説明

光学系フィルタ、撮像制御装置、および画像処理装置

【課題】撮像手段の有効画素数を低下させることなく、異なる波長帯を撮像した複数の撮像画像を1つの撮像手段で得るための技術を提供する。
【解決手段】光学系フィルタ31,41は、一対の偏光フィルタ33,35と、これらの一対の偏光フィルタ33,35の間に配置され、自身に電圧が印可されるか否かに応じて旋光性の有無を変化させて入射された光波を透過させる液晶封止部37とを備えている。特に、各偏光フィルタ33,35は、光波の振動方向に拘わらず赤外光を含む第1波長以上の光波を透過させるとともに、第1波長未満の直線偏光を透過させる機能を備え、一対の偏光フィルタ33,35の各偏光面は互いに平行に配置されているか、或いは一方の偏光フィルタ33,35の偏光面が液晶封止部37による偏光面の回転角度分だけ他方の偏光フィルタ33,35の偏光面に対して回転して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分の光波のみを透過させる機能を有する光学系フィルタ、撮像制御装置、および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの撮像画像を複数の手法によって画像処理することによって、光学特性の異なる画像信号(例えば、望遠画像および広角画像等)を出力することができる画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−325135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、夜間において通行人や他車両を撮像画像中から検出するようなときには、赤外光を含み可視光のうちの波長の短い光波を含まない波長帯を撮像した撮像画像(以下、「第1の撮像画像」という。)を利用すると検出精度がよい場合がある。また一方で、白線等のエッジ(撮像画像中の輝度が異なる領域の境界線)を撮像画像中から検出するようなときには、可視光のうちの波長の短い光波を含む波長帯を撮像した撮像画像(以下、「第2の撮像画像」という。)を利用すると検出精度がよい場合がある。つまり、撮像画像の利用方法によって、撮像手段に入射される光の特性(波長帯)が変更できるとよい。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1を含む従来の画像処理装置においては、撮像画像に対して何らかの処理を実施するのみであったため、撮像画像に入射される光の特性を変更することはできない。よって、第1の撮像画像を得るための第1の撮像手段と、第2の撮像画像を得るための第2の撮像手段との両方を備えておく必要があった。
【0005】
なお、撮像手段における有効画素のうちの半分を、第1の撮像画像を得るために利用し、残りの半分を第2の撮像画像を得るために利用することによって、1つの撮像手段を利用して第1の撮像画像および第2の撮像画像を得る手法もあるが、この手法では、有効画素数が低下するため、撮像手段としての感度が低下したり、エッジ成分等を検出する際の分解能が低下したりする虞がある。
【0006】
そこでこのような問題点を鑑み、撮像手段の有効画素数を低下させることなく、異なる波長帯を撮像した複数の撮像画像を1つの撮像手段で得るための技術を提供すること本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の光学系フィルタにおいては、一対の偏光手段と、これらの一対の偏光手段の間に配置され、自身に電圧が印可されるか否かに応じて旋光性の有無を変化させて入射された光波を透過させる可変旋光手段とを備えている。特に、各偏光手段は、光波の振動方向に拘わらず赤外光を含む第1波長以上の光波を透過させるとともに、第1波長未満の直線偏光を透過させる機能を備え、一対の偏光手段の各偏光面は互いに平行に配置されているか、或いは一方の偏光手段の偏光面が可変旋光手段による偏光面の回転角度分だけ他方の偏光手段の偏光面に対して回転して配置されている。
【0008】
このような光学系フィルタによれば、可変旋光手段に電圧を印可するか否かに応じて第1波長以上の光波のみを透過させるか、第1波長未満の光波を含む光波を透過させるかを選択することができる。
【0009】
