説明

光導波路リンク装置

【課題】光導波路リンク装置において、発光(受光)素子と光導波路フィルムとの間にレンズを設けることが必要であったが、それを解消する。
【解決手段】コア部とそれを囲堯するクラッド部とで成る光導波路を少なくとも有する光導波路フィルムの長手方向の両端部に、発光素子と受光素子とを配設して成る光導波路リンク装置において、前記光導波路フィルム5は、コア部2の光信号伝達方向における該光信号伝達方向に直交する厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっており、前記発光素子6および受光素子7における端面と光導波路フィルムの端面とには間隙のみが設けられている光導波路リンク装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を送受信するために用いられる光導波路を有した光導波路リンク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光導波路リンク装置は、光の発光および受光する素子と、光を伝導する導光路と、光素子と導光路とを接続するためのガイド機能を有するレセプタクルとからなる。前記導光路は、光を導光するコア部と光を屈折率差で閉じこめるクラッドからなる。このような光導波路による光信号の伝達には、図4に示すように、フレキシブルであることと、電気配線も含んで省スペース型であることが、携帯電話等の電子機器の実装において要求される。そこで、特許文献1に記載の光導波路フィルムや、特許文献2に記載の高分子光導波路フィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2007/026601号再公表公報
【特許文献2】特開平08−304650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光導波路フィルムによる光伝送においては、光伝送効率を高めるために光素子を導光路直近に実装することが理想であるが、実際には機械的に不可能なので、通常、発光素子側と光導波路フィルムの導光路端面との間にレンズを用いている。発光素子側は、広がった光をレンズを用いて絞り込むことでコア部に容易に入射させることができるとともに、受光素子側もコア部から出射した光を絞り込むことで容易に受光素子と結合することができる。
【0005】
特に、受光素子は伝送速度が速くなるほど受光面積が小さくなるため、レンズを用いることによって、有効入射範囲を広く活用することができる。しかしながら、前記素子と導光路との間にレンズを介在させるので、部品点数が増えてコストが嵩み、当該レンズの位置精度を高精度に配置するための手間と費用が嵩むものである。本発明に係る光導波路リンク装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光導波路リンク装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、コア部とそれを囲堯するクラッド部とで成る光導波路を少なくとも有する光導波路フィルムの長手方向の両端部に、発光素子と受光素子とを配設して成る光導波路リンク装置において、前記光導波路フィルムは、コア部の光信号伝達方向における該光信号伝達方向に直交する厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっており、前記発光素子および受光素子における端面と光導波路フィルムの端面とには間隙のみが設けられていることである。
また、前記光導波路フィルムのコア部は、光信号伝達方向に沿った上下の両面において光伝達方向へ先細になるテーパ部が設けられることで、厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっていることを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光導波路リンク装置によれば、発光(受光)素子と光導波路フィルムの端面とにはレンズが不要となる。これにより、部品点数が削減され製造コストが低減される。また、発光(受光)素子の設置において、位置精度がラフにして良くなり、取付工数のコストダウンとなる。
前記発光(受光)素子に合わせた導光路の入出力大きさを作ることができて、効率よく結合できる、等の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る光導波路リンク装置1の構成を示す縦断面図(A)と横断面図(B)とである。
【図2】コア部2にテーパ部を設ける場合の各寸法を示す説明図である。
【図3】同本発明の光導波路リンク装置1の他の実施例に係る縦断面図である。
【図4】従来例に係るフレキシブルな光導波路フィルム5を使用した光導波路リンク装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る光導波路リンク装置1は、図1(A)に示すように、従来のレンズを使用しないで光導波路を構成するものである。
【実施例1】
【0010】
前記光導波路リンク装置1は、コア部2とそれを囲堯するクラッド部3とで成る光導波路4を少なくとも有する光導波路フィルム5の導軸方向(長手方向)の両端部に、発光素子6と受光素子7とを配設して成る。なお、光導波路フィルム5には、フィルム片面側に電気配線層を一体に有することがある。
【0011】
前記光導波路フィルム5は、コア部2の信号伝達方向における該信号伝達方向に直交する厚さaが発光側から受光側に行く途中で薄くなっている。これには、コア材においてはコートしたコア材の一部を除去し、その後にクラッドを前記コザ材に塗布することで形成する。または、コア材の溶液を、膜厚制御部を有するアプリケータヘッドを具備するアプリケータを用いて塗布することで形成する。
【0012】
前記発光素子6および受光素子7における端面と光導波路フィルム5の端面とには間隙のみが設けられていて、従来例のような前記間隙にレンズを介在させる構成とは異なり、レンズが無い構成となっている。
【0013】
前記発光素子6において、その光軸を光導波路の光路軸に対してずらした場合(Y軸移動)と、光導波路フィルム5の端面から離した場合(Z軸移動)とで、光導波路信号のレベルがどの程度の損失となるかを実験する。
【0014】
まず、比較のために、コア部2の厚さが変化しないストレートタイプの場合で、結合損失(dBm)を測定した。Z軸の移動は、z=0.3mmまでとする。
【0015】
【表1】

