説明

光源調整のための方法及びプログラム、並びに露光方法及び装置

【課題】照明光源の形状を必要な形状に容易に調整できるようにする。
【解決手段】光源調整方法は、照明光源の目標とする形状に対する実際の形状の変化を表す画像変調パラメータZjを設定するステップ102と、照明系変調パラメータfBjに基づいて照明光源の形状が調整される第1の照明光学系に関して、画像変調パラメータZjと照明系変調パラメータfBjとの変換の行列Bを求めるステップ113,114と、その行列Bを用いて、画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjに対応する照明系変調パラメータfBjの第2組の値fBVjを求めるステップ116と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体にパターンを形成するための照明光源の形状を調整するための光源調整方法、光源調整用のコンピュータを機能させるためのプログラム、その光源調整方法を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィー工程で使用されるステッパー又はスキャニングステッパー(スキャナー)等の露光装置(投影露光装置)においては、解像度を高めるために、照明光(露光光)の短波長化、局所液浸法の適用等による投影光学系の開口数の増大、複数極照明等の変形照明技術、及び位相シフトマスクの導入等が図られてきた。最近では、さらに解像度を実質的に向上できるとともに、量産可能な光学ソリューションを提供すべく、光学モデルによりレチクル(マスク)のパターンと照明光学系の瞳面における照明光源(二次光源)の形状(瞳輝度分布)とを同時に最適化するSMO(Source and Mask Optimization)も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,563,566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばSMOで照明光源の最適な形状が定められたとしても、露光装置の照明光学系で実際に設定される照明光源の形状とその最適な(目標とする)形状との間には或る程度の乖離が生じる。また、光学モデル上で定められた照明光源とほぼ等しい照明光源に設定できたとしても、実際に露光を行った結果、最終的に形成されるパターンの線幅等が目標値に対して許容範囲内に収まらない場合も生じ得る。このような場合には、照明光源の形状を微調整する必要がある。
【0005】
しかしながら、露光装置の照明光学系において照明光源の形状を調整する調整機構に例えば複数の調整可能な部分が設けられている場合には、その複数の調整可能な部分の調整量をどのように組み合わせると、その照明光源の形状がどのように変化するのかを予め定量的に予測することは困難であった。そのため、照明光源の形状を所望の形状に微調整するまでに長い調整時間を要していた。
本発明は、このような事情に鑑み、照明光源の形状を必要な形状に容易に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、物体にパターンを形成するための照明光源の形状である光源形状を調整する光源調整方法が提供される。この光源調整方法は、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群を設定することと、第1の照明光源を形成し、第2のパラメータ群で調整量が表される調整機構を介してその第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系に関して、その第1のパラメータ群とその第2のパラメータ群との変換関係を求めることと、その変換関係に基づいてその第2のパラメータ群の値を求めることと、その第2のパラメータ群の値に応じてその調整機構を調整することと、を含むものである。
【0007】
また、本発明の第2の態様によれば、本発明の光源調整方法によって光源形状が調整されたその第1の照明系からの照明光によってパターンを物体に形成する露光方法が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、物体にパターンを形成するための照明光源の形状である光源形状を調整するためにコンピュータを、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群の情報を記憶する第1の記憶手段、第1の照明光源を形成し、第2のパラメータ群で調整量が表される調整機構を介してその第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系に関して、その第1のパラメータ群とその第2のパラメータ群との変換関係を求める第1手段、及びその変換関係を用いてその第2のパラメータ群の値を求める第2手段、として機能させるための光源調整用のプログラムが提供される。
【0008】
また、本発明の第4の態様によれば、照明光を照射して物体にパターンを形成する露光装置が提供される。この露光装置は、その照明光が射出される照明光源の形状である光源形状に関して、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群の情報を記憶する記憶装置と、第1の照明光源を形成し、第2のパラメータ群で調整量が表される調整機構を有し、その調整機構によってその第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系と、その第2のパラメータ群の値を求める演算装置と、その第2のパラメータ群の値に応じてその調整機構を駆動する制御装置と、を備え、その演算装置は、その第1のパラメータ群とその第2のパラメータ群との変換関係を求め、その変換関係を用いて、その第2のパラメータ群の値を求めるものである。
【0009】
また、本発明の第5の態様によれば、本発明の露光方法又は露光装置を用いて物体にパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその物体を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、照明光源の目標とする形状に対する実際の形状の変化を表す第1のパラメータ群と、第1の照明光源の形状を調整するための調整機構の調整量を表す第2のパラメータ群との間の変換関係を求めることによって、これ以降は、その第2のパラメータ群の値からその第1のパラメータ群の値を介してその第1の照明光源の形状を定量的に予測できる。従って、その第2のパラメータ群の値に応じてその調整機構を調整することによって、その第1の照明光源の形状を必要な形状に容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の一例で使用される第1の露光装置EXの概略構成を示す図である。
【図2】実施形態の一例で使用される第2の露光装置EXAの概略構成を示す一部が切り欠かれた図である。
【図3】(A)は形成すべき目標パターンの一例を示す拡大図、(B)は実際の投影像の一例を示す拡大図、(C)は目標パターンに対応するマスクパターンの透過率分布を示す図、(D)は目標パターンに対する位相分布を示す図、(E)は設計上で最適化された照明光源を示す図、(F)は実測された照明光源を示す図である。
【図4】(A)はツェルニケ多項式の一部を示す図、(B)はディストーション多項式の一部を示す図、(C)は照明光源のディストーションの複数の例を示す図である。
【図5】照明光源の調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】OPE特性の一例を示す図である。
【図7】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態で使用される第1の露光装置EXの概略構成を示す。一例として、露光装置EXは、スキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の露光装置(投影露光装置)である。図1において、露光装置EXは、露光用の照明光(露光光)ILを発生する光源7と、光源7からの照明光ILでレチクルR(マスク)のパターン面(レチクル面Ra)の照明領域36を照明する照明光学系ILSとを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRの位置決め及び移動を行うレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンの像をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系30と、各種制御系等とを備えている。以下、投影光学系PLの光軸に平行にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面)内において図1の紙面に平行な方向にX軸を、図1の紙面に垂直な方向にY軸をそれぞれ設定して説明する。本実施形態では、露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY軸に平行な方向(Y方向)であり、照明領域36はX方向(非走査方向)に細長い矩形である。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転方向(傾斜方向)をθx方向、θy方向、及びθz方向とする。
【0013】
