光源装置、光走査装置及び画像形成装置
【課題】APCのために必要な受光素子の構成が簡単であり、低価格で安定したAPC制御を実現することができる光源装置を提供する。
【解決手段】複数の光源からなる面発光レーザ1と、面発光レーザ1からの光を反射する光学素子としてのガラス2と、光学素子2からの反射光を受光する受光素子3と、が一体に構成された光源装置6において、光学素子2が面発光レーザ1からの光の放射方向5に対して傾けて配置され、受光素子3の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、C>Dとする。
【解決手段】複数の光源からなる面発光レーザ1と、面発光レーザ1からの光を反射する光学素子としてのガラス2と、光学素子2からの反射光を受光する受光素子3と、が一体に構成された光源装置6において、光学素子2が面発光レーザ1からの光の放射方向5に対して傾けて配置され、受光素子3の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、C>Dとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、該光源装置を備えた光走査装置、該光走査装置を具備した複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関し、特に面発光レーザ光源と受光素子とを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複写機やレーザプリンタのような画像形成装置の光走査装置に用いる光源には端面発光レーザ光源が用いられ、バック光をモニタし、発光出力が一定となるよう注入電流を適正に制御している。このような機構は光出力の変動を抑制するもので、APC(Auto Power Control)といわれている。以下、光出力の変動抑制を「APC」と略す。
近年、画像形成装置の光走査装置に用いる光源として、高速、高精細走査を実現するため、光源素子数の多い面発光レーザ光源が用いられている。この面発光レーザ光源は従来の端面発光レーザと異なり、構造上バック光が発生しない。そのため、APCを実施するさまざまな構成が提案されている。
例えば特許文献1の実施例4では光源が面発光レーザではないが、光源の光をビームスプリッタで分割し、反射された光を外部のPD(フォトディテクタ)で検出してAPCするという制御装置がある。この装置を備えれば、面発光レーザであってもAPC可能である。
【0003】
また、特許文献2では、光源に面発光レーザを用い、出射した光はカップリングレンズで平行光にされ、スリットを兼ねた分離素子で2つに分離し、走査光学系に導かれない領域の光を集光レンズで集めモニタPDへ結像させる構造が提案されている。この場合もこの装置を備えれば、APC可能である。
その他、特許文献3の図8では、光源に面発光レーザを用い、出射した光はスリットを兼ねた分離素子で2つに分離し、走査光学系に導かれない領域の光を集光レンズで集めモニタPDへ結像させる構造が提案されている。この場合もこの装置を備えれば、APC可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、APC動作を実施するにあたり、受光素子でモニタする光量P1と実際に走査光学系で用いる光量P2の比P2/P1が変化してしまうと、APC後のP1の光量が変化することになり、印刷濃度変化などの印刷異常が発生する。この点については、「発明を実施するための形態」でも詳細に述べる。
特許文献1では受光素子への光と、実際に走査光学系で用いる光は重なる領域を使用しているが、その比率「P2/P1」については記載されていない。
特許文献2、3では、受光素子への光と、実際に走査光学系で用いる光は別の領域を用いる構成であるので、「P2/P1」の比率が変化しやすいが、その比率については記載されていない。
「P2/P1」の比率の変動は、受光素子上で換算したアパーチャの開口寸法と受光素子の形状が一致すれば、解消できる。
【0005】
しかしながら、アパーチャは走査光学系の倍率や、光源素子配列、結像スポット径で決まり、主走査方向が副走査方向より4倍程度大きくなることが多い。また、面発光レーザ光源の光の拡がり角や、素子配列から、カップリングレンズの焦点距離は50mm程度と比較的長くする必要があることが多い。
また、面発光レーザと受光素子とを一体化した光源装置であり、小型化したいから、面発光レーザと受光素子の光路長はできるだけ小さい方が良く、5〜6mm程度となる。そのため、受光素子上に換算したアパーチャ開口面積は小さくなる傾向にある。
受光素子からの検知信号を増幅無しでモニタする場合、光量が少ないと、暗電流や、外部からのノイズに対する耐性が低下する。そのため、「P2/P1」比率の変動を抑えようとして、受光素子寸法を受光素子上に換算したアパーチャ開口面積と同じとするにも限度がある。