なお、本発明でいう「透過させる」とは、「光波の透過率が所定値以上」であることを意味し、「光波の全てを透過させる」との意味のみではない。また、ここでいう「所定値」とは、この光学系フィルタを透過後の光波(透過光)を利用する他の機能がその性能を発揮できる程度の値に設定されていればよく、例えば、撮像手段がこの透過光を利用する場合には、この撮像手段が透過光を検出できる最低限の光波の透過率に設定されていればよい。
【0010】
ところで、請求項1に記載の光学系フィルタにおいて、可変旋光手段は、請求項2に記載のように、電圧が印可されるか否かに応じて第2波長未満の光波について偏光面を回転させるか否かを選択して入射された光波を透過させるとともに、電圧が印可されるか否かに拘わらず赤外光を含む第2波長以上の光波を、偏光面を回転させることなく透過させてもよい。
【0011】
このような光学系フィルタによれば、可変旋光手段が第2波長未満の光波のみに対して旋光性を有するため、第1波長以上かつ第2波長以上の光波を、偏光面を回転させることなくそのまま透過させることができる。
【0012】
さらに、請求項2に記載の光学系フィルタにおいては、請求項3に記載のように、可変旋光手段を複数備え、さらに、各可変旋光手段は、可変旋光手段毎に第2波長が異なる値に設定されていればよい。
【0013】
このような光学系フィルタによれば、何れの可変旋光手段に電圧を印可するかを変更することによって、偏光面を回転させる光波の成分(波長帯)を変更することができる。よって、透過させる光波の成分を選択することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の光学系フィルタにおいて、一対の偏光手段の各偏光面は互いに平行に配置されていてもよい。
このような光学系フィルタによれば、可変旋光手段に偏光面が回転されなかった光波を透過させることになるので、透過させる光波の波長を容易に選択することができる。
【0015】
次に、上記目的を達成するために成された請求項5に記載の撮像制御装置は、電圧が印可されるか否かに応じて透過させる光波の成分を変更する光学系フィルタと、該光学系フィルタを透過した光波を入射して撮像する撮像手段と、光学系フィルタに対して電圧を印可するか否かを制御する制御手段と、を備えている。そして、光学系フィルタは、請求項1〜請求項4の何れかに記載の光学系フィルタとして構成されている。
【0016】
このような撮像制御装置によれば、少なくとも請求項1に記載の光学系フィルタの構成を備えているので、少なくとも請求項1の光学系フィルタと同様の効果を享受することができる。また、異なる波長帯の光波を撮像した複数の撮像画像を1つの撮像手段で得ることができる。
【0017】
また、このような撮像制御装置によれば、撮像手段に入射される透過光の成分を光学系フィルタによって切り換えることができるので、撮像手段において、異なる感度を有する検出素子(例えば、赤外線検出画素(IR画素)とモノクロ画素との組み合わせ等)を市松模様に配置する必要がなく、全て同一の感度を有する検出素子を配置した構成にすることができる。即ち、全て同一の感度を有する検出素子を配置した構成の撮像手段では、1枚の撮像画像を得る際に、全ての検出素子を利用して撮像を行うことができるので、検出素子を有効に利用することができ、撮像手段が撮像を行う際の感度および分解能を向上させることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の撮像制御装置においては、請求項6に記載のように、第1波長以上の光波を含む光波を前記撮像手段が撮像する被撮像物に対して照射する照射手段を備えていてもよい。
【0019】
このような撮像制御装置によれば、照射手段が被撮像物を照射するので、撮像手段はより鮮明に被撮像物を撮像することができる。
次に、上記目的を達成するために成された請求項7に記載の画像処理装置において、第1取得手段は、撮像制御装置が所定波長未満の波長帯を含む光波を入射して撮像した第1撮像画像を撮像制御装置から取得し、第1画像処理手段は、取得された第1撮像画像からエッジ成分を検出する。また、第2取得手段は、撮像制御装置が所定波長未満の波長帯を含まない光波を入射して撮像した第2撮像画像を撮像制御装置から取得し、第2画像処理手段は、第2撮像画像からエッジ成分を検出する。
【0020】
