説明

光学的可変接着剤を組み込んだセキュリティ・デバイス

【課題】光学的可変接着剤を組み込んだセキュリティ・デバイスを提供する。
【解決手段】光学効果を実現する構造は、接着剤によって互いにホット・スタンプされた第1および第2の基板を備える。接着剤は、第1の基板を通して検出可能な光学効果を実現する複数の粒子がその中または上に分散されているエネルギー活性化結合剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ホット・スタンプに関し、より詳細には、光学効果フレークを有するホット・スタンプ接着剤を用いて光学デバイスを基板または物品にホット・スタンプすることに関する。
【0002】
本出願は、2006年4月14日に出願された米国特許仮出願第60/744,842号、2006年3月6日に出願された米国特許仮出願第60/779,484号、2006年7月24日に出願された米国特許仮出願第60/832,826号、および2006年11月29日に出願された米国特許仮出願第60/861,608号に基づいて優先権を主張する。これまでに言及したおよびこれから先に言及する全ての特許および特許出願は、全ての目的のために、参照して本明細書に組み込まれる。
【0003】
この出願は、2005年11月15日に出願された特許出願第11/273,985号(これは、2003年9月18日に出願された特許出願第10/666,318号の一部継続出願であり、現在「Patterned Reflective Optical Structures」という名称で2006年1月17日に第6,987,590号として発行されている)と、「Patterned Reflective Optical Structures」という名称の2005年4月20日に出願された米国特許仮出願第60/673,080号と、「Patterned Optical Structures With Enhanced Security Feature」という名称の2005年10月25日に出願された米国特許出願番号第60/729,907号と、に関係している。これらは全て、全ての目的のために、参照して本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
以下で使用されるクロマグラム(Chromagram)という用語は、特殊効果コーティングまたは層の付いたパターン形成基板または窓付き基板を意味し、この特殊効果コーティングまたは層は、パターン形成基板または窓付き基板によって支持されるか、パターン形成基板または窓付き基板を支持している。様々な設計クロマグラムが、米国特許出願公開第20060285184号に記載され、また、セキュリティ・デバイスとして、または、製品のセキュリティを高めるために、および製品の美的魅力のために、使用されている。
【0005】
クロマグラムの1つの型は、ホログラムまたは回折格子などの表面浮彫パターンの効果を示す光学構造であり、この構造は、英数字、バー・コード、または図または絵画設計のようなパターンを有し、さらにそのようなパターンのまわりの領域に追加の光学効果を有している。そのような構造は、以下で‘496と呼ばれる、2006年4月13日に公開されたArgoitia他の名前の米国特許出願公開第20060077496号に記載されている。他のクロマグラム型構造が、Phillips他の名前の米国特許出願第20050128543号に記載されている。’496では、開いた窓領域を有するパターン形成基板に、その窓を通して見ることができる光学的可変(OV)コーティングまたは光学的可変インクが塗付されている。全ての意図および目的のために、これまでに説明したおよびこれから先に説明する全ての文献は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0006】
「パターン形成」層という用語の使用によって、平面でもよくまたは表面浮彫パターンがあってもよい基板の上に、所望の「パターン」または設計を形成するように、反射層、不透明層または部分透過層が塗付されることを意味する。限定しない例として、パターン形成反射層は、文字、数字、バー・コードおよび/または図または絵画設計の形で形成することができる。
【0007】
表面浮彫パターンの1つの型は、米国特許第5,314,767号、6,616,190号、および7,081,819号に記載されたデメタライズド(demet)・ホログラムである。ホログラムのセキュリティを高めるために、さらに、コンタクト・コピーが作られるのを防止するために、デメタライゼーションのプロセスによってホログラムを作る技術が開発された。ホログラフおよびデータを保護するために、デメタライズド・ホログラムおよびパッチがパスポートおよびIDカードで使用されている。
【0008】
限定されないが、本発明は、主に、フレークおよび/または着色剤を有する光学効果および、または磁気効果ホット・スタンプ接着剤で作られるクロマグラムの型に関する。これまで、2つの基板を互いに接着するために使用され、他方の基板を通して一方の基板を見ることができる場合の接着剤の望ましい品質は、接着剤が実質的に透明で、かつ必要な接着特性を有することであった。したがって、目標は、できるだけ透明でかつ屈折率が接着している基板に実質的に一致しているように「見える」接着剤を得て、それにより通過する光に実質的に影響を及ぼさないことであった。
【0009】
ホット・スタンプ転写箔は、紙、プラスチック膜およびそれどころか硬い基板のような様々な基板にイメージを付けるホット・スタンプ機械と一緒に設けられている。ホット・スタンプは、ドライ・プロセスである。イメージを基板にホット・スタンプする1つの市販の機械は、Malahide Design and Manufacturing Inc.で製造されたMalahide E4−PKである。この型の機械は、www.hotstamping.com.でインターネット上に示され、また説明されている。簡単には、ホット・スタンプ・プロセスで、型は加熱された板に取り付けられ、その板が負荷ロールのホット・スタンプ箔に押し付けられて、その箔を物品または基板に付ける。転写プロセスのロールは、本発明でも使用され得る。この場合、物品基板と接着剤(UVまたは熱活性化)は、ホット・スタンプ層の転写を物品基板に行うようにニップで結び合わされる。
【0010】
イメージは、一般に、所望のイメージが切り込まれた金属またはシリコーン・ゴムの型を利用して形成される。この型は、ホット・スタンプ機械に設置され、熱と圧力を組み合わせて利用してイメージをホット・スタンプ箔に押し込むために使用される。箔の裏側は、一般に、乾熱で活性化される熱硬化接着剤、例えばアクリラート・ベースの接着剤を塗付されている。熱を加えると、接着剤は、加熱されたイメージの領域で粘着性になり、紙またはプラスチック基板に付着する。
【0011】
ホット・スタンプは、カリフォルニア州サンタローザのFlex Products Inc.のRoger Phillipsの名前の米国特許第5,002、312号、5,059,245号、5,135,812号、5,171,363号、5,186,787号、5,279,657号および7,005,178号に記載され、または言及されている。ホット・スタンプ・プロセスの追加の詳細は、Modern Plastics Encyclopedia、1979〜1980年、の440〜445ページに見出すことができる。
【0012】
前述の米国特許第5,059,245号には、基板上に光学コーティングを形成することが記載され、一実施形態では光学コーティングは、ペイントまたはインクとしてのキャリア中に応用された光学的可変フレークを含み、このキャリアが次に基板上で乾燥または硬化される。
【0013】
接着剤中の光学効果フレークは、1つまたは複数の所定の光学特性を有することができる。例えば、フレークは、入射光の角度の変化と共に変化する光学的に可変な色であってもよく、またはフレークは、回折性であってもよく、隠し記号をその中または上に有してもよく、またはフレークは、単に反射性または吸収性であってもよい。いくつかの例では、光学効果フレークは、複数の光学効果の組合せであってもよい。例えば、所望の効果に依存して、回折性で色シフト性であってもよく、または回折性で反射性、または回折性で高吸収性であってもよい。さらに、異なる光学効果を有するフレークが、所望の比で混合されてもよい。加えることができる顔料には、干渉に基づいたもの、例えば、視角とともに色シフトするものを含んだマイカ・ベースの顔料、ファブリ・ペロ型顔料、液晶型顔料、金およびニッケルのような非色シフト顔料、および他の金属フレークがある。チャーム(charm)またはタガント(taggant)として知られている隠し小板および他の形の粒子を含んだ染料および/または他の顔料は、接着剤に加えられて、干渉顔料および/または回折顔料の色を変えることができる。隠しフレークの例には、米国特許出願公開第2006/0035080号で教示されるようなチャームまたはタガント、米国特許出願公開第20060035080号に開示されたような形の顔料、磁気フレーク、可視光を生成するように標準UVで活性化される蛍光顔料、または可視光を生成するようにUVで活性化される特殊反ストークス材料がある。
【0014】
今まで、光学的可変フレークを含むインク被覆基板のような材料層が他の基板または物体にホット・スタンプされる場合、適切な熱または圧力を加えることによって材料層を基板または物体に付着させるために、ホット・スタンプ前に、一般に厚さ2〜20ミクロンの熱活性化接着剤層が、その基板または物体に塗られた。
【0015】
