光走査装置とこれを用いた画像形成装置およびプリンタ
【課題】小型で、安価かつ高性能な光走査装置およびプリンタを提供する。
【解決手段】光源9からの光を偏向する偏向器は、強誘電体で形成されたフォトニック結晶5と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部10からなり、フォトニック結晶に印加する電圧を制御してこのフォトニック結晶に入射され出射される光の偏向制御を行い、偏向器によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器は、強誘電体もしくは誘電体で形成されたフォトニック結晶4からなり、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドを具備し、当該フォトニックバンドによって光源からの光を伝搬する構成とする。
【解決手段】光源9からの光を偏向する偏向器は、強誘電体で形成されたフォトニック結晶5と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部10からなり、フォトニック結晶に印加する電圧を制御してこのフォトニック結晶に入射され出射される光の偏向制御を行い、偏向器によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器は、強誘電体もしくは誘電体で形成されたフォトニック結晶4からなり、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドを具備し、当該フォトニックバンドによって光源からの光を伝搬する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置に用いられる光走査技術に係わり、特に、光走査系およびそれを用いた画像形成装置の小型化および高性能化を低コストに実現するのに好適な光走査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置には、光を偏向して走査する光走査装置が用いられている。
【0003】
現在の複写機や電子写真方式プリンタ等で最も多く採用されている光走査装置には、例えば、特許文献1に開示されているポリゴンミラー方式の光走査装置がある。このポリゴンミラー方式は、複数の反射面を有するポリゴンミラーを高速で回転させ、その反射面に光を当てることで、光を走査させることができる。
【0004】
図13は、従来のポリゴンミラー方式の光走査装置の構成例を示すブロック図であり、同図において、1351は光源であり、4つのビームを出射する4ビーム半導体レーザより成っている。1352はコリメーターレンズ、1353は絞り、1332はシリンドリカルレンズ、1302は光偏向器であるポリゴンミラー、1322は球面レンズ(第1の走査レンズ)、1326はトーリックレンズ(第2の走査レンズ)、1355は光学部材(間隔調整部材)としての平行平板ガラスであり、光検出器1330により検出された量(感光ドラム上を走査する複数ビームの副走査方向の位置ズレ情報)に応じて、副走査方向に傾け制御することにより、感光ドラム(感光体)1327上を走査する複数ビームの副走査方向の描画位置(走査開始位置)を調整している。
【0005】
また、従来の光走査装置の別の方式として、例えば、特許文献2に開示されている、LEDや有機ELなどの発光素子をアレイ状に並べた光走査装置がある。
【0006】
図14は、従来の発光素子をアレイ状に並べた光走査装置の構成例を示すブロック図であり、この光走査装置は、有機EL素子をアレイ状に並べた構成を有し、任意の有機EL素子を制御して点灯させることにより光を走査させることを可能にしたものである。
【0007】
同図に示す光走査装置は、ガラス基板1408上に、信号電極1409が有機ELのドット数と略同数個配置されている。各々の信号電極1409は絶縁膜の第1コンタクトホール1410を介して透明電極1411に電気的に接続されている。この透明電極1411は、絶縁膜の第2コンタクトホール1412において、正孔輸送層1413と発光層1414を挟んで、電子注入電極1415と対向している。
【0008】
この絶縁膜の第2コンタクトホール1412は発光領域に該当するので、一直線上に等間隔に配列されている。電子注入電極1415は、保護膜の第1コンタクトホール1416において、共通電極1418と電気的に接続されている。保護膜の第2コンタクトホール1417は、保護膜が信号電極1409と透明電極1411の層間に形成されているので、信号電極1409と透明電極1411を電気的に接続するために必要となっている。
【0009】
また、従来の光走査装置として、例えば、特許文献3等において提案されている、フォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置がある。
【0010】
図15は、従来のフォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置の構成例を示すブロック図であり、この光走査装置は、酸化シリコン膜15131内に円柱状のシリコン15132を周期的に並べたフォトニック結晶15130と波長可変レーザ15110を用い、波長可変レーザ15110の波長制御子に流す電流を変化させ波長を650nmから660nmまで変化させることにより、フォトニック結晶15130内での光ビームの進行方向を変化させ、これにより光ビームの偏向方向を大きく変化させて光走査を行うようにしたものである。
