説明

光素子集積装置およびその製造方法

【課題】レーザ光の利用効率および生産効率の高い光素子集積装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】面発光レーザ素子20を光導波路11が形成されたスライダ10に搭載する。面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよびスライダ10の光入射口11Aに親水性領域31A,31B、光入射口11Aの周囲に疎水性領域32を形成したのち、光出射口20A上に高屈折率接着剤33を滴下する。面発光レーザ素子20を反転させて光出射口20Aを光入射口11Aに合わせる。高屈折率接着剤33の表面張力により自動的に光出射口20Aおよび光入射口11Aの光学的な位置合わせが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱アシスト磁気記録ヘッドなどに用いるスライダなどの本体に対して光素子を搭載した光素子集積装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声や映像のデジタル化および高質化によって、これらのデータを記録するための情報記録システムの大容量化が求められている。これに対して、近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、端面発光レーザ素子をスライダに搭載する提案がなされている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−59645号公報
【特許文献2】特開2009−04030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような端面発光レーザ素子は、その共振器長が長く、かつチップサイズが大きいためスライダへの搭載は不向きであった。更に、上記提案では、端面発光レーザ素子において発生した光は基板に対して平行に出射される。そのため、レーザ光を基板の劈開により切り出された端面のミラー反射を利用してスライダ内に形成された光導波路へ入射させ、スライダ先端の近接場光発光素子へ導いている。このようなことから、従来では、端面発光レーザ素子で発生したレーザ光の利用効率が低く、また、スライダへの搭載の際には、実際に通電して発光させ位置合わせを行う必要があり、生産効率も低いという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、レーザ光の利用効率および生産効率の向上した光素子集積装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光素子集積装置は、光導波路を有し、表面に光導波路の光入射口が露出すると共に第1電極を有する本体と、表面に光出射口および第2電極を有し、光出射口が光導波路の光入射口に接合されると共に、第2電極が第1電極に接続された面発光レーザ素子と、を備えたものである。「本体」としては、例えば近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダが挙げられる。
【0007】
この光素子集積装置では、面発光レーザ素子内において発生した光は、その光出射口に直接接合された本体側の光導波路へ光損失することなく入射される。
【0008】
本発明の光素子集積装置の製造方法は、以下の(A),(B)の工程を備えたものである。
(A)本体の表面に第1電極を形成すると共に表面に光入射口が露出するよう光導波路を形成する工程
(B)表面に光出射口および第2電極を有する面発光レーザ素子を反転し、面発光レーザ素子の光出射口を本体の光入射口に接合させると共に、第2電極を第1電極に接続させる工程
【0009】
面発光レーザ素子を本体へ搭載する際には、面発光レーザ素子の光出射口および本体の光入射口にそれぞれ親水性領域を形成すると共に、光入射口の周囲に疎水性領域を形成したのち、光出射口に高屈折率接着剤を滴下し、高屈折率接着剤を介して光出射口と光入射口とを接合させることが好ましい。これにより、高屈折率接着剤は疎水性領域に弾かれる一方、親水性領域に馴染むため、高屈折率接着剤の表面張力によって光出射口および光入射口の位置合わせが自動的に行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光素子集積装置およびその製造方法によれば、光素子として面発光レーザ素子を用いると共に、この面発光レーザ素子の光出射口を本体に設けられた光導波路の光入射口に直接接合させるようにしたので、光の利用効率および生産効率も向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光素子集積装置の基本構成を説明するための図である。
【図2】図1の光素子集積装置に適用可能な電極パッドの一例を表す斜視図および断面図である。
【図3】電極パッドの他の例を表す斜視図および断面図である。
