説明

光測距装置

【課題】要求に応じて動作状態を変更することのできる光測距装置を提供する。
【解決手段】光測距装置1は、光反射面を有する可動部が揺動することで光反射面に入射される光を対象領域内でリサージュ走査できる光走査部5、可動部を第1方向、第2方向に揺動させる第1駆動信号、第2駆動信号を光走査部5に供給して可動部を揺動駆動する駆動部7、光反射面に向かってパルス光を出射する光源部9、パルス光の反射光を受光する受光部11及びパルス光の出射タイミングと反射光の受光タイミングとに基づいてパルス光を反射した物体までの距離を計測する測距部13を備える。駆動部7は、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変更する位相差変更部72、及び、第1駆動信号及び第2駆動信号を大きさ調整して可動部の揺動振幅を変更する振幅変更部73の少なくとも一方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光(パルス光)を対象領域内でリサージュ走査して該対象領域内に存在する物体の距離を計測する光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を対象領域内でリサージュ走査して対象物までの距離を計測する光測距装置が知られている。この種の光測距装置は、例えば、レーザパルスを出射する光源と、二次元共振型ガルバノミラーで構成される走査機構と、走査機構を駆動する走査駆動部と、反射したレーザパルスを受光する受光部と、レーザパルスの出射タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて対象物までの距離を計測する測距部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術のようにリサージュ走査による測距方式を採用した光測距装置においては、角度分解能の向上、すなわち、対象領域内において距離を計測する位置(以下単に「計測位置」という)の増加が要求されている。例えば、対象領域内におけるリサージュ走査軌跡の間隔を密にすることで、対象領域内における計測位置を増加させることができる。
【0005】
しかし、光源の性能や安全性などの面からレーザパルスを連続出射できる時間間隔には限界があり、計測位置を増加させると全ての計測位置において測距を行なうために必要なリサージュ走査の回数(または走査周期)も増加する。また、上記走査機構においてはリサージュ走査周期を大幅に小さくすることは困難である。このため、通常は、計測位置を増加させると、対象領域についての距離計測が完了するまでの時間(以下「測距完了時間」という)が長くなる。
【0006】
一方、対象領域内を短時間で移動又は通過する物体などを考慮すると、上記測距完了時間はできるだけ短い方が好ましいが、そうすると、対象領域内における計測位置を増加させることができなくなる。
【0007】
このように、リサージュ走査による測距方式において、角度分解能の向上(計測位置の増加)と測距完了時間の短縮化とはトレードオフの関係にあり、一方の要求を満足させるように光測距装置を構成すると、要求が他方に変化した場合にこの要求変化に光測距装置を対応させることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、リサージュ走査による測距方式を採用した光測距装置において、要求に応じてその動作状態を変更することのできる光測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光測距装置は、光反射面を有する可動部が互いに直交する第1方向及び第2方向に揺動可能に形成され、該可動部が揺動することによって前記光反射面に入射される光を対象領域内でリサージュ走査できる光走査部と、前記可動部を前記第1方向に揺動させる第1駆動信号及び前記可動部を前記第2方向に揺動させる第2駆動信号を前記光走査部に供給して前記可動部を揺動駆動する駆動部と、前記光反射面に向かってパルス光を出射する光源部と、前記光源部から出射されたパルス光が前記対象領域内に存在する物体によって反射された反射光を受光する受光部と、前記光源部によるパルス光の出射タイミングと受光部による前記反射光の受光タイミングとに基づいて前記物体の距離を計測する測距部と、を備え、前記駆動部は、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更する位相差変更部、及び、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の大きさを調整して前記可動部の揺動振幅を変更する振幅変更部の少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明による光測距装置によれば、光走査部の可動部(光反射面)を揺動駆動する駆動部が位相差変更部及び振幅変更部の少なくとも一方を備えており、例えば光走査部によるリサージュ走査軌跡の間隔を密にして対象領域内における計測位置を増加させたり、光走査部によるリサージュ走査周期の前半と後半とでほぼ同一の走査軌跡としてリサージュ走査の1/2周期毎に対象領域についての距離計測を完了させたりすることが可能となる。これにより、要求に応じて光測距装置の動作状態を変更することができ、好ましい状態での測距を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】光測距装置の光走査部として二次元ガルバノミラーの構成を示す図である。
【図3】第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変化させたときの光走査部によるリサージュ走査軌跡を示す図である。
【図4】リサージュ走査周期の前半と後半とで互いに走査方向が逆で同一のリサージュ走査軌跡を示す図である。
【図5】内側可動部の揺動振幅を小さくしたときのリサージュ走査軌跡を示す図である。
【図6】第1実施形態による光測距装置の第1変形例の要部を示す図である。
【図7】第1実施形態による光測距装置の第2変形例の要部を示す図である。
【図8】第2実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態における光走査部によるリサージュ走査軌跡の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態による光測距装置1は、パルス光(レーザパルス)を対象領域内でリサージュ走査して該対象領域内に存在する物体までの距離を計測(測距)し、その計測結果に基づく距離画像を生成して出力(表示)する。