【0011】
しかしながら、上述したポリゴンミラー方式は、ミラーを機械的に回転させるという機械的駆動部が必要であるため、機械的摩耗が生じるという信頼性の面で問題があり、また、騒音が発生してしまうという問題がある。さらに、比較的大きな空間を占めてしまい、これを用いたプリンタ等の装置サイズが大きくなってしまうといった問題があった。
【0012】
これに対して、LEDや有機ELなどの発光素子をアレイ状に並べた光走査装置は、発光素子を並べて任意の発光素子を点灯させるので、機械的な駆動部がなく機械的摩耗や騒音が発生せず、また、占有する空間が比較的小さくプリンタ装置を小型化することができる。
【0013】
しかしながら、発光素子としてLEDをアレイ状に並べた光走査装置では、非常に長いLEDアレイチップを作製するのは非常に困難であるため、複数のLEDアレイチップを並べて実装する必要があるが、実装精度は印字品質に大きく影響するため、高精度の実装を行う必要があり、コストアップにつながっている。
【0014】
また、LEDアレイは、印字品質に大きく影響する発光ばらつきの問題がある。発光ばらつきに対して、特許文献4のように、電極の一部をレーザ光で切断して1ビット毎に調整する技術はあるが、工程数が増えることになりコストアップにつながる。
【0015】
発光素子として有機EL素子をアレイ状に並べた光走査装置では、上記特許文献2のように(図14参照)、長尺のものを一括で作製することができるため、実装工程がなく低コストにすることができる、また、発光ばらつきが比較的少ない。しかしながら、有機EL素子は、LEDに比べて寿命が短く、また、累積点灯時間が長くなるにつれて次第に輝度が低下するという問題がある。
【0016】
この問題に対しては、特許文献5に記載の技術のように、構造上単位面積あたりの発光強度を低下させて寿命を伸ばしたり、あるいは、特許文献6に記載の技術のように、有機ELアレイを複数ライン並べて、使用中のラインに寿命が来たら別のラインに切り替えて実質的に寿命を伸ばしたりするなどで対応しているが、構造が複雑になり、有機ELの低コストおよび小型化という利点が損なわれているという問題がある。さらに、有機ELアレイの寿命が短く、また、次第に輝度が低下するという問題の根本的解決にはなっていない。
【0017】
また、フォトニック結晶と波長可変レーザで構成した光走査装置は、機械的な駆動部がなく、騒音が発生せず、プリンタ装置を小型化することができる。しかしながら、波長可変レーザという特殊なレーザを用いる必要があり、装置が高価なものになってしまうという問題がある。
【0018】
【特許文献1】特開2003−202510号公報
【特許文献2】特開平9−226172号公報
【特許文献3】特開2001−13439号公報
【特許文献4】特開平11−70695号公報
【特許文献5】特開2003−54030号公報
【特許文献6】特開2003−1864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする問題点は、従来の技術では、フォトニック結晶と波長可変レーザを用いることで、機械的な駆動部がなく、騒音が発生せず、プリンタ装置を小型化することができるが、波長可変レーザという特殊で高価なレーザを用いる必要がある点である。
【0020】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、低騒音で信頼性が高い光走査装置を、非常に小型にかつ低価格で提供すると共に、さらに高品質で、かつ、光量の損失や迷光が少ない光走査を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明では、強誘電体で形成したフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで光源からの光を偏向する偏向器と、この偏向器で偏向された光をさらに、強誘電体または誘電体で形成されたフォトニック結晶における、分散面が空気の分散面の内側にあるように設計されているフォトニックバンドによって伝搬することで、光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを設けたことを特徴とする。また、例えば、偏向器や偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射る面の両面もしくはいずれか一方を、表面無反射構造(moth eye効果を有する微細周期表面構造、無反射表面構造あるいは単に無反射構造ともいう)に形成して、反射防止手段を設けた構成とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少ないスペースで偏向角を大きくすることができると共に、フォトニック結晶の群速度の偏向角依存性が非常に少ないバンドを使うことができ、高品質の光で走査することができる。さらに、偏向器や偏向角拡大器に反射防止手段を設けることにより、不要な反射を低減でき、光量の損失や迷光を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態例を説明する。
【0024】
まず、上述の従来技術の問題点に対象するために技術として、本願発明者が提案した特願2004−249032号および特願2005−011526号のそれぞれに記載の技術について説明する。
【0025】
