説明

光硬化性組成物およびそれを用いた硬化物の製造方法

【課題】基板との密着性に優れた光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)光重合性単量体と、(B)光重合開始剤と、(C)シランカップリング剤と、(D)重量平均分子量が30〜1000である酸とを含む、光硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物およびそれを用いた硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法は、光ディスク製作では良く知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的に、モールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
インプリント法として、特に透明モールドを通して光を照射し、インプリント用硬化性組成物を光硬化させる光インプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる点で有用である(特許文献1)。最近では、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製に応用したり、液晶ディスプレイのトランジスタの作成、セル内保護膜等に適用しようとするものであり、実用化への取り組みが活発化している。
かかる状況のもと、より光インプリント特性に優れた光硬化性組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−91816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光インプリント用組成物に求められる特性の1つとして、基板に対する密着性(基板密着性)が挙げられる。基板密着性は、光インプリントに限らず、種々の分野で検討されている。例えば、レジスト材料などでは、しばしば、熱による化学反応を利用して、レジスト材料と基板を密着させる。しかしながら、インプリントに用いる場合、基板上に組成物を塗布し、すぐにモールドと接触させ露光硬化し、直後にモールドを剥離するというインプリントの特性から、組成物と基板の密着性には即効性が求められる。すなわち、組成物を基板に適用し露光するだけで密着性が発現することが好ましい。
本発明は、かかる問題点を解決することを目的としたものであって、即時の基板密着性に優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、発明者が鋭意検討した結果、驚くべきことに、光硬化性組成物に、シランカップリング剤と重量平均分子量が30〜1000である酸を添加することにより、即時の基板密着性を向上させることが可能であることを見出した。従来、酸を光硬化性組成物に添加することは問題があると考えられていた。これは、酸がイオン化し、最終製品の絶縁性に悪影響を及ぼすと考えられていたためである。また、光硬化性組成物の基板密着性を向上させるために、密着性を向上させるための添加剤を添加すると、インプリントの分野では、基板のみならず、モールドとの密着性も高くなってしまう点が懸念されていた。すなわち、モールドとの離型性が著しく劣ることが予測されていた。しかしながら、本発明の手法では、モールドからの剥離については、離型剤の添加やモールドの材料の選択などにより問題なく解決できることが分かった。特に、本発明者が検討したところ、シランカップリング剤が光硬化性組成物塗布層中に均一に存在している方が、基板の選択の幅が広がり、有益であることが分かった。すなわち、本発明の構成は、当業者の技術常識に従えば、種々の問題点を含んでいるように思われたが、現実にはこれらの問題点を全てクリアしており、かつ、即時に基板に密着させることができる組成物である。具体的には、以下の手段により本発明の課題は解決された。
【0007】
(1)(A)光重合性単量体と、(B)光重合開始剤と、(C)シランカップリング剤と、(D)重量平均分子量が30〜1000である酸とを含む、光硬化性組成物。
(2)(D)重量平均分子量が30〜1000である酸のpKaが3以下である、(1)に記載の光硬化性組成物。
(3)(D)重量平均分子量が30〜1000である酸が非重合性化合物である、(1)または(2)に記載の光硬化性組成物。
(4)(D)重量平均分子量が30〜1000である酸が、スルホン酸および/またはリン酸である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(5)(D)重量平均分子量が30〜1000である酸の含量が、固形成分の合計量の1重量%以下である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(6)(C)シランカップリング剤の含量が、固形成分の合計量の8重量%以上である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(7)インプリント用である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(8)(C)シランカップリング剤が有する加水分解性基と(D)重量平均分子量が30〜1000である酸のモル比が、1500:1〜10:1である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(9)前記組成物が溶剤を実質的に含まない、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(10)(A)光重合性単量体が(メタ)アクリレートである、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(11)さらに、離型剤を含む、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(12)さらに、酸化防止剤を含む、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いることを特徴とする硬化物の形成方法。
(14)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を基板上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
(15)前記光硬化性組成物の基板上への適用を塗布により行う、(14)に記載の硬化物の製造方法。
(16)前記基板が、石英基板、ガラス基板、金属基板または金属酸化物基板である、(14)または(15)に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、基板との密着性を即時に高めることが可能な、光硬化性組成物を提供可能となった。また、本発明では、基板と光硬化性組成物の密着性を高めるための、基板の表面処理などが不要であり、作業工程を削減できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
また、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表し、“(メタ)アクリル”は“アクリル”および“メタクリル”を表し、“(メタ)アクリロイル”は“アクリロイル”および“メタクリロイル”を表す。さらに、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”は同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
【0011】
[光硬化性組成物]
本発明の光硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、(A)光重合性単量体と、(B)光重合開始剤と、(C)シランカップリング剤と、(D)重量平均分子量が30〜1000である酸とを含むことを特徴とする。このような手段を採用することにより、重量平均分子量が30〜1000である酸が、シランカップリング剤が有する加水分解性基の加水分解を促進し、これによって、基板表面の水酸基との反応が促進する。