光源7としては、波長193nmのレーザ光をパルス発光するArFエキシマレーザ光源が使用されている。なお、光源7として、波長248nmのレーザ光を供給するKrFエキシマレーザ光源、又は固体レーザ光源(YAGレーザ、半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を発生する高調波発生装置等も使用できる。光源7には電源部32が連結されている。主制御系30が、パルス発光のタイミング及び光量を指示する発光トリガーパルスTPを電源部32に供給する。電源部32は、その発光トリガーパルスTPに同期して光源7にパルス発光を行わせる。
【0014】
光源7から射出されたほぼ平行光束で直線偏光のレーザ光よりなる照明光ILは、ビームエキスパンダ8及び照明光ILの偏光方向を回転するための1/2波長板9(偏光光学系)を通過して光路折り曲げ用のミラー11に入射する。主制御系30が駆動部33を介して1/2波長板9の回転角を制御して、照明光ILの偏光方向を制御する。さらに、主制御系30は、駆動部33を介して1/2波長板9を照明光ILを円偏光に変換する1/4波長板(不図示)及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するデポラライザ(不図示)と交換可能である。
【0015】
ミラー11で+X方向に反射された照明光ILは、照明光学系ILSの光軸AXI(ここではX軸に平行な軸)に垂直な入射面12d及び射出面12eを有するK型プリズム(以下、単にプリズムという。)12の入射面12dに入射する。プリズム12は、照明光ILを透過する蛍石(CaF2)又は石英等の光学材料から形成されている。プリズム12は、一例として、入射面12dに対してθy方向の時計周りにほぼ60°で交差する第1反射面12aと、第1反射面12aとYZ平面に平行な面に対してほぼ対称な第2反射面12bと、XY平面に平行で入射面12d(射出面12e)に対して直交する透過面12cとを有する。
【0016】
また、プリズム12の近傍に、X方向及びY方向に二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ傾斜角が可変の微小ミラーよりなる多数のミラー要素3と、これらのミラー要素3を駆動する駆動部4とを有する空間光変調器13が設置されている。空間光変調器13の多数のミラー要素3は、全体として透過面12cにほぼ平行に、かつ近接して配置されている。また、各ミラー要素3の反射面は、それぞれθx方向及びθy方向(直交する2軸の回り)の傾斜角が所定の可変範囲内でほぼ連続的に制御可能である。一例として、その可変範囲内の中央においては、各ミラー要素3の反射面は透過面12cにほぼ平行である。
【0017】
主制御系30には照明条件(後述の照明瞳面IPにおける照明光源(二次光源)の形状又は光量分布の情報及び偏光条件等を含む)を含む露光データが記憶されたファイル(露光データファイル)が記録された磁気記憶装置等の記憶装置33が接続されている。主制御系30は、記憶装置33から読み出したその照明条件及び照明光ILの発光タイミングの情報を照明制御系31に供給する。照明制御系31は、例えば照明光ILがパルス発光される間に、多数のミラー要素3の2軸の回りの傾斜角がその照明条件に応じた値に維持されるように駆動部4を制御する。
【0018】
この場合、照明光ILは光軸AXIに平行にプリズム12の入射面12dに入射する。入射した照明光ILは、第1反射面12aで全反射された後、透過面12cを透過して空間光変調器13の多数のミラー要素3に入射する。そして、多数のミラー要素3で反射されて波面分割された照明光ILは、再び透過面12cに入射した後、第2反射面12bで全反射されて射出面12eから射出される。従って、第1反射面12aの入射面12dに対する角度は、入射面12dに垂直に入射した光束が第1反射面12aで全反射するとともに、第1反射面12aで全反射された光束が透過面12cを透過する範囲であればよい。この際には、あるミラー要素3の反射面が透過面12cにほぼ平行であれば、そのミラー要素3で反射された照明光ILは、透過面12cを透過して第2反射面12bで全反射された後、射出面12eを経て光軸AXIにほぼ平行に射出される。従って、各ミラー要素3の2軸の回りの傾斜角を制御することによって、各ミラー要素3で反射されてプリズム12から射出される照明光ILの光軸AXIに対する直交する2方向(θy方向及びθz方向)の角度を制御でき、後述の照明瞳面IPの二次光源の光量分布を制御できる。
【0019】
なお、プリズム12の反射面12a,12bは全反射を用いているが、その反射面12a,12bに反射膜を形成し、この反射膜で照明光ILを反射してもよい。また、プリズム12の代わりにミラーを使用してもよい。
そして、プリズム12から射出された照明光ILは、所定の焦点距離を持つリレー光学系14(集光光学系)を介してフライアイレンズ15(オプティカルインテグレータ)の入射面22I(リレー光学系14の射出瞳とほぼ共役な面)に入射する。入射面22Iは、レチクル面Raと光学的にほぼ共役である。そのため、フライアイレンズ15を構成する多数のレンズエレメントの断面形状はレチクル面の照明領域36とほぼ相似である。なお、フライアイレンズ15の代わりにマイクロレンズアレイを使用してもよい。
【0020】
空間光変調器13の多数のミラー要素3は例えば10〜数10μm角程度の平面ミラーであるが、照明条件の細かな変更を可能とするために、ミラー要素3は可能な限り小さいことが好ましい。このような空間光変調器13としては、例えば欧州特許公開第779530号明細書、米国特許第6,900,915号明細書、又は米国特許第7,095,546号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
【0021】
図1において、空間光変調器13の各ミラー要素3で反射された後、プリズム12の第2反射面12bを介して光軸AXIに対して所定の角度でリレー光学系14に入射する光は、フライアイレンズ15の入射面において光軸AXIからその所定の角度とリレー光学系14の焦点距離とで定まる位置に入射する。従って、各ミラー要素3の傾斜角の制御によって、その入射面、ひいてはフライアイレンズ15の後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面IP(射出瞳と共役な面で、以下では照明瞳面IPという。)における照明光ILの光量分布を任意の分布に設定可能である。照明瞳面IPは、レチクル面Raと光学的にフーリエ変換の関係にある。また、照明瞳面IPに形成される二次光源(面光源)が照明光源51Aであり、照明光源の形状(光源形状)が瞳輝度分布である。
【0022】
照明瞳面IPに形成された照明光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ16、レチクルブラインド(視野絞り)17、第2リレーレンズ18、光路折り曲げ用のミラー19、及びコンデンサ光学系20を介して、レチクル面Raの照明領域36を均一な照度分布で照明する。ビームエキスパンダ8から空間光変調器13までの光学部材、及びリレー光学系14からコンデンサ光学系20までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。照明光学系ILSの各光学部材は、不図示のフレームに支持されている。
【0023】
レチクルRはレチクルステージRSTのXY平面に平行な上面に吸着保持され、レチクルステージRSTは、不図示のレチクルベースの上面に、Y方向に一定速度で移動可能に、かつ少なくともX方向、Y方向、及びθz方向に移動可能に載置されている。レチクルステージRSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、ステージ制御系35及びリニアモータ等の駆動系(不図示)を介してレチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0024】
レチクルRの照明領域36内のパターンは、両側(又はウエハ側に片側)テレセントリックの投影光学系PLを介して、レジスト(感光材料)が塗布されたウエハWの一つのショット領域上の露光領域37(照明領域と光学的に共役な領域)に所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等)で投影される。
一方、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTのXY平面に平行な上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のウエハベースの上面でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動可能である。ウエハステージWSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、ステージ制御系35及びリニアモータ等の駆動系(不図示)を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うために、ウエハステージWSTには、レチクルRのアライメントマークの像の位置を計測する空間像計測系(不図示)が設置され、投影光学系PLの側面にウエハWのアライメントマークの位置を検出するウエハアライメント系(不図示)が備えられている。
【0025】
