説明

光学装置

【課題】 干渉を使用することで従来の光学系より高分解能画像を得ることが可能な光学系において、安定した信号を得る。
【解決手段】 物体から出射する応答光の特定の偏光状態の光を選択し、これを二つのビームに分離する。分離された二つのビームを異なる偏光状態にし、一方のビームを像反転させた後、両者を集光かつ干渉させる。干渉光を複数に分離し、それぞれに異なる偏光フィルタを挿入し、検出する。それぞれの信号を組み合わせた処理をすることで、両ビームの位相差に影響されない安定な振幅情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的な分解能を要する光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡の分解能を向上させる技術として共焦点走査型顕微鏡がある(非特許文献1)。その光学系には反射型と透過型があるが、光学系の分かりやすい透過型を用いて説明する。図3は透過型光学系の概略図である。光源101からの光をピンホール205に照射し、点光源を得る。現実には有限の大きさのピンホールを使用するので、点光源に近い状態の光源を得ることになる。ピンホールからの光を対物レンズ201により202の観察物体上に絞り込む。ボイスコイル等による走査機構102により観察物体202は3次元方向に走査可能となっている。観察物体を透過した光は対物レンズ203を透過し、204のピンホール上に絞り込まれる。ピンホール204の透過光は光検出器103で検出され、観察物体の走査位置に対応させた画像表示を行う表示装置104でその信号は表示される。共焦点走査型顕微鏡の横方向の分解能は204のピンホールに依存することが分かっている。ピンホールの大きさを小さくすると分解能が良くなる。逆に大きくすると分解能が悪くなり、観察物体の広い範囲を照明し、対物レンズを透過した観察物体からの光により像形成を行う、走査型ではない従来の光学顕微鏡の分解能に近づく。図4に上記従来の光学顕微鏡とピンホールの大きさが極限まで小さいときの共焦点走査型顕微鏡の点像分布関数を示す。横軸vは規格化光学単位で表わされており、v = 2π・x・NA/λと定義される。ここに、NAは対物レンズ201および203の開口数を表わし、両レンズは同じNAを有するものとした。また、xは光軸に対して垂直な方向、すなわち横方向の座標、λは光の波長を表わす。共焦点走査型光学顕微鏡の点像分布関数131の方が従来型の光学顕微鏡の点像分布関数130より分布が狭くなっており、分解能が向上していることが分かる。
【0003】
共焦点走査型光学顕微鏡ではピンホールを小さくすることで分解能を向上させることが可能であるが、検出光量が減少するので、信号雑音比が悪化する。この問題に対処する方法として、光の干渉効果を使用する方式が非特許文献2に記載されている。その方式に基づいた光学系の概略を図5に示す。レーザ光源101から出射したレーザ光をコリメータレンズ206で平行光に変換し、ビームスプリッタ207で反射する。対物レンズ201に入射したレーザ光は走査機構102で走査可能となっている202の観察物体上に絞り込まれ、反射光されたレーザ光が対物レンズ201に戻る。反射されたレーザ光はビームスプリッタ207を透過後、ビームスプリッタ208で二つのビームに分割される。ビームスプリッタを透過したビームは反射鏡211で反射され位相補償板212を透過し、ビームスプリッタ213に入射する。ビームスプリッタ208で反射されたもう一方のビームは二つの凸レンズ209と210で像が光軸に対して反転され、反射鏡216で反射された後、ビームスプリッタ213に入射する。
【0004】
ビームスプリッタ213には2方向からビーム251と252が入射し、それぞれのビームは反射光と透過光に分かれて出射することになる。すなわち、干渉光が2方向に出射し、それぞれ集光レンズ214と215で105と106の検出器上に絞られる。検出器上には検出器領域を制限するピンホール217と218がそれぞれ配置されている。ここで、ビーム252がビームスプリッタ213を透過したときの位相をθ1、反射光の位相をθ2、ビーム252の透過光の位相をφ1、反射光の位相をφ2とする。このとき、位相間にはθ2−φ1=θ1−φ2+πの関係がある。ビーム251と252の間に位相差がないとし、その位相を0度としたとき(θ1=φ1=0)、ビームスプリッタの材質を選ぶことでθ2=π、φ2=0とすることができる。このような状態で位相補償板212を調整することで、光検出器105と106に入射するそれぞれの干渉光のうち一方はコンストラクティブな状態に、他方はデストラクティブな状態にすることが可能である。この両者の差分をとることにより、干渉光成分のみを得ることができ、この信号を用いることで高分解能な画像を得ることができる。ピンホールの大きさは共焦点走査顕微鏡ほど小さくしないので、光量の減少が少ないのがメリットなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C. J. R. Sheppard and A. Choudhury, "Image Formation in theScanning Microscope," Opt. Acta, Vol. 24, 1051-1073 (1977)
