説明

光学的情報読取装置

【課題】測距処理の高速化を図り、確実に測距を行うことができる光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】光学的情報読取装置1Aは、光の照射領域102aと非照射領域103aが組み合わせられた測距パターン101aを読取対象物に形成する測距光Saを出射する測距光出射部2を備え、読取対象物に形成された測距パターン101aを固体撮像素子3で撮像して測距パターン101aの画像を取得し、画像信号で信号が落ち込む部分を検出して、測距パターン101aの非照射領域103aの座標に基づき測距を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点機能を有し、主にバーコード、2次元コード等のコード記号、風景や物品の画像を読み取ることを目的とした光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品管理、在庫管理等を目的として1次元のコード情報であるバーコード、また、より情報密度の高いコードとして2次元コードが知られている。バーコードや2次元コード等のコード記号を読み取る装置として、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子でコード情報を撮影し、その画像に様々な処理を施した上で2値化し、デコードする方法が知られている。
【0003】
このようなコード情報を読み取る装置に使用されるCMOSイメージセンサは、デジタルカメラ等に搭載されているものと機能的に何ら変わらないことから、普通に物体や風景などを撮影する写真機としての機能を併せ持つことが求められる。例えば、在庫管理等の場合、対象物品と共にその物品が格納されている位置を撮像し、コード情報と共にデータベースに記憶する場合に使用されるものである。
【0004】
また、携帯電話機には、上述したCMOSイメージセンサを使用した小型カメラが搭載さている。携帯電話機のカメラ機能には、通常のデジタルカメラのように、風景や人物を撮像する他に、バーコード/2次元コードスキャナ及びOCR(光学式文字読取装置)を内蔵しているものが大半である。即ち、コード記号撮像デコード機能を備えたデジタルカメラが広く求められている。
【0005】
さらに、上述した商品管理、在庫管理等の現場では、物品に貼付されたコード記号を次々に走査していく必要がある。その際に、オートフォーカス機能があるものが望ましく、オートフォーカスと撮像処理は高速である必要がある。
【0006】
オートフォーカス機能を備えた光学的情報読取装置では、コード記号等の読取対象物までの距離を測定し、測定した距離に焦点位置が合うように光学系を制御する。読取対象物までの距離を測定する技術として、レーザを利用した測距技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
レーザを用いた三角法による測距技術では、読取対象物に光の強度の強いスポットを形成するためにビームを照射し、読取対象物上の検出スポット位置を計測する。読取対象物の距離は、検出スポット位置から決定される。
【0008】
一方、光学的情報読取装置では、コード記号が読取可能範囲に入っているかどうかを使用者が認識できれば、試行を繰り返す必要が無くなり、読取動作の高速化が図れる。そこで、読取可能範囲を表示する光源及び光学系を備えた技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4473337号公報
【特許文献2】特開2010−140064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
レーザを用いた三角法による従来の測距技術では、スポット状の強度の強い信号のピークを検出し、スポットの位置を求めている。しかし、周辺光量等の影響で、露出が飽和すると、信号の強度のピークを検出することができず、測距に必要な信号を得ることができない場合がある。この場合、露出を補正して再撮像を行うことで、適正露出の画像を得ることができるが、露出の補正及び再撮像の処理が必要で、測距処理の高速化の妨げになる。
【0011】
また、スポットを可視光で形成し、スポットの形成位置と読取位置を合わせることで、使用者の読取動作を誘導できる。しかし、スポットは読取対象物上の一点を示すのみで、コード記号の全体が読取可能範囲に入っているかを示すことはできず、コード記号の全体が読取可能範囲に入っていなければ、再試行を繰り返すことになる。
【0012】
このようなオートフォーカス機能を備えた光学的情報読取装置に、読取可能範囲を表示する光源及び光学系を備える構成とすれば、オートフォーカス機能を実現し、かつ、読取可能範囲を示すことができる。しかし、測距と読取可能範囲を示すために独立した光源と光学系が必要で、装置の小型化及び低コストが困難になる。
【0013】
更に、測距用のレーザによる照射範囲を、読取可能範囲を示す大きさに広げることで、読取可能範囲を示すことは可能になるが、読み取ったコード記号のデコードで必要とされる測距の精度を得ることができず、確実な測距を行うことができない。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、測距処理の高速化を図り、確実に測距を行うことができる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明は、可変焦点光学系を有した撮像光学手段と、読取対象物を撮像する撮像手段と、読取対象物との距離を測距する測距手段と、測距手段を用いて読取対象物までの距離を算出し、算出された距離情報に基づき撮像光学手段を制御して、撮像手段で読取対象物の撮像を行う制御手段とを備え、測距手段は、光の照射領域と非照射領域が組み合わせられた測距パターンを読取対象物に形成する測距光を出射し、制御手段は、読取対象物に形成された測距パターンを撮像手段で撮像して測距パターンの画像を取得し、撮像手段に入射する光の強度に応じて信号が落ち込む部分を検出して、測距パターンの非照射領域の座標に基づき測距を行う光学的情報読取装置である。
【0016】
