光直交周波数分割多重信号分離回路
【課題】光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現することにより、チャネル数Uが2の整数のべき乗個である必要はなく、チャネル数Uが増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を提供すること。
【解決手段】本発明においては、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現する。これにより、任意のチャネル数で動作し、チャネル数が増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を実現することができる。
【解決手段】本発明においては、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現する。これにより、任意のチャネル数で動作し、チャネル数が増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光直交周波数分割多重信号分離回路に関し、具体的には、光直交周波数分割多重(Optical Orthogonal Frequency Division Multiplexing:Optical OFDM、光OFDM)伝送用の多重信号分離回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの帯域利用効率を向上させる手段として、光直交周波数分割多重伝送システムの研究開発が行われている。チャネル間を直交状態とし、多値ではない通常のIM−DD(Intensity Modulation−Direct Detection)バイナリ伝送(強度0、1のみをデータ信号として用いる伝送)の場合でも、通常の波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)伝送とは異なり、帯域利用効率BE=1を実現可能である。帯域利用効率BEは、チャネル間隔がΔf(Hz)、各チャネルのビットレートがBR(bit/s)の場合、BR/Δfで定義される。
【0003】
図1に従来のWDMシステムの構成図を示す(非特許文献1を参照)。等周波数間隔Δfに配置された複数の光送信器1‐1、1‐2、・・・、1‐J(ただし、Jは2以上の整数)からの各データ信号を、アレイ導波路格子(Arrayed−Waveguide Grating:AWG)などの波長合波器2を用いて合波する。合波された信号は、光ファイバ3を介して伝送された後、AWGなどの波長分波器4により周波数毎に分波され、各光受信器5‐1、5‐2、・・・、5‐Jで受信される。
【0004】
光直交周波数分割多重伝送においては、多重信号を光領域で直接高速に分離するために、光離散フーリエ変換(Optical Discrete Fourier Transform:光DFT)あるいは光高速フーリエ変換(Optical Fast Fourier Transform:光FFT)を実行可能な光素子が構成要素として必須である。
【0005】
図11Aに4入力4出力の光FFT回路の構成例を示す(非特許文献2を参照)。斯かる光FFT回路は、入力導波路71、対称マッハツェンダ型干渉計72、位相調節部73、出力導波路74から構成されている。
【0006】
また一般に、2U入力2U出力(ただし、U=2Tであり、Tは1以上の整数である)の光FFT回路は、U入力U出力の光FFT回路を2個組み合わせて、図11Bのように構成される。斯かる光FFT回路は、入力導波路75、U入力U出力光FFT回路76、U入力U出力光FFT回路の出力導波路77、対称マッハツェンダ型干渉計78、出力導波路79から構成されている。なお、図11Bにおいて、位相調節部は省略した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.R.Chraplyvy and R.W.Tkach,“Terabit/second Transmission Experiments,”IEEEJ.Quantum Electron.,vol.34,no.11,pp.2103−2107,1998.
【非特許文献2】K.Takiguchi,M.Oguma,H.Takahashi,and A.Mori,“Integrated−optic eight−channel OFDM demultiplexer and its demonstration with 160 Gbit/s signal reception,”Electron.Lett.,vol.46,no.8,pp.575−576,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
対称マッハツェンダ型干渉計を主要構成要素とするU入力U出力光FFT回路においては、入出力チャネル数が2の整数のべき乗個に限定される。また、構成に必要な対称マッハツェンダ型干渉計数は、(U/2)log2U個となる。従って、Uの増加に伴い必要となる対称マッハツェンダ型干渉計の数の増加は著しく、光回路サイズの増大や調整箇所数が増加するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の従来技術に鑑みて成されたものであり、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現することにより、チャネル数Uが2の整数のべき乗個である必要はなく、チャネル数Uが増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、N個(ただし、Nは2以上の整数)のサブキャリアを持つ光直交周波数分割多重信号を分離するための光直交周波数分割多重信号分離回路であって、光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板上の、入力導波路と、入力導波路に接続される光スプリッタと、光スプリッタに接続される遅延線導波路と、遅延線導波路に接続されるスラブ型スターカプラと、スラブ型スターカプラに接続される出力導波路とから構成され、入力光をN分岐する光スプリッタのN個の出力と、導波路長差が順次ΔL=cT/N(ただし、cは導波路中の光速であり、Tは各サブキャリアのビット時間間隔)異なるN本の遅延線導波路の一端とがそれぞれ接続され、N本の遅延線導波路の他端と、N入力N出力のスラブ型スターカプラのN個の入力とが接続され、スラブ型スターカプラのN個の出力からN個のサブキャリア信号が分離、出力されることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする(請求項2)。
【0012】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする(請求項3)。
【0013】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、N出力の多モード干渉型カプラであることを特徴とする(請求項4)。
【0014】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、第2のN入力N出力のスラブ型スターカプラであることを特徴とする(請求項5)。
【0015】
本発明の一実施形態において、請求項2におけるN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、遅延線導波路のうち最長の導波路と接続されるスラブ型スターカプラの入力の番号niを1、遅延線導波路のうち最短の導波路と接続されるスラブ型スターカプラの入力の番号niをNとし、スラブ型スターカプラの出力の番号nOを入力の番号とは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されており、スラブ型スターカプラのK番目の入力に接続される導波路にξk=(K−1)(N+1−2Q)π/Nの位相オフセット(1≦Q≦N)が付与されており、スラブ型スターカプラのQ番目の出力から最低周波数のチャネル0のサブキャリア信号が出力されることを特徴とする(請求項6)。
【0016】