さらに、主制御系30には、コンピュータよりなる演算装置34、及びオペレータとの間で制御情報等の入出力を行うインタフェース(不図示)が接続されている。主制御系30は、オペレーティングシステムを含み、演算装置34は、照明光源の形状を調整する照明光源調整用のプログラムを実行する。このプログラムは記憶装置33に記憶されている。なお、主制御系30及び演算装置34は一つのコンピュータのソフトウェア上の別の機能であってもよい。また、記憶装置33は、そのコンピュータ内の記憶装置であってもよい。演算装置34のソフトウェア(照明光源調整用のプログラム)上の機能は、後述のように、演算装置34内の各手段の動作を統括的に制御する制御手段(不図示)、第1手段34a、第2手段34b、第3手段34c、照明瞳面IPの瞳輝度分布を求める第4手段34d、及び第5手段34eに分かれている。
【0026】
また、ウエハステージWSTの上部のウエハWの近傍の位置に、照明光学系ILSの照明瞳面IPの瞳輝度分布を計測する輝度分布計測装置25が設置されている。輝度分布計測装置25は、投影光学系PLの像面に配置されるピンホールが形成されたガラス板よりなるピンホール板25aと、そのピンホールを通過した照明光を平行光束に変換する集光レンズ25cと、集光レンズ25cの後側焦点面付近に配置された2次元の撮像素子25bとを有する。照明瞳面IPと撮像素子25bの受光面とは光学的に共役である。撮像素子25bの検出信号を演算装置34の上述の第4手段34dで処理することによって、照明瞳面IPの瞳輝度分布(又は光量分布)を計測できる。
【0027】
露光装置EXによるウエハWの露光時に、基本的な動作として、主制御系30は、レチクルRのパターンに応じて記憶装置33に記憶されている照明条件を読み出し、読み出した照明条件を照明制御系31に設定する。これに応じて照明制御系31は、空間光変調器13の各ミラー要素3の傾斜角を個別に制御して、照明瞳面IPの照明光源の形状(瞳輝度分布)を設定する。続いて、ウエハステージWSTのステップ移動によってウエハWが走査開始位置に移動する。その後、光源7のパルス発光を開始して、レチクルRのパターンの投影光学系PLによる像でウエハWの一つのショット領域を露光しつつ、レチクルステージRST及びウエハステージWSTを介してレチクルR及びウエハWをY方向に同期して移動することで、当該ショット領域が走査露光される。このようにステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターンの像が露光される。
【0028】
次に、図2は、本実施形態で使用される第2の露光装置EXAを示す。一例として、露光装置EXAも、スキャナーよりなる走査露光型の露光装置(投影露光装置)である。図2において、図1に対応する部分には類似の符号を付してその詳細な説明を省略する。図2において、露光装置EXAは、例えばArFエキシマレーザ光よりなる照明光(露光光)ILAを発生する光源7Aと、照明光ILAでレチクルRA(マスク)のパターン面(レチクル面RAa)を照明する照明光学系ILSAと、を備えている。さらに、露光装置EXAは、レチクルRAの位置決め及び移動を行うレチクルステージRSTAと、レチクルRAのパターンの像をウエハWA(基板)の表面に投影する投影光学系PLAと、ウエハWAの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTAと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系30Aと、各種制御系等とを備えている。以下、図2において、図1と同様に直交座標系(X,Y,Z)を設定して説明する。
【0029】
図2において、不図示の電源部によって制御される光源7Aから発光されたレーザ光よりなる照明光ILは、ビームエキスパンダ8A、偏光光学系(不図示)、及びミラー11Aを介して、光軸AXAに沿って互いに異なる照明条件を設定するための複数の回折光学素子(diffractive optical element: DOE)から選択された回折光学素子(図2では回折光学素子5A)に入射する。回折光学素子5A,5Dを含む複数の回折光学素子は、それぞれ支持枠43A,43D等を介して、光軸AXAに平行な軸の回りに回転可能に支持された円板状のターレット板41の周縁部に固定されている。ターレット板41は、ロータリーエンコーダを内蔵した駆動部42Aによって回転駆動される。ターレット板41には、回折光学素子5A等から射出される回折光を通過させる複数の開口41aが形成されている。駆動部42Aは、照明光学系ILSAを支持するフレームの一部であるフレーム部FR1に固定されている。
【0030】
主制御系30Aが記憶装置33AからレチクルRAに対応した照明条件の情報(後述の照明瞳面IPAにおける照明光源(二次光源)の形状(瞳輝度分布)及び照明系変調パラメータの値)を読み出し、読み出した照明条件の情報を照明制御系31Aに供給する。これに応じて照明制御系31Aが、駆動部42Aを介してターレット板41をその照明条件に対応した角度だけ回転することで、その照明条件に応じた回折光学素子が照明光ILAの光路に設定される。
【0031】
一例として、回折光学素子5Aは、入射した照明光ILAを回折して、ファーフィールドに光軸AXAに関してほぼ対称にZ方向(レチクル面RAaのX方向に対応する方向)及びY方向に偏心した4箇所の領域で光量が大きくなる回折光のパターンを形成する4極照明用の素子である。他の回折光学素子5D等は、例えば2極照明、輪帯照明、及び通常照明用の回折光のパターンを形成する。回折光学素子5A等は、それぞれ照明光ILAを透過する矩形のガラス基板の一面に、ファーフィールドに形成する回折光のパターンに応じた種々の凹凸の回折パターン(種々のピッチの回折格子)をエッチング等で形成することによって製造できる。回折光学素子5A等の回折パターンは、計算機ホログラム(Computer Generated Hologram: CGH) から形成することも可能である。また、回折光学素子5A等の回折パターンとして、位相分布型のホログラム、キノフォーム(Kinoform)、又は振幅分布型のホログラムも使用可能である。
【0032】
図2において、選択された回折光学素子(図2では回折光学素子5A)を介して回折された光束は、前群レンズ系47a、凹の円錐面を持つ第1プリズム48aと凸の円錐面を持つ第2プリズム48bとからなる1対のアキシコン系48、及び後群レンズ系47bを介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロレンズアレイ49を照明する。前群レンズ系47a及び後群レンズ系47bから、所定範囲で焦点距離が連続的に可変のズームレンズ(変倍光学系又は集光光学系)47が構成されている。ズームレンズ47の後側焦点面(射出瞳)はマイクロレンズアレイ49の入射面とほぼ等しく、ズームレンズ47は、回折光学素子5Aの射出面とマイクロレンズアレイ49の後側焦点面である照明光学系ILSAの瞳面(以下、照明瞳面IPAという)とを光学的にほぼ共役に結んでいる。照明瞳面IPAは、レチクル面RAaと光学的にフーリエ変換の関係にある。
【0033】
回折光学素子5A等から射出される照明光ILAは、ズームレンズ47の後側焦点面、ひいては照明瞳面IPAに照明光源(二次光源)51Bを形成する。照明光源51Bの形状が瞳輝度分布(光量分布)である。その照明光源51Bの全体的な大きさは、ズームレンズ47の焦点距離に依存して変化する。照明制御系31Aが駆動部42Bを介して前群レンズ系47aを光軸AXAに沿って駆動することで、ズームレンズ47の焦点距離fZLが所望の値に制御される。また、さらに例えばレンズ系47a,47bを駆動して、マイクロレンズアレイ49の入射面とズームレンズ47の後側焦点面とのずれ量(以下、デフォーカス量ΔFZLという)を調整することで、照明光源51Bにボケの効果を付与できる。
【0034】
また、アキシコン系48において、第1プリズム48aと第2プリズム48bとの円錐面は対向して配置されている。なお、プリズム48a,48bの光軸付近の部分は平板状である。照明制御系31Aが駆動部42Cを介して第2プリズム48bを光軸AXAに沿って駆動することで、プリズム48a及び48bの光軸AXAに沿った間隔(以下、アキシコン系48の間隔daxという。)を制御できる。この間隔daxの制御によって、回折光学素子5A等から射出された光軸AXAから離れた光束の照明瞳面IPAにおける光軸AXAに対して半径方向の位置を制御できる。一方、上記のズームレンズ47の焦点距離fZLを制御することによって、照明瞳面IPAの照明光源の大きさを制御できる。なお、マイクロレンズアレイ49の代わりにフライアイレンズを使用してもよい。
【0035】
照明瞳面IPAを通過した照明光ILAは、図1の照明光学系ILSの第1リレーレンズ16、レチクルブラインド17、第2リレーレンズ18、光路折り曲げ用のミラー19、及びコンデンサ光学系20に対応する光学系を含む後段光学系50を介して、レチクル面RAaの矩形の照明領域36Aを照明する。ビームエキスパンダ8A〜回折光学素子5A等までの光学部材、ターレット板41、アキシコン系48、ズームレンズ47、マイクロレンズアレイ49、及び後段光学系50を含んで照明光学系ILSAが構成されている。
【0036】
また、レチクルステージRSTA、投影光学系PLA、及びウエハステージWSTAの構成は図1のレチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWSTと同様である。照明領域36A内のパターンの投影光学系PLAによる像がウエハステージWSTAに保持されたウエハWAの一つのショット領域の露光領域37Aに形成される。