【非特許文献2】K. Wicker and R. Heintzmann, “Interferometric Resolution Improvement for Confocal Microscopes,” Optics Express, Vol. 15, No. 19, 12206-12216 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示した方式では2本のビームを干渉させ、干渉信号を得ている。一般的に干渉光学系では、光路中の空気に揺らぎが生ずると、二つのビーム間に位相差が発生し、干渉状態が変化する。また、光学系を小型にする場合は、熱を発生する光源をその他の光学素子に近接して配置する必要がある。このため光学素子は熱の影響を受けやすくなり、干渉状態が変化してしまう。このような干渉状態の変化が生じるので、安定的な信号を得るのが難しい。図5に示す光学系でも同様に、光路差を一定に保って、二つの検出器に入射する干渉項の状態をコンストラクティブとデストラクティブな状態にしておくことは非常に難しい。即ち、画像をとっている間にコンストラクティブとデストラクティブな状態が変化する可能性があり、正確な観測が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、偏光状態の異なる二つのビームを干渉させ、振幅の分離ができる光学系を採用する。
【0008】
本発明は、物体への集光光学系と、物体からの反射光、透過光、あるいは蛍光などの応答光を二つに分割する分割光学系と、二つに分割された応答光を異なる偏光状態にする偏光光学素子と、一方の応答光の光路に設置された像反転光学系と、二つの応答光を重ね合わせる素子と、重ね合わせた合成応答光を複数に分割する光学素子と、それぞれ分割された合成応答光の光路に設置された異なる偏光フィルターと、分割された合成応答光をそれぞれ検出する検出器と、それぞれの検出器からの信号を処理することで振幅情報または/及び振幅情報を算出する電子回路とから実現される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、温度の影響による光路長の変化や空気の乱れによる屈折率変化で生じた干渉光における二つの光路の位相差の影響を排除することができ、安定的な高分解能の信号出力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光学系の一例を示す図。
【図2】本発明による光ピックアップ装置の光学系の一例を示す図。
【図3】透過型共焦点走査顕微鏡の光学系を示す図。
【図4】従来型の光学顕微鏡と共焦点走査型顕微鏡の点像分布関数を示す図。
【図5】非特許文献2に基づく光学系を示す図。
【図6】従来型の光学顕微鏡と共焦点走査型顕微鏡、本特許に基づく点像分布関数を示す図。
【図7】光ディスクに適用したときに使用する信号処理を示す図。
【図8】本発明による光学系の一例を示す図。
【図9】無偏光回折格子を示す図。
【図10】無偏光回折格子を示す図。
【図11】4分割直線偏光子とそれぞれの光学軸を示す図。
【図12】4分割検出器の一例を示す図。
【図13】検出器前にピンホールを付加した本特許に基づく光学系の一例を示す図。
【図14】遮光板とピンホールとを併用した本特許に基づく光学系の一例を示す図。
【図15】遮光板の形状を示す図。
【図16】本発明による光学系の一例を示す図。
【図17】本発明による蛍光を検出する光学系の一例を示す図。