本発明の一実施形態において、請求項5における2つのN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとを1とし、遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとをNとし、それ以外の第2のスラブ型スターカプラの入力の番号と第1のスラブ型スターカプラの出力番号nOとをそれらとは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されていることを特徴とする(請求項7)。
【0017】
本発明の請求項1乃至7の一実施形態において、出力されるサブキャリア信号の各々において、回路への入力信号中同一の時間長Tのタイムスロットから生成され時間的に重なった時間長T/Nの部分のみを時間T毎に周期的に取り出すN個の時間ゲート素子が、出力導波路に接続されることを特徴とする(請求項8)。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現する。これにより、任意のチャネル数で動作し、チャネル数が増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の波長分割多重伝送システムの構成を示す図である。
【図2】光直交周波数分割多重伝送システムの構成例を示す図である。
【図3】光直交周波数分割多重伝送信号のスペクトル形状を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路を示す図である。
【図5】スラブ型スターカプラの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路における光パルスの様子を示す図である。
【図7】光スプリッタの構成を示す図である。
【図8】光スプリッタの構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態の光直交周波数分割多重信号分離回路の周波数特性を示す図である。
【図11】従来の光FFT回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
光直交周波数分割多重伝送においては、多重信号を光領域で直接高速に分離するために、光離散フーリエ変換を実行可能な光素子が構成要素として必須である。
【0021】
N入力N出力のスラブ型スターカプラは、構成パラメータを適切に設定することにより、入力からのN個の信号を光離散フーリエ変換したN個の信号を異なる位置に出力することができる。従って、N入力N出力のスラブ型スターカプラを使用すれば、N×Nの光離散フーリエ変換を1個の素子で実現することができるため、光スプリッタ、導波路アレイなどの構成要素を付加することによって光直交周波数分割多重信号を分離出力できる光回路を実現することができる。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、光直交周波数分割多重伝送の概要を説明する。
【0024】
図2に、光直交周波数分割多重伝送システムの構成図を示す。基準搬送波光周波数をf0、第nチャネルと第n+1チャネルとの間の光周波数間隔をΔfn(ただし、n=0、1、・・・、N‐1であり、Nは2以上の整数である)、各サブキャリアのビット時間間隔をT、各サブキャリア用のデータ信号をdn(t)(ただし、tは時間である)と定義する。なお、Δfn=kn/T(ただし、knは1以上の整数である)である。送信側では、N個の光源10‐0、10‐1、・・・、10‐(N−1)からの光をdn(t)で駆動された変調器11‐0、11‐1、・・・、11‐(N−1)を用いて変調している。dn(t)間の同期を保ちながら、光強度合流器12を用いて光送信側の各光信号を合流した光直交周波数分割多重信号S(t)は、以下の(式1)で表される。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、jは虚数単位であり、Δf-1=0、である。各サブキャリアの変調信号Sn(t)は、
【0027】
【数2】
【0028】
と表され、隣接するサブキャリアである、Sn(t)とSn+1(t)との間の相互相関関数E[Sn(t)Sn+1(t)]は、
【0029】
【数3】
【0030】
となるため、隣接するサブキャリア同士は直交していることがわかる。全てのnに対してkn=1の場合、隣接チャネルが直交する最小の周波数間隔が得られ、帯域利用効率BE=1を実現することができる。このときの各サブキャリアのスペクトル形状を図3に示す(N=5の場合)。ある1つのサブキャリアの周波数成分は、他のサブキャリアの中心周波数の位置では0となり、影響を及ぼさない。以下の実施形態の説明においては、簡単のため、kn=1の場合の議論を進める。この場合、S(gΔt)の複素包絡線は以下の(式3)で表される。
【0031】
【数4】
【0032】
ただし、g=0、1、・・・、N−1であり、Δt=T/Nである。従ってSは、dnの逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform:IDFT)となる。光信号Sは光ファイバ13を通過し、光離散フーリエ変換素子14を通過した後、元のdnに復調され、各光受信器15‐0、15‐1、・・・、15‐(N−1)に入射される。光離散フーリエ変換素子14では、以下の(式4)で表される処理が行われる。
【0033】
【数5】
【0034】
(式3)及び(式4)は、kn≧1となる場合でも対応する離散変換の式が存在するので、kn=1の場合と同様な議論ができることに留意されたい。
【0035】
dnが2値信号、kn=1の場合、光直交周波数分割多重を用いることによって、各サブキャリアのビットレートは1/Tで、総計N/Tのビットレートを実現することができる。すなわちサブキャリア毎に、タイムスロットT毎の低速での処理を行えばよい。時間分割多重(Time Division Multiplexing:TDM)方式においてビットレートN/Tを実現する場合、短光パルスを用いた時間多重分離処理(タイムスロットT/N毎の高速時間多重分離処理)が必要となり、処理装置の負担が大きくなる。また光ファイバ伝送路における波長分散による波形劣化の影響はビットレートの2乗に比例して大きくなり、偏波分散による波形劣化の影響はビットレートの1乗に比例して大きくなる。従って、光直交周波数分割多重信号は、総ビットレートが等しい時間分割多重信号よりも、波長分散の影響は1/N2小さくなり、偏波分散の影響は1/N小さくなる。
【0036】
図4に、本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路の構成例を示す。本実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板27上の、入力導波路(光スプリッタ21の入力ポート)20、光スプリッタ21、導波路(光スプリッタ21の出力ポート)22‐N、・・・、22‐K、・・・、22‐1(ただし、Nは2以上の整数)、遅延線23‐N、・・・、23‐K、・・・、23‐1、位相オフセット付与部24‐N、・・・、24‐K、・・・、24‐1、スラブ型スターカプラ25、出力導波路(スラブ型スターカプラ25の出力ポート)26‐1、・・・、26‐Nから構成されている。
【0037】
光直交周波数分割多重信号S(t)から各サブキャリア信号dn(t)を復調する際、(式4)で示す光離散フーリエ変換が必要となる。簡単のためN=4の場合を考えると、(式4)は以下の(式5)で表される。
【0038】
【数6】
【0039】
ただし、
【0040】
【数7】
【0041】
である。
【0042】
図4の光回路構成を用いることによって、(式5)の位相関係を実現できることを以下に示す。
【0043】
まず、図5を用いてスラブ型スターカプラ25の入出力間の位相関係を説明する。図5において、30‐N、・・・、30‐K、・・・、30‐1(ただし、Nは2以上の整数)は入力ポート、31はスラブ導波路、32‐1、・・・、32‐P、・・・、32‐Nは出力ポートである。中心O1から半径Lf上に出力側スラブ面が配置され、中心O2から半径Lf上に入力側スラブ面が配置されている。通常、スラブ型スターカプラでは、O1、O2を結ぶ線に対し線対称の位置に入出力ポートは配置される。入力ポート30‐K及び入力側スラブ面の交点と、出力ポート32‐P及び出力側スラブ面の交点との距離(入出力ポート間距離)をDとする。中心O1、O2間の距離Lfに対してDを通過するときの光波の相対位相Δφは以下の(式6)で表される。
【0044】
【数8】
【0045】
ただし、nsはスラブ導波路の屈折率であり、λは光波の波長である。
【0046】
