説明

光走査型ディスプレイ

【課題】光束の2次元的な走査によって画像を表示するディスプレイであって、光源が発した光束が所定のタイミング検出位置を通過する通過タイミングの検出と、その光源の光量の検出との双方を、互いに連続して短時間で行うことが可能であるものを提供する。
【解決手段】ビームディテクタ(BD)センサ200の受光領域に、BD検知点214を有するタイミング検出領域210と、そのタイミング検出領域に隣接した光量検出領域212とを設ける。光走査型ディスプレイの作動中、副走査方向における無効走査期間内において、タイミング検出期間を開始し、そのタイミング検出期間内において、BDセンサ200を用いて前記通過タイミングtpassを検出する。その検出された通過タイミングから所定時間T経過した時刻t2に光量検出期間を開始し、その光量検出期間内において、同じBDセンサ200を用いて光源光量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源が発した光束の2次元的な走査によって画像を表示する技術に関するものであり、特に、光源の光量を検出する技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光束の2次元的な走査によって画像を表示する光走査型ディスプレイが既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。その一例は、観察者の外界に設置されたスクリーンに画像を投影して表示するプロジェクタであり、別の例は、走査された光束を観察者の網膜上に直接投影し、それによって画像を表示する網膜走査型ディスプレイである。
【0003】
いずれの例においても、この種の光走査型ディスプレイは、一般に、(a)光束を出射する光源と、(b)その光源から出射した光束を、主走査方向と、その主走査方向とは交差する副走査方向とに2次元的に走査する光走査装置と、(c)その走査された光束を所定のタイミング検出位置において検出する光検出装置と、(d)その光検出装置の出力信号に基づき、光束が前記タイミング検出位置を通過した通過タイミングを検出するタイミング検出部とを含むように構成される。
【0004】
ところで、光源が発する光束の光量(強度、輝度)は、その光源を駆動するための電力を同じにすれば常に一定であるとは限らず、光源の出力特性の経時変化や、近接する熱源による光源の温度変化等に起因して時間的に変化する可能性がある。また、光源の出力特性には、製品間の個体差もあるため、種類が同じ複数の光源につき、それらの出力特性が、製品間でばらつく可能性もある。
【0005】
これに対し、特許文献1は、そもそも通過タイミングの検出を目的として設置された光検出装置を流用して、光源が発する光束の強度(光量)を検出することにより、光源光量を補正する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−86371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような光走査型ディスプレイにおいては、通過タイミングの検出時における光源光量が、前記光検出装置による通過タイミングの検出に適した光量であることが望ましいのであるが、その光量が画像表示に適した光量とは大きく異なっている場合がよくある。そのため、従来の光走査型ディスプレイでは、通過タイミングの検出時に、その時に検出される光源光量の値すなわち光量検出値を、そのまま、画像表示に適した光源光量の目安として用いて光源光量を、画像表示に適するように補正することは困難であった。その結果、従来の光走査型ディスプレイにおいては、通常、通過タイミングの検出と、光源光量を画像表示に適するように補正するための光源光量の検出(以下、単に「光源光量の検出」という。)とが、複数回の走査に分けて非連続的に行われていた。
【0008】
上述したような光走査型ディスプレイにおいては、通過タイミングの検出と、光源光量の検出との双方を、副走査方向における無効走査期間のうちのできる限り短い期間中に行うことが理想的であるため、通過タイミングの検出と、光源光量の検出とを、同じ走査期間中に、互いに連続して短時間で行うことが要望されていた。
【0009】
以上説明した事情を背景として、本発明は、画像信号に応じた強度を有する光束の2次元的な走査によって画像を表示する技術であって、通過タイミングの検出と、光源光量を画像表示に適するように補正するための光源光量の検出との双方を、互いに連続して短時間で行うことを可能にするものを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載するが、このように、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することにより、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能となる。
【0011】
(1) 画像信号に応じた強度を有する光束の2次元的な走査によって画像を表示する光走査型ディスプレイであって、
前記光束を出射する光源と、
その光源から出射した光束を、主走査方向と、その主走査方向とは交差する副走査方向とに2次元的に走査する光走査装置と、
その2次元的に走査された光束を、前記主走査方向に延びる少なくとも一つの受光領域において受光し、その受光した光束の強度に応じた信号を出力する光検出装置と
を含み、
前記受光領域は、
その受光領域の、前記主走査方向における両端部の一方に配置されたタイミング検出位置を有するとともに、そのタイミング検出位置を前記光束が通過した通過タイミングを検出するためのタイミング検出領域と、
そのタイミング検出領域に対して前記主走査方向に並ぶとともに、前記光検出装置が受光した光束の光量を検出するための光量検出領域と
を含み、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
前記副走査方向における無効走査期間内において、前記タイミング検出領域内において前記通過タイミングを検出するためのタイミング検出期間と、前記光量検出領域内において前記光量を検出するための光量検出期間とを、前記光量検出期間が、前記タイミング検出期間の終了後であって、前記検出された通過タイミングから所定時間経過した時刻に開始されるように、決定する期間決定部と、
前記光源が前記タイミング検出期間内と前記光量検出期間内とにおいてそれぞれ発光するように、前記光源を制御する光源制御部と、
前記タイミング検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記通過タイミングを検出するタイミング検出部と、
前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光源の光量を検出する光量検出部と
