説明

光学素子の製造方法、光学素子、低屈折率層形成用組成物

【課題】光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造において、樹脂層の屈折率の調整と微細形状の成形とが可能な製造方法、該製造方法により得られる光学素子、及び該製造方法用として有用な低屈折率層形成用組成物を提供する。
【解決手段】透明樹脂基板2上に、樹脂および沸点がそれぞれ異なる複数の溶剤を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜3aを形成する塗布工程と、塗膜3aに含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて、前記微細形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有する樹脂膜3bを成膜する第1蒸発工程と、樹脂膜3bの表面に前記微細形状を形成する成形工程と、樹脂膜3bに残存する溶剤を蒸発させて樹脂層3cとする第2蒸発工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどを照明する導光板、光学シート、面状光源装置などの光学素子の製造方法、該製造方法により製造される光学素子、ならびに該製造方法用として有用な低屈折率層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、PDA、モバイルタイプPC(パーソナルコンピュータ)、ATM(現金自動預け払い機)等のディスプレイには、画像表示のための液晶表示装置が広く採用されている。この液晶表示装置には、液晶表示パネルの裏面側から光を照射して表示画面の輝度を高める光源装置、いわゆるバックライトユニットが用いられている。
従来、このような光源装置としては、蛍光管やLED等の発光部と、該発光部からの光を導光し、主面全体から液晶表示パネルに向けて出射させる導光板などの光学素子とを備えたものが用いられている。例えば特許文献1には、透明樹脂基材上に液状樹脂で光散乱パターンが形成された導光板及びこれを備えた面状光源装置が提案されている。このような導光板に用いられている透明樹脂基材は、一般にはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いた射出成形方式で作製されている。
【0003】
近年、導光板は、最終製品の薄型化のため、より薄くすることが要望されている。しかし、従来の射出成形方法では、薄型化を図る場合に形状全体に樹脂が転写、充填されず、薄型化には限界があった。
このような問題に対し、より薄型化が可能な成形方法として、紫外線硬化樹脂を用いた成形方法により、シート状導光板を作製する技術が検討されている。かかる技術によれば、透明樹脂基材上に光散乱パターンを有する樹脂層を形成することで薄型化した導光板が作製可能である。例えば特許文献2では、その場合においてさらに光の利用効率向上のため、透明樹脂基材上に、透明樹脂基材の屈折率以上の屈折率を有する樹脂層に光散乱パターンを形成することが提案されている。これによって、透明樹脂基材内を導光される光の一部が透明樹脂基材と樹脂層との境界面で内側に反射されることを防ぐことで、主面から出射される光を増やし、光の利用効率を向上させることが可能とされている。
【0004】
また、従来、光学素子においては、集光、拡散、反射等を目的として、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された光学シート(プリズムシート、拡散シート等)が用いられている。これらの光学シートは、一般に、高屈折材料から構成されており、導光板の片面または両面上に離間配置されている。
近年、さらなる薄型化や低コスト化のため、それらの機能を集約した機能集約型の光学素子が提案されている。この光学素子では、上述の各種光学シートと導光板との間に設けられていた空気層の代わりに低屈折率の樹脂層を用いている。そのため薄型化が可能であり、また、導光板と樹脂層との界面で光を反射することで、導光板内に光を伝播させ、発光部付近とその反対側との輝度の分布を調整し、品位の高い光学素子が作製可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−033923号公報
【特許文献2】特開2009−43565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記機能集約型の光学素子において、樹脂層には、光の利用効率の向上のため、さらなる低屈折率化が求められる。また、該樹脂層の表面に、光路変換を行うための微細形状(集光パターン)を成形することで、光の利用効率が高く、正面輝度の高い光学素子が作製可能と考えられる。
しかしながら、現状、該樹脂層として、空気の屈折率1に近いようなものは存在しない。
また、従来の技術では、樹脂層を低屈折率化すると、成形性が低下し、微細形状をうまく形成できない。たとえば樹脂層の低屈折率化のために、中空シリカ等の空気を含んだ無機粒子を配合する技術があるが、該無機粒子の配合量が増えると、樹脂層が硬くなり、微細形状の成形は難しい。たとえば微細形状の成形方法として、対応する微細形状が形成されたモールドを樹脂層に押圧し、該微細形状を転写するインプリント技術があるが、樹脂層が硬いと、モールドを充分に押し込めず、樹脂層の表層付近にしかパターニングができない。また、モールドを押し込むために高い圧力が必要となるなど、プロセス上の負担も大きい。
また、無機粒子を配合する場合、樹脂中に無機粒子を均等に分散させることが難しく、形成される樹脂層に屈折率のムラが発生するという問題もある。
【0007】
成形性を向上させる方法として、たとえば前記紫外線硬化樹脂を用いた成形方法において、樹脂に溶剤を混合し、流動性を上げて成形を行うことがある。しかし、溶剤を含めたまま樹脂を硬化させてしまうと、溶剤の屈折率が反映され、所望の屈折率に調整できないという問題がある。
また、屈折率のムラを防ぐために、樹脂、モノマー、及び光重合開始剤を含む紫外線硬化樹脂に中空シリカを、粘度の低い溶剤とともに混ぜることで、均等に分散させる方法がある。しかし、この方法では、硬化後、低屈折率層に溶剤が含まれるため、前記と同様、溶剤の屈折率が反映され、所望の屈折率に調整できないという問題がある。
このように、従来の技術では、光路変換を行うための微細形状を形成しようとした場合、調整できる屈折率の範囲が狭く、光の利用効率のさらなる向上が困難である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造において、樹脂層の屈折率の調整と微細形状の成形とが可能な製造方法、該製造方法により得られる光学素子、及び該製造方法用として有用な低屈折率層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第一の態様は、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造方法であって、
基板上に、樹脂および沸点がそれぞれ異なる複数の溶剤を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜に含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて、前記微細形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有する樹脂膜を成膜する第1蒸発工程と、
前記第1蒸発工程後、前記樹脂膜の表面に前記微細形状を形成する成形工程と、
前記成形工程後、前記樹脂膜に残存する溶剤を蒸発させて樹脂層とする第2蒸発工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の光学素子の製造方法により製造された光学素子である。
本発明の第三の態様は、極性基を有する構成単位(a1)を有し、ガラス転移温度が50〜130℃である重合体(A)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、中空シリカ粒子(D)と、沸点270℃以上の高沸点溶剤(H)と、前記高沸点溶剤(H)に該当しない溶剤(S)とを含有し、
前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であるか、または、前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合であることを特徴とする低屈折率層形成用組成物である。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。また、「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、「ハロゲン化アルキレン基」は、アルキレン基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造において、樹脂層の屈折率の調整と微細形状の成形とが可能な製造方法、該製造方法により得られる光学素子、及び該製造方法用として有用な低屈折率層形成用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光学素子の製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
【図2】発明の光学素子の製造方法により製造される光学素子の構成の一例を示す模式図である。
【図3】製造例1および比較製造例1にて作製した光学素子について行った輝度測定の方法を説明するための概略平面図である。
【図4】製造例1および比較製造例1にて作製した光学素子について行った輝度測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪光学素子の製造方法、光学素子≫
本発明の光学素子の製造方法は、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造方法であって、
基板上に、樹脂および沸点がそれぞれ異なる複数の溶剤を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜に含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて、前記微細形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有する樹脂膜を成膜する第1蒸発工程と、
前記第1蒸発工程後、前記樹脂膜の表面に前記微細形状を形成する成形工程と、
前記成形工程後、前記樹脂膜に残存する溶剤を蒸発させて樹脂層とする第2蒸発工程と、
を有する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「塗膜」、「樹脂膜」、「樹脂層」は、いずれも、前記樹脂組成物を用いて形成される膜であるが、「塗膜」は第1蒸発工程を行うまで、「樹脂膜」は第1蒸発工程後、第2蒸発工程を行うまで、「樹脂層」は第2蒸発工程後の膜を意味する。
