キラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、(c)得られた生成物を塩基の存在下でグリシンアミド又はグリシンエステルと反応させた後、アンモノリシスを行うことにより、前記キラル4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドを得るステップを含む方法。この方法は、光学的に純粋な4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドを高収率及び高純度で製造することができ、大量生産に適している。


(*はキラルセンター)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に純粋なキラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、キラルエピクロロヒドリンのエポキシ開環反応により3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを效率的に得て、これを塩酸ガスを含有するアルコールと反応させて4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得た後、これをグリシンアミド、又はグリシンエステルとアンモニアと順次反応させることによって、4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを高収率及び高純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学式1を有する4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミド(通常、オキシラセタムと呼ばれる)は、脳機能改善剤、アルツハイマー病、多発性梗塞痴呆などの心血管系医薬である。
【0003】
〔化学式1〕
【化3】

(前記化学式1において、*はキラルセンターを意味する。)
【0004】
前記化合物が効果を発揮する適応群において、未だにこの医薬物より良い効果を発揮する医薬物質は開発されていないのが実情である。このような理由により、前記化合物のラセミ体は、既に市場で広く用いられている。
【0005】
同化合物のラセミ体が本医薬分野の適応群において広く用いられているのは、ラセミ体を構成する(S)体と(R)体が同等に医薬の効果を発揮するためではなく、光学的に純粋なキラル化合物を高純度で製造する方法が商用化されていないためであると考えられる。
【0006】
前記化学式1で示される4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの公知された製造方法は、次の通りである。
【0007】
ロンザ社所有の下記の特許文献1〜特許文献3は、オキシラセタム及びこの中間体の製造方法を開示している。前記特許に開示された方法は、4−(C−C)−アルコキシ−3−ピロリン−2−オン−1−イル−酢酸(C−C)−アルキルエステルをトリクロロメチルシランと反応させてヒドロキシ基を保護し、得られた生成物を水素化した後、アミン化するステップを含む。前記方法によれば、水素化による二重結合の還元により、ラセミオキシラセタムが得られる。
【0008】
したがって、前記方法は4−(C−C)−アルコキシ−3−ピロリン−2−オン−1−イル−酢酸(C−C)−アルキルエステルの製造が容易ではないだけでなく、光学的に純粋なオキシラセタムの製造には適用されることができないという問題点を抱いている。
【0009】
I.S.F.Spa社所有の下記の特許文献4〜6は、光学的に純粋なオキシラセタムの製造方法を開示している。前記特許に開示された方法は、光学活性を有する(S)−γ−アミノ−β−ヒドロキシブチル酸をシリル化剤と反応させてヒドロキシ基を保護し、得られた生成物を酸受容体の存在下で脂肪酸エステルのハロゲン化合物であるHal(CHCOOR)(ここで、Halはハロゲンを意味する)と反応させ、環化反応を行った後に得られた生成物を加水分解した後、アンモニアと反応させて所望の光学的に純粋なオキシラセタムを得るステップを含む。
【0010】
前記方法は、光学的に純粋なオキシラセタムを提供するが、出発物質が極めて高価であり、多段階の合成方法を行うため、収率が低く、製造費用が多くかかるという短所がある。
【0011】
さらに他のオキシラセタムの製造方法は、下記の特許文献7、特許文献8に開示されている。前記特許文献に係る方法は、キラルβ−ヒドロキシブチロラクトンを出発物質として利用して、キラルアルキル3,4−エポキシブタノエートを得て、これをN−保護されたグリシンアミドと反応させ、得られた生成物を脱保護化した後に環化して、光学的に純粋なオキシラセタムを製造するステップを含む。
【0012】
この方法は、上記の特許文献4(US4,124,594)及びこれと関連した特許に開示された方法より短いステップで構成されるが、主な中間体であるキラルアルキル3,4−エポキシブタノエートの合成ステップにおいて収率が顕著に落ちるため、製造費用の面において効果的な方法であるとは言えない。
【0013】
日本の電気化学工業株式会社所有の下記の特許文献9は、ハロヒドロキシブチレート又はエポキシブチレート化合物をグリシンアミドと反応させて、ワンステップで光学的に純粋な(S)−オキシラセタムを製造する方法を開示している。
【0014】
本方法においても、合成競争力の鍵は、出発物質であるキラル4−ハロ−3−ヒドロキシブチレート化合物をどのように確保するのかが製造方法の鍵となる。
【0015】
