説明

光束分割素子

【課題】一つの光源からの入射光束を2光束以上に分割する光束分割素子を提供する。
【解決手段】光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、互いに直交する偏向成分を透過または回折する偏向ホログラム素子であって、第1のホログラム素子1と第2のホログラム素子2を多段に配列し、第1のホログラム素子1の透過および回折により光束を分割し、第2のホログラム素子2の透過および回折により分割された光の光軸を調整することにより、従来のミラー分割によるミラー面精度ばらつきの影響及び配置誤差の影響によるビームスポット径劣化の不具合がなく、高価なハーフミラープリズムに比べて低コストな光束分割素子が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光束の偏光成分によって素子を透過または回折させる機能を有する偏光ホログラム素子に関し、特に、一つの光源からの入射光束を2光束以上に分割する光束分割素子に関する。
【背景技術】
【0002】
偏向ホログラム素子に関する従来技術として以下の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、等方性基板上に回折格子形状を形成し、この回折格子形状の溝部に光学異方性の材料を充填した光学異方性回折素子が提案されている。
【0004】
特許文献2には、上述のような光重合性液晶を用い、水平配向させた状態で干渉露光等の方法で露光を行い、露光部の液晶を周期的に重合固化させた後に未露光部に外場を印加させ垂直配向させた状態で反応固化するホログラム素子が開示されている。
【0005】
特許文献3には、液晶と高分子を含む光学媒体を液晶のN−I点に対応した特定の温度範囲に制御して二光束干渉露光を行うことで、液晶が微細な周期構造に対し一様な方向に配向する構造を有するホログラム素子が開示されている。
【0006】
また、光束分割に関する技術として、特許文献4には、光走査装置及び画像形成装置において、共通の光源からのビームを分割し、異なる段の反射鏡にビームを入射させ、異なる被走査面を走査する技術が開示されている。光分割はハーフミラープリズムおよびハーフミラーとミラーの組み合わせにより実現している。
【特許文献1】特開平10−92004号公報
【特許文献2】特開平11−271536号公報
【特許文献3】特開2000−221465号公報
【特許文献4】特開2005−92129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の発明は以下の問題を有している。
【0008】
近年、半導体レーザのマルチビーム化の技術が進んでおり、例えば、レーザプリンタ、デジタル複写機、普通紙ファックス等で用いられる電子写真画像形成装置等に応用されつつある。前記電子写真画像形成装置に関してはカラー化、高速化が進み、感光体を複数(通常は4つ)有するタンデム対応の画像形成装置が普及してきている。
【0009】
しかし、このようなタンデム方式の場合、光源数の増加に伴い、部品点数の増加、複数光源間の波長差に起因する色ずれ、コストアップが生じてしまう。また、書込ユニットの故障の原因として半導体レーザの劣化が挙げられており、光源数が多くなると、故障の確立が増え、リサイクル性が劣化する。
【0010】
そこで、光源数および部品点数を低減し、低コスト化するために、共通光源からのビームを分割する方式が提案されており、特許文献4では以下の手段で光束を分割している。
(1)ハーフミラープリズムを用いる方式
(2)ハーフミラーとミラーを組み合わせる方式
(3)出射したビームを複数の開口部を設けることで、空間的に分割する方式
【0011】
ここで、(1)及び(2)方式とも分離手段にミラーを用いているため、ミラーの面精度ばらつきの影響、及び配置誤差の影響により、ビームスポット径劣化が発生し易い。また、(1)で用いるハーフミラープリズムは非常に高価であり、コストアップとなる。(2)で示すハーフミラーとミラーを組み合わせた方式は、レイアウト配置が困難であり、かつ偏向回転面内で開き角を有するため、ビームスポット径等の光学特性が劣化する。また、複数の開口部で光束を分割する方式は、光源からのビームの周辺部を用いるため、光量不足、及びビームスポット径太りを生じるといった不具合がある。
【0012】
そこで、本発明は、共通光源からのビームを分割する方式において、上記不具合を解決した、高効率で低コストな光束分割素子を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、互いに直交する偏光成分を透過又は回折する光束分割素子において、第1のホログラム素子と第2のホログラム素子が多段に配列され、前記第1のホログラム素子の透過及び回折により光を分割し、前記第2のホログラム素子の透過及び回折により前記第1のホログラムにより分割された光の光軸を調整することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光束分割素子において、多段に配列された前記第1のホログラム素子と前記第2のホログラム素子が有する周期構造の膜厚が異なることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