以下、本発明の製造方法について、図面を用いて好ましい実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
本実施形態の製造方法では、透明樹脂基板の片面に、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子を製造する。
本実施形態では、まず、図1(a)に示すように、透明樹脂基板2の片面上に、樹脂と、相互に沸点が異なる複数の溶剤とを含有する樹脂組成物を塗布して塗膜3aを形成する塗布工程を行う。
次に、図1(b)に示すように、塗膜3aに含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて樹脂膜3bを成膜する第1蒸発工程を行う。つまり、複数の溶剤のうち、高沸点側の少なくとも1種の溶剤は蒸発させずに、低沸点側の少なくとも1種の溶剤を蒸発させる。このとき、溶剤の蒸発は、形成される樹脂膜3bが、光路変換を行うための微細形状(以下、微細光学形状という。)の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有するように行う。
次に、成形工程を行う。本実施形態では、樹脂膜3bに、図1(c)に示すように、形成する微細光学形状に対応する微細形状を表面に有するモールド6を押圧し、所望の微細光学形状を形成し、その後、樹脂膜3bからモールド6を剥離する。
その後、図1(e)に示すように、樹脂膜3bに残存する溶剤を蒸発させ、樹脂層3cとする第2蒸発工程を行う。
樹脂組成物として紫外線硬化型のものを使用する場合、第2蒸発工程後、さらに、図1(d)に示すように、前記樹脂層3cに、紫外線ランプ7から紫外線を照射し、該樹脂層3cを硬化させる硬化工程を行うことが好ましい。
以下、本実施形態の製造方法について、より詳細に説明する。
【0014】
透明樹脂基板2は、透光性を有するものであればよく、従来、導光板等に用いられているものと同様であってよい。
透明樹脂基板2を構成する材料としては、成形性に優れる材料が好ましい。たとえば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン樹脂、およびファンクショナルノルボルネン系樹脂などの透光性樹脂が挙げられる。
透明樹脂基板2の光の屈折率は、1.4〜1.7程度が好ましい。該屈折率は、透明樹脂基板2を構成する材料によって異なる。たとえば、ポリカーボネート樹脂の場合、1.59程度であり、アクリル樹脂、たとえばポリ(メチルメタクリレート)の場合、1.49程度である。
なお、本明細書中、「屈折率」は、広義には可視光領域(300nm〜800nm)での屈折率を意味する。本明細書中に記載する屈折率の数値は波長600nmの光に対しての値である。
【0015】
塗膜3aを形成するために用いられる樹脂組成物は、相互に沸点が異なる複数の溶剤を含有する。
該複数の溶剤のうち、高沸点側の溶剤(以下、高沸点溶剤という。)、低沸点側の溶剤(以下、低沸点溶剤という。)は、特に限定されず、樹脂組成物に配合する樹脂、第1蒸発工程および第2蒸発工程の実施条件等を考慮して、公知の溶剤のなかから適宜選択すればよい。
本発明においては、特に、高沸点溶剤として、沸点270℃以上の高沸点溶剤を用いることが好ましい。かかる高沸点溶剤としては、後述する本発明の低屈折率層形成用組成物の説明で挙げる高沸点溶剤(H)が挙げられる。
また、高沸点溶剤として該溶剤(H)を用いる場合に用いられる低沸点溶剤としては、後述する本発明の低屈折率層形成用組成物の説明で挙げる溶剤(S)が挙げられる。
高沸点溶剤、低沸点溶剤は、それぞれ、1種の溶剤を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記樹脂組成物に配合される樹脂としては、膜形成能を有するものであればよく、従来、樹脂膜を形成するために用いられているものが利用でき、たとえばアクリル系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ノボラック樹脂等が挙げられる。
本発明においては、特に、樹脂として、後述する本発明の低屈折率層形成用組成物の説明で挙げる(A)成分のような、ガラス転移温度(Tg)が50〜130℃のものを用いることが好ましい。Tgが該範囲内であると、樹脂膜に微細光学形状を形成しやすく、成形後の形状維持性にも優れる。
【0017】
樹脂組成物は、必要に応じて、樹脂および溶剤以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分は、樹脂組成物や樹脂層の所望の特性を考慮して適宜決定すればよい。
たとえば該樹脂組成物が紫外線硬化型である場合、樹脂組成物には、樹脂および溶剤のほか、光重合開始剤等の感光成分が配合される。さらに、重合反応し得る基(重合性基)を有するモノマー、オリゴマー等の重合性化合物が配合される場合もある。その他、紫外線硬化型樹脂組成物に配合されている成分を適宜配合できる。
また、樹脂層として低屈折率、たとえば透明樹脂基板2よりも屈折率の低い層を形成する場合、透明樹脂基板2を構成する材料よりも低い屈折率を有する物質が配合される。該物質としては、たとえば後述する(D)成分等の中空粒子が挙げられる。該中空粒子の屈折率は、粒子内が空洞で、空気を含むことから、外殻を構成する材料そのものの屈折率よりも低くなっている。
【0018】
本発明の製造方法に用いる樹脂組成物としては、後述する本発明の低屈折率層形成用組成物が好適である。すなわち、該樹脂組成物は、極性基を有する構成単位(a1)を有し、ガラス転移温度が50〜130℃である重合体(A)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、中空シリカ粒子(D)と、沸点270℃以上の高沸点溶剤(H)と、前記高沸点溶剤(H)に該当しない溶剤(S)とを含有し、前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であるか、または、前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合であるものが好適である。
【0019】
透明樹脂基板2への樹脂組成物を塗布方法は特に限定されず、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター、スリットコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置等による公知の方法にて実施できる。
塗膜3aの膜厚は、形成しようとする樹脂層3cの膜厚に応じて適宜設定すればよい。樹脂層3cの厚さ(微細光学形状が形成されていない部分の厚さ)は、形成しようとする微細光学形状によっても異なるが、1μm〜50μm程度が好ましく、1〜15μm程度が特に好ましい。
【0020】
第1蒸発工程では、上述したように、形成される樹脂膜3bが、微細光学形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有するように、塗膜中の複数の溶剤の一部を蒸発させる。このとき蒸発させる溶剤が多すぎると、樹脂膜が硬くなり、微細光学形状の成形が困難になる。また、蒸発させる溶剤が少なすぎると、成形後の形状保持が難しく、たとえばモールドの剥離時および剥離後に、形成した微細光学形状が損なわれてしまう。
蒸発させる溶剤量、または残存させる溶剤量は、第1蒸発工程の処理条件(処理温度、処理時間温度)、樹脂組成物中の高沸点溶剤の配合量等により調整できる。たとえば後述する低屈折率形成用組成物の場合、(H)成分の配合量が多いほど、残存する溶剤量が多くなる。
第1蒸発工程の処理条件は、使用する低沸点溶剤および高沸点溶剤の沸点に応じて設定される。たとえば処理温度は、処理時間にもよるが、高沸点溶剤のうち、最も沸点の低い溶剤の沸点よりも低い温度であることが好ましい。
たとえば低沸点溶剤、高沸点溶剤としてそれぞれ後述する溶剤(S)、溶剤(H)を用いる場合、第1蒸発工程は、ベークにより行ってもよく、常温にて放置することにより行ってもよい。ベークを行う場合、該ベーク温度は、高沸点溶剤のうち、最も沸点の低い溶剤の沸点よりも低い温度であることが好ましい。
【0021】
成形工程では、まず、樹脂膜3bに、形成する微細光学形状3に対応する微細形状を表面に有するモールド6を押圧し、所望の微細光学形状3を形成する。
微細光学形状3は、光路変換を行うための種々の凹凸形状であり、例えばランダムな凹凸として構成してもよいし、用途に応じた形状、例えば斜面が直線あるいは曲線からなる多数のレンズ列によって構成してもよい。
モールド6は、公知の微細加工技術により作製でき、例えば、ニッケル板や石英板などの表面に、上述の微細光学形状3をバイト加工、電子ビーム、フォトリソグラフィー、電気鋳造技術などを用いて形成することにより作製できる。
【0022】
本工程においては、モールド6を押圧する際、樹脂膜3b中に溶剤の一部が残留しているため、モールド6を押し込みやすくなっている。そのため、図1(c)に示すように、モールド6の微細光学形状の先端部分を、樹脂膜3bの透明樹脂基板2との界面付近まで押し込むことができる。一方、溶剤の一部を残留させない場合は、樹脂膜が硬く、このような押し込みが難しい。また、溶剤が過剰に残留している場合は、モールド6の剥離時や剥離後に、樹脂膜3bに形成した微細光学形状が損なわれてしまう。
【0023】
上記のようなモールドの押し込みやすさは、成形を室温等の比較的低温で行う場合でも、低いプレス圧力で所望の微細光学形状をできるなど、プロセス上の利点が大きい。
すなわち、近年提案されているインプリント技術として室温インプリント技術がある。これは、樹脂膜に室温でモールドを押し込み、剥離することでモールドのパターンを樹脂膜に転写する技術で、従来一般的に用いられている熱インプリント技術(熱可塑性の樹脂膜を加熱、軟化させた状態でモールドを押し込み、その状態で冷却してパターンを転写する)や光インプリント技術(未硬化の樹脂膜にモールドを押し込み、その状態で光硬化させてパターンを転写する)に比べて、スループットが高い等の利点がある。
インプリント技術では、モールドを樹脂膜に押し込む際のプレス圧力が低いほど、モールドの形状を簡単かつ精確に転写できるため好ましい。この点に関し、室温インプリント技術では、熱インプリント技術や光インプリント技術に比べて、高いプレス圧力が必要となり、プレス圧力の低下の要求が大きい。
本発明では、室温程度の比較的低温条件下においても、低いプレス圧力でのモールドの押し込みが可能である。たとえば室温にて、数MPa〜数百MPa程度のプレス圧力で、モールド6の微細形状の先端部分を、樹脂膜3bの透明樹脂基板2との界面付近まで押し込むことができる。
かかる観点から、成形工程においてモールド6を押圧する際の温度(プレス温度)は、室温(たとえば15〜35℃)が好ましい。ただし本発明はこれに限定されず、押圧時に加熱を行ってもよい。加熱によりさらに押圧低減を図ることもできる。押圧時の加熱温度は、たとえば、後述の(A)成分のTgより若干高い程度に設定することが押圧低減の点で好ましい。
【0024】
押圧したモールド6は、第2蒸発工程を行う前に樹脂膜3bから剥離する。これにより、樹脂膜3b中に残存する溶剤の蒸発、除去を良好に行うことができる。