さらに、切換手段は、撮像画像が取得される度に、撮像制御装置に対して第1撮像画像を撮像させるか第2撮像画像を撮像させるかを切り換えさせる。そして特に、各取得手段は、請求項5または請求項6に記載の撮像制御装置から撮像画像を取得するよう構成されている。
【0021】
このような画像処理装置によれば、波長帯が異なる複数の撮像画像のそれぞれについてエッジ成分を検出するので、撮像手段が撮像した光波の波長帯に適した対象物を検出することができる。また、複数の撮像画像による画像処理を組み合わせることによって検出性能を向上させることができる。
【0022】
ところで、請求項7に記載の画像処理装置においては、請求項8に記載のように、第1撮像画像から第2撮像画像を除去した差分画像からエッジ成分を検出する第3画像処理手段を備えていてもよい。
【0023】
このような画像処理装置によれば、所定波長未満の部分のみの画像(差分画像)からエッジ成分を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態の構成]
図1(a)は本発明が適用された対象物検出装置1を示すブロック図である。
【0025】
対象物検出装置1(撮像制御装置)は、例えば乗用車等の車両に搭載された装置であって、制御部10(制御手段、画像処理装置)と、カメラ21(撮像手段)と、光学系フィルタ31と、照度センサ23と、赤外投光器25(照射手段)と、表示部27とを備えて構成されている。
【0026】
カメラ21は、車両における前方中央に配置されており、車両の進行方向の道路上が撮像範囲内に含まれるように配置されている。また、カメラ21は、赤外領域(近赤外)と可視領域とにおいて感度を有するモノクロカメラとして構成され(図2(a)参照)、1秒間当たり例えば30フレームの画像を撮像する。
【0027】
光学系フィルタ31は、カメラ21の被撮像物側においてカメラ21に当接して配置されており、光学系フィルタ31を透過後の光波がカメラ21への入射光となるように設定されている。また、光学系フィルタ31は、制御部10による指令に応じて透過する光波の成分(波長帯)を変更する機能を有する。
【0028】
照度センサ23は、周知の照度センサ23であって、周囲の照度(例えば車両のダッシュボード上にて検出された照度)に応じた検出信号を制御部10に送る。
赤外投光器25は、カメラ21によって撮像可能な近赤外領域の赤外光をカメラ21による撮像範囲内に位置する被撮像物に対して照射する。
【0029】
表示部27は、周知のディスプレイとして構成されており、制御部10から送られた画像信号に応じた画像を表示させる。
制御部10は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されており、光学系フィルタ31(特に後述する液晶封止部37)に電圧を印可したり、カメラ21による撮像画像から歩行者、他車両、障害物、白線、標識等の対象物を検出したりする処理を実施する。
【0030】
ここで、光学系フィルタ31の詳細な構成について図1(b)、図1(c)を用いて説明する。図1(b)はカメラ21および光学系フィルタ31の側面図、図1(c)は偏光フィルタ33,35(偏光手段)が透過させる光波の偏光面の方向を示す説明図である。
【0031】
図1(b)に示すように、光学系フィルタ31は、カメラ21に当接して配置されており、カメラ21から遠い順に、入射側偏光フィルタ33、液晶封止部37(可変旋光手段)、および射出側偏光フィルタ35が積層されて構成されている。各偏光フィルタ33,35は、入射光のうち、光波の振動方向に拘わらず赤外光を含む所定波長(第1波長:例えば概ね700nm)以上の光波を透過させるとともに、入射光の波長に拘わらず直線偏光を透過させる特性を有する。
【0032】
特に本実施形態においては、各偏光フィルタ33,35として、ポリビニルアルコールを基材とするものを採用している。なお、偏光フィルタ33,35が透過させる光波の波長帯については、例えば、偏光フィルタ33,35に配合する染料(赤を透過したければアゾ系染料を抜く等)によって変更することができる。
【0033】
液晶封止部37は、周知の液晶封止部37として構成されている。即ち、多数の液晶分子が封入された構成にされており、この液晶封止部37に対して電圧を印可するための図示しない電極を介して電圧が印可されると、液晶分子の配列が変化するよう構成されている。