の光束分割素子において、前記第1のホログラム素子の膜厚T1が前記第2のホログラム素子の膜厚T2よりも薄く、光束の入射側に対して前記第1のホログラム素子、前記第2のホログラム素子の順に配列されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の光束分割素子において、前記第1のホログラム素子の膜厚T1と前記第2のホログラム素子の膜厚T2が、0.9×T2/2<T1<1.1×T2/2の関係にあることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の光束分割素子において、前記第1のホログラム素子の膜厚と前記第2のホログラム素子の膜厚が同じであり、前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向に略平行な方向をp偏向とし、前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向に略垂直な方向をs偏向としたとき、入射される光束のp偏光成分とs偏光成分の強度が略均等であることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の光束分割素子において、入射される光束の偏光が直線偏光であることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の光束分割素子において、入射される光束の偏光方向が前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向を基準0°とし、周期的な構造の配列方向に対して43±3°又は137±3°傾いていることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の光束分割素子において、入射される光束の偏光が円偏光であることを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子において、前記各ホログラム素子の周期的な構造は、非重合性液晶と、重合性モノマー又はプレポリマーと、光重合開始剤と、からなる組成物を一対の透明基板間に保持し、前記組成物を二光束以上の多光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子において、前記各ホログラム素子の光学異方性を示す領域が高分子複屈折膜からなることを特徴とする。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子において、前記各ホログラム素子の光学異方性を示す領域が非重合性液晶あるいは重合性液晶からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、光束の分割手段として、多段配列した偏光ホログラムの透過および回折を利用しているため、従来のミラー分割によるミラー面精度ばらつきの影響及び配置誤差の影響によるビームスポット径劣化の不具合がなく、高価なハーフミラープリズムに比べて低コストな光束分割素子が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る光束分割素子の構成及び動作について説明する。
【0026】
まず、本実施形態に係る光束分割素子の概略構成について図1を用いて説明する。
【0027】
本実施形態に係る光束分割素子は、第1のホログラム素子と第2のホログラム素子を多段に配列して構成されている。動作としては、入射光束を第1のホログラム素子1にて回折による偏向光(以下、第1の回折偏向光とする)と透過による直進光(以下、第1の透過直進光とする)の二光束に分割する。そして、第1の回折偏向光を第2のホログラム素子2にて再度回折による偏向光(以下、第2の回折偏向光とする)とし、光束の光軸(進行方向)及び光強度を設定する。
【0028】
図1において、第1のホログラム素子1からの第1の透過直進光は、第2のホログラム素子を透過していないが、図2に示すように第2のホログラム素子2を透過する配置としてもよい。なお、第2のホログラム素子2を透過した第1の透過直進光を第2の透過直進光とする。また、第1の透過直進光が第2のホログラム素子2を透過する場合は、第2のホログラム素子2へ入射する前に位相差板(図示しない)により、透過率が高くなる偏光方向を設定することが望ましい。
【0029】
また、他の構成例としては、図3に示すように、第1のホログラム素子1と第2のホログラム素子2に用いる基板を兼用してもよい。この場合、基板の厚さは、第2の透過直進光と第2の回折偏向光の受光位置によって適宜設定される。いずれの図1乃至図3における第2のホログラム素子を透過または回折、透過及び回折を行うことにより、光軸の調整をすることが可能である。つまり、第1と第2のホログラム素子を多段に配置することにより、このような効果を生ずることが可能となるものである。
【0030】
上述の構成によれば、光束の分割手段として、多段配列した偏光ホログラムの透過および回折を利用しているため、従来のミラー分割によるミラー面精度ばらつきの影響及び配置誤差の影響によるビームスポット径劣化の不具合がなく、高価なハーフミラープリズムに比べて低コストな光束分割素子が提供できる。