を含む光走査型ディスプレイ。
【0012】
(2) 前記光源制御部は、前記タイミング検出期間においては、前記光源が、前記通過タイミングの検出に適するように予め定められた第1目標光量で前記光束を出射するための第1指令信号を前記光源に対して出力する一方、前記光量検出期間においては、前記光源が、前記光量の検出に適するように予め定められた第2目標光量で前記光束を出射するための第2指令信号を前記光源に対して出力する(1)項に記載の光走査型ディスプレイ。
【0013】
(3) 前記光検出装置は、各々、受光量に応じた光量信号を出力する第1光センサ素子と第2光センサ素子とが、前記主走査方向に延びるそれぞれの受光領域が前記主走査方向において互いに隣接するように配置されて成るビームディテクトセンサ(BDセンサ)を含み、
前記タイミング検出位置は、前記第1光センサ素子の受光領域と前記第2光センサ素子の受光領域と間の境界位置に配置されている(1)または(2)項に記載の光走査型ディスプレイ。
【0014】
(4) さらに、
前記光量の検出値に基づき、有効走査期間内における前記光源の光量を調整する第1光量調整部を含む(1)ないし(3)項のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【0015】
(5) さらに、
前記副走査方向における無効走査期間内におけるある往き走査線についての前記光量の検出値に基づき、同じ無効走査期間内における次の戻り走査線につき、前記タイミング検出期間中における前記光源の光量を調整する第2光量調整部を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【0016】
(6) 前記光源制御部は、前記光量検出部による光量の検出が終了すると、前記光量検出期間の終了前であっても、前記光源の発光を停止させる発光停止部を含む(1)ないし(5)項のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【0017】
(7) 前記光束は、複数色の成分光束が合成された合成光束であり、
前記光源は、前記複数色の成分光束をそれぞれ出射する複数の部分光源を含み、
前記光源制御部は、前記光量検出期間において、各部分光源ごとに、各成分光束を出射させ、
前記光量検出部は、各成分光束ごとに、前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光量を検出し、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
各成分光束ごとの前記光量の検出値に基づき、各部分光源ごとに、各成分光束の光量を調整する光量調整部を含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【0018】
(8) 前記光束は、複数色の成分光束が合成された合成光束であり、
前記光源は、前記複数色の成分光束をそれぞれ出射する複数の部分光源を含み、
前記光源制御部は、前記光量検出期間において、前記複数の部分光源を一斉に作動させることによって前記合成光束を前記光源から出射させ、
前記光量検出部は、前記合成光束につき、前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光量を検出し、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
前記合成光束についての前記光量の検出値に基づき、前記光源が異常であるか否かを診断する診断部を含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光走査型ディスプレイの作動中、副走査方向における無効走査期間内において、タイミング検出期間が開始され、そのタイミング検出期間内において、光検出装置を用いて、光束が前記タイミング検出位置を通過した通過タイミング(以下、単に「通過タイミング」という。)が検出される。その検出された通過タイミングから所定時間経過した時刻に光量検出期間が開始され、その光量検出期間内において、同じ光検出装置を用いて光源光量が検出される。
【0020】
よって、本発明によれば、通過タイミングに対して相対的に光量検出期間を、時間的に正確に設定することが容易となるとともに、先行するタイミング検出期間に十分に時間的に接近させて、光量検出期間を設定することが容易となる。その結果、本発明によれば、副走査方向における無効走査期間内において、同じ光検出装置を用いることにより、通過タイミングの検出と、光源光量の検出との双方を、互いに連続して短時間で行うことができ、それにより、信号処理を高効率化することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に従う網膜走査型ディスプレイ(以下、「RSD」と略称する。)を概念的に示す系統図である。
【図2】図1に示すビームディテクトセンサ(以下、「BDセンサ」と略記する。)の2つの受光領域の、HSスキャナのミラーの走査角度範囲に対する相対位置を示す平面図である。
【図3】図3(a)は、光束が2次元的に走査されることによって描かれる軌跡を、BDセンサの2つの受光領域に幾何学的に関連付けて示す波形図であり、図3(b)は、そのBDセンサの出力信号の時間的変化を、光源の光量の時間的変化に関連付けて示すタイムチャートである。
【図4】図1に示す信号処理回路を概念的に表す機能ブロック図である。
【図5】図1に示す信号処理回路内のコンピュータによって実行されるプログラムを概念的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に従う網膜走査型ディスプレイ(以下、「RSD」と略称する。)が系統的に表されている。具体的には、このRSDは、画像信号(各成分光ごとの輝度信号)に応じた強度を有する光束としてのレーザビームを、観察者の眼10の瞳孔12を経て網膜14の結像面上に入射させ、その結像面上においてレーザビームを2次元的に走査し、それにより、その網膜14上に画像光を直接に投影する装置である。このRSDは、前記(1)項に係る「光走査型ディスプレイ」の一例を構成している。
【0024】
このRSDは、画像光を観察者の網膜上に直接投影し、それによって画像を表示する直視型の画像表示装置に分類されるが、観察者の外界に設置されたスクリーンに画像光を投影し、そのスクリーンからの反射光によって画像を表示するプロジェクタに変更することが可能である。
【0025】
このRSDは、表示画像の観察方式として、シースルー型、すなわち、観察者が、このRSDによる表示画像に重ねて現実外界を観察することを可能にするものを採用したり、密閉型、すなわち、現実外界からの入射光を遮断し、観察者が、表示画像のみを観察することを可能にするものを採用することが可能である。
【0026】
