説明

光学装置および光学装置の制御方法、ならびに、画像形成装置

【課題】感光体の残留電位を検出する構成において、作像光量制御の精度を向上させる。
【解決手段】APCの対象を作像光量範囲のみ、すなわちモニタ電圧AD変換値L0〜L1の範囲L01とする。残留電位検知光量は、ACCにより固定的に制御する。この場合、モニタ電圧AD変換値のダイナミックレンジは、モニタ電圧AD変換値L0〜L1の範囲L01となり、残留電位検知光量までをAPCの対象とする場合に比べて狭くなる。そのため、モニタ電圧の分解能が上がり、APCの精度が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームで感光体を走査する光学装置および光学装置の制御方法、ならびに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暗所で帯電させた感光体に対してレーザビームを照射して露光を行うと、露光部分が除去された静電潜像が感光体上に形成される。この静電潜像を現像して紙などの印刷媒体に転写および定着させることで、画像形成がなされる。画像形成後、感光体表面を除電する。このとき、若干の電位が残留電位として感光体表面に残る。感光体に対する帯電、露光、除電を繰り返すことで残留電位が徐々に高くなり、形成される画像の品質が劣化してしまう。そのため、レーザビームで感光体を走査することで画像形成を行う画像形成装置では、感光体の残留電位を測定し、測定値が所定以上となった場合、例えばその感光体を交換するなどの処置を行う必要がある。
【0003】
感光体の残留電位を測定するためには、感光体に照射するレーザビームの光量を、画像作像時の光量よりも大きくする必要がある。そこで、レーザビームの光量として、画像作像時の光量範囲だけでなく、残留電位を測定するための光量まで範囲を持たせ、残留電位を測定するための光量のレーザビームを出力する技術が既に知られている。
【0004】
特許文献1には、レーザダイオード(LD)の発光電流の、D/A変換におけるフルスケールを決定する電流または電圧を外部端子より入力して、そのフルスケールを変更することにより、LDの発光量を変化させる構成が開示されている。特許文献1によれば、ラスタスキャンを行なうレーザダイオード書込み系で発生する、感光体の中央部での光量が高くなることを補正(シェーディング補正)することが可能となる。
【0005】
特許文献2には、光源から出力される光の強度を検出するAPC(Auto Power Control)用の光検出器に対して入射される、記録媒体に向けられる光から分岐ミラーにより分岐された光の強度を、光量調整素子(NDフィルタ、偏光素子、液晶素子など)により、連続あるいは段階的に変化させることで、記録用/再生用の光を単一のAPC用光検出器のダイナミックレンジ内に収める構成が開示されている。特許文献2によれば、記録用/再生用の光を単一のAPC用光検出器で検出する際に、これら記録用/再生用の光をAPC用光検出器のダイナミックレンジ内に収めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の残留電位測定のためのレーザビームを出力する構成では、作像に用いる光量範囲を単純に拡張して光量制御を行っているに過ぎなかった。このことについて、図10を用いて具体的に説明する。
【0007】
一般的に、感光体の残留電位を測定する際のレーザビームの光量は、画像を作像する際の光量のような精度は要求されないため、残留電位の測定に際して略狙いの光量が出力されていれば十分とされる傾向にある。ところが、従来では、作像に用いる光量範囲に対して光量の大きい、残留電位を測定するためのレーザビームの光量まで一律に光量制御を行っていた。
【0008】
すなわち、残留電位を検知するためのレーザビームを出力する場合、図10に例示されるように、作像に用いる光量範囲Aの上限から、残留電位を検知するための残留電位検知光量Cまでの、本来点灯させることの無い光量範囲Bが発生する。この光量範囲Aと光量範囲Bとを含む全体の光量範囲が、光量制御範囲となる。したがって、光量範囲Aに対して光量制御のダイナミックレンジが大きくなり、作像に用いる光量範囲Aに対する光量検知の分解能が低くなってしまうという問題点があった。
【0009】
また、上述した特許文献1では、LDの発光電流のフルスケールを変更することでLDの発光量を変化させている。しかしながら、作像に用いる光量範囲から残留電位検知光量への変化は、上述したシェーディング補正光量に対して遙かに大きな変化となる。そのため、外部端子より入力する電流または電圧のダイナミックレンジが大きくなり、作像光量範囲に対する光量制御精度の悪化という問題は解消できていない。
【0010】