【図18】本発明による蛍光を検出する光学系の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光学装置を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に、本発明の光学系に基づく走査型光学顕微鏡を示す。101はレーザ光源であり、s偏光の出射光をコリメータレンズ206で平行光に変換する。レーザ光源の出射光はコヒーレンス長が略5mm以上のものを使用しており、光路長差があっても干渉が起こりやすくしてある。これにより光路長の調整が不要になる。もし、コヒーレンス長の短いレーザ光源を使用した場合は、位相補償板等が必要になる。207は偏光性のビームスプリッタであり、s偏光を反射し、p偏光を透過するものとする。101の光源からの出射光の偏光方向はs偏光であるので、207のビームスプリッタで反射され、λ/4板225で円偏光に変換される。その後、対物レンズ201により202の観察物体上に絞り込まれる。観察物体は走査機構102で走査できるようになっている。本実施例では、光学系の複雑さを避けるために、観察物体そのものを走査する方式を採用しているが、これに限定されるものではなく、集光スポットを走査する方式でもよい。また、ここでは観察物体からの反射光を検出する顕微鏡で説明するが、観察物体を透過する方式でもよい。観察物体からの反射光は、対物レンズ201に戻り、225のλ/4板を透過することでp偏光になる。このp偏光の光はビームスプリッタ207を透過し、ハーフビームスプリッタ208で2分割される。
【0013】
ハーフビームスプリッタ208で反射された光は光学軸が45度傾いたλ/2板220でp偏光の光になる。その後、同じ焦点距離の2枚の凸レンズ209と210により像反転が行われ、反射鏡216で反射された光はハーフビームスプリッタ213に入射する。ハーフビームスプリッタ208を透過したもう一方の光は反射鏡211で反射され、s偏光のままハーフビームスプリッタ213に入射する。ハーフビームスプリッタ213には偏光方向の異なる光が両方向から入射し、それぞれの光は2方向に分割され、2方向に干渉光が出射する。紙面上でハーフビームスプリッタ213の右方向に出射してくる干渉光には光学軸が22.5度傾いた221のλ/2板が設置されており、集光レンズ215で焦点位置に置かれた検出器上に集光される。検出器前の光路中には偏光ビームスプリッタ223が設置されており、s方向とp方向の成分に分解されて検出器106と検出器108で検出される。ここで、観察物体を光軸上にある点物体とする。観察物体からの反射光の複素振幅をAとし、検出器106と検出器108の差動信号をIcとしたとき、Ic=α|A|2 cos(θ)と表わされる。αは信号増幅や検出器効率等を含む係数であり、θは観察物体からの反射光を2分割した後に発生したビーム間の位相差である。また、紙面上でハーフビームスプリッタ213の上方向に出射する干渉光には光学軸が45度傾いたλ/4板222が挿入されている。集光レンズ214で集光された干渉光は検出器105および107で検出される。途中に設置されている偏光ビームスプリッタ224によりs偏光とp偏光に分離されている。ここで検出器105と107の差動信号をIsとしたとき、Is=α|A|2 sin(θ)のように表わされる。IcおよびIsには干渉成分のみが検出されている。演算装置109では数式I=√(Ic+Is)=α|A|2の計算を行う。Iは観察物体の反射光の強度のみに比例した変数となり、ビーム間の位相差には影響されなくなる。110は表示装置であり、観察物体202の走査位置と表示位置の対応をつけた表示がなされる。本実施例では4つの検出器からの信号を使用するタイプを示したが、4個の検出器のうち3個を使用して干渉成分を算出することは可能であるが、この場合はマイクロコンピュータ等の計算機を使用した方がよい。
【0014】
光学系の倍率をMとし、観察物体として点物体が光軸から距離a離れたところにあるとしたとき、それぞれの4つの検出器上では光軸からMa離れた位置に点像分布が光軸を中心として2個対称に形成される。対称位置に2個点像分布が形成されるのは、2枚の凸レンズ209と210による像反転の効果によるものである。中心位置がMxにある通常光学系の振幅点像分布をA(Ma)とし、中心位置が−Maにある振幅点像分布をA(−Ma)としたとき、出力信号I(a)はI(a)=α|A(a)||∬A(Ma)A(−Ma)dxdy|のように表わされる。面積分は検出器上で行われ、この積分の効果により、分解能が向上する。図6に点像分布関数を示す。横軸は規格化された光学単位で示されている。130の分布が通常の光学系の点像分布関数|A(v)|である。本特許の光学系では132の破線のように分布が狭くなり、共焦点走査型顕微鏡(131の実線)よりも分解能が優れていることが分かる。また、共焦点走査顕微鏡のように検出器前にピンホールを使用しないので、光量の大幅な減少は避けられる。したがって、信号雑音比の良い状態の信号を得ることができる。さらに、得られる信号には干渉させるビームの位相差が除去されているので、両ビームの位相差の影響は現れないので、位相差が変動しても誤差の少ない安定した画像信号が得られる。