【0013】
本実施形態による光測距装置1は、複数の動作モードで動作可能に構成されており、図1に示すように、情報入力部3と、電磁駆動型の光走査部5と、光走査部5を駆動する駆動部7と、パルス光を出射する光源部9と、出射されたパルス光の反射光を受光する受光部11と、パルス光を反射した物体までの距離を計測する測距部13と、測距部13による計測結果に基づいて距離画像を生成する画像生成部15と、生成された距離画像を出力(表示)する表示部17と、を備える。
【0014】
情報入力部3には、例えばユーザによって光測距装置1の動作に関する情報、例えば、光測距装置1の動作モードを選択するモード選択指令が入力される。本実施形態において選択可能な動作モードには、基本となる「通常計測モード」、通常計測モードよりも計測位置を多くして対象領域について詳細な測距を行なう「詳細計測モード」、対象領域の一部について詳細な測距を行なう「部分詳細モード」及び通常計測モードよりも対象領域についての測距完了時間が短い「高速計測モード」が含まれる。
【0015】
光走査部5は、光反射面(ミラー)を有する可動部が互いに直交する第1方向及び第2方向に揺動可能に形成されており、光反射面に入射される光(パルス光)を対象領域内で二次元走査、より具体的にはリサージュ走査することが可能である。このような光走査部5としては、例えば、本出願人により提案された特許第2722314号公報に記載の二次元走査型の半導体ガルバノミラー(以下単に「二次元ガルバノミラー」という)を用いることができる。
【0016】
図2は、光走査部5の具体例としての二次元ガルバノミラー50の構成を示している。
図2に示すように、二次元ガルバノミラー50は、枠状の固定部51と、固定部51の内側に配置されて一対の第1トーションバー52,52によって揺動可能に支持された外側可動部53と、外側可動部53の内側に配置されて第1トーションバー52,52に軸方向が直交する一対の第2トーションバー54,54によって揺動可能に支持された内側可動部55と、を備える。
【0017】
内側可動部55の中央部には光反射面(ミラー)56が形成され、外側可動部53及び内側可動部55の周縁部にはそれぞれ第1駆動コイル57、第2駆動コイル58が形成されている。第1駆動コイル57の端部は、固定部51に形成された第1電極端子59,59に接続され、第2駆動コイル58の端部は、固定部51に形成された第2電極端子60,60に接続されている。
【0018】
また、第1駆動コイル57に磁界を作用させる一対の第1永久磁石61,61及び第2駆動コイル58に磁界を作用させる一対の第2永久磁石62,62が固定部51を挟んでそれぞれ対向配置されている。なお、固定部51、第1トーションバー52,52、外側可動部53、第2トーションバー54,54及び内側可動部55は、半導体基板から一体的に形成されている。
【0019】
二次元ガルバノミラー50は、第1駆動コイル57及び第2駆動コイル58に流れる電流(交流電流)と、第1永久磁石61,61及び第2永久磁石62,62による磁界と、によって外側可動部53及び内側可動部55にローレンツ力が作用し、その結果、内側可動部55が二次元方向に揺動する。内側可動部55が揺動することによって光反射面56に入射されるパルス光が対象領域内でリサージュ走査される。
【0020】
駆動部7は、第1電極端子59,59及び第2電極端子60、60を介して駆動信号(振動電流)を光走査部5に供給して内側可動部55(及び外側可動部53)を揺動駆動する。駆動部7は、第1駆動コイル57に第1駆動信号を供給するとともに第2駆動コイル58に第2駆動信号を供給する駆動回路71と、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変更する位相差変更部72と、第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさ(振幅)を調整して内側可動部55の揺動振幅を変更する振幅変更部73と、を備える。
【0021】
駆動回路71は、位相差変更部72から位相差を入力するとともに振幅変更部73から第1、第2駆動信号の大きさを入力し、入力した大きさの第1駆動信号及び第2駆動信号を入力した位相差で光走査部5に供給する。ここで、第1駆動信号の周波数及び第2駆動信号の周波数は、それぞれ二次元ガルバノミラー50の共振周波数と同一又はその近傍の周波数に設定されており、第1駆動信号を第1駆動コイル57に供給することにより外側可動部53及び内側可動部55が第1トーションバー52,52の軸回りに揺動し、第2駆動信号を第2駆動コイル58に供給することにより内側可動部55が第2トーションバー54,54の軸回りに揺動する。なお、本実施形態においては、第1駆動信号の供給による外側可動部53及び内側可動部55の揺動によって光反射面56に入射されるパルス光が水平方向に走査され、第2駆動信号の供給による内側可動部55の揺動によって光反射面56に入射されたパルス光が垂直方向に走査されるものとする。
【0022】
位相差変更部72は、第1駆動信号(周波数)を基準として第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変化させる。具体的には、位相差変更部72は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を設定し、設定した位相差を駆動回路71に出力する。
【0023】
図3は、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変化させたときの光走査部5によるリサージュ走査軌跡を示している。ここでは、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差、すなわち、水平方向走査と垂直方向走査との位相差を、0〜2π(rad)の間でπ/4(rad)毎に変化させた場合のリサージュ走査軌跡を示している。
【0024】
リサージュ走査軌跡は、第1駆動信号の周波数(水平方向の走査周期)と第2駆動信号の周波数(垂直方向の走査周期)とから決定される周期(リサージュ周期)後に再び走査起点に戻る。なお、本実施形態においては、第1駆動信号の周波数は1600.00(Hz)であり、第2駆動信号の周波数は444.44(Hz)である。
