光学素子、光学系及びそれらを用いた光学機器
【課題】接合時の歪みが少なく、耐環境性が良く優れた光学特性と色収差補正効果を持つ光学素子を得ること。
【解決手段】少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素L1上に成形された樹脂NL1であって、樹脂を成形後に第2の光学要素L2が接着剤を用いて樹脂面と接合されている光学素子であって、樹脂の外径をφr、接合される第2の光学要素の樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、φg1、φg2、φrにおける第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、φg1<φr、dφg1≦dφr、dφg2<dφr、を満たす。
【解決手段】少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素L1上に成形された樹脂NL1であって、樹脂を成形後に第2の光学要素L2が接着剤を用いて樹脂面と接合されている光学素子であって、樹脂の外径をφr、接合される第2の光学要素の樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、φg1、φg2、φrにおける第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、φg1<φr、dφg1≦dφr、dφg2<dφr、を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ以上の光学要素が接合された接合レンズの形態を有する光学素子及び該光学素子を含む光学系に関し、銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、双眼鏡、プロジェクター、複写機等の光学機器に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等に用いられる光学系では、撮像装置の高機能化にともない、小型で高性能なものが求められている。
【0003】
一般にデジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器に用いられる光学系では、レンズ全長を短縮し、光学系全体の小型化を図るほど収差、特に軸上色収差及び倍率色収差などの色収差が多く発生し、光学性能が低下する傾向にある。特にレンズ全長の短縮化を図ったテレフォトタイプの光学系では、焦点距離を伸ばすほど(長くするほど)色収差が多く発生する。
【0004】
このような色収差の発生を低減する方法として、異常部分分散性の強い光学材料、特に樹脂を用いる方法が種々提案されている(特許文献1、2)。これらの提案では強い異常分散性を持つ樹脂材料に屈折力を与えた後、他の硝材との色収差のバランスを取ることで全系の色収差を低減している。
【0005】
また、光学素子の接合時の歪を低減する方法、樹脂とガラスの密着性を上げる方法、樹脂の耐環境性を向上させる方法についても種々提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−145823号公報
【特許文献2】特開2005−352265号公報
【特許文献3】特開2003−139916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている方法は色収差を効果的に補正することができる。しかし、効果的に色収差を補正するためには樹脂にある程度の屈折力をつける必要があるため、樹脂が正、負のパワーを持つ場合、それぞれ中心部、外周部が厚くなってしまう。
【0008】
金型等を用いて樹脂を成形する方法では、樹脂の厚みが増す程成形の難易度は増す。これは樹脂の量が増えるために、成形時の硬化収縮の絶対量が増し、樹脂面を高精度に仕上げるのが困難になるためである。また樹脂が厚くなる程、温度変化に対する樹脂の寸法変化の絶対量が増し光学性能への影響は大きくなる。
【0009】
これに対して特許文献2では樹脂をレンズで挟み込んで色消しをする方法が開示されている。特許文献1〜2に開示されている方法は樹脂に屈折力をつけて色消しをするものであるため、光学上は樹脂が露出していてもレンズに挟み込まれていても同様な効果は得られる。
【0010】
樹脂をレンズで挟み込んだ接合素子の構成とした場合は、樹脂を片側のレンズ上に成形した後に、樹脂面を接着剤で覆いもう一方のレンズを貼り合わせることができる。このため、成形した樹脂面の精度の光学性能への影響は最小限に抑えることができる。また耐環境性の面でも接合素子とした場合は外部のレンズによって樹脂面が規制されているため変形が起こりにくい。しかし、接合素子とする場合には最後にレンズを接合する際の接合歪みや環境下での接合剥がれが問題となってくる。
【0011】
レンズ同士の接合歪みや剥がれを低減する方法としては、特許文献3に開示されているように接着剤として弾性体を用いる方法がある。しかし、これらはレンズ同士あるいはレンズとプラスチックの接合に適したものであって、3枚の光学要素、特にレンズ上に樹脂が成形された後、もう一方のレンズを接合された図1に示されるような光学素子では、以下の様な問題が生じる。
【0012】
図1の光学素子は樹脂NL1を光学要素L1上に成形した後、光学要素L2を接合したものである。図1の光学素子の外周部を拡大したものが図2である。樹脂NL1については、成形上の難易度、耐環境性を考慮するとできるだけ絶対厚を薄くしたい。このため、外周部の光軸に沿った厚みは通常の研磨レンズに比べて薄くなりやすい。したがって、光学要素L1と光学要素L2が外周部では非常に近接して配置されることになる。これは、特に樹脂NL1が正のパワーを持つ場合に顕著である。
【0013】
この状態で図2のように樹脂の外径φrが光学要素L2の接合される側の研磨径φgよりも小さいと、両者を接合する際に用いる接着剤S1が光学要素L1とL2の間に回りこんでしまうことがわかった。
【0014】
光学要素L1とL2の間に接着剤S1が入り込むと、径φr以下とφr〜φgの間で接着剤の厚みが大きく異なることになる。したがって、接着剤の硬化収縮の絶対量にも大きな差ができ、光学要素L1やL2の光学面に歪みが生じ光学性能に大きな影響を及ぼす。また、特に光学要素L1とL2が最も接近するL1の外径位置で両者の間に接着剤が回りこみやすく、大きな歪みを誘発することがわかった。
【0015】
また、この状態では接合時の歪みだけではなく、歪みが発生する程の大きな応力がかかっていることから、高温下や高温高湿下で接合剥がれを起こしやすいこともわかった。
【0016】
本発明は以上の用件から成されたものであり、接合時の歪みが少なく、耐環境性が良く優れた光学特性と色収差補正効果を持つ光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、前記光学素子を構成する光学要素のうち両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素上に成形された樹脂であって、前記樹脂を成形後に第2の光学要素が接着剤を用いて前記樹脂面と接合されている光学素子であって、前記樹脂の外径をφr、前記接合される第2の光学要素の前記樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、前記第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、前記径φg1、φg2、φrにおける前記第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、以下の条件を満たすことを特徴としている。
【0018】
φg1<φr、dφg1≦dφr、dφg2<dφr
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接合時の歪みが少なく、耐環境性が良く、優れた光学特性と色収差補正効果を持つ光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】課題を説明する光学素子の断面図
