説明

光異性化が可能な基を有する光活性モノマーを含むブロックコポリマーから成る光学式三次元(3D)記録装置

【課題】光学式3D記録メモリとなるブロックコポリマーと、この光学式3D記録デバイス。
【解決手段】(1)Tg>−60℃、好ましくはTg>0℃、さらに好ましくは>60℃である少なくとも一種のブロックAと、(2)光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックBとから成るブロックコポリマー。光異性化が可能な発色団は式(I)を有する:


〔ここで、XはHまたはCH3-、Gは=O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換フェニル基または−NR−C(=O)−を表し、NRはLと結合し、RはHまたはC1〜C10アルキル基であり、Lはスペーサ基を表し、CRは光異性化が可能な発色団を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3D光学式データ記録を行うことができるポリマーに関するものである。
本発明はさらに、上記ポリマーから得られる材料、特にディスクの形をした3D光メモリディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報システムの飛躍的な発展によって50年以上の長期間にわたってデータを確実に保存する小型の大容量データ記録装置に対するニーズが高まっている。データの記録に使用可能な技術の一つは光学的な記録である(これに関しては非特許文献1(SPIE, "Conference on nano-and micro-optics for information systems" August 4, 2003, paper 5224-16)を参照されたい)
【0003】
特許文献1(国際特許第WO 01/73 779号公報)にはC=C二重結合を有する分子(発色団)のシス−トランス遷移によって情報を記録する光学式記録装置が開示されている。分子はポリマーに結合可能な式Ar11C=CR2Ar2のジアリールアルキレンにすることができる。
【0004】
特許文献2(国際特許第WO 03/070 689号公報)にはジアリールアルキレン型発色団を含むポリマーが開示されている。ポリマーはポリ(アルキルアクリレート)またはポリ(アルキルアクリレート)コポリマー、特にスチレンとのコポリマーにすることができる。このポリマーはポリメチルメタクリレートにすることもできるが、それがブロックコポリマーか否か、ブロックの一つ中に発色団が存在するか否かは記載がない。
【0005】
特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)には、ジアリールアルキレン型発色団を有するポリマーが開示されている。発色団濃度を上げたときの共同効果が説明されている。
特許文献4(米国特許第5,023,859号明細書)にはスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ビスアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン型の感光性基を含むポリマーを使用した光記録装置が開示されている。ポリマーはブロックポリマーにすることができるが、このブロックポリマーの正確な特性は詳細に記載されていない。
【0006】
特許文献5(国際出願第WO2006/075 328号公報)には、光学式記録で使用可能なジアリールアルキレン型化合物が開示されている。
特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)には、ディスク形の3Dメモリが開示されている。
【0007】
本発明は、特許文献1、特許文献2および非特許文献2(日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁)に記載のような3次元(3D)光学式記録方法に関するものである。この3D光学式記録方法では適当な波長の光を放射した時に相互に変換可能な2つの熱力学的に安定な異性体の形となる光異性化可能な発色団を使用するもので、データが記録されていないときは一方の形の異性体が支配的であり、データを書込む時には適当な波長の光を放射してその異性体から他方の異性体へ変換させる。この変換は直接的または間接的な光学的相互作用(例えば多光子相互作用)に起因する。
【0008】
特許文献2(国際特許WO 03/070 689号公報)では発色団を含むモノマーを(共)重合して発色団をポリマーに結合させている。特許文献3(国際特許第WO2006/075 327号公報)では発色団の濃度を上げて光記録装置の記録感度を高めている。しかし、発色団含有モノマーの濃度を上げるとポリマーの機械特性が損なわれ、得られた材料が過度に脆くなるか、過度に軟くなり、取り扱いが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際出願第WO 01/73 779号公報
【特許文献2】国際出願第WO 03/070 689号公報
【特許文献3】国際出願第WO2006/075 327号公報
【特許文献4】米国特許第5,023,859号明細書
【特許文献5】国際出願第WO2006/075 328号公報
【特許文献6】国際出願第WO2006/075 329号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SPIE, "Conference on nano-and micro-optics for information systems" August 4, 2003, paper 5224-16「情報システム用のナノおよびミクロ光学に関する会議」8月4日、2003年、研究論文5225−16
【非特許文献2】日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、3D光学的記録の分野で使用可能な優れたデータの書込み/読取り機能を有するリジッドな材料を開発するというニーズがある。
本発明者は請求項1に記載のブロックコポリマーまたは請求項29に記載のブレンド物によって上記の課題が解決できるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記(1)と(2)から成るブロックコポリマーに関するものである:
(1)Tg>−60℃、好ましくはTg>0℃、有利には>60℃である少なくとも一種のブロックA、
(2)光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックB。
【0013】
光活性モノマーは式(I)を有する:
【化1】

【0014】
〔ここで、
XはHまたはCH3-を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換のフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル基である)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化が可能な発色団を表す。〕
【0015】
本発明のブロックコポリマーを用いることによって3D光記録装置が得られる。
本発明はさらに、上記ブロックコポリマーと熱可塑性物質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーとを含むブレンド物と、上記ブロックコポリマーを含む3D光記録装置に関するものである。
【0016】
gはASTM E1356に従ってDSCによって測定されるポリマーのガラス遷移温度を表す。モノマーのTgも問題にする場合には、そのモノマーをラジカル重合して得られる数平均分子量Mnが少なくとも10,000g/molであるホモポリマーのTgを表すことにする。従って、ポリ(エチルアクリレート)ホモポリマーのTgが−24℃であるので、エチルアクリレートのTgは−24℃であるといえる。特に記載のない限り%は重量%である。
【0017】
「光活性モノマー」とは光異性化が可能な発色団CRを含むモノマーを意味する。発色団は2つの異性体、例えばシス−トランスで存在する。一方から他方への変換は適切な波長の光を放射することで行う。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光活性モノマーは式(I)を有する:
【化2】