本発明では、測距光を照射して、光の照射領域と非照射領域が組み合わせられた測距パターンを読取対象物に形成し、読取対象物に形成された測距パターンを撮像して測距パターンの画像を取得し、画像信号で信号が落ち込む部分を検出して、測距パターンの非照射領域の座標に基づき読取対象物までの距離を求める。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周辺光量の変化や、読取対象物の大きさ等によらず、処理の高速化を図り、確実に測距を行うことができる。また、測距光を可視光とすれば、測距パターンの照射領域を利用して、測距に用いる単一の光源及び光学系で、読取可能範囲の表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態の光学的情報読取装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態の光学的情報読取装置の実装例を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態の光学的情報読取装置の実装例を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の光学的情報読取装置を構成する測距光出射部の一例を示す構成図である。
【図5】本実施の形態の光学的情報読取装置を構成する測距光出射部の他の例を示す構成図である。
【図6】読取対象物までの距離の算出に必要なパラメータの説明図である。
【図7】読取対象物までの距離と固体撮像素子に入射する測距パターンによる信号強度の関係を示すグラフである。
【図8】測距パターンの形状の一例を示す構成図である。
【図9】パターン形成レンズの一例を示す斜視図である。
【図10】パターン形成レンズによる測距光の光路の一例を示す光路説明図である。
【図11】パターン形成レンズによる照射領域と非照射領域の形成原理を示す光路説明図である。
【図12】固体撮像素子の一例を示す機能ブロック図である。
【図13】液晶レンズの概念を示す構成図である。
【図14】液体レンズの概念を示す構成図である。
【図15】本実施の形態の光学的情報読取装置におけるコード記号の読取動作を示すフローチャートである。
【図16】本実施の形態の光学的情報読取装置におけるコード記号の読取動作を示すフローチャートである。
【図17】本実施の形態の光学的情報読取装置における測距動作の一例を示すフローチャートである。
【図18】測距パターンと取り込むエリアの関係を示す説明図である。
【図19】測距パターンを撮像して得られる画像信号の一例を示す説明図である。
【図20】本実施の形態の光学的情報読取装置の効果の一例を示す説明図である。
【図21】比較例として従来の測距方法の課題を示す説明図である。
【図22】本実施の形態の光学的情報読取装置の効果の他の例を示す説明図である。
【図23】比較例として従来の測距方法の課題を示す説明図である。
【図24】比較例として従来の測距方法の課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の光学的情報読取装置の実施の形態について説明する。
【0020】
<本実施の形態の光学的情報読取装置の構成例>
図1は、本実施の形態の光学的情報読取装置の一例を示す機能ブロック図、図2及び図3は、本実施の形態の光学的情報読取装置の実装例を示す斜視図である。また、図4は、本実施の形態の光学的情報読取装置を構成する測距光出射部の一例を示す構成図、図5は、本実施の形態の光学的情報読取装置を構成する測距光出射部の他の例を示す構成図である。
【0021】
本実施の形態の光学的情報読取装置1Aは、読取対象物であるコード記号100を撮像するカメラ部10と、カメラ部10で行われる撮像、フォーカス調整、デコード、データ転送等の制御を行うデコード部11を備える。
【0022】
光学的情報読取装置1Aはコードスキャナと称され、物品に貼り付けられたラベルに表記されたコード記号100、または、物品に直接表記されたコード記号100等の撮像が可能な構成である。
【0023】
図2に示す光学的情報読取装置1Aは、マニュアルトリガと称されるコードスキャナで、例えば、把持部200を有した筺体201に、カメラ部10とデコード部11等の構成要素が実装され、使用者が把持部200を手に持ち、カメラ部10を物品300に表記されたコード記号100に向けることで、コード記号100の撮像が可能な構成である。
【0024】
図3に示す光学的情報読取装置1Aは、オートトリガと称されるコードスキャナで、例えば、載置部202を有して載置される筺体203に、カメラ部10とデコード部11等の構成要素が実装され、物品301に表記された図3では図示しないコード記号100をカメラ部10に向けることで、コード記号100の撮像が可能な構成である。
【0025】
次に、カメラ部10の全体構成について説明する。カメラ部10は、読取対象物であるコード記号100の検知と、読取対象物までの距離の測距のために、読取対象物に図4に示すような測距パターン101aを形成する測距光Sa、または、読取対象物に図5に示すような測距パターン101bを形成する測距光Sbの照射を行う測距光出射部2を備える。
【0026】
また、カメラ部10は、読取対象物に形成された測距パターン101aまたは測距パターン101bの撮像、及びコード記号100を含む読取対象物の撮像を行う固体撮像素子3を備える。
【0027】
更に、カメラ部10は、照明光を出射する照明光出射部4と、コード記号100で反射した自然光または照明光を固体撮像素子3に結像させるオートフォーカス(可変焦点)機能を有し、コード記号100を構成するパターンの例えば白部分と黒部分の反射率の違いにより、コード記号100のパターンに応じた像を形成させる撮像光学部5を備える。また、カメラ部10は、測距光出射部2、照明光出射部4及び撮像光学部5を駆動するドライバ6を備える。
【0028】
図6は、読取対象物までの距離の算出に必要なパラメータの説明図で、次に、本実施の形態の光学的情報読取装置1Aにおける測距の概要について説明する。
【0029】
任意の位置WD1〜WD3にある読取対象物までの距離Xについては、図6中の次のパラメータと以下の(1)式とに基づいて算出することができる。
【0030】
X:撮像光学部5の主点を通る原点平面Oから読取対象物までの距離
a:測距光出射部2と撮像光学部5の光軸の原点平面Oでの距離