【0006】
その他の課題として、APC部分の装置スペースが大きいことや部品点数が多く、調整も必要なので、価格が高くなってしまうという課題がある。
特許文献1の実施例4では、ビーム分割のためのビームスプリッタが必要であり、これを実装するスペースが必要となる。そして、ビームスプリッタの保持調整構造が必要であるから、価格が高くなってしまう。
特許文献2の構成では、分割素子、反射ミラー、集光レンズ、支持部材が必要であり、これらを実装するスペースが必要となる。そして、調整構造も必要であるから、価格が高くなってしまう。
特許文献3の図8の構成では、分割素子、集光レンズが必要であり、これらを保持調整する構造と、実装するスペースが必要となるので、価格が高くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、APCのために必要な受光素子の構成が簡単であり、低価格で安定したAPC制御を実現することができる光源装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の光源からなる面発光レーザと、前記面発光レーザからの光を反射する少なくとも1枚の光学素子と、前記光学素子からの反射光を受光する受光素子と、が一体に構成された光源装置において、前記光学素子が前記面発光レーザからの光の放射方向に対して傾けて配置され、前記受光素子の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、
C>D
とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面発光レーザの拡がり角変動による検知光量と使用光量の比率の変動を小さくできるとともに、受光素子への光量を大きくでき、低価格で安定したAPC制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の斜視図である。
【図2】光走査装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】画像形成装置の概略構成図である。
【図4】光源としての発光素子の配列図である。
【図5】光源装置の光源とガラスと受光素子との関係を示した図である。
【図6】光源からの光線の半値照射範囲を示す図である。
【図7】光源からの光線の半値照射範囲と長方形の受光素子との関係を示す図である。
【図8】光源からの光線の半値照射範囲と楕円の受光素子との関係を示す図である。
【図9】受光光量と受光素子形状との関係を示す特性図である。
【図10】P2/P1比の変動と受光素子形状との関係を示す特性図である。
【図11】受光素子位置換算のアパーチャ開口部と受光素子との関係を示す図である。
【図12】受光素子位置換算のアパーチャ開口部と受光素子との関係を示す図で、光の傾け方向が副走査方向の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1乃至図11に基づいて第1の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を図3で説明する。
トナー像を形成するための像担持体としてのドラム形状の感光体18は、図示しないモータによって一定の周速度で時計回り方向に回転している。感光体18の表面は帯電装置10によって特定の極性に均一に帯電された後、光走査装置11からの光線により露光され、画像情報に対応した静電潜像が形成される。
露光位置の感光体回転方向下流側には現像装置12が配置され、現像装置12により感光体18上の前記静電潜像が顕像化されてトナー像が形成される。被記録媒体である印刷用紙13は、搬送ローラ対などの搬送装置14で搬送される。
【0012】
その後、転写装置15で印刷用紙13の背面からトナーと反対の極性の帯電を行い、感光体18上のトナー像を印刷用紙13上に転写する。
転写後、転写されなかった感光体18上の残留トナーは清掃装置16によって除去され、次の画像形成プロセスに備えられる。
感光体18からトナー像が転写された印刷用紙13は定着装置17へ搬送される。定着装置17は、一定温度に加熱制御されたヒートローラ17aと、それに圧接する加圧ローラ17bとから構成されている。ヒートローラ17aと加圧ローラ17bの間を通過するとき、印刷用紙13上に保持されたトナー像は加圧溶融され印刷用紙13上に定着される。
定着処理後に印刷用紙13は、画像形成装置の外部に排出される。
【0013】
次に光走査装置について説明する。図2は、光走査装置11の内部構成を示す概略構成図である。光源装置6から発した光線5は、カップリングレンズ20で平行光にされ、ビーム整形手段としてのアパーチャ21を通過し所定のビーム幅に整形され、副走査方向のみ所定の曲率をもつシリンドリカルレンズ22を通り、光偏向手段としての回転多面鏡23によって偏向走査される。
