説明

光学積層体の製造方法

【課題】優れたアンチブロッキング性を有するとともに、優れた帯電防止性及び光透過性等の光学特性を有し、干渉縞が発生せず外観が良好である光学積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性基材及びハードコート層を有する光学積層体の製造方法であって、多官能モノマー、多官能オリゴマー、帯電防止剤及び浸透性溶剤を含み、これらの各材料が相溶したハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布する工程、塗布して得られた被膜中の上記多官能モノマーと上記浸透性溶剤とを上記光透過性基材に浸透させ、上記多官能オリゴマーと上記帯電防止剤とを相分離させる工程、及び、上記被膜を硬化させて、上記光透過性基材側と反対側の表面に凹凸形状を有するハードコート層を形成する工程を有することを特徴とする光学積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の最表面には、反射防止性能等の種々の性能を有する機能層からなる光学積層体が設けられている。上記光学積層体としては、例えば、帯電による埃等の付着や製造工程内の不具合の発生を防ぐため、帯電防止剤を添加した帯電防止層を有する光学積層体が知られている。
【0003】
このような光学積層体は、製造工程において、巻き取ったり、重ねたりすると互いに貼りついて工程内不良が生じるといった問題があった。そのような貼りつきを防ぐために、一般に、光学積層体の表面に微細な凹凸形状を形成することが知られている。
【0004】
光学積層体の表面に微細な凹凸形状を付与する方法としては、例えば、ハードコート層に粒子を添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、粒子を添加することで凹凸形状を付与する方法では、比較的大きな凹凸形状が形成されること、及び、内部散乱が生じること等により、光学積層体の貼り付きを防ぐことはできても、ヘイズが付与され、所望の光透過性等の光学特性を有する光学積層体を得ることが困難であった。
【0005】
一方、例えば、特許文献2では、光透過性基材と該光透過性基材の上に形成された1種又は2種以上の光学特性層とを備えてなる光学積層体であって、光学特性層が形成された光透過性基材の表面との反対の面に、有機溶剤により凹凸形状が形成されてなり、光学積層体同士が互いに貼り付くのを抑制した光学積層体が開示されている。
【0006】
しかしながら、有機溶剤により表面に凹凸形状を形成する方法においては、帯電防止剤等を添加して帯電防止性を付与した上で、所望の光透過性等の光学特性を有することができる凹凸形状を好適に形成することが困難であった。また、基材上にハードコート層を形成した後に、基材表面に凹凸形状を形成するため、製造工程が煩雑であった。
【0007】
このように、光学積層体の貼り付きを抑制する、いわゆるアンチブロッキング性を有するとともに、優れた帯電防止性及び光学特性を有する光学積層体の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−316413号公報
【特許文献2】特開2006−95872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みて、優れたアンチブロッキング性を有するとともに、優れた帯電防止性及び光透過性等の光学特性を有し、干渉縞が発生せず外観が良好である光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光透過性基材及びハードコート層を有する光学積層体の製造方法であって、多官能モノマー、多官能オリゴマー、帯電防止剤及び浸透性溶剤を含み、これらの各材料が相溶したハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布する工程、塗布して得られた被膜中の上記多官能モノマーと上記浸透性溶剤とを上記光透過性基材に浸透させ、上記多官能オリゴマーと上記帯電防止剤とを相分離させる工程、及び、上記被膜を硬化させて、上記光透過性基材側と反対側の表面に凹凸形状を有するハードコート層を形成する工程を有することを特徴とする光学積層体の製造方法である。
【0011】
上記凹凸形状は、JIS B 0601−1994に準拠した十点平均粗さRzが15〜100nmであることが好ましい。
上記帯電防止剤は、重量平均分子量1000〜5万である4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。
上記多官能モノマーは、重量平均分子量700以下であることが好ましい。
上記多官能オリゴマーは、重量平均分子量1000〜5万であることが好ましい。
上記ハードコート層形成用組成物における上記多官能モノマーと上記多官能オリゴマーとの配合比(多官能モノマー/多官能オリゴマー)は、質量比で10/90〜95/5であることが好ましい。
上記浸透性溶剤は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記光透過性基材は、トリアセチルセルロースからなることが好ましい。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、光透過性基材上にハードコート層を有する光学積層体であって、上記ハードコート層は、上記光透過性基材が位置する側と反対側の表面に凹凸形状を有し、上記凹凸形状は、JIS B 0601−1994に準拠した十点平均粗さRzが15〜100nmであることを特徴とする光学積層体である。
本発明の光学積層体は、ハードコート層の表面に上述の条件を満たす凹凸形状を有するため、優れたアンチブロッキング性と帯電防止性とを有するものである。また、上記ハードコート層表面の凹凸は、従来の光学積層体のような粒子を添加して形成されたものではないため、本発明の光学積層体は、優れた光透過性等の光学特性を有するものである。
また、上記ハードコート層の表面に上述の条件を満たす凹凸形状を有するものであるため、一層でアンチブロッキング性及び帯電防止性を有することができ、光学積層体を低コストで製造することができる。
