説明

光検出装置

【課題】入射光の入射位置及び入射方向を同時に検出することができるようにした光検出装置を提供する。
【解決手段】第一の平面内にマトリックス状に配置した複数個の光検出素子から成る第一の光センサアレイ11と、第一の平面の光入射側と反対側にて所定間隔dで平行に隔置した第二の平面内にマトリックス状に配置した複数個の光検出素子から成る第二のセンサアレイ12と、スポット状の入射光による第一及び第二の光センサアレイ11、12からの検出信号に基づいて、当該入射光の第一及び第二の光センサアレイ11、12上における入射位置P1,P2を演算すると共に、演算した入射位置間の偏位量ΔPから当該入射光の入射角度θを演算して、当該入射光の入射位置及び入射方向を決定する信号処理部14と、を含むように、光検出装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の入射位置及び入射方向を検出する光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光位置センサとしては、例えば、非特許文献1に記載されている位置検出素子(Position Sensing Device)、非特許文献2に記載されている電荷結合素子(CCD)、非特許文献3に記載されている相補型MOS(以下、CMOSと呼ぶ。)等の画像センサを利用したセンサが知られている。
これらの光位置センサは、いずれも二次元平面である受光面に入射した光の入射位置を、マトリックス状に配置された光検出素子により検出するように構成されている。
これにより、光位置センサからの検出信号に基づいて、各光検出素子の強度分布から光入射位置に対応する光検出素子を演算して、この光検出素子の位置を入射位置として決定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高橋 克、来海 暁、安藤 繁、「時間相関型PSDの提案と試作」、電気学会研究会資料、SSA、センサシステム応用研究会、1999(1)、pp.31-36、1999-11-11
【非特許文献2】寺西 信一、「CCDとそのイメ-ジセンサへの応用(情報を担う静電荷)」、静電気学会誌、16(4)、pp.274-281、1992-07
【非特許文献3】川人 祥二、「CMOSイメージセンサの最近の動向」、電気学会論文誌、E、センサ・マイクロマシン準部門誌、123(10)、pp.387-391、2003-10-01
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような光位置センサでは、入射光の入射位置を検出することはできるが、入射光の入射方向、即ち入射角度を高精度で検出することはできなかった。
また、入射光の入射位置及び入射角度を同時に高精度で検出することができる光検出装置は今まで存在しなかった。
【0005】
このため、このような光位置センサを利用したレーザ光式距離計測器である、所謂レーザレンジファインダにおいては、非接触且つ高精度で物体形状を測定することができ、工業用部品の三次元形状検査やリバースエンジニアリングにおける三次元CADデータの取得等、産業分野で広く利用されている。しかしながら、レーザレンジファインダでは、入射光の入射位置を高精度で検出することができなかった。
【0006】
物体形状を測定するレーザレンジファインダの測定対象としては、拡散物体と鏡面物体がある。拡散物体とは、物体に対して照射した光がその表面で乱反射し全方向に拡散するような物体である。鏡面物体とは、物体に対して照射した光がその表面で正反射方向のみに集中して反射するような物体のことである。
しかしながら、従来のレーザレンジファインダにおいては角度を測定する場合には、その測定対象が拡散物体に限定されてしまっていた。この場合には、物体に対して照射した光がその表面で乱反射し全方向に拡散するので高精度の角度測定はできなかった。
さらに、従来のレーザレンジファインダにおいては金属等の光沢のある鏡面物体への適用は原理的に困難であった。これは、入射光を検出する光位置センサが入射光の入射位置のみを検出し、入射角度を検出できないことに起因する。即ち、拡散物体の場合には、拡散物体表面で反射した拡散反射光は、レーザレンジファインダのレンズ中心を通る軌跡として計算できるのに対して、鏡面物体表面で反射した鏡面反射光は、レンズ中心を通るとは限らない。
ここで、入射光に関して、光の入射位置及び入射角度を同時に高精度で検出することができると、鏡面物体表面で反射した鏡面反射光でも、レンズ中心を通らず、レンズの屈折作用により光位置センサに入射する光について、入射位置及び入射角度が分かるので、鏡面反射光の軌跡を正確に計算できることになる。従って、鏡面物体であっても、物体の表面反射特性を計測したり、表面粗さの推定あるいは三次元形状の計測、さらには表面傷の検査を行なうことが可能になる。