三星化学により出願された下記の特許文献10は、光学活性を有する(S)−3−ヒドロキシブチロラクトンを出発物質として利用して、中間体として水溶液条件下で(S)−3,4−エポキシブチル酸塩を合成し、この中間体化合物をグリシンアミドと水溶液条件下でアミン化反応をさせた後に環化反応を行って、(S)−オキシラセタムを得るステップを含む方法を開示している。
【0016】
この特許技術の場合、合成方法において収率や純度面では上記報告された方法よりは商業的生産において有利であると見られるが、実際には、原料として用いられる(S)−3−ヒドロキシブチロラクトンの純度が高くないため、不純物が多く生成され、商業的に高純度の(S)−3−ヒドロキシブチロラクトンの製造技術はまだ開発されていないため、本方法では、医薬用に適した純度の所望の化合物を得ることは困難である。
【0017】
これら以外の方法には、Binex、Hwail薬品、韓国化学研究所の製造方法が公知されている(下記の特許文献11、特許文献12、特許文献13参照)。前記文献に開示された方法は、オキシラセタムラセミ体を製造する方法にその目的があり、この方法に基づいてキラル目的化合物を製造するとしても、原料の購入が難しかったり、又は極めて高価であり、商業的に適用するには製造価格の競争力が極めて低いという限界がある。
【0018】
【特許文献1】US4,824,966
【特許文献2】US4,843,166
【特許文献3】US5,276,164
【特許文献4】US4,124,594
【特許文献5】US4,173,569
【特許文献6】US4,629,797
【特許文献7】US4,797,496
【特許文献8】WO93/06826
【特許文献9】US4,686,296
【特許文献10】韓国公開特許公報第2000−9465号
【特許文献11】韓国公開特許公報第2003−83466号
【特許文献12】韓国公開特許公報第2003−48746号
【特許文献13】韓国公開特許公報第 2003−42883号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、上述した従来の技術の問題点を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、前記化学式1で示されるキラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを効果的に製造するためには、キラル核心原料物質の製造技術が本製造工程において鍵となることを把握するに至った。
【0020】
よって、本発明では、本製造方法において重要な核心中間体であるキラル3’−ヒドロキシプロピオニトリルを大量生産する際、安全かつ経済的に製造し得る製造方法を開発し、さらに詳細には、キラルエピクロロヒドリンを出発物質として使用して、キラル3’−ヒドロキシプロピオニトリルを製造するのにおいて、従来の方法よりは安全かつ高純度と収率で製造することができる方法である、くえん酸とシアン化ナトリウムを使用して、キラルエピクロロヒドリンから3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを製造する新しい方法を開発したし、これからキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、この化合物をグリシンアミド、又はグリシンエステルとアンモニアと順次反応させることによって、高光学純度及び高化学純度のキラルオキシラセタムを製造する新しい製造技術を開発することによって、本発明を完成するに至った。
【0021】
したがって、本発明の目的は、商業的に生産する際に、工程上安全であり、かつ大量生産が容易であるのみならず、製造価格が低廉であり、純度の高いキラルオキシラセタムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成すべく、本発明に係る光学的に純粋な化学式1を有するキラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造方法は、(a)化学式2を有するキラルエピクロロヒドリン溶液にシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、前記キラルエピクロロヒドリンの開環反応により化学式3を有するキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得て、(b)得られた生成物を塩酸ガスの含まれたアルコールと反応させて、化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、(c)得られた生成物を塩基の存在下でグリシンアミドと反応させたり、又はグリシンエステルと反応させた後、アンモニア水を使用してアンモノリシスを行うことにより、所望の前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得るステップを含む。
【0023】
〔化学式2〕
【化4】

【0024】
〔化学式3〕
【化5】

【0025】
〔化学式4〕
【化6】

(前記化学式2〜4において、*はキラルセンターを意味し、Rはアルキル基を意味する。)
【0026】
本発明の方法は、以下の反応式1で整理されることができる。
〔反応式1〕
【化7】

(前記反応式1において、Rはアルキル基を意味し、*はキラルセンターを意味する。)
【0027】
前記反応式1に示すように、本発明は、キラルエポキシ化合物、具体的には、化学式2を有するキラルエピクロロヒドリンを出発物質として使用する。前記キラルエピクロロヒドリンは、ラセミ体の光学分割(chiral resolution)により得ることができる。具体的には、前記化合物は、キラル触媒の存在下でエピクロロヒドリンのラセミ体を求核体と反応させた後、未反応産物を得るステップにより得られることができる。好ましくは、キラル触媒の存在下でエピクロロヒドリンのラセミ体を加水分解反応に適用させ、加水分解されない異性体を得るステップにより、前記化合物を得ることである。
