光走査モジュール
【課題】光走査モジュールにおいて、レーザー光の幅を出射アパーチャで設定する場合、アパーチャ端部に掛かったレーザー光にはけられによって回折が生じ、出射されたレーザー光のメインのピークにサブピークが重畳し、読み取りのための走査レーザー光にスポットの乱れとして発生し読み取り性能を低下する。
【解決手段】光走査モジュールは、半導体レーザーから出射されて、走査されたレーザー光における走査面と、そのレーザー光における半導体レーザーの活性面とが成す角度θ1が0度<θ1<90度の範囲で調整され、レーザー光の出射光軸を中心軸とする傾きにより、出射アパーチャの端部に掛からずにレーザー光が通り抜けて整形されたレーザー光を走査して対象物に照射し、その反射光を受光して情報を得る。
【解決手段】光走査モジュールは、半導体レーザーから出射されて、走査されたレーザー光における走査面と、そのレーザー光における半導体レーザーの活性面とが成す角度θ1が0度<θ1<90度の範囲で調整され、レーザー光の出射光軸を中心軸とする傾きにより、出射アパーチャの端部に掛からずにレーザー光が通り抜けて整形されたレーザー光を走査して対象物に照射し、その反射光を受光して情報を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載され、情報を読み取るためのレーザー光を走査する光走査モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品やタグに印刷されたバーコード記号にレーザー光を走査するように照射させて、その反射光(戻り光)から記載される情報を読み取るバーコード読み取り装置が知られている。この装置の光源として、例えば半導体レーザーダイオードを用いて、出射されたレーザー光(光束)を走査させて、その戻り光から対象物の輝度値情報を取得する光走査モジュールが普及している。ここでは、読み取りの対象物として、バーコードを挙げているが、他にも自動車や人物等の陰影情報や、レーザー走査型顕微鏡により観測される試料等であってもよい。
【0003】
このような光走査モジュールには、例えば、特許文献1が提案している装置がある。この特許文献1には、板ばねと走査ミラーを用いてレーザー光を走査するように出射させて、その戻り光によりバーコードの読み取りができる装置が開示されている。この光走査モジュールは、光源や光検出器、走査ミラー等が一体化されており、任意の機器に、この光走査モジュールを搭載することで、バーコードの読み取りの機能を簡易に追加できるようになっている。
【0004】
一般に、レーザー光は、干渉しやすいことで知られている。レーザー素子を光源に用いて光走査モジュールを構成した場合、レーザー光が出射アパーチャに掛かったときには、けられによってレーザー光に回折が生じる。この回折は、出射されたレーザー光のメインのピークにサブピーク(回折ピーク)を重畳したような現象を発生する。これは、スポットの乱れとして観察され、このような乱れたスポットを有する光走査モジュールは、読み取り性能等の製品性能が著しく低下することになる。
【0005】
このようなスポットの乱れによる性能低下は、実際に検知することができる。例えば、上記のスポットを用いてチャートを走査して反射光を光検出器で検出すると、スポットやその乱れは、電気信号の信号成分に重畳するノイズ成分として評価できる。以後の説明において、このように出射光学系における、けられによって生じる回折に起因するノイズを回折ノイズと称している。
【0006】
このような回折ノイズを改善する従来技術としては、例えば、特許文献2が提案されている。特許文献2には、走査光の反射散乱光を光検出器で取り込み、微分回路を用いてピーク検出を行う回折ノイズ除去回路が開示されている。微分回路を用いることで、印刷物等の微小な反射率の変化をピークとして検出することができ、バーコードの距離を大きく変えた場合であっても読み取りを改善することができる。そして、前述した回折ノイズを低減するため電気回路を追加して、回折ノイズの低減を試みている。
【特許文献1】米国特許番号 US6,360,949
【特許文献2】特許第3447928号
【特許文献3】米国特許番号 US7,004,391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献2で示されるような回折ノイズを入力された場合には、電気回路は、この波形を回折ノイズとして判断して低減するように働く。従って、入力が予め想定された程度のものであれば、適正に機能する。
【0008】
しかし、バーコード読み取り装置のように、様々な読み取り状況下で種々の物品に設けられたバーコードが読み取り対象である場合は、規格に基づくパターンであっても入カレベルや幅などのパターンが変動する。つまり、特許文献2では、回折ノイズに似通ったパターンの真の信号が入カすると、偽の信号と判断される虞がある。誤判断された場合、本来不要な信号処理が行われるため、誤った情報が作成されて出力されることとなる。即ち、外的な要因により、入力信号に変動があった際に、前段の光学系で信号を取り込み、後段のデジタル回路等で信号を処理する場合、後段においては、受け取った情報の真偽を、入力されたパターンの情報のみから判別することは原理的に難しい。
【0009】
これは、情報量という観点からも理解することができる。すなわち、通常、後段のデジタル回路で扱う情報量には、整数値での上限がある。例えば、アナログ/デジタル変換回路の輝度値データのビット数は、8〜10ビット程度であって、情報量は、このビット数のサンプリング数倍となる。
【0010】
この場合、デジタル回路は、取得する以上の情報量(信号量)は原理的に得られないことになる。このような制約の中、いったんデジタル化された情報に対して、ノイズ低減のためのデジタル処理等、意図的な処理を加えると、情報量の上限(信号量)は増えない一方で失われる情報量が出てくる。すると、トータルでみた性能は、劣化する可能性がある。例えば、ノイズ除去のためにスムージング処理(平均化処理)を入れると周波数の高い細かな信号が失われてしまう。または、偽信号を与えたことになる。所望の回折ノイズが生じた場合には機能するが、信号周波数の高い真の信号も失われることになる。
【0011】
従って、トータルのバランスでみれば、読み取りの性能が低下してしまうことが多い。情報量に上限のある後段においては、限られた情報量からそれよりも多くの有意な情報量(信号量)を得ることはできない。一般に、前段から後段での処理になるほど、有意な情報量や信号雑音比は劣化していく。デジタルの処理を加えるということは、信号雑音比という観点からみると信号成分は改善されておらず、ノイズを加えたことと等価となってしまい、性能を劣化させてしまうことが多い。
【0012】
そこで本発明は、光学的に取り込んだ情報を光電変換によるアナログ信号に変換し、後段でデジタル処理を行う際に、アナログ信号の処理時に回折ノイズを改善する光走査モジュールを提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学的に取り込んだ情報を光電変換によるアナログ信号に変換し、後段でデジタル処理を行う際に、アナログ信号の処理時に回折ノイズを改善する光走査モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1A乃至図1Cを参照して、本発明の第1の実施形態に係る光走査モジュールについて説明する。図1Aは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す斜視図である。図1Bは、上蓋を取り外した状態の光走査モジュールの構成を示す図である。図1Cは、光走査モジュールにおける光学系を取り出して概念的に示す図である。
【0015】
まず、光走査モジュールの概要及び外観について説明する。
光走査モジュール1において実現された外形寸法は、20mm×15mm×10mmに収まる程度となっている。勿論、これらの外形寸法の数値は、一例であり、これら以下の数値で実現することも可能である。また、ある程度の範囲であれば、電子機器の搭載スペースに応じて外形寸法を変更することもできる。
【0016】
図1Aに示す光走査モジュール1は、落下等の衝撃に耐え得る強度を有する外装となるハウジング2を有する。ハウジング2は、各構成部位を実装するためのベース部材2aと、上蓋となる基板ユニット2bとで構成される。基板ユニット2bは、ベース部材2aに植立された複数の支持部材2cにビス2dにより固定されている。他にも固定方法としては、フックとストッパをそれぞれに形成して嵌め合わせによる固定や接着剤のよる固定等を用いてもよい。
【0017】
光走査モジュール1は、光学読み取り機能の1ユニットとして、種々の電子機器に搭載できるように、例えば、ベース部材2a下面に固定用ねじ穴等が形成されている。
【0018】
基板ユニット2b上には、コネクタ31及び制御部32が設けられている。制御部32は、後述する各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行うための制御回路や信号処理回路等が形成された回路基板からなる。
【0019】
また、コネクタ31は、ケーブルを介して、外部の機器例えば、コンピュータ(図示せず)に接続する。このコンピュータは、例えば、光走査モジュールに電源電圧を供給し、光走査モジュール1を駆動制御する。例えば、搭載された電子機器のコンピュータの指示(コマンド)に従って、バーコードの読み取りを開始して、走査ミラーを揺動させて、走査されたレーザー光(走査光)を照射する。その走査光にバーコードを翳すと、そのバーコードを読み取る。尚、以降の説明でハウジング2における、レーザー光を照射し、そのレーザー光の反射光を受光する方向を向く面を走査開口面とする。
【0020】
図1B、図1C及び図2を参照して、光走査モジュール1の構成について説明する。
ベース部材2a上には、主たる構成部位として、光源ユニット3と、折り返しミラー5と、光学走査装置4と、光検出ユニット6とが実装される。
【0021】
光源ユニット3は、レーザー光を出射するレーザーダイオード(LD)11と、コリメータレンズ12と、出射アパーチャ13とで構成される。ここで、コリメータレンズ12は、レーザーダイオード11から照射されたレーザー光を平行光化し、出射アパーチャ13は平行光化されたレーザー光の光束断面を絞り、所望の形状及びスポットサイズに生成する。これらのLD11とコリメータレンズ12と出射アパーチャ13は、読み取りの仕様(設計)に応じて、適宜、配置やその距離が調整され、収容部(図示せず)に1ユニットとして収容される。
光源ユニット3から出射されたレーザー光は、折り返しミラー5で反射により偏向されて光学走査装置4に向かう。
【0022】
光学走査装置4は、走査ミラー21と、軸受部23と、駆動部22とが樹脂成型により一体的に接合され、ベース部材2aに植立された回転軸24を中心に回動自在となっている。走査ミラー21の前面は、非球面で且つ凹面状に湾曲した面の集光ミラー21aが形成され、その略中央に平面で矩形形状の面の出射ミラー21bが設けられている。出射ミラー21bと集光ミラー21aは、樹脂成型により一体的に形成されており、走査の角度(走査角)が変動しても、取り込まれた光が光検出器に向かうよう、予め形状や向きが適正に設計されている。樹脂成型された走査ミラー21の出射ミラー21bと集光ミラー21aは、表面が真空蒸着により金の薄膜が蒸着された鏡面に形成される。この鏡面は、レーザー光の波長についての垂直反射率が90%程度となるように製作されている。
【0023】
走査ミラー21は、軸受部23における回動により、後述する走査方向に揺動される。
【0024】
また、駆動部22は、駆動コイル25と、板ばね26と、支持ばね保持部材27、ヨーク28上に配置された磁石29とにより構成される。本実施形態では、走査ミラー21側に駆動コイル25を、ベース部材2a側に磁石29をそれぞれ固定し、駆動コイル25に制御部32より所定の駆動パルスを印加することで電磁カを発生させて走査ミラー21を揺動させる、いわゆるムービングコイル方式の駆動モータである。一方、磁石29と駆動コイル25とが反対に配置された、いわゆるムービングマグネット方式であってもよい。
【0025】
光検出ユニット6は、ベース部材2a上に実装されており、バンドパスフィルタ15と受光開口部16と、光検出器17により構成される。これらのうち、バンドパスフィルタ15は、取り込まれた反射散乱光に対して、光源の波長近傍の光は通過させるが、他の光は遮断する。光検出器17に入射した反射散乱光の強弱は、走査における対象物の反射率の変化に対応しており、走査面領域における外部の情報に対応している。
【0026】
ここで、図2を参照して、本実施形態の光走査モジュールにおける走査光及び走査面の概念について説明する。
まず、光源ユニット3から出射されたレーザー光は、揺動する走査ミラー21に反射して、走査開口面(図1A)より出射する。走査ミラー21の揺動にともなって、レーザー光は略平面内で往復して走査される。以降、走査光の動きにともなって形成される仮想的な面を、走査面Bと称する。図2において、走査面Bは走査光の向きと走査方向の2つのベクトルの張る面となっている。つまり、出射ミラー面21bで反射して出射されたレーザー光は、図1Aに示すハウジング2に設けられた走査開口面を通過して外部に出射される。この出射ミラー面21bで反射されるレーザー光の光軸の振れ(走査面B)が走査開口面の垂線に対して一致するときの走査ミラー21の角度を基準(走査角0°)として、その基準からの走査ミラーの機械的な回動角度を走査角(揺動角)θとする。
【0027】
この状態で、ユーザーが走査面を横切る領域にバーコードを翳すと、走査光がバーコードを横切り、反射散乱光が生じる。反射散乱光は、戻り光として走査開口面より取り込まれて、バーコードの情報が読み取られる。読み取った情報は、コネクタより出力され、外部のコンピュータ等において、種々の処理がなされる。例えば、バーコードのデータに基づき、物品を個々に認識して、予め設定された仕分け条件等に沿って伝票・会計処理等が実行される。
【0028】
次に、図3には、光走査モジュール1の信号の流れに沿って配置された回路構成を示すブロック図である。
光走査モジュール1のベース部材2aの上部には、基板ユニット2bがビス止め固定された構成である。基板ユニット2b上には、コネクタ31、光検出ユニット6及び制御部32が実装されている。制御部32は、演算処理及び判断・制御を行うCPU(図示せず)と、電流/電圧変換回路41と、増幅回路43と、微分回路44と、アナログ/デジタル(A/D)変換回路と45、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)46と、復号回路47とで構成される。尚、出射光学系40は、光源ユニット3及び折り返しミラー5とで構成される。
【0029】
まず、ユーザーが図示しない外部のコンピュータを操作して、コネクタを通じて光走査モジュール1にバーコードの読み取りを開始させる開始コマンドを送出する。この開始コマンドを受けて、制御部32は、駆動コイル25に駆動電圧を印加して、磁石29との相互作用により、走査ミラー21を定期的に往復するように回動させる。
【0030】
さらに、レーザーダイオード11に駆動電圧が供給され、レーザー光が出射される。そのレーザー光は、コリメータレンズ12や折り返しミラー5等を経由して、揺動する走査ミラー21中心の出射ミラー21bで反射して、走査するように走査開口面から走査対象物走査対象物に照射される。
【0031】
バーコード等の走査対象物で反射散乱した光は、出射光と逆の向きに広がりつつ、走査開口面から走査ミラー21の集光ミラー21aに入射する。この反射散乱光(戻り光)は、この集光ミラー面21aで集光されて、バンドパスフィルタ15を通過したのち、光検出器17に取り込まれる。
【0032】
光検出器17は、光電変換の光検出器17から出力された光電流(光信号)は、電流/電圧変換回路41及び増幅回路43を経由して、適正なレベルの電圧に変換され、微分回路44に入力される。微分回路44の出力信号は、A/D変換回路45を経由して、10ビットのデジタル信号に変換されたのち、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)46に取り込まれる。このDSP46は、入力信号に対して、二値化する処理を行っている。二値化された信号は、走査された対象物の反射率や陰影情報に対応している。二値化された信号は、さらに復号回路47に送出される。
