光導波路および電子機器
【課題】伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路1はコア層13とその各面に設けられたクラッド層11、12とを有しており、コア層13には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。コア層13は、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有しており、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間がコア部141、142となる。なお、各極小値は、側面クラッド部における平均屈折率WA未満であり、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している。一方、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tは、いわゆるステップインデックス型になっている。
【解決手段】光導波路1はコア層13とその各面に設けられたクラッド層11、12とを有しており、コア層13には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。コア層13は、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有しており、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間がコア部141、142となる。なお、各極小値は、側面クラッド部における平均屈折率WA未満であり、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している。一方、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tは、いわゆるステップインデックス型になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ここで、光導波路としては、従来、一定の屈折率を有するコア部と、コア部より低い一定の屈折率を有するクラッド部とを有するステップインデックス型のものが一般的であったが、近年、屈折率が連続的に変化したグレーデッドインデックス型のものが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ポリマー基体中に屈折率調整剤を拡散させることにより、横断面において屈折率が同心円状に分布した光導波路が提案されている。このようなグレーデッドインデックス型の光導波路によれば、ステップインデックス型のものに比べ、伝送損失の低減が図られるとされている。
【0009】
ところが、最近では光導波路に対する大容量化の要求がますます強くなり、さらなる多チャンネル化および高密度化が求められている。多チャンネル化および高密度化が進むと、チャンネル(コア部)のピッチがより狭くなり、それに伴って、クロストーク(1つのチャンネルからの漏洩光が隣り合うチャンネルに混信すること)や、パルス信号の鈍り(パルス信号が広がること)といった新たな課題に直面している。
【0010】
なお、上述したような課題は、コア/クラッド間の屈折率差が小さい光導波路において、特に顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−276735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) コア部と、該コア部の両側面に隣接する側面クラッド部と、を備えるコア層と、
該コア層の両面にそれぞれ積層されたクラッド層と、を有する光導波路であって、
前記コア層の横断面の幅方向の屈折率分布Wは、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記側面クラッド部であり、
前記各極小値は、前記クラッド部における平均屈折率未満であり、かつ、前記屈折率分布全体で屈折率が連続的に変化しており、
前記光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tは、前記コア部に対応する領域および前記クラッド層に対応する領域のそれぞれで、屈折率がほぼ一定であり、かつ前記コア部と前記クラッド層との界面で屈折率が不連続的に変化していることを特徴とする光導波路。
【0014】
(2) 前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が前記コア部との界面近傍以外に位置している上記(1)に記載の光導波路。
【0015】
(3) 前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が該領域の中心部に位置しており、かつ、前記第2の極大値から前記極小値に向かって連続的に低下するよう屈折率が変化している上記(2)に記載の光導波路。
【0016】
(4) 前記極小値と前記側面クラッド部における平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0017】
(5) 前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差は、0.005〜0.07である上記(4)に記載の光導波路。
【0018】
(6) 前記横断面の幅方向の位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布Wは、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(7) 前記第1の極大値は、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでおり、
前記平坦部の長さは100μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0020】
(8) 前記屈折率分布Wにおいて、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率以上の値を有している部分の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率未満の値を有している幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0021】
(9) 前記屈折率分布Tにおける前記コア部と前記クラッド層との屈折率差は、前記屈折率分布Wにおける前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差より大きい上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路。
【0022】
(10) 前記コア層は、複数の前記コア部と、該各コア部の両側面にそれぞれ隣接する複数の前記側面クラッド部と、を有している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路。
【0023】
(11) 前記コア部および前記クラッド層を横切るように設けられた空孔を有し、該空孔の内面により、前記コア部を伝送される光を反射する反射面が構成されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光導波路。
【0024】
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、伝送損失およびパルス信号の鈍りが抑えられることで、大容量の光信号を入射しても信頼性の高い光通信を行うことが可能な光導波路が得られる。
【0026】
また、複数のコア部を形成して多チャンネル化した際に、クロストークを確実に抑制し得る光導波路が得られる。
また、このような光導波路を用いることにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。
【図4】図1に示すX−X線断面図のコア部を中心とする一部を切り出した図、および、X−X線断面図のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。
【図6】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図7】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図8】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図9】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図10】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図11】照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【図12】光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を測定する方法を説明するための図である。
【図13】実施例1、比較例1および比較例2で得られた光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
まず、本発明の光導波路について説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を示す図、図3は、図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0030】
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。
【0031】
以下、光導波路1の各部について詳述する。
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものである。
【0032】
(コア層)
このうち、コア層13の横断面には、幅方向において屈折率が偏りを有してなる屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、これにより入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
【0033】
図2(a)は、図1のX−X線断面図であり、図2(b)は、X−X線断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【0034】
コア層13は、その幅方向において、図2(b)に示すような、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0035】
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の大きい極大値Wm2およびWm4が存在しており、それ以外の極大値Wm1、Wm3およびWm5は、それぞれ相対的に屈折率の小さい極大値である。
【0036】
光導波路1では、図2に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間が、相対的に屈折率の大きい極大値Wm2を含んでいることからコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間も極大値Wm4を含んでいることからコア部14となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1と極小値Ws2との間をコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間をコア部142とする。
【0037】
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14を両側面に隣接する領域であることから側面クラッド部15となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1の左側の領域を側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間を側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側の領域を側面クラッド部153とする。
【0038】
すなわち、屈折率分布Wは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並ぶ領域を有していればよい。
【0039】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0040】
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
【0041】
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の各両側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
【0042】
より詳しくは、図1に示す光導波路1には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。ここで、これらのコア部141、142の屈折率は、当然、側面クラッド部151、152、153の屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
【0043】
光導波路1では、コア部14の一方の端部に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で反射させ、他方に伝搬させることにより、コア部14の他方の端部から取り出すことができる。
【0044】
また、図1に示すコア部14は、その横断面形状が正方形または長方形のような四角形(矩形)をなしているが、この形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0045】
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0046】
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、隣接する側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間に、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
【0047】
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0048】
さらに、上述したような各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
【0049】
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
【0050】
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理に伴う制約上、コア部14と側面クラッド部15との平均の屈折率差を十分に大きくすることができないが、本発明によれば、平均の屈折率差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
【0051】
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図2に示すようにコア部141、142に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、伝送光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0052】
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1と極小値Ws2の中点から両側に、コア部141の幅の30%の距離の領域である。
【0053】
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、できればコア部141、142の幅の中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0054】
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
【0055】
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図2(b)に示すように側面クラッド部151、152、153中に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
【0056】
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
【0057】
また、好ましくは、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かっては、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保され、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができることになるため、前述したコア部141、142からの伝送光の漏出をより確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも屈折率の小さいものであるので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、クロストークを抑制することができる。
【0059】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、隣接する側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜20%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0060】
また、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm1、Wm3、Wm5との差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm2、Wm4との差の6〜90%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましく、14〜40%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15における屈折率の高さとコア部14における屈折率の高さとのバランスが最適化され、光導波路1は、特に優れた光伝送性を有するとともにクロストークをより確実に抑制し得るものとなる。
【0061】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.03程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0062】
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0063】
また、屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍および極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
【0064】
ここで、本発明者は、光導波路1の複数のコア部141、142のうち、所望の1つの一方の端部に光を入射し、他方の端部における出射光の強度分布を取得したとき、その強度分布が、光導波路1のクロストークを抑制するにあたって極めて有用な分布になることを見出した。
【0065】
図3は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0066】
コア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、本発明の光導波路によれば、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致することで、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなるため、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止し得る光導波路1が得られる。
【0067】
なお、従来の光導波路では、光を入射するコア部に隣り合うコア部において出射光の強度分布が極小値をとることはなく、むしろ極大値をとっていたので、クロストークの問題が発生していた。これに対し、上述したような本発明の光導波路における出射光の強度分布の振る舞いは、クロストークを抑制する上で極めて有用なものである。
【0068】
本発明の光導波路においてこのような強度分布が得られる詳細な理由は明らかでないものの、理由の1つとしては、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有し、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な屈折率分布Wが、従来であればコア部142において極大値を有していた出射光の強度分布を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせていることが挙げられる。すなわち、このシフトにより、クロストークが確実に抑制されているのである。
【0069】
なお、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0070】
また、上記のような出射光の強度分布は、本発明の光導波路において観測される確率は高いものの、必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0071】
また、図2(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0072】
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
【0073】
また、各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5は、それぞれ前述したように上に凸の略U字状であってもよいが、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでいてもよい。屈折率分布Wが各極大値の頂部近傍においてこのような形状をなしていても、本発明の光導波路は前述したような作用・効果を奏するものとなる。ここで、屈折率が実質的に変化していない平坦部とは、屈折率の変動が0.001未満である領域であって、その両側では屈折率が連続的に低下している領域のことをいう。
【0074】
平坦部の長さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。
【0075】
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよく、未重合のモノマーを含んでいてもよい。
【0076】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0077】
(クラッド層)
クラッド層11および12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。
【0078】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
【0079】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0080】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0081】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0082】
ところで、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tは、前述した幅方向の屈折率分布Wとは異なる形状を有している。
【0083】
図4(a)は、図1に示すX−X線断面図のコア部を中心とする一部を切り出した図であり、図4(b)は、X−X線断面図のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図4(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に中心線C2上の位置をとったときの屈折率分布Tの一例を示す図である。
【0084】
前述したように、光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものであるが、その横断面のうち、コア部14を通る厚さ方向の屈折率分布Tは、コア部14に対応する領域(部分)T1および各クラッド層11、12に対応する領域(部分)T2において、それぞれ屈折率がほぼ一定である形状を有している。また、領域T1と領域T2との境界では、屈折率が不連続的に変化している。すなわち、屈折率分布Tは、ステップインデックス型の形状を有している。このような光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を積層するだけで得られるため、製造容易性が高いという利点がある。
【0085】
ここで、屈折率分布Tのうち、コア部14(領域T1)における平均屈折率n1と、クラッド層11およびクラッド層12(領域T2)における平均屈折率n2との屈折率差の割合(平均屈折率n2に対する割合)は、できるだけ大きいほどよいが、好ましくは0.5%以上とされ、より好ましくは0.8%以上とされる。なお、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝送する効果が低下する場合があり、一方、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0086】
なお、平均屈折率n1と平均屈折率n2との前記屈折率差の割合は、次式で表わされる。
屈折率差の割合(%)=|n1/n2−1|×100
【0087】
また、屈折率分布Tにおけるコア部14とクラッド層11、12との屈折率差、すなわちn1−n2は、前記屈折率差の割合の好ましい範囲に基づいて特定の範囲の値をとることになるが、より好ましくは、屈折率分布Wにおける極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と第1の極大値Wm2、Wm4との屈折率差より大きいことが好ましい。これにより、コア部14とクラッド層11、12との界面における反射が確実に生じる。その結果、光導波路1の厚さ方向での伝送損失が抑制され、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
【0088】