特願2004−249032号に記載の光走査装置では、光源からの光を偏向する偏向器として、強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部とを設け、この偏向器による走査位置を検出部で検出し、その検出結果(走査位置情報)を、フォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部にフィードバックしながらフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで、光を走査している。これにより、特殊なレーザが不要となり、光走査装置の低騒音化、信頼性向上、小型化、高速化、および低価格化が可能となる。
【0026】
また、特願2005−011526号に記載の光走査装置では、光源と、フォトニック結晶を強誘電体で形成し、強誘電体で形成されたフォトニック結晶に印加する電圧で制御する偏向器と、強誘電体または誘電体で形成された、光源からの光に対するバンドが1つのみ存在するフォトニック結晶からなる偏向した光の偏向角を拡大する偏向角拡大器で構成することで、偏向角を120°以上の光走査を行うことができ、特願2004−249032号に記載の光走査装置に比べて、装置をより小型化することができる。
【0027】
これに対して、本発明に係わる光走査装置では、強誘電体で形成したフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで光源からの光を偏向する偏向器と、この偏向器で偏向された光を、強誘電体または誘電体で形成されたフォトニック結晶の、分散面が空気の分散面の内側にあるように設計されたフォトニックバンドによって伝搬して光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを設けた構成とする。このように、フォトニック結晶の群速度の偏向角依存性が非常に少ないバンドを使うことで、特願2005−011526号に記載の光走査装置に比べて、さらに高品質の光で走査することができる。
【0028】
以下、このような本発明に係わる光走査装置の詳細について図1から図9を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係わる光走査装置の第1の構成例を示すブロック図であり、図2は、図1における光走査装置の上面図、図3は、図1における第1のフォトニック結晶のバンド図、図4は、図1における第1のフォトニック結晶の第1バンドの分散面を示す説明図、図5は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面を示す説明図、図6は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面と空気の分散面および第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの関係を示す説明図、図7は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第1の関係例を示す説明図、図8は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第2の関係例を示す説明図、図9は、本発明に係わる光走査装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本例の光走査装置は、像担持体(感光ドラム)1上に光を走査するものであり、レーザ光8を発する光源(半導体レーザ)9と、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶4と、強誘電体(PLTZ:ランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛結晶)で形成された第2のフォトニック結晶5と、電極6,7と、電圧制御部10と、光走査位置検出器(フォトダイオード)2,3で構成されている。
【0031】
第2のフォトニック結晶5の上下両面には電極6,7が形成され、この電極6,7は電圧制御部10と接続されており、第2のフォトニック結晶5に電圧を制御して印加することができるようになっており、この第2のフォトニック結晶5と電圧制御部10により偏向器が構成される。
【0032】
図2には、図1に示した光走査装置の上面図を示す。本例では、第1のフォトニック結晶4は、2次元最密円孔配列構造で構成してあり、偏向器(第2のフォトニック結晶5)からの光をさらに拡大偏向する偏向角拡大器として機能する。図3においては、第1のフォトニック結晶4の、TMモード(TM偏波の対称モード)のフォトニックバンド図を示している。
【0033】
ここで、フォトニック結晶とは、屈折率の異なる透明材料を多次元的に周期配列した構造体であり、フォトニックバンドギャップ、異方性、高分散性などの特性を有することが知られている。
【0034】
フォトニック結晶の高分散性は、光の波長を若干変えるだけで屈折角が大きく変化する特性であり、また、入射角を若干変えても、屈折角が大きく変化させることができることが報告されている(H. Kosaka et al., Rhys. Rev. B 58, R10096 (1998)参照)。
【0035】
一方、強誘電体で形成したフォトニック結晶の場合には、光の波長や入射角が固定であっても、フォトニック結晶に印加する電圧を変えることで、屈折角を大きく変化させることができることが報告されている(D. Scrymgeour, N. Malkova, S. Kim and V. Gopalan, Appl. Phys. Lett., 82, 3176 (2003)参照)。