図3に示すように、上記位相差を変更することで光走査部5によるリサージュ走査軌跡の間隔を密にしたり、粗くしたりすることができる。そして、本実施形態においては、上記位相差がπ/2(3π/2も同様)のときに、リサージュ走査軌跡の間隔が最も密になる。リサージュ走査軌跡の間隔が密になれば、対象領域内における計測位置を増加させること(すなわち、角度分解能を向上させること)が可能となる。また、上記位相差が0(π、2πも同様)のときには、図4に示すように、リサージュ走査の一周期(TLs)の前半(図4(a))と後半(図4(b))とで互いに走査方向が逆で同一のリサージュ走査軌跡となる。この場合、リサージュ走査周期の前半と後半とで対象領域内の同一位置での計測(測距)が可能となる。
【0025】
振幅変更部73は、第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさ(振幅)を調整して光走査部5の内側可動部55の揺動振幅を変更する。具体的には、振幅変更部73は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさをそれぞれ設定し、設定した大きさを駆動回路71に出力する。内側可動部55の揺動振幅を小さくすれば光走査部5によるリサージュ走査範囲は小さくなり、内側可動部55の揺動振幅を大きくすれば光走査部5によるリサージュ走査範囲は大きくなる。
【0026】
図5は、振幅変更部73による内側可動部55の揺動振幅の変更の一例を示している。
第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさを一定の割合で小さくして内側可動部55の揺動振幅を小さくすると、図5に示すように、光走査部9による走査範囲、すなわち、リサージュ走査軌跡が相似形で小さくなるが、対象領域の一部についてはリサージュ走査軌跡の間隔が密になる。つまり、対象領域の一部分をズームして測距を行なうような状態となり、該対象領域の一部について計測位置を増加させることが可能になる。但し、光走査部9による走査範囲(リサージュ走査軌跡)が小さくなるため、光走査部9による走査範囲と測距を行ないたい部分(領域)とが一致するように光測距装置1の向きなどを変更する必要がある。
【0027】
図1に戻って、光源部9は、光走査部5の内側可動部55に形成された光反射面66に向かってパルス光を出射するものであり、光源91と、光源91の駆動を制御する光源制御部92と、投光光学系93と、を含む。
【0028】
光源91は、例えばレーザダイオードであり、光源制御部92からの駆動信号によって発光してパルス光(レーザパルス)を出射する。
光源制御部92は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて光源91の発光タイミング、すなわち、光源部9によるパルス光の出射タイミングを制御する。光源制御部92は、例えば動作モード毎に対象領域内の計測位置と時刻(タイミング)とが関連付けられた発光タイミングテーブルを備えており、動作モードに応じて予め設定されたタイミング(計測位置)で光源91を発光させる。
投光光学系93は、光源91が発したパルス光を好ましい状態とするものであり、例えばコリメータレンズを含み、光源91が発したパルス光を平行光に変換する。
そして、光源部9から出射されたパルス光は、光走査部5の光反射面56で反射されて対象領域内をリサージュ走査される。
【0029】
受光部11は、光源部9から出射されて対象領域内に存在する物体によって反射されたパルス光(反射光)を受光して検知するものであり、例えばフォトセンサを用いることができる。なお、受光部11は、反射光を直接受光するものであってもよいし、光走査部5(光反射面56)を介して反射光を受光するものであってもよい。
測距部13は、光源部9によるパルス光の出射タイミングと、受光部11による反射光の受光タイミングと、を入力し、両者の時間差(光飛行時間)に基づいてパルス光を反射した物体までの距離を計測する。測距部13による距離の計測は、対象領域内の各計測位置において、すなわち、光源部9からのパルス光の出射毎に行なわれ、その計測結果が画像生成部15に出力される。
【0030】
画像生成部15は、測距部13によって計測された距離に基づいて各計測位置の画素値を決定し、対象領域についての距離画像を生成する。生成される距離画像は、例えば、計測された距離毎に色が異なる画像、すなわち、対象領域内の存在する物体についてはその奥行き距離が反映された三次元的な画像となる。そして、画像生成部15で生成された距離画像は表示部17に出力される。表示部17は、ディスプレイを備え、画像生成部15から出力された距離画像を表示する。この距離画像によって対象領域内に存在する物体を認識できることはもちろん、物体の位置、物体までの距離、物体の姿勢の変化なども検出することが可能となる。
【0031】
次に、以上のような構成を有する光測距装置1の動作を説明する。
通常計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力され又は情報入力部3からモード選択指令が入力されない場合、光測距装置1は通常計測モードで動作する。この通常計測モードでは、位相差変更部72によって第1駆動信号と第2駆動信号との位相差、すなわち、光走査部5による水平方向走査と垂直方向走査との位相差が0(rad)に設定され、光源部9から通常計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。この場合、光測距装置1は、図3(a)に示すリサージュ走査軌跡上の各計測位置(例えば、計測数=n1)にて測距を行ない、対象領域内の全ての計測位置において測距が完了すると(例えば、リサージュ走査の一周期毎に)、対象領域についての距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の一周期毎に更新される。
【0032】