また、このRSDは、観察者への装着方式として、ヘッドマウント型、すなわち、観察者の頭部に装着されてその頭部と一体的に移動するものを採用したり、覗き込み型、すなわち、観察者から独立して設置され、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダなどの撮像装置用の電子ビューファイダに代表されるものを採用することが可能である。
【0027】
図1に示すように、このRSDは、光源ユニット20を備え、その光源ユニット20と観察者の眼10との間において光走査装置24を備えている。
【0028】
光源ユニット20は、3原色(RGB)を有する3つのレーザビーム(成分光束)を1つのレーザビーム(合成光束)に合波して任意色のレーザビームを生成するために、赤色のレーザビームを発するRレーザ30と、緑色のレーザビームを発するGレーザ32と、青色のレーザビームを発するBレーザ34とを備えている。
【0029】
各レーザ30,32,34は、例えば、レーザダイオードとして構成することが可能である。本実施形態においては、それらレーザ30,32,34がそれぞれ、前記(1)項における「光源」の一例を構成する。
【0030】
レーザ30,32,34から出射した各レーザビームは、コリメート光学系40,42,44によって平行光化される。その後、各レーザビームは、波長依存性を有する各ダイクロイックミラー50,52,54に入射させられ、それにより、各レーザビームが波長に関して選択的に反射・透過させられ、それら3つのダイクロイックミラー50,52,54を代表する1つのダイクロイックミラー50に最終的に入射して1本のレーザビームに合波される。その1本のレーザビームは、結合光学系56によって集光され、光ファイバ82の先端に入射する。その光ファイバ82に入射したレーザビームは、光ファイバ82中を伝送され、その光ファイバ82の後端から放射させられるレーザビームを平行光化するコリメート光学系84を経て光走査装置24に入射する。
【0031】
以上、光源ユニット20のうち光学的な部分を説明したが、以下、電気的な部分を説明する。
【0032】
光源ユニット20は、コンピュータ(図示しない)を主体とする信号処理回路60を備えている。信号処理回路60は、外部から供給された映像信号(画像信号)に基づき、各レーザ30,32,34を駆動するための信号処理と、レーザビームの走査を行うための信号処理とを行うように設計されている。
【0033】
各レーザ30,32,34を駆動するため、信号処理回路60は、外部から供給された映像信号に基づき、網膜14上に投影すべき画像上の各画素ごとに、レーザビームにとって必要な色と強度とを実現するために必要な駆動信号を、各レーザ30,32,34を駆動する各レーザドライバ70,72,74に供給する。レーザビームの走査を行うための信号処理については後述する。
【0034】
光走査装置24は、HSスキャナ(高速スキャナ、主走査部)100とLSスキャナ(低速スキャナ、副走査部)102とを備えている。
【0035】
HSスキャナ100は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを主走査方向(本実施形態については、垂直方向であるが、水平方向でも可)に相対的に高速に走査する光学系である。
【0036】
これに対し、LSスキャナ102は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを、主走査方向とは直交する副走査方向(本実施形態については、水平方向であるが、垂直方向でも可)に相対的に低速に走査する光学系である。
【0037】
具体的に説明するに、HSスキャナ100は、本実施形態においては、機械的偏向を行うミラー120を備えた弾性体124のねじり共振によってそのミラー120を揺動させ、それにより、入射したレーザビームを主走査方向に走査する。このHSスキャナ100は、駆動回路126を有しており、その駆動回路126は、信号処理回路60から供給される主走査用の駆動信号(または主走査用の同期信号)により、ミラー120を駆動する。
【0038】
図1に示すように、HSスキャナ100によって走査されたレーザビームは、リレー光学系130によってLSスキャナ102に伝送される。
【0039】
LSスキャナ102は、機械的偏向を行う揺動ミラーとしてのガルバノミラー140を非共振モードで強制的に電磁駆動し、それにより、入射したレーザビームを副走査方向に走査する。ガルバノミラー140には、HSスキャナ100から出射したレーザビームがリレー光学系130によって集光されて入射する。LSスキャナ102は、駆動回路142を有しており、その駆動回路142は、信号処理回路60から供給される副走査用の駆動信号(または副走査用の同期信号)により、ガルバノミラー140を駆動する。
【0040】
図2には、HSスキャナ100とLSスキャナ102とをそれぞれ同時に作動させつつ、レーザ30,32,34のうちのいずれかを連続的に点灯させた場合にそのいずれかのレーザ30,32,34から出射するレーザビームによって形成される全走査エリアが平面図で示されている。その全走査エリアは、画像を表示するための有効走査エリアと、画像を表示しない無効走査エリアとに分かれるが、全走査エリアを副走査方向に見た場合に、有効走査エリアに先行する先頭無効走査エリアと、有効走査エリアに後続する末尾無効走査エリアとが、有効走査エリアを挟むように存在する。本実施形態においては、画像の1フレーム内の複数周期分の走査線のうち、最初の数周期分(例えば、3周期分)は、先頭無効走査エリア内に位置する。
【0041】
なお、念のため説明するに、上記の説明においては、全走査エリアが、あるフレームについての走査開始位置から走査終了位置までの期間のみに着目して説明されているが、実際には、あるフレームから次のフレームへの移行のために、レーザ30,32,34を消灯して走査終了位置から走査開始位置に戻る期間(例えば、帰線消去期間)が存在する。
【0042】
本実施形態においては、後述のように、先頭無効走査エリアに存在する最初の数周期分の走査線の期間中に、通過タイミングの検出と光源光量の検出のために必要なレーザ30,32,34の点灯が行われる。
【0043】
ところで、LSスキャナ102から画像表示面上の先頭無効走査エリアに入射しようとする光束は、LSスキャナ102の下流側に設置された、画像をトリミングするための枠体(図示しない)によって遮光される。その枠体は、LSスキャナ102からの光(2次元的に走査された光)のうち、観察者によって観察されるべき部分(有効走査エリア)の通過を許可する一方、観察者によって観察されるべきではない部分(無効走査エリア)を遮光する。
【0044】
したがって、本実施形態においては、後述のように、先頭無効走査エリアにおいて、通過タイミングの検出と光源光量の検出のために、画像表示とは無関係にレーザ30,32,34を点灯させても、そのときに発生させられる光束が観察者によってノイズ光として観察されずに済む。
