光記録媒体駆動装置、光記録媒体駆動方法、光ピックアップ装置
【課題】バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録再生のための第1のレーザ光の収差性能を保ち適切な記録再生を行う。
【解決手段】録再用レーザ光とサーボ用レーザ光を一の対物レンズから照射して記録再生を行う光記録媒体駆動装置において、録再用レーザ光の所定以上の倍率を維持するため対物レンズのワーキングディスタンスを可変とする。この場合に、適切なフォーカスサーボを実現するために、まず第1,第2のフォーカス機構を記録層位置に応じて予め決められた値に基づいて制御する。その上で、対物レンズを駆動するフォーカスサーボを行う。
【解決手段】録再用レーザ光とサーボ用レーザ光を一の対物レンズから照射して記録再生を行う光記録媒体駆動装置において、録再用レーザ光の所定以上の倍率を維持するため対物レンズのワーキングディスタンスを可変とする。この場合に、適切なフォーカスサーボを実現するために、まず第1,第2のフォーカス機構を記録層位置に応じて予め決められた値に基づいて制御する。その上で、対物レンズを駆動するフォーカスサーボを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルク型記録媒体に対して記録または再生を行う光記録媒体駆動装置と、光記録媒体駆動方法、光ピックアップ装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】特開2002−150598号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるような、いわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0004】
ここで、バルク記録とは、例えば図9に示すように少なくともカバー層101とバルク層102とを有する光記録媒体に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0005】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式は、図10に示されるように、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0006】
ポジ型マイクロホログラム方式は、図10(a)に示すように、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
また、図10(b)に示すネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。
【0007】
図11は、ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である、
ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、図11(a)に示されるように予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行う。具体的には、図中に示すように平行光による光束C,Dを対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成しておく。
このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、図11(b)に示されるようにして消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0008】
さらに本出願人は、他のバルク記録の手法として、特許文献2に開示されるようなボイド記録(空孔記録)方式による記録手法を提案している。
このボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空孔(ボイド)を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
【0009】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとでき、2光束を同位置に集光させるための高い位置制御精度は不要とできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式のように、記録媒体の片側からレーザ照射を行って記録再生を行う場合を考える。
これらの方式はそれぞれ原理は異なるが、バルク層を有する体積型記録媒体に、片側からのみ光を入射させ、バルク層102内で焦点位置のみを変えて多層記録を行うという概念は同じである。
【0011】
これらの記録方式においてバルク層102内に形成される各記録層自体はアドレス情報を持たない。より正確に言えば、記録層は記録マークの記録によって形成されるものであり、記録前には記録層は存在しない。
一般的に従来光ディスクではウォブリンググルーブという蛇行した案内溝を持ち、その周波数を検出することで位置情報を得ていた。しかしネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式では、バルク層102内にウォブリンググルーブを備えた記録層が予め形成されるわけではないため、当該方式で各記録層のアドレス情報を付与しておくことはできない。
そこで、図12に示すように、基準面Refにアドレス情報を付与し、基準面Refに対応するようにバルク層102内に各記録層L0〜L4を記録することが考えられる。
【0012】
この場合、例えばバルク型光記録媒体の基準面Refにはウォブリンググルーブやピット列を形成してアドレス情報を付与する。
一方、記録再生装置は、一つの対物レンズから2系統のレーザ光を照射する。録再用のレーザ光とサーボ用のレーザ光である。
そしてサーボ用レーザ光の戻り光の情報から対物レンズを駆動して、サーボ用レーザ光を基準面Refにフォーカス制御する。さらにサーボ用レーザ光の基準面Refについての戻り光の情報から、トラッキング制御やアドレスデコードを行う。
一方、録再用レーザ光は、基準面Refにフォーカス制御されたサーボ用レーザ光とはディスクの奥行き方向のオフセットをもってフォーカス制御する。つまり録再用レーザ光はバルク層内の所定の記録層形成位置に合焦させ、この録再用レーザ光により、バルク層内に、記録マークを形成し、記録層が形成されるようにする。
【0013】
このような方式を想定する場合、バルク層内の各記録層形成位置に対して、録再用レーザ光が適切な収差特性を維持するようにされることが必要である。
ここで録再用レーザ光のフォーカス制御は、対物レンズの駆動ではなく、例えば対物レンズに入射する録再用レーザ光の収束・発散を制御するエキスパンダ機構によって、上記のオフセットを与える。
対物レンズは、サーボ用レーザ光が基準面に合焦するようにサーボ制御されている。従って対物レンズとバルク型光記録媒体の表面の距離(ワーキングディスタンス)は一定とされる。
そしてその場合、上記のように、録再用レーザ光がバルク層内のすべての記録層位置に合焦できるようにエキスパンダ機構で上記のオフセット量を可変制御することになるが、対物レンズに入射される録再用レーザ光は収束光から発散光まで広く変化することになる。
対物レンズは、ある入射角条件において最も収差性能が良くなるように設計される。例えば録再用レーザ光が平行光で入射されたときの収差性能が最も良くなるように設計される。すると、収束光から発散光まで広く変化する録再用レーザ光について、常に収差性能を保証するのは困難である。換言すれば、すべての記録層について録再用レーザ光の収差特性を保つのは困難となる。
【0014】
そこで本発明では、記録再生対象の記録層に応じて、対物レンズのワーキングディスタンスを変動させることを提案し、その上で適切なフォーカス制御を実行する方式を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光記録媒体駆動装置は、バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部とを備える。
【0016】
また上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構は、固定レンズと可動レンズを有するエキスパンダにより構成され、上記制御値は、上記固定レンズと上記可動レンズの間の距離を指示する値であるとする。
また上記対物レンズ駆動フォーカス機構は、上記第2のレーザ光の上記基準面からの戻り光に基づいてフォーカスサーボ動作を行う。
また上記光学系には、上記対物レンズへ入射する上記第2のレーザ光に有効な回折素子を設ける。
【0017】
また本発明の光記録媒体駆動方法は、上記の光学系と、第1のフォーカス機構と、第2のフォーカス機構と、対物レンズ駆動フォーカス機構とを備えた光記録媒体駆動装置の、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際の光記録媒体駆動方法である。そして、上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を取得するステップと、取得した制御値に基づいて、上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御するステップと、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とするステップとを行う。
【0018】
このような本発明では、まず第1のレーザ光(記録用または再生用レーザ光)の光路に、例えばエキスパンダ機構として第1のフォーカス機構を設ける。さらに第2のレーザ光(サーボ用レーザ光)の光路にも例えばエキスパンダ機構として第2のフォーカス機構を設ける。つまり、第1,第2のレーザ光は、それぞれが独立して対物レンズへの入射光の発散・収束を制御できるようにする。
その構成において、まず予め設定された制御値で、第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構を駆動制御する。制御値は、対象とする情報記録層に応じて予め決められた値である。そしてその制御値による第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の駆動制御は、収差特性が維持できる範囲の駆動となる。そしてこれらの後、対物レンズ駆動フォーカス機構によって対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御を行う。結果として対物レンズのワーキングディスタンスは変動するが、これは問題とならない。その一方で、すべての情報記録層に対して第1のレーザ光の収差特性を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バルク型光記録媒体のバルク層を用いた多層記録において、すべての情報記録層に対して好適な記録または再生が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態で用いるバルク型記録媒体の説明図である。
【図2】実施の形態の記録再生装置の光学系の説明図である。
【図3】実施の形態の録再光用フォーカス機構を用いた合焦位置の調整手法の説明図である。
【図4】実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成のブロック図である。
【図5】サーボ光用フォーカス機構を設けない場合の説明図である。
【図6】サーボ光用フォーカス機構による作用の説明図である。
【図7】実施の形態のエキスパンダ制御テーブルの説明図である。
【図8】実施の形態のフォーカス処理のフローチャートである。
【図9】バルク型光記録媒体の説明図である。
【図10】マイクロホログラム方式の説明図である。
【図11】ネガ型マイクロホログラム方式の説明図である。
【図12】バルク型記録媒体についてのサーボ制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光記録媒体駆動装置、光ピックアップ装置の実施の形態となる記録再生装置について、次の順序で説明する。
<1.実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体>
<2.記録再生装置の構成>
[2−1.光学ピックアップの内部構成]
[2−2.記録再生装置の全体的な内部構成]
[2−3.サーボ光用フォーカス機構の役割]
<3.実施の形態のフォーカス制御>
【0022】
<1.実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体>
図1は、実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
この図1に示すバルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお、光記録媒体とは、光の照射により記録情報の再生が行われる記録媒体を指す。
本例の場合、例えばネガ型マイクロホログラム方式又はボイド記録方式に用いる光記録媒体としている。
【0023】
先に図12で説明したように、ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、予めバルク層に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行う。このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の記録層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
また、いわゆる空孔(ボイド)を記録マークとして形成するボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層内に空孔(ボイド)を記録する。このように形成された空孔部分は、バルク層内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
但し、以下説明していく本実施の形態は、必ずしもネガ型マイクロホログラム方式や、ボイド記録方式のみに適用可能なものでなく、バルク型記録媒体1の一面側からサーボ用と録再用の2系統のレーザ光を照射し、バルク層に情報記録を行うものに適用できるものである。
【0024】
図1に示すように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての光学ドライブ装置(記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち光学ドライブ装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0025】
バルク型記録媒体1において、カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられている。
位置案内子は、スパイラル状又は同心円状に形成される。本例の場合、位置案内子はスパイラル状に形成されているものとして以下の説明を続ける。
上記の案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がピット列で形成される場合、ピットとランドの長さの組み合わせにより位置情報(絶対位置情報:ディスク上での回転角度位置を表す情報としての回転角度情報や、半径位置情報など)が記録される。或いは、案内溝がグルーブとされる場合、当該グルーブを周期的に蛇行(ウォブル)させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報の記録が行われる。
カバー層2は、例えばこのような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0026】
また、案内溝が形成されたカバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、情報記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射する。
