説明

光学素子の製造方法および光学素子の製造装置

【課題】成形型の形状に影響されることなく、成形型内における成形素材の位置ずれを防止して、高精度の成形品を製造する。
【解決手段】スリーブ16の中で対向する下型14と上型15の間に成形素材90を配置して加熱および加圧して光学素子に成形する成形装置M1において、下型成形面14aの成形素材90の配置位置に、成形温度で分解して消失する熱分解材料Aを塗布する供給ノズル19を設け、熱分解材料Aを介して成形素材90が下型成形面14aの中心に安定して接着固定された状態で、所望の成形温度で成形を行う。下型14に対する成形素材90の位置ずれに起因する製品不良の発生を確実に防止できるとともに、熱分解材料Aは成形温度で分解して消失するため、光学素子の外観品質が低下することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法および光学素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、光学素子の製造分野では、熱可塑性の光学ガラスや光学樹脂等の光学素子素材から型成形によって光学素子を製造する技術が知られている。
【0003】
すなわち、光学素子に光学機能面を転写するための精密な成形面を備えた一対の上型および下型を胴型の内部で軸方向に対向させた構成の成形型の内部に、所定の形状に予備成形された光学素子材料(プリフォーム)を実装して加熱および押圧し、目的の光学素子に成形するものである。
【0004】
このような光学素子の型成形では、上型および下型、さらには光学素子素材の相互間の同軸度(偏心精度)が、得られる光学素子の精度や品質に影響する。
【0005】
このため、特許文献1では、胴型(スリーブ)の壁面を軸方向に貫通する複数の挿通穴を形成し、この挿通穴に流通する冷却用不活性ガスの流量によって冷却温度を制御することで、スリーブと上型および下型の隙間を適切に制御して、上型および下型の高い同軸度を実現しようとしている。
【0006】
また、このような型成形による生産効率を向上させる方法として、特許文献2では、加熱、加圧、冷却の各工程を個別に一列に配置し、これらの各工程の間を、各々が一対の上型および下型および胴型からなる複数の成形型(型セット)を逐次移動させることで、各工程が並列的に行われるようにして、高い生産性を実現する技術が開示されている。
【0007】
ところで、上述の特許文献1および特許文献2では、成形型の内部に実装されたプリフォームの位置ずれについては配慮されていない。
すなわち、光学素子の型成形において、上型および下型により加圧成形で光学素子を製造する際、プリフォームの適正位置は、通常、型の成形面の光軸と光学素子材料の中心軸が一致する位置である。
【0008】
しかし、成形面に配置されたプリフォームが、成形型の加圧や搬送時の振動等によって位置ずれを起こすことがある。
【0009】
そして、プリフォームの位置が成形面の中心からずれたままで成形されると、成形型による成形面の転写範囲が不十分になったり、転写された光学機能面が光軸の回りに非対称な形状になったりするなどして成形不良が発生する、という技術的課題がある。
【0010】
上述の特許文献1の技術においてはスリーブと成形型が嵌合する際にこすれや摩擦が生じて成形型が振動し、成形型の適正位置に載置されたプリフォームが位置ずれを起こす懸念がある。
【0011】
また、上述の特許文献2の技術においては、個々の型セットにおける上型のスリーブ嵌合時や、加熱および成形工程への型セットの搬送時には振動が発生し、やはり型セット内でプリフォームが位置ずれを起こす懸念がある。
しかし特許文献1および特許文献2では、上述のプリフォームの位置ずれを防止する対策は開示されていない。
【0012】
また、上型および下型の成形面が凹形状の成形型においては比較的位置ずれが起きにくいが、成形面が凸形の成形型では、成形面の中心位置にプリフォームを載置すること自体が困難となる。
なお、特許文献3のように、被成形材料が載置される下型材に振動を与えて被成形材料の位置を修正しようとする技術が知られている。
【0013】
しかしながら、下型材の加振後におけるスリーブと上型の嵌合などの想定しない振動によって被成形材料の位置が適性位置からずれることが懸念される。
さらに、上述のように、被成形材料が載置される下型材の成形面が凸形の場合には、下型材の加振による被成形材料の位置修正効果は得られない。
【0014】
また、特許文献4には、上型および下型が収容された成形室内を不活性ガスでパージする場合に、成形室内の内圧や、不活性ガスの流速および流れる位置を制御して、成形室内における成形素材の位置ずれを防止しようとする技術が開示されている。
【0015】
しかし、当該特許文献4の技術は、現在の成形素材の位置の不活性ガスの流れによるずれを防止しようとする消極的な対策であり、振動等の他の要因により当初から成形素材の位置がずれていた場合には効果がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−282472号公報
【特許文献2】特開2006−347859号公報
【特許文献3】特開2001−10830号公報
【特許文献4】特開2004−83368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、成形型の形状に影響されることなく、成形型内における成形素材の位置ずれを防止して、高精度の成形品を得ることが可能な成形技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の観点は、対向する第1成形型および第2成形型の一方に、成形素材を接着する第1工程と、
前記成形素材を前記第1成形型と前記第2成形型の間で挟圧して成形する第2工程と、
を含む、光学素子の製造方法を提供する。
本発明の第2の観点は、対向して配置され、成形素材を挟圧して成形する第1成形型および第2成形型と、