【0019】
〔ここで、
XはHまたはCH3−を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換のフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル基である)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化可能発色団を表す。〕
【0020】
スペーサ基Lは発色団の相互変換を促進するために、発色団をコポリマー鎖から離す役目をする。これによって読取り容量および速度が改善される。GおよびCRが共有結合によって互いに連結された2つ以上の原子の鎖によって互いに連結されるようにスペーサ基Lを選択するのが好ましい。Lは例えば(CR12m、O(CR12mおよび(OCR12m基(ここで、mは2より大きい整数、好ましくは2〜10で、R1およびR2は独立してH、ハロゲンまたはアルキルまたはアリール基を表す)の中から選択することができる。R1およびR2はHを表すのが好ましい。
【0021】
発色団CRはシスおよびトランス異性体で存在するジアリールアルキレン型の発色団であるのが好ましい。この発色団CRは特許文献1(国際出願第WO 01/73 779号公報)、特許文献2(国際出願第WO 03/070 689号公報)、特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)、特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)に開示の発色団の一つにすることができる。発色団CRは異性化に対するエネルギー障壁が80kJ/mol以上になるように選択するのが好ましい。すなわち、記録データのロスを防ぐために異性化は室温で極めてゆっくり進むプロセスにするのが望ましい。
【0022】
光活性モノマーは下記式(II)を有するのが好ましい:
【化2】

【0023】
〔ここで、
Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリール基、
1およびW2は−CN、−COOH、−COOR’、−OH、−SO2R’および−NO2基(R’はC1〜C10アルキル基またはアリール基である)の中から選択される〕
【0024】
発色団は基Ar11C=CW2Ar2に対応する。Lは共有結合を介してAr2とGに連結する。Ar1およびAr2は置換または非置換アリール基を表す。これらは例えば互いに独立してフェニル、アントラセンまたはフェナントレン基の中から選択される。可能性のある置換基(一種以上)は下記の中から選択される:H、直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル、NO2、C1−C10アルコキシまたはハロゲン、NR’’R’’’(ここで、R’’およびR’’’はHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル)。Ar1は発色団のC=C二重結合に結合する。Ar2は発色団のC=C二重結合、さらに基Lに結合する。
【0025】
Gは−O−C(=O)−またはC64フェニル基である、すなわちモノマーが下記式を有するのが好ましい:
【化3】

または

【0026】
Ar1がフェニル基で、Ar2はフェニルまたはビフェニル基で、フェニルおよび/またはビフェニル基はそれぞれ置換されていてもよい、すなわち発色団が下記式(V)または(VI)を有するのが好ましい:
【化5】

【0027】
可能性のある置換基は、例えば、H、アリール、直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル、NO2、直鎖または分岐鎖のC1−C10アルコキシまたはハロゲンにすることができる。
【0028】
好ましい形態では、W1およびW2はCNを表し、Ar2はフェニル基で、Ar1がR5O−によってパラ配位で置換されたフェニル基である。R5は置換または非置換のアルキルまたはアリール基を表す。R5は直鎖または分岐鎖のC1−C4アルキル基であるのが好ましい。R5は例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル基にすることができる。例えば、式(VII)の発色団にすることができる:
【0029】
【化6】

【0030】
別の好ましい形はW1およびW2がCNを表し、Ar2がフェニル基で、Ar1がR5O−によってパラ配位が置換されたビフェニル基の場合である。例えば式(VIII)の発色団にすることができる:
【0031】
【化6】

【0032】
下記の2つのモノマー(eAAおよびeMMA)が特に好ましい:
【化7】

【0033】
これらは下記のような優れた書込みおよび読取りの光学特性を有する(これに関しては非特許文献2(日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁)を参照):
(1)トランス異性体はシスより高い蛍光性を有し、
(2)トランス異性体は大きな有効二光子吸収断面積を有し、
(3)ストークスシフトは100nm以上(吸収スペクトルおよび発光スペクトルは375nmと485nmに各ピークを有し、ほとんどオーバーラップしない)。
さらに、これらは広範囲のモノマーを用いて制御されたラジカル重合法で容易に共重合でき、異性化に対するエネルギー障壁が80kJ/mol以上で、優れた安定性を有する。
【0034】
吸収スペクトルと発光スペクトルとのオーバーラップが小さく、<35%、さらには<20%であるのが好ましい(特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)の第22頁を参照)。これによって発色団濃度を上げることができ、従って読取り中の信号品質を損なわずに共同効果(cooperative effect)を促進できる。このオーバーラップはストークスシフトとピークの幅の両方に依存する。オーバーラップは1cm光路長キュベット中の0.01Mの発色団溶液が吸収する発光の百分率で定義される。ストークスシフトは>100nmであるのが好ましい。
【0035】
本発明はジアリールアルキレン型発色団に限定されるものではなく、その他の光異性化可能発色団、例えばスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ビスアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン基から成る発色団にも適用できる。これらの発色団のリストは特許文献4(米国特許第5,023,859号明細書)、特許文献7(米国特許第6,875,833号明細書)および特許文献8(米国特許第6,641,889号明細書)を参照されたい。
【0036】
「共同効果を有するモノマー」とは式(IX)の化合物を意味する:
【化8】

