説明

光学的位置および/または形状センシング

マルチコアファイバを使用して形状センシングを行うための正確な測定方法および装置が開示される。マルチコアファイバの中のコアのそれぞれに対して、マルチコアファイバの上のある点までの光学長の変化を検出する。検出した光学長の変化に基づいて、マルチコアファイバの上のその点における、位置および/またはポインティング方向を求める。測定の精度は、マルチコアファイバの上のその点までのマルチコアファイバ光学長の0.5%よりもよい。好適な実施例では、測定するステップは、検出した光学長の変化に基づいて、少なくともマルチコアファイバの一部分の形状を測定するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮特許出願第61/243,746号(2009年9月18日出願)、第61/255,575号(2009年10月28日出願)、および第61/350,343号(2010年6月1日出願)からの優先権を主張する。これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の技術分野は、光測定に関し、さらに詳細には、光学的位置および/または形状センシングに関する。
【背景技術】
【0003】
形状測定は、3次元空間で行う構造物の位置のセンシングを含む一般的な用語である。この測定結果は、人間の目が知覚している物体の位置に一致する。目は連続してこの仕事を実行するため、測定は単純であると思う人もいるかもしれない。ある長さのロープを考えてみると、ロープに沿って各場所を物理的に測定することができ、それにより形状を推定することができる。しかし、この仕事は骨が折れるものであり、形状が複雑になれば、ますます困難なものになる。別の考察は、ロープが物理的に手の届かない位置にある場合、または見えない場合に、この測定をいかにして実行するかという点である。封をされた箱の中にロープが含まれている場合には、従来の測定技術では、その位置を決定することができない。この例におけるロープは、光ファイバに置き換えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバ等のような、長くて細身の変形したシリンダ形状のセンシングは、例えば、製造、および建設から、医療、および航空宇宙等の分野にわたる多くの応用において有用である。これらの応用の多くの場合において、形状センシングシステムは、ファイバの位置を正確に(例えば、その長さの1パーセントより小さく、また多くの場合には、その長さの0.1パーセントより小さく)決定することができなければならない。形状測定問題には多くの数の手法が存在する。しかし、いずれの手法も、多くの応用に対する要求条件を的確に解決するものではない。これは、これらの手法が、あまりにも速度が遅い、要求される精度には届かない、曲率半径が小さいベンド(曲がり)がある場合には機能しないか、またはファイバのツイストを的確に考慮することができないということに起因する。多くの応用では、ファイバをツイストさせるよじり力が存在するために、測定の正確さが損なわれ、したがって、これらの手法の有用性が損なわれる。
【0005】
ファイバの形状を測定する従来の手法は、基本的な測定信号としてストレイン(strain:歪み)を使用している。ストレインは、ファイバセグメントの長さの変化(応力を加えた後の長さの変化)の、セグメントのもとの長さ(応力を加える前の長さ)に対する比で表される。ファイバ等の物体が曲げられたときには、ベンドの外側にある材料は引き伸ばされて、ベンドの内側にある材料は圧縮される。局所的なストレインのこれらの変化を知ること、また物体の元の位置を知ることによって、ファイバの新しい位置を近似することができる。
【0006】
高い精度で位置センシングを効率よく行うためには、いくつかのキーファクタが検討されなければならない。第1に、ストレインに基づいた手法に対しては、ストレイン測定は数10ナノストレイン(10ppb)レベルまでの精度であることが望ましい。しかし、高い精度のストレイン測定は、従来の抵抗性のまたは光学ストレインゲージ(歪み計)では、容易には達成できない。したがって、極めて高い精度でストレインを測定できる、従来の意味におけるストレインに基づいてはいない、新しい技術が考案されなければならない。
【0007】
第2に、光ファイバの中に存在するツイストは、高い精度で測定されて形状計算の中で考慮されなければならない。中心コアを有し外側のコアを螺旋状にしたマルチコアファイバを形成することにより、ファイバのツイストのセンシングを行うことができる。しかし問題は、1°よりもよい回転位置の精度をいかにして得るかという点である。高い精度の回転センサを得るためには、ファイバの長さ方向に沿ってストレインセンサの位置も高い精度で知ることができなければならない。したがって、螺旋状にしたファイバの中の外側コアの回転レートを測定する何らかの方法があることが望ましく、これを使用すれば、ファイバ位置の算出を修正することができる。
【0008】
第3に、十分なレートで螺旋状になっていて、かつブラッグ回折格子(従来の光ストレインゲージ)を有する複数コアのファイバは、製造するのが困難で、かつ高価である。したがって、ブラッグ回折格子を有さず、ナノストレイン分解能を達成できる方法が提供されることが望ましい。
【0009】
第4に、マルチコアファイバは、典型的には偏波保持ファイバではない。したがって、偏波効果が考慮に入れられることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下で記述する技術は、上記の要因と考察に焦点を当てて、光ファイバの基本的な特性をどのように使用したら、非常に正確な形状計算を行うことができるかに関するものである。要約すれば、ファイバの中のガラス分子から散乱されるレーザー光の後方反射を分析することによりファイバ位置を決定する。この測定は、迅速に、かつ高い分解能と高い精度で実行することができる。
【0011】
マルチコアファイバを使用して、位置および/または方向を測定するための、非常に正確な測定方法と装置とが開示される。マルチコアファイバの中の複数のコアの内の1つのコアにおける、マルチコアファイバの上の1つのポイント(点)までの光学長(光学的な長さ)の変化が検出される。位置および/またはポインティング(指し示す)方向は、検出された光学長の変化に基づいて、マルチコアの上のその点に関して求められる。ポインティング方向は、マルチコアファイバに沿ったその位置における、マルチコアファイバの曲げ角度(ベンドアングル)に対応しており、直交した複数のストレイン信号に基づいて決定される。その決定精度は、マルチコアファイバのその点までのマルチコアファイバの光学長の0.5%よりもよい。好適な実施例において、決定するステップは、マルチコアファイバの少なくとも一部分の形状を、検出した光学長の変化に基づいて決定するステップを含む。
【0012】
決定するステップは、その地点までの長さの、検出された変化に基づいて、マルチコアファイバに沿った任意の地点におけるマルチコアファイバのベンドアングルを算出するステップを含むことができる。その後に、マルチコアファイバの形状は、算出されたベンドアングルに基づいて決定することができる。ベンドアングルは、2次元または3次元で算出することができる。
【0013】
光学長の変化を検出ステップは、光学長の増加的な変化(増分変化)を検出するステップを含むことが望ましい。この増分変化は、マルチコアファイバの中のコアの内の1つのコアの中で、マルチコアファイバの上の1つの点までの、複数のセグメント長のそれぞれに対する増分変化である。次に、これらの増分変化を合成して、検出した光学長の総合的な変化が求められる。光学長の変化は、マルチコアファイバに沿っての各セグメント長における光の位相変化を算出することにより、光の位相変化をアンラップして(巻き戻して)求めることができる。
【0014】
より具体的には、限定的でない1つの実施例においては、複数のコアの内の少なくとも2つのコアで、複数のセグメント長から反射された光信号の位相応答を検出することができる。そのセグメント長におけるファイバの上のストレインは、その2つのコアの中のそれらのセグメント長から反射される光信号の位相シフトを引き起こす。位相応答は、マルチコアファイバの光学長に沿って、各セグメント長に対して連続してモニタリング(監視)されることが望ましい。
【0015】
別の限定的でない実施例では、反射した光信号の中の反射レーリー散乱パターンが、各セグメント長に対して検出され、それにより、ブラッグ回折格子またはそれと同様のものの必要性が除去される。反射レーリー散乱パターンは、各セグメント長に対して、基準レーリー散乱パターンと比較される。位相応答は、各セグメント長に対して、この比較に基づいて決定される。
【0016】
限定的でない実施例ではまた、マルチコアファイバの上の1つの点における、マルチコアファイバに関連したツイストパラメータ(ねじれパラメータ)を、マルチコアファイバの光学長において検出された変化に基づいて求める。マルチコアファイバの上のその点の位置は、求められたツイストパラメータに基づいて、直交座標系に変換される。求められたツイストパラメータは、各セグメント長に対して修正されることが望ましい。
【0017】
1つの応用例では、マルチコアファイバは、マルチコアファイバの中心に沿った第4のコアの周囲に配置された3つの周辺コアを含み、4つのコアのそれぞれの中で、各セグメント長から、反射された光信号の位相応答が求められる。マルチコアファイバの上の1つ以上のセグメント長におけるストレインは、各コアの中で反射された光信号の位相シフトを引き起こす。3つの周辺コアに対する位相応答は平均化される。平均した位相応答は、第4のコアの位相応答と合成して、コモンモードのストレインを除去する。そして、ツイストパラメータはこの合成した位相応答から決定される。
【0018】
別の限定的でない実施例では、マルチコアファイバに沿ったベンドが誘起する光学長変化が求められ、それらは、ツイストパラメータを決定する際に考慮に入れられる。セグメント長の内の1つにおけるベンドを算出し、2乗する。この2乗したベンドに定数を乗算してベンド積を生成する。このベンド積は、マルチコアファイバの外側コアの、その1つのセグメント長で求められた光学長の変化と合成される。この実施形態に対する1つの有利な応用例は、ベンド半径が50mmより小さい場合である。
【0019】
別の限定的でない実施例では、マルチコアファイバの上の1つの点における各セグメント長で、マルチコアファイバの軸に関する、マルチコアファイバの回転方向の向きを求める。複数のファイバコアの光学長において検出した変化に基づいて、ねじれの効果とそれにより生ずるツイストに関わる補正(修正)を、求めた向きに施す。この修正は、正しいベンド方向を算出するために必要である。
【0020】
公称スピンレートで特徴付けられたマルチコアファイバの場合の、限定的でない別の実施例では、各セグメント長における、マルチコアファイバの上の1つの点において、マルチコアファイバの角度回転を測定して、マルチコアファイバのその公称スピンレートと比較する。マルチコアファイバに沿った点での公称スピンレートの変化を測定し、それに関わる修正を行う。一平面上の曲げられた向きにマルチコアファイバを束縛することにより、そのマルチコアファイバに対する「ウォブル(wobble)ファクタ」を求める。そして、光学長において検出された変化に基づいて、マルチコアファイバの上のその点における位置を決定するときに、そのウォブルファクタに関わる修正を行う。
【0021】