【図4】電極パッドの更に他の例を表す斜視図および断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るスライダの構成を表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るスライダの構成を表す図である。
【図7】図6のスライダの製造工程の一例を説明するための図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための図である。
【図9】図8に続く工程を説明するための図である。
【図10】図9に続く工程を説明するための図である。
【図11】図9に続く工程を説明するための図である。
【図12】第3の実施の形態に係るスライダの構成を表す図である。
【図13】図12のスライダの製造工程の一例を説明するための図である。
【図14】図13に続く工程を説明するための図である。
【図15】図14に続く工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.基本構成
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.第3の実施の形態
【0013】
[基本構成]
図1は本発明の光素子集積装置1の基本構成を表したものである。この光素子集積装置1は、本体10に対して光源(光素子)としての面発光レーザ素子20を一体化したものである。本体10には光導波路11が設けられ、この光導波路11の光入射口11Aが本体10の表面に露出している。面発光レーザ素子20は、その表面(光出射面)に光出射口20Aを有しており、その光出射口20Aが光導波路11の光入射口11Aに接合されるよう反転して本体10に搭載されている。
【0014】
本体10は、後述の近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダなどの、光導波路11による光導波機能以外に本来の機能(記録機能,記録再生機能など)を有するものをいう。その他、例えば光ファイバーやフォトニック結晶などを用いた光送信デバイス、電子回路上に光信号を処理できる回路が集積されたOEIC(光電子集積回路)、波長変換素子を用いた波長変換器なども本発明の本体10に含まれるものである。
【0015】
面発光レーザ素子20は図1には示していないが、光出射口20Aと同一の面に、一対の電極のうち少なくとも1つの電極(あるいは電極パッド)を有している。図2(A),(B)〜図4(A),(B)はそれぞれ具体的な電極配置例を表したものであり、いずれの態様も本発明に適用可能である。
【0016】
図2(A),(B)の配置例は、2つの電極パッド27(p側電極27Aおよびn側電極27B)を光出射口20Aと同一面に設けたものである。n側電極27Bは基板21に達するよう設けられた開口内に埋設されており、その表面がp側電極27Aと同一面に露出している。図3(A),(B)の配置例は、一方の電極パッド(p側電極27A)を光出射口20Aと同一面に、他方の電極パッド(n側電極27B)を基板21の裏面に設けたものである。図4(A),(B)の配置例は、2つ電極パッド(p側電極27A,n側電極27B)を共に基板21の裏面に設けたものであるが、p側電極27Aは基板21の裏面から表面にかけて設けられた貫通電極により基板21の表面に露出している。
【0017】
この光素子集積装置1では、上記のように面発光レーザ素子20の光出射口20Aを光導波路11の光入射口11Aに直接(あるいは高屈折率接着剤を介して)接合させると共に、本体10側の表面(光入射口11Aが形成された面)の面発光レーザ素子20の電極(電極パッド)に対向する位置に対向電極(電極パッド)を設け、これら電極同士を直接に接続させるものである。これにより光の利用効率および生産効率が向上する。
なお、本明細書では、本体10側の表面に設けた1または1組の電極を「第1電極」、面発光レーザ素子20の表面に設けた1または1組の電極を「第2電極」という。
【0018】
以下、具体的な実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図5(A),(B)は本発明の第1の実施の形態に係る光素子集積装置2を表すものである。この光素子集積装置2は本体としてのスライダ10に面発光レーザ素子20を搭載したものであり、図5(A)は面発光レーザ素子20をスライダ10に搭載する前の状態、図5(B)は面発光レーザ素子20を搭載したのちのスライダ10の前方から見た状態をそれぞれ表している。なお、図1は模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なっている。
【0020】
スライダ10は、例えばプラズモン磁気ヘッド(熱アシスト磁気記録ヘッド)に用いられるもので、下面10Aに磁気記録部(図示せず)を有すると共に内部に上面からした面にかけて前述の光導波路11を有している。スライダ10は例えばAlTiC(アルミニウム・チタニウム・カーボン)により構成されている。スライダ10には支軸(図示せず)を介してアクチュエータが接続されており、支軸を中心として矢印A方向(トラッキング方向)に回転可能となっている。スライダ10の下方には回転可能な記録媒体Mが配置されている。スライダ10に設けられた磁気記録部は、回転する記録媒体Mに対して浮上しながら相対的に移動可能となっている。