なお、n1−n2は、屈折率分布Wにおける極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と第1の極大値Wm2、Wm4との屈折率差より大きければよいが、好ましくは該屈折率差の100.5%以上、より好ましくは101%以上、さらに好ましくは102%以上とされる。これにより、厚さ方向における伝送損失が必要かつ十分に抑制される。
【0089】
また、屈折率分布Tの領域T1および領域T2において、屈折率はほぼ一定であるが、具体的には、各領域T1、T2におけるそれぞれの平均屈折率に対して、屈折率のずれ量の割合が10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
【0090】
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
【0091】
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0092】
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
【0093】
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0094】
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0095】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0096】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0097】
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
【0098】
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0099】
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
【0100】
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
【0101】
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
【0102】
また、本実施形態では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の積層体からなる光導波路1について説明したが、これらが一体的に形成されたものでもよい。
【0103】
また、本実施形態では、コア層13が2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0104】
なお、例えばコア部14が1つである場合には、光導波路1の横断面の幅方向の屈折率分布Wが、2つの極小値を有し、その極小値が前述したように平均屈折率WA未満であり、かつ屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化していればよく、コア部14の数が3、4、5・・・と増える場合には、それに応じて、屈折率分布Wが有する極小値の数は、6、8、10・・・と増えることとなる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0106】
図5は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。なお、図を見易くするため、一部のコア部14の図示を省略するとともに、支持フィルム2およびカバーフィルム3の図示を省略している。
【0107】
以下、光導波路の第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0108】
第2実施形態は、コア部14を伝搬する光の進行方向を変更するミラー(反射面)17が設けられている以外、第1実施形態と同様である。
【0109】
図5に示すミラー17は、光導波路1を厚さ方向に一部貫通するように、横断面がV字状をなす凹部(空孔)170が形成され、この凹部170の側面(内面)の一部で構成されている。この側面は、平面状であり、かつ、コア部14の軸線に対して45°傾斜している。このミラー17にコア部14を伝搬してきた光が反射され、図5の下方に光路が90°変換される。また、図5の下方から伝搬してきた光は、ミラー17で反射され、コア部14に入射される。すなわち、ミラー17は、コア部14を伝搬する光の光路を変換する光路変換手段としての機能を有する。
【0110】
また、ミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しており、ミラー17のほぼ中心部には、コア部14の加工面が位置している。
【0111】
このようなミラー17によれば、光反射の際の損失が抑制される。これは、本実施形態では、屈折率分布Tのコア部14に対応する領域T1(図4参照)において、その屈折率がほぼ一定であるため、入射光がどの部分に入っても一定の反射特性を示し、その結果、光の反射率が向上するためであると推察される。
【0112】
なお、ミラー17は、コア部14のみを横断するように設けられていてもよいが、図5(a)に示すように各クラッド層11、12およびコア部14の周辺の側面クラッド部15を横断するように設けられているのが好ましい。これにより、ミラー17において反射に寄与する有効面積が広くなり、ミラー損失が抑えられる。
【0113】
また、必要に応じて、ミラー17を構成する加工面の表面に反射膜が成膜されていてもよい。この反射膜としては、例えば、Au、Ag、Al等の金属膜や、コア部14より低屈折率の材料の膜等が挙げられる。
【0114】
金属膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着のような物理蒸着法、CVDのような化学蒸着法、めっき法等が挙げられる。
【0115】
また、ミラー17ではなく、光導波路1の垂直な端面に光を入射する、あるいは、端面からの出射光を受光する場合、本発明の光導波路は、発光素子あるいは受光素子(いずれも光ファイバー等を含む。)と、端面との位置ズレの許容範囲が広いという利点も有している。これは、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tが、屈折率がほぼ一定の領域T1を有しているため、この領域T1内ではどの位置でも入射効率がほぼ同等になるからである。したがって、光導波路1は、発光素子や受光素子との光結合が容易であり、かつ、光結合損失が小さいものである。
【0116】
一方、図5(b)には、第2実施形態の他の構成例を示す。
図5(b)に示す光導波路1では、その一方の端部において、コア部14が光導波路1の端面まで到達せず、途中で途切れている。そして、コア部14が途切れた箇所から端面までは、側面クラッド部15が形成されている。なお、このコア部14が途切れた部分を、コア部欠損部16とする。
【0117】
そして、ミラー17は、このコア部欠損部16中に形成されている。このようなミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しているが、このうち、コア層13の加工面には、側面クラッド部15の加工面のみが露出することとなる。一方、前述の図5(a)の場合、コア層13の加工面には、コア部14の加工面と側面クラッド部15の加工面の双方が露出している。
【0118】
このように図5(b)に示すミラー17は、コア層13の露出面が単一材料のみで構成されているため、均一な平滑性を有するものとなる。これは、加工の際、単一材料を加工することになるため、加工レートが面内で均一になるからである。このため、ミラー17は、優れた反射特性を有するものとなり、ミラー損失の小さいものとなる。
【0119】
また、コア部欠損部16は、コア部14と離れているため、モノマー由来の物質の濃度ムラを含んでいない。このため、厚さ方向はもちろん、幅方向における反射特性についてもバラツキが少なくなり、ミラー17は特に優れた反射特性を有するものとなる。
【0120】
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
(第1の製造方法)
まず、光導波路1の第1の製造方法について説明する。
【0121】
図6〜10は、それぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図6〜10中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0122】
光導波路1は、クラッド層11と、コア層13と、クラッド層12をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
【0123】
光導波路1の第1の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0124】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0125】
コア層形成用組成物900は、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)とを含有するものである。このようなコア層形成用組成物900は、活性放射線の照射により、ポリマー915中において少なくともモノマーの反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、コア層形成用組成物900は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0126】
次いで、支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成する(図6(a)参照)。そして、支持基板951をレベルテーブルに置いて、液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る(図6(b)参照)。
【0127】
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0128】
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0129】
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
【0130】
層910の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜300μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましい。
【0131】
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
【0132】
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0133】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用組成物900中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
【0134】
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0135】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層13を得ることができる。
【0136】
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0137】
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0138】
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0139】
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0140】
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0141】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0142】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記構造式Bで表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
【0143】
【化1】
【0144】
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する構造式Cで表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
【0145】
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0146】
中でも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0147】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0148】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0149】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0150】
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0151】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0152】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0153】
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
【0154】
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
【0155】
【化2】
(式(1)中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p1/q1が20以下である。)
【0156】
式(1)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
R1を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
【0157】
【化3】
【0158】
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
【0159】
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH2−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH2=CH−CH2−OH)を高温高圧下で反応させる。
【0160】
【化4】
【0161】
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
【0162】
【化5】
【0163】
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
【0164】
式(1)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、R1が炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0165】
【化6】
(式(2)中、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p2/q2が20以下である。)
【0166】
式(2)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0167】
なお、式(2)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、R2が炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
【0168】
【化7】
(式(3)中、R4は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各X3は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p3/q3が20以下である。)
【0169】
式(3)の繰り返し単位を含む樹脂は、R4を有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0170】
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、R4が炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、X3がメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0171】
【化8】
(式(4)中、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p4/(q4+r)が20以下である。)
【0172】
式(4)の繰り返し単位を含む樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0173】
【化9】
(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
【0174】
【化10】
(式(6)中、R6は、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
【0175】
【化11】
(式(7)中、X4は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
【0176】
なお、式(4)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
【0177】
【化12】
(式(8)中、R7は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R8は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p5/q5が20以下である。)
【0178】
式(8)の繰り返し単位を含む樹脂は、R7を有するノルボルネンと、側鎖に−(CH2)i−X1−X2(R8)3−j(Ar)jを含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0179】
なお、式(8)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
【0180】
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R8がメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0181】
【化13】
(式(9)におけるR7、p5、q5、iは、式(8)と同じである。)
【0182】
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R8が水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
【0183】
【化14】
(式(10)において、R10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p6/q6は20以下である。)
【0184】
また、p1/q1〜p3/q3、p5/q5、p6/q6またはp4/(q4+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
【0185】
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン等であってもよい。
【0186】
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0187】
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0188】
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
【0189】
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
【0190】
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
【0191】
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0192】
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
【0193】
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
【0194】
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
【0195】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0196】
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
【0197】
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0198】
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0199】
また、ポリシランとしては、主鎖がSi原子のみからなる高分子であれば、いかなるものも用いられる。主鎖は、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。そして、ポリシラン中のSi原子には、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基が結合している。
【0200】
このうち、炭化水素基としては、例えば、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0201】
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基のような鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0202】
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基、アントラシル基等が挙げられる。
【0203】
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0204】
また、ポリウレタンとしては、主鎖にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含む高分子であれば、いかなるものも用いられる。また、主鎖にウレタン結合とウレア結合(−NH−CO−NH−、−NH−CO−N=、または、−NH−CO−N<)とを含むウレタン−ウレア共重合体等であってもよい。
【0205】
なお、コア層13の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
【0206】
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
【0207】
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
【0208】
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
【0209】
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているのが好ましい。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
【0210】
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0211】
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0212】
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0213】
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
【0214】
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
【0215】
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−X3の部分で脱離する場合がある。
【0216】
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
【0217】
【化15】
【0218】
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することでクラッド層11、12や基材に対して密着性に優れたコア層13が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
【0219】
【化16】
(式(31)において、p7/(q7+r2)は、20以下である。)
【0220】
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH2−O−Si(CH3)(Ph)2を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0221】
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
【0222】
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
【0223】
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
【0224】
(添加剤)
添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
【0225】
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0226】
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0227】
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
