説明

光硬化性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び微細構造体

【課題】 低揮発性、低粘度で、基板を高精度に加工する光ナノインプリント技術に利用可能な、エッチング耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び微細構造体を提供する。
【解決手段】 (A)光重合性化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、25℃における粘度が20mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物であって、前記(A)光重合性化合物が、(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物を(A)成分全体の質量に対して30〜99質量%、及び(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物を(A)成分全体の質量に対して0.1〜50質量%含有する、光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び微細構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、加工精度が光露光の光源の波長に近づき、リソグラフィ技術も限界に近づいてきた。そのため、さらなる微細化、高精度化を進めるために、リソグラフィ技術に代わり、荷電粒子線装置の一種である電子線描画装置が用いられるようになった。
電子線を用いたパターン形成は、i線、エキシマレーザー等の光源を用いたパターン形成における一括露光方法とは異なり、マスクパターンを描画していく方法をとる。そのため、描画するパターンが多ければ多いほど露光(描画)時間がかかり、パターン形成に時間がかかることが欠点とされている。そのため、メモリ容量が256メガ、1ギガ、4ギガと、集積度が飛躍的に高まるにつれ、パターンが高密度化し、その分パターン形成時間も飛躍的に長くなることになり、スループットが著しく劣ることが懸念される。そこで、電子ビーム描画装置の高速化のために、各種形状のマスクを組み合わせ、それらに一括して電子ビームを照射して複雑な形状の電子ビームを形成する一括図形照射法の開発が進められている。この結果、パターンの微細化が進められる一方で、電子線描画装置の大型化、複雑化が必須となり、装置コストが高くなるという欠点があった。
【0003】
これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術が下記特許文献1及び2、非特許文献1などにおいて開示されている。これは、基板上に形成したいパターンと同じパターンの凹凸を有するモールド(金型)を、被転写基板表面に形成された樹脂膜層に対して型押しすることで所定のパターンを転写するものである。特に特許文献2記載や非特許文献1のナノインプリント技術によれば、シリコンウエハを金型として用い、25ナノメートル以下の微細構造を転写により形成可能であるとしている。
ナノインプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱させ、モールドにより塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱ナノインプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のモールドを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成する光ナノインプリント技術である。特に光ナノインプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、モールド間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を浴びている。光ナノインプリント技術に用いられる光硬化性樹脂について、非特許文献2にPAK−01(東洋合成工業株式会社製)が紹介されている。
光硬化性樹脂において、アクリレートモノマを出発物質とする光重合開始剤入りエッチングレジスト用組成物に関しては特許文献3、4に開示されている。また、エッチング耐性に優れたエッチング用レジスト組成物としては特許文献5、6に開示されている。
なお、光ナノインプリント技術を基板の微細加工に用いる場合のプロセスは以下のとおりである。また、そのフローを図1に示す。
(a)基板1上にスピン塗布法あるいはインクジェット法などにより光硬化性樹脂組成物膜2を形成する。
(b)表面に微細なパターンが形成されたモールド3を光硬化性樹脂組成物膜2表面に押し付ける。これにより、光硬化性樹脂組成物膜2はモールドの形状にパターン化される。
(c)モールド3上部より紫外線を照射させ光硬化性樹脂組成物を硬化させる。この場合モールド3は透明である。透明なモールドの材料としては、通常石英などを用いうる。また、基板1が透明な場合には基板側から紫外線を照射してもよい。
(d)モールド3を硬化された光硬化性樹脂組成物膜2より剥離させる。
(e)パターンを形成する際、通常、パターン化されない層(ベース層)4が残留する。これはベース層と呼ばれる。イオン照射などによるエッチングでベース層4を除去し、レジストパターンを形成する。
(f)レジストパターンをマスクにして基板1をエッチング等により加工する。
(g)レジストパターンを除去する。
以上のプロセスにより光ナノプリント技術を用い基板表面に微細なパターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,259,926号明細書
【特許文献2】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献3】特開平05−98112号公報
【特許文献4】特開平05−100423号公報
【特許文献5】特開2002−156763号公報
【特許文献6】特開平10−153864号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Y.Chou et al.Appl.Phys.Lett.vol.67、p.3314(1995)