偏向走査された光24は、走査光学系の一部をなすFθレンズ25を通り、同じく走査光学系の一部をなす折り返しミラー28で反射し、図示しない感光体18上に結像され静電潜像を作成する。
図2中Xの矢印方向は、光の走査方向(主走査方向)を示している。なお、偏向走査された光線の一部は、ミラー26によって光センサ27へ導かれ、その信号により光源装置6から発する光線5の変調を開始する。
【0014】
光源装置について説明する。図1は光源装置6の拡大斜視図である。また、図5は図1の光源1と、ガラス2と、受光素子3と光線とを含む面内の関係を示した図である。
光源装置6の中には複数の光源からなる面発光レーザ1が設けられており、面発光レーザ1の中には多数個(本実施例では25個)の発光素子(光源)7が図4の様に並んでいる。従って感光体18上では25個の光スポットが2次元的に並んで一括走査される。
面発光レーザ1から出射した光は、光学素子であり、且つ、面発光レーザ等を保護する保護カバーであるガラス2によって、反射及び透過し、反射光はフォトディテクター等の受光素子3に入射角度α(図5参照)で照射され、光量検知を行いAPCで出射光量一定とする。
【0015】
一方、ガラス2で透過した光5は、カップリングレンズ20へ向かって進む。面発光レーザ1、受光素子3、ガラス2は、図1の様に例えば金属の保護カバー4で一体化される。このような光源装置構成とすれば、部品点数が少なくかつ、APCができる構成となる。
ここで、受光素子3について説明する。受光素子3は、検知のための光量が十分であることと、前記光走査装置として用いた場合、面発光レーザ光源の拡がり角が変動しても、カップリングレンズ20後のアパーチャ21を通過する光量(P2、図5参照)と受光素子で検知する光量(P1、図5参照)の比率すなわちP2/P1の変化が小さいことの2つが重要である。
【0016】
受光光量については、受光光量が少ないほど、暗電流や、外部からのノイズに対する耐性が低下する。また、制御部における増幅量にも、発振や応答速度の観点から制約(最低値の限度)があるからできるだけ受光光量は大きい方が有利である。
また、P2/P1比の変動については、光源の拡がり角の変化などの外乱があっても、できるだけ小さな変化となる方が有利である。
ここで、受光光量についての説明のため、受光素子上に到達する光の範囲を考える。図6は受光素子3上に到達する面発光レーザ1からの光線の半値照射範囲31を示す。面発光レーザ1の光の傾け方向の拡がり半値全角をa、その直交方向の光の半値全角をb、面発光レーザと受光素子との光路長をL、受光素子への光の入射角をαとすると、光の照射範囲A、Bは式(2)、式(3)で示させる。
A=(2×L×tan(a/2))/cosα…式(2)
B=2×L×tan(b/2)…式(3)
【0017】
面発光レーザではa=bとなるから、AはBの1/cosα倍となる。よって、受光素子の形状を受光素子32の様にした場合(図7参照)、すなわちC>Dとする時、受光光量を大きくできる。
具体的にはCをD/cosαとする時、照射される光の領域と相似形に近くなるから長方形の受光素子では最大となる。また、図8の様に受光素子を、受光素子33の様に楕円とし、C>D、具体的にはCをD/cosαとすれば、照射される光の領域と相似形となるから受光光量が最大となる。
図9は面発光レーザの拡がり角の半値全角を5.5〜7度、拡がり角変動を0.16度、面発光レーザ、光学素子、受光素子の光路長を5.4mm、面発光レーザと受光素子と光線とを含む面を主走査方向とし、光学素子の透過率0.9、反射率0.1、受光素子への入射角α=40度、受光素子は長方形で面積0.72mm2、カップリングレンズの焦点距離45mm、アパーチャ開口は主方向5.6mm、副方向1.2mmとした条件で、主副寸法比率(C/D比)を変化させたときの、受光光量を計算したものである。
C/Dが1/cos40度の時の方がC/Dが1の時より受光光量を大きくできる。ただし、上限があり概略C/Dが2のときまでがC/Dが1の時より大きい範囲である。
【0018】
次に、P2/P1比の変動について説明する。図11は上記と同じ条件でのアパーチャ開口部30と受光素子32を示した図である。C/Dを変化させると、光源拡がり角変動時のP2/P1比の変動量が変化する。
この計算結果を示したのが図10である。C/D比率として1〜1.6程度が最良の範囲となっている。図11のC/D比は1/cos40である1.3としている。概略1〜1.3の2倍が良好な範囲である。よって、式(1)の範囲がP2/P1比の変動の良好となる受光素子形状となる。
1<C/D<((2/cosα)-1)…式(1)
【0019】