【0033】
復号回路47は、二値化された信号を蓄積して、予め決められたバーコードの仕様等に基づいて、蓄積されたパターンとバーコードのパターンの比較を行ってバーコードの情報を復号する。復号されたバーコードの情報は、コネクタ31を介して外部のコンピュータ48等に出力される。
【0034】
次に、図1Cを参照して、光走査モジュール1の光学系について詳細に説明する。
【0035】
光源ユニット3の発光素子であるレーザーダイオード(LD)11は、波長が650nmのレーザー光を出射する。光源ユニット3において、LD11から出射した光は、コリメータレンズ12を通過して略平行光となり、さらに、出射アパーチャ13を通過することで所望のスポット形状に整形される。
【0036】
コリメータレンズ12は、直径が約3.0mm、焦点距離f1が約3.0mmの硝子レンズであって、製品が保証する読み取り距離近辺の性能が最適となるよう、その位置が調整される。
【0037】
出射アパーチャ13は、矩形の開口であって、走査方向の幅A1xが0.7mmとなっている。そして、出射光が経由することでこの幅A1x以上の光は遮断される。これにより、出射光は整形される。この開口の幅A1xは、バー・スペース幅が5milや13milのバーコードのように、所望の対象物の読み取り領域が最適となるように、予め設定されている。出射アパーチャ13を通過したレーザー光は、折り返しミラー5で入反射し、さらに、走査ミラー21の略中央に配置された出射ミラー21bに入射する。
【0038】
出射ミラー21bで反射したレーザー光は、前述した走査面内を往復する動き(走査光)をなす。走査光は、スポット形状に形成され、バーコード等の対象物の上を横切るように移動し、対象物の反射率に対応した反射散乱光を生じさせる。
【0039】
この反射散乱光は、集光ミラー21aに入射する。集光ミラー21aは、焦点距離f2が約10mmの凹面となっており、出射ミラー21bに対して、予め所定の角度をもって固定されている。
【0040】
集光ミラー21aに入射した反射散乱光は、バンドパスフィルタ15を経由して光検出器17の検出面近傍に集光する。バンドパスフィルタ15は透明な硝子板に誘電体多層膜が両面蒸着された構造になっている。そして、光源の波長である650nm近傍の光については垂直透過率が90%程度であるが、それ以外の光の透過率は5%〜1%以下程度となるように、多層膜の膜厚が調整されている。
【0041】
従って、バンドパスフィルタ15により、レーザー光の反射散乱光は取り込むが、それ以外の光は遮断される。バンドパスフィルタ15を通過した反射散乱光は、光検出器17に入射して、光電流に変換される。
【0042】
よって、走査面を遮るようにバーコードの対象物を配置すると、その領域の光学的な情報が電気回路によって取得され、対象物の自動認識をするなど、種々の処理が可能となっている。
【0043】
次に、LD11と他の出射光学系について説明する。
図4には、レーザーダイオード11の外観を示す。LD11は、パッケージの内部に発光のためのレーザーチップ(図示せず)が配置され、背面に電源供給等ための複数のピン11bが設けられている。レーザーチップは、半導体の接合によって形成されており、活性面を有する。レーザー光は活性面に沿って出射する。
【0044】
図5は、LD11を背面から見た図である。図示するように、活性面の向きに対応して、LD11の3本のピン11bが配置されている。LD11外周には、複数の切り欠き11c1,11c2,11c3が設けられている。これらのピン11bに、所定の電圧を与えると、活性面からレーザー光が生じる。
【0045】
図6は、活性面からレーザー光が発する様子を示した図である。
これは、いわゆる、ファーフィールドパターンを示した概念図である。図示するとおり、レーザー光は、出射方向に一定の広がり角をもって進む。活性面に水平な方向と垂直な方向とでは、半導体の構造が異なっていることから、一般に、水平方向と垂直方向の広がり角はそれぞれ異なっている。そこで、活性面に沿った方向の広がり角をθ//、活性面に垂直な方向の広がり角をθ⊥とする。さらに、広がり角は、半値全幅で定義する。すなわち、略中央の光強度のピークに対し、半値を与える全角で規定する。例えば、650nmの可視光の半導体レーザーの場合は、通常、各広がり角は、θ//=8度程度、θ⊥=30度程度である。図6でいえば、レーザー光から直接照射されるスポットは、概して、互いに直交する長軸と短軸を有する楕円形をしている。そして、短軸は活性面に略平行であって、長軸は活性面に略直交している。
【0046】
次に、活性面と走査面の角度θ1について説明する。
図7は、前述したハウジング2にLD11を仮組みした状態を示す図である。以下の説明において、前述した活性面と走査面の2つの面のなす角を角度θ1と定義する。図7に示した状態では、この角度θ1は約90度となっている。この場合、走査面角の向きと、図6におけるθ⊥の向きが略平行となっており、光源については、図8に示すように、走査方向の光の広がり角が約30度となるように配置していることになる。
【0047】
この図8は、図7の状態において、走査面の上部の方向から、出射光学系を見たときの配置について示している。LD11より略30度の広がり角を有して出射された光は、コリメータレンズ12を通過して略平行光となり、さらに、出射アパーチャ13を通過して、走査方向の幅が0.7mmに整形される。従って、出射ビームの走査方向のビームの幅は、出射アパーチャ13を通過した直後においては、一部が遮光されて、0.7mmとなっている。
【0048】
ここで、スポット形状と線像分布関数、ビーム径の定義について説明する。
図9は、図8の配置において、出射アパーチャ13から出射されたレーザー光のスポットの形状を示したものであり、線像分布関数と称されている。走査光学系では、走査方向についての1次元的な光強度の変化が、分解能等、製品性能と相関することが多い。
【0049】
そこで、まず、出射光を出射方向に垂直な面に投影してスポットの2次元的な光強度(点像分布関数)を取得する。次に、その光強度を走査方向など1つの直線方向に投影したと考えて積算する(積分する)。これにより、走査方向の1次元的な光強度分布を得ることができる。このような光強度分布は線像分布関数といわれ、スリット等を用いた測定器による実測値や走査光学系の製品性能と相関していることが多いことから、性能評価等においてよく用いられる。
【0050】
また、ビーム径は、この線像分布関数において、光強度の最大値に対する1/e^2=13.5%(eは自然対数の底であって、e=2.71828…の値である)を与える全幅で規定されることが多い。図9に示すビーム径は250um程度となっている。
【0051】
[ビームウェスト、フォーカス調整]
さらに図9は、ビームウェストにおける線像分布関数を示したものである。
【0052】
本実施形態では、光走査モジュール1は、出射アパーチャ13から150mmの距離において、前述したビーム径が最もシャープになるようにコリメータレンズ12の微調整(フォーカス調整)がなされている。実際には、製品の仕様に基づいて、バーコードの読み取りを最適にしたい距離に適宜合わせて、ビームウェストの調整距離が決められている。
【0053】
尚、図9等に示されたスポット形状について、出射アパーチャ13を出た光は、次の折り返しミラー5と走査ミラー21に入射/反射する。しかしながら、この2つのミラーについては、走査方向の断面形状は平面となるよう予め光学系が設計されている。従って、これらの2枚のミラーを経由しても、走査方向のビームスポットの形状は影響を受けない。
【0054】
さらに、この出射されるレーザー光のスポット径に関連したものとして、ビームウェストにおけるスポットを概算するために、次のエアリー式を説明する。一般的には、以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0055】
ここで、Raはエアリーの半径と呼ばれ、点像分布関数における最初の暗環(スポットを観察したときに暗くなっている位置)を半径で示したものである。F1は観測する側の実効的なFナンバーである。この式は、ビームウェストの近辺においてのみ、成りたつものである。
【0056】
前述したビーム径は、測定の都合等により、ピーク値の1/e^2とすることが多いと説明したが、式(1)では、暗環の半径を示しており、ビーム径の定義とは異なっている。さらに、エアリーディスクは、点像分布関数について定義されたものであるが、前述したビーム径は、線像分布関数において定義されたものであり、式(1)とは相違がある。
【0057】
このような相違から、一般に、1/e^2のビーム径は、エアリーの直径(エアリーの半径の2倍)には完全には一致しない。バーコードスキャナ等において評価をしてみると、1/e^2のビーム径は、エアリーの直径に対して、通常、やや小さめの値を取る。
【0058】
しかしながら、エアリーの式とビーム径は、傾向としては相関することから、設計の指針や調整の方向性を把握するうえでは便利である。後の説明のため、式(1)をこれまで説明した光走査モジュールのパラメータを用いて書き直しておく。
【数2】
【0059】
ここで、f0 は、ビームウェスト距離(フォーカス調整距離)であり、A1xは、前述した走査方向の出射アパーチャ径、λ1は、光の波長である。いまの場合、f0 =150mm、A1x =0.7mm、λ1=0.650umである。
【0060】
また、前述したビーム径は、全幅で定義していたので、対応させるために両辺を2倍してある。式(2)に上記の数値を代入すると、以下のようになる。
【数3】
【0061】
この式3は、点像分布関数の暗環を示すものである。一方、図9に示す線像分布関数のビーム径は、250um前後となっている。定義の違いや1/e^2のビーム径は暗環の手前にくる等の違いにより、2〜3割程度の相違があるものの、オーダーとしてみれば、大きな矛盾がない。
【0062】
[ビームウェストから離れた位置でのスポット形状について]
図9は、出射アパーチャからの距離が150mmのビームウェスト近辺における線像分布関数である。これに対し、図10は、図9と同一の光学系の配置において、出射アパーチャからの対象物の距離のみを変えた例を示している。
【0063】
図10は、出射アパーチャ13からの距離が50mmにおける線像分布関数(ビーム径)の例である。このように、ビームウェストでのスポットの形状に比較して出射アパーチャに近い領域では、ビーム径の形状が崩れている。図示するように、高次のサブピークが顕著となり、フレネル回折として知られている。
【0064】
さらに、図10に示すビーム径は、ビームウェストにおけるビーム径よりも大きくなっている。これは、図10において、走査方向の出射アパーチャの幅を0.7mmとしたことによる。前述したエアリーの式では、ビームウェスト近辺において成り立つ式であるため、現況においては適用できない。ビームウェストから離れた場合には、ビーム径は距離に応じてアパーチャ径に近づくようにふるまう。これは幾何光学からも推測ができる。
【0065】
[走査光学系の信号処理]
次に図11には、評価のためのチャートの一例を示し、走査光学系から得られる信号について説明をする。尚、実際には、バーコード等を用いるが、説明を簡易にするために本チャートを用いる。
【0066】
このチャートでは、2本のバーのみとし、バーの幅は13milである。1mil=25.4mm/1000と定義されており、バーの幅は330.2umである。このようなチャートを出射アパーチャ13からの距離が150mm程度となる位置で走査面を横切るように対向して配置する。
【0067】
そして、レーザー光のスポットをチャートの上で移動させると、光検出器から図12に示す信号が得られる。この信号は、光検出器で検出された光電流を電流/電圧変換回路42や増幅回路43において、処理された後の波形である。横軸は時間であって、走査光のスポットの動きに対応したものである。縦軸は電圧値を最大値でスケールしたものである。ここで、走査ミラー21の走査の周波数は50Hz、走査角の最大値は45度となるように設計されている。
【0068】
図12は、走査の対象物の反射率の変化に対応する電圧値の変動を示す。この光信号を前述の微分回路44に通す。図13は、微分回路44の主要部を示す概念図である。ここでは、カットオフ周波数が50kHzに設定されている。その他の詳細については省略する。図14は、微分回路44から出力された微分信号である。横軸は時間である。縦軸は電圧値であって最大値でスケールとしたものである。
【0069】
前述したとおり、対象物であるチャートのエッジに対応してピークが生じる。従って、このピークの位置を検出して、時間間隔を幅値に換算して出力すれば、走査対象物であるもとのチャート(図11)のパターンを電気回路上において再現することができる。
【0070】
具体的には、図14に示す微分波形は、アナログ/デジタル変換されたのち、基板ユニット2bに搭載されているDSP46にて所定の時間間隔ごとにサンプリングされる。サンプリングされたデータは、予め設定された閾値と比較されて、閾値を超えた場合には絶対値の最大値を検出する。即ち、ピーク値が検出される。
【0071】
このピーク値が検出されたら、その地点がエッジであると判定され、エッジごとに白黒に対応した2値が割り当てられる。サンプリングされた信号についてこれを繰り返すことで、2値化処理が行われる。2値化された信号は走査対象物(チャート)の輝度値のパターンに対応している。この2値化信号は、さらに、復号回路47に転送される。
【0072】
復号回路47は、まず、走査に対応して取得した2値化信号を、回路内のメモリに蓄える。そして、メモリに蓄えられたパターンに対して、バーコードの各種の規格に基づき、パターンの一致・不一致の比較が繰り返し行われる。
【0073】
この比較でパターンが一致した場合には、バーコードのチェックデジツト等を計算して読み取りに問題がないかどうかを確認する。その結果、適正なバーコードとして認識できた場合には、バーコードデータを外部に送信して初期の状態に戻る。例えば、英数字のキャラクタを読み取った場合は、この文字情報がシリアル通信によってコネクタを介して外部のコンピュータに転送されて処理を完了する。適正なバーコードとして認識できなかった場合は、メモリ内に蓄積された諸データを棄却して、初期の状態に戻る
[回折ノイズが生じる状態]
次に、回折ノイズについて、より詳細に説明する。
前述したとおり、出射アパーチャ13から対象物までの距離を変えるとスポットの形状が変化する。例えば、対象物の位置を変えて出射アパーチャ13からの距離を150mmから50mmに変更する。
【0074】
この移動により、スポット形状は、図10に示すものとなる。前述したように、このスポットには、レーザー光の回折現象により、複数の回折ピーク(サブピーク)が生じている。そこで、前回と同様に図10に示すスポットで図11に示すチャートを走査する。その結果、図15に示す光信号の波形が得られる。前述した図12に示した波形に比べると、ビームウェストの距離から離れたため、光信号の傾斜がなだらかになっている。
【0075】
図16は、この光信号を微分回路44に通して得られる出力信号の微分波形を示す。このように、図10で得られたスポットと同じ形状が、微分波形に再度現れる。これは、ビームスポットをチャートにあてて、その領域の反射散乱光を取り込むということは、ビームスポットとチャートのコンボルーションの積分計算を行ったことに相当する。その走査波形を微分回路44に通すということは、積分を行ったのちに微分を行うことに相当するので、元のビームのスポットの形状等が現れる。
【0076】
従って、図12で説明をしたサブピーク(高次の回折光)に対応して、微分波形に複数のサブピークが生じることがわかる。これは、光学系における高次の回折光は、電気回路のノイズと等価にふるまうことを意味している。そして、この場合、前述したピーク検出は適正に機能しない。なぜなら、本来のメインピーク(信号成分)に加えて、多数のサブピーク(ノイズ成分)が上書きされて出現するため、ピークの真偽の判定が困難となることによる。