θ:撮像光学部5の半画角
N:半画角により張られる固体撮像素子3の中心から短点までの距離
n:固体撮像素子3の撮像エリアにおいて測距光が映り込んだ位置
φ:測距光出射部2と撮像光学部5の光軸の原点平面Oでのなす角
【0031】
【数1】

【0032】
読取対象物に測距光を照射し、読取対象物を照射した測距光を固体撮像素子3で撮像すると、読取対象物までの距離が、測距光を撮像した固体撮像素子3の画素の座標で示され、測距光を撮像した固体撮像素子3の画素の座標を検出することで、上述したパラメータと(1)式から、読取対象物までの距離を算出できる。
【0033】
そして、精度の高い測距を行うためには、測距光を撮像した固体撮像素子3の画素の座標を画像処理で検出できる信号が、測距光が照射される測距位置Pに存在することが条件になる。
【0034】
そこで、光学的情報読取装置1Aでは、図4に示すように、測距光出射部2で出射される測距光Saで、光の照射領域102aと非照射領域103aが組み合わせられた測距パターン101aを読取対象物に形成する。または、図5に示すように、測距光出射部2で出射される測距光Sbで、光の照射領域102bと非照射領域103bが組み合わせられた測距パターン101bを読取対象物に形成する。
【0035】
図4に示す測距パターン101aは、照射領域102aが一の方向である水平方向に広がりを持ち、少なくとも水平方向に所定の幅を持つパターンで形成される。また、測距パターン101aは、照射領域102aの間の少なくとも1箇所、本例では、照射領域102aの中心部分に、固体撮像素子3で信号の立ち下がりと立ち上がりが検出可能なパターンで非照射領域103aを設けて、測距パターン101aに少なくとも1つの信号の落ち込み部分を存在させる。
【0036】
これにより、測距パターン101aを水平方向の一方向から見た場合に、測距パターン101aを撮像して固体撮像素子3から出力される信号から、立ち下がり信号と、この立ち下がり信号に対して所定の幅で近接した立ち上がり信号が得られ、立ち下り信号と立ち上がり信号の画像信号により測距処理を可能とする。
【0037】
図5に示す測距パターン101aも同様に、照射領域102bが一の方向である水平方向に広がりを持ち、少なくとも水平方向に所定の幅を持つパターンで形成される。また、測距パターン101bは、照射領域102bの間の少なくとも1箇所、本例では、照射領域102bの中心部分に、固体撮像素子3で信号の立ち下がりと立ち上がりが検出可能なパターンで非照射領域103bを設けて、測距パターン101bに少なくとも1つの信号の落ち込み部分を存在させる。
【0038】
これにより、測距パターン101bを水平方向の一方向から見た場合に、測距パターン101bを撮像して固体撮像素子3から出力される信号から、立ち下がり信号と、この立ち下がり信号に対して所定の幅で近接した立ち上がり信号が得られ、立ち下り信号と立ち上がり信号の画像信号により測距処理を可能とする。
【0039】
図7は、読取対象物までの距離と固体撮像素子に入射する測距パターンによる信号強度の関係を示すグラフで、図7では、距離別に固体撮像素子3で撮像した測距パターン101aまたは測距パターン101bを、固体撮像素子3の画素の水平方向にスキャンした信号強度分布を示す。
【0040】
光学的情報読取装置1Aでは、固体撮像素子3の撮像エリアにおいて、読取対象物で反射した測距光が入射する位置が、読取対象物までの距離に応じて変化する。このため、読取対象物に形成された図4に示す測距パターン101a、または、図5に示す測距パターン101bを固体撮像素子3で撮像すると、固体撮像素子3の撮像エリアにおいて測距パターン101a、または、測距パターン101bが入射する位置が、読取対象物までの距離に応じて変化する。
【0041】
そして、光学的情報読取装置1Aでは、非照射領域103aを有した測距パターン101a、または、非照射領域103bを有した測距パターン101bを固体撮像素子3で撮像すると、固体撮像素子3の撮像エリアにおける測距パターン101aの非照射領域103a、または、測距パターン101bの非照射領域103bの位置が、読取対象物までの距離に応じて変化する。
【0042】
これにより、図7に示すように、固体撮像素子3の撮像エリアに入射する光の強度に応じたレベルで固体撮像素子3から出力される信号が落ち込む部分が、読取対象物までの距離に応じて変化する。
【0043】
そこで、光学的情報読取装置1Aでは、固体撮像素子3から出力される信号が落ち込む部分を検出して、この信号の落ち込む部分を測距信号部SgDとし、測距パターン101aの非照射領域103a、または、測距パターン101bの非照射領域103bを撮像した固体撮像素子3の画素の座標を検出することで、上述したパラメータと(1)式から、読取対象物までの距離を算出する。
【0044】
これにより、読取対象物に形成される測距パターン101aまたは測距パターン101bは、非照射領域103aまたは非照射領域103bを示す信号が、信号が落ち込む部分として存在し、非照射領域103aまたは非照射領域103bを撮像した固体撮像素子3の画素の座標を画像処理で検出できる信号が、測距光Saまたは測距光Sbが照射される測距位置Pに存在することになり、精度の高い測距を行うことができる。
【0045】
また、測距光Saまたは測距光Sbを可視光とすることで、測距パターン101aの照射領域102a、または、測距パターン101bの照射領域102bを利用して、読取範囲を視認可能とする。
【0046】
図8は、測距パターンの形状の一例を示す構成図である。なお、図8では、図4に示す光学系で形成される測距パターンを例に説明するが、図5に示す光学系で形成される測距パターンも同様である。
【0047】
測距パターン101aにおける測距位置Pである非照射領域103aは、測距パターン101aの中心部に設けられることが望ましい。これは、図8(a)に示すように、読取対象物が測距パターン101aより小さいコード記号100aの場合、通常、測距パターン101aの中心にコード記号100aの位置が合わせられる可能性が高いためで、コード記号100a上に、測距位置Pである非照射領域103aが形成されるようにして、測距の精度を向上させるためある。
【0048】
