説明

光発電機構及び表示システム

【課題】道路施設に適用可能であって、安定して独立して電力を生成でき、電力供給網からバックアップ用の電力を受ける必要が無く、また、小型化ができる光発電機構と、それを用いた表示システムを提供すること。
【解決手段】表示システムは、道路1の側部に立設された壁高欄2の内側面に配置された有機薄膜光発電素子3と、壁高欄2の上端に配置されたデリネータ4を備える。車両Cの前照灯からの光を受けて有機薄膜光発電素子3が電力を生成し、この電力を受けて、デリネータ4のLED42が発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路施設に設置され、人工光によって電力を生成する発電機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路施設としての街路灯に太陽光発電パネルと蓄電池を設け、昼間に太陽光を受けて太陽光発電パネルで生成した電力を蓄電池に貯め、夜間に蓄電池から電力を取り出して、照明灯のLEDを点灯するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この街路灯によれば、光源として、電力消費量の少ないLEDを用いることにより、蓄電池の消耗を少なくして、夜間を通して電池切れを起こすことなく点灯を継続できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−151320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽光発電パネルと蓄電池を備える街路灯は、日照時間が短い場合や、天候の状態によって日射強度が十分に得られない場合に、蓄電量が不十分となり、夜間に電池切れを起こして点灯が中断する問題がある。
【0005】
このような問題を防止するためには、公衆の電力供給網に接続してバックアップ用の電力を受ける必要があり、電力供給網への接続線や電源の切り替え回路や変圧回路が必要となる。このため、構造が複雑化して製品コストが増大し、また、設置コストが増大し、さらに、ランニングコストが増大する不都合がある。
【0006】
また、太陽光発電パネルへの日射強度を確保するため、太陽光発電パネルを太陽光の入射方向に向けて傾斜して設置する必要がある。したがって、太陽光発電パネルの側方への張り出し長さが大きくなり、街路灯が大型化する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、道路施設に適用可能であって、安定して独立して電力を生成でき、電力供給網からバックアップ用の電力を受ける必要が無く、また、小型化ができる光発電機構と、それを用いた表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の光発電機構は、道路施設に、人工光を受けて電力を生成する人工光発電素子を設けたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、人工光発電素子により、道路を通行する車両の前照灯や、道路施設を構成する道路灯からの人工光を受けて電力を生成する。このように、道路施設には、車両や道路灯のような人工光の発生源が多く存在するので、人工光発電素子により、安定した電力を得ることができる。したがって、太陽光発電パネルで太陽光から電力を生成する場合と比較して、日照時間や天候の影響を受けることなく、安定して電力を生成することができる。
【0010】
ここで、人工光発電素子とは、光起電力効果により、太陽光よりも光強度の弱い人工光を受けて発電を行う素子をいい、例えば有機薄膜光発電素子を用いることができる。
【0011】
また、道路施設とは、道路に関連して設けられる設備、土木構造物及び建築構造物を広くいう。道路施設に包含される設備としては、標識及び情報ディスプレイ等の表示設備や、信号機及び車両検知器等の交通管制設備や、街路灯及び道路灯等のような照明灯や、電信柱等の電気設備等を例示できる。また、道路施設に包含される土木構造物としては、舗装、橋梁、トンネル及び擁壁等を例示できる。また、道路施設に包含される建築構造物としては、料金徴収所及び管理棟等を例示できる。これらから、道路施設に設置される人工光発電素子が受ける光は、屋内の人工光でもよく、また、屋外の人工光でもよい。
【0012】
一実施形態の光発電機構は、上記道路施設は、道路の側部に設置された路側設置物を含み、この路側設置物の上記道路に臨む側、かつ、上記道路を走行する車両の前照灯から出射された光が照射される位置に、上記人工光発電素子を配置したものである。