【0045】
図1に示すように、HSスキャナ100とリレー光学系130との間に、ビームスプリッタ160が配置されている。このビームスプリッタ160は、HSスキャナ100から出射した光束を、HSスキャナ100とLSスキャナ102との間における有効な光路から外れた位置に向かって誘導し、前記光路から外れた位置に配置されたBDセンサ200に入射させる。本実施形態においては、そのBDセンサ200が、前記(1)項における「光検出装置」の一例を構成する。
【0046】
図3(a)には、光束が2次元的に走査されることによって描かれる軌跡が、波形図により、かつ、BDセンサ200の2つの受光領域に幾何学的に関連付けて示されている。図3(b)には、そのBDセンサ200の出力信号の時間的変化が、タイムチャートにより、かつ、光源であるレーザ30,32,34の光量(以下、単に「光源光量」という。)の時間的変化に関連付けて示されている。
【0047】
図3(a)に示すように、BDセンサ200は、主走査方向に並んだ第1光センサ素子210と第2光センサ素子212とが互いに隣接して配置されて構成されている。第1光センサ素子210も第2光センサ素子212も、主走査方向に延びる受光領域を有しており、それら2つの受光領域は、主走査方向に互いに隣接している。
【0048】
第1光センサ素子210は、HSスキャナ100から出射する光束の走査の中心に近い側に配置される一方、第2光センサ素子212は、遠い側に配置されている。第1光センサ素子210も第2光センサ素子212も、フォトダイオードとして構成されている。以下、第1光センサ素子210が出力する光量信号を「第1センサ信号」と称するのに対し、第2光センサ素子212が出力する光量信号を「第2センサ信号」と称する。
【0049】
BDセンサ200は、第1光センサ素子210の受光領域と第2光センサ素子212の受光領域との間の境界点であるBD検知点214を有しており、そのBD検知点214を光束が通過したタイミングを検出する機能を有する。BD検知点214は、光束の揺動振幅の中心位置(以下、「振幅中心位置」という。)からも、光束の2つの最大揺動位置のうちBD検知点214に近いほうからも、外れた位置に配置されているが、その最大揺動位置から外れた位置に配置される限り、例えば、振幅中心位置に一致するように配置してもよい。
【0050】
図3(a)に示すように、第2光センサ素子212は、上述の受光領域として、主走査方向に延びる検出可能領域を有している。第2光センサ素子212は、前記検出可能領域内における任意の位置において光束を受光すれば、その受光した光束の光量に応じた光量信号を前記第2センサ信号として出力する。第1センサ信号も、同様に、光量信号であるが、本実施形態においては、第2光センサ素子212の受光領域の方が第1光センサ素子210の受光領域より長くなっている。このおかげで、BDセンサ200が、前述の通過タイミングの検出を終了した後に、レーザ30,32,34の実際の光量を検出し易くなっているが、第2光センサ素子212の受光領域の長さは、第1光センサ素子210の受光領域より短くてもよいし、等しくてもよい。
【0051】
本実施形態においては、第2光センサ素子212の検出可能領域が、BD検知点214から前記最大揺動位置と同じ位置まで主走査方向に延びている。ただし、この検出可能領域をこのように設定することは、本発明を実施するうえにおいて不可欠なことではなく、例えば、BD検知点214から前記最大揺動位置の手前の位置まで主走査方向に延びるように設定してもよい。
【0052】
図3(b)に示すように、第1センサ信号も第2センサ信号も、受光量に応じたアナログの光量信号である。以下、第1センサ信号および第2センサ信号のそれぞれの時間的変化を説明する。
【0053】
第1光センサ素子210は、光束が、それの往き走査中に、前記振幅中心位置から第1光センサ素子210の受光領域に進入してやがて退出する第1段階(光束が第1光センサ素子210を往き走査方向に通過する段階)と、光束が、それの戻り走査中に、前記最大揺動位置から第1光センサ素子210の受領領域に再度進入してやがて退出する第2段階(光束が第1光センサ素子210を戻り走査方向に通過する段階)とをそれらの順に経験する。第1センサ信号は、第1段階と第2段階とで、互いに対称となる時間的変化を示すため、以下、第1段階における時間的変化のみを代表的に説明する。
【0054】
第1センサ信号のレベルは、光束が第1光センサ素子210の受光領域の一側エッジに進入すると、上昇する。その後、光束が第1光センサ素子210の受光領域の他側エッジ(BD検知点214に一致するエッジ)から退出すると、第1センサ信号のレベルは、低下する。これに対し、第2センサ信号のレベルは、光束が第1光センサ素子210の受光領域から第2光センサ素子212の検出可能領域の一側エッジ(第1光センサ素子210の受光領域に隣接するエッジであって、BD検知点214に一致するエッジ)に進入すると、上昇する。その後、光束が前記検出可能領域内をその検出可能領域の他側エッジに向かって一方向に進行し、その他側エッジに到達する手前で、光束が折り返して前記一側エッジに向かって逆方向に進行するというように、前記検出領域内に一往復する間、第2センサ信号のレベルは、光源光量が変化しない限り、一定であって、その光源光量を表す。図3(b)には、光束の光量が多いケース1(同図において、太い実線で示す)と、少ないケース2(同図において、細い実線で示す)とにつき、第2センサ信号のレベルがグラフで表されている。その後、光束が前記一側エッジから第1光センサ素子210の受光領域に向かって退出すると、第2センサ信号のレベルは低下する。
【0055】
第1センサ信号と第2センサ信号との差分は、第1光センサ素子210の受光領域と、BD検知点214の位置において、最も顕著に変化する。その差分を2値化した信号がBD信号(通過タイミング検出信号)である。そのBD信号は、2値のデジタル信号である。
【0056】
具体的には、図3(b)に示すように、そのBD信号は、光束が往き走査中にBD検知点214を通過すると、ハイレベルHからローレベルLに変化し、逆に、光束が戻り走査中にBD検知点214を再度通過すると、今度は、ローレベルLからハイレベルHに変化する。BD信号のレベルが変化するタイミングを検出すれば、光束が、BD検知点214を通過した通過タイミングを検出することができる。
【0057】
なお付言するに、本実施形態においては、光束が往き走査中にBD検知点214を通過する第1通過タイミングtpassと、戻り走査中にBD検知点214を通過する第2通過タイミングtpass’との双方が検出されるが、それら第1および第2通過タイミングのうちのいずれかのみが検出される態様で本発明を実施することが可能である。
【0058】