さらに、上述した特許文献2では、光量調整素子を用いて光量のダイナミックレンジを狭くしており、作像光量範囲に対する光量制御精度の悪化を抑制することが可能である。しかしながら、複写機などの画像形成装置に搭載するLDは、光量をモニタするPD(フォトダイオード)と一体化されているのが一般的であり、この場合、特許文献2で用いられるような光量調整素子を搭載できない。そのため、特許文献2の方法を複写機などに適用することは困難であり、光量制御精度の悪化という問題は解消できていない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、感光体の残留電位を検出する構成において、作像光量制御の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーザビームを出力する光源を駆動する駆動手段と、光源から出力されるレーザビームを検出する検出手段と、検出手段の出力を、予め定められた範囲内の値に変換する変換手段と、駆動手段を制御して、光源から出力されるレーザビームの光量を、作像光量範囲内の第1の光量と、作像光量範囲外の第2の光量とで切り替える制御手段とを有し、変換手段は、制御手段によりレーザビームの光量が第1の光量に切り替えられている場合に、検出手段の作像光量範囲の上限光量の出力を、予め定められた範囲内で最大の値に変換し、検出手段の作像光量範囲の下限光量の出力を、予め定められた範囲内で最小の値に変換することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、駆動手段が、レーザビームを出力する光源を駆動する駆動ステップと、検出手段が、光源から出力されるレーザビームを検出する検出ステップと、変換手段が、検出ステップによる出力を、予め定められた範囲内の値に変換する変換ステップと、制御手段が、駆動ステップを制御して、光源から出力されるレーザビームの光量を、作像光量範囲内の第1の光量と、作像光量範囲外の第2の光量とで切り替える制御ステップとを有し、変換ステップは、制御ステップによりレーザビームの光量が第1の光量に切り替えられている場合に、検出ステップによる作像光量範囲の上限光量の出力を、予め定められた範囲内で最大の値に変換し、検出ステップによる作像光量範囲の下限光量の出力を、予め定められた範囲内で最小の値に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、感光体の残留電位を検出する構成において、作像光量制御の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態による光学装置を適用可能な画像形成装置の一例の構成を概略的に示す略線図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に適用可能な光学装置の一例の構成を概略的に示す略線図である。
【図3】図3は、レーザビーム光源に対するAPCを行うAPC系の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。
【図4】図4は、ドライバの一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図5】図5は、従来技術によるレーザビーム光源の制御方法を説明するための略線図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態によるレーザビーム光源の制御方法を説明するための略線図である。
【図7】図7は、レーザビーム光源の駆動電流値Iと発光量Pとの一例の関係を示す略線図である。
【図8】図8は、通常のAPCを行っている場合のタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図9】図9は、ACCを実行する場合のタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図10】図10は、従来技術による光量制御を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る光学装置の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による光学装置を適用可能な画像形成装置80の一例の構成を概略的に示す。この画像形成装置80は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色を用いてカラー画像の形成を行うことができる、タンデムタイプのカラー画像形成装置である。
【0017】
画像形成装置80は、YMCK各色の画像を形成する画像形成部Aが、転写紙51を搬送する搬送ベルト52に沿って一列に配置されている。搬送ベルト52は、その一方が駆動回転する駆動ローラと他方が従動回転する従動ローラである搬送ローラ53、54によって架設されており、搬送ローラ53、54の回転により図示の矢印方向に回転駆動される。
【0018】