【0077】
前述した例では、図11に示すような簡単なチャートを用いて説明したが、実際には、チャートの印刷密度がさらに高まり、各ライン(又は、ドット)は、さらに太細や濃度のバリエーションが相当数になる。例えば、上のチャートは13milの例を示したが、5milのチャートの場合は、真の信号はさらに細かくなってノイズ成分と重なることになる。従って、波形だけからは真偽の判断はますます困難となる。
【0078】
これは現象としては、ビームウェストからバーコードの距離を離すと、信号成分が減少し、且つノイズが相対的に大きくなるため、信号雑音比の低下が起因して、正確なバーコードの読み取りができなくなる。
【0079】
[信号雑音比]
信号雑音比は、ノイズ成分に対する信号成分を比率で示したものである。例えば、前述したように、微分信号を評価対象とするのであれば、ノイズのピーク電圧に対する信号のピーク電圧の比として評価すればよい。または、光学系を評価対象とするのであれば、前述した線像分布関数において、メインピークとサブピークの面積が信号量に対応すると考えて、面積の比を用いてもよい。さらに、デジタル信号を評価対象とするのであれば、ノイズと信号を階調値で評価して比を用いればよい。あるいは、ソフトウェア処理を評価対象とするのであれば、例えば、スムージング処理の前後における信号振幅やノイズの変化量から各処理方式の優劣を評価してもよい。
【0080】
[信号雑音比の調整方法]
次に、本実施形態の光走査モジュールにおける信号雑音比の調整方法について説明する。 図17(a)乃至17(c)は、前述した、角度θ1を90度の状態から、次第に変化させて、0度に近づけた状態を示す。前述した図7に示したレーザーダイオード11の配置は、図17(a)に対応しており、θ1=90度の状態となっている。前述したように、この時、レーザー光の広がり角は約30度であり、出射アパーチャ13によって出射光の端部分が遮光即ち、けられた状態となっている。このけられの結果、エッジ部分で回折が生じて、図10に示すようにスポットの両側にサブピークが生じている。
【0081】
そこで、図7に示すレーザーダイオード11を出射軸周りに回して、角度θ1を0度になるよう調整する。即ち、レーザー光を図17(a)から図17(c)に示した状態にする。
【0082】
図6において説明したように、レーザー光の広がり角は、活性面の向きとその直交方向では異なっているため、角度θ1を変化させると、走査方向の光の広がり角を連続的に任意に変化させることができる。角度θ1=0度とすると、走査方向の広がり角は8度程度となって走査面上部から見ると光は出射軸中心に集中する。従って、角度θ1を0度に近づけると、出射アパーチャによる光のけられを減少させることができる。この減少により、出射光は出射軸周辺に集中して、出射アパーチャの端部近辺の光の強度が弱くなる。この結果、回折ピークの強度が小さくなる。
【0083】
よって、出射アパーチャ13からの距離が50mmの場合には、図10に示したような高次の回折ピークが減少し、中央のメインピークのみが高くなる。これは、もともとの出射光が、図6に示したようなガウス型状の光強度を有していたことに対応している。しかしながら、この場合、ビームウェストにおけるビーム径は大きくなる。すなわち、図17(c)に図示したとおり、出射光の幅は、出射アパーチャの幅A1xよりも狭くなっている。図17(a)と比較すると、出射アパーチャを経由した光の幅は、約1/3程度となっている。
【0084】
これは、出射アパーチャの位置における実質的な出射光の幅が狭くなったことに相当する。つまり、前述した式(2)に戻ると、角度θ1を90度から0度に減らしていくと、実効的な出射アパーチャの幅A1x は、約1/3倍に減少させたことに相当する。従って、式(2)より、ビームウェスト近辺におけるビーム径は、約3倍程度に増加すると見積もられる。この場合、ビーム径が大きくなったことで、微分波形はなだらかになって、メインピークの高さ(電圧)は下がる。これにより、ピーク検出の機能は劣化する。特に、5milなどの高密度のバーコードの読み取りが大幅に劣化する。そこで、微分波形を測定しながら、角度θ1を90度から徐々に小さくさせて、ビームウェスト距離におけるビーム径が劣化しない程度、即ち、微分波形のピークが下がらない程度の角度を探す。
【0085】
以上のように、ビームウェストにおけるビーム径をほぼ維持する範囲内で、角度θ1が最小となる値を探す。その結果が、図17(b)である。図17(b)からわかるとおり、出射ビームの幅という観点でみると、図17(b)は図17(a)とほとんど変わらない。従って、式(2)により、ビームウェスト近辺においては、図17(a)と同様、非常にシャープなビーム径が得られる。
【0086】
従って、5milなどの高密度のバーコードの読み取りを良好とできる。図17(c)と比べると、図17(b)の配置のほうが、よりシャープなビーム径が得られる。他方、図17(b)に示したとおり、出射アパーチャにおける光のけられ量という観点でみると、図17(b)は図17(a)よりもけられ量が少なくなっている。むしろ、図17(c)に近い状態であることがわかる。
【0087】
従って、図17(b)の配置によれば、出射アパーチャ近辺での微分波形は、前述した図16よりも図14に近い状態になる。これは、けられが少なくなったことに対応しており、微分波形は、もともとは図16に示した状態であったものが、図14に示す形状に近づく。この調整により、信号振幅を良好としつつ回折ノイズを除去・低減することができる。
【0088】
以上説明した調整によって、ビームウェスト近傍については、ビーム径を十分にシャープに調整しつつ、且つビームウェストから離れた場合については、前述した回折ノイズを低減することができ、双方について性能を良好とできる。
【0089】
また信号雑音比という観点で見ると、信号成分が良好でありつつ、且つノイズ成分が最小となる位置を探し出すことができる。その結果、製品性能は読み取り領域全域にわたって、格段に改善される。すなわち、図16に示した回折ノイズが解消又は低減するため、後段の電気回路やソフトウェアがより正確により効率よく機能するようになる。
【0090】
前述したとおり、特許文献2等で示唆されている従来技術においては、信号成分の改善には上限があった。例えば、ソフトウェアによるスムージング処理(平均化処理)のように、通常、ノイズの除去をしようとすると同時に信号ピークもなまってしまうという傾向がある。
【0091】
本実施形態は、開示される事項とは異なる現象を利用しており、ノイズ成分を低減したにもかかわらず、信号成分も改善されているという調整の状態が存在している。従って、信号雑音比が良好となる位置になす角を調整することで、性能を格段に改善することができる。
【0092】
また、図10では、対象物と出射アパーチャ13との距離が近い例を示したが、この調整によって、これらの距離がビームウェスト近辺やそれより遠い位置であっても、回折ノイズを改善することができる。例えば、図9には、ビームウェストにおけるスポット形状を示した。詳細には、ビームウェストにおいても、前述した回折現象が発生し、高次の回折光が発生していることがわかる。このようなサブピークについても、前述した調整によって出射アパーチャ13によるけられが改善されるため、同時に改善される。
【0093】
従って、レーザーダイオード11における角度θ1の調整によって、出射アパーチャ13近辺のフレネル回折のみならず、ビームウェスト近辺や、遠方のいわゆるフラウンフォーファー回折等も改善される。読み取りの領域全域にわたって信号雑音比が改善されることからピーク検出等の後段の処理がより適正に機能するようになって、製品性能が向上する。
【0094】
図18には、角度θ1の調整後におけるレーザーダイオード11の配置の一例を示す。この例では、角度θ1の最適な調整角は、約45度となっている。これは、微分回路44の波形を見ながら、信号雑音比が最大となる位置を探し出した位置(角度)である。
【0095】
以下に簡易な調整方法の手順を説明する。
まず、市販のビーム径測定器をビームウェスト近傍に配置し、光走査モジュール1の走査駆動を止めた状態で、レーザー光を出射させる。この時、ビーム径測定器は、駆動を継続させて連続的に検出を行い、ビーム径の測定値をモニタ表示させておく。
【0096】
次に、ビーム径が許容できる範囲(例えば、260um以下)に概略で調整する。次に、角度θ1を90度から0度に向かって、数度おきに順次減らしていき、設定測定を繰り返す。許容できる範囲内でθ1が最小となる位置を見つけたら、角度θ1を固定する。このような手順により、ビーム径が十分にシャープでありながら、けられ量が最小となる位置を探し出すことができる。
【0097】
この角度θ1は、コリメータレンズ等を決めてレーザーダイオードを選択すると、一意に決まる。従って、製品の開発中に上記の手順で最適な角度を見い出しさえずれば、量産時においては角度θ1を固定してしまってよい。すなわち、試作等で最適な角度θ1を探したら、量産用のハウジング部材には凸部を設けておき、前述のレーザーダイオードの背部の切り欠きと一致するようにして組み立てることにする。これにより、量産時における角度θ1の調整作業を簡易化・単純化できる。
【0098】
この場合、量産における組み立てと調整の手順は、例えば、つぎのようになる。まず、コリメータレンズをハウジング部材に組み込み、つぎにレーザーダイオードをハウジングに取りつけていわゆるカシメによって固定する。ここで、角度θ1を特定する。
【0099】
次に、レーザーダイオード11のピンに電圧を与えて、コリメータレンズ12を通したレーザー光のスポット径を観察しながら、コリメータレンズ12の位置を微調整する。所望の距離に前述のビームウェストがくるようにフォーカス調整を行ったら、コリメータレンズ12の位置を接着固定して組み立て・調整作業を完了する。
【0100】
角度θ1の調整の後に、フォーカス調整をすることにより、ビームウェスト等におけるビーム径を正確に調整することができ、信号雑音比をより最大化でき、調整のばらつきも低減できる。これにより、信号雑音比の調整を単純化でき、性能が最適な光走査モジュール1を量産できる。
【0101】
または、レーザーダイオード11をハウジング2にカシメで固定する代わりに、圧入や接着によって固定してもよい。あるいは、ねじ止めによって固定してもよい。ねじ止めによって固定すると、部品点数が増えるものの、角度θ1の再調整や個別の調整が容易となって、信号雑音比をさらに改善できる。
【0102】
尚、第1の実施形態における、角度θ1について、最適な調整値は、約45度に固定されているが、レーザーダイオード11の規格によると、θ//とθ⊥の値は数割程度の範囲がある。例えば、θ//=8±2度、θ⊥=30±5度程度となっており、各メーカーの製造エ程や半導体材料の違いによって相違が発生する。
【0103】
さらに、角度θ1を変えたときの信号雑音比の変化は連続的であって、ある一定の許容範囲がある。従って、第1の実施形態における、角度θ1は、45度近辺が好適するが、数10度程度の許容範囲を有している。実際には、角度θ1は、0度から90度の範囲であればよいが、望ましくは、10度から80度程度の範囲であれば尚よい。さらに、光走査モジュールの個々について、信号雑音比が最適化されるように個々に微調整がなされていれば、さらによい。いずれにおいても、角度θ1が、このような範囲に調整されていれば、けられを無くすことができ、光走査モジュールの性能は向上する。すなわち、スポットをシャープにしつつ、回折ノイズを低減できる。
【0104】
また、本実施形態によれば、レーザーダイオード11の種類を変更して、広がり角が変わったとしても、なす角の調整により容易に最適化できる。その調整においても、微分波形を観察することで、その効果を容易に検証できる。
【0105】
前述した特許文献2等で記載される従来技術においては、レーザーダイオードの種類やロットが変わって、レーザー光の広がり角が変わると、回折ノイズの形状が変化する。その結果、部品の性能ばらつきが電気回路やソフトウェアの仕様や設定の範囲を超えた場合には、誤動作が発生しないとも断言できないため、再度、動作検証をする必要が生じ、パラメータの再調整や再設計の必要が生じうる。
【0106】
また、第1の実施形態において、各種のパラメータを挙げたが、次のように表現することもできる。まず、レーザーダイオードの走査面方向の広がり角をθ2と定義する。θ2は、前述のとおり、θ//からθ⊥の範囲程度、すなわち、8度〜30度の範囲の程度で可変である。次に、角度θ3を以下のように定義する。
【数4】
【0107】
ここで、A1xは、走査方向の出射アパーチャの幅、f1はコリメータレンズの焦点距離である。tan−1xは、Atanxと同義であって、tanxの逆関数である。前述の焦点距離f1=3.0mm、走査方向の出射アパーチャ間隔A1x=0.7mmの値を代入すると、θ3=約13度と求められる。θ3はθ2の範囲の中間にある。従って、前述の角度θ1を45度近辺にすると、広がり角θ2を略θ3か、それ以下程度とすることができる。これにより、第1の実施の形態の例においては、すくなくとも、θ1=0度、90度とした場合に比べて信号雑音比が改善できる。さらに、前述の角度θ1を調整すれば、上記のθ2が連続的に変化して、信号雑音比が最大となるθ2に微調整することができる。実際は、前述の広がり角は、半値全幅で定義されているので、この角度を越えて広がる光が存在する。従って、ある一定の範囲がある。具体的には、θ2がθ3と同程度であるか、θ3を下回る程度であれば、十分に機能する。これを、θ1を用いて表現すると、角度θ1は、0度から90度の範囲であればよいのであるが、望ましくは、10度から80度の範囲であれば尚よい。あるいは、さらに、焦点距離f1や出射アパーチャの幅A1x 等を用いて換言すると、次のように表現することもできる。
【0108】
上述したθ3とθ2において、θ3≒θ2となるように、あるいは、θ2≦θ3となるように、焦点距離f1または広がり角θ2または幅A1xまたは、光源の向きのいずれかが調整されていればよい。この場合、前述したように、信号成分とノイズ成分は最適化されて、光走査モジュールの性能が改善できる。
【0109】
また前述したが、より厳密な角度θ1を特定したいのであれば、前述した微分回路44を用いた調整手順によれば、実験的な方法によって調整および検証ができるので、パラメータを変えつつ微調整を繰り返せばよい。例えば、光走査モジュールの性能をさらに向上させたい場合は、個々の光走査モジュールについて、角度θ1の微調整をそれぞれおこなえばよい。この場合は、部品の加工公差やレーザーダイオードの性能バラツキに起因する個々の信号雑音比のバラツキが各調整によって、キャンセルされて最適化できる。従って、保証する性能、製品仕様等をさらに向上させることができる。
【0110】
次に、第2の実施形態について説明する。
図19は、第2の実施形態に係る光学系を示したものである。その他の電気回路や機械部品等の構成部位は、第1の実施の形態と同等であり、ここでの記載は省略する。また、本実施形態の光学系においても、図1Cに示した構成部材と同等の部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0111】
図19においては、既に、前述した手順により、角度θ1は調整後であり、例えば、45度に設定されている。図19には、光線追跡の結果を概念的に示したが、θ1の調整により、走査面の上部から見込んだレーザー光の広がり角は狭くなっている。前述した第1の実施形態においては、調整後には出射アパーチャ13による、けられは低減した状態となる。つまり、なす角の調整後であれば、実質的に出射ビームの幅を最適化したことになって、必ずしも出射アパーチャ13を備える必要はない。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成から、出射アパーチャ13を取り除いた構成であり、出射光学系によるレーザー光の整形は、コリメータレンズ12のみによって行われている。
【0112】