【非特許文献2】Yuichi Kurashima,Jpn.J.Appl.Phys.vol.42.p.3871(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3、4に記載の光硬化性樹脂はフォトリソグラフィ法によりパターニングする。フォトリソグラフィ法では、光を照射した部分と、照射していない部分のコントラスト差を利用して、現像時の溶解度を生じさせパターニングするものである。特許文献3、4中にもブラウン管のシャドーマスク形成に使用される光硬化性樹脂について開示されている。ここでは両面に光硬化性樹脂を塗布、ネガフィルムをマスクとして露光現像することでエッチングマスクを形成する。更にウエットハーフエッチングの後、一方のレジストを除去、再度裏止め用樹脂材料として光硬化性の樹脂を塗布し100−200μm幅のエッチング溝に樹脂を流し込み光硬化させている。ここで開示されている光硬化性樹脂組成物の粘度は100−200μmの溝への充填性を考慮し2000〜4000mPa・sのものが開示されている。しかし、光ナノインプリント技術においては室温で液体状態の光硬化性樹脂を基板上に塗布した後、液状の光硬化性樹脂にモールドを押し当ててモールドのナノスケールの凹凸パターンに樹脂を流動させ、光照射により光硬化性樹脂を硬化させパターンを形成する。
また、上記光ナノインプリント法のプロセスからわかるように高精度の形状をパターニングする場合、モールドの凸部と基板との間に形成されるベース層を薄膜化することが非常に重要である。このベース層を除去する際に最終的に残さなければならないパターンも同時に加工されるため、この部分の膜厚が厚い場合、パターン部分への不必要な加工がなされパターン精度の劣化につながる。
2枚の平板に挟まれた樹脂の加圧後の膜厚hに関し、Stephanの式として、下記の関係式1が知られている。
【0007】
【数1】

ここで、H:初期膜厚、t:加圧時間、μ:樹脂粘度、S:加圧面積、P:加圧力である。
この式からも明らかなようにベース層(加圧後の凸部と基板との間に形成される樹脂膜厚)を薄くするためには初期膜厚Hをできるだけ小さくすること、または、樹脂粘度μを小さくすることが有効である。
非特許文献2に記載されている光硬化性樹脂PAK―01は、石英基板上に当該樹脂を塗布後、Siのモールドを押し付け石英基板側より光を照射しSiモールドのパターンを石英基板上に転写している。非特許文献2は、上記光ナノインプリントプロセスの(d)工程までの内容であるため基板の加工については検討されていない。このPAK−01を用い動粘度が72mPa・sで、スピンコート法により塗膜を形成した後、深さが0.1μmのモールドを押し付け、光照射を行った結果、ベース層厚さが約2μmとなりパターン高さが0.1μmのため、エッチング等によるベース層除去時にパターンも消失してしまい、基板加工のためのレジストマスクを形成できなかった。
このように従来の光硬化性樹脂は粘度が高いために初期膜厚が厚く、ベース層を薄膜化できなかった。その結果、基板加工のための光ナノプリント用レジスト材として用いることができなかった。特許文献3、4に記載されている高粘度の光硬化性樹脂を用いてもナノインプリントによるパターニングは困難である。
また、基板加工における有効な方法としてドライエッチング法による基板加工が挙げられる。ドライエッチング法は減圧で、O、CFなどのガスをプラズマにより分解して発生させたイオンやラジカルで基板表面を気化させて除去する方法である。光ナノインプリント技術を用い基板を加工する場合、光硬化性樹脂はドライエッチング時のレジストマスクとして用いられるため、エッチング耐性が必要となる。
【0008】
特許文献5、6にはエッチング耐性に優れたエッチング用レジスト組成物が開示されているが、これらレジスト材はすべてポリマーを有機溶剤により溶解させた後、基板上に塗布、ベーク工程を経て固体のレジスト膜を形成する。この後、露光、現像工程を経てレジストマスクを形成する。しかし、光ナノプリント技術においては前述の様に、室温で液体状態の光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布した後、液状の光硬化性樹脂にモールドを押し当ててモールドの凹凸部分に樹脂を流動させ、光照射により光硬化性樹脂を固化させパターンを形成する。そのため、基板上に形成される樹脂膜は液状でなくてはプロセスが成り立たない。従って、特許文献5、6に開示された従来技術の光硬化性樹脂を光ナノインプリント用樹脂として適用することは困難である。
有機溶剤を用いずにより低い粘度を得るには、一般的にはより小さい分子量を有するモノマ成分を用いる。しかしながら、分子量を小さくし低粘度とすると、一般に液体の沸点も同時に低下するため、モノマ組成物の液膜の蒸発が顕著になり、不都合である。特に、基板表面にインクジェット法やスピンコート法によって展開された液膜は、液膜の小さい体積の割合には極めて大きい表面積を有しているため、大気圧下でも体積あたりの成分の蒸発速度が大きく、また成分組成の変化が無視できなくなる。また塗布に時間がかかる場合、モールドを接触させる前に液膜が蒸発しナノインプリントができなくなる。
また、樹脂組成物中のモノマ成分が分子量の小さい低粘度のモノマのみでは、エッチング耐性が不足しがちであるという問題がある。従って、低揮発性、低粘度であるとともにエッチング耐性にも優れた光硬化性樹脂組成物が求められている。
本発明は、上述したような実状に鑑み、低揮発性でありながら低粘度であり、基板を高精度に加工する光ナノインプリント技術に利用可能な、エッチング耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び微細構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、[1](A)光重合性化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、25℃における粘度が20mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物であって、前記(A)光重合性化合物が、(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物を(A)成分全体の質量に対して30〜99質量%、及び(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物を(A)成分全体の質量に対して1〜70質量%含有する、光硬化性樹脂組成物を提供する。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、低揮発性且つ低粘度であり、基板を高精度に加工する光ナノインプリント技術に適用可能であり、さらにドライエッチング耐性に優れた高精細なパターンを形成することができる。
また、本発明は、[2]前記(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する上記[1]記載の光硬化性樹脂組成物である。
