説明

光学装置

【課題】光路上に配置した複数のミラーのうち角度ズレを生じたミラーを容易に特定できる光学装置を提供することを課題とする。
【解決手段】実施形態に係る光学装置は、光路上に配置した複数のミラーと、各ミラーを保持した複数のミラーホルダーと、各ミラーホルダーに設けられた反射面と、を有する。各反射面は、光路と直交する面に沿って各ミラーホルダーに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のミラーを光路上に配置した光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数のミラーを光路上に配置した光学装置として、航空機に搭載されたタレットに組み込まれた、複数の反射ミラーを組み合わせた光学系機器が知られている。タレットは、この光学系機器の複数の反射ミラーを介して、目標物へ光を照射または目標物からの光を受光する。
【0003】
また、この種の光学装置として、クーデ式望遠鏡に組み込まれた光学装置なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−240309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、光路上に複数のミラーを配置した光学装置において、例えば、周辺温度の変化などにより、ある特定のミラーホルダーまたはその固定物に熱的な歪みを生じると、光の反射方向に角度ズレを生じる。例えば、上述したタレットの光学系機器において、いずれかの反射ミラーを保持したミラーホルダーに歪みを生じると、目標物に正確に光を照射することができなくなる。
【0006】
しかし、このような場合、この光学装置を介して射出される光の角度ズレを検出するだけでは、どのミラーホルダーに角度ズレを生じたか分からない。
【0007】
よって、光路上に配置した複数のミラーのうち角度ズレを生じたミラーを容易に特定できる光学装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る光学装置は、光路上に配置した複数のミラーと、各ミラーを保持した複数のミラーホルダーと、各ミラーホルダーに設けられた複数の反射面と、を有する。各反射面は、光路と直交する面に沿って各ミラーホルダーに取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係る光学装置を示す概略図である。
【図2】図2は、図1の光学装置に組み込まれた第1の実施形態に係るミラーホルダーを示す外観斜視図である。
【図3】図3は、第2の実施形態に係るミラーホルダーを示す外観斜視図である。
【図4】図4は、図1の光学装置におけるミラーホルダーの角度ズレ検出方法を説明するための概略図である。
【図5】図5は、第3の実施形態に係るミラーホルダーを示す外観斜視図である。
【図6】図6は、第4の実施形態に係るミラーホルダーを示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る光学装置10を示す概略図である。図2は、この光学装置10に組み込まれた第1の実施形態に係るミラーホルダー2を示す外観斜視図である。図1の光学装置10は、光路Lに沿って互いに離間して配置された複数(本実施形態では4つ)のミラー1a、1b、1c、1dを備えている。言い換えると、これら4つのミラー1a、1b、1c、1dは、協働して光路Lを形成している。
【0011】
各ミラー1a、1b、1c、1d(ここでは、総称してミラー1と称する場合もある)は、それぞれ、ミラーホルダー2a、2b、2c、2d(ここでは、総称してミラーホルダー2と称する場合もある)によって、所定の取付角度で保持されている。なお、これら4つのミラー1a、1b、1c、1dは、光の取り出し方向に沿って徐々に面積が大きくされている。これにより、反射する光が拡散光である場合にも、光を確実に反射して伝えることができる。
【0012】
図1の例で説明すると、光源4から図中上方に射出された光は、光の取り出し方向に沿って最も上流側に配置された第1のミラー1aで図中右方に略直角に反射され、この第1のミラー1aで反射された光は、光路L上に配置された第2のミラー1bで図中上方に略直角に反射され、この第2のミラー1bで反射された光は、光路L上に配置された第3のミラー1cで図中左方に略直角に反射され、この第3のミラー1cで反射された光は、光路L上に配置された第4のミラー1dで図中上方に略直角に反射され、所望の光軸Rを有する光が射出される。