前述したように、ビームウェスト近辺におけるビーム径は、コリメータレンズ12を通過した近傍においては、ビームの幅が適正に調整されていることから、十分にシャープにすることができる。よって、出射アパーチャを取り除いた簡易化された構成であっても、けられは発生せず、好適な信号成分が得られる。
【0113】
本実施形態においては、微分信号は、サブピークが生じていた従来技術と比べると、回折ノイズが大幅に改善され、光走査モジュールの性能は格段に改善する。角度θ1の調整は必要となるものの、調整作業によって、出射アパーチャは不要となる。よって、設計は簡素化され、部品点数やスペースを削減できるという効果を得て、さらに製品性能も向上できる。
【0114】
次に、第3の実施形態について説明する。
前述した第1および第2の実施形態においては、回路基板に形成され微分回路等は、基板ユニット2b上に設けた構成であった。
【0115】
第3の実施形態においては、図20に示すように、前述した光検出器52と微分回路51を調整治具として調整時のみ取り付けて、調整完了後には取り外す構成である。ベース部材2a上には、光源ユニット3と、折り返しミラー5と、光学走査装置4と、光検出ユニット6とが実装される。
【0116】
光源ユニット3のレーザーダイオード11は、ベース部材2a上の所定位置に搭載され、前述した角度θ1が調整される。この調整の際に、信号雑音比の調整や評価においては、所望の距離にチャートを配置して、レーザー光を走査させる。そして、別途、走査面の近傍に、光検出器52と微分回路51を有する調整冶具を配置する。
【0117】
この配置において、走査光の反射散乱光を光検出器52で取得する。この取得した信号波形に基づいて、前述したと同様に、微分波形を評価・確認することができる。
【0118】
このように光検出器52と微分回路51を調整時のみに取り付けることにより、信号雑音比の最適化やその検証を容易に行うことができる。例えば、光走査モジュールにコネクタ等の簡易に電気的に接続でき、且つ光走査モジュールを指定位置に置くだけで、光検出器52との位置関係が成り立つように調整冶具を構成する。光走査モジュールを量産する際に、このような調整冶具を稼動させたまま、順次交換して連続的に調整作業を行うことができる。これは生産効率を大幅に向上させたいときに効果的である。
【0119】
以上のように、本実施形態によれば、複雑な電気回路やソフトウェアの処理を追加することなく信号雑音比を改善できる。これにより、読み取り等の性能を格段に改善できる。さらに、ノイズ(回折ノイズ)が低減するので、二値化処理や復号処理を複雑化する必要がなく信号処理を高速化できる。また、電気回路の追加なく信号処理が効率化するので処理期間が短縮される。従って、消費電力も改善できる。部品点数を減らすこともできる。
【0120】
以上説明した各実施形態における光走査モジュールは、あらゆる電子機器に搭載できる。例えば、バーコードリーダ、レーザープリンタ、レーザー走査型顕微鏡、レーザープロジェクタ、情報入力装置、情報出カ装置、画像形成装置、精密医療機器、携帯情報端末、車間センサ、防犯センサ、三次元スキャナ、無線装置、ハンドヘルド機器、自動車、船舶、航空機、半導体製造装置、カード認識装置、自動販売機等である。
【0121】
また、各実施形態の光走査モジュールは、あらゆるバーコードの読み取りに好適する。例えば、JAN, EAN, UPC, Code39, ITF(Interleaved 2 of 5), Codabar, Code128, UCC/EAN128, BooklandEAN, MSI Plessey, Code93, Reduced Spaced Symbology(RSS), PDF417等のバーコードの読み取りに好適する。また、線画、ドット、線分等の組み合わせや記号、刻印された凹凸形状等の特殊なパターンを読み取る用途であっても好適する。また、本発明の光走査モジュールは、復号回路に搭載されたソフトウェアを書き換えることで、容易に物体検出等に応用することができる。例えば、自動車や人物の認識に用いることができる。移動物体やその有無についても検出することができることから、走査光を赤外光として防犯装置を構成してもよい。また、本発明の光走査モジュールを用いて、三次元形状を読み取るための三次元スキャナを構成して、人体等を走査対象としてもよい。また、本発明によれば、広い距離範囲においてスポットの形状が改善されることから、広範囲の移動物体等の高精度な検出に好適である。また、高精細のレーザープロジェクタとして、スクリーンや壁面を走査するという例であってもよい。
【0122】
本発明により、回折ノイズや信号雑音比を良好に改善することができる。しかしながら、その他のノイズや光学系の改善を併用してよいことはいうまでもない。例えば、前述のバンドパスフィルタとして、特許文献3に記載された光学的ゲイン補正フィルタを搭載してもよい。この光学的ゲイン補正フィルタは、入射角が変わると光量が増減するという多層膜部品であるが、この部品を搭載することで、走査等にともなう周辺光量落ちを低減するなど、さらに性能を改善できる。
【0123】
また、本実施形態のレーザー光は、650nmの波長としたが、限定されるものではなく、例えば、400nm近辺の波長としてもよいし、800nm以上の赤外光を用いてもよい。このような場合、前述したバンドパスフィルタの透過波長を変更すればよい。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、回折ノイズの少ないシャープなビームスポットを生成できる。従って、レーザープリンタ、レーザー走査型顕微鏡、レーザープロジェクタ、三次元スキャナの走査光学系としても好適である。この場合、分解能や深度を改善でき、より高精細な出力を得ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0125】
1.走査光学系の前段において、回折ノイズを低減することができる。これにより、光走査モジュールの性能を改善することができる。
【0126】
2.回折ノイズを低減しつつ、信号成分が良好に調整でき、信号雑音比を改善できる。これにより、性能の優れた光走査モジュールを提供できる。
【0127】
3.信号雑音比が最大となる調整を実現できる。これにより、電気回路等の複雑な調整をする必要なく、読み取りの性能を最適化することができる。
【0128】
4.良好な信号成分を維持しつつ回折ノイズを低減することで、複雑な回路や処理を削、できる。これにより、電気部品や複雑な処理を削減して、二値化処理、復号処理、ソフトウェアの処理を高速化できる。消費電力も低減できる。
【0129】
5.回折ノイズを低減しつつ、良好な信号成分を得ることで、信号雑音比に優れた光走査モジュールを提供することを目的とする。一般に、ノイズを低減しようとすると信号成分も劣化するという相反する関係がある。しかしながら、本発明は、信号雑音比という観点で好適な光走査モジュールを提供する。具体的には、レーザー光のスポットのメインピーク(0次の回折光)の鋭さ・スポット幅を維持・改善しつつ、サブピーク(高次の回折光)を低減する。これにより、信号雑音比が改善されて、光走査モジュールの動作領域が改善する。
【0130】
6.光走査モジュールにおける信号雑音比の調整方法を提供することができる。即ち、前述した従来技術において、ノイズ成分の低減と信号成分の改善という相反する特性があった場合には、電気回路の定数やソフトウェアのパラメータの無数の組み合わせを検討して、偽信号による誤動作が起きないことを検証する必要があった。このデバッグやその最適なバランス点を見いだすことは大変煩雑な作業となっていた。一般に、ノイズを低減しようとすると信号成分も劣化するという相反する関係があることが多く、最適な調整を見出すことは難しいことが多い。
【0131】
しかし本発明は、信号成分を改善しつつ回折ノイズは低減できる、信号雑音比の調整方法を提供する。
【0132】
7.良好な信号成分を改善しつつ回折ノイズを低減することで、複雑な電気回路や処理を削減することを目的とする。電気部品や複雑な処理を削減して、二値化処理、復号処理、ソフトウェアの処理を高速化させることができる。消費電力も低減させることができる。
【0133】
[付記]
本発明は、以下の発明を含んでいる。
【0134】
(1)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向と、のなす角をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(2)前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(3)その断面が楕円形状の拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときのその拡散光の断面楕円形状の長軸の方向と、のなす角をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(4)前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(3)項に記載の光走査モジュール。
(5)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の走査面内において往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査される平行光の光軸に対する走査面の向きを、半導体レーザーから出射される拡散光の光軸に対応させた場合の、拡散光の光軸から見たときの走査面の向きと、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向とのなす角をθ1としたとき、θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(6)θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(5)項に記載の光走査モジュール。
(7)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光の断面形状を整形する開口部と、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
光検出器の受光信号を微分処理する微分回路と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向と、のなす角をθ1としたとき、微分回路の出力において、整形によって生じた回折ノイズを低減させ、信号対雑音比を増加させるように、前記θ1を調整したことを特徴とする光走査モジュール。
(8)θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(7)項に記載の光走査モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す図である。
【図1B】図1Bは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの内部構成を示す図である。
【図1C】図1Cは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの主たる光学系の配置構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの走査光、走査方向及び走査面について説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、レーザーダイオードの外観構成を示す図である。
【図5】図5は、レーザーダイオードの実装側から見たピンと活性面の向きについて説明するための図である。
【図6】図6は、レーザーダイオードにおけるレーザー光の光学的な特性について説明するための図である。
【図7】図7は、ハウジングへのレーザーダイオードの組み付け状態を示す図である。
【図8】図8は、レーザーダイオードにおけるレーザー光の広がりと光学部位との関係について説明するための図である。
【図9】図9は、出射アパーチャと所定距離を離れた配置におけるレーザー光のスポット形状について説明するための図である。
【図10】図10は、出射アパーチャに近寄った配置におけるレーザー光のスポット形状について説明するための図である。
【図11】図11は、評価のためのチャートの一例を示す図である。
【図12】図12は、図9におけるレーザー光を用いて図11に示したチャートから検出した検出信号の波形を示す図である。
【図13】図13は、微分回路の主要部の回路構成を示す図である。
【図14】図14は、図12における検出信号を入力した微分回路からの出力信号の波形を示す図である。
【図15】図15は、図10におけるレーザー光を用いて図11に示したチャートから検出した検出信号の波形を示す図である。
【図16】図16は、図15における検出信号を入力した微分回路からの出力信号の波形を示す図である。
【図17】図17(a)乃至(c)は、レーザーダイオードにおける走査面と活性面のなす角を変えたときのレーザー光の上から見た幅を示す図である。
【図18】図18は、レーザーダイオードにおける走査面と活性面の調整について説明するための図である。
【図19】図19は、第2の実施形態に係る光走査モジュールの主たる光学系の配置構成を示す図である。
【図20】図20は、第3の実施形態に係る光走査モジュールについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0136】
1…光走査モジュール、2…ハウジング、2a…ベース部材、2b…基板ユニット、3…光源ユニット、4…光学走査装置、5…折り返しミラー、6…光検出ユニット、11…レーザーダイオード(LD)、12…コリメータレンズ、13…出射アパーチャ、15…バンドパスフィルタ、16…受光開口部、17…光検出器、21…走査ミラー、21a…集光ミラー、21b…出射ミラー、22…駆動部、23…軸受部、25…駆動コイル、26…板ばね、27…支持ばね保持部材、28…ヨーク、29…磁石、31…コネクタ、32…制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載され、情報を読み取るためのレーザー光を走査する光走査モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品やタグに印刷されたバーコード記号にレーザー光を走査するように照射させて、その反射光(戻り光)から記載される情報を読み取るバーコード読み取り装置が知られている。この装置の光源として、例えば半導体レーザーダイオードを用いて、出射されたレーザー光(光束)を走査させて、その戻り光から対象物の輝度値情報を取得する光走査モジュールが普及している。ここでは、読み取りの対象物として、バーコードを挙げているが、他にも自動車や人物等の陰影情報や、レーザー走査型顕微鏡により観測される試料等であってもよい。
【0003】
このような光走査モジュールには、例えば、特許文献1が提案している装置がある。この特許文献1には、板ばねと走査ミラーを用いてレーザー光を走査するように出射させて、その戻り光によりバーコードの読み取りができる装置が開示されている。この光走査モジュールは、光源や光検出器、走査ミラー等が一体化されており、任意の機器に、この光走査モジュールを搭載することで、バーコードの読み取りの機能を簡易に追加できるようになっている。
【0004】
一般に、レーザー光は、干渉しやすいことで知られている。レーザー素子を光源に用いて光走査モジュールを構成した場合、レーザー光が出射アパーチャに掛かったときには、けられによってレーザー光に回折が生じる。この回折は、出射されたレーザー光のメインのピークにサブピーク(回折ピーク)を重畳したような現象を発生する。これは、スポットの乱れとして観察され、このような乱れたスポットを有する光走査モジュールは、読み取り性能等の製品性能が著しく低下することになる。
【0005】
このようなスポットの乱れによる性能低下は、実際に検知することができる。例えば、上記のスポットを用いてチャートを走査して反射光を光検出器で検出すると、スポットやその乱れは、電気信号の信号成分に重畳するノイズ成分として評価できる。以後の説明において、このように出射光学系における、けられによって生じる回折に起因するノイズを回折ノイズと称している。