別の限定的でない実施例によれば、光は、少なくとも2つの偏波状態で、マルチコアファイバに沿って送信される。その少なくとも2つの偏波状態を有する光の反射は、合成されて、それを使用して、光学長において検出された変化に基づいて、マルチコアファイバの上のその点における位置またはポインティング方向を決定する。この2つの偏波状態は、第1の偏波状態と第2の偏波状態とを含み、これらの偏波は少なくとも公称的に直交している。偏波制御器を使用して、マルチコアファイバに沿って第1の偏波状態で第1の光信号を送信し、マルチコアファイバに沿って第2の偏波状態で第2の光信号を送信する。マルチコアファイバの中の複数のコアの内のそれぞれ1つのコアにおける、マルチコアファイバの上のその点までの光学長の偏波に独立した変化は、第1および第2の光信号の反射を使用して算出される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マルチコアファイバの1つの例の断面図である。
【図2】曲げられたマルチコアファイバを示す図である。
【図3】中心を外れたコアではファイバの中のベンドはストレインに比例することを示す図である。
【図4】ファイバに沿った任意の位置でのベンドアングルは、以前の全ての角の総和によって求めることができることを示す図である。
【図5】ブラッグ回折格子を含むファイバはストレインを受けるので、基準状態から測定した位相差は累加を開始するということを示す図である。
【図6】位相シフトと位置との間の関係を可視化するのに役立つ時計を示す図である。
【図7】位相を測定する際の分解能の不足は問題となる可能性があるということを示す図である。
【図8】張力が加えられたファイバのセクションの最初における、基準スキャンと測定スキャンとの間のレーリー散乱信号の位相差を示すグラフである。
【図9】張力が加えられたファイバに沿った長い距離のところでは基準測定とのコヒーレンスが失われるということを示すグラフである。
【図10】2つの異なる遅延の場合の、周波数に対してプロットした光位相を示す図である。
【図11】1/3インデックスだけ移動した場合の、ファイバの1つのセクションにわたって回復した位相を示す図である。
【図12】螺旋状にスピンを与えたマルチコア形状センシングファイバの例を示す図である。
【図13】試験用マルチコア光ファイバの限定的でない例を示す図である。
【図14】螺旋状にしたファイバの断面を示し、ファイバの長さ方向に進むにつれて、外側コアの位置が、中心コアの周りに回転して行くように見えることを示す図である。
【図15】ファイバのスピンレートの変動の例を示すグラフである。
【図16】製造時のスピンレートと比べて、形状センシングファイバの長さ方向に沿って周期的な位相変動があるウォブル信号の例を示すグラフである。
【図17】ファイバの公称スピン方向に対する力の向きによって、ねじれが形状センシングファイバのスピンレートをどのように変化させるかを示す図である。
【図18】平面にしたシリンダとしてモデル化した場合に、その表面を移動するときにツイストを経験する外側コアを示す図である。
【図19】ファイバに沿った外部のツイストを算出する手順の限定的でない例を示すフローチャートである。
【図20】図19の手順をより詳細に示す一般的な形状に対するデータセットの例を示す図である。
【図21】2つの位相曲線の間の僅かな偏差を示すグラフである。
【図22】図21から生成されるツイスト信号を示すグラフである。
【図23】形状算出においてツイストに関わる補償を行う必要性を示す図である。
【図24】全てが同一の平面上に生ずるいくつかのベンド状に置かれたファイバに対する直交したストレイン曲線の例を示す図である。
【図25】ストレインから形状を算出するためのステップの限定的でない例を記述するフローチャートである。
【図26】複数のポインティングベクトルのそれぞれがヘッドツーテイルに置かれた場合には形状の正確な測定が可能であるということを示す図である。
【図27】光学的位置および形状センシングシステムの限定的でない例を示す図である。
【図28】複屈折の修正を算出するためのステップに対する限定的でない例を示すフローチャートである。
【図29】形状センシングファイバの断面における、ベンドが誘起するストレインプロファイルを示した図である。
【図30】中心コアの位相信号と外側コアの平均位相とを比較している2つの位相のプロットを示す図である。
【図31】直径40mmのファイバループの場合の外側コアのストレイン応答の例を示す図である。
【図32】直径40mmのファイバループの場合にベンドが誘起する複屈折の修正を示すグラフである。
【図33】2次複屈折の修正を行っている場合と行っていない場合とのツイスト信号を比較しているグラフである。
【図34】形状センシングファイバと、位置および形状センシングシステムとの間に設置されたループ偏波制御器の限定的でない例を示す図である。
【図35】比較的単純な形状に対する同一平面上信号を示す図であり、ここでは、1.4メートルの形状センシングファイバが50mmのベンド半径の単一の180°ターンで置かれている場合の図である。
【図36】3回の連続した各測定に対する同一平面上にない測定を示す図であり、ここでは、各測定に対して偏波制御器を使用して偏波を変化させた場合の図である。
【図37】中心コアの場合の2つの連続した測定では、異なる入力偏波状態に対して位相応答に大きな変化は生じないということを示すグラフの例である。
【図38】外側コアの場合の2回の連続した測定では入力偏波に対して異なる応答を示し、これは形状センシングファイバの中に複屈折が存在する証拠を提供するものであるということを示すグラフの例である。
【図39】複屈折に関わる修正がシステムの精度を改善したことを示すグラフである。
【図40】1次および2次の複屈折の両方に関わる修正を行うことにより、システムの精度および精度が改善されたことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の記述では、限定する目的ではなく、説明の目的で、特定のノード、機能エンティティ、技術、プロトコル、標準規格等の、具体的詳細を記述し、ここに記載する技術の理解を提供するものである。当業者には、以下で開示する具体的詳細とは異なる他の実施形態を実行することも可能であることが明らかであろう。また、不必要な詳細によって本発明の記述を曖昧にしないために、公知の方法、デバイス、技術等の詳細な記述は省略してある。図中には個々の機能ブロックが示されている。当業者は、これらのブロックの機能は、個別のハードウェア回路を使用して、適切にプログラムされたマイクロプロセッサまたは一般目的のコンピュータと連携したソフトウェアプログラムおよびデータを使用して、ASIC(特定用途向け集積回路)を使用して、および/または、1つ以上のディジタル信号処理装置(DSP)を使用して実行することができると理解するであろう。ソフトウェアプログラム命令およびデータは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体の上に記憶することができ、コンピュータまたは他の適切なプロセッサ制御によって命令が実行された時には、コンピュータまたはプロセッサは、これらの機能を実行する。
【0024】
したがって、例えば、当業者には、本明細書におけるブロック図は、本技術の原理を具現化している例示的回路の概念図、または他の機能ユニットを表すことができると理解されるであろう。また同様に、以下の点が理解されるであろう。すなわち、いずれのフローチャート、状態遷移図、擬似符号等も、種々の処理を表し、これらの処理は、コンピュータ読み取り可能な媒体の中で実質的に表現することができ、したがって、コンピュータまたはプロセッサによって実行することができる(このようなコンピュータまたはプロセッサが明示されているか否かに拘わらず)という点である。
【0025】
機能ブロックを含む種々の要素(「コンピュータ」、「プロセッサ」、または「制御器」と名付けられた、または記述されたものを含むが、これらに限定はされない)の機能は、ハードウェアを使用することを通して提供することができ、これらのハードウェアは、回路ハードウェア、および/またはコンピュータ読み取り可能な媒体の上に記憶された符号化命令の形をしたソフトウェアを実行することができるハードウェア等である。したがって、これらの機能、および図示された機能のブロックは、ハードウェアで実行するおよび/またはコンピュータで実行する、したがってマシンで実行するものであると理解することができる。
【0026】
ハードウェアで実施する場合には、機能ブロックは、ディジタル信号処理装置(DSP)ハードウェア、縮小命令セットプロセッサ、ASIC(これに限定はされない)を含むハードウェア(例えば、ディジタルまたはアナログ)回路、および、これらの機能を実行することができる状態マシン(適切であるならば)を含む、または包含することができる。
【0027】
コンピュータで実施する場合には、コンピュータは、1つ以上のプロセッサまたは1つ以上の制御器を備えていると一般的に理解されており、本明細書においては、コンピュータおよびプロセッサおよび制御器は互に交換性のある用語として使用している。コンピュータまたはプロセッサまたは制御器を使用する場合には、機能は、単一の専用のコンピュータまたはプロセッサまたは制御器によって、単一の共有されたコンピュータまたはプロセッサまたは制御器によって、または、複数の個別のコンピュータまたはプロセッサまたは制御器(その内のいくつかは共有されていてもよいし、または分散していてもよい)によって提供することができる。さらに、「プロセッサ」または「制御器」という用語は、これらの機能、および/またはソフトウェアを実行することができる、他のハードウェア(上記に記載したハードウェア等)も意味することができると理解されるべきである。
[角度の正確さを増すための位相追尾]
図1は、マルチコアファイバ1の1つの例の断面を示す。マルチコアファイバ1は、中心コア2と、3つの周辺コア3、4、5とを含み、コーティング6によって周囲をコーティングされている。この例に示したこれらのコア3〜5は、近似的に120°離れて配置されている。
【0028】
マルチコアファイバを使用した形状センシングでは、ファイバの中のコア間の距離は、断面で見た場合に、ファイバの形状に拘わらず一定に保持されているということを仮定している。この仮定は多くの場合で成り立ち、これは、ガラスは非常に硬くて、かつ非常に弾性に富むからである。さらに、ファイバの断面(例えば、125ミクロン程度)は、ファイバが経験する曲線の寸法(例えば、5mmより大きなベンド半径)と比較して小さい。断面におけるコアの位置が維持されるというこの仮定は、ファイバの全ての変形は、コアの伸張または圧縮によって取り込まれなければならないということを意味している。図2に示すように、ファイバの形状が曲げられたときには、ベンドの外側7にあるコアは引っ張られて、ベンドの内側8にあるコアは圧縮されるであろう。
【0029】
ファイバコアセグメントの平均長は変化しないと仮定しているので、この幾何の課題は、ポインティング方向(すなわち、ファイバセグメントの中心軸の位置を表すベクトル)の変化は、コア長の変化とコア間の距離とに基づいて算出することができるということを示している。ストレイン光学係数(strain−optic coefficient)等の他の効果も考慮に入れなければならない。その結果、ファイバの所与のセグメント(区間)に対するポインティング方向の変化は、そのセグメントの中にあるコアの長さの変化の差に直接に比例する。
【0030】
図3は、ファイバΘの中のベンドは、中心から外れたコアの中のストレインεに比例していることを示している。ここで、sはセグメント長であり、rは半径であり、またkは定数である。張力および温度の影響を測定から取り除くために、コアの間の差分測定が使用される。
【0031】
【数1】