本発明の光硬化性組成物は、インプリントに好ましく用いられ、ナノインプリントにより好ましく用いられる。
【0012】
また、本発明の光硬化性組成物は、光インプリントリソグラフィに広く用いることができ、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)本発明の組成物は、室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい、
(2)本発明の組成物を硬化した後の硬化膜は、機械的性質に優れ、塗膜と基材との密着性に優れ、かつ、塗膜とモールドとの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる(良好なインプリント性)、
(3)塗布均一性に優れるため、大型基材への塗布・微細加工分野などに適する、
(4)光硬化性、耐熱性、弾性回復率などの機械特性が高いので、各種の永久膜としてとして好適に用いることができる、
(5)電圧特性に優れるため、電子回路用材料などに適する、
等の特徴を有するものとすることができる。
【0013】
このため、本発明の光硬化性組成物は、例えば、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用することができる。
【0014】
本発明の光硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明の光硬化性組成物は、25℃における粘度が、3〜20mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは3〜15mPa・sであり、特に好ましくは3〜10mPa・sである。本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性や膜の機械的強度をより向上させることができる。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる。また、粘度が3mPa・s以上の組成物は、粘度3mPa・s未満の組成物に較べて調製も容易である。一方、本発明の組成物の粘度を20mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなる。また、本発明の組成物の粘度が20mPa・sを超えると、微細なパターンの形成に粘度が影響を与える。
【0015】
一般的に、組成物の粘度は、粘度の異なる各種の単量体、オリゴマー、ポリマーをブレンドすることで調整可能である。
【0016】
(A)光重合性単量体
本発明の光硬化性組成物には光重合性単量体が含有される。本発明の組成物は、光重合性単量体を含有することで、光照射後に良好なパターン精度(インプリント性)を得ることができる。本発明において、「光重合性単量体」とは、光照射によって重合反応を起こし、高分子量体を形成することのできる単量体を意味する。
【0017】
本発明で用いられる光重合性単量体は、組成物の粘度の調整の観点から、300mPa・s以下の粘度を有する化合物が好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましく、20mPa・s以下が特に好ましい。
【0018】
また、本発明における光重合性単量体は、光ラジカル重合性官能基を有することが好ましく、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基 スチリル基が好ましく、(メタ)アクリレート基がより好ましい。本発明の組成物に含まれる光重合性単量体は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明の組成物は、他の光重合性単量体(例えば、カチオン性重合性基を有する重合性モノマー)を含んでいても良いが、含んでいないことが好ましい。
【0019】
また、硬化膜の機械特性付与の観点からは、2官能以上の多官能単量体を用いることが好ましい。このような多官能単量体は必然的に分子量が大きくなるため粘度が高く、組成物の高粘度化によりパターン精度が低下することもある。そこで、本発明に用いられる光重合性単量体は、粘度の調整用の低粘度モノマーと硬化膜の機械特性付与の為の多官能モノマーとの組み合わせや、本発明におけるオキセタン化合物や官能性酸無水物の組み合せを考慮して、総合的に選択される。
【0020】
本発明の光硬化性組成物において、全組成物中における光重合性単量体の含有量は、光照射後のパターン精度の観点から、20〜95質量%が好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。
【0021】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、エチルオキセタニルメチルアクリレートが例示される。
【0022】
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(ジ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、が例示される。
【0023】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0024】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0026】
また、本発明では、光重合性単量体としてウレタン(メタ)アクリレートを用いることもでき、例えば、新中村化学社から入手可能なU−2PPA、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−4H、U−6H、U−108A、U−200PA、U−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−122P、UA−5201、UA−512、UA−W2A、UA−W2、UA−7000、UA−7100、UA−7200(いずれも登録商標)や、共栄社化学社から入手可能なAH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、UF−8001Gなどがあり、それ以外にも任意の構造を持つウレタン(メタ)アクリレートを選択することができる。
【0027】
本発明の組成物において、光重合性単量体として(メタ)アクリレート系化合物を用いる場合、アクリレート系化合物が硬化性の観点から好ましい。
【0028】
次に、本発明における光重合性単量体の好ましいブレンド形態について説明する。
前記1官能の重合性不飽和単量体は、組成物粘度低下のために有効であり、通常、全重合性不飽和単量体の10〜100質量%の範囲で添加される。好ましくは、10〜80質量%、より好ましくは、10〜60質量%、さらに好ましくは、10〜30質量%の範囲で添加される。
前記不飽和結合含有基を2個以上有する単量体(多官能重合性不飽和単量体)は、硬化膜の機械特性を向上させるために有効であり、全重合性不飽和単量体の好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは、70質量%以上の範囲で添加される。多官能重合性不飽和単量体の含量の上限値は特に定めるものではないが、通常は、95質量%以下である。特に、不飽和結合含有基を2個有する重合性不飽和単量体(2官能重合性不飽和単量体)を50質量%以上含ませることにより、硬化後の弾性回復率が改善された組成物が得られ好ましい。2官能重合性不飽和単量体の含量の上限値は特に定めるものではないが、通常は、95質量%以下である。
【0029】
(B)光重合開始剤