搬送ベルト52の下部には、転写紙51が収納された給紙トレイ55が備えられている。給紙トレイ55に収納された転写紙51のうち最上位置にある転写紙は、画像形成時には給紙され、途中レジストセンサ64により画像の書込みを行う光学ユニットの動作とのタイミングが取られ、静電吸着によって搬送ベルト52上に吸着される。
【0019】
吸着された転写紙51は、イエローの画像を形成するための第1の画像形成部に搬送され、ここでイエローの画像形成が行われる。第1の画像形成部は、感光体ドラム56Yとこの感光体ドラム56Yの周囲に配置された帯電器57Y、露光器58、現像器59Y、感光体クリーナ60Yなどを構成要素として有する。感光体ドラム56Yの表面は、帯電器57Yで一様に帯電された後、露光器58によりイエローの画像に対応したレーザビーム61Yで露光され、静電潜像が形成される。
【0020】
なお、静電潜像は、主・副走査方式の光ビーム書込みで形成され、露光器58からのビーム走査を主走査、主走査に直交する感光体ドラムの回転を副走査とすることでドラム感光面へ2次元像の光ビーム書込みが行われる。
【0021】
感光体ドラム56Yの表面に形成された静電潜像は、現像器59Yで現像され、感光体ドラム56Y上にトナー像が形成される。このトナー像は、感光体ドラム56Yと搬送ベルト52上の転写紙51と接する位置(転写位置)で転写器62Yによって転写され、転写紙51上にイエロー単色の画像を形成する。転写が終わった感光体ドラム56Yは、ドラム表面に残った不要なトナーが感光体クリーナ60Yによってクリーニングされ、次の画像形成に備える。
【0022】
このように、第1の画像形成部でイエロー単色を転写された転写紙51は、搬送ベルト52によってマゼンタの画像形成を行うための第2の画像形成部に搬送される。ここでも、上述の第1の画像形成部と同様にマゼンタのトナー像が感光体ドラム56M上に形成され、転写紙51上に既に形成されているイエローの画像に対して重ねて転写される。転写紙51は、さらにシアンの画像形成を行うための第3の画像形成部、続いてブラックの画像形成を行うための第4の画像形成部に搬送され、上述のイエロー、マゼンタの場合と同様に形成されたシアン、ブラックのトナー像が、直前に形成された画像に対して重ねて転写される。YMCK各色の転写が完了すると、カラー画像が形成されることになる。
【0023】
第4の画像形成部を通過してカラー画像が形成された転写紙51は、搬送ベルト52から剥離され、定着器63にて定着された後、排紙される。
【0024】
図2は、図1に例示した画像形成装置80の露光器58に含まれる、本実施形態に適用可能な光学装置の一例の構成を概略的に示す。光学装置は、レーザビーム30を出射する光源部と、光源部から出射されたレーザビーム30の光量を測定するために当該レーザビーム30を受光する受光部を有する光源ユニット1と、光源部から出射されたレーザビーム30を感光体ドラム22上に導くための光学系を有する書込みユニット2とを備える。
【0025】
光学装置において、光源部は、レーザビーム30を出射するレーザビーム光源14を有すると共に、レーザビーム光源14の駆動制御に関わる光源コントローラ10、ドライバ11および電圧変換部12を有する。光源コントローラ10は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成される。
【0026】
レーザビーム光源14は、例えばレーザダイオード(LD)からなり、ドライバ11から供給される駆動電流に応じた光量のレーザビーム30を出力する。レーザビーム光源14は、1本のレーザビームを出力するのに限られず、複数のレーザビームを同時に出力するようにしてもよい。複数のレーザビームを同時に出力可能な発光素子としては、例えば複数のレーザダイオードが並べられて構成されたレーザダイオードアレイや、面発光を行うVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を適用することができる。
【0027】
光学系は、カップリング光学素子16、アパーチャ17、ポリゴンミラー20およびfθレンズ21を有する。レーザビーム光源14から出射されたレーザビーム30は、カップリング光学素子16により平行光とされた後、アパーチャ17で整形され、所定速度で回転するポリゴンミラー20に入射されて偏向され、走査ビーム31となる。走査ビーム31は、fθレンズ21を通過して感光体ドラム22に照射される。走査ビーム31は、ポリゴンミラー20の回転に応じて感光体ドラム22を主走査方向(図中に矢印Bで示す)に走査する。
【0028】
感光体ドラム22の走査開始位置には、同期検知部23が配される。同期検知部23は、受光素子として例えばフォトダイオード(PD)を備え、入射されたレーザビーム30(走査ビーム31)を、光電変換により電流に変換して出力する。この同期検知部23の出力は、走査ビーム31の走査に関する各種制御に対するタイミングを与える同期信号として用いられる。