【0032】
上式は、所与のファイバセグメントに対する角度変化と、その角度変化がストレイン(歪み)の変化にどのように関係しているかを示している。ファイバの中の次のセグメントに移動する場合には、ファイバの現在のポインティング方向を算出するためには、以前のセグメントの角度変化が次のセグメントに対する次の角度変化に加算されなければならない。2次元では、以前の全ての角度を累積加算して、ファイバに沿った任意の特定のポイント(地点)におけるベンドアングル(曲げ角度)を求めることができる。図4は、ファイバに沿った任意の地点または位置におけるベンドアングルは、その点に至る全ての角度の総和によって求めることができることを示している。例えば、θ=Δθ+Δθ+Δθ+Δθ+Δθである。誤差があった場合には、この誤差は、ファイバが長くなれば、それだけ大きくなり、セグメントの数の平方根で成長して行く。
【0033】
角度の測定誤差がこのように累積されるのを回避するために、本願の発明者は、歪み(ストレイン)を測定するのではなくて、セグメントの長さの変化を直接に測定する方法を着想した。この場合、数学的には、角度の総和は、ファイバに沿っての長さ変化の総和になり、これは次式で示される。
【0034】
【数2】

【0035】
ここで、Lはファイバ長に対応している。
【0036】
したがって、ファイバに沿った任意の地点Zにおける角度は、その地点に至るまでのコアの長さの全変化の差に線形に比例する。これは次式(3)で示される。
【0037】
【数3】

【0038】
したがって、ファイバに沿ったトータルでの長さの変化(全長さ変化)を正確に連続して追尾することができれば(ストレインに対する、それぞれ個々の局所的変化を合計するのではなくて)、角度誤差の増加を防止することができる。どのようにしてコアの長さの変化を、10nmより高い精度で追尾することが可能であるか、また、ファイバの全長にわたってこの精度を維持することが可能であるかに関しては、後述することにする。このレベルの精度では、コア間の間隔が70ミクロンに対して0.3°の角度の精度が得られ、そして理論的には、約0.5%のファイバ長の位置精度が得られる。
【0039】
残念なことに、第3式に示される累積加算の関係式は、3次元では成り立たない。しかしながら、多くの3次元形状は、2次元曲線の連続として正確に表現できるので、小さな角度変化(<10°)が存在する場合では、3次元角度もまた、この単純な累積加算の関係を有する。その結果、この手法は、3次元における誤差の寄与を評価するのにも有効である
この幾何の課題によって得られた洞察は、マルチコアファイバに沿った距離の関数として表される全長さ変化は、局所的なストレインの代わりに使用することができるという点である。つまり、局所的なストレインの測定値における比較的に大きな誤差は、その点に至るまでの全長さ変化に対応したストレインの測定値の積分が正確なに保たれている限りにおいては、許容することができる。極端に高い信号対雑音比を必要とせずに、ナノストレインの精度を達成することができる。これは、比較的長い距離(例えば、10〜1000cm)にわたってナノストレインを算出することができるからである。後の記述で説明するように、長さの変化の追尾はまた、ファイバの長さ方向に沿った回転を評価するためにも使用することができ、ファイバロールの測定、さらにはファイバの軸の周りの回転角度の測定でも、予想される以上の高い精度を達成することができる。
[光ファイバの中の位相追尾]
光ファイバを使用すると、その全体の長さ方向に沿った空間的に連続したセンシング測定を行うことができる。光の位相シフトを使用すると非常に高い分解能の変位測定を行うことができるので、連続した測定は重要である。ファイバの中に本質的に存在する散乱をどのように使用したらこの測定を行うことができるかを後に説明する。しかし、ファイバブラッグ回折格子(FBG)を使用して説明を始める方が概念的には理解しやすい。ファイバブラッグ回折格子はファイバの屈折率を周期的に変化させたものである。各周期はファイバの中の光の波長の約半分である。光の真空中での波長は約1550nmであり、ファイバの中のその波長は約1000nmである。したがって、回折格子の周期は約500nmである。典型的に、ブラッグ回折格子は、そこから反射されたスペクトラムを測定することにより、センサとして使用される。ブラッグ回折格子の条件は、以下に示す式を使用して算出される。
【0040】
【数4】

【0041】
上式において、λは波長を表し、nはファイバの屈折率である。また、Λは回折格子の周期に対応している。屈折率が一定に保たれると仮定すれば、反射される波長は回折格子の周期だけに依存する。ファイバにストレインが加えられると、回折格子の周期には歪みが現れ、反射された波長にはシフトが現れる。したがって、ある波長のシフトに対して、ファイバに加えられたストレインの量を導出することができる。ブラッグ回折格子の周期は、きわめて均一であり、この周期性は正弦波状の変化としてモデル化するのが便利である。正弦波で表せば、回折格子の周期の歪は、位相シフトとして表すことができる。この概念を図示するために、図5に示す例を考える。図5は、ブラッグ回折格子を含むファイバにはストレインが加えられるので、測定された、基準状態からの位相差は累加を開始するということを示している。
【0042】
図5に示したストレインが加えられたブラッグ回折格子の様子は、屈折率の局所的な変化を、交互に白いセグメントとハッチングを付与したセグメントとで示してある。理想的なブラッグ回折格子を仮定すれば、全ての周期は同一であり、したがって、位相変化のパターンは、回折格子に沿って移動するにしたがって直線的に増加する。つまり、距離に対する位相変化の割合は回折格子の周期に逆比例している。回折格子の少しの部分が伸びたとすれば、その伸びた部分では、位相変化の割合は減少する。
【0043】
図5では、一番上のパターンは、完全に線形の位相を有する歪みのない回折格子を位置の関数として示している。その下のシフトしたパターンは、ストレインによって歪みが現れた回折格子を示している。一番下のグラフは、各位置における2つの回折格子の間の位相の差を示している。回折格子の中の歪は、回折格子によって反射された信号の、歪みのない元の位相からの位相シフトを引き起こす。90°の位相シフトが示されている。ストレインが加えられたセグメントのうしろでは、変化の割合は、ストレインが加えられていない状態に戻る。しかしながら、この領域の中での位相は、もはや元の位相からオフセットしていて、そのオフセット量は、ストレインが加えられたセグメントの中の全位相変化に等しい。この位相オフセットは、光ファイバの実際の長さ変化に直接に比例している。
【0044】
この図では、回折格子の15周期だけを示している。周期は500nmなので、これは7.5μmの長さに相当する。90°の位相シフトを起こすようにファイバを引き伸ばしたことにより、ストレインが加えられていない残りの回折格子は1/4周期(または125nm)だけ変位している。典型的な光周波数領域反射測定法(OFDR:Optical Frequency Domain Reflectometry)測定では、50ミクロン程度の空間分解能で測定を行うことが可能である。つまり、それぞれのOFDRデータ点(または、インデックス)は、50μmだけ離れている。したがって、125nmの歪による回折格子の実際の位置のシフトはOFDRインデックスのほんの小さな部分に対応するだけである。位置における125nmの変化は、それ自体としては検出することができないが、90°の位相シフトは、OFDRシステムで比較的容易に測定することができる。
【0045】
したがって、OFDRを使用すれば、ブラッグ回折格子の中の歪を測定することができる。そして、位相(すなわち、波長)の変化の割合だけを測定するのではなくて、絶対位相を測定することができ、この位相から、ファイバコアに沿った各セグメントにおける距離変化を測定することができる。これは、回折格子の中の位相は変化したと観測されるが、回折格子の位置の変化は容易に感知できる変化を示していないという状況で、正確な形状測定を行う場合に重要である。従来の光ファイバ測定技術では、位相シフトと位置とは別の効果であるとして取り扱っている。
【0046】
位相シフトと位置との間の関係を可視化する1つの方法は、光信号の位相は時計の秒針で表し、ファイバに沿ってのインデックスで表現する位置は、時計の時針で表すと想像することである。図6は分針のない時計を示す。このような時計では1分の分解能で時刻を判定することは困難である。しかしこの時計は、秒針を使用して短い継続時間のイベント、また時針を使用して長い継続時間のイベントの時間を計るには、それでも有用である。分針がないことによって、中間の中位の継続時間のイベント(例えば、1時間12分32秒)を1秒の精度で測定するためには役に立たない。2つのスケールにリンクするこの困難さによって、従来の光測定システムではこれらの現象を別々に扱わざるを得なかった。
【0047】
この時計アナロジーは、ファイバの全長に沿った連続した測定が必要である理由を明らかにするのに役立つ。秒針の位置を連続して監視することにより、1周回転の回数を測定することができ、これにより、長い継続時間を高い精度で同時に監視することができる。この時計アナロジーを以前のブラッグ回折格子の議論にリンクさせると、各360°(または2π)の位相変化は、500nmの位置のシフトに等しい。光ファイバに沿って位相を連続して追尾することにより、光ファイバの局所的なストレインと総合的な長さ変化との両方を非常に高い精度で測定することができる。
【0048】
位相を連続して追尾することの大きな目標は、測定の分解能を十分なものにすることにより、1つのセグメントから次のセグメントまでの位相の変化が2πを超えないようにすることである。図7は、何故この分解能の欠如が問題になる可能性があるかを説明している。これは、例えば、π/3の変化とπ/3+2πの変化との間の区別ができないからである。したがって、2つの異なる位相シフトは、単位円の上では同じ値を有すると見えるであろう。つまり、1周2πの回転回数の数え間違いによって、1インデックスの誤差が生ずることになる。この例では、光ファイバの総合的な長さの変化の測定で、500nmだけ不足して測定されることもあると考えられる。
【0049】
したがって、形状センシングシステムは、十分な分解能を有し、形状センシングファイバの全長に沿って位相を追尾する能力が保証され、形状センシングシステムの高い精度を保証できることが重要である。
[レーリー散乱に基づいた測定]
上記で説明したように、センシングのためにFBGを使用する場合の典型的な使用方法は、ファイバに沿ってどのくらいか離して設置した個々のブラッグ回折格子から反射したスペクトラムのシフトを測定するステップを含んでいる。各ブラッグ回折格子に対する測定からファイバの各部分に対するストレインが導出される。FBGを使用した形状センシングの場合には、各ストレイン測定は、所与のセグメントが、どの程度曲げられていてどの方向に向いているかを示している。この情報は、測定した全てのセグメントに対して合計されて、全体のファイバ位置および/または形状が求められる。しかしながら、この方法を使用した場合には、各セグメントにおける誤差がファイバに沿って累加される。ファイバが長くなれば、測定における誤差はそれだけ大きくなる。複数のブラッグ回折格子を使用する場合のこの誤差によって、操作の速度と適用性の範囲とが限定される。
【0050】
もし連続した回折格子がファイバに沿って存在したとすれば、上記で記述したように、ファイバに沿った各点での位相を追尾することができるであろう。コアの全長に沿って位相を追尾することにより、誤差の累加を回避することができる。ファイバセグメントの数の平方根で誤差が累加されるのではなくて、全長の誤差は、材料の中の光の波長の一部分の値に一定に保たれる。以前に言及したように、真空での光の波長は約1550nmとしてよく、またファイバの中では1000nmとしてよい。反射を考えた場合には、実効的に500nmである。信号対雑音比が50であれば、測定が往復路を使用する(反射を使用する)ことによって10nmの精度が得られる。その結果得られるストレイン精度は、1メートルのファイバにわたって10ナノストレインであると考えられる。
【0051】
レーリー散乱は、ランダムな位相および振幅を有するブラッグ回折格子、またはすべてが格子欠陥から構成されるブラッグ回折格子であると見ることができる。このレーリー散乱パターンは、ランダムではあるが、ファイバコアが製造されたときにそのコアの内部に固定される。光ファイバに加えられたストレインは、レーリー散乱パターンのシフトまたは歪を引き起こす。これら誘起されたレーリー散乱パターンの歪は、ファイバを既知の形状にしたときのファイバの基準スキャンと、ファイバが曲げられ、またはストレインが加えられたときのファイバの新しいスキャンとを比較することにより、形状センシングに対する高い分解能のストレイン測定として使用することができる。
【0052】
図8は、このような比較の結果の例を示す。この図は、ファイバのセクションの開始点における基準スキャンと測定スキャンとの間のレーリー散乱信号の位相差を示している。この開始点は、張力が加えられている領域の入り口である。データはファイバインデックスの関数としてプロットされている。ファイバインデックスは、ファイバに沿った距離を表している。張力が加えられている領域に入ると、位相差は累加が始まる。単位円の上ではπと−πとは同じ値を有するので、信号は、ファイバの長さ方向に沿って位相差が増大するにしたがって、2πだけ回転する毎に「ラッピング(wrapping)」されて行く。これはインデックス3350の付近で観測される。ここでは、この点の左における値はπに近づき、その後に突然値が−πになる。以前に示したように、各ラッッピングは、ファイバの中の約500nmの長さ変化を表している。インデックスは、約50ミクロンの長さ表しているので、これは約100の位相のラッピングとなり、測定と基準との間の遅延変化のインデックスとして十分な量が累加される。
【0053】
図9におけるデータは、図8に対するデータセットと同じデータセットから得られたものである。ただし、約35ラッッピングの位相(すなわち、概略、1インデックスの1/3)だけさらに後方のファイバのエリアからのデータである。位相差データの上の雑音が増加しており、これは、基準散乱パターンと測定散乱パターンとの間のシフトが増加することによって引き起こされている。これは位相差を求めるために使用する基準データと測定データとの間のコヒーレンスを減少させる。個々の散乱ファイバセグメントの外見上の位置が1インデックス入りも大きくシフトした場合には、基準と測定との間のコヒーレンスが失われて、散乱信号の比較からのストレイン測定は行うことができない。
【0054】
したがって、ファイバに沿ったストレインによるシフトを考慮に入れることにより、基準データと測定データとを整合させなければならない。1メートルのセグメントにわたって、1インデックスが約50ミクロンである場合には、この量は、僅か50ppmになるだけであり、これは大きなストレインではない。事実、ファイバの重さそのものがこの程度のストレインを誘起する可能性がある。また、僅か数℃だけの温度変化も同様のシフトを誘起する可能性がある。したがって、コアの歪の算出には、インデックスにおけるこのシフトを考慮に入れなければならない。
【0055】
張力の結果で生ずるシフトは、個々のセグメントの物理的な伸張であり、その結果、散乱光の伝搬時間は増加する。基準と測定との間のシフトは、遅延と呼ばれる。この遅延は、センシングコアの中の任意の点への遅延のシフトが、この点から反射する信号に対してどのように影響するかというモデルを見ることにより考慮に入れることができる。場(光)が周波数νで振動していて、遅延τを伴う場合には、光の位相は遅延の関数として次式で与えられる。
【0056】
【数5】