このとき、仮に、サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0027】
選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、ネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
【0028】
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、案内溝としての位置案内子が形成された選択反射膜3は、サーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0029】
バルク層5に対しては、バルク層5の深さ方向における予め定められた各位置に対し、逐次レーザ光を合焦させてボイド(空孔)マーク形成による情報記録が行われる。
従って記録済みとなった記録媒体1において、バルク層5内には、複数のマーク形成層(情報記録層)Lが形成される。図では情報記録層L0〜L(n)として示しているように、多数(n+1個)の情報記録層が形成される。例えばn=19で20層などとされる。
【0030】
バルク層5の厚みサイズ等は確定的ではないが、録再用レーザ光として例えば青色レーザ光(波長405nm)をNAを0.85の光学系で照射することを考えた場合、ディスク表面(カバー層2の表面)から深さ方向に50μm〜300μmの位置に情報記録層を形成することが適切である。これは球面収差補正を考慮した範囲である。
図1では、ディスク表面から100μm〜300μmの位置に情報記録層Lを形成する例としている。当
当然ながら、情報記録層の数(n+1)は、層間隔を狭くするほど、多数の情報記録層を形成することができる。
例えば情報記録層位置L0〜L19を形成する場合、間の各情報記録層位置Lは、隣接する各情報記録層位置Lの間隔が平均して10μmとなるようにして設定される。
なお、基準面Refの位置はバルク型記録媒体1の表面からおよそ50μmの位置であり、従って基準面Refから情報記録層L0までの間隔はおよそ50μmとなる。
【0031】
<2.記録再生装置の構成>
図2及び図4は、図1に示したような構造を有するバルク型記録媒体1に対する記録/再生を行う実施の形態としての記録再生装置10の内部構成について説明するための図である。
図2は、実施の形態の記録再生装置10が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示し、図4は、記録再生装置10の全体的な内部構成を示している。
【0032】
[2−1.光学ピックアップの内部構成]
先ずは図2により、光学ピックアップOPの内部構成について見ていく。
図中のバルク型記録媒体1は、記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示は省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、上記スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光、サーボ用レーザ光を照射するために設けられる。
【0033】
光学ピックアップOP内には、マークによる情報記録、及びマークにより記録された情報の再生を行うための録再用レーザ光の光源である録再用レーザ11と、基準面Refに形成された案内溝を利用した位置制御を行うための光であるサーボ用レーザ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。
ここで、前述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長が異なる。本例の場合、録再用レーザ光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、サーボ用レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
【0034】
また、光学ピックアップOP内には、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、録再用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための録再光用受光部23と、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するためのサーボ光用受光部34とが設けられる。
【0035】
その上で、光学ピックアップOP内においては、録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光を対物レンズ20に導くと共に、対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光を録再光用受光部23に導くための光学系が形成される。
【0036】
具体的に、録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ12に入射する。偏光ビームスプリッタ12は、このように録再用レーザ11より入射した録再用レーザ光を透過するように構成されている。
【0037】
偏光ビームスプリッタ12を透過した録再用レーザ光は、1/4波長板13を介した後、コリメートレンズ14にて平行光となるように変換されて、録再光用フォーカス機構(エキスパンダ)15に入射する。
図示するように録再光用フォーカス機構15は、可動レンズとされる凹レンズ16、レンズ駆動部17、及び固定レンズとされる凸レンズ18を有して構成される。
【0038】
コリメートレンズ14を介した録再用レーザ光は、凹レンズ16、及び凸レンズ18を介して、録再光用フォーカス機構15外部に出射される。
録再光用フォーカス機構15においては、凹レンズ16がレンズ駆動部17によって録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、録再用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。
レンズ駆動部17は、後述するコントローラ42(図4)からの駆動信号Dex−rpに基づき凹レンズ16を駆動する。このことで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、これに伴って録再用レーザ光の合焦位置が調整されることになる。
【0039】
ここで、次の図3により、録再光用フォーカス機構15を用いた合焦位置の具体的な調整手法について説明しておく。
先ず、バルク層5内の各情報記録層Lの位置を対象とした記録を行うにあたっては、予め基準層位置Lprを設定しておくことになる。この基準層位置Lprは、録再用レーザ光の合焦位置の調整(設定)にあたって基準とすべき情報記録層Lの位置である。
具体的に本例の場合で、形成される情報記録層は、情報記録層L0〜L19の20層とする。このうちのほぼ中間に位置する情報記録層L(表面からおよそ200μmの位置:例えばL9又はL10の位置)を基準層位置Lprとして設定するものとしている。
【0040】
この場合の録再光用フォーカス機構15は、このような基準層位置Lprへの合焦状態を基準として、録再用レーザ光の合焦位置の調整を行う。
具体的に、この場合における録再用レーザ光についての光学系は、図3(b)に示すように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦する状態で、レンズ駆動部17による凹レンズ16の駆動位置が、基準位置にあるように設計されている。この場合、凹レンズ16の基準位置とは、レンズ駆動部17への駆動信号Dex−rpのレベルがゼロレベルである状態を指すものとする。
なおかつ、この場合の光学系は、このように凹レンズ16が基準位置にある状態において、該凹レンズ16から凸レンズ18を介して出射される(つまり対物レンズ20に入射する)録再用レーザ光が、図のように平行光となるように設計されている。
【0041】
この図3(b)に示す状態を基準として、基準層位置Lprよりも下層側の情報記録層Lの位置に録再用レーザ光の合焦位置を設定するとしたときには、図3(a)に示されるように、凹レンズ16を対物レンズ20に近づく方向に駆動する。例えば駆動信号Dex−rpとして正極性による信号を与える。
これにより、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光は発散光となり、その結果、録再用レーザ光の合焦位置は基準層位置Lprよりも下層側に調整されることになる。
このとき、凹レンズ16の上記基準位置からの駆動量に比例して、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の発散角が大となり、録再用レーザ光の合焦位置が基準層位置Lprのより下層側に調整されることになる。
【0042】
一方、基準層位置Lprより上層側の情報記録層Lの位置に録再用レーザ光の合焦位置を設定するとしたときは、図3(c)のように、凹レンズ16を対物レンズ20から離れる方向(光源側の方向)に駆動する。例えば駆動信号Dex−rpとして負極性による信号を与えることで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光を収束光に変化させる。これにより、録再用レーザ光の合焦位置を基準層位置Lprよりも上層側に調整できる。このとき、凹レンズ16の基準位置からの駆動量をより大とすることで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の収束角をより大とでき、録再用レーザ光の合焦位置をより上層側に調整できる。
【0043】
説明を図2に戻す。
録再光用フォーカス機構15を介した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19を透過する。
【0044】
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光は、図示するようにDOE(Diffractive Optical Element:回折型光学素子)32を介した後、対物レンズ20により集光されてバルク型記録媒体1に照射される。
なお、DOE32については後述する。
【0045】
対物レンズ20に対しては、当該対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0046】
ここで、再生時においては、バルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、バルク型記録媒体1(バルク層5内の再生対象の情報記録層Lに記録されたマーク列)より録再用レーザ光の反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ20、DOE32を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19を透過する。
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光の反射光は、録再光用フォーカス機構15(凸レンズ18→凹レンズ16)、コリメートレンズ14、1/4波長板13を介した後、偏光ビームスプリッタ12に入射する。
【0047】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ12に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板13による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、録再用レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ12に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なる。この結果、上記のように入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ12にて反射される。
【0048】
このように偏光ビームスプリッタ12にて反射された録再用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ22を介して、録再光用受光部23の受光面上に集光する。
【0049】
また光学ピックアップOP内には、以上の録再用レーザ光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からのサーボ用レーザ光の反射光をサーボ光用受光部34に導くための光学系が形成される。
サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ25に入射する。偏光ビームスプリッタ25は、このようにサーボ用レーザ24から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0050】
偏光ビームスプリッタ25を透過したサーボ用レーザ光は、1/4波長板26を介した後、コリメートレンズ27により平行光となるように変換されてサーボ光用フォーカス機構28に入射する。
サーボ光用フォーカス機構28は、可動レンズとしての凹レンズ29、レンズ駆動部30、及び固定レンズとしての凸レンズ31を有して構成される。
コリメートレンズ28を介したサーボ用レーザ光は、このサーボ光用フォーカス機構28において、凹レンズ29、及び凸レンズ31を介して、サーボ光用フォーカス機構28外部に出射される。
このサーボ光用フォーカス機構28としても、先の録再光用フォーカス機構15と同様に、凹レンズ29がレンズ駆動部30によってサーボ用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、サーボ用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。
レンズ駆動部30は、後述するコントローラ42からの駆動信号Dex−svに基づき凹レンズ29を駆動する。このことで、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光のコリメーションが変化し、これに伴ってサーボ用レーザ光の合焦位置が独立して調整されることになる。
サーボ光用フォーカス機構28によりサーボ用レーザ光の合焦位置を独立して調整することの意味については後述する。
【0051】
サーボ光用フォーカス機構28を介したサーボ用レーザ光は、図のようにダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。このためサーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム19にて反射され、DOE32を介した後、対物レンズ20により集光されてバルク型記録媒体1に照射される。
【0052】
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20、DOE32を介した後、ダイクロイックプリズム19にて反射される。そしてサーボ光用フォーカス機構28(凸レンズ31、凹レンズ29)、コリメートレンズ27、1/4波長板26を介して偏光ビームスプリッタ25に入射する。
先の録再用レーザ光の場合と同様に、このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板26の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なる。従って復路光としてのサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ25にて反射される。
【0053】
偏光ビームスプリッタ25にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ33を介してサーボ光用受光部34の受光面上に集光する。