前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に固定するための接着媒体を、前記第1成形型、前記第2成形型、および前記成形素材の少なくとも一つに供給する供給手段と、を備えた、光学素子の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、成形型の形状に影響されることなく、成形型内における成形素材の位置ずれを防止して、高精度の成形品を得ることが可能な製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態である製造方法を実施する製造装置の構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態である製造方法を実施する製造装置の作用の一例を工程順に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である製造方法を実施する製造装置の作用の一例を工程順に示す断面図である。
【図4A】本発明の一実施の形態である製造装置の成形型の変形例を示す断面図である。
【図4B】本発明の一実施の形態である製造装置の成形型の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態である製造装置における供給ノズルの変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態である製造装置における供給ノズルの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態である製造装置における供給ノズルの変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である製造装置の構成例を示す概念図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である製造装置における型セットの組み立て方法の変形例を示す概念図である。
【図10】本発明の他の実施の形態である製造装置における型セットの組み立て方法の変形例を示す概念図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態である製造装置の構成例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態の第1態様では、光学素子材料を成形温度まで加熱後、上下一対からなる成形型で押圧成形することにより前記成形型から光学成形面を転写して光学素子を成形する光学素子の製造方法において、成形温度以下で熱分解する材料を前記成形型と光学素子材料の両者に接触するように供給し、光学素子材料の中心軸と成形型の光学成形面の光軸が一致した状態を保持したまま加熱し押圧成形する光学素子の製造方法を例示する。
【0022】
本実施の形態の第2態様では、前記第1態様の光学素子の製造方法であって、前記熱分解材料の供給手段により光学素子材料の表面に熱分解材料を供給し、光学素子材料と成形型との間で両者に接触しながら熱分解材料が存在するように光学素子材料を載置する光学素子の製造方法を例示する。
【0023】
本実施の形態の第3態様では、前記第1態様の光学素子の製造方法において、前記熱分解材料の供給手段により成形型表面に熱分解材料を供給し、光学素子材料と成形型との間で両者に接触しながら熱分解材料が存在するように光学素子材料を載置する光学素子の製造方法を例示する。
【0024】
本実施の形態の第4態様では、前記第2および第3態様の光学素子の製造方法を組み合わせた光学素子の製造方法を例示する。
【0025】
本実施の形態の第5態様では、光学素子材料を成形温度まで加熱後上下一対からなる成形型で押圧成形することにより前記成形型から光学成形面を転写して光学素子を成形する光学素子の製造装置において、成形温度以下で熱分解する材料を前記成形型と光学素子材料の両者に接触するように供給する供給手段を備えた構成を例示する。
【0026】
本実施の形態の第6態様では、前記第5態様の光学素子の製造装置であって、前記熱分解材料の供給手段は光学素子材料の表面に熱分解材料を供給し、光学素子材料と成形型との間で両者に接触しながら熱分解材料が存在するように光学素子材料を載置する手段を備えた構成を例示する。
【0027】
本実施の形態の第7態様では、前記第5態様の光学素子の製造装置であって、前記熱分解材料の供給手段は成形型の表面に熱分解材料を供給し、光学素子材料と成形型との間で両者に接触しながら熱分解材料が存在するように光学素子材料を載置する手段を備えた構成を例示する。
【0028】
本実施の形態の第8態様の光学素子の製造装置は、前記第5態様の光学素子の製造装置であって、前記熱分解材料の供給手段は光学素子材料および成形型の表面の双方に熱分解材料を供給し、光学素子材料と成形型との間で両者に接触しながら熱分解材料が存在するように光学素子材料を載置する手段を備えた構成を例示する。
【0029】
上述の本実施の形態の各態様によれば、熱分解材料の供給手段により熱分解材料を光学素子材料と成形型の両者に接触するよう存在させることにより、光学素子材料を成形型内に配置した後に振動や気流等が作用しても、当該配置位置を確実に保持して位置ずれを防止することができ、十分な光学転写面と対称な形状の高精度な光学素子を得ることが出来る。
【0030】
また、振動や慣性力等に起因する位置ずれを防止できるため、光学素子材料を配置したまま成形型を搬送したり、上型に光学素子材料を配置したり、成形型の形状に影響されることなく、凸形状の成形型上に略平面形状の光学素子材料を配置することも可能となる。
【0031】
成形素材の成形温度で確実に分解するように、熱分解材料を適切に選択することにより、光学素子の表面や成形型の表面に残る残留物は不良品にならないレベルまで低減され、もしくは容易に除去することが可能となる。
【0032】
また、熱分解材料に由来する物質が、熱分解材料の分解後に光学素子材料と成形型の間に存在する場合、光学素子材料と成形型との密着を弱めること等により、加圧成形後に光学素子を成形型から容易に離脱させる離型促進効果を得ることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である製造方法を実施する製造装置の構成の一例を示す概念図である。