さらに、付言するに、本実施形態においては、第1光センサ素子210と第2光センサ素子212とが一列に合体して成るBDセンサ200を用いて、通過タイミングの検出と光源光量の検出とが行われるが、BDセンサ200に代えて、単一のセンサ素子を用いる光検出装置であって、そのセンサ素子の受光面の一端部がBD検知点214として機能する一方、その受光面の、その一端部を除く部分において、前記検出可能領域を有するものを採用することが可能である。この光検出装置を採用する場合には、それの単一のセンサ素子から出力される光量信号を、通過タイミングの検出と光源光量の検出との双方に使用することが可能である。
【0059】
図4には、信号処理回路60の構成が、光源であるレーザ30,32,34と、その光源を駆動する光源駆動部であるレーザドライバ70,72,74と、BDセンサ200とに関連付けて、機能ブロック図で表されている。信号処理回路60は、いずれも、BDセンサ200に接続された画像表示制御部230および光量検出部232と、それら画像表示制御部230および光量検出部232とレーザドライバ70,72,74とに接続された光量制御部234とを備えている。
【0060】
画像表示制御部230は、先頭無効走査エリアにおいて、BDセンサ200からBD信号を受信し、そのBD信号のレベルがローレベルLとハイレベルHとの間において変化するタイミングである通過タイミングに基づき、後続する有効走査エリアにおいて、表示すべき画像を表す画像信号(各成分光ごとの輝度信号)を、光量制御部234に出力する。この画像表示制御部230は、有効走査エリア内において、各走査周期ごとに、各レーザ30,32,34の発光タイミングを制御し、それにより、各走査線ごとに光束が主走査方向に画像を書き出すタイミングを決定する発光タイミング制御部として機能する。
【0061】
光量制御部234は、有効走査エリアにおいて、画像信号に応じた強度(輝度)を各成分光が有するようにするため、すなわち、各レーザ30,32,34から出射する光束の光量が画像信号に応じたものとなるようにするためにレーザドライバ70,72,74に供給することが必要である駆動信号を生成する。画像信号と駆動信号との間の関係を表す関数が関数式、テーブル等としてメモリ(図示しない)に予め記憶されており、光量制御部234は、その関数を用いることにより、画像信号に対応する駆動信号を生成する。すなわち、この光量制御部234は、画像信号(輝度信号または強度信号)を駆動信号に変換する機能を有するのである。
【0062】
図3(b)に示すように、光量検出部232は、先頭無効走査エリアにおいて、BDセンサ200からBD信号を受信する。そのBD信号のレベルが変化するタイミングである通過タイミングtpassから所定時間T0が経過した時刻t2から、光源が、光源光量の検出に適した光量で発光させられる。光量検出部232は、その時刻t2から所定時間が経過した後に、BDセンサ200から第2センサ信号も受信し、その第2センサ信号に基づき、光束の実際の光量(光源光量)を検出する。その光量検出値は、光量制御部234に出力される。
【0063】
光量検出値が取得されたときに光量制御部234がレーザドライバ70,72,74に出力していた駆動信号は既知であるから、結局、実際の駆動信号と光量検出値との関係、すなわち、実際の駆動信号に正規に対応する基準光量と実際光量との関係も既知である。よって、光量制御部234は、実際光量が基準光量と一致するか否かを判定することが可能であり、さらに、実際光量が基準光量と一致するように、レーザドライバ70,72,74に供給すべき駆動信号を修正すること、すなわち、前記関数(例えば、前記関数式または前記テーブル)の特性を修正することが可能である。
【0064】
このような知見に基づき、光量制御部234は、先頭無効走査エリアにおいて、実際光量(光量検出値)と基準光量との関係(誤差)に基づき、前記関数の特性を修正する。すなわち、この光量制御部234は、前記関数の特性を、光量検出値に基づいて補正する機能も有するのである。
【0065】
先頭無効走査エリアにおいては、通過タイミングの検出および光源光量の検出のため、レーザ30,32,34が駆動されて光束を、可変である光量(強度)で出射する。そのために、画像表示制御部230が、画像信号を生成して光量制御部234に出力し、それに応じて、光量制御部234が、駆動信号を生成してレーザドライバ70,72,74に出力する。本実施形態においては、先頭無効走査エリアにおける光源光量の変更が画像信号を用いて行われるが、例えば、画像信号とは別の指令信号を画像表示制御部230とは無関係に生成し、その生成された指令信号を用いて光源光量を変更する態様で本発明を実施することが可能である。
【0066】
図3(b)に示すように、先頭無効走査エリアにおいて、1周期の走査中に、往き走査中に通過タイミングを検出するための第1タイミング検出期間と、戻り走査中に通過タイミングを検出する第2タイミング検出期間と、それら2つの期間の間に、光束の折り返し点を含むように位置する光量調整期間が存在する。ただし、光束の折り返し点を隔てて並んだ2つの光量調整期間が存在する態様で本発明を実施することが可能である。
【0067】
第1タイミング検出期間は、先行する基準時刻(例えば、前回の走査において検出された通過タイミングや、前回の走査における最大揺動位置)から計算される時刻t1に開始され、光束が往き走査中にBD検知点214を通過する通過タイミングtpassから所定時間T0が経過した時刻t2に終了する。光量調整期間は、その時刻t2に開始され、その時刻t2に所定時間T1を加算して計算される時刻t3に終了する。第2タイミング検出期間は、時刻t3に開始され、その時刻t3に所定時間T2を加算して計算される時刻t4に終了する。
【0068】
結局、時刻t2およびt3はいずれも、通過タイミングtpassを基準時刻として計算される。通過タイミングtpassは、精度よく検出される時刻であり、しかも、時刻t2およびt3はいずれも、通過タイミングtpassの直後に出現するタイミングであるため、時間のサンプリング誤差も少ない。よって、それら時刻t2およびt3はいずれも、通過タイミングtpassを用いて精度よく計算される。その結果、光量調整期間の時間的な位置および長さが、通過タイミングtpassに対して相対的に、精度よく管理されることになる。
【0069】
したがって、本実施形態によれば、先頭無効走査期間内において、同じBDセンサ200を用いることにより、通過タイミングの検出と光源光量の検出との双方を、互いに連続して短時間で行い、それにより、信号処理を高効率化することが容易となる。
【0070】
なお付言するに、本実施形態においては、時刻t4が、時刻t3に所定時間T2を加算することによって計算されるが、例えば、光束が戻り走査中にBD検知点214を通過する通過タイミングtpass’に所定時間T3を加算して計算してもよい。
【0071】