また、図8(b)に示すように、幅の広いコード記号100bを読み取る場合、測距パターン101aで読取可能範囲を示すことにより、読取深度が容易に判断でき、操作性を向上させることができる。そのため、測距パターン101aを中心部分のみに照射するより、少なくも水平方向に幅のある測距パターン101aを形成することが望ましい。
【0049】
次に、上述した測距パターンを形成する測距光出射部の詳細について、各図を参照にして説明する。測距光出射部2は測距手段の一例で、光を出射する光源20と、光源20から出射した光を、測距パターン101aを形成する測距光Sa、または、測距パターン101bを形成する測距光Sbに変換するパターン形成レンズ21を備える。
【0050】
光源20は、図4に示す例では、可視領域の波長の光を出射する発光ダイオード(LED)で構成される。また、図5に示す例では、可視領域の波長の光を出射する半導体レーザ(LD)で構成される。
【0051】
測距光出射部2で出射される測距光Saまたは測距光Sbで形成される測距パターン101aまたは測距パターン101bでは、画像信号の大部分である照射領域102aまたは照射領域102bを固体撮像素子3で検出できるようにするため、光源20として、上述したように、パルスで強度の強いLED光源もしくはレーザ光源が好ましい。
【0052】
図9は、パターン形成レンズの一例を示す斜視図、図10は、パターン形成レンズによる測距光の光路の一例を示す光路説明図、図11は、パターン形成レンズによる照射領域と非照射領域の形成原理を示す光路説明図であり、次に、測距パターン101aまたは測距パターン101bを形成する光学系の一例について、各図を参照して説明する。
【0053】
測距光出射部2では、図4に示す測距パターン101aの非照射領域103a、または、図5に示す測距パターン101bの非照射領域103bが、固体撮像素子3で検出可能な幅となる所定の角度αとなるような光学系が構成される。
【0054】
また、測距光出射部2では、測距パターン101aまたは測距パターン101bを可視光で構成し、測距パターン101aの照射領域102a、または、測距パターン101bの照射領域102bが、撮像光学部5の画角と固体撮像素子3の撮像エリアの大きさで決められ、読取対象物との距離に応じて変化する読取可能範囲となるように、光学系が構成される。
【0055】
測距光出射部2では、光源20から出射された光は、一の方向である水平方向と、他の方向である垂直方向に、それぞれ所定の放射角で広がる。そこで、測距光出射部2では、光源20から出射された光の水平方向の広がりを利用して、測距パターン101aの照射領域102aまたは測距パターン101bの照射領域102bを形成する。本例では、光源20から出射された光の水平方向の放射角と読取可能範囲が合わせられる
【0056】
また、測距光出射部2では、光源20から出射された光の水平方向の一部に、測距パターン101aの非照射領域103aまたは測距パターン101bの非照射領域103bを形成する。
【0057】
このため、パターン形成レンズ21は、光源20から出射されて水平方向に広がる光は、読取可能範囲に合わせた放射角を保って透過させ、垂直方向に広がる光は、屈折させて例えば平行光化する形状、例えば、入射面21aが平面で構成され、出射面21bが水平方向に沿って平面で、垂直方向に沿って凸状に湾曲した曲面で構成されるシリンドリカルレンズである。
【0058】
また、パターン形成レンズ21は、光の屈折または反射を利用して、光源20から出射される一部の光の光路を変更し、測距パターン101aの非照射領域103aまたは測距パターン101bの非照射領域103bを形成するため、出射面21bの一部に、垂直方向に沿ってプリズム状のスリット21cが形成される。スリット21cは、パターン形成レンズ21の出射面21bの水平方向に沿った中心部分に、断面形状がV状の溝を設けて形成される。
【0059】
図11において、パターン形成レンズ21の屈折率をn、空気中の屈折率をnとする。光源20から出射し、パターン形成レンズ21に入射した光で、スリット21cの形成部位以外の出射面21bに入射した光は、出射面21bと空気との境界面に対して垂直に入射する光と見なすことができる。
【0060】
これにより、光源20から出射されて水平方向に広がる光で、スリット21cの形成部位以外の出射面21bに入射した光は、図11の光路L1に示すように、出射面21bと空気との境界面で水平方向には実質的に屈折せず、光源20における放射角を保ってパターン形成レンズ21を透過する。
【0061】
一方、スリット21cに入射した光は、出射面21bと空気との境界面への入射角をβとすると、パターン形成レンズ21と空気の屈折率に応じた屈折角γで屈折する。また、出射面21bと空気との境界面で反射する。
【0062】
これにより、光源20から出射されて水平方向に広がる光で、スリット21cに入射した光は、図11の光路L2、L3に示すように、出射面21bと空気との境界面で屈折または反射し、光路が変換される。
【0063】
従って、パターン形成レンズ21は、図10に示すように、スリット21cの形成部位を中心として、光が放射しない角度を生成することができる。よって、測距光出射部2では光源20から出射されて水平方向に広がる光が、パターン形成レンズ21を透過することで、水平方向における中心部分を避けて放射され、図4に示すように、照射領域102aの中心部分に非照射領域103aが形成された測距パターン101aを形成する測距光Saが出射される。または、図5に示すように、照射領域102bの中心部分に非照射領域103bが形成された測距パターン101bを形成する測距光Sbが出射される。
【0064】
なお、パターン形成レンズ21は、出射面21bの水平方向の中心部分に反射膜を形成する、あるいは、スリット21cに反射膜を形成する等により、光の全反射を利用して光を透過させない角度を生成することも可能である。
【0065】
次に、カメラ部10の他の構成要素について説明する。固体撮像素子3は撮像手段の一例で、本例では、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサで構成される。固体撮像素子3は、撮像光学部5を通して入射する光を撮像素子により検出し、その各撮像素子による検出信号をデジタル画像データとしてデコード部11へ出力することにより、測距パターン及び読取対象物の画像を撮像する。