モールド6を押圧してから剥離するまでの時間(プレス時間)は、樹脂膜3bの膜厚等によっても異なるが、通常、数秒〜数百秒間程度である。
【0025】
第2蒸発工程では、微細光学形状が形成された樹脂膜3b中に残存する溶剤を蒸発させる。これにより、溶剤の屈折率が反映されることなく、樹脂層3cの屈折率を所望の値に調整でき、樹脂層3c中の屈折率のムラも少ない。また、この後に硬化工程を行う場合には、残存溶剤を除去しておくことにより、該樹脂層3cの硬化性も向上する。
第2蒸発工程の処理条件(処理時間、処理温度)は、該樹脂層3c中の残存する溶剤が蒸発し得る条件であればよく、樹脂組成物に配合した高沸点溶剤の沸点、含有量等に応じて適宜設定すればよい。たとえば高沸点溶剤として後述する溶剤(H)を用いる場合、常温ではほとんど蒸発しないため、ベークすることが好ましい。該ベーク温度は、100℃〜150℃程度が好ましく、透明樹脂基板2の耐熱性を考慮すると100℃〜130℃がより好ましい。処理時間は、処理温度によって異なる。
【0026】
硬化工程は、公知の方法により実施できる。
たとえば紫外線ランプ7としては、一般的に紫外線硬化等に用いられているものが利用でき、具体例としては、高圧水銀ランプ、紫外光LED、キセノンランプ、カーボンアークランプ等の、紫外線を発する光源が挙げられる。
硬化工程は、必ずしも必須ではないが、該工程を行うことにより、樹脂層3cの硬度の向上が可能である。硬度の向上によって、樹脂層3cの微細光学形状3の精度をさらに高くすることができるので、光の利用効率がさらに向上し、さらなる高輝度化が可能となる。
【0027】
上述のようにして、透明樹脂基板2の片面上に、表面に微細光学形状が形成された樹脂層3cを有する光学素子が形成される。
ただし本発明はこれに限定されず、透明樹脂基板2以外の基板、たとえば石英ガラス等を用いてもよい。
また、本発明においては、透明樹脂基板2の両面上に、表面に微細光学形状が形成された樹脂層を有する光学素子を製造してもよい。かかる光学素子は、上記第2蒸発工程後、または硬化工程後、さらに、透明樹脂基板2の、樹脂層3cを形成した側とは反対側の面上に、上記塗布工程〜硬化工程と同様にして、別の樹脂層を形成することにより製造できる。
この場合、該樹脂層の表面に形成する微細光学形状は、樹脂層3cと同じであってもよく、異なっていてもよい。たとえば樹脂層3cに、集光用の微細光学形状を形成し、別の樹脂層に、光の拡散用の微細光学形状を形成してもよい。
【0028】
また、上記第2の蒸発工程後、または硬化工程後、前記樹脂層3c上に、さらに、別の層を形成する工程を行ってもよい。
特に、樹脂層3cとして、透明樹脂基板2よりも低屈折率の層を形成し、その上に、該樹脂層3cよりも高屈折率の層を形成することが好ましい。これにより、微細光学形状3による光路変換が効率的に行われ、集光、拡散、反射等の機能が向上する。
高屈折率層を形成するための材料としては、従来、プリズムシート、拡散シート等に用いられている材料が利用できる。
【0029】
上記本発明の製造方法により製造される光学素子としては、導光板、光学シート、面状光源装置などの光学部材が挙げられる。
図2に、本発明の製造方法により製造される光学素子の構成の一例を模式図として示す。
本実施形態の光学素子は、発光部からの光の導光、集光および拡散の機能を一体的に集約した機能集約型の光学シート11、および該光学シート11を備えた面状光源装置である。該面状光源装置は、光学シート11と、光学シート11の側端面に配置された発光部21とを備える、いわゆるサイドライト方式の面状光源装置であり、光学シート11の出射面(図2中、Z1方向の表面)とは反対側にはさらに反射部材31が配置されている。
【0030】
光学シート11は、透明樹脂基板12と、透明樹脂基板12の出射面12A上に形成された拡散層13と、透明樹脂基板12の出射面とは反対側の面上に形成された集光層14と、集光層14上に形成された高屈折率層15とを備える。
透明樹脂基板12の出射面12Aには、断面三角形状のプリズムが複数、並列に形成されている。
拡散層13は、透明樹脂基板12よりも屈折率の低い低屈折率層であり、その表層部分に、微細光学形状として、光の拡散のための微細な凹凸形状(拡散パターン)13aが多数、ランダムに形成されている。拡散パターン13aにおける凹凸形状の寸法は、通常、高さ1μm〜50μm、幅1μm〜50μm程度である。
集光層14は、透明樹脂基板12よりも屈折率の低い低屈折率層であり、微細光学形状として、集光のための断面U字状の微細なホール形状(集光パターン)14aが多数、所定のピッチで形成されている。集光パターン14aにおけるホール形状の直径は、通常、数μm〜数百μm程度である。該ホール形状の深さは特に限定されない。本実施形態では、ホール形状が、透明樹脂基板12との界面付近までの深さで形成されている。
高屈折率層15は、該集光層14上に高屈折材料を塗布することにより形成され、前記集光パターン14aのホール形状内に高屈折率材料が充填されている。
【0031】
拡散層13および集光層14の屈折率(低屈折率層の屈折率)は、1.30未満が好ましく、1.29以下がより好ましい。該屈折率の下限は特に限定されず、たとえば空気の屈折率(1.0)に近いほど好ましい。微細光学形状の成形性等を考慮すると、1.20以上が好ましい。
該屈折率は、樹脂組成物の組成、たとえば使用する樹脂の種類、中空シリカ粒子等の低屈折率の物質の配合量等を調整することにより調整できる。
【0032】
上記面状光源装置においては、透明樹脂基板12の両面にそれぞれ低屈折率の拡散層13および集光層14が設けられていることにより、発光部21からの光が、透明樹脂基板12内、Y1方向に伝播する。すなわち、図2の軌跡Xに示すように、発光部21からの光は、透明樹脂基板12と拡散層13との界面や透明樹脂基板12と集光層14との界面で反射し、透明樹脂基板12内を伝播する。そのため、発光部21付近と発光部21と反対側との輝度の分布が調整され、品位が向上する。
また、集光層14との界面を通過した光は、図2の軌跡Yに示すように、集光パターン14aが形成された集光層14と高屈折率層15との界面で屈折し、高屈折率層15からZ2方向に出射した後、反射部材31によりZ1方向に反射され、再度光学シート11内に入射する。
また、透明樹脂基板12と拡散層13との界面を通過した光は、図2の軌跡Zに示すように、拡散層13表面の拡散パターン13aにより拡散する。
【0033】
このように、本発明によれば、低屈折率層に微細光学形状が成形されていることで、発光部からの光が効率よく立上げることができ、正面輝度が高く、面内の輝度のムラも少ない面状光源装置が作製可能である。
また、上記光学シート11のように、従来の面状光源装置等の光学素子においては導光板の片面はたは両面にプリズムシートや拡散シートを配置して付与していた集光及び拡散の機能を一体的に集約した機能集約型光学素子が作製可能である。
そのため、本発明によれば、各種光学シートを削減できる分、光学素子の薄型化及び低コスト化が可能となる。また、各種光学シートを配置した場合、発光部からの光が各種光学シートを通る際に吸収されてしまうが、各種光学シートを削減できる分、光の利用効率が向上し、高輝度化が可能となる。
【0034】
なお、上記図2に示す実施形態では、低屈折率層に微細光学形状を成形することで、薄型化、低コスト化及び高輝度化を可能とした光学素子の形態を具体的に説明しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば該低屈折率層に換えて、透明樹脂基材の屈折率と同じか又はそれ以上の高屈折率を有する層の成形に用いることも可能である。
また、本発明の光学素子は、図2に示したような光学シート11または該光学シート11を備えた面状光源装置に限定されるものではなく、前記微細光学形状が形成された樹脂層を透明樹脂基板の片面または両面に有するものであればよい。たとえば導光板であってもよく、プリズムシート、拡散シート等の光学シートであってもよい。
【0035】
上記のとおり、本発明の製造方法では、第1の蒸発工程後、成形工程にて、第2の蒸発工程で蒸発させる溶剤を含み、流動性を保持した樹脂膜に対して成形を行うため、微細光学形状の成形が容易であり、その形状の精度にも優れる。また、成形工程後、第2の蒸発工程で残存溶剤を蒸発させるため、屈折率のムラが少ない樹脂層を形成することができる。このように、形成した樹脂層の屈折率のムラが小さいこと、微細光学形状の精度が高いため、光の利用効率が向上し、高輝度化が可能となる。
特に、樹脂層を紫外線硬化型の樹脂組成物を用いて形成した場合、前記第2の蒸発工程後に、さらに硬化工程を行うことで、樹脂層の硬化を進め、硬度の向上が可能である。これにより、樹脂層の微細光学形状の精度をさらに高くすることができるので、光の利用効率および輝度のさらなる向上が可能となる。
また、本発明の製造方法において、樹脂層として、透明樹脂基板よりも低屈折率の層を形成した場合、該低屈折率層を、空気層の代わりとして利用できる。この場合、透明樹脂基板の端面から入射した光を、透明樹脂基板と低屈折率層との界面で反射することで、透明樹脂基板内に伝播させ、発光部付近からその反対側までの輝度の分布を均一にでき、品位の高い光学素子が作製可能である。また、低屈折率層に微細光学形状が成形されていることで、発光部からの光を効率よく立上げ、正面輝度の高い光学素子が作製可能である。
したがって、本発明によれば、集光及び拡散の機能を集約した機能集約型光学素子が作製可能であるので、プリズムシート、拡散シート等、従来、面状光源装置に用いられていた各種光学シートを削減でき、その分、薄型化及び低コスト化が可能となる。また、各種光学シートを配置した場合、発光部からの光が各種光学シートを通る際に吸収されてしまうが、各種光学シートを削減できる分、光の利用効率が向上し、高輝度化が可能となる。
【0036】
≪低屈折率層形成用組成物≫
本発明の低屈折率層形成用組成物(以下、本発明の組成物という。)は、極性基を有する構成単位(a1)を有し、ガラス転移温度(Tg)が50〜130℃である重合体(A)(以下、(A)成分という。)と、重合性化合物(B)(以下、(B)成分という。)と、光重合開始剤(C)(以下、(C)成分という。)と、中空シリカ粒子(D)(以下、(D)成分という。)と、沸点270℃以上の高沸点溶剤(H)と、前記高沸点溶剤(H)(以下、溶剤(H)という。)に該当しない溶剤(S)(以下、溶剤(S)という。)とを含有し、
前記(D)成分の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下であり、且つ前記溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であるか、または、前記(D)成分の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満であり、且つ前記溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合であることを特徴とする。
【0037】
<(A)成分>