ここで、入力ポート、出力ポート番号を、それぞれni、noとする。中心O1、O2間に対する、ni、no間の光波の相対位相差をφno-niとしたとき、
【0047】
【数9】
【0048】
となるように、(式6)のパラメータ値Lf、ns、θ1、θ2を設定する。
【0049】
図4を再び参照すると、入力導波路20から入射する光直交周波数分割多重信号S(t)は、光スプリッタ21によって各導波路22‐N、・・・、22‐1に等しい強度で分配される。分配信号間の位相は等しい。S(gΔt)の信号を同一タイムスロットとして(式4)の演算を実現するために、遅延線23‐Kの23‐Nに対する相対遅延長ΔLkを、
【0050】
【数10】
【0051】
と設定する。ただし、cは導波路中の光速である。また、位相オフセット付与部24‐Kの24‐1に対する相対位相シフト量ξkを、
【0052】
【数11】
【0053】
と設定する。ただし、1≦Q≦N、である。位相オフセットは、導波路の長さの増減、熱光学効果、電気光学効果、紫外光トリミング、光弾性効果を用いるトリミングなどによる導波路屈折率の変化、などによって付与可能である。位相オフセット部を通り、スラブ型スターカプラ25の入力ポートKから出力ポートPへ出射する光波の相対位相差
【0054】
【数12】
【0055】
は、(式7)、(式9)より、2πの整数倍の位相差を無視すると、以下の(式10)で表される。
【0056】
【数13】
【0057】
従って、スラブ型スターカプラ25の隣りあう入力ポートK+1、Kから出力ポートPへ出射する光波の相対位相
【0058】
【数14】
【0059】
は以下の(式11)で表される。
【0060】
【数15】
【0061】
従って、全ての入力ポートから出力ポートPへの光波の入射を考えると、図4の構成を用いることによって(式4)の関係が満たされ、直交周波数分割多重信号の各サブキャリア信号dnは出力導波路26‐1、・・・、26‐Nで分離出力される。出力ポートQの信号はd0(最低周波数のサブキャリア信号)となる。また、出力ポートPの信号は、1≦P<Qの場合、dP+N-Q+1となり、Q≦P≦Nの場合、dP-Qとなる。なお、Q=(N+1)/2の場合(出力ポートQを出力ポートの中央位置に配置する場合)、(式9)よりξk=0となるため、位相オフセット付与部24は不要となる。図4に示すような回路の構成においては、小型かつ入出力ポート数によるサイズの変動が少ない特徴を有するスラブ型スターカプラ25を光離散フーリエ変換の主要素子として用いるため、素子全体を小型化でき、光直交周波数分割多重信号数が増加してもサイズの変動が少ない。今回、入出力ポート数が4、8、10のスラブ型スターカプラの設計・作成を比屈折率差1.5%の石英導波路を用いて行ったが、3種類ともLf=1.5mmで所望の特性が得られ、スラブ導波路自体の大きさには全く変化がなかった。また、図11に示した従来構成の場合、チャネル数が8のときの素子サイズは33×70mm2であったが(非特許文献2を参照)、本発明に係る図4に示す素子では、チャネル数が10に増大しても素子サイズは21×46mm2と半分以下に低減された(両者ともに比屈折率差1.5%の石英導波路を用いた場合)。なお、出力導波路26の各々の特性を理想値に近づけるために、導波路22の途中にマッハツェンダ型干渉計などの可変光アッテネータを配置し、スラブ型スターカプラ25に入射する各光強度を調節しても良い。
【0062】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路における光パルスの様子を示す図である。図6A、図6B、図6Cに、図4のA、B、Cで示した箇所における1タイムスロット分のみの光パルスの様子をそれぞれ示す。図6Cは、d1分離用の出力導波路における光パルスの様子である。横軸は時間tを表し、縦軸の光振幅の値は任意目盛りである。図6においても、簡単のため、N=4の場合について説明する。図6Aで示すような入力光パルスである光直交周波数分割多重信号S(t)は、光スプリッタ21でN分岐される。N分岐された信号は、遅延線23において、図6Bで示すように、cΔtずつ異なる遅延を与えられる。図6Cで示すように、位相オフセット付与部24、スラブ型スターカプラ25において、光離散フーリエ変換に相当する位相が、各光パルスに与えられて、各サブキャリア信号dn(t)が分離出力される。各サブキャリア信号の直交性は同一タイムスロット内のみで成立するので、図6Cでは、一点鎖線で囲まれた部分のみが有効な分離出力部分となり、データ信号のアイパターンもこの部分のみで開く。さらに一点鎖線で囲まれた部分を時間ゲート素子によって切り出せば、ジッタに強いサブキャリア信号を得ることができる。時間ゲート素子としては、電界吸収(Electro−Absorption:EA)効果を用いる半導体素子、強誘電体材料若しくは半導体材料の電気光学効果を用いた干渉計型スイッチ、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)、光信号の光電変換後の電気領域でのゲーティング、周期光パルスによる光ファイバ、強誘電体材料、又は半導体材料中における非線形光学効果などを用いることができるが、小型で導波路への集積化に適し、ゲート時間窓を短く設定することが可能な半導体EA素子が現状では最適であると考えられる。
【0063】
図7に、図4の光スプリッタ21の一例を示す。40‐1、40‐2、40‐3はY分岐導波路である。図4の光スプリッタ21は、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続するものであり、図7では簡単のためS=1、N=4の場合の例を示している。Nが2のべき乗以外の場合、出力のうち2S+1−N個が無駄になるが、Y分岐導波路は良好で安定な1:1の分岐比を実現できるため、光信号の等強度分配に適している。
【0064】
図8に、図4の光スプリッタ21の他の一例を示す。50‐1、50‐2、50‐3は2入力2出力方向性結合器である。図4の光スプリッタ21は、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続するものであり、図8では簡単のためS=1、N=4の場合の例を示している。2入力2出力方向性結合器50−1の入力ポートの一方から光を入力する。Nが2のべき乗以外の場合、図7と同様、出力のうち2S+1−N個が無駄になる。2入力2出力方向性結合器の一部あるいは全部を2入力2出力対称マッハツェンダ型干渉計(2入力2出力結合率方向性結合器)に置き換えることができ、光信号の良好な等強度分配を実現することができる。
【0065】
図4の光スプリッタ21として、他に、N出力の多モード干渉型カプラ又はN入力N出力のスラブ型スターカプラを用いることもできる。
【0066】
図9に、本発明の第2の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路の構成例を示す。本実施形態では、第1の実施形態で使用した光スプリッタ21の代わりにスラブ型スターカプラ61を使用する。本実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板66上の、入力導波路(スラブ型スターカプラ61の入力ポート)60‐1、・・・60‐Q、・・・60‐N、第2のスラブ型スターカプラ61、導波路(スラブ型スターカプラ61の出力ポート)62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1、遅延線63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1、第1のスラブ型スターカプラ64、出力導波路(スラブ型スターカプラ64の出力ポート)65‐1、・・・、65‐P、・・・、65‐(N−Q+1)、・・・、65‐Nから構成されている。
【0067】
入力導波路60から入射する光直交周波数分割多重信号S(t)は、第2のスラブ型スターカプラ61によって各導波路62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1に等しい強度で分配される。S(gΔt)の信号を同一タイムスロットとして(式4)の演算を実現するために、遅延線63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1の相対遅延長ΔLkは(式8)と同じ値が付与される。第2のスラブ型スターカプラ61の入力ポートQから出力ポートKへの位相差φ1K-Q、第1のスラブ型スターカプラ64の入力ポートKから出力ポートPへの位相差φ2P-Qは、スラブ型スターカプラ61、64のパラメータ設定によって(式7)のように設定することができ、以下の(式12)で表される。