【0057】
光の位相φを周波数νの関数としてプロットした場合には、原点を通る直線が得られる。実際の場合には、ガラス等の材料を通過することによって、完全な直線からは歪んだ曲線になる。このことは、測定した値をこのモデルから予想される値と比較する際には留意するべきである。しかし緊急の目的に対しては、このモデルで十分である。図10は、2つの異なる遅延に対するこの位相を示す。1つの例では、上記で記述した原理を使用した、限定的でない測定システムは、レーザーの1つの典型的なスイープは、192.5THzから194.5THzまでの範囲をカバーすることができるであろう。これらの周波数は、1542nm(194.5THz)から1558nm(192.5THz)までのスイープを表している。これらの値は、限定的でない、試験的形状センシングへの応用に対する試験的スイープ範囲であった。検討するこの範囲にわたって、所与の遅延に対する位相はΔφの範囲にわたってスイープしている。τおよびτで示す2つの遅延に対して、このスイープ範囲の差(Δφ−Δφ)は、中心周波数(193.5THz)における位相変化(dφで表す)よりも小さい。中心周波数における位相変化と位相スイープ範囲の変化との間を関係づける因数は、中心周波数の周波数スイープ範囲に対する比であるだろう。この例の場合では、この比は96.7である。
【0058】
試験的応用例では、スイープ範囲(Δν)は、測定の空間分解能の(δτ)を決定する。つまり、スイープ範囲(Δν)は、時間領域におけるインデックスの長さを決定する。これらは、次式で示すような逆数の関係にある。
【0059】
【数6】

【0060】
上記で記述した周波数範囲の例では、1インデックスの長さは0.5psであり、またはガラスの中では50ミクロンである。中心周波数では、わずか0.00516ps(またはガラスの中では516nm)だけの遅延の変化によって2πの位相シフトが誘起される。したがって、2πの位相シフトは、時間領域データでは、わずかな部分だけのインデックスシフトを表す。時間領域においてその遅延を1インデックスだけシフトさせるためには、中心周波数において96.7×2πの位相変化を誘起するのに十分なほどに遅延が変化しなければならない。
【0061】
これらの例は、線形の位相変化は、時間領域における、または遅延領域おけるイベントの位置のシフトを表すということを示している。上記で見たように、1インデックスのシフトは、ファイバの長さ方向に沿った位相変化の測定を完全に歪んだものにしてしまうであろう。したがって、位相を適切に比較するためには、これらのシフトは、それらが生じたときに考慮に入れて、そして、コアの全長に沿って、基準データを測定データと並べて配置するべきである。コヒーレンスのこの劣化を修正するために、基準データの一時的なシフトが必要になる。これは、所与のセグメントに対する基準データ(r)に線形の位相を乗ずることによって達成することができる。ここでnは時間領域におけるインデックス、またはファイバに沿って増加する距離を表す。この位相修正の傾斜(γ)は、以前の遅延値に対して線形フィッチングを実行することにより求められる。この修正項の位相オフセット(φ)は、この位相の平均値がゼロになるように選定される。
【0062】
【数7】