(A)成分は、極性基を有する構成単位(a1)を有する。構成単位(a1)は、極性基を有することにより、当該(A)成分と(D)成分との相溶性の向上に寄与する。
構成単位(a1)における極性基としては、シリカと親和性を有するものであればよく、たとえば水酸基、カルボキシ基等が挙げられ、水酸基が特に好ましい。
構成単位(a1)中の極性基の数は、1〜3が好ましく、1が最も好ましい。
構成単位(a1)としては、極性基を有するものであればその構造は特に限定されず、従来、樹脂層、たとえば光学素子用の樹脂層等の形成に用いられている樹脂を構成する構成単位として提案されているもののなかから適宜選択できる。そのような樹脂としては、たとえばアクリル系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0038】
好ましい構成単位(a1)として、たとえば、前記極性基と、エチレン性不飽和二重結合(>C=C<)を含有する基(エチレン性不飽和二重結合含有基)とを有するモノマーから誘導される構成単位(以下、構成単位(a1−1)という。)が挙げられる。
ここで、「極性基と、エチレン性不飽和二重結合含有基とを有するモノマーから誘導される構成単位」とは、該モノマー中のエチレン性不飽和二重結合が開裂して形成される構成単位を意味する。
エチレン性不飽和二重結合含有基としては、たとえば、その構造中に、C(R)(R)=C(R)−を有する基が挙げられる。式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、RおよびRが相互に結合して環を形成していてもよい。
〜Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基が好ましく、具体的には、前記アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
およびRは、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることが好ましい。
は、水素原子、アルキル基またはフッ素化アルキル基であることが好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
およびRは相互に結合して環を形成していてもよい。この場合、該環の環骨格を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。
【0039】
構成単位(a1−1)としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸から誘導される構成単位;不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステルから誘導される構成単位;水酸基および/またはカルボキシ基含有シクロオレフィン化合物から誘導される構成単位;等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステルから誘導される構成単位としては、たとえば下記一般式(a1−1−1)で表される構成単位が挙げられる。
また、水酸基および/またはカルボキシ基含有シクロオレフィン化合物から誘導される構成単位としては、たとえば下記一般式(a1−1−2)で表される構成単位が挙げられる。
【0040】
【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、R11は水酸基を有していてもよいアルキレン基である。]
【0041】
【化2】

[式中、aは0または1であり、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシ基であり、R〜Rのうちの少なくとも1つは水酸基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシ基である。]
【0042】
式(a1−1−1)中、R11におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状が好ましい。
直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
環状のアルキレン基としては、たとえば3〜30のものが挙げられる。該アルキレン基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の環状アルキレン基としては、炭素数3〜20のモノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の環状アルキレン基としては、炭素数7〜30のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
式(a1−1−1)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的には、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0043】
式(a1−1−2)中、aは0であることが好ましい。
〜Rにおける炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
〜Rにおけるヒドロキシアルキル基としては、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基が好ましく、具体的には、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が水酸基で置換された基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基中、水酸基の数は1〜3が好ましく、1が最も好ましい。
式(a1−1−2)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的には、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の、水酸基含有ビシクロ不飽和化合物;5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の、カルボキシ基含有ビシクロ不飽和化合物;等が挙げられる。
【0044】
構成単位(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
構成単位(a1)のみからなる重合体のTgが50℃〜130℃の範囲内の場合、(A)成分は、構成単位(a1)のみからなる重合体であってもよく、構成単位(a1)と、構成単位(a1)以外の他の構成単位(以下、構成単位(a2)という。)との共重合体であってもよい。
構成単位(a1)のみからなる重合体のTgが50℃〜130℃の範囲外の場合、(A)成分としては、構成単位(a1)と、構成単位(a2)との共重合体が用いられる。
ただし構成単位(a1)による効果を充分に得るためには、(A)成分中の構成単位(a1)の割合が、(A)成分を構成する全構成単位の合計に対し、20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましい。該割合の上限は特に限定されず、所望のTg等を考慮して適宜設定すればよい。
【0045】
構成単位(a2)としては、当該構成単位(a2)を誘導するモノマーが、前記極性基を有さず、かつ前記構成単位(a1)を誘導するモノマーと共重合可能なものであればよく、特に限定されない。たとえば前述した構成単位(a1)における極性基を疎水基または水素原子で置換した構成単位、構成単位(a1)における極性基を疎水基で保護(たとえば水酸基またはカルボキシ基の水素原子を疎水基で置換)した構成単位、後述する(B)成分の説明で挙げる「重合性基を有するモノマー」のうち、前記極性基を有さないモノマーから誘導される構成単位、等が挙げられ、(A)成分の所望の特性、たとえばTg、次いで屈折率の低さ等、に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
前記疎水基としては、たとえば炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0047】
脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。不飽和炭化水素基としてはプロペニル基が特に好ましい。
脂肪族環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。その炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。具体的には、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。モノシクロアルカンとして具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基中の水素原子が置換基で置換されていてもよい。該ヘテロ原子、水素原子を置換する置換基としては、それぞれ、前記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0048】
構成単位(a2)の好ましい具体例としては、たとえば、下記一般式(a2−1)で表される構成単位、下記一般式(a2−2)で表される構成単位、下記一般式(a2−3)で表される構成単位、等が挙げられる。これらの中でも、式(a2−1)で表される構成単位が好ましい。
【0049】
【化3】

[式中、Rは前記と同じであり、R21はアリール基であり、R22は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基または脂肪族環式基であり、R23はアリール基またはアリールアルキル基である。]
【0050】
式(a2−1)中、R21のアリール基としては前記芳香族炭化水素基の説明で挙げたものと同様のものが挙げられ、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
式(a2−2)中、R22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、脂肪族環式基としては、それぞれ、前記脂肪族炭化水素基の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。R22としては、脂肪族環式基が好ましく、多環式の脂肪族環式基がより好ましい。
式(a2−2)で表される構成単位の好ましい具体例として、たとえば下記一般式(a2−2−1)〜(a2−2−5)で表される構成単位が挙げられる。
式(a2−3)中、R23のアリール基、アリールアルキル基としては、それぞれ、前記芳香族炭化水素基の説明で挙げたものと同様のものが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基が好ましい。
【0051】
【化4】

[式中、Rは前記と同じである。]
【0052】
構成単位(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分中、構成単位(a2)の割合は、構成単位(a1)とのバランス、(A)成分の所望のTg等を考慮して適宜設定すればよい。