【0066】
上述したように、図4に示す測距パターン101a、または、図5に示す測距パターン101bを形成する測距光出射部2の光源20として、パルスで強度の強いLED光源またはレーザ光源を用いる構成では、固体撮像素子3は、全画素同時にシャッタを切れるグローバルシャッタが望ましい。また、測距パターンに関する処理速度を高速化するために、測距パターンの画像をサブサンプリング(ROI機能:Region of Interest)して処理することができる固体撮像素子3が望ましい。
【0067】
図12は、固体撮像素子の一例を示す機能ブロック図であり、次に、図12を参照しながら固体撮像素子3の一例であるCMOSイメージセンサについて詳細に説明する。固体撮像素子3に設けられた撮像エリア30は、画素部31の各画素が、フォトダイオードと、FD(flouting diffusion:フロー浮遊拡散)領域と、フォトダイオードからFD領域に電荷を転送するための転送トランジスタと、FD領域を所定の電位にリセットするためのリセットトランジスタとを有し、複数の画素がマトリックス状に形成される。
【0068】
撮像エリア30は、画素がマトリックス状に形成された画素マトリックスの側部に、垂直信号の制御をする垂直シフトレジスタ32が配置され、画素マトリックスの下部に、水平信号の制御をする水平シフトレジスタ33が配置されている。
【0069】
垂直シフトレジスタ32と水平シフトレジスタ33は、画素駆動に必要な電圧を発生させるアナログ回路である。垂直シフトレジスタ32と水平シフトレジスタ33からの信号は、アナログプロセッサ34、A/Dコンバータ35、デジタルプロセッサ36を順次経由して外部へ出力される。
【0070】
またアナログプロセッサ34は、電圧増幅、ゲイン調整等の機能を含み、所定のアナログ信号処理を行う。A/Dコンバータ35は、アナログプロセッサ34のアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。デジタルプロセッサ36は、ノイズキャンセル、データ圧縮等の機能を含み、A/Dコンバータ125からのデジタル画像信号に対してデジタル処理を施し、処理後のデジタル画像信号を外部へ出力する。
【0071】
コントロールレジスタ37は、外部の信号を入出力させ、タイミングコントローラ38によってアナログプロセッサ34及びデジタルプロセッサ36のクロックタイミングを合わせて、画素部31の各画素からの信号を所定の順番で画像データを出力させる。
【0072】
更に、固体撮像素子3においては、各画素における受光量に応じた電荷の蓄積開始及び蓄積停止を全画素において略同時に制御するグローバルシャッタが採用される。そのために、各画素における蓄積電荷に相当する値を共通の基準値と個別に比較する複数の比較器、それらの出力信号の論理和信号を出力するための端子等を備えている。画素部31の複数の比較器の出力の少なくとも1つが、基準値より蓄積電荷が大きくなったことを示したときに、グローバルシャッタを制御して各画素における電荷の蓄積停止を実行する。
【0073】
図1に戻り、照明光出射部4は照明手段の一例で、デコード部11からの制御により読取対象物に照明光Scを照射して照明する。照明光Scの照射は、固体撮像素子3の撮像フレームに同期したパルス光の照射によって行われ、照射時間を調整することによって、1フレームの撮像期間内に読取対象物からの反射光により固体撮像素子3の各フォトダイオードに蓄積される電荷量を調整することができる。すなわち、照明時間を長くすれば、固体撮像素子3が撮像により得る画像は明るい画像となるし、短くすれば、暗い画像となる。
【0074】
撮像光学部5は撮像光学手段の一例で、撮像レンズ50と可変焦点レンズ51を備える。撮像レンズ50は、本例では、単数または複数のガラス製若しくはプラスチック製の光学レンズで構成される固定焦点レンズである。
【0075】
可変焦点レンズ51は、例えば、単数または複数の光学レンズを、光軸に沿って機械的に移動させる機構を備えて、オートフォーカス機能を実現しても良い。これに対し、可変焦点レンズ51は、レンズを機械的に移動させる機構を用いることなくオートフォーカス機能を実現するものとして、印加電圧によって焦点距離を調整可能な液晶レンズ、または、液体レンズで構成しても良い。
【0076】
図13は、液晶レンズの概念を示す構成図である。液晶レンズ51aは、ホモジニアス(ねじれのない)分子配列の液晶層53を、ガラス板54の間に封止した構成で、各ガラス板54には、金属酸化物の透明電極55a、55bが形成される。液晶レンズ51aは、透明電極55a、55bに電圧を印加し、印加する電圧を調整することで、液晶分子53aの配向状態が変化する。液晶レンズ51aは、液晶分子53aの配向状態を変化させることで、屈折率が変化し、屈折率が変化することで、焦点距離が変化する。これにより、液晶レンズ51aは、印加する電圧を調整することで焦点位置を動かし、合焦を行うことができる。
【0077】
図14は、液体レンズの概念を示す構成図である。液体レンズ51bは、導電性の高い水溶液56と絶縁体の油57が、光を透過する透明な窓部を対向する2面に有した容器58に封じ込められる。液体レンズ51bには、水溶液56と接する電極59aと、絶縁部を介して水溶液56と油57の両方と接する電極59bが備えられる。
【0078】
液体レンズ51bは、電極59a及び電極59bから電気を流し、水溶液56に電圧を印加すると、水溶液56と油57との境界面56aの形状を変化させることができる。このような現象をエレクトロウエッティング現象と称す。水溶液56と油57との境界面56aの曲率を変えることで焦点位置を動かし、合焦を行うことができる。
【0079】
ここで、可変焦点レンズ51として液晶レンズ51aまたは液体レンズ51bを用いた構成では、温度変動による焦点位置のずれを補正するため、温度補償が必要となる。このため、光学的情報読取装置1Aは、液晶レンズ51aまたは液体レンズ51bで構成される可変焦点レンズ51及び可変焦点レンズ51の近傍の温度を検知する温度検知手段として、図1に示すように、温度センサ7をカメラ部10に備える。
【0080】