本実施形態においては、第1タイミング検出期間および第2タイミング検出期間の組合せが、先頭無効走査エリア内の3周期分の走査のいずれの期間についても存在し、これに対し、第1タイミング検出期間、光量調整期間および第2タイミング検出期間の組合せは、先頭無効走査エリア内の3周期分の走査のいずれか一つである対象走査(今回注目している回の走査)の期間についてのみ存在する。ただし、第1タイミング検出期間、光量調整期間および第2タイミング検出期間の組合せが、先頭無効走査エリア内の3周期分の走査のいずれの期間についても存在する態様で本発明を実施することが可能である。この態様においては、例えば、複数の光量調整期間における複数の光量検出値を合成した値を、真の光量検出値として採用することが可能である。
【0072】
図3(b)に示すように、対象走査中、第1タイミング検出期間と、光量調整期間と、第2タイミング検出期間と、それら期間のいずれにも該当しない無発光期間との間で、光源光量が、各期間での処理に適応するように、時間と共に変更されて最適化される。本実施形態においては、この適応制御が、画像表示制御部230が、必要な画像信号を生成して光量制御部234に供給することにより、実現されるが、この適応制御は、画像表示制御部230とは別の要素が、必要な指令信号を生成して光量制御部234に供給することにより、実現してもよい。
【0073】
具体的には、第1タイミング検出期間および第2タイミング検出期間においては、いずれも、光源光量の第1目標光量(前記(2)項における「第1目標光量」の一例)が、通過タイミングの検出に適した光量(例えば、光源の最大光量より少ない光量)となるようにされる。通過タイミングの検出に適した光量は、BDセンサ200の種類によって異なるため、実際のセンサ特性に適合するように、目標光量が設定される。
【0074】
このように、本実施形態によれば、第1タイミング検出期間および第2タイミング検出期間において、光源光量が、通過タイミングの検出精度との関係において最適化されるため、通過タイミングを、精度よく、しかも、光源光量が無駄に多いために光源消費電力が浪費されてしまうことなく、検出することが容易となる。
【0075】
ところで、本実施形態においては、光量調整期間の時間的位置を決めるために参照すべきパラメータとして、安定的にかつ精度よく検出可能な通過タイミングtpassが選択され、そのうえで、その通過タイミングtpassに対して相対的に光量調整期間の時間的位置が決まる。よって、本実施形態によれば、他のパラメータを用いる場合より、光量調整期間の時間的位置を走査期間内において精度よく管理することが容易である。しかも、本実施形態においては、上述のように、光源光量の適応制御によって通過タイミングtpassが精度よく検出される。このこととも相俟って、本実施形態によれば、光量調整期間の時間的位置を走査期間内において精度よく管理することが容易である。
【0076】
本実施形態においては、さらに、光量調整期間においては、光源光量の第2目標光量(前記(2)項における「第2目標光量」の一例)が、光源光量の検出に適した光量(例えば、レーザ30,32,34の最大光量の100%)となるようにされる。
【0077】
したがって、本実施形態によれば、先頭無効走査エリアにおいて、1周期分の主走査期間において、通過タイミングの検出と光源光量の検出との双方を行うにもかかわらず、その走査期間全体を通じて光源を発光し続ける場合より、光源消費電力が節減され、部品としての光源の寿命が延び、さらに、前記遮光用枠体からの漏れ光が減少する。
【0078】
ところで、前記無発光期間においては、通過タイミングの検出も光源光量の検出も行われないため、本来であれば、節電を目的として、光源光量を0とすべきである。しかし、本実施形態においては、その無発光期間から第1タイミング検出期間への移行時に光源光量が、第1タイミング検出期間中の目標光量に迅速に増加することを容易にするため、図3(b)に示すように、無発光期間中、光源からバイアス光(光源へのバイアス電流によって光源が発する微弱な光)が発光させられる。これにより、光源光量の高応答性と節電との両立が達成される。ただし、光源光量の高応答性より節電を優先させ、無発光期間中、光源光量が0である態様で本発明を実施することが可能である。
【0079】
図3(b)に示すように、光量調整期間は、先行する光量検出期間と、後続する光量修正期間とに分割される。光量検出期間においては、まず、光源光量が、前述のように、光源光量の検出に適した目標光量に増加させられ、次に、光源光量が、第2センサ信号に基づき、検出される。光量修正期間においては、その検出された光源光量をフィードバックすることにより、次回の光源光量が基準光量に接近し、理想的には一致するように、前記関数の特性が修正される。その関数の特性に従い、今回の走査期間のうちの第2タイミング検出期間における光源光量と、次回以後の走査期間における光源光量とが修正される。
【0080】
上述の通過タイミングの検出および光源光量の調整(ここに、「調整」は、「光源光量の検出」と、「その検出結果に基づく前記関数の特性の修正」との双方を含む概念である。)を実行するために、信号処理回路60の前記コンピュータにより、図5にフローチャートで概念的に表されているプログラムが実行される。
【0081】
このプログラムが実行されると、まず、ステップS1において、今回の走査が前記対象走査であるか否かが判定される。今回の走査が対象走査でなければ、再びこのステップS1が実行されるが、今回の走査が対象走査であれば、ステップS2に進む。
【0082】
このステップS2においては、今回は前記無発光期間中であると仮定されているから、レーザ30,32,34が、それぞれが前記バイアス光を発光するように、一斉に点灯させられる。続いて、ステップS3において、前述のようにして計算された時刻t1の計算値が所定のメモリ(図示しない)から読み出され、その後、ステップS4において、時刻t1が到来するのが待たれる。時刻t1が到来したら、ステップS5において、第1タイミング検出モードに移行し、それにより、前記第1タイミング検出期間に移行する。
【0083】
続いて、ステップS6において、今回は前記第1タイミング検出期間中であるから、レーザ30,32,34がそれぞれ、タイミング検出に適した第1目標光量を実現するように、光量が変更させられる。具体的には、まず、レーザ30,32,34がそれぞれ第1目標光量を実現するための画像信号(指令信号)が生成され、次に、その画像信号が、前記関数(現時点では、デフォルトの特性を有する)を用いて駆動信号に変換され、そして、その駆動信号がレーザドライバ70,72,74に出力される。
【0084】
その後、ステップS7において、BDセンサ200からBD信号が入力され、続いて、ステップS8において、その入力されたBD信号のレベルがハイレベルHからローレベルLに変化するのが待たれる。すなわち、往き走査中に光束がBD検知点214を通過したタイミングが到来するのが待たれるのである。