【0006】
このような回折ノイズを改善する従来技術としては、例えば、特許文献2が提案されている。特許文献2には、走査光の反射散乱光を光検出器で取り込み、微分回路を用いてピーク検出を行う回折ノイズ除去回路が開示されている。微分回路を用いることで、印刷物等の微小な反射率の変化をピークとして検出することができ、バーコードの距離を大きく変えた場合であっても読み取りを改善することができる。そして、前述した回折ノイズを低減するため電気回路を追加して、回折ノイズの低減を試みている。
【特許文献1】米国特許番号 US6,360,949
【特許文献2】特許第3447928号
【特許文献3】米国特許番号 US7,004,391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献2で示されるような回折ノイズを入力された場合には、電気回路は、この波形を回折ノイズとして判断して低減するように働く。従って、入力が予め想定された程度のものであれば、適正に機能する。
【0008】
しかし、バーコード読み取り装置のように、様々な読み取り状況下で種々の物品に設けられたバーコードが読み取り対象である場合は、規格に基づくパターンであっても入カレベルや幅などのパターンが変動する。つまり、特許文献2では、回折ノイズに似通ったパターンの真の信号が入カすると、偽の信号と判断される虞がある。誤判断された場合、本来不要な信号処理が行われるため、誤った情報が作成されて出力されることとなる。即ち、外的な要因により、入力信号に変動があった際に、前段の光学系で信号を取り込み、後段のデジタル回路等で信号を処理する場合、後段においては、受け取った情報の真偽を、入力されたパターンの情報のみから判別することは原理的に難しい。
【0009】
これは、情報量という観点からも理解することができる。すなわち、通常、後段のデジタル回路で扱う情報量には、整数値での上限がある。例えば、アナログ/デジタル変換回路の輝度値データのビット数は、8〜10ビット程度であって、情報量は、このビット数のサンプリング数倍となる。
【0010】
この場合、デジタル回路は、取得する以上の情報量(信号量)は原理的に得られないことになる。このような制約の中、いったんデジタル化された情報に対して、ノイズ低減のためのデジタル処理等、意図的な処理を加えると、情報量の上限(信号量)は増えない一方で失われる情報量が出てくる。すると、トータルでみた性能は、劣化する可能性がある。例えば、ノイズ除去のためにスムージング処理(平均化処理)を入れると周波数の高い細かな信号が失われてしまう。または、偽信号を与えたことになる。所望の回折ノイズが生じた場合には機能するが、信号周波数の高い真の信号も失われることになる。
【0011】
従って、トータルのバランスでみれば、読み取りの性能が低下してしまうことが多い。情報量に上限のある後段においては、限られた情報量からそれよりも多くの有意な情報量(信号量)を得ることはできない。一般に、前段から後段での処理になるほど、有意な情報量や信号雑音比は劣化していく。デジタルの処理を加えるということは、信号雑音比という観点からみると信号成分は改善されておらず、ノイズを加えたことと等価となってしまい、性能を劣化させてしまうことが多い。
【0012】
そこで本発明は、光学的に取り込んだ情報を光電変換によるアナログ信号に変換し、後段でデジタル処理を行う際に、アナログ信号の処理時に回折ノイズを改善する光走査モジュールを提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学的に取り込んだ情報を光電変換によるアナログ信号に変換し、後段でデジタル処理を行う際に、アナログ信号の処理時に回折ノイズを改善する光走査モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1A乃至図1Cを参照して、本発明の第1の実施形態に係る光走査モジュールについて説明する。図1Aは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す斜視図である。図1Bは、上蓋を取り外した状態の光走査モジュールの構成を示す図である。図1Cは、光走査モジュールにおける光学系を取り出して概念的に示す図である。
【0015】
まず、光走査モジュールの概要及び外観について説明する。
光走査モジュール1において実現された外形寸法は、20mm×15mm×10mmに収まる程度となっている。勿論、これらの外形寸法の数値は、一例であり、これら以下の数値で実現することも可能である。また、ある程度の範囲であれば、電子機器の搭載スペースに応じて外形寸法を変更することもできる。
【0016】
図1Aに示す光走査モジュール1は、落下等の衝撃に耐え得る強度を有する外装となるハウジング2を有する。ハウジング2は、各構成部位を実装するためのベース部材2aと、上蓋となる基板ユニット2bとで構成される。基板ユニット2bは、ベース部材2aに植立された複数の支持部材2cにビス2dにより固定されている。他にも固定方法としては、フックとストッパをそれぞれに形成して嵌め合わせによる固定や接着剤のよる固定等を用いてもよい。
【0017】
光走査モジュール1は、光学読み取り機能の1ユニットとして、種々の電子機器に搭載できるように、例えば、ベース部材2a下面に固定用ねじ穴等が形成されている。
【0018】
基板ユニット2b上には、コネクタ31及び制御部32が設けられている。制御部32は、後述する各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行うための制御回路や信号処理回路等が形成された回路基板からなる。
【0019】
また、コネクタ31は、ケーブルを介して、外部の機器例えば、コンピュータ(図示せず)に接続する。このコンピュータは、例えば、光走査モジュールに電源電圧を供給し、光走査モジュール1を駆動制御する。例えば、搭載された電子機器のコンピュータの指示(コマンド)に従って、バーコードの読み取りを開始して、走査ミラーを揺動させて、走査されたレーザー光(走査光)を照射する。その走査光にバーコードを翳すと、そのバーコードを読み取る。尚、以降の説明でハウジング2における、レーザー光を照射し、そのレーザー光の反射光を受光する方向を向く面を走査開口面とする。
【0020】
図1B、図1C及び図2を参照して、光走査モジュール1の構成について説明する。
ベース部材2a上には、主たる構成部位として、光源ユニット3と、折り返しミラー5と、光学走査装置4と、光検出ユニット6とが実装される。
【0021】
光源ユニット3は、レーザー光を出射するレーザーダイオード(LD)11と、コリメータレンズ12と、出射アパーチャ13とで構成される。ここで、コリメータレンズ12は、レーザーダイオード11から照射されたレーザー光を平行光化し、出射アパーチャ13は平行光化されたレーザー光の光束断面を絞り、所望の形状及びスポットサイズに生成する。これらのLD11とコリメータレンズ12と出射アパーチャ13は、読み取りの仕様(設計)に応じて、適宜、配置やその距離が調整され、収容部(図示せず)に1ユニットとして収容される。
光源ユニット3から出射されたレーザー光は、折り返しミラー5で反射により偏向されて光学走査装置4に向かう。
【0022】
光学走査装置4は、走査ミラー21と、軸受部23と、駆動部22とが樹脂成型により一体的に接合され、ベース部材2aに植立された回転軸24を中心に回動自在となっている。走査ミラー21の前面は、非球面で且つ凹面状に湾曲した面の集光ミラー21aが形成され、その略中央に平面で矩形形状の面の出射ミラー21bが設けられている。出射ミラー21bと集光ミラー21aは、樹脂成型により一体的に形成されており、走査の角度(走査角)が変動しても、取り込まれた光が光検出器に向かうよう、予め形状や向きが適正に設計されている。樹脂成型された走査ミラー21の出射ミラー21bと集光ミラー21aは、表面が真空蒸着により金の薄膜が蒸着された鏡面に形成される。この鏡面は、レーザー光の波長についての垂直反射率が90%程度となるように製作されている。
【0023】
走査ミラー21は、軸受部23における回動により、後述する走査方向に揺動される。
【0024】
また、駆動部22は、駆動コイル25と、板ばね26と、支持ばね保持部材27、ヨーク28上に配置された磁石29とにより構成される。本実施形態では、走査ミラー21側に駆動コイル25を、ベース部材2a側に磁石29をそれぞれ固定し、駆動コイル25に制御部32より所定の駆動パルスを印加することで電磁カを発生させて走査ミラー21を揺動させる、いわゆるムービングコイル方式の駆動モータである。一方、磁石29と駆動コイル25とが反対に配置された、いわゆるムービングマグネット方式であってもよい。
【0025】
光検出ユニット6は、ベース部材2a上に実装されており、バンドパスフィルタ15と受光開口部16と、光検出器17により構成される。これらのうち、バンドパスフィルタ15は、取り込まれた反射散乱光に対して、光源の波長近傍の光は通過させるが、他の光は遮断する。光検出器17に入射した反射散乱光の強弱は、走査における対象物の反射率の変化に対応しており、走査面領域における外部の情報に対応している。
【0026】
ここで、図2を参照して、本実施形態の光走査モジュールにおける走査光及び走査面の概念について説明する。
まず、光源ユニット3から出射されたレーザー光は、揺動する走査ミラー21に反射して、走査開口面(図1A)より出射する。走査ミラー21の揺動にともなって、レーザー光は略平面内で往復して走査される。以降、走査光の動きにともなって形成される仮想的な面を、走査面Bと称する。図2において、走査面Bは走査光の向きと走査方向の2つのベクトルの張る面となっている。つまり、出射ミラー面21bで反射して出射されたレーザー光は、図1Aに示すハウジング2に設けられた走査開口面を通過して外部に出射される。この出射ミラー面21bで反射されるレーザー光の光軸の振れ(走査面B)が走査開口面の垂線に対して一致するときの走査ミラー21の角度を基準(走査角0°)として、その基準からの走査ミラーの機械的な回動角度を走査角(揺動角)θとする。
【0027】
この状態で、ユーザーが走査面を横切る領域にバーコードを翳すと、走査光がバーコードを横切り、反射散乱光が生じる。反射散乱光は、戻り光として走査開口面より取り込まれて、バーコードの情報が読み取られる。読み取った情報は、コネクタより出力され、外部のコンピュータ等において、種々の処理がなされる。例えば、バーコードのデータに基づき、物品を個々に認識して、予め設定された仕分け条件等に沿って伝票・会計処理等が実行される。
【0028】
次に、図3には、光走査モジュール1の信号の流れに沿って配置された回路構成を示すブロック図である。
光走査モジュール1のベース部材2aの上部には、基板ユニット2bがビス止め固定された構成である。基板ユニット2b上には、コネクタ31、光検出ユニット6及び制御部32が実装されている。制御部32は、演算処理及び判断・制御を行うCPU(図示せず)と、電流/電圧変換回路41と、増幅回路43と、微分回路44と、アナログ/デジタル(A/D)変換回路と45、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)46と、復号回路47とで構成される。尚、出射光学系40は、光源ユニット3及び折り返しミラー5とで構成される。
【0029】
まず、ユーザーが図示しない外部のコンピュータを操作して、コネクタを通じて光走査モジュール1にバーコードの読み取りを開始させる開始コマンドを送出する。この開始コマンドを受けて、制御部32は、駆動コイル25に駆動電圧を印加して、磁石29との相互作用により、走査ミラー21を定期的に往復するように回動させる。
【0030】
さらに、レーザーダイオード11に駆動電圧が供給され、レーザー光が出射される。そのレーザー光は、コリメータレンズ12や折り返しミラー5等を経由して、揺動する走査ミラー21中心の出射ミラー21bで反射して、走査するように走査開口面から走査対象物走査対象物に照射される。
【0031】
バーコード等の走査対象物で反射散乱した光は、出射光と逆の向きに広がりつつ、走査開口面から走査ミラー21の集光ミラー21aに入射する。この反射散乱光(戻り光)は、この集光ミラー面21aで集光されて、バンドパスフィルタ15を通過したのち、光検出器17に取り込まれる。
【0032】
光検出器17は、光電変換の光検出器17から出力された光電流(光信号)は、電流/電圧変換回路41及び増幅回路43を経由して、適正なレベルの電圧に変換され、微分回路44に入力される。微分回路44の出力信号は、A/D変換回路45を経由して、10ビットのデジタル信号に変換されたのち、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)46に取り込まれる。このDSP46は、入力信号に対して、二値化する処理を行っている。二値化された信号は、走査された対象物の反射率や陰影情報に対応している。二値化された信号は、さらに復号回路47に送出される。
【0033】
復号回路47は、二値化された信号を蓄積して、予め決められたバーコードの仕様等に基づいて、蓄積されたパターンとバーコードのパターンの比較を行ってバーコードの情報を復号する。復号されたバーコードの情報は、コネクタ31を介して外部のコンピュータ48等に出力される。
【0034】
次に、図1Cを参照して、光走査モジュール1の光学系について詳細に説明する。
【0035】
光源ユニット3の発光素子であるレーザーダイオード(LD)11は、波長が650nmのレーザー光を出射する。光源ユニット3において、LD11から出射した光は、コリメータレンズ12を通過して略平行光となり、さらに、出射アパーチャ13を通過することで所望のスポット形状に整形される。
【0036】
コリメータレンズ12は、直径が約3.0mm、焦点距離f1が約3.0mmの硝子レンズであって、製品が保証する読み取り距離近辺の性能が最適となるよう、その位置が調整される。
【0037】
出射アパーチャ13は、矩形の開口であって、走査方向の幅A1xが0.7mmとなっている。そして、出射光が経由することでこの幅A1x以上の光は遮断される。これにより、出射光は整形される。この開口の幅A1xは、バー・スペース幅が5milや13milのバーコードのように、所望の対象物の読み取り領域が最適となるように、予め設定されている。出射アパーチャ13を通過したレーザー光は、折り返しミラー5で入反射し、さらに、走査ミラー21の略中央に配置された出射ミラー21bに入射する。
【0038】
出射ミラー21bで反射したレーザー光は、前述した走査面内を往復する動き(走査光)をなす。走査光は、スポット形状に形成され、バーコード等の対象物の上を横切るように移動し、対象物の反射率に対応した反射散乱光を生じさせる。
【0039】
この反射散乱光は、集光ミラー21aに入射する。集光ミラー21aは、焦点距離f2が約10mmの凹面となっており、出射ミラー21bに対して、予め所定の角度をもって固定されている。
【0040】
集光ミラー21aに入射した反射散乱光は、バンドパスフィルタ15を経由して光検出器17の検出面近傍に集光する。バンドパスフィルタ15は透明な硝子板に誘電体多層膜が両面蒸着された構造になっている。そして、光源の波長である650nm近傍の光については垂直透過率が90%程度であるが、それ以外の光の透過率は5%〜1%以下程度となるように、多層膜の膜厚が調整されている。
【0041】
従って、バンドパスフィルタ15により、レーザー光の反射散乱光は取り込むが、それ以外の光は遮断される。バンドパスフィルタ15を通過した反射散乱光は、光検出器17に入射して、光電流に変換される。
【0042】
よって、走査面を遮るようにバーコードの対象物を配置すると、その領域の光学的な情報が電気回路によって取得され、対象物の自動認識をするなど、種々の処理が可能となっている。
【0043】
次に、LD11と他の出射光学系について説明する。