【0021】
光導波路11は、例えばSiNなどの高屈折率材料からなるコア層(図示せず)を例えばSiO2などの低屈折率材料からなるクラッド層(図示せず)で覆ったものである。この光導波路11をスライダ10の内部に埋設することにより、面発光レーザ素子20から出射されたレーザ光をスライダ10を介して記録媒体Mに導くようになっている。これによりこのスライダ10では磁気記録部による記録媒体Mへのデータの記録に先立ち、当該箇所を加熱して磁気記録のアシストを行うようになっている。
【0022】
光導波路11の径は、集光特性を向上させるために、面発光レーザ素子20のニアフィールドパターン(NFP)と同等またはニアフィールドパターンよりも大きくすることが好ましい。光導波路11の形状は、円柱または角柱など、ニアフィールドパターンに合わせて調整することが可能である。光導波路11の寸法(径)は、例えばニアフィールドパターンが3μmである場合には、例えば3μmないし4μm程度とする。
【0023】
スライダ10の表面には、後述の面発光レーザ素子20側の電極パッド27(p側電極27Aおよびn側電極27B)に対向する位置に一組の電極パッド12(12A,12B)が設けられている。これら電極パッド12A,12Bにはそれぞれ駆動配線13A,13Bを介して駆動電源が供給され、これにより面発光レーザ素子20が駆動され発光するようになっている。
【0024】
面発光レーザ素子20は、例えば、n型GaAsよりなる基板21上に、n型DBR層22、活性層23、電流狭窄層24およびp型DBR層25を基板21側からこの順に積層した構造を有している。活性層23ないしp型DBR層25は円柱状の柱状部26(メサ形状)となっている。
【0025】
n型DBR層22は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されている。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n1(λ0は発振波長、n1は屈折率)のn型Alx1Ga1-x1As(0<x1≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n2(n2は屈折率)のn型Alx2Ga1-x2As(0≦x2<x1)によりそれぞれ構成されている。
【0026】
活性層23は、例えばアンドープのAlx3Ga1-x3As(0≦x3≦1)により構成されている。電流狭窄層24は、中央に電流注入領域24Aを有し、電流注入領域24Aの外縁に電流狭窄領域24Bを有している。電流注入領域24Aは、例えばp型Alx4Ga1-x4As(0<x4≦1)により構成されている。電流狭窄領域24Bは、例えばAl23(酸化アルミニウム)を含んで構成され、柱状部26の側面から電流狭窄層24に含まれる高濃度のアルミニウム(Al)を酸化することにより得られるものである。すなわち電流狭窄層24は電流を狭窄する機能を有し、活性層23のうち電流注入領域24Aと対向する領域が発光領域13Aとなっている。
【0027】
p型DBR層25は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されたものである。この低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n3(n3は屈折率)のp型Alx5Ga1-x5As(0<x5≦1)、高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n4(n4は屈折率)のp型Alx6Ga1-x6As(0≦x6<x5)によりそれぞれ構成されている。
【0028】
p側電極27Aは、例えばチタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層した構造を有する。n側電極27Bは、例えば金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とをこの順に積層した構造を有している。
【0029】
本実施の形態の面発光レーザ素子20は、図2に示した電極配置構造、すなわち光出射口20Aの両脇に、第2電極としてp側電極27Aおよびn側電極27Bが配置された構造を有するものである。
【0030】
この面発光レーザ素子20は、その光出射口20Aが光導波路11の光入射口11Aに接合されると共に、第2電極(p側電極27Aおよびn側電極27B)が第1電極(電極パッド12A,12B)に電気的に接続されるよう反転してスライダ10に搭載される。なお、この面発光レーザ素子20のスライダ10に対する位置決めおよび接合方法については後述の方法によることが望ましい。
【0031】