【0014】
本発明の光学積層体は、光透過性基材上に、ハードコート層を有する。
上記ハードコート層は、光透過性基材が位置する側と反対側の表面に凹凸形状を有するものであり、該凹凸形状は、JIS B 0601−1994に準拠した十点平均粗さRzが15〜100nmである。15nm未満であると、本発明の光学積層体に充分なアンチブロッキング性が発揮されず、100nmを超えると、ヘイズが付与されて本発明の光学積層体の光透過性が低下する。上記Rzの好ましい上限は75nmである。
【0015】
なお、本明細書において、上記Rzとは、JIS B0601−1994に準拠する凹凸の十点平均粗さを表わすものであり、具体的には、表面粗さ測定器(型番:SE−3400、(株)小坂研究所製)を用いて、下記の条件にて測定することにより得ることができる。
1)表面粗さ検出部の触針:
型番/SE2555N(2μ標準)(株)小坂研究所製
(先端曲率半径2μm/頂角:90度/材質:ダイヤモンド)
2)表面粗さ測定器の測定条件:
基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
触針の送り速さ:0.1mm/s
【0016】
上記凹凸形状を表面に有するハードコート層は、帯電防止剤、多官能モノマー、多官能オリゴマー、及び、浸透性溶剤を含むハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布して、得られた被膜を硬化させることにより形成することができる。
【0017】
上記ハードコート層形成用組成物を使用してハードコート層を形成した場合、上述の効果を得ることができる理由としては、以下によると推測される。
すなわち、上記帯電防止剤と多官能オリゴマーとは、一般的に相溶性が悪い物質であるが、これらに更に上記多官能モノマーを組み合わせると、上記浸透性溶剤中において上記各材料は、良好に相容させることが可能となる。そして、これら帯電防止剤、多官能オリゴマー及び多官能モノマーを含むハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布して被膜を形成すると、上記多官能モノマーと上記浸透性溶剤とは、光透過性基材に浸透し、被膜中の成分として上記多官能オリゴマーと上記帯電防止剤の濃度が高くなる。そうすると、上記多官能モノマーと浸透性溶剤とが浸透した後の上記被膜の組成バランスが変化し、該被膜成分中に含まれる成分の相容性が低下し、該成分の析出や相分離等が発生して被膜表面に凹凸形状が形成される。このような表面状態の被膜を硬化させることにより、結果として上述の数値を満たす表面凹凸形状を有するハードコート層が形成されるものと推測される。
【0018】
また、上述した成分を含むハードコート層形成用組成物を使用してハードコート層を形成することにより、アンチブロッキング性及び帯電防止性のみならず、光学特性にも優れ、硬度が高く、干渉縞が発生せず外観が良好な光学積層体とすることができる。
【0019】
上記ハードコート層形成用組成物は、上記帯電防止剤を含有する。
上記帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。上記帯電防止剤が4級アンモニウム塩を含むことにより、ハードコート層に特に好適な帯電防止性を付与することができる。また、後述する樹脂成分及び浸透性溶剤と組み合わせることにより、上述の条件を満たす凹凸形状を有するハードコート層を特に好適に形成することができ、優れたアンチブロッキング性、帯電防止性及び光透過性等の光学特性を有する光学積層体を好適に得ることができる。
【0020】
上記4級アンモニウム塩は、重量平均分子量が1000〜5万であることが好ましい。1000未満であると、帯電防止剤自身が光透過性基材中へ浸透してしまい、効率良くハードコート層の表面に存在しなくなり、本発明の光学積層体の帯電防止性(特に、表面抵抗)が満足できないものとなることがある。5万を超えると、上記ハードコート層形成用組成物の粘度が高くなり塗工性が悪化することがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は1500であり、更に好ましい上限は3万である。
【0021】
なお、上記4級アンモニウム塩の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。GPC移動相の溶剤には、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。測定用カラムは、テトラヒドロフラン用又はクロロホルム用のカラムの市販品カラムを組み合わせて使用するとよい。上記市販品カラムとしては、例えば、Shodex GPC KF−801、GPC KF−802、GPC KF−803、GPC KF−804、GPC KF−805 GPC−KF800D(いずれも、商品名、昭和電工社製)等を挙げることができる。検出器には、RI(示差屈折率)検出器及びUV検出器を使用するとよい。このような溶剤、カラム、検出器を使用して、例えば、Shodex GPC−101(昭和電工社製)等のGPCシステムにより、上記重量平均分子量を適宜測定することができる。
【0022】
上記4級アンモニウム塩は、光反応性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。上記光反応性不飽和結合を有することにより、形成するハードコート層を高硬度とすることが可能となる。上記光反応性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル基を有する化合物等が挙げられる。
【0023】
上記4級アンモニウム塩としては市販品を用いることもできる。上記4級アンモニウム塩の市販品としては、例えば、H6100、H6100M、H0600X(商品名、三菱化学社製)、ユニレジンAS−10/M、ユニレジンAS−12/M、ユニレジンAS−15/M、ユニレジンASH26(商品名、新中村化学社製)等が挙げられる。
【0024】