【0037】
(ここで、
X、GおよびLは光活性モノマーと同じ意味を有し、
Ar3は誘導作用(−I)を有する少なくとも一種の置換基によって置換された芳香族基を表す)
このモノマーは共同的効果を介して発色団と相互作用するおよび/または発色団間の共同的効果を高める。これによって書込み速度が上がる。共同的効果の一つの解釈は、モノマーが発色団のミクロ環境を変えて、光異性化を促進することである。
【0038】
誘導作用(−I)を有する置換基は下記の中から選択される:
(i)ハロゲン、
(ii)−COOY、−CONYY’、−OY、−SYまたは−C(=O)Y(YおよびY’はHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル基を表す)
Ar3はフェニル基であるのが有利である。ハロゲン基は塩素であるのが有利である。Ar3は下記の基の中から選択されるのがさらに有利である:
【0039】
【化9】

【0040】
例としては下記のヒンダードモノマーを用いることができる:
【化11】

【0041】
TCLPおよびTCLPaはそれぞれ2,4,6−トリクロロフェニルメタクリレートおよび2,4,6−トリクロロフェノキシプロピルアクリレートを表す。
【0042】
ブロックAはリジッドでもソフトでもよく、Tg>−60℃、好ましくはTg>0℃、有利には>60℃、例えば>80℃である。
ブロックAの数平均分子量はMn>2000g/mol、有利には>5000g/mol、好ましくは>10,000g/mol、例えば50,000g/molである。このブロックの弾性率(DMAで測定)は好ましくは>100MPa、有利には>500MPa、好ましくは>1000MPaである。ブロックAの役目の一つは十分な機械強度のあるブロックコポリマーを得ることにある。
【0043】
ブロックAは少なくとも一種のビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリルまたは(メタ)アクリルモノマーの重合で得られる。このモノマーは下記の中から選択できる:芳香族ビニルモノマー、例えばスチレンまたは置換スチレン、特にα−メチルスチレン、アクリルモノマー、例えばアクリル酸またはその塩、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレートまたはフェニルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、エーテルアルキルアクリレート、例えば2−メトキシエチルアクリレート、アルコキシまたはアリールオキシ−ポリ(アルキレングリコール)アクリレート、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール)アクリレート、メトキシポリ(プロピレングリコール)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)アクリレートまたはこれらの混合物、アミノアルキルアクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMAEA)、フルオロアクリレート、シリルアクリレート、燐アクリレート、例えばアルキレングリコールホスフェートアクリレート、メタクリルモノマー、例えばメタクリル酸またはその塩、アルキルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレート、アルケニルメタクリレートまたはアリールメタクリレート、例えばメチルメタクリレート(MMA)、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、または、ナフチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、エーテルアルキルメタクリレート、例えば2−エトキシエチルメタクリレート、アルコキシまたはアリールオキシポリ(アルキレングリコール)メタクリレート、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、メトキシポリ(プロピレングリコール)メタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートまたはその混合物、アミノアルキルメタクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、フルオロメタクリレート、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、シリルメタクリレート、例えば3−メタクリロイルプロピルトリメチルシラン、燐メタクリレート、例えばアルキレングリコールホスフェートメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドまたは置換アクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、または、置換メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルトリメチル塩化アンモニウム(MAPTAC)、イタコン酸、マレイン酸またはその塩、無水マレイン酸、アルキルまたはアルコキシまたはアリールオキシ−ポリ(アルキレングリコール)マレエートまたはヘミマレエート、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテルまたはジビニルエーテル、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、オレフィンモノマー(特にエチレン、ブテン、ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる)、さらにフルオロオレフィンモノマー、および、ビニリデンモノマー(特にフッ化ビニリデンが挙げられる)。これらのモノマーは単独でまたは2種類以上の混合物で使用できる。
【0044】
ブロックAはスチレンおよび/または(メタ)アクリルモノマーおよび/またはブチルアクリレートから得るのが好ましい。ブロックAは主モノマーとしてスチレンおよび/またはMMAおよび/またはブチルアクリレートを含むのが有利である。ブロックAは80〜100%のスチレンおよび/またはMMAおよび/またはブチルアクリレートを含むのが好ましい。
ブロックAは最終材料に機械特性(強度および/または剛性)を与えるためのものである。
【0045】
本発明のブロックコポリマーの製造方法では、完全には共重合化されていないブロックB(複数でもよい)を構成する一種以上のモノマー(特に光活性モノマーまたは共同効果を有するモノマー)が、ブロックA(複数でもよい)を作るための重合の開始時に残っていてもよい。従って、ブロックBを作るために初期導入されたモノマーをブロックAが含むことができる。すなわち、ブロックAは80〜100重量%のスチレンおよび/またはMMAと、0〜10重量%の上記リストの中から選択される少なくとも一種のコモノマーと、1〜10重量%の少なくとも一種の光活性モノマーとを含むことができる(合計100重量%)。コモノマーはスチレンおよび/またはMMAおよび光活性モノマーと共重合できなくてはならない。
【0046】
ブロックBは少なくとも一種の光活性モノマーを含み、必要に応じて光活性モノマーと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーをさらに含むことができる。この他のモノマーは上記モノマーリストの中から選択できる。このモノマーは共同効果を有するモノマーにすることもできる。ブロックB中の光活性モノマーの含有率は5〜100重量%にすることができる。
【0047】