本実施の形態の光素子集積装置2では、スライダ10の駆動配線13A,13Bおよび電極パッド12A,12Bを通じて面発光レーザ素子20のp側電極27Aとn側電極27Bとの間に所定の電圧が印加される。これにより電流狭窄層24により狭窄された電流が活性層23の利得領域である発光領域23Aに注入され、電子と正孔の再結合による発光が生じる。この面発光レーザ素子20で発生したレーザ光は光射出口20Aから基板面に対して垂直に出射され、スライダ10の光導波路11へ直接入射される。入射したレーザ光は光導波路11に導かれてスライダ10の下方に配置された記録媒体Mに照射される。これにより磁気記録部による磁気記録に先立つ熱アシストが行われる。
【0032】
このように本実施の形態では、面発光レーザ素子20の光出射口20Aがスライダ10に設けられた光導波路11の光入射口11Aに接合されているので、面発光レーザ素子20で発生したレーザ光は直接光導波路11へ入射される。そのため光損失が低減され、発光効率を向上させることが可能となる。また、光源として面発光レーザ素子20を用いるため、光出射口20Aと光入射口11Aとの位置合わせが容易になると共に、端面発光型レーザ素子のような劈開作業が不要となるため、ウエハ段階での検査が可能となる。よって、歩留まりおよび製造効率が向上する。
【0033】
[第2の実施の形態]
図6は本発明の第2の実施の形態に係る光素子集積装置3の断面構成を表したものである。この光素子集積装置3は、基本的には上記光素子集積装置2と共通するが、製造歩留り向上のために次の点において異なっている。すなわちこの光素子集積装置3では、面発光レーザ素子20の光出射口20Aは親水処理がなされた親水性領域31A、スライダ10の光入射口11Aも同じく親水処理がなされた親水性領域31Bとなっている。
【0034】
一方、スライダ10の表面の光入射口11Aを除く領域は疎水処理がなされた疎水性領域32となっている。この疎水性領域32は少なくとも光入射口11Aの近傍にあればよい。また、面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよび光導波路11の光入射口11Aは高屈折率接着剤33によって互いに接合されている。電極パッド12Aとp側電極27A、電極パッド12Bとn側電極27Bとはそれぞれ低融点半田34により接合されている。
【0035】
親水性領域31A,31Bは、面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよび光導波路11の光入射口11Aに対してそれぞれ例えば酸素プラズマ処理を施すことによって形成されるものである。
【0036】
疎水性領域32は、疎水性材料、例えば、パーフルオロアルカン系(n−Cm2m-2)などのフッ素系溶剤を塗布することにより形成される。この疎水性領域32は、ナノインプリント技術を用いることによって疎水性材料を光導波路11の光入射口11A以外の領域に転写することによって形成するようにしてもよい。
【0037】
高屈折率接着剤33は後述のように硬化されたのちは光導波路11の一部となり、面発光レーザ素子20から出射されるレーザ光をスライダ10の光導波路11に入射させる機能を有している。従って、その径が面発光レーザのニアフィールドパターンよりも十分に小さい、例えば長径3μm、短径500nmのような形状の光導波路11に対しても、例えばニアフィールドパターンが5μmある面発光レーザ素子20から出射された光を高効率で入射させることが可能となる。この高屈折率接着剤33としては、例えば光学屈折率が1.1以上を有するエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂が挙げられる。但し、エポキシ系樹脂は青色光によって劣化し、屈折率が1.3〜1.4であり、これに対してシリコン系樹脂は屈折率1.5前後の高い特性を有するためシリコン系樹脂を用いることが好ましい。勿論、各色光に耐性を有し、屈折率1.1以上の特性を有する接着剤であれば、エポキシ系、シリコン系以外の樹脂を用いてもよい。
【0038】
[製造方法]
次に、図7〜図9を参照してこの光素子集積装置3の製造方法について説明する。
【0039】
まず、図7(A),(B)に示したように、スライダ10の光導波路11の近傍に一組の電極パッド12A,12Bを形成したのち、これら電極パッド12A,12B上に低融点半田34を蒸着する。一方、面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよびスライダ10に形成された光導波路11の光入射口11Aに対して、例えば酸素プラズマ処理による親水性処理を施すことにより親水性領域31A,31Bを形成する。また、スライダ10の表面の電極パッド12A,12Bおよび光入射口21Aを除く領域に、例えばフッ素系溶剤を塗布することにより疎水性領域32を形成する。
【0040】