図4には、レーザーダイオード11の外観を示す。LD11は、パッケージの内部に発光のためのレーザーチップ(図示せず)が配置され、背面に電源供給等ための複数のピン11bが設けられている。レーザーチップは、半導体の接合によって形成されており、活性面を有する。レーザー光は活性面に沿って出射する。
【0044】
図5は、LD11を背面から見た図である。図示するように、活性面の向きに対応して、LD11の3本のピン11bが配置されている。LD11外周には、複数の切り欠き11c1,11c2,11c3が設けられている。これらのピン11bに、所定の電圧を与えると、活性面からレーザー光が生じる。
【0045】
図6は、活性面からレーザー光が発する様子を示した図である。
これは、いわゆる、ファーフィールドパターンを示した概念図である。図示するとおり、レーザー光は、出射方向に一定の広がり角をもって進む。活性面に水平な方向と垂直な方向とでは、半導体の構造が異なっていることから、一般に、水平方向と垂直方向の広がり角はそれぞれ異なっている。そこで、活性面に沿った方向の広がり角をθ//、活性面に垂直な方向の広がり角をθ⊥とする。さらに、広がり角は、半値全幅で定義する。すなわち、略中央の光強度のピークに対し、半値を与える全角で規定する。例えば、650nmの可視光の半導体レーザーの場合は、通常、各広がり角は、θ//=8度程度、θ⊥=30度程度である。図6でいえば、レーザー光から直接照射されるスポットは、概して、互いに直交する長軸と短軸を有する楕円形をしている。そして、短軸は活性面に略平行であって、長軸は活性面に略直交している。
【0046】
次に、活性面と走査面の角度θ1について説明する。
図7は、前述したハウジング2にLD11を仮組みした状態を示す図である。以下の説明において、前述した活性面と走査面の2つの面のなす角を角度θ1と定義する。図7に示した状態では、この角度θ1は約90度となっている。この場合、走査面角の向きと、図6におけるθ⊥の向きが略平行となっており、光源については、図8に示すように、走査方向の光の広がり角が約30度となるように配置していることになる。
【0047】
この図8は、図7の状態において、走査面の上部の方向から、出射光学系を見たときの配置について示している。LD11より略30度の広がり角を有して出射された光は、コリメータレンズ12を通過して略平行光となり、さらに、出射アパーチャ13を通過して、走査方向の幅が0.7mmに整形される。従って、出射ビームの走査方向のビームの幅は、出射アパーチャ13を通過した直後においては、一部が遮光されて、0.7mmとなっている。
【0048】
ここで、スポット形状と線像分布関数、ビーム径の定義について説明する。
図9は、図8の配置において、出射アパーチャ13から出射されたレーザー光のスポットの形状を示したものであり、線像分布関数と称されている。走査光学系では、走査方向についての1次元的な光強度の変化が、分解能等、製品性能と相関することが多い。
【0049】
そこで、まず、出射光を出射方向に垂直な面に投影してスポットの2次元的な光強度(点像分布関数)を取得する。次に、その光強度を走査方向など1つの直線方向に投影したと考えて積算する(積分する)。これにより、走査方向の1次元的な光強度分布を得ることができる。このような光強度分布は線像分布関数といわれ、スリット等を用いた測定器による実測値や走査光学系の製品性能と相関していることが多いことから、性能評価等においてよく用いられる。
【0050】
また、ビーム径は、この線像分布関数において、光強度の最大値に対する1/e^2=13.5%(eは自然対数の底であって、e=2.71828…の値である)を与える全幅で規定されることが多い。図9に示すビーム径は250um程度となっている。
【0051】
[ビームウェスト、フォーカス調整]
さらに図9は、ビームウェストにおける線像分布関数を示したものである。
【0052】
本実施形態では、光走査モジュール1は、出射アパーチャ13から150mmの距離において、前述したビーム径が最もシャープになるようにコリメータレンズ12の微調整(フォーカス調整)がなされている。実際には、製品の仕様に基づいて、バーコードの読み取りを最適にしたい距離に適宜合わせて、ビームウェストの調整距離が決められている。
【0053】
尚、図9等に示されたスポット形状について、出射アパーチャ13を出た光は、次の折り返しミラー5と走査ミラー21に入射/反射する。しかしながら、この2つのミラーについては、走査方向の断面形状は平面となるよう予め光学系が設計されている。従って、これらの2枚のミラーを経由しても、走査方向のビームスポットの形状は影響を受けない。
【0054】
さらに、この出射されるレーザー光のスポット径に関連したものとして、ビームウェストにおけるスポットを概算するために、次のエアリー式を説明する。一般的には、以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0055】
ここで、Raはエアリーの半径と呼ばれ、点像分布関数における最初の暗環(スポットを観察したときに暗くなっている位置)を半径で示したものである。F1は観測する側の実効的なFナンバーである。この式は、ビームウェストの近辺においてのみ、成りたつものである。
【0056】
前述したビーム径は、測定の都合等により、ピーク値の1/e^2とすることが多いと説明したが、式(1)では、暗環の半径を示しており、ビーム径の定義とは異なっている。さらに、エアリーディスクは、点像分布関数について定義されたものであるが、前述したビーム径は、線像分布関数において定義されたものであり、式(1)とは相違がある。
【0057】
このような相違から、一般に、1/e^2のビーム径は、エアリーの直径(エアリーの半径の2倍)には完全には一致しない。バーコードスキャナ等において評価をしてみると、1/e^2のビーム径は、エアリーの直径に対して、通常、やや小さめの値を取る。
【0058】
しかしながら、エアリーの式とビーム径は、傾向としては相関することから、設計の指針や調整の方向性を把握するうえでは便利である。後の説明のため、式(1)をこれまで説明した光走査モジュールのパラメータを用いて書き直しておく。
【数2】
【0059】
ここで、f0 は、ビームウェスト距離(フォーカス調整距離)であり、A1xは、前述した走査方向の出射アパーチャ径、λ1は、光の波長である。いまの場合、f0 =150mm、A1x =0.7mm、λ1=0.650umである。
【0060】
また、前述したビーム径は、全幅で定義していたので、対応させるために両辺を2倍してある。式(2)に上記の数値を代入すると、以下のようになる。
【数3】
【0061】
この式3は、点像分布関数の暗環を示すものである。一方、図9に示す線像分布関数のビーム径は、250um前後となっている。定義の違いや1/e^2のビーム径は暗環の手前にくる等の違いにより、2〜3割程度の相違があるものの、オーダーとしてみれば、大きな矛盾がない。
【0062】
[ビームウェストから離れた位置でのスポット形状について]
図9は、出射アパーチャからの距離が150mmのビームウェスト近辺における線像分布関数である。これに対し、図10は、図9と同一の光学系の配置において、出射アパーチャからの対象物の距離のみを変えた例を示している。
【0063】
図10は、出射アパーチャ13からの距離が50mmにおける線像分布関数(ビーム径)の例である。このように、ビームウェストでのスポットの形状に比較して出射アパーチャに近い領域では、ビーム径の形状が崩れている。図示するように、高次のサブピークが顕著となり、フレネル回折として知られている。
【0064】
さらに、図10に示すビーム径は、ビームウェストにおけるビーム径よりも大きくなっている。これは、図10において、走査方向の出射アパーチャの幅を0.7mmとしたことによる。前述したエアリーの式では、ビームウェスト近辺において成り立つ式であるため、現況においては適用できない。ビームウェストから離れた場合には、ビーム径は距離に応じてアパーチャ径に近づくようにふるまう。これは幾何光学からも推測ができる。
【0065】
[走査光学系の信号処理]
次に図11には、評価のためのチャートの一例を示し、走査光学系から得られる信号について説明をする。尚、実際には、バーコード等を用いるが、説明を簡易にするために本チャートを用いる。
【0066】
このチャートでは、2本のバーのみとし、バーの幅は13milである。1mil=25.4mm/1000と定義されており、バーの幅は330.2umである。このようなチャートを出射アパーチャ13からの距離が150mm程度となる位置で走査面を横切るように対向して配置する。
【0067】
そして、レーザー光のスポットをチャートの上で移動させると、光検出器から図12に示す信号が得られる。この信号は、光検出器で検出された光電流を電流/電圧変換回路42や増幅回路43において、処理された後の波形である。横軸は時間であって、走査光のスポットの動きに対応したものである。縦軸は電圧値を最大値でスケールしたものである。ここで、走査ミラー21の走査の周波数は50Hz、走査角の最大値は45度となるように設計されている。
【0068】
図12は、走査の対象物の反射率の変化に対応する電圧値の変動を示す。この光信号を前述の微分回路44に通す。図13は、微分回路44の主要部を示す概念図である。ここでは、カットオフ周波数が50kHzに設定されている。その他の詳細については省略する。図14は、微分回路44から出力された微分信号である。横軸は時間である。縦軸は電圧値であって最大値でスケールとしたものである。
【0069】
前述したとおり、対象物であるチャートのエッジに対応してピークが生じる。従って、このピークの位置を検出して、時間間隔を幅値に換算して出力すれば、走査対象物であるもとのチャート(図11)のパターンを電気回路上において再現することができる。
【0070】
具体的には、図14に示す微分波形は、アナログ/デジタル変換されたのち、基板ユニット2bに搭載されているDSP46にて所定の時間間隔ごとにサンプリングされる。サンプリングされたデータは、予め設定された閾値と比較されて、閾値を超えた場合には絶対値の最大値を検出する。即ち、ピーク値が検出される。
【0071】
このピーク値が検出されたら、その地点がエッジであると判定され、エッジごとに白黒に対応した2値が割り当てられる。サンプリングされた信号についてこれを繰り返すことで、2値化処理が行われる。2値化された信号は走査対象物(チャート)の輝度値のパターンに対応している。この2値化信号は、さらに、復号回路47に転送される。
【0072】
復号回路47は、まず、走査に対応して取得した2値化信号を、回路内のメモリに蓄える。そして、メモリに蓄えられたパターンに対して、バーコードの各種の規格に基づき、パターンの一致・不一致の比較が繰り返し行われる。
【0073】
この比較でパターンが一致した場合には、バーコードのチェックデジツト等を計算して読み取りに問題がないかどうかを確認する。その結果、適正なバーコードとして認識できた場合には、バーコードデータを外部に送信して初期の状態に戻る。例えば、英数字のキャラクタを読み取った場合は、この文字情報がシリアル通信によってコネクタを介して外部のコンピュータに転送されて処理を完了する。適正なバーコードとして認識できなかった場合は、メモリ内に蓄積された諸データを棄却して、初期の状態に戻る
[回折ノイズが生じる状態]
次に、回折ノイズについて、より詳細に説明する。
前述したとおり、出射アパーチャ13から対象物までの距離を変えるとスポットの形状が変化する。例えば、対象物の位置を変えて出射アパーチャ13からの距離を150mmから50mmに変更する。
【0074】
この移動により、スポット形状は、図10に示すものとなる。前述したように、このスポットには、レーザー光の回折現象により、複数の回折ピーク(サブピーク)が生じている。そこで、前回と同様に図10に示すスポットで図11に示すチャートを走査する。その結果、図15に示す光信号の波形が得られる。前述した図12に示した波形に比べると、ビームウェストの距離から離れたため、光信号の傾斜がなだらかになっている。
【0075】
図16は、この光信号を微分回路44に通して得られる出力信号の微分波形を示す。このように、図10で得られたスポットと同じ形状が、微分波形に再度現れる。これは、ビームスポットをチャートにあてて、その領域の反射散乱光を取り込むということは、ビームスポットとチャートのコンボルーションの積分計算を行ったことに相当する。その走査波形を微分回路44に通すということは、積分を行ったのちに微分を行うことに相当するので、元のビームのスポットの形状等が現れる。
【0076】
従って、図12で説明をしたサブピーク(高次の回折光)に対応して、微分波形に複数のサブピークが生じることがわかる。これは、光学系における高次の回折光は、電気回路のノイズと等価にふるまうことを意味している。そして、この場合、前述したピーク検出は適正に機能しない。なぜなら、本来のメインピーク(信号成分)に加えて、多数のサブピーク(ノイズ成分)が上書きされて出現するため、ピークの真偽の判定が困難となることによる。
【0077】
前述した例では、図11に示すような簡単なチャートを用いて説明したが、実際には、チャートの印刷密度がさらに高まり、各ライン(又は、ドット)は、さらに太細や濃度のバリエーションが相当数になる。例えば、上のチャートは13milの例を示したが、5milのチャートの場合は、真の信号はさらに細かくなってノイズ成分と重なることになる。従って、波形だけからは真偽の判断はますます困難となる。
【0078】
これは現象としては、ビームウェストからバーコードの距離を離すと、信号成分が減少し、且つノイズが相対的に大きくなるため、信号雑音比の低下が起因して、正確なバーコードの読み取りができなくなる。
【0079】
[信号雑音比]
信号雑音比は、ノイズ成分に対する信号成分を比率で示したものである。例えば、前述したように、微分信号を評価対象とするのであれば、ノイズのピーク電圧に対する信号のピーク電圧の比として評価すればよい。または、光学系を評価対象とするのであれば、前述した線像分布関数において、メインピークとサブピークの面積が信号量に対応すると考えて、面積の比を用いてもよい。さらに、デジタル信号を評価対象とするのであれば、ノイズと信号を階調値で評価して比を用いればよい。あるいは、ソフトウェア処理を評価対象とするのであれば、例えば、スムージング処理の前後における信号振幅やノイズの変化量から各処理方式の優劣を評価してもよい。
【0080】
[信号雑音比の調整方法]
次に、本実施形態の光走査モジュールにおける信号雑音比の調整方法について説明する。 図17(a)乃至17(c)は、前述した、角度θ1を90度の状態から、次第に変化させて、0度に近づけた状態を示す。前述した図7に示したレーザーダイオード11の配置は、図17(a)に対応しており、θ1=90度の状態となっている。前述したように、この時、レーザー光の広がり角は約30度であり、出射アパーチャ13によって出射光の端部分が遮光即ち、けられた状態となっている。このけられの結果、エッジ部分で回折が生じて、図10に示すようにスポットの両側にサブピークが生じている。
【0081】
そこで、図7に示すレーザーダイオード11を出射軸周りに回して、角度θ1を0度になるよう調整する。即ち、レーザー光を図17(a)から図17(c)に示した状態にする。
【0082】
図6において説明したように、レーザー光の広がり角は、活性面の向きとその直交方向では異なっているため、角度θ1を変化させると、走査方向の光の広がり角を連続的に任意に変化させることができる。角度θ1=0度とすると、走査方向の広がり角は8度程度となって走査面上部から見ると光は出射軸中心に集中する。従って、角度θ1を0度に近づけると、出射アパーチャによる光のけられを減少させることができる。この減少により、出射光は出射軸周辺に集中して、出射アパーチャの端部近辺の光の強度が弱くなる。この結果、回折ピークの強度が小さくなる。
【0083】
よって、出射アパーチャ13からの距離が50mmの場合には、図10に示したような高次の回折ピークが減少し、中央のメインピークのみが高くなる。これは、もともとの出射光が、図6に示したようなガウス型状の光強度を有していたことに対応している。しかしながら、この場合、ビームウェストにおけるビーム径は大きくなる。すなわち、図17(c)に図示したとおり、出射光の幅は、出射アパーチャの幅A1xよりも狭くなっている。図17(a)と比較すると、出射アパーチャを経由した光の幅は、約1/3程度となっている。