【0085】
その通過タイミングが到来すると、ステップS9において、その通過タイミングtpassから所定時間T0が経過するのが待たれる。すなわち、時刻t2が到来するのが待たれるのである。通過タイミングtpassから所定時間T0が経過したら、ステップS10において、光量調整モードに移行し、それにより、前記光量調整期間に移行する。
【0086】
続いて、ステップS11において、今回は前記光量調整期間中であるから、レーザ30,32,34がそれぞれ、光量検出に適した第2目標光量を実現するように、光量が変更させられる。具体的には、まず、レーザ30,32,34がそれぞれ第2目標光量を実現するための画像信号(指令信号)が生成され、次に、その画像信号が、前記関数(現時点では、デフォルトの特性を有する)を用いて駆動信号に変換され、そして、その駆動信号がレーザドライバ70,72,74に出力される。
【0087】
なお、上述の第2目標光量は、それが使用される画像表示装置の種類によって異なるのに対し、前述の第1目標光量は、それが使用される光検出装置(例えば、BDセンサ)の種類によって異なるため、画像表示装置が、表示される画像の輝度が大きいプロジェクタである場合には、第2目標光量が第1目標光量より多い場合が多いのに対し、画像表示装置が、表示される画像の輝度が小さい網膜走査型画像表示装置である場合には、第2目標光量が第1目標光量より少ない場合が多い。
【0088】
その後、ステップS12において、BDセンサ200から第2センサ信号が入力され、続いて、ステップS13において、その入力された第2センサ信号のレベルから、光源光量が検出される。その後、ステップS14において、その光量検出値と基準値(レーザドライバ70,72,74に今回出力された駆動信号に正規に対応する光量)とが互いに比較され、その結果に基づき、光量検出値の、前記基準値からの誤差が計算される。
【0089】
続いて、ステップS15において、その計算された光量誤差が部分的にまたは完全にキャンセルされるように、前記関数の特性が修正される。光源光量の補正が行われるのである。具体的には、例えば、光量検出値が前記基準値より大きい場合には、同じ画像信号に対して光源光量が減少するように、前記関数の特性が修正され、逆に、光量検出値が前記基準値より小さい場合には、同じ画像信号に対して光源光量が増加するように、前記関数の特性が修正される。
【0090】
その後、ステップS16において、時刻t3が計算され、続いて、ステップS17において、時刻t3が到来するのが待たれる。時刻t3が到来したら、ステップS18において、第2タイミング検出モードに移行し、それにより、前記第2タイミング検出期間に移行する。
【0091】
続いて、ステップS19において、今回は前記第2タイミング検出期間中であるから、ステップS6と同様にして、レーザ30,32,34がそれぞれ、タイミング検出に適した前記第1目標光量を実現するように、光量が変更させられる。その後、ステップS20において、BDセンサ200からBD信号が入力され、続いて、ステップS21において、その入力されたBD信号のレベルがローレベルLからハイレベルHに変化するのが待たれる。すなわち、戻り走査中に光束がBD検知点214を通過したタイミングが到来するのが待たれるのである。
【0092】
その通過タイミングが到来すると、ステップS22において、時刻t4が計算され、続いて、ステップS23において、時刻t4が到来するのが待たれる。時刻t4が到来したら、ステップS24において、今回は前記無発光期間中であるから、図3(b)に示すように、レーザ30,32,34がそれぞれ前記バイアス光を発光するように点灯させられ、その結果、光量が変更させられる。その後、ステップS25において、この対象走査が終了するのが待たれる。この対象走査が終了すると、ステップS26において、レーザ30,32,34がすべて完全に消灯される。以上で、このプログラムの実行が終了する。なお、時刻t4が到来したら直ちに、レーザ30,32,34がすべて完全に消灯される態様(バイアス光すら発光させない態様)で本発明を実施することが可能である。
【0093】
以上の説明から明らかなように、信号処理回路60のうち、図5のステップS2−S6、S11およびS16−S26を実行する部分が、図4に示す画像表示制御部230を構成し、ステップS7−S13を実行する部分が、光量検出部232を構成し、ステップS2、S6、S11、S14、S15、S19およびS24を実行する部分が、光量制御部234を構成している。それらステップのうち、ステップS2、S6、S11、S19およびS24はそれぞれ、画像表示制御部230と光量制御部234との協働によって実行される。
【0094】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、説明の便宜上、第1光センサ素子210の受光領域と、第2光センサ素子212の受光領域である検出可能領域との組合せが、前記(1)項における「少なくとも一つ受光領域」の一例を構成し、第1光センサ素子210の受光領域と、第2光センサ素子212の検出可能領域のうちBD検知点214に近接する部分とが、互いに共同して、同項における「タイミング検出領域」の一例を構成し、第2光センサ素子212の検出可能領域が、同項における「光量検出領域」の一例を構成していると考えることが可能である。
【0095】
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、信号処理回路60のうち、図5に示すステップS8−S10を実行する部分が、前記(1)項における「期間決定部」の一例を構成し、信号処理回路60のうち、図5に示すステップS2、S6、S11、S19およびS24を実行する部分が、前記(1)項における「光源制御部」の一例を構成し、信号処理回路60のうち、図5に示すステップS7およびS8を実行する部分が、同項における「タイミング検出部」の一例を構成し、光量検出部232が、同項における「光量検出部」の一例を構成し、光量制御部234が、同項における「光量調整部」の一例、前記(4)項における「第1光量調整部」の一例および前記(5)項における「第2光量調整部」の一例をそれぞれ構成していると考えることが可能である。
【0096】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の種々の態様で実施することが可能である。
【0097】
例えば、本実施形態においては、光量検出部232による光量検出値が、光源光量を調整するという用途に使用されるが、例えば、それに代えて、または、それに加えて、信号処理回路60内の診断部(図示しない)により、光源が異常であるか否かを診断するという用途に使用される態様で本発明を実施することが可能である。
【0098】