また、詳細計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力された場合、光測距装置1は詳細計測モードで動作する。この詳細計測モードでは、位相差変更部72によって第1駆動信号と第2駆動信号との位相差がπ/2(rad)に設定(変更)され、光源部9から詳細計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。この場合、光測距装置1は、図3(c)に示すリサージュ走査軌跡上の各計測位置(例えば、計測数=n2>n1)にて測距を行ない、対象領域内の全ての計測位置において測距が完了すると(例えば、リサージュ走査の複数周期毎に)、距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の複数周期毎に更新される。詳細計測モードでは、通常計測モードよりも計測位置を多くして対象領域について詳細な計測を行なうことができるが、全ての計測位置でパルス光を出射するためにリサージュ走査回数が多くなり、通常計測モードよりも測距完了時間、すなわち、距離画像の生成(更新)周期が長くなる(フレームレートが低くなる)。従って、詳細計測モードは、通常、フレームレートよりも詳細な測距が要求される場合に選択される。
【0033】
また、部分詳細モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力された場合、光測距装置1は部分詳細モードで動作する。この部分詳細モードでは、位相差変更部72によって第1駆動信号と第2駆動信号との位相差が0(rad)に設定され、振幅変更部73によって第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさが通常計測モードの場合に対して一定の割合で小さく設定され、光源部9から部分計測モード用に予め設定されたタイミングでパルス光が出射される。但し、ここでは通常計測モードと同じタイミングでパルス光が出射されるものとする。この場合、光測距装置1は、図5に示すように小さくなった走査軌跡上の各計測位置(例えば、計測数=n1)にて測距を行ない、全ての計測位置において測距が完了すると(例えば、リサージュ走査の一周期毎に)、距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の一周期毎に更新される。部分詳細モードでは、通常計測モードの場合に対してフレームレートを低下させることなく、対象領域の一部について詳細な計測を行なうことができる。従って、部分詳細モードは、通常、測距が要求される領域が狭い場合に選択される。
【0034】
また、高速計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力された場合、光測距装置1は高速計測モードで動作する。この高速計測モードでは、位相差変更部72によって第1駆動信号と第2駆動信号との位相差が0(rad)に設定され、光源部9から高速計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。高速計測モードでは、リサージュ走査の一周期の前半と後半とで対象領域内の同一位置で測距を行なう。この場合、光測距装置1は、図4(a)に示すリサージュ走査軌跡の前半部分の各計測位置(例えば、計測数=n3=n1/2)にて測距を行ない、全ての計測位置において測距が完了すると(すなわち、リサージュ走査の1/2周期毎に)、距離画像を生成して出力するとともに、図4(b)に示すリサージュ走査軌跡の後半部分の各計測位置(計測数=n3)にて測距を行ない、全ての計測位置において測距が完了すると(すなわち、リサージュ走査の1/2周期毎に)、距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の1/2周期毎に更新される。高速計測モードでは、通常計測モードの場合に対して、対象領域についての測距完了時間、すなわち、距離画像の生成周期(更新周期)が1/2となり、フレームレートが向上する。従って、高速計測モードは、通常、フレームレートが要求される場合に選択される。
【0035】
このように、本実施形態による光測距装置1においては、光走査部5としての二次元ガルバノミラー50の内側可動部55(光反射面56)を揺動駆動する駆動部7が位相差変更部72及び振幅変更部73を備えている。位相差変更部72は、モード選択指令に応じて、内側可動部55を水平方向に揺動させる第1駆動信号と内側可動部51を垂直方向に揺動させる第2駆動信号との位相差を変更し、振幅変更部73は、モード選択指令に応じて第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさを調整して内側可動部55(光反射面56)の揺動振幅を変更する。また、光源部9は、モード選択指令に応じて予め設定されたタイミングでパルス光を出射する。これにより、光測距装置1は、通常計測モード、詳細計測モード、部分詳細モード及び高速計測モードのいずれかで動作することが可能となり、使用用途などに応じて好ましい動作モードで光測距装置1を動作させることができる。
【0036】
ところで、上記実施形態による光測距装置1は、通常計測モード、詳細計測モード、部分詳細モード又は高速計測モードで動作可能に構成されているが、これら全ての動作モードで動作可能なものに限るものではなく、適宜組み合わせた2つ又は3つの動作モードで動作可能に構成してもよい。換言すれば、駆動部7が、位相差変更部72と振幅変更部73との両方を必ずしも備える必要はなく、少なくとも一方を備えればよい。
【0037】
また、各動作モードにおける第1駆動信号と第2駆動信号との位相差や光源部9によるパルス光の出射タイミング(計測数)などは一例に過ぎず、適宜設定できるものである。すなわち、対象領域内の計測位置を増加させたい場合には、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変更して対象領域内のリサージュ走査軌跡の密度を高くするとともにパルス光の出射タイミングを適宜調整して対象領域内の計測位置を増加させればよい。例えば、通常計測モードでは第1駆動信号と第2駆動信号との位相差をπ/4(rad)とし、詳細計測モードでは上記位相差をπ/2(rad)とし、高速計測モードでは上記位相差を0(rad)としてもよい。また、部分詳細モードにおいて上記位相差を0(rad)以外の値としてもよい。
【0038】
ここで、特に詳細計測モード及び部分詳細モードにおいては、隣接する計測位置同士の距離が小さくなる。このため、対象領域に投光されるパルス光のビーム径をあらかじめ小さくしておくのが好ましい。そこで、投光光学系93が、光源91が発したレーザ光のビーム径を垂直方向及び水平方向の少なくとも一方に絞るビーム径変更部を備えるようにしてもよい。このようなビーム径変更部は、例えば、ビームを垂直方向に絞る第1シリンドリカルレンズ及びビームを水平方向に絞る第2シリンドリカルレンズの少なくとも一方、又は、収束レンズを用いて構成することができる。