図1aおよび1bに関して、米国特許第7,029,745号は、ホット・スタンプ・プロセスによってセキュリティ物品30のようなセキュリティ物品をキャリア基板66に付ける方法を教示している。図1aはセキュリティ物品30を示し、剥離層62が、干渉パターンの形成されたアクリル樹脂コーティングなどの光透過基板24の一方の側に形成されている。剥離層62によって、ホット・スタンプ・プロセス中に、基板24、吸収層18、光干渉パターン15を有する誘電体層20、および反射層22を含んだセキュリティ物品30をキャリア構造64から剥離することができるようになる。
【0016】
図1bに示すように、セキュリティ物品30が、キャリア基板66のような物体にホット・スタンプによって付着されたとき、剥離層62およびキャリア基板64は取り除かれて、セキュリティ物品30は接着剤層68によってキャリア基板66に結合される。時には、剥離層は基板62と共にとどまっている。加熱された金属スタンプ(図示されない)がキャリア構造64と接触するときに、接着剤層68のキャリア基板66への接着が起こる。加熱金属スタンプは、より効果的にキャリア基板66に接着するように接着剤層68を加熱しながら、同時に、接着剤層68をキャリア基板に押し付ける。さらに、加熱金属スタンプは、剥離層62を柔らかくして、後で捨てられるキャリア構造64からセキュリティ物品を剥離するのを手助けする。セキュリティ物品30がいったんキャリア基板66に取り付けられると、セキュリティ物品30で作られたイメージは、基板24から光学コーティング16の方に見える。
【0017】
ホット・スタンプの分野において、熱および圧力を加えて箔を同じ材料および別の材料に必要に応じて接着するために、複数の市販の接着剤が開発されている。これらの熱活性化接着剤は、意図された機能を果たすが、現在非常に有用であると感じられる追加の機能を実現していない。
【0018】
例えば、本発明の発明者が発見したことであるが、これらの乾熱活性化接着剤は、基板に塗ることができ、さらに、磁気フレーク、磁気整列可能フレーク、色シフト特性を有する磁気フレーク、色シフト・フレーク、色切換フレーク、回折フレークおよび/またはチャームとしても知られている表示を行う隠しフレークなどの特殊光学効果フレークと共に、接着剤に予め加えるか、予め混合することができる。
【特許文献1】米国特許第6,987,590号
【特許文献2】米国特許出願公開第20060285184号
【特許文献3】米国特許出願公開第20060077496号
【特許文献4】米国特許出願第20050128543号
【特許文献5】米国特許第5,314,767号
【特許文献6】米国特許第6,616,190号
【特許文献7】米国特許第7,081,819号
【特許文献8】米国特許第5,002、312号
【特許文献9】米国特許第5,059,245号
【特許文献10】米国特許第5,135,812号
【特許文献11】米国特許第5,171,363号
【特許文献12】米国特許第5,186,787号
【特許文献13】米国特許第5,279,657号
【特許文献14】米国特許第7,005,178号
【特許文献15】米国特許出願公開第2006/0035080号
【特許文献16】米国特許第7,029,745号
【非特許文献1】Modern Plastics Encyclopedia、1979〜1980年、440〜445ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、特殊効果フレークを含み、かつ接着剤が接着している1つまたは複数の層を通してフレークを見ることができるホット・スタンプ接着剤、を提供することである。光学的可変顔料がホット・スタンプ接着剤に加えられたとき許容可能な接着が生じることは予期されていなかった。また、たとえホット・スタンプ転写を行うために平らな型が使用されても、接着剤が1つのパターンで印刷されて、パターン形成される転写に悪影響を及ぼすかもしれない。ホット・スタンプの型にイメージがあるのではなく接着剤を印刷することで、箔型転写でしばしば見られる「フリンジ」のないより高い鮮明度のより優れた転写イメージが生じる。フリンジは、例えば、紙の表面にホット・スタンプされたときの箔イメージのぎざぎざの縁を意味する。文字「A」のホット・スタンプ転写において、文字「A」の三角形が箔で覆われる問題がしばしば明らかになる。
【0020】
本発明の目的は、2つの物体を互いに接着するホット・スタンプ接着剤に特殊効果フレークを加えることによって個別の特殊効果層を設けることが不要になるクロマグラムを提供することである。これは、製品のために、製品を製造し易くし、かつ製造コストをさげる。
【0021】
本発明の目的は、基板を他の基板または物体にホット・スタンプすることであり、光学効果フレークを含む光学効果接着剤は、ただ接着剤として使用されるだけである。
【0022】
セキュリティ・スレッドはかなり前から知られている。Leeの米国特許第4,186,943号には、銀行券の紙の中に含まれた窓付きセキュリティ・スレッドが記載されている。Leeは、同じ反射および透過色および色シフトが紙の両側から紙基板の細長い窓を通して見えるように、対称設計になった完全誘電体光学スタックに二色性コーティングを使用している。一実施形態では、スレッドをよりはっきり見えるようにするために、埋め込まれたセキュリティ・スレッドの様々な点で紙が取り除かれている。さらに、都合の悪いことには、模造品は、‘943に見られるのと同様な色シフトおよび反射透過特性を示す重合体膜の数百の交互になる層で作られた市販の透明膜を、包装分野から自由に手に入れることができる。http://www.ptonline.com/articles/200603fal.html.を参照されたい。これによって、完全誘電体に基づいた箔は模造品防止システムとして疑わしくなる。
【0023】
Lazzeriniによる米国特許出願公開第20060255586号は、連続したアルミニウム金属層の付いた厚さの変化しているホログラフ領域で構成されたセキュリティ・デバイスを記載している。Lazzeriniによる同時出願中のWO2004014665号では、堆積アルミニウムを「薄く」する方法は、酸物質の攻撃からアルミニウムを守るように構成された透明インクでアルミニウムのいくつかの領域が保護された後で、化学エッチングすることによるものである。‘586特許出願の項目3の「A」部分で、アルミニウムは、1.8の光学濃度、1.6%の透過から、0.7の光学濃度すなわち約20%の透過まで薄くされる。言い換えると、アルミニウムは、「A」部分以外の領域では不透明であり、「A」領域だけで半透明である。ホログラフ素子と位置合せした磁気素子を使用することは、言及されているが、磁気素子の性質を示していない。本発明の他のものは、ポリエチレン・テレフタレート(PET)の裏打ち層と連続したアルミニウム金属層の間に色シフト・インクを使用する。色シフト・インクの型は、定義されていない。角度顔料を用いたマイカ・ベースの透明色シフト、または液晶色シフト・インクであるかもしれない。これらは両方とも透明である。本発明では、顔料は不透明である。いずれにしても、Lazzeriniは、光学的可変接着剤(OVA)に基づいた色シフト材料を教示せず、セキュリティ・スレッドの両側からの色シフトを有しないし、隠しチャームを有しないし、ホログラフ領域にdemet部分を有しないし、さらに、色シフト顔料の中に閉じ込められた磁気素子を有しない。
【0024】
Holmes他の米国特許第7,054,042号は、以下で‘042と呼ばれ、薄膜色シフタが下にあるdemetホログラムを使用するデバイスを開示した。薄膜干渉フィルタの使用には、色制御の点で大きな欠点がある。というのは、使用される方法、真空堆積方法は、特に、その方法を商業的に立ち行くものにするような動作速度のものは、誘電体層の厚さの誤差がせいぜい+/−2%であるからである。’042で述べられるようにファブリ・ペロ構造の場合、一般的な設計は、Al不透明/低屈折率すなわちMgF2/3nmCr吸収体であろう。550nmの4QW光学厚さに対して2%の変化の場合、この厚さの変化は27ユニットのデルタE色になり、550nmの6QW光学厚さでは31のデルタE色になる。実際的な見地から、この色変化で、純正製品と問題のある模造品とは区別される。真空プロセスを用いて箔の色を改善する唯一の可能性は、大規模な編集を行うことであり、これは、ただ高価な製品につながるだけである。
【0025】
Uyamaの米国特許第5,700,550号は、完全誘電体光学スタックをホログラフ形成層に使用することを教示し、これが行う色の制御は、‘042よりもずっと少ない。というのは、Uyamaによって開示された構造は、ZnSとMgF2またはTiO2とSiO2の交互になる5層を有しているからである。各層は、ずっと大きな色変化をもたらすかもしれない2%の変化を受け易い。また、Uyamaは、デバイスが黒い背景に置かれることを必要とする。そうでなく白い基板に置かれると、デバイスの透過性のために生じる光ビームは、基板から逆にデバイスを通して反射する光を干渉スタックからの反射光ビームと組み合わせて再び白色光を生じる。たとえ基板(すなわち、紙幣用紙)が着色されていても、光再結合がもたらす彩度は低いだろう。
【0026】
銀行券または他の紙の文書またはそれどころかプラスチックの文書用のスレッドの所望の特性を有する新しいセキュリティ・デバイスが、最小厚さを維持しながら、目に見える特徴および隠し特徴並びにデバイスの両側の耐久性用保護のほかに、高品質の色制御で製造することができる模造品阻止の層状システムを有するように、従来技術の欠点を無くすることが、本発明の目的である。したがって、対処される問題は、容易に組み立てることができる高度な特徴を有する新しいセキュリティ・スレッドを提供することである。この問題は、記憶することができ、機械解析または犯罪科学解析用の特異な色シフトおよび隠し特徴を有する検査官用セキュリティ特徴を与えることによって、解決される。
【0027】
本発明の目的は、光学的可変接着剤(OVA)を使用して簡略多層セキュリティ・デバイスを提供することである。