図2および図3は、本発明の一実施の形態である製造方法を実施する製造装置の作用の一例を工程順に示す断面図である。
【0034】
なお、本実施の形態では、図1から図3において、左右方向をX方向、上下方向をZ方向、紙面に垂直な方向をY方向として説明する。また、一例として、Z方向は鉛直方向、X−Y平面は水平面とする。後述の他の図も図示の通りの方向関係とする。
【0035】
図1に例示されるように、本実施の形態の光学素子の製造装置としての成形装置M1は、加熱プレス部10と、この加熱プレス部10に対する成形素材90(成形素材)の供給および成形後の光学素子91の取り出しを行う素材供給部20を備えている。
【0036】
加熱プレス部10は、互いにZ方向に対向し、下型14(第1成形型)を支持する下プレート11と、上型15(第2成形型)およびスリーブ16を同軸かつ一体に支持する上プレート12と、上プレート12を昇降移動させるプレス軸13を備えている。
【0037】
下プレート11および上プレート12には、ヒータ等の温度調節機構11aおよび温度調節機構12aがそれぞれ設けられており、下型14および上型15を所望の温度に加熱することが可能になっている。
一例として、下型14および上型15の対向面には、凹形の下型成形面14aおよび上型成形面15aが、それぞれ形成されている。
【0038】
上型15と一体となって昇降するスリーブ16は、上型15および下型14の外径と所定の間隙をなす内径に精密に製作され、下端部が下型14に嵌合することにより、下型14と上型15をZ方向に同軸に位置決めする作用をなす。
【0039】
また、スリーブ16の内周は、下型成形面14aおよび上型成形面15aとともに、成形素材90が収容される密閉された成形空間を構成する。
【0040】
一方、素材供給部20は、成形前の成形素材90や、成形後の光学素子91が載置される素材パレット17と、この素材パレット17と、下型14との間で成形素材90および光学素子91の搬送を行うロードアーム18を備えている。
【0041】
このロードアーム18は、X−Y−Zの各方向に三次元的に移動可能な構成となっているとともに、たとえば、先端部には図示しない真空吸着パッドが設けられ、真空吸着によって成形前の成形素材90や、成形後の光学素子91を着脱自在に保持して搬送する。
【0042】
すなわち、ロードアーム18は素材パレット17の成形素材90を保持して下型14に搬送し、下型成形面14aの中央部に同軸に配置する動作を行う。
また、成形後の光学素子91を下型14から取り出して素材パレット17に搬送する動作を行う。
【0043】
本実施の形態の成形装置M1の場合、加熱プレス部10における下型14の側方には、X−Y−Zの各方向に三次元的に移動可能な供給ノズル19(供給手段)が設けられている。
この供給ノズル19は、先端部から熱分解材料A(接着媒体)を吐出供給する機能を備えている。
【0044】
そして、成形素材90が下型成形面14aに載置される前に、たとえば、熱分解材料Aを所望の量だけ下型14の下型成形面14aの中央部に塗着する動作を行うことが可能になっている。
【0045】
そして、下型成形面14aに塗着された熱分解材料Aの上に、ロードアーム18が成形素材90を載置することで、成形素材90が下型14に対して安定に固定される。
【0046】
すなわち、本実施の形態の場合、この熱分解材料Aは、接着材として機能し、ロードアーム18によって下型14の下型成形面14aに対して配置される成形素材90の底面を、下型成形面14aの中央部に接着して安定に固定する作用をなす。
【0047】
また、本実施の形態の場合、熱分解材料Aは、常温よりも高く、成形素材90の成形温度Tsよりも低い温度で熱分解し、蒸発または気化して消失する材料が用いられる。すなわち、熱分解材料Aとしては、成形温度Tsで成形素材90から成形される光学素子91の品質に影響しない物質が選択される。
この熱分解材料Aの材料の選択方法の詳細については後述する。
【0048】
以下、本実施の形態の成形装置M1の作用の一例を説明する。
プリフォーム等の光学素子材料からなる成形素材90は、ロードアーム18によって素材供給部20の素材パレット17から加熱プレス部10へと搬送される。
【0049】
この時、本実施の形態の場合には、成形素材90を下型14に配置する前に、供給ノズル19により熱分解材料Aを、下型14の下型成形面14aの中心部に供給しておく。
【0050】
そして、当該熱分解材料Aを介して成形素材90が下型14の下型成形面14aに接触する状態で成形素材90を適正位置(この場合、下型成形面14aのZ方向の中心軸と成形素材90の中心軸とが同軸となる位置)に配置する。
【0051】
これにより、成形素材90は、熱分解材料Aを介して下型成形面14aの中心に同軸に接着されて固定される(第1工程)。
なお、熱分解材料Aは成形素材90の側または下型14の側、もしくは両方に供給してもよい。
この状態で成形素材90の下型成形面14aにおける配置位置は固定され、振動等に起因する位置ずれを防止できる。
【0052】
その後、図2のように、プレス軸13によって上型15およびスリーブ16を降下させるとともに、成形素材90の載置後、成形温度Tsまで温度調節機構11aおよび温度調節機構12aによって加熱しつつ押圧して図3のように成形素材90成形する(第2工程)。
【0053】
このとき、成形素材90は、下型14の中心位置に熱分解材料Aを介して固定されているため、降下するスリーブ16が下型14に嵌合する際に振動が発生しても成形素材90の位置は、最適な下型成形面14aの中心位置に不変に維持される。
【0054】
これにより、成形時における下型成形面14aおよび上型成形面15aに対する成形素材90の位置ずれが確実に防止され、下型14の下型成形面14aおよび上型15の上型成形面15aが光学機能面91aおよび光学機能面91bとして正確に転写され、光軸(下型成形面14aおよび上型成形面15aのZ方向の中心軸)の回りの対称性の良好な高精度の光学素子91が得られる。