【0028】
さらに詳細な事項は、KR319045、KR342659、KR368002、US6,720,434、EP1,292,602、US5,665,890、US5,929,232及びUS6,262,278を参照すればよい。
【0029】
化学式2を有するキラルエピクロロヒドリンは、シアン基により環開環反応を経験する。シアン基を利用したキラルエポキシ化合物の開環反応は、広く公知されている:HCNを使用する方法[Bull.Soc.Chim.Fr.3,138(1936),Bull.Acad.R.Belg.29,256(1943),Ber.,12,23(1879)、日本公開特許平11−39559号]、物溶媒においてシアン塩と酢酸を使用してpH8.0〜10.0の条件で開環反応する方法[日本特許公開昭63−316758号]、シアン塩と無機酸を使用してpH8.0〜10.0の条件で開環反応する方法[日本特許公開平5−310671号]。しかしながら、上記の方法らは、作業環境、収率及び光学純度の面において1つ以上の短所を有している。
【0030】
したがって、上記の工業的生産に適用するには問題を内包する。反応式1で示されるように、本発明は、キラルエポキシ化合物をシアン化ナトリウムをくえん酸と共に供給することによって、上記の問題を克服した(韓国特許出願番号第2002−74308号)。くえん酸は、3個のカルボキシル基を有する3価酸であって、物溶媒に対する溶解度が良好であるから、濃度の濃い状態で使用するのに無理がないため、工業的に有利であるのみならず、開環反応の結果として生成される本発明の目的化合物との反応性がないため、不純物が生成されないという長所を有する。本発明の好ましい具体例によれば、水溶媒下でシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、pHを7.8〜8.3の範囲内に保持させる条件で、前記化学式2で示されるエピクロロヒドリンの開環反応を行った。
【0031】
前記化学式2で示されるエピクロロヒドリンの開環反応の結果、前記化学式3を有するキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルが、温和な条件下で高収率及び高光学純度で生成される。その後、前記生成物は、塩酸ガスを含有するアルコールと反応して、化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを提供する。
【0032】
前記化学式3及び4の化合物は、エポキシ化合物から得られる中間体であって、医薬品の原料として多様に応用され得る。なお、この製造方法は、温和な条件で高収率及び高光学純度で行われることによって、工業的生産に適している。結果的に、上記の化学式3及び4、そしてこれらの製造方法は、所望の化合物をより容易に商業的に製造できるのみならず、製造費用の側面でもより低廉に製造し得る基盤を提供する。
【0033】
前記塩素ガスを含有するアルコールの好ましい具体例は、C〜Cを有するアルコールである。具体的に、メタノール、エタノール、プロパンオール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールが用いられることができる。毒性、取扱の便宜性、収率などを考慮するとき、エタノールが最も好ましい。
【0034】
化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルは、塩基の存在下でグリシンアミドとの反応により、又はグリシンエステルとの反応と後続するアンモノリシスにより、化学式1を有する目的化合物、キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを提供し、これは、下記の反応式2に要約されている。
【0035】
〔反応式2〕
【化8】

(前記反応式2において、R及びRはアルキル基を意味し、*はキラルセンターを意味する。)
【0036】
化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルとグリシンアミドとの反応は、グリシンアミドのアミノ基による化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルの塩素元素の置換と後続するカルボニル基との縮合による環化で構成される。このとき、前記反応は、塩基と極性溶媒の存在下で行われる。
【0037】
塩基の例には、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを例に挙げることができる。極性溶媒の例には、メタノール、エタノール、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを例に挙げることができる。グリシンアミドは、通常の塩の形態(好ましくは、塩酸塩の形態)で提供される。反応温度は、0〜100℃の間の温度から適切に選択され、攪拌時間は、1〜20時間の範囲である。
【0038】
グリシンアミドの代りに、グリシンエステルを使用する場合にも、同じ反応経路で行われる。具体的に、グリシンエステルのアミノ基により、化学式4を有するキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルの塩素元素が置換され、続けてカルボニル基との縮合により環化が行われて、化学式5を有するキラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジン酢酸エステルが提供される。
【0039】