【実施例2】
【0015】
図2に本特許の光学系を使用した光ディスク装置のピックアップ光学系を示す。本実施例の図面中の番号で図1と同じものは同じ機能を有する。レーザ光源101からのレーザ光はコリメータされた後、対物レンズ201で光ディスク226上に集光される。光ディスクは回転体に固定されており、回転可能となっている。光ディスクからの反射光はハーフビームスプリッタ227に向かい、二つに分割される。ビームスプリッタ208に向かう透過した光はデータ信号生成のために使用される。ビームスプリッタ208で分割された後の光学系は図1のものと同じであり、高分解能の信号が演算装置109で生成される。この信号は112の電子回路で処理され、データ信号となる。図7において電子回路112での信号処理の概略を説明する。711から714までの回路はデータを光ディスク226に記録するためのものである。図2に示した112の電子回路以外の光学系は60の部分に相当する。711は誤り訂正用符号化回路であり、データに誤り訂正符号が付加される。712は記録符号化回路であり、1−7PP方式でデータを変調する。713は記録補償回路であり、マーク長に適した書込みのためのパルスを発生する。発生したパルス列に基づき、半導体レーザ駆動回路714により、図2のレーザ光源101を駆動し、対物レンズから出射したレーザ光80を変調する。モータ502によって回転駆動される光ディスク501上にはレーザ光により反射率が異なるマーク形成される。
【0016】
721から726の回路はデータの読み出しのためのものである。高分解能のデータ信号がイコライザー721に入力され、最短マーク長付近の信号雑音比が改善される。この信号は722のPLL回路に入力され、クロックが抽出される。また、イコライザーで処理されたデータ信号は抽出されたクロックのタイミングで723のA−D変換器でデジタル化される。724はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理回路であり、ビタビ復号を行う。記録復号化回路725では1−7PP方式の変調規則に基づき復号化し、誤り訂正回路726でデータを復元する。
【0017】
図2のハーフビームスプリッタ227で反射された光は制御信号生成光学系228で処理され、トラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号が生成される。これらの信号は対物レンズの位置制御を行うアクチュエータ111にフィードバックされ、照射レーザ光のディスク上での位置制御が行われる。
【実施例3】
【0018】
図8に実施例1と異なる偏光を使用する実施例を示す。レーザ光源101からハーフビームスプリッタ229まで光学系は同じである。ハーフビームスプリッタ229を反射した反射光はλ/4板230により右円偏光に変換され、2枚の凸レンズ209と210により像反転が行われる。この反射光は反射鏡216で反射され、円偏光ビームスプリッタ232に入射する。他方、ハーフビームスプリッタ229を透過した透過光は反射鏡211で反射され、λ/4板231で左円偏光に変換される。左円偏光状態の光は円偏光ビームスプリッタ232を透過し、右円偏光状態の光と干渉することになる。重ね合わされた右偏光と左偏光状態の光は無偏光回折格子233と234を透過する。図9及び図10には無偏光回折格子233と234の溝の方向を示す。両者は溝の方向が直交しているので、±1次以上の高次の回折光の回折面は直交している。無偏光回折格子223と234の0次光回折光は発生せず、同光量の±1次光の強度が大きくなるように、回折格子の溝の深さが設定されている。また、溝のピッチは後述の検出器に入射するように設計されている。無偏光回折格子を透過した光は図8の集光レンズ215で4分割検出器113上に4分割されて集光される。ビームが4本形成されるのは、1本のビームを±1次光の2本に分ける作用がある無偏光回折格子を回折面の方向が異なるように2枚重ねた効果によるものである。検出器の前には4分割直線偏光子235が設置されており、それぞれの直線偏光子245、241、243、245の光学軸方向は図11に示すように0度、45度、90度、−45度である。4本に分割されたビームがそれぞれの直線偏光子を通過し、検出器113の4分割検出器で検出される。図12に4分割検出器113の検出器の面形状を示す。検出器124には直線偏光子245を透過した光が入射し、検出器121には直線偏光子241、検出器123には直線偏光子243、検出器122には直線偏光子242を透過した光がそれぞれ入射する。検出器の中央に示した黒丸は光の集光状態を示している。検出器124と123の出力の差動信号をIcとしたとき、Ic=α|A|2 cos(θ)となり、また検出器121と122の差動信号をIsとしたとき、Is=α|A|2 sin(θ)のように表わされる。したがって、実施例1と同様に、109の電子回路においてI=√(Ic+Is)=α|A|2の計算を行うことにより高分解能の強度信号を得ることが可能となる。この高分解の強度信号を表示装置110に画像として表示する。