次いで、図8(A),(B)に示したように、面発光レーザ素子20の光射出口10Aに、その表面張力により中後部が盛り上がる形状をなすように熱硬化型の高屈折率接着剤33を滴下する。続いて、図9(A),(B)に示したように面発光レーザ素子20をその光出射口20Aが下になるように反転させ、スライダ10の光入射口11Aに合うように軽く載せる。
【0041】
このとき本実施の形態では、面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよびスライダ10の光入射口11Aに親水性領域31A,31Bが形成される一方、光入射口11Aの周囲が疎水性領域32となっている。これにより高屈折率接着剤33の表面張力によって面発光レーザ素子20の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとが自動的に光路軸上で一致するようになる(図10(A),(B)、図11(A),(B))。ここに、図10(A),(B)はスライダ10を正面から見た状態、図11(A),(B)は同じく横から見た状態を表し、各図において(B)は(A)の要部(高屈折率接着剤33)を拡大して表したものである。このとき電極パッド12A,12Bおよびp側電極27A,n側電極27Bは、硬化前の高屈折率接着剤33が不安定にならないように高屈折率接着剤33の両サイドで面発光レーザ素子20を支える役割を持つ。
【0042】
このようにして面発光レーザ素子20の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとが光路軸上で一致したのち、高屈折率接着剤33および電極パッド12A,12Bに蒸着させた低融点半田34に熱処理を施す。具体的には、100〜150℃の温度で加熱して高屈折率接着剤33を硬化させ、次いで、200℃以上で加熱し、面発光レーザ素子20のp側電極27A,n側電極27Bとスライダ10の電極パッド電極パッド12A,12Bをそれぞれ半田溶融により接合させる。これにより図6に示した光素子集積装置3が形成される。
【0043】
このように本実施の形態では、面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよびスライダ10の光入射口11Aに親水性領域31A,31Bを形成すると共にスライダ10の光入射口11Aの周囲に疎水性領域32を形成したので、面発光レーザ素子20をスライダ10に搭載させる際に、高屈折率接着剤33の表面張力によって自動的に光学的な位置合わせが行われ、精密な光学調整が可能となる。よって、より製造歩留りが向上する。
【0044】
[第3の実施の形態]
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る光素子集積装置4の断面構成を表したものである。この光素子集積装置4は、上記光素子集積装置3の低融点半田34に代えて、熱硬化型の導電性接着材35を用いたものである。
【0045】
導電性接着材35としては、例えばAgペーストおよび、Ag−SnやAu−Sn等の半田シートを挙げることができる。
【0046】
[製造方法]
次に、図13〜図15を参照して、本実施の形態の光素子集積装置4の製造方法の一例について説明する。
【0047】
まず、図13(A),(B)に示したように面発光レーザ素子20の光出射口20Aおよびスライダ10の光導波路11に、それぞれ親水性領域31A,31Bを形成すると共に、スライダ10の電極パッド12A,12Bおよび光入射口11Aを除く領域に疎水性領域32を形成する。
【0048】
次いで、図14(A),(B)に示したように、面発光レーザ素子20の光出射口20Aに熱硬化型の高屈折率接着剤33を滴下し、電極パッド12A,12Bには導電性接着材35を滴下する。続いて、図15(A),(B)に示したように、面発光レーザ素子20を光出射口20Aが下になるように反転させ、光出射口20Aおよびp側電極27A,n側電極27Bを、対応するスライダ10の光入射口11Aおよび電極パッド12A,12Bに軽く載せる。
【0049】
そののち、熱処理を施すことにより面発光レーザ素子20の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとを接合させると共に、電極パッド27(p側電極27A,n側電極27B)と電極パッド12(電極パッド12A,12B)とを接合させる。具体的には、100〜150℃の温度で加熱し、高屈折率接着剤33を硬化させたのち、150〜160℃程度(最高180℃)の温度で加熱することにより導電性接着材35を硬化させる。これにより面発光レーザ素子20およびスライダ10を電気的および光学的に接合させる(図12)。
【0050】
このように本実施の形態では、導電性接着材35を用いることにより、200℃以下の低温の熱処理によって電極パッド27と電極パッド12とを接合させることができる。これにより、高屈折率接着剤33の表面張力を利用した面発光レーザ素子20の光出射口20Aとスライダ10の光入射口11Aとの位置合わせを阻害することなく、電極パッド27と電極パッド12とを電気的に接合させることが可能となる。更に、光出射口20Aおよび光入射口11A、電極パッド27Aおよび電極パッド12A、電極パッド27Bおよび電極パッド12Bの3点で位置合わせを行うことにより、より精密な位置合わせが可能となる。