【0034】
本実施形態の液晶封止部37は、この液晶封止部37に電圧が印可されていないときに直線偏光の偏光面(入射される光波の振動方向)が90度回転するように設定されており、この液晶封止部37に電圧が印可されると、直線偏光の偏光面が回転しなくなる。
【0035】
ここで、各偏光フィルタ33,35における各偏光面は互いに平行に配置されているか、或いは射出側偏光フィルタ35の偏光面が液晶封止部37による偏光面の回転角度分(つまり90度)だけ入射側偏光フィルタ33の偏光面に対して回転して配置されていればよいが、本実施形態においては、図1(c)に示すように、射出側偏光フィルタ35の偏光面は90度だけ入射側偏光フィルタ33の偏光面に対して回転して配置されている。
【0036】
従って、この光学系フィルタ31においては、液晶封止部37に電圧が印可されていないときに、波長が700nm以上の光波(全成分)と、波長が700nm未満(第1波長未満かつ第2波長未満)の直線偏光と、を透過することになる。また、液晶封止部37に電圧が印可されたときに、波長が700nm未満の光波を遮断することになる。
【0037】
具体的には、図2(a)に示すように、入射光が光学系フィルタ31を透過する透過率は、波長が700nmでは20%未満となり、波長が長くなるにつれて透過率は大きくなる。なお、波長が1000nm程度を超えると透過率は概ね一定になる。
【0038】
このような光学系フィルタ31を透過した光波をカメラ21で撮像すると、例えば、図2(b)に示すような分光特性が得られる。なお、図2(b)は、検査用の光源であるキセノンランプをカメラ21で撮像したときにおける分光特性を示すグラフである。
【0039】
ここで、図2(b)においては、光学系フィルタ31をカメラ21に装着しないときにおける撮像画像の分光特性(波形A)、光学系フィルタ31をカメラ21に装着し光学系フィルタ31(液晶封止部37)に電圧を印可しないときにおける撮像画像(以下、「通常画像」という。)の分光特性(波形B)、および光学系フィルタ31をカメラ21に装着し光学系フィルタ31に電圧を印可したときにおける撮像画像(以下、「暗視画像」という。)の分光特性(波形C)、を示している。
【0040】
光学系フィルタ31を装着しない波形Aに対して、光学系フィルタ31を装着し電圧を印可しない波形Bでは、受光感度(出力)は低下するが、図2(b)に示す全帯域において充分な受光感度が得られる。一方、光学系フィルタ31を装着し電圧を印可した波形Cでは、波長が700nm未満での受光感度は皆無であるが、波長が800nm以上の波長帯においては、波形Bとほぼ一致した受光感度が得られる。
【0041】
つまり、波形Cでは、キセノンランプにおいて最も光量が大きい波長帯(800〜850nm程度の波長帯)を高感度で検出し、かつ700nm未満の波長帯を検出しないので、暗視画像から夜間において対向車両のヘッドライトを検出する場合に、他の光源や可視光成分(波長が700nm未満)の反射光との識別しやすくすることができるものと考えられる。一方、昼間における歩行者の検出時等、700nm未満の波長帯を検出した撮像画像を得たい場合には、光学系フィルタ31に電圧を印可しない状態とすればよい。
【0042】
より具体的には、図3を用いて説明する。図3は暗視画像(図3(a))および通常画像(図3(b))の一例を示す説明図である。
図3(b)に示す通常画像では、図3(a)に示す暗視画像と比較して、路上の白線が鮮明に検出できる様子が分かる。しかし、通常画像では対向車両のヘッドライトが路面に反射しているため(図3(b)の楕円で囲まれた領域参照)、対向車両を検出する際に誤検出をする虞がある。一方、暗視画像では、対向車両のヘッドライトが路面に反射する様子はほとんど検出されない(図3(a)の楕円で囲まれた領域参照)。従って、暗視画像から対向車両のヘッドライトを精度よく検出できることが分かる。
【0043】
[第1実施形態の処理]
このような対象物検出装置1においては、カメラ21が撮像する波長帯を変更しつつ対象物を検出する検出処理を実施する。図4は制御部10が実行する検出処理を示すフローチャートである。
【0044】