【0228】
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
【0229】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
【0230】
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が屈折率分布Wの極小値を形成し、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が屈折率分布の極大値を構成する。
【0231】
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
【0232】
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0233】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13(光導波路1)が得られる。
【0234】
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
【0235】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
【0236】
【化17】
【0237】
【化18】
【0238】
【化19】
【0239】
【化20】
【0240】
【化21】
【0241】
【化22】
【0242】
【化23】
【0243】
【化24】
(式(18)においてnは0以上、3以下である。)
【0244】
【化25】
【0245】
【化26】
【0246】
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0247】
さらには、ポリマー915の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
【0248】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
【0249】
【化27】
【0250】
【化28】
(式(33)において、nは1または2である。)
【0251】
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
【0252】
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
【0253】
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
【0254】
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
【0255】
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
【0256】
【化29】
【0257】
【化30】
【0258】
【化31】
【0259】
【化32】
【0260】
【化33】
【0261】
【化34】
【0262】
さらに、モノマーとしては、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0263】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0264】
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、上記成分Bを含むモノマーを「第2モノマー」とすると、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
【0265】
なお、第2モノマーに相当するモノマーには、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーやビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの第2モノマーを用いることにより、第1モノマーとポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
【0266】
このような第2モノマーの具体例としては、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
【0267】
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Aで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
【0268】
【化35】
【0269】
【化36】
[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R12〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R12およびR13のいずれか一方、R14およびR15のいずれか一方は存在しない。]
【0270】
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C6〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R12およびR13、R14およびR15が、それぞれ炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
【0271】
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0272】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0273】
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0274】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0275】
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
【0276】
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
【0277】
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0278】
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
【0279】
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
【0280】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0281】
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
【0282】
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
【0283】
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
【0284】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0285】
なお、モノマーの反応性が著しく高い場合には、重合開始剤の添加を省略してもよい。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
【0286】
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0287】
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0288】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0289】
増感剤の含有量は、コア層形成用組成物900中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0290】
なお、添加剤920はこの他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、老化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0291】
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
【0292】
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図7参照)。
【0293】
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。
【0294】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
【0295】
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、前記両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
【0296】
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0297】
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
【0298】
また、図7においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
【0299】
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0300】
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
【0301】
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0302】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0303】
図11は、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0304】
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図11(a)参照)。
【0305】
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図11(a)に示すように、照射領域925と未照射領域940との境界を挟んで、未照射領域940側に高屈折率部H、照射領域925側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
【0306】
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。したがって、ポリマーに対するモノマーの量あるいは重合開始剤の量等を適宜調整することにより、屈折率分布Wの形状を制御することができる。
【0307】
一方、未照射領域940では、重合開始剤が活性化されないため、モノマーは重合しない。
【0308】
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、未照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。これにより、本発明の光導波路が有する屈折率分布Wが形成される。
【0309】
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有しているのが好ましい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図11(b)参照)。
【0310】
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図11(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図11(a)における屈折率の変化と、図11(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こる。このような屈折率変化によってこの屈折率差はさらに拡大することとなる。
【0311】
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差および屈折率分布の形状を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。また、活性放射線930の照射前に層910を乾燥させてもよいが、その際の乾燥の程度を調整することにより、屈折率分布の形状を制御することもできる。例えば、乾燥の程度を大きくすることで、モノマーの拡散移動量を抑えることができる。
【0312】
次に、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、未照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなってポリマー915に近い屈折率となる。
【0313】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0314】
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0315】
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、屈折率分布Wを有するコア層13が得られる(図8参照)。
【0316】
屈折率分布Wにおいては、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており(図2(b)参照)、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
【0317】
なお、屈折率分布Wは、コア層13中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
【0318】
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
【0319】
さらには、光導波路1の出射光の強度分布が、屈折率分布Wと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wを間接的に特定することができる。
【0320】
また、例えば、(1)干渉顕微鏡(dual−beam interference microscope)を用いて屈折率依存の干渉縞を観測し、その干渉縞から屈折率分布を算出するという方法、(2)屈折ニアフィールド法(Refracted Near Field method;RNF)により直接測定することが可能である。このうち、屈折ニアフィールド法は、例えば特開平5−332880号公報に記載の測定条件を採用することができる。一方、干渉顕微鏡は、屈折率分布の測定を簡便に行い得る点で好ましく用いられる。
【0321】
以下、干渉顕微鏡を使用した屈折率分布の測定手順の一例について説明する。まず、断面方向(幅方向)に光導波路をスライスして、光導波路断片を得る。例えば、光導波路の長さが200〜300μmとなるようにスライスする。次いで、2つのスライドガラスで囲まれた空間に、屈折率1.536のオイルで充填したチャンバーを作製する。そして、チャンバー内の空間に、光導波路断片を挟み込んで測定サンプル部と、光導波路断片を入れていないブランクサンプル部とを作製する。次いで、干渉顕微鏡を使用し、2つに分けた光をそれぞれ測定サンプル部とブランクサンプル部に照射した後、透過光を統合することによって干渉縞写真を得る。干渉縞は光導波路断片の屈折率分布(位相分布)に伴って発生するものであるので、得られた干渉縞写真を画像解析することにより、光導波路の幅方向の屈折率分布Wを得ることができる。なお、屈折率分布Wを取得する際には、複数の干渉縞写真を画像解析することで屈折率分布Wの精度を高めることができる。複数の干渉縞写真を得るときには、干渉顕微鏡内のプリズムを移動させることにより、光路長を変化させ、干渉縞の間隔や干渉縞のできる箇所を互いに異ならせた写真を得るようにすればよい。また、干渉縞写真を画像解析する際には、例えば2.5μmの間隔で解析点を設定すればよい。
【0322】
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
【0323】
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
【0324】
[3]次に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。
これにはまず、支持基板952上に、クラッド層11(12)を形成する(図9参照)。
【0325】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用組成物)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0326】
次に、コア層13を支持基板951から剥離し、コア層13を、クラッド層11が形成された支持基板952と、クラッド層12が形成された支持基板952とで挟持する(図10(a)参照)。
【0327】
そして、図10(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0328】
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される(図10(b)参照)。
【0329】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ支持基板952を剥離、除去する。これにより、光導波路1が得られる。
【0330】
その後、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
【0331】
なお、コア層13は、支持基板951上ではなく、クラッド層11上に成膜するようにしてもよい。さらに、クラッド層12は、コア層13上に張り合わせるのではなく、コア層13上に材料を塗布して形成するようにしてもよい。
【0332】
以上のようにして、ステップインデックス型の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
【0333】
(第2の製造方法)
次に、光導波路1の第2の製造方法について説明する。
【0334】
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0335】
第2の製造方法では、コア層形成用組成物900の組成が異なる以外は、第1の製造方法と同様である。
【0336】
光導波路1の第2の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射した後、層910に加熱処理を施すことで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0337】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0338】
第2の製造方法で用いられるコア層形成用組成物900は、重合開始剤に代えて、触媒前駆体および助触媒を含有している。
【0339】
触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、光の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、光の照射領域925と未照射領域940との間で、モノマーの反応を開始させる温度に差が生じ、その結果、照射領域925のみにおいてモノマーを反応させることができる。
【0340】
触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路1)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0341】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0342】
【化37】
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0343】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0344】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0345】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0346】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0347】
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0348】
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
【0349】
助触媒は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0350】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の離脱性基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0351】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)等が挙げられる。
【0352】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記式で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0353】
【化38】
【0354】
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
【0355】
なお、助触媒として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
【0356】
[2]
[2−1]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
【0357】
照射領域925では、助触媒が活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0358】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0359】
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことをいう。
【0360】
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して後述する加熱処理を施すことにより、コア層13を得ることができ、利便性が高い。
【0361】
また、上記のような触媒前駆体の分子構造の変化に加え、第1の製造方法と同様、ポリマー915から離脱性基が離脱する。これにより、層910の照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0362】
[2−2]次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0363】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散移動して照射領域925に集まってくる。
その結果、層910には、第1の製造方法と同様の屈折率分布が形成される。
【0364】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
【0365】
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0366】
次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
【0367】
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
【0368】
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
【0369】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0370】
次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
【0371】
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0372】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
【0373】
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理以降または第3の加熱処理を省略してもよい。
【0374】
[3]次に、第1の製造方法と同様に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
【0375】
なお、図5に示すミラー17を形成する場合、得られた光導波路1の一部に掘り込み加工を施し、これによりミラー17を内壁面とする凹部170を形成する。
【0376】
光導波路1に対する掘り込み加工は、例えば、レーザー加工法、ダイシングソーによるダイシング加工法等により行うことができる。
【0377】
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、光伝送効率および長期信頼性に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0378】
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0379】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0380】
また、本発明の光導波路は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
【0381】
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0382】
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射線により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
【0383】
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
【実施例】
【0384】