【0013】
上記実施形態によれば、道路を通行する車両からの人工光を人工光発電素子に効果的に入射させ、電力を効率的に生成させることができる。
【0014】
ここで、路側設置物とは、道路の側部に設けられる設備又は構造物をいい、例えば、ガードレール、防護柵、高欄及び遮音壁等のような連続的な設備又は構造物と、信号機、電信柱、照明灯及び標識等のような不連続的な設備又は構造物とのいずれも該当する。
【0015】
上記実施形態において、人工光発電素子は、道路の曲線部に配置されるのが好ましい。道路の曲線部に人工光発電素子が配置された場合、曲線部にさしかかる車両の前照灯からの光が、人工光発電素子の受光面に、法線方向に近い方向から入射する。したがって、人工光発電素子は、車両の前照灯の光を、光強度のロスが少ない状態で受光できるので、比較的高い電力を生成できる。この電力を、例えば、曲線部に設置したデリネータに設けた発光素子に供給して発光素子を発光させることにより、曲線部にさしかかる車両の前照灯をエネルギー源として、この車両へ道路が曲線をなすことを通知し、安全を確保することができる。すなわち、道路を走行する車両が放出するエネルギーを効果的に再生しながら、道路交通の安全を確保することができる。
【0016】
また、路側設置物の車両が通行する側である道路に臨む側、かつ、上記道路を走行する車両の前照灯から出射された光が照射される位置に人工光発電素子を配置する場合、太陽光発電パネルのように太陽光の入射方向に向けるために発電素子が張り出すことが無いので、光発電機構の小型化ができる。
【0017】
一実施形態の光発電機構は、上記路側設置物は、高欄と、この高欄の上に配置された上部設置物とを有し、上記高欄の上記道路に臨む面に上記人工光発電素子を配置する一方、上記上部設置物に太陽光発電素子を配置したものである。
【0018】
上記実施形態によれば、道路を走行する車両からの人工光を多く受ける高欄に人工光発電素子を配置し、太陽光を多く受ける上部設置物に太陽光発電素子を配置する。これにより、夜間には人工光発電素子によって人工光で電力を生成し、昼間には主に太陽光発電素子によって太陽光で電力を生成できるので、終日に亘って電力を安定して生成することができる。
【0019】
ここで、上部設置物とは、高欄の上に配置される設備又は構造物をいい、例えば、防護柵、遮音壁及び騒音緩和壁等のような連続的な設備又は構造物と、信号機、街路灯、道路灯及び標識等のような不連続的な設備又は構造物とのいずれも該当する。
【0020】
一実施形態の光発電機構は、上記人工光は、道路を走行する車両の前照灯から出射された光、及び、道路の照明灯から出射された光のうちの少なくとも一方を含む。
【0021】
上記実施形態によれば、車両の前照灯や道路の照明灯のような人工光の発生源が多く存在する道路施設に、人工光発電素子を配置することにより、安定して電力を生成することができる。
【0022】
一実施形態の光発電機構は、上記人工光発電素子は、有機薄膜光発電素子である。
【0023】
上記実施形態によれば、人工光発電素子としての有機薄膜光発電素子により、自動車の前照灯や、道路の照明灯等から出射されて光強度が比較的弱い光を受けて、電力を生成することができる。ここで、有機薄膜光発電素子とは、発電層が有機材料で構成される発電素子をいう。
【0024】
本発明の表示システムは、上記光発電機構と、この光発電機構で生成された電力が供給される発光素子とを備え、
この発光素子を、道路を走行する車両へ情報を伝達するために用いることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、道路を走行する車両からの人工光又は道路施設の人工光から光発電機構により電力を生成し、車両へ情報を伝達するための発光素子に供給することにより、道路施設に生じる人工光を有効に再利用することができる。
【0026】
ここで、上記発光素子は、車両へ情報を伝達するため、標識や道路境界表示等の種々の設備に用いることができる。
【0027】
本発明の他の側面による表示システムは、上記光発電機構と、この光発電機構で生成された電力が供給される発光素子とを備え、
上記路側設置物の上記道路に臨む面に、所定の標識模様をなすように上記発光素子と上記人工光発電素子とを配置したことを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、光発電機構の人工光発電素子と発光素子とを用いて形成された標識模様に、車両の前照灯等からの人工光が照射されると、人工光発電素子が電力を生成すると共に、この電力で発光素子が発光して標識模様が強調される。こうして、車両からの人工光のエネルギーを有効に再利用しつつ、車両へ効果的に情報の伝達や警告を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の表示システムが適用された高速道路を示す平面図である。