【0028】
本発明の目的は、異なる側から見たとき異なる光学効果を示す薄い非対称セキュリティ・スレッドを提供することである。
【0029】
本発明の他の特徴は、高彩度および高い色制御を有する薄いセキュリティ・デバイスを提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、demetホログラムおよび隠しタガントを備える薄いセキュリティ・スレッドを提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、多層セキュリティ特徴を有するホット・スタンプ・イメージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明に従って、光学効果を実現する構造が提供される。本構造は、第1の基板と、接着剤だけで第1の基板に付着された第2の基板と、を備え、この接着剤は、第1の基板を通して検出可能な光学効果を実現する複数の粒子がその中または上に分散されているエネルギー活性化結合剤を、備えている。
【0033】
理解すべきことであるが、第2の基板は、例えばホット・スタンプによって、第1の基板を付けることができるどんな物体であってもよい。
【0034】
本発明の他の態様に従って、光学効果を実現する物品を形成する方法が提供される。本方法は、
a)少なくとも第1の光学効果を有する第1の基板を用意するステップと、
b)光学効果粒子をその中または上に有するキャリア・ビヒクルを第1の基板に塗付するステップと、ここでこの粒子は、第1の基板を通して検出可能な第2の光学効果を実現するものであり、
c)ホット・スタンプにおいてキャリア・ビヒクルがただ接着剤としてだけ使用されるように、塗布された第1の基板を第2の基板または物品にホット・スタンプするステップと、を含む。
【0035】
これから、本発明の例示の実施形態を図面に関連して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
この出願の目的のために、「エネルギー活性化接着剤」または「エネルギー活性化結合剤」という用語は、硬化のためにエネルギー源を必要とする接着用物質を意味する。エネルギー活性化接着剤は、ホット・スタンプ接着剤、UV活性化接着剤、熱可塑性および熱硬化性接着剤、塗料ベースの重合合成物、ワニス、および染色合成物があるが、これらに限定されない。例として、接着剤は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリビニル・アルコール、ポリビニル・アセテート、およびポリウレタンのグループから選択される。
【0037】
接着剤を活性化する方法には、ホット・スタンプ、UV硬化、加熱または電子ビームの適用がある。簡略のため、ことによると特定のフレークを含んだエネルギー活性化接着剤は、混乱をもたらさない場合に以下で「接着剤」と呼ばれる。
【0038】
これまで説明したように、本発明の背景では、ホット・スタンプの分野、より詳細には、1つの光学コーティングまたは基板を他のものにホット・スタンプすることは、よく知られている。例えば、イメージ、シンボルマーク、または他の表示の付いた塗布された基板が、宝くじ券、パスポート、銀行券、運転免許証、ポーカ・チップ、および様々な他の物品にホット・スタンプされ、また基板はよく知られている。
【0039】
市販のホット・スタンプ接着剤は、意図された機能を果たすことが知られているが、本発明の発明者は、光学的可変フレークを含むいくつかの硬化塗料がホット・スタンプ接着剤として適切に役に立つことを運よく発見した。留意されたいことであるが、その塗料はもはや塗料ではなく今や接着剤であり、それによって、光学的可変特性を有する塗料層に接着材料層を追加する必要またはステップが不要になる。さらに、特殊効果フレークをホット・スタンプ接着剤に含むという追加の利点のために、高度な構造が実現される。パターン形成接着剤層を有する構造および異なる光学効果を実現する2つ以上の接着剤層を備える構造、例えば一方の層にチャームを他方にOVPを有する構造だけでなく、全体的により薄い構造もまた、結果的にこの方法で得られる可能性がある。
【0040】
接着剤は、パターンに印刷することができ、または全面にフラッド・コート(flood coat)することができる。パターン形成された場合、製品を完全な姿で取り出すことが物理的にできないので、製品はいっそう改竄防止になる。溶剤を使用して接着剤を溶かしてデバイスを除去しようとすることも有害であろう。というのは、溶剤はハードコート/剥離も腐食し、これによって、今度はデバイスが破壊され、改竄が見て直ぐ分かるようになるからである。
【0041】
フレークは大きさが相当に変化してもよいが、好ましくは、直径が、または表面の端から端までが、少なくとも5ミクロンである。フレークは、光学的可変フレーク、色シフト・フレーク、薄膜光干渉フレーク、回折フレーク、反射フレーク、光吸収フレーク、隠しフレーク、記号または表示の付いたフレーク、形が一様なフレーク、磁気フレーク、および、薄膜金属・誘電体、完全誘電体、マイカ・ベースの顔料、液晶顔料などの色シフト顔料であってもよい。
【0042】
光学的可変フレーク、回折フレーク、吸収フレーク、または反射フレーク、または隠し特徴のような他の特性を有するフレークのようなフレーク材料を、従来のホット・スタンプ接着剤に硬化前に直接加えて、接着と追加フレークが示す光学効果との両方の利点を実現することができることを、本発明者は、また、発見した。
【0043】
本出願で説明するデバイスのいくつかは、光透過基板または本質的に透明な基板を備え、この基板は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、方向性ポリプロピレン(OPP)または他の適切なプラスチック材料で作ることができる。例として、PET層の厚さは、6〜25ミクロンである。理解すべきことであるが、デバイスの説明がただ1つの基板を含むとき、第2の基板は、第1の基板を付けることができる保護塗膜、剥離塗膜、または任意の文書または物体、例として紙の文書または独立したプラスチック膜、であってもよい。
【0044】
干渉スタックとも呼ばれる光学スタックは、反射層、吸収体、および反射層と吸収体の間の誘電体層を含むが、このことは当技術分野で知られている。反射層は、20%を超える反射率を有する任意の金属、好ましくはアルミニウムで作ることができる。例として、誘電体層は、MgFまたは、当技術分野で知られているような他の透明材料で作られる。
【0045】
吸収体は、n/kの比が約1である灰色金属、例えばCr、TiまたはNiであってもよく、ここでnは屈折率の実数部でありkは反射率の虚数部であり、または、TiNのような可視スペクトルにわたって非選択性の吸収体であってもよく、または、R.Domnick他による「Influence of Nanosized Metal Clusters on the Generation of Strong Colors and Controlling of their Properties through Physical Vapor Deposition (PVD)」(49th Annual Techinical Conference Proceedings(2006)、Society of Vacuum Coaters)という題名の論文に述べられているような、サーメットであってもよい。この論文は、参照して本明細書に組み込まれる。例として、サーメット材料は、誘電体マトリック中に銀アイランドを含む。
【0046】
本出願で開示されるデバイスのいくつかは回折構造を備え、この回折構造は、ホログラム、デメタライズド・ホログラム、キネグラム、およびゼロ次回折構造または単純回折格子構造を含んだどんな浮彫であってもよい。エンボス加工可能な樹脂は、G型PET、ポリカーボネート、ポリビニル・クロライド、またはポリメタクリレートのような材料で作ることができる。エンボス加工可能層は、ハードコート/剥離層と組み合わせることができる。エンボス加工は、パターンに形成されてもよく、または連続的であってもよい。demet層は、デメタライゼーションでパターンに形成されたAl、Cu、Niおよび他の金属および金属合金で作ることができる。化学エッチングまたは真空中でのオイル・アブレーション(oil ablation)(両方とも浮彫イメージと位置合せして行われる)などの様々な技術を使用して金属層をパターン形成することができる。高屈折率層は、ZnS、TiO2、ZrO2、その他で作ることができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、光学的可変効果を少し変えるために、染料粒子が、接着剤に加えられる。場合によっては、接着剤層は透明または半透明であり、顔料粒子の濃度は、セキュリティ物品が印刷文書にホット・スタンプされたとき文書に印刷されたしるしがセキュリティ物品を通して見えるように調整される。
【0048】
本発明の一実施形態では、無色反射フレークが接着剤に加えられ、その結果、フレークは、接着剤中の、または接着剤として使用された塗料またはインク中の染料の色を反射して、色がついているように見える。インクは、好ましくは、フレークを含むアクリルまたはウレタン・キャリアで作られる。
【0049】
本発明の他の実施形態は、光学効果を実現する粒子を含む接着剤の単一層である。例として、粒子は、色シフト・フレークである。この構造を使用して、2つの物体を互いに接合することができ、その物体の一方は、接着剤で実現される光学効果を目に見えるようにするために光透過性である。
【0050】
本発明の他の実施形態では、同時継続米国特許出願公開第20060035080号に記載されているように、記号またはテキストの付いた反射フレークが接着剤に加えられる。これらの記号は、反射光を使用して顕微鏡で見たとき、着色された背景によく見える。