【0007】
これに対して、例えば光位置センサの前側にピンホールを配置して、入射光の光路を拘束し、光位置センサにおける入射位置と既知のピンホールの位置に基づいて、入射光の入射角度を検出する方法がある。
しかしながら、この方法においては、ピンホールにより入射光が制限されてしまうため、光位置センサにおける受光光量が著しく低下してしまう。従って、光位置センサにおける検出精度が著しく低下してしまう。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、入射光の入射位置及び入射方向を同時に検出することができるようにした光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の光検出装置は、第一の平面内にマトリックス状に配置された複数個の光検出素子から成る第一の光センサアレイと、第一の平面の光入射側と反対側にて所定間隔で平行に隔置された第二の平面内にマトリックス状に配置された複数個の光検出素子から成る第二のセンサアレイと、スポット状の入射光による第一及び第二の光センサアレイからの検出信号に基づいて、当該入射光の第一及び第二の光センサアレイ上における入射位置を演算すると共に、演算した入射位置間の偏位量から当該入射光の入射角度を演算して、当該入射光の入射位置及び入射方向を決定する信号処理部と、を含んでいることを特徴とする。
上記構成によれば、スポット状の光が入射すると、入射光は、第一の光センサアレイに入射し、第一の光センサアレイ上の光検出素子で受光されると共に、第一の光センサアレイを通過した光が、同様に第二の光センサアレイに入射し、第二の光センサアレイ上の光検出素子で受光される。これにより、第一及び第二の光センサアレイから信号処理部に検出信号が出力される。信号処理部は、第一及び第二の光センサアレイからの検出信号に基づいて、個々の光検出素子の検出信号の強度を比較することによって、入射光の入射位置を演算する。さらに、信号処理部は、第一及び第二の光センサアレイにおける演算した入射位置に基づいて、その偏位量及び第一及び第二の光センサアレイ間の所定間隔から、入射光の入射角度を演算する。これにより、信号処理部は、スポット状の入射光に関する入射位置及び入射方向を決定する。
【0010】
本発明による光検出装置は、好ましくは、第一の光センサアレイにおける各光検出素子が、光透過性材料から成る第一の基板上に形成されており、第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、第一の基板と平行に配置された光透過性材料から成る基板上に形成されている。この構成によれば、二段構成の光センサアレイにより、従来の光センサアレイを利用して容易に且つ低コストで光検出装置を構成することができる。
【0011】
本発明による光検出装置は、好ましくは、第一の光センサアレイにおける各光検出素子が、光透過性材料から成る平行平板状の基板の上面に形成されており、第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、基板の下面に形成されている。この構成によれば、二段構成の光センサアレイにより、従来の光センサアレイを利用して容易に且つ低コストで光検出装置を構成することができる。
【0012】
本発明による光検出装置は、好ましくは、信号処理部が、スポット状の入射光による第一及び第二の光センサアレイからの検出信号に基づいて、各光検出素子の検出信号の強度分布から、当該入射光の入射位置を演算する。この構成によれば、検出すべきスポット光が第一及び第二の光センサアレイにおける複数個の光検出素子に入射したとしても、各光検出素子の検出信号の強度を比較することによって、入射位置を高精度で決定することができる。
【0013】
本発明による光検出装置は、好ましくは、第一及び第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、入射光に基づいて可視光を発生させる材料層を入射面に備えている。
本発明による光検出装置は、好ましくは、材料層が、入射光に基づいて可視光を発生させる蛍光体層である。
上記構成によれば、検出すべきスポット光が可視光でなくても、また各光検出素子の検出可能周波数帯域になくても、入射光が材料層に入射して可視光を発生させるので、この可視光が各光検出素子に受光され、検出され得る。従って、入射光が可視光でない例えばX線または紫外光あるいは赤外光等であっても、入射光の入射位置及び入射角度が正確に検出される。
【0014】