【図2】表示システムを示す正面図である。
【図3】表示システムを拡大して示す平面図である。
【図4】表示システムに用いられる有機薄膜光発電素子を示す断面図である。
【図5】第2実施形態の表示システムを示す正面図である。
【図6】第3実施形態の表示システムを示す正面図である。
【図7】図7(a)は、第4実施形態の表示システムを示す平面図であり、図7(b)は、第4実施形態の表示システムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の表示システムが適用された高速道路を示す平面図であり、図2は表示システムを示す正面図であり、図3は表示システムを拡大して示す平面図である。
【0032】
この表示システムは、高架橋構造の高速道路に設置されており、道路1の側部に立設された路側設置物としての壁高欄2に取り付けられている。壁高欄2は鉄筋コンクリート製の壁で形成され、高架橋の床版の端部に、道路1の延長方向に沿って延在している。表示システムは、道路の曲線部分の壁高欄2に設けられた人工光発電素子としての有機薄膜光発電素子3と、デリネータ4とで大略構成されている。
【0033】
有機薄膜光発電素子3は、主にポリマー材料を用いて形成されて可撓性を有し、太陽光よりも光強度の弱い人工光を受けて発電を行うものであり、図4に示すような積層構造によって構成されている。この有機薄膜光発電素子3は、図4に示すように、基板30上に形成されたカソード31とアノード35の間に、カソード31側から順に積層されたホールキャリア層32と、光活性層33と、ホールブロック層34を含んでいる。
【0034】
基板30は、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレート等の可撓性のポリマー材料で形成され、電力を生成する光に対して透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0035】
カソード31及びアノード35は、電力を生成する光に対して透明の材料で形成され、例えばインジウムが添加されたスズ酸化物で形成することができる。
【0036】
ホールキャリア層32は、光活性層33で生成されたホールをカソード31に通過させる一方、電子の通過を阻止する材料によって形成される。このような材料として、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン等を用いることができる。
【0037】
光活性層33は、電子供与材料と電子受容材料とを含んで形成され、入射した光の作用により、電子とホールを生成する。光活性層33で生成されたホールは、電子供与材料によってホールキャリア層32に輸送される一方、電子は電子受容材料によってホールブロック層34に輸送される。
【0038】
光活性層33の電子受容材料は、フラーレンを含んで形成される。フラーレンとは、複数の炭素原子を有する三次元炭素骨格を含む化合物である。電子受容材料のフラーレンとしては、1つ以上の無置換フラーレンと、1つ以上の置換フラーレンを含んで形成することができる。置換フラーレンの例としては、C61−フェニル酪酸メチルエステル等がある。なお、電子受容性材料として、非フラーレンを含んでもよく、例えばカーボンナノロッド、ディスコティック液晶、無機ナノ粒子等を用いることができる。
【0039】
一方、光活性層33の電子供与材料は、共役ポリマーによって形成され、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ディスコティック液晶ポリマー等を用いることができる。
【0040】
ホールブロック層34は、アノード35へ電子を輸送する一方、アノード35へのホールの輸送を阻止する材料で形成される。このような材料として、フッ化リチウムや、亜鉛酸化物等の金属酸化物等を用いることができる。
【0041】
上記カソード31とアノード35に夫々端子36,37が接続され、これら端子36,37から電力を出力する。
【0042】
この有機薄膜光発電素子3は、可撓性のポリマー材の基板30上に、印刷技術を用いて各層31,・・・35が形成されて製造される。この有機薄膜光発電素子3は、基板30の厚みによって全体の厚みの大部分が占められ、数十μmから数千μmの範囲の厚みに形成される。特に、柔軟性と耐久性を両立する点で、約500μm程度が好ましい。