【実施例4】
【0019】
これまでに示した実施例の光学系では光軸方向の分解能がない。すなわち、観察物体として、たとえば反射鏡を置いたとしたとき、これを光軸方向に動かしても検出器の出力は、絞りの周辺で遮られることによる光量の減少、あるいは検出器外へのビームのはみ出し等が大きくならない限り変化しない。これは二つの干渉ビームが光軸方向の反射鏡の動きに対して同じ応答をするので、干渉効果を検出する前出の実施例の信号に影響を及ぼさないためである。
【0020】
光軸方向の分解能を得るために、図13に示すごとく、光検出器105、106、107、108の検出領域をピンホール238、236、239、237により制限する。ピンホールのサイズは集光レンズでビームを絞り込んだときのエアリディスク(Airy Disk)程度の大きさとする。これにより、反射鏡が光軸方向に焦点位置から外れたとき、ピンホールにより広がったビームの一部を検出することになるので検出光量が減少し、光軸方向の分解能が発生する。ピンホールを小さくし過ぎると、光学特性が共焦点走査型顕微鏡に近づいてしまい、本特許の高分解能でありかつ検出光量の減少が少ないというメリットが失われるので注意する必要がある。
【0021】
本実施例のピンホールは図1の実施例に対して挿入する場合を提示したが、実施例2、3等にも適用できるものであり、これだけに限定されるものではない。
【実施例5】
【0022】
さらに分解能を向上する方法として、遮光板を光路中に配置する実施例を図14に示す。本実施例ではピンホールを挿入した実施例4の光学系に遮光板250が挿入されている。観察物体からの反射光を干渉のために二つに分けるビームスプリッタ208の入射直前に設置した。遮光板250の形状を図15に示す。251は観察物体からの反射光のビーム形状とし、ビームの中心部を遮光するように遮光領域252が配置されている。これによりビームの周辺領域のみの光が干渉に関与することになり、分解能がさらに向上する。遮光領域の半径を大きくすると分解能が向上するが、逆に検出光量が低下するので信号雑音比が低下する。本実施例では遮光領域の直径はビーム径の8割程度に留めておくのがよく、この程度でも分解能は向上する。図15に示した遮光領域は円形状にマスク等を使用してガラス板にクロムを蒸着することで作製される。
【0023】
遮光板の設置位置は図14のビームスプリッタ213を透過した後の光路でもよい。この場合は、たとえばλ/2板221およびλ/4板222の直前に置くことも可能である。また、本実施例ではピンホールと遮光板の両方を設置することにしたが、遮光板だけを設置するだけでも更に横方向の分解能は向上する。
【0024】
更に遮光板の設置位置は観察物体への照射光の光路中に挿入してもいい。この場合は206のコリメータレンズの直後に置くことになる。
【0025】
更に遮光板の設置位置は観察物体への照射光と観察物体からの反射光の両方の光路中設置してもよい。この場合はビームスプリッタ207と対物レンズ201の間に設置することになる。
【実施例6】
【0026】
図16に示す実施例では実施例1の像反転のために使用した2枚の凸レンズ209と210を1枚にして、光学系を簡略化している。レーザ光源101からのレーザ光がコリメートされ、観察物体202からの反射光が偏光ビームスプリッタ207を透過するまでは実施例1と同じである。偏光ビームスプリッタ220と透過したp偏光状態の光は220のλ/2板で偏光方向が45度の直線偏光に変えられる。この光は偏光ビームスプリッタ208で二つに分けられ、p偏光状態の光が透過し、s偏光状態の光が反射される。透過光はλ/4板246で円偏光に変えられ、反射板216で反射される。λ/4板246透過後はs偏光状態になり、偏光ビームスプリッタ208に戻る。他方、偏光ビームスプリッタ208で反射されたs偏光状態の光はλ/4板247を透過して円偏光となり、凸レンズ209により焦点面に置かれた反射鏡211を照射する。照射光は反射鏡211で反射され、凸レンズ209に戻り、λ/4板247によりp偏光状態の光となる。こちらの光は反射鏡216で反射された光とは異なり像反転が生じている。λ/4板246を透過した光はs偏光状態、λ/4板247を透過した光はp偏光状態であるので、偏光ビームスプリッタ208により両ビームは重ね合わされて、ビームスプリッタ213に向かう。ビームスプリッタ213で二つに分けられ、それぞれ波長板と集光レンズを透過後、偏光ビームスプリッタで二つに分けられる。これらの4つの検出器の信号を使用して、高分解能な観察画像を表示装置110に表示するのは実施例1と同様である。