また、本実施形態においては、光量調整期間の全体を通じ、すなわち、時刻t3が到来するまで、光源が連続的に発光させられるが、例えば、光量検出部232による光量の検出が終了すると、光量調整期間の終了前、すなわち、時刻t3の到来前であっても、信号処理回路60内の発光停止部(図示しない)により、光源の発光を停止させる態様で本発明を実施することが可能である。
【0099】
また、本実施形態においては、光量調整期間において、3つの部分光源であるレーザ30,32,34を一斉に作動させることによって合成光束が光源から出射させられ、その合成光束につき、光源光量が検出されるが、例えば、各レーザ30,32,34ごとに、個別に順次作動させて、各成分光束を出射させ、各成分光束ごとに、光源光量を検出し、各成分光束ごとの光量検出値に基づき、各部分光源ごとに、前記関数の特性を修正し、各成分光束の光量を調整する態様で本発明を実施することが可能である。
【0100】
以上、本発明の実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じた強度を有する光束の2次元的な走査によって画像を表示する光走査型ディスプレイであって、
前記光束を出射する光源と、
その光源から出射した光束を、主走査方向と、その主走査方向とは交差する副走査方向とに2次元的に走査する光走査装置と、
その2次元的に走査された光束を、前記主走査方向に延びる少なくとも一つの受光領域において受光し、その受光した光束の強度に応じた信号を出力する光検出装置と
を含み、
前記受光領域は、
タイミング検出位置が配置されるとともに、そのタイミング検出位置を前記光束が通過した通過タイミングを検出するためのタイミング検出領域と、
そのタイミング検出領域に対して前記主走査方向に並ぶとともに、前記光検出装置が受光した光束の光量を検出するための光量検出領域と
を含み、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
前記副走査方向における無効走査期間内において、前記タイミング検出領域内において前記通過タイミングを検出するためのタイミング検出期間と、前記光量検出領域内において前記光量を検出するための光量検出期間とを、前記光量検出期間が、前記タイミング検出期間の終了後であって、前記検出された通過タイミングから所定時間経過した時刻に開始されるように、決定する期間決定部と、
前記光源が前記タイミング検出期間内と前記光量検出期間内とにおいてそれぞれ発光するように、前記光源を制御する光源制御部と、
前記タイミング検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記通過タイミングを検出するタイミング検出部と、
前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光源の光量を検出する光量検出部と
を含む光走査型ディスプレイ。
【請求項2】
前記光源制御部は、前記タイミング検出期間においては、前記光源が、前記通過タイミングの検出に適するように予め定められた第1目標光量で前記光束を出射するための第1指令信号を前記光源に対して出力する一方、前記光量検出期間においては、前記光源が、前記光量の検出に適するように予め定められた第2目標光量で前記光束を出射するための第2指令信号を前記光源に対して出力する請求項1に記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項3】
前記光検出装置は、各々、受光量に応じた光量信号を出力する第1光センサ素子と第2光センサ素子とが、前記主走査方向に延びるそれぞれの受光領域が前記主走査方向において互いに隣接するように配置されて成るビームディテクトセンサ(BDセンサ)を含み、
前記タイミング検出位置は、前記第1光センサ素子の受光領域と前記第2光センサ素子の受光領域と間の境界位置に配置されている請求項1または2に記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項4】
さらに、
前記光量の検出値に基づき、有効走査期間内における前記光源の光量を調整する第1光量調整部を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項5】
さらに、
前記副走査方向における無効走査期間内におけるある往き走査線についての前記光量の検出値に基づき、同じ無効走査期間内における次の戻り走査線につき、前記タイミング検出期間中における前記光源の光量を調整する第2光量調整部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項6】
前記光源制御部は、前記光量検出部による光量の検出が終了すると、前記光量検出期間の終了前であっても、前記光源の発光を停止させる発光停止部を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項7】
前記光束は、複数色の成分光束が合成された合成光束であり、
前記光源は、前記複数色の成分光束をそれぞれ出射する複数の部分光源を含み、
前記光源制御部は、前記光量検出期間において、各部分光源ごとに、各成分光束を出射させ、
前記光量検出部は、各成分光束ごとに、前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光量を検出し、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
各成分光束ごとの前記光量の検出値に基づき、各部分光源ごとに、各成分光束の光量を調整する光量調整部を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。
【請求項8】
前記光束は、複数色の成分光束が合成された合成光束であり、
前記光源は、前記複数色の成分光束をそれぞれ出射する複数の部分光源を含み、
前記光源制御部は、前記光量検出期間において、前記複数の部分光源を一斉に作動させることによって前記合成光束を前記光源から出射させ、
前記光量検出部は、前記合成光束につき、前記光量検出期間中における前記光検出装置の出力信号に基づき、前記光量を検出し、
当該光走査型ディスプレイは、さらに、
前記合成光束についての前記光量の検出値に基づき、前記光源が異常であるか否かを診断する診断部を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の光走査型ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212042(P2012−212042A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77975(P2011−77975)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】