【0043】
このように構成される有機薄膜光発電素子3は、道路を臨む側(以下、内側という)の表面に設置されている。壁高欄2の内側面は、曲線を描く道路に沿って曲面を描いており、この壁高欄2の内側面の曲面に沿うように、有機薄膜光発電素子3が湾曲して設置されている。
【0044】
デリネータ4は、樹脂製の概ね筒状のケーシング41内に、発光素子としてのLED(発光ダイオード)42と、LED42からの出射光を集めて反射させる反射板を内蔵している。ケーシング41の正面側には、橙色に着色された樹脂製のレンズ43が、連結されている。デリネータ4のケーシング41内には、有機薄膜光発電素子3の端子36,37と図示しない電力ラインを通して接続された回路が収容されている。回路としては、整流回路や保護回路やLED駆動回路が必要に応じて採用される。これらの回路を通して、LED42に電力を供給するように構成されている。
【0045】
このような構造を有するデリネータ4は、壁高欄2の上端面に、壁高欄2の延長方向に所定間隔を置いて複数個設置されている。これら複数のデリネータ4の下方に、壁高欄2の湾曲した内側面に沿って湾曲した有機薄膜光発電素子3が、各デリネータ4に電力を供給するために、夫々配置されている。こうして、壁高欄2の内側面に貼り付けられた有機薄膜光発電素子3により、本発明の発電機構を構成している。
【0046】
この高速道路の壁高欄2には、夜間に道路1を照らすための複数の照明灯としての道路灯5,5,・・・が設置されている。
【0047】
上記発電機構を構成する有機薄膜光発電素子3と、デリネータ4とで形成された表示システムは、次のように動作する。すなわち、夜間に、道路1を走行する車両Cが、曲線部分に差し掛かると、図1に模式的に示すように、車両Cの前照灯から出射された光Bが、車両Cの進行方向の先に湾曲して位置する壁高欄2の内側面に照射される。この壁高欄2の内側面に設置された有機薄膜光発電素子3が、車両Cからの光Bを受け、光活性層33で電子とホールが生成されて起電力が生じる。これにより、有機薄膜光発電素子3の端子36,37間に電位差が生成され、デリネータ4の図示しない回路及びLED42に電流が流れてLED42が発光する。このようにして、車両Cの進行方向の先に位置するデリネータ4が、車両の前照灯からの光を受けて点灯することにより、壁高欄2が存在することと、道路1の曲線部分が存在することを、情報として車両Cへ伝達する。なお、デリネータ4は、内部に設けられた駆動回路に応じて点滅動作をしてもよい。
【0048】
このように、本実施形態の表示システムは、道路施設を構成する壁高欄2に設置された有機薄膜光発電素子3により、道路1を通行する車両Cの前照灯からの人工光を受けて電力を生成する。このように、車両Cの前照灯からの光Bのような人工光が多く存在する高速道路の壁高欄2に、有機薄膜光発電素子3を設置するので、安定して電力を生成することができる。したがって、太陽光発電パネルで昼間に生成した電力を蓄電池に貯めて夜間に供給する場合のように、日照時間の不足や天候の状態に起因して電池切れが起きる不都合が無く、確実にデリネータ4を動作させることができる。
【0049】
また、本実施形態の表示システムは、デリネータ4により、このデリネータ4の動作の電力源である車両Cに対して、壁高欄2の存在や道路1の曲線部分の存在を知らせる。したがって、車両Cから出力されるエネルギーを再利用して、効果的なエネルギーの再利用を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態の表示システムは、有機薄膜光発電素子3が、道路1の曲線部分に対応する壁高欄2の内側の湾曲面に配置されているので、車両Cからの光Bを効果的に受けて、効率的に電力を生成することができる。また、有機薄膜光発電素子3は、太陽光発電パネルのように太陽光の入射方向に向けて設置する必要がないから、壁高欄2から張り出すことが無いので、光発電機構の小型化ができる。なお、有機薄膜光発電素子3は、道路1の直線部分に対応する壁高欄2の内側面に配置してもよい。
【0051】
本実施形態の表示システムにおいて、壁高欄2に設置された道路灯5からの光の存在のもと、車両Cの前照灯からの光Bを受けて、有機薄膜光発電素子3により発電を行ったが、道路灯5を削除し、車両Cの前照灯からの光Bのみによって発電を行ってもよい。あるいは、道路灯5からの光により、有機薄膜光発電素子3に起電力を生じさせて、道路灯5の点灯中にデリネータ4を継続して動作させてもよい。
【0052】
また、本実施形態の表示システムは、高架橋構造の高速道路に適用されたが、他の構造の高速道路や、一般の道路に適用されてもよい。