【0051】
本発明の他の実施形態では、セキュリティ・デバイスは、2つの接着剤層を備える。接着剤の第1の層は染料が無く反射フレークを含んでいる。接着剤の第2の層は、染料で着色されているので、その結果、セキュリティ・デバイスがどちらの側から見られるかに依存して、染料は第1の層の反射率を弱めるか、または高めるようになる。
【0052】
本発明の他の実施形態では、UVで活性化される蛍光染料またはIR活性化されたとき例えば2光子吸収によって蛍光を発するアップ・コンバージョン顔料が、隠し特徴として接着剤に加えられる。ナノ粒子または透明導電性粒子、例えばインジウム錫酸化物(ITO)フレークが、隠し特徴として接着剤に加えられてもよい。
【0053】
本発明の余り好ましくない実施例では、最初に接着剤が基板に塗付され、次に、光学的可変顔料(OVP)粒子が接着剤に加えられ、例えば、空気ジェットによって接着剤表面に振り掛けられまたはばら撒かれ、場合によってはこれに続いて、OVPの半透明層が転写製品で見えるようにもっと多くの接着剤が加えられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、イメージが形成されたスタンピング型を利用することができるが、代わりに、デメタライズド・ホログラムの形で前にイメージが作られてもよい。この例では、平らなホット・スタンプ型が、イメージを転写するために使用される。転写イメージは、平らなホット型または接着剤の面積で定まるような正方形または他の形であってもよい。
【0055】
デメタライズド(demet)・ホログラムに接着剤をホット・スタンプする代替えは、OVP粒子を含むUV活性化接着剤を印刷し、demetホログラムを含む積層シートを接着剤の上に載せ、次に、透明裏当てを通してUV光または電子ビーム放射を接着シートに当てるか、または電子ビーム硬化ステップを使用してdemetホログラムを通して電子ビーム放射を当てることによって、接着剤を硬化させることである。UVは、非demet領域の幅が非常に狭くなければ(2ミクロン未満と推定される)、demetでないホログラムの領域を通して作用しない。その結果、UVは、ある角度で入射して接着剤を硬化することができる。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に従った構造を示す。エンボス加工されたホログラム層100の上に、Al層102がある。不透明Alコーティング102は、窓または隙間を形成するようにパターン形成される。不透明Al領域102およびその間の隙間に、光学的可変フレーク105を含む光学的可変接着剤104が塗付される。光学的可変フレーク105は、視角につれて色をシフトする磁気顔料フレークであってもよい。樹脂層106が、浮彫表面100のエンボス加工を可能にするように形成され、さらに、剥離(または、ハードコート)層108が、除去可能なキャリア基板110、一般に厚さが10〜25ミクロンのPETの上に塗付される。他の実施形態では、剥離層とハードコート/樹脂層は、1つの層に結合される。
【0057】
図3は、紙または厚紙の基板112にホット・スタンプされた図2の構造を示す。PET層110を除去し、ハードコート108を通し、ホログラフ・パターン形成Al層を通して、構造を上から見下ろしたとき、窓を通して色シフト・コーティングが見える。この構造を特に理想的なものにしているのは、複数の特殊効果顔料を接着剤材料中で組み合わせて追加の厚い色シフト層の必要を無くすることによって得られる相乗効果である。全体的な厚さは、20ミクロン未満、一般に約10ミクロンである。
【0058】
図4は、中国銀行券の一部分の写真であり、図2に示す構造が銀行券用紙にホット・スタンプされている。この構造は、フランスのパリのホログラム産業によって作られたホログラムを含み、色シフト効果を実現している。すなわち、異なる角度から異なる色を見ることができる。例えば、正方形の背景の色は、矢印301で指し示された藍色から、矢印302のすみれ色を経て、矢印303で指し示された、燃えるようなピンク色に変化する。
【0059】
低粘度配合接着剤ではフレークが滑らかな基板に速く沈殿するので、ホット・スタンプ(HS)製品は、インク対応物よりも彩度が高い。印刷OVPの彩度は比較的低い。というのは、アプリケータから出たインクの側から人が見るからである。一続きのインクが切れたとき、インクの塊は、プラスチック基板とインクの間の界面に比べて比較的粗い表面に流れ出す。これが、HSの彩度が、印刷面よりも優れている理由である。
【0060】
図4に示すデバイスには、少なくとも5つのセキュリティ要素がある。すなわち、1)二重イメージを有するホログラム。ホログラムの中心のある数「25」は1つの角度で現れるが、他の角度では消える。2)容易に記憶されるミロのビーナス像。3)ホログラムは、レース・パターンのデメタライズドAl層である。4)色シフト。および5)×100以上の倍率で見える隠しイメージ。
【0061】
本発明の代替の実施形態が図5に示され、光学的可変接着剤層104とパターン形成Al層102の間に高屈折率層114が塗布されている。ZnS、TiO2またはZrO2のような材料の高屈折率コーティング114が、デメタライズド・ホログラフ膜の上に塗布されている。この例では、高屈折率層114のために、回折すなわちホログラフ面100は、光学的可変接着剤104と同時に見えるようになる。高屈折率は、接着剤と樹脂層のエンボス加工との間の光学指数整合を妨げる。
【0062】
代替の実施形態が図6に示され、光学的可変接着剤104は、転写デバイスが改竄防止になるようにアルミニウム102の窓の間に印刷されている。デバイスを除去しようとすると、接着剤の無いことで画定された領域および接着剤のあることで画定された領域でデバイスはばらばらに壊れる。
【0063】
図7〜9に示す本発明の他の実施形態に従って、デバイスは、基板上のパターン形成された剥離層108、基板に対して高付着力を有する樹脂層106を有し、demetアルミニウム層102の窓および窓でないところ全体にわたって、フレーク105を含むOVP接着剤104が塗布されている。図7は、保護を必要とするキャリア66にホット・スタンプする前のデバイスを示している。工程で、デバイスは図8に示すように表面66に付着され、接着剤104がホット・スタンプで活性化される。誰かがデバイスをキャリアから引き離そうとすると、剥離層108はパターンだけを剥離して、逆パターンを基板66に残す。そのような試みの結果が、図9に示され、接着剤の壊れてぎざぎざになった破片を矢印120が指している。実質上、このデバイスは改竄防止セキュリティ・ラベルである。
【0064】
本発明の以下の実施形態は、2つの異なる光学的に可変なエネルギー活性化接着剤層を有し少なくとも2つの異なる光学効果を実現するクロマグラムであり、接着剤の一方は、当技術分野でタガントまたはタゲント(taggent)と呼ばれる隠しタガント・フレークを含むことができる。
【0065】
図10aに示す実施形態では、クロマグラムは、デメタライズドであってもよいホログラム、または高屈折率層、または他の浮彫型表面、および2つの別個の層で構成された接着剤を備える。ホット・スタンプ接着剤層の1つ、層119は、隠し材料(この例では隠しフレーク118)を含み、他方のホット・スタンプ接着剤104は光学的可変顔料105を含む。本発明は、高価な隠し材料を効率的に使用するためのビヒクルを提供する。隠しフレーク118の例には、参照して本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0035080号に教示されているようなチャームまたはタガント、成形顔料、磁気フレーク、可視光を生成するように標準UVで活性化される蛍光顔料、または可視光を生成するようにIRで活性化される特殊反ストークス材料があるが、これらに限定されない。隠し材料は、薄膜金属・誘電体、完全誘電体、マイカ・ベースの顔料、液晶顔料などの色シフト顔料を含む接着剤104の層で覆われた接着剤の薄い層119の中に配置されている。隠し材料は、通常の条件の下では目に見えないが、例えば、UV光で、または顕微鏡で、または、磁気検出器または赤外検出器によって、容易に検出することができる。文書または他の保護を必要とする物体にクロマグラムを塗布するとき、12〜25ミクロン、一般に19ミクロンの厚さを有するPET層は、捨てられて、厚さがせいぜい20ミクロンの非常に薄いセキュリティ・デバイスが文書に残る。
【0066】
本発明の他の実施形態が図11に示されている。PET基板上のパターン形成されたAl層102は、光学的可変接着剤を塗布された他のPET基板に積層されている。アルミニウム・パターンは、テキスト、記号、バー・コードのイメージ、または、それどころか写真イメージであってもよい。アルミニウムは、demetプロセス(真空機械でのフレキソ印刷イメージのレーザ・アブレーション、化学エッチング、またはオイル・アブレーション)によってパターンに形成される。オイル・アブレーション・プロセスを使用して生成される写真イメージの場合、70ミクロンまでの分解能

を実現することができる。アルミニウムのパターン形成は一プロセス・ステップで、真空中で、インラインで行われるので、オイル・アブレーションは、最上のdemet方法である。光学的可変接着剤は、1つの接着剤層104が色シフト顔料105を含みもう1つの接着剤層119が隠し材料118を含む2つの個別接着剤層のうちの少なくとも1つを備える。これはセキュリティ・スレッドを形成する。この場合、PET層の厚さは各々約5〜10ミクロンであるので、全体的な厚さは20ミクロン以下である。銀行券のスタックで、スタックの一端が他端よりも厚くないために、この厚さ制限は、セキュリティ・スレッドにとって必要である。