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0385】
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0386】
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0387】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0388】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0389】
【化39】
【0390】
【化40】
【0391】
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示した第1モノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0392】
(3)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を80mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
【0393】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上にコア層形成用組成物をドクターブレードによって均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。
【0394】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
【0395】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
【0396】
一方、光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って屈折ニアフィールド法により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、コア部に対応する領域においてほぼ一定の値で推移し、各クラッド層に対応する領域においても、コア部に対応する領域の屈折率より低いほぼ一定の値で推移した。すなわち、得られた光導波路の厚さ方向の屈折率分布は、いわゆるステップインデックス型になっていた。
【0397】
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0398】
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0399】
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0400】
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0401】
(実施例6)
紫外線の照射量を300mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0402】
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0403】
(実施例8)
紫外線の照射量を100mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0404】
(実施例9)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0405】
(実施例10)
紫外線の照射量を3000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0406】
(実施例11)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0407】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0408】
(実施例12)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0409】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0410】
(実施例13)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0411】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P)1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0412】
(実施例14)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0413】
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0414】
【化41】
【0415】
(実施例15)
下側クラッド層およびコア層の紫外線照射前の乾燥条件を60℃×10分間に変更するとともに、コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0416】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.72E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0417】
(実施例16)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らした以外は、実施例15と同様にして光導波路を得た。
【0418】
(比較例1)
下記のようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0419】
まず、下側クラッド層を形成後、その上にポリマー#1からシクロヘキシルオキセタンモノマーを省略してなるコア層形成用組成物を塗布し、露光、加熱してコア層を得た。
その後、上側クラッド層を形成することにより、光導波路を得た。
【0420】
なお、得られた光導波路では、コア部の屈折率がほぼ一定であり、側面クラッド部の屈折率もほぼ一定であった。すなわち、得られた光導波路のコア層の幅方向の屈折率分布Wは、いわゆるステップインデックス型になっていた。
【0421】
(比較例2)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
【0422】
なお、得られた光導波路では、側面クラッド部の屈折率がほぼ一定である一方、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下していた。すなわち、得られた光導波路のコア層の屈折率分布は、いわゆるグレーデッドインデックス型になっていた。
【0423】
(比較例3)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
【0424】
なお、得られた光導波路では、屈折率分布が複数の極小値および極大値を有し、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下し、極小値に至っており、一方、側面クラッド部では極小値から離れるにつれて屈折率が連続的に増加していた。なお、極小値では、屈折率分布の形状が略V字状をなしており、その近傍における屈折率の変化は不連続的であった。
【0425】
(参考例1)
クラッド層の積層を省略し、コア層のみで光導波路を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
以上の各実施例、各比較例および参考例における光導波路の製造条件を表1に示す。
【0426】
【表1】
【0427】
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、コア層の横断面の幅方向の屈折率分布を得た。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。屈折率分布Wの形状は、図2に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。
【0428】
そして、得られた屈折率分布Wから、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4および各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5を求めるとともに、クラッド部における平均屈折率WAを求めた。
【0429】
また、屈折率分布Wにおいて、コア部に形成された極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が、平均屈折率WA以上の値を有している部分の幅a[μm]、および、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が、平均屈折率WA未満の値を有している部分の幅b[μm]をそれぞれ測定した。
【0430】
また、得られた光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って屈折ニアフィールド法により屈折率分布を測定し、光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tを得た。
【0431】
その結果、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wは、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
【0432】
一方、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tは、それぞれ、ステップインデックス型であった。
【0433】
また、比較例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、ステップインデックス型であり、屈折率分布Tも、同様にステップインデックス型であった。
【0434】
また、比較例2で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、グレーデッドインデックス型であり、一方、屈折率分布Tは、ステップインデックス型であった。
【0435】
さらに、比較例3で得られた光導波路の屈折率分布Wは、コア部と側面クラッド部との間で屈折率が不連続的に変化しており、一方、屈折率分布Tは、ステップインデックス型であった。
【0436】
また、参考例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wと同等の形状であり、一方、クラッド層が省略されていたので、屈折率分布Tは測定しなかった。
【0437】
2.2 光導波路の伝送損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。
【0438】
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
【0439】
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路(ステップインデックス型の光導波路)の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
【0440】
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表2に示す。
【0441】
【表2】
【0442】
表2から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。
【0443】
2.4 光導波路の出射光の強度分布
得られた光導波路の出射側端面について、8つのコア部のうちの一方に光を入射したときの出射光の強度分布を測定した。
なお、出射光の強度分布の測定は、以下のようにして行った。
【0444】
図12は、光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を測定する方法を説明するための図である。
【0445】
図12に示す方法では、まず、測定対象の光導波路1の入射側端面1aのコア部14の1つに対向するように、直径50μmの入射側光ファイバー21を配置する。この入射側光ファイバー21は、光導波路1に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、コア部14の光軸とが一致するように配置されている。
【0446】
一方、光導波路1の出射側端面1bには、これに対向するように直径62.5μmの出射側光ファイバー22を配置した。この出射側光ファイバー22は、光導波路1から出射した出射光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸は、光導波路1のコア層の厚さ方向の中心線に合わせてある。そして、出射側光ファイバー22は、出射側端面1bとの離間距離を一定に維持しつつ、この中心線を含む面内を走査し得るよう構成されている。
【0447】
そして、入射側光ファイバー21からコア部の1つに光を入射しつつ、出射側光ファイバー22を走査させる。そして、出射側光ファイバー22の位置に対して受光素子で測定された出射光の強度を測定することにより、出射側端面1bの位置に対する出射光の強度分布を取得することができる。
【0448】
以上のようにして測定した出射光の強度分布を図13に示す。なお、図13には、実施例1、比較例1および比較例2で得られた光導波路で測定された出射光の強度分布を代表に示す。
【0449】
図13から明らかなように、実施例1で得られた光導波路では、いずれもクロストークが十分に抑えられていることが認められた。また、実施例1で得られた光導波路では、光を入射したコア部14(図13の中央のコア部14)に隣り合うコア部14における出射光の強度は、そのコア部14に隣接した、前記光を入射したコア部14とは反対側に位置する側面クラッド部15における出射光の強度より小さいことが認められた。これは、実施例1で得られた光導波路では、側面クラッド部15に、コア部14より小さい値の極大値を有しており、かつ、屈折率分布が連続的に変化しているため、従来であれば隣り合うコア部14に漏れ出て「クロストーク」になってしまう光が、側面クラッド部15に集まり、結果的にクロストークの発生を防止しているためであると推察される。したがって、実施例1で得られた光導波路では、チャンネル間での混信を防止することができる。
【0450】
なお、実施例1で得られた光導波路では、出射光の一部が側面クラッド部15に集まっている様子が観測されたが、通常、光導波路に接続される受光素子は、各コア部14の出射側端面に対向するように接続され、側面クラッド部15には接続されない。よって、側面クラッド部15に光が集まったとしても、クロストークとはならず、混信が抑制される。
【0451】
また、図示していないが、他の実施例で得られた光導波路でも、実施例1と同様、クロストークが十分に抑えられていた。
【0452】
一方、比較例1、2で得られた光導波路では、光を入射したコア部14に隣り合うコア部14において、出射光の強度分布の極大値が位置しており、漏れ出た光が観測された(クロストーク)。
【0453】
また、図示していないが、比較例3で得られた光導波路でも、クロストークが観測された。
【0454】
2.5 ミラー損失
得られた光導波路の一方の端部近傍に対して、レーザー加工法により、横断面がV字状をなす凹部を形成した。これにより、各光導波路に対して図5に示すミラーを形成した。
【0455】
そして、JPCA(社団法人 日本電子回路工業会)規格、高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S)の4.6.3に規定されたミラー損失の測定方法によりミラー損失を測定した。
【0456】
具体的には、出射側光ファイバーを光導波路の垂直端面に合わせるとともに、ミラーを介して光導波路のコア部と光学的に接続される位置に入射側光ファイバーをセットする。そして、入射側光ファイバーから光導波路に光を入射し、出射側光ファイバーで検出された光強度をP1(dBm)とする。
【0457】
次いで、ミラー部のみをダイシングソーによるダイシング加工により切断して垂直端面を形成し、この垂直端面に出射側光ファイバーをセットして、再び出射光の光強度を測定する。測定された光強度をP0(dBm)とする。
【0458】
そして、P0−P1によりミラー損失(dB)を算出した。
その結果、各実施例および各比較例で得られた光導波路では、いずれもミラー損失が小さく抑えられていたのに対し、参考例で得られた光導波路では、ミラー損失が大きかった。
【0459】
なお、実施例1の条件を下記のように変更して製造した光導波路については、十分な特性が得られなかった。
・下側クラッド層の作製における紫外線の照射量:100mJ
・コア層の作製における紫外線の照射量:500mJ/cm2
・下側クラッド層およびコア層の紫外線照射前の乾燥条件:45℃×15分
・コア層における重合開始剤の添加量:1.36E-2g
【0460】
3.その他の実施例
3.1 光導波路の製造
(実施例A)
(1)クラッド溶液の製造
ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA社製アデカオプトマーSP−170 0.6g、メチルイソブチルケトン80gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド溶液E1を得た。
【0461】
(2)感光性樹脂組成物の製造
新日鐵化学(株)製YP−50S 20gと、ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P 5gと、(株)ADEKA製アデカオプトマーSP−170 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物F1を得た。
【0462】
(3)下層クラッドの作製
厚み25μmのポリイミドフィルム上に前記クラッド溶液E1をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を500mJ/cm2となるように照射し、硬化させて無色透明な下層クラッドを形成した。得られたクラッド層の厚みは10μmであった。
【0463】
(4)コア層の形成、コア領域およびクラッド領域のパターニング
前記下層クラッド上に前記感光性樹脂組成物F1をドクターブレードにて均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ラインが50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られたコア層の厚みは50μmであった。
【0464】
(5)上層クラッドの形成
前記コア層上に前記クラッド溶液E1を用いて下層クラッドと同様の条件にて上層クラッドを形成した。得られた上層クラッドの厚みは10μmであった。
【0465】
(実施例B)
(1)ポリマーの合成
セパラブルフラスコにメタクリル酸メチル20.0g、ベンジルメタクリレート30.0g、およびメチルイソブチルケトン450gを投入し、撹拌混合したのち、窒素ガスで置換してモノマー溶液を得た。一方、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.25gをメチルイソブチルケトン10gに溶解し、窒素ガスで置換して開始剤溶液を得た。その後、前記モノマー溶液を撹拌しながら80℃に加熱し前記開始剤溶液をシリンジを用いてモノマー溶液に添加した。そのまま80℃で1時間加熱撹拌したのちに冷却し重合体溶液を得た。
【0466】
次いで、5Lのイソプロパノールをビーカーに準備し常温で撹拌機で撹拌しながら、前記重合体溶液を滴下した。滴下が完了してからも引き続き30分間撹拌し、その後沈殿したポリマーを取り出し、真空乾燥機にて減圧下60℃で8時間乾燥してポリマーA1を得た。
【0467】
(2)クラッド溶液の製造
互応化学工業(株)製の水性アクリレート樹脂溶液RD−180 20g、イソプロパノール20g、および日清紡ケミカル(株)製カルボジライトV−02−L2 0.4gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド溶液B1を得た。
【0468】
(3)感光性樹脂組成物の製造
(1)の方法で得られたポリマーA1 20gと、メタクリル酸シクロヘキシル5gと、BASFジャパン(株)製イルガキュア651 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物C1を得た。
【0469】
(4)下層クラッドの作製
厚み25μmのポリイミドフィルム上に前記クラッド溶液B1をドクターブレードにより均一に塗布した後、80℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、さらに150℃のオーブンに10分間投入し硬化させて無色透明な下層クラッドを形成した。得られたクラッド層の厚みは10μmであった。
【0470】
(5)コア層の形成、コア領域およびクラッド領域のパターニング
前記下層クラッド上に前記感光性樹脂組成物C1をドクターブレードにて均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ライン50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃の窒素乾燥機に30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られたコア層の厚みは50μmであった。
【0471】
(6)上層クラッドの形成
前記コア層上に前記クラッド溶液B1を用いて下層クラッドと同様の条件にて上層クラッドを形成した。得られた上層クラッドの厚みは10μmであった。
【0472】
(実施例C)
まず、ベンジルメタクリレートの代わりに2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを用いたこと以外は実施例Bの(1)と同様にして合成されたポリマーA2を得た。
以下、ポリマーA1に代えてポリマーA2を用いるようにした以外は、実施例Bと同様にして光導波路を得た。
【0473】
3.2 評価
(光導波路の伝送損失)
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μm径の光ファイバーを経由し、実施例A〜C得られた光導波路に導入し、200μm径の光ファイバーで受光して光の強度を測定した。そして、カットバック法により伝送損失を測定した。その後、導波路長を横軸にとり、挿入損失を縦軸にプロットすると測定値は直線上に並び、その傾きから各光導波路の伝搬損失はいずれも0.05dB/cmと算出することができた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。
【0474】
(パルス信号の波形の保持性)
実施例A〜Cで得られた光導波路について、2.3と同様の方法でパルス信号の波形の保持性を評価したところ、いずれもパルス信号の鈍りが小さいことが認められた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。
【符号の説明】
【0475】
1 光導波路
1a 入射側端面
1b 出射側端面
11、12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
141、142 コア部
15 側面クラッド部
151、152、153 側面クラッド部
16 コア部欠損部
17 ミラー
170 凹部
2 支持フィルム
3 カバーフィルム
900 コア層形成用組成物
910 層
915 ポリマー
920 添加剤
930 活性放射線
935 マスク(マスキング)
9351 開口(窓)
925 照射領域
940 未照射領域
951、952 支持基板
21 入射側光ファイバー
22 出射側光ファイバー
C1、C2 中心線
W 屈折率分布
WA クラッド部における平均屈折率
T 屈折率分布
T1、T2 領域
H 高屈折率部
L 低屈折率部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ここで、光導波路としては、従来、一定の屈折率を有するコア部と、コア部より低い一定の屈折率を有するクラッド部とを有するステップインデックス型のものが一般的であったが、近年、屈折率が連続的に変化したグレーデッドインデックス型のものが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ポリマー基体中に屈折率調整剤を拡散させることにより、横断面において屈折率が同心円状に分布した光導波路が提案されている。このようなグレーデッドインデックス型の光導波路によれば、ステップインデックス型のものに比べ、伝送損失の低減が図られるとされている。
【0009】
ところが、最近では光導波路に対する大容量化の要求がますます強くなり、さらなる多チャンネル化および高密度化が求められている。多チャンネル化および高密度化が進むと、チャンネル(コア部)のピッチがより狭くなり、それに伴って、クロストーク(1つのチャンネルからの漏洩光が隣り合うチャンネルに混信すること)や、パルス信号の鈍り(パルス信号が広がること)といった新たな課題に直面している。
【0010】
なお、上述したような課題は、コア/クラッド間の屈折率差が小さい光導波路において、特に顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−276735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) コア部と、該コア部の両側面に隣接する側面クラッド部と、を備えるコア層と、
該コア層の両面にそれぞれ積層されたクラッド層と、を有する光導波路であって、
前記コア層の横断面の幅方向の屈折率分布Wは、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記側面クラッド部であり、
前記各極小値は、前記クラッド部における平均屈折率未満であり、かつ、前記屈折率分布全体で屈折率が連続的に変化しており、
前記光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tは、前記コア部に対応する領域および前記クラッド層に対応する領域のそれぞれで、屈折率がほぼ一定であり、かつ前記コア部と前記クラッド層との界面で屈折率が不連続的に変化していることを特徴とする光導波路。
【0014】
(2) 前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が前記コア部との界面近傍以外に位置している上記(1)に記載の光導波路。
【0015】
(3) 前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が該領域の中心部に位置しており、かつ、前記第2の極大値から前記極小値に向かって連続的に低下するよう屈折率が変化している上記(2)に記載の光導波路。