【0055】
また、図3に示されるように、成形温度Tsによる光学素子91の成形完了の状態では、熱分解材料Aは分解して消失しており、下型成形面14aの側の光学機能面91aの光学的な性能に熱分解材料Aが影響することもない。
【0056】
図3の成形完了後、所定の冷却温度まで当該図3の状態を維持した状態で冷却した後、上型15およびスリーブ16を上昇させて下型14から分離し、光学素子91を下型14から取り出す。
図4Aおよび図4Bは、本実施の形態の成形装置M1の変形例を示す断面図である。
【0057】
この図4Aおよび図4Bの変形例では、下型成形面14bおよび上型成形面15bがいずれも凸形で、図4Bのように、下型成形面14aおよび上型成形面15bが、光学機能面93aおよび光学機能面93bとして転写された凹レンズの光学素子93を成形するため、成形素材92(成形素材)は、板状を呈している。
【0058】
通常、この図4Aおよび図4Bに例示するような凸形状の下型成形面14b上に成形素材90を載置するのは困難であるが、本実施の形態の場合には、図4Aのように、熱分解材料Aを用いて、たとえば凸形の下型成形面14bの頂点に成形素材92の下面の中心を接着することにより可能である。
【0059】
すなわち、本実施の形態の成形装置M1の場合には、成形素材90や成形素材92が配置される下型成形面14aや下型成形面14bの凹凸形状に関係なく、成形素材90や成形素材92の成形時の位置を安定に維持して良好な成形結果を得ることができる。
【0060】
この図4Aおよび図4Bの場合も、図4Bに例示されるように、光学素子93の成形完了時には、熱分解材料Aは消失しており、光学素子93の光学機能面93aに影響を与えることはない。
【0061】
ここで、本実施の形態における成形素材90の加熱(熱分解材料Aの熱分解)と、上型15および下型14による成形素材90の挟持のタイミングを検討する。
成形素材90の加熱から上型15の降下による押圧の間で、上型15は、下型14との間に成形素材90を挟む状態で当該成形素材90の上面と接触することになる。
【0062】
まず、図1のように成形素材90が配置される下型成形面14aが凹形の場合には、スリーブ16が下型14に嵌合して振動の懸念が解消された後には、上型15が成形素材90の上面に接する挟持操作の前でも成形素材90の成形温度Tsへの加熱を行ってよい。
【0063】
一方、図4Aおよび図4Bのように、下型成形面14bが凸形状の場合、上型15および下型14による成形素材92の挟持のタイミングは、接着力が失われる熱分解材料Aの分解温度以下で行われることが前提となる。
【0064】
すなわち、熱分解材料Aが分解して成形素材92の下型成形面14bに対する固定力が失われる前に、下型14と上型15の間で成形素材92を挟持する必要がある。
この凸形の下型成形面14bにおける成形素材92の挟持および加熱のタイミングの制御は、上述の図1の凹形状の下型成形面14aで行っても良い。
【0065】
ここで、本実施の形態の熱分解材料Aとして望ましい材料の選択方法の一例を説明する。
光学素子91や光学素子93の成形時には、成形素材90や成形素材92以外の異物が混入すると外観上等の不良原因となる可能性がある。
【0066】
このため、本実施の形態のように成形素材90や成形素材92と異なる熱分解材料Aを下型成形面14aや下型成形面14bに塗布して成形を行う場合には熱分解材料Aの材料を適切に選択する必要がある。
【0067】
熱分解材料Aは成形素材90や成形素材92と下型14(または上型15)の両者に接した状態で固化することにより、成形素材90や成形素材92と下型14とを接着するものが良いが、粘性によって成形素材90や成形素材92の位置を固定するのに十分であれば固化しなくてもよい。
【0068】
熱分解材料Aが固化する場合は固化までに多少時間がかかる可能性があるため、この点では固化しない方が有利である。
成形素材90や成形素材92の位置を固定するために、熱分解材料Aの粘性が0.008[P]以上の材料を選ぶことが望ましい。
【0069】
熱分解材料Aは、成形素材90や成形素材92の位置を固定できる十分な粘性を有する、もしくは成形素材90や成形素材92の載置後に固化する、といった条件の他に、分解後に下型14や上型15にダメージとなるような熱分解材料由来の残留物が残らないことや、成形後の光学素子91や光学素子93に不良品となるような影響を与えないような材料を選択する必要がある。
【0070】
本実施の形態の熱分解材料Aとしては、一例として、接着剤や糊のようなものがよいが、例えば事務用等に広く用いられるPVAL(ポリビニルアルコールリキッド)やPVP(ポリビニルピロリド)では加熱後の残留物が非常に多く外観上でも目立ち、光学素子や成形型への影響が大きいため用いることは好ましくない。
【0071】
光学素子91や光学素子93の成形では通常、成形素材や型表面の酸化防止等の目的で、酸化ガスは10ppm以下程度に排除して行う。この条件でPVALでは0.8wt%ほどの残留物が確認された。
本実施の形態で、熱分解材料Aとして用いる材料の候補としては、例えば瞬間接着剤に用いられているシアノアクリレート系が挙げられる。
【0072】
成形素材90や成形素材92として広く用いられるガラスの成形温度Tsは一般に500〜600℃ほどであり、低Tg点(ガラス転移点)のガラスで500℃以下の場合もあるが、シアノアクリレートは300℃ほどで水、二酸化炭素、窒素に分解される。
【0073】
このシアノアクリレートからなる熱分解材料Aを用いて光学素子91や光学素子93を成形したところ、残留物はあるがほとんど目立たず、重量比(wt%)で0.3%以下であった。また、残留物は光学素子91や光学素子93から容易に除去することができた。
次に、本実施の形態における熱分解材料Aの供給方法および供給位置について検討する。
【0074】