【図2】課題を説明する光学素子の外周部の拡大断面図
【図3】実施例1の光学素子の断面図
【図4】実施例1の光学素子の外周部拡大断面図
【図5】実施例2の光学素子の断面図
【図6】実施例2の光学素子の外周部拡大断面図
【図7】実施例3の光学素子の断面図
【図8】実施例3の光学素子の外周部拡大断面図
【図9】実施例1の光学素子を用いた光学系の断面図
【図10】実施例2の光学素子を用いた光学系の断面図
【図11】実施例3の光学素子を用いた光学系の断面図
【図12】本発明の撮像装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光学素子とそれを用いた光学系について説明する。本発明の光学素子は、少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化されており、この光学要素のうち少なくとも1枚は樹脂を金型を用いて他の光学要素上に成形したものである。またこの樹脂は両側を光学要素に挟まれており、片方の光学要素上に成形された後、もう一方の側に他の光学要素が接合されている。
【0022】
この樹脂の外径をφr、接合される他の光学要素の樹脂と接合される側の面の有効部径をφg1とする。またこの有効部径φg1よりも光軸から離れた外周部で、樹脂の外側に接合された両方の光学要素の樹脂を挟んで向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とする。さらにこれらの径φg1、φg2、φrにおける、樹脂の外側に接合された両方光学要素の樹脂を挟んで向かいあった光軸に沿った距離をそれぞれdφg1、dφg2、dφrとした時に以下の条件を満足するのが良い。
【0023】
φg1<φr …(1)
dφg1≦dφr …(2)
dφg2<dφr …(3)
接合される側の光学要素の有効部径について説明する。通常、光学要素の光学面は製造時の組み付けシロや組み付け誤差を考慮し、光線有効径に対して外周方向に余裕幅を持って作られている。この光学性能上有効な領域の径が光学要素の有効部径である。つまり、所望の球面形状や非球面形状を持つ面を光線有効径よりも外周側に延長して仕上げたものが有効部径であり、例えば研磨レンズの場合は研磨径がこれに当たる。
【0024】
また光学要素の有効部径は外径や内径で表されることが多い。また、本発明ではこの有効部径において樹脂と光学要素が接着剤を介して接合されており、接合される光学要素と樹脂の光軸に沿った間に固体以外のものを含まない最大径ともなっている。
【0025】
条件式(1)は、樹脂が成形された光学要素と、もう一方の光学要素を接合する際の接合歪みを低減させ、また高温や高温高湿等の環境下での接合剥がれの発生を抑制するための条件式である。条件式(1)を満たす場合、接着剤は樹脂面と接合される光学要素の樹脂側の面に付着し、外側の光学要素同士を接着することは起こりにくい。
【0026】
逆に、この式を満たさなければ、接着剤が樹脂の外側に位置する光学要素同士の間に回り込んでしまい、接着剤の厚みの分布ができ接合歪みや接合剥がれの原因となるので好ましくない。
【0027】
なお条件式(1)は以下の条件とすることで、製造時のバラつきを考慮しても歪みや接合剥がれの発生を抑制できる。
【0028】
φg+0.5<φr …(1a)
条件式(2)、(3)は接合時の歪や接合剥がれの発生をさらに抑制するとともに、外部環境の影響を低減させるための条件式である。条件式(2)を満たすことで、外側の光学要素同士が接着される可能性をより抑えることができる。また条件式(3)を満たすことで、樹脂と外部環境が接する入り口を小さくすることができ、外部環境の影響を受けにくくすることができる。
【0029】
また、光学要素上に成形された樹脂のd線における屈折率nrと、もう一方の光学要素を接合する際に用いる接着剤のd線における屈折率をnsとした時に、以下の条件を満たすのが良い。
【0030】
|nr−ns|<0.1 …(4)
面精度の光学性能への影響度は、面精度そのものと、その面の両側の物質の屈折率差によって決まる。屈折率差が大きければ、面精度の微小な変化でも光学性能に多大な影響を及ぼしうる。逆に屈折率差が小さければ、面精度の変化はほとんど光学性能に影響を及ぼさない。したがって特に樹脂厚が厚いなど成形上の難易度が高い場合には、樹脂面精度の光学性能への影響を抑えるために樹脂面の両側の物質の屈折率差を小さくしておくことが好ましい。
【0031】
条件式(4)は、成形された樹脂の面精度の光学性能への影響を低減させるための条件式であり、この条件式を満たすことで良好な光学性能を得ることができる。
【0032】
なお、条件式(4)の範囲は以下の範囲とすることで更に良好な光学性能を得ることができる。
【0033】
|nr−ns|<0.05 …(4a)
更に好ましくは以下の範囲とするのが良い。
【0034】
|nr−ns|<0.01 …(4b)
また、光学要素上に成形する樹脂と接合する際に用いる接着剤は同じものでも良い。
【0035】
また、光学要素上に成形される樹脂の焦点距離をfとした時に、以下の条件を満たす場合場合本発明の効果がより顕著になる。
【0036】
f>0.0 …(5)
また、径φg2において、樹脂の両側に位置する光学要素間に封止剤を塗布すると、外部環境、特に湿度の樹脂への影響を低減することができて良い。このことを以下で説明する。
【0037】
樹脂が吸湿すると内部屈折率変化や形状変化等を起こし光学性能への影響を及ぼす。封止剤によって、外部の湿度が樹脂に到達しにくいようにすれば樹脂の吸湿による光学性能への影響を低減することができる。封止剤を一度両側の光学要素の外周部に塗布した後、紫外線等によって硬化すれば容易に十分な封止効果を得ることができる。しかし、この時封止する空間が広ければ、封止剤自身の硬化収縮によって光学要素が歪み光学性能へと影響を及ぼす。
【0038】
したがって、できるだけ近接した光学要素間に封止剤を塗布して硬化する方が、光学要素の歪を小さくできて好ましい。また封止する空間が狭いことで、効率良く外部の湿度の影響を低減できて好ましい。
【0039】
また、径φg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入しておけば、外部湿度の樹脂への影響を制御できて良い。
【0040】
また、光学要素上に成形された樹脂に接合されるもう一方の光学要素の接合される側の有効部の径φgよりも外周部に遮光部剤を塗布又は遮光部材を設置すると、樹脂端部におけるフレアやゴーストの発生を抑制できるので好ましい。
【0041】
このことを以下で説明する。光学要素上に金型等を用いて樹脂を成形する場合、樹脂の最外周部は何にも規制されないため、どうしても面がダレてしまい必要な面精度を得ることができない部分が出る。この部分は、光線を乱反射しやすくフレアやゴーストの原因となるため遮光する必要がある。しかし、樹脂の上に直接塗装や墨塗りをするには、樹脂面はのりが良くなくて適切ではない。また遮光部材を兼ねた押さえ環等で樹脂の表面を押さえてしまうと、遮光はできるが、押さえる力で樹脂面が変形してしまうため好ましくない。
【0042】
これに対して本発明の光学素子のように樹脂外周部において、近接した位置に常に他の光学要素がある場合、その光学要素に対して、樹脂の外周部を覆うような一般的に行われている塗装や墨塗りをしておけば良いので容易である。また、その光学要素を用いて遮光部材の位置決めをすれば、樹脂面の変形を防ぎつつ遮光もできるので好ましい。
【0043】
また、光学要素上に成形される樹脂の異常部分分散性をΔθgFrとした時に以下のいずれかの条件を満足させるのが良い。
【0044】
0.0272<ΔθgFr …(6)
ΔθgFr<−0.0278 …(7)
ただし、ここでアッベ数νd、部分分散比θgF、異常部分分散性ΔθgFrはg線(波長435.8nm),F線(486.1nm),d線(587.6nm),C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg,Nd,NF,NCとする。このとき、
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