【0053】
(A)成分のTgは50〜130℃であり、55〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。Tgが上記範囲の下限値未満であると、形成される低屈折率層が、常温下で柔らかすぎるものとなるおそれがある。上限値以内とすることで、樹脂膜の流動性の保持が容易である。
本発明において、(A)成分のTgは、下記FOX式により求められる推定値である。
【0054】
【数1】

【0055】
上記FOX式は、n種のモノマーの重合体の絶対温度(K)でのTgを求める式である。
Tgは、n種のモノマーのうち、i番目(iは1〜nの整数)のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を示し、Wは、該モノマーの全モノマーの合計に対する質量分率を示し、W+W+…+W+…W=1である。
n種のモノマーそれぞれについてW/Tgの値を求め、それらを全て合計することで1/Tg(K)が算出され、この値から、(A)成分のTg(℃)が求められる。
【0056】
(A)成分のTgは、(A)成分を構成する構成単位を誘導するモノマーの種類および配合比率等により調節できる。
たとえばモノマーとしてCH=C(R’)−X[式中、R’は水素原子またはアルキル基であり、Xは置換基である。]を用いる場合を例に挙げると、R’および/またはXの種類によってTgを調節できる。
たとえばXが同じである場合、R’が水素原子であるモノマーのホモポリマーのTg(以下、Tg)と、R’がアルキル基であるモノマーのホモポリマーのTg(以下、Tg)とでは、Tgの方が低い。そのため、たとえばR’がアルキル基であるモノマーと、R)が水素原子であるモノマーの比率を調節することで、Tgを、Tg〜Tgの範囲内で調節できる。
逆に、R’が同じであっても、Xの構造が異なれば、そのホモポリマーのTgは異なる。たとえば、同じ炭化水素基であっても、Xが鎖状であるモノマーのホモポリマーのTg(以下、Tg)と、Xが環状であるモノマーのホモポリマーのTg(以下、Tg)の場合とでは、Tgの方が低い。そのため、たとえばXが鎖状のアルキル基であるモノマーと、Xが環状の炭化水素基(たとえばフェニル基等の芳香族環式基や、イソボルニル基等の脂肪族環式基)であるモノマーの比率を調節することで、Tgを、Tg〜Tgの範囲内で調節できる。
【0057】
(A)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではないが、2000〜100000が好ましく、5000〜80000がより好ましい。この範囲の上限値以下であると、充分な溶剤溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、成膜性に優れる。
【0058】
(A)成分は、公知の方法により製造でき、たとえば各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。上記重合の際に連鎖移動剤を併用してもよい。
【0059】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計(100質量%)に対して、30〜80質量%が好ましく、40〜75質量%がより好ましく、50〜70質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、塗膜性が向上し、上限値以下であると、硬化性や硬化後の膜(樹脂層)の安定性が向上する。
【0060】
<(B)成分>
(B)成分としては、(C)成分の作用により重合し得るものであればよく、たとえば重合性基を有する化合物が挙げられる。
「重合性基」は、当該重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基である。
重合性基としては、ラジカル重合等により重合し得るものであればよく、特に限定されない。たとえば、従来、ラジカル重合により用いられているモノマーが有する重合性基と同様のものが利用でき、かかる重合性基としては、たとえば、前述したエチレン性不飽和二重結合含有基等が挙げられる。
(B)成分は、重合性基を有するモノマーであってもよく、重合性基を有するオリゴマーであってもよく、重合性基を有する構成単位を含むポリマーであってもよく、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、重合性基を有するモノマーが好ましい。
重合性基を有するモノマーは、重合性基を1つ有する単官能モノマーであってもよく、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーであってもよい。
【0061】
重合性基として前記エチレン性不飽和二重結合含有基を有する単官能モノマーとしては、たとえば
(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体またはテレフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド(好ましくはエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)で変性された一価アルコールの(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル系不飽和化合物;
(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸等のアクリルアミド系不飽和化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α−メチルビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;
エチレン、プロペン、ブテン等のオレフィン系化合物;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のシクロオレフィン系化合物;
などが挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
前記フタル酸誘導体またはテレフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレートにおける「フタル酸誘導体またはテレフタル酸誘導体」としては、たとえば、フタル酸またはテレフタル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとの縮合物、フタル酸またはテレフタル酸がアルキレンオキサイド(好ましくはエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)で変性された化合物等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の一方あるいは両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの一方あるいは両方を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの一方あるいは両方を意味する。
【0062】
重合性基として前記エチレン性不飽和二重結合含有基を有する多官能モノマーとしては、たとえばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート等と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物、アルキレンオキサイド(好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)で変性された多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート(例えばエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等)等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0063】
重合性基として前記エチレン性不飽和二重結合含有基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、前記エチレン性不飽和二重結合含有基を有する多官能モノマーのいずれか1種以上を含むモノマー混合物を重合させたオリゴマーまたはポリマー;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂等が挙げられる。
【0064】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計(100質量%)に対して、20〜70質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、紫外線を照射した際に、硬化が良好に進み、上限値以下であると、耐クラック性が向上する。
【0065】
<(C)成分>
(C)成分としては、前記(B)成分を重合させ得るものであればよく、公知のもののなかから適宜選択すればよい。たとえば(B)成分がエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である場合、光ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン;メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類;t−ブチルパ−オキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;ジn−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物類等が挙げられる。
上記のなかでも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物、フェニルグリコシレート、ベンゾフェノン等が好ましい。
これらの光ラジカル重合開始剤は市販のものを用いることができ、たとえばIRGACURE 907、IRGACURE 651、IRGACURE 2959、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 250、IRGACURE 754、DAROCUR MBF、DAROCUR BP(いずれも、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が市販されている。
【0066】
(C)成分としては、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物中、(C)成分の含有量は、(A)成分および(B)成分の合計(100質量%)に対して、1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。上記の範囲であることにより、当該組成物を用いて形成される樹脂層が良好に硬化する。