【0031】
次に、本実施形態に係る光束分割素子のホログラム素子として用いられるポリマー分散型の液晶ホログラム素子について説明する。
【0032】
干渉露光前のポリマー分散型の液晶ホログラム素子の断面構成を図4に示す。図4に示すポリマー分散型の液晶ホログラム素子は、非重合性液晶分子と、重合性モノマー又はプレポリマーと、図示しない光重合開始剤と、を均一に混合した組成物を二枚の透明基板間で挟んで構成される。組成物の厚みは、基板間隔を制御する図示しないスペーサー部材によって制御できる。組成物は感光性を有するため、ポリマー分散型の液晶ホログラム素子の作製工程において、感度を有する波長域の光を遮断した環境下で取り扱われる。
【0033】
ポリマー分散型の液晶ホログラム素子のスペーサー部材としては、液晶表示装置に用いられる球形スペーサー、ファイバースペーサー、PETフィルム、マイラーフィルムなどを用いることができる。また、フォトリソグラフィーとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状(凹凸形状も含む)を形成して良い。スペーサー部材はホログラム領域内に存在してもよいが、光散乱等の影響を考えるとホログラムの有効領域外に形成するのが好ましい。スペーサー部材の高さは、数μmから数十μmの範囲にて使用でき、回折光の波長とポリマー部と液晶部の屈折率差に応じて所望のホログラム層厚みとなるように適宜設定する。透明基板には、液晶表示装置に用いられるようなガラス、プラスチック基板などを用いることができる。
【0034】
組成物に関して、非重合性液晶としては屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用できる。液晶材料は、あるオーダーパラメーターの配向状態において、重合性モノマーあるいはプレポリマーの硬化層の屈折率とほぼ等しい屈折率となる液晶材料を選択してもよい。または、液晶材料を選択してから、その液晶のあるオーダーパラメーターの配向状態での屈折率とほぼ等しい屈折率になるように重合性モノマーあるいはプレポリマーを選択してもよい。
【0035】
非重合性液晶の相組成としては、ネマチック、コレステリック、スメクチックのいずれのタイプでも良く、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶などを用いることができる。特に前記の中で、末端にハロゲン基が置換された2環材料または多環材料を主とした組成が液晶ホログラム素子の光学特性の偏光選択特性に非常に有効である。ここで、偏光選択性とはp偏光(後述する周期構造の配列方向と平行な偏光方向)とs偏光(後述する周期構造の配列方向と垂直な偏光方向)の回折効率の比であり、偏光選択性が小さいほど偏光方向による比が大きくなり、良好な特性になると定義する。
【0036】
重合性モノマーまたはプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。このような重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物であり、モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられるが、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適に使用できる。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述の酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
【0037】
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α-アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを例示することができる。光重合開始剤の添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度に依存するが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下がよく、さらに0.5重量%以上3重量%以下が最良である。
【0038】
光重合開始剤の添加量に関しての詳細な説明は省略するが、添加量が少なすぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が起こり難くなり、必要な露光時間が長くなってしまう。逆に、光重合開始剤が多すぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が不十分な状態で硬化してしまうため、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が悪くなるという問題がある。同様にして、非重合性液晶材料と重合性モノマーあるいはプレポリマーの混合比率も相分離に大きく影響し、非重合液晶の混合比率が少なすぎる場合には、十分な複屈折(屈折率変調量)が得られず、多すぎる場合には、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が悪くなる。また、ポリマー中の液晶分子はドロップレット化し、散乱成分の原因となるため全体の透過率は低下する。混合比率としては、重合性モノマーあるいはプレポリマーの合計量100重量%に対して、非重合性液晶材料は10重量%〜30重量%の割合がよく。さらには20重量%〜25重量%の割合が最良である。この割合においては得られる複屈折と液晶による散乱成分とのバランスが良く、高透過率となる。