【0010】
【化1】

[一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−A)−又は−(A−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;a+aは0〜8を示す。]
【0011】
【化2】

[一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、m及びmは、それぞれ独立に0〜6の整数を示し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−B)−又は−(B−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;b+bは0〜8を示す。]
【0012】
【化3】

[一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Cは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−C)−又は−(C−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;c+cは0〜8を示す。]
【0013】
【化4】

[一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びnは、それぞれ独立に0〜6の整数を示し、Dは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−D)−又は−(D−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;d+dは0〜8を示す。]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A2)成分として上記特定の化合物を有することにより、さらにドライエッチング耐性に優れた高精細なパターンを形成することができる。
【0014】
また、本発明は、[3]前記(A)光重合性化合物が、さらに(A3)ビニルエーテル化合物を含有する上記[1]又は[2]に記載の光硬化性樹脂組成物である。これにより、硬化パターンのドライエッチング耐性がさらに向上する。
また、本発明は、[4]前記(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物が、環状構造を含む単官能(メタ)アクリレート化合物を含有する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物である。これにより、ドライエッチング耐性がさらに向上する。
また、本発明は、[5]光ナノインプリントリソグラフィに用いられる、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明は、[6]基板上に、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する工程と、表面に微細な凹凸パターンを有するモールドを前記樹脂膜の表面に加圧接触し、該モールドの凹凸パターンを樹脂膜に転写する工程と、光照射により前記樹脂膜を硬化させ、基板上に硬化膜を形成する工程と、前記モールドを硬化膜表面から剥離する工程と、前記硬化膜のモールドの凸部と基板との間に形成されるベース層をエッチングにより除去し、前記基板上に硬化パターンを形成する工程と、を含む、パターン形成方法を提供する。
本発明のパターン形成方法によれば、上記本発明の光硬化性樹脂組成物を用いるため、低揮発性且つ低粘度なことにより、安全に効率よくパターンを形成することができ、さらにドライエッチング耐性に優れた高精細なパターンが得られる。
また、本発明は、[7]前記硬化パターンをマスクとして前記基板をエッチングする工程と、前記硬化パターンを除去する工程と、をさらに含む上記[6]記載のパターン形成方法を提供する。
また、本発明は、[8]上記[6]又は[7]に記載のパターン形成方法により形成された微細なパターンを有する微細構造体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低揮発性でありながら低粘度であり、基板を高精度に加工する光ナノインプリント技術に利用可能な、エッチング耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び微細構造体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光ナノインプリントのプロセスを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。また、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0019】
(光硬化性樹脂組成物)
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A)光重合性化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、25℃における粘度が20mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物である。以下、各成分について詳細に説明する。
本発明の光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、20mPa・s以下であり、好ましくは3〜15mPa・sであり、より好ましくは8〜13mPa・sである。このような粘度とすることにより、硬化前の微細凹凸パターンの形成能、塗布適性およびその他の加工適性を付与でき、光硬化後においては解像性、残膜特性、基板密着性或いは他の諸点において優れた塗膜物性を付与できる。光硬化性組成物の粘度が20mPa・sを超えると、凹凸パターンへの追随性が悪くなり、モールドへ充填されるまでより長い時間や強い加圧が必要となる。
【0020】
本発明で用いる(A)光重合性化合物は、(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物を(A)成分全体の質量に対して30〜99質量%、及び(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物を(A)成分全体の質量に対して1〜70質量%含有する。