光学的情報読取装置1Aは、測距光出射部2で測距光を出射して求めたコード記号100までの距離情報から導き出される液晶レンズ51aまたは液体レンズ51bの焦点位置を、温度センサ7で検知される温度情報で補正して、正確なオートフォーカスを実現する。
【0081】
次に、デコード部11について説明すると、デコード部11は制御手段の一例で、CPU12と、CPU12が実行するプログラムとテーブルを記憶したROM13と、CPU12が各種の処理を実行する際の作業領域として使用するRAM14を備えている。
【0082】
CPU12としては、例えば、エーシック(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)を用いることができる。また、ROM13としては、フラッシュロム(FROM)を用いることができ、RAM14としては、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いることができる。
【0083】
CPU12は、RAM14を作業領域としてROM13に記憶されたプログラムを実行することにより、光学的情報読取装置1A全体の動作を制御すると共に、固体撮像素子3が撮像したデジタル画像データに基づく、読取対象物の検知、読取対象物までの距離の測距、求めた距離に基づく合焦点制御、コード記号100のデコード、デコード結果の外部への出力あるいは蓄積等に必要な処理を行う。
【0084】
<本実施の形態の光学的情報読取装置の動作例>
図15及び図16は、本実施の形態の光学的情報読取装置におけるコード記号の読取動作を示すフローチャートで、次に、各図を参照して、本実施の形態の光学的情報読取装置1Aの動作について説明する。
【0085】
ここで、図15は、図2に示すマニュアルトリガと称されるコードスキャナによる読取動作を示し、図16は、図3に示すオートトリガと称されるコードスキャナによる読取動作を示す。
【0086】
まず、マニュアルトリガのコードスキャナによる読取動作について説明する。図15のステップSA1で、図示しない操作ボタンの操作等により、マニュアルトリガがONとなると、ステップSA2で、CPU12は、測距光出射部2を制御して測距光Saまたは測距光Sbの照射を開始すると共に、固体撮像素子3を制御して読取対象物に形成される図4に示す測距パターン101aまたは図5に示す測距パターン101bの撮像を開始する。
【0087】
図15のステップSA3で、CPU12は、固体撮像素子3で測距パターン101aまたは測距パターン101bを撮像して取得した画像から、露出を計算する。また、上述したように、信号の立ち下がりと信号の立ち上がりで測距位置である非照射領域103aまたは非照射領域103bを検出する。そして、非照射領域103aまたは非照射領域103bの座標から、読取対象物との距離を計算する。
【0088】
図15のステップSA4で、CPU12は、照明光出射部4による照明光Scの照射時間を制御して露出を合わせると共に、撮像光学部5を制御して読取対象物であるコード記号100にフォーカスを合わせる。なお、撮像光学部5を構成する可変焦点レンズ51が液晶レンズ51aまたは液体レンズ51bである構成では、読取対象物までの距離と、温度センサ7で検出した温度に基づき、図示しない距離−電圧テーブルを参照して印加電圧を設定し、フォーカスを行う。
【0089】
図15のステップSA5で、CPU12は、固体撮像素子3を制御して、デコードを行う読取対象物であるコード記号100の撮像を開始し、ステップSA6で、固体撮像素子3からコード記号100を含む読取対象物の画像をデコード部11に転送する。
【0090】
図15のステップSA7で、CPU12は、固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像であるか判断する。固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像ではないと判断すると、ステップSA2に戻り、測距光の照射、測距、及び読取対象物の撮像を行う。
【0091】
固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像であると判断すると、図15のステップSA8で、CPU12は、デコード処理を開始し、ステップSA9で、デコード処理が可能であると判断すると、コード記号100のデコード処理を行って、読取処理を終了する。また、ステップSA9で、デコード処理が可能ではないと判断すると、ステップSA2に戻り、測距光の照射、測距、及び読取対象物の撮像を行う。
【0092】
次に、オートトリガのコードスキャナによる読取動作について説明する。図16のステップSB1で、物品がかざされる等によりオートトリガがONとなると、ステップSB2で、CPU12は、測距光出射部2を制御して測距光Saまたは測距光Sbの照射を開始すると共に、固体撮像素子3を制御して読取対象物に形成される図4に示す測距パターン101aまたは図5に示す測距パターン101bの撮像を開始する。
【0093】
図16のステップSB3で、CPU12は、固体撮像素子3の出力から、読取対象物からの画像信号があるか判断し、読取対象物からの画像信号が無いと判断すると、ステップSB2に戻り、測距光の照射及び撮像を行う。
【0094】
読取対象物からの画像信号が有ると判断すると、図16のステップSB4で、CPU12は、固体撮像素子3で測距パターン101aまたは測距パターン101bを撮像して取得した画像から、露出を計算する。また、非照射領域103aまたは非照射領域103bを検出して、非照射領域103aまたは非照射領域103bの座標から、読取対象物との距離を計算する。
【0095】
図16のステップSB5で、CPU12は、照明光出射部4による照明光Scの照射時間を制御して露出を合わせると共に、撮像光学部5を制御して読取対象物であるコード記号100にフォーカスを合わせる。
【0096】
図16のステップSB6で、CPU12は、固体撮像素子3を制御して、デコードを行う読取対象物であるコード記号100の撮像を開始し、ステップSB7で、固体撮像素子3からコード記号100を含む読取対象物の画像をデコード部11に転送する。
【0097】