【0054】
なお、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0055】
[2−2.記録再生装置の全体的な内部構成]
記録再生装置10の全体的な内部構成は、図4に示すものとなる。
なお、この図4においては、光学ピックアップOPの内部構成については一部のみを抽出して示している。
【0056】
図4において、記録再生装置10には、バルク層5を対象とした記録/再生や、マーク記録/再生時における対物レンズ20のフォーカス/トラッキング制御を行うための信号処理系の構成として、図中の記録処理部35、録再光用マトリクス回路36、再生処理部37、録再光用サーボ回路38、サーボ光用マトリクス回路39、位置情報検出部40、及びサーボ光用サーボ回路41が設けられている。
【0057】
記録処理部35には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部35は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部35は、このように生成した記録変調データ列に基づく記録パルスRCPにより、光学ピックアップOP内の録再用レーザ11の発光駆動を行う。
【0058】
録再光用マトリクス回路36は、図2に示した録再光用受光部23としての複数の受光素子からの受光信号DT−rp(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−rp、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE−rpを生成する。
【0059】
録再光用マトリクス回路36にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部37に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE−rp、上記トラッキングエラー信号TE−rpは、録再光用サーボ回路38に対して供給される。
【0060】
再生処理部37は、上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0061】
また、録再光用サーボ回路38は、マトリクス回路36から供給されるフォーカスエラー信号FE−rp、トラッキングエラー信号TE−rpに基づきフォーカスサーボ信号FS−rp、トラッキングサーボ信号TS−rpをそれぞれ生成する。そして、これらフォーカスサーボ信号FS−rp、トラッキングサーボ信号TS−rpに基づくフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpに基づき、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
【0062】
また、録再光用サーボ回路38は、再生時にコントローラ42から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとしてトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御等も行うことができる。
【0063】
なお、このような録再用レーザ光の反射光に基づく2軸アクチュエータ21(対物レンズ20)のサーボ制御は、再生時において可能となる。すなわち再生時には、バルク層5内に情報記録層Lが形成されており、情報記録層Lからの録再用レーザ光の反射光に基づくサーボ制御が可能であることによる。
ただし、再生時であっても、記録時と同様、2軸アクチュエータ21による対物レンズ20のサーボ駆動は、次に述べるサーボ用レーザ光の反射光に基づくサーボ系によって行っても良い。
【0064】
サーボ用レーザ光の反射光についての信号処理系において、サーボ光用マトリクス回路39は、図2に示したサーボ光用受光部34における複数の受光素子からの受光信号DT−svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的にサーボ光用マトリクス回路39は、フォーカス/トラッキングの各サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svを生成する。
またサーボ光用マトリクス回路39は、基準面Refにおいて記録された絶対位置情報(アドレス情報)の検出を行うための位置情報検出用信号Dpsを生成する。例えば絶対位置情報がピット列により記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしては和信号を生成する。或いは、ウォブリンググルーブにより絶対位置情報が記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしてはプッシュプル信号を生成する。
【0065】
位置情報検出用信号Dpsは、位置情報検出部40に供給される。位置情報検出部40は、位置情報検出用信号Dpsに基づき基準面Refに記録された絶対位置情報を検出する。検出された絶対位置情報はコントローラ42に対して供給される。
【0066】
また、サーボ光用マトリクス回路39にて生成されたフォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svは、サーボ光用サーボ回路41に対して供給される。
サーボ光用サーボ回路41は、フォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svに基づきフォーカスサーボ信号FS−sv、トラッキングサーボ信号TS−svをそれぞれ生成する。
そして、記録時には、コントローラ42からの指示に応じて、フォーカスサーボ信号FS−sv、トラッキングサーボ信号TS−svに基づき生成したフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svに基づいて、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、サーボ用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
【0067】
また、サーボ光用サーボ回路41は、記録時にコントローラ42から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、基準面Refに対するフォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0068】
コントローラ42は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。
【0069】
フォーカス系制御に関しては、コントローラ42は、録再光用フォーカス機構15におけるレンズ駆動部17の駆動制御とサーボ光用フォーカス機構28におけるレンズ駆動部30の駆動制御とを行う。
すなわちコントローラ42はレンズ駆動部17に対して駆動信号Dex−rpを与えて凹レンズ16の位置を可変制御する。
またコントローラ42はレンズ駆動部30に対して駆動信号Dex−svを与えて凹レンズ30の位置を可変制御する。
これにより録再用レーザ光を所要の情報記録層Lの位置に合焦させ、且つサーボ用レーザ光を基準面Refに合焦させる。このような合焦位置調整の具体的な手法については後述する。
【0070】
またコントローラ42は、記録時と再生時で、対物レンズ20のサーボ制御切り替えを行う場合は、その制御を行う。すなわち、コントローラ42は、記録時には、サーボ光用サーボ回路41に対してフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svの出力を指示し、また録再光用サーボ回路38にはフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpの出力を停止するように指示を行う。
一方、再生時にはコントローラ42は、録再光用サーボ回路38に対してフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpの出力を指示し、サーボ光用サーボ回路41に対してはフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svの出力を停止するように指示を行う。
もちろん上述のように、再生時もサーボ光用サーボ回路41側によって、2軸アクチュエータ21による対物レンズ20の駆動を実行させる場合も考えられる。
【0071】
またコントローラ42は、サーボ光用サーボ回路41に対するシーク動作制御を行う。すなわち、サーボ用レーザ光のスポット位置を基準面Ref上における所定のアドレスに移動させるようにサーボ回路41に対する指示を行う。
【0072】
メモリ部43は、コントローラ42が用いる記録領域として、ROM、RAM、フラッシュメモリ等を包括的に示している。
ROMには、コントローラ42のプログラムなどが記憶される。RAMはコントローラ42のワーク領域として用いられる。
また後述するエキスパンダ制御テーブルの情報が例えばメモリ部43におけるフラッシュメモリに格納される。
【0073】
[2−3.サーボ光用フォーカス機構の役割]
ここで、本実施の形態の記録再生装置10においては、録再光用フォーカス機構15を設けると共に、サーボ光用フォーカス機構28も設けるものとしているが、その意味について次の図5,図6を参照して説明しておく。
【0074】
図5は、サーボ光用フォーカス機構28を設けない場合の問題点について説明するための図である。
先ずこの図5において、図5(b)は、バルク層5内に設定された基準層位置Lprに録再用レーザ光の合焦位置を調整した状態を示している。先の図3において説明したように、この場合の光学系は、このように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦するときに対物レンズ20に録再用レーザ光が平行光入射するように設計される。またこのように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦する状態で対物レンズ20がその基準位置にあるようにされている。
なお、この図5と後の図6では、説明の便宜上、このように対物レンズ20が基準位置にある状態にて、図のようにサーボ用レーザ光が対物レンズ20に平行光で入射したときに、該サーボ用レーザ光の合焦位置が基準面Refに一致するように対物レンズ20が設計されていることを前提とする。
【0075】
図5(b)に示す状態から、基準層位置Lprよりも下層側に形成された情報記録層位置Lplに録再用レーザ光の合焦位置を調整するとしたときには、図5(a)に示されるように、対物レンズ20に録再用レーザ光を発散光で入射させる。すなわち、先の図3(a)で説明したように、録再光用フォーカス機構15において凹レンズ16を対物レンズ20側に駆動することで、対物レンズ20に録再用レーザ光を発散光で入射させるものである。
【0076】
また、基準層位置Lprよりも上層側に形成された情報記録層位置Lpuに録再用レーザ光の合焦位置を調整するときには、図5(c)に示されるように、対物レンズ20に録再用レーザ光を収束光で入射させる。つまり先の図3(c)にて説明したように凹レンズ16を光源側に駆動すればよい。
【0077】
このように、録再光用フォーカス機構15を設けることで、録再用レーザ光の合焦位置を任意に調整することができる。しかしここで注意すべきは、単に録再光用フォーカス機構15により対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させることのみで合焦位置の調整を行った場合には、合焦位置の調整に伴い、対物レンズ20の主平面Somと録再用レーザ光の合焦位置との間の距離Do−rpに比較的大きな変化が生じてしまうという点である。
具体的に、図5(b)に示す基準層位置Lprの選択状態から図5(a)に示す下層側の情報記録層位置Lplの選択状態としたときには、距離Do−rpには図中に+Δと示す変化が生じる。
また、図5(b)に示す基準層位置Lprの選択状態から図5(c)に示す上層側の情報記録層位置Lpuの選択状態としたときには、距離Do−rpには図中の−Δによる変化が生じる。
【0078】
ここで通常、対物レンズ20としては、図5(b)に示すような基準状態にて録再用レーザ光についての良好な収差性能(例えば球面収差やコマ収差など)が得られるように、その設計が行われている。
このことから、図5(a)や図5(c)に示すような距離Do−rpの変化Δが生じると、その発生量に応じて収差性能の低下が生じ、例えば実施の形態のような、100μm〜300μmの範囲、つまり200μm程度といった比較的広い層範囲において多層記録を行うことができなくなってしまう虞がある。これは多層記録の層数が制限されて、大記録容量化を図ることが困難となってしまうことにもなる。
【0079】
換言すれば、図5の場合、対物レンズ20のワーキングディスタンスWDは一定であるが、その場合は、バルク層5内で比較的広い範囲で録再用レーザ光の収差性能が保てないということである。
なおワーキングディスタンスWDが一定となるのは、サーボ用レーザ光が平行光で対物レンズ20に入射され、かつ、サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦するように2軸アクチュエータ21による対物レンズ20のフォーカスサーボがなされるためである。
【0080】
以上のような問題の解決のためには、図2に示したサーボ光用フォーカス機構28を設ける。
図6は、サーボ光用フォーカス機構28による作用について説明するための図である。なお、この場合も図6(a)が基準層位置Lprを選択した基準状態を示し、図6(b)図が基準層位置Lprより下層側の情報記録層位置Lplを選択した状態を示し、図6(c)が基準層位置Lprより上層側の情報記録層位置Lpuを選択した状態を示している。
【0081】
前述のような距離Do−rpの変化に伴う収差性能の低下を抑制するにあたっては、該距離Do−rpが、情報記録層位置Lの選択状態に関わらずほぼ一定となるようにすればよい。
即ち、図6(b)に示す基準層位置Lprの選択状態を基準として、より下層側の情報記録層位置Lplを選択する際には、図6(a)に示すように対物レンズ20をその基準位置よりもバルク型記録媒体1側に近づけるものとすればよい。
同様に、基準層位置Lprよりも上層側の情報記録層位置Lpuを選択する際には、対物レンズ20をその基準位置よりも光源側(バルク型記録媒体1から離れる側)に配置するものとすればよい。
つまりワーキングディスタンスWDを一定に保つという考え方は採らない。
このようにすることで、距離Do−rpの変化Δを抑制でき、録再用レーザ光の収差性能の低下を抑制することができる。つまりその結果、例えば200μm程度といった比較的広い層範囲において多層記録を行うことができる。これによって多層記録の層数の制限を緩和でき、その分、記録容量の拡大化が図られる。
【0082】
このとき、前述のように対物レンズ20は、図6(b)に示されるように基準位置にある状態にてサーボ用レーザ光が所定の発散/収束角(この場合の例では平行光としている)で入射した際に、該サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦するように設計されているものである。従って、上記のように距離Do−rpの調整のために対物レンズ20の位置を基準位置から変位させた場合には、サーボ用レーザ光を基準面Refに合焦させるために、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光のコリメーションを、対物レンズ20の駆動位置に応じて変化させる必要がある。