前記反応は、塩基と極性溶媒の存在下で行われ、使用可能な塩基及び溶媒は、上述した通りである。グリシンエステルの好ましい具体例には、グリシン(C−C)−アルキルエステルを例に挙げることができる。グリシンエチルエステル又はグリシンメチルエステルが特に好ましい。得られた生成物は、アンモニア水を利用したアンモノリシスにより所望の化学式1の化合物、キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを提供する。
【0040】
本発明の方法により、(R)−オキシラセタム又は(S)−オキシラセタムが光学的に純粋に製造され得る。好ましくは、(S)−オキシラセタムである。従来の方法では、キラルオキシラセタムを製造するために、商業的に製造し難いか、或いは、価格の高いキラル化合物を原料として使用することに対し、本発明では、高い光学純度で低廉に大量生産可能なキラルエピクロロヒドリンを出発物質として、大量生産に応用可能なシアン化ナトリウムとくえん酸を利用した環開環反応により、化学式3を有するキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを経済的かつ效率的に生産する。その後、得られた生成物を塩酸ガスを含有するアルコールと反応させて、化学式4を有する4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを製造し、これを反応式2に示したように、グリシンアミド又はグリシンエステルと反応させて、所望の化合物(1)を製造する。
【0041】
本発明に係る方法は、製造工程がより単純であり、製造工程や製品の純度面においてより優れたものであるため、従来の方法に比べて差別性があるものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る製造方法は、工程上取り扱いやすく、危険性の少ないくえん酸とシアン化ナトリウムを使用して、キラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを製造し、これを所望の化合物である4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを上記の方法のように製造することによって、純度及び収率の高いという長所を有する経済的かつ商業的な製造方法である。よって、本発明の製造方法は、脳血管系の医薬として有用に用いられるキラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを製造するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以上で説明した本発明は、下記の実施例を通じてさらに詳細に説明されるが、本発明は、下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
〔実施例1:(R)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルの製造〕
温度計、pH測定機及び攪拌機の付着された5Lの3口の丸底フラスコに(R)−エピクロロヒドリン(400g)を400gの水に溶かした後、常温で攪拌する。この反応溶液に275gのシアン化ナトリウムを水347gに溶かした水溶液と、427gのくえん酸を水347gに溶かした水溶液を同時に滴加し、かつ、反応溶液のpHは、7.8〜8.3を保持するようにし、反応温度は25℃〜8.3℃を保持する。
【0045】
滴加を完了した後に、常温で10時間攪拌した後、反応溶液を2Lのエチルアセテートで2回取り出した後、有機層を無水マグネシウムスルフェートで乾燥させる。乾燥された有機層をろ過した後、ろ液を減圧濃縮して、458gの所望の化合物であるキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得た。
【0046】
〔実施例2:(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルの製造〕
温度計、pH測定機及び攪拌機の付着された5Lの3口の丸底フラスコに(S)−エピクロロヒドリン(400g)を400gの水に溶かした後、常温で攪拌する。この反応溶液に275gのシアン化ナトリウムを水347gに溶かした水溶液と、427gのくえん酸を水347gに溶かした水溶液を同時に滴加し、かつ、反応溶液のpHは、7.8〜8.3を保持するようにし、反応温度は25℃〜8.3℃を保持する。
【0047】
滴加を完了した後に、常温で10時間攪拌し、200gの塩を入れて溶かす。ここに、5Lのエチルアセテートを利用して取り出し、層を分離する。エチルアセテート層に50gの無水ナトリウムスルフェートを加え、30分間攪拌した後にろ過する。エチルアセテートを減圧蒸発させて除去した後、濃縮液を薄膜蒸留器(110℃/1mbar)で蒸留して、456gの所望の化合物である(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得た。
【0048】
H NMR(CDCl,300MHz,TMS as an internal standard)δ2.80(d,2H,J=5Hz),3.2〜3.68(m,1H),3.66(d,2H,J=6Hz),4.08〜4.22(m,1H)。
【0049】
〔実施例3:メチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸の製造〕
温度計、環流冷却器及び攪拌機の付着された3Lの3口の丸底フラスコに439gのメチルアルコールを添加した後、外部温度を−20℃に冷却する。この反応溶液に372gの塩酸ガスを導入した後、反応温度を−5℃〜0℃に保持しながら458gの(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを滴加する。