上記ハードコート層形成用組成物における上記4級アンモニウム塩の含有量としては、全固形分中1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、所望の帯電防止性やアンチブロッキング性が発現されないおそれがある。20質量%を超えると、ハードコート層の表面に上述した凹凸形状を形成することができず、本発明の光学積層体のヘイズが上昇して光透過率が低下するおそれがある。また、コストの面でも好ましくない。上記4級アンモニウム塩の含有量のより好ましい下限は1質量%であり、より好ましい上限は10質量%である。
【0025】
上記ハードコート層形成用組成物は、多官能モノマーを含む。
上記多官能モノマーとしては、重量平均分子量が700以下であることが好ましい。700を超えると、所望の凹凸形状をハードコート層の表面に形成することができないおそれがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は280、より好ましい上限は600である。
上記多官能モノマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。GPC移動相の溶剤には、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。測定用カラムは、テトラヒドロフラン用又はクロロホルム用のカラムの市販品カラムを組み合わせて使用するとよい。上記市販品カラムとしては、例えば、Shodex GPC KF−801、GPC−KF800D(いずれも、商品名、昭和電工社製)等を挙げることができる。検出器には、RI(示差屈折率)検出器及びUV検出器を使用するとよい。このような溶剤、カラム、検出器を使用して、例えば、Shodex GPC−101(昭和電工社製)等のGPCシステムにより、上記重量平均分子量を適宜測定することができる。
【0026】
上記多官能モノマーとしては、3官能以上の(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましい。本発明の光学積層体における光透過性基材とハードコート層との密着性が極めて優れたものとすることができるからである。
上記3官能以上の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリレートは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたもの等を挙げることができる。これらは2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0027】
上記ハードコート層形成用組成物は、多官能オリゴマーを含む。
上記多官能オリゴマーは、重量平均分子量が1000〜5万であることが好ましい。1000未満であると、上記多官能オリゴマー自身が光透過性基材中へ浸透してしまい、ハードコート層表面に上述した凹凸形状を形成することができないおそれがある。5万を超えると、上記ハードコート層形成用組成物の粘度が高くなりすぎて、塗工を好適に行うことができないおそれがある。なお、上記多官能オリゴマーの重量平均分子量は、上述の4級アンモニウム塩の重量平均分子量の測定方法と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。
【0028】
上記多官能オリゴマーは、6官能以上であることが好ましい。6官能未満であると、形成するハードコート層に所望のハードコート性を付与することができないことがある。上記多官能オリゴマーは、10官能以上であることがより好ましい。
【0029】
上記多官能オリゴマーとしては、上述した多官能モノマーの重合体又は共重合体が挙げられる。また、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等のアクリレート系化合物のオリゴマーも挙げることができる。なかでも、本発明の光学積層体のハードコート層に好適な硬度を付与できる点で、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーであることが好ましい。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、上記多官能オリゴマーとしては市販品を用いることもできる。上記多官能オリゴマーの市販品としては、例えば、日本合成社製の紫光シリーズ、UV1700B、UV6300B、UV765B、UV7640B、UV7600B等;根上工業社製のアートレジンシリーズ、アートレジンHDP、アートレジンUN3320HSBA、UN9000H、アートレジンUN3320HA、アートレジンUN3320HB、アートレジンUN3320HC、アートレジンUN3320HS、アートレジンUN901M、アートレジンUN902MS、アートレジンUN903等;新中村化学社製のUA100H、U4H、U4HA、U6H、U6HA、U15HA、UA32P、U6LPA、U324A、U9HAMI等;ダイセル・ユーシービー社製のEbecrylシリーズ、1290、5129、254、264、265、1259、1264、4866、9260、8210、204、205、6602、220、4450等;荒川化学社製のビームセットシリーズ、371、577等;三菱レーヨン社製のRQシリーズ、大日本インキ社製のユニディックシリーズ等;DPHA40H(日本化薬社製)、CN9006(サーマー社製)、CN968等、が挙げられる。この中でも、UV1700B(日本合成社製)、DPHA40H(日本化薬社製)、アートレジンHDP(根上工業社製)、ビームセット371(荒川化学社製)、ビームセット577(荒川化学社製)U15HA(新中村化学社製)が好ましい。
【0031】
上記ハードコート層形成用組成物における上記多官能モノマーと上記多官能オリゴマーとの配合比(多官能モノマー/多官能オリゴマー)は、質量比で10/90〜95/5であることが好ましい。10/90未満であると、多官能オリゴマーの割合が多くなるため、製造する本発明の光学積層体に干渉縞が発生するおそれや光透過性基材とハードコート層との密着性が悪化するおそれがある。95/5を超えると、多官能モノマーの割合が多くなり、製造する本発明の光学積層体の光透過性基材とハードコート層との密着性が低下したり、次工程で上記ハードコート層形成用組成物を塗布して得られた被膜を硬化する際に、熱の発生により光透過性基材にシワが生じたりするおそれがある。上記配合比は、30/70〜70/30であることがより好ましい。