例えば図6(a)のように情報記録層位置Lplを選択する場合には、上記のように対物レンズ20がバルク型記録媒体1側に近づくように駆動される(つまりサーボ用レーザ光の合焦位置をより下層側にシフトさせる方向への対物レンズ20の駆動)ことに対応させて、対物レンズ20にサーボ用レーザ光を収束光により入射させる。このとき、より下層側の情報記録層位置Lを選択する際には、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光の収束角をより大とすることになる。また、図6(c)のように情報記録層位置Lpuを選択する場合には、上記のように対物レンズ20が光源側に近づくように駆動される(つまりサーボ用レーザ光の合焦位置をより上層側にシフトさせる方向への対物レンズ20の駆動)ことに対応させて、対物レンズ20にサーボ用レーザ光を発散光により入射させる。この場合もより上層側の情報記録層位置Lを選択する際には、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光の発散角をより大とすることになる。
【0083】
このように対物レンズ20の駆動位置に応じてサーボ用レーザ光のコリメーションを変化させるために、図2に示したサーボ光用フォーカス機構28が必要とされているものである。
【0084】
ここで、確認のために述べておくと、この場合の録再光用フォーカス機構15による録再用レーザ光の発散/収束角の設定量は、上記のように対物レンズ20が駆動されることに伴い、先の図5の場合よりも小さくされることになる。具体的に、図6(a)のように基準層位置Lprより下層側の情報記録層位置Lplを選択する場合には、対物レンズ20がその基準位置よりもバルク型記録媒体1側(つまり情報記録層位置Lpl側)に駆動されるので、録再用レーザ光の発散角は図5(a)の場合よりも小でよいことになる。
同様に、図6(c)のように基準層位置Lprより上層側の情報記録層位置Lpuを選択する場合には、対物レンズ20がその基準位置よりも光源側に駆動されるので、録再用レーザ光の収束角は図5(c)の場合よりも小でよいことになる。
【0085】
<3.実施の形態のフォーカス制御>
以上の前提を踏まえた上で、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28、及び2軸アクチュエータ21の具体的な駆動手法について説明する。
先ず、図4に示したメモリ部43には、例えば図7(a)に示すようなエキスパンダ制御テーブルが記憶されている。
【0086】
このエキスパンダ制御テーブルは、バルク型記録媒体1の表面から各情報記録層Lのまでの厚み、つまり各情報記録層Lの位置に応じて、録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28の制御値が記憶されている。
記録層までの厚みとは、情報記録層Lからみたカバー厚と考えることができる。
例えば厚み0.1mmとは、図1の深さ位置100μmに形成される情報記録層L0に相当する。また厚み0.3mmとは、図1の深さ位置300μmに形成される情報記録層L(n)に相当する。ここではあくまで例として、エキスパンダ制御テーブルの内容として、0.1mm、0.15mm、0.175mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmの厚みに相当する情報記録層Lに対応する内容を示している。
【0087】
図2,図3には、録再光用フォーカス機構15の凹レンズ16と凸レンズ18の間の距離をD1とし、また図2にはサーボ光用フォーカス機構28の凹レンズ29と凸レンズ31の間の距離をD2として示している。
この距離D1,D2の制御値がエキスパンダ制御テーブルに記憶されている。
例えば厚み0.1mm位置の情報記録層L0を記録または再生の対象とする場合、距離D1を6.30662mm、距離D2を1.0mmとすることが記憶されている。
なお、もちろん実際のエキスパンダ制御テーブルとしては、このような距離D1、D2の実際の値ではなく、距離D1、D2を図7(a)に示す値となるように凹レンズ16,30を駆動するための制御値が記述されていればよい。
【0088】
このエキスパンダ制御テーブルに記憶される、各情報記録層Lに対応する距離D1、D2は次の条件を満たすように設定される。
【0089】
第1に、録再用レーザ光を、倍率βをできる限り高倍率(25倍以上)で、厚み0.1mm〜0.3mmの範囲で焦点を結像できるものとする。
ここでいう倍率βとは、図3(a)(c)に示す、対物レンズ20から見た録再用レーザ光の物点OBと対物レンズ20の主平面Somとの間の距離をS1とし、対物レンズ20の主平面Somと対物レンズ20による録再用レーザ光の像点(合焦位置)との間の距離をS2としたとき、
β=S1/S2
により定義されるものである。
厚み0.1mm〜0.3mmの範囲で25倍以上の高倍率となるようにすることで、この0.1mm〜0.3mmの範囲で収差性能を確保する。
【0090】
第2に、光軸上、対物レンズ20の視野振り±0.15mm、対物レンズ20のチルト±0.3でのRMS波面収差が70mλ以下の性能を保証する。
【0091】
第3に、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28としての両エキスパンダの可動範囲が6.5mm以下を満たす。
【0092】
第4に、ワーキングディスタンスWDは0.12mm以上を満たす。
【0093】
これらの条件に基づいて求められたD1,D2の値の一例が、図7(a)に示した値である。もちろんD1,D2の値は図示の値に限られるものではない。
特に上記各条件のうち、第1の条件が最も重要である。第1の条件を満たすことで、例えばバルク層5における100μm〜300μmの範囲で適切な記録再生ができることになるためである。
また、実際には2軸アクチュエータ21によってトラッキング方向に駆動される対物レンズ20の視野振りや、バルク型記録媒体1と対物レンズ20の相対的なチルト角度も、記録再生時に各種条件で変動する。従って第2の条件も安定した記録再生動作には重要である。
一方、第3の条件は、エキスパンダの可動性能や設計条件にもよるものである。仮にエキスパンダにより長い可動範囲を許容するのであれば、第3の条件でいう上限は変動する。
また第4の条件は、少なくとも対物レンズ20がバルク型記録媒体1に接触しないようにするためであり、実際の機器の設計によっても異なる。
従って、第3,第4の条件は実際の機器に応じて考慮するものと考えて良い。
【0094】
図7(b)は、このエキスパンダ制御テーブルに示された制御値によって録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28が駆動制御され、さらに2軸アクチュエータ21によって対物レンズ20のサーボ制御がなされた結果としてのワーキングディスタンスWDを示している。上記の通り、ワーキングディスタンスWDを一定とする考えは採らない。図示のように、対象とする情報記録層Lに応じてワーキングディスタンスWDは異なることとなる。
【0095】
本例では、記録時または再生時において、このようなエキスパンダ制御テーブルを用いてフォーカス制御を行う。
図8にコントローラ42によるフォーカス処理のフローチャートを示す。なお、この図8の処理の開始時点で録再用レーザ光、サーボ用レーザ光は出力されており、またスピンドルモータによってバルク型記録媒体1は回転駆動されているとする。
【0096】
コントローラ42はバルク型記録媒体1に対する記録または再生を開始する際、まずステップF101でメモリ部43に格納されたエキスパンダ制御テーブルを確認する。そして記録または再生の対象とする情報記録層Lに応じた厚みにおける距離D1、D2の制御値を読み出して取得する。
【0097】
次にコントローラ42はステップF102で、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28を駆動制御する。
すなわちコントローラ42は、録再光用フォーカス機構15の凹レンズ16と凸レンズ18の距離D1が、エキスパンダ制御テーブルから取得した値となるように駆動信号Dex−rpをレンズ駆動部17に与える。
またコントローラ42は、サーボ光用フォーカス機構28の凹レンズ29と凸レンズ31の距離D2が、エキスパンダ制御テーブルから取得した値となるように駆動信号Dex−svをレンズ駆動部30に与える。
【0098】
その後コントローラ42はステップF103で、サーボ光用サーボ回路41に、フォーカスサーボループをオンとさせる。即ち、サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦される状態となるように、サーボ用レーザ光の戻り光に基づく対物レンズ20の駆動を2軸アクチュエータ21に実行させる。
以上の結果、図6のような状態で、サーボ用レーザ光は基準面Refに合焦される状態を維持した上で、録再用レーザ光は対象の情報記録層Lの位置に合焦される。対物レンズ20のワーキングディスタンスWDについては、結果として図7(b)に示したような距離となる。
【0099】
このようなフォーカス制御を行うことで、本実施の形態では、例えば図1のバルク層5内の100μm〜300μmの間で、情報記録層L0〜L(n)を、それぞれ適正に記録再生できるものとなる。
録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28の制御がエキスパンダ制御テーブルに基づいて行われ、そのエキスパンダ制御テーブルの制御値は、情報記録層L0〜L(n)のそれぞれで録再用レーザ光の収差性能を保証するものとなっているためである。
【0100】
また、特に本例では先に録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28を制御した上で、最終的な調整のために対物レンズ20のサーボ駆動を行う。
これにより、対物レンズ制御の経時変化があっても各情報記録層L0〜L(n)についての記録再生性能を保証することができる。
例えばフォーカス制御において、まず図7(b)のようなワーキングディスタンスWDとなるように対物レンズ20を駆動し、その後、録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28を制御するという手法も有効である。
しかしその場合は、対物レンズ20の位置制御の正確性が確保されることが必要である。対物レンズ20の位置制御のために、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイルに所定のバイアス電流を与えておこなう。
ここで、バイアス電流値に対する対物レンズ20の位置は、2軸アクチュエータ21のダンパーの硬化などの経時変化や機器の個体差などによってバラツキが生じてしまう。そのため、常に対物レンズ20のフォーカス位置を設定値の位置に正確に移動させることは困難となる。その結果、場合によっては、ある情報記録層(例えば最も深い情報記録層L(n)など)で収差性能が十分でなくなることもあり得る。
これに対し本実施の形態では、両エキスパンダを設定された値により制御した後に、対物レンズ20をサーボ制御することになるため、上記のような経時変化の影響は受けないこととなる。
【0101】
ところで図2に示したように、本実施の形態の光学ピックアップOPにおいては、ダイクロイックプリズム19と対物レンズ20との間にDOE32が挿入されている。このDOE32は、上述のように情報記録層Lの位置の選択に伴う距離Do−rpの変化Δの抑制のためにサーボ用レーザ光のコリメーションを変化させる際に、その変化量を抑制するために挿入されたものとなる。
図2において、DOE32は、ダイクロイックプリズム19より入射する録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のうち、サーボ用レーザ光のみを選択に収束させるように構成された波長選択性を有する回折型光学素子である。このようなDOE32の挿入により、特に図6(a)のように下層側の情報記録層位置Lが選択され且つ対物レンズ20がバルク型記録媒体1側に駆動されて、サーボ用レーザ光の収束角を大として合焦位置をより手前側に引くときに、サーボ光用フォーカス機構28によるサーボ用レーザ光の収束角の縮小化を図ることができる。
【0102】
なお確認のために述べておくと、上述のようにエキスパンダ制御テーブルに設定される凹レンズ29の駆動量の情報は、このようにDOE32によりサーボ用レーザ光が収束されることも考慮して設定されるものとなる。
また、対物レンズ20が回折型レンズであってもよい。
【0103】
以上、実施の形態について説明してきたが、本発明は実施の形態の例に限定されるものではない。例えば光学ピックアップの構成は多様に考えられる。
また、実施の形態では記録再生装置10として説明したが、本発明の光記録媒体駆動装置は、記録専用装置、再生専用装置も本発明の範囲となる。
【0104】
なお、本発明の光ピックアップ装置は上述の図2,図4で説明した記録再生装置10としての構成を備えるものとすればよい。
つまり、光学ピックアップOPに加え、コントローラ42、メモリ部43やサーボ制御系の構成も備えた光ピックアップ装置が構成される場合、それが本発明の光ピックアップ装置に該当する。
【符号の説明】
【0105】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、L 情報記録層、OP 光学ピックアップ、10 記録再生装置、11 録再用レーザ、12,25 偏光ビームスプリッタ、13,26 1/4波長板、14,27 コリメートレンズ、15 録再光用フォーカス機構、16,28 凹レンズ、17,30 レンズ駆動部、18,31 凸レンズ、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,33 シリンドリカルレンズ、23 録再光用受光部、24 サーボ用レーザ、32 DOE、34 サーボ光用受光部、35 記録処理部、36 録再光用マトリクス回路、37 再生処理部、38 録再光用サーボ回路、39 サーボ光用マトリクス回路、40 位置情報検出部、41 サーボ光用サーボ回路、42 コントローラ、43 メモリ部
【技術分野】
【0001】
本発明はバルク型記録媒体に対して記録または再生を行う光記録媒体駆動装置と、光記録媒体駆動方法、光ピックアップ装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】特開2002−150598号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるような、いわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0004】
ここで、バルク記録とは、例えば図9に示すように少なくともカバー層101とバルク層102とを有する光記録媒体に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0005】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式は、図10に示されるように、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0006】
ポジ型マイクロホログラム方式は、図10(a)に示すように、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
また、図10(b)に示すネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。
【0007】
図11は、ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である、
ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、図11(a)に示されるように予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行う。具体的には、図中に示すように平行光による光束C,Dを対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成しておく。
このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、図11(b)に示されるようにして消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0008】
さらに本出願人は、他のバルク記録の手法として、特許文献2に開示されるようなボイド記録(空孔記録)方式による記録手法を提案している。
このボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空孔(ボイド)を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
【0009】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとでき、2光束を同位置に集光させるための高い位置制御精度は不要とできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式のように、記録媒体の片側からレーザ照射を行って記録再生を行う場合を考える。
これらの方式はそれぞれ原理は異なるが、バルク層を有する体積型記録媒体に、片側からのみ光を入射させ、バルク層102内で焦点位置のみを変えて多層記録を行うという概念は同じである。
【0011】
これらの記録方式においてバルク層102内に形成される各記録層自体はアドレス情報を持たない。より正確に言えば、記録層は記録マークの記録によって形成されるものであり、記録前には記録層は存在しない。
一般的に従来光ディスクではウォブリンググルーブという蛇行した案内溝を持ち、その周波数を検出することで位置情報を得ていた。しかしネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式では、バルク層102内にウォブリンググルーブを備えた記録層が予め形成されるわけではないため、当該方式で各記録層のアドレス情報を付与しておくことはできない。
そこで、図12に示すように、基準面Refにアドレス情報を付与し、基準面Refに対応するようにバルク層102内に各記録層L0〜L4を記録することが考えられる。
【0012】
この場合、例えばバルク型光記録媒体の基準面Refにはウォブリンググルーブやピット列を形成してアドレス情報を付与する。
一方、記録再生装置は、一つの対物レンズから2系統のレーザ光を照射する。録再用のレーザ光とサーボ用のレーザ光である。
そしてサーボ用レーザ光の戻り光の情報から対物レンズを駆動して、サーボ用レーザ光を基準面Refにフォーカス制御する。さらにサーボ用レーザ光の基準面Refについての戻り光の情報から、トラッキング制御やアドレスデコードを行う。
一方、録再用レーザ光は、基準面Refにフォーカス制御されたサーボ用レーザ光とはディスクの奥行き方向のオフセットをもってフォーカス制御する。つまり録再用レーザ光はバルク層内の所定の記録層形成位置に合焦させ、この録再用レーザ光により、バルク層内に、記録マークを形成し、記録層が形成されるようにする。
【0013】
このような方式を想定する場合、バルク層内の各記録層形成位置に対して、録再用レーザ光が適切な収差特性を維持するようにされることが必要である。
ここで録再用レーザ光のフォーカス制御は、対物レンズの駆動ではなく、例えば対物レンズに入射する録再用レーザ光の収束・発散を制御するエキスパンダ機構によって、上記のオフセットを与える。
対物レンズは、サーボ用レーザ光が基準面に合焦するようにサーボ制御されている。従って対物レンズとバルク型光記録媒体の表面の距離(ワーキングディスタンス)は一定とされる。
そしてその場合、上記のように、録再用レーザ光がバルク層内のすべての記録層位置に合焦できるようにエキスパンダ機構で上記のオフセット量を可変制御することになるが、対物レンズに入射される録再用レーザ光は収束光から発散光まで広く変化することになる。
対物レンズは、ある入射角条件において最も収差性能が良くなるように設計される。例えば録再用レーザ光が平行光で入射されたときの収差性能が最も良くなるように設計される。すると、収束光から発散光まで広く変化する録再用レーザ光について、常に収差性能を保証するのは困難である。換言すれば、すべての記録層について録再用レーザ光の収差特性を保つのは困難となる。
【0014】
そこで本発明では、記録再生対象の記録層に応じて、対物レンズのワーキングディスタンスを変動させることを提案し、その上で適切なフォーカス制御を実行する方式を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光記録媒体駆動装置は、バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部とを備える。
【0016】
また上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構は、固定レンズと可動レンズを有するエキスパンダにより構成され、上記制御値は、上記固定レンズと上記可動レンズの間の距離を指示する値であるとする。
また上記対物レンズ駆動フォーカス機構は、上記第2のレーザ光の上記基準面からの戻り光に基づいてフォーカスサーボ動作を行う。
また上記光学系には、上記対物レンズへ入射する上記第2のレーザ光に有効な回折素子を設ける。
【0017】
また本発明の光記録媒体駆動方法は、上記の光学系と、第1のフォーカス機構と、第2のフォーカス機構と、対物レンズ駆動フォーカス機構とを備えた光記録媒体駆動装置の、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際の光記録媒体駆動方法である。そして、上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を取得するステップと、取得した制御値に基づいて、上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御するステップと、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とするステップとを行う。
【0018】
このような本発明では、まず第1のレーザ光(記録用または再生用レーザ光)の光路に、例えばエキスパンダ機構として第1のフォーカス機構を設ける。さらに第2のレーザ光(サーボ用レーザ光)の光路にも例えばエキスパンダ機構として第2のフォーカス機構を設ける。つまり、第1,第2のレーザ光は、それぞれが独立して対物レンズへの入射光の発散・収束を制御できるようにする。
その構成において、まず予め設定された制御値で、第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構を駆動制御する。制御値は、対象とする情報記録層に応じて予め決められた値である。そしてその制御値による第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の駆動制御は、収差特性が維持できる範囲の駆動となる。そしてこれらの後、対物レンズ駆動フォーカス機構によって対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御を行う。結果として対物レンズのワーキングディスタンスは変動するが、これは問題とならない。その一方で、すべての情報記録層に対して第1のレーザ光の収差特性を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バルク型光記録媒体のバルク層を用いた多層記録において、すべての情報記録層に対して好適な記録または再生が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態で用いるバルク型記録媒体の説明図である。
【図2】実施の形態の記録再生装置の光学系の説明図である。
【図3】実施の形態の録再光用フォーカス機構を用いた合焦位置の調整手法の説明図である。
【図4】実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成のブロック図である。
【図5】サーボ光用フォーカス機構を設けない場合の説明図である。
【図6】サーボ光用フォーカス機構による作用の説明図である。
【図7】実施の形態のエキスパンダ制御テーブルの説明図である。
【図8】実施の形態のフォーカス処理のフローチャートである。
【図9】バルク型光記録媒体の説明図である。
【図10】マイクロホログラム方式の説明図である。
【図11】ネガ型マイクロホログラム方式の説明図である。
【図12】バルク型記録媒体についてのサーボ制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光記録媒体駆動装置、光ピックアップ装置の実施の形態となる記録再生装置について、次の順序で説明する。
<1.実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体>
<2.記録再生装置の構成>
[2−1.光学ピックアップの内部構成]
[2−2.記録再生装置の全体的な内部構成]
[2−3.サーボ光用フォーカス機構の役割]
<3.実施の形態のフォーカス制御>
【0022】
<1.実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体>
図1は、実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
この図1に示すバルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお、光記録媒体とは、光の照射により記録情報の再生が行われる記録媒体を指す。
本例の場合、例えばネガ型マイクロホログラム方式又はボイド記録方式に用いる光記録媒体としている。
【0023】
先に図12で説明したように、ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、予めバルク層に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行う。このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の記録層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
また、いわゆる空孔(ボイド)を記録マークとして形成するボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層内に空孔(ボイド)を記録する。このように形成された空孔部分は、バルク層内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
但し、以下説明していく本実施の形態は、必ずしもネガ型マイクロホログラム方式や、ボイド記録方式のみに適用可能なものでなく、バルク型記録媒体1の一面側からサーボ用と録再用の2系統のレーザ光を照射し、バルク層に情報記録を行うものに適用できるものである。
【0024】
図1に示すように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての光学ドライブ装置(記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち光学ドライブ装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0025】
バルク型記録媒体1において、カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられている。
位置案内子は、スパイラル状又は同心円状に形成される。本例の場合、位置案内子はスパイラル状に形成されているものとして以下の説明を続ける。
上記の案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がピット列で形成される場合、ピットとランドの長さの組み合わせにより位置情報(絶対位置情報:ディスク上での回転角度位置を表す情報としての回転角度情報や、半径位置情報など)が記録される。或いは、案内溝がグルーブとされる場合、当該グルーブを周期的に蛇行(ウォブル)させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報の記録が行われる。
カバー層2は、例えばこのような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0026】
また、案内溝が形成されたカバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、情報記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射する。
このとき、仮に、サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0027】
選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、ネガ型マイクロホログラム方式やボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
【0028】
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、案内溝としての位置案内子が形成された選択反射膜3は、サーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0029】
バルク層5に対しては、バルク層5の深さ方向における予め定められた各位置に対し、逐次レーザ光を合焦させてボイド(空孔)マーク形成による情報記録が行われる。
従って記録済みとなった記録媒体1において、バルク層5内には、複数のマーク形成層(情報記録層)Lが形成される。図では情報記録層L0〜L(n)として示しているように、多数(n+1個)の情報記録層が形成される。例えばn=19で20層などとされる。
【0030】
バルク層5の厚みサイズ等は確定的ではないが、録再用レーザ光として例えば青色レーザ光(波長405nm)をNAを0.85の光学系で照射することを考えた場合、ディスク表面(カバー層2の表面)から深さ方向に50μm〜300μmの位置に情報記録層を形成することが適切である。これは球面収差補正を考慮した範囲である。
図1では、ディスク表面から100μm〜300μmの位置に情報記録層Lを形成する例としている。当
当然ながら、情報記録層の数(n+1)は、層間隔を狭くするほど、多数の情報記録層を形成することができる。
例えば情報記録層位置L0〜L19を形成する場合、間の各情報記録層位置Lは、隣接する各情報記録層位置Lの間隔が平均して10μmとなるようにして設定される。
なお、基準面Refの位置はバルク型記録媒体1の表面からおよそ50μmの位置であり、従って基準面Refから情報記録層L0までの間隔はおよそ50μmとなる。
【0031】
<2.記録再生装置の構成>
図2及び図4は、図1に示したような構造を有するバルク型記録媒体1に対する記録/再生を行う実施の形態としての記録再生装置10の内部構成について説明するための図である。
図2は、実施の形態の記録再生装置10が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示し、図4は、記録再生装置10の全体的な内部構成を示している。
【0032】
[2−1.光学ピックアップの内部構成]
先ずは図2により、光学ピックアップOPの内部構成について見ていく。
図中のバルク型記録媒体1は、記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示は省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、上記スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光、サーボ用レーザ光を照射するために設けられる。
【0033】