【0068】
【数16】
【0069】
従って、第1のスラブ型スターカプラ64の隣りあう入力ポートK+1、Kから出力ポートPへ出射する光波の相対位相Δφ2Pは(式12)より以下の(式13)で表される。
【0070】
【数17】
【0071】
従って、第1のスラブ型スターカプラ64の全ての入力ポートから出力ポートPへの光波の入射を考えると、図9の構成を用いることによって(式4)の関係が満たされ、直交周波数分割多重信号の各サブキャリア信号dnは出力導波路65で分離出力される。出力ポートN−Q+1の信号はd0(最低周波数のサブキャリア信号)となる。また、出力ポートPの信号は、1≦P<N−Q+1の場合dP+Qとなり、N−Q+1≦P≦Nの場合にdP-N+Q-1となる。なお、図9の構成の場合、図4の構成で必要であった位相オフセット付与部は不要である。もちろん、出力ポートと出力サブキャリア周波数との関係を調整するため位相オフセットを付与しても良い。
【0072】
図9の構成では小型かつ入出力ポート数によるサイズの変動が少ない特徴を有するスラブ型スターカプラ61、64を光分岐および光離散フーリエ変換の両方の主要素子として用いるため、素子全体を小型化することができ、光直交周波数分割多重信号数が増加してもサイズの変動が少ない。この効果はスラブ型スターカプラの使用が1個のみである図4の構成より大きい。なお、出力導波路65の各々の特性を理想値に近づけるために、導波路62の途中に可変光アッテネータを配置し、第1のスラブ型スターカプラ64に入射する各光強度を調節しても良い。
【0073】
図4の構成と同様、図9の構成においても、出力導波路65の後段に時間ゲート素子を配置しデータ信号の有効な分離出力部分のみを切り出す操作は、ジッタに強いサブキャリア信号を得ることができるので有効である。
【0074】
図10Aに図4、図9の素子の1出力の強度透過率の周波数特性、図10Bに図4、図9の素子の1出力の位相の周波数特性を示す(N=4、T=100ps)。強度透過特性より、分離出力されるサブキャリア信号チャネル(相対周波数:0GHz)では10GHz程度の帯域通過幅を持ち、そのチャネルから10GHzの±1、±2、±3倍離れた不要チャネルでは、消光比が大きくなっている。また40GHz毎に繰り返すFSR(Free Spectral Range)特性を有し、光直交周波数分割多重信号分離フィルタとしての特性を満たしていることがわかる。また、直線位相特性を有しているため位相の周波数微分特性で表される群遅延時間特性は0となり、光パルスの波形劣化は引き起こさない。
【0075】
なお、サブキャリア数と出力導波路チャネル数は通常の用途を想定し両者ともNで等しいと説明したが、必ずしも等しい必要はない。サブキャリア数が出力導波路チャネル数より大きい場合、隣接チャネルのクロストークが残り完全な分離はできないが、出力導波路チャネル数に等しい分のサブキャリアを分離することができる。中心周波数をずらした分離回路を複数用いれば、全サブキャリアの分離が可能となる。サブキャリア数が出力導波路チャネル数より小さい場合、(出力導波路チャネル数−サブキャリア数)に等しい分は常にデータが0のサブキャリアと考えることができるため、1つの分離回路によって、実際のサブキャリアを隣接チャネルのクロストーク無しに完全に分離することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1‐1、1‐2、・・・、1‐J 光送信器
2 波長合波器
3、13 光ファイバ
4 波長分波器
5‐1、5‐2、・・・、5‐J、15‐0、15‐1、・・・、15‐(N−1) 光受信器
10‐0、10‐1、・・・、10‐(N−1) 光源
11‐0、11‐1、・・・、11‐(N−1) 変調器
12 光強度合流器
14 光離散フーリエ変換素子
20、60‐1、・・・、60‐Q、・・・、60‐N、71、75 入力導波路
21 光スプリッタ
22‐N、・・・、22‐K、・・・、22‐1、62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1 導波路
23‐N、・・・、23‐K、・・・、23‐1、63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1 遅延線
24‐N、・・・、24‐K、・・・、24‐1 位相オフセット付与部
25、61、64 スラブ型スターカプラ
26‐1、・・・、26‐P、・・・、26‐Q、・・・、26‐N、65‐1、・・・、65‐P、・・・、65‐(N−Q+1)、・・・、65‐N、74、77、79 出力導波路
27、66 導波路基板
30‐N、・・・、30‐K、・・・、30‐1 入力ポート
31 スラブ導波路
32‐1、・・・、32‐P、・・・、32‐N 出力ポート
40‐1、40‐2、40‐3 Y分岐導波路
50‐1、50‐2、50‐3 2入力2出力方向性結合器
72、78 対称マッハツェンダ型干渉計
73 位相調節部
76 U入力U出力光高速フーリエ変換回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、光直交周波数分割多重信号分離回路に関し、具体的には、光直交周波数分割多重(Optical Orthogonal Frequency Division Multiplexing:Optical OFDM、光OFDM)伝送用の多重信号分離回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの帯域利用効率を向上させる手段として、光直交周波数分割多重伝送システムの研究開発が行われている。チャネル間を直交状態とし、多値ではない通常のIM−DD(Intensity Modulation−Direct Detection)バイナリ伝送(強度0、1のみをデータ信号として用いる伝送)の場合でも、通常の波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)伝送とは異なり、帯域利用効率BE=1を実現可能である。帯域利用効率BEは、チャネル間隔がΔf(Hz)、各チャネルのビットレートがBR(bit/s)の場合、BR/Δfで定義される。
【0003】
図1に従来のWDMシステムの構成図を示す(非特許文献1を参照)。等周波数間隔Δfに配置された複数の光送信器1‐1、1‐2、・・・、1‐J(ただし、Jは2以上の整数)からの各データ信号を、アレイ導波路格子(Arrayed−Waveguide Grating:AWG)などの波長合波器2を用いて合波する。合波された信号は、光ファイバ3を介して伝送された後、AWGなどの波長分波器4により周波数毎に分波され、各光受信器5‐1、5‐2、・・・、5‐Jで受信される。
【0004】
光直交周波数分割多重伝送においては、多重信号を光領域で直接高速に分離するために、光離散フーリエ変換(Optical Discrete Fourier Transform:光DFT)あるいは光高速フーリエ変換(Optical Fast Fourier Transform:光FFT)を実行可能な光素子が構成要素として必須である。
【0005】
図11Aに4入力4出力の光FFT回路の構成例を示す(非特許文献2を参照)。斯かる光FFT回路は、入力導波路71、対称マッハツェンダ型干渉計72、位相調節部73、出力導波路74から構成されている。
【0006】
また一般に、2U入力2U出力(ただし、U=2Tであり、Tは1以上の整数である)の光FFT回路は、U入力U出力の光FFT回路を2個組み合わせて、図11Bのように構成される。斯かる光FFT回路は、入力導波路75、U入力U出力光FFT回路76、U入力U出力光FFT回路の出力導波路77、対称マッハツェンダ型干渉計78、出力導波路79から構成されている。なお、図11Bにおいて、位相調節部は省略した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.R.Chraplyvy and R.W.Tkach,“Terabit/second Transmission Experiments,”IEEEJ.Quantum Electron.,vol.34,no.11,pp.2103−2107,1998.