検出処理は、図示しないイグニッションスイッチ等の車両の電源がON状態にされると開始され、その後所定周期(例えば100ms毎)に繰り返し実施される処理である。なお、検出処理が開始される時点では、光学系フィルタ31の液晶封止部37には電圧が印指されていない状態にされているものとする。
【0045】
具体的な検出処理としては、まず、夜間であるか否かの判定を行う(S110)。この処理においては、照度センサ23による検出結果が夜間に相当する照度に対応する値であるか否かを判定する。夜間でなければ(S110:NO)、後述するS180の処理に移行する。
【0046】
夜間であれば(S110:YES)、赤外投光器25をON状態に設定し(S120)、液晶封止部37に電圧を印可した状態に変更することによって、液晶特性を切り換える(S130:切換手段)。即ち、この処理によって、カメラ21が700nm未満の波長帯を検出できないようにする。
【0047】
そして、液晶特性切換後においてカメラ21による撮像画像(暗視画像)を取得し(S140:第2取得手段)、この暗視画像に基づいて対象物検出処理を実施する(S150:第2画像処理手段)。ここで、対象物検出処理とは、周知の画像処理の一種であり、撮像画像からエッジ成分を検出し、このエッジ成分の形状に基づいてパターンマッチング等を実施することによって、対象物の種別(歩行者や他車両のヘッドライト等)を特定する処理である。
【0048】
続いて、赤外投光器25をOFF状態に設定し(S160)、次いで、液晶封止部37に電圧を印可しない状態に変更することによって、液晶特性を切り換える(S170:切換手段)。即ち、この処理によって、カメラ21が700nm未満の波長帯も検出できるようにする。
【0049】
そして、液晶特性切換後においてカメラ21による撮像画像(通常画像)を取得し(S180:第1取得手段)、この通常画像に基づいて対象物検出処理を実施する(S190:第1画像処理手段)。ここでの対象物検出処理においても、例えばS150の対象物検出処理と同様の処理を実施する。
【0050】
ただし、この処理では暗視画像を利用する場合よりも検出精度が高くなる対象物(例えば白線)を検出したり、S150の処理と組み合わせて同じ対象物を検出したりすることができる。
【0051】
最後に、各対象物検出処理(S150,S190の処理)による検出結果を出力し(S210)、検出処理を終了する。
なお、この検出結果が歩行者等の障害物を検出した検出結果である場合には、障害物との回避を促す警告やアクチュエータの作動等を実施するようにすればよい。また、検出結果が対向車両のヘッドライトを検出した検出結果である場合には、車両のヘッドライトをHIビームからLOWビームに切り換える作動等を実施するようにすればよい。
【0052】
[第1実施形態の効果]
以上のように詳述した対象物検出装置1においては、電圧が印可されるか否かに応じて透過させる光波の成分を変更する光学系フィルタ31と、該光学系フィルタ31を透過した光波を入射して撮像するカメラ21と、光学系フィルタ31に対して電圧を印可するか否かを制御する制御部10と、を備えている。
【0053】
光学系フィルタ31は、一対の偏光フィルタ33,35と、これらの一対の偏光フィルタ33,35の間に配置され、自身に電圧が印可されるか否かに応じて旋光性の有無を変化させて入射された光波を透過させる液晶封止部37とを備えている。特に、各偏光フィルタ33,35は、光波の振動方向に拘わらず赤外光を含む第1波長以上の光波を透過させるとともに、第1波長未満の直線偏光を透過させる機能を備え、一対の偏光フィルタ33,35の各偏光面は互いに平行に配置されているか、或いは一方の偏光フィルタ33,35の偏光面が液晶封止部37による偏光面の回転角度分だけ他方の偏光フィルタ33,35の偏光面に対して回転して配置されている。
【0054】
従って、このような対象物検出装置1を構成する光学系フィルタ31,41によれば、液晶封止部37に電圧を印可するか否かに応じて第1波長以上の光波のみを透過させるか、第1波長未満の光波を含む光波を透過させるかを選択することができる。
【0055】
また、このような対象物検出装置1によれば、異なる波長帯を撮像した複数の撮像画像を1つのカメラ21で得ることができる。