【0053】
また、有機薄膜光発電素子3で生成した電力をデリネータ4に供給したが、デリネータ4以外に、車両へ情報を伝達するために発光素子を備えた他の機器に電力を供給してもよい。
【0054】
また、人工光発電素子として、有機薄膜光発電素子3を用いたが、例えば色素増感型光発電素子等の他の発電素子を用いてもよい。要は、道路施設に存在する人工光による発電機能を有すれば、発電素子の構成はどのようなものでもよい。
【0055】
また、発光素子としてLED42を用いたが、例えば有機EL(エレクトロルミネセンス)素子等の他の発光素子を用いてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の表示システムを示す図である。この表示システムは、電力を生成する光発電機構の構成が異なる点が、第1実施形態の表示システムと相違する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。
【0057】
第2実施形態の表示システムの発電機構は、有機薄膜光発電素子3が設置された高欄としての壁高欄2の上に、上部設置物としての遮音壁6を備え、この遮音壁6の表面に、太陽光によって電力を生成する太陽光発電素子7が設置されている。上記壁高欄2と遮音壁6とで、路側設置物が構成されている。太陽光発電素子7は、遮音壁6が有する面のうち、日射強度を確保できる側の面に設けられている。図5には、有機薄膜光発電素子3と、太陽光発電素子7とが、道路に臨む側の面に設けられているが、太陽光発電素子7は、太陽光の照射時間を確保できれば、遮音壁6の道路に臨む側と反対側の面に設けてもよい。
【0058】
本実施形態の表示システムの発電機構は、太陽光発電素子7が、図示しない蓄電池を介してデリネータ4のLED42に接続されている。デリネータ4は、太陽光発電素子7で生成した電力と、有機薄膜光発電素子3で生成した電力との両方で動作するように構成されている。
【0059】
本実施形態の表示システムによれば、昼間には、太陽光発電素子7で太陽光を受けて生成した電力により、デリネータ4を動作させる。一方、夜間には、有機薄膜光発電素子3で車両Cの前照灯からの光Bを受けて生成した電力により、デリネータ4を動作させる。ここで、昼間には、太陽光発電素子7で生成した比較的大きい電力により、デリネータ4を比較的高い輝度で常時発光させる一方、夜間には、有機薄膜光発電素子3で発電する比較的小さい電力により、車両Cが通行するときのみに、比較的低い輝度で発光させる。このように、昼間と夜間とで電力を生成する発電素子を使い分けることにより、太陽光発電素子のみによって夜間の電力も補おうとした場合に生じる電池切れの問題を防止できる。したがって、公衆の電力供給網に接続してバックアップ用の電力を受けることなく、デリネータ4を動作させることができる。その結果、表示システムの設置コストとランニングコストの削減を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態の表示システムは、太陽光発電素子7で生成した電力を昼間にデリネータ4に供給する一方、有機薄膜光発電素子3で生成した電力を夜間にデリネータ4に供給したが、太陽光発電素子7で生成して蓄電池に蓄電できる限りの電力をデリネータ4に供給し、蓄電池の容量が枯渇した場合に、補助的に有機薄膜光発電素子3の電力を用いてもよい。
【0061】
また、本実施形態の表示システムでは、高欄としての壁高欄2の上に、上部設置物としての遮音壁6を設置したが、高欄は壁以外の柵等で構成してもよい。また、上部設置物は、遮音壁以外の網状の防護柵や、樹脂製の騒音緩和壁等であってもよい。さらに、上部設置物は、遮音壁や防護柵のような連続的なものの他、信号機や道路灯等のような不連続的なものでもよい。
【0062】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の表示システムを示す図である。この表示システムは、光発電機構の人工光発電素子と、発光素子の配置形態が異なる点が、第1実施形態の表示システムと相違する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。
【0063】
この表示システムは、人工光発電素子としての有機薄膜光発電素子3と、発光素子としての有機EL素子8とが、可撓性を有するポリマー製のベース9上に固定されて、カーブ標識10を構成している。このカーブ標識10は、有機薄膜光発電素子3が、標識模様として矢印形状に成型され、矩形のベース9上に固定されている。さらに、カーブ標識10には、有機薄膜光発電素子3の周縁とベース9の周縁との間を埋めるように、有機EL素子8が配置されている。