本発明による光検出装置は、好ましくは、第一の光センサアレイが、光入射側に光吸収層を備えている。この構成によれば、入射光が第一の光センサアレイに入射する前に、光吸収層を通過し、一部が光吸収層に吸収されることにより、入射光の光強度が調整されるので、各光検出素子には検出に最適な光強度の入射光が入射することになる。従って、各光検出素子による入射光の検出が正確に且つ確実に行なわれる。
【0015】
本発明による光検出装置は、好ましくは、第一及び第二の光センサアレイが、冷却装置を備えている。この構成によれば、第一及び第二の光センサアレイが冷却装置により冷却されるので、各光検出素子の検出信号における熱雑音が低減されることになり、入射光の入射位置及び入射角度がより正確に検出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、入射光の入射位置及び入射方向を同時に検出することができるようにした光検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による光検出装置の第一の実施形態における要部の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の光検出装置を示す拡大断面図である。
【図3】図1の光検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1の光検出装置における光センサアレイに設けられた光検出素子の構成例を示し、(A)は横型の構成例及び(B)は縦型の構成例である。
【図5】図1の光検出装置におけるスポット状の入射光の強度分布の一例を示すグラフである。
【図6】図1の光検出装置における光センサアレイにドットマトリックス状に設けられた光検出素子のピッチと入射角度分解能との関係を示すグラフである。
【図7】本発明による光検出装置の第二の実施形態の要部を示す図2と同様の拡大断面図である。
【図8】本発明による光検出装置の第三の実施形態の要部を示す図2と同様の拡大断面図である。
【図9】本発明による光検出装置の第四の実施形態の要部を示す図2と同様の拡大断面図である。
【図10】本発明による光検出装置の第五の実施形態の要部を示す図2と同様の拡大断面図である。
【図11】本発明による光検出装置の第六の実施形態の要部を示す図2と同様の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1から図3は、本発明による光検出装置10の第一の実施形態の構成を示している。図1は本発明による光検出装置10の第一の実施形態における要部の構成を示す概略斜視図、図2は図1の光検出装置10を示す拡大断面図、図3は図1の光検出装置10の電気的構成を示すブロック図である。
図1から図3において、光検出装置10は、第一の光センサアレイ11と、第二の光センサアレイ12と、駆動制御部13と、信号処理部14と、から構成されている。
【0019】
第一の光センサアレイ11は、公知の構成であって、第一の平面内にてそれぞれX方向及びY方向に並んでマトリックス状に配置された複数個、図示の場合、5×5個の光検出素子11aから構成されている。
また、第二の光センサアレイ12は、同様に公知の構成であって、第一の平面の光入射側と反対側にて所定間隔で平行に隔置された第二の平面内に、同様にマトリックス状に配置された複数個、図示の場合、5×5個の光検出素子12aから構成されている。
【0020】
この場合、第一の光センサアレイ11は、平行平板状の基板15の上面に形成されており、また第二の光センサアレイ12は、この基板15の下面に形成されている。
ここで、基板15は、光透過率90〜70%程度で屈折率が既知である光透過性材料、例えばSiO,Si等から構成されており、前述した所定間隔dに対応する厚さを有している。
【0021】
そして、基板15の上面及び下面には、それぞれ第一の光センサアレイ11及び第二の光センサアレイ12がそれぞれ半導体プロセスの微細化技術を利用して、高精度で形成される。第一の光センサアレイ11及び第二の光センサアレイ12は、例えばガラス基板上に薄膜フォトダイオードとして形成することができる。第一の光センサアレイ11及び第二の光センサアレイ12は、半導体基板上に形成されたものを使用し、ガラス基板15に接着剤等で張り合わせてもよい。
【0022】
即ち、第一の光センサアレイ11及び第二の光センサアレイ12の各光検出素子11a,12aは、それぞれ素子ピッチpで図1のX方向及びY方向にマトリックス状に並んで、且つ基板15を挟んで対応する光検出素子11a及び12aが互いに垂直に(Z方向に)整合するように位置合わせして配置されている。
これにより、基板15の上下両面にそれぞれ形成された第一及び第二の光センサアレイ11,12は、互いに所定間隔dで平行に配置されることになる。