【0050】
滴加を完了した後に、反応温度を20℃〜25℃まで上げながら12時間攪拌し、この反応溶液を減圧蒸留してメチルアルコールを除去する。残余物に664gの水を添加して、1時間の間に攪拌した後、1.5Lのエチルアセテートで2回取り出す。収集された有機層を無水マグネシウムスルフェートで乾燥し、ろ過した後に減圧濃縮する。得られた残余物を分別蒸溜して、342gのメチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を得た。
【0051】
H NMR(CDCl,300MHz,TMS as an internal standard)δ2.35〜2.42(m,2H),3.17(d,1H,J=5Hz),3.66(s,3H),3.51〜3.57(m,2H),4.20〜4.30(m,1H)。
【0052】
〔実施例4:エチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸の製造〕
温度計、環流冷却器及び攪拌機の付着された3Lの3口の丸底フラスコに631gのエチルアルコールを添加した後、外部温度を−20℃に冷却する。この反応溶液に372gの塩酸ガスを導入した後、反応温度を−5℃〜0℃に保持しながら458gの(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを滴加する。滴加を完了した後に、20℃〜25℃まで上げながら12時間攪拌して、490gのエチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を得た。
【0053】
H NMR(CDCl,300MHz,TMS as an internal standard)δ1.28(t,3H,J=5Hz),2.55〜2.70(m,2H),3.17(d,1H,J=5Hz),3.55〜3.65(m,2H),4.18(q,2H、J=7.4Hz),4.17〜4.20(m,1H)。
【0054】
〔実施例5:プロピル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸の製造〕
温度計、環流冷却器及び攪拌機の付着された3Lの3口の丸底フラスコに823gのプロピルアルコールを添加した後、外部温度を−20℃に冷却する。この反応溶液に372gの塩酸ガスを導入した後、反応温度を−5℃〜0℃に保持しながら458gの(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを滴加する。滴加を完了した後に、20℃〜25℃で12時間攪拌して、620gのプロピル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を得た。
【0055】
〔実施例6:イソプロフィル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸の製造〕
温度計、環流冷却器及び攪拌機の付着された3Lの3口の丸底フラスコに823gのイソプロフィルアルコールを添加した後、外部温度を−20℃に冷却する。この反応溶液に372gの塩酸ガスを導入した後、反応温度を−5℃〜0℃に保持しながら458gの(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを滴加する。滴加を完了した後に、20℃〜25℃で12時間攪拌して、611gのイソプロフィル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を得た。
【0056】
〔実施例7:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
1Lの3口の丸底フラスコに温度計、環流冷却器及び攪拌機を設置した後、64.8gのグリシンアミド塩酸塩と124.3gの炭酸ナトリウムを投入した後、500mLのエチルアルコールを添加し、1時間の間、常温で攪拌した後、前記で製造した97.7gのエチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を滴加した。
【0057】
この反応混合物を80℃で20時間攪拌した後、沈殿物を高温でろ過し、熱い50mLのエチルアルコールで洗浄した後、ろ過物を減圧濃縮した。残余物を120gの水に溶解させた後、120gのジクロロメタンを使用して洗浄し、水溶液層を減圧濃縮した後、30mLのメチルアルコールを使用して残余物を溶かした後、20gのシリカゲルが、20%メチルアルコールを含有するジクロロメタン混合溶液で充填されているカラムクロマトグラフィーを通過させた。
【0058】
収集された溶液を減圧濃縮し、メチルアルコールとアセトンを使用した再結晶により、60.3gの所望の化合物である高純度の(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0059】
H NMR(DMSO−d,300MHz)δ2.10(d,1H,J=16.9Hz),2.57(dd,1H,J=9.6,J=5.5Hz),3.69(d,1H,J=16.6Hz),3.88(d,1H,J=16.6Hz),2.10(d,1H,J=16.9Hz),4.31(m,1H),5.25(s,1H),7.13(s,1H),7.33(s,1H)。
【0060】
〔実施例8:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