【0039】
ここで、相分離によるホログラム形成過程について図5を用いて説明する。図示しない所望の波長のレーザ光源による二光束干渉露光を用いて、組成物中に露光を行うと、干渉縞の明部において重合性モノマーあるいはプレポリマーの光重合反応が始まる。この時、硬化収縮が起こって密度差が生じ、隣接する重合性モノマーあるいはプレポリマーが明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた非重合性液晶が暗部に向かって追い出されることで相分離が起こる。この時、液晶分子が移動して行く際にモノマーやポリマー鎖との相互作用で液晶分子長軸を移動方向に配向させようとする力が働くと考えられる。すなわち、相分離過程において干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働くと考えられる。
【0040】
最終的には図5のように干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と非重合性液晶層の周期構造が形成され、液晶層部の配向ベクトルが干渉縞の間隔方向を向いた状態が得られると考えられる。この干渉露光および相分離過程において、試料を適当な温度に加熱保持しておくことがよく。温度によって相分離の速度が変化し、液晶分子の配向性に影響を及ぼすと考えられる。最適な加熱温度は使用する材料に依存するが概ね40℃から100℃程度である。
【0041】
相分離によるポリマー層と非重合性液晶層の周期構造では、厳密にはポリマーと非重合性液晶が周期的に完全に分離することは困難であり、ここで言うポリマー層とはポリマー成分が多い領域であり液晶分子を含んでいても良い。また、非重合性液晶層とは非重合性液晶成分が多い領域でありポリマー成分を含んでいても良い。実際にはポリマー層と液晶層の界面は理想的な平面ではなく凹凸状であると推測されるため、図5示したように界面での液晶分子長軸方向のバラツキは大きく、液晶層のオーダーパラメーターは若干小さい状態となっている。
【0042】
作製する周期構造のピッチは、所望の回折角や波長によって異なるが、概ね0.2μmから10μmの範囲である。例えば、405nmの入射光に対して20°の回折角を得るためには、1.1μm程度のピッチ、650nmの入射光に対しては2.3μm程度のピッチが必要となる。ポリマー層と液晶層界面の傾斜角は基板面に対して垂直方向を0°として0°から±20°程度が好ましい。露光量としては光重合開始剤の添加濃度や露光時の温度に依存するが、屈折率変調量が飽和安定した状態を得る0.5J/cm2から30J/cm2がよく、さらには安定した生産性を得るためには1J/cm2から15J/cm2がよい。
【0043】
上述の構成によれば、干渉露光により作製する液晶ホログラムは原版複製が可能であるため、低コスト化が実現できる。この液晶ホログラム素子を多段に配列することで、低コストな光束分割素子が提供できる。
【0044】
図6は、本実施形態に係る光束分割素子が有するホログラム素子の断面の概略構成である。ホログラム素子は、光学異方性(複屈折性)を示す領域と光学等方性を示す領域が周期的に構成されている。機能動作としては、例えば、図7に示すように、素子へ入射する偏光方向がs偏光(ここでは紙面垂直方向である周期配列方向と垂直とする)であり、等方性領域の屈折率nと複屈折性領域の一方の屈折率noがn=noのとき、光はそのまま透過する。また、入射する偏光方向がp偏光(ここでは紙面左右方向である周期配列方向と平行とする)であり、等方性領域の屈折率nと複屈折性領域のもう一方の屈折率neがn≠neのとき、光は回折する。このように入射光の偏光方向により、透過と回折の選択がなされる機能を有する。図7ではp偏光が回折し、s偏光が透過しているが、周期構造の屈折率によってはp偏光が透過し、s偏光が回折する場合もある。
【0045】
また、図6では光学異方性領域と光学等方性領域の周期構造は基板に挟まれている構成を示しているが、これに限るものではなく、一枚の基板上に成膜されていてもよく、基板上になくてもよい。ここで、光学異方性領域と光学等方性領域の周期構造を有するホログラム素子の構成としては、複屈折性媒体に格子形状を形成し、格子溝を等方性媒体にて埋めた構成、等方性媒体に格子形状を形成し、格子溝を複屈折性媒体にて埋めた構成がある。
【0046】
ホログラム素子における格子形状の形成はフォトリソグラフィーとエッチングまたは切削加工や成形技術等により形成することができる。また、等方性媒体としては、フォトポリマー等の透明樹脂や石英、青板、白板、BK7等の光学硝材が使用できるが、複屈折性を有さなければこれに限るものではない。複屈折媒体としてはニオブ酸リチウム結晶、ニオブ酸タンタル結晶、酸化チタン結晶、高分子複屈折膜(高分子フィルム)、液晶等が使用できる。特に高分子複屈折膜や液晶は生産性に優れている。
【0047】