なお、本発明の(A)光重合性化合物に含まれる環状構造とは、芳香族環、脂肪族環等のように構造式中に環状の原子配列が含まれている有機化合物の構造であり、炭素環式化合物のほかに、複素環式化合物も含まれる。また、2つまたはそれ以上の環がそれぞれ2個以上の原子を共有した形で一体となっている多環式化合物やスピロ化合物も含まれる。
【0021】
(A1)成分としては、25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物であれば特に制限はないが、例えば、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ネオペンチルアルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(A1)成分は、ドライエッチング耐性を向上させる観点から、環状構造を含む単官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
また、(A1)成分の含有量は、(A)成分全体の質量に対して30〜99質量%であり、50〜90質量%であることが好ましく、70〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が30質量%未満では光硬化性樹脂組成物の粘度又は揮発性が高くなる傾向があり、99質量%を超えるとエッチング耐性が低下する傾向がある。
【0022】
(A2)成分としては、環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
上記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、反応性の観点から水素原子であることが好ましい。Aは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキレン基を示し、−(O−A)−又は−(A−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;a+aは0〜8を示す。
上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、反応性の観点から水素原子であることが好ましい。m及びmはそれぞれ独立に0〜6の整数を示し、本発明の効果をより確実に得る観点から、m及びmは0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。Bは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキレン基を示し、−(O−B)−又は−(B−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;b+bは0〜8を示す。]
上記一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、反応性の観点から水素原子であることが好ましい。Cは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキレン基を示し、−(O−C)−又は−(C−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;c+cは0〜8を示す。
上記一般式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、反応性の観点から水素原子であることが好ましい。n及びnはそれぞれ独立に0〜6の整数を示し、本発明の効果をより確実に得る観点から、n及びnは0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。Dは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキレン基を示し、−(O−D)−又は−(D−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;d+dは、0〜8を示す。
【0028】
(A2)成分としては、上記一般式(1)〜(4)で表される化合物の他、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、シクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、1,4−ベンゼンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上述した(A2)成分は、多官能であることにより単官能の環状構造を含む(メタ)アクリレート化合物を同量含む場合に比べ、ドライエッチング耐性が向上できる。この官能基の数は、原則的には4官能基以上でもよいが、分子サイズが大きくなると粘度が高くなり、数ナノメートルの微細構造体の形成に不利となる傾向があるため、2官能であることが好ましい。
また、(A2)成分の含有量は、(A)成分全体の質量に対して1〜70質量%であり、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。この含有量が1質量%未満ではエッチング耐性が低下する傾向があり、70質量%を超えると光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなる傾向がある。
【0030】
(A)成分は、(A1)成分及び(A2)成分以外の光重合性化合物を含んでいてもよい。(A1)成分及び(A2)成分以外の光重合性化合物としては、光カチオン重合性モノマと比べ硬化速度の速い光ラジカル重合性モノマを含むことが好ましい。光ラジカル重合性モノマとしては、エチレン性不飽和結合を有するものが挙げられ、中でも分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性モノマが好ましく、反応性の観点から、アクリロイル基を有する光ラジカル重合性モノマがより好ましい。
【0031】
(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性モノマとしては、例えば、フェノキシグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化−2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキシルジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイキシプロピルメタクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等があげられる。また、上記モノマが複数重合した(メタ)アクリレートオリゴマを適用することも可能である。これらは単独で2種以上を組み合せて用いることができる。