【0067】
図10bに示される本発明の他の実施形態では、2つの透明基板を互いに積層するために、2塗膜プロセスが利用される。最初に、demetホログラムは、光学的可変接着剤の連続した層を塗布される。すなわち、磁性か非磁性かどちらかの光学的可変接着剤の第1の塗膜130および異なる光学的可変接着剤の第2の塗膜131を塗布される。例として、第1のコーティングは色を金色から緑色にシフトし、第2のコーティングは、青色から赤色にシフトする。そのとき、透明または半透明の基板110は、高温ニップ・ローラによって接着剤130に積層される。その後で、ホログラム(図示しない)を支持する第2の基板が、除去されて、保護層106が残る。最終製品は、どちら側から見られるかに依存した異なる色シフト効果を有する。さらに他の実施形態では、コーティングの一方は、非シフトであり、かつ/または隠し特徴を含む。
【0068】
図11を参照して、本発明の追加の実施形態は、色シフト・セキュリティ・スレッドを生成するように2個の透明PETを積層するために、光学的可変接着剤が使用される構造である。そのような構造の一方の側から見ると、図11では上から下に見ると、隠しイメージ例えば蛍光のほかに、demetホログラムおよび色シフトで形成されたイメージが見えるだろう。他方の側から見ると、不透明顔料が高濃度に使用されていれば、色シフトだけが見えるだろう。例えば、全固形物すなわち顔料に接着剤を加えたものの中で顔料重量が10%を超える濃度である干渉ベースの金属・誘電体顔料は、そのような効果を引き起こす。この実施形態では、剥離層は無く、パターン形成金属層および隠しイメージは随意である。
【0069】
本発明の一実施形態では、色シフト・フレークを含む接着剤は、薄くて光学的可変デバイス(OVD)の特性を有するセキュリティ・スレッドを作るために、積層接着剤として使用される。例として、厚さ6〜10ミクロンのウェブは、OV粒子を含む熱硬化接着剤または湿気硬化ウレタン接着剤の光学的可変接着剤(OVA)を塗付され、さらに、高温ニップで他の厚さ6〜10ミクロンのウェブに積層されて、積層シートを生じる。このシートは、次に、幅が2〜5mmのセキュリティ・リボンに細長く切られる。この幅は、通貨に使用される一般的な幅である。基本的に、第1の塗付工程中に、および再び次のニップ・プロセス中に、接着剤が低粘性であるために、このシートは合成箔になる。両方のプロセスは、フレークをウェブ表面に対して平らに並べる傾向がある。
【0070】
本発明の一実施形態では、光学的可変接着剤の色を増すか抑制するために染料が加えられた、例えばPETで作られた透明基板が、基板上に配置され、そして、印刷情報が基板層に加えられる。場合によって、demetクロマグラムは、接着剤層にロール締め付けされる。
【0071】
本発明の他の実施形態に従って、図12a示す構造には、浮彫100をエンボス加工された樹脂層106があるが、剥離層が無い。浮彫100は、demetアルミニウム102および異なるフレーク105および118を含む2層の接着剤104および119で覆われている。例として、フレーク119は、隠しフレーク、タガントであり、フレーク105は色シフト効果を実現するためのものである。代わりに、基板110自体が、エンボス加工可能な層であってもよい。G型PET、ポリカーボネート、ポリビニル・クロライド、またはポリメタクリレートのような材料が、エンボス加工可能基板110に適している。この構造はセキュリティ・ラベルとして有用であり、そのため、層104は箱またはパッケージの外側に付着されるだろう。
【0072】
本発明の一実施形態では、demetホログラムは、最初に、接着剤のチャームを、続いてOVPを含む接着剤の追加のヒットを塗付される。この二重ヒット方法は、当技術分野で知られている方法よりも少ないチャームを使用し、かつチャームをいっそう良く見えるようにする。ここで、チャームは、光学的可変インク媒体全体に配列され、チャームの多くは、上塗りOVP不透明粒子によって遮蔽されている。好ましくは、OVインクは、アクリル・キャリアまたはウレタン・キャリアを有する。
【0073】
本発明の一実施形態では、第1の接着剤層は不連続である。例として、比較的低粘性の接着剤キャリアの第1の薄い層が、点の形で基板に印刷される。このキャリアは、高密度のチャームまたは他のフレークを含み、他の光学効果を実現するより高価でない第2の接着剤層で覆われている。
【0074】
図13に示す他の実施形態では、構造は、PET層110、エンボス加工のある光学樹脂層106、demetAl層102、2つの接着剤層104および119、および保護ハードコート被覆層108で構成される。すなわち、保護ハードコート/剥離が第2のPETに取って代わる。このようにして、全セキュリティ・スレッド型構造は、全く薄くすることができ、例えば、9ミクロンのPETがエンボス加工またはエンボス加工用ラッカー/樹脂106の堆積に使用されても、15ミクロンである。例として、この構造は、demetホログラムの付いたPETまたはパターン形成されたAlの付いただけのPETを、色シフト材料および隠し材料を含む接着剤層で覆われた剥離可能PETに押し付けて加熱ニップを走らせることによって作ることができる。剥離可能PETは後で捨てられるが、ハードコート層108は、図示のように最終構造と共に残っている。代わりに、PET基板のdemetホログラムは、接着剤119および104用の2つの印刷ステーションおよび保護ハードコート用の印刷ステーションを含んだいくつかのグラビア印刷ステーションを通して、連続的に処理される。乾燥ステーションは、各印刷ステーション間に配置されている。
【0075】
以下で説明する実施形態では、OV箔は、ある領域にdemetホログラムを有し、OV接着剤が箔とdemetホログラムの間にある。
【0076】
図12bに示す他の実施形態では、光学的可変色シフト箔223を形成する反射層220a、誘電体層220bおよび吸収層220cが、第1の基板222に塗付されている。樹脂/ハードコート層であってもよい基板212に、ホログラムが形押しされ、さらに、光がホログラムを通過するのを防止するために、ホログラムと位置合せして高反射アルミニウムのパターン216が部分的に塗布される。結果として、基板212は、エンボス加工されdemetアルミニウムで覆われた1つまたは複数の領域100を有する。基板212は、場合によっては、エンボス加工されアルミニウムで覆われていない1つまたは複数の領域214を有する。樹脂層212は、場合によっては、不透明な表示219が印刷された保護光透過層218で覆われている。demetホログラムは、透明ホット・スタンプ接着剤230を使用して光学スタックにホット・スタンプされるか、高温ロール締め付けされる。
【0077】
図12dに示されるように、OV粒子を含む接着剤層は、図2dに示す他の実施形態に示されるように使用することができる。この実施形態は、多くの点で図12bに示すものと似ているが、好ましくはPETで作られキャリア234で色シフト・フレーク235が塗布された第1の基板、図12bと同じ上部構造にホット・スタンプされた接着剤またはアクリルまたはウレタン・ベースのインクを有する。インクが乾燥し硬化して色シフト・コーティングを形成した後で、ホット・スタンプ接着剤230が塗付され硬化される。クロマグラムを形成するために、ホット・スタンプ接着剤230を有する塗付された第1の基板は、図12bに示す実施形態と同じ層で覆われた第2の基板に接着される。
【0078】
図12cに示す他の実施形態では、補助の無い眼で見ることができない表示の付いた隠しフレーク245は、ホット・スタンプ接着剤240中に混合され、前の実施形態のように2つの構造を一緒に接着するために使用される。この実施形態では、両方の色シフト効果は、Alコーティングのない窓を通して見ることができ、そして、隠しフレーク245は、拡大して見ることができ、真贋鑑定の手段として役立つ。隠しフレークの代わりに、光学的可変フレークが、上から見たときOV箔の色が少し変わるように低濃度で使用されるかもしれない。
【0079】
この製造プロセスによって、第1および第2の基板を2つの異なる施設で製造し、後で一体化するようにロールで保管することができるようになる。
【0080】
本発明は、次の通りに実施するようにまとめられた。接着剤は、トルエンを加えて適切な強さに希釈され、インライン乾燥オーブンを備えた逆グラビア印刷コータを使用して塗付された。塗付された接着剤のレベルは、1.5〜10グラム/平方メートルから分布し、一方で、塗付された顔料は、隠し顔料が0.005から0.05グラム/平方メートルであり、色シフトOVP顔料が1〜10グラム/平方メートルであった。2つの光学的可変顔料が一連のデバイスのために選ばれた。すなわち、赤から緑の2周期スタックすなわちAb/D/Ab/D/R/D/Ab/D/Abと、青から赤の1周期光学スタックすなわちAb/D/R/D/Ab。ここで、AbはCrの吸収体、DはMgFの誘電体、およびRはアルミニウムの反射板である。2つの異なる隠しチャームが使用された。すなわち、中心に記号

のある10ミクロン角顔料と、中心に記号$のある30ミクロン角顔料である。プレス速度は、各々について20フィート/分であった。
【0081】
実験結果
光学的可変顔料(OVP)を市販のホット・スタンプ接着剤に混合して、実験が行われた。ホット・スタンプ接着剤の厚さは、3μmから10μmであり、好ましくは3〜7μmの範囲であった。
【0082】
ホット・スタンプ接着剤(HSA)コーティングに塗付された顔料の顔料堆積重量を光学濃度から推定する式が開発された。一般に、白い背景に対して約0.6の光学濃度を有するコーティングに近い光学性能を得るために、顔料/HSAの光学濃度は黒い背景に対して約0.3以上であるべきであることが分かった。
【0083】