【0032】
上記ハードコート層形成用組成物は、浸透性溶剤を含む。
上記浸透性溶剤とは、その溶剤を含む組成物を塗工する基材に対して、湿潤性、膨潤性を発現できる溶剤や、更に、基材の中に浸透するとともに、組成物も一緒に浸透させる補助的な働きのできる溶剤をいう。上記浸透性溶剤を使用することにより、ハードコート層表面に上述した凹凸形状を形成することができる。また、製造する本発明の光学積層体の光透過性基材とハードコート層との層間密着性を良好にし、更に干渉縞の発生を防ぐことができる。
【0033】
上記浸透性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類;ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;メチルグリコール、メチルグリコールアセテート等のグリコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のグリコールエーテル類;その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられる。また、これらの混合物であってもよい。なかでも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
上記浸透性溶剤の添加量は、上記ハードコート層形成用組成物中において、上記多官能モノマー、多官能オリゴマー及び帯電防止剤の合計固形分100質量部に対して、30〜500質量部であることが好ましい。30質量部未満であると、上記ハードコート層形成用組成物の塗工が困難となり、塗工面が悪化して製造する光学積層体の品質的に問題となるおそれがあり、また、干渉縞が発生するおそれがある。500質量部を超えると、浸透性溶剤が、光透過性基材を溶解又は膨潤させる程度が大になり、製造する光学積層体の硬度が悪化するおそれがある。また上記多官能モノマーも光透過性基材に浸透するために、充分な架橋反応が起こりにくく、製造する光学積層体に充分な硬度が得られなくなるおそれがある。
【0035】
上記ハードコート層形成用組成物は、上述した成分の他に、本発明の効果に影響を与えない程度に必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、光重合開始剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、上述した以外の樹脂等を挙げることができる。
【0036】
上記光重合開始剤としては、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独で使用するか又は2種以上を併用してもよい。
上記光重合開始剤の添加量は、上記バインダー樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
上記レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、その他の樹脂は、公知のものを使用するとよい。
【0037】
また、上記ハードコート層形成用組成物は、本発明の効果に影響を与えない程度に、必要に応じて、他の帯電防止剤、防眩剤、低屈折率剤、中屈折率剤、防汚剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
上記ハードコート層形成用組成物を調製する方法としては、例えば、上記帯電防止剤、多官能モノマー、多官能オリゴマー、浸透性溶剤及びその他の成分を混合分散させる方法が挙げられる。上記混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等の公知の方法を使用することができる。
【0039】
上記ハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。
上記ハードコート層形成用組成物の塗布量としては、後述する層厚みのハードコート層が形成できるように、適宜調整するとよい。
【0040】
上記ハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布して得られた被膜を硬化させる方法としては、例えば、上記被膜に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
なお、上記活性エネルギーの照射に先立って該被膜を必要に応じて乾燥させてもよい。
【0041】
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射が挙げられる。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0042】
このような方法で形成した本発明の光学積層体におけるハードコート層の層厚みとしては、0.05〜30μmであることが好ましい。0.05μm未満であると、形成したハードコート層に塗工斑が出て外観が悪くなるだけでなく、硬度がでないおそれがある。また30μmを超えると、製造する本発明の光学積層体自身にクラックが入ったり、巻取りが困難になったりするだけでなく、コスト的にも高くなってしまうことがある。また、製造する光学積層体のヘイズ上昇、光透過率も下がる危険性がある。上記層厚みのより好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は20μmである。
なお、上記ハードコート層の層厚みは、本発明の光学積層体の断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察して、ハードコート層が形成されていない基材の面からハードコート層の凹凸形状の凸部までの総厚みを測定して得られた値から、基材の厚みを差し引いた値であり、任意の十点について計測した値の平均値である。
【0043】
本発明の光学積層体は光透過性基材を有する。