さらに、図2の主制御系30Aには、図1の記憶装置33及び演算装置34と同様の記憶装置33A及び演算装置34Aと、入出力を行うインタフェース(不図示)とが接続されている。主制御系30Aは、オペレーティングシステムを含み、演算装置34Aは、照明光源の形状を調整する照明光源調整用のプログラム(記憶装置33Aに記憶されている)を実行する。なお、主制御系30A及び演算装置34Aも一つのコンピュータのソフトウェア上の別の機能であってもよい。演算装置34Aのソフトウェア(照明光源調整用のプログラム)上の機能も、第1手段34Aa、第2手段34Ab、第3手段34Ac、照明瞳面IPAの瞳輝度分布を求める第4手段34Ad、及び第5手段34Aeに分かれている。第1手段34Aa〜第5手段34Aeの動作は、図1の第1手段34a〜第5手段34eの動作と同じである。
【0037】
また、ウエハステージWSTAの上部のウエハWAの近傍の位置に、照明光学系ILSAの照明瞳面IPAの瞳輝度分布を計測する輝度分布計測装置25と同様の輝度分布計測装置25Aが設置されている。輝度分布計測装置25Aは、ピンホール板25Aa、集光レンズ25Ac、及び2次元の撮像素子25Abを有する。撮像素子25Abの検出信号を演算装置34Aの第4手段34Adで処理することによって、照明瞳面IPAの瞳輝度分布(又は光量分布)を計測できる。
【0038】
露光装置EXAによるウエハWAの露光時には、基本的な動作として、露光装置EXと同様に、照明光学系ILSAからの照明光ILAで照明されたレチクルRAのパターンが、ステップ・アンド・スキャン方式で投影光学系PLAを介してウエハWAの各ショット領域に走査露光される。
次に、本実施形態において、露光装置EX,EXAにおける照明瞳面IP,IPAの照明光源の形状を調整する方法の一例につき図5のフローチャートを参照して説明する。この動作は、主制御系30及び30Aの制御のもとで演算装置34及び34Aによって実行される。一例として、露光装置EX,EXAによってウエハW,WAの各ショット領域に形成するパターンのうちで最も微細なパターンは、図3(A)のパターンであるとする。図3(A)の目標とするパターンは、ほぼ投影光学系PL,PLAの解像限界程度の線幅の部分を有するパターンであり、そのパターンの強度分布(空間像)をX方向、Y方向に所定間隔でサンプリングしたときの値が所定の閾値を超える部分が黒点で表されている。
【0039】
その目標とするパターンを形成するためのレチクルのパターン(マスクパターン)は、一例として透過率分布が図3(C)のようになり、位相分布が図3(D)のようになる位相シフト型のパターンである。この位相シフト型のパターンが図1のレチクルR及び図2のレチクルRAのパターン面にそれぞれ形成されている。また、図3(C)及び図3(D)のマスクパターンに対して最適化された照明瞳面における設計上の照明光源の形状(目標とする瞳輝度分布)の一例は、図3(E)のように2極状の分布である。図3(E)において、暗い部分ほど輝度(照度)が高く設定されている。また、照明瞳面IP及びIPAにおいて、共通に、光軸を原点として直交座標系(ξ,η)を設定し、これらの瞳面上の任意の点の極座標を(ρ,θ)で表す。本実施形態では、ξ軸はZ軸(レチクル面のX軸に対応する)に平行であり、η軸はY軸に平行である。なお、以下では照明光IL,ILAの偏光状態は例えば所定方向の直線偏光又は非偏光で一定であるとする。
【0040】
その図3(E)の設計段階で目標とする瞳輝度分布をΨDESIGN(ξ,η)で表す。オペレータがその瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)の情報を露光装置EX,EXAの主制御系30,30Aに供給し、これに応じて主制御系30,30Aがそれぞれ照明制御系31,31Aを介して照明瞳面IP,IPAにおける実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)をその瞳輝度分布をΨDESIGN(ξ,η)に近づけようとしても、両者の間には乖離が生ずる。その実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)とは、例えば輝度分布計測装置25,25Aによって実際に計測される輝度分布である。
【0041】
本実施形態では、所定のi個(iは2以上の整数)の画像変調パラメータZj(j=1〜i)を用いる画像変調操作Qをその目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)に施すことによって、その実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を次のモデルで表現する。
Ψ(ξ,η)≡Q[ΨDESIGN(ξ,η),Z1,Z2,…,Zi] …(1)
また、本実施形態では、その画像変調操作Qを、透過率変調TQ、ディストーション変調DIQ、及びコンボリューション変調CQの積で表すものとする。
【0042】
その透過率変調TQによって、式(1)は次のようになる。
Ψ(ξ,η)=T(ξ,η)ΨDESIGN(ξ,η) …(2A)
T(ξ,η)=exp[ΣZCj・fj(ξ,η)] …(2B)
ここで、式(2B)の積算(Σ)は添字jに関して行われる。また、式(2A)のT(ξ,η)は正味の透過率分布関数を意味し、関数fj(ξ,η)は図4(A)に示すj次(ここでは、j=1,2,…)のフリンジツェルニケ多項式(Fringe Zernike Function)(ツェルニケ多項式)を意味する。式(2B)の各次数の係数ZCjは、何も透過率変調がない場合に0になり、透過率は1になる。
【0043】
次に、ディストーション変調DIQは、関数gx(ξ,η)及びgy(ξ,η)を用いて、変調の前の瞳座標(ξ,η)を次のように変調後の瞳座標(ξ’,η’)に変換する。この変調前後の瞳座標の変化の一例(例えば糸巻型や樽型の変化)が図4(C)に示されている。
ξ’=ξ+gx(ξ,η) …(3A)
η’=η+gy(ξ,η) …(3B)
本実施形態では、変調の関数gx(ξ,η)及びgy(ξ,η)を、上述のツェルニケ多項式を用いて表現する。即ち、ディストーション変調DIQは、図4(B)のj次(j=1,2,…)のディストーション多項式Dist-jで表される。図4(B)のZjはj次のツェルニケ多項式fj(ξ,η)を意味し、DX及びDYは、それぞれ瞳座標ξ及びηの成分にディストーション変調を行うことを意味している。例えば、4次のディストーション多項式(Dist-4)のみの変調があった場合、4次の係数DC4を用いて関数gx(ξ,η),gy(ξ,η)は次のようになる。
【0044】
gx(ξ,η)=DC4×f2(ξ,η) …(4A)
gy(ξ,η)=DC4×{−f3(ξ,η)} …(4B)
従って、Dj(ξ,η)を図4(B)で定義されたj次のディストーション多項式(ベクトル表現)として、Dξ,Dηをそれぞれ瞳座標ξ,ηを対象にした単位ベクトルであるとすると、j次の係数DCjを用いて式(3A)、(3B)は次のように表現できる。次式の積算(Σ)は添字jに関して行われる。
【0045】
ξ’=ΣDCj{Dj(ξ,η)・Dξ} …(5A)
η’=ΣDCj{Dj(ξ,η)・Dη} …(5B)
上述のように定義されたディストーション多項式を用いると、各次数の変調作用が互いに直交した操作に相当しているため、各次数の変調を互いに独立に扱うことができる。
次に、コンボリューション変調CQは、例えば透過率txで半径trの円と、瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)とのコンボリューション演算で表される。
【0046】
また、透過率変調TQを表す式(2B)の係数ZCj、ディストーション変調DIQを表す式(5A)及び(5B)の係数DCj、並びにコンボリューション変調CQを表す透過率tr及び半径trが、式(1)の画像変調操作Qの画像変調パラメータZj(j=1〜i)に相当する。
本実施形態では、図5のステップ102において、瞳輝度分布の設計段階の目標とする分布ΨDESIGN(ξ,η)に対する実際の(実測される)分布Ψ(ξ,η)の変化を表す式(1)の画像変調操作Qのモデルの情報として、画像変調パラメータZj(j=1〜i)、透過率変調TQを表す各次数の式、及びディストーション変調DIQを表す各次数の式の情報が、オペレータによって、それぞれ主制御系30,30Aを介して、記憶装置33,33A内の第1ファイルF1,FA1に記録される。
【0047】
次に、図1の第1の露光装置EXでは、ステップ103の第1モード又はステップ104の第2モードのいずれかの処理モードを実行する。その第1モード及び第2モードのどちらを実行するかは、例えばオペレータが主制御系30を介して演算装置34の制御手段に通知する。前者のステップ103(第1モード)においては、露光装置EXの第5手段34eは、記憶装置33の露光データファイルからレチクルRのパターンに最適化された設計上の照明光源の形状(目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η))の情報を読み出し、仮想的にデータ上で照明瞳面IPにおける照明光源51Aの形状(瞳輝度分布)をその瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)に設定する。この設定された分布は、一例として図3(E)の分布になる。