試験実験でホット・メルト接着剤と着色ホット・メルト接着剤の一連の混合物が、剥離層およびクロマグラム層の付いた19μmポリエステル膜に塗付された。
【0084】
接着剤コーティングは、100フィートの乾燥オーブンの付いた10インチ幅溶剤ロール・コータで行われた。接着剤は、逆ロール・グラビア印刷で塗られた。
【0085】
顔料は、市販のホット・メルト接着剤に混合され、塗料槽に入れられるまで連続して攪拌された。低塗布量サンプルを得るように配合を希釈するために、トルエンが使用された。塗料槽に加えられる直前に接着剤から固形物パーセント用のサンプルが採られた。知られている面積の塗付されたウェブの重さを計り、溶剤で接着剤を除去し、ウェブを乾燥し、そして接着剤が除去された後のウェブの重さを計って、接着剤塗布量が得られた。塗付量ごとにウェブで3つのサンプルを採り、平均して、各サンプルの塗付量を得た。各サンプルが通った後で、アニロックス・ロール(Anilox roll)は洗浄された。75TH(Trihelical)アニロックス・ロールが大多数の実験に使用された。堆積接着剤の量を増やすために、2つのコーティングで55THアニロックス・ロールが使用された。
【0086】
最初の4つのコーティングは、2つの異なる希釈度で塗付された無着色塗布であった。これらのコーティングは、許容可能なホット・スタンプ転写の最適塗布量を決定するために使用された。当技術分野で知られていることであるが、接着剤の厚さは非常に広い範囲で変えることができる。例として、g/cmの測定値から計算された3μm〜3.5μmの無着色接着剤厚さを生じる条件が、最適接着剤コーティング厚さを生じるために選択された。
【0087】
塗付ウェブ・サンプルの各々のスタンプ性能および光学濃度を評価した。ホット・スタンプ転写は、全てのサンプルについて行われた。転写の最適スタンプ条件は、35mm×22mm長方形真鍮スタンプのKenson Hot Stamp Pressを使用して、100℃から125℃、停止時間0.5〜1.0秒であることが分かった。圧力は、評価サンプルのエンボス加工を最小限にするために、最低動作点に調整された。どのサンプルでもフリンジはほとんど観察されなかった。各サンプルのホット・スタンプ転写は、Lenetaカードの黒部分と白部分に行われた。転写は、100℃、停止時間1.0秒で行われた。各転写について黒背景および白背景全体にわたって反射率走査および色変化測定が行われた。
【0088】
ウェブの透明部分で光学濃度が測定された。
【0089】
表1および表2は、接着剤塗布ウェブの特性の概要を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
顔料含有接着剤の光学濃度(OD)は、ウェブに付いている顔料の量を推定するために使用された。この推定が、接着剤/顔料堆積の製造仕様を設定するための実行可能な分析手順として使用できるかどうかを決定するために、推定を行った。顔料と接着剤の比がどんな配合についても知られていると、接着剤コーティングの光学濃度は、透明なウェブに塗られた接着剤の量を決定するために使用されるかもしれない。濃い赤色の光学濃度対濃い赤色の単位面積当りの重量が図15にプロットされている。この依存性を使用して濃い赤色についての式を得た。光学濃度対1m当りの顔料のグラムの全てが、図14に示す別個のグラフにプロットされ、第2の式がこのデータ・セットから得られた。単位面積当りの顔料重量の差とは無関係に、これらの式は非常に似ている。顔料沈殿と、試験された4つの顔料のうちの3つの単位面積当りの顔料重量が似ていることとによって、全データ・セットにオフセットが存在しているようである。この要素のために、式は単位面積当り僅かにより大きな顔料重量を示す可能性がある。
【0093】
堆積顔料の量を推定するための結果として得られた式は、次式である。
【0094】
堆積顔料のグラム=0.1351465523379770×(塗付膜のOD)+0.0591124749175451
【0095】
1平方メートル当りに堆積された濃い赤色のグラム=0.135546396874281×(塗付膜のOD)+0.05。
【0096】
表3は、コーティングの測定光学濃度を、上の式を使用して計算された光学濃度値と比較する。表3に示された測定ODと計算ODの間の変化が比較的小さいので、顔料と接着剤の比が知られている場合に、接着剤コーティングの光学濃度を使用して、任意の透明なウェブに塗られた接着剤の量を決定することができる。
【0097】
【表3】

【0098】
図16および図17は、Lenetaカードの白部分および黒部分にホット・スタンプ転写されたイメージのそれぞれの反射率走査である。図16および図17に示すデータを吸収度に変換し、白部分に関係した吸収度の値を、黒部分に関係した対応する吸収度値から差し引いた。引いた吸収度データのグラフ表現が図18に示されている。黒吸収度値と白吸収度値の間の最小変化を示すサンプルが、最高性能を有する。最高性能のサンプルは、最高顔料添加を有するサンプルである。
【0099】
横方向ウェブ光学濃度測定値が図19に示されている。各ウェブを横切って5つの等間隔測定が行われた。データは、横方向コーティング厚さが、全ての着色接着剤の場合に+/−5%未満だけ変化することを示した。
【0100】
実験データの表4で、「チャームL」は低濃度のチャームを表し、「チャームH」は高濃度のチャームを表す。
【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
図20は、前に説明したようにホット・スタンプ転写接着剤プロセスによって塗られたセキュリティ・デバイスの写真である。ここで、

記号および$記号の付いた隠しフレークは、第2の接着剤層中の青から赤の色シフト・フレークの上の接着剤材料の中に配置されている。ここで、ポーカ・チップには、色シフト・フレークの背景にミロのビーナスのホログラフ・イメージがある。隠しフレークは、100倍の拡大で見ることができるが、拡大無しでは見えない。この実施形態は、特殊効果フレークを含む接着剤を使用して、色シフト、ホログラフ効果および隠し記号を組み合わせる。
【0104】
前述のチップを製造するために、ホログラム/OVP接着剤すなわちクロマグラムの2つのロールが同時に2つホット・スタンプされるように、接着剤被覆ロールは長さに沿って3.25インチ幅に細長く切られる。MaLahideホット・スタンプ機械、モデルE4−PKを使用して、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体で作られたポーカ・チップにクロマグラムを転写した。型はシリコーン・ゴムで作られ、約375°Fに設定された。
【0105】
1時間当り450〜500刷りの製造速度で、ほぼ1000回の刷りが連続して印刷された。指の爪でくずにしたとき、転写の付着は良好であり、フリンジはほとんど無かった。クロマグラム箔製造性能は、商用のホット・スタンプ箔と同等であった。実際、隠しイメージは、銀行券、ポーカ・チップの額面金額か、そのような価値に基づいた文書を発行する所持者または会社のシンボルマーク、記号かのどちらかを示すだろう。
【0106】
透明な接着剤に透明な隠し顔料および透明な色シフト顔料を使用する場合には、見る人が、デバイスを通して文書の印刷された情報を見ることができるように、追加のセキュリティ要素が取り込まれる。
【0107】
以下で説明する改良された「合成スレッド」の実施形態では、複数の光学効果が層状セキュリティ・システムによってもたらされる。
【0108】
図21を参照して、セキュリティ・スレッドは、基板110、反射層102b、光学的可変接着剤層130、チャームを含む別の接着剤層132、demetAl層102aで覆われた浮彫構造100、および樹脂層106を備える。基板110は、好ましくは、PETで作られているが、方向性ポリプロピレン(OPP)または他のプラスチック材料を使用することができる。また、基板は連続した色で染めることができ、またはパターンに形成されるかもしれない。
【0109】
反射層102bは、好ましくは、Alで作られ、層130で実現される光学効果が基板110および反射層102bを通して見えるように窓がある。場合によっては、層102bの窓は、文字または他のしるしとして形作られ、その結果、基板110を通して色シフト・テキストを見ることができるようになる。
【0110】
代わりに、パターン形成層102bが構造の内部にあるのではなく、基板110が外の方を向くパターン形成Al層を有し、一方で、PETの内部界面が層130と接触しているかもしれない。パターン形成反射Alがデバイスの外側に面する場合には、真空堆積SiO2のような追加の保護層または有機樹脂保護層が、反射材料の上に配置されてもよい。
【0111】
光学的可変接着剤130は、好ましくは、色シフト接着剤で作られ、光学的可変顔料の色加法混合を使用して、(色相の2乗の差+クロマの2乗の差+輝度の2乗の差)の平方根として定義されるサンプルごとの色変化ΔEが1.0より小さくなるように制御することができる。しかし、一般に、3.0未満のΔEがセキュリティ分野にとって好ましい。加法混合による色制御は可能でないので、この程度の色制御は、光学的可変箔で達成することができない。場合によっては、蛍光材料、燐光性反ストークス染料、および他の着色剤のような他の材料をOVAに加えることができる。
【0112】
チャーム・フレーク、タガント・フレークまたは顔料フレークを含む接着剤層132は、OVA130によって生じる効果が接着剤層を通して見えるように、実質的に透明である。層132の接着材料は透明または有色とすることができる。接着剤層130の可視性を可能にするように、チャーム自体が透明であるか、チャームの濃度が十分に低いかのどちらかである。
【0113】
場合によっては、反射材料の2つの層の間に磁気層が挟まれている金属フレークまたはOVフレークなどの磁気フレークが、ことによると非磁気光学的可変フレークと組み合わせて、層130および132の中の接着剤に加えられる。