【0013】
図2に示すように、ミラーホルダー2は、ミラー1で反射された反射光の光軸Rと直交する面(図2の座標軸x、yを含むxy平面)に沿って配置された反射面3を有する。図3に、第2の実施形態に係るミラーホルダー12を示すように、反射光の光軸Rと直交する反射面3は、ミラー1の周辺でミラーホルダー12のどこに取り付けても良い。第1の実施形態では、ミラー1を取り付けた面に連続してミラー1を間に挟む位置に2つの反射面3を取り付けた。また、第2の実施形態では、ミラーホルダー12を図示しない筐体に固設する脚部12aに反射面3を取り付けた。
【0014】
上記構造の光学装置10において、ミラー1a、1b、1c、1dの角度ズレを検出する場合、図4に示すように、光学装置10の光の取り出し側(光源4と反対側)にオートコリメータ5(検出部)を配置し、ミラーホルダー2の反射面3の垂直度を検出する。図4では、光の取り出し方向の最も上流側に配置したミラーホルダー2aの反射面3を検出する状態を図示してある。
【0015】
この図示の例では、当該反射面3がオートコリメータ5の光源5aから射出された光の光軸Iと直交しているため、当該反射面3で反射された光は角度ズレを含まずに真っ直ぐにオートコリメータ5に戻されている。オートコリメータ5に戻された光は、ハーフミラー6で反射されてカメラ7に入射される。この場合(ミラー1aに角度ズレを生じていない場合)、例えば、オートコリメータ5の光源5aから断面十字形の光を射出して、反射面3で反射された光をカメラ7で撮像すると、十字形の光が観察される。
【0016】
しかし、例えば、当該反射面3を備えたミラーホルダー2aに熱による歪みを生じている場合、当該反射面3が僅かに傾斜され、反射光の十字形の像が元の位置に対してずれる。つまり、光源5aからの光と反射面3で反射された光の重なり具合を見て反射面3の傾きを検出することで、ミラーホルダー2aの角度ズレ、すなわちミラー1aの角度ズレを検出することができる。なお、他のミラーホルダー2b、2c、2dについても、同様に、反射面3に十字形の光を当てて反射した十字形の光の位置を検出することで、角度ズレを検出することができる。
【0017】
以上のように、上述した実施形態によると、ミラーホルダー2の反射面3に光を当ててその反射光を検出することでミラーホルダー2の角度ズレ、すなわちミラー1の角度ズレを検出することができる。
【0018】
しかし、上述した実施形態の光学装置10のように、1つの光路L上に複数のミラー1a、1b、1c、1dを備えている場合、どのミラーに角度ズレを生じているのか容易に判断し辛い。上述した実施形態のように光を反射するミラー1の数が比較的少ない場合には、遮光板などを適宜用いて角度ズレを生じているミラーを特定することは比較的容易であるが、ミラー1の数が多くなると、上述した実施形態の方法だと、角度ズレを生じているミラー1を特定するのが難しくなる。
【0019】
図5には、第3の実施形態に係るミラーホルダー22の外観斜視図を示してある。このミラーホルダー22は、比較的幅広の反射面3’を備えた点で、上述した第1の実施形態のミラーホルダー2と構造が異なる。
【0020】
つまり、光学装置10の光路L上に配置した各ミラーホルダー2の反射面3の面積(本実施形態では幅)を図5の実施形態の反射面3’のように異ならせることで、反射光の強さを異ならせて、角度ズレを生じているミラーホルダー2(ミラー1)を特定し易くできる。
【0021】
例えば、光路Lに沿って配置された4つのミラーホルダー2a、2b、2c、2dそれぞれの反射面3(3’)の面積を、光の取り出し方向に沿って徐々に大きくする(図1、4参照)。この場合、最も上流側のミラーホルダー2aに取り付けられた反射面3で反射された光の強度が最も弱く、最も下流側のミラーホルダー2dに取り付けられた反射面3で反射された光の強度が最も強くなる。このように、反射光の強度の違いを検出することで、角度ズレを生じているミラー1を特定することができる。
【0022】
図6には、第4の実施形態に係るミラーホルダー31、32、33の外観斜視図を示してある。ここでは、3つのミラーホルダーを例示してあるが、光学装置10には、光路L上に配置したミラー1の数と同じ数のミラーホルダーが組み込まれている。