【0016】
(4) 前記極小値と前記側面クラッド部における平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0017】
(5) 前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差は、0.005〜0.07である上記(4)に記載の光導波路。
【0018】
(6) 前記横断面の幅方向の位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布Wは、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(7) 前記第1の極大値は、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでおり、
前記平坦部の長さは100μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0020】
(8) 前記屈折率分布Wにおいて、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率以上の値を有している部分の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率未満の値を有している幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0021】
(9) 前記屈折率分布Tにおける前記コア部と前記クラッド層との屈折率差は、前記屈折率分布Wにおける前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差より大きい上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路。
【0022】
(10) 前記コア層は、複数の前記コア部と、該各コア部の両側面にそれぞれ隣接する複数の前記側面クラッド部と、を有している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路。
【0023】
(11) 前記コア部および前記クラッド層を横切るように設けられた空孔を有し、該空孔の内面により、前記コア部を伝送される光を反射する反射面が構成されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光導波路。
【0024】
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、伝送損失およびパルス信号の鈍りが抑えられることで、大容量の光信号を入射しても信頼性の高い光通信を行うことが可能な光導波路が得られる。
【0026】
また、複数のコア部を形成して多チャンネル化した際に、クロストークを確実に抑制し得る光導波路が得られる。
また、このような光導波路を用いることにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。
【図4】図1に示すX−X線断面図のコア部を中心とする一部を切り出した図、および、X−X線断面図のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。
【図6】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図7】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図8】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図9】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図10】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図11】照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【図12】光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を測定する方法を説明するための図である。
【図13】実施例1、比較例1および比較例2で得られた光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
まず、本発明の光導波路について説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を示す図、図3は、図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0030】
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。
【0031】
以下、光導波路1の各部について詳述する。
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものである。
【0032】
(コア層)
このうち、コア層13の横断面には、幅方向において屈折率が偏りを有してなる屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、これにより入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
【0033】
図2(a)は、図1のX−X線断面図であり、図2(b)は、X−X線断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【0034】
コア層13は、その幅方向において、図2(b)に示すような、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0035】
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の大きい極大値Wm2およびWm4が存在しており、それ以外の極大値Wm1、Wm3およびWm5は、それぞれ相対的に屈折率の小さい極大値である。
【0036】
光導波路1では、図2に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間が、相対的に屈折率の大きい極大値Wm2を含んでいることからコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間も極大値Wm4を含んでいることからコア部14となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1と極小値Ws2との間をコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間をコア部142とする。
【0037】
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14を両側面に隣接する領域であることから側面クラッド部15となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1の左側の領域を側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間を側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側の領域を側面クラッド部153とする。
【0038】
すなわち、屈折率分布Wは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並ぶ領域を有していればよい。
【0039】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0040】
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
【0041】
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の各両側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
【0042】
より詳しくは、図1に示す光導波路1には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。ここで、これらのコア部141、142の屈折率は、当然、側面クラッド部151、152、153の屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
【0043】
光導波路1では、コア部14の一方の端部に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で反射させ、他方に伝搬させることにより、コア部14の他方の端部から取り出すことができる。
【0044】
また、図1に示すコア部14は、その横断面形状が正方形または長方形のような四角形(矩形)をなしているが、この形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0045】
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0046】
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、隣接する側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間に、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
【0047】
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0048】
さらに、上述したような各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
【0049】
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
【0050】
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理に伴う制約上、コア部14と側面クラッド部15との平均の屈折率差を十分に大きくすることができないが、本発明によれば、平均の屈折率差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
【0051】
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図2に示すようにコア部141、142に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、伝送光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0052】
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1と極小値Ws2の中点から両側に、コア部141の幅の30%の距離の領域である。
【0053】
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、できればコア部141、142の幅の中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0054】
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
【0055】
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図2(b)に示すように側面クラッド部151、152、153中に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
【0056】
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
【0057】
また、好ましくは、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かっては、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保され、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができることになるため、前述したコア部141、142からの伝送光の漏出をより確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも屈折率の小さいものであるので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、クロストークを抑制することができる。
【0059】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、隣接する側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜20%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0060】
また、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm1、Wm3、Wm5との差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm2、Wm4との差の6〜90%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましく、14〜40%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15における屈折率の高さとコア部14における屈折率の高さとのバランスが最適化され、光導波路1は、特に優れた光伝送性を有するとともにクロストークをより確実に抑制し得るものとなる。
【0061】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.03程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0062】
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0063】
また、屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍および極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
【0064】
ここで、本発明者は、光導波路1の複数のコア部141、142のうち、所望の1つの一方の端部に光を入射し、他方の端部における出射光の強度分布を取得したとき、その強度分布が、光導波路1のクロストークを抑制するにあたって極めて有用な分布になることを見出した。
【0065】
図3は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0066】
コア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、本発明の光導波路によれば、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致することで、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなるため、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止し得る光導波路1が得られる。
【0067】
なお、従来の光導波路では、光を入射するコア部に隣り合うコア部において出射光の強度分布が極小値をとることはなく、むしろ極大値をとっていたので、クロストークの問題が発生していた。これに対し、上述したような本発明の光導波路における出射光の強度分布の振る舞いは、クロストークを抑制する上で極めて有用なものである。
【0068】
本発明の光導波路においてこのような強度分布が得られる詳細な理由は明らかでないものの、理由の1つとしては、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有し、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な屈折率分布Wが、従来であればコア部142において極大値を有していた出射光の強度分布を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせていることが挙げられる。すなわち、このシフトにより、クロストークが確実に抑制されているのである。
【0069】
なお、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0070】
また、上記のような出射光の強度分布は、本発明の光導波路において観測される確率は高いものの、必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0071】
また、図2(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0072】
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
【0073】
また、各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5は、それぞれ前述したように上に凸の略U字状であってもよいが、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでいてもよい。屈折率分布Wが各極大値の頂部近傍においてこのような形状をなしていても、本発明の光導波路は前述したような作用・効果を奏するものとなる。ここで、屈折率が実質的に変化していない平坦部とは、屈折率の変動が0.001未満である領域であって、その両側では屈折率が連続的に低下している領域のことをいう。
【0074】
平坦部の長さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。
【0075】
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよく、未重合のモノマーを含んでいてもよい。
【0076】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0077】
(クラッド層)
クラッド層11および12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。
【0078】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
【0079】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0080】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0081】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0082】
ところで、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tは、前述した幅方向の屈折率分布Wとは異なる形状を有している。
【0083】
図4(a)は、図1に示すX−X線断面図のコア部を中心とする一部を切り出した図であり、図4(b)は、X−X線断面図のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図4(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に中心線C2上の位置をとったときの屈折率分布Tの一例を示す図である。
【0084】
前述したように、光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものであるが、その横断面のうち、コア部14を通る厚さ方向の屈折率分布Tは、コア部14に対応する領域(部分)T1および各クラッド層11、12に対応する領域(部分)T2において、それぞれ屈折率がほぼ一定である形状を有している。また、領域T1と領域T2との境界では、屈折率が不連続的に変化している。すなわち、屈折率分布Tは、ステップインデックス型の形状を有している。このような光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を積層するだけで得られるため、製造容易性が高いという利点がある。
【0085】
ここで、屈折率分布Tのうち、コア部14(領域T1)における平均屈折率n1と、クラッド層11およびクラッド層12(領域T2)における平均屈折率n2との屈折率差の割合(平均屈折率n2に対する割合)は、できるだけ大きいほどよいが、好ましくは0.5%以上とされ、より好ましくは0.8%以上とされる。なお、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝送する効果が低下する場合があり、一方、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0086】
なお、平均屈折率n1と平均屈折率n2との前記屈折率差の割合は、次式で表わされる。
屈折率差の割合(%)=|n1/n2−1|×100
【0087】
また、屈折率分布Tにおけるコア部14とクラッド層11、12との屈折率差、すなわちn1−n2は、前記屈折率差の割合の好ましい範囲に基づいて特定の範囲の値をとることになるが、より好ましくは、屈折率分布Wにおける極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と第1の極大値Wm2、Wm4との屈折率差より大きいことが好ましい。これにより、コア部14とクラッド層11、12との界面における反射が確実に生じる。その結果、光導波路1の厚さ方向での伝送損失が抑制され、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
【0088】
なお、n1−n2は、屈折率分布Wにおける極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と第1の極大値Wm2、Wm4との屈折率差より大きければよいが、好ましくは該屈折率差の100.5%以上、より好ましくは101%以上、さらに好ましくは102%以上とされる。これにより、厚さ方向における伝送損失が必要かつ十分に抑制される。
【0089】
また、屈折率分布Tの領域T1および領域T2において、屈折率はほぼ一定であるが、具体的には、各領域T1、T2におけるそれぞれの平均屈折率に対して、屈折率のずれ量の割合が10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
【0090】
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
【0091】
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0092】
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
【0093】
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0094】
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0095】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0096】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0097】
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
【0098】
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0099】
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
【0100】
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
【0101】
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
【0102】
また、本実施形態では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の積層体からなる光導波路1について説明したが、これらが一体的に形成されたものでもよい。
【0103】
また、本実施形態では、コア層13が2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0104】
なお、例えばコア部14が1つである場合には、光導波路1の横断面の幅方向の屈折率分布Wが、2つの極小値を有し、その極小値が前述したように平均屈折率WA未満であり、かつ屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化していればよく、コア部14の数が3、4、5・・・と増える場合には、それに応じて、屈折率分布Wが有する極小値の数は、6、8、10・・・と増えることとなる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0106】
図5は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。なお、図を見易くするため、一部のコア部14の図示を省略するとともに、支持フィルム2およびカバーフィルム3の図示を省略している。
【0107】
以下、光導波路の第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0108】
第2実施形態は、コア部14を伝搬する光の進行方向を変更するミラー(反射面)17が設けられている以外、第1実施形態と同様である。
【0109】
図5に示すミラー17は、光導波路1を厚さ方向に一部貫通するように、横断面がV字状をなす凹部(空孔)170が形成され、この凹部170の側面(内面)の一部で構成されている。この側面は、平面状であり、かつ、コア部14の軸線に対して45°傾斜している。このミラー17にコア部14を伝搬してきた光が反射され、図5の下方に光路が90°変換される。また、図5の下方から伝搬してきた光は、ミラー17で反射され、コア部14に入射される。すなわち、ミラー17は、コア部14を伝搬する光の光路を変換する光路変換手段としての機能を有する。
【0110】
また、ミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しており、ミラー17のほぼ中心部には、コア部14の加工面が位置している。
【0111】