【0064】
有機薄膜光発電素子3は、光の吸収効率を向上するための色素が添加されており、光が照射されると電力を生成すると共に、赤色の反射光を出射する。
【0065】
有機EL素子8は、有機薄膜光発電素子3で生成された電力を受けて概ね白色の光を出射する。有機薄膜光発電素子3と有機EL素子8との間には、必要に応じて整流回路、保護回路及びEL駆動回路等が接続される。
【0066】
このカーブ標識10は、有機薄膜光発電素子3と有機EL素子8とベース9とを主要部品とすることにより、全体として可撓性を有し、壁高欄2の内側面の曲面に沿って、湾曲して取り付けられている。
【0067】
本実施形態の表示システムとしてのカーブ標識10は、道路1を走行する車両Cの前照灯からの光Bを受けると、有機薄膜光発電素子3が電力を生成し、この電力が所定の回路を経て有機EL素子8に供給されて、有機EL素子8が発光する。このとき、車両Cの前照灯からの光Bが照射されたカーブ標識10は、照射光が有機薄膜光発電素子3で反射されてなる赤色の反射光と、有機EL素子8が出射する白色光により、矢印形状の標識模様を明確に表示する。したがって、進行方向の先に壁高欄2が存在することと、道路1の曲線部分が存在することを、情報として車両Cへ伝達することができる。
【0068】
本実施形態において、人工光発電素子として、有機薄膜光発電素子3を用いたが、例えば色素増感型光発電素子等の他の発電素子を用いてもよく、また、道路施設に存在する人工光によって発電が可能な他の発電素子を用いてもよい。
【0069】
また、発光素子として有機EL素子8を用いたが、LED等の他の発光素子を用いてもよい。LEDを用いる場合、矢印形状の有機薄膜光発電素子3の周囲を取り囲むように、複数の白色発光のLEDを配列することにより、標識模様を明確に表示することができる。
【0070】
また、有機薄膜光発電素子3と有機EL素子8によって表示する標識模様は、矢印形状に限らず、標識の設置位置に応じて種々の形状を採用することができる。
【0071】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態の表示システムを示す図である。この表示システムは、道路の舗装に埋設される発光式の道路鋲を構成するものであり、第1実施形態の表示システムで用いたものと同様の人工光発電素子を用いて形成される。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。
【0072】
この道路鋲11は、道路の交差点の中心に埋設され、交差点に差し掛かる車両Cの前照灯からの光Bを受けて電力を生成し、この電力で発光部13から光を出射して、車両Cへ交差点の存在を伝えて注意を促すものである。
【0073】
図7(a)は道路鋲11の平面図であり、図7(b)は道路鋲11の断面図である。この道路鋲11は、図7(a)に示すように、平面視において長辺と短辺が交互に連なる周縁を有して不等辺八角形をなすと共に、中央部が膨出したケーシング12と、ケーシング12の対向する2対の長辺に沿って配置された4つの人工光発電素子としての有機薄膜光発電素子3と、中央部に配置された4つの発光部13とで構成されている。
【0074】
図7(b)に示すように、ケーシング12の上側面の外縁に近い側は、中央部に向かって傾斜した緩やかな傾斜面を有し、この傾斜面に有機薄膜光発電素子3が配置されている。ケーシング12の上側面の中央部は、中心から不等辺八角形の短辺に向かって延在する区画壁で区切られており、中心から各有機薄膜光発電素子3に向かって拡幅して平面視において三角形をなす4つの発光部13が形成されている。発光部13は、発光素子としてのLED14と、ケーシング12の中心から有機薄膜光発電素子3側に向かって上方に傾斜した反射鏡15と、上記LED14と反射鏡15を覆う透明カバー16とを有する。4つの発光部13は、各々のケーシング12外縁側に位置する有機薄膜光発電素子3に、必要に応じて整流回路、保護回路及びLED駆動回路等を介して夫々接続されている。この道路鋲11は、ケーシング12の下部が舗装に埋設されて固定される。
【0075】
この道路鋲11は、車両Cの前照灯からの光Bを受けると、有機薄膜光発電素子3が電力を生成し、LED14が発光して発光部13から光を出射する。これにより、交差点が存在することを車両Cへ伝えて、側方の道路から車両や歩行者等が進入する可能性を認識させて、注意を喚起するようになっている。
【0076】