図16のステップSB8で、CPU12は、固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像であるか判断する。固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像ではないと判断すると、ステップSB5に戻り、露出調整、フォーカス調整、及び読取対象物の撮像を行う。
【0098】
固体撮像素子3から転送された画像が、デコード可能な画像であると判断すると、図16のステップSB9で、CPU12は、デコード処理を開始し、ステップSB10で、デコード処理が可能であると判断すると、コード記号100のデコード処理を行って、読取処理を終了する。また、ステップSB10で、デコード処理が可能ではないと判断すると、ステップSB5に戻り、露出調整、フォーカス調整、及び読取対象物の撮像を行う。
【0099】
図17は、本実施の形態の光学的情報読取装置における測距動作の一例を示すフローチャート、図18は、測距パターンと取り込むエリアの関係を示す説明図、図19は、測距パターンを撮像して得られる画像信号の一例を示す説明図で、次に、各図を参照して、図15に示すフローチャートのステップSA2、SA3、図16に示すフローチャートのステップSB2、SB4で説明した測距光の照射、測距パターンの撮像、及び距離計算の詳細について説明する。
【0100】
図17のステップSC1で、CPU12は、測距光出射部2を制御して測距光Saまたは測距光Sbの照射を開始し、ステップSC2で、固体撮像素子3を制御して、読取対象物に形成される測距パターン101aまたは測距パターン101bの撮像を開始する。測距パターン101aまたは測距パターン101bの撮像が終了すると、ステップSC3で、測距光Saまたは測距光Sbの照射を終了し、ステップSC4で、測距パターン101aまたは測距パターン101bの画像を取り込む。
【0101】
測距パターン101aまたは測距パターン101bの画像を取り込むと、CPU12は、図17のステップSC5で、図18に示すように予め定められた測距用画像のサンプリングエリアE1をスキャンする。
【0102】
測距パターン101aまたは測距パターン101bは、水平方向に幅をもつ信号であり、図18に示すように、測距パターン101aまたは測距パターン101bの形状に合わせてサンプリングエリアE1を設定する。そして、例えば、固体撮像素子3で取得した画像の中心付近から、非照射領域103aまたは非照射領域103bを検出できるまで、すなわち、図19に示す測距信号部SgDである信号の落ち込み部分を検出できるまで、順次スキャンを行う。
【0103】
これにより、図18に示すように、測距パターンの画像を取り込む測距用画像のサンプリングエリアE1を設定すれば、全画素分の画像をスキャンする必要はなく、測距に要する時間を短縮できる。
【0104】
測距用画像のサンプリングエリアE1をスキャンすると、図17のステップSC6で、CPU12は、取り込んだ画像に測距パターン101aまたは測距パターン101bの信号があるか判断する。測距パターン101aまたは測距パターン101bの信号が無いと判断すると、処理を終了する。
【0105】
取り込んだ画像に測距パターン101aまたは測距パターン101bの信号があると判断すると、図17のステップSC7で、CPU12は、図19に示す測距信号部SgDである信号の落ち込み部分の画素の座標を計算する。
【0106】
信号の落ち込み部分の画素の座標を計算すると、図17のステップSC8で、CPU12は、上述したパラメータと(1)式に基づき予め設定された測距テーブルを参照して、読取対象物であるコード記号100までの距離を求め、ステップSC9で、撮像光学部5を制御してフォーカスを合わせる。
【0107】
<本実施の形態の光学的情報読取装置の効果例>
本実施の形態の光学的情報読取装置1Aでは、測距光Sa(Sb)を照射して、光の照射領域102a(102b)の間に非照射領域103a(103b)が設けられる測距パターン101a(101b)を読取対象物に形成し、測距パターン101a(101b)を撮像した画像信号から、信号の落ち込む部分を検出して測距に必要な信号を取得し、読取対象物までの距離を求めるので、周辺光量の変化や、読取対象物の大きさ等によらず、処理速度の高速化を図り、確実に測距を行うことができる。
【0108】
また、測距光Sa(Sb)を可視光とし、照射領域102a(102b)を、撮像光学部5の画角、固体撮像素子3の撮像エリアの画素部の大きさ等に応じた読取可能範囲に合わせることで、測距に用いる単一の光源及び光学系で、読取可能範囲の表示を行うことができる。
【0109】
これにより、読取可能範囲を表示するための別の光源、及び光源から出射した光を読取可能範囲に合わせる光学系を備える必要がなく、装置の小型化、及び低コスト化を図ることができる。また、読取可能範囲を表示することで、コード記号100が読取可能範囲に入っていないことに起因する読取動作の試行を繰り返す必要が無くなり、読取動作の高速化が図れる。
【0110】
更に、シリンドリカルレンズ等の光学レンズを用いて測距パターン101a(101b)を形成できることから、回折格子やホログラムを使用するような光学系と比較して、コストを抑えることができる。
【0111】
図20は、本実施の形態の光学的情報読取装置の効果の一例を示す説明図、図21は、比較例として従来の測距方法の課題を示す説明図であり、次に、信号の落ち込む部分を利用して測距を行う効果の詳細について説明する。
【0112】
上述した図15のフローチャートのステップSA2、または、図16のフローチャートのステップSB2で、測距パターン101aまたは測距パターン101bの画像を取得する動作では、読取対象物が近くに存在する場合や、周辺光量が大きい場合等に、1回目の撮像で露出が飽和する場合がある。
【0113】
そこで、図15のステップSA3、または、図16のステップSB4で、固体撮像素子3で測距パターン101aまたは測距パターン101bを撮像して取得した画像から、露出を計算し、露出が飽和して測距か可能な信号ではないような場合に、露出を補正して、測距が可能な信号を得るようにしている。
【0114】
図21(a)に示すように、測距用に設定したスポット状の強度の強い信号Sp4を検出する従来の測距方法では、露出が飽和すると、図21(b)に示すように、信号の強度のピークを検出することができず、測距に必要な信号を得ることができない。信号の強度のピークを検出する場合、許容露出値が狭く、露出の補正が必要で、測距処理の高速化の妨げになる。