このようなミラー17によれば、光反射の際の損失が抑制される。これは、本実施形態では、屈折率分布Tのコア部14に対応する領域T1(図4参照)において、その屈折率がほぼ一定であるため、入射光がどの部分に入っても一定の反射特性を示し、その結果、光の反射率が向上するためであると推察される。
【0112】
なお、ミラー17は、コア部14のみを横断するように設けられていてもよいが、図5(a)に示すように各クラッド層11、12およびコア部14の周辺の側面クラッド部15を横断するように設けられているのが好ましい。これにより、ミラー17において反射に寄与する有効面積が広くなり、ミラー損失が抑えられる。
【0113】
また、必要に応じて、ミラー17を構成する加工面の表面に反射膜が成膜されていてもよい。この反射膜としては、例えば、Au、Ag、Al等の金属膜や、コア部14より低屈折率の材料の膜等が挙げられる。
【0114】
金属膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着のような物理蒸着法、CVDのような化学蒸着法、めっき法等が挙げられる。
【0115】
また、ミラー17ではなく、光導波路1の垂直な端面に光を入射する、あるいは、端面からの出射光を受光する場合、本発明の光導波路は、発光素子あるいは受光素子(いずれも光ファイバー等を含む。)と、端面との位置ズレの許容範囲が広いという利点も有している。これは、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tが、屈折率がほぼ一定の領域T1を有しているため、この領域T1内ではどの位置でも入射効率がほぼ同等になるからである。したがって、光導波路1は、発光素子や受光素子との光結合が容易であり、かつ、光結合損失が小さいものである。
【0116】
一方、図5(b)には、第2実施形態の他の構成例を示す。
図5(b)に示す光導波路1では、その一方の端部において、コア部14が光導波路1の端面まで到達せず、途中で途切れている。そして、コア部14が途切れた箇所から端面までは、側面クラッド部15が形成されている。なお、このコア部14が途切れた部分を、コア部欠損部16とする。
【0117】
そして、ミラー17は、このコア部欠損部16中に形成されている。このようなミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しているが、このうち、コア層13の加工面には、側面クラッド部15の加工面のみが露出することとなる。一方、前述の図5(a)の場合、コア層13の加工面には、コア部14の加工面と側面クラッド部15の加工面の双方が露出している。
【0118】
このように図5(b)に示すミラー17は、コア層13の露出面が単一材料のみで構成されているため、均一な平滑性を有するものとなる。これは、加工の際、単一材料を加工することになるため、加工レートが面内で均一になるからである。このため、ミラー17は、優れた反射特性を有するものとなり、ミラー損失の小さいものとなる。
【0119】
また、コア部欠損部16は、コア部14と離れているため、モノマー由来の物質の濃度ムラを含んでいない。このため、厚さ方向はもちろん、幅方向における反射特性についてもバラツキが少なくなり、ミラー17は特に優れた反射特性を有するものとなる。
【0120】
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
(第1の製造方法)
まず、光導波路1の第1の製造方法について説明する。
【0121】
図6〜10は、それぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図6〜10中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0122】
光導波路1は、クラッド層11と、コア層13と、クラッド層12をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
【0123】
光導波路1の第1の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0124】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0125】
コア層形成用組成物900は、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)とを含有するものである。このようなコア層形成用組成物900は、活性放射線の照射により、ポリマー915中において少なくともモノマーの反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、コア層形成用組成物900は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0126】
次いで、支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成する(図6(a)参照)。そして、支持基板951をレベルテーブルに置いて、液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る(図6(b)参照)。
【0127】
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0128】
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0129】
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
【0130】
層910の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜300μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましい。
【0131】
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
【0132】
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0133】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用組成物900中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
【0134】
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0135】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層13を得ることができる。
【0136】
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0137】
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0138】
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0139】
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0140】
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0141】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0142】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記構造式Bで表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
【0143】
【化1】
【0144】
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する構造式Cで表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
【0145】
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0146】
中でも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0147】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0148】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0149】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0150】
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0151】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0152】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0153】
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
【0154】
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
【0155】
【化2】
(式(1)中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p1/q1が20以下である。)
【0156】
式(1)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
R1を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
【0157】
【化3】
【0158】
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
【0159】
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH2−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH2=CH−CH2−OH)を高温高圧下で反応させる。
【0160】
【化4】
【0161】
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
【0162】
【化5】
【0163】
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
【0164】
式(1)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、R1が炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0165】
【化6】
(式(2)中、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p2/q2が20以下である。)
【0166】
式(2)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0167】
なお、式(2)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、R2が炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
【0168】
【化7】
(式(3)中、R4は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各X3は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p3/q3が20以下である。)
【0169】
式(3)の繰り返し単位を含む樹脂は、R4を有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0170】
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、R4が炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、X3がメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0171】
【化8】
(式(4)中、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p4/(q4+r)が20以下である。)
【0172】
式(4)の繰り返し単位を含む樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0173】
【化9】
(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
【0174】
【化10】
(式(6)中、R6は、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
【0175】
【化11】
(式(7)中、X4は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
【0176】
なお、式(4)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
【0177】
【化12】
(式(8)中、R7は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R8は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p5/q5が20以下である。)
【0178】
式(8)の繰り返し単位を含む樹脂は、R7を有するノルボルネンと、側鎖に−(CH2)i−X1−X2(R8)3−j(Ar)jを含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0179】
なお、式(8)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
【0180】
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R8がメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0181】
【化13】
(式(9)におけるR7、p5、q5、iは、式(8)と同じである。)
【0182】
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R8が水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
【0183】
【化14】
(式(10)において、R10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p6/q6は20以下である。)
【0184】
また、p1/q1〜p3/q3、p5/q5、p6/q6またはp4/(q4+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
【0185】
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン等であってもよい。
【0186】
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0187】
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0188】
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
【0189】
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
【0190】
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
【0191】
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0192】
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
【0193】
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
【0194】
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
【0195】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0196】
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
【0197】
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0198】
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0199】
また、ポリシランとしては、主鎖がSi原子のみからなる高分子であれば、いかなるものも用いられる。主鎖は、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。そして、ポリシラン中のSi原子には、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基が結合している。
【0200】
このうち、炭化水素基としては、例えば、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0201】
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基のような鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0202】
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基、アントラシル基等が挙げられる。
【0203】
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0204】
また、ポリウレタンとしては、主鎖にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含む高分子であれば、いかなるものも用いられる。また、主鎖にウレタン結合とウレア結合(−NH−CO−NH−、−NH−CO−N=、または、−NH−CO−N<)とを含むウレタン−ウレア共重合体等であってもよい。
【0205】
なお、コア層13の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
【0206】
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
【0207】
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
【0208】
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
【0209】
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているのが好ましい。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
【0210】
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0211】
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0212】
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0213】
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
【0214】
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
【0215】
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−X3の部分で脱離する場合がある。
【0216】
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
【0217】
【化15】
【0218】
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することでクラッド層11、12や基材に対して密着性に優れたコア層13が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
【0219】
【化16】
(式(31)において、p7/(q7+r2)は、20以下である。)
【0220】
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH2−O−Si(CH3)(Ph)2を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0221】
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
【0222】
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
【0223】
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
【0224】
(添加剤)
添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
【0225】
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0226】
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0227】
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
【0228】
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
【0229】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
【0230】
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が屈折率分布Wの極小値を形成し、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が屈折率分布の極大値を構成する。
【0231】
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
【0232】
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0233】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13(光導波路1)が得られる。
【0234】
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
【0235】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
【0236】
【化17】
【0237】
【化18】
【0238】
【化19】
【0239】
【化20】
【0240】
【化21】
【0241】
【化22】
【0242】
【化23】
【0243】
【化24】
(式(18)においてnは0以上、3以下である。)
【0244】
【化25】
【0245】
【化26】
【0246】
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0247】
さらには、ポリマー915の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
【0248】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
【0249】
【化27】
【0250】
【化28】
(式(33)において、nは1または2である。)
【0251】
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
【0252】
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
【0253】
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
【0254】
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
【0255】
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
【0256】
【化29】
【0257】
【化30】
【0258】
【化31】
【0259】
【化32】
【0260】
【化33】
【0261】
【化34】
【0262】
さらに、モノマーとしては、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0263】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0264】
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、上記成分Bを含むモノマーを「第2モノマー」とすると、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
【0265】
なお、第2モノマーに相当するモノマーには、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーやビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの第2モノマーを用いることにより、第1モノマーとポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
【0266】
このような第2モノマーの具体例としては、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
【0267】
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Aで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
【0268】
【化35】
【0269】
【化36】
[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R12〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R12およびR13のいずれか一方、R14およびR15のいずれか一方は存在しない。]