【0067】
<(D)成分>
「中空シリカ粒子」は、シリカ(SiO)で構成される外殻の内部に空間を有する粒子である。中空シリカ粒子は、その構造から、屈折率が、シリカ自体の屈折率(1.47程度)よりも低くなっており、粒子径が数十ナノメートルオーダーのものであれば、一般的には屈折率が1.2〜1.3程度となることが知られている。そのため、中空シリカ粒子は、低屈折率性が求められる反射防止膜等に有用とされ、その有用性から、従来、中空シリカ粒子やその製造方法、中空シリカ粒子を配合した反射防止膜等について多数の提案がなされている(たとえば特許第4046921号公報、特開2006−21938号公報、特開2006−163106号公報、特開2006−225513号公報、特開2006−257308号公報等)。本発明における(D)成分としては、このように、従来提案されているもののなかから、屈折率、粒子径等を考慮して適宜選択すればよい。
(D)成分の屈折率としては、当該組成物を塗布する透明樹脂基板の屈折率よりも低い値であればよい。通常1.2〜1.3が好ましい。
(D)成分の粒子径は、低屈折率層の膜厚よりも小さければよく、低屈折率層の膜厚、形成する微細形状の寸法等を考慮して適宜設定すればよい。通常、30〜90nm程度のものが好ましく用いられる。
(D)成分は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造してもよい。
【0068】
本発明の組成物中、(D)成分の含有量は、固形分全体((H)成分および(S)成分を除く全成分の合計)に対して65質量%以上95質量%未満である。該含有量が65質量%未満であると、低屈折率化が困難である。95質量%以上になると、成膜が困難となる。
(D)成分の含有量は、上記範囲内であれば特に限定されず、使用する(D)成分の屈折率、低屈折率層の所望の屈折率、成形性等を考慮して適宜設定すればよい。(D)成分の含有量が多いほど、形成される低屈折率層の屈折率を低くできるが、微細形状の成形性が低下する傾向がある。そのため、(D)成分の配合量は、上記範囲内にて、使用する(D)成分の屈折率、低屈折率層の所望の屈折率、成形性等を考慮して設定すればよい。たとえば低屈折率層の屈折率を考慮すると、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、成形性の観点からは、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
【0069】
<溶剤(H)>
溶剤(H)は、沸点270℃以上の高沸点溶剤である。
本明細書および本特許請求の範囲において、「沸点」は、標準沸点(1気圧(=101325Pa)下での沸点)をいう。「溶剤」とは、常温、常圧下で液体である化合物をいう。
溶剤(H)の沸点は、270〜330℃が好ましく、270〜310℃がより好ましい。
溶剤(H)としては、公知の溶剤のなかから所望の沸点を有するものを適宜選択すればよい。
本発明においては、溶剤(H)によるポリカーボネート基板等の透明樹脂基板の汚染の防止等の観点から、溶剤(H)が、アルコール系溶剤および水酸基を有さないエーテル系溶剤からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0070】
「アルコール系溶剤」とは、脂肪族炭化水素の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であって、常温、常圧下で液体である化合物をいう。
前記脂肪族炭化水素は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。該脂肪族炭化水素基は、鎖状構造であってもよく、環状構造を含むものであってもよく、環状構造を含むものが好ましい。該脂肪族炭化水素基は、その構造中にエーテル結合を含んでいてもよい。
アルコール系溶剤が有する水酸基の数は、1〜3が好ましく、1が最も好ましい。
【0071】
沸点270℃以上のアルコール系溶剤としては、たとえば、下記化学式(H1)で示されるイソボルニルシクロヘキサノール(沸点308℃)、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル(C(OCHCHOH、沸点270℃)、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル(C(OCHCHCHOH、沸点274℃)等が挙げられる。
【0072】
【化5】

【0073】
「水酸基を有さないエーテル系溶剤」とは、その構造中に水酸基を有さず、エーテル結合(C−O−C)を有し、かつ常温常圧下で液体である化合物をいい、たとえば下記一般式(I)で表される構造を有するものが挙げられる。
20−(O−R21−O−R22 …(I)
[式中、R20は1価の炭化水素基であり、R21は2価の炭化水素基であり、R22は1価の炭化水素基であり、nは0以上の整数を示す。R20とR22とが結合して環を形成しいてもよい。]
【0074】
沸点270℃以上の、水酸基を有さないエーテル系溶剤としては、たとえば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)、ジベンジルエーテル(沸点297℃)等が挙げられる。
【0075】
溶剤(H)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、溶剤(H)の含有量は、(D)成分の含有量によって異なる。
たとえば(D)成分の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下である場合は、溶剤(H)の含有量は、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であり、17質量%以上24質量%未満が好ましく、18質量%以上23質量%未満がさらに好ましい。
また、(D)成分の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満である場合は、溶剤(H)の含有量は、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合であり、18質量%以上33質量%未満が好ましく、20質量%以上32質量%未満がさらに好ましい。
溶剤(H)の含有量が上記範囲の下限値未満であると、樹脂膜に対する微細光学形状の成形を良好に行うことができず、上限値を超えると、成形した微細光学形状の維持性が悪くなる。
【0076】
<溶剤(S)>
溶剤(S)は、前記溶剤(H)に該当しない溶剤、つまり溶剤(H)よりも沸点が低い溶剤である。
溶剤(S)の沸点は、使用する溶剤(H)(溶剤(H)を複数含む場合は、それらのうちの最も低沸点のもの)の沸点よりも低ければよいが、第1の蒸発工程後の樹脂膜の成形性、プロセスの実施しやすさ等を考慮すると、60〜180℃が好ましい。
【0077】
溶剤(S)としては、(A)成分、(B)成分および(C)成分を溶解し得るものが好ましく、たとえば樹脂組成物等に用いられる溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
かかる溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール、2−メチルブタノール、2−エチルブタノール、n−ペンタノール、s−ペンタノール、t−ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、ターピネオール等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、3−ヒドロキシ−n−ブタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等の多価アルコール類;水酸基を有さないエーテル系溶剤;前記多価アルコール類の誘導体(ただし水酸基を有さないエーテル系溶剤を除く。);アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のカルボン酸アルキルエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;などが挙げられる。
前記水酸基を有さないエーテル系溶剤についての定義は前記溶剤(H)の説明で述べたとおりであり、たとえば前記一般式(I)で表される構造を有し、沸点が270℃未満のものが挙げられる。具体的には、ジブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジヘキシルエーテル等の鎖状エーテル類;ジオキサン、1,8−シネオール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環式エーテル類;等が挙げられる。
前記多価アルコール類の誘導体としては、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノアルキルエーテル(モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等)等が挙げられる。たとえば前記多価アルコール類のモノアルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等が挙げられる。また、前記エステル結合を有する化合物のモノアルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
これらのうち、溶剤(S)としては、(D)成分との相性、溶剤(S)によるポリカーボネート基板等の透明樹脂基板の汚染の防止等の観点から、水酸基、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合等の含酸素官能基を有する極性溶剤が好ましい。
溶剤(S)は、1種単独であってもよく、2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0078】
本発明において、溶剤(S)は、前記本発明の製造方法における第1の蒸発工程を実施しやすい等の点から、沸点130℃以下の溶剤(以下、溶剤(S1)という。)を主溶剤とすることが好ましい。これにより、当該組成物の塗布性等が向上する。溶剤(S1)しては、沸点100〜130℃のものが好ましく、沸点105〜115℃のものがより好ましい。
ここで、溶剤(S)が溶剤(S1)を主溶剤とする、とは、溶剤(S)中、沸点130℃以下の溶剤が占める割合(沸点130℃以下の溶剤を複数含む場合はそれらの合計量)が、溶剤(S)の総質量に対して50質量%以上であることを意味する。
溶剤(S)中、溶剤(S1)が占める割合は、溶剤(S)の総質量に対して70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
【0079】
本発明の組成物においては、溶剤(S)と溶剤(H)との比率(質量比)が、溶剤(S)/溶剤(H)=85/15〜95未満/5超であることが好ましく、92/8〜94/6であることがより好ましい。溶剤(S)と溶剤(H)との比が上記範囲内であることにより、押圧低減効果とモールド離形後の形状保持性が向上する。