【0032】
また、(A)成分は、ドライエッチング耐性をより向上させる観点から、さらに分子鎖末端にビニルエーテル基を有する(A3)ビニルエーテル化合物を含有することが好ましい。ビニルエーテル化合物は単独ではラジカル重合を受けないが、アクリレートや無水マレイン酸のような電子吸引性の置換基を持つ化合物と併用することにより効率的に重合し硬化される。
(A3)成分としては、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリールビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテルトリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。また、上記モノマが複数重合したビニルエーテルオリゴマを適用することも可能である。これらは単独で2種以上を組み合せて用いることができる。
特に、上記ビニルエーテル化合物のなかでも、ドライエッチング耐性の観点から、分子鎖中に環状構造を有するものが好ましい。
【0033】
本発明の(A)成分が(A3)成分を含有する場合、その含有量は、ドライエッチング耐性の観点から、(A)成分全体の質量に対して10〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、(A)成分は、硬化性を向上させ、より高精細なパターンを形成可能にする観点から、さらに(A4)3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。(A4)成分としては、例えば、上述した(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性モノマのうち、3官能以上のモノマが挙げられる。
本発明の(A)成分が(A4)成分を含有する場合、その含有量は、硬化性を向上させる観点から、(A)成分全体の質量に対して1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
また、(A)成分は、モールドを硬化した樹脂膜表面から剥離する際の剥離性を向上させる観点から、さらに(A5)分子内にフッ素を有する光重合性化合物を含有することが好ましい。(A5)成分としては、例えば、上述した(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性モノマのうち、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の(A)成分が(A5)成分を含有する場合、その含有量は、硬化性を向上させる観点から、(A)成分全体の質量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明の光硬化性樹脂組成物は常温で液状(25℃における粘度が20mPa・s以下)である必要がある。従って、モノマは勿論、オリゴマーも常温で液体であることが好ましい。このように無溶剤型組成物とすることにより、パターン形成時の収縮や変形を防止することができ、極めて精度の高いパターンを形成することができる。
さらに(A)成分が沸点が240℃未満である光重合性化合物を含む場合、その含有量は、30質量%以下であることが好ましく、0〜15質量%であることがより好ましい。この含有量が30質量%を超えると、基板表面にインクジェット法やスピンコート法によって液膜を塗布した際に、液膜の体積に対して表面積が大きくなるため、成分の蒸発速度が大きくなりナノインプリントに適用し難くなる傾向がある。
なお、(A)成分の含有量は光硬化性樹脂組成物全体の質量に対し、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。(A)成分の含有量が70質量%未満だと微細なパターンの形成能が低下する傾向がある。
【0035】
本発明の(B)光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、この他公知の光重合促進剤又は増感剤等と組み合わせて適用することもできる。
(B)成分は、硬化速度を向上する観点から、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンを含むことが好ましい。
【0036】
なお、(B)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物全体の質量に対し、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、反応性希釈剤を含有してもよい。反応性希釈剤は溶剤としての機能も有するが、硬化時に光重合性化合物と共に硬化するものである。このような反応性希釈剤としては、例えば、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、光硬化性樹脂組成物全体の質量に対し0.01〜1質量%程度のフッ素系界面活性剤を含むものであっても良い。フッ素系界面活性剤としては、パーフロロアルキル含有オリゴマー又はこれを溶媒で溶解したパーフロロアルキル含有オリゴマー溶液、パーフロロアルキル鎖にエトキシ鎖やメトキシ鎖等のアルコキシ鎖が結合した構造のもの、パーフロロアルキル鎖にシロキサンが結合した構造のものなどが挙げられる。この他、市販のフッ素系界面活性剤を用いることもできる。
さらに、光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて少量の有機溶剤、シランカップリング剤等の密着性付与剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール等の重合禁止剤などの添加剤を加えることができる。
【0039】
(パターン形成方法)
次に、本発明のパターン形成方法について説明する。
図1に、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて、光ナノインプリントにより微細構造を作製する工程を示す。各工程について、以下に説明する。
(a)基板1上に、本発明の光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂組成物膜(樹脂膜)2を形成する。
(b)表面に微細な凹凸パターンを有するモールド3を樹脂膜2の表面に押し当てる。これにより、樹脂膜2の表面にはモールドの凹凸パターンが転写される。