高分子複屈折膜は、高分子フィルムを延伸して高分子鎖を配向させることによって複屈折性を有した高分子膜であり、簡単に大量生産することができ、低コストで偏光分離素子の作製ができるといった利点がある。延伸する高分子フィルムの高分子材料としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアクリルレート、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン等が使用できるが、これに限るものではない。
【0048】
上述の構成によれば、光学的異方性を示す領域が高分子複屈折膜からなり、この高分子複屈折膜は高分子フィルムを延伸して高分子鎖を配向させることによって複屈折性を有した高分子膜である。これにより、高分子複屈折膜を簡単に大量生産することができるため、低コスト化が実現できる。この偏光ホログラム素子を多段に配列することで、低コストな光束分割素子が提供できる。
【0049】
液晶も表示装置などに汎用されているため製造面において低コストで量産性がよい。また複屈折性(屈折率異方性)が大きいため、回折効率を比較的容易に向上させることができるといった利点がある。液晶としては非重合性液晶におけるネマチック、コレステリック、スメクチックなど一般的な液晶タイプを使用することができ、複屈折性を有すれば重合性液晶も使用することができる。作製時には複屈折性を効率よく利用するために配向膜、ラビング、光配向等の配向処理をすることが好ましい。重合性液晶を用いた場合、複屈折性は小さくなるが、熱安定等の信頼性が向上する。
【0050】
上述の構成によれば、光学的異方性を示す領域が一般的に表示装置などに汎用されている液晶からなるため、製造面において低コストで量産性がよい。また、液晶の光学異方性(複屈折性)は大きいため、回折効率を比較的容易に向上させることができる。
【0051】
また、ホログラム素子構成において耐湿熱性、耐久性のためにオーバーコート層を設けることが好ましく、オーバーコート層を形成する材料としては、常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率を持つ透明樹脂等を使用することが好ましい。
【0052】
図6及び7に示したホログラム素子は体積型屈折率変調ホログラムであり、一般的に、回折効率はホログラムの屈折率変調量ΔnHと厚みTの積ΔnH・Tに依存し、理論的には最大回折効率100%が得られる。すなわち、特定な偏光方向における光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域の屈折率変調量ΔnHが一定である場合、ホログラム素子の周期構造の厚みT(膜厚またはセルギャップと同じ)を設定することで回折効率を適宜設定することができる。ここで、図6に示すφは格子周期構造に垂直なベクトルであり、周期構造配列面を基準(0°)とし45°<φ<135°の関係にあるものとする。
【0053】
図8に体積型屈折率変調ホログラム素子の回折効率および透過率と膜厚の関係を示す。前記したように体積型屈折率変調ホログラム素子は理論的に最大100%の回折効率であり、回折効率と透過率の関係は全体で100%である。
【0054】
ここで、同一の膜厚(セルギャップ)を有する偏光ホログラム素子を図1のように多段に配列し、入射偏光方向をホログラム周期構造の配列方向と平行にした場合、素子の膜厚(セルギャップ)が最大回折効率を得るT2においては、第1のホログラム素子1にて全ての光が回折され、第2のホログラム素子2にて再回折される。すなわち、第1透過直進光は発生せず、光軸のシフトのみが行われ光束は分割されない。また、素子の膜厚(セルギャップ)が最大回折効率の半分を得るT1においては、第1のホログラム素子1にて第1の透過直進光と第1の回折偏向光に均等に分割されるが、第2のホログラム素子2においても第2の回折偏向光が均等に分割されるため、多段に配列された素子から出射される光は三光束となり、強度もばらばらとなる。
【0055】
そこで、膜厚(セルギャップ)の異なるホログラムを図1のように多段に配列した構成において、入射偏光方向はホログラム周期構造の配列方向と平行とし、第1のホログラム素子1の膜厚が図8のようにT1とする場合、回折効率は50%、透過率は50%となる。第2のホログラム素子1の膜厚が図8のようにT2とする場合、回折効率は100%、透過率は0%となる。すなわち、図1に示す第2の回折偏向光の効率は50%、第1の透過直進光の効率は50%の割合で二光束を均等に分割することができる。
【0056】
以上のことから膜厚(セルギャップ)の異なる第1のホログラム素子1と第2のホログラム素子2を多段に配列することで光束を分割することができ、膜厚を適切に設定することで強度を均等に設定することができる。
【0057】
上述の構成によれば、膜厚の異なるホログラム素子を用いた構成とすることで、入射偏光方向はp偏光固定によって光束分割が成されるため、素子へ入射する偏光方向の調整が不要となる。また、第1のホログラム素子1の膜厚が小さく設定されているため、入射角依存性の許容範囲が広い。
【0058】