通常、成形素材90や成形素材92と、下型14および上型15は、ともに表面が曲面であり、成形素材90や成形素材92の適正位置は、それぞれの面の、光軸方向(Z方向)の頂点または最底点(以下、下型成形面14aの面頂部14c、下型成形面14bの面頂部14dと記す)が一致した状態である。
【0075】
このため熱分解材料Aは、成形素材および型の表面のどちらか、もしくは両方の面頂部14c,14dに供給することで本実施の形態の熱分解材料Aによる成形素材90や成形素材92の位置固定機能を実現することができる。
【0076】
ただし、下型14や上型15の成形型と成形素材90や成形素材92の両者に熱分解材料Aが接触する位置であれば、面頂部14c,14d以外の箇所に熱分解材料Aを供給してもよい。
【0077】
通常、面頂部14c,14dより、その周囲のほうが成形型と成形素材90や成形素材92との空隙が広く閉塞されていないために熱分解材料Aの揮発性が良好であり、残留痕跡を低減できる効果がある。
【0078】
また、熱分解材料Aに由来の残留物の成分が分解後に成形素材90や成形素材92と下型14等の成形型の間に存在する場合、成形素材90や成形素材92と成形型との密着力を弱め、加圧成形後に光学素子91や光学素子93を下型14および上型15から容易に離脱させる離型促進効果が得られ、好都合である。
【0079】
なお、上述のような熱分解材料Aを構成する物質の選択に配慮が必要とされるのは、光学素子91のように高い外観品質が要求される成形技術の場合であり、このような外観品質の要求程度が比較的低い一般の成形品の場合には、上述のような制約を考慮する必要がなく、固定媒体として一般の接着材等を用いてよい。
【0080】
すなわち、成形後に残留する熱分解材料Aを、成型品の模様や機能の一部として利用することもできる。
【0081】
本実施の形態のような熱分解材料Aの使用により、下型14および上型15からの離型困難に起因する光学素子91や光学素子93の破損等による不良品の発生を防止できるとともに、下型14および上型15の離型時のダメージも少なくできるという効果も得られる。
【0082】
次に、本実施の形態の供給ノズル19の配置構成の変形例をいくつか例示する。
本実施の形態の上述の図1には、供給ノズル19をロードアーム18と独立して動作する構成とし、加熱プレス部10の側方に設ける例が示されているが、これに限らない。
【0083】
すなわち、図5に例示されるように、ロードアーム18に供給ノズル19を一体に固定した構成の供給兼用ロードアーム18aとしてもよい。この場合、ロードアーム18と供給ノズル19の先端部をずらして、互いの動作時に他方が干渉しない構成とする。
【0084】
この供給兼用ロードアーム18aの場合には、供給ノズル19の3次元移動機構をロードアーム18と兼用することで省略でき、成形装置M1の機構を簡略化できる利点がある。
【0085】
また、図6に例示されるように、素材供給部20において、素材パレット17の下方に供給ノズル19a(供給手段)を配置し、素材パレット17にて待機する成形素材90において、素材パレット17の開口部17aから露出した成形素材90の下面に供給ノズル19aによって熱分解材料Aを塗布する構成としてもよい。
【0086】
この図6の変形例の場合には、供給ノズル19aを素材パレット17の下方に配置することで、成形装置M1の省スペース化を実現できる。
【0087】
さらに、図7に例示されるように、ロードアーム18による成形素材90の素材パレット17から下型14への搬送経路の途中に供給ノズル19aを配置し、この途中位置で供給ノズル19aから熱分解材料Aを成形素材90の下面に塗布した後、下型14に配置してもよい。
【0088】
この図7の変形例の場合には、ロードアーム18による成形素材90の搬送経路のスペースを供給ノズル19aの配置に有効に利用でき、成形装置M1の省スペース化を実現できる利点がある。
【0089】
(実施の形態2)
図8は、本発明の他の実施の形態である製造装置の構成例を示す概念図である。
この実施の形態2では、成形素材90の加熱、加圧プレス、冷却を異なるステージで並行して実行する、いわゆる多軸型の光学素子の製造装置としての成形装置M2の構成を例示する。
【0090】
すなわち、この成形装置M2では、各々が、下型31(第1成形型)、上型32(第2成形型)、スリーブ33からなる複数の型セット30を使用して成形が行われる。
本実施の形態の成形装置M2は、成形室40と型分解組立部50と、これらの間における型セット30の循環搬送を行う図示しない搬送機構が設けられている。
【0091】
成形室40には、型セット30の搬送方向(X方向)に順に、加熱ステージ41、加圧成形ステージ42、冷却ステージ43、が設けられている。
また、成形室40には、これらの各ステージの間で型セット30を移動させるための型セット送り機構44が設けられている。
【0092】
成形室40の搬送方向の上流側の側面には型投入口40aが設けられ、型セット30が型分解組立部50から加熱ステージ41に投入される。
また、成形室40の下流側の側面には、型投排出40bが設けられ、冷却ステージ43から型セット30が型分解組立部50に排出される。
【0093】
各ステージの各々には、上下方向(Z方向)に対向する下プレート61および上プレート62が配置されている。上プレート62は、プレス軸63に固定されて昇降する。
【0094】
また、下プレート61および上プレート62の各々には、温度調節機構61aおよび温度調節機構62aが設けられ、下プレート61と上プレート62の間に挟持される型セット30の加熱や冷却が可能になっている。
一方、型分解組立部50には、吸着搬送アーム51と、供給ノズル52(供給手段)と、素材パレット53が設けられている。
【0095】
吸着搬送アーム51は図示しない三次元移動機構に支持され、X、Y、Zの各方向に移動自在に設けられ、先端部に設けられた真空吸着パッドによって、型セット30の上型32、成形素材90、光学素子91、成形素材92、光学素子93等を着脱自在に保持して搬送することで、型セット30の分解、および成形素材90を型セット30の内部に実装する組立作業を自動的に行うことが可能になっている。
【0096】