【非特許文献2】K.Takiguchi,M.Oguma,H.Takahashi,and A.Mori,“Integrated−optic eight−channel OFDM demultiplexer and its demonstration with 160 Gbit/s signal reception,”Electron.Lett.,vol.46,no.8,pp.575−576,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
対称マッハツェンダ型干渉計を主要構成要素とするU入力U出力光FFT回路においては、入出力チャネル数が2の整数のべき乗個に限定される。また、構成に必要な対称マッハツェンダ型干渉計数は、(U/2)log2U個となる。従って、Uの増加に伴い必要となる対称マッハツェンダ型干渉計の数の増加は著しく、光回路サイズの増大や調整箇所数が増加するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の従来技術に鑑みて成されたものであり、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現することにより、チャネル数Uが2の整数のべき乗個である必要はなく、チャネル数Uが増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、N個(ただし、Nは2以上の整数)のサブキャリアを持つ光直交周波数分割多重信号を分離するための光直交周波数分割多重信号分離回路であって、光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板上の、入力導波路と、入力導波路に接続される光スプリッタと、光スプリッタに接続される遅延線導波路と、遅延線導波路に接続されるスラブ型スターカプラと、スラブ型スターカプラに接続される出力導波路とから構成され、入力光をN分岐する光スプリッタのN個の出力と、導波路長差が順次ΔL=cT/N(ただし、cは導波路中の光速であり、Tは各サブキャリアのビット時間間隔)異なるN本の遅延線導波路の一端とがそれぞれ接続され、N本の遅延線導波路の他端と、N入力N出力のスラブ型スターカプラのN個の入力とが接続され、スラブ型スターカプラのN個の出力からN個のサブキャリア信号が分離、出力されることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする(請求項2)。
【0012】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする(請求項3)。
【0013】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、N出力の多モード干渉型カプラであることを特徴とする(請求項4)。
【0014】
本発明の請求項1の一実施形態において、光スプリッタは、第2のN入力N出力のスラブ型スターカプラであることを特徴とする(請求項5)。
【0015】
本発明の一実施形態において、請求項2におけるN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、遅延線導波路のうち最長の導波路と接続されるスラブ型スターカプラの入力の番号niを1、遅延線導波路のうち最短の導波路と接続されるスラブ型スターカプラの入力の番号niをNとし、スラブ型スターカプラの出力の番号nOを入力の番号とは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されており、スラブ型スターカプラのK番目の入力に接続される導波路にξk=(K−1)(N+1−2Q)π/Nの位相オフセット(1≦Q≦N)が付与されており、スラブ型スターカプラのQ番目の出力から最低周波数のチャネル0のサブキャリア信号が出力されることを特徴とする(請求項6)。
【0016】
本発明の一実施形態において、請求項5における2つのN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとを1とし、遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとをNとし、それ以外の第2のスラブ型スターカプラの入力の番号と第1のスラブ型スターカプラの出力番号nOとをそれらとは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されていることを特徴とする(請求項7)。
【0017】
本発明の請求項1乃至7の一実施形態において、出力されるサブキャリア信号の各々において、回路への入力信号中同一の時間長Tのタイムスロットから生成され時間的に重なった時間長T/Nの部分のみを時間T毎に周期的に取り出すN個の時間ゲート素子が、出力導波路に接続されることを特徴とする(請求項8)。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、光離散フーリエ変換をスラブ型スターカプラで主に実現する。これにより、任意のチャネル数で動作し、チャネル数が増加しても光回路サイズを小型に保つことが可能な光直交周波数分割多重信号の分離回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の波長分割多重伝送システムの構成を示す図である。
【図2】光直交周波数分割多重伝送システムの構成例を示す図である。
【図3】光直交周波数分割多重伝送信号のスペクトル形状を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路を示す図である。
【図5】スラブ型スターカプラの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路における光パルスの様子を示す図である。
【図7】光スプリッタの構成を示す図である。
【図8】光スプリッタの構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態の光直交周波数分割多重信号分離回路の周波数特性を示す図である。
【図11】従来の光FFT回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
光直交周波数分割多重伝送においては、多重信号を光領域で直接高速に分離するために、光離散フーリエ変換を実行可能な光素子が構成要素として必須である。
【0021】
N入力N出力のスラブ型スターカプラは、構成パラメータを適切に設定することにより、入力からのN個の信号を光離散フーリエ変換したN個の信号を異なる位置に出力することができる。従って、N入力N出力のスラブ型スターカプラを使用すれば、N×Nの光離散フーリエ変換を1個の素子で実現することができるため、光スプリッタ、導波路アレイなどの構成要素を付加することによって光直交周波数分割多重信号を分離出力できる光回路を実現することができる。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、光直交周波数分割多重伝送の概要を説明する。
【0024】
図2に、光直交周波数分割多重伝送システムの構成図を示す。基準搬送波光周波数をf0、第nチャネルと第n+1チャネルとの間の光周波数間隔をΔfn(ただし、n=0、1、・・・、N‐1であり、Nは2以上の整数である)、各サブキャリアのビット時間間隔をT、各サブキャリア用のデータ信号をdn(t)(ただし、tは時間である)と定義する。なお、Δfn=kn/T(ただし、knは1以上の整数である)である。送信側では、N個の光源10‐0、10‐1、・・・、10‐(N−1)からの光をdn(t)で駆動された変調器11‐0、11‐1、・・・、11‐(N−1)を用いて変調している。dn(t)間の同期を保ちながら、光強度合流器12を用いて光送信側の各光信号を合流した光直交周波数分割多重信号S(t)は、以下の(式1)で表される。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、jは虚数単位であり、Δf-1=0、である。各サブキャリアの変調信号Sn(t)は、
【0027】
【数2】
【0028】
と表され、隣接するサブキャリアである、Sn(t)とSn+1(t)との間の相互相関関数E[Sn(t)Sn+1(t)]は、
【0029】
【数3】
【0030】
となるため、隣接するサブキャリア同士は直交していることがわかる。全てのnに対してkn=1の場合、隣接チャネルが直交する最小の周波数間隔が得られ、帯域利用効率BE=1を実現することができる。このときの各サブキャリアのスペクトル形状を図3に示す(N=5の場合)。ある1つのサブキャリアの周波数成分は、他のサブキャリアの中心周波数の位置では0となり、影響を及ぼさない。以下の実施形態の説明においては、簡単のため、kn=1の場合の議論を進める。この場合、S(gΔt)の複素包絡線は以下の(式3)で表される。
【0031】
【数4】
【0032】