【0039】
ビーム径変更部は、例えば、詳細計測モードにおいて通常計測モードに比べて対象領域の水平方向の計測位置が増加する場合には、投光光学系93によって光源91が発したレーザ光を水平方向に絞り、詳細計測モードにおいて通常計測モードに比べて対象領域の垂直方向の計測位置が増加する場合には、投光光学系93によって光源91が発したレーザ光を垂直方向に絞る。もちろん、光源91が発したレーザ光を水平方向及び垂直方向に絞るようにしてもよい。このようにすれば、光源をビーム径の小さい光源に変更する必要がなく、従来の光源を用いつつ詳細計測モード及び部分詳細モードを効果的に実現できる。
【0040】
なお、ビーム変更部に代えて光反射面56の反りを利用してビーム径を変更するようにしてもよい。例えば、光反射面56を凹面とすることでビーム径を絞ることができる。この場合、ビーム径を絞った後にコリメータレンズ等を通過させることで平行光にするのが好ましい。このようにしても、従来の光源を用いつつ、詳細計測モード及び部分詳細モードを効果的に実現できる。
【0041】
さらに、ビーム径変更部が、情報入力部3を介して入力されるモード選択指令に応じてビーム径を変更するようにしてもよい。例えば、内側可動部55に発熱体を設け、モード選択指令に応じて発熱体に電流を供給し発熱体の発する熱によって光反射面56が凹面(又は凸面)となるように内側可動部55が変形するように構成することが考えられる。
【0042】
また、上記第1実施形態による光測距装置1では、図3に示すように、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差を変化させたとしても、リサージュ走査軌跡の間隔が対象領域の中央付近では上下端付近に比べて粗くなる。そこで、対象領域の中央付近に少なくとも2つの走査軌跡を有するように光測距装置を構成してもよい。このようにすると、対象領域の中央付近における走査軌跡の間隔を密にして計測位置を増加することができ、特に詳細計測モードにおいて効果的である。以下に第1実施形態による光測距装置1の変形例として説明する。
【0043】
図6は、第1実施形態による光測距装置1の第1変形例の要部を示している。図6に示すように、第1変形例では、光源部9が光走査部5の光反射面56へのパルス光の入射角が異なる第1光源91aと第2光源91bとを有し、光走査部5による第1光源91aからのパルス光の走査範囲(A1)と、光走査部5による第2光源91bからのパルス光の走査範囲(A2)と、が対象領域の中央付近で重なるように構成している。
【0044】
このようにすると、光走査部5による走査範囲(すなわち、測距可能範囲)が拡がるとともに、両走査範囲が重なった部分においては、第1光源91aからのパルス光の走査軌跡の間を第2光源91bからのパルス光の走査軌跡が埋めることになって中央付近における走査軌跡の間隔が密になる。これにより、対象領域の中央付近における計測位置を十分に確保することができる。なお、この場合においては、クロストークを避けるために、第1光源91aと第2光源91bを異なる波長の光源としたり、第1光源91と第2光源91bとでパルス光の出射タイミングを異ならせたりするのが好ましい。
【0045】
図7は、第1実施形態による光測距装置1の第2変形例の要部を示している。図7に示すように、第2変形例では、光走査部5としての二次元ガルバノミラー50において、内側可動部55だけではなく、外側可動部53にも光反射面63を設け、内側可動部55に設けた光反射面56によってパルス光を二次元走査(リサージュ走査)するとともに、外側可動部53に設けた光反射面63によってパルス光を一次元走査するように構成している。
【0046】
具体的には、例えば、図7(a)に示すように、光源部9が第1光源91aと第2光源91bと有し、第1光源91aが内側可動部55に設けた光反射面56に向かってパルス光を出射するとともに、第2光源91bが外側可動部53に設けた光反射面63に向かってパルス光を出射するようにし、第1光源91aからのパルス光の光反射面56による走査範囲(二次元走査)と第2光源91bからのパルス光の光反射面63の走査範囲(一次元走査)とが走査範囲の中央付近で重なるように構成する。このようにしても、対象領域の中央付近における計測位置を増加することができる。
【0047】
また、図7(b)に示すように、1つの光源91が内側可動部55に設けた光反射面56及び外側可動部53に設けた光反射面63に向かってパルス光を出射するようにし、光源91からのパルス光の光反射面56による走査範囲(二次元走査)と光反射面63による走査範囲(一次元走査)とが走査範囲の中央付近で重なる部分を有するように構成してもよい。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態による光測距装置について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態による光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
第2実施形態による光測距装置100も、第1実施形態による光測距装置1と同様、パルス光(レーザパルス)を対象領域内でリサージュ走査して該対象領域内に存在する物体までの距離を計測(測距)し、その計測結果に基づく距離画像を生成して出力(表示)する。但し、第2実施形態による光測距装置100では、第1駆動信号の周波数と第2駆動信号の周波数とが同じであり、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差がπ/2(rad)に固定されている点が、第1実施形態による光測距装置1とは相違する。なお、以下の説明において、第1実施形態による光測距装置1と同一の要素については同一の符号を用いてその説明は省略する。
【0049】
本実施形態による光測距装置100は、複数の動作モードで動作可能に構成され、図5に示すように、情報入力部3と、電磁駆動型の光走査部5と、光走査部5を駆動する駆動部107と、パルス光を出射する光源部9と、出射されたパルス光の反射光を受光する受光部11と、パルス光を反射した物体までの距離を計測する測距部13と、測距部13による計測結果に基づいて距離画像を生成する画像生成部15と、生成された距離画像を出力(表示)する表示部17と、を備える。ここで、上記複数の動作モードには、「通常計測モード」、「詳細計測モード」及び「高速計測モード」が含まれる