【0048】
この場合、画像変調パラメータZj(j=1〜i)だけでは、どのように照明制御系31を介して空間光変調器13の各ミラー要素3を駆動すると、照明光源51Aの形状がどのように変化するのか分からない。そこで、一例として、予め空間光変調器13の多数のミラー要素3のうちの一部の例えば数10個のミラー要素3を変調制御用のミラー要素としておき、これらのミラー要素の2軸の回りの傾斜角φxk,φyk(k=1〜p1;p1は2以上の整数)を、照明制御系31を介して照明光源51Aの形状を調整するためのp個(ここではp=2・p1)の照明系変調パラメータfAj(j=1〜p;pは4以上の整数)とみなす。照明系変調パラメータfAjの初期値は、例えば目標とする瞳輝度分布内に光がほぼ均等に分布するように設定されている。なお、空間光変調器13は、複雑な瞳輝度分布を高精度に設定できるため、例えば図1のリレー光学系14を光軸AXI方向に可動として、リレー光学系14の移動量を照明系変調パラメータfBjとみなすことも可能である。
【0049】
そして、この第1モードにおいては、演算装置34の第1手段34aは、上記の照明系変調パラメータfAjの値を可変範囲の下限fAjC1に設定し、このときに照明瞳面IPに形成される瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を計算し、計算結果を第5手段34eに供給する。第5手段34eは、その計算された瞳輝度分布Ψ(ξ,η)における式(1)の画像変調パラメータZjの値ZjC1を算出し、算出結果を第1手段34aに供給する。
【0050】
そして、第1手段34aが照明系変調パラメータfAjを所定量だけ変化させてfAjCk(k=1,2,…)に設定して瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を計算し、この計算結果から第5手段34eが対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkを算出する動作を、各照明系変調パラメータfAjの所定ステップ量の間隔毎のほぼ全部の組み合わせで繰り返す。その後、第1手段34aは、照明系変調パラメータfAjの値fAjCkと、対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkとの全部の組み合わせを用いて、例えば最小自乗法によって、照明系変調パラメータfAjと画像変調パラメータZjとの関係を表す係数ajk(j=1〜1;k=1〜p)を計算する。この結果、照明系変調パラメータfAjを要素とするベクトル<fAj>と、画像変調パラメータZjを要素とするベクトル<Zj>とは、係数ajkを要素とする行列(変換行列)Aによって次のように表すことができる。
【0051】

【0052】
この式は、次の式と等価である。
<Zj>=A<fAj> …(7A)
また、行列Aに逆行列A-1が存在するものとして、式(7A)から照明系変調パラメータのベクトル<fAj>は、画像変調パラメータのベクトル<Zj>から次のように計算できる。
【0053】
<fAj>=A-1<Zj> …(7B)
なお、逆行列A-1の係数は、例えば上記の計算結果から最小自乗法等によって決定してもよい。また、照明系変調パラメータfAjと画像変調パラメータZjとの関係は、2次以上の演算式等で表すことも可能である。式(7A)及び(7B)の関係式は、記憶装置33の第1ファイルF1に記録される。その後、動作はステップ106に移行する。
一方、ステップ104(第2モード)においては、演算装置34の第5手段34eが記憶装置33の露光データファイルから、レチクルRのパターン用の目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)の情報を読み出し、仮想的にデータ上で照明瞳面IPの瞳輝度分布をその目標とする分布に設定する。
【0054】
そして、図1において、レチクルステージRSTにレチクルRの代わりに素通しのガラス板をロードし、ウエハステージWSTを駆動して露光領域37に輝度分布計測装置25の受光部を移動する。さらに、演算装置34の第1手段34aは、上記の照明系変調パラメータfAjの値を可変範囲の下限fAjC1に設定し、この値を主制御系30を介して照明制御系31に設定し、照明光ILの照射を開始させる。この状態で、輝度分布計測装置25及び演算装置34の第4手段34dによって、照明光源51Aの形状(式(1)の実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η))を計測し、計測結果を第5手段34eに供給する。第5手段34eは、その計測された瞳輝度分布Ψ(ξ,η)における式(1)の画像変調パラメータZjの値ZjC1を算出し、算出結果を第1手段34aに供給する。
【0055】
そして、第1手段34aが照明系変調パラメータfAjを所定量だけ変化させてfAjCk(k=1,2,…)に設定し、これに応じて照明制御系31が照明光源51Aの形状を変化させた後に、輝度分布計測装置25を介して瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を実測する。さらに、この実測結果から第5手段34eが対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkを算出する動作を、各照明系変調パラメータfAjの所定ステップ量の間隔毎のほぼ全部の組み合わせで繰り返す。その後、第1手段34aは、照明系変調パラメータfAjの値fAjCkと、対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkとの全部の組み合わせを用いて、例えば最小自乗法によって、照明系変調パラメータfAjを要素とするベクトル<fAj>と、画像変調パラメータZjを要素とするベクトル<Zj>との変換関係を示す式(6)(即ち式(7A))の行列Aの係数ajkを計算する。さらに、第1手段34aは、式(7B)の逆行列A-1の係数も計算し、式(7A)及び(7B)の関係式を、記憶装置33の第1ファイルF1に記録する。その後、動作はステップ106に移行する。
【0056】
次のステップ106において、第1の露光装置EXでは、実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を、目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)に設定するために、式(1)の画像変調パラメータZjの値は、式(1)の画像変調Qが実質的に1になるような初期値Z0jに設定される。そして、演算装置34の第2手段34bは、その初期値Z0jを式(7B)のベクトル<Zj>に設定して対応する照明系変調パラメータのベクトル<fAj>の値fA0jを計算する。その後、照明系変調パラメータfAjの値fA0jは主制御系30及び演算装置34の第3手段34cに供給され、その値fA0jに基づいて主制御系30が照明制御系31を介して瞳輝度分布を設定する。これによって、実際の瞳輝度分布は、容易に目標とする分布に設定される。
【0057】
そして、一例として、レチクルステージRSTにレチクルRをロードし、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布されたウエハWをロードし、照明光ILの照射を開始して、レチクルRのパターンの像をウエハWの各ショット領域に露光してテストプリントを行う。その後、ウエハWの現像を行って得られるレジストパターンの形状(線幅等)を例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で計測する。
【0058】
次のステップ108において、計測されたレジストパターンの線幅等が目標値に対して許容範囲内でない場合には、ステップ110に移行する。ステップ110において、演算装置34の第3手段34cは、照明系変調パラメータfAjの値をその初期値fA0jから僅かに変化させ、対応する画像変調パラメータZjの値を式(6)から計算し、この計算結果を式(1)に適用して変化後の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)’を予測する。そして、一例として、第3手段34cは、その予測される瞳輝度分布Ψ(ξ,η)’と変化前の瞳輝度分布Ψ(ξ,η)との変化量を求める。そして、第3手段34cは、照明系変調パラメータfAjの値を僅かに変化させてその変化量を求める動作を繰り返し、その変化量が所定範囲の変化量となるときの照明系変調パラメータfAjの値fA1jを求め、このときの照明系変調パラメータfAjの値fA1j及びこれに対応して式(6)から計算される画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを記憶装置33の第1ファイルF1に記録する。その後、動作はステップ106に移行する。
【0059】
この段階のステップ106においては、ステップ110で設定された照明系変調パラメータfAjの値fA1jに基づいて、主制御系30が照明制御系31を介して瞳輝度分布を設定する。その後、テストプリントが行われた後、ステップ108で露光結果が許容範囲内かどうかが判定される。そして、ステップ108で、露光結果が許容範囲内である場合には、動作はステップ112に移行する。この露光結果が許容範囲内である場合の、照明瞳面IPにおける照明光源51Aの形状(実際の瞳輝度分布Ψ(ξ,η))は、図3(F)に示すように、一例として図3(E)の設計上の目標とする分布とは異なっている。