ただし、g=0、1、・・・、N−1であり、Δt=T/Nである。従ってSは、dnの逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform:IDFT)となる。光信号Sは光ファイバ13を通過し、光離散フーリエ変換素子14を通過した後、元のdnに復調され、各光受信器15‐0、15‐1、・・・、15‐(N−1)に入射される。光離散フーリエ変換素子14では、以下の(式4)で表される処理が行われる。
【0033】
【数5】
【0034】
(式3)及び(式4)は、kn≧1となる場合でも対応する離散変換の式が存在するので、kn=1の場合と同様な議論ができることに留意されたい。
【0035】
dnが2値信号、kn=1の場合、光直交周波数分割多重を用いることによって、各サブキャリアのビットレートは1/Tで、総計N/Tのビットレートを実現することができる。すなわちサブキャリア毎に、タイムスロットT毎の低速での処理を行えばよい。時間分割多重(Time Division Multiplexing:TDM)方式においてビットレートN/Tを実現する場合、短光パルスを用いた時間多重分離処理(タイムスロットT/N毎の高速時間多重分離処理)が必要となり、処理装置の負担が大きくなる。また光ファイバ伝送路における波長分散による波形劣化の影響はビットレートの2乗に比例して大きくなり、偏波分散による波形劣化の影響はビットレートの1乗に比例して大きくなる。従って、光直交周波数分割多重信号は、総ビットレートが等しい時間分割多重信号よりも、波長分散の影響は1/N2小さくなり、偏波分散の影響は1/N小さくなる。
【0036】
図4に、本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路の構成例を示す。本実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板27上の、入力導波路(光スプリッタ21の入力ポート)20、光スプリッタ21、導波路(光スプリッタ21の出力ポート)22‐N、・・・、22‐K、・・・、22‐1(ただし、Nは2以上の整数)、遅延線23‐N、・・・、23‐K、・・・、23‐1、位相オフセット付与部24‐N、・・・、24‐K、・・・、24‐1、スラブ型スターカプラ25、出力導波路(スラブ型スターカプラ25の出力ポート)26‐1、・・・、26‐Nから構成されている。
【0037】
光直交周波数分割多重信号S(t)から各サブキャリア信号dn(t)を復調する際、(式4)で示す光離散フーリエ変換が必要となる。簡単のためN=4の場合を考えると、(式4)は以下の(式5)で表される。
【0038】
【数6】
【0039】
ただし、
【0040】
【数7】
【0041】
である。
【0042】
図4の光回路構成を用いることによって、(式5)の位相関係を実現できることを以下に示す。
【0043】
まず、図5を用いてスラブ型スターカプラ25の入出力間の位相関係を説明する。図5において、30‐N、・・・、30‐K、・・・、30‐1(ただし、Nは2以上の整数)は入力ポート、31はスラブ導波路、32‐1、・・・、32‐P、・・・、32‐Nは出力ポートである。中心O1から半径Lf上に出力側スラブ面が配置され、中心O2から半径Lf上に入力側スラブ面が配置されている。通常、スラブ型スターカプラでは、O1、O2を結ぶ線に対し線対称の位置に入出力ポートは配置される。入力ポート30‐K及び入力側スラブ面の交点と、出力ポート32‐P及び出力側スラブ面の交点との距離(入出力ポート間距離)をDとする。中心O1、O2間の距離Lfに対してDを通過するときの光波の相対位相Δφは以下の(式6)で表される。
【0044】
【数8】
【0045】
ただし、nsはスラブ導波路の屈折率であり、λは光波の波長である。
【0046】
ここで、入力ポート、出力ポート番号を、それぞれni、noとする。中心O1、O2間に対する、ni、no間の光波の相対位相差をφno-niとしたとき、
【0047】
【数9】
【0048】
となるように、(式6)のパラメータ値Lf、ns、θ1、θ2を設定する。
【0049】
図4を再び参照すると、入力導波路20から入射する光直交周波数分割多重信号S(t)は、光スプリッタ21によって各導波路22‐N、・・・、22‐1に等しい強度で分配される。分配信号間の位相は等しい。S(gΔt)の信号を同一タイムスロットとして(式4)の演算を実現するために、遅延線23‐Kの23‐Nに対する相対遅延長ΔLkを、
【0050】
【数10】
【0051】
と設定する。ただし、cは導波路中の光速である。また、位相オフセット付与部24‐Kの24‐1に対する相対位相シフト量ξkを、
【0052】
【数11】
【0053】
と設定する。ただし、1≦Q≦N、である。位相オフセットは、導波路の長さの増減、熱光学効果、電気光学効果、紫外光トリミング、光弾性効果を用いるトリミングなどによる導波路屈折率の変化、などによって付与可能である。位相オフセット部を通り、スラブ型スターカプラ25の入力ポートKから出力ポートPへ出射する光波の相対位相差
【0054】
【数12】
【0055】
は、(式7)、(式9)より、2πの整数倍の位相差を無視すると、以下の(式10)で表される。
【0056】
【数13】
【0057】
従って、スラブ型スターカプラ25の隣りあう入力ポートK+1、Kから出力ポートPへ出射する光波の相対位相
【0058】
【数14】
【0059】
は以下の(式11)で表される。
【0060】
【数15】
【0061】
従って、全ての入力ポートから出力ポートPへの光波の入射を考えると、図4の構成を用いることによって(式4)の関係が満たされ、直交周波数分割多重信号の各サブキャリア信号dnは出力導波路26‐1、・・・、26‐Nで分離出力される。出力ポートQの信号はd0(最低周波数のサブキャリア信号)となる。また、出力ポートPの信号は、1≦P<Qの場合、dP+N-Q+1となり、Q≦P≦Nの場合、dP-Qとなる。なお、Q=(N+1)/2の場合(出力ポートQを出力ポートの中央位置に配置する場合)、(式9)よりξk=0となるため、位相オフセット付与部24は不要となる。図4に示すような回路の構成においては、小型かつ入出力ポート数によるサイズの変動が少ない特徴を有するスラブ型スターカプラ25を光離散フーリエ変換の主要素子として用いるため、素子全体を小型化でき、光直交周波数分割多重信号数が増加してもサイズの変動が少ない。今回、入出力ポート数が4、8、10のスラブ型スターカプラの設計・作成を比屈折率差1.5%の石英導波路を用いて行ったが、3種類ともLf=1.5mmで所望の特性が得られ、スラブ導波路自体の大きさには全く変化がなかった。また、図11に示した従来構成の場合、チャネル数が8のときの素子サイズは33×70mm2であったが(非特許文献2を参照)、本発明に係る図4に示す素子では、チャネル数が10に増大しても素子サイズは21×46mm2と半分以下に低減された(両者ともに比屈折率差1.5%の石英導波路を用いた場合)。なお、出力導波路26の各々の特性を理想値に近づけるために、導波路22の途中にマッハツェンダ型干渉計などの可変光アッテネータを配置し、スラブ型スターカプラ25に入射する各光強度を調節しても良い。
【0062】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路における光パルスの様子を示す図である。図6A、図6B、図6Cに、図4のA、B、Cで示した箇所における1タイムスロット分のみの光パルスの様子をそれぞれ示す。図6Cは、d1分離用の出力導波路における光パルスの様子である。横軸は時間tを表し、縦軸の光振幅の値は任意目盛りである。図6においても、簡単のため、N=4の場合について説明する。図6Aで示すような入力光パルスである光直交周波数分割多重信号S(t)は、光スプリッタ21でN分岐される。N分岐された信号は、遅延線23において、図6Bで示すように、cΔtずつ異なる遅延を与えられる。図6Cで示すように、位相オフセット付与部24、スラブ型スターカプラ25において、光離散フーリエ変換に相当する位相が、各光パルスに与えられて、各サブキャリア信号dn(t)が分離出力される。各サブキャリア信号の直交性は同一タイムスロット内のみで成立するので、図6Cでは、一点鎖線で囲まれた部分のみが有効な分離出力部分となり、データ信号のアイパターンもこの部分のみで開く。さらに一点鎖線で囲まれた部分を時間ゲート素子によって切り出せば、ジッタに強いサブキャリア信号を得ることができる。時間ゲート素子としては、電界吸収(Electro−Absorption:EA)効果を用いる半導体素子、強誘電体材料若しくは半導体材料の電気光学効果を用いた干渉計型スイッチ、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)、光信号の光電変換後の電気領域でのゲーティング、周期光パルスによる光ファイバ、強誘電体材料、又は半導体材料中における非線形光学効果などを用いることができるが、小型で導波路への集積化に適し、ゲート時間窓を短く設定することが可能な半導体EA素子が現状では最適であると考えられる。
【0063】