【0029】
また、光源ユニット1において、レーザビーム光源14内に、レーザビーム光源14から出力されるレーザビーム30の光量をモニタするための受光素子15が設けられる。受光素子15は、例えばフォトダイオード(PD)からなり、光電変換により、入射されたレーザビームを、光量に応じた電流の信号に変換して出力する。受光素子15は、レーザダイオードのバックビームが入射されるように配置される。これに限らず、レーザビーム光源14から出射されるレーザビーム30の光路上にハーフミラーやアパーチャミラーを設け、これらハーフミラーやアパーチャミラーで反射されたレーザビーム30が入射されるように、受光素子15を配置してもよい。
【0030】
受光素子15から出力された電流は、電圧変換部12で抵抗素子などにより電圧に変換されて、モニタ電圧Vpdとしてドライバ11に供給される。ドライバ11は、光源コントローラ10から供給される、APC(Auto Power Control)の目標光量を示す情報と、このモニタ電圧Vpdとに基づき、レーザビーム光源14から安定した光量でレーザビーム30を出力させるためのAPCを行う。
【0031】
図3は、上述のレーザビーム光源14に対するAPCを行うAPC系の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、図3において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。APCは、レーザビーム30が主走査方向に走査される毎のタイミングでレーザビーム30の光量補正を行うラインAPCを適用することができる。
【0032】
光源コントローラ10は、例えば図示されないメインCPUの命令に従い、レーザビーム30のAPCにおける目標光量値(以下、APC目標光量値Papc)を含む駆動制御信号を、ドライバ11に供給する。ドライバ11は、受信した駆動制御信号に含まれるAPC目標光量値Papcに対応する基準電圧値VREFを決定する。
【0033】
ドライバ11は、レーザビーム30を受光素子15で受光した際の、受光素子15の出力を電圧変換部12で電圧値に変換したモニタ電圧Vpdが、この基準電圧値VREFと等しくなるように、レーザビーム光源14に供給する駆動電流の電流値を制御する。その結果、レーザビーム光源14は、略APC目標光量値Papcの光量で安定的にレーザビーム30を出力する。
【0034】
なお、光源コントローラ10に対して図示されない画像処理部から、画像データが供給された場合、光源コントローラ10は、この画像データと、図示されないメインCPUから受信した制御信号とに基づき、レーザビーム光源14を画像データに従い駆動するための駆動信号である画像データ点灯信号を生成する。また、光源コントローラ10は、メインCPUからの命令に従い、レーザビーム30が同期検知部23の位置を走査するタイミングでレーザビーム30を点灯させるBD点灯を行うための、BD点灯信号を生成する。
【0035】
図4は、ドライバ11の一例の構成をより詳細に示す。なお、図4において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図4に例示されるように、ドライバ11は、制御部100、ADC(A/Dコンバータ)101および電流DAC(D/Aコンバータ)102を有する。
【0036】
制御部100は、光源コントローラ10が図示されないメインCPUの命令に従い駆動制御信号に含めて送信した、APC目標光量値Papc、ACC(Auto Current Control)目標光量値Pacc、APC/ACC切替信号、画像データ点灯信号、APC点灯信号およびBD点灯信号を受信する。なお、詳細は後述するが、ACCは、レーザビーム光源14を、固定的な電流でレーザビーム30を出力するように駆動する制御であり、感光体ドラム22の残留電位を検知する際に用いられる。
【0037】
また、制御部100は、レーザビーム光源14を点灯させる際には、電流DAC102に対して、レーザビーム光源14に対して供給する駆動電流の電流値を設定する。電流DAC102は、制御部100からデジタル値として設定された電流値の電流を出力し、レーザビーム光源14を点灯駆動する。ADC101は、電圧変換部12から供給されるモニタ電圧Vpdを予め定められた範囲内のデジタル値に変換し、制御部100に供給する。
【0038】
制御部100は、光源コントローラ10から供給される駆動制御信号に含まれるAPC/ACC切替信号がAPCを示している状態では、APCを行う。すなわち、制御部100は、ADC101からデジタル値に変換されて供給されたモニタ電圧Vpdと、駆動制御信号に含まれるAPC目標光量値Papcに対応して決定されたモニタ基準値VREFとに基づき、レーザビーム光源14を駆動する駆動電流の電流値Idac_apcを決定し、この電流値Idac_apcを電流DAC102に設定する。