上記光透過性基材としては、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース、セルロースジアセテート及びセルロースアセテートブチレート等のセルロース系化合物が挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0044】
上記光透過性基材の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、より好ましい下限は30μm、より好ましい上限は200μmである。
また、上記光透過性基材は、その上にハードコート層を形成するのに際して、ハードコート層との接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0045】
本発明の光学積層体は、上記光透過性基材上に上述のハードコート層を有するものであるが、必要に応じて任意の層として、低屈折率層、帯電防止層、防眩層、高屈折率層、中屈折率層、防汚層等を有していてもよい。
上記低屈折率層、帯電防止層、防眩層、高屈折率層、中屈折率層、防汚層は、一般に使用される公知の低屈折率剤、帯電防止剤、防眩剤、高屈折率剤、中屈折率剤、防汚剤や樹脂等を添加した組成物を調製し、それぞれの層を公知の方法により形成するとよい。
【0046】
本発明の光学積層体は、表面抵抗値が1010Ω/□以下であることが好ましい。1010Ω/□を超えると、目的とする帯電防止性能が発現しなくなるおそれがある。上記表面抵抗値は、10Ω/□以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明の光学積層体は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、本発明の光学積層体を画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0048】
また、本発明の光学積層体は、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。このような低ヘイズ値は、上述したハードコート層用組成物を用いて表面に上述した条件を満たす凹凸形状を有するハードコート層を形成することで達成することができる。また、このような表面凹凸形状を有するハードコート層を有する本発明の光学積層体は、更にアンチブロッキング性及び帯電防止性にも優れるものである。
【0049】
本発明の光学積層体は、硬度がJIS K5400による鉛筆硬度試験において、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0050】
本発明の光学積層体を製造する方法としては、例えば、多官能モノマー、多官能オリゴマー、帯電防止剤及び浸透性溶剤を含むハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布する工程、及び、塗布して得られた被膜を硬化してハードコート層を形成する工程を有する方法を挙げることができる。このような光学積層体の製造方法もまた本発明の一つである。
【0051】
本発明の光学積層体の製造方法において、上記多官能モノマー、多官能オリゴマー、帯電防止剤及び浸透性溶剤を含むハードコート層形成用組成物については、上述したハードコート層形成用組成物と同様のものを挙げることができる。また、上記ハードコート層形成用組成物を塗布する方法、及び、塗布して得られた被膜を硬化させる方法も、上述したハードコート層の形成方法と同様の方法を挙げることができる。
【0052】
また、本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、本発明による光学積層体を、光透過性基材におけるハードコート層が存在する面と反対側の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板もまた、本発明の一つである。
【0053】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。
上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(好ましくは、トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0054】
本発明は、最表面に上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
【0055】
上記非自発光型の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0056】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0057】
上記自発光型画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0058】
上記自発光型画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0059】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FEDなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の光学積層体は、上述した構成からなるものであるため、アンチブロッキング性、帯電防止性及び光透過性等の光学特性に優れたものとなる。このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。また、特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0062】
以下の製造例1〜11に示した配合によってハードコート層形成用組成物1〜11を調製した。
<製造例1 ハードコート層形成用組成物1>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
3質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0063】
<製造例2 ハードコート層形成用組成物2>