【0050】
駆動部107は、駆動信号(交流電流)を光走査部5に供給して内側可動部55(及び外側可動部53)を揺動駆動する。駆動部107は、第1駆動コイル57に第1駆動信号を供給するとともに第2駆動コイル58に第2駆動信号を供給する駆動回路108と、第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさ(振幅)を調整して内側可動部55の揺動振幅を変更する振幅変更部109と、を備える。
【0051】
駆動回路108は、振幅変更部108から第1、第2駆動信号の大きさを入力し、入力した大きさの第1駆動信号及び第2駆動信号を光走査部5に供給する。但し、本実施形態においては、上記したように、第1駆動信号の周波数と第2駆動信号の周波数とは同じであり、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差がπ/2(rad)に固定されている。
【0052】
振幅変更部109は、第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさを調整して光走査部5の内側可動部55の揺動振幅を変更する。但し、本実施形態の振幅変更部109は、モード選択指令に応じて第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさ変更(設定)するのではなく、第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさを徐々に変化させる。これにより、光走査部5は内側可動部55の揺動振幅を変化させながらパルス光を走査する。具体的には、振幅変更部109は、内側可動部55の第1トーションバー52,52の軸回りの揺動振幅(水平走査振幅)と、第2トーションバー54,54に軸回りの揺動振幅(垂直走査振幅)と、を同じにしつつ、時間の経過とともに両揺動振幅を徐々に変化させるように第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさをそれぞれ設定し、設定した大きさを駆動回路108に出力する。つまり、振幅変更部109は、内側可動部55の水平・垂直の振幅比を一定としたまま、時間の経過とともに内側可動部55の揺動振幅を徐々に変化させることによって、光走査部5によるパルス光の走査振幅を一定の割合で増加させ、その後、一定の割合で減少させるようにしている。
【0053】
図9は、第2実施形態における光走査部5によるリサージュ走査軌跡を示している。
本実施形態では、第1駆動信号の周波数と第2駆動信号の周波数とが同じであり、内側可動部55の水平・垂直の駆動周期は一定である。また、第1駆動信号と第2駆動信号との位相差はπ/2(rad)であり、内側可動部55の水平・垂直の振幅比も一定となっている。この状態で振幅変更部109によって第1駆動信号及び第2駆動信号が徐々に大きくされて内側可動部55の揺動振幅が一定の割合で増加すると、リサージュ走査軌跡は、図9(a)に示すような対象領域の中心部から外側に向かって徐々に径が大きくなる渦巻き線となる。その後、第1駆動信号及び第2駆動信号が徐々に小さくされて内側可動部55の揺動振幅が一定の割合で減少すると、図9(b)に示すような外側から中心部に向かって徐々に径が小さくなる渦巻き線となる。つまり、本実施形態においては、リサージュ走査の一周期で渦巻き線状のリサージュ走査軌跡が対象領域を往復することとなり、リサージュ走査周期の前半のリサージュ走査軌跡(図9(a))と、リサージュ走査周期の後半のリサージュ走査軌跡(図9(b))とは、その大部分が同じ経路を辿る。
【0054】
以上のような構成を有する第2実施形態による光測距装置100の動作を説明する。
通常計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力され又は情報入力部3からモード選択指令が入力されない場合、光測距装置100は通常計測モードで動作する。この通常計測モードでは、光源部9から通常計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。この場合、光測距装置100は、図9(a)及び図9(b)に示す走査軌跡上の各計測位置(計測数=n4)にて測距を行ない、例えばリサージュ走査の一周期毎に対象領域についての距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の一周期毎に更新される。
【0055】
また、詳細計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力された場合、光測距装置100は詳細計測モードで動作する。この詳細計測モードでは、光源部9から詳細計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。この場合、光測距装置100は、図9(a)及び図9(b)に示す走査軌跡上の各計測位置(計測数=n5>n4,ここではn5=2×n4とする)にて測距を行ない、例えばリサージュ走査の二周期毎に対象領域についての距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の二周期毎に更新される。詳細計測モードは、通常、対象領域についての詳細な測距が要求される場合に選択される。
【0056】
また、高速計測モードを選択するモード選択指令が情報入力部3から入力された場合、光測距装置100は高速計測モードで動作する。この高速計測モードでは、光源部9から高速計測モード用に予め設定されたタイミング(計測位置)でパルス光が出射される。ここで、高速計測モードでは、対象領域の往走査時(リサージュ走査の一周期の前半)と復走査時(リサージュ走査の一周期の後半)とで同じ位置で光源部9からパルス光が出射される。この場合、光測距装置100は、図9(a)で示す走査軌跡上の各計測位置(計測数=n6<n4,ここではn6=n4/2とする)にて測距を行ない、リサージュ周期の1/2周期毎に対象画像についての距離画像を生成して出力し、また、図9(b)に示す走査軌跡上の同一計測位置(計測数=n6)にて測距を行ない、リサージュ走査の1/2周期毎に対象領域についての距離画像を生成して出力する。つまり、距離画像は、リサージュ走査の1/2周期毎に更新される。高速計測モードは、通常、フレームレートが要求される場合に選択される。