本発明の光硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤は、通常、光ラジカル重合開始剤である。本発明の組成物は、光照射により重合反応を開始させる光重合開始剤を含むことで、光照射後のパターン精度を良好なものとすることができる。光重合開始剤の含有量としては、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜12質量%であり、特に好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記光重合開始剤の割合が0.1質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0030】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0031】
(C)シランカップリング剤
本発明の組成物には、シランカップリング剤を含む。本発明で用いられるシランカップリング剤の種類は特に定めるものではないが、ビニルシラン、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、クロロプロピルシラン、メルカプトシラン、ポリフルフィドシラン、イソシアネートシランが挙げられる。光重合性単量体として(メタ)アクリレートを用いる場合、メタクリロキシシランおよび/またはアクリロキシシランを用いることが好ましい。このようなシランカップリング剤を用いることにより、優れた基板密着性を発現させることが可能になる。
本発明の組成物に用いることのできるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、分子量が150〜400のものが好ましい。
【0032】
シランカップリング剤は、本発明の光硬化性組成物の固形分全量中に、好ましくは8質量%以上、より好ましくは、10重量%以上の割合で配合する。上限値については特に定めるものではないが、通常は、30重量%以下である。
【0033】
(D)重量平均分子量が30〜1000である酸
本発明の光硬化性組成物は、重量平均分子量が30〜1000である酸を含む。酸の種類は特に定めるものではないが、酸のpKaが3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。pKaの下限値としては特に定めるものではないが、0以上であることが好ましい。酸のpKaを3以下とすることにより、基板に塗布した段階で強く即効性のある基板密着性を得られる。
本発明で用いる重量平均分子量が30〜1000である酸は、非重合性化合物であることが好ましい。非重合性化合物を用いることにより、優れた基板密着性が得られる。本発明で用いられる酸の重量平均分子量は、30〜500の範囲であることが好ましく、50〜400であることがより好ましく、30〜300であることが特に好ましい。分子量が1000よりも大きいと、酸の拡散が抑制され基板界面での密着性を効果的に発現させることができない。
重量平均分子量が30〜1000である酸の含量は、本発明の組成物の固形成分の合計量の1重量%以下であることが好ましく、0.6重量%以下であることがより好ましく、0.4重量%以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではないが、0.01重量%以上であることが好ましく、0.03以上がより好ましい。重量平均分子量が30〜1000である酸の含量を1重量%以下とすることにより、塗布性が向上する傾向にある。
【0034】
以下に、本発明で好ましく用いられる重量平均分子量が30〜1000である酸を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。本発明で用いる酸は、好ましくは、スルホン酸類、リン酸類、カルボン酸類であり、スルホン酸および/またはリン酸がより好ましい。
【0035】
【表1】

【0036】
本発明において、(C)シランカップリング剤が有する加水分解性基と(D)重量平均分子量が30〜1000である酸のモル比が、1500:1〜10:1であることが好ましく、500:1〜10:1であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、組成物の保存安定性を悪化させること無く基板密着性を改善できる。
また、本発明における(C)シランカップリング剤と(D)重量平均分子量が30〜1000である酸の重量比は、1000:1〜10:1が好ましく、300:1〜10:1であることがより好ましい。
【0037】
(酸化防止剤)
さらに、本発明の光硬化性組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0038】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035FF、
1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、
3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503、LA52、LA57、LA62、LA63、LA67、LA68LD、LA77((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0039】
(離型剤)
本発明の光硬化性組成物は離型剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる離型剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の離型剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。離型剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、離型剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。特に、本発明では、表面にヒロドキシ基を有するモールドを用いた場合に、モールド離型性を確保できる点で有利である。
前記離型剤としては、界面活性剤が例示され、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0040】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341、KF−352A、KF−6012(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0041】
(その他の成分)
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて、非重合性分子、ポリマー成分、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、光塩基発生剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、塩基性化合物、および、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
本発明の組成物には、密着性の付与や硬化膜物性の制御を目的として、前記非重合性分子を添加することができる。このような非重合性分子の添加量は、光重合性分子の添加量を本発明の範囲に制御できる範囲で決めることができる。このような非重合性分子として、例えば、セバシン酸ジオクチルのようなアルキルエステル、(チオ)ウレア化合物、有機微粒子、無機微粒子などを挙げることができる。
【0042】
本発明の光硬化性組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0043】
本発明の光硬化性組成物には紫外線吸収剤を用いることもできる。前記紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327
、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0044】