【0115】
これに対して、図20(a)に示すように、信号の落ち込む部分を利用して測距を行う本願発明の光学的情報読取装置1Aでは、露出が飽和しても、図20(b)に示すように、信号の立ち下がりと信号の立ち上がりから測距信号部SgDを検出することができ、信号の落ち込み部分の座標を一意に求めることができる。
【0116】
これにより、信号の落ち込みを検出する本実施の形態の測距方法は、従来の信号強度レベルのピークを検出する方法と比較して、測距可能な信号の許容露出値が広くなり、画像の露出補正の回数を少なくし、測距処理の高速化を図ることができる。
【0117】
図22は、本実施の形態の光学的情報読取装置の効果の他の例を示す説明図、図23、図24は、比較例として従来の測距方法の課題を示す説明図であり、次に、放射角を持つ光源で、読取可能範囲を示す照射領域の間に非照射領域を形成し、信号の落ち込む部分を利用して測距を行う効果について説明する。
【0118】
可変焦点機能を持つバーコードスキャナによる従来の測距方法としては、レーザ光源から出射される光で読取対象物に形成したスポットを固体撮像素子で撮像し、スポットの座標で測距を行う技術が知られている。一方、図23(a)に示すように、放射角を持った光源でも、強度の強いスポット部Spを測距点にすることが可能である。
【0119】
すなわち、放射角を持った光源から出射される測距光Sdで、強度の強いスポット部Spを中心に持つパターンを形成し、このパターンを固体撮像素子で撮像すると、図24(a)に示すように、中心部分にスポットに対応した信号Sp1を確認できる。これにより、この信号の座標を求めることで、測距を行うことができる。
【0120】
しかし、図23(b)に示すように、コード記号100が形成された読取対象物105が、光源の放射角に比較して小さい場合、読取対象物105に測距光Sdで照射される部分と照射されない部分が存在し、測距光Sdが反射しない部分が発生する。
【0121】
このため、図24(b)に示すように、放射角を持つ測距光Sdで形成されるパターンを固体撮像素子で撮像した画像中に、信号の欠ける部分が存在すると、測距用に設定した強度の強い信号Sp1以外に、信号の立ち上がりと立ち下がりが近接することで、測距用に設定した強度の強い信号Sp2と同形状の信号Sp3が発生することがある。
【0122】
従って、測距用に設定した強度の強い信号と同形状の信号が他にあると、信号の強度のピークを検出して座標を一意に求めることができず、測距を行うことができない。
【0123】
これに対して、本願発明の光学的情報読取装置1Aでは、図22(a)に示すように、コード記号100が形成された読取対象物105が、測距パターン101aまたは測距パターン101bに比較して小さく、測距パターン101aまたは測距パターン101bが反射しない部分が発生しても、図22(b)に示すように、測距信号部SgDである信号の落ち込み部分は、複数個所に存在することはない。
【0124】
従って、本実施の形態の光学的情報読取装置1Aでは、信号の立ち下がりと信号の立ち上がりを検出することで、信号の落ち込み部分の座標を一意に求めることができ、読取対象物の大きさ等の条件によらず、測距を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、バーコードリーダや二次元コードリーダ等に利用することができ、測距精度の高いオートフォーカスを実現できる。
【符号の説明】
【0126】
1A・・・光学的情報読取装置、2・・・測距光出射部、3・・・固体撮像素子、4・・・照明光出射部、5・・・撮像光学部、10・・・カメラ部、11・・・デコード部、100・・・コード記号、101a,101b・・・測距パターン、102a,102b・・・照射領域、103a,103b・・・非照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変焦点光学系を有した撮像光学手段と、
読取対象物を撮像する撮像手段と、
読取対象物との距離を測距する測距手段と、
前記測距手段を用いて読取対象物までの距離を算出し、算出された距離情報に基づき前記撮像光学手段を制御して、前記撮像手段で読取対象物の撮像を行う制御手段とを備え、
前記測距手段は、光の照射領域と非照射領域が組み合わせられた測距パターンを読取対象物に形成する測距光を出射し、
前記制御手段は、読取対象物に形成された前記測距パターンを前記撮像手段で撮像して前記測距パターンの画像を取得し、前記撮像手段に入射する光の強度に応じて信号が落ち込む部分を検出して、前記測距パターンの前記非照射領域の座標に基づき測距を行う
ことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記測距パターンは、前記照射領域の中央部分に、1つの前記非照射領域が形成される
ことを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記測距パターンは、可視領域の測距光を読取対象物に照射して形成される
ことを特徴とする請求項1または2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記測距パターンは、一の方向に広がる前記照射領域で、読取可能範囲を示す
ことを特徴とする請求項3記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記測距手段は、少なくとも一の方向に所定の放射角で光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の一部を屈折または反射、あるいは屈折と反射で光路を変更して、前記測距領域の間に前記非照射領域が設けられる前記測距パターンを形成するパターン形成レンズを備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−173124(P2012−173124A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35161(P2011−35161)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【Fターム(参考)】