表中において、Z=0mmのとき、Y軸移動距離の0.03mmでの結合損失3.1までと、Y軸移動距離の−0.03mmでの結合損失3.9までが、光品号として使用できる範囲である。斜線部分は不安定な信号で使用できず、ベタ塗り以降は光信号として使用不能である事を示している。この表により、Z=0mmで性能有効範囲bは、0.06mm(=0.03−(−0.03))であり、Z=0.3mmで性能有効範囲bは0.11mmである。
【0016】
次に、片側にテーパを設けてコア部2の厚さを変化させた場合、図2に示すように、テーパ長a=80mmとして、高さH(110−50μm)、テーパ角度θ=0.021として、結合損失(dBm)を測定する。
【0017】
【表2】

この表によれば、Z=0mmで性能有効範囲bは、0.11mm(=0.05−(−0.06))であり、Z=0.3mmで性能有効範囲bは0.15mmである。
【0018】
次に、テーパ長aを40mmにして、高さH(110−50μm)、テーパ角度θ=0.043として、結合損失(dBm)を測定する。
【0019】
【表3】

この表によれば、Z=0mmで性能有効範囲bは、0.11mm(=0.06−(−0.05))であり、Z=0.3mmで性能有効範囲bは0.13mmである。
【0020】
また、テーパ長aを40mmにして、高さH(150−50μm)、テーパ角度θ=0.071として、結合損失(dBm)を測定する。
【0021】
【表4】

この表によれば、Z=0mmで性能有効範囲bは、0.16mm(=0.1−(−0.06))であり、Z=0.3mmで性能有効範囲bは0.16mmである。なお、テーパ角度θ=0.134以上になると、光導波路内で光導波路信号が乱反射して光信号の波形が不安定となり実質的に使用できなくなる。
【0022】
以上のような実験データから、光導波路発光素子6から出射されて光導波路フィルム5の光導波路4に入射した光信号が、前記テーパ角θによって高次モードのノイズ成分が除去され、屈折率差以上の光を除く作用が確認された。そして、Y軸方向における前記性能有効範囲bが広がって機械的入射範囲(Z=0mmでの性能有効範囲)まで使用できる。更に、Z軸方向で光路軸において間隔を開けると、性能有効範囲b(有効入射範囲)が前記機械的入射範囲よりも大きくなっている。このように、コア部2がテーパタイプとされることで、ストレートタイプよりも光伝送路のノイズが除去されている。
【実施例2】
【0023】
前記光導波路フィルム5のコア部2は、図3に示すように、光信号伝達方向に沿った上下の両面において光伝達方向へ先細になるテーパ部8,8が設けられることで、厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっている。
【0024】
このように、コア部2の上下面にテーパ部8を設けて光導波路フィルム5を形成することで、上記性能有効範囲が更に広がり、発光素子6の設置工数が低減されコストダウンとなるなど効果が向上するものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る光導波路リンク装置1は、光通信設備に広く応用されるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 光導波路リンク装置、
2 コア部、
3 クラッド部、
4 光導波路、
5 光導波路フィルム、
6 発光素子、
7 受光素子、
8 テーパ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部とそれを囲堯するクラッド部とで成る光導波路を少なくとも有する光導波路フィルムの長手方向の両端部に、発光素子と受光素子とを配設して成る光導波路リンク装置において、
前記光導波路フィルムは、コア部の光信号伝達方向における該光信号伝達方向に直交する厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっており、
前記発光素子および受光素子における端面と光導波路フィルムの端面とには間隙のみが設けられていること、
を特徴とする光導波路リンク装置。
【請求項2】
光導波路フィルムのコア部は、光信号伝達方向に沿った上下の両面において光伝達方向へ先細になるテーパ部が設けられることで、厚さが発光側から受光側に行く途中で薄くなっていること、
を特徴とする請求項1に記載の光導波路リンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−3111(P2012−3111A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139116(P2010−139116)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】