【実施例7】
【0027】
観察物体が照射光により蛍光を発する場合は、蛍光像による観察が可能となる。しかし、照射励起光の偏光方向がある一つの偏光状態であっても、発生した蛍光の偏光状態はランダムとなる場合が多い。高分解能の性能を得るためには、偏光状態を選択し、その状態を二つに分けて干渉させる必要がある。図17に示した実施例では、実施例1の光学系においてショートカットフィルタ264と偏光子265、位相補償板267を付加し、偏光子265によりs偏光の蛍光だけを使用するようになっている。101はレーザ光源であり、出射光は観察物体202を照射し、蛍光を発生させる。ショートカットフィルタ264を透過した後は、励起光は遮断され、励起光より波長の長い蛍光だけが偏光子265に向かう。265の偏光子でs偏光の蛍光だけがビームスプリッタ208に入射する。ここで二つのビームに分割され、反射光は220のλ/2板でp偏光に変換される。その後、凸レンズ209と210により像反転され、ビームスプリッタ213に向かう。ビームスプリッタ208を透過した蛍光は位相補償板267を透過し、ビームスプリッタ213に向かう。ビームスプリッタ213に入った二つの光はその後の4つの検出器で検出され、表示装置110で画像表示される。
【0028】
図18では、観察物体からの蛍光の偏光状態を互いに直交する偏光状態に分けてから、干渉の処理を行う方式を示す。それぞれの蛍光の偏光状態に対してそれぞれ同じ光学処理をする必要があるので、同じ光学系を2系列設置している。
【0029】
図18において、半導体レーザ101からの出射光がビームスプリッタ207で反射された後、観察物体を照射励起し、蛍光を発生させる。発生した蛍光はビームスプリッタ207を透過し、ショートカットフィルタ264で励起光が取り除かれる。260は偏光ビームスプリッタであり、入射蛍光が透過光のp偏光、反射光のs偏光に分岐される。それぞれの偏光に対して更に261あるいは208のビームスプリッタで二つに分け、実施例1と同様な干渉を起こさせる。コヒーレンス長の短い蛍光の干渉は光路差を一致させる必要があり、これは位相補償板263あるいは262を使用して行う。それぞれの偏光方向に対してそれぞれの110の表示装置で画像表示可能であるが、両偏光の画像を加え合わせる等の処理をしたものの表示も表示装置114で可能である。
【0030】
図18の実施例では、ビームスプリッタ260で蛍光を二つの直線偏光状態に分けたが、二つの円偏光状態に分けることも可能である。この場合は、図8で示した実施例の干渉光学系をそれぞれの円偏光状態に適用することになる。ただし、この場合も位相補償板は蛍光のコヒーレンス長が短いので必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、高分解能な画像を取得する装置に適用できるだけでなく、高密度な光ディスクを読み出す光ピックアップに適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
101:半導体レーザ、201:対物レンズ、202:観察物体、207:偏光ビームスプリッタ、208:ビームスプリッタ、209:凸レンズ、210:凸レンズ、213:ビームスプリッタ、220:λ/2板、221:λ/2板、222:λ/4板、223:偏光ビームスプリッタ、224:偏光ビームスプリッタ、105:光検出器、106:光検出器、107:光検出器、108:光検出器、109:演算装置、110:表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を物体へ集光する集光光学系と、
前記物体から検出された応答光を二つに分割する分割光学系と、
前記二つに分割された応答光を異なる偏光状態にする偏光光学素子と、
前記二つに分割された応答光のうち、一方の応答光の光路に設置された像反転光学系と、
前記像反転光学系で像反転された応答光と、他の応答光を重ね合わせ、合成応答光を生成する素子と、