ΔθgFr=θgF−(−1.665×10−7×νd3+5.213×10−5×νd2−5.656×10−3×νd+7.278×10−1)
である。
【0045】
条件式(6)、(7)は樹脂の異常部分分散性に関する条件式であり、いずれかの式を満たすことで良好な色収差補正能力を持つ光学素子を得ることができる。
【0046】
なお、条件式(6)、(7)はそれぞれ以下の範囲とすることで更に良好な色収差補正能力を得ることができる。
【0047】
0.0342<ΔθgFr …(6a)
ΔθgFr<−0.0528 …(7a)
条件式(6)を満足する樹脂の具体例としては、例えばアクリル系UV硬化樹脂(Nd=1.633,νd=23.0,θgF=0.68)やN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696,νd=17.7,θgF=0.69)がある。尚、条件式(6)を満足する樹脂であれば、これらに限定するものではない。
【0048】
また、一般の硝材とは異なる特性を持つ光学材料として、下記の無機酸化物ナノ微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。すなわち、TiO2(Nd=2.758,νd=9.54,θgF=0.76),ITO(Nd=1.857,νd=5.69,θgF=0.29)等がある。
【0049】
この無機酸化物の中では、TiO2(Nd=2.758,νd=9.54,θgF=0.76)微粒子を合成樹脂中に適切なる体積比で分散させた場合、上記条件式(6)を満足する光学材料が得られる。
【0050】
また、ITO(Nd=1.857,νd=5.69,θgF=0.29)微粒子を合成樹脂中に適切なる体積比で分散させた場合、上記条件式(7)を満足する光学材料が得られる。
【0051】
なお条件式(6)、(7)を満足する材料であれば、これらに限定するものではない。
【0052】
TiO2は様々な用途で使われる材料であり、光学分野では反射防止膜などの光学薄膜を構成する蒸着用材料として用いられている。他にも光触媒、白色顔料などとして、またTiO2微粒子は化粧品材料として用いられている。
【0053】
ITOは透明電極を構成する材料として知られており、通常、液晶表示素子、EL(Electroluminescent)素子等に用いられている。また、他の用途として赤外線遮蔽素子、紫外線遮断素子に用いられている。
【0054】
各実施例において樹脂に分散させる微粒子の平均径は、散乱などの影響を考えると2nm〜50nm程度がよく、凝集を抑えるために分散剤などを添加しても良い。
【0055】
微粒子を分散させる媒体材料としては、ポリマーが良く、成形型等を用いて光重合成形または熱重合成形することにより高い量産性を得ることができる。
【0056】
ナノ微粒子を分散させた混合体の分散特性N(λ)は、良く知られたDrudeの式から導きだされた次式によって簡単に計算することができる。即ち、波長λにおける屈折率N(λ)は、
N(λ)=[1+V{Npar(λ)2−1}+(1−V){Npoly(λ)2−1}]1/2
である。ここで、λは任意の波長、Nparは微粒子の屈折率、Npolyはポリマーの屈折率、Vはポリマー体積に対する微粒子の総体積の分率である。
【0057】
次に各実施例の特徴について説明する。
【0058】
図3、図5、図7はそれぞれ数値実施例1〜3の光学素子の断面図である。図4、図6、図8はそれぞれ数値実施例1〜3の光学素子の外周部拡大断面図である。図9〜図11はそれぞれ数値実施例1〜3光学素子を用いた光学系の断面図である。図3〜図11の断面図において左側が物体側(前方、拡大側)、右側が像側(後方、縮小側)である。図3〜図11においてNL1は後述する樹脂又は樹脂層である。
【0059】
図3、図5、図7及び図9〜図11おいて1は光軸を表す。図3〜図11においてL1は樹脂が成形される光学要素を表す。図3〜図8においてL2は接着剤を介して樹脂と接合される光学要素を表す。またS1は接合の際に用いられる接着剤を表す。図3〜図8において2は遮光剤を表す。図3〜図8においてF1は封止剤を表す。図7〜図8においてF2は調湿剤を表す。図3、図5、図7においてRiは面番号を表し、iはそれぞれ光学素子において物体側から数えた面の番号を表している。
【0060】
図3〜図8においてφrは樹脂層NL1の外径を表す。図3〜図8においてφg1は光学要素L2の樹脂に対向する面の有効部径を表す。図3〜図8においてφg2は光学要素L1とL2の外周部において対向する面の光軸に沿った距離が最も短くなる径を表す。
【0061】
図9〜図11においてB1は第1群、B2は第2群、B3は第3群、B4は第4群を表す。SPは開口絞りである。IPは像面である。像面はビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCOMSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に、銀塩フィルム用カメラのときはフィルム面に相当する。Gは差込フィルターや、光学的ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当するガラスブロックである。
【0062】
図3、図4は数値実施例1の光学素子の断面図である。図3、図4の光学素子は第1の光学要素L1上にアクリル系UV硬化樹脂NL1(Nd=1.633、νd=23.0、θgF=0.68)を成形した後、UV硬化性接着剤S1(Nd=1.633)を介して第2の光学要素L2と接合されている。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0063】
図3、図4の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは28.5mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は27.5mmである。また、内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は31.0mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.30mm、0.10mm、0.48mmとなっている。
【0064】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。
【0065】
数値実施例1の光学素子は図9のズームレンズに用いられる。図9のズームレンズは物体側から正負正正のパワーを持つ4つの群から成る変倍比16倍、Fno2.9〜4.0程度のズームレンズである。図9はこのズームレンズの広角端の断面図である。このズームレンズの第1群に数値実施例1の光学素子を用いることで、主に望遠側の色収差を良好に補正でき、コンパクトかつ高性能で環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0066】
図5、図6は数値実施例2の光学素子の断面図である。図5、図6の光学素子は第1の光学要素L1上にN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696、νd=17.7、θgF=0.69)を成形した後、UV硬化性接着剤S1(Nd=1.633)を介して第2の光学要素L2と接合されている。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0067】
図5、図6の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは11.6mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は11.0mmである。内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は12.0mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.16mm、0.12mm、0.22mmとなっている。
【0068】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。