また、供給ノズル52は図示しない三次元移動機構に支持され、X、Y、Zの各方向に移動自在に設けられ、先端部から熱分解材料Aを吐出供給することが可能になっている。
【0097】
なお、供給ノズル52の構成は、型分解組立部50を上述の実施の形態1の素材供給部20とみなして、上述の図6や図7に例示した変形例の供給ノズル19aと同様な動作を行う構成としてもよい。
以下、本実施の形態2の成形装置M2の作用を説明する。
【0098】
本実施の形態の成形装置M2の場合、まず、図8に例示された型分解組立部50において、分解された状態の型セット30を構成する下型31における凹形の下型成形面31aの中心部に対して供給ノズル52の先端部から熱分解材料Aを塗布した後、その上に吸着搬送アーム51に保持された成形素材90を配置する。
【0099】
これにより、成形素材90は、下型31の中心軸上に熱分解材料Aを介して接着されて安定に固定される。
その後、吸着搬送アーム51によってスリーブ33を搬送し、下型31に同軸に嵌合させ、さらに、吸着搬送アーム51に保持された上型32をスリーブ33に嵌合させるように挿入して、型セット30を組み立てる。
【0100】
この組み立て作業において、本実施の形態2の成形装置M2の場合には、下型31に熱分解材料Aを介して成形素材90が安定に固定されているため、組み立て中に成形素材90の位置ずれは、発生しない。
なお、型セット30の組み立て方法としては、図9および図10に例示される変形例も考えられる。
【0101】
この図9に例示された変形例では、型分解組立部50において、凸形の上型成形面32bを有する上型32を吸着搬送アーム51によって空中に吸着保持した状態において、供給ノズル52から上型成形面32bの頂点に熱分解材料Aを塗布する。
【0102】
その後、上型32を、素材パレット53に配列された成形素材92の真上に位置決めおよび降下させて上型成形面32bの頂点を成形素材92の上面の中心位置に接触させ、成形素材92を上型成形面32bに接着してピックアップする。
【0103】
その後、上型32を移動させ、図10に例示されるように、下型31に嵌合したスリーブ33に対して、吸着搬送アーム51に保持された上型32を挿入することで、成形素材92が、上型32の上型成形面32bの頂点に接着固定された状態に型セット30が組み立てられる。
【0104】
この図9および図10の変形例の場合には、吸着搬送アーム51による成形素材92の吸着および搬送が不要になるため、吸着搬送アーム51が成形素材92に接触することに起因する成形素材92の汚染を防止できる利点がある。
【0105】
こうして、型分解組立部50で組み立てられた型セット30は、型投入口40aを通じて成形室40の加熱ステージ41に投入される。
【0106】
この時、型分解組立部50から成形室40への搬送過程においても、成形素材90(成形素材92)は、熱分解材料Aを介して下型31または上型32に固定されているため、搬送中の成形素材90等の位置ずれが防止される。
【0107】
加熱ステージ41に投入された型セット30は、下プレート61と上プレート62の間に挟まれて所定の温度に予熱された後、型セット送り機構44によって次の加圧成形ステージ42に移動される。
【0108】
そして、加圧成形ステージ42では、下プレート61と上プレート62の間に挟まれた型セット30を所定の成形温度Tsに加熱しつつ加圧して光学素子91に成形する。
このとき、成形温度Tsまでの加熱によって型セット30の内部の熱分解材料Aは、分解および気化して消失する。
【0109】
その後、型セット30は、加圧成形ステージ42から次の冷却ステージ43に移動され、下プレート61と上プレート62の間に挟まれて所定の温度の冷却された後、型投排出40bを通じて型分解組立部50に搬出され、吸着搬送アーム51によって、上型32やスリーブ33を取り外す分解作業が行われ、成形された光学素子91は、所定の収納場所に搬送される。
【0110】
分解された型セット30は、再び、上述の組み立て作業によって成形素材90が実装された後、成形室40に投入される。
【0111】
この本実施の形態2の成形装置M2のように、成形素材90が下型31と上型32の間に実装された型セット30を、加熱ステージ41、加圧成形ステージ42、冷却ステージ43の各工程毎に搬送して並行処理する成形方式は、高い生産性を実現できるメリットがあるが、型セット30に成形素材90を実装した後に搬送することになり、成形素材90の搬送中の位置ずれのリスクがある。
【0112】
これに対して、本実施の形態2の成形装置M2の場合には、型セット30の下型31と上型32の間に実装された成形素材90を、熱分解材料Aを介して安定に固定するため、上述の搬送中の位置ずれリスクを回避しつつ、各ステージでの並行処理による高い生産性を実現することが可能となる。
【0113】
また、上述の実施の形態1と同様に、この実施の形態2の場合でも、上述の図10に例示したように、凸形状の下型成形面31bおよび上型成形面32bを有する下型31および上型32に成形素材92を配置することが可能である。
【0114】
この場合も、凸形状の下型31および上型32では熱分解材料Aが分解するより低い温度で、下型31および上型32により成形素材92を挟んで固定することが前提となるが、これを凸形状でない下型成形面31aおよび上型成形面32aの下型31および上型32の場合に行ってもよい。
【0115】
(実施の形態3)
図11は、本発明のさらに他の実施の形態である製造装置の構成例を示す略断面図である。
この実施の形態3の光学素子の製造装置としての成形装置M3では、一つの上型75(第2成形型)に対して複数の下型74(第1成形型)を順次、循環移動させて供給することにより成形を行う構成となっている。
【0116】
すなわち、下型成形面74aを有する複数の下型74が水平方向(X方向)に移動されるスライドプレート71に対向して、加熱プレス部70が設けられている。
【0117】
この加熱プレス部70は、プレス軸73に支持された昇降プレート72が設けられ、この昇降プレート72の下面には、上型成形面75aを備えた上型75と、スリーブ76が同軸に固定されている。