以上をまとめると、受光素子形状をC/Dとすると、受光光量の良好な範囲はC/D比が1〜2であり、P2/P1比の変動が小さい範囲はC/D比が1〜1.6程度となるから、ともに良好な範囲は1〜1.6となるということである。この範囲を一般的な式で示したのが式(1)である。
従来、受光素子はC/D比が1のものが良く使われていたが、それより良好な特性となる受光素子形状を実現できる。
【0020】
以下に実施例を説明する。
[第一の実施例]
αを40度とし、PD形状を主1.3mm、副1.0mmの長方形とする。このときC/Dは1.3となり式(1)の範囲となる。長方形とした場合、市販の受光素子を使用できるので有利になる。
[第二の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.3mm、副1.0mmの楕円形とする。このときC/Dは1.3となり式(1)の範囲となる。
楕円形状の場合、長方形のときよりアパーチャ形状に近くできるから、使用光量と検知光量の比の変動をより小さくできる。
[第三の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.5mm、副1.0mmの長方形とする。このときC/Dは1.5となり式(1)の範囲となる。
[第四の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.5mm、副1.0mmの楕円形とする。このときC/Dは1.5となり式(1)の範囲となる。
【0021】
なお、面発光レーザ1と受光素子3の面は平行であれば製造しやすい利点がある。検査もしやすい。また、受光素子で反射する光が面発光レーザに戻らないので、面発光レーザの出力が安定する。
また、上記の説明では、主走査方向を受光素子への光の反射方向としている。この場合は図11の様に、受光素子の長い方向と、受光素子上に換算したアパーチャ寸法の長い方が一致する。
これにより、光源拡がり角変動があっても、検知光量と使用光量の比の変化を小さくできる。
主走査方向を、受光素子の反射方向としない場合は、図12の様になるから、受光素子上に換算したアパーチャ寸法の長い方と、受光素子の長い方が一致しないから、P2/P1比の変動が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0022】
上記実施形態では、画像形成装置としてモノクロ機を例示したが、複数の感光体を並置してなるタンデム型にも同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 面発光レーザ
2 光学素子としてのガラス
3 受光素子
6 光源装置
18 像担持体
21 アパーチャ
23 光偏向手段
25、28 走査光学系
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2006-332142号公報
【特許文献2】特開2010-217353号公報
【特許文献3】特開2008-268683号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、該光源装置を備えた光走査装置、該光走査装置を具備した複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関し、特に面発光レーザ光源と受光素子とを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複写機やレーザプリンタのような画像形成装置の光走査装置に用いる光源には端面発光レーザ光源が用いられ、バック光をモニタし、発光出力が一定となるよう注入電流を適正に制御している。このような機構は光出力の変動を抑制するもので、APC(Auto Power Control)といわれている。以下、光出力の変動抑制を「APC」と略す。
近年、画像形成装置の光走査装置に用いる光源として、高速、高精細走査を実現するため、光源素子数の多い面発光レーザ光源が用いられている。この面発光レーザ光源は従来の端面発光レーザと異なり、構造上バック光が発生しない。そのため、APCを実施するさまざまな構成が提案されている。
例えば特許文献1の実施例4では光源が面発光レーザではないが、光源の光をビームスプリッタで分割し、反射された光を外部のPD(フォトディテクタ)で検出してAPCするという制御装置がある。この装置を備えれば、面発光レーザであってもAPC可能である。
【0003】
また、特許文献2では、光源に面発光レーザを用い、出射した光はカップリングレンズで平行光にされ、スリットを兼ねた分離素子で2つに分離し、走査光学系に導かれない領域の光を集光レンズで集めモニタPDへ結像させる構造が提案されている。この場合もこの装置を備えれば、APC可能である。