好ましい形態での光活性モノマーと共重合可能なモノマーは共同効果を有するモノマーである。このモノマーはTCLPまたはTCLPaであるのが好ましい。従って、ブロックBは10〜80重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜80重量%の共同効果を有する少なくとも一種のモノマーと、必要に応じて含む上記リストの中から選択される第3のモノマーとを含む(合計100重量%)。この第3のモノマーとしてはTg<0℃、有利には<−20℃、さらには<−40℃のモノマー、例えばブチルアクリレート(この好ましい形態は実施例3または実施例4に示してある)か、Tg>0℃の例えばメチルメタクリレートを用いることができる。
本発明のブロックコポリマーは少なくとも一種のブロックAと、少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックBとから成る。
【0048】
1996年のIUPACのポリマー命名法の勧告に従った定義では、ブロックコポリマーは構造的に異なる隣接ブロック群からなる。すなわち、各隣接ブロックは互いに異なるモノマーか、同じモノマーで単位の組成または連続分布が異なるモノマーから得られ構造的に異なる単位を有するブロックである。ブロックコポリマーは例えばジブロック、トリブロックまたは星形コポリマーにすることができる。
【0049】
本発明のブロックコポリマーはブロックAとブロックBとが互いに非相溶性である、すなわち、両者が室温でχAB>0のフローリ−ハギンス相互作用(Flory-Huggins interaction)パラメータを有するのが好ましい。そうすることによって相のミクロ分離が生じ、巨視的レベルで二相構造が形成される。次に直鎖コポリマーがナノ構造化する、すなわち直鎖コポリマーが寸法が100nm以下、好ましくは10〜50nmの領域を形成する。このナノ構造化には透明材料になるという利点がある。さらに、ブロックAによる希釈がないので、ナノ構造化によって高濃度の発色団領域を得ることができ、それによって発色団間の共同効果を促進することができる(書込み速度が上がる)。
【0050】
本発明のブロックコポリマーは中心ブロックBが共有結合によって2つの側部ブロックA、A’に連結されたA−B−A’トリブロックコポリマーである(すなわち中心ブロックBの両側に側部ブロックA、A’が位置する)のが好ましい。AとA’は同一でも異なっていてもよい(この型のコポリマーはA−b−B−b−A’とよばれる)。ブロックコポリマーは中心ブロックAが発色団単位を有する2つの側部ブロックB、B’に共有結合で連結されているB−A−B’トリブロックコポリマーにする(すなわち中心ブロックAの両側にブロックB、B’に位置する)こともできる。BとB’は同一でも異なっていてもよい。
【0051】
ABA’またはBAB’トリブロックコポリマーの中では下記のものが特に挙げられる:
(1)ブロックA、A’が主モノマーとしてスチレンおよび/またはMMAおよび/またはブチルアクリレートを含む;
(2)ブロックB、B’が10〜60重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜60重量%の少なくとも一種の共同効果を有するモノマーとを含み、必要に応じて上記リストの中から選択される一種のモノマー、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、特にメチルメタクリレートをさらに含む(合計100重量%)。
【0052】
本発明ブロックコポリマーは単独でそのままで用いるか、読み書きに用いる波長域で十分な透明性を有し、複屈折が低い別のポリマーとブレンドして用いることができる。本発明のブロックコポリマーは熱可塑性物質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性樹脂にすることができ、光線が邪魔されずに各記録層に達する必要のある3D光記録技術では十分な透明性と低複屈折の特徴は重要である。スチレンまたはポリカーボネートの熱可塑性物質、例えばメチルメタクリレートのホモまたはコポリマーを用いるのが好ましい。
、例えばメチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーまたはコポリマーを用いるのが好ましい。ブレンド物は0〜50重量%、有利には0〜25重量%、好ましくは5〜10重量%の熱可塑性物質または熱硬化性樹脂に対して、50〜100重量%、有利には75〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のブロックコポリマーを含む。ブレンド物は熱可塑性物質をブレンドする当業者に周知の任意の技術を用いて製造することができる。押出成形法を用いるのが好ましい。ブレンド物は必要に応じてさらに各種の添加剤(帯電防止剤、潤滑剤、染料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤等)を含むことができる。
【0053】
ブロックコポリマーの製造法
本発明のブロックコポリマーは当業者に周知の重合方法を用いて製造する。この重合法の一つとしては例えば下記文献7〜9に記載のアニオン重合が挙げられる:
【特許文献7】フランス国特許第2,762,604号公報
【特許文献8】フランス国特許第2,761,997号公報
【特許文献9】フランス国特許第2,761,995号公報
【0054】
制御されたラジカル重合法を用いることもできる。制御剤の種類によって複数の変形例がある。制御剤としてニトロオキシドを用い、アルコキシアミンで開始するSFRP(安定なフリーラジカル重合)、制御剤として金属錯体を用い、ハロゲン剤で開始するATRP(原子移動ラジカル重合)、ジチオエステル、トリチオカーボネート、キサンテートまたはジチオカルバメートのような硫黄生成物を必要とするRAFT(可逆的付加フラグメント化移動)等が挙げられる。その一般的な解説書としては下記文献を参照できる。
【非特許文献3】Matyjaszewski,K.(Ed.),ACS シンポジウムシリーズ(2003年)、854(制御された/リビングラジカル重合の進歩)
【0055】
また、使用可能な制御されたラジカル重合法の詳細については下記文献を参照できる:
【特許文献10】フランス国特許第2,825,365号公報
【特許文献11】フランス国特許第2,863,618号公報
【特許文献12】フランス国特許第2,812,293号公報
【特許文献13】フランス国特許第2,752,238号公報
【特許文献14】フランス国特許第2,752,845号公報
【特許文献15】米国特許第5,763,548号明細書
【特許文献16】米国特許第5,789,487号明細書
【0056】
本発明のブロックコポリマーの製造に好ましい方法はニトロオキシドT制御を用いた制御されたラジカル重合である。この技術はアニオン重合のような厳密な条件下(すなわち、水分の非存在下および<100℃の温度)での作業を必要としない。さらに、この技術では広範囲のモノマーを重合できる。種々の条件下で重合でき、例えば塊重合、溶液重合または分散媒体中での重合、例えば水性懸濁重合または乳化重合ができる。
【0057】
ニトロオキシドTは=N−O・基を有する安定なフリーラジカル、すなわち不対電子が存在する基である。安定なフリーラジカルとは持続時間が長く、空気および大気中の湿分と反応せず、大部分のフリーラジカルよりはるかに長期間制御且つ維持することができるラジカルを意味する(この点に関しては下記文献を参照されたい)
【非特許文献4】Accounts of Research、1976、9,p13-19
【0058】
従って、安定なフリーラジカルは寿命が瞬間的(数ミリ秒〜数秒)なフリーラジカル、例えばペルオキシド、ヒドロペルオキシドまたはアゾ型の開始剤のような通常の重合開始剤から生じるフリーラジカルとは区別される。重合を開始させるこれらのフリーラジカルは重合を加速させるのに対し、安定なフリーラジカルは一般に重合を減速する。フリーラジカルが重合開始剤でなく、且つ本発明の使用条件下で平均寿命が少なくとも1分である場合に、本発明の意味においてフリーラジカルは安定であるということができる。
【0059】
ニトロオキシドTは下記の構造(IX)によって表される:
【化12】