【0039】
一方、制御部100は、APC/ACC切替信号がACCを示している状態では、ACCを行う。すなわち、制御部100は、現在のAPC目標光量値Papcと、現在の電流DAC102の設定値と、次のACC目標値Paccとに基づき、後述するようにして、ACCにおける電流値Idac_accを算出し、電流DAC102に対して設定する。
【0040】
次に、本発明の実施形態によるレーザビーム光源14の制御方法について、より詳細に説明する。図5および図6は、従来技術および本発明の実施形態による制御方法の例をそれぞれ示す。
【0041】
図5および図6において、横軸は、レーザビーム光源14からレーザビーム30を出力した際の受光素子15の出力を電圧値に変換したモニタ電圧Vpdを、ADC101でデジタル値に変換したモニタ電圧AD変換値を示す。また、以下では、画像データに従い画像形成を行うために感光体ドラム22を走査することを作像と呼び、作像の際のレーザビーム30の光量を作像光量と呼ぶ。APCでは、この作像光量を、APC目標光量値Papcの予め決められた範囲内に収めるような制御を行う。
【0042】
図5および図6において、モニタ電圧AD変換値L0およびL1は、それぞれ、作像光量の範囲の下限および上限の光量に対応する。また、モニタ電圧AD変換値L2は、感光体ドラム22の残留電位を検知するためのレーザビーム30の光量に対応する。図5および図6に示されるように、感光体ドラム22の残留電位を検知するためには、レーザビーム30の光量を、作像光量範囲の上限の光量L1よりも大きな光量L2とする。
【0043】
従来では、図5に例示されるように、モニタ電圧AD変換値L0〜L2の範囲L02の全体をAPCの対象としていた。すなわち、作像光量範囲のみならず、作像光量範囲の上限から残留電位を検知するための光量までの範囲を含めて、レーザビーム30の光量に対するAPCを行っていた。この場合、モニタ電圧AD変換値のダイナミックレンジは、モニタ電圧AD変換値L0〜L2の範囲L02となる。
【0044】
これに対して本実施形態では、図6に例示されるように、APCの対象を作像光量範囲のみ、すなわちモニタ電圧AD変換値L0〜L1の範囲L01をAPCの対象とする。残留電位を検知するための光量については、ACCによりレーザビーム30の光量を固定的に制御する。この場合、モニタ電圧AD変換値のダイナミックレンジは、モニタ電圧AD変換値L0〜L1の範囲L01となり、図5の例に比べて狭くなる。
【0045】
ここで、制御部100は、電圧変換部12から供給されたモニタ電圧VpdをADC101でA/D変換し、デジタル値として処理する。ADC101でのA/D変換における量子化ビット数が同一であれば、モニタ電圧Vpdのより狭い範囲に量子化ビット数のフルスケールを割り当てることで、モニタ電圧Vpdに対してより高い分解能を得ることができる。
【0046】
一例として、ADC101が8ビットの量子化ビット数でA/D変換を行う場合、フルスケールは、0〜255の256段階の値を持つ。図5に示す従来の方法では、モニタ電圧AD変換値L0〜L2の範囲L02にフルスケールを割り当てることになり、この範囲L02を255分割した値を単位として光量検出が行われて作像時のAPCが実行される。これに対して、図6に示す本実施形態の方法では、モニタ電圧AD変換値L0〜L1の範囲L01にフルスケールを割り当てることになり、この範囲L01を255分割した値を単位として光量検出が行われて作像時のAPCが実行される。
【0047】
上述したように、感光体ドラム22の残留電位を検知するための光量は、作像光量の範囲の上限の光量よりも大きいので、範囲L02よりも範囲L01の方が狭くなる。したがって、作像時において、従来の方法に比べ本実施形態による方法の方が高い分解能でレーザビーム30の光量検出を行うことができ、より高精度にAPCを実行することができる。
【0048】
次に、感光体ドラム22の残留電位を検知する光量でレーザビーム30をACCにより出力するための、レーザビーム光源14を駆動する駆動電流の算出方法について説明する。
【0049】
図7は、レーザビーム光源14の駆動電流値Iと発光量Pとの一例の関係を示す。図7に示されるように、駆動電流値Iがある電流値Biasを超えると、駆動電流値Iに対する発光量Pの増加率が急激に増大すると共に、発光量Pが駆動電流値Iに略比例して増加していく。駆動電流値Iが0から電流値Biasまでの領域をLED(Light Emitting Diode)発光領域と呼び、駆動電流値Iが電流値Bias以上の領域をLD発光領域と呼ぶ。
【0050】
電流DAC102は、このLED発光領域とLD発光領域との境界となる電流値Biasと、駆動電流値Iが電流値Bias以上のLD発光領域の電流Idacとを制御している。ACC時に電流DAC102に設定する電流値Idac_accは、LD発光領域の電流Idacの値を用いて下記の式(1)により算出する。