【0060】
ステップ112において、主制御系30は、記憶装置33の第1ファイルF1から読み出した画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを、不図示の通信回線を介して第2の露光装置EXAの主制御系30Aに送信する。送信された値は、第2の露光装置EXの記憶装置33Aの第2ファイルFA2に記録される。この後、第1の露光装置EXは、一例として、その設定された瞳輝度分布(照明条件)のもとで、レチクルRのパターンの投影光学系PLによる像を所定ロット数のウエハWの各ショット領域に露光する。そのときのデフォーカス量ΔZが0のときの空間像の一例が図3(B)に示されている。
【0061】
次に、図2の第2の露光装置EXAでは、ステップ113の第1モード又はステップ114の第2モードのいずれかの処理モードを実行する。その第1モード及び第2モードのどちらを実行するかは、例えばオペレータが主制御系30Aを介して演算装置34Aの制御手段に通知する。前者のステップ113(第1モード)においては、露光装置EXAの第5手段34Aeは、記憶装置33Aの露光データファイルからレチクルRAのパターンに最適化された設計上の照明光源の形状(目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η))の情報を読み出し、仮想的にデータ上で照明瞳面IPAにおける照明光源51Bの形状(瞳輝度分布)をその瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)に設定する。
【0062】
この場合、本実施形態では、上述の照明光学系ILSA中のズームレンズ47の焦点距離fZL、ズームレンズ47のデフォーカス量ΔFZL、及びアキシコン系48の間隔daxを、照明制御系31Aを介して照明光源51Bの形状を調整するためのq個(ここではq=3)の照明系変調パラメータfBj(j=1〜q)とみなす。なお、例えば回折光学素子を特性が僅かに異なる2つの回折光学素子の接合として、照明光ILでその2つの回折光学素子の境界領域を照明し、その境界領域内の2つの回折光学素子の面積比rを可変とし、この面積比rを照明系変調パラメータfBjの一つとしてもよい。
【0063】
そして、この第1モードにおいては、ステップ103と同様に、演算装置34Aの第1手段34Aaは、照明系変調パラメータfBjを次第に異なる値fBjCk(k=0,1,…)に設定して瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を計算し、この計算結果から第5手段34Aeが対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkAを算出する動作を、各照明系変調パラメータfBjの所定ステップ量の間隔毎のほぼ全部の組み合わせで繰り返す。そして、第1手段34Aaは、照明系変調パラメータfBjの値fBjCkと、対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkAとの全部の組み合わせを用いて、例えば最小自乗法によって、照明系変調パラメータfBjと画像変調パラメータZjとの関係を表す係数bjk(j=1〜1;k=1〜q)を計算する。この結果、照明系変調パラメータfBjを要素とするベクトル<fBj>と、画像変調パラメータZjを要素とするベクトル<Zj>とは、係数bjkを要素とする行列Bによって次のように表すことができる。
【0064】

【0065】
この式は、次の式と等価である。
<Zj>=B<fBj> …(9A)
また、行列Bに逆行列B-1が存在するものとして、式(9A)から照明系変調パラメータのベクトル<fBj>は、画像変調パラメータのベクトル<Zj>を用いて次のように計算できる。
【0066】
<fBj>=B-1<Zj> …(9B)
なお、逆行列B-1の係数は、例えば実測値から最小自乗法等によって決定してもよい。また、照明系変調パラメータfBjと画像変調パラメータZjとの関係は、2次以上の演算式等で表すことも可能である。式(9A)及び(9B)の関係式は、記憶装置33Aの第1ファイルFA1に記録される。その後、動作はステップ116に移行する。
【0067】
一方、ステップ114(第2モード)においては、演算装置34Aの第5手段34Aeが記憶装置33Aの露光データファイルから、レチクルRAのパターン用の目標とする瞳輝度分布ΨDESIGN(ξ,η)の情報を読み出し、仮想的にデータ上で照明瞳面IPAの瞳輝度分布をその目標とする分布に設定する。
【0068】
そして、図2において、ステップ104と同様に、レチクルステージRSTAにレチクルRAの代わりに素通しのガラス板をロードし、ウエハステージWSTAを駆動して露光領域37Aに輝度分布計測装置25Aの受光部を移動する。そして、演算装置34Aの第1手段34Aaが照明系変調パラメータfBjを次第に異なる値fBjCk(k=0,1,…)に設定し、これに応じて照明制御系31Aが照明光源51Bの形状を変化させた後に、輝度分布計測装置25Aを介して瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を実測する。さらに、この実測結果から第5手段34Aeが対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkAを算出する動作を、各照明系変調パラメータfBjの所定ステップ量の間隔毎のほぼ全部の組み合わせで繰り返す。その後、第1手段34Aaは、照明系変調パラメータfBjの値fBjCkと、対応する画像変調パラメータZjの値ZjCkAとの全部の組み合わせを用いて、例えば最小自乗法によって、照明系変調パラメータfBjと画像変調パラメータZjとの関係を表す係数bjk(j=1〜1;k=1〜q)を計算する。この結果、照明系変調パラメータfBjを要素とするベクトル<fBj>と、画像変調パラメータZjを要素とするベクトル<Zj>とは、係数bjkを要素とする行列Bによって上記の式(8)又は式(9A)のように表すことができる。
【0069】
また、行列Bに逆行列B-1が存在するものとして、式(9A)から照明系変調パラメータのベクトル<fBj>は、画像変調パラメータのベクトル<Zj>を用いて上記の式(9B)のように計算できる。式(9A)及び(9B)の関係式は、記憶装置33Aの第1ファイルFA1に記録される。その後、動作はステップ116に移行する。
【0070】
その後、ステップ116において、照明瞳面IPAの瞳輝度分布を第1の露光装置EXの照明瞳面IPの瞳輝度分布に合わせるために、演算装置34Aの第2手段34Abは記憶装置33Aの第2ファイルFA2から、第1の露光装置EXで計測された画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを読み出し、この値ZVjを式(9B)のベクトル<Zj>に設定して対応する照明系変調パラメータのベクトル<fBj>の第2組の値fBVjを計算する。
【0071】
次のステップ118において、照明系変調パラメータfBjの値fBVjは主制御系30Aに供給され、その値fBVjに基づいて主制御系30Aが照明制御系31A(駆動部42A〜42C)を介して瞳輝度分布を設定する。これによって、実際の照明光源51Bの瞳輝度分布は、図3(F)に示すように、目標とする分布に近い分布で、かつ第1の露光装置EXによって設定されている分布に近い分布に設定される。
【0072】
次のステップ120において、第2の露光装置EXAは、その設定された瞳輝度分布(照明条件)のもとで、レチクルRAのパターンの投影光学系PLAによる像を所定ロット数のウエハWAの各ショット領域に露光する。
このステップ120(露光工程)では、他のレチクルのパターンを露光する場合にも、上述のように、露光装置EXAの瞳輝度分布を露光装置EXの瞳輝度分布に合わせておいてもよい。この場合、露光装置EX,EXAを含む複数の露光装置を用いてミックス・アンド・マッチ方式で所定ロット数のウエハにパターンを露光することも可能である。この際に露光装置EX,EXAは瞳輝度分布(照明条件)がほぼ同じであるため、重ね合わせ精度等を向上できる。
【0073】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXAにおいて、ウエハWAにパターンを形成するための照明光源51Bの形状(光源形状)を調整する光源調整方法は、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す画像変調パラメータZj(j=1〜i)(第1のパラメータ群)を設定するステップ102と、照明光源51B(第1の照明光源)を形成し、照明系変調パラメータfBj(j=1〜q)で調整量が表される駆動部42A〜42C(調整機構)を介して照明光源51Bの形状が調整される照明光学系ILSA(第1の照明系)に関して、画像変調パラメータZjと照明系変調パラメータfBjとの間の変換の行列Bを求めるステップ113(又は114)と、その行列Bを用いて、照明系変調パラメータfBjの値を求めるステップ110と、その照明系変調パラメータfBjの値に応じて照明光学系ILSAの駆動部42A〜42C(照明制御系31A)を調整するステップ118と、を含む。
【0074】