前記合成応答光を複数に分割する光学素子と、
前記複数に分割された合成応答光の光路に、それぞれ設置された異なる偏光フィルターと、
前記複数に分割された合成応答光をそれぞれ検出する検出器と、
それぞれの検出器からの信号を処理することで振幅情報及び/又は位相情報を算出する回路と
を有することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記二つに分割された応答光の偏光状態が、s偏光とp偏光であることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記二つに分割された応答光の偏光状態が、右円偏光と左円偏光であることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項4】
前記検出器前に集光された光スポットのAiryのDiskの大きさと略同等の大きさのピンホールを設置したことを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項5】
前記応答光の光路中に中心部分を遮光する遮光板を設けることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項6】
前記光源のコヒーレンス長が略5mm以上であることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項7】
前記像反転光学系は、1枚のレンズと反射鏡により構成されることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項8】
前記応答光は蛍光であり、前記応答光の光路中に、所定の偏光状態を選択する偏光子を設けることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項9】
前記応答光は蛍光であり、前記物体からの前記蛍光の偏光状態を互いに直交する偏光状態に分割する手段を更に有し、
前記分割された偏光状態それぞれについて、少なくとも、前記分割光学系、前記偏光光学素子、前記像反転光学系、前記合成応答光を生成する素子、前記分割する光学素子、前記偏光フィルター、前記検出器を有することを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項10】
光源と
前記光源からの光を観察物体へ集光する集光光学系と、
観察物体からの応答光を二つに分割する分割光学系と、
前記二つに分割された応答光を異なる偏光状態にする偏光光学素子と、
前記二つに分割された応答光のうち、一方の応答光の光路に設置された像反転光学系と、
前記像反転光学系で像反転された応答光と、他の応答光を重ね合わせ、合成応答光を生成する素子と、
前記合成応答光を複数に分割する光学素子と、
前記複数に分割された合成応答光の光路に、それぞれ設置された異なる偏光フィルターと、
前記複数に分割された合成応答光をそれぞれ検出する検出器と、
それぞれの前記検出器からの信号を処理することで振幅情報及び/又は位相情報を算出する回路と
前記回路からの出力を表示する表示装置と
を有することを特徴とする光学装置。
【請求項11】
光源と
前記光源からの光を光ディスクへ集光する集光光学系と、
光ディスクからの反射光を二つに分割する分割光学系と、
二つに分割された反射光を異なる偏光状態にする偏光光学素子と、
前記二つに分割された反射光のうち、一方の反射光の光路に設置された像反転光学系と、
前記像反転光学系で像反転された反射光と、他の反射光を重ね合わせ、合成光を生成する素子と、
前記合成光を複数に分割する光学素子と、
前記複数に分割された合成光の光路に、それぞれ設置された異なる偏光フィルターと、
前記複数に分割された合成光をそれぞれ検出する検出器と、
それぞれの前記検出器からの信号を処理する信号処理回路と、
制御信号生成光学系と、
前記制御信号生成光学系から出力されるトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号で前記光ディスクへの集光照射光位置を制御する制御機構と
を有することを特徴とする光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−150301(P2012−150301A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9361(P2011−9361)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】