dac_acc=(Pacc/Papc)×Idac_apc …(1)
【0051】
次に、APCおよびACCの切り替えタイミングについて、図8および図9のタイミングチャートを用いて説明する。ドライバ11は、光源コントローラ10から供給された駆動制御信号に含まれるAPC/ACC切替信号の状態に応じてAPCとACCとを切り替える。
【0052】
図8は、APC/ACC切替信号がAPCを示している状態であり、通常のAPCを行っている場合の例を示す。ドライバ11は、光源コントローラ10からレーザビーム30が同期検知部23の位置を走査するタイミングで供給されるBD点灯信号に応じて、レーザビーム光源14を光量bでBD点灯させる。同期検知部23は、BD点灯されたレーザビーム30(走査ビーム31)を検知すると、同期信号DTEPを出力する。同期信号DTEPは、例えば図示されないメインCPUに供給される。
【0053】
メインCPUは、この同期信号DTEPに基づき、作像を行うための点灯タイミングや、APCを行うための点灯タイミングを光源コントローラ10に指示する。光源コントローラ10は、この指示に従い各種タイミング信号を生成し、ドライバ11に供給する。ドライバ11は、供給された各種タイミング信号に従い、レーザビーム30が感光体ドラム22の作像領域を走査する期間で、作像光量である光量aでレーザビーム光源14を点灯させ、その後、作像領域外において光量aでレーザビーム光源14をAPC点灯させる。光量aは、APC目標光量値Papcの光量である。
【0054】
なお、BD点灯のための光量bは、光量aに対して、同等か、または、若干高い光量が設定される。光量bによるBD点灯は、ACCによって点灯させてもよいし、APCによって点灯させてもよい。BD点灯をAPCにより行う場合は、目標光量値をAPC目標光量値Papcとは異なる値に設定することができる。
【0055】
図9は、APC/ACC切替信号がAPCを示す状態からACCを示す状態に切り替わり、ACCを実行する場合の例を示す。この場合、APC/ACC切替信号は、例えば図示されないメインCPUの制御に従い切り替わる。時点t1でAPC/ACC切替信号がACCを示す状態に切り替わると、ドライバ11の制御部100は、上述した式(1)に従い電流値Idac_accを算出し、電流DAC102に設定する。なお、APC/ACC切替信号がACCを示す状態に切り替わる時点t1は、BD点灯が終了したタイミングから、残留電位測定光量での点灯を行うために予め定められたタイミングの直前までの間であれば、どのタイミングであってもよい。
【0056】
光源コントローラ10は、メインCPUからの指示に従いACCを行うための各種タイミング信号を生成し、ドライバ11に供給する。ドライバ11は、供給された各種タイミング信号に従い、レーザビーム30が感光体ドラム22の作像領域を走査する期間に電流値Idac_accの駆動電流でレーザビーム光源14を駆動し、残留電位光量である光量cで点灯させる。光量cは、APC点灯の光量aおよびBD点灯の光量bよりも大きな光量とされる。また、APC/ACC切替信号がACCを示す状態の場合、作像光量のためのAPCは必要ないため、APC点灯は行わない。BD点灯は、図8に示したAPCの場合と同様に所定のタイミングで点灯される。
【0057】
このように、本実施形態によれば、作像時の光量よりも大きな光量で残留電位の検知を行う場合に、APCの対象を作像光量範囲内のみとし、APCの対象を残留電位検知光量までとした場合に比べ、モニタ電圧AD変換値のダイナミックレンジを狭くしている。そのため、光量モニタ時の分解能を高めることができ、より高い精度でAPCを行うことができる。
【0058】
(実施形態の変形例)
上述の実施形態では、ACC時に電流DAC102に対して設定する電流値Idac_accを、現在の作像における作像光量に対応するAPC目標光量値Papcと、電流値Idac_accとを用いて算出するように説明した。これに対し、本実施形態の変形例では、BD点灯の光量をAPCする場合に、ACC時に電流DAC102に対して設定する電流値Idac_accを、BD点灯に対してAPCを行う電流値Idac_apc_bdおよびAPC目標光量値Papc_bdと、ACC時のACC目標光量値Paccとを用いて、下記の式(2)により算出する。
dac_acc=(Pacc/Papc_bd)×Idac_apc_bd …(2)
【0059】
すなわち、上述した図7では、電流値Bias以上のLD発光領域において、駆動電流値Iと発光量Pとが直線的な比例関係となっているように示したが、実際には、これら駆動電流値Iと発光量Pとの関係は、直線的な対応関係に対して若干の歪みを持っている。そのため、ACC時に電流DAC102に設定する電流値Idac_accを算出する際に、作像点灯のためのAPC目標光量値Papcが変動すると、ACC時の電流値Idac_accも変動することになり、結果的に、ACC点灯の光量にバラツキが発生し易くなる。