その他、特許文献3の図8では、光源に面発光レーザを用い、出射した光はスリットを兼ねた分離素子で2つに分離し、走査光学系に導かれない領域の光を集光レンズで集めモニタPDへ結像させる構造が提案されている。この場合もこの装置を備えれば、APC可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、APC動作を実施するにあたり、受光素子でモニタする光量P1と実際に走査光学系で用いる光量P2の比P2/P1が変化してしまうと、APC後のP1の光量が変化することになり、印刷濃度変化などの印刷異常が発生する。この点については、「発明を実施するための形態」でも詳細に述べる。
特許文献1では受光素子への光と、実際に走査光学系で用いる光は重なる領域を使用しているが、その比率「P2/P1」については記載されていない。
特許文献2、3では、受光素子への光と、実際に走査光学系で用いる光は別の領域を用いる構成であるので、「P2/P1」の比率が変化しやすいが、その比率については記載されていない。
「P2/P1」の比率の変動は、受光素子上で換算したアパーチャの開口寸法と受光素子の形状が一致すれば、解消できる。
【0005】
しかしながら、アパーチャは走査光学系の倍率や、光源素子配列、結像スポット径で決まり、主走査方向が副走査方向より4倍程度大きくなることが多い。また、面発光レーザ光源の光の拡がり角や、素子配列から、カップリングレンズの焦点距離は50mm程度と比較的長くする必要があることが多い。
また、面発光レーザと受光素子とを一体化した光源装置であり、小型化したいから、面発光レーザと受光素子の光路長はできるだけ小さい方が良く、5〜6mm程度となる。そのため、受光素子上に換算したアパーチャ開口面積は小さくなる傾向にある。
受光素子からの検知信号を増幅無しでモニタする場合、光量が少ないと、暗電流や、外部からのノイズに対する耐性が低下する。そのため、「P2/P1」比率の変動を抑えようとして、受光素子寸法を受光素子上に換算したアパーチャ開口面積と同じとするにも限度がある。
【0006】
その他の課題として、APC部分の装置スペースが大きいことや部品点数が多く、調整も必要なので、価格が高くなってしまうという課題がある。
特許文献1の実施例4では、ビーム分割のためのビームスプリッタが必要であり、これを実装するスペースが必要となる。そして、ビームスプリッタの保持調整構造が必要であるから、価格が高くなってしまう。
特許文献2の構成では、分割素子、反射ミラー、集光レンズ、支持部材が必要であり、これらを実装するスペースが必要となる。そして、調整構造も必要であるから、価格が高くなってしまう。
特許文献3の図8の構成では、分割素子、集光レンズが必要であり、これらを保持調整する構造と、実装するスペースが必要となるので、価格が高くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、APCのために必要な受光素子の構成が簡単であり、低価格で安定したAPC制御を実現することができる光源装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の光源からなる面発光レーザと、前記面発光レーザからの光を反射する少なくとも1枚の光学素子と、前記光学素子からの反射光を受光する受光素子と、が一体に構成された光源装置において、前記光学素子が前記面発光レーザからの光の放射方向に対して傾けて配置され、前記受光素子の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、
C>D
とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面発光レーザの拡がり角変動による検知光量と使用光量の比率の変動を小さくできるとともに、受光素子への光量を大きくでき、低価格で安定したAPC制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の斜視図である。
【図2】光走査装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】画像形成装置の概略構成図である。
【図4】光源としての発光素子の配列図である。
【図5】光源装置の光源とガラスと受光素子との関係を示した図である。
【図6】光源からの光線の半値照射範囲を示す図である。
【図7】光源からの光線の半値照射範囲と長方形の受光素子との関係を示す図である。
【図8】光源からの光線の半値照射範囲と楕円の受光素子との関係を示す図である。
【図9】受光光量と受光素子形状との関係を示す特性図である。
【図10】P2/P1比の変動と受光素子形状との関係を示す特性図である。
【図11】受光素子位置換算のアパーチャ開口部と受光素子との関係を示す図である。