また、本実施形態の記憶装置33Aに記憶されている光源調整用のプログラムは、ウエハWAにパターンを形成するための照明光源51Bの形状(光源形状)を調整するために、演算装置34A及び記憶装置33Aを含むコンピュータを以下のように機能させている。即ち、そのコンピュータは、画像変調パラメータZj(第1のパラメータ群)の情報を記憶する記憶装置33A(第1記憶手段)、照明系変調パラメータfBjで調整量が表される駆動部42A〜42Cを介して照明光源51Bの形状が調整される照明光学系ILSAに関して、画像変調パラメータZjと照明系変調パラメータfBjとの間の変換の行列Bを求める第1手段34Aa、及びその行列Bを用いて、その照明系変調パラメータfBjの値を求める第2手段34bとして機能している。
【0075】
また、本実施形態の露光装置EXAは、照明光ILAを照射してウエハWAにパターンを形成する露光装置であって、画像変調パラメータZjの情報を記憶する記憶装置33Aと、照明光源51Bを形成し、照明系変調パラメータfBjで調整量が表される駆動部42A〜42Cを有し、駆動部42A〜42Cによって照明光源51Bの形状が調整される照明光学系ILSAと、駆動部42A〜42Cの駆動量に対応する照明系変調パラメータfBjの値を求める演算装置34Aと、その値に応じて駆動部42A〜42C(照明制御系31A)を駆動する主制御系30Aと、を備えている。そして、演算装置34Aは、画像変調パラメータZjと照明系変調パラメータfBjとの間の変換の行列Bを求め、その行列Bを用いて、照明系変調パラメータfBjの値を求めている。
【0076】
本実施形態によれば、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す画像変調パラメータZjと、照明系変調パラメータfBjとの変換関係(行列B)を求めているため、その照明系変調パラメータfBjの値からその変換関係を用いて、画像変調パラメータZjを介して実際の光源形状を定量的に正確に予測できる。従って、その予測される光源形状に基づいて、照明系変調パラメータfBjの値を求め、この値に従って照明光学系ILSAの駆動部42A〜42Cを調整することによって、照明光学系ILSAの照明光源の形状を必要な形状(例えば目標とする形状)に容易に調整できる。
【0077】
なお、その変換関係(行列B)に基づいて照明系変調パラメータfBjの値を求める動作としては、例えば図5のステップ110(第3手段34cの動作)と同様に、照明系変調パラメータfBjの種々の値に対してそれぞれ式(8)から画像変調パラメータZjを計算し、この計算結果から式(1)より瞳輝度分布Ψ(ξ,η)を計算し、この計算結果の分布が必要な分布に許容範囲内で合致するときの照明系変調パラメータfBjの値を求める動作でもよい。
【0078】
(2)また、本実施形態の光源調整方法は、照明光源51A(第2の照明光源)を形成する照明光学系ILS(第2の照明系)に関して、目標とする光源形状に対する照明光源51Aの形状の変化を表す画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを求めるステップ112と、照明光源51Bの形状を照明光源の形状51Aに合わせるために、その行列Bを用いて、その第1組の値ZVjに対応する照明系変調パラメータfBjの第2組の値fBVjを求めるステップ110と、を含んでいる。
【0079】
また、本実施形態の光源調整用のプログラムは、そのコンピュータを、照明光学系ILSに関して、画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを記憶する記憶装置33A(第2記憶手段)、及び照明光源51Bの形状を照明光源51Aの形状に合わせるために、その行列Bを用いて、その第1組の値ZVjに対応する照明系変調パラメータfBjの第2組の値fBVjを求める第2手段34bとして機能させている。
また、本実施形態の露光装置EXAは、照明光学系ILSに関して、画像変調パラメータZjの第1組の値ZVjを記憶する記憶装置33Aを備え、演算装置34Aは、照明光源51Bの形状を照明光源51Aの形状に合わせるために、その行列Bを用いて、その第1組の値ZVjに対応する照明系変調パラメータfBjの第2組の値fBVjを求めている。
【0080】
本実施形態によれば、照明系変調パラメータfBjの第2組の値fBVjに従って照明光学系ILSAの駆動部42A〜42Cを調整することによって、照明光学系ILSAの照明光源の形状を照明光学系ILSの照明光源の形状(目標とする形状)に容易に調整できる。
(3)また、本実施形態において、その実際の光源形状とは、例えば実際に計測された光源形状である。
【0081】
(4)また、本実施形態の露光装置EXAを用いる露光方法は、本実施形態の光源調整方法によって照明光源51Bの形状が調整された照明光学系ILSAからの照明光ILによってパターンをウエハWAに形成するものである。
【0082】
この露光方法によれば、露光装置EXAの照明条件(照明光源の形状)を容易に目標とする照明条件に設定して露光を行うことができる。
なお、上記の実施形態では、ステップ116,118において、或るパターンをウエハに形成する際の露光装置EXAの照明光源51Bの形状を、露光装置EXの照明光源51Aの形状に合わせている。この他に、例えば露光装置EXの光学的近接効果による誤差であるOPE(Optical Proximity Error )が図6の曲線52Aで表されるように、露光装置EXの照明光源51Aの形状が設定されている場合に、この照明光源51Aの形状に露光装置EXAの照明光源51Bの形状(瞳輝度分布Ψ(ξ,η))を合わせてもよい。図6において、横軸は転写されるパターンのウエハ上でのピッチ(nm)、縦軸は対応するピッチのパターンの線幅の誤差OPEΔ(pitch)(nm)である。これによって、露光装置EXAのOPEが図6の曲線52Bで表されるように露光装置EXのOPEに近づくように設定される。
【0083】
なお、上記の実施形態では、以下のような変形が可能である。
上記の実施形態では、画像変調パラメータZjとして、透過率変調を表すツェルニケ多項式の係数ZCj、ディストーション変調DIQを表すディストーション多項式の係数DCj、並びにコンボリューション変調CQを表すパラメータを使用している。しかしながら、画像変調パラメータZjとしては、ツェルニケ多項式及びディストーション多項式の少なくとも一方の係数を用いてもよい。さらに、画像変調パラメータZjとしては、他の任意のパラメータを使用してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、第2の露光装置EXAの照明光学系ILSAの照明系変調パラメータfBjは、ズームレンズ47の焦点距離fZL及びデフォーカス量ΔFZL、アキシコン系48の間隔dax、並びに照射面積内の2つの回折光学素子の面積比rを使用している。しかしながら、照明光学系ILSAの照明系変調パラメータfBjとしては、ズームレンズ47の焦点距離fZL及びアキシコン系48の間隔daxを含むだけでもよく、さらにアキシコン系48を省略した場合には、ズームレンズ47の焦点距離fZLを含むだけでもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、第1の露光装置EXの照明光学系ILSは、空間光変調器13を用いて照明瞳面IP上の照明光源の形状を設定している。しかしながら、照明光学系ILSでも、複数個の回折光学素子から選択された回折光学素子を用いて照明瞳面IP上の照明光源の形状(瞳輝度分布)を設定してもよい。この場合には、照明光学系ILSの照明系変調パラメータfAjは、第2の露光装置EXAの照明系変調パラメータfBjと同じでもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、第2の露光装置EXAの照明光学系ILSAは、回折光学素子5A,5D等を用いて照明瞳面IPA上の照明光源の形状を設定している。しかしながら、照明光学系ILSAでも、空間光変調器13を用いて照明瞳面IPA上の照明光源の形状(瞳輝度分布)を設定してもよい。この場合には、照明光学系ILSAの照明系変調パラメータfBjは、第1の露光装置EXの照明系変調パラメータfAjと同じでもよい。
【0087】
また、上記の実施形態の露光装置EX,EXAは輝度分布計測装置25,25Aを備えている。しかしながら、輝度分布計測装置25,25Aの代わりにウエハステージWST,WSTA又はレチクルステージRST,RSTAに着脱式の輝度分布計測装置を使用してもよい。
また、照明光学系ILS及びILSAは、オプティカルインテグレータとしてフライアイレンズ15及びマイクロレンズアレイ49(フライアイインテグレータ)の代わりにロッドレンズ(内面反射型インテグレータ)を用いて構成してもよい。
【0088】
また、上記の実施形態の露光方法又は露光装置EXA(又は露光装置EX,EXA)を用いて半導体デバイス等の電子デバイスを製造する場合、電子デバイスは、図7に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光方法又は露光装置によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0089】
従って、このデバイス製造方法の基板処理ステップ224は、上記の実施形態の露光方法又は露光装置を用いて所定のパターンを基板に形成する露光工程と、そのパターンが形成された基板を処理する工程とを含んでいる。その露光方法又は露光装置によれば、複数の露光装置の照明条件を容易に合わせることができるため、電子デバイスを効率的に高精度に製造できる。