【0051】
以上、第1〜第3の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態において本体10として熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダを例に挙げて説明したが、前述の光送信デバイス、OEIC(光電子集積回路)および波長変換器などに用いることも可能である。
【0052】
また、面発光レーザ素子20の構成についても、p型層およびn型層の位置関係を逆にしてもよい。この場合には、p型GaAsからなる基板21上にp型DBR層、活性層、電流狭窄層およびn型DBR層をこの順に積層すればよい。
【0053】
更に、上記実施の形態において説明した各層の材料、または成膜方法、成膜条件および接合方法などは限定されるものではなく、他の材料としてもよく、または他の成膜方法および接合方法としてもよい。
【0054】
更にまた、例えば、上記第1の実施の形態では、面発光レーザ素子20をGaAs系化合物半導体により構成した場合について説明したが、他の材料系、例えば、GaInP系(赤系)材料またはAlGaAs系(赤外系)や、GaN系(青緑色系)などにより構成することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1〜4…光素子集積装置、10…本体(スライダ)、11…光導波路、11A…光入射口、12…電極パッド(12A…p側電極、12B…n側電極)、20…面発光レーザ素子、20A…光出射口、21…基板、22…n型DBR層、23…活性層、24…電流狭窄層、24A…電流注入領域、24B…電流狭窄領域、25…p型DBR層、26…柱状部、27…電極パッド(27A…p側電極、27B…n側電極)、27C…開口部、31A,31B…親水性領域、32A,32B…疎水性領域、33…高屈折率接着剤、34…低融点半田、35…導電性接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を有し、表面に前記光導波路の光入射口が露出すると共に第1電極を有する本体と、
表面に光出射口および第2電極を有し、前記光出射口が前記光導波路の光入射口に接合されると共に、前記第2電極が前記第1電極に接続された面発光レーザ素子と
を備えた光素子集積装置。
【請求項2】
前記面発光レーザ素子の光出射口および前記本体の光入射口は、高屈折率接着剤により接合されている、請求項1に記載の光素子集積装置。
【請求項3】
前記高屈折接着材は、光学屈折率が1.1以上のエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂である、請求項2に記載の光素子集積装置。
【請求項4】
前記本体の光入射口に親水性領域、前記光入射口の周囲に疎水性領域をそれぞれ有する、請求項1に記載の光素子集積装置。
【請求項5】
前記面発光レーザ素子の光出射口に親水性領域を有する、請求項4に記載の光素子集積装置。
【請求項6】
前記本体は、近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光素子集積装置。
【請求項7】
本体の表面に第1電極を形成すると共に前記表面に光入射口が露出するよう光導波路を形成する工程と、
表面に光出射口および第2電極を有する面発光レーザ素子を反転し、前記面発光レーザ素子の光出射口を前記本体の光入射口に接合させると共に、前記第2電極を前記第1電極に接続させる工程と
を含む光素子集積装置の製造方法。
【請求項8】
前記面発光レーザ素子の光出射口および前記本体の光入射口にそれぞれ親水性領域を形成すると共に、前記光入射口の周囲に疎水性領域を形成したのち、前記光出射口に高屈折率接着剤を滴下し、前記高屈折率接着剤を介して前記光出射口と前記光入射口とを接合させる、請求項7記載の光素子集積装置の製造方法。
【請求項9】
前記疎水性領域をコーティング法またはナノインプリント技術による転写法により形成する、請求項8に記載の光素子集積装置の製造方法。
【請求項10】
前記本体は、近接場光を用いた記録ヘッドまたは熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるスライダである、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の光素子集積装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−96318(P2011−96318A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249471(P2009−249471)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】