さらに、このような対象物検出装置1,2によれば、カメラ21に入射される透過光の成分を光学系フィルタ31,41によって切り換えることができるので、カメラ21において、異なる感度を有する検出素子(例えば、赤外線検出画素(IR画素)とモノクロ画素との組み合わせ等)を市松模様に配置する必要がなく、全て同一の感度を有する検出素子を配置した構成にすることができる。即ち、全て同一の感度を有する検出素子を配置した構成のカメラ21では、1枚の撮像画像を得る際に、全ての検出素子を利用して撮像を行うことができるので、検出素子を有効に利用することができ、カメラ21が撮像を行う際の感度および分解能を向上させることができる。
【0056】
また、対象物検出装置1においては、第1波長以上の光波を含む光波をカメラ21による被撮像物に対して照射する赤外投光器25を備えている。
このような対象物検出装置1によれば、赤外投光器25が被撮像物を照射するので、カメラ21はより鮮明に被撮像物を撮像することができる。
【0057】
さらに、光学系フィルタ31において、液晶封止部37は、電圧が印可されるか否かに応じて第2波長未満の光波について偏光面を回転させるか否かを選択して入射された光波を透過させるとともに、電圧が印可されるか否かに拘わらず赤外光を含む第2波長以上の光波を、偏光面を回転させることなく透過させる。
【0058】
このような光学系フィルタ31によれば、液晶封止部37が第2波長未満の光波のみに対して旋光性を有するため、第1波長以上かつ第2波長以上の光波を、偏光面を回転させることなくそのまま透過させることができる。
【0059】
また、制御部10は検出処理にて、カメラ21が所定波長未満の波長帯を含む光波を入射して撮像した第1撮像画像(通常画像)をカメラ21から取得し、取得した第1撮像画像からエッジ成分を検出する。また、制御部10は、カメラ21が所定波長未満の波長帯を含まない光波を入射して撮像した第2撮像画像(暗視画像)をカメラ21から取得し、第2撮像画像からエッジ成分を検出する。さらに、制御部10は、撮像画像が取得される度に、光学系フィルタ31に対して第1撮像画像を撮像させるか第2撮像画像を撮像させるかを切り換えさせる。
【0060】
従って、このような制御部10によれば、波長帯が異なる複数の撮像画像のそれぞれについてエッジ成分を検出するので、カメラ21が撮像した光波の波長帯に適した対象物を検出することができる。また、複数の撮像画像による画像処理を組み合わせることによって検出性能を向上させることができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、別形態の対象物検出装置2(撮像制御装置)について説明する。本実施形態(第2実施形態)では、第1実施形態の対象物検出装置1と異なる箇所のみを詳述し、第1実施形態の対象物検出装置1と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
[第2実施形態の構成]
図5(a)は第2実施形態のカメラ21および光学系フィルタ41の側面図、図5(b)は第2実施形態の偏光フィルタ33,35が透過させる光波の偏光面の方向を示す説明図である。第2実施形態においては、図5(a)に示すように、第1実施形態の光学系フィルタ31に換えて、一対の偏光フィルタ33,35の間に複数(3枚)の液晶封止部(可変旋光手段:第1液晶封止部43、第2液晶封止部45、および第3液晶封止部47)が積層された光学系フィルタ41を備えている。
【0063】
また、一対の偏光フィルタ33,35の偏光面は、図5(b)に示すように、互いに平行になるよう配置されている。
ここで、各液晶封止部43,45,47における旋光性について図6を用いて説明する。図6は各液晶封止部43,45,47を透過する光波の波長と旋光性との関係を示すグラフである。図6では、旋光性が高くなる程、偏光面が回転させられる角度が大きくなることを表している(ただし、各液晶封止部43,45,47は、それぞれ直線偏光の偏光面を最大で90度回転させるよう設定されている)。
【0064】
各液晶封止部43,45,47は、それぞれ独立して電圧を印可可能に構成されており、電圧が印可されていないときに旋光性を有する波長帯が、それぞれ異なる値に設定されている。具体的には、例えば、図6に示すように、第1液晶封止部43は、概ね波長が550nm未満の光波に対して旋光性を有するよう設定されており、第2液晶封止部43は、概ね波長が670nm未満の光波に対して旋光性を有するよう設定されている。
【0065】