【0023】
また、各光検出素子11a,12aとしては、好ましくは光吸収タイプのpn接合やpin接合からなる半導体素子、所謂フォトダイオードまたはバイポーラ型やMOS型のフォトトランジスタが使用される。半導体素子の材料は、Si、GeやGaAsのような化合物半導体や化合物半導体の混晶を用いることができ、使用する光や受光する放射線の波長に応じて選定すればよい。
【0024】
各光検出素子11a,12aの構成例について説明する。
図4は、図1の光検出装置10における光センサアレイに設けられた光検出素子の構成例を示し、(A)は横型の構成例及び(B)は縦型の構成例である。
図4(A)に示すように、各光検出素子11a,12aは、例えばn層の側壁にp層が形成された横型のpn接合半導体として形成することができる。
さらに、図4(B)に示すように、n層の上面にp層が形成された縦型のpn接合半導体として構成してもよい。上記した駆動制御部13及び信号処理部14は、個別の集積回路や光センサアレイの周辺回路として形成したものを使用することができる。周辺回路は、ダイオード、FET、MOSFET、CMOSFETからなる集積回路で形成することができる。つまり、本発明による光検出装置10の駆動制御部13及び信号処理部14は、フォトダイードマトリクスを有している所謂CMOS型のイメージセンサの製造方法と同様にして作製できる。この場合、駆動制御部13及び信号処理部14は、本発明による光検出装置10の周辺回路として形成することができる。
【0025】
ここで、光検出装置10に対して斜め上方から例えば半導体レーザ等のスポット状の光Lが入射したとき、図1に示すように、入射光Lは、第一の光センサアレイ11に入射すると共に、その一部L1が第一の光センサアレイ11を透過し、基板15を通って第二の光センサアレイ12に入射する。このとき、入射光Lは、第一の光センサアレイ11上で入射位置P1に入射し、また入射光L1は、第二の光センサアレイ12上で入射位置P2に入射する。
【0026】
駆動制御部13は、公知の構成であって、第一及び第二の光センサアレイ11,12をそれぞれ駆動することにより、各光検出素子11a,12aを順次に動作させ、入射光による検出信号を取り出す。これにより、第一及び第二の光センサアレイ11,12の各光検出素子11a,12aの検出信号が後述する信号処理部14に出力される。
【0027】
信号処理部14は、駆動制御部13を介して入力される第一及び第二の光センサアレイ11,12の各光検出素子11a,12aの検出信号に基づいて、入射光の入射位置及び入射角度を設定する。
【0028】
図5は、図1の光検出装置10におけるスポット状の入射光の強度分布の一例を示すグラフである。図5に示すように、スポット状の入射光Lに関して、例えば第一の光センサアレイ11上における強度分布は、所謂ガウス分布として得られる。従って、信号処理部14は、互いに隣接する複数個の光検出素子11aの検出信号に基づいて、各光検出素子11aにおける入射光Lの強度分布から、第一の光センサアレイ11上における入射位置P1を補間計算により演算することができる。
【0029】
同様にして、入射光L1についても、第二の光センサアレイ12上における入射光L1の強度分布に基づいて、第二の光センサアレイ12上における入射位置P2を補間計算により演算することができる。これにより、光センサアレイ11,12の各光検出素子11a,12aのピッチより小さな分解能で、入射位置P1,P2を設定することが可能である。
【0030】
さらに、信号処理部14は、これら二つの入射位置P1,P2の間の偏位量、即ちXY方向の距離ΔP(=P1−P2)を演算し、この距離ΔPと第一及び第二の光センサアレイ11,12間の距離dから、下記(1)式により入射光Lの入射角度θを演算する。
θ=arctan(ΔP/d) (1)
【0031】
ここで、入射光Lの強度分布の半値幅をw/2とし、光センサアレイ11,12における光検出素子11a,12aのピッチをpとすると、入射光Lに対する光検出素子11a,12aのピッチpは、好ましくは下記(2)式及び(3)式となるように設定される。
w/p>3.5 (2)
arctan(0.1p/d)<0.5度 (3)
【0032】
図6は、図1の光検出装置10における光センサアレイにドットマトリックス状に設けられた光検出素子のピッチと入射角度分解能との関係を示すグラフである。図6に示すように、上記式(1)〜(3)式で演算された入射角度θは、距離d=1mmとすると、各光検出素子11a,12aのピッチpに対して、図6に示すような角度分解能が得られる。従って、ピッチpを0.020mmとすると、入射角度θに関して、0.10度の分解能が得られることになる。