【0114】
浮彫構造100は、demet層102aで覆われた樹脂層106にエンボス加工され、demetホログラフ効果を実現し、さらに、二重イメージ・ホログラム、ゼロ次ホログラム、キネグラムまたは回折格子技術に基づいた他の結像のような特徴を含む。demet層102aは、OVA層の可視性を実現するようにパターン形成され、そのとき、図21に示すセキュリティ・スレッドは、上から見える。層102aまたは102bは、追加の模造品特徴および/またはしるし133aを実現するために、レース状パターンの微細な線のパターンに形成することができる。
【0115】
有名なダビデおよびミロのビーナスの像、エッフェル塔および万里の長城を含んだ有名な建築物、アインシュタインのような有名な人々などのほとんどの人によく知られているイメージは、ゼロ次の回折イメージとして組み込んで、普通の人がデバイスを認識記憶し、かつイメージおよび関連した色シフトと組み合わせてそのデバイスを確認できるようにすることができる。
【0116】
スレッドは両側から保護される。一方の側は基板110で、他方はハードコート/樹脂層106で保護される。
【0117】
スレッドを一方の側から、図21に示す上から見たとき、層130の色シフト効果、二重イメージ・ホログラムまたはゼロ次ホログラム100、表示133aのあるdemetレース状アルミニウム・パターン102aおよび「チャーム」のような隠し特徴、が見える。スレッドを他方の側から見たとき、反射アルミニウム102bで囲まれた層102bの窓に色シフト背景130を示す色シフト・パターンが見える。
【0118】
有利なことには、スレッドが、ホット・スタンプされた厚さ6μの箔で作られ、かつ/または6μPETに積層されると、前述のスレッドの全厚さは僅か12μであることが可能である。そのような薄いスレッドの中に、複数のセキュリティ効果はこれまで実現されなかった。
【0119】
前述のスレッドの他の有利点は、このスレッドを製造するために複数の技術が使用されることである。これによって、模造者は模造品を作るために複数組の技能を持たなければならないので、模造が困難になる。PET上のホログラフ構造、光学的可変顔料およびdemetAlは、別々に、おそらく遠く離れた施設で作られ、通貨製造の時点で最終製品を作るように寄せ集められるかもしれない。OVAは、全ての部品を互いに結びつける。セキュリティ・デバイスが紙幣用紙に挿入される直ぐ前に部品を組み立てるというアイディアは、デバイスにセキュリティを追加する。というのは、出荷時に1つの部品を奪うことは、デバイス全体のうちのただ1つの部品だけを模造することを許すからである。場合によっては、前記の予め製作された部品は、例えば、アルミニウム層102bおよびdemetホログラム100および102aに、突合せ記号を有する。
【0120】
さらに、レース状パターンなどのホログラムのdemet層の微細な線は、模造者がはさみ、型切削を使用して、または光重合体さえ使用してパターン形成を再現することを非常に困難にする。というのは、demetパターンをホログラフ特徴に位置合せするdemetプロセスで精密な位置合せが必要とされるからである。
【0121】
その上、テキストまたは他のイメージをPETの直ぐ隣のアルミニウム層に入れるコストは無視できるほどである。その理由は、真空ロール・コータでのオイル・アブレーションdemetインライン・プロセスを使用することができるからである。70μまでの分解能を実現することができる。
【0122】
そのようなセキュリティ・スレッドは、銀行券で窓付きシステムとして使用することができ、このシステムでは、銀行券の両側の窓にスレッド自体を露出させながらスレッドは用紙をジグザグに進んでいる。また、スレッドは、用紙自体に埋め込むこともでき、この場合、用紙は、セキュリティ特徴を依然として見ることができるほどスレッドを覆って十分に薄くかつ透明である。小切手、パスポート、他のセキュリティ紙文書およびプラスチック・ベースの銀行券のようなプラスチック文書、クレジット・カードおよび身分証明書は、前述のセキュリティ・スレッドを利用することができる。セキュリティ・スレッドは、また、たばこの箱および他の安全なパッケージングのような品物で開封スレッド(tear thread)として使用することもできる。紙の文書の場合、両側から見ることは、規則的な間隔または不規則な間隔で、または用紙がその位置に無ければ同じ位置で、各側の表面に進むスレッドの影響を受ける。
【0123】
図22は、図21に関連して説明したセキュリティ・スレッドの写真である。
【0124】
図23は、本発明の他の実施形態に従ったOVAを使用するセキュリティ・スレッドを示す。スレッドは、好ましくはPETで作られ光学的可変フレーク105および隠しタガント118を含むOVA層104で接合された2つの光透過基板を備える。
【0125】
図24に示す本発明の他の実施形態は、少なくとも3つの接着剤層が2つの基板を積層するために使用されるセキュリティ・スレッドである。中心層OVAはキャリア104および顔料フレーク105、およびタガント118を含む2つの接着剤層を備え、これらの層は2つの基板の間に対称に配置されている。
【0126】
さらに他の実施形態が図25に示され、セキュリティ・スレッドは、2つの異なるOVAを使用して積層された基板110を備える。浮彫構造100は、デメタライズドAl102およびハードコート/樹脂層106で覆われている。そのようなセキュリティ・スレッドを製造するために、PETまたは他のプラスチック基板の各側に、クロマグラムがホット・スタンプされるか、またはロール締め付けされる。このクロマグラムは、OVAの付いたdemetホログラムであり、2つのOVAは、色および色シフト効果が異なっている。
【0127】
従来技術は、図21〜25に関連して説明したような層状模造品抑止システムを実現するそのような非常に薄いOVA付けセキュリティ・スレッドを開示していない。
【0128】
特に、前述の米国特許第4,186,943号と対照的に、本発明は、スレッドが各側から違って見えるように非対称であり、追加のセキュリティ特徴を実現している。
【0129】
また、本発明は、正確な色および色シフトを少なくともΔE1.0〜3.0以下で幾度も得るために光学的可変顔料の僅かに異なるバッチを混合することによって、米国特許第7,054,042号と比較して色変化を改善する。人の知覚は、このレベルまで色変化を見ることができる。表5は、不透明Al層、低屈折率MgF2層、およびCrで作られた3nm吸収体層を備える設計のために、そのようなファブリ・ペロ薄膜箔について、白色光を使用し垂直入射で計算された変化を示す。
【0130】
【表6】

【0131】
本出願で開示されたスレッドの構造は、また、‘042で行うことができない隠し材料(隠し小板および他の顔料)を加える可能性を与える。さらに、’042は不透明アルミニウムのパターン形成に言及しているが、本発明の場合のようにパターン形成されたアルミニウムに色シフト窓をもたらしていない。‘042に開示されたファブリ・ペロ・フィルタのアルミニウムの一部を除去することで、ファブリ・ペロの空洞が破壊されるので、結果として透明な窓が生じる。さらに、’042で開示されたデバイスは、実際には、一方の側からだけ見るためのものである。
【0132】
米国特許第5,700,550号と比較して、本出願の発明は、デバイスが付着される基板の色に無関係に高い彩度および高い色制御を可能にし、かつデバイス中に隠しタガントを加えることを教示する。
【0133】
米国特許出願公開第2005/0127663号と比較して、本発明は、OVAのより適切な色制御を実現し、また、PETをOVAと共に容易に圧延することができるので厚さの薄いPETを実現する。
【0134】
例示の実施形態に関連して特定の発明を説明したが、この説明は制限する意味で解釈される意図でない。本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に具陳されるような本発明の精神から逸脱することなく、本発明の他の実施形態だけでなく例示の実施形態の様々な修正および組合せが、この説明を参照して当業者に明らかになることは、理解される。
【0135】
したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲に含まれるようなどんなそのような修正または実施形態も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1aは、従来技術に従った、ホット・スタンプ前のセキュリティ物品を示す模式図である。図1bは、従来技術に従った、キャリア基板にホット・スタンプされた図1に示されたセキュリティ物品を示す模式図である。
【図2】物体に転写される前の本発明に従った箔を示す断面図であり、パターン形成されたAl層を有する基板は、光学的可変顔料(OVP)または光学的可変磁気顔料が接着剤中に分散されている乾熱ホット・スタンプ接着剤下層を有している。
【図3】紙または厚紙の基板にホット・スタンプ転写された後の光学的可変接着剤を有するクロマグラムを示す断面である。
【図4】ホット・スタンプ接着剤として光学的可変接着剤を有する銀行券基板にホログラムが接着されている同じ銀行券を示す複数の異なる図である。
【図5】ホット・スタンプ転写前の光学的可変接着剤および高屈折率層を有するクロマグラムを示す断面図である。
【図6】光学的可変パターン形成接着剤を有するクロマグラムを示す断面図である。
【図7】ホット・スタンプ前の改竄防止デバイスを示す断面図である。
【図8】ホット・スタンプ後の図7に示した改竄防止デバイスを示す断面図である。
【図9】取外しが試みられた後の図7に示す改竄防止デバイスを示す断面図である。