(c)透明なモールド3を透して樹脂膜2に活性光線を光照射し、凹凸パターンの転写された樹脂膜2を硬化させ、基板上に硬化膜5を形成する。また、基板1が透明な場合には、基板側から光照射してもよい。
(d)モールド3を硬化膜5から剥離する。
(e)パターンを転写する際、通常、硬化膜にはパターン化されない層(ベース層)4が残留する。このベース層4をエッチング等で除去し、基板上に硬化パターン6を形成する。
(f)硬化パターン6をマスクとして、基板1をエッチング等によりパターン加工する。
(g)基板1から硬化パターン6を除去する。
以上により光ナノプリント技術を用い基板表面に微細なパターンを形成することができる。
【0040】
工程(a)における樹脂膜2の形成方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法等の塗布方法、インクジェット法などが用いられる。
また、基板1としては、特に制限はなく、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコーン、酸化シリコン、アモルファスシリコン等の半導体作製基板などが挙げられる。基板の形状は、板状でもよく、ロール状でもよい。
工程(b)で用いられるモールド3は、転写されるべき微細な凹凸パターンを表面に有するものであり、スタンパに該パターンを形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、フォトリソグラフィ法、電子線描画法等が挙げられ、所望する加工精度に応じて選択される。
モールドの材料としては、強度と要求される精度の加工性を有するものであれば特に制限はない。光透過性の材料としては、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。また、非光透過性の材料としては、セラミック、SiC、シリコン、窒化シリコン、多結晶シリコン、酸価シリコン、アモルファスシリコン、Ni、Cr、Cu等の各種金属材料などが挙げられる。透明性の観点からは、石英が好ましい。
本発明のパターン形成方法において、モールド又は基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。モールドに不透明な材料を用いた場合には、基板に光透過性の材料を適用し、基板側から光照射を行う。
また、これらモールドの表面には樹脂との接着を防止するための離型処理が施されていることが好ましい。表面処理の方法としては特に制限はないが、シリコン系、フッ素系の離型剤等を用いることができ、モールド表面上に数nm厚で形成されていることが好ましい。
モールドの形状は、板状でもよく、ロール状でもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
工程(b)における転写の際のモールドの圧力は、通常、1MPa以下で行うのが好ましい。モールド圧力を上記範囲とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の光硬化性樹脂組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0041】
工程(c)における光照射の光源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等の紫外線を有効に発するもの、あるいはLED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザー等の半導体の微細加工で用いられているレーザー光なども好適に用いることができる。また、光照射量は、光硬化性樹脂組成物の組成によって適宜選択される。
【0042】
工程(d)でモールドが剥離された後、工程(e)において、ベース層4をイオン照射等のエッチングにより除去することにより硬化パターン6が形成される。この際、本来硬化パターンとして残るべき硬化膜の上表面も同様にエッチングを受けるため、予めこうした効果を考慮して微細構造の設計を行なう必要がある。
工程(f)におけるエッチング処理方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、エッチング液によるウェットエッチング、又は減圧下で反応性ガスをプラズマ放電で活性化させるドライエッチングが用いられる。
前記ウェットエッチングを行う場合のエッチング液には、塩化第二鉄/塩酸系、塩酸/硝酸系、臭化水素酸系などを代表例として、多くのエッチング液が開発され使用されている。Cr用には硝酸セリウムアンモニウム溶液や、硝酸セリウム・過酸化水素水の混合液、Ti用には希釈フッ酸、弗酸・硝酸混合液、Ta用にはアンモニウム溶液と過酸化水素水の混合液、Mo用には過酸化水素水、アンモニア水・過酸化水素水の混合物、リン酸・硝酸の混合液、MoW、Alにはリン酸・硝酸混合液、弗酸・硝酸の混合液、リン酸・硝酸・酢酸の混合液ITO用には希釈王水、塩化第二鉄溶液、ヨウ化水素水、SiNxやSiOには緩衝フッ酸、フッ酸・フッ化アンモニウム混合液、Si、ポリSiには弗酸・硝酸・酢酸の混合液、Wにはアンモニア水・過酸化水素水の混合液、PSGには硝酸・フッ酸の混合液、BSGにはフッ酸・フッ化アンモニウム混合液などがそれぞれ使用される。
【0043】
ウェットエッチングの方式としては、スプレー方式でもディップ方式でもよく、エッチングレート、面内均一性、配線幅の精度は、処理温度に大きく依存するため、基板種、用途、線幅に応じて条件を最適化する必要がある。また、前記ウェットエッチングを行う場合は、エッチング液の浸透によるアンダーカットを防止するためにポストベークを行うことが望ましい。通常これらのポストベークは、90〜140℃程度で行うことができる。
【0044】
ドライエッチングは、通常、真空装置内に1対の平行に配置された電極を有し、一方の電極上に基板を設置する平行平板型のドライエッチング装置が用いられる。プラズマを発生させるための高周波電源が基板を設置する側の電極に接続されるか、反対の電極に接続されるかにより、イオンが主として関与する反応性イオンエッチング(RIE)モードとラジカルが主として関与するプラズマエッチング(PE)モードに分類される。
前記ドライエッチングにおいて用いられるエッチャントガスとしては、それぞれの膜種に適合するエッチャントガスが使用される。a−Si/n+やs−Si用には四フッ化炭素(塩素)+酸素、四フッ化炭素(六フッ化硫黄)+塩化水素(塩素)、a−SiNx用には四フッ化炭素+酸素、a−SiOx用には四フッ化炭素+酸素、三フッ化炭素+酸素、Ta用には四フッ化炭素(六フッ化硫黄)+酸素、MoTa/MoW用には四フッ化炭素+酸素、Cr用には塩素+酸素、Al用には三塩化硼素+塩素、臭化水素、臭化水素+塩素、ヨウ化水素等が挙げられる。