【0057】
このように、第2実施形態による光測距装置100は、光走査部5としての二次元ガルバノミラー50の内側可動部55(光反射面56)を揺動させる駆動部107が駆動回路108と振幅変更部109とを備えている。振幅変更部109は、内側可動部55の水平・垂直方向の揺動振幅比を一定としつつ、時間の経過とともに内側可動部55の揺動振幅を徐々に増加させ、その後、徐々に減少させるように第1駆動信号及び第2駆動信号の大きさを調整し、駆動回路108は、周波数が同じ第1駆動信号と第2駆動信号とを位相差π/2で出力する。また、光源部9は、動作モードに応じて予め設定されたタイミングでパルス光を出射する。これにより、光測距装置100は、動作モードに応じてパルス光の出射タイミングを変更するだけで、通常計測モード、詳細計測モード及び高速計測モードのいずれかで動作することが可能となり、使用用途などに応じて好ましい動作モードで光測距装置100を動作させることができる。なお、第2実施形態による光測距装置100において、内側可動部55の揺動振幅の変化速度や光源部9によるパルス光の出射タイミング(計測数)は適宜設定することができ、また、光源部9(投光光学系93)がビーム径変更部を備えてもよいことはもちろんである。
【0058】
ところで、上記第1、第2実施形態による光測距装置1,100では、情報入力部3を介して入力されるモード選択指令に応じて動作モードを変更しているが、他の方法によって動作モードを変更するようにしてもよい。以下にいくつか例を挙げて説明する。
【0059】
光測距装置1,100からの距離が一定の範囲内(例えば、1m〜10mの間)を主たる測距対象空間として設定し、この測距対象空間に物体が存在しているか否かによって動作モードを変更するようにしてもよい。例えば、光測距装置1,100が通常計測モード又は高速計測モードで動作しているときに、設定した測距対象空間に物体が入ってくると詳細計測モードに変更し、詳細計測モードで動作しているときに測距対象空間に物体が存在しなくなると通常計測モードに変更する。そして、さらに測距対象空間内に物体が存在しない状態が継続すると高速計測モードに変更する。この場合には、例えば、測距部13による計測結果を入力し、その入力した計測結果に基づいて動作モードを判定する動作モード判定部を設け、第1実施形態による光測距装置1においては動作モード判定部の判定結果を位相差変更部72及び光源制御部92に出力し、第2光測距装置100においては動作モード判定部の判定結果を光源制御部92に出力するように構成すればよい。
【0060】
また、対象領域内の物体までの距離に応じて動作モードを変更するようにしてもよい。例えば、光測距装置1,100は、まず通常計測モードで動作し、対象領域内の物体の全てが予め設定された第1距離よりも離れた位置に存在する場合には詳細計測モードに変更し、対象領域内の物体の少なくとも1つが予め設定された第2距離(<第1距離)よりも近い位置に存在する場合には高速計測モードに変更する。また、詳細計測モードで動作しているときに対象領域内に存在する少なくとも1つの物体が上記第1距離以内となると通常計測モードに変更し、高速計測モードで動作しているときに対象領域内に存在する全ての物体が上記第2距離以上離れると通常計測モードに変更する。すなわち、光測距装置1,100は、対象領域内の物体の少なくとも1つが第2距離よりも近い位置あれば高速計測モードで動作し、対象領域内の全ての物体が第1距離よりも離れた位置にあれば詳細計測モードで動作し、それ以外では通常計測モードで動作する。この場合においても、測距部13から入力した計測結果に基づいて動作モードを判定する動作モード判定部を設け、第1実施形態による光測距装置1においては動作モード判定部の判定結果を位相差変更部72及び光源制御部92に出力し、第2光測距装置100においては動作モード判定部の判定結果を光源制御部92に出力するように構成すればよい。
【0061】
さらに、光測距装置1,100を自動車などの移動体に取り付ける場合には、移動体の移動速度に応じて動作モードを変更するようにしてもよい。例えば、光測距装置1,100は、まず通常計測モードで動作し、移動体の移動速度(=光測距装置の移動速度)が予め設定された第1速度よりも高い場合には高速計測モードに変更し、移動体の移動速度が予め設定された第2速度(<第1速度)よりも低い場合には詳細計測モードに変更する。詳細計測モードで動作しているときに移動体の移動速度が上記第2速度以上となると通常計測モードに変更し、高速計測モードで動作しているときに移動体の移動速度が第1速度以下となると通常計測モードに変更する。すなわち、光測距装置1,100は、移動体の移動速度が第1速度よりも高いときは高速計測モードで動作し、移動体の移動速度が第2速度よりも低いときは詳細計測モードで動作し、それ以外では通常計測モードで動作する。この場合には、光測距装置1,100に速度センサ又は移動体から移動速度を入力する速度入力部を設けるとともに移動体の移動速度に基づいて動作モードを判定する動作モード判定部を設け、第1実施形態による光測距装置1においては動作モード判定部の判定結果を位相差変更部72及び光源制御部92に出力し、第2光測距装置100においては動作モード判定部の判定結果を光源制御部92に出力するように構成すればよい。
【0062】
なお、測定対象物の移動速度等に応じて動作モードを変更することも考えられるが、この場合には、測定対象物の移動速度等に合わせて選択したモード選択指令を情報入力部3から入力すればよい。
【符号の説明】
【0063】
1…光測距装置、3…情報入力部、5…光走査部、7…駆動部、9…光源部、11…受光部、13…測距部、15…画像生成部、17…表示部、50…二次元ガルバノミラー、51…固定部、52…第1トーションバー、53…外側可動部、54…第2トーションバー、55…内側可動部、57…第1駆動コイル、58…第2駆動コイル、71…駆動回路、72…位相差変更部、73…振幅変更部、91…光源、92…光源制御部、93…投光光学系93、100…光測距装置、107…駆動部、108…駆動回路、109…振幅変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する可動部が互いに直交する第1方向及び第2方向に揺動可能に形成され、該可動部が揺動することによって前記光反射面に入射される光を対象領域内でリサージュ走査できる光走査部と、