【図12】受光素子位置換算のアパーチャ開口部と受光素子との関係を示す図で、光の傾け方向が副走査方向の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1乃至図11に基づいて第1の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を図3で説明する。
トナー像を形成するための像担持体としてのドラム形状の感光体18は、図示しないモータによって一定の周速度で時計回り方向に回転している。感光体18の表面は帯電装置10によって特定の極性に均一に帯電された後、光走査装置11からの光線により露光され、画像情報に対応した静電潜像が形成される。
露光位置の感光体回転方向下流側には現像装置12が配置され、現像装置12により感光体18上の前記静電潜像が顕像化されてトナー像が形成される。被記録媒体である印刷用紙13は、搬送ローラ対などの搬送装置14で搬送される。
【0012】
その後、転写装置15で印刷用紙13の背面からトナーと反対の極性の帯電を行い、感光体18上のトナー像を印刷用紙13上に転写する。
転写後、転写されなかった感光体18上の残留トナーは清掃装置16によって除去され、次の画像形成プロセスに備えられる。
感光体18からトナー像が転写された印刷用紙13は定着装置17へ搬送される。定着装置17は、一定温度に加熱制御されたヒートローラ17aと、それに圧接する加圧ローラ17bとから構成されている。ヒートローラ17aと加圧ローラ17bの間を通過するとき、印刷用紙13上に保持されたトナー像は加圧溶融され印刷用紙13上に定着される。
定着処理後に印刷用紙13は、画像形成装置の外部に排出される。
【0013】
次に光走査装置について説明する。図2は、光走査装置11の内部構成を示す概略構成図である。光源装置6から発した光線5は、カップリングレンズ20で平行光にされ、ビーム整形手段としてのアパーチャ21を通過し所定のビーム幅に整形され、副走査方向のみ所定の曲率をもつシリンドリカルレンズ22を通り、光偏向手段としての回転多面鏡23によって偏向走査される。
偏向走査された光24は、走査光学系の一部をなすFθレンズ25を通り、同じく走査光学系の一部をなす折り返しミラー28で反射し、図示しない感光体18上に結像され静電潜像を作成する。
図2中Xの矢印方向は、光の走査方向(主走査方向)を示している。なお、偏向走査された光線の一部は、ミラー26によって光センサ27へ導かれ、その信号により光源装置6から発する光線5の変調を開始する。
【0014】
光源装置について説明する。図1は光源装置6の拡大斜視図である。また、図5は図1の光源1と、ガラス2と、受光素子3と光線とを含む面内の関係を示した図である。
光源装置6の中には複数の光源からなる面発光レーザ1が設けられており、面発光レーザ1の中には多数個(本実施例では25個)の発光素子(光源)7が図4の様に並んでいる。従って感光体18上では25個の光スポットが2次元的に並んで一括走査される。
面発光レーザ1から出射した光は、光学素子であり、且つ、面発光レーザ等を保護する保護カバーであるガラス2によって、反射及び透過し、反射光はフォトディテクター等の受光素子3に入射角度α(図5参照)で照射され、光量検知を行いAPCで出射光量一定とする。
【0015】
一方、ガラス2で透過した光5は、カップリングレンズ20へ向かって進む。面発光レーザ1、受光素子3、ガラス2は、図1の様に例えば金属の保護カバー4で一体化される。このような光源装置構成とすれば、部品点数が少なくかつ、APCができる構成となる。
ここで、受光素子3について説明する。受光素子3は、検知のための光量が十分であることと、前記光走査装置として用いた場合、面発光レーザ光源の拡がり角が変動しても、カップリングレンズ20後のアパーチャ21を通過する光量(P2、図5参照)と受光素子で検知する光量(P1、図5参照)の比率すなわちP2/P1の変化が小さいことの2つが重要である。
【0016】
受光光量については、受光光量が少ないほど、暗電流や、外部からのノイズに対する耐性が低下する。また、制御部における増幅量にも、発振や応答速度の観点から制約(最低値の限度)があるからできるだけ受光光量は大きい方が有利である。
また、P2/P1比の変動については、光源の拡がり角の変化などの外乱があっても、できるだけ小さな変化となる方が有利である。
ここで、受光光量についての説明のため、受光素子上に到達する光の範囲を考える。図6は受光素子3上に到達する面発光レーザ1からの光線の半値照射範囲31を示す。面発光レーザ1の光の傾け方向の拡がり半値全角をa、その直交方向の光の半値全角をb、面発光レーザと受光素子との光路長をL、受光素子への光の入射角をαとすると、光の照射範囲A、Bは式(2)、式(3)で示させる。
A=(2×L×tan(a/2))/cosα…式(2)
B=2×L×tan(b/2)…式(3)