【0069】
数値実施例2の光学素子は図10のズームレンズに用いられる。図10のズームレンズは物体側から正負正正のパワーを持つ4つの群から成る変倍比15倍、Fno2.9〜3.6程度のズームレンズである。図10はこのズームレンズの広角端の断面図である。このズームレンズの第4群に数値実施例2の光学素子を用いることで、主に広角側の倍率色収差を良好に補正でき、コンパクト、高性能かつ環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0070】
図7、図8は数値実施例3の光学素子の断面図である。図7、図8の光学素子は第1の光学要素L1上にポリマーに微粒子を分散させたUV硬化性材料(Nd=1.806、νd=14.9、θgF=0.74)を成形した後、同じUV硬化性材料を介して第2の光学要素L2と接合されている。なおこのUV硬化性材料はポリマー(Nd=1.580、νd=37.2)にTiO2微粒子を体積比で15%分散させたものである。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0071】
図7、図8の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは68.8mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は67.8mmである。また、内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は70.2mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.28mm、0.22mm、0.35mmとなっている。
【0072】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。さらにφg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入することでさらに外部湿度の影響を抑えることができる。
【0073】
数値実施例3の光学素子は図11の望遠レンズに用いられる。図11の望遠レンズは焦点距離300mm、Fno4.0のレンズである。この望遠レンズの絞りよりも物体側に数値実施例3の光学素子を用いることで、色収差を良好に補正できテレ比0.68のコンパクト、高性能かつ環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0074】
以下、数値実施例1〜3光学素子の具体的な数値データを示す。各数値実施例において、iはそれぞれの光学素子において物体側から数えた面の番号を表している。各数値実施例において、Riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、Diは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔、Ni、νi、θgFiはそれぞれd線に対する第i番目の光学要素の材料の屈折率、アッベ数、部分分散比を示す。また、第i番目の光学面(第i面)の光線有効径と、第i番目の光学要素の光学性能上有効な有効部径(外径、内径)も合わせて示す。なお有効部径は物体側、像側有効部径を並列して示す。
【0075】
また、非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、B,C,D,E…を各次数の非球面係数として、
【0076】
【数1】
【0077】
で表す。なお、各非球面係数における「E±XX」は「×10±XX」を意味している。又、前述の各条件式と各実施例との関係を表−1に示す。
【0078】
数値実施例3ではホストポリマーであるUV硬化樹脂にTiO2微粒子体積比率で15%分散させた樹脂層より成るレンズを用いている。TiO2微粒子分散材料の屈折率は、前述のDrudeの式を用いて計算した値を用いて算出している。
【0079】
各実施例に用いた樹脂層を構成する材料の光学特性を表−2に示す。実施例3に用いた微粒子分散材料のホストポリマーとTiO2微粒子の光学特性を表−2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
次に本発明の光学系を撮影光学系として用いた本発明の光学機器であるデジタルスチルカメラ(撮像装置)の実施例を図12を用いて説明する。
【0083】
図12において、20はカメラ本体、21は本発明の光学系によって構成された撮影光学系、22はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
【0084】
このように本発明の光学系をデジタルスチルカメラ等の撮像素子に適用することにより、小型で高い光学性能を有する撮像装置を実現している。
【符号の説明】
【0085】
NL1・・樹脂又は樹脂層
S1・・接着剤
L1・・樹脂が成形される光学要素
L2・・接合される光学要素
F1・・封止剤
F2・・調湿剤
φr・・樹脂の外径
φg1・・光学要素の有効部径
φg2・・光学要素L1とL2が外周部において最も近接する径
1・・光軸
2・・遮光剤
B1・・光学系の第1群
B2・・光学系の第2群
B3・・光学系の第3群
B4・・光学系の第4群
SP・・絞り
IP・・像面
G・・ガラスブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ以上の光学要素が接合された接合レンズの形態を有する光学素子及び該光学素子を含む光学系に関し、銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、双眼鏡、プロジェクター、複写機等の光学機器に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等に用いられる光学系では、撮像装置の高機能化にともない、小型で高性能なものが求められている。
【0003】
一般にデジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器に用いられる光学系では、レンズ全長を短縮し、光学系全体の小型化を図るほど収差、特に軸上色収差及び倍率色収差などの色収差が多く発生し、光学性能が低下する傾向にある。特にレンズ全長の短縮化を図ったテレフォトタイプの光学系では、焦点距離を伸ばすほど(長くするほど)色収差が多く発生する。
【0004】
このような色収差の発生を低減する方法として、異常部分分散性の強い光学材料、特に樹脂を用いる方法が種々提案されている(特許文献1、2)。これらの提案では強い異常分散性を持つ樹脂材料に屈折力を与えた後、他の硝材との色収差のバランスを取ることで全系の色収差を低減している。
【0005】
また、光学素子の接合時の歪を低減する方法、樹脂とガラスの密着性を上げる方法、樹脂の耐環境性を向上させる方法についても種々提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−145823号公報
【特許文献2】特開2005−352265号公報
【特許文献3】特開2003−139916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている方法は色収差を効果的に補正することができる。しかし、効果的に色収差を補正するためには樹脂にある程度の屈折力をつける必要があるため、樹脂が正、負のパワーを持つ場合、それぞれ中心部、外周部が厚くなってしまう。
【0008】
金型等を用いて樹脂を成形する方法では、樹脂の厚みが増す程成形の難易度は増す。これは樹脂の量が増えるために、成形時の硬化収縮の絶対量が増し、樹脂面を高精度に仕上げるのが困難になるためである。また樹脂が厚くなる程、温度変化に対する樹脂の寸法変化の絶対量が増し光学性能への影響は大きくなる。
【0009】
これに対して特許文献2では樹脂をレンズで挟み込んで色消しをする方法が開示されている。特許文献1〜2に開示されている方法は樹脂に屈折力をつけて色消しをするものであるため、光学上は樹脂が露出していてもレンズに挟み込まれていても同様な効果は得られる。
【0010】