昇降プレート72には、上型75の温度を制御する温度調節機構72aが装着されている。
【0118】
同様に、スライドプレート71において、上方の昇降プレート72に対向する位置には温度調節機構71aが設けられ、上型75に対向する位置に位置決めされた下型74の温度制御が行われる構成となっている。
下型74の搬送方向の上流側には、ロードアーム77および供給ノズル78(供給手段)が設けられている。
【0119】
ロードアーム77は、図示しない三次元移動機構に支持され、成形素材90を真空吸着で保持して、下型74の下型成形面74aに対して配置する動作を行う。
供給ノズル78は、図示しない三次元移動機構に支持され、先端部から熱分解材料Aを吐出供給することが可能になっている。
【0120】
スライドプレート71には、下型74の搬送を行うための下型送り機構79が設けられている。
【0121】
そして、個々の下型74は、スライドプレート71における上流側で、下型成形面74aの中心部に供給ノズル78から熱分解材料Aを適量塗布された後、ロードアーム77に保持された成形素材90が配置され、成形素材90は、熱分解材料Aを介して下型成形面74aに接着固定された状態とされる。
【0122】
その後、下型74は、下型送り機構79によって上型75の直下の位置に搬送されて位置決めされる。
【0123】
そして、プレス軸73により上型75およびスリーブ76が下降して下型74に嵌合し、成形素材90が下型74と上型75との間に挟持された状態で温度調節機構71aおよび温度調節機構72aによる成形温度Tsへの加熱が行われ、さらにプレス軸73による加圧によって、成形素材90は光学素子91に成形される。
【0124】
この時、成形素材90を下型74に固定していた熱分解材料Aは熱分解し気化して消失する。
その後、上型75およびスリーブ76を上昇させた後、光学素子91が載置されている下型74を下型送り機構79によって下流側に移動させ、光学素子91を取り出した後、下型74を上流側に循環させる。
【0125】
この本実施の形態3の成形装置M3のように、下型74のみを搬送、循環させるような成形方式においても高い生産性を実現できるが、上述の実施の形態2と同様に、下型74の搬送における成形素材90の位置ずれリスクが大きい。
【0126】
しかし、本実施の形態3の成形装置M3では熱分解材料Aを使用して成形素材90が下型74の中心位置に安定に固定されているので、下型74の搬送等に伴う成形素材90の位置ずれの懸念は解消され、下型74の循環使用による生産性の高い光学素子91の成形を行うことができる。
【0127】
また、加熱プレス部70における成形プロセスにおいて、下型74に成形素材90を固定するために使用された熱分解材料Aが完全に熱分解する温度まで加熱するようにすれば、光学素子91の品質が損なわれることもない。
【0128】
すなわち、本実施の形態3の成形装置M3によれば、光学素子91の品質を損なうことなく、下型74の循環使用による生産性の高い光学素子91の成形を行うことができる。
また、この実施の形態3の成形装置M3の場合にも、上述の図9のように、上型75の側に熱分解材料Aを介して成形素材90を接着して配置することも可能である。
【0129】
すなわち、スリーブ76を下型74の側に配置し、プレス軸73を三次元移動機構により移動自在な構成とし、上型75の上型成形面75aに熱分解材料Aを塗布した後に、成形素材90の上に位置決めしてピックアップする動作を行わせる。
【0130】
具体的には、たとえば、例えば図示しない素材パレット上に待機している成形素材90に対して上型75を相対的に移動させ、熱分解材料Aを塗布した上型75を下降させて成形素材90を直接ピックアップするといった材料の供給方法が可能となる。
【0131】
上型75の位置決めには、図示しない素材パレットを移動するか、もしくは上型75を移動してもよい。この場合はロードアーム77を成形素材90の搬送に使用せずに済むため、ロードアーム77が成形素材90に接することに起因する異物付着を防止でき、異物付着等による製品不良の発生を防止できる。
【0132】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、光学素子の成形に限らず、一般の成形品の成形に広く適用することができる。その場合には、固定媒体としては、熱分解材料Aに限らず、一般の接着材を用いてよい。
【0133】
(付記1) 光学素子材料を成形温度まで加熱後に光学成形転写面を有する一対の上下成形型で押圧成形することにより前記成形型から光学成形面を転写して光学素子を成形する光学素子の製造方法において、
前記光学素子材料を前記成形型上に載置した際に、成形型と光学素子材料の両者に接触する状態になるよう成形温度以下で熱分解、または蒸発気化する材料を供給することにより、光学素子材料を成形型に載置したあとの位置を保持したまま成形温度に加熱後成形型により押圧成形することを特徴とする光学素子製造方法。
【0134】
(付記2) 付記1に記載の光学素子製造方法であって、前記熱分解材料が前記光学素子材料と接触後固化することにより前記光学素子材料を前記成形型に接着することを特徴とする光学素子製造方法。
【0135】
(付記3) 付記1に記載の光学素子製造方法であって、前記熱分解材料の粘性が高く、熱分解するまでは接触した前記光学素子材料と離脱したり流動したりしないことを特徴とする光学素子製造方法。
【0136】
(付記4) 付記1に記載の光学素子製造方法であって、前記光学素子材料を前記成形型上に載置する前に、光学素子材料の表面に前記熱分解材料を塗布することを特徴とする光学素子製造方法。
【0137】
(付記5) 付記1に記載の光学素子製造方法であって、前記光学素子材料を前記成形型上に載置する前に、成形型表面に前記熱分解材料を塗布することを特徴とする光学素子製造方法。
【0138】
(付記6) 光学素子材料を成形温度まで加熱後に光学成形転写面を有する一対の上下成形型で押圧成形することにより前記成形型から光学成形面を転写して光学素子を成形する光学素子製造装置において、前記成形型と光学素子材料の両者に接触するよう成形温度以下で熱分解、または蒸発気化する材料を供給する手段を備えることを特徴とする光学素子製造装置。