光学ピックアップOP内には、マークによる情報記録、及びマークにより記録された情報の再生を行うための録再用レーザ光の光源である録再用レーザ11と、基準面Refに形成された案内溝を利用した位置制御を行うための光であるサーボ用レーザ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。
ここで、前述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長が異なる。本例の場合、録再用レーザ光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、サーボ用レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
【0034】
また、光学ピックアップOP内には、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、録再用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための録再光用受光部23と、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するためのサーボ光用受光部34とが設けられる。
【0035】
その上で、光学ピックアップOP内においては、録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光を対物レンズ20に導くと共に、対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光を録再光用受光部23に導くための光学系が形成される。
【0036】
具体的に、録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ12に入射する。偏光ビームスプリッタ12は、このように録再用レーザ11より入射した録再用レーザ光を透過するように構成されている。
【0037】
偏光ビームスプリッタ12を透過した録再用レーザ光は、1/4波長板13を介した後、コリメートレンズ14にて平行光となるように変換されて、録再光用フォーカス機構(エキスパンダ)15に入射する。
図示するように録再光用フォーカス機構15は、可動レンズとされる凹レンズ16、レンズ駆動部17、及び固定レンズとされる凸レンズ18を有して構成される。
【0038】
コリメートレンズ14を介した録再用レーザ光は、凹レンズ16、及び凸レンズ18を介して、録再光用フォーカス機構15外部に出射される。
録再光用フォーカス機構15においては、凹レンズ16がレンズ駆動部17によって録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、録再用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。
レンズ駆動部17は、後述するコントローラ42(図4)からの駆動信号Dex−rpに基づき凹レンズ16を駆動する。このことで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、これに伴って録再用レーザ光の合焦位置が調整されることになる。
【0039】
ここで、次の図3により、録再光用フォーカス機構15を用いた合焦位置の具体的な調整手法について説明しておく。
先ず、バルク層5内の各情報記録層Lの位置を対象とした記録を行うにあたっては、予め基準層位置Lprを設定しておくことになる。この基準層位置Lprは、録再用レーザ光の合焦位置の調整(設定)にあたって基準とすべき情報記録層Lの位置である。
具体的に本例の場合で、形成される情報記録層は、情報記録層L0〜L19の20層とする。このうちのほぼ中間に位置する情報記録層L(表面からおよそ200μmの位置:例えばL9又はL10の位置)を基準層位置Lprとして設定するものとしている。
【0040】
この場合の録再光用フォーカス機構15は、このような基準層位置Lprへの合焦状態を基準として、録再用レーザ光の合焦位置の調整を行う。
具体的に、この場合における録再用レーザ光についての光学系は、図3(b)に示すように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦する状態で、レンズ駆動部17による凹レンズ16の駆動位置が、基準位置にあるように設計されている。この場合、凹レンズ16の基準位置とは、レンズ駆動部17への駆動信号Dex−rpのレベルがゼロレベルである状態を指すものとする。
なおかつ、この場合の光学系は、このように凹レンズ16が基準位置にある状態において、該凹レンズ16から凸レンズ18を介して出射される(つまり対物レンズ20に入射する)録再用レーザ光が、図のように平行光となるように設計されている。
【0041】
この図3(b)に示す状態を基準として、基準層位置Lprよりも下層側の情報記録層Lの位置に録再用レーザ光の合焦位置を設定するとしたときには、図3(a)に示されるように、凹レンズ16を対物レンズ20に近づく方向に駆動する。例えば駆動信号Dex−rpとして正極性による信号を与える。
これにより、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光は発散光となり、その結果、録再用レーザ光の合焦位置は基準層位置Lprよりも下層側に調整されることになる。
このとき、凹レンズ16の上記基準位置からの駆動量に比例して、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の発散角が大となり、録再用レーザ光の合焦位置が基準層位置Lprのより下層側に調整されることになる。
【0042】
一方、基準層位置Lprより上層側の情報記録層Lの位置に録再用レーザ光の合焦位置を設定するとしたときは、図3(c)のように、凹レンズ16を対物レンズ20から離れる方向(光源側の方向)に駆動する。例えば駆動信号Dex−rpとして負極性による信号を与えることで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光を収束光に変化させる。これにより、録再用レーザ光の合焦位置を基準層位置Lprよりも上層側に調整できる。このとき、凹レンズ16の基準位置からの駆動量をより大とすることで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の収束角をより大とでき、録再用レーザ光の合焦位置をより上層側に調整できる。
【0043】
説明を図2に戻す。
録再光用フォーカス機構15を介した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19を透過する。
【0044】
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光は、図示するようにDOE(Diffractive Optical Element:回折型光学素子)32を介した後、対物レンズ20により集光されてバルク型記録媒体1に照射される。
なお、DOE32については後述する。
【0045】
対物レンズ20に対しては、当該対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0046】
ここで、再生時においては、バルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、バルク型記録媒体1(バルク層5内の再生対象の情報記録層Lに記録されたマーク列)より録再用レーザ光の反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ20、DOE32を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19を透過する。
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光の反射光は、録再光用フォーカス機構15(凸レンズ18→凹レンズ16)、コリメートレンズ14、1/4波長板13を介した後、偏光ビームスプリッタ12に入射する。
【0047】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ12に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板13による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、録再用レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ12に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なる。この結果、上記のように入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ12にて反射される。
【0048】
このように偏光ビームスプリッタ12にて反射された録再用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ22を介して、録再光用受光部23の受光面上に集光する。
【0049】
また光学ピックアップOP内には、以上の録再用レーザ光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からのサーボ用レーザ光の反射光をサーボ光用受光部34に導くための光学系が形成される。
サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ25に入射する。偏光ビームスプリッタ25は、このようにサーボ用レーザ24から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0050】
偏光ビームスプリッタ25を透過したサーボ用レーザ光は、1/4波長板26を介した後、コリメートレンズ27により平行光となるように変換されてサーボ光用フォーカス機構28に入射する。
サーボ光用フォーカス機構28は、可動レンズとしての凹レンズ29、レンズ駆動部30、及び固定レンズとしての凸レンズ31を有して構成される。
コリメートレンズ28を介したサーボ用レーザ光は、このサーボ光用フォーカス機構28において、凹レンズ29、及び凸レンズ31を介して、サーボ光用フォーカス機構28外部に出射される。
このサーボ光用フォーカス機構28としても、先の録再光用フォーカス機構15と同様に、凹レンズ29がレンズ駆動部30によってサーボ用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、サーボ用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。
レンズ駆動部30は、後述するコントローラ42からの駆動信号Dex−svに基づき凹レンズ29を駆動する。このことで、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光のコリメーションが変化し、これに伴ってサーボ用レーザ光の合焦位置が独立して調整されることになる。
サーボ光用フォーカス機構28によりサーボ用レーザ光の合焦位置を独立して調整することの意味については後述する。
【0051】
サーボ光用フォーカス機構28を介したサーボ用レーザ光は、図のようにダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。このためサーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム19にて反射され、DOE32を介した後、対物レンズ20により集光されてバルク型記録媒体1に照射される。
【0052】
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20、DOE32を介した後、ダイクロイックプリズム19にて反射される。そしてサーボ光用フォーカス機構28(凸レンズ31、凹レンズ29)、コリメートレンズ27、1/4波長板26を介して偏光ビームスプリッタ25に入射する。
先の録再用レーザ光の場合と同様に、このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板26の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なる。従って復路光としてのサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ25にて反射される。
【0053】
偏光ビームスプリッタ25にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ33を介してサーボ光用受光部34の受光面上に集光する。
【0054】
なお、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0055】
[2−2.記録再生装置の全体的な内部構成]
記録再生装置10の全体的な内部構成は、図4に示すものとなる。
なお、この図4においては、光学ピックアップOPの内部構成については一部のみを抽出して示している。
【0056】
図4において、記録再生装置10には、バルク層5を対象とした記録/再生や、マーク記録/再生時における対物レンズ20のフォーカス/トラッキング制御を行うための信号処理系の構成として、図中の記録処理部35、録再光用マトリクス回路36、再生処理部37、録再光用サーボ回路38、サーボ光用マトリクス回路39、位置情報検出部40、及びサーボ光用サーボ回路41が設けられている。
【0057】
記録処理部35には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部35は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部35は、このように生成した記録変調データ列に基づく記録パルスRCPにより、光学ピックアップOP内の録再用レーザ11の発光駆動を行う。
【0058】
録再光用マトリクス回路36は、図2に示した録再光用受光部23としての複数の受光素子からの受光信号DT−rp(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−rp、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE−rpを生成する。
【0059】
録再光用マトリクス回路36にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部37に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE−rp、上記トラッキングエラー信号TE−rpは、録再光用サーボ回路38に対して供給される。
【0060】
再生処理部37は、上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0061】
また、録再光用サーボ回路38は、マトリクス回路36から供給されるフォーカスエラー信号FE−rp、トラッキングエラー信号TE−rpに基づきフォーカスサーボ信号FS−rp、トラッキングサーボ信号TS−rpをそれぞれ生成する。そして、これらフォーカスサーボ信号FS−rp、トラッキングサーボ信号TS−rpに基づくフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpに基づき、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
【0062】
また、録再光用サーボ回路38は、再生時にコントローラ42から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとしてトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御等も行うことができる。
【0063】
なお、このような録再用レーザ光の反射光に基づく2軸アクチュエータ21(対物レンズ20)のサーボ制御は、再生時において可能となる。すなわち再生時には、バルク層5内に情報記録層Lが形成されており、情報記録層Lからの録再用レーザ光の反射光に基づくサーボ制御が可能であることによる。