樹脂をレンズで挟み込んだ接合素子の構成とした場合は、樹脂を片側のレンズ上に成形した後に、樹脂面を接着剤で覆いもう一方のレンズを貼り合わせることができる。このため、成形した樹脂面の精度の光学性能への影響は最小限に抑えることができる。また耐環境性の面でも接合素子とした場合は外部のレンズによって樹脂面が規制されているため変形が起こりにくい。しかし、接合素子とする場合には最後にレンズを接合する際の接合歪みや環境下での接合剥がれが問題となってくる。
【0011】
レンズ同士の接合歪みや剥がれを低減する方法としては、特許文献3に開示されているように接着剤として弾性体を用いる方法がある。しかし、これらはレンズ同士あるいはレンズとプラスチックの接合に適したものであって、3枚の光学要素、特にレンズ上に樹脂が成形された後、もう一方のレンズを接合された図1に示されるような光学素子では、以下の様な問題が生じる。
【0012】
図1の光学素子は樹脂NL1を光学要素L1上に成形した後、光学要素L2を接合したものである。図1の光学素子の外周部を拡大したものが図2である。樹脂NL1については、成形上の難易度、耐環境性を考慮するとできるだけ絶対厚を薄くしたい。このため、外周部の光軸に沿った厚みは通常の研磨レンズに比べて薄くなりやすい。したがって、光学要素L1と光学要素L2が外周部では非常に近接して配置されることになる。これは、特に樹脂NL1が正のパワーを持つ場合に顕著である。
【0013】
この状態で図2のように樹脂の外径φrが光学要素L2の接合される側の研磨径φgよりも小さいと、両者を接合する際に用いる接着剤S1が光学要素L1とL2の間に回りこんでしまうことがわかった。
【0014】
光学要素L1とL2の間に接着剤S1が入り込むと、径φr以下とφr〜φgの間で接着剤の厚みが大きく異なることになる。したがって、接着剤の硬化収縮の絶対量にも大きな差ができ、光学要素L1やL2の光学面に歪みが生じ光学性能に大きな影響を及ぼす。また、特に光学要素L1とL2が最も接近するL1の外径位置で両者の間に接着剤が回りこみやすく、大きな歪みを誘発することがわかった。
【0015】
また、この状態では接合時の歪みだけではなく、歪みが発生する程の大きな応力がかかっていることから、高温下や高温高湿下で接合剥がれを起こしやすいこともわかった。
【0016】
本発明は以上の用件から成されたものであり、接合時の歪みが少なく、耐環境性が良く優れた光学特性と色収差補正効果を持つ光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、前記光学素子を構成する光学要素のうち両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素上に成形された樹脂であって、前記樹脂を成形後に第2の光学要素が接着剤を用いて前記樹脂面と接合されている光学素子であって、前記樹脂の外径をφr、前記接合される第2の光学要素の前記樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、前記第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、前記径φg1、φg2、φrにおける前記第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、以下の条件を満たすことを特徴としている。
【0018】
φg1<φr、dφg1≦dφr、dφg2<dφr
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接合時の歪みが少なく、耐環境性が良く、優れた光学特性と色収差補正効果を持つ光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】課題を説明する光学素子の断面図
【図2】課題を説明する光学素子の外周部の拡大断面図
【図3】実施例1の光学素子の断面図
【図4】実施例1の光学素子の外周部拡大断面図
【図5】実施例2の光学素子の断面図
【図6】実施例2の光学素子の外周部拡大断面図
【図7】実施例3の光学素子の断面図
【図8】実施例3の光学素子の外周部拡大断面図
【図9】実施例1の光学素子を用いた光学系の断面図
【図10】実施例2の光学素子を用いた光学系の断面図
【図11】実施例3の光学素子を用いた光学系の断面図
【図12】本発明の撮像装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光学素子とそれを用いた光学系について説明する。本発明の光学素子は、少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化されており、この光学要素のうち少なくとも1枚は樹脂を金型を用いて他の光学要素上に成形したものである。またこの樹脂は両側を光学要素に挟まれており、片方の光学要素上に成形された後、もう一方の側に他の光学要素が接合されている。
【0022】
この樹脂の外径をφr、接合される他の光学要素の樹脂と接合される側の面の有効部径をφg1とする。またこの有効部径φg1よりも光軸から離れた外周部で、樹脂の外側に接合された両方の光学要素の樹脂を挟んで向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とする。さらにこれらの径φg1、φg2、φrにおける、樹脂の外側に接合された両方光学要素の樹脂を挟んで向かいあった光軸に沿った距離をそれぞれdφg1、dφg2、dφrとした時に以下の条件を満足するのが良い。
【0023】
φg1<φr …(1)
dφg1≦dφr …(2)
dφg2<dφr …(3)
接合される側の光学要素の有効部径について説明する。通常、光学要素の光学面は製造時の組み付けシロや組み付け誤差を考慮し、光線有効径に対して外周方向に余裕幅を持って作られている。この光学性能上有効な領域の径が光学要素の有効部径である。つまり、所望の球面形状や非球面形状を持つ面を光線有効径よりも外周側に延長して仕上げたものが有効部径であり、例えば研磨レンズの場合は研磨径がこれに当たる。
【0024】
また光学要素の有効部径は外径や内径で表されることが多い。また、本発明ではこの有効部径において樹脂と光学要素が接着剤を介して接合されており、接合される光学要素と樹脂の光軸に沿った間に固体以外のものを含まない最大径ともなっている。
【0025】
条件式(1)は、樹脂が成形された光学要素と、もう一方の光学要素を接合する際の接合歪みを低減させ、また高温や高温高湿等の環境下での接合剥がれの発生を抑制するための条件式である。条件式(1)を満たす場合、接着剤は樹脂面と接合される光学要素の樹脂側の面に付着し、外側の光学要素同士を接着することは起こりにくい。
【0026】
逆に、この式を満たさなければ、接着剤が樹脂の外側に位置する光学要素同士の間に回り込んでしまい、接着剤の厚みの分布ができ接合歪みや接合剥がれの原因となるので好ましくない。
【0027】
なお条件式(1)は以下の条件とすることで、製造時のバラつきを考慮しても歪みや接合剥がれの発生を抑制できる。
【0028】
φg+0.5<φr …(1a)
条件式(2)、(3)は接合時の歪や接合剥がれの発生をさらに抑制するとともに、外部環境の影響を低減させるための条件式である。条件式(2)を満たすことで、外側の光学要素同士が接着される可能性をより抑えることができる。また条件式(3)を満たすことで、樹脂と外部環境が接する入り口を小さくすることができ、外部環境の影響を受けにくくすることができる。
【0029】
また、光学要素上に成形された樹脂のd線における屈折率nrと、もう一方の光学要素を接合する際に用いる接着剤のd線における屈折率をnsとした時に、以下の条件を満たすのが良い。
【0030】
|nr−ns|<0.1 …(4)
面精度の光学性能への影響度は、面精度そのものと、その面の両側の物質の屈折率差によって決まる。屈折率差が大きければ、面精度の微小な変化でも光学性能に多大な影響を及ぼしうる。逆に屈折率差が小さければ、面精度の変化はほとんど光学性能に影響を及ぼさない。したがって特に樹脂厚が厚いなど成形上の難易度が高い場合には、樹脂面精度の光学性能への影響を抑えるために樹脂面の両側の物質の屈折率差を小さくしておくことが好ましい。