【0017】
面発光レーザではa=bとなるから、AはBの1/cosα倍となる。よって、受光素子の形状を受光素子32の様にした場合(図7参照)、すなわちC>Dとする時、受光光量を大きくできる。
具体的にはCをD/cosαとする時、照射される光の領域と相似形に近くなるから長方形の受光素子では最大となる。また、図8の様に受光素子を、受光素子33の様に楕円とし、C>D、具体的にはCをD/cosαとすれば、照射される光の領域と相似形となるから受光光量が最大となる。
図9は面発光レーザの拡がり角の半値全角を5.5〜7度、拡がり角変動を0.16度、面発光レーザ、光学素子、受光素子の光路長を5.4mm、面発光レーザと受光素子と光線とを含む面を主走査方向とし、光学素子の透過率0.9、反射率0.1、受光素子への入射角α=40度、受光素子は長方形で面積0.72mm2、カップリングレンズの焦点距離45mm、アパーチャ開口は主方向5.6mm、副方向1.2mmとした条件で、主副寸法比率(C/D比)を変化させたときの、受光光量を計算したものである。
C/Dが1/cos40度の時の方がC/Dが1の時より受光光量を大きくできる。ただし、上限があり概略C/Dが2のときまでがC/Dが1の時より大きい範囲である。
【0018】
次に、P2/P1比の変動について説明する。図11は上記と同じ条件でのアパーチャ開口部30と受光素子32を示した図である。C/Dを変化させると、光源拡がり角変動時のP2/P1比の変動量が変化する。
この計算結果を示したのが図10である。C/D比率として1〜1.6程度が最良の範囲となっている。図11のC/D比は1/cos40である1.3としている。概略1〜1.3の2倍が良好な範囲である。よって、式(1)の範囲がP2/P1比の変動の良好となる受光素子形状となる。
1<C/D<((2/cosα)-1)…式(1)
【0019】
以上をまとめると、受光素子形状をC/Dとすると、受光光量の良好な範囲はC/D比が1〜2であり、P2/P1比の変動が小さい範囲はC/D比が1〜1.6程度となるから、ともに良好な範囲は1〜1.6となるということである。この範囲を一般的な式で示したのが式(1)である。
従来、受光素子はC/D比が1のものが良く使われていたが、それより良好な特性となる受光素子形状を実現できる。
【0020】
以下に実施例を説明する。
[第一の実施例]
αを40度とし、PD形状を主1.3mm、副1.0mmの長方形とする。このときC/Dは1.3となり式(1)の範囲となる。長方形とした場合、市販の受光素子を使用できるので有利になる。
[第二の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.3mm、副1.0mmの楕円形とする。このときC/Dは1.3となり式(1)の範囲となる。
楕円形状の場合、長方形のときよりアパーチャ形状に近くできるから、使用光量と検知光量の比の変動をより小さくできる。
[第三の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.5mm、副1.0mmの長方形とする。このときC/Dは1.5となり式(1)の範囲となる。
[第四の実施例]
第一の実施例と同様の条件でαを40度とし、PD形状を主1.5mm、副1.0mmの楕円形とする。このときC/Dは1.5となり式(1)の範囲となる。
【0021】
なお、面発光レーザ1と受光素子3の面は平行であれば製造しやすい利点がある。検査もしやすい。また、受光素子で反射する光が面発光レーザに戻らないので、面発光レーザの出力が安定する。
また、上記の説明では、主走査方向を受光素子への光の反射方向としている。この場合は図11の様に、受光素子の長い方向と、受光素子上に換算したアパーチャ寸法の長い方が一致する。
これにより、光源拡がり角変動があっても、検知光量と使用光量の比の変化を小さくできる。
主走査方向を、受光素子の反射方向としない場合は、図12の様になるから、受光素子上に換算したアパーチャ寸法の長い方と、受光素子の長い方が一致しないから、P2/P1比の変動が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0022】
上記実施形態では、画像形成装置としてモノクロ機を例示したが、複数の感光体を並置してなるタンデム型にも同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 面発光レーザ
2 光学素子としてのガラス
3 受光素子
6 光源装置
18 像担持体
21 アパーチャ
23 光偏向手段
25、28 走査光学系
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2006-332142号公報
【特許文献2】特開2010-217353号公報