ただし、再生時であっても、記録時と同様、2軸アクチュエータ21による対物レンズ20のサーボ駆動は、次に述べるサーボ用レーザ光の反射光に基づくサーボ系によって行っても良い。
【0064】
サーボ用レーザ光の反射光についての信号処理系において、サーボ光用マトリクス回路39は、図2に示したサーボ光用受光部34における複数の受光素子からの受光信号DT−svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的にサーボ光用マトリクス回路39は、フォーカス/トラッキングの各サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svを生成する。
またサーボ光用マトリクス回路39は、基準面Refにおいて記録された絶対位置情報(アドレス情報)の検出を行うための位置情報検出用信号Dpsを生成する。例えば絶対位置情報がピット列により記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしては和信号を生成する。或いは、ウォブリンググルーブにより絶対位置情報が記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしてはプッシュプル信号を生成する。
【0065】
位置情報検出用信号Dpsは、位置情報検出部40に供給される。位置情報検出部40は、位置情報検出用信号Dpsに基づき基準面Refに記録された絶対位置情報を検出する。検出された絶対位置情報はコントローラ42に対して供給される。
【0066】
また、サーボ光用マトリクス回路39にて生成されたフォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svは、サーボ光用サーボ回路41に対して供給される。
サーボ光用サーボ回路41は、フォーカスエラー信号FE−sv、トラッキングエラー信号TE−svに基づきフォーカスサーボ信号FS−sv、トラッキングサーボ信号TS−svをそれぞれ生成する。
そして、記録時には、コントローラ42からの指示に応じて、フォーカスサーボ信号FS−sv、トラッキングサーボ信号TS−svに基づき生成したフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svに基づいて、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、サーボ用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
【0067】
また、サーボ光用サーボ回路41は、記録時にコントローラ42から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、基準面Refに対するフォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0068】
コントローラ42は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。
【0069】
フォーカス系制御に関しては、コントローラ42は、録再光用フォーカス機構15におけるレンズ駆動部17の駆動制御とサーボ光用フォーカス機構28におけるレンズ駆動部30の駆動制御とを行う。
すなわちコントローラ42はレンズ駆動部17に対して駆動信号Dex−rpを与えて凹レンズ16の位置を可変制御する。
またコントローラ42はレンズ駆動部30に対して駆動信号Dex−svを与えて凹レンズ30の位置を可変制御する。
これにより録再用レーザ光を所要の情報記録層Lの位置に合焦させ、且つサーボ用レーザ光を基準面Refに合焦させる。このような合焦位置調整の具体的な手法については後述する。
【0070】
またコントローラ42は、記録時と再生時で、対物レンズ20のサーボ制御切り替えを行う場合は、その制御を行う。すなわち、コントローラ42は、記録時には、サーボ光用サーボ回路41に対してフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svの出力を指示し、また録再光用サーボ回路38にはフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpの出力を停止するように指示を行う。
一方、再生時にはコントローラ42は、録再光用サーボ回路38に対してフォーカス駆動信号FD−rp、トラッキング駆動信号TD−rpの出力を指示し、サーボ光用サーボ回路41に対してはフォーカス駆動信号FD−sv、トラッキング駆動信号TD−svの出力を停止するように指示を行う。
もちろん上述のように、再生時もサーボ光用サーボ回路41側によって、2軸アクチュエータ21による対物レンズ20の駆動を実行させる場合も考えられる。
【0071】
またコントローラ42は、サーボ光用サーボ回路41に対するシーク動作制御を行う。すなわち、サーボ用レーザ光のスポット位置を基準面Ref上における所定のアドレスに移動させるようにサーボ回路41に対する指示を行う。
【0072】
メモリ部43は、コントローラ42が用いる記録領域として、ROM、RAM、フラッシュメモリ等を包括的に示している。
ROMには、コントローラ42のプログラムなどが記憶される。RAMはコントローラ42のワーク領域として用いられる。
また後述するエキスパンダ制御テーブルの情報が例えばメモリ部43におけるフラッシュメモリに格納される。
【0073】
[2−3.サーボ光用フォーカス機構の役割]
ここで、本実施の形態の記録再生装置10においては、録再光用フォーカス機構15を設けると共に、サーボ光用フォーカス機構28も設けるものとしているが、その意味について次の図5,図6を参照して説明しておく。
【0074】
図5は、サーボ光用フォーカス機構28を設けない場合の問題点について説明するための図である。
先ずこの図5において、図5(b)は、バルク層5内に設定された基準層位置Lprに録再用レーザ光の合焦位置を調整した状態を示している。先の図3において説明したように、この場合の光学系は、このように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦するときに対物レンズ20に録再用レーザ光が平行光入射するように設計される。またこのように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦する状態で対物レンズ20がその基準位置にあるようにされている。
なお、この図5と後の図6では、説明の便宜上、このように対物レンズ20が基準位置にある状態にて、図のようにサーボ用レーザ光が対物レンズ20に平行光で入射したときに、該サーボ用レーザ光の合焦位置が基準面Refに一致するように対物レンズ20が設計されていることを前提とする。
【0075】
図5(b)に示す状態から、基準層位置Lprよりも下層側に形成された情報記録層位置Lplに録再用レーザ光の合焦位置を調整するとしたときには、図5(a)に示されるように、対物レンズ20に録再用レーザ光を発散光で入射させる。すなわち、先の図3(a)で説明したように、録再光用フォーカス機構15において凹レンズ16を対物レンズ20側に駆動することで、対物レンズ20に録再用レーザ光を発散光で入射させるものである。
【0076】
また、基準層位置Lprよりも上層側に形成された情報記録層位置Lpuに録再用レーザ光の合焦位置を調整するときには、図5(c)に示されるように、対物レンズ20に録再用レーザ光を収束光で入射させる。つまり先の図3(c)にて説明したように凹レンズ16を光源側に駆動すればよい。
【0077】
このように、録再光用フォーカス機構15を設けることで、録再用レーザ光の合焦位置を任意に調整することができる。しかしここで注意すべきは、単に録再光用フォーカス機構15により対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させることのみで合焦位置の調整を行った場合には、合焦位置の調整に伴い、対物レンズ20の主平面Somと録再用レーザ光の合焦位置との間の距離Do−rpに比較的大きな変化が生じてしまうという点である。
具体的に、図5(b)に示す基準層位置Lprの選択状態から図5(a)に示す下層側の情報記録層位置Lplの選択状態としたときには、距離Do−rpには図中に+Δと示す変化が生じる。
また、図5(b)に示す基準層位置Lprの選択状態から図5(c)に示す上層側の情報記録層位置Lpuの選択状態としたときには、距離Do−rpには図中の−Δによる変化が生じる。
【0078】
ここで通常、対物レンズ20としては、図5(b)に示すような基準状態にて録再用レーザ光についての良好な収差性能(例えば球面収差やコマ収差など)が得られるように、その設計が行われている。
このことから、図5(a)や図5(c)に示すような距離Do−rpの変化Δが生じると、その発生量に応じて収差性能の低下が生じ、例えば実施の形態のような、100μm〜300μmの範囲、つまり200μm程度といった比較的広い層範囲において多層記録を行うことができなくなってしまう虞がある。これは多層記録の層数が制限されて、大記録容量化を図ることが困難となってしまうことにもなる。
【0079】
換言すれば、図5の場合、対物レンズ20のワーキングディスタンスWDは一定であるが、その場合は、バルク層5内で比較的広い範囲で録再用レーザ光の収差性能が保てないということである。
なおワーキングディスタンスWDが一定となるのは、サーボ用レーザ光が平行光で対物レンズ20に入射され、かつ、サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦するように2軸アクチュエータ21による対物レンズ20のフォーカスサーボがなされるためである。
【0080】
以上のような問題の解決のためには、図2に示したサーボ光用フォーカス機構28を設ける。
図6は、サーボ光用フォーカス機構28による作用について説明するための図である。なお、この場合も図6(a)が基準層位置Lprを選択した基準状態を示し、図6(b)図が基準層位置Lprより下層側の情報記録層位置Lplを選択した状態を示し、図6(c)が基準層位置Lprより上層側の情報記録層位置Lpuを選択した状態を示している。
【0081】
前述のような距離Do−rpの変化に伴う収差性能の低下を抑制するにあたっては、該距離Do−rpが、情報記録層位置Lの選択状態に関わらずほぼ一定となるようにすればよい。
即ち、図6(b)に示す基準層位置Lprの選択状態を基準として、より下層側の情報記録層位置Lplを選択する際には、図6(a)に示すように対物レンズ20をその基準位置よりもバルク型記録媒体1側に近づけるものとすればよい。
同様に、基準層位置Lprよりも上層側の情報記録層位置Lpuを選択する際には、対物レンズ20をその基準位置よりも光源側(バルク型記録媒体1から離れる側)に配置するものとすればよい。
つまりワーキングディスタンスWDを一定に保つという考え方は採らない。
このようにすることで、距離Do−rpの変化Δを抑制でき、録再用レーザ光の収差性能の低下を抑制することができる。つまりその結果、例えば200μm程度といった比較的広い層範囲において多層記録を行うことができる。これによって多層記録の層数の制限を緩和でき、その分、記録容量の拡大化が図られる。
【0082】
このとき、前述のように対物レンズ20は、図6(b)に示されるように基準位置にある状態にてサーボ用レーザ光が所定の発散/収束角(この場合の例では平行光としている)で入射した際に、該サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦するように設計されているものである。従って、上記のように距離Do−rpの調整のために対物レンズ20の位置を基準位置から変位させた場合には、サーボ用レーザ光を基準面Refに合焦させるために、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光のコリメーションを、対物レンズ20の駆動位置に応じて変化させる必要がある。
例えば図6(a)のように情報記録層位置Lplを選択する場合には、上記のように対物レンズ20がバルク型記録媒体1側に近づくように駆動される(つまりサーボ用レーザ光の合焦位置をより下層側にシフトさせる方向への対物レンズ20の駆動)ことに対応させて、対物レンズ20にサーボ用レーザ光を収束光により入射させる。このとき、より下層側の情報記録層位置Lを選択する際には、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光の収束角をより大とすることになる。また、図6(c)のように情報記録層位置Lpuを選択する場合には、上記のように対物レンズ20が光源側に近づくように駆動される(つまりサーボ用レーザ光の合焦位置をより上層側にシフトさせる方向への対物レンズ20の駆動)ことに対応させて、対物レンズ20にサーボ用レーザ光を発散光により入射させる。この場合もより上層側の情報記録層位置Lを選択する際には、対物レンズ20に入射するサーボ用レーザ光の発散角をより大とすることになる。
【0083】
このように対物レンズ20の駆動位置に応じてサーボ用レーザ光のコリメーションを変化させるために、図2に示したサーボ光用フォーカス機構28が必要とされているものである。
【0084】
ここで、確認のために述べておくと、この場合の録再光用フォーカス機構15による録再用レーザ光の発散/収束角の設定量は、上記のように対物レンズ20が駆動されることに伴い、先の図5の場合よりも小さくされることになる。具体的に、図6(a)のように基準層位置Lprより下層側の情報記録層位置Lplを選択する場合には、対物レンズ20がその基準位置よりもバルク型記録媒体1側(つまり情報記録層位置Lpl側)に駆動されるので、録再用レーザ光の発散角は図5(a)の場合よりも小でよいことになる。
同様に、図6(c)のように基準層位置Lprより上層側の情報記録層位置Lpuを選択する場合には、対物レンズ20がその基準位置よりも光源側に駆動されるので、録再用レーザ光の収束角は図5(c)の場合よりも小でよいことになる。
【0085】
<3.実施の形態のフォーカス制御>
以上の前提を踏まえた上で、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28、及び2軸アクチュエータ21の具体的な駆動手法について説明する。
先ず、図4に示したメモリ部43には、例えば図7(a)に示すようなエキスパンダ制御テーブルが記憶されている。
【0086】
このエキスパンダ制御テーブルは、バルク型記録媒体1の表面から各情報記録層Lのまでの厚み、つまり各情報記録層Lの位置に応じて、録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28の制御値が記憶されている。
記録層までの厚みとは、情報記録層Lからみたカバー厚と考えることができる。
例えば厚み0.1mmとは、図1の深さ位置100μmに形成される情報記録層L0に相当する。また厚み0.3mmとは、図1の深さ位置300μmに形成される情報記録層L(n)に相当する。ここではあくまで例として、エキスパンダ制御テーブルの内容として、0.1mm、0.15mm、0.175mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmの厚みに相当する情報記録層Lに対応する内容を示している。
【0087】
図2,図3には、録再光用フォーカス機構15の凹レンズ16と凸レンズ18の間の距離をD1とし、また図2にはサーボ光用フォーカス機構28の凹レンズ29と凸レンズ31の間の距離をD2として示している。
この距離D1,D2の制御値がエキスパンダ制御テーブルに記憶されている。
例えば厚み0.1mm位置の情報記録層L0を記録または再生の対象とする場合、距離D1を6.30662mm、距離D2を1.0mmとすることが記憶されている。
なお、もちろん実際のエキスパンダ制御テーブルとしては、このような距離D1、D2の実際の値ではなく、距離D1、D2を図7(a)に示す値となるように凹レンズ16,30を駆動するための制御値が記述されていればよい。