【0033】
本発明の第一の実施形態による光検出装置10は、以上のように構成されており、次のように動作する。
即ち、駆動制御部13により第一及び第二の光センサアレイ11及び12が動作している状態で、スポット状の入射光Lが図1に示すように入射すると、入射光Lは、第一の光センサアレイ11に入射して、その光検出素子11aに受光されると共に、その一部L1が第一の光センサアレイ11を透過し、さらに基板15を通って、第二の光センサアレイ12に入射し、その光検出素子12aにより受光される。
このとき、入射光Lは、第一の光センサアレイ11上で入射位置P1に入射し、また入射光L1は、第二の光センサアレイ12上で入射位置P2に入射する。そして、第一及び第二の光センサアレイ11及び12における各光検出素子11a,12aは、それぞれ入射光L,L1の強度に対応する検出信号を出力し、駆動制御部13を介して信号処理部14に出力する。
【0034】
これにより、信号処理部14は、第一及び第二の光センサアレイ11,12における各光検出素子11a,12aの検出信号に基づいて、各光検出素子11a,12aにおける入射光L,L1の強度分布から、入射位置P1及びP2を補間計算により演算する。
さらに、信号処理部14は、演算した入射位置P1,P2の間の偏位量、即ちXY方向の距離ΔPを演算し、さらに入射光Lの入射角度θを演算する。これにより、入射光Lに関して、その入射位置P1及び入射角度θが得られることになる。
【0035】
図7は、本発明による光検出装置20の第二の実施形態の構成を示している。図7において、光検出装置20は、図1から図3に示した光検出装置10とほぼ同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
光検出装置20は、図1から図3に示した光検出装置10とは、第一及び第二の光センサアレイ11,12における各光検出素子11a,12aが、それぞれその上側の入射面に、蛍光体層21,22を備えている点でのみ異なる構成になっている。
【0036】
これらの蛍光体層21,22は、それぞれ光検出素子11a,12aで検出できない波長帯域の光、例えばX線,紫外線,赤外線,放射線等の不可視光が入射したとき、励起されて可視光を発生させるような蛍光体が混入された光透過性樹脂材料等から構成されている。
【0037】
このような構成の光検出装置20によれば、図1から図3に示した光検出装置10と同様に作用すると共に、光検出素子11a,12aの検出可能な波長帯域にかかわらず、入射光Lが可視光でなくても、入射光Lの入射位置及び入射角度を検出することができる。
【0038】
図8は、本発明による光検出装置30の第三の実施形態の構成を示している。図8において、光検出装置30は、図1から図3に示した光検出装置10とほぼ同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
光検出装置30は、図1から図3に示した光検出装置10とは、第一の光センサアレイ11の上側に、光吸収層31を備えている点でのみ異なる構成になっている。
【0039】
この光吸収層31は、入射光Lに対して光吸収特性を備える光吸収材料から構成されており、入射光Lの一部を吸収することにより、入射光Lの透過率を制御して、第一の光センサアレイ11に入射する入射光Lの強度を調整することができる。
【0040】
このような構成の光検出装置30によれば、図1から図3に示した光検出装置10と同様に作用すると共に、光吸収層31によって、第一の光センサアレイ11及び第二の光センサアレイ12に入射する入射光L及びL1の強度が低減される。
従って、入射光Lの強度が光検出素子11a,12aの検出可能な強度範囲を超えているような場合でも、光検出素子11a,12aに最適な強度の入射光L,L1が入射することになり、入射光の入射位置及び入射角度を適正に決定することができる。
【0041】
図9は、本発明による光検出装置40の第四の実施形態の構成を示している。図9において、光検出装置40は、図1から図3に示した光検出装置10とほぼ同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。光検出装置40は、図1から図3に示した光検出装置10とは、第一及び第二の光センサアレイ11,12の両側に、冷却装置41が配置されている点でのみ異なる構成になっている。冷却装置41としては、ペルチェ素子等を用いることができる。
【0042】
冷却装置41は、それ自体公知の構成であって、その冷却作用によって、隣接する第一及び第二の光センサアレイ11,12を冷却することができる。
【0043】