【0031】
条件式(4)は、成形された樹脂の面精度の光学性能への影響を低減させるための条件式であり、この条件式を満たすことで良好な光学性能を得ることができる。
【0032】
なお、条件式(4)の範囲は以下の範囲とすることで更に良好な光学性能を得ることができる。
【0033】
|nr−ns|<0.05 …(4a)
更に好ましくは以下の範囲とするのが良い。
【0034】
|nr−ns|<0.01 …(4b)
また、光学要素上に成形する樹脂と接合する際に用いる接着剤は同じものでも良い。
【0035】
また、光学要素上に成形される樹脂の焦点距離をfとした時に、以下の条件を満たす場合場合本発明の効果がより顕著になる。
【0036】
f>0.0 …(5)
また、径φg2において、樹脂の両側に位置する光学要素間に封止剤を塗布すると、外部環境、特に湿度の樹脂への影響を低減することができて良い。このことを以下で説明する。
【0037】
樹脂が吸湿すると内部屈折率変化や形状変化等を起こし光学性能への影響を及ぼす。封止剤によって、外部の湿度が樹脂に到達しにくいようにすれば樹脂の吸湿による光学性能への影響を低減することができる。封止剤を一度両側の光学要素の外周部に塗布した後、紫外線等によって硬化すれば容易に十分な封止効果を得ることができる。しかし、この時封止する空間が広ければ、封止剤自身の硬化収縮によって光学要素が歪み光学性能へと影響を及ぼす。
【0038】
したがって、できるだけ近接した光学要素間に封止剤を塗布して硬化する方が、光学要素の歪を小さくできて好ましい。また封止する空間が狭いことで、効率良く外部の湿度の影響を低減できて好ましい。
【0039】
また、径φg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入しておけば、外部湿度の樹脂への影響を制御できて良い。
【0040】
また、光学要素上に成形された樹脂に接合されるもう一方の光学要素の接合される側の有効部の径φgよりも外周部に遮光部剤を塗布又は遮光部材を設置すると、樹脂端部におけるフレアやゴーストの発生を抑制できるので好ましい。
【0041】
このことを以下で説明する。光学要素上に金型等を用いて樹脂を成形する場合、樹脂の最外周部は何にも規制されないため、どうしても面がダレてしまい必要な面精度を得ることができない部分が出る。この部分は、光線を乱反射しやすくフレアやゴーストの原因となるため遮光する必要がある。しかし、樹脂の上に直接塗装や墨塗りをするには、樹脂面はのりが良くなくて適切ではない。また遮光部材を兼ねた押さえ環等で樹脂の表面を押さえてしまうと、遮光はできるが、押さえる力で樹脂面が変形してしまうため好ましくない。
【0042】
これに対して本発明の光学素子のように樹脂外周部において、近接した位置に常に他の光学要素がある場合、その光学要素に対して、樹脂の外周部を覆うような一般的に行われている塗装や墨塗りをしておけば良いので容易である。また、その光学要素を用いて遮光部材の位置決めをすれば、樹脂面の変形を防ぎつつ遮光もできるので好ましい。
【0043】
また、光学要素上に成形される樹脂の異常部分分散性をΔθgFrとした時に以下のいずれかの条件を満足させるのが良い。
【0044】
0.0272<ΔθgFr …(6)
ΔθgFr<−0.0278 …(7)
ただし、ここでアッベ数νd、部分分散比θgF、異常部分分散性ΔθgFrはg線(波長435.8nm),F線(486.1nm),d線(587.6nm),C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg,Nd,NF,NCとする。このとき、
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
ΔθgFr=θgF−(−1.665×10−7×νd3+5.213×10−5×νd2−5.656×10−3×νd+7.278×10−1)
である。
【0045】
条件式(6)、(7)は樹脂の異常部分分散性に関する条件式であり、いずれかの式を満たすことで良好な色収差補正能力を持つ光学素子を得ることができる。
【0046】
なお、条件式(6)、(7)はそれぞれ以下の範囲とすることで更に良好な色収差補正能力を得ることができる。
【0047】
0.0342<ΔθgFr …(6a)
ΔθgFr<−0.0528 …(7a)
条件式(6)を満足する樹脂の具体例としては、例えばアクリル系UV硬化樹脂(Nd=1.633,νd=23.0,θgF=0.68)やN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696,νd=17.7,θgF=0.69)がある。尚、条件式(6)を満足する樹脂であれば、これらに限定するものではない。
【0048】
また、一般の硝材とは異なる特性を持つ光学材料として、下記の無機酸化物ナノ微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。すなわち、TiO2(Nd=2.758,νd=9.54,θgF=0.76),ITO(Nd=1.857,νd=5.69,θgF=0.29)等がある。
【0049】
この無機酸化物の中では、TiO2(Nd=2.758,νd=9.54,θgF=0.76)微粒子を合成樹脂中に適切なる体積比で分散させた場合、上記条件式(6)を満足する光学材料が得られる。
【0050】
また、ITO(Nd=1.857,νd=5.69,θgF=0.29)微粒子を合成樹脂中に適切なる体積比で分散させた場合、上記条件式(7)を満足する光学材料が得られる。
【0051】
なお条件式(6)、(7)を満足する材料であれば、これらに限定するものではない。
【0052】
TiO2は様々な用途で使われる材料であり、光学分野では反射防止膜などの光学薄膜を構成する蒸着用材料として用いられている。他にも光触媒、白色顔料などとして、またTiO2微粒子は化粧品材料として用いられている。
【0053】
ITOは透明電極を構成する材料として知られており、通常、液晶表示素子、EL(Electroluminescent)素子等に用いられている。また、他の用途として赤外線遮蔽素子、紫外線遮断素子に用いられている。
【0054】
各実施例において樹脂に分散させる微粒子の平均径は、散乱などの影響を考えると2nm〜50nm程度がよく、凝集を抑えるために分散剤などを添加しても良い。
【0055】
微粒子を分散させる媒体材料としては、ポリマーが良く、成形型等を用いて光重合成形または熱重合成形することにより高い量産性を得ることができる。
【0056】
ナノ微粒子を分散させた混合体の分散特性N(λ)は、良く知られたDrudeの式から導きだされた次式によって簡単に計算することができる。即ち、波長λにおける屈折率N(λ)は、
N(λ)=[1+V{Npar(λ)2−1}+(1−V){Npoly(λ)2−1}]1/2
である。ここで、λは任意の波長、Nparは微粒子の屈折率、Npolyはポリマーの屈折率、Vはポリマー体積に対する微粒子の総体積の分率である。
【0057】
次に各実施例の特徴について説明する。
【0058】
図3、図5、図7はそれぞれ数値実施例1〜3の光学素子の断面図である。図4、図6、図8はそれぞれ数値実施例1〜3の光学素子の外周部拡大断面図である。図9〜図11はそれぞれ数値実施例1〜3光学素子を用いた光学系の断面図である。図3〜図11の断面図において左側が物体側(前方、拡大側)、右側が像側(後方、縮小側)である。図3〜図11においてNL1は後述する樹脂又は樹脂層である。
【0059】
図3、図5、図7及び図9〜図11おいて1は光軸を表す。図3〜図11においてL1は樹脂が成形される光学要素を表す。図3〜図8においてL2は接着剤を介して樹脂と接合される光学要素を表す。またS1は接合の際に用いられる接着剤を表す。図3〜図8において2は遮光剤を表す。図3〜図8においてF1は封止剤を表す。図7〜図8においてF2は調湿剤を表す。図3、図5、図7においてRiは面番号を表し、iはそれぞれ光学素子において物体側から数えた面の番号を表している。
【0060】
図3〜図8においてφrは樹脂層NL1の外径を表す。図3〜図8においてφg1は光学要素L2の樹脂に対向する面の有効部径を表す。図3〜図8においてφg2は光学要素L1とL2の外周部において対向する面の光軸に沿った距離が最も短くなる径を表す。