本発明の光硬化性組成物には光安定剤を用いることもできる。前記光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイ
ギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0045】
本発明の光硬化性組成物には老化防止剤を用いることもできる。前記老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、F
R、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0046】
本発明の光硬化性組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0047】
本発明の光硬化性組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加してもよい。前記密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2‘−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0048】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。熱重合開始剤は、組成物中の好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。熱重合開始剤の添加は効果を得るためには、3.0質量%以上が好ましい。
【0049】
本発明の光硬化性組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0050】
本発明の光硬化性組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0121に記載のものを好ましく採用することができる。
【0051】
また、本発明の光硬化性組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0052】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0053】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0054】
さらに本発明の光硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0055】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0056】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0057】
なお、本発明の光硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0058】
また、本発明の光硬化性組成物には溶剤を用いることもできるが、実質的に溶剤を含まない方が好ましい。ここで、実質的に溶剤を含まないとは、不純物等、意図せずに含まれてしまう溶剤をいい、例えば、全組成物中、3質量%以下であることをいい、好ましくは1質量%以下である。すなわち本発明の組成物は、好ましくは前記のような1官能およびまたは2官能の他の単量体を反応性希釈剤として含むため、本発明の組成物の成分を溶解させるための溶剤は、必ずしも含有する必要がない。このように、本発明の組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、光硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであればよく、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0059】
本発明で用いることができる溶剤の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0060】
本発明の組成物は、分子量が1000以上の化合物の含量が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
本発明の光硬化性組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
【0062】
[硬化物の製造方法]
次に、本発明の光硬化性組成物を用いた硬化物(特に、微細凹凸パターン)の製造方法について説明する。本発明の光硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。特に本発明においては、硬化物の硬化度を向上させるために、さらに、光照射後にパターン形成層を加熱する工程を含むことが好ましい。即ち、本発明の光硬化性組成物は、光または、光および熱によって硬化させることが好ましい。
本発明の硬化物の製造方法によって得られた硬化物は、パターン精密度、硬化性、光透過性に優れ、特に、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材として好適に用いることができる。
【0063】
具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を適用し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。光照射および加熱は複数回に渡って行ってもよい。本発明のパターン形成方法(硬化物の製造方法)による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0064】
なお、本発明の光硬化性組成物の応用として、基板または、支持体上に本発明の組成物を適用し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもでき
る。
【0065】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下である。
【0066】
以下において、本発明の光硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法(パターン形成方法(パターン転写方法))について具体的に述べる。
本発明の硬化物の製造方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に適用してパターン形成層を形成する。
本発明の光硬化性組成物を基材上に適用する際の方法としては、一般によく知られた適用方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、形成することができる。本発明では、塗布により設けることが好ましい。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。尚、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。
【0067】
本発明の組成物を適用するための基板は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板などが例示される。本発明では、基板の表面にヒロドキシ基を有することが必要であるが、ガラスのように、本来的に、表面にヒドロキシ基を有している基板を用いてもよいし、表面にヒドロキシ基を付与した基板であってもよい。本発明では、特に、石英基板、ガラス基板、金属基板、金属酸化物基板がより好ましい。
基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0068】
次いで、本発明の硬化物の製造方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを(押圧)押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
【0069】