また、第1のホログラム素子1の膜厚はT1、第2のホログラム素子2の膜厚はT2とし、第2のホログラム素子の膜厚T2は周期構造と配列方向と略平行な直線偏光に対し回折効率が最大となる膜厚に設定されている場合、図8の回折効率と膜厚の関係からT1=T2/2またはT1=3T2/2の関係にあることで上記の分割が成り立つが、体積型ホログラムは一般的に膜厚が大きくなると回折効率の入射角度依存性が大きくなるため、T1=T2/2の関係にある方がよい。さらに膜厚T1、T2は0.9×T2/2<T1<1.1×T2/2の関係を満たすことで、第2の回折偏向光:第1の透過直進光は43%~59%:41%〜57%の割合で分割することができ、一般的な無偏光ハーフミラーの透過率の変動と比較して約2%変動を低減することができる。
【0059】
上述の構成によれば、第1のホログラム素子1の膜厚が小さく設定されているため、入射角依存性の許容範囲が広く、膜厚の設定値が規定されることで光束分割のバランスの精度が向上する。
【0060】
ここで、本実施形態に係る光束分割素子の概略構成について図9を用いて説明する。光束分割素子は第1のホログラム素子1と第2のホログラム素子2を多段に配列した構成により成されており、動作としては、前記したように入射光束を第1のホログラム素子1にて回折による偏向光と透過による直進光の二光束に分割し、回折による偏向光を第2のホログラム素子2にて再度回折により偏向させ、分割した二光束の進行方向および光強度を設定することができる。
【0061】
本構成においては第1のホログラム素子1と第2のホログラム素子2の膜厚(セルギャップ)が同一であり、入射光のp偏光成分とs偏光成分の強度の割合が略均等になるように入射偏光方向を設定することを特徴としている。このような構成の場合、入射偏光方向の設定調整等が必要となるが、同一の膜厚を有するため、一定条件の生産プロセスによる素子で実現できるため、生産性が向上させる。
【0062】
前記したように同一の膜厚(セルギャップ)を有するホログラム素子を多段配列した構成において、回折効率が最大となるような膜厚(セルギャップ)を設定したホログラム素子を用いる場合、入射偏光方向がホログラム素子の周期的な構造に略平行(p偏光)および垂直(s偏光)なときは光束が分割されない。これはホログラム素子への入射偏光成分(p偏光およびs偏光)の光強度に依存し、図10のように周期的構造の配列方向に平行な偏光方向が入射するとき、入射光の強度はs偏光成分がほとんどなく、ほぼp偏光成分であるため、入射光はs偏光成分に係る透過光はほとんど発生せず、p偏光成分に係る回折光のみが発生する。
【0063】
ここで、図11のように周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を少し傾けて入射するとき、入射光の強度はs偏光成分とp偏光成分とに分けられ、強度の割合としてはp偏光成分の方がs偏光成分より大きく、p偏光成分に係る回折光が大きく発生し、s偏光成分に係る透過光も少し発生する。
【0064】
また、図12のように周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を45°傾けて入射するとき、入射光の強度は等しい割合でs偏光成分とp偏光成分とに分けられるため、p偏光成分に係る回折光とs偏光成分に係る透過光は均等になる。
【0065】
このように、第1のホログラム素子1により分割される第1の回折偏向光と第1の透過直進光の割合は入射光のs偏光成分とp偏光成分の光強度の割合に依存する。また、周期構造の平均的な屈折率も入射偏光方向によって変化し、僅かであるが第1の回折偏向光と第1の透過直進光の割合に起因する。
【0066】
図11及び12に示すように、周期構造の配列方向とは異なる偏光方向を有する直線偏光を入射し、p偏光成分とs偏光成分の強度を適宜調整することで、第1のホログラム素子1にてp偏光成分は第1の回折偏向光となり、s偏向成分は第1の透過直進光となる。次に第2のホログラム素子2にてp偏向成分は第2の回折偏向光となり、s偏向成分は第2の透過直進光となり、光束が分割される。
【0067】
ここで、入射偏光方向の設定は一般的な位相差板により設定でき、偏光板、グラントムソンプリズム、1/2波長板、などが使用できる。また、光源としてLD等の偏光光を用いる場合は光源を回転させることでも設定できる。
【0068】
上述の構成によれば、膜厚が一定のホログラム素子を用いた構成とすることで、生産性が向上できる。また、膜厚が一定のホログラム素子を用いた多段配列構成の光束分割素子において、LD等の光源の回転および位相差板による簡便な調整にて、p偏向成分とs偏向成分の強度バランスが実現できる。
【0069】
図13は、図9に示す光束分割素子の回折効率と入射偏光方向との理想的な関係を示す図である。図13に示すように、入射偏光方向が周期的な構造の配列方向に対して43±3°または137±3°である場合、光束の分割バランスが50%±10%以内であり、用途にもよるが一般的な光学素子として問題ない特性が得られる。
【0070】
上述の構成によれば、膜厚が一定のホログラム素子を用いた多段配列構成の光束分割素子において、LD等の光源の回転および位相差板による膜厚の設定値が規定されることで、p偏向成分とs偏向成分の強度バランスの精度が向上する。
【0071】