【0088】
このエキスパンダ制御テーブルに記憶される、各情報記録層Lに対応する距離D1、D2は次の条件を満たすように設定される。
【0089】
第1に、録再用レーザ光を、倍率βをできる限り高倍率(25倍以上)で、厚み0.1mm〜0.3mmの範囲で焦点を結像できるものとする。
ここでいう倍率βとは、図3(a)(c)に示す、対物レンズ20から見た録再用レーザ光の物点OBと対物レンズ20の主平面Somとの間の距離をS1とし、対物レンズ20の主平面Somと対物レンズ20による録再用レーザ光の像点(合焦位置)との間の距離をS2としたとき、
β=S1/S2
により定義されるものである。
厚み0.1mm〜0.3mmの範囲で25倍以上の高倍率となるようにすることで、この0.1mm〜0.3mmの範囲で収差性能を確保する。
【0090】
第2に、光軸上、対物レンズ20の視野振り±0.15mm、対物レンズ20のチルト±0.3でのRMS波面収差が70mλ以下の性能を保証する。
【0091】
第3に、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28としての両エキスパンダの可動範囲が6.5mm以下を満たす。
【0092】
第4に、ワーキングディスタンスWDは0.12mm以上を満たす。
【0093】
これらの条件に基づいて求められたD1,D2の値の一例が、図7(a)に示した値である。もちろんD1,D2の値は図示の値に限られるものではない。
特に上記各条件のうち、第1の条件が最も重要である。第1の条件を満たすことで、例えばバルク層5における100μm〜300μmの範囲で適切な記録再生ができることになるためである。
また、実際には2軸アクチュエータ21によってトラッキング方向に駆動される対物レンズ20の視野振りや、バルク型記録媒体1と対物レンズ20の相対的なチルト角度も、記録再生時に各種条件で変動する。従って第2の条件も安定した記録再生動作には重要である。
一方、第3の条件は、エキスパンダの可動性能や設計条件にもよるものである。仮にエキスパンダにより長い可動範囲を許容するのであれば、第3の条件でいう上限は変動する。
また第4の条件は、少なくとも対物レンズ20がバルク型記録媒体1に接触しないようにするためであり、実際の機器の設計によっても異なる。
従って、第3,第4の条件は実際の機器に応じて考慮するものと考えて良い。
【0094】
図7(b)は、このエキスパンダ制御テーブルに示された制御値によって録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28が駆動制御され、さらに2軸アクチュエータ21によって対物レンズ20のサーボ制御がなされた結果としてのワーキングディスタンスWDを示している。上記の通り、ワーキングディスタンスWDを一定とする考えは採らない。図示のように、対象とする情報記録層Lに応じてワーキングディスタンスWDは異なることとなる。
【0095】
本例では、記録時または再生時において、このようなエキスパンダ制御テーブルを用いてフォーカス制御を行う。
図8にコントローラ42によるフォーカス処理のフローチャートを示す。なお、この図8の処理の開始時点で録再用レーザ光、サーボ用レーザ光は出力されており、またスピンドルモータによってバルク型記録媒体1は回転駆動されているとする。
【0096】
コントローラ42はバルク型記録媒体1に対する記録または再生を開始する際、まずステップF101でメモリ部43に格納されたエキスパンダ制御テーブルを確認する。そして記録または再生の対象とする情報記録層Lに応じた厚みにおける距離D1、D2の制御値を読み出して取得する。
【0097】
次にコントローラ42はステップF102で、録再光用フォーカス機構15、サーボ光用フォーカス機構28を駆動制御する。
すなわちコントローラ42は、録再光用フォーカス機構15の凹レンズ16と凸レンズ18の距離D1が、エキスパンダ制御テーブルから取得した値となるように駆動信号Dex−rpをレンズ駆動部17に与える。
またコントローラ42は、サーボ光用フォーカス機構28の凹レンズ29と凸レンズ31の距離D2が、エキスパンダ制御テーブルから取得した値となるように駆動信号Dex−svをレンズ駆動部30に与える。
【0098】
その後コントローラ42はステップF103で、サーボ光用サーボ回路41に、フォーカスサーボループをオンとさせる。即ち、サーボ用レーザ光が基準面Refに合焦される状態となるように、サーボ用レーザ光の戻り光に基づく対物レンズ20の駆動を2軸アクチュエータ21に実行させる。
以上の結果、図6のような状態で、サーボ用レーザ光は基準面Refに合焦される状態を維持した上で、録再用レーザ光は対象の情報記録層Lの位置に合焦される。対物レンズ20のワーキングディスタンスWDについては、結果として図7(b)に示したような距離となる。
【0099】
このようなフォーカス制御を行うことで、本実施の形態では、例えば図1のバルク層5内の100μm〜300μmの間で、情報記録層L0〜L(n)を、それぞれ適正に記録再生できるものとなる。
録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28の制御がエキスパンダ制御テーブルに基づいて行われ、そのエキスパンダ制御テーブルの制御値は、情報記録層L0〜L(n)のそれぞれで録再用レーザ光の収差性能を保証するものとなっているためである。
【0100】
また、特に本例では先に録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28を制御した上で、最終的な調整のために対物レンズ20のサーボ駆動を行う。
これにより、対物レンズ制御の経時変化があっても各情報記録層L0〜L(n)についての記録再生性能を保証することができる。
例えばフォーカス制御において、まず図7(b)のようなワーキングディスタンスWDとなるように対物レンズ20を駆動し、その後、録再光用フォーカス機構15とサーボ光用フォーカス機構28を制御するという手法も有効である。
しかしその場合は、対物レンズ20の位置制御の正確性が確保されることが必要である。対物レンズ20の位置制御のために、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイルに所定のバイアス電流を与えておこなう。
ここで、バイアス電流値に対する対物レンズ20の位置は、2軸アクチュエータ21のダンパーの硬化などの経時変化や機器の個体差などによってバラツキが生じてしまう。そのため、常に対物レンズ20のフォーカス位置を設定値の位置に正確に移動させることは困難となる。その結果、場合によっては、ある情報記録層(例えば最も深い情報記録層L(n)など)で収差性能が十分でなくなることもあり得る。
これに対し本実施の形態では、両エキスパンダを設定された値により制御した後に、対物レンズ20をサーボ制御することになるため、上記のような経時変化の影響は受けないこととなる。
【0101】
ところで図2に示したように、本実施の形態の光学ピックアップOPにおいては、ダイクロイックプリズム19と対物レンズ20との間にDOE32が挿入されている。このDOE32は、上述のように情報記録層Lの位置の選択に伴う距離Do−rpの変化Δの抑制のためにサーボ用レーザ光のコリメーションを変化させる際に、その変化量を抑制するために挿入されたものとなる。
図2において、DOE32は、ダイクロイックプリズム19より入射する録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のうち、サーボ用レーザ光のみを選択に収束させるように構成された波長選択性を有する回折型光学素子である。このようなDOE32の挿入により、特に図6(a)のように下層側の情報記録層位置Lが選択され且つ対物レンズ20がバルク型記録媒体1側に駆動されて、サーボ用レーザ光の収束角を大として合焦位置をより手前側に引くときに、サーボ光用フォーカス機構28によるサーボ用レーザ光の収束角の縮小化を図ることができる。
【0102】
なお確認のために述べておくと、上述のようにエキスパンダ制御テーブルに設定される凹レンズ29の駆動量の情報は、このようにDOE32によりサーボ用レーザ光が収束されることも考慮して設定されるものとなる。
また、対物レンズ20が回折型レンズであってもよい。
【0103】
以上、実施の形態について説明してきたが、本発明は実施の形態の例に限定されるものではない。例えば光学ピックアップの構成は多様に考えられる。
また、実施の形態では記録再生装置10として説明したが、本発明の光記録媒体駆動装置は、記録専用装置、再生専用装置も本発明の範囲となる。
【0104】
なお、本発明の光ピックアップ装置は上述の図2,図4で説明した記録再生装置10としての構成を備えるものとすればよい。
つまり、光学ピックアップOPに加え、コントローラ42、メモリ部43やサーボ制御系の構成も備えた光ピックアップ装置が構成される場合、それが本発明の光ピックアップ装置に該当する。
【符号の説明】
【0105】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、L 情報記録層、OP 光学ピックアップ、10 記録再生装置、11 録再用レーザ、12,25 偏光ビームスプリッタ、13,26 1/4波長板、14,27 コリメートレンズ、15 録再光用フォーカス機構、16,28 凹レンズ、17,30 レンズ駆動部、18,31 凸レンズ、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,33 シリンドリカルレンズ、23 録再光用受光部、24 サーボ用レーザ、32 DOE、34 サーボ光用受光部、35 記録処理部、36 録再光用マトリクス回路、37 再生処理部、38 録再光用サーボ回路、39 サーボ光用マトリクス回路、40 位置情報検出部、41 サーボ光用サーボ回路、42 コントローラ、43 メモリ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、
上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部と、
を備えた光記録媒体駆動装置。
【請求項2】
上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構は、固定レンズと可動レンズを有するエキスパンダにより構成され、
上記制御値は、上記固定レンズと上記可動レンズの間の距離を指示する値である請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記対物レンズ駆動フォーカス機構は、上記第2のレーザ光の上記基準面からの戻り光に基づいてフォーカスサーボ動作を行う請求項2に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項4】
上記光学系には、上記対物レンズへ入射する上記第2のレーザ光に有効な回折素子が設けられている請求項3に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
を備えた光記録媒体駆動装置の、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際の光記録媒体駆動方法として、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を取得するステップと、
取得した制御値に基づいて、上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御するステップと、
上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とするステップと、
を行う光記録媒体駆動方法。
【請求項6】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、
上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部と、
を備えた光ピックアップ装置。
【請求項1】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、
上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部と、
を備えた光記録媒体駆動装置。
【請求項2】
上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構は、固定レンズと可動レンズを有するエキスパンダにより構成され、
上記制御値は、上記固定レンズと上記可動レンズの間の距離を指示する値である請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記対物レンズ駆動フォーカス機構は、上記第2のレーザ光の上記基準面からの戻り光に基づいてフォーカスサーボ動作を行う請求項2に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項4】
上記光学系には、上記対物レンズへ入射する上記第2のレーザ光に有効な回折素子が設けられている請求項3に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
を備えた光記録媒体駆動装置の、上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際の光記録媒体駆動方法として、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を取得するステップと、
取得した制御値に基づいて、上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御するステップと、
上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とするステップと、
を行う光記録媒体駆動方法。
【請求項6】
バルク型光記録媒体のバルク層に対する情報の記録又は再生のための第1のレーザ光を対物レンズから出力するための光路と、上記バルク型光記録媒体の基準面を用いたサーボ制御のための第2のレーザ光を上記対物レンズから出力するための光路とが形成された光学系と、
上記光学系の上記第1のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第1のレーザ光の焦点位置を可変制御する第1のフォーカス機構と、
上記光学系の上記第2のレーザ光の光路に挿入され、上記対物レンズを介した上記第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する第2のフォーカス機構と、
上記対物レンズを上記第1、第2のレーザ光の光軸方向に移動させて、上記第1、第2のレーザ光の焦点位置を可変制御する対物レンズ駆動フォーカス機構と、
上記バルク層内における情報記録層の位置に応じた上記第1のフォーカス機構及び第2のフォーカス機構の制御値を記憶した記憶部と、
上記バルク層内の情報記録層に対して記録又は再生を行う際に、上記記憶部に記憶された制御値に基づいて上記第1のフォーカス機構及び上記第2のフォーカス機構の動作を制御したうえで、上記対物レンズ駆動フォーカス機構の動作を実行させることで、上記第1のレーザ光を情報記録層に合焦させ、上記第2のレーザ光を上記基準面に合焦させた状態とする制御部と、
を備えた光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図10】
【公開番号】特開2011−210296(P2011−210296A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74632(P2010−74632)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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