【0060】
(ここで、R6、R7、R8、R9、R10およびR11はC1〜C20、好ましくはC1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル基、例えば置換または非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチルおよびネオペンチル基、置換または非置換のC6〜C30アリール基、例えばベンジルおよびアリール(フェニル)基およびC1〜C30不飽和環式基を表し、R6およびR9基は置換されていてもよい下記の中から選択することができる環状構造R6−CNC−R9の一部を成すことができる:
【0061】
【化13】

【0062】
(xは1〜12の整数を表す)
例として、下記のニトロオキシドを用いることができる;
【化14】

【0063】
本発明で特に好ましいのは式(X)のニトロオキシドである:
【化15】

【0064】
(ここで、
aおよびRbは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基で、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成することができ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアミノ基で置換することができ、
Lはモル質量が16g/mol以上、好ましくは30g/mol以上の一価の基を表す)
基RLは例えばモル質量を40〜450g/molにすることができ、この基は一般式(XI)のリン基であるのが好ましい。
【0065】
【化16】

【0066】
(ここで、Z1およびZ2はアルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキシルオキシル、ペルフルオロアルキルおよびアラルキル基の中から選択することができ、同一でも異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を有することができ(アルキル基または部分は直鎖または分岐鎖である。)、
1および/またはZ2はハロゲン原子、例えば塩素、臭素またはフッ素原子にすることもできる)
Lは下記式のホスホン酸基であるのが有利である:
【0067】
【化17】

【0068】
(ここで、RcおよびRdは1〜40個の炭素原子を有する2つのアルキル基で、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成することができ、置換または非置換にすることができ、RL基は、例えば1〜10個の炭素原子を有する一種以上の直鎖または分岐鎖のアルキル基で置換された少なくとも一種の芳香族環、例えばフェニル基またはナフチル基をさらに含むことができる。)
式(X)のニトロオキシドは(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合で優れた制御を行うことができるので好ましい。式(XIII)のアルコキシアミンが好ましい:
【0069】
【化18】