また、第3液晶封止部47は、概ね波長が800nm未満の光波に対して旋光性を有するよう設定されている。つまり、何れの液晶封止部43,45,47に対して電圧を印可するかによって、光学系フィルタ41を透過する光波の波長帯を制限できるようにしている。
【0066】
この構成では、偶数回(0を含む)偏光面が回転された光波は一対の偏光フィルタ33,35を通過できるが、奇数回偏波編が回転された光波は一対の偏光フィルタ33,35を通過できない。この特徴を利用して各液晶封止部43,45,47に電圧を印可するか否かを制御すれば、所望の波長帯の光波のみを光学系フィルタ41を透過させることができる。
【0067】
[第2実施形態の効果]
以上のように詳述した第2実施形態の対象物検出装置2において、光学系フィルタ31,41は、複数の液晶封止部43,45,47を備え、さらに、各液晶封止部43,45,47は、液晶封止部43,45,47毎に第2波長(つまり、旋光性を有する上限の波長)が異なる値に設定されている。
【0068】
このような光学系フィルタ41によれば、何れの液晶封止部43,45,47に電圧を印可するかを変更することによって、偏光面を回転させる光波の成分(波長帯)を変更することができる。
【0069】
また、光学系フィルタ41において、一対の偏光フィルタ33,35の各偏光面は互いに平行に配置されている。
このような光学系フィルタ41によれば、液晶封止部43,45,47に偏光面が回転されなかった光波を透過させることになるので、透過させる光波の波長を容易に選択することができる。
【0070】
なお、各第2波長うちの最大波長のものを、第1波長以上の値に設定すれば、第1波長未満の光波について、何れの液晶封止部43,45,47に電圧を印可するかを変更することによって、光学系フィルタ41を透過させる光波の成分を変更することができる。この場合、各第2波長うちの最大波長以外のものを、第1波長未満の値に設定しておくことが望ましい。
【0071】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0072】
例えば、上記各実施形態において、制御部10は、暗視画像、通常画像のそれぞれにおいてそれぞれ対象物検出処理を行うのみとしたが、通常画像の成分から暗視画像の成分を減じた差分画像を生成し、この差分画像に基づく対象物検出処理も実施するようにしてもよい(図4のS200(第3画像処理手段)参照)。このような構成によれば、赤外光を含む所定波長以上の波長帯を除いた画像から対象物を検出することができる。
【0073】
特に、図3に示す例では、差分画像に基づいて道路上の白線、および対向車両のヘッドライトの反射光が鮮明に検出できるものと推定される。なお、差分画像を生成する処理は、制御部10が実施してもよいし、撮像画像を記録しておく機能を有するカメラ21が実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が適用された対象物検出装置1を示すブロック図(a)、第1実施形態のカメラ21および光学系フィルタ31の側面図(b)、および第1実施形態の偏光フィルタ33,35が透過させる光波の偏光面の方向を示す説明図(c)である。
【図2】光波の波長と光波が光学系フィルタ31を透過する透過率との関係を示すグラフ(a)、および検査用の光源であるキセノンランプをカメラ21で撮像したときにおける分光特性を示すグラフ(b)である。
【図3】暗視画像および通常画像の一例を示す説明図である。
【図4】検出処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態のカメラ21および光学系フィルタ41の側面図(a)、および第2実施形態の偏光フィルタ33,35が透過させる光波の偏光面の方向を示す説明図(b)である。
【図6】第2実施形態の各液晶封止部43,45,47を透過する光波の波長と旋光性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1…対象物検出装置、2…対象物検出装置、10…制御部、21…カメラ、23…照度センサ、25…赤外投光器、27…表示部、31…光学系フィルタ、33…入射側偏光フィルタ、35…射出側偏光フィルタ、37…液晶封止部、41…光学系フィルタ、43…第1液晶封止部、43…第2液晶封止部、45…第2液晶封止部、47…第3液晶封止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定成分の光波のみを透過させる光学系フィルタであって、