上記の実施例7と同じ方法で、89.5gのメチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を使用して、57.8gの所望の化合物(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0061】
〔実施例9:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
上記の実施例7と同じ方法で、105.9gのプロピル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を使用して、50.3gの所望の化合物(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0062】
〔実施例10:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
上記の実施例7と同じ方法で、105.9gのイソプロフィル(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を使用して、47.9gの所望の化合物(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0063】
〔実施例11:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
1Lの3口の丸底フラスコに温度計、環流冷却器及び攪拌機を設置した後、64.8gのグリシンアミド塩酸塩と98.5gの重炭酸ナトリウムを投入した後、500mLのエチルアルコールを添加し、1時間の間に常温で攪拌した後、前記で製造した97.7gのエチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を滴加した後、80℃で20時間攪拌して、52.5gの(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0064】
〔実施例12:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
1Lの3口の丸底フラスコに温度計、環流冷却器及び攪拌機を設置した後、64.8gのグリシンアミド塩酸塩と162gの炭酸カリウムを投入した後、500mLのエチルアルコールを添加し、1時間の間に常温で攪拌した後、97.7gのエチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を滴加した後、80℃で20時間攪拌して、58.3gの(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。
【0065】
〔実施例13:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトエチルエステルの製造〕
1Lの3口の丸底フラスコに温度計、環流冷却器及び攪拌機を設置した後、81.8gのグリシンエチルエステルと124.3gの炭酸ナトリウムを投入した後、500mLのエチルアルコールを添加し、1時間の間に常温で攪拌した後、97.7gのエチル−(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸を滴加し、80℃で20時間攪拌した。
【0066】
沈殿物をろ過し、減圧濃縮した後、30mLのメチルアルコールを使用して残余物を溶かした後、20gのシリカゲルが20%メチルアルコールを含有するジクロロメタン混合溶液で充填されているカラムクロマトグラフィーを通過させて、68.4gの所望の化合物(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトエチルエステルを得た。
【0067】
H NMR(CDCl,300MHz,TMS as an internal standard)δ1.28(t,3H,J=7.2Hz),2.38(dd,1H,J=17.5,J=2.5Hz),2.69(dd,1H,J=17.4,J=6.5Hz),3.34(dd,1H,J=10.4,J=1.9Hz),3.77(dd,1H,J=10.4,J=5.6Hz),3.93(d,1H,J=17.5Hz),4.18(d,1H,J=17.5Hz),4.19(q,2H,J=7.2Hz),4.30(bs,1H),4.50(m,1H)。
【0068】
〔実施例14:(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造〕
1Lの1口の丸底フラスコに前記で製造された73gの(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトエチルエステルを添加し、0℃で73mLの30%アンモニア水を添加した後、20℃で20時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮し、100mLのエチルアルコールを使用して共沸で水分を除去し、残った残余物をメチルアルコールとアセトンを使用した再結晶方法により、51.2gの所望の化合物である高純度の(S)−4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドの製造方法において、