【0063】
図11は、ファイバの1つのセクションにわたって修正した位相差を示す。ここでは、1/3インデックスのシフトが行われている。この位置における位相差は、ファイバの近い側の部分と同じ信号対雑音比を維持している。特定の距離における遅延に基づいて一時的なシフトを適用することにより、コヒーレンスは回復し、位相雑音が低減されている。
[形状センシングファイバの例]
光ファイバのレーリー散乱における歪を追尾ことにより、ストレインの、高い分解能、かつ連続した測定を行うことができる。マルチコア形状センシングファイバの構造を使用して、このマルチコア構造によってファイバの長さ方向に沿ったベンドとベンド方向との両方の測定が可能になる理由を説明する。
【0064】
光ファイバは、複数のコアを含む構造をしており、それにより、ベンド方向に拘わらず、外部ツイストとストレインとの両方のセンシングを行うことができる。このようなファイバの1つの限定的でない例が図1に示されており、以下でその説明を行う。ファイバは4つのコアを含む。1つのコアはファイバの中心軸に沿って配置されている。3つの外側コアは、中心軸に沿ったこのコアの周りを共通の中心を持つように、120°の間隔で70μm離して配置される。アウター(外側)コアは中心コアの周囲を回り、1メートル当たり66ターンの周期を持つ螺旋を形成する。この螺旋状に巻かれたマルチコア形状センシングファイバの例を図12に示す。この議論の中で使用する、限定的でない試験的マルチコア光ファイバの配置を図13に示す。
【0065】
別の限定的でない、形状センシングファイバの例は、ファイバの製造を容易にするために、またはさらなるデータを取得してシステム動作性能を改善するために、3つより多くの外側コアを含む。
【0066】
螺旋状にしたファイバの断面では、各外側コアの位置は、中心コアの周りを回転しながら、ファイバの長さ方向に進んで行く。これは図14に示されている。
[ツイストしたファイバにおけるウォブルの修正]
外側コアからのストレイン信号をベンドおよびベンド方向の情報に変換するためには、外側コアの回転位置が高い精度で求められなければならない。螺旋のスピンレートは一定である(図12参照)と仮定すれば、外側コアの位置は、ファイバに沿った距離から求めることができる。実際には、螺旋状にしたファイバを製造する際に、意図するスピンレートにどのくらいかの変動が伴う。ファイバの長さ方向に沿ったスピンレートの変動によって、公称スピンレートから期待される線形の変化からの角度のずれが生ずる。この角度のずれは、「ウォブル」と呼ばれる。これをウォブル信号W(z)で示すことにする。
【0067】
製造された、螺旋マルチコア形状の試験的ファイバの1つの例は、平均スピンレート(1メートル当たり66ターン)に関しては、非常に高い精度を有する。しかしながら、短い距離(例えば、30cm)では、スピンレートは大きく変動して、距離に対する、純粋に線形の位相変化からの角度位置の変動として、12°もの変動を引き起こす可能性がある。スピンレートにおけるこの誤差は、単一の平面の中で連続したベンドが生ずるような構成にファイバを配置することにより測定することができる。これは、コイル状にしたファイバを平坦な面の上に置くような場合である。ファイバがこのようなコイル状に置かれた場合には、螺旋状のコアには、コアがベンドの外側部分を通過するときとベンドの内側部分を通過するときとで、張力と圧縮力とが交互にかかるであろう。位相歪を距離に対してプロットしたとすれば、ファイバのスピンレートと一致する周期の正弦波の信号が形成される。マルチコアファイバの製造時における変動は、ファイバの予想される一定スピンレートからの小さな位相シフトとして検出することができる。
【0068】
スピンレートのこれらの変動の1つの例を図15に示す。実線の曲線は平面状のコイルから取得した位相データ(ベンド信号)であり、点線は螺旋と同じ周波数および位相で生成された完全な正弦波である。データセグメントの始まりのところでは、2つの曲線は同位相でありゼロ点を通過しているという点に注意するべきである。セグメンの中程では実線の曲線は点線の曲線より僅かに位相が進む。しかしデータセグメントの終わりでは、大幅なオフセットが観測される。位相信号のDC成分を取り除いて、位相シフトを算出すると、これらの2つの信号の間の差が意味を持ち、またある程度の周期性を有する。
【0069】
図16はウォブル信号(W(z))の例を示す。このウォブル信号は、形状センシングファイバの長さ方向に沿った、製造時のスピンレートからの周期的な変動を有する。この位相変動は、ファイバインデックスで表した長さの関数として示されている。データセットの例は、約3メートルのファイバを表している。1/3メートルの程度のところに、ファイバのスピンレートから生まれる周期性が検出される。ファイバの長さにわたって、ファイバの、矛盾のない平均スピンレートが生まれている。しかし、マルチコアツイストファイバから生ずる位相データを正確に分析するためには、これらの小さな揺らぎを校正しなければならない。スピンレートの変化または「ウォブル」のこの測定は、再現性があり、ファイバの実際の製造によって得られる形状を計算するために重要である。
[マルチコアファイバの中のツイストセンシング]
ファイバに加えられるねじり力もまた、外側コアの回転方向のシフトを誘起する可能性がある。コアのストレイン信号を正しいベンド方向に適切にマッピングするためには、ウォブルと加えられたツイストの両方が形状センシングファイバの全長に沿って測定されなければならない。螺旋状にしたマルチコアファイバの形状によって、ベンドが誘起するストレインに加えて、ファイバの長さ方向に沿ったツイストをも直接に測定することが可能になる。この点に関しては以下で説明する。
【0070】
マルチコアファイバは、それが引かれるときに回転を受けるとすれば、中心コアは、本質的に擾乱を受けないが、外側コアは、図17の中央に示すように、ファイバに沿って螺旋状のパスを辿る。このような構造にねじり応力がかかると、中心コアの長さは一定に保たれる。しかしながら、ねじり応力の方向が螺旋を引く方向と一致した場合には、螺旋の周期は増加して、外側コアは、一様に引っ張られるであろう。これは図17の一番上の図に示されている。逆に、ねじり方向が螺旋を引く方向と逆になった場合には、外側コアは、「巻きが解かれる」ことになり、それらの長さ方向に沿って圧縮を受ける。これは図17の一番下の図に示されている。
【0071】
マルチコア構成のツイストに対する感度を導出するために、ねじれによって外側コアが受けると考えられる長さの変化を推定する。ファイバの1つのセグメントをシリンダとしてモデル化することにする。シリンダの長さLはセグメントサイズに対応し、また、中心コアから外側コアまでの距離は、シリンダの半径rで表すことにする。シリンダを縦方向にスライスして、そしてそれを平坦にしたとすれば、シリンダの表面は矩形で表現することができる。その表面の長さはセグメント長Lに等しく、また、その表面の幅はシリンダの円周2πrに対応する。ファイバがツイストを受けたときには、ファイバの終点はシリンダを回って移動するが、始点は固定されたままである。これを平坦にした表面の上に投影すると、ツイストを受けたコアは、対角線を形成し、それは、矩形の長さLよりも長い。外側コアのこの長さの変化は、ファイバの中のツイストに関係している。
【0072】
図18は、ツイストを受ける外側コアを示し、これは平坦にしたシリンダの表面に沿って移動しているとモデル化することができる。上記で述べた平坦にした表面を使用して、次式を導き出すことができる。
【0073】
【数8】

【0074】
上記の式において、∂dは、回転角の変化∂φによって生ずる、外側コアの、元の螺旋状態からの長さの変化である。中心コアと外側コアとの間の半径方向の距離はrで表され、2π/Lは螺旋ファイバのスピンレートを単位長当たりの回転角で表した値である。
【0075】
この例では、最小検出可能距離は光波の0.1ラジアンと仮定している。試験的システムの例とて、動作波長を1550nm、ガラスの屈折率を約1.47とすると、最小検出可能距離は近似的に10nmになる。半径を70ミクロン、また螺旋の周期を15mmとすれば、式(8)は、形状センシングファイバは0.3°のツイスト感度を有するということを示している。センシングファイバの形状を最初の部分で急に90°曲げて、ツイストによる誤差が最大になるようにした場合でも、それによる位置誤差は、ファイバ長の0.5%であると考えられる。多くの応用では、ファイバの最初の部分で90°ベンドが生ずることはないので、したがって、誤差は0.5%よりも小さいであろう。
[4コアファイバの中のツイストの計算]
ツイスト測定の感度は、単一のコアの感度に基づいている。しかし、ファイバの長さ方向に沿ったツイストのセンシングは、4つの全てのコアに依存する。外側コアの長さ変化の平均値と中心コアの長さ変化との間の差が既知であれば、ファイバの中に存在するツイスト(角度で表した絶対値)は算出することができる。
【0076】
ファイバに沿った外部ツイストは、図19に示すフローチャートを使用して算出することができる。図19は、限定的でない手順の例の概略を示したものである。4つの全てのコアA〜Dに対する位相信号を求める。そして、外側コアB〜Dに対する信号の平均値を求める。外側コアの位相信号の平均値を中心コアの位相信号と比較することにより外部ツイストを算出する。ファイバがねじり力を受けた場合には、全ての外側コアは同様の引っ張りまたは圧縮を受ける。この引っ張りまたは圧縮は、ねじり力の、螺旋のスピン方向に対する向きによって決定される。中心コアには、ねじり力が加えられても、長さの変化は生じない。しかしながら、中心コアは張力および温度変化の影響は受けるので、共通ストレインモードを直接に測定するものとして動作する。したがって、3つの外側コアの位相信号の平均値から中心コアの位相信号を差し引くまたは除去することにより、ねじれが加えられた結果で生ずる位相変化のメジャー(尺度)を得ることができる。この位相変化は、外部ツイスト(つまり、ファイバの回転)のメジャーにスケーリングすることができる。ファイバの長さにわたって加えられたツイストが1回の回転よりも小さい領域の内部では、このスケーリング係数は線形であると近似することができる。強いねじり力が存在する場合には、2次項を考慮するべきことが望ましい。さらに、ツイストを複数の固着点(ボンディングポイント)の間で線形に分布させることにより、ファイバの長さ方向に沿って、ツイストの様々な領域を観測することができる。
【0077】
図20は、図19のアルゴリズムを示す一般的な形状に対するより詳細なデータセットの例を示す。グラフは、一般的なベンドに対して、形状センシングファイバの中心コア(黒色)および外側コア(灰色)の局所的な長さ変化の結果で生ずる位相歪を示している。図20に示す2つの位相曲線は、マルチコア形状センシングファイバの中のコアの内の2つが経験する局所的な長さ変化を表している。外側コアの内の2つのコアに対する曲線は、グラフを明瞭にしようとするために図示してはいない。しかし、これら他の2つのコアから求めた値は、ファイバの最終的な形状を決定するために使用している。
【0078】
中心コアの位相信号は周期的振動を経験しない。この振動は、所与のベンドを通って螺旋が進行につれて、外側コアが圧縮モードと伸張モードとの間を遷移することにより生ずる。中心コアは、ベンドまたはツイストが誘起するストレインの影響を受けないが、形状センシングファイバの長さ方向に沿って位相を累加して行く。中心コアの位相信号は、ファイバの全てのコアが経験するコモンモードストレインを表している。図21では、外側コアは平均化してあり(灰色)、中心コア(黒色)に対比してプロットしてある。
【0079】
3つの外側コアは120°だけ互いに位相がずれているので、ベンドが誘起する位相信号の変動は、その平均値はゼロになる。図21では、2つの位相曲線の間には、僅かな偏差が観測される。中心コアの位相(コモンモードストレインの直接のメジャー)を差し引くことにより、ねじり力によって累加された位相が残る。適切なスケーリングを行うことにより、この信号はファイバロールのメジャー(「ツイスト」信号T(z)で表す)にスケーリングすることができる。図21から生成されたツイスト信号を図22示す。ツイスト信号Τ(z)から、形状センシングファイバテザーの長さ方向に沿ったねじれの結果で生ずる、外側コアの回転方向の位置のシフトを求めることができる。これにより、ベンド信号を正しいベンド方向にマッピングすることができる。
【0080】
形状の算出においてツイストの影響を補償することが望ましいという事実を、図23に示す1つのデータセットで説明する。5点からなり、中心に1点を持ち、250mm平方を形成するポイントグリッドを通して形状センシングファイバの先端を単一の平面上に変換したもので、ツイストを考慮した形状処理を行った場合を示す(黒塗り)。データセットの処理に外部ツイストに関わる修正を行っていない場合は白抜きの点でプロットしてある。これらのプロットで、ツイスト計算を行っていない場合には、ファイバの先端でトレースした元の形状を識別することは不可能である。小さなファイバ先端の変換に対してさえも、ファイバの長さ方向に沿って、相当量のツイストが累加される。したがって、形状センシングの際に、このツイストを考慮に入れないとすれば、高いレベルの正確さは達成することができない。
[ベンドが誘起するストレインの算出]
形状センシングファイバに加えられるツイストの量を示す情報と共に、マルチコアファイバによって、正規直交座標系の中でベンド情報を抽出することもできる。形状センシングファイバの4つの光コアに対する位相信号を分析することにより、2つの直交した微分ストレイン測定を行うことができる。これを以下で説明する。これらのストレイン値を使用して、ファイバの長さ方向に沿って、ポインティング(pointing)ベクトルを追尾することができ、それにより、終局的に、ファイバの位置および/または形状のメジャーを得ることができる。
【0081】
コモンモードストレインを除去することにより、3つの、修正された、外側コアの位相信号が得られ、これらを使用することにより、形状センシングファイバに沿ったベンドのメジャーを抽出することができる。対照性から、外側コアの内の2つのコアを使用して、ファイバの長さ方向に沿ったストレイン信号を再構成することができる。最初に、外側コアの内の2つのコアに対する位相信号の導関数を導く。この導関数は、導関数を積分したときの誤差が成長しないように算出することが望ましい。この誤差の成長は、システムの正確さが失われることに関連するものである。倍精度の演算では、これは問題にはならない。しかし演算が、ある限られた数値精度で行われる場合には、丸め操作を適用して、積分した値が誤差を累加しないようにするべきである(収束丸め)。
【0082】
この説明では、ストレインは線形の様式で射影することができると仮定する。したがって、所与のコアの位相応答は、それらのコアの半径方向の間隔に射影した2つの直交したストレインとして、次式で表される。
【0083】
【数9】