【0270】
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C6〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R12およびR13、R14およびR15が、それぞれ炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
【0271】
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0272】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0273】
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0274】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0275】
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
【0276】
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
【0277】
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0278】
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
【0279】
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
【0280】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0281】
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
【0282】
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
【0283】
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
【0284】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0285】
なお、モノマーの反応性が著しく高い場合には、重合開始剤の添加を省略してもよい。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
【0286】
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0287】
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0288】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0289】
増感剤の含有量は、コア層形成用組成物900中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0290】
なお、添加剤920はこの他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、老化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0291】
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
【0292】
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図7参照)。
【0293】
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。
【0294】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
【0295】
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、前記両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
【0296】
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0297】
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
【0298】
また、図7においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
【0299】
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0300】
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
【0301】
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
【0302】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0303】
図11は、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0304】
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図11(a)参照)。
【0305】
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図11(a)に示すように、照射領域925と未照射領域940との境界を挟んで、未照射領域940側に高屈折率部H、照射領域925側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
【0306】
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。したがって、ポリマーに対するモノマーの量あるいは重合開始剤の量等を適宜調整することにより、屈折率分布Wの形状を制御することができる。
【0307】
一方、未照射領域940では、重合開始剤が活性化されないため、モノマーは重合しない。
【0308】
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、未照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。これにより、本発明の光導波路が有する屈折率分布Wが形成される。
【0309】
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有しているのが好ましい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図11(b)参照)。
【0310】
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図11(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図11(a)における屈折率の変化と、図11(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こる。このような屈折率変化によってこの屈折率差はさらに拡大することとなる。
【0311】
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差および屈折率分布の形状を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。また、活性放射線930の照射前に層910を乾燥させてもよいが、その際の乾燥の程度を調整することにより、屈折率分布の形状を制御することもできる。例えば、乾燥の程度を大きくすることで、モノマーの拡散移動量を抑えることができる。
【0312】
次に、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、未照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなってポリマー915に近い屈折率となる。
【0313】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0314】
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0315】
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、屈折率分布Wを有するコア層13が得られる(図8参照)。
【0316】
屈折率分布Wにおいては、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており(図2(b)参照)、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
【0317】
なお、屈折率分布Wは、コア層13中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
【0318】
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
【0319】
さらには、光導波路1の出射光の強度分布が、屈折率分布Wと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wを間接的に特定することができる。
【0320】
また、例えば、(1)干渉顕微鏡(dual−beam interference microscope)を用いて屈折率依存の干渉縞を観測し、その干渉縞から屈折率分布を算出するという方法、(2)屈折ニアフィールド法(Refracted Near Field method;RNF)により直接測定することが可能である。このうち、屈折ニアフィールド法は、例えば特開平5−332880号公報に記載の測定条件を採用することができる。一方、干渉顕微鏡は、屈折率分布の測定を簡便に行い得る点で好ましく用いられる。
【0321】
以下、干渉顕微鏡を使用した屈折率分布の測定手順の一例について説明する。まず、断面方向(幅方向)に光導波路をスライスして、光導波路断片を得る。例えば、光導波路の長さが200〜300μmとなるようにスライスする。次いで、2つのスライドガラスで囲まれた空間に、屈折率1.536のオイルで充填したチャンバーを作製する。そして、チャンバー内の空間に、光導波路断片を挟み込んで測定サンプル部と、光導波路断片を入れていないブランクサンプル部とを作製する。次いで、干渉顕微鏡を使用し、2つに分けた光をそれぞれ測定サンプル部とブランクサンプル部に照射した後、透過光を統合することによって干渉縞写真を得る。干渉縞は光導波路断片の屈折率分布(位相分布)に伴って発生するものであるので、得られた干渉縞写真を画像解析することにより、光導波路の幅方向の屈折率分布Wを得ることができる。なお、屈折率分布Wを取得する際には、複数の干渉縞写真を画像解析することで屈折率分布Wの精度を高めることができる。複数の干渉縞写真を得るときには、干渉顕微鏡内のプリズムを移動させることにより、光路長を変化させ、干渉縞の間隔や干渉縞のできる箇所を互いに異ならせた写真を得るようにすればよい。また、干渉縞写真を画像解析する際には、例えば2.5μmの間隔で解析点を設定すればよい。
【0322】
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
【0323】
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
【0324】
[3]次に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。
これにはまず、支持基板952上に、クラッド層11(12)を形成する(図9参照)。
【0325】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用組成物)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0326】
次に、コア層13を支持基板951から剥離し、コア層13を、クラッド層11が形成された支持基板952と、クラッド層12が形成された支持基板952とで挟持する(図10(a)参照)。
【0327】
そして、図10(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0328】
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される(図10(b)参照)。
【0329】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ支持基板952を剥離、除去する。これにより、光導波路1が得られる。
【0330】
その後、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
【0331】
なお、コア層13は、支持基板951上ではなく、クラッド層11上に成膜するようにしてもよい。さらに、クラッド層12は、コア層13上に張り合わせるのではなく、コア層13上に材料を塗布して形成するようにしてもよい。
【0332】
以上のようにして、ステップインデックス型の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
【0333】
(第2の製造方法)
次に、光導波路1の第2の製造方法について説明する。
【0334】
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0335】
第2の製造方法では、コア層形成用組成物900の組成が異なる以外は、第1の製造方法と同様である。
【0336】
光導波路1の第2の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射した後、層910に加熱処理を施すことで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0337】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0338】
第2の製造方法で用いられるコア層形成用組成物900は、重合開始剤に代えて、触媒前駆体および助触媒を含有している。
【0339】
触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、光の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、光の照射領域925と未照射領域940との間で、モノマーの反応を開始させる温度に差が生じ、その結果、照射領域925のみにおいてモノマーを反応させることができる。
【0340】
触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路1)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0341】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0342】
【化37】
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0343】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0344】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0345】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0346】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0347】
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0348】
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
【0349】
助触媒は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0350】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の離脱性基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0351】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)等が挙げられる。
【0352】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記式で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0353】
【化38】
【0354】
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
【0355】
なお、助触媒として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
【0356】
[2]
[2−1]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
【0357】
照射領域925では、助触媒が活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0358】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0359】
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことをいう。
【0360】
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して後述する加熱処理を施すことにより、コア層13を得ることができ、利便性が高い。
【0361】
また、上記のような触媒前駆体の分子構造の変化に加え、第1の製造方法と同様、ポリマー915から離脱性基が離脱する。これにより、層910の照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0362】
[2−2]次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0363】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散移動して照射領域925に集まってくる。
その結果、層910には、第1の製造方法と同様の屈折率分布が形成される。
【0364】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
【0365】
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0366】
次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
【0367】
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
【0368】
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
【0369】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0370】
次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
【0371】
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0372】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
【0373】
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理以降または第3の加熱処理を省略してもよい。
【0374】
[3]次に、第1の製造方法と同様に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
【0375】
なお、図5に示すミラー17を形成する場合、得られた光導波路1の一部に掘り込み加工を施し、これによりミラー17を内壁面とする凹部170を形成する。
【0376】
光導波路1に対する掘り込み加工は、例えば、レーザー加工法、ダイシングソーによるダイシング加工法等により行うことができる。
【0377】
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、光伝送効率および長期信頼性に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0378】
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0379】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0380】
また、本発明の光導波路は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
【0381】
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0382】
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射線により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
【0383】
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
【実施例】
【0384】
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0385】
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0386】
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0387】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0388】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0389】
【化39】
【0390】
【化40】
【0391】
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示した第1モノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0392】
(3)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を80mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
【0393】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上にコア層形成用組成物をドクターブレードによって均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。
【0394】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
【0395】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
【0396】
一方、光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って屈折ニアフィールド法により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、コア部に対応する領域においてほぼ一定の値で推移し、各クラッド層に対応する領域においても、コア部に対応する領域の屈折率より低いほぼ一定の値で推移した。すなわち、得られた光導波路の厚さ方向の屈折率分布は、いわゆるステップインデックス型になっていた。
【0397】
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0398】
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0399】
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0400】
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0401】
(実施例6)
紫外線の照射量を300mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0402】
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0403】
(実施例8)
紫外線の照射量を100mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0404】
(実施例9)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0405】
(実施例10)
紫外線の照射量を3000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0406】
(実施例11)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0407】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0408】
(実施例12)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0409】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0410】
(実施例13)
コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0411】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P)1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0412】
(実施例14)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0413】
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0414】
【化41】