ウレタンアクリレート
(UV1700B;日本合成社製、10官能、重量平均分子量Mw2000) 4質量部
ポリエステルアクリレート(M9050、東亞合成社製、Mw418) 3質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0064】
<製造例3 ハードコート層形成用組成物3>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 1質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
1質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 16質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に8.0%存在する)
【0065】
<製造例4 ハードコート層形成用組成物4>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 5質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
4質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 2質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 9質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に1.0%存在する)
【0066】
<製造例5 ハードコート層形成用組成物5>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
3質量部
帯電防止剤(固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw20000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0067】
<製造例6 ハードコート層形成用組成物6>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
3質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
酢酸メチル 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0068】
<製造例7 ハードコート層形成用組成物7>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
3質量部
帯電防止剤(固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw1000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0069】
<製造例8 ハードコート層形成用組成物8>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 7質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0070】
<製造例9 ハードコート層形成用組成物9>
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、重量平均分子量Mw524) 7質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0071】
<製造例10 ハードコート層形成用組成物10>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
3質量部
帯電防止剤(H600X;三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分が10%含有、4級アンモニウム塩成分はMw2000) 6質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
トルエン 7質量部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3.0%存在する)
【0072】
<製造例11 ハードコート層形成用組成物11>
ウレタンアクリレート
(BS577;荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 4質量部
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA、日本化薬社製、Mw524)
6.7質量部
帯電防止剤(N,N−ジメチルモノエタノールアミノメタクリレート塩酸塩、Mw1000以下) 0.3質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(※帯電防止剤は固形分中に3.0%存在する)
【0073】
<製造例12 ハードコート層形成用組成物12>
帯電防止剤の配合量を10質量部にした以外は、製造例1のハードコート層形成用組成物1と同様にして、ハードコート層形成用組成物12を調製した。
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に4.2%存在する)
【0074】
<製造例13 ハードコート層形成用組成物13>
帯電防止剤の配合量を50質量部にした以外は、製造例1のハードコート層形成用組成物1と同様にして、ハードコート層形成用組成物13を調製した。
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に7.8%存在する)
【0075】
<製造例14 ハードコート層形成用組成物14>
帯電防止剤の配合量を100質量部にした以外は、製造例1のハードコート層形成用組成物1と同様にして、ハードコート層形成用組成物14を調製した。
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に8.8%存在する)