光波の振動方向に拘わらず赤外光を含む第1波長以上の光波を透過させるとともに、前記第1波長未満の光波の直線偏光を透過させる一対の偏光手段と、
前記一対の偏光手段の間に配置され、自身に電圧が印可されるか否かに応じて旋光性の有無を変化させて入射された光波を透過させる可変旋光手段と、
を備え、
前記一対の偏光手段の各偏光面は互いに平行に配置されているか、或いは一方の偏光手段の偏光面が前記可変旋光手段による偏光面の回転角度分だけ他方の偏光手段の偏光面に対して回転して配置されていること
を特徴とする光学系フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学系フィルタにおいて、
前記可変旋光手段は、自身に電圧が印可されるか否かに応じて第2波長未満の光波について偏光面を回転させるか否かを選択して入射された光波を透過させるとともに、電圧が印可されるか否かに拘わらず赤外光を含む前記第2波長以上の光波を、偏光面を回転させることなく透過させること
を特徴とする光学系フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学系フィルタにおいて、
前記可変旋光手段を複数備え、
前記各可変旋光手段は、該可変旋光手段毎に前記第2波長が異なる値に設定されていること
を特徴とする光学系フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学系フィルタにおいて、
前記一対の偏光手段の各偏光面は互いに平行に配置されていること
を特徴とする光学系フィルタ。
【請求項5】
入射させる光波の成分を変更しながら撮像を行う撮像制御装置であって、
電圧が印可されるか否かに応じて透過させる光波の成分を変更する光学系フィルタと、
該光学系フィルタを透過した光波を入射して撮像する撮像手段と、
前記光学系フィルタに対して電圧を印可するか否かを制御する制御手段と、
を備え、
前記光学系フィルタは、請求項1〜請求項4の何れかに記載の光学系フィルタとして構成されていること
を特徴とする撮像制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像制御装置において、
前記第1波長以上の光波を含む光波を前記撮像手段が撮像する被撮像物に対して照射する照射手段を備えたこと、
を特徴とする撮像制御装置。
【請求項7】
異なる波長帯の光波を入射して撮像した複数の撮像画像からそれぞれエッジ成分を検出する画像処理装置であって、
入射させる光波の成分を変更しながら撮像を行う撮像制御装置が所定波長未満の波長帯を含む光波を入射して撮像した第1撮像画像を該撮像制御装置から取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段によって取得された第1撮像画像からエッジ成分を検出する第1画像処理手段と、
前記撮像制御装置が前記所定波長未満の波長帯を含まない光波を入射して撮像した第2撮像画像を該撮像制御装置から取得する第2取得手段と、
前記第2取得手段によって取得された第2撮像画像からエッジ成分を検出する第2画像処理手段と、
前記第1取得手段または前記第2取得手段が撮像画像を取得する度に、前記撮像制御装置に対して前記第1撮像画像を撮像させるか前記第2撮像画像を撮像させるかを切り換えさせる切換手段と、
を備え、
前記各取得手段は、請求項5または請求項6に記載の撮像制御装置から撮像画像を取得すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理装置において、
前記第1撮像画像から前記第2撮像画像を除去した差分画像からエッジ成分を検出する第3画像処理手段、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−72437(P2010−72437A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240928(P2008−240928)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】