【0061】
図9〜図11においてB1は第1群、B2は第2群、B3は第3群、B4は第4群を表す。SPは開口絞りである。IPは像面である。像面はビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCOMSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に、銀塩フィルム用カメラのときはフィルム面に相当する。Gは差込フィルターや、光学的ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当するガラスブロックである。
【0062】
図3、図4は数値実施例1の光学素子の断面図である。図3、図4の光学素子は第1の光学要素L1上にアクリル系UV硬化樹脂NL1(Nd=1.633、νd=23.0、θgF=0.68)を成形した後、UV硬化性接着剤S1(Nd=1.633)を介して第2の光学要素L2と接合されている。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0063】
図3、図4の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは28.5mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は27.5mmである。また、内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は31.0mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.30mm、0.10mm、0.48mmとなっている。
【0064】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。
【0065】
数値実施例1の光学素子は図9のズームレンズに用いられる。図9のズームレンズは物体側から正負正正のパワーを持つ4つの群から成る変倍比16倍、Fno2.9〜4.0程度のズームレンズである。図9はこのズームレンズの広角端の断面図である。このズームレンズの第1群に数値実施例1の光学素子を用いることで、主に望遠側の色収差を良好に補正でき、コンパクトかつ高性能で環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0066】
図5、図6は数値実施例2の光学素子の断面図である。図5、図6の光学素子は第1の光学要素L1上にN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696、νd=17.7、θgF=0.69)を成形した後、UV硬化性接着剤S1(Nd=1.633)を介して第2の光学要素L2と接合されている。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0067】
図5、図6の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは11.6mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は11.0mmである。内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は12.0mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.16mm、0.12mm、0.22mmとなっている。
【0068】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。
【0069】
数値実施例2の光学素子は図10のズームレンズに用いられる。図10のズームレンズは物体側から正負正正のパワーを持つ4つの群から成る変倍比15倍、Fno2.9〜3.6程度のズームレンズである。図10はこのズームレンズの広角端の断面図である。このズームレンズの第4群に数値実施例2の光学素子を用いることで、主に広角側の倍率色収差を良好に補正でき、コンパクト、高性能かつ環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0070】
図7、図8は数値実施例3の光学素子の断面図である。図7、図8の光学素子は第1の光学要素L1上にポリマーに微粒子を分散させたUV硬化性材料(Nd=1.806、νd=14.9、θgF=0.74)を成形した後、同じUV硬化性材料を介して第2の光学要素L2と接合されている。なおこのUV硬化性材料はポリマー(Nd=1.580、νd=37.2)にTiO2微粒子を体積比で15%分散させたものである。光学要素L2の外周部には遮光剤2として墨塗りが接合前にあらかじめなされており、樹脂外周部におけるフレアやゴーストの発生を抑えている。
【0071】
図7、図8の光学素子において、成形された樹脂NL1の外径φrは68.8mmであり、接合される第2の光学要素L2の樹脂と接合される側の内径φg1は67.8mmである。また、内径φg1よりも外周部で光学要素L1とL2が最も近接する径φg2は70.2mmである。この径φg1、φg2、φrにおける光学要素L1とL2の対向する面の光軸に沿った距離はそれぞれ、0.28mm、0.22mm、0.35mmとなっている。
【0072】
樹脂NL1の外径φrを第2の光学要素L2の内径φg1よりも大きくすることで、接合時の歪みが小さく、高温、高温高湿下での接合剥がれのない良好な光学特性を持つ素子を得られる。また、光学要素L1とL2が近接した径φg2においての両者の間にUV硬化性封止剤を塗布することで、封止剤の硬化時のL1とL2の歪みを防ぎつつ、外部湿度の影響を最小限に抑えることができる。さらにφg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入することでさらに外部湿度の影響を抑えることができる。
【0073】
数値実施例3の光学素子は図11の望遠レンズに用いられる。図11の望遠レンズは焦点距離300mm、Fno4.0のレンズである。この望遠レンズの絞りよりも物体側に数値実施例3の光学素子を用いることで、色収差を良好に補正できテレ比0.68のコンパクト、高性能かつ環境下における光学性能の変動の少ない光学系を得ることができる。
【0074】
以下、数値実施例1〜3光学素子の具体的な数値データを示す。各数値実施例において、iはそれぞれの光学素子において物体側から数えた面の番号を表している。各数値実施例において、Riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、Diは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔、Ni、νi、θgFiはそれぞれd線に対する第i番目の光学要素の材料の屈折率、アッベ数、部分分散比を示す。また、第i番目の光学面(第i面)の光線有効径と、第i番目の光学要素の光学性能上有効な有効部径(外径、内径)も合わせて示す。なお有効部径は物体側、像側有効部径を並列して示す。
【0075】
また、非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、B,C,D,E…を各次数の非球面係数として、
【0076】
【数1】
【0077】
で表す。なお、各非球面係数における「E±XX」は「×10±XX」を意味している。又、前述の各条件式と各実施例との関係を表−1に示す。
【0078】
数値実施例3ではホストポリマーであるUV硬化樹脂にTiO2微粒子体積比率で15%分散させた樹脂層より成るレンズを用いている。TiO2微粒子分散材料の屈折率は、前述のDrudeの式を用いて計算した値を用いて算出している。
【0079】
各実施例に用いた樹脂層を構成する材料の光学特性を表−2に示す。実施例3に用いた微粒子分散材料のホストポリマーとTiO2微粒子の光学特性を表−2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