【0070】
(ここで、Zは多価の基を表し、oは1〜10の整数を表す)
ZはZ−T共有結合の熱活性化および破断の後に複数のラジカル部位を遊離できる基である。Z基の例は特許文献17(国際出願第WO 2006/061 523号公報)の第15〜18頁に記載されている。Zは二価の基である、すなわち整数oが2の基であるのが好ましい。
【特許文献17】国際出願第WO 2006/061 523号公報
【0071】
制御されたラジカル重合法を用いてトリブロックコポリマーを製造する場合には式T−Z−Tの二官能性アルコキシアミン(すなわち、式(XIII)、o=2のアルコキシアミン)を用いることができる。このアルコキシアミンを用いて始めに中心ブロックを作るためのモノマーのブレンド物を調製する。重合は溶媒の存在下または非存在下または分散媒体中で行う。ブレンド物をアルコキシアミンの活性化温度よりも高い温度に加熱する。中心ブロックが得られたら側部ブロックを作るためのモノマーを添加する。中心ブロックの調製の最後に、完全に消費されなかったある程度のモノマーが残ることがある。これらのモノマーを側部ブロックの調製前に除去する選択をしてもしなくてもよい。この除去は例えば中心ブロックを非溶媒中で沈殿させ、回収し、乾燥させて行うことができる。完全に消費されなかったモノマーを除去しない選択をした場合は、導入したモノマーと共重合させて側部ブロックを作ることができる。
【0072】
データの書込み/読取り
本発明で使用する光学原理は特許文献1(国際出願第WO 01/73 779号公報)や特許文献2(国際出願第WO 03/070 689号公報)に記載の原理と同じである。書込みは光の放射作用によって一方の異性体から他方の異性体へ変換させて行う。この変換には励起状態の発色団を有する必要があり、そのためにはエネルギーレベルEでの吸収が必要である。2つの光子の吸収はEと異なるエネルギーレベルE1およびE2を有する一種以上の光線の少なくとも2つの光子のエネルギーを組み合わせることで容易になる。この2つの光線は紫外線領域、可視光領域または近赤外領域内にある。一つの光線のみを用い、変換が二光子吸収プロセスの結果であるのが好ましい。
【0073】
読取りは線形または非線形な電子励起プロセスを利用することができる。発光スペクトルが互いに異なる2つの異性体の発光を適当な読み取り装置を用いて集める(回収する)。非線形プロセス、例えばラマン分散または四波混合プロセスを用いることができる。
一方の異性体または他方の異性体中で主成分である発色団を含むのは3Dメモリの容積のわずかな容積である。従って、記録装置のこの小さな容積部分に正しく、且つ局所的に記録された情報が含まれる。この小さな容積部はその直ぐ近くの光信号とは異なる光信号によって特徴付けられる。
【0074】
3D光メモリ
本発明はさらに、本発明のブロックコポリマーまたはブレンド物を含む、データの記録(貯蔵)に用いられる3D光記録デバイス(または3D光学式記録装置)に関するものである。3D記録デバイスは記録装置の任意の容積点(3つの座標x、y、zで定義される)にデータを記録することができる記録装置である。3D記録装置はデータを複数のバーチャル(仮想)層(または仮想レベル)に記録することができる。3D記録装置の容量はこの装置が占める物理的容積に関係する。
【0075】
この記録装置は発明のブロックコポリマーまたは上記ブレンド物から成る例えば正方形または長方形のプレート、立方体またはディスクの形にすることができる。光学式記録装置が回転可能なディスク形で、書込みまたは読取りヘッドが固定されているのが好ましい。ディスクはブロックコポリマーまたはブレンド物を成形して製造でき、また、書込みおよび/または読取りに用いる波長域で多層粒子またはブレンド物をリジッド且つ透明な支持体上に塗布してディスクを製造することもできる。3D記録装置は射出成形技術で得ることができる。この成形方法はプラスチック加工業者に周知であり、加圧下で溶融材料を金型中に射出する。この点に関しては下記文献を参照されたい:
【非特許文献5】「Precis de matieres plastiques 」、Nathan、第4版、ISBN 2−12−355352−2、141〜156頁
【0076】
材料を溶融し、押出機を用いて圧縮する(多層粒子が粉末の場合には前段階で例えば押出し造粒操作を用いて顆粒に変換する必要がある)。特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)に記載のように、本発明のブロックコポリマーまたはブレンド物を含む複数の層を重ね合わせることもできる。
【0077】
3D光記録装置を回転可能なディスクにし、書込みまたは読取りヘッドを基本的に固定するのが好ましい。ブロックコポリマーまたはブレンド物が適切な機械特性を有する場合には射出成形によってディスクを製造することができる。また、書込みおよび/または読取りに用いる波長域でリジッドなおよび透明な支持体へのブロックコポリマーまたはブレンド物の塗布によってディスクを製造することもできる。
【実施例】
【0078】
ブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)は下記式の製品に対応する:
【化19】