【0045】
工程(g)における硬化パターンの除去方法としては、液にて取り除く(ウエット剥離)か、あるいは、減圧下での酸素ガスのプラズマ放電により酸化させてガス状にして取り除く(ドライ剥離/アッシング)か、あるいはオゾンとUV光によって酸化させてガス状にして取り除く(ドライ剥離/UVアッシング)など、公知の剥離方法によってパターンの除去を行うことができる。
なお、本発明に係る微細構造体とは、工程(d)で得られた基板1と表面に微細な凹凸パターンを有する硬化膜5とを備えた構造体(図1(d))、工程(e)で得られた基板1と該基板上に形成された微細な硬化パターン6とを備える構造体(図1(e))、工程(f)で得られた表面に微細な凹凸パターンを有する基板1と微細な硬化パターン6とを備える構造体(図1(f))、及び工程(g)で得られた表面に微細な凹凸パターンを有する基板1(図1(g))を指す。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(光硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す材料及び配合量(単位:g)に基づき、光硬化性樹脂組成物を調製した。(B)成分の光重合開始剤を秤量し、(A)成分の光重合性化合物中に投入し、撹拌、溶解した。その後、ミックスロータにて1時間撹拌し、さらに超音波水槽にて3分間撹拌した。これを0.2μmのメンブランフィルタにて濾過を行い、実施例1〜10及び比較例1〜3に係る光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0047】
(動粘度の測定)
E型粘度計(東京計器株式会社製、製品名「VISCONIC ELD」)を用い、サンプルカップ内に評価試料を1.2mL注入した。次にサンプルカップを本体に取付け、ロータを回転させ粘度を測定した。粘度の測定はすべて25℃で行った。
【0048】
(重量減少率の測定)
評価試料を直径5mmのアルミニウム容器に入れ、示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、製品名「TG−DTA6300」)にて10℃/分で30℃から70℃まで昇温した後、70℃で30分保持する間の重量変化を測定し、重量減少率(%)を求めた。重量減少率は数値が小さいほど樹脂組成物が低揮発性であることを指す。
【0049】
(ドライエッチング耐性の評価)
評価試料を15mm×15mmガラス基板(日本電気硝子株式会社製、製品名「OA−10」)上に0.2μL滴下した後、このガラス基板の上に予め表面をオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製、製品名)で離型処理した15mm×15mmガラス基板を載せ、減圧中で500W超高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製、製品名「ML−501D/B」)を用いて波長365nmの光をガラス基板を透過して3J/cm照射した。離型処理を行った方のガラス基板を剥離して硬化膜を形成し、硬化膜の一部をポリイミド粘着テープによりマスキングして評価サンプルとした。
リファレンスとして、エッチングレジストによく用いられるOFPR−800(東京応化工業株式会社製、製品名)を用いた。15mm×15mmガラス基板(日本電気硝子株式会社製、OA−10)上に、リファレンスの試料を0.1g滴下した後、スピンコータ(ミカサ株式会社製、1H−DX2)で500rpm、10秒予備回転の後、2000rpm、30秒、2500rpm、3秒の本回転を行った。この上に予め表面をオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製、製品名)で離型処理した15mm×15mmガラス基板を載せ、上記と同様にしてリファレンスサンプルを作製した。
前記評価サンプル及びリファレンスサンプルをドライエッチャ(新港精機株式会社製、EXAMターボ付RIEエッチング装置)の処理室に導入した後、CHFガスを流量50mL/分、圧力3Pa、出力100Wの条件で900秒処理後、マスキングテープを剥がし、処理面と非処理面の段差を段差計(Veeco社製、Dektak 200V−Si)を用いてそれぞれ測定した。
処理面と非処理面の段差は小さいことが望ましいが、条件の僅かな違いによって値がばらつきやすい。そこで、評価サンプルの段差(X)をリファレンスサンプルの段差(Y)で割り、X/Yの値をエッチングレートとして算出した。エッチングレートの値は小さいほどドライエッチング耐性に優れる。
【0050】
(硬化性評価)
予め表面をオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製、製品名)で離型処理した直径160nm、深さ400nmのトレンチを有するシリコン製のモールドの上に評価試料を0.05μL滴下した後、前記モールド及び評価試料上に15mm×15mmガラス基板を載せた。減圧中で500W超高圧水銀灯を用いて波長365nmの光を、ガラス基板を透過して0.1J/cm照射した。光照射後、このモールドを剥離し、原子間力顕微鏡(AFM)(Veeco社製、Nanoscope D5000)を用いて基板表面に存在する硬化されたレジストの形状を観察し、以下のようにして評価した。
○:レジストは完全に硬化し、モールドのパターン形状とほぼ同一のピラーが形成
△:レジストが一部硬化していないか、ピラー形状がモールドと一部異なる
×:レジストがほぼ硬化していないか、ピラーが全体的に形成されていない
【0051】
(離型性)
離型性は、硬化性評価に用いたモールドを原子間力顕微鏡(AFM)(Veeco社製、Nanoscope D5000)で測定し、使用前後でトレンチ深さの変化を調べて評価した。硬化物がモールドに残留するとトレンチの深さが使用前と使用後で変化する。
○:転写前と比べ深さ変化なし
△:一部トレンチに樹脂付着あり
×:全体に樹脂付着あり
【0052】
【表1】

【0053】
表1で用いた材料を以下に示す。
SR339A:2−フェノキシエチルアクリレート(SARTOMER社製、製品名)、
SR506D:イソボルニルアクリレート(SARTOMER社製、製品名)、
A−NPG:ネオペンチルアルコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名)、
FA−BZA:ベンジルアクリレート(日立化成工業株式会社製、製品名)、