【特許文献3】特開2008-268683号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源からなる面発光レーザと、
前記面発光レーザからの光を反射する少なくとも1枚の光学素子と、
前記光学素子からの反射光を受光する受光素子と、
が一体に構成された光源装置において、
前記光学素子が前記面発光レーザからの光の放射方向に対して傾けて配置され、
前記受光素子の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、
C>D
とすることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記受光素子への光入射角をαとしたとき、
前記受光素子への受光光量及び受光光量と使用光量比の変動のバランスの取れた範囲として、式(1)を満たすようにしたことを特徴とする光源装置。
1<C/D<((2/cosα)-1)…式(1)
【請求項3】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記光学素子の傾け方向が、光源装置が搭載される光走査装置の走査方向と略一致することを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子を前記面発光レーザの発光面と平行に配置することを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子の形状を長方形としたことを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子の形状を楕円としたことを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を成形するアパーチャと、
前記光源装置からの光を偏光する光偏向手段と、
前記光偏向手段からの光を被走査面に導く走査光学系と、を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
像担持体に光を照射し、潜像を形成する潜像形成手段として、請求項7に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
複数の光源からなる面発光レーザと、
前記面発光レーザからの光を反射する少なくとも1枚の光学素子と、
前記光学素子からの反射光を受光する受光素子と、
が一体に構成された光源装置において、
前記光学素子が前記面発光レーザからの光の放射方向に対して傾けて配置され、
前記受光素子の光の傾け方向の最大寸法をC、その直交方向の最大寸法をDとしたとき、
C>D
とすることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記受光素子への光入射角をαとしたとき、
前記受光素子への受光光量及び受光光量と使用光量比の変動のバランスの取れた範囲として、式(1)を満たすようにしたことを特徴とする光源装置。
1<C/D<((2/cosα)-1)…式(1)
【請求項3】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記光学素子の傾け方向が、光源装置が搭載される光走査装置の走査方向と略一致することを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子を前記面発光レーザの発光面と平行に配置することを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子の形状を長方形としたことを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記受光素子の形状を楕円としたことを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を成形するアパーチャと、
前記光源装置からの光を偏光する光偏向手段と、
前記光偏向手段からの光を被走査面に導く走査光学系と、を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
像担持体に光を照射し、潜像を形成する潜像形成手段として、請求項7に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−37024(P2013−37024A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170257(P2011−170257)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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