【図10】図10aは、クロマグラム構造を示す断面図であり、隠しタガントを含む接着剤のオーバレイヤの付いた色シフト・ホット・スタンプ接着剤を示す。図10bは、OVAおよび2つの異なるOVA層を使用するdemetホログラムのロールオン転写で組み立てられたセキュリティ・スレッドを示す図である。
【図11】クロマグラム構造を示す断面図であり、色シフト・ホット・スタンプ接着剤および隠し小板を含む接着剤の別個の上層の付いたパターン形成されたアルミニウムを示す。
【図12a】本発明の一実施形態に従ったクロマグラム構造を示す断面図である。
【図12b】光学的可変(OV)箔とdemetホログラムの間に接着剤を有するクロマグラフを示す断面図である。
【図12c】箔とdemetホログラムの間に透明な接着剤を有するクロマグラムを示す断面図であり、接着剤は、隠しフレークまたは低濃度の光学的可変フレークまたは光学的可変磁気フレークを含む。
【図12d】接着剤を有するクロマグラムを示す断面図である。
【図13】薄い色シフト・セキュリティ・スレッドを示す断面図である。
【図14】堆積された顔料の量の推定式を計算するために使用されるグラフを示す図である。
【図15】堆積された顔料の量の推定式を計算するために使用されるグラフを示す図である。
【図16】ホット・スタンプ転写イメージの反射率走査を示すグラフである。
【図17】ホット・スタンプ転写イメージの反射率走査を示すグラフである。
【図18】差し引いた吸収度データを示すグラフ表現である。
【図19】横方向ウェブ光学濃度測定値を示すグラフである。
【図20】ホット・スタンプ転写接着剤プロセスによってカジノ・チップに付着されたセキュリティ・デバイスを示す写真である。
【図21】改良された「合成スレッド」を示す断面図であり、層状セキュリティ・システムによって複数の光学効果がもたらされる。
【図22】本発明に従ったセキュリティ・スレッドを示す一組の写真である。
【図23】本発明の一実施形態に従ってOVAを使用する積層セキュリティ・スレッドを示す断面図である。
【図24】セキュリティ・スレッドを示す断面図であり、少なくとも3つの接着剤層が2つの基板を積層するために使用されている。
【図25】セキュリティ・スレッドを示す断面図であり、基板は、2つの異なるOVAを使用して積層されている。
【符号の説明】
【0137】
100 エンボス加工ホログラム層
102、216 不透明Alコーティング(パターン形成Al層)
102a demetAl層
102b 反射層
104 光学的可変接着剤
105 光学的可変フレーク
106、212 樹脂層
108 剥離層
66、110、112、212、222 基板
114 高屈折率層
118、245 隠しフレーク
119 接着剤
130 第1の塗膜(光学的可変接着剤)
131 第2の塗膜(光学的可変接着剤)
214 Alで覆われない領域
220a 反射層
220b 誘電体層
220c 吸収層
223 光学的可変色シフト箔
230 ホット・スタンプ接着剤
235 色シフト・フレーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、接着剤だけで前記第1の基板に付着された第2の基板とを備えた光学効果を実現する構造であって、前記接着剤が、前記第1の基板を通して検出可能な前記光学効果を実現する複数の粒子がその中または上に分散されているエネルギー活性化結合剤を含む構造。
【請求項2】
前記第1の基板が、浮彫構造を有し、さらに、前記複数の粒子によって実現される前記光学効果が、回折構造を通して外部から目に見えて検出可能である、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記浮彫構造が、ホログラム、デメタライズド・ホログラム、キネグラム、ゼロ次回折構造、および回折格子構造のうちの1つである回折構造である、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記第1の基板が、前記回折構造と前記接着剤の間に配置された高屈折率層を有する、請求項2に記載の構造。
【請求項5】
前記第1および第2の基板のうちの1つが、薄膜干渉スタック、反射塗膜、および高屈折率塗膜のうちの少なくとも1つおよびその上のパターン形成された剥離層を有する、請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記エネルギー活性化結合剤が、ホット・スタンプ、紫外光、熱、および電子ビームのうちの1つで活性化される、請求項1に記載の光学構造。
【請求項7】
前記エネルギー活性化結合剤が、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリビニル・アルコール、ポリビニル・アセテート、およびポリウレタンのグループから選択される、請求項1に記載の構造。
【請求項8】
前記複数の粒子で実現される前記効果が、人の目、顕微鏡、磁気センサ、UV光、およびIR光のうちの1つを使用して検出可能である、請求項1に記載の構造。
【請求項9】
前記複数の粒子が、蛍光材料粒子、磁気材料粒子、染料粒子、アップ・コンバージョン顔料、ナノ粒子、および透明導電性粒子のうちの少なくとも1つを含み、フレークの長さは少なくとも2ミクロンである、請求項1に記載の構造。
【請求項10】
前記複数の粒子は、少なくとも2ミクロンの長さを有するフレークであり、さらに、前記フレークは、光学的可変フレーク、薄膜光干渉フレーク、回折フレーク、反射フレーク、光吸収フレーク、隠しフレーク、記号または表示の付いたフレーク、形が一様なフレーク、磁気フレーク、金属・誘電体フレーク、完全誘電体フレーク、マイカ・ベースのフレーク、および液晶ベースのフレークのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の構造。
【請求項11】
前記第1および第2の基板のうちの1つが、光透過基板、本質的に透明な基板、PET基板、高屈折率塗膜、保護塗膜、剥離塗膜、および紙片のうちの1つである、請求項1に記載の光学構造。
【請求項12】
前記第1の基板が、前記接着剤によって前記第2の基板に結合されない少なくとも1つの領域を有する、請求項1に記載の構造。
【請求項13】
前記接着剤が、第1および第2の接着剤部分層を含む、請求項1に記載の構造。
【請求項14】
前記接着剤が、1つのサンプルから別のサンプルへのΔEの色変化を有し、ΔEが約5.0以下である、請求項1に記載の構造。
【請求項15】
前記構造が、セキュリティ・スレッドを形成する、請求項1に記載の構造。
【請求項16】
請求項1に記載の構造を形成する方法であって、
a.エネルギー活性化結合剤をその上に有する第1の基板を用意するステップと、ここで前記エネルギー活性化結合剤はその中または上に分散された、前記第1の基板を通して検出可能な効果を実現する複数の粒子を有しており、
b.前記第1の基板を第2の基板に接着剤をその間に加えることなしに隣接して配置し、そのため、前記エネルギー活性化結合剤が前記第1と第2の基板の間に配置されるステップと、
c.UV光、電子ビーム放射、熱、およびホット・スタンプのうちの1つを応用して、前記エネルギー活性化結合剤を硬化させるステップと、を含む方法。
【請求項17】
ステップ(b)で、前記第2の基板の少なくとも1つの領域が、前記エネルギー活性化結合剤で覆われず、そのため、ステップ(c)で前記領域が前記第1の基板に結合されない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の基板は、ステップ(a)で、第1の粒子がその上または中に分散されている第1のエネルギー活性化結合剤で覆われ、次に、第2の粒子がその上または中に分散されている第2のエネルギー活性化結合剤で覆われ、前記第1の粒子が前記第2の粒子と異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)で、前記エネルギー活性化結合剤が、最初に、前記第1の基板に塗られ、次に、前記粒子が前記エネルギー活性化結合剤の表面に加えられる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(a)で、前記加えられた粒子が、より多くの量の前記エネルギー活性化結合剤で覆われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
光学効果を実現する物品を形成する方法であって、
a.少なくとも第1の光学効果を有する第1の基板を用意するステップと、
b.光学効果粒子をその中または上に有するキャリア・ビヒクルを前記第1の基板に塗付するステップと、ここで前記粒子は、前記第1の基板を通して検出可能な第2の光学効果を実現するものであり、
c.ホット・スタンプにおいて前記キャリア・ビヒクルがただ接着剤としてだけ使用されるように、前記塗布された第1の基板を第2の基板または物品にホット・スタンプするステップと、を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12a】
image rotate

【図12b】
image rotate

【図12c】
image rotate

【図12d】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2007−241283(P2007−241283A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−53742(P2007−53742)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】1768 Automation Parkway,San Jose,California,USA,95131
【Fターム(参考)】