【0060】
そこで、本実施形態の変形例のように、作像光量に加え、BD点灯用のAPC目標光量値Papc_bdおよび電流値Idac_apc_bdを用いてACC時の電流値Idac_accを算出する。BD点灯の光量は、同期検知部23の出力信号である同期信号DTEPを安定させるため、常に一定の値を設定するのが好ましい。これにより、ACC時に電流DAC102に設定される電流値Idac_accも安定し、ACC点灯の際の光量Paccのバラツキを抑制することができる。
【0061】
なお、BD点灯光量に対してAPCを行う際のAPC点灯は、図8のBD点灯をそのまま用いてもよいし、作像光量での点灯期間と、BD点灯タイミングとの間に、新たに点灯タイミングを設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 光源ユニット
2 書込みユニット
10 光源コントローラ
11 ドライバ
12 電圧変換部
14 レーザビーム光源
15 受光素子
22 感光体ドラム
23 同期検知部
30 レーザビーム
100 制御部
101 ADC
102 電流DAC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2003−060289号公報
【特許文献2】特開2009−015895号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出力する光源を駆動する駆動手段と、
前記光源から出力されるレーザビームを検出する検出手段と、
前記検出手段の出力を、予め定められた範囲内の値に変換する変換手段と、
前記駆動手段を制御して、前記光源から出力されるレーザビームの光量を、作像光量範囲内の第1の光量と、該作像光量範囲外の第2の光量とで切り替える制御手段と
を有し、
前記変換手段は、
前記制御手段により前記レーザビームの光量が前記第1の光量に切り替えられている場合に、前記検出手段の前記作像光量範囲の上限光量の出力を、前記予め定められた範囲内で最大の値に変換し、前記検出手段の前記作像光量範囲の下限光量の出力を、前記予め定められた範囲内で最小の値に変換する
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記レーザビームの光量を前記第1の光量に制御している場合に、前記光源を駆動している駆動電流値と、前記第1の光量の目標値と、前記第2の光量の目標値とに基づき、前記駆動手段が該第2の光量で前記光源を駆動するための駆動電流値を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記レーザビームの光量を、該レーザビームの同期タイミングを検出する同期検知手段に対して該レーザビームを入射させる場合の第3の光量で制御している場合に、前記光源を駆動している駆動電流値と、前記第2の光量の目標値と、前記第3の光量の目標値とに基づき、前記駆動手段が前記第2の光量で前記光源を駆動するための駆動電流値を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第2の光量は、前記レーザビームが走査する感光体の残留電位を検知するための光量である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
駆動手段が、レーザビームを出力する光源を駆動する駆動ステップと、
検出手段が、前記光源から出力されるレーザビームを検出する検出ステップと、
変換手段が、前記検出ステップによる出力を、予め定められた範囲内の値に変換する変換ステップと、
制御手段が、前記駆動ステップを制御して、前記光源から出力されるレーザビームの光量を、作像光量範囲内の第1の光量と、該作像光量範囲外の第2の光量とで切り替える制御ステップと
を有し、
前記変換ステップは、
前記制御ステップにより前記レーザビームの光量が前記第1の光量に切り替えられている場合に、前記検出ステップによる前記作像光量範囲の上限光量の出力を、前記予め定められた範囲内で最大の値に変換し、前記検出ステップによる前記作像光量範囲の下限光量の出力を、前記予め定められた範囲内で最小の値に変換する
ことを特徴とする光学装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の光学装置と、
前記レーザビームで感光体を走査することで作像を行う画像形成手段と
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−230325(P2012−230325A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99931(P2011−99931)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】