このような構成の光検出装置40によれば、図1から図3に示した光検出装置10と同様に作用すると共に、使用に伴って発生する熱そして入射光Lによる第一及び第二の光センサアレイ11,12の温度上昇が抑制され、温度上昇に伴う熱雑音の発生が抑制される。従って、入射光Lの入射位置及び入射角度をより正確に決定することができる。
【0044】
図10は、本発明による光検出装置50の第五の実施形態の構成を示している。図10において、光検出装置50は、図1から図3に示した光検出装置10とほぼ同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
光検出装置50は、図1から図3に示した光検出装置10とは、第一及び第二の光センサアレイ11,12が、それぞれ個別の基板51,52上に形成されている点でのみ異なる構成になっている。
【0045】
基板51,52は、光検出装置10における基板15と同様の光透過性材料から構成されているが、一般的な光センサアレイの基板と同様の厚さを有している。即ち、基板51,52を含む第一及び第二の光センサアレイ11,12は、互いに同じ構成である。
そして、基板51,52は、図示の場合には、第一及び第二の光センサアレイ11,12が互いに所定間隔dとなるように、また個々の光検出素子11a,12aがZ方向に整合するように、図示しない支持部材によって互いに平行に支持されている。
【0046】
このような構成の光検出装置50によれば、図1から図3に示した光検出装置10と同様に作用すると共に、第一及び第二の光センサアレイ11,12として、従来からある光センサアレイを利用することにより、光検出装置50を低コストで容易に構成することができる。ただし、第一及び第二の光センサアレイ11,12の各光検出素子11a,12aをZ方向に正確に整合させて組み立てる必要がある。
【0047】
図11は、本発明による光検出装置60の第六の実施形態の構成を示している。図11において、光検出装置60は、図1から図3に示した光検出装置10とほぼ同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
光検出装置60は、図1から図3に示した光検出装置10とは、第一及び第二のセンサアレイ11,12及び基板15の代わりに、所謂SOI(Silicon on Insulator)ウェハを利用した光センサデバイス61を備えている点でのみ異なる構成になっている。
【0048】
光センサデバイス61は、例えばn型のSi(100)基板62の表面にマトリックス状に並んだ複数個のp層63を形成することにより、第二の光センサアレイ11を構成すると共に、基板62の上方に、基板15と同様の構成の透明基板64を形成した後、この透明基板64の表面に、マトリックス状に並んだ複数個の光検出素子11aを形成することにより、構成されている。
ここで、透明基板64は、第一及び第二の光センサアレイ11,12がZ方向に所定間隔dを有するような厚さに選定されている。透明基板としては、例えば無アルカリガラスやシリカガラスを用いることができる。
【0049】
このような構成の光検出装置60によれば、図1から図3に示した光検出装置10と同様に作用すると共に、第一及び第二の光センサアレイ11,12として、一体化され且つ半導体プロセスにより一つの半導体デバイスとして構成されているので、第一及び第二の光センサアレイ11,12において、対応する光検出素子11a,12aが互いにZ方向に高精度で整合して配置され得ることになる。
【0050】
次に、本発明の光検出装置10の製造方法について説明する。
先ず光検出装置10の光センサアレイ11,12の製造方法について説明する。
最初に、Si等の半導体からなるn又はn基板15上にn層又はn層とi層とをエピタキシャル成長で形成する。エピタキシャル成長した基板15にSiOからなる酸化膜を形成する。
次に、酸化膜のp層を形成する領域だけを、マスク工程と酸化膜のエッチングにより窓開けを行うと共に、p層となる不純物の拡散やイオン注入を行い、酸化膜の形成した窓部を介してp層を形成する。そして、基板15のn層及びp層に電極を蒸着法により形成する。
【0051】
次に、周辺回路となる駆動制御部13及び信号処理部14の製造方法について説明する。
基板15上に形成したn層又はi層にn型MOSFETを形成するpウェルを拡散等の工程により形成する。pウェルには、n型MOSFETを形成する。n層には、p型MOSFETを形成する。このようにして、駆動制御部13及び信号処理部14をCMOS工程により形成することができる。
上記した光センサアレイ11,12の電極形成等の工程は、CMOS工程と共通に行うことができるので、同時に実施してもよい。
最後に、基板15の表面側に保護膜(パッシベーション膜)を形成する。