前記方法が(a)キラルエピクロロヒドリン溶液にシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、前記キラルエピクロロヒドリンの開環反応によりキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得て、(b)得られた生成物を塩酸ガスの含まれたC−Cのアルコールと反応させて、キラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、(c)得られた生成物を塩基の存在下でグリシンアミドと反応させたり、又はグリシンエステルと反応させた後、アンモノリシスを行うことにより、所望の前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得るステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、水溶液システムにおいて行われ、pHが7.8〜8.3の範囲内に保持されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キラルエピクロロヒドリンが、キラル触媒の存在下でラセミ体の加水分解反応による光学分割により得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キラルエピクロロヒドリンが、ラセミ体を水と反応させて加水分解させ、加水分解されない異性体を得ることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドが、ラセミ体ではないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドが(S)体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、反応式3に示すように、(a)化学式2のキラルエピクロロヒドリン溶液にシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、前記キラルエピクロロヒドリンの開環反応により化学式3のキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得て、(b)得られた生成物を塩酸ガスの含まれたアルコールと反応させて、化学式4のキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、(c)得られた生成物を塩基の存在下でグリシンアミドと反応させて、化学式1の前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得るステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法:
〔反応式3〕
【化1】

(前記反応式3において、RはC〜Cのアルキル基を意味し、*はキラルセンターを意味する。)
【請求項8】
は、メチル、エチル、プロピル、イソプロフィル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルで構成される群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
は、エチルであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、反応式4に示すように、(a)化学式2のキラルエピクロロヒドリン溶液にシアン化ナトリウムをくえん酸と共に添加して、前記キラルエピクロロヒドリンの開環反応により化学式3のキラル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピオニトリルを得て、(b)得られた生成物を塩酸ガスの含まれたアルコールと反応させて、化学式4のキラル4−クロロ−3−ヒドロキシブチル酸エステルを得て、(c)得られた生成物を塩基の存在下でグリシンエステルと反応させた後、アンモノリシスを行うことにより、化学式1の前記キラル4−ヒドロキシ−2−ヨウ素−1−ピロリジンアセトアミドを得るステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔反応式4〕
【化2】

(前記反応式4において、R及びRは、互いに独立してC〜Cのアルキル基を意味し、*は、キラルセンターを意味する。)
【請求項11】
及びRは、互いに独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロフィル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルで構成される群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
はエチルであり、Rはメチル又はエチルであることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【公開番号】特開2008−156249(P2008−156249A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344261(P2006−344261)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(506423730)アンゴク ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AHN−GOOK PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】#993−75,Daelim−dong,Yongdungpo−ku,Seoul,150−953,Republic of Korea
【出願人】(506423774)アールエステック コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】RSTECH CORPORATION
【住所又は居所原語表記】#306,Venture Town Jangyoungsilgwan,1688−5,Sinil−dong,Daeduk−gu,Daejeon,306−230,Republic of Korea
【Fターム(参考)】