また、位相差板として1/4波長板を使用して円偏光または楕円偏光とする場合、円偏光においては、図14に示すように入射光のp偏光成分とs偏光成分の強度は均等に設定され、入射光を均等に分割することができる。楕円偏光においても方位角を適宜設定することでp偏光成分とs偏光成分の強度の比率が設定できるため、均等な光束分割のバランスをたもつことができる。図14においては円偏光の回転を左回転としているが、回転方向は左右どちらでもよい。このように円偏光を入射する場合、光源側の偏光方向に対して軸を設定すればよく、偏光ホログラム素子への偏光方向の設定が不要になる。
【0072】
上述の構成によれば、膜厚が一定のホログラム素子を用いた多段配列構成の光束分割素子において、LD等の光源の回転および位相差板による調整なしで、p偏向成分とs偏向成分の強度バランスが実現できる。
【実施例1】
【0073】
厚み0.7mmのガラス基板の片面に青色光および赤色光に対する反射防止膜を形成し、およそ4μmと8μm径のビーズスペーサーをそれぞれ混入したそれぞれの接着剤により二枚のガラス基板を貼り合わせた。接着剤の塗布は反射防止膜形成面とは反対の面で、基板の縁2箇所に塗布した。
【0074】
次に以下の(1)〜(5)の材料の混合物からなる組成物を約65℃に加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約4μmと8μmの組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
(1)ネマチック液晶(メルク製 TL216、Δε>0) 25重量部
(2)フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600) 75重量部
(3)ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A) 10重量部
(4)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO) 5重量部
(5)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア819) 1重量部
セル中に注入後、この組成物は室温下において等方性を示した。
【0075】
次に波長442nm、出力80mWのHe−Cdレーザによる二光束干渉露光系を作成した。レーザ光を分割、拡大して、1つの光束が約10mW/cm2程度の平行光として、2光束の交差角度を28度に設定した。この波長と交差角度では二光束の交差領域に約1μm周期の干渉縞が生成される。セル基板を加熱装置に取り付け、約65℃に加熱した状態で、約1分間の二光束干渉露光を行い、液晶ホログラム素子を作製した。この時、基板面の垂直方向に対して+7度と+35度の方向から二光束が入射するように設定した。
【0076】
液晶ホログラム素子の特性評価としては、作製した素子に波長633nmの直線偏光のレーザ光を照射して、入射光強度に対する0次光と+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるようにNDフィルターを用いて調整し、入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、素子に入射する偏光方向(p偏光、s偏光)を切り換え可能な構成とした。このときのp偏光は干渉露光時の干渉縞と直交方向とし、s偏光は干渉縞の方向とした。以下に膜厚4μmおよび8μmの液晶ホログラム素子の特性を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
ここで、液晶ホログラム素子Aを第1のホログラム素子1、液晶ホログラム素子Bを第2のホログラム素子2として、図1のように多段配列して光束分割素子を作製した。素子への入射偏光方向はp偏光とし、配列素子間距離は約10mmとした。この光束分割素子の第1の透過直進光と第2の回折偏向光の入射光に対する光利用効率を測定したところ、第1の透過直進光:第2の回折偏向光の光利用効率は48%:44%で良好に分割することができた。
【実施例2】
【0079】
実施例1と同様にして液晶ホログラム素子Bを2素子作製した。この2素子を図9のように多段配列して光束分割素子を作製した。素子への入射偏光方向はp偏光から43°傾けた偏光方向とし、配列素子間距離は約10mmとした。この光束分割素子の第2の透過直進光と第2の回折偏向光の入射光に対する光利用効率を測定したところ、第2の透過直進光:第2の回折偏向光の光利用効率は49%:45%で良好に分割することができた。
【実施例3】
【0080】
実施例2と同様の光束分割素子において、素子への入射偏光方向はp偏光から40°と46°傾けた偏光方向とし、配列素子間距離は約10mmとした。この光束分割素子の第2の透過直進光と第2の回折偏向光の入射光に対する光利用効率を測定したところ、第2の透過直進光:第2の回折偏向光の光利用効率は、
40°傾けた偏光方向⇒45%:49%
46°傾けた偏光方向⇒54%:40%
であり分割バランスは50%±10%以内で良好であった。
【実施例4】
【0081】
実施例2と同様の光束分割素子において、素子への入射偏光方向はλ/4板にて円偏光とし、配列素子間距離は約10mmとした。この光束分割素子の第2の透過直進光と第2の回折偏向光の入射光に対する光利用効率を測定したところ、第2の透過直進光:第2の回折偏向光の光利用効率は52%:42%の割合で良好に分割することができた。本実施例4においては偏光方向の調整なしにλ/4板を設置するだけで光束を均等に分割できた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態に係る光束分割素子の構成を示す図である。