【0084】
上式において、bおよびbはベンドの算出に使用する直交したストレイン信号である。位相φはコアの位相応答を表し、zはファイバに沿った軸方向の距離であり、kは螺旋のスピンレートであり、またデルタΔはコアの半径方向の位置を表す(120°の間隔)。
【0085】
外側コアの内の2つのコアからの位相応答は、
【0086】
【数10】

【0087】
【数11】

【0088】
である。bおよびbについて解くと、
【0089】
【数12】

【0090】
【数13】

【0091】
が得られる。
【0092】
上式(12)および(13)において、スピンレートkは、ファイバの長さ方向に沿って一定であると仮定している。上記の導出は、スピンレートに修正項が加えられた場合も成り立っている。具体的には、測定したウォブル信号W(z)およびツイスト信号T(z)を含めることにより、ファイバの長さ方向に沿った外側コアの回転変動を補償することができる。この場合の上記の表現式(12)および(13)は以下のようになる。
【0093】
【数14】

【0094】
【数15】

【0095】
[直交微分ストレイン信号からの形状の算出]
式(14)および(15)は、2つの微分直交ストレイン信号を与える。図24は、全てが同一平面上にあるいくつかのベンドを持つ形状に置かれたファイバに対する直交ストレイン曲線を描いている。これらの2つの微分直交ストレイン信号は、処理され、最後に形状センシングファイバの長さ方向に沿って積分が実行されて、ファイバの位置および/または形状を表す、3つの直交座標系信号が生成される。
【0096】
図25は、ストレインから形状を算出するための限定的でないステップ例を記述するフローチャートを示す。直交ストレイン信号AおよびBは式(14)および(15)から求められる。
【0097】
データ捕捉ネットワークで捕捉したデータは、コンピュータメモリの離散アレイの中に記憶されることが望ましい。これを行うためには、この時点で、インデックスに基づいて、表現式を、式(15)における連続表現から、離散表現に変更することが必要である。さらに、アレイの中の各点におけるベンドは、角度の回転に変換することができる。これは、式(1)を使用すれば、セグメント(Δz)の長さは固定かつ有限だからである。パラメータaは、ファイバの中心からのコアの距離によって決定され、また、ストレイン光学係数は、ストレインを光行路長の変化に関係づける比例定数である。
【0098】
【数16】

【0099】
【数17】

【0100】
ファイバの中の局所的なベンドによって生ずる回転Θのこれらのメジャーは、これらを使用して3次元の回転行列を形作ることができる。z軸方向に配置されたファイバから開始すると考えれば、2つのベンド要素が、ファイバの第1のセグメントを表すベクトルを、これらの2つの小さな回転量だけ回転させる。数学的には、これは行列の乗算で行われる。小さな回転に対しては、以下の式(18)で示す単純化した回転行列を使用することができる。
【0101】
【数18】

【0102】
上記の回転行列は、θ<<1およびθ<<1である場合には成り立つ。システムの分解能がミクロンの程度であれば、この条件は維持するのが困難ではない。ファイバセグメントは、回転の後には、新しい終点と新しい方向とを有するであろう。全ての更なるベンドはこの新しいポインティング方向から測定される。したがって、ファイバの上の任意の位置におけるポインティング方向(またはベクトル)は、ファイバの中のその位置と出発位置との間の全てのポインティング方向に依存する。ファイバの任意の点のポインティングベクトルは、ファイバの長さ方向に沿った回転座標系を追尾する反復処理の中で解くことができる。これは以下の表現式で表される。
【0103】
【数19】

【0104】
換言すれば、ファイバに沿った各セグメントは、そのセグメントに沿ったベンドのサイズおよび方向に比例した小さな回転を伴う。この反復計算は、数学的には以下の式で示すことができる。
【0105】
【数20】

【0106】
ここで再び、小さな回転で殆ど平面における回転に対しては、角度は、実効的に合計される。そして、形状センシングファイバの長さ全体を通して、ストレイン(長さ変化)の積分に対する正確なメジャーを維持することにより、ストレインだけを使用して得ることができる精度と比較して、より高い精度を達成することができる。上記で算出される行列は、コアの局所的な向きに関する情報を含み、これにより、適切な回転を取り入れることができる。第1の目的がファイバに沿った位置を求めることにある場合には、その位置でのファイバのポインティング方向を記述する局所のベクトルだけが必要である。このポインティングベクトルは、以下に示す単純な内積演算で求めることができる。
【0107】
【数21】

【0108】
これらのポインティングベクトルのそれぞれを、図26に示すように、ヘッドツーテイルに置けば、形状の正確な測定が可能になる。したがって、ファイバの長さ方向に沿った任意の点における位置および/または方向は、以前の全てのポインティングベクトルの総和を取ることにより、求めることができ、これはシステムの分解能にスケーリングすることができる。
【0109】
【数22】

【0110】
形状センシングシステムの1つの限定的でない例を、図27を使用して説明する。他の実施形態および/または要素を使用することもできる。さらに、ここに示した全ての要素は必ずしも必須ではない。システム制御器およびデータプロセッサ(A)は、規定された波長範囲および同調速度にわたって、波長可変レーザ(B)の2回の連続したスイープを開始する。波長可変レーザーから放射された光は、光カップラ(C)を介して、2つの光ネットワークに導かれる。これら2つの光ネットワークの内の第1のネットワークは、レーザー監視ネットワーク(E)であり、また第2のネットワークは、質問器(インテロゲータ)ネットワーク(D)と呼ばれる。レーザー監視ネットワーク(E)の中で、光は、光カップラ(F)を介して2つに分けられ、ガス(例えば、シアン化水素)セル参照(G)に送られる。このガスセル参照はCバンド波長の較正に使用される。ガスセルのスペクトラムは、データ捕捉ネットワーク(U)に接続されたフォトダイオード検出器(L)によって捕捉される。
【0111】
光カップラ(F)のところで分離された光の残りの部分は、2つのファラデー回転子ミラー(I、J)に接続された光カップラ(H)から構成される干渉計に導かれる。第1のファラデー回転子ミラー(FRM)(I)は干渉計の基準アームとして動作し、また第2のファラデー回転子ミラー(J)は、光ファイバの遅延スプール(K)だけ離されて置かれる。この干渉計は、監視信号を生成し、この監視信号は、レーザーの同調非線形を修正するために使用され、フォトダイオード検出器(M)を介してデータ捕捉ネットワーク(U)によって捕捉される。
【0112】
光カップラ(C)によって質問器ネットワーク(D)に導かれた光は、偏波制御器(N)に入り、偏波制御器(N)はレーザー光を回転させて、2つの連続したレーザスキャンの間で直交した状態になるようにする。その後、この光は、一連の光カップラ(O)を介して、4つの捕捉干渉計(P、Q、R、S)の間に等しく分割される。中心コアに対する捕捉干渉計の中では、光は光カップラ(AA)によって基準パスと測定パスとの間に分割される。カップラ(AA)からの「プローブ」レーザー光は、光サーキュレータ(T)を通過して、形状センシングファイバ(W)に対するマルチコアファンアウト(V)の中心コアリードを通して、形状センシングファイバ(W)の中心コアに入る。形状センシングファイバ(W)は、中心光コアとそれに同心状に螺旋形に巻かれた3つの外側光コアを含む。ファイバ(X)の断面は、外側コア(Z)は等しく離して置かれ、同心状で、中心コア(Y)から所与の半径距離だけ離れていることを示している。レーザスキャンによって生ずる中心光コア(Y)のレーリー後方散乱は、光サーキュレータ(T)を通過して、光カップラ(BB)のところで捕捉干渉計の基準パス光と再結合するときに、それとの干渉が生ずる。
【0113】
干渉パターンは光偏波ビームスプリッタ(DD)を通過し、光偏波ビームスプリッタ(DD)は、干渉信号を2つの主要偏波状態(S、P)に分離する。それぞれ2つの偏波状態は、2つのフォトダイオード検出器(EE、FF)を使用して、データ捕捉ネットワーク(U)によって捕捉される。偏波回転器(CC)は、信号がフォトダイオード検出器のところで平衡するように調整することができる。形状センシングファイバの外側光コアは、対応する捕捉干渉計(Q、R、S)を使用して、同様の様式で測定される。システム制御器およびデータプロセッサ(A)は、4つの個々の光コアの信号を解析して、形状センシングファイバ(W)の長さ方向に沿って位置と向きとの測定値を生成する。その後、データはシステム制御器(A)から表示および/または使用(GG)に対して送られる。
[複屈折の修正]
光ファイバが曲げられたときには、コアの円周方向の対照性が破れて、ベンドの平面の方向とベンドの平面に垂直な方向とに、「水平」および「垂直」成分が選択的に生成される。この場合、ファイバに沿って進行する光は、その偏波状態に依存する異なる屈折率を経験する。偏波状態の関数として表されるこの屈折率の変化は複屈折と呼ばれる。この複屈折率は、形状測定に対して重大な問題を課するものである。これは、測定される位相変化は、入力の偏波状態に依存し、そしてこの入力状態は、標準ファイバでは制御することができないからである。
【0114】
この問題は、2つの直交した偏波状態で光コア応答を測定することにより解決することができる。これらの2つの状態の応答が適切に平均化されたとしたら、偏波の関数として測定された応答の変動は、取り除く、または少なくとも実質的に低減させることができる。図28に示すフローチャートは、測定値および基準値において、複屈折(本質的に内部に存在する複屈折、ベンドが誘起する複屈折等)に関わる修正を行うための限定的でない、処理の例の概略を示す。以下で示す限定的でない例は、ベンドが誘起する複屈折に関する。しかし、より一般的に、任意の複屈折に対しても適用可能である。
【0115】
処理の第1のステップでは、2つの直交した偏波状態(「s」および「p」と呼ぶ)においてコアの応答を測定する。各偏波状態においてs応答およびp応答を測定し、その結果、4つのアレイを得る。簡単にするために、第1の偏波状態に対する応答をaおよびbと呼び、第2の偏波状態に対する応答をcおよびdと呼ぶことにする。ここで、aおよびcは、s検出器における応答であり、bおよびdは、p検出器における応答である。
【0116】
第2のステップでは、以下に示す2つのアレイ積を算出する。
【0117】
【数23】