図7に、図4の光スプリッタ21の一例を示す。40‐1、40‐2、40‐3はY分岐導波路である。図4の光スプリッタ21は、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続するものであり、図7では簡単のためS=1、N=4の場合の例を示している。Nが2のべき乗以外の場合、出力のうち2S+1−N個が無駄になるが、Y分岐導波路は良好で安定な1:1の分岐比を実現できるため、光信号の等強度分配に適している。
【0064】
図8に、図4の光スプリッタ21の他の一例を示す。50‐1、50‐2、50‐3は2入力2出力方向性結合器である。図4の光スプリッタ21は、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続するものであり、図8では簡単のためS=1、N=4の場合の例を示している。2入力2出力方向性結合器50−1の入力ポートの一方から光を入力する。Nが2のべき乗以外の場合、図7と同様、出力のうち2S+1−N個が無駄になる。2入力2出力方向性結合器の一部あるいは全部を2入力2出力対称マッハツェンダ型干渉計(2入力2出力結合率方向性結合器)に置き換えることができ、光信号の良好な等強度分配を実現することができる。
【0065】
図4の光スプリッタ21として、他に、N出力の多モード干渉型カプラ又はN入力N出力のスラブ型スターカプラを用いることもできる。
【0066】
図9に、本発明の第2の実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路の構成例を示す。本実施形態では、第1の実施形態で使用した光スプリッタ21の代わりにスラブ型スターカプラ61を使用する。本実施形態に係る光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板66上の、入力導波路(スラブ型スターカプラ61の入力ポート)60‐1、・・・60‐Q、・・・60‐N、第2のスラブ型スターカプラ61、導波路(スラブ型スターカプラ61の出力ポート)62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1、遅延線63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1、第1のスラブ型スターカプラ64、出力導波路(スラブ型スターカプラ64の出力ポート)65‐1、・・・、65‐P、・・・、65‐(N−Q+1)、・・・、65‐Nから構成されている。
【0067】
入力導波路60から入射する光直交周波数分割多重信号S(t)は、第2のスラブ型スターカプラ61によって各導波路62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1に等しい強度で分配される。S(gΔt)の信号を同一タイムスロットとして(式4)の演算を実現するために、遅延線63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1の相対遅延長ΔLkは(式8)と同じ値が付与される。第2のスラブ型スターカプラ61の入力ポートQから出力ポートKへの位相差φ1K-Q、第1のスラブ型スターカプラ64の入力ポートKから出力ポートPへの位相差φ2P-Qは、スラブ型スターカプラ61、64のパラメータ設定によって(式7)のように設定することができ、以下の(式12)で表される。
【0068】
【数16】
【0069】
従って、第1のスラブ型スターカプラ64の隣りあう入力ポートK+1、Kから出力ポートPへ出射する光波の相対位相Δφ2Pは(式12)より以下の(式13)で表される。
【0070】
【数17】
【0071】
従って、第1のスラブ型スターカプラ64の全ての入力ポートから出力ポートPへの光波の入射を考えると、図9の構成を用いることによって(式4)の関係が満たされ、直交周波数分割多重信号の各サブキャリア信号dnは出力導波路65で分離出力される。出力ポートN−Q+1の信号はd0(最低周波数のサブキャリア信号)となる。また、出力ポートPの信号は、1≦P<N−Q+1の場合dP+Qとなり、N−Q+1≦P≦Nの場合にdP-N+Q-1となる。なお、図9の構成の場合、図4の構成で必要であった位相オフセット付与部は不要である。もちろん、出力ポートと出力サブキャリア周波数との関係を調整するため位相オフセットを付与しても良い。
【0072】
図9の構成では小型かつ入出力ポート数によるサイズの変動が少ない特徴を有するスラブ型スターカプラ61、64を光分岐および光離散フーリエ変換の両方の主要素子として用いるため、素子全体を小型化することができ、光直交周波数分割多重信号数が増加してもサイズの変動が少ない。この効果はスラブ型スターカプラの使用が1個のみである図4の構成より大きい。なお、出力導波路65の各々の特性を理想値に近づけるために、導波路62の途中に可変光アッテネータを配置し、第1のスラブ型スターカプラ64に入射する各光強度を調節しても良い。
【0073】
図4の構成と同様、図9の構成においても、出力導波路65の後段に時間ゲート素子を配置しデータ信号の有効な分離出力部分のみを切り出す操作は、ジッタに強いサブキャリア信号を得ることができるので有効である。
【0074】
図10Aに図4、図9の素子の1出力の強度透過率の周波数特性、図10Bに図4、図9の素子の1出力の位相の周波数特性を示す(N=4、T=100ps)。強度透過特性より、分離出力されるサブキャリア信号チャネル(相対周波数:0GHz)では10GHz程度の帯域通過幅を持ち、そのチャネルから10GHzの±1、±2、±3倍離れた不要チャネルでは、消光比が大きくなっている。また40GHz毎に繰り返すFSR(Free Spectral Range)特性を有し、光直交周波数分割多重信号分離フィルタとしての特性を満たしていることがわかる。また、直線位相特性を有しているため位相の周波数微分特性で表される群遅延時間特性は0となり、光パルスの波形劣化は引き起こさない。
【0075】
なお、サブキャリア数と出力導波路チャネル数は通常の用途を想定し両者ともNで等しいと説明したが、必ずしも等しい必要はない。サブキャリア数が出力導波路チャネル数より大きい場合、隣接チャネルのクロストークが残り完全な分離はできないが、出力導波路チャネル数に等しい分のサブキャリアを分離することができる。中心周波数をずらした分離回路を複数用いれば、全サブキャリアの分離が可能となる。サブキャリア数が出力導波路チャネル数より小さい場合、(出力導波路チャネル数−サブキャリア数)に等しい分は常にデータが0のサブキャリアと考えることができるため、1つの分離回路によって、実際のサブキャリアを隣接チャネルのクロストーク無しに完全に分離することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1‐1、1‐2、・・・、1‐J 光送信器
2 波長合波器
3、13 光ファイバ
4 波長分波器
5‐1、5‐2、・・・、5‐J、15‐0、15‐1、・・・、15‐(N−1) 光受信器
10‐0、10‐1、・・・、10‐(N−1) 光源
11‐0、11‐1、・・・、11‐(N−1) 変調器
12 光強度合流器
14 光離散フーリエ変換素子
20、60‐1、・・・、60‐Q、・・・、60‐N、71、75 入力導波路
21 光スプリッタ
22‐N、・・・、22‐K、・・・、22‐1、62‐N、・・・、62‐K、・・・、62‐1 導波路
23‐N、・・・、23‐K、・・・、23‐1、63‐N、・・・、63‐K、・・・、63‐1 遅延線
24‐N、・・・、24‐K、・・・、24‐1 位相オフセット付与部
25、61、64 スラブ型スターカプラ
26‐1、・・・、26‐P、・・・、26‐Q、・・・、26‐N、65‐1、・・・、65‐P、・・・、65‐(N−Q+1)、・・・、65‐N、74、77、79 出力導波路
27、66 導波路基板
30‐N、・・・、30‐K、・・・、30‐1 入力ポート
31 スラブ導波路
32‐1、・・・、32‐P、・・・、32‐N 出力ポート
40‐1、40‐2、40‐3 Y分岐導波路
50‐1、50‐2、50‐3 2入力2出力方向性結合器
72、78 対称マッハツェンダ型干渉計
73 位相調節部
76 U入力U出力光高速フーリエ変換回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(ただし、Nは2以上の整数)のサブキャリアを持つ光直交周波数分割多重信号を分離するための光直交周波数分割多重信号分離回路であって、
前記光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板上の、入力導波路と、該入力導波路に接続される光スプリッタと、該光スプリッタに接続される遅延線導波路と、該遅延線導波路に接続されるスラブ型スターカプラと、該スラブ型スターカプラに接続される出力導波路とから構成され、
入力光をN分岐する前記光スプリッタのN個の出力と、導波路長差が順次ΔL=cT/N(ただし、cは導波路中の光速であり、Tは各サブキャリアのビット時間間隔)異なるN本の前記遅延線導波路の一端とがそれぞれ接続され、