本発明の光硬化性組成物を用いた光インプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明の光硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押圧し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0070】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよく、離型性に優れるものが好ましい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示され、ガラス、石英、透明金属蒸着膜などのように親水的表面を有するモールド材については、シリコーン系、フッ素系などの離型処理を行うことが望ましい。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等が挙げられる。
【0071】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよく、離型性に優れるものが好ましい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。蒸着膜、金属基板、シリコーン基板などのように親水的表面を有するモールド材については、上述のようなシリコーン系、フッ素系などの離型処理を行うことが望ましい。
【0072】
モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0073】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明の硬化物の製造方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることによって、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の光硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0074】
本発明の硬化物の製造方法において、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいて、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明の硬化物の製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲である。
【0075】
本発明の光硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0076】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上であると、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生するのを防止できる。また。露光量が1000mJ/cm2以下であると組成物の分解による永久膜の劣化を抑制することができる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0077】
本発明の硬化物の製造方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程(ポストベーク工程)を含むのが好ましい。尚、加熱は、光照射後のパターン形成層からモールドを剥離する前後のいずれに行ってもよいが、モールドの剥離後にパターン形成層を加熱するほうが好ましい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0078】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光インプリントリソグラフィ用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
【0079】
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光インプリントリソグラフィ用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。
【0080】
本発明の光硬化性組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。光硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0081】
[硬化物]
上述のように本発明の硬化物の製造方法によって形成された本発明の硬化物は、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0082】
本発明の硬化物の弾性回復率は、液晶表示装置用部材として好適に用いる観点から、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0083】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の光硬化性組成物は、半導体集積回路、記録材料、液晶表示装置用部材として適用することができ、その中でも液晶表示装置用部材であることが好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することがより好ましい。
本発明のインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明の硬化物の製造方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0085】
(光硬化性組成物の調製)
後述する表に記載の組成のとおり、光重合性単量体、光重合開始剤、シランカップリング剤、重量平均分子量が30〜1000である酸および必要に応じて酸化防止剤およびシリコーンオイルを配合して実施例および比較例の光硬化性組成物を調製した。尚、表における単位は質量部である。使用した材料は以下のとおりである。
【0086】
<光重合性単量体>
M−1:メタクリル酸シクロヘキシル(東京化成製)
M−2:ビスコート#230(1,6ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学製)
M−3:ビスコート#260(1,9ノナンジオールジアクリレート、大阪有機化学製)
M−4:アロニックスM309(トリメチロールプロパントリアクリレート、東亞合成製)
M−5:NKオリゴ U−4HA(4官能ウレタンアクリレート、新中村化学製)
M−6:FA−511AS(ジシクロペンテニルアクリレート、日立化成工業製)
【0087】
<光重合開始剤>
P−1:Luricin TPO−L(BASF製)
【0088】
<シランカップリング剤>
S−1:KBM5103(信越化学製)
S−2:KBM503(信越化学製)
【0089】
<重量平均分子量が30〜1000である酸>
A−1:メタンスルホン酸(Mw96、pKa1.75、東京化成製)
A−2:p−トルエンスルホン酸(Mw172、pKa1.99、東京化成製)
A−3:ポリリン酸(Mw178、pKa2.12、東京化成製)
A−4:亜硝酸(Mw47、pKa3.4、東京化成製)
A−5:アニリンスルホン酸(Mw172、pKa3.23、東京化成製)
A−6:ポリリン酸(Mw418、pKa2.12)
A−7:ポリリン酸(Mw818、pKa2.12)
A−8:ポリリン酸(Mw1218、pKa2.12)
A−9:ベンジルメタクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸=80/20の共重合体(Mw600、pKa2.32)
A−10:ベンジルメタクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸=80/20の共重合体(Mw1200、pKa2.44)