【0118】
【数24】

【0119】
これらの信号のそれぞれをローパスフィルタに通した値を算出し、それらを<x>、<y>と書くことにする。ここでは、予想値という表記を使用してローパスフィルタ操作を示すことにする。比較的ゆっくり変化する関数の位相と、より高い周波数の同相の散乱信号とを並べて、それらを加算できるようにする。
【0120】
【数25】

【0121】
【数26】

【0122】
この処理を繰り返して、最終的にスカラー値を生成する。
【0123】
【数27】

【0124】
ここで、ファイバに沿った変動のベクトルの性質を表している、ゆっくり変化するベクトルを生成することができる。ここでは、広帯域レーリー散乱要素を使用してはいないが、これはこれらの全ての要素がuに包括されているからである。
【0125】
【数28】

【0126】
したがって、複屈折の効果に由来する修正は、次式を使用して算出される。
【0127】
【数29】

【0128】
ここで、φは複屈折の効果に由来する修正であり、nはアレイの中のインデックスである。ここで、ベクトルは、アレイの中の第1の要素(インデックス0)に対して示しているが、ベクトルアレイの中のいずれの任意に選択した要素に対しても同様に容易に求めることができる。
【0129】
ここで示した複屈折の修正は、製造時に生じたコアの非対称性による複屈折、半径が100mmを超えるベンドに対する複屈折を補償することができる。形状センシングファイバが、曲率半径100mmよりも小さいベンド状に置かれた場合には、2次の複屈折効果が重要になる。
【0130】
相当大きなレベルのストレインはマルチコア形状センシングファイバの中心コアに平行な方向だけに現れると仮定して、図29に示す図の検討を行う。ファイバは曲げられているので、0<X≦rの領域では伸張ストレインが測定され、また一方、−r≦X<0の領域では圧縮ストレインが測定される。外側ベンド領域の伸張によって横方向の力が加わり、ファイバの内部圧力を増加させる。ファイバの内部圧力が増加するに従い、2次ストレインの項(ε)が問題になってくる。第2のグラフに示すように、この圧力ストレインの項は、ファイバの中心軸に沿ったところで最大になり、ファイバの外側端に向かって距離の2乗で減少する。曲率半径が小さいベンドでは、この圧力ストレインの項は、ファイバの屈折率を変化させる可能性があり、その結果、測定可能な複屈折が現れる。さらに、外周辺の螺旋状のコアは、この圧力が誘起するストレインに対して正弦波状の応答を示すが、中心コアの応答は最大になる。
【0131】
図30は、直径が40mmのファイバループから得られた2つの位相をプロットしたものである。これらの信号における振動は、マルチコアがファイバの中心から外れている構造に起因するものである。ベンドの曲率半径が小さくなれば、ストレイン信号は大きくなり、同心性からの偏差による、この捉えがたい応答を引き出すことができる。このプロットは、螺旋状の外側コアが累加する位相量の平均値は中心コアと比較して、ベンドの領域で、大幅に減少しているということを示している。この位相量の減少はベンドが誘起する複屈折に対する証拠を示すものである。中心コアの位相と3つの外側コアの位相の平均値との間の絶対位相差を求めることにより外部ツイストが算出されることを以前に説明した。図30のグラフは、ベンドの領域の中では間違ったツイスト信号が測定されているであろうということを示している。
【0132】
測定した外側コアの位相応答は、圧力が誘起するストレインプロファイルεに対する相対的な位置を示している。したがって、外側コアのストレイン応答の2乗は、圧力場に対する相対的な位置および振幅の両方に対するメジャーを提供するものである。この応答は、スケーリングすることができ、外側コアに対する修正として使用して、中心コアが感知するεのレベルに一致させることができる。そしてこれにより、間違えたツイストを修正することができる。
【0133】
【数30】