【図2】他の実施形態に係る光束分割素子の構成を示す図である。
【図3】他の実施形態に係る光束分割素子の構成を示す図である。
【図4】干渉露光前の液晶ホログラム素子の断面構成を示す図である。
【図5】相分離によるホログラム形成過程を示す図である。
【図6】ホログラム素子の断面の構成を示す図である。
【図7】ホログラム素子の機能動作を示す図である。
【図8】体積型屈折率変調ホログラム素子の回折効率及び透過率と膜厚の関係を示す図である。
【図9】本実施形態に係る光束分割素子の構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る光束分割素子に周期的構造の配列方向に平行な偏光方向が入射された様子を示す図である。
【図11】本実施形態に係る光束分割素子に周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を少し傾けて入射した様子を示す図である。
【図12】本実施形態に係る光束分割素子に周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を45°傾けて入射した様子を示す図である。
【図13】光束分割素子の回折効率と入射偏光方向との理想的な関係を示す図である。
【図14】本実施形態に係る光束分割素子に位相基板として1/4波長板を使用して円偏向又は楕円偏向により偏向した光束を入射した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 第1のホログラム素子
2 第2のホログラム素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、互いに直交する偏光成分を透過又は回折する光束分割素子において、
第1のホログラム素子と第2のホログラム素子が多段に配列され、前記第1のホログラム素子の透過及び回折により光を分割し、前記第2のホログラム素子の透過及び回折により前記第1のホログラムにより分割された光の光軸を調整することを特徴とする光束分割素子。
【請求項2】
多段に配列された前記第1のホログラム素子と前記第2のホログラム素子が有する周期構造の膜厚が異なることを特徴とする請求項1記載の光束分割素子。
【請求項3】
前記第1のホログラム素子の膜厚T1が前記第2のホログラム素子の膜厚T2よりも薄く、
光束の入射側に対して前記第1のホログラム素子、前記第2のホログラム素子の順に配列されていることを特徴とする請求項2記載の光束分割素子。
【請求項4】
前記第1のホログラム素子の膜厚T1と前記第2のホログラム素子の膜厚T2が、
0.9×T2/2<T1<1.1×T2/2
の関係にあることを特徴とする請求項3記載の光束分割素子。
【請求項5】
前記第1のホログラム素子の膜厚と前記第2のホログラム素子の膜厚が同じであり、
前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向に略平行な方向をp偏向とし、前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向に略垂直な方向をs偏向としたとき、入射される光束のp偏光成分とs偏光成分の強度が略均等であることを特徴とする請求項1記載の光束分割素子。
【請求項6】
入射される光束の偏光が直線偏光であることを特徴とする請求項5記載の光束分割素子。
【請求項7】
入射される光束の偏光方向が前記各ホログラム素子の周期的な構造の配列方向を基準0°とし、周期的な構造の配列方向に対して43±3°又は137±3°傾いていることを特徴とする請求項6記載の光束分割素子。
【請求項8】
入射される光束の偏光が円偏光であることを特徴とする請求項5記載の光束分割素子。
【請求項9】
前記各ホログラム素子の周期的な構造は、非重合性液晶と、重合性モノマー又はプレポリマーと、光重合開始剤と、からなる組成物を一対の透明基板間に保持し、前記組成物を二光束以上の多光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子。
【請求項10】
前記各ホログラム素子の光学異方性を示す領域が高分子複屈折膜からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子。
【請求項11】
前記各ホログラム素子の光学異方性を示す領域が非重合性液晶あるいは重合性液晶からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の光束分割素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−164861(P2008−164861A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353357(P2006−353357)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】