本発明の組成物中、溶剤(H)および溶剤(S)の合計の含有量は、特に限定されず、当該組成物を、透明樹脂基板上に塗布可能な液体とできる量であればよい。通常、固形分濃度(当該組成物の総質量に対する、溶剤(H)および溶剤(S)を除いた全成分の合計量の割合(質量%))が、形成しようとする低屈折率層の厚さ等に応じて設定され、所望の固形分濃度となるように用いられる。該固形分濃度は、通常、5〜30質量%の範囲内である。
【0080】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、上記以外の他の成分を配合してもよい。該他の成分としては、たとえば、開始助剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、安定剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0081】
本発明の組成物は、前記本発明の製造方法において樹脂層を形成するための樹脂組成物として好適に用いられる。すなわち、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された低屈折率層(樹脂層)の形成用として好適である。
本発明の組成物は、(D)成分を高含量で含む。そのため、該組成物から(D)成分を除いた以外は同じ組成の組成物を用いた場合に比べて、屈折率が大幅に低減された低屈折率層を形成できる。また、溶剤(H)および溶剤(S)を含み、かつ溶剤(H)の含有量が特定の範囲内であることにより、本発明の製造方法における第1蒸発工程を実施しやすい。また、溶剤(H)とともに特定のTgを有する(A)成分を含有することで、成形工程における微細形状の成形性も優れている。また、(B)成分および(C)成分を含有することにより、紫外線の照射による硬化が可能で、前記第2蒸発工程後、硬化工程を行い、形成された樹脂層をさらに硬化させることができる。
本発明の組成物を用いて、光路変換を行うための微細形状が表面に形成された低屈折率層を形成する方法は、前記本発明の製造方法と同様にして実施できる。すなわち、基板上に、本発明の組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜に含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて、前記微細形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有する樹脂膜を成膜する第1蒸発工程と、前記第1蒸発工程後、前記樹脂膜の表面に前記微細形状を形成する成形工程と、前記成形工程後、前記樹脂膜に残存する溶剤を蒸発させて樹脂層(低屈折率層)とする第2蒸発工程と、を有する方法により形成できる。第2蒸発工程後、前記樹脂層に紫外線を照射して硬化させる硬化工程を行うことが好ましい。
ただし本発明はこれに限定されない。たとえば、低屈折率層に形成する微細形状は光路変換を行うためのものでなくてよく、任意のパターンを形成可能である。また、低屈折率層を、基板以外の支持体上に形成してもよい。また、硬化工程にて、紫外線以外の放射線を用いてもよい。該放射線としては、前記(C)成分に作用して(B)成分の重合反応を開始させ得るものであればよく、特に限定されない。
【0082】
本発明の組成物を用いて形成される低屈折率層の屈折率は、1.30未満が好ましく、1.29以下がより好ましい。該屈折率の下限は特に限定されず、たとえば空気の屈折率(1.0)に近いほど好ましい。微細光学形状の成形性等を考慮すると、1.20以上が好ましい。)
該屈折率は、使用する(A)成分及び(B)成分の種類、組成物中の固形分全体に対する(D)成分の割合等により調節できる。たとえば(A)成分や(B)成分の屈折率が低いほど、また、(D)成分の割合が多いほど、形成される低屈折率層の屈折率が低くなる。
【実施例】
【0083】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1〜2、比較例1〜16>
下記表1に示す各成分を混合して低屈折率層形成用組成物を調製した。
表1に、当該組成物中の固形分全体(溶剤(S)および溶剤(H)を除く全成分の合計)に対する(D)成分の割合(質量%)を「D/固」として併記する。
溶剤(S)および溶剤(H)の配合量の比(質量比)を「S/H」として併記する。
また、当該組成物中、溶剤(S)を除く全成分の合計に対する溶剤(H)の割合(質量%)を「H/(T−S)」として併記する。この「H/(T−S)」の値は、第1蒸発工程にて溶剤(S)が全て揮発し、溶剤(H)が全て樹脂膜中に残ったと仮定した場合の、該樹脂膜中の溶剤(H)の濃度(質量%)に相当する。
【0084】
【表1】

【0085】
表1中、[ ]内の数値は配合量(質量部)を示す。「−」は、未配合であることを示す。
表1中の各記号はそれぞれ以下のものを示す。
(A)−1:下記構造式(A)−1で表される共重合体(Mw50000、m/n/o=25/25/50(モル比)、Tg176.7℃)。
(A)−2:下記構造式(A)−2で表される共重合体(Mw70000、m/n=40/60(モル比)、Tg7.0℃)。
(A)−3:下記構造式(A)−3で表される共重合体(Mw35000、m/n=40/60(モル比)、Tg82.8℃)。
(B)−1:ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート。
(B)−2:下記構造式(B)−2で表される化合物。
(C)−1:IRGACURE907(製品名、Ciba社製)。
(D)−1:A2SL−03TO(製品名、日揮触媒化成(株)製、粒径60nmの中空シリカ粒子の20%分散液。ただし表中の[ ]内の数字は固形分(粒子のみ)の値であり、分散液の溶剤は(S)成分としてカウントした。)。
(S)−1:3−メトキシブチルアセテート(沸点171℃)/PGME(沸点121℃)/メタノール(沸点64.7℃)=4/90/6(質量比)の混合溶剤。
(S)−2:3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール(沸点174℃)/PGME/メタノール=9/85/6(質量比)の混合溶剤。
(H)−1:下記式(H)−1で表されるイソボルニルシクロヘキサノール(沸点308℃)。
【0086】
【化6】

【0087】
得られた低屈折率層形成用組成物を用いて以下の測定および評価を行った。
[屈折率の測定]
それぞれの組成物を用いてシリコン基板上に500nmの樹脂層を形成した。得られた樹脂層について、分光エリプソメーター(ウーラム社製、VUV−VASE)により波長600nmにおける屈折率を測定した。その結果を表2に示す。
【0088】
[ナノインプリント(NIL)性の評価]
低屈折率層形成用組成物をポリカーボネート基板に塗布し、60℃で1分間ベークして、膜厚5000〜6000nmの樹脂膜を成膜した。
その後、該樹脂膜に対し、30℃の条件下にて、ナノインプリントモールド(SUSのNiメッキ金型;表面に、高さ8μm、直径10.5μmのドーム状の凸部が連続配置されたパターンを有するもの)をプレス圧力100MPaにて押しつけた。
このとき、一部でもモールドを所定位置(膜厚5000〜6000nmの樹脂膜の表面から5000〜6000nmの深さ)まで埋め込むことができたもの(モールドの凸部の先端が基板まで到達したもの)を○、できなかったものを×とした。その結果を表2に示す。
また、ナノインプリントモールドをSUSのNiメッキ金型からフッ素系樹脂配合樹脂型、石英金型に変更して同様の評価を行ったところ、それぞれ同様の結果が得られた。
なお、(A)成分を含まない比較例5の組成物については、ベークを行い形成した樹脂膜にひび割れが発生したので、評価を行わなかった。
【0089】
[形状維持性の評価]
上記「NIL性」評価が○であったものについて、ナノインプリントモールドを所定位置まで埋め込み、300秒間保持して樹脂膜にモールドのパターンを転写した後、モールドを離型し、100℃で15分間ベークした。
このとき、モールドの離型性が良好で、離型時にパターン形状が良好に維持され、かつベーク後もパターン形状がフローせず、離型直後の形状が維持できていたものは○とした。一方、離型時にモールドに引っ張られたり、ベークによりフローしてパターン形状が維持できなかったものは×とした。その結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
上記結果に示すとおり、実施例1〜2の低屈折率層形成用組成物は、いずれも、屈折率が1.24と低く、バックライトユニット構造等における空気層の置き換えとして良好な性質を有していると言える。また、NIL性も良好であり、この結果から、組成物中における(D)成分の含有量が有機成分((A)〜(C)成分)より多くても、樹脂膜中に溶剤を一定量以上残存させることにより、該樹脂膜の流動性が保持され、良好なNIL性が得られるとわかった。また、形状維持成も良好であった。
一方、溶剤(H)を含まない比較例1〜6や、溶剤(H)を含んでいてもH/(固+H)が15%以下の比較例9〜11は、NIL性が悪かった。また、溶剤(H)を所定量含有しても、(A)成分のTgが7.0℃の比較例7〜8は形状維持性が悪かった。また、D/固が79.5質量%であって、H/(T−S)が25質量%以上である比較例14〜16は、形状維持性が悪かった。
【0092】
[樹脂膜の表面状態の評価]
比較例17〜18として、前記実施例2の低屈折率層形成用組成物の組成中、溶剤(H)の種類を変更した以外は同じ組成の低屈折率層形成用組成物を調製した。
各低屈折率層形成用組成物について、以下の手順で、第1蒸発工程後の樹脂膜の表面状態を評価した。
低屈折率層形成用組成物をポリカーボネート基板に塗布し、60℃で1分間ベークして、膜厚約5μmの樹脂膜を成膜した。
該樹脂膜の表面に対してカッターナイフで傷をつけ、表面にベタツキがあるもの(膜にナイフの跡がつき、膜の固形分が飛び散らないもの)を○(流動性あり)とし、表面が乾燥し、ベタツキが無かったもの(膜の固形分がナイフで削られて飛び散るもの)を×(流動性なし)とした。
これらの低屈折率層形成用組成物の組成および評価結果を表3に示す。
これらの結果から、沸点270℃未満の溶剤では、該沸点が溶剤(S)より高くても、第1蒸発工程後の樹脂膜の流動性を保持できないといえる。
【0093】
【表3】

【0094】
表3中の記号は表1中のものと同様である。表1中にないものについては以下に示すとおりである。
(H)−2:ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点230.6℃)。
(H)−3:ターピネオール(沸点217℃)。
【0095】
<製造例1:本発明に係る光学素子の作製>
以下の手順で、図2に示す構成の光学素子(面状光源装置)を作製した。該面状光源装置の上面図を図3に示す。
透明樹脂基板12を、射出成形により、Y方向の寸法が約55mm、X方向の寸法が約39mm、およびZ方向の寸法が約0.6mmになるように作製した。このとき、透明樹脂基板12の出射面12Aに、X方向に延びる、頂角が170度のプリズムが複数並列に配置されるように成形を行った。