【0134】
ここで、φは外側コアの上の位相応答であり、Nは外側コアの数であり、また、kはスケーリング係数として動作する。図31は、直径が40mmのファイバループに対する外側コアのストレイン応答で、コモンモードストレインが差し引かれている場合を示す。このストレイン応答信号からベンドが誘起する複屈折に関わる修正を近似的に求めることができる。これは図32のグラフに示してある。
【0135】
この修正を適用することは、ベンドの領域の中で測定したツイストに対して重大な影響を与える。これは図33に示してある。2次の修正を行った場合と行わなかった場合とのツイスト信号を比較すると、この例の場合では、2次の複屈折の修正を行わない場合には、ベンド領域の中で25°の誤差が累加されることが明らかになる。
[複屈折修正の適用と精度への影響]
以下では、偏波が形状センシングシステムの精度に対して及ぼす影響について説明する。複数回の測定に対して入力偏波を変化させるために、形状センシングファイバと形状センシングシステムとの間に、図34に示すように、ループ偏波制御器を追加する。
【0136】
上記で記述した修正がシステムの精度に対して及ぼす影響を示すために、図35に示すように、比較的単純な形状に対して同一平面にある信号を考える。ここでは、長さ1.4メートルの形状センシングファイバが、ベンド半径50mmで1回180°だけターンして敷かれている。図36は、3回の連続した測定に対して同一平面にない測定を行った場合を示している。それぞれの測定に対して、図34に示す偏波制御器を使用して偏波を変化させている。
【0137】
複屈折を考慮しない場合には、精度および精度が大幅に失われていることが観測される。偏波状態が変化すると、同一平面にない信号の中では大きな応答が観測される。システムが誤差を含むツイスト信号を測定する結果、ファイバはベンドの領域の中でだけ角度誤差を累加させる。したがって、このベンドが存在する場合には、ファイバのポインティング方向に重大な誤差を生ずる。ファイバの偏波応答を予測するのは困難な問題であり、また、所与のベンドに対して全てのコアが同じ程度の応答を示すということはない。図37はこの点に関し、コアに対する複屈折の修正を示している。しかしながら、中心コアに対する2回の同じ測定は、図38に見るように、それらの位相応答には相当に大きな変動が生じている。2回の連続した測定が入力偏波に対して異なった応答を示していることは、形状センシングファイバの中に複屈折が存在することの証拠を提供するものである。
【0138】
複屈折に関わる修正を行ったことにより、システムの精度が改善された。これは図39に示されている。入力偏波状態を変化させたことに対して、形状測定の間の変動は最小になっている。これによりシステムの精度は大幅に改善されている。しかしながら、システムの精度に関しては、まだ重大な誤差が観測される。ベンドが誘起する複屈折に基づいた2次の修正も実行した場合には、システムの更なる改善が得られる。これは図40に示されている。同一平面にない信号の精度と精度との両方に関して抜本的な改善が得られた。
【0139】
これまで種々の実施形態を示し、詳細に記述してきたが、特許請求の範囲は、いずれの特定の実施形態または事例に限定されるものではない。上記の記述は、いずれの特定の要素、ステップ、範囲、または機能も、必須であって、それらは特許請求の範囲に含まれるべきであることを意味すると判読されるべきではない。特許されるべき主題の範囲は、特許請求の範囲によってのみ画定される。法的保護の範囲は、許可された特許請求の範囲およびそれらの均等物の中に記載された文言によって画定される。通常の当業者に知られている、上記で記述した好適な実施形態の要素に対する全ての構造的均等物および機能的均等物は、参照により本明細書に明確に組み込まれ、本特許請求の範囲が包含すると意図される。さらに、デバイスまたは方法は、本発明が解決しようとしているそれぞれおよび全ての課題に対して関与する必要はなく、本特許請求の範囲によって包含されるべきものである。また、どの請求項も、「のための手段」または「のためのステップ」という用語が用いられていれなければ、35USCセクション112のパラグラフ6を行使しようとするものではない。さらに、本明細書における、いずれの実施形態、特徴、要素、またはステップも、その実施形態、特徴、要素、またはステップが特許請求の範囲の中で記載されているか否かに拘わらず、公衆に解放されることを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバについての測定方法であって、
前記マルチコアファイバにおける複数のコアのうちのいくつかのコアについて当該マルチコアファイバのある地点までの光学長の変化を検出する検出ステップと、
前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置または方向を決定する決定ステップと
を有することを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記決定ステップは、前記地点における前記位置と前記方向との両方を決定するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記決定された前記位置または前記方向の精度は、前記マルチコアファイバの前記地点までの当該マルチコアファイバの前記光学長の0.5%よりも良いことを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
前記決定ステップは、前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの少なくとも一部分の形状を決定するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項5】
前記決定ステップは、
前記地点までの前記検出された光学長の変化に基づいて、前記マルチコアファイバに沿ったいずれかの位置での当該マルチコアファイバの曲りの角度を算出するステップと、
前記算出された曲りの角度に基づいて、前記地点での前記マルチコアファイバの前記部分の形状を決定するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項6】
前記曲りの角度は、2次元または3次元で算出されることを特徴とする請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
前記検出ステップは、前記マルチコアファイバの複数のコアのうちのいくつかのコアに関して、複数のセグメント長のそれぞれについて、当該マルチコアファイバのある地点までの光学長の増加的な変化を検出するステップを有し、前記検出された光学長の変化は複数の前記増加的な変化の組み合わせに基づいた変化であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項8】
前記検出ステップは、前記複数のコアのうちの少なくとも2つのコアにおける複数のセグメント長からの、反射してきた光信号の位相応答を検出するステップを有し、前記複数のセグメント長での前記マルチコアファイバの歪みによって前記少なくとも2つのコアにおける前記複数のセグメント長からの前記反射してきた光信号の位相がシフトしていることを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記マルチコアファイバの前記光学長に沿って継続的に前記位相応答を監視するステップをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の測定方法。
【請求項10】
セグメント長のそれぞれについて前記反射してきた光信号の反射レーリー散乱パターンを検出するステップと、
前記反射レーリー散乱パターンを、セグメント長のそれぞれについての基準レーリー散乱パターンと比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて、セグメント長のそれぞれについて前記位相応答を決定するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項11】
前記マルチコアファイバの前記光学長について前記検出された変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点での当該マルチコアファイバのねじれパラメータを求めるステップをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項12】
前記マルチコアファイバの前記地点の前記位置または前記方向を決定するステップは、前記決定されたねじれパラメータに基づいて実行されるステップであることを特徴とする請求項11に記載の測定方法。
【請求項13】
前記複数のセグメント長のそれぞれについて前記求められたねじれパラメータを補正するステップをさらに有することを特徴とする請求項11に記載の測定方法。
【請求項14】
前記マルチコアファイバは、3つの周辺コアを有しており、当該3つの周辺コアは、前記マルチコアファイバの中心に沿って存在する第4のコアから間隔をあけて配置されており、
前記方法は、
4つのコアにける前記セグメント長からの反射してきた光信号の位相応答を決定するステップであって、1つまたはそれ以上の前記セグメント長における前記マルチコアファイバの歪みによって、前記4つのコアのそれぞれにおける前記反射してきた光信号の位相がシフトしている、ステップと、
前記3つの周辺コアについての前記位相応答を平均化するステップと、
前記平均化された位相応答を前記第4のコアの位相応答と合成してコモンモード歪みを除去するステップと、
前記合成された位相応答から前記ねじれパラメータを求めるステップと
をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の測定方法。
【請求項15】
前記複数のセグメント長において前記マルチコアファイバの前記地点における当該マルチコアファイバの向きを判別するステップと、
前記検出した光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置を決定するときに、前記判別した向きを補正するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項16】
前記マルチコアファイバは、公称のスピンレートによって特徴づけられており、
前記方法は、
前記マルチコアファイバの前記公称のスピンレートに対する角度回転であって、前記複数のセグメント長のそれぞれでの前記マルチコアファイバの前記地点における前記マルチコアファイバの前記角度回転を求めるステップと、
前記マルチコアファイバを一平面でのまがった向きに制約することによって、前記マルチコアファイバについてのウォブルファクタを決定するステップと、
前記検出した光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置を決定するときに、前記ウォブルファクタを補正するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項17】
前記マルチコアファイバはらせん状に巻き付けられており、公称のスピンレートによって特徴づけられており、
前記方法は、
前記マルチコアファイバの前記地点における前記公称のスピンレートの偏差を求めるステップと、
前記スピンレートの前記偏差を補正するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項18】
前記方向は、複数の直交した歪み信号に基づいて決定された、前記マルチコアファイバの前記地点での当該マルチコアファイバの曲り角度に対応していることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項19】
前記光学長の変化は、前記マルチコアファイバに沿った前記セグメント長のそれぞれでの光位相の変化を算出し、前記光学長を決定するために前記光位相の変化を巻き戻すことによって、決定されることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項20】
前記マルチコアファイバに沿って少なくとも2つの偏波状態で光を送信するステップと、
前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点における前記位置または方向を決定する際に、前記少なくとも2つの偏波状態の光の反射光を合成するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの偏波状態は、少なくとも公称上は直交した第1偏波状態と第2偏波状態とを含み、
前記方法は、
前記マルチコアファイバに沿って前記第1偏波状態の第1光信号を送信するために偏波制御器を使用するステップと、
前記マルチコアファイバに沿って前記第2偏波状態の第2光信号を送信するために前記偏波制御器を使用するステップと、
前記第1光信号の反射光と前記第2光信号との反射光を使用して、前記マルチコアファイバの前記地点までの前記複数のコアのうちの前記いくつかのコアにおける偏波に依存しない光学長の変化を算出するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項20に記載の測定方法。
【請求項22】
前記マルチコアファイバに沿った曲りによって誘発した光学長の変化を決定するステップと、
前記ねじれパラメータを求めるときに、前記曲りによって誘発した光学長の変化を求めるステップと
をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の測定方法。
【請求項23】
前記複数のセグメント長のうちの一つのセグメント長における曲りを算出するステップと、
前記算出した曲りを2乗するステップと、
前記2乗した曲りに定数を乗算して曲り積を求めるステップと、
前記曲り積と、前記セグメント長における前記マルチコアファイバのアウターコアについての前記決定した光学長の変化とを合成するステップと
をさらに有することを特徴とする請求項22に記載の測定方法。
【請求項24】
マルチコアファイバの測定値を作成する装置であって、
前記マルチコアファイバにおける複数のコアのうちのいくつかのコアについて当該マルチコアファイバのある地点までの光学長の変化を検出する検出回路と、
前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置または方向を決定する演算回路と
を有することを特徴とする装置。
【請求項25】
前記演算回路は、前記地点における前記位置と前記方向との両方を決定するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記決定された前記位置または前記方向の精度は、前記マルチコアファイバの前記地点までの当該マルチコアファイバの前記光学長の0.5%よりも良いことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記演算回路は、前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの少なくとも一部分の形状を決定するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記演算回路は、前記地点までの前記検出された光学長の変化に基づいて、前記マルチコアファイバに沿ったいずれかの位置での当該マルチコアファイバの曲りの角度を算出し、前記算出した曲りの角度に基づいて、前記地点での前記マルチコアファイバの前記部分の形状を決定するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項29】
前記検出回路は、前記マルチコアファイバの複数のコアのうちのいくつかのコアに関して、複数のセグメント長のそれぞれについて、当該マルチコアファイバのある地点までの光学長の増加的な変化を検出するように構成されており、
前記検出された光学長の変化は複数の前記増加的な変化の組み合わせに基づいた変化であることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項30】
前記検出回路は、前記複数のコアのうちの少なくとも2つのコアにおける複数のセグメント長からの、反射してきた光信号の位相応答を検出するように構成されており、
前記複数のセグメント長での前記マルチコアファイバの歪みによって前記少なくとも2つのコアにおける前記複数のセグメント長からの前記反射してきた光信号の位相がシフトしていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記検出回路は、前記マルチコアファイバの前記光学長に沿って継続的に前記位相応答を監視するように構成されていることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記検出回路は、セグメント長のそれぞれについて前記反射してきた光信号の反射レーリー散乱パターンを検出するように構成されており、
前記演算回路は、前記反射レーリー散乱パターンを、セグメント長のそれぞれについての基準レーリー散乱パターンと比較し、前記比較の結果に基づいて、セグメント長のそれぞれについて前記位相応答を決定するように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項33】
前記演算回路は、前記マルチコアファイバの前記光学長について前記検出された変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点での当該マルチコアファイバのねじれパラメータを求めるように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項34】
前記マルチコアファイバの前記地点の前記位置または前記方向の決定は、前記決定されたねじれパラメータに基づいて実行されることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記演算回路は、前記複数のセグメント長のそれぞれについて前記求められたねじれパラメータを補正するように構成されていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記マルチコアファイバは、3つの周辺コアを有しており、当該3つの周辺コアは、前記マルチコアファイバの中心に沿って存在する第4のコアから間隔をあけて配置されており、
前記検出回路は、4つのコアにける前記セグメント長からの反射してきた光信号の位相応答を決定するように構成されており、
1つまたはそれ以上の前記セグメント長における前記マルチコアファイバの歪みによって、前記4つのコアのそれぞれにおける前記反射してきた光信号の位相がシフトしており、
前記演算回路は、前記3つの周辺コアについての前記位相応答を平均化し、前記平均化された位相応答を前記第4のコアの位相応答と合成してコモンモード歪みを除去し、前記合成された位相応答から前記ねじれパラメータを求めるように構成されていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記マルチコアファイバは、公称のスピンレートによって特徴づけられており、
前記演算回路は、前記マルチコアファイバの前記公称のスピンレートに対する角度回転であって、前記複数のセグメント長のそれぞれでの前記マルチコアファイバの前記地点における前記マルチコアファイバの前記角度回転を求め、前記マルチコアファイバを一平面でのまがった向きに制約することによって、前記マルチコアファイバについてのウォブルファクタを決定し、前記検出した光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置を決定するときに、前記ウォブルファクタを補正するように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項38】
前記演算回路は、前記マルチコアファイバに沿った前記セグメント長のそれぞれでの光位相の変化を算出し、前記光学長を決定するために前記光位相の変化を巻き戻すことによって、前記光学長の変化を決定するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項39】
前記マルチコアファイバに沿って少なくとも2つの偏波状態で光を送信するレーザーをさらに有し、
前記演算回路は、前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点における前記位置または方向を決定する際に、前記少なくとも2つの偏波状態の光の反射光を合成するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項40】
前記少なくとも2つの偏波状態は、少なくとも公称上は直交した第1偏波状態と第2偏波状態とを含み、
前記装置は、
前記マルチコアファイバに沿って前記第1偏波状態の第1光信号を送信するとともに、前記マルチコアファイバに沿って前記第2偏波状態の第2光信号を送信するように構成された偏波制御器をさらに有し、
前記演算回路は、前記第1光信号の反射光と前記第2光信号との反射光を使用して、前記マルチコアファイバの前記地点までの前記複数のコアのうちの前記いくつかのコアにおける偏波に依存しない光学長の変化を算出するように構成されていることを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項41】
コンピュータ化された測定装置上で実行されることで、当該測定装置にマルチコアファイバについての測定値を作成させるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、前記測定装置に、
前記マルチコアファイバにおける複数のコアのうちのいくつかのコアについて当該マルチコアファイバのある地点までの光学長の変化を検出するステップと、
前記検出された光学長の変化に基づいて前記マルチコアファイバの前記地点の位置または方向を決定するステップと
を実行させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図12】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−505441(P2013−505441A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529743(P2012−529743)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/002517
【国際公開番号】WO2011/034584
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507194497)ルナ イノベーションズ インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】LUNA INNOVATIONS INC.
【Fターム(参考)】