この道路鋲11の有機薄膜光発電素子3は、道路の舗装表面の近傍に存在するものの、中央部が膨出したケーシング12の傾斜面に配置されているので、車両Cの前照灯からの光Bを法線に近い入射角度で受けることができ、したがって、比較的高い効率で電力を生成することができる。また、有機薄膜光発電素子3は、車両Cの前照灯からの光Bを受けた際に発光部13から光を出射できる程度の電力を生成すればよいので小型にでき、また、車両Cからの光Bを効率的に受けるためにケーシング12の傾斜面に設置するので、この道路鋲11は、太陽光発電パネルを用いた道路鋲よりも小型化を図ることができる。
【0077】
また、この道路鋲11の発光部13は、道路の舗装表面の近傍に存在するものの、反射鏡15がケーシング12の中心から有機薄膜光発電素子3の側に向かって上方に傾斜するので、車両Cの運転者や同乗者の視線によって問題なく視認される。したがって、この道路鋲11は、前照灯を点灯した車両Cが接近するに応じて、この車両Cへ交差点の存在を知らせて注意を喚起することができる。
【0078】
また、この道路鋲11は、車両Cの前照灯からの光Bをエネルギー源として、この車両Cに対して光を出射するので、車両Cから放出されるエネルギーを効果的に再利用でき、しかも、道路交通の安全を保持することができる。
【0079】
本実施形態において、道路鋲11は、4つの有機薄膜光発電素子3と4つの発光部13を備えたが、有機薄膜光発電素子3の数と発光部13の数はこれに限定されず、1つ又は複数のいくつでもよい。また、有機薄膜光発電素子3の数と発光部13の数は異なってもよい。また、有機薄膜光発電素子3は四角形に形成され、発光部13は三角形に形成されたが、いずれも他の形状に形成されてもよい。
【0080】
また、本実施形態の道路鋲11は交差点に配置されたが、道路鋲11は、道路の交差点以外の直線部や曲線部に配置されてもよく、例えば、道路の中央線や車線境界線に沿って配置されてもよい。これにより、道路の車線の境界を、車両Cから放出されたエネルギーを再利用しながら効果的に知らせることができる。
【0081】
また、発光部13の発光素子はLED14で形成したが、有機EL等で形成してもよく、また、発光部13の発光素子の数は、1個以外の何個でもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 道路
2 壁高欄
3 有機薄膜光発電素子
4 デリネータ
42 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路施設に、人工光を受けて電力を生成する人工光発電素子を設けたことを特徴とする光発電機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光発電機構において、
上記道路施設は、道路の側部に設置された路側設置物を含み、この路側設置物の上記道路に臨む側、かつ、上記道路を走行する車両の前照灯から出射された光が照射される位置に、上記人工光発電素子を配置したことを特徴とする光発電機構。
【請求項3】
請求項1に記載の光発電機構において、
上記路側設置物は、高欄と、この高欄の上に配置された上部設置物とを有し、上記高欄の上記道路に臨む面に上記人工光発電素子を配置する一方、上記上部設置物に太陽光発電素子を配置したことを特徴とする光発電機構。
【請求項4】
請求項1に記載の光発電機構において、
上記人工光は、道路を走行する車両の前照灯から出射された光、及び、道路の照明灯から出射された光のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする光発電機構。
【請求項5】
請求項1に記載の光発電機構において、
上記人工光発電素子は、有機薄膜光発電素子であることを特徴とする光発電機構。
【請求項6】
請求項1に記載の光発電機構と、この光発電機構で生成された電力が供給される発光素子とを備え、
この発光素子を、道路を走行する車両へ情報を伝達するために用いることを特徴とする表示システム。
【請求項7】
請求項2に記載の光発電機構と、この光発電機構で生成された電力が供給される発光素子とを備え、
上記路側設置物の上記道路に臨む面に、所定の標識模様をなすように上記発光素子と上記人工光発電素子とを配置したことを特徴とする表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117170(P2011−117170A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274464(P2009−274464)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】