【0090】
なお、本発明は、上述の走査露光型の露光装置で露光する場合の他に、ステッパー等の一括露光型の露光装置で露光する場合にも適用できる。さらに、本発明は、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書、又は欧州特許出願公開第1420298号明細書等に開示されている液浸型露光装置で露光する場合にも適用できる。また、本発明は、投影光学系を使用しないプロキシミティ方式の露光装置にも適用可能である。
【0091】
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、製造工程にも適用することができる。
【0092】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
EX,EXA…露光装置、R,RA…レチクル、PL,PLA…投影光学系、W,WA…ウエハ、ILS,ILSA…照明光学系、IP,IPA…照明瞳面、5A,5D…回折光学素子、13…空間光変調器、25,25A…輝度分布計測装置、30,30A…主制御系、34,34A…演算装置、51A,51B…照明光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体にパターンを形成するための照明光源の形状である光源形状を調整する光源調整方法であって、
目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群を設定することと、
第1の照明光源を形成し、第2のパラメータ群で調整量が表される調整機構を介して前記第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系に関して、前記第1のパラメータ群と前記第2のパラメータ群との変換関係を求めることと、
前記変換関係に基づいて前記第2のパラメータ群の値を求めることと、
前記第2のパラメータ群の値に応じて前記調整機構を調整することと、
を含む光源調整方法。
【請求項2】
前記第1の変換関係に基づいて前記第2のパラメータ群の値を求めることは、
第2の照明光源を形成する第2の照明系に関して、目標とする光源形状に対する前記第2の照明光源の形状の変化を表す前記第1のパラメータ群の第1組の値を求めることと、
前記第1の照明光源の形状を前記第2の照明光源の形状に合わせるために、前記変換関係を用いて、前記第1のパラメータ群の前記第1組の値に対応する前記第2のパラメータ群の第2組の値を求めることと、
を含む請求項1に記載の光源調整方法。
【請求項3】
前記第1のパラメータ群は、ツェルニケ多項式及びディストーション多項式の少なくとも一方の係数を含む請求項1又は2に記載の光源調整方法。
【請求項4】
前記第1の照明系は、光の角度分布を制御する角度分布制御素子、該角度分布制御素子からの光を前記第2の照明光源に導くズーム光学系、及び前記ズーム光学系中に配置されて間隔が可変の1対のアキシコンを含み、
前記第2のパラメータ群は、前記ズーム光学系の焦点距離及び前記1対のアキシコンの間隔を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源調整方法。
【請求項5】
前記光源形状は、物体にパターンを形成するための照明光を射出する光学系の瞳面上での前記照明光の強度分布により規定される請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源調整方法。
【請求項6】
前記変換関係を求めることは、前記第2のパラメータ群の値の複数の組み合わせに対して前記第1の照明光源の形状を計算することを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の光源調整方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光源調整方法によって光源形状が調整された前記第1の照明系からの照明光によってパターンを物体に形成する露光方法。
【請求項8】
物体にパターンを形成するための照明光源の形状である光源形状を調整するためにコンピュータを、
目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群の情報を記憶する第1の記憶手段、
第1の照明光源を形成し、第2のパラメータ群で調整量が表される調整機構を介して前記第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系に関して、前記第1のパラメータ群と前記第2のパラメータ群との変換関係を求める第1手段、及び
前記変換関係に基づいて前記第2のパラメータ群の値を求める第2手段、
として機能させるための光源調整用のプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを
第2の照明光源を形成する第2の照明系に関して、目標とする光源形状に対する前記第2の照明光源の形状の変化を表す前記第1のパラメータ群の第1組の値を記憶する第2の記憶手段として機能させるとともに、
前記第2手段は、前記第1の照明光源の形状を前記第2の照明光源の形状に合わせるために、前記変換関係を用いて、前記第1のパラメータ群の前記第1組の値に対応する前記第2のパラメータ群の第2組の値を求める請求項8に記載の光源調整用のプログラム。
【請求項10】
前記第1のパラメータ群は、ツェルニケ多項式及びディストーション多項式の少なくとも一方の係数を含む請求項8又は9に記載の光源調整用のプログラム。
【請求項11】
前記第1の照明系は、光の角度分布を制御する角度分布制御素子、該角度分布制御素子からの光を前記第2の照明光源に導くズーム光学系、及び前記ズーム光学系中に配置されて間隔が可変の1対のアキシコンを含み、
前記第2のパラメータ群は、前記ズーム光学系の焦点距離及び前記1対のアキシコンの間隔を含む請求項8〜10のいずれか一項に記載の光源調整用のプログラム。
【請求項12】
照明光を照射して物体にパターンを形成する露光装置であって、
前記照明光が射出される照明光源の形状である光源形状に関して、目標とする光源形状に対する実際の光源形状の変化を表す第1のパラメータ群の情報を記憶する記憶装置と、
第1の照明光源を形成し、第1のパラメータ群で調整量が表される調整機構を有し、前記調整機構によって前記第1の照明光源の形状が調整される第1の照明系と、
前記調整機構の駆動量に対応する前記第1のパラメータ群の値を求める演算装置と、
前記第1のパラメータ群の値に応じて前記調整機構を駆動する制御装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記第1のパラメータ群と前記第2のパラメータ群との変換関係を求め、
前記変換関係を用いて、前記第2のパラメータ群の値を求める露光装置。
【請求項13】
前記記憶装置は、第2の照明光源を形成する第2の照明系に関して、目標とする光源形状に対する前記第2の照明光源の形状の変化を表す前記第1のパラメータ群の第1組の値を記憶し、
前記演算装置は、前記第1の照明光源の形状を前記第2の照明光源の形状に合わせるために、前記変換関係を用いて、前記第1のパラメータ群の前記第1組の値に対応する前記第2のパラメータ群の第2組の値を求める請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記第1のパラメータ群は、ツェルニケ多項式及びディストーション多項式の少なくとも一方の係数を含む請求項12又は13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記第1の照明系は、光の角度分布を制御する角度分布制御素子、該角度分布制御素子からの光を前記第1の照明光源に導くズーム光学系、及び前記ズーム光学系中に配置されて間隔が可変の1対のアキシコンを含み、
前記第2のパラメータ群は、前記ズーム光学系の焦点距離及び前記1対のアキシコンの間隔を含む請求項12〜14のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項16】
前記光源形状は、物体にパターンを形成するための照明光を射出する光学系の瞳面上での前記照明光の強度分布により規定され、
前記第1の照明光源の形状を計測する計測装置を備える請求項12〜15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項17】
請求項7に記載の露光方法を用いて物体にパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記物体を処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項18】
請求項12〜16のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体にパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記物体を処理することと、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−89674(P2012−89674A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234931(P2010−234931)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】