前記N本の遅延線導波路の他端と、N入力N出力の前記スラブ型スターカプラのN個の入力とが接続され、
前記スラブ型スターカプラのN個の出力からN個のサブキャリア信号が分離、出力されることを特徴とする光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項2】
前記光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項3】
前記光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項4】
前記光スプリッタは、N出力の多モード干渉型カプラであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項5】
前記光スプリッタは、第2のN入力N出力のスラブ型スターカプラであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項6】
前記N入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、前記遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される前記スラブ型スターカプラの入力の番号niを1、前記遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される前記スラブ型スターカプラの入力の番号niをNとし、前記スラブ型スターカプラの出力の番号nOを入力の番号とは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、
中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されており、
前記スラブ型スターカプラのK番目の入力に接続される前記導波路にξk=(K−1)(N+1−2Q)π/Nの位相オフセット(1≦Q≦N)が付与されており、
前記スラブ型スターカプラのQ番目の出力から最低周波数のチャネル0のサブキャリア信号が出力されることを特徴とする請求項2に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項7】
前記2つのN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、
前記遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとを1とし、前記遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとをNとし、それ以外の第2のスラブ型スターカプラの入力の番号と第1のスラブ型スターカプラの出力番号nOとをそれらとは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、
中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されていることを特徴とする請求項5に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項8】
出力される前記サブキャリア信号の各々において、回路への入力信号中同一の時間長Tのタイムスロットから生成され時間的に重なった時間長T/Nの部分のみを時間T毎に周期的に取り出すN個の時間ゲート素子が、前記出力導波路に接続されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項1】
N個(ただし、Nは2以上の整数)のサブキャリアを持つ光直交周波数分割多重信号を分離するための光直交周波数分割多重信号分離回路であって、
前記光直交周波数分割多重信号分離回路は、導波路基板上の、入力導波路と、該入力導波路に接続される光スプリッタと、該光スプリッタに接続される遅延線導波路と、該遅延線導波路に接続されるスラブ型スターカプラと、該スラブ型スターカプラに接続される出力導波路とから構成され、
入力光をN分岐する前記光スプリッタのN個の出力と、導波路長差が順次ΔL=cT/N(ただし、cは導波路中の光速であり、Tは各サブキャリアのビット時間間隔)異なるN本の前記遅延線導波路の一端とがそれぞれ接続され、
前記N本の遅延線導波路の他端と、N入力N出力の前記スラブ型スターカプラのN個の入力とが接続され、
前記スラブ型スターカプラのN個の出力からN個のサブキャリア信号が分離、出力されることを特徴とする光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項2】
前記光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置したY分岐導波路を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項3】
前記光スプリッタは、20、21、・・・、2S個(ただし、Sはlog2N−1以上で最小の整数)ずつ並列配置した2入力2出力方向性結合器を順次縦続接続し、右端の2S+1個の導波路のうちN個の導波路を出力とするものであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項4】
前記光スプリッタは、N出力の多モード干渉型カプラであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項5】
前記光スプリッタは、第2のN入力N出力のスラブ型スターカプラであることを特徴とする請求項1に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項6】
前記N入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、前記遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される前記スラブ型スターカプラの入力の番号niを1、前記遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される前記スラブ型スターカプラの入力の番号niをNとし、前記スラブ型スターカプラの出力の番号nOを入力の番号とは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、
中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されており、
前記スラブ型スターカプラのK番目の入力に接続される前記導波路にξk=(K−1)(N+1−2Q)π/Nの位相オフセット(1≦Q≦N)が付与されており、
前記スラブ型スターカプラのQ番目の出力から最低周波数のチャネル0のサブキャリア信号が出力されることを特徴とする請求項2に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項7】
前記2つのN入力N出力のスラブ型スターカプラにおいて、
前記遅延線導波路のうち最長の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとを1とし、前記遅延線導波路のうち最短の導波路と接続される、第2のスラブ型スターカプラの出力の番号と第1のスラブ型スターカプラの入力の番号niとをNとし、それ以外の第2のスラブ型スターカプラの入力の番号と第1のスラブ型スターカプラの出力番号nOとをそれらとは逆順に付与し(ただし、ni、noは整数)、入力側スラブ面の中心をO1、出力側スラブ面の中心をO2とした場合、
中心位置入出力((N+1)/2)間の位相を基準とした入出力間の相対位相φno-niが、φno-ni=(2π/N){ni−(N+1)/2}{no−(N+1)/2}となるように構造パラメータが設定されていることを特徴とする請求項5に記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【請求項8】
出力される前記サブキャリア信号の各々において、回路への入力信号中同一の時間長Tのタイムスロットから生成され時間的に重なった時間長T/Nの部分のみを時間T毎に周期的に取り出すN個の時間ゲート素子が、前記出力導波路に接続されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の光直交周波数分割多重信号分離回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−48172(P2012−48172A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192949(P2010−192949)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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