【0084】
これは、出射アパーチャの位置における実質的な出射光の幅が狭くなったことに相当する。つまり、前述した式(2)に戻ると、角度θ1を90度から0度に減らしていくと、実効的な出射アパーチャの幅A1x は、約1/3倍に減少させたことに相当する。従って、式(2)より、ビームウェスト近辺におけるビーム径は、約3倍程度に増加すると見積もられる。この場合、ビーム径が大きくなったことで、微分波形はなだらかになって、メインピークの高さ(電圧)は下がる。これにより、ピーク検出の機能は劣化する。特に、5milなどの高密度のバーコードの読み取りが大幅に劣化する。そこで、微分波形を測定しながら、角度θ1を90度から徐々に小さくさせて、ビームウェスト距離におけるビーム径が劣化しない程度、即ち、微分波形のピークが下がらない程度の角度を探す。
【0085】
以上のように、ビームウェストにおけるビーム径をほぼ維持する範囲内で、角度θ1が最小となる値を探す。その結果が、図17(b)である。図17(b)からわかるとおり、出射ビームの幅という観点でみると、図17(b)は図17(a)とほとんど変わらない。従って、式(2)により、ビームウェスト近辺においては、図17(a)と同様、非常にシャープなビーム径が得られる。
【0086】
従って、5milなどの高密度のバーコードの読み取りを良好とできる。図17(c)と比べると、図17(b)の配置のほうが、よりシャープなビーム径が得られる。他方、図17(b)に示したとおり、出射アパーチャにおける光のけられ量という観点でみると、図17(b)は図17(a)よりもけられ量が少なくなっている。むしろ、図17(c)に近い状態であることがわかる。
【0087】
従って、図17(b)の配置によれば、出射アパーチャ近辺での微分波形は、前述した図16よりも図14に近い状態になる。これは、けられが少なくなったことに対応しており、微分波形は、もともとは図16に示した状態であったものが、図14に示す形状に近づく。この調整により、信号振幅を良好としつつ回折ノイズを除去・低減することができる。
【0088】
以上説明した調整によって、ビームウェスト近傍については、ビーム径を十分にシャープに調整しつつ、且つビームウェストから離れた場合については、前述した回折ノイズを低減することができ、双方について性能を良好とできる。
【0089】
また信号雑音比という観点で見ると、信号成分が良好でありつつ、且つノイズ成分が最小となる位置を探し出すことができる。その結果、製品性能は読み取り領域全域にわたって、格段に改善される。すなわち、図16に示した回折ノイズが解消又は低減するため、後段の電気回路やソフトウェアがより正確により効率よく機能するようになる。
【0090】
前述したとおり、特許文献2等で示唆されている従来技術においては、信号成分の改善には上限があった。例えば、ソフトウェアによるスムージング処理(平均化処理)のように、通常、ノイズの除去をしようとすると同時に信号ピークもなまってしまうという傾向がある。
【0091】
本実施形態は、開示される事項とは異なる現象を利用しており、ノイズ成分を低減したにもかかわらず、信号成分も改善されているという調整の状態が存在している。従って、信号雑音比が良好となる位置になす角を調整することで、性能を格段に改善することができる。
【0092】
また、図10では、対象物と出射アパーチャ13との距離が近い例を示したが、この調整によって、これらの距離がビームウェスト近辺やそれより遠い位置であっても、回折ノイズを改善することができる。例えば、図9には、ビームウェストにおけるスポット形状を示した。詳細には、ビームウェストにおいても、前述した回折現象が発生し、高次の回折光が発生していることがわかる。このようなサブピークについても、前述した調整によって出射アパーチャ13によるけられが改善されるため、同時に改善される。
【0093】
従って、レーザーダイオード11における角度θ1の調整によって、出射アパーチャ13近辺のフレネル回折のみならず、ビームウェスト近辺や、遠方のいわゆるフラウンフォーファー回折等も改善される。読み取りの領域全域にわたって信号雑音比が改善されることからピーク検出等の後段の処理がより適正に機能するようになって、製品性能が向上する。
【0094】
図18には、角度θ1の調整後におけるレーザーダイオード11の配置の一例を示す。この例では、角度θ1の最適な調整角は、約45度となっている。これは、微分回路44の波形を見ながら、信号雑音比が最大となる位置を探し出した位置(角度)である。
【0095】
以下に簡易な調整方法の手順を説明する。
まず、市販のビーム径測定器をビームウェスト近傍に配置し、光走査モジュール1の走査駆動を止めた状態で、レーザー光を出射させる。この時、ビーム径測定器は、駆動を継続させて連続的に検出を行い、ビーム径の測定値をモニタ表示させておく。
【0096】
次に、ビーム径が許容できる範囲(例えば、260um以下)に概略で調整する。次に、角度θ1を90度から0度に向かって、数度おきに順次減らしていき、設定測定を繰り返す。許容できる範囲内でθ1が最小となる位置を見つけたら、角度θ1を固定する。このような手順により、ビーム径が十分にシャープでありながら、けられ量が最小となる位置を探し出すことができる。
【0097】
この角度θ1は、コリメータレンズ等を決めてレーザーダイオードを選択すると、一意に決まる。従って、製品の開発中に上記の手順で最適な角度を見い出しさえずれば、量産時においては角度θ1を固定してしまってよい。すなわち、試作等で最適な角度θ1を探したら、量産用のハウジング部材には凸部を設けておき、前述のレーザーダイオードの背部の切り欠きと一致するようにして組み立てることにする。これにより、量産時における角度θ1の調整作業を簡易化・単純化できる。
【0098】
この場合、量産における組み立てと調整の手順は、例えば、つぎのようになる。まず、コリメータレンズをハウジング部材に組み込み、つぎにレーザーダイオードをハウジングに取りつけていわゆるカシメによって固定する。ここで、角度θ1を特定する。
【0099】
次に、レーザーダイオード11のピンに電圧を与えて、コリメータレンズ12を通したレーザー光のスポット径を観察しながら、コリメータレンズ12の位置を微調整する。所望の距離に前述のビームウェストがくるようにフォーカス調整を行ったら、コリメータレンズ12の位置を接着固定して組み立て・調整作業を完了する。
【0100】
角度θ1の調整の後に、フォーカス調整をすることにより、ビームウェスト等におけるビーム径を正確に調整することができ、信号雑音比をより最大化でき、調整のばらつきも低減できる。これにより、信号雑音比の調整を単純化でき、性能が最適な光走査モジュール1を量産できる。
【0101】
または、レーザーダイオード11をハウジング2にカシメで固定する代わりに、圧入や接着によって固定してもよい。あるいは、ねじ止めによって固定してもよい。ねじ止めによって固定すると、部品点数が増えるものの、角度θ1の再調整や個別の調整が容易となって、信号雑音比をさらに改善できる。
【0102】
尚、第1の実施形態における、角度θ1について、最適な調整値は、約45度に固定されているが、レーザーダイオード11の規格によると、θ//とθ⊥の値は数割程度の範囲がある。例えば、θ//=8±2度、θ⊥=30±5度程度となっており、各メーカーの製造エ程や半導体材料の違いによって相違が発生する。
【0103】
さらに、角度θ1を変えたときの信号雑音比の変化は連続的であって、ある一定の許容範囲がある。従って、第1の実施形態における、角度θ1は、45度近辺が好適するが、数10度程度の許容範囲を有している。実際には、角度θ1は、0度から90度の範囲であればよいが、望ましくは、10度から80度程度の範囲であれば尚よい。さらに、光走査モジュールの個々について、信号雑音比が最適化されるように個々に微調整がなされていれば、さらによい。いずれにおいても、角度θ1が、このような範囲に調整されていれば、けられを無くすことができ、光走査モジュールの性能は向上する。すなわち、スポットをシャープにしつつ、回折ノイズを低減できる。
【0104】
また、本実施形態によれば、レーザーダイオード11の種類を変更して、広がり角が変わったとしても、なす角の調整により容易に最適化できる。その調整においても、微分波形を観察することで、その効果を容易に検証できる。
【0105】
前述した特許文献2等で記載される従来技術においては、レーザーダイオードの種類やロットが変わって、レーザー光の広がり角が変わると、回折ノイズの形状が変化する。その結果、部品の性能ばらつきが電気回路やソフトウェアの仕様や設定の範囲を超えた場合には、誤動作が発生しないとも断言できないため、再度、動作検証をする必要が生じ、パラメータの再調整や再設計の必要が生じうる。
【0106】
また、第1の実施形態において、各種のパラメータを挙げたが、次のように表現することもできる。まず、レーザーダイオードの走査面方向の広がり角をθ2と定義する。θ2は、前述のとおり、θ//からθ⊥の範囲程度、すなわち、8度〜30度の範囲の程度で可変である。次に、角度θ3を以下のように定義する。
【数4】
【0107】
ここで、A1xは、走査方向の出射アパーチャの幅、f1はコリメータレンズの焦点距離である。tan−1xは、Atanxと同義であって、tanxの逆関数である。前述の焦点距離f1=3.0mm、走査方向の出射アパーチャ間隔A1x=0.7mmの値を代入すると、θ3=約13度と求められる。θ3はθ2の範囲の中間にある。従って、前述の角度θ1を45度近辺にすると、広がり角θ2を略θ3か、それ以下程度とすることができる。これにより、第1の実施の形態の例においては、すくなくとも、θ1=0度、90度とした場合に比べて信号雑音比が改善できる。さらに、前述の角度θ1を調整すれば、上記のθ2が連続的に変化して、信号雑音比が最大となるθ2に微調整することができる。実際は、前述の広がり角は、半値全幅で定義されているので、この角度を越えて広がる光が存在する。従って、ある一定の範囲がある。具体的には、θ2がθ3と同程度であるか、θ3を下回る程度であれば、十分に機能する。これを、θ1を用いて表現すると、角度θ1は、0度から90度の範囲であればよいのであるが、望ましくは、10度から80度の範囲であれば尚よい。あるいは、さらに、焦点距離f1や出射アパーチャの幅A1x 等を用いて換言すると、次のように表現することもできる。
【0108】
上述したθ3とθ2において、θ3≒θ2となるように、あるいは、θ2≦θ3となるように、焦点距離f1または広がり角θ2または幅A1xまたは、光源の向きのいずれかが調整されていればよい。この場合、前述したように、信号成分とノイズ成分は最適化されて、光走査モジュールの性能が改善できる。
【0109】
また前述したが、より厳密な角度θ1を特定したいのであれば、前述した微分回路44を用いた調整手順によれば、実験的な方法によって調整および検証ができるので、パラメータを変えつつ微調整を繰り返せばよい。例えば、光走査モジュールの性能をさらに向上させたい場合は、個々の光走査モジュールについて、角度θ1の微調整をそれぞれおこなえばよい。この場合は、部品の加工公差やレーザーダイオードの性能バラツキに起因する個々の信号雑音比のバラツキが各調整によって、キャンセルされて最適化できる。従って、保証する性能、製品仕様等をさらに向上させることができる。
【0110】
次に、第2の実施形態について説明する。
図19は、第2の実施形態に係る光学系を示したものである。その他の電気回路や機械部品等の構成部位は、第1の実施の形態と同等であり、ここでの記載は省略する。また、本実施形態の光学系においても、図1Cに示した構成部材と同等の部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0111】
図19においては、既に、前述した手順により、角度θ1は調整後であり、例えば、45度に設定されている。図19には、光線追跡の結果を概念的に示したが、θ1の調整により、走査面の上部から見込んだレーザー光の広がり角は狭くなっている。前述した第1の実施形態においては、調整後には出射アパーチャ13による、けられは低減した状態となる。つまり、なす角の調整後であれば、実質的に出射ビームの幅を最適化したことになって、必ずしも出射アパーチャ13を備える必要はない。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成から、出射アパーチャ13を取り除いた構成であり、出射光学系によるレーザー光の整形は、コリメータレンズ12のみによって行われている。
【0112】
前述したように、ビームウェスト近辺におけるビーム径は、コリメータレンズ12を通過した近傍においては、ビームの幅が適正に調整されていることから、十分にシャープにすることができる。よって、出射アパーチャを取り除いた簡易化された構成であっても、けられは発生せず、好適な信号成分が得られる。
【0113】
本実施形態においては、微分信号は、サブピークが生じていた従来技術と比べると、回折ノイズが大幅に改善され、光走査モジュールの性能は格段に改善する。角度θ1の調整は必要となるものの、調整作業によって、出射アパーチャは不要となる。よって、設計は簡素化され、部品点数やスペースを削減できるという効果を得て、さらに製品性能も向上できる。
【0114】
次に、第3の実施形態について説明する。
前述した第1および第2の実施形態においては、回路基板に形成され微分回路等は、基板ユニット2b上に設けた構成であった。
【0115】
第3の実施形態においては、図20に示すように、前述した光検出器52と微分回路51を調整治具として調整時のみ取り付けて、調整完了後には取り外す構成である。ベース部材2a上には、光源ユニット3と、折り返しミラー5と、光学走査装置4と、光検出ユニット6とが実装される。
【0116】
光源ユニット3のレーザーダイオード11は、ベース部材2a上の所定位置に搭載され、前述した角度θ1が調整される。この調整の際に、信号雑音比の調整や評価においては、所望の距離にチャートを配置して、レーザー光を走査させる。そして、別途、走査面の近傍に、光検出器52と微分回路51を有する調整冶具を配置する。
【0117】
この配置において、走査光の反射散乱光を光検出器52で取得する。この取得した信号波形に基づいて、前述したと同様に、微分波形を評価・確認することができる。
【0118】
このように光検出器52と微分回路51を調整時のみに取り付けることにより、信号雑音比の最適化やその検証を容易に行うことができる。例えば、光走査モジュールにコネクタ等の簡易に電気的に接続でき、且つ光走査モジュールを指定位置に置くだけで、光検出器52との位置関係が成り立つように調整冶具を構成する。光走査モジュールを量産する際に、このような調整冶具を稼動させたまま、順次交換して連続的に調整作業を行うことができる。これは生産効率を大幅に向上させたいときに効果的である。
【0119】
以上のように、本実施形態によれば、複雑な電気回路やソフトウェアの処理を追加することなく信号雑音比を改善できる。これにより、読み取り等の性能を格段に改善できる。さらに、ノイズ(回折ノイズ)が低減するので、二値化処理や復号処理を複雑化する必要がなく信号処理を高速化できる。また、電気回路の追加なく信号処理が効率化するので処理期間が短縮される。従って、消費電力も改善できる。部品点数を減らすこともできる。
【0120】
以上説明した各実施形態における光走査モジュールは、あらゆる電子機器に搭載できる。例えば、バーコードリーダ、レーザープリンタ、レーザー走査型顕微鏡、レーザープロジェクタ、情報入力装置、情報出カ装置、画像形成装置、精密医療機器、携帯情報端末、車間センサ、防犯センサ、三次元スキャナ、無線装置、ハンドヘルド機器、自動車、船舶、航空機、半導体製造装置、カード認識装置、自動販売機等である。
【0121】