【0415】
(実施例15)
下側クラッド層およびコア層の紫外線照射前の乾燥条件を60℃×10分間に変更するとともに、コア層形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0416】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.72E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
【0417】
(実施例16)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らした以外は、実施例15と同様にして光導波路を得た。
【0418】
(比較例1)
下記のようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0419】
まず、下側クラッド層を形成後、その上にポリマー#1からシクロヘキシルオキセタンモノマーを省略してなるコア層形成用組成物を塗布し、露光、加熱してコア層を得た。
その後、上側クラッド層を形成することにより、光導波路を得た。
【0420】
なお、得られた光導波路では、コア部の屈折率がほぼ一定であり、側面クラッド部の屈折率もほぼ一定であった。すなわち、得られた光導波路のコア層の幅方向の屈折率分布Wは、いわゆるステップインデックス型になっていた。
【0421】
(比較例2)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
【0422】
なお、得られた光導波路では、側面クラッド部の屈折率がほぼ一定である一方、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下していた。すなわち、得られた光導波路のコア層の屈折率分布は、いわゆるグレーデッドインデックス型になっていた。
【0423】
(比較例3)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
【0424】
なお、得られた光導波路では、屈折率分布が複数の極小値および極大値を有し、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下し、極小値に至っており、一方、側面クラッド部では極小値から離れるにつれて屈折率が連続的に増加していた。なお、極小値では、屈折率分布の形状が略V字状をなしており、その近傍における屈折率の変化は不連続的であった。
【0425】
(参考例1)
クラッド層の積層を省略し、コア層のみで光導波路を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
以上の各実施例、各比較例および参考例における光導波路の製造条件を表1に示す。
【0426】
【表1】
【0427】
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、コア層の横断面の幅方向の屈折率分布を得た。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。屈折率分布Wの形状は、図2に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。
【0428】
そして、得られた屈折率分布Wから、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4および各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5を求めるとともに、クラッド部における平均屈折率WAを求めた。
【0429】
また、屈折率分布Wにおいて、コア部に形成された極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が、平均屈折率WA以上の値を有している部分の幅a[μm]、および、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が、平均屈折率WA未満の値を有している部分の幅b[μm]をそれぞれ測定した。
【0430】
また、得られた光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って屈折ニアフィールド法により屈折率分布を測定し、光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tを得た。
【0431】
その結果、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wは、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
【0432】
一方、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tは、それぞれ、ステップインデックス型であった。
【0433】
また、比較例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、ステップインデックス型であり、屈折率分布Tも、同様にステップインデックス型であった。
【0434】
また、比較例2で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、グレーデッドインデックス型であり、一方、屈折率分布Tは、ステップインデックス型であった。
【0435】
さらに、比較例3で得られた光導波路の屈折率分布Wは、コア部と側面クラッド部との間で屈折率が不連続的に変化しており、一方、屈折率分布Tは、ステップインデックス型であった。
【0436】
また、参考例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wと同等の形状であり、一方、クラッド層が省略されていたので、屈折率分布Tは測定しなかった。
【0437】
2.2 光導波路の伝送損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。
【0438】
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
【0439】
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路(ステップインデックス型の光導波路)の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
【0440】
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表2に示す。
【0441】
【表2】
【0442】
表2から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。
【0443】
2.4 光導波路の出射光の強度分布
得られた光導波路の出射側端面について、8つのコア部のうちの一方に光を入射したときの出射光の強度分布を測定した。
なお、出射光の強度分布の測定は、以下のようにして行った。
【0444】
図12は、光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を測定する方法を説明するための図である。
【0445】
図12に示す方法では、まず、測定対象の光導波路1の入射側端面1aのコア部14の1つに対向するように、直径50μmの入射側光ファイバー21を配置する。この入射側光ファイバー21は、光導波路1に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、コア部14の光軸とが一致するように配置されている。
【0446】
一方、光導波路1の出射側端面1bには、これに対向するように直径62.5μmの出射側光ファイバー22を配置した。この出射側光ファイバー22は、光導波路1から出射した出射光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸は、光導波路1のコア層の厚さ方向の中心線に合わせてある。そして、出射側光ファイバー22は、出射側端面1bとの離間距離を一定に維持しつつ、この中心線を含む面内を走査し得るよう構成されている。
【0447】
そして、入射側光ファイバー21からコア部の1つに光を入射しつつ、出射側光ファイバー22を走査させる。そして、出射側光ファイバー22の位置に対して受光素子で測定された出射光の強度を測定することにより、出射側端面1bの位置に対する出射光の強度分布を取得することができる。
【0448】
以上のようにして測定した出射光の強度分布を図13に示す。なお、図13には、実施例1、比較例1および比較例2で得られた光導波路で測定された出射光の強度分布を代表に示す。
【0449】
図13から明らかなように、実施例1で得られた光導波路では、いずれもクロストークが十分に抑えられていることが認められた。また、実施例1で得られた光導波路では、光を入射したコア部14(図13の中央のコア部14)に隣り合うコア部14における出射光の強度は、そのコア部14に隣接した、前記光を入射したコア部14とは反対側に位置する側面クラッド部15における出射光の強度より小さいことが認められた。これは、実施例1で得られた光導波路では、側面クラッド部15に、コア部14より小さい値の極大値を有しており、かつ、屈折率分布が連続的に変化しているため、従来であれば隣り合うコア部14に漏れ出て「クロストーク」になってしまう光が、側面クラッド部15に集まり、結果的にクロストークの発生を防止しているためであると推察される。したがって、実施例1で得られた光導波路では、チャンネル間での混信を防止することができる。
【0450】
なお、実施例1で得られた光導波路では、出射光の一部が側面クラッド部15に集まっている様子が観測されたが、通常、光導波路に接続される受光素子は、各コア部14の出射側端面に対向するように接続され、側面クラッド部15には接続されない。よって、側面クラッド部15に光が集まったとしても、クロストークとはならず、混信が抑制される。
【0451】
また、図示していないが、他の実施例で得られた光導波路でも、実施例1と同様、クロストークが十分に抑えられていた。
【0452】
一方、比較例1、2で得られた光導波路では、光を入射したコア部14に隣り合うコア部14において、出射光の強度分布の極大値が位置しており、漏れ出た光が観測された(クロストーク)。
【0453】
また、図示していないが、比較例3で得られた光導波路でも、クロストークが観測された。
【0454】
2.5 ミラー損失
得られた光導波路の一方の端部近傍に対して、レーザー加工法により、横断面がV字状をなす凹部を形成した。これにより、各光導波路に対して図5に示すミラーを形成した。
【0455】
そして、JPCA(社団法人 日本電子回路工業会)規格、高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S)の4.6.3に規定されたミラー損失の測定方法によりミラー損失を測定した。
【0456】
具体的には、出射側光ファイバーを光導波路の垂直端面に合わせるとともに、ミラーを介して光導波路のコア部と光学的に接続される位置に入射側光ファイバーをセットする。そして、入射側光ファイバーから光導波路に光を入射し、出射側光ファイバーで検出された光強度をP1(dBm)とする。
【0457】
次いで、ミラー部のみをダイシングソーによるダイシング加工により切断して垂直端面を形成し、この垂直端面に出射側光ファイバーをセットして、再び出射光の光強度を測定する。測定された光強度をP0(dBm)とする。
【0458】
そして、P0−P1によりミラー損失(dB)を算出した。
その結果、各実施例および各比較例で得られた光導波路では、いずれもミラー損失が小さく抑えられていたのに対し、参考例で得られた光導波路では、ミラー損失が大きかった。
【0459】
なお、実施例1の条件を下記のように変更して製造した光導波路については、十分な特性が得られなかった。
・下側クラッド層の作製における紫外線の照射量:100mJ
・コア層の作製における紫外線の照射量:500mJ/cm2
・下側クラッド層およびコア層の紫外線照射前の乾燥条件:45℃×15分
・コア層における重合開始剤の添加量:1.36E-2g
【0460】
3.その他の実施例
3.1 光導波路の製造
(実施例A)
(1)クラッド溶液の製造
ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA社製アデカオプトマーSP−170 0.6g、メチルイソブチルケトン80gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド溶液E1を得た。
【0461】
(2)感光性樹脂組成物の製造
新日鐵化学(株)製YP−50S 20gと、ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P 5gと、(株)ADEKA製アデカオプトマーSP−170 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物F1を得た。
【0462】
(3)下層クラッドの作製
厚み25μmのポリイミドフィルム上に前記クラッド溶液E1をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を500mJ/cm2となるように照射し、硬化させて無色透明な下層クラッドを形成した。得られたクラッド層の厚みは10μmであった。
【0463】
(4)コア層の形成、コア領域およびクラッド領域のパターニング
前記下層クラッド上に前記感光性樹脂組成物F1をドクターブレードにて均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ラインが50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られたコア層の厚みは50μmであった。
【0464】
(5)上層クラッドの形成
前記コア層上に前記クラッド溶液E1を用いて下層クラッドと同様の条件にて上層クラッドを形成した。得られた上層クラッドの厚みは10μmであった。
【0465】
(実施例B)
(1)ポリマーの合成
セパラブルフラスコにメタクリル酸メチル20.0g、ベンジルメタクリレート30.0g、およびメチルイソブチルケトン450gを投入し、撹拌混合したのち、窒素ガスで置換してモノマー溶液を得た。一方、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.25gをメチルイソブチルケトン10gに溶解し、窒素ガスで置換して開始剤溶液を得た。その後、前記モノマー溶液を撹拌しながら80℃に加熱し前記開始剤溶液をシリンジを用いてモノマー溶液に添加した。そのまま80℃で1時間加熱撹拌したのちに冷却し重合体溶液を得た。
【0466】
次いで、5Lのイソプロパノールをビーカーに準備し常温で撹拌機で撹拌しながら、前記重合体溶液を滴下した。滴下が完了してからも引き続き30分間撹拌し、その後沈殿したポリマーを取り出し、真空乾燥機にて減圧下60℃で8時間乾燥してポリマーA1を得た。
【0467】
(2)クラッド溶液の製造
互応化学工業(株)製の水性アクリレート樹脂溶液RD−180 20g、イソプロパノール20g、および日清紡ケミカル(株)製カルボジライトV−02−L2 0.4gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド溶液B1を得た。
【0468】
(3)感光性樹脂組成物の製造
(1)の方法で得られたポリマーA1 20gと、メタクリル酸シクロヘキシル5gと、BASFジャパン(株)製イルガキュア651 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物C1を得た。
【0469】
(4)下層クラッドの作製
厚み25μmのポリイミドフィルム上に前記クラッド溶液B1をドクターブレードにより均一に塗布した後、80℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、さらに150℃のオーブンに10分間投入し硬化させて無色透明な下層クラッドを形成した。得られたクラッド層の厚みは10μmであった。
【0470】
(5)コア層の形成、コア領域およびクラッド領域のパターニング
前記下層クラッド上に前記感光性樹脂組成物C1をドクターブレードにて均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ライン50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃の窒素乾燥機に30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られたコア層の厚みは50μmであった。
【0471】
(6)上層クラッドの形成
前記コア層上に前記クラッド溶液B1を用いて下層クラッドと同様の条件にて上層クラッドを形成した。得られた上層クラッドの厚みは10μmであった。
【0472】
(実施例C)
まず、ベンジルメタクリレートの代わりに2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを用いたこと以外は実施例Bの(1)と同様にして合成されたポリマーA2を得た。
以下、ポリマーA1に代えてポリマーA2を用いるようにした以外は、実施例Bと同様にして光導波路を得た。
【0473】
3.2 評価
(光導波路の伝送損失)
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μm径の光ファイバーを経由し、実施例A〜C得られた光導波路に導入し、200μm径の光ファイバーで受光して光の強度を測定した。そして、カットバック法により伝送損失を測定した。その後、導波路長を横軸にとり、挿入損失を縦軸にプロットすると測定値は直線上に並び、その傾きから各光導波路の伝搬損失はいずれも0.05dB/cmと算出することができた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。
【0474】
(パルス信号の波形の保持性)
実施例A〜Cで得られた光導波路について、2.3と同様の方法でパルス信号の波形の保持性を評価したところ、いずれもパルス信号の鈍りが小さいことが認められた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。
【符号の説明】
【0475】
1 光導波路
1a 入射側端面
1b 出射側端面
11、12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
141、142 コア部
15 側面クラッド部
151、152、153 側面クラッド部
16 コア部欠損部
17 ミラー
170 凹部
2 支持フィルム
3 カバーフィルム
900 コア層形成用組成物
910 層
915 ポリマー
920 添加剤
930 活性放射線
935 マスク(マスキング)
9351 開口(窓)
925 照射領域
940 未照射領域
951、952 支持基板
21 入射側光ファイバー
22 出射側光ファイバー
C1、C2 中心線
W 屈折率分布
WA クラッド部における平均屈折率
T 屈折率分布
T1、T2 領域
H 高屈折率部
L 低屈折率部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、該コア部の両側面に隣接する側面クラッド部と、を備えるコア層と、
該コア層の両面にそれぞれ積層されたクラッド層と、を有する光導波路であって、
前記コア層の横断面の幅方向の屈折率分布Wは、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記側面クラッド部であり、
前記各極小値は、前記クラッド部における平均屈折率未満であり、かつ、前記屈折率分布全体で屈折率が連続的に変化しており、
前記光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tは、前記コア部に対応する領域および前記クラッド層に対応する領域のそれぞれで、屈折率がほぼ一定であり、かつ前記コア部と前記クラッド層との界面で屈折率が不連続的に変化していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が前記コア部との界面近傍以外に位置している請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が該領域の中心部に位置しており、かつ、前記第2の極大値から前記極小値に向かって連続的に低下するよう屈折率が変化している請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記極小値と前記側面クラッド部における平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差は、0.005〜0.07である請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記横断面の幅方向の位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布Wは、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記第1の極大値は、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでおり、
前記平坦部の長さは100μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記屈折率分布Wにおいて、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率以上の値を有している部分の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率未満の値を有している幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
前記屈折率分布Tにおける前記コア部と前記クラッド層との屈折率差は、前記屈折率分布Wにおける前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差より大きい請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路。
【請求項10】
前記コア層は、複数の前記コア部と、該各コア部の両側面にそれぞれ隣接する複数の前記側面クラッド部と、を有している請求項1ないし9のいずれかに記載の光導波路。
【請求項11】
前記コア部および前記クラッド層を横切るように設けられた空孔を有し、該空孔の内面により、前記コア部を伝送される光を反射する反射面が構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の光導波路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
コア部と、該コア部の両側面に隣接する側面クラッド部と、を備えるコア層と、
該コア層の両面にそれぞれ積層されたクラッド層と、を有する光導波路であって、
前記コア層の横断面の幅方向の屈折率分布Wは、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記側面クラッド部であり、
前記各極小値は、前記クラッド部における平均屈折率未満であり、かつ、前記屈折率分布全体で屈折率が連続的に変化しており、
前記光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tは、前記コア部に対応する領域および前記クラッド層に対応する領域のそれぞれで、屈折率がほぼ一定であり、かつ前記コア部と前記クラッド層との界面で屈折率が不連続的に変化していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が前記コア部との界面近傍以外に位置している請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記屈折率分布Wのうち、前記側面クラッド部に対応する領域では、前記第2の極大値が該領域の中心部に位置しており、かつ、前記第2の極大値から前記極小値に向かって連続的に低下するよう屈折率が変化している請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記極小値と前記側面クラッド部における平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差は、0.005〜0.07である請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記横断面の幅方向の位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布Wは、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記第1の極大値は、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでおり、
前記平坦部の長さは100μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記屈折率分布Wにおいて、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率以上の値を有している部分の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記側面クラッド部における平均屈折率未満の値を有している幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
前記屈折率分布Tにおける前記コア部と前記クラッド層との屈折率差は、前記屈折率分布Wにおける前記極小値と前記第1の極大値との屈折率差より大きい請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路。
【請求項10】
前記コア層は、複数の前記コア部と、該各コア部の両側面にそれぞれ隣接する複数の前記側面クラッド部と、を有している請求項1ないし9のいずれかに記載の光導波路。
【請求項11】
前記コア部および前記クラッド層を横切るように設けられた空孔を有し、該空孔の内面により、前記コア部を伝送される光を反射する反射面が構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の光導波路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−68632(P2012−68632A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185274(P2011−185274)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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