発光部21として、発光光度が1.5cdのLEDを4つ用意した。
反射部材31として、住友3M製反射シート:ESRを用意した。
【0096】
以下の手順で、透明樹脂基板12の出射面12A上に拡散層13を形成し、出射面12Aとは反対側の面上に集光層14を形成し、さらに該集光層14上に高屈折率層15を形成して光学シート11を得た。
拡散層13:透明樹脂基板2の出射面12Aのプリズム上に、前記実施例1の低屈折率層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を、ホットプレートを用いて60℃で1分間ベークし、樹脂膜を成膜した。室温(25℃)下、該樹脂膜に対し、モールドをプレス圧力100MPaで300秒間押し付けた後、モールドを剥離した。その後、ホットプレートを用いて100℃で15分間ベークして樹脂層とした。その後、該樹脂層に紫外線を照射して硬化させた。紫外線は、スポットUV照射装置(高圧水銀ランプ)を光源として用い、照射線量12000mJ/cmとなるように照射した。これにより、表面(XY平面)に高さ約2μm、幅約2μmの凹凸形状が複数、ランダムに配置された拡散パターンを有する拡散層31を得た。
集光層14:透明樹脂基板2の、出射面12Aとは反対側の面上に、前記実施例1の低屈折率層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を、ホットプレートを用いて60℃で1分間ベークして樹脂膜を成膜した。室温(25℃)下、該樹脂膜に対し、モールドをプレス圧力100MPaで300秒間押し付けた後、モールドを剥離した。その後、ホットプレートを用いて100℃で15分間ベークして樹脂層とした。その後、該樹脂層に紫外線を照射して硬化させた。紫外線は、スポットUV照射装置(高圧水銀ランプ)を光源として用い、照射線量12000mJ/cmとなるように照射した。これにより、表面(XY平面)に、直径約10μm、深さ約10μmの断面U字状のホール形状が複数、ピッチ約11μmにて配置された集光パターンを有する集光層14を得た。
高屈折率層15:前記集光層14上に、屈折率が1.52のADEKA製紫外線硬化樹脂KRX―631―9を塗布し、該樹脂層に紫外線を照射して硬化させた。紫外線は、スポットUV照射装置(高圧水銀ランプ)を光源として用い、照射線量12000mJ/cmとなるように照射した。
【0097】
各構成部品(光学シート11、発光部21および反射部材11)を、樹脂製のフレーム41および日東電工製の遮光・反射両面接着テープを用いてパッケージし、接着固定することにより、図2〜3に示す構成の面状光源装置とした。該面状光源装置において、各LEDは、図3に示すように、X方向に、隣り合う発光部21の間の距離が9mmとなるように配置した。これらのLEDを直列に接続し、12.3Vの電圧を印加し、20mAの電流が流れるようにした。
【0098】
作製した面状光源装置について、出射面から出射される光の輝度を、出射面上の複数の箇所にて測定した。測定箇所は、図3に示すように、面状光源装置の発光部21側とは反対側の端部の角部から、X方向に距離w1=5mm、Y方向に距離h1=5mmの位置p1を基準として、X方向に間隔w3=7.25mm、Y方向に間隔h2=11.25mmおきに測定位置を設定した。図3中の黒点が測定位置であり、p1〜p25の合計25箇所で輝度測定を行なった。
各測定位置における輝度は、分光輝度測定機(トプコン製SR−3A)を用いて、測定角1度、測定距離500mmの測定条件で測定した。
その結果を図4のグラフに示す。図4では、横軸は測定位置を示し、縦軸に、各測定位置にて測定された単位面積当たりの輝度(cd/m)を示している。
【0099】
<比較製造例1:比較用の光学素子の作製>
以下の手順で、比較用の光学素子(面状光源装置)を作製した。該面状光源装置の構成は、従来、液晶表示装置等においてバックライトとして一般的に用いられている面状光源装置の構成の一つである。
透明樹脂基板として、製造例1の透明樹脂基板12と同じものを用意した。
製造例1の拡散層13を設けず、代わりに、拡散シート(ツジデン製光拡散フィルムD121SIII)を用意し、これを透明樹脂基板2の出射面2Aのプリズム上に配置した。
製造例1の集光層14を設けず、プリズムシート(X方向に延びる、プリズム単位ピッチが約24μm、プリズム頂角が90度の多数のプリズム部を含んで構成された住友3M製プリズムシートthin−BEF)を用意し、これを、プリズム部を透明樹脂基板2側に向けて前記拡散シート上に離間配置した。さらに該プリズムシート上に、プリズムシート(Y方向に延びる、プリズム単位ピッチが約24μm、プリズム頂角が90度の多数のプリズム部を含んで構成された住友3M製プリズムシートthin−BEF)を、プリズム部を透明樹脂基板2側に向けて離間配置した。
【0100】
発光部、反射部材として、それぞれ、製造例1の発光部21、反射部材31と同じものを用意し、製造例1と同様に配置した。
各構成部品(透明樹脂基板2、拡散シート、プリズムシート、発光部21および反射部材11)を、樹脂フレーム41および日東電工製の遮光・反射両面接着テープを用いてパッケージし、接着固定することにより面状光源装置とした。
作製した面状光源装置について、製造例1と同様に、出射面から出射される光の輝度を測定した。その結果を図4に示す。
【0101】
図4から分かるように、製造例1の面状光源装置は、25箇所の測定位置のうち23箇所で、比較製造例1よりも高い輝度が測定された。また、各測定位置間の輝度の差も小さかった。
この結果から、本発明によれば、光の利用効率の向上および高輝度化が可能で、出射面における輝度ムラが少なく、品位に優れた光源装置を得ることできることが確認できた。
【0102】
前述の本発明に係る製造例1の面状光源装置は、さらに、拡散シートおよびプリズムシートを含む構成としてもよい。また、発光部21として4つのLED(点光源)を用いたが、これを線光源に適用しても本発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の光学素子は、液晶表示装置の液晶表示パネルに対向して設けられ、液晶表示装置の操作者が表示画面を見る側とは反対側から、対象物である液晶表示パネルを照明する光源装置(バックライト)としての有用性が高い。ただし本発明はこれに限定されず、他の表示装置や対象物の照明またはイルミネーションなどに使用されてもよい。
【符号の説明】
【0104】
2…透明樹脂基板、3a…塗膜、3b…樹脂膜、3c…樹脂層、6…モールド、7…紫外線ランプ、11…光学シート、12…透明樹脂基板、13…拡散層、14…集光層、15…高屈折率層、21…発光部、31…反射部材、41…フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路変換を行うための微細形状が表面に形成された樹脂層を有する光学素子の製造方法であって、
基板上に、樹脂および沸点がそれぞれ異なる複数の溶剤を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜に含まれる複数の溶剤の一部を蒸発させて、前記微細形状の成形が可能であり且つ成形後の形状保持が可能な範囲の流動性を有する樹脂膜を成膜する第1蒸発工程と、
前記第1蒸発工程後、前記樹脂膜の表面に前記微細形状を形成する成形工程と、
前記成形工程後、前記樹脂膜に残存する溶剤を蒸発させて樹脂層とする第2蒸発工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程にて、前記微細形状の形成は、前記樹脂膜にモールドを押圧し、その後、該モールドを剥離することにより行う請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、透明樹脂基板である請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層は、前記透明樹脂基板よりも屈折率が低い低屈折率層である請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、紫外線硬化型である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物として、極性基を有する構成単位(a1)を有し、ガラス転移温度が50〜130℃である重合体(A)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、中空シリカ粒子(D)と、沸点270℃以上の高沸点溶剤(H)と、前記高沸点溶剤(H)に該当しない溶剤(S)とを含有し、
前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であるか、または、前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合である低屈折率層形成用組成物を用いる請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2蒸発工程後、前記樹脂層に紫外線を照射して硬化させる硬化工程を行う請求項5または6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法により製造された光学素子。
【請求項9】
極性基を有する構成単位(a1)を有し、ガラス転移温度が50〜130℃である重合体(A)と、重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、中空シリカ粒子(D)と、沸点270℃以上の高沸点溶剤(H)と、前記高沸点溶剤(H)に該当しない溶剤(S)とを含有し、
前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して65質量%以上80質量%以下であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上25質量%未満の割合であるか、または、前記中空シリカ粒子(D)の含有量が、固形分全体に対して80質量%超95質量%未満であり、且つ前記高沸点溶剤(H)の含有量が、前記溶剤(S)を除く全成分の合計に対して16質量%以上35質量%未満の割合であることを特徴とする低屈折率層形成用組成物。
【請求項10】
前記高沸点溶剤(H)は、アルコール系溶剤および水酸基を有さないエーテル系溶剤からなる群から選択される請求項9に記載の低屈折率層形成用組成物。
【請求項11】
前記高沸点溶剤(H)として、下記化学式(H1)で示されるイソボルニルシクロヘキサノールを含む請求項9または10に記載の低屈折率層形成用組成物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−48024(P2011−48024A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194606(P2009−194606)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】