【0023】
図6(a)のミラーホルダー31は、上述した第1の実施形態のミラーホルダー2と同じ構造を有する。つまり、このミラーホルダー31に取り付けられた反射面31aは、理想的には、オートコリメータ5の光源5aから射出された光の光軸Iと直交する。このため、この反射面31aで反射された光の光軸rは、ミラー1で反射された光の光軸Rと平行になっている。
【0024】
これに対し、図6(b)、図6(c)のミラーホルダー32、33は、それぞれ、角度を僅かに異ならせた反射面32a、33aを備えている。このため、図6(b)のミラーホルダー32の反射面32aで反射された光の光軸r’、および図6(c)のミラーホルダー33の反射面33aで反射された光の光軸r”は、ぞれぞれ、上述した光軸rと平行にならない。つまり、これら複数のミラーホルダー31、32、33は、互いに僅かに異なる角度で配置された反射面31a、32a、33aを有し、オートコリメータ5から発した十字形の反射光がそれぞれ異なる位置に観察されることになる。
【0025】
このため、オートコリメータ5に接続されたカメラ7でそれぞれの反射面31a、32a、33aで反射された反射光を撮像すると、光源5aからの像に対して、それぞれ異なる位置に像が見えることになる。このため、角度ズレを生じていない状態で、予め各反射面31a、32a、33aの像の位置を記録しておき、実際の像の位置と比較することで、角度ズレを検出できると同時に角度ズレを生じているミラーホルダーを特定することができる。
【0026】
この他に、各ミラーホルダー2に取り付けた反射面3の粗さを変えてその反射率を異ならせて、角度ズレを生じたミラーホルダー2を特定するようにしても良い。また、各ミラーホルダー2に取り付けた反射面3の材質を異ならせて、互いに異なる波長の光を主に反射する反射特性を持たせることで、反射された光の波長から角度ズレを生じたミラーホルダー2を特定するようにしても良い。
【0027】
いずれにしても、上述した少なくともひとつの実施形態の光学装置10によれば、光路L上に配置した複数のミラーホルダー2が、それぞれ、互いに異なる光学特性を有する反射面3を持つことにより、角度ズレを生じたミラーホルダー2(ミラー1)を容易に特定することができる。
【0028】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…ミラー、2、12、22、31、32、33…ミラーホルダー、3、3’、31a、32a、33a…反射面、4…光源、5…オートコリメータ、5a…光源、6…ハーフミラー、7…カメラ、10…光学装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路上に配置した複数のミラーと、
上記複数のミラーをそれぞれ保持した複数のミラーホルダーと、
上記各ミラーホルダーにそれぞれ設けられた、上記光路と直交する面に沿った複数の反射面と、
を有する光学装置。
【請求項2】
上記複数のミラーホルダーそれぞれに設けられた上記反射面は、互いに異なる反射率を有する請求項1の光学装置。
【請求項3】
上記複数のミラーホルダーそれぞれに設けられた上記反射面は、互いに異なる面積を有する請求項1の光学装置。
【請求項4】
上記複数のミラーホルダーそれぞれに設けられた上記反射面は、互いに異なる波長の光を主に反射する反射特性を有する請求項1の光学装置。
【請求項5】
光路上に配置した複数のミラーと、
上記複数のミラーをそれぞれ保持した複数のミラーホルダーと、
上記各ミラーホルダーにそれぞれ設けられた複数の反射面と、を有し、
上記複数の反射面は、上記光路と直交する面に対して、互いに異なる角度で僅かに傾斜している光学装置。
【請求項6】
上記複数の反射面のいずれかで反射された光を受光して、当該反射面を備えたミラーホルダーが保持したミラーの角度ズレを検出する検出部をさらに有する請求項1の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61536(P2013−61536A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200669(P2011−200669)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】