また、各実施形態の光走査モジュールは、あらゆるバーコードの読み取りに好適する。例えば、JAN, EAN, UPC, Code39, ITF(Interleaved 2 of 5), Codabar, Code128, UCC/EAN128, BooklandEAN, MSI Plessey, Code93, Reduced Spaced Symbology(RSS), PDF417等のバーコードの読み取りに好適する。また、線画、ドット、線分等の組み合わせや記号、刻印された凹凸形状等の特殊なパターンを読み取る用途であっても好適する。また、本発明の光走査モジュールは、復号回路に搭載されたソフトウェアを書き換えることで、容易に物体検出等に応用することができる。例えば、自動車や人物の認識に用いることができる。移動物体やその有無についても検出することができることから、走査光を赤外光として防犯装置を構成してもよい。また、本発明の光走査モジュールを用いて、三次元形状を読み取るための三次元スキャナを構成して、人体等を走査対象としてもよい。また、本発明によれば、広い距離範囲においてスポットの形状が改善されることから、広範囲の移動物体等の高精度な検出に好適である。また、高精細のレーザープロジェクタとして、スクリーンや壁面を走査するという例であってもよい。
【0122】
本発明により、回折ノイズや信号雑音比を良好に改善することができる。しかしながら、その他のノイズや光学系の改善を併用してよいことはいうまでもない。例えば、前述のバンドパスフィルタとして、特許文献3に記載された光学的ゲイン補正フィルタを搭載してもよい。この光学的ゲイン補正フィルタは、入射角が変わると光量が増減するという多層膜部品であるが、この部品を搭載することで、走査等にともなう周辺光量落ちを低減するなど、さらに性能を改善できる。
【0123】
また、本実施形態のレーザー光は、650nmの波長としたが、限定されるものではなく、例えば、400nm近辺の波長としてもよいし、800nm以上の赤外光を用いてもよい。このような場合、前述したバンドパスフィルタの透過波長を変更すればよい。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、回折ノイズの少ないシャープなビームスポットを生成できる。従って、レーザープリンタ、レーザー走査型顕微鏡、レーザープロジェクタ、三次元スキャナの走査光学系としても好適である。この場合、分解能や深度を改善でき、より高精細な出力を得ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0125】
1.走査光学系の前段において、回折ノイズを低減することができる。これにより、光走査モジュールの性能を改善することができる。
【0126】
2.回折ノイズを低減しつつ、信号成分が良好に調整でき、信号雑音比を改善できる。これにより、性能の優れた光走査モジュールを提供できる。
【0127】
3.信号雑音比が最大となる調整を実現できる。これにより、電気回路等の複雑な調整をする必要なく、読み取りの性能を最適化することができる。
【0128】
4.良好な信号成分を維持しつつ回折ノイズを低減することで、複雑な回路や処理を削、できる。これにより、電気部品や複雑な処理を削減して、二値化処理、復号処理、ソフトウェアの処理を高速化できる。消費電力も低減できる。
【0129】
5.回折ノイズを低減しつつ、良好な信号成分を得ることで、信号雑音比に優れた光走査モジュールを提供することを目的とする。一般に、ノイズを低減しようとすると信号成分も劣化するという相反する関係がある。しかしながら、本発明は、信号雑音比という観点で好適な光走査モジュールを提供する。具体的には、レーザー光のスポットのメインピーク(0次の回折光)の鋭さ・スポット幅を維持・改善しつつ、サブピーク(高次の回折光)を低減する。これにより、信号雑音比が改善されて、光走査モジュールの動作領域が改善する。
【0130】
6.光走査モジュールにおける信号雑音比の調整方法を提供することができる。即ち、前述した従来技術において、ノイズ成分の低減と信号成分の改善という相反する特性があった場合には、電気回路の定数やソフトウェアのパラメータの無数の組み合わせを検討して、偽信号による誤動作が起きないことを検証する必要があった。このデバッグやその最適なバランス点を見いだすことは大変煩雑な作業となっていた。一般に、ノイズを低減しようとすると信号成分も劣化するという相反する関係があることが多く、最適な調整を見出すことは難しいことが多い。
【0131】
しかし本発明は、信号成分を改善しつつ回折ノイズは低減できる、信号雑音比の調整方法を提供する。
【0132】
7.良好な信号成分を改善しつつ回折ノイズを低減することで、複雑な電気回路や処理を削減することを目的とする。電気部品や複雑な処理を削減して、二値化処理、復号処理、ソフトウェアの処理を高速化させることができる。消費電力も低減させることができる。
【0133】
[付記]
本発明は、以下の発明を含んでいる。
【0134】
(1)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向と、のなす角をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(2)前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(3)その断面が楕円形状の拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときのその拡散光の断面楕円形状の長軸の方向と、のなす角をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(4)前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(3)項に記載の光走査モジュール。
(5)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の走査面内において往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査される平行光の光軸に対する走査面の向きを、半導体レーザーから出射される拡散光の光軸に対応させた場合の、拡散光の光軸から見たときの走査面の向きと、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向とのなす角をθ1としたとき、θ1は0度<θ1<90度の範囲になるように、半導体レーザーがシャーシに載置されることを特徴とする光走査モジュール。
(6)θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(5)項に記載の光走査モジュール。
(7)拡散光を出射する半導体レーザーと、
半導体レーザーからの拡散光を平行光にするコリメータレンズと、
平行光の断面形状を整形する開口部と、
平行光を読み取り対象物に向けて反射させるとともに、平行光を所定の方向に往復移動させるように走査させる走査部と、
読み取り対象物からの反射光を受光する光検出器と、
光検出器の受光信号を微分処理する微分回路と、
これらが載置されるシャーシと、
を有する光走査モジュールにおいて、
走査部で走査される平行光の光軸に対する走査方向を、半導体レーザーから出射された拡散光の光軸に対応させた場合の走査方向であって、それを拡散光の光軸から見たときの走査方向と、拡散光の光軸から見たときの半導体レーザーの活性層の面内方向と、のなす角をθ1としたとき、微分回路の出力において、整形によって生じた回折ノイズを低減させ、信号対雑音比を増加させるように、前記θ1を調整したことを特徴とする光走査モジュール。
(8)θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする(7)項に記載の光走査モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す図である。
【図1B】図1Bは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの内部構成を示す図である。
【図1C】図1Cは、第1の実施形態に係る光走査モジュールの主たる光学系の配置構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの走査光、走査方向及び走査面について説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、レーザーダイオードの外観構成を示す図である。
【図5】図5は、レーザーダイオードの実装側から見たピンと活性面の向きについて説明するための図である。
【図6】図6は、レーザーダイオードにおけるレーザー光の光学的な特性について説明するための図である。
【図7】図7は、ハウジングへのレーザーダイオードの組み付け状態を示す図である。
【図8】図8は、レーザーダイオードにおけるレーザー光の広がりと光学部位との関係について説明するための図である。
【図9】図9は、出射アパーチャと所定距離を離れた配置におけるレーザー光のスポット形状について説明するための図である。
【図10】図10は、出射アパーチャに近寄った配置におけるレーザー光のスポット形状について説明するための図である。
【図11】図11は、評価のためのチャートの一例を示す図である。
【図12】図12は、図9におけるレーザー光を用いて図11に示したチャートから検出した検出信号の波形を示す図である。
【図13】図13は、微分回路の主要部の回路構成を示す図である。
【図14】図14は、図12における検出信号を入力した微分回路からの出力信号の波形を示す図である。
【図15】図15は、図10におけるレーザー光を用いて図11に示したチャートから検出した検出信号の波形を示す図である。
【図16】図16は、図15における検出信号を入力した微分回路からの出力信号の波形を示す図である。
【図17】図17(a)乃至(c)は、レーザーダイオードにおける走査面と活性面のなす角を変えたときのレーザー光の上から見た幅を示す図である。
【図18】図18は、レーザーダイオードにおける走査面と活性面の調整について説明するための図である。
【図19】図19は、第2の実施形態に係る光走査モジュールの主たる光学系の配置構成を示す図である。
【図20】図20は、第3の実施形態に係る光走査モジュールについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0136】
1…光走査モジュール、2…ハウジング、2a…ベース部材、2b…基板ユニット、3…光源ユニット、4…光学走査装置、5…折り返しミラー、6…光検出ユニット、11…レーザーダイオード(LD)、12…コリメータレンズ、13…出射アパーチャ、15…バンドパスフィルタ、16…受光開口部、17…光検出器、21…走査ミラー、21a…集光ミラー、21b…出射ミラー、22…駆動部、23…軸受部、25…駆動コイル、26…板ばね、27…支持ばね保持部材、28…ヨーク、29…磁石、31…コネクタ、32…制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性面を有し、レーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、前記θ1は、0度から90度の範囲で調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項2】
前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする請求項1記載の光走査モジュール。
【請求項3】
活性面を有しレーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
前記光検出器からの信号を微分処理して出力するための微分回路と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、前記微分回路からの出力において、前記整形によって生じたレーザー光の回折ノイズを低減して信号雑音比を増加させる向きに、前記θ1が調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項4】
活性面を有しレーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、前記光検出器からの信号を微分処理して出力するための微分回路を設けたとき、前記微分回路からの出力において、前記整形によって生じたレーザー光の回折ノイズを低減する向きに、または信号雑音比を増加させる向きに、前記θ1が調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項5】
断面が楕円形のレーザー光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
を有する光走査モジュールにおいて、
レーザー光の光軸まわりの前記走査面と、レーザー光の断面楕円形の短軸との角度をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲で調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項1】
活性面を有し、レーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、前記θ1は、0度から90度の範囲で調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項2】
前記θ1は10度<θ1<80度の範囲で調整されていることを特徴とする請求項1記載の光走査モジュール。
【請求項3】
活性面を有しレーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
前記光検出器からの信号を微分処理して出力するための微分回路と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、前記微分回路からの出力において、前記整形によって生じたレーザー光の回折ノイズを低減して信号雑音比を増加させる向きに、前記θ1が調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項4】
活性面を有しレーザー光を出射させる光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
を有する光走査モジュールにおいて、
前記光源から出射光軸を見込んだときのレーザー光の光軸まわりの前記走査面と、前記半導体レーザーから出射光軸を見込んだときの前記活性面との角度θ1としたとき、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、前記光検出器からの信号を微分処理して出力するための微分回路を設けたとき、前記微分回路からの出力において、前記整形によって生じたレーザー光の回折ノイズを低減する向きに、または信号雑音比を増加させる向きに、前記θ1が調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項5】
断面が楕円形のレーザー光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザー光を整形するための出射光学系と、
前記整形されたレーザー光を走査面内で走査させる走査部と、
前記走査されたレーザー光の反射散乱光を受光するための光検出器と、
を有する光走査モジュールにおいて、
レーザー光の光軸まわりの前記走査面と、レーザー光の断面楕円形の短軸との角度をθ1としたとき、前記θ1は0度<θ1<90度の範囲で調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−79022(P2010−79022A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248306(P2008−248306)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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