【0079】
実施例1
二官能性ジアルコキシアミンの調製
窒素で不活性化した250cm3のガラス反応器中に、125mlのエタノールと、38gのブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)と、10gの1,4−ブタンジオールジアクリレートとを導入した。反応混合物を4時間攪拌(250回転/分)下で80℃に加熱した。得られた混合物を冷却し、エタノールを真空蒸発して固体のジアルコキシアミンを得た。このジアルコキシアミンをそのままで用いた。
【0080】
トリブロックコポリマーポリ(MMA/eAA)−b−ポリ(ブチルアクリレート/eAA)−b−ポリ(MMA/eAA)の調製
第1段階
不活性雰囲気下で、5gのeAA、45gのブチルアクリレートと、0.99gの上記アルコキシアミンとを100mlの反応器中に400回転/分の攪拌下で導入し、この混合物を5時間20分、115℃に加熱した。この段階の最後にモノマー変換率は60%に固定した。残留ブチルアクリレートを真空蒸発した。消費されなかったモノマーeAAは真空蒸発しなかった。
第2段階
100cm3の反応器中に、400回転/分の攪拌下および不活性雰囲気下に、5.75gの1段階で得られた混合物(すなわち、蒸発しなかったポリマーおよび残留モノマーeAA)と、38.3gのメチルメタクリレートと、36gのトルエンとを導入した。この混合物を1時間30分間、105℃に加熱した後、1時間30分間、120℃に加熱した。
この段階の最後に、反応しなかったメチルメタクリレートおよびトルエンを真空蒸発した。得られた生成物はポリ(MMA/eAA)−b−ポリ(ブチルアクリレート/eAA)−b−ポリ(MMA/eAA)トリブロックコポリマーであった。
【0081】
実施例2
PMMA−b−ポリ(ブチルアクリレート/eAA)−b−PMMAトリブロックコポリマーとポリ(ブチルアクリレート/eAA)コポリマーとのブレンド物のポリマーの調製
不活性雰囲気下で、20gのeAと、30gのブチルアクリレートと、0.98gの上記二官能性アルコキシアミンとを100mlの反応器中に400回転/分の攪拌下で導入し、この混合物を7時間、115℃に加熱した。この段階の最後に、モノマー変換率は60%に固定した。得られた反応混合物に0.2gのLUPEROX(登録商標)546と0.2gのn−ドデシルメルカプタンとを50gのトルエンに溶かした溶液を添加した。攪拌は115℃で8時間維持した。
不活性雰囲気下で、11.7gの上記溶液を100mlの反応器に戻し、38.9gのメチルメタクリレートと39gのトルエンとの存在下で、105℃で1時間30分、次いで、120℃で1時間30分、400回転/分で攪拌した。この段階の最後に、反応しなかったモノマーとトルエンを蒸発させた。得られた生成物はPMMA−b−ポリ(ブチルアクリレート/eAA)−b−PMMAトリブロックコポリマーとポリ(ブチルアクリレート/eAA)コポリマーとのブレンド物であった。
【0082】
実施例3
下記のBABコポリマーを調製した:
ブロックB: eMMA/TCLP/ブチルアクリレートコポリマー
硬質ブロックA: ポリスチレン
ブロックAの調製
5リットルのステンレス鋼反応器中に、3000gのスチレンと、21.625gの上記二官能性アルコキシアミンとを導入した。この混合物を60%の変換率に達するまで、攪拌下に115℃で6時間加熱し、消費されなかったスチレンを取り除き、真空蒸発した。
PSブロックの特徴は以下の通り:
数平均分子量:Mn= 63,190g/mol
重量平均分子量:Mw=110,210g/mol
多分散度指数:1.74
【0083】
ブロックBの調製
500cm3のガラス反応器中に、53.74gのPSブロック(エチルベンゼンに希釈)と、8.18gのeMMAと、8.18gのTCLPと、1.82gのブチルアクリレートとを導入した。この混合物を125℃で6時間加熱した後、120℃に冷却した。次いで、0.04gのルーペロックス(LUPEROX、登録商標)531(10重量%のエチルベンゼンに希釈)を導入し、120℃での加熱を2時間30分維持した。混合物を冷却し、生成物を取り除き、溶媒を蒸発した。
最終生成物はBABブロックコポリマーとコポリマーBとのブレンド物であった。ブチルアクリレートによって、TCLP/eMMA系の屈折率をPSブロックのポリスチレンに対して補正し、ヘーズの生成を防ぐことができる。
【0084】
実施例4
下記のABAコポリマーを調製した:
ブロックB: eMMA/TCLP/ブチルアクリレートコポリマー
硬質ブロックA: ポリスチレン。
ブチルアクリレートの役目は実施例3と同じである。
ブロックBの調製
500cm3のガラス反応器中に、18gのeMMAと、18gのTCLPaと、4gのブチルアクリレートと、0.577gの上記二官能性アルコキシアミンとを導入した。この混合物を攪拌下に125℃で7時間加熱した後、25gのエチルベンゼンを添加した。この混合物を85℃に冷却し、0.047gのAIBNを25gのエチルベンゼンに溶かしたものを添加し、加熱を6時間維持した。
ブロックBの特徴は以下の通り:
数平均分子量:Mn=16,060g/mol
重量平均分子量:Mw=32,020g/mol
多分散度指数:2.24。
Aブロックの調製
上記混合物中に60gのスチレンを導入し、攪拌下に120℃で6時間加熱した。冷却し、混合物を取り除き、溶媒および未反応スチレンを蒸発した。
ブロックコポリマーの特徴は以下の通り:
数平均分子量:Mn= 28,050g/mol
重量平均分子量:Mw=78,600g/mol。
【0085】
実施例5
ディスク製造
実施例1〜4で得られたポリマー溶液を室温で多量のメタノール中に沈殿させ、濾過、洗浄、乾燥させた。得られた生成物を次いで150℃で10分間圧縮成形して直径2cm、厚さ2mmのディスクを成形した。光透過率は全可視領域で90%以上であった。
次に、適切なレーザーデバイスを用いてこのディスクに対して静的にデータの読取り−書込みテストを行った。ディスク上へのデータの記録ができることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)と(2)とから成るブロックコポリマー:
(1)Tg>−60℃、好ましくはTg>0℃、有利には>60℃である少なくとも一種のブロックA、
(2)下記の式(I)の光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックB:
【化1】

(ここで、
XはHまたはCH3-を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換のフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル基)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化可能発色団を表す)
【請求項2】
GおよびCRが共有結合によって互いに結合された2つ以上の原子の鎖によって連結するようにスペーサ基Lを選択する請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
Lが(CR12m、O(CR12mおよび(OCR12m(ここで、mは2より大きい整数、好ましくは2〜10で、R1とR2は独立してH、ハロゲンまたは直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアリール基を表す)の中から選択される請求項1または2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
発色団CRがジアリールアルキレン型である請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
1cm光路長キュベット中で0.01Mの発色団溶液で記録したスペクトルでの発色団CRのオーバーラップ(overlap)が<35%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
発色団CRのストークスシフト(Stokes shift)が100nm以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
上記光活性モノマーが式(II)を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化2】