前記可動部を前記第1方向に揺動させる第1駆動信号及び前記可動部を前記第2方向に揺動させる第2駆動信号を前記光走査部に供給して前記可動部を揺動駆動する駆動部と、
前記光反射面に向かってパルス光を出射する光源部と、
前記光源部から出射されたパルス光が前記対象領域内に存在する物体によって反射された反射光を受光する受光部と、
前記光源部によるパルス光の出射タイミングと前記受光部による反射光の受光タイミングとに基づいて前記物体の距離を計測する測距部と、を備え、
前記駆動部は、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更する位相差変更部、及び、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の大きさを調整して前記可動部の揺動振幅を変更する振幅変更部の少なくとも一方を含む、光測距装置。
【請求項2】
前記位相差変更部は、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更して前記光走査部によるリサージュ走査軌跡の間隔を密にし又は粗くする、請求項1に記載の光測距装置。
【請求項3】
光測距装置の動作に関連する動作関連情報が入力される情報入力部を備え、
前記位相差変更部は、前記情報入力部を介して入力された動作関連情報に基づいて前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更する、請求項1又は請求項2に記載の光測距装置。
【請求項4】
前記位相差変更部は、前記測距部による計測結果に基づいて前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更する、請求項1又は請求項2に記載の光測距装置。
【請求項5】
前記振幅変更部は、前記可動部の揺動振幅を変更してリサージュ走査範囲を小さくし又は大きくする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項6】
光測距装置の動作に関連する動作関連情報が入力される情報入力部を備え、
前記振幅変更部は、前記情報入力部を介して入力された動作関連情報に基づいて前記可動部の揺動振幅を変更する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項7】
前記光源部は、前記測距部による計測結果又は前記情報入力部を介して入力された動作関連情報に基づいて前記パルス光の出射タイミングを制御する光源制御部を備える、請求項1〜6のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項8】
前記光源部は、前記光反射面に向かって出射するパルス光のビーム径を絞るビーム径変更部を備える、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項9】
前記測距部による計測結果を画素値として前記対象領域についての距離画像を生成する画像生成部を備える、請求項1〜8のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項10】
前記駆動部は、リサージュ走査周期の前半における走査軌跡と後半における走査軌跡とが同じ経路を辿る部分を含むように前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記光走査部に供給し、
前記光源部は、前記リサージュ走査周期の前半と後半とで前記対象領域の同じ計測位置に走査されるタイミングで前記パルス光を出射する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項11】
前記位相差変更部が前記第1駆動信号と前記第2駆動信号との位相差を変更することにより、前記リサージュ走査周期の前半における走査軌跡と後半における走査軌跡とを走査方向が逆の同じ軌跡とする、請求項10に記載の光測距装置。
【請求項12】
前記振幅変更部が前記可動部の揺動振幅を徐々に増加させ、その後、徐々に減少させることにより、前記リサージュ走査周期で渦巻き線状のリサージュ走査軌跡が前記対象領域を往復する、請求項10に記載の光測距装置。
【請求項13】
前記画像生成部は、前記リサージュ走査の1/2周期毎に前記対象領域についての距離画像を生成する、請求項10〜12のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項14】
前記光走査部は、
枠状の固定部と、
前記固定部の内側に配置され、一対の第1トーションバーによって揺動可能に支持された外側可動部と、
前記外側可動部の内側に配置され、前記第1トーションバーとは軸方向が互いに直交する一対の第2トーションバーによって揺動可能に揺動可能に支持された内側可動部と、
前記内側可動部に形成された第1光反射面と、を備え、
前記光源部から出射され前記第1光反射面に入射されるパルス光を前記対象領域内でリサージュ走査する、請求項1〜13のいずれか1つに記載の光測距装置。
【請求項15】
前記光走査部は、前記外側可動部に形成された第2光反射面を更に備え、
前記光源部から出射され前記第1光反射面に入射されるパルス光を前記対象領域内でリサージュ走査する一方、前記光源部から出射され前記第2光反射面に入射されるパルス光を前記対象領域内で一次元走査する、請求項14に記載の光測距装置。
【請求項16】
前記光源部は、2つの光源を有し、
各光源から出射されたパルス光の前記第1光反射面への入射角が異なる、請求項14に記載の光測距装置。
【請求項17】
前記光源部は、2つの光源を有し、
一方の光源は前記第1光反射面に向かってパルス光を出射し、他方の光源は前記第2光反射面に向かってパルス光を出射する、請求項15に記載の光測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−53137(P2011−53137A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203566(P2009−203566)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】