A−11:ベンジルメタクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸=80/20の共重合体(Mw2400、pKa2.58)
【0090】
<酸化防止剤>
AO−1:Sumilizer GA-80(住友化学製)
AO−2:Irganox 1035FF(チバ製)
【0091】
<溶剤>
Y−1:EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル、東京化成製)
【0092】
<シリコーンオイル>
O−1:KF−6012(信越シリコーン製)
【0093】
得られた組成物を基板に塗布し、基板密着性および塗布性を評価した。ここで、基板としては、以下のものを用いた。
実施例1〜23、30〜34、比較例1〜4、11〜13は、ガラス基板(旭硝子株式会社製、イーグル2000)を基板として用いた。
実施例24、25、比較例5、6は、ITO付き基板(日本板硝子株式会社製、高温成膜ITO付きガラス45Ω)のITO表面に設けた。
実施例26、27、比較例7、8は、PET基板上に蒸着により窒化シリコン膜(厚さ:1μm厚)を設け、その表面に設けた。
実施例28、29、比較例9、10は、カラーフィルター(富士フイルム製、トランサー)の表面に設けた。
【0094】
<基板密着性>
基板上に3μm厚となるように光硬化性組成物を塗布し、150mJのUV露光で硬化させた後、JIS K5600に記載の100マスクロスカットテストにて、剥がれた数をカウントし、以下のとおり評価した。
5:100/100
4:51/100〜99/100
3:21/100〜50/100
2:1/100〜20/100
1:0/100
【0095】
<塗布性>
基板上にスピンコートで、3μm厚となるように塗布したときの面状を目視にて評価した。
5:塗布ムラなし
4:端部にわずかなハジキ、塗布ムラあり
3:端部にハジキ、塗布ムラあり
2:全体的にハジキ、塗布ムラあり
1:ハジキ、ムラがひどく製膜できない
【0096】
<インプリント性>
レジストに転写されたパターンがモールドの形状をどの程度再現できているかを評価した。具体的には、各組成物について、膜厚3.0μmとなるように上記基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kN、露光中の真空度は10Torr(約1.33×104Pa)の条件で、モールドとして、100nmの矩形ホールパターンを持つNIM-UH100(NTT-ATナノファブリケーション社製)のモールドに、T&K社のNANOS-B離型処理を施したものを用いて押圧し、さらに、モールドの表面から150mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。さらに、得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱して完全に硬化させた。転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下の基準に従って評価した。
5:モールド形状の転写率95%以上
4:モールド形状の転写率90%以上〜95%未満
3:モールド形状の転写率80%以上〜90%未満
2:モールド形状の転写率70%以上〜80%未満
1:モールド形状の転写率70%未満
【0097】
<モールド離型性>
インプリント装置にて、モールドと基板を剥離する時の剥離力を測定した。光硬化性組成物(5μL)を基板上に塗布し、モールド圧着後、ORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)で照度10mW/cm2で露光量150mJ/cm2の条件で露光した。基板とモールド間を20μm/秒の速さで引き離し、この時の最大剥離力を計側し、モールド剥離力とした。単位は[N(ニュートン)]で表した。
【0098】
これらの結果を下記表に示す。下記表から明らかなとおり、本発明の光硬化性組成物は、基板密着性に優れたものであることが分かった。さらに、本発明の硬化性組成物は、塗布性、インプリント性およびモールド離型性に優れた組成物であり、光インプリントに好ましく用いられることが分かった。
さらに、この効果は、特に、(D)重量平均分子量が30〜1000である酸として、pKaが3以下のものを用いることにより、顕著であることが分かった。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の光硬化性組成物は、インプリント用硬化性組成物のほか、ハードコート用、エッチングレジスト用、LCDパネル永久部材用などの硬化性組成物にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光重合性単量体と、(B)光重合開始剤と、(C)シランカップリング剤と、(D)重量平均分子量が30〜1000である酸とを含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
(D)重量平均分子量が30〜1000である酸のpKaが3以下である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
(D)重量平均分子量が30〜1000である酸が非重合性化合物である、請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
(D)重量平均分子量が30〜1000である酸が、スルホン酸および/またはリン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
(D)重量平均分子量が30〜1000である酸の含量が、固形成分の合計量の1重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
(C)シランカップリング剤の含量が、固形成分の合計量の8重量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
インプリント用である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
(C)シランカップリング剤が有する加水分解性基と(D)重量平均分子量が30〜1000である酸のモル比が、1500:1〜10:1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
前記組成物が溶剤を実質的に含まない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
(A)光重合性単量体が(メタ)アクリレートである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、離型剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、酸化防止剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いることを特徴とする硬化物の形成方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を基板上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
【請求項15】
前記光硬化性組成物の基板上への適用を塗布により行う、請求項14に記載の硬化物の製造方法。
【請求項16】
前記基板が、石英基板、ガラス基板、金属基板または金属酸化物基板である、請求項14または15に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2012−41521(P2012−41521A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63668(P2011−63668)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】