CyHDM−DA:1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、
BzDM−DA:1,4−ベンゼンジメタノールジアクリレート、
H−BisA−DA:水添ビスフェノールAジアクリレート、
ADM−DA:1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、
X−A−101:1−アダマンチルアクリレート、
TDM・DVE:トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製、製品名)、
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-TMPT)、
8FDA:2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキシルジアクリレート(SynQuest社製、製品名)、
I−907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、製品名)。
【0054】
表1から明らかなように、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いた実施例1〜11は低揮発性且つ低粘度であり、さらにドライエッチング耐性に優れると同時に、微細構造の形成が可能である。特に実施例1〜9は、硬化性及び離型性にも優れる。
本発明の(A2)成分を用いない比較例1、2は、エッチング性、硬化性で劣り、(A1)成分の配合量が少ない比較例3は、揮発性が大きく、光ナノインプリント技術に支障を生じるが、(A1)成分と(A2)成分を併用し、配合量を適量にした実施例では、光ナノインプリント技術により基板を高精度に加工することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…基板
2…光硬化性樹脂組成物膜(樹脂膜)
3…モールド
4…ベース層
5…硬化膜
6…硬化パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光重合性化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、25℃における粘度が20mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)光重合性化合物が、(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物を(A)成分全体の質量に対して30〜99質量%、及び(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物を(A)成分全体の質量に対して1〜70質量%含有する、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A2)環状構造を含む多官能(メタ)アクリレート化合物が、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−A)−又は−(A−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;a+aは0〜8を示す。]
【化2】

[一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、m及びmはそれぞれ独立に0〜6の整数を示し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−B)−又は−(B−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;b+bは0〜8を示す。]
【化3】

[一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Cは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−C)−又は−(C−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;c+cは0〜8を示す。]
【化4】

[一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びnはそれぞれ独立に0〜6の整数を示し、Dは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、−(O−D)−又は−(D−O)−で表されるアルキレンオキシド基の繰り返し総数;d+dは0〜8を示す。]
【請求項3】
前記(A)光重合性化合物が、さらに(A3)ビニルエーテル化合物を含有する、請求項1の又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A1)25℃における粘度が15mPa・s以下であり、沸点が240℃以上である光重合性化合物が、環状構造を含む単官能(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
光ナノインプリントリソグラフィに用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
基板上に、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する工程と、
表面に微細な凹凸パターンを有するモールドを前記樹脂膜の表面に加圧接触し、該モールドの凹凸パターンを樹脂膜に転写する工程と、
光照射により前記樹脂膜を硬化させ、基板上に硬化膜を形成する工程と、
前記モールドを硬化膜表面から剥離する工程と、
前記硬化膜のモールドの凸部と基板との間に形成されるベース層をエッチングにより除去し、前記基板上に硬化パターンを形成する工程と、
を含む、パターン形成方法。
【請求項7】
前記硬化パターンをマスクとして前記基板をエッチングする工程と、
前記硬化パターンを除去する工程と、
をさらに含む、請求項6記載のパターン形成方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のパターン形成方法により形成された微細なパターンを有する微細構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159369(P2010−159369A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3744(P2009−3744)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】