次に本発明の光学系を撮影光学系として用いた本発明の光学機器であるデジタルスチルカメラ(撮像装置)の実施例を図12を用いて説明する。
【0083】
図12において、20はカメラ本体、21は本発明の光学系によって構成された撮影光学系、22はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
【0084】
このように本発明の光学系をデジタルスチルカメラ等の撮像素子に適用することにより、小型で高い光学性能を有する撮像装置を実現している。
【符号の説明】
【0085】
NL1・・樹脂又は樹脂層
S1・・接着剤
L1・・樹脂が成形される光学要素
L2・・接合される光学要素
F1・・封止剤
F2・・調湿剤
φr・・樹脂の外径
φg1・・光学要素の有効部径
φg2・・光学要素L1とL2が外周部において最も近接する径
1・・光軸
2・・遮光剤
B1・・光学系の第1群
B2・・光学系の第2群
B3・・光学系の第3群
B4・・光学系の第4群
SP・・絞り
IP・・像面
G・・ガラスブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、
前記光学素子を構成する光学要素のうち両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素上に成形された樹脂であって、
前記樹脂を成形後に第2の光学要素が接着剤を用いて前記樹脂の面と接合されている光学素子であって、
前記樹脂の外径をφr、前記接合される第2の光学要素の前記樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、
前記第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、
前記径φg1、φg2、φrにおける前記第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、以下の条件を満たすことを特徴とする光学素子。
φg1<φr
dφg1≦dφr
dφg2<dφr
【請求項2】
前記樹脂と前記接着剤のd線における屈折率をそれぞれnr、nsとした時に以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
|nr−ns|<0.1
【請求項3】
前記樹脂の焦点距離をfとした時に、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
f>0.0
【請求項4】
前記径φg2において、第1及び第2の光学要素の間に封止剤が塗布されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記径φg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第2の光学要素の接合される側の有効部の径φgよりも外周部に遮光剤を塗布又は遮光部材を設置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記樹脂のアッベ数をνd、部分分散比をθgFとする時、異常部分分散性ΔθgFrが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
0.0272<ΔθgFr
ΔθgFr<−0.0278
ただし、ここでアッベ数νd、部分分散比θgF、異常部分分散性ΔθgFrはg線(波長435.8nm),F線(486.1nm),d線(587.6nm),C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg,Nd,NF,NCとするとき、
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
ΔθgFr=θgF−(−1.665×10−7×νd3+5.213×10−5×νd2−5.656×10−3×νd+7.278×10−1)
である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
【請求項9】
光電変換素子上に像を形成することを特徴とする請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の光学系と、該光学系によって形成される像を受光する光電変換素子とを備えることを特徴とする光学機器。
【請求項1】
少なくとも3つ以上の光学要素が接合され一体化された光学素子において、
前記光学素子を構成する光学要素のうち両側を光学要素に挟まれたものの一つは、その外側に位置する第1の光学要素上に成形された樹脂であって、
前記樹脂を成形後に第2の光学要素が接着剤を用いて前記樹脂の面と接合されている光学素子であって、
前記樹脂の外径をφr、前記接合される第2の光学要素の前記樹脂の面と接合される側の有効部の径をφg1とし、
前記第2の光学要素の径φg1よりも外周部で第1の光学要素との向かい合った面の光軸に沿った距離が最も近接する径をφg2とし、
前記径φg1、φg2、φrにおける前記第1と第2の光学要素の向かい合った面の光軸に沿った間隔をそれぞれdφg1、dφg2、dφr2とした時に、以下の条件を満たすことを特徴とする光学素子。
φg1<φr
dφg1≦dφr
dφg2<dφr
【請求項2】
前記樹脂と前記接着剤のd線における屈折率をそれぞれnr、nsとした時に以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
|nr−ns|<0.1
【請求項3】
前記樹脂の焦点距離をfとした時に、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
f>0.0
【請求項4】
前記径φg2において、第1及び第2の光学要素の間に封止剤が塗布されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記径φg1とφg2に囲まれた空間内に調湿剤を封入したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第2の光学要素の接合される側の有効部の径φgよりも外周部に遮光剤を塗布又は遮光部材を設置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記樹脂のアッベ数をνd、部分分散比をθgFとする時、異常部分分散性ΔθgFrが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
0.0272<ΔθgFr
ΔθgFr<−0.0278
ただし、ここでアッベ数νd、部分分散比θgF、異常部分分散性ΔθgFrはg線(波長435.8nm),F線(486.1nm),d線(587.6nm),C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg,Nd,NF,NCとするとき、
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
ΔθgFr=θgF−(−1.665×10−7×νd3+5.213×10−5×νd2−5.656×10−3×νd+7.278×10−1)
である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
【請求項9】
光電変換素子上に像を形成することを特徴とする請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の光学系と、該光学系によって形成される像を受光する光電変換素子とを備えることを特徴とする光学機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−159726(P2012−159726A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19803(P2011−19803)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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