〔ここで、
Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリール基、
1およびW2は−CN、−COOH、−COOR’、−OH、−SO2R’および−NO2基(R’は直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキルまたはアリール基である)の中から選択される〕
【請求項8】
Ar1およびAr2が互いに独立して、フェニル、アントラセンまたはフェナントレン基の中から選択される請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
光活性モノマーが式(III)または(IV)を有する請求項7に記載のブロックコポリマー:
【化3】

または

〔ここで、
Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリール基、
1およびW2は−CN、−COOH、−COOR’、−OH、−SO2R’および−NO2基(R’は直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキルまたはアリール基である)の中から選択される〕
【請求項10】
上記発色団が下記の中から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化4】

〔ここで、
1およびW2は−CN、−COOH、−COOR’、−OH、−SO2R’および−NO2基(R’は直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキルまたはアリール基であり、2つのフェニル基はそれぞれ置換されていてもよい)の中から選択される〕
【請求項11】
Ar1がフェニル基で、Ar2がフェニルまたはビフェニル基で、フェニルおよび/またはビフェニル基はそれぞれ置換されていてもよい請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
1およびW2がCNを表し、Ar2がフェニル基で、Ar1がR5O−(R5は置換または非置換の直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアリール基を表す)によってパラ配位で置換されたフェニルまたはビフェニル基である請求項11に記載のブロックコポリマー。
【請求項13】
光活性モノマーが下記式のeAAまたはeMMAである請求項7に記載のブロックコポリマー:
【化5】

【請求項14】
発色団CRがスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ジアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン基を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項15】
ブロックAの数平均分子量がMn>2000g/mol、有利には>5000g/mol、好ましくは>10,000g/mol、さらに好ましくは50,000g/molである請求項1〜14のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックAの弾性率(弾性モジュラス)が>100MPa、有利には>500MPa、好ましくは>1000MPaである請求項14または15に記載のブロックコポリマー。
【請求項17】
ブロックAが少なくとも一種のビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリルまたは(メタ)アクリルモノマーの重合で得られる請求項1〜16のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項18】
ブロックAが主モノマーとしてスチレンおよび/またはMMAを含む請求項16に記載のブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックAが80〜100重量%のスチレンおよび/またはMMAを含む請求項18に記載のブロックポリマー。
【請求項20】
ブロックAがリジッドなブロックである請求項18に記載のブロックポリマー。
【請求項21】
ブロックBが少なくとも一種の光活性モノマーを含み、必要に応じてさらに光活性モノマーと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーを含む請求項1〜20のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項22】
光活性モノマーと共重合されるモノマーがTg<0℃である請求項18に記載のブロックコポリマー。
【請求項23】
ブロックBが5〜95重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、95〜5重量%のTg<0℃である少なくとも一種のモノマーとを含む請求項20〜22に記載のブロックポリマー。
【請求項24】
ブロックBが式(IX)の共同効果を有するモノマーを含む請求項20〜23のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化6】

(ここで、
X、GおよびLは請求項2〜4のいずれか一項に定義のもの、
Ar3は誘導作用(−I)を有する少なくとも一種の置換基によって置換された芳香族基を表す。)
【請求項25】
誘導作用(−I)を有する置換基が下記の中から選択される請求項24に記載のブロックコポリマー:
(i)ハロゲン、好ましくは塩素、
(ii)−COOY、−CONYY’、−OY、−SYまたは−C(=O)Y(YおよびY’はHまたは直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキル基を表す。)
【請求項26】
Ar3がフェニル基である請求項24または25に記載のブロックコポリマー。
【請求項27】
共同効果を有するモノマーが下記の中から選択される請求項24に記載のブロックコポリマー:
【化7】

【請求項28】
ブロックBが10〜80重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜80重量%の共同効果を有する少なくとも一種のモノマーを含み、必要に応じてさらに第3のモノマーを含む請求項23〜27のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のブロックコポリマーと、熱可塑性物質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーとのブレンド物。
【請求項30】
0〜50重量%、有利には0〜25重量%、好ましくは5〜10重量%の熱可塑性物質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーに対して、50〜100重量%、有利には75〜100重量%、好ましくは90〜100重量%の上記ブロックコポリマーを含む請求項29に記載のブレンド物。
【請求項31】
熱可塑性ポリマーがメチルメタクリレートまたはポリカーボネートのホモポリマーまたはコポリマーである請求項29または30に記載のブレンド物。
【請求項32】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項29〜31のいずれか一項に記載のブレンド物を含む3D光記録装置。
【請求項33】
正方形または長方形のプレート、立方体またはディスクの形をした請求項32に記載の3D光記録装置。
【請求項34】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項29〜31のいずれか一項に記載のブレンド物の、データの光学式記録での使用。
【請求項35】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項29〜31のいずれか一項に記載のブレンド物の3D光記録デバイスとしての使用。

【公表番号】特表2010−511089(P2010−511089A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538753(P2009−538753)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052398
【国際公開番号】WO2008/065301
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】