【0139】
(付記7) 付記7に記載の光学素子製造装置であって、光学素子材料を搬送し成形型上に載置する載置手段を備え、光学素子材料を載置する前に前記熱分解材料を光学素子材料の表面に塗布する手段を備えることを特徴とする光学素子製造装置。
【0140】
(付記8) 付記7に記載の光学素子製造装置であって、光学素子材料を搬送し成形型上に載置する載置手段を備え、光学素子材料を載置する前に前記熱分解材料を成形型表面に塗布する手段を備えることを特徴とする光学素子製造装置。
【符号の説明】
【0141】
10 加熱プレス部
11 下プレート
11a 温度調節機構
12 上プレート
12a 温度調節機構
13 プレス軸
14 下型
14a 下型成形面
14b 下型成形面
14c 面頂部
14d 面頂部
15 上型
15a 上型成形面
15b 上型成形面
16 スリーブ
17 素材パレット
17a 開口部
18 ロードアーム
18a 供給兼用ロードアーム
19 供給ノズル
19a 供給ノズル
20 素材供給部
30 型セット
31 下型
31a 下型成形面
31b 下型成形面
32 上型
32a 上型成形面
32b 上型成形面
33 スリーブ
40 成形室
40a 型投入口
40b 型投排出
41 加熱ステージ
42 加圧成形ステージ
43 冷却ステージ
44 型セット送り機構
50 型分解組立部
51 吸着搬送アーム
52 供給ノズル
53 素材パレット
61 下プレート
61a 温度調節機構
62 上プレート
62a 温度調節機構
63 プレス軸
70 加熱プレス部
71 スライドプレート
71a 温度調節機構
72 昇降プレート
72a 温度調節機構
73 プレス軸
74 下型
74a 下型成形面
75 上型
75a 上型成形面
76 スリーブ
77 ロードアーム
78 供給ノズル
79 下型送り機構
90 成形素材
91 光学素子
91a 光学機能面
91b 光学機能面
92 成形素材
93 光学素子
93a 光学機能面
93b 光学機能面
A 熱分解材料
M1 成形装置
M2 成形装置
M3 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1成形型および第2成形型の一方に、成形素材を接着する第1工程と、
前記成形素材を前記第1成形型と前記第2成形型の間で挟圧して成形する第2工程と、
を含むことを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記第1成形型または前記第2成形型と、前記成形素材との間に接着媒体を供給し、前記接着媒体を介して、前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に接着することを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記接着媒体は、前記成形素材の成形温度よりも低い温度で分解する熱分解材料からなることを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記接着媒体を塗布した前記第1成形型または前記第2成形型を、前記成形素材に対して相対的に移動させて接触させることにより、前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に配置することを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記成形素材の表面に前記接着媒体を塗布した後に、前記第1成形型または前記第2成形型に前記成形素材を配置することで接着することを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項6】
請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記第1成形型または前記第2成形型の表面に前記接着媒体を供給した後に、前記成形素材を配置することで接着することを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項7】
対向して配置され、成形素材を挟圧して成形する第1成形型および第2成形型と、
前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に固定するための接着媒体を、前記第1成形型、前記第2成形型、および前記成形素材の少なくとも一つに供給する供給手段と、を備えたことを特徴とする、光学素子の製造装置。
【請求項8】
請求項7記載の光学素子の製造装置において、
前記接着媒体は、前記成形素材の成形温度よりも低い温度で分解する熱分解材料からなることを特徴とする、光学素子の製造装置。
【請求項9】
請求項7記載の光学素子の製造装置において、
さらに、前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に載置する搬送手段を備え、
前記供給手段は、前記搬送手段によって前記成形素材が載置される前に、前記接着媒体を前記成形素材の表面に塗布することを特徴とする、光学素子の製造装置。
【請求項10】
請求項7記載の光学素子の製造装置において、
さらに、前記成形素材を前記第1成形型または前記第2成形型に載置する搬送手段を備え、
前記供給手段は、前記搬送手段によって前記成形素材が載置される前に、前記接着媒体を前記第1成形型または前記第2成形型の表面に塗布することを特徴とする、光学素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−1220(P2011−1220A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145547(P2009−145547)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】