【0052】
上記の各材料の堆積には、スパッタ法やCVD法、MBE法、レーザアブレーション法などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。所定の形状の電極や配線を形成するためのマスク工程には、光露光やEB露光などを用いることができる。
【0053】
以上述べたように、本発明によれば、入射光の入射位置及び入射方向を同時に検出することができるようにした、極めて優れた光検出装置10,20,30,40,50,60が提供される。
【0054】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、上述した実施形態において、光検出素子11a,12aとして、光吸収タイプのpn接合半導体素子またはMOS型のフォトトランジスタが使用されているが、これに限らず、検出すべき入射光に対して感度を有するものであれば、他の種類の光検出素子、例えばTFT型フォトトランジスタ等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10,20,30,40,50,60:光検出装置
11:第一の光センサアレイ
11a,12a:光検出素子
11b,12b:蛍光体層
12:第二の光センサアレイ
13:駆動制御部
14:信号処理部
15:基板
21,22:蛍光体層
31:光吸収層
41:冷却装置
51,52:基板
61:光センサデバイス
62:基板
63:p
64:透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の平面内にマトリックス状に配置された複数個の光検出素子から成る第一の光センサアレイと、
前記第一の平面の光入射側と反対側にて所定間隔で平行に隔置された第二の平面内にマトリックス状に配置された複数個の光検出素子から成る第二のセンサアレイと、
スポット状の入射光による前記第一及び第二の光センサアレイからの検出信号に基づいて、当該入射光の第一及び第二の光センサアレイ上における入射位置を演算すると共に、演算した入射位置間の偏位量から当該入射光の入射角度を演算して、当該入射光の入射位置及び入射方向を決定する信号処理部と、
を含んでいることを特徴とする、光検出装置。
【請求項2】
前記第一の光センサアレイにおける各光検出素子が、光透過性材料から成る第一の基板上に形成されており、前記第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、前記第一の基板と平行に配置された光透過性材料から成る基板上に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第一の光センサアレイにおける各光検出素子が、光透過性材料から成る平行平板状の基板の上面に形成されており、前記第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、前記基板の下面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記信号処理部が、スポット状の入射光による前記第一及び第二の光センサアレイからの検出信号に基づいて、各光検出素子の検出信号の強度分布から、当該入射光の入射位置を演算することを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の光検出装置。
【請求項5】
前記第一及び第二の光センサアレイにおける各光検出素子が、入射光に基づいて可視光を発生させる材料層を入射面に備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の光検出装置。
【請求項6】
前記材料層が、入射光に基づいて可視光を発生させる蛍光体層であることを特徴とする、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第一の光センサアレイが、光入射側に光吸収層を備えていることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第一及び第二の光センサアレイが、冷却装置を備えていることを特徴とする、請求項1から7の何れかに記載の光検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−47658(P2013−47658A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186628(P2011−186628)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【Fターム(参考)】