【0076】
実施例1 光学積層体の製造
光透過性基材(商品名TF80UL、厚み80μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、富士写真フィルム社製)を準備し、フィルムの片面に、ハードコート層形成用組成物1を塗布し、温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥して塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、15g/cm(乾燥時)の帯電防止性ハードコート層を形成させて、光学積層体を調製した。
【0077】
実施例2〜10
上記ハードコート層形成用組成物1の代わりに上記ハードコート層形成用組成物2〜7、12〜14を使用した以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。
【0078】
比較例1〜4
上記ハードコート層形成用組成物1の代わりに上記ハードコート層形成用組成物8〜11を使用した以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。
【0079】
実施例及び比較例で得られた光学積層体を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
(十点平均粗さRz)
実施例及び比較例で製造した光学積層体のハードコート層の表面のRz値を、JIS B 0601−1994に準拠した十点平均粗さの測定方法にて測定した。
【0080】
(アンチブロッキング性(貼付防止性能))
実施例及び比較例で製造した全幅1330mmの光学積層体を200〜400N/cmの張力で巻取り、5日間常温で放置した後、空ロールへ巻き返し、貼りつきの有無を目視で確認し、以下の基準により評価した。
○:貼り付きなし
×:貼り付きあり
【0081】
(表面抵抗値)
実施例及び比較例で製造した光学積層体の表面抵抗値(Ω/□)は、表面抵抗値測定器(三菱化学社製、製品番号;Hiresta IP MCP−HT260)にて印加電圧1000Vで測定した。
【0082】
(全光線透過率)
実施例及び比較例で製造した光学積層体の全光線透過率(%)は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に従い測定した。
【0083】
(ヘイズ値)
実施例及び比較例で製造した光学積層体のヘイズ値(%)は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に従い測定した。
【0084】
(干渉縞の発生の有無)
実施例及び比較例で製造した光学積層体のハードコート層と逆の面に、裏面反射を防止するための黒色テープを貼り、ハードコート層の面から光学積層体を目視により観察し、干渉縞の発生の有無を評価した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1より、実施例の光学積層体は、アンチブロッキング性及び帯電防止性に優れるものであった。また、光学特性(光透過率、ヘイズ)にも優れ、干渉縞も発生しないものであった。一方、比較例の光学積層体は、アンチブロッキング性、帯電防止性、光学特性、及び干渉縞の発生の防止ともに優れるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材及びハードコート層を有する光学積層体の製造方法であって、
多官能モノマー、多官能オリゴマー、帯電防止剤及び浸透性溶剤を含み、これらの各材料が相溶したハードコート層形成用組成物を光透過性基材上に塗布する工程、
塗布して得られた被膜中の前記多官能モノマーと前記浸透性溶剤とを前記光透過性基材に浸透させ、前記多官能オリゴマーと前記帯電防止剤とを相分離させる工程、及び、
前記被膜を硬化させて、前記光透過性基材側と反対側の表面に凹凸形状を有するハードコート層を形成する工程を有する
ことを特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項2】
凹凸形状は、JIS B 0601−1994に準拠した十点平均粗さRzが15〜100nmである請求項1記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
帯電防止剤は、重量平均分子量1000〜5万である4級アンモニウム塩を含む請求項1又は2記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
多官能モノマーは、重量平均分子量700以下である請求項1、2又は3記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
多官能オリゴマーは、重量平均分子量1000〜5万である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
ハードコート層形成用組成物における多官能モノマーと多官能オリゴマーとの配合比(多官能モノマー/多官能オリゴマー)は、質量比で10/90〜95/5である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
浸透性溶剤は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学積層体の製造方法。
【請求項8】
光透過性基材は、トリアセチルセルロースからなる請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学積層体の製造方法。


【公開番号】特開2013−37372(P2013−37372A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193461(P2012−193461)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2008−223710(P2008−223710)の分割
【原出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】