【0036】
図1および図2に示した本例の光走査装置では、TiO2で第1のフォトニック結晶4を形成し、また、PLZTで第2のフォトニック結晶5を形成し、第2のフォトニック結晶5の上下面に形成された電極6,7に電圧制御部10が接続されているので、半導体レーザ9から出射され、第2のフォトニック結晶5に入射したレーザ光8は、第2のフォトニック結晶5に印加する電圧を制御して任意の方向に偏向することができ、さらに、第1のフォトニック結晶4に入射して偏向角を拡大することができる。したがって、電圧制御部10で電圧を制御して、レーザ光8を像担持体1上に走査させることができる。
【0037】
フォトニック結晶は先に述べたように波長分散性が高いが、光走査位置検出器2,3で走査開始位置および走査終了位置を検出し、その信号を電圧制御部10にフィードバックすることで、環境温度の変化などで半導体レーザ9の発光波長が若干変動しても、正常にレーザ光8を像担持体1上で走査させることができる。
【0038】
また、本例では、第1のフォトニック結晶4において、光源(半導体レーザ)9からの光(レーザ光)8に対する第2バンド分散面が、空気の分散面の内側にあるように構成してある。
【0039】
第1のフォトニック結晶4のTMモードの第1バンドの分散面を図4において、第2バンドの分散面を図5において示している。尚、図4および図5においては、図中の数値は規格化周波数の値である。図4に示す第1バンドの分散面では、空気の分散面より内側になることはない。しかし、図5に示す第2バンドの分散面では、規格化周波数が高くなるほど分散面が小さくなるのに対して、空気の分散面は規格化周波数が大きくなるにつれて分散面が大きくなるので、第2バンドの分散面が空気の分散面の内側になる規格化周波数が存在する。
【0040】
本例では、光源の波長に応じて規格化周波数(ωa/2πc)が0.48となるような格子定数a、かつ、r/aが0.45となるようなr(円孔半径)の条件で第1のフォトニック結晶4を形成することで、図6に示すように、第1のフォトニック結晶4の第2バンド分散面が、空気の分散面の内側にあるようにしている。
【0041】
具体的には、光源8(半導体レーザ)9が赤(波長660nm)の場合は、円孔半径rを142.6nm、格子定数aを316.8nmとしており、また、緑(波長532nm)の場合は、円孔半径rを114.9nm、格子定数aを255.4nmとし、青(波長457nm)の場合は円孔半径rを98.74nm、格子定数aを219.4nmとしている。
【0042】
また、図6は第1のフォトニック結晶4への入射角θinと偏向角θpの関係を示しており、フォトニック結晶をΓ−K方向に平行な面で切断し、切断面から光を入射したとき、空気中から第1のフォトニック結晶4にθinで入射した光は、θpの角度に偏向されることを示している。
【0043】
図7は、入射角θinと偏向角θpの関係を示す図であり、入射角θinを±20°振ることで160°(+80°〜−80°)の偏向が可能であることを示しており、光走査装置全体を小型化することができる。
【0044】
また、図8に示すように、偏向角の拡大率(θp/θin)は、規格化周波数によって、任意に選択することができる。
【0045】
尚、本例の第1のフォトニック結晶4であるTiO2の2次元フォトニック結晶は、TiO2基板にEBリソグラフィ工程および金属膜蒸着工程、リフトオフ工程でメタルマスクを形成した後、フロン系のガスによるドライエッチング工程で作製することができる。
【0046】
また、第2のフォトニック結晶5であるPLZTの2次元フォトニック結晶は、ゲル状の感光性PLZT膜を紫外光でパターン露光し、酸性の水溶液で紫外光の未照射部分を溶解した後、400℃でベークすることで作製することができる。
【0047】
また、本例では、第1のフォトニック結晶4を形成する誘電体材料としてTiO2を用いているが、光源波長に対して透明であれば他の誘電体材料でも良く、強誘電体材料でも良い。
【0048】
また、本例では、第2のフォトニック結晶5を形成する強誘電体材料としてPLZTを用いたが、光源波長に対して透明な強誘電体材料であればよい。しかしながら、PLZTは可視光領域で透明であり、かつ、電気光学特性が非常に優れており、本例の光走査装置を構成するフォトニック結晶の材料として最適である。また、フォトニック結晶の構造についても、本例では、2次元最密円孔配列構造としているが、他の構造でも良い。
【0049】
また、本例では、光を偏向する手段として、PLTZで形成した第2のフォトニック結晶5の上下面に電極6,7を形成し、電圧制御部10で第2のフォトニック結晶5に印加する電圧を制御する偏向器を用いているが、ポリゴンミラーやシリコンマイクロミラーによる偏向器や音響光学素子による偏向器を用いても良い。しかしながら、本例で用いた偏向器は可動部がないので、騒音や信頼性の問題がなく、また、音響光学素子のような大きな発熱もないので本例の光走査装置を構成する偏向器として最適である。
【0050】
また、本例では、光走査位置検出器2,3で走査開始位置および走査終了位置を検出して、電圧制御部10にフィードバックしているが、光走査位置を検出する場所は走査開始位置および走査終了位置以外の場所でも良く、例えば図9に示す構成のように、フォトニック結晶94から出射したレーザ光98をビームスプリッタ91で分岐して、フォトダイオードをアレイ状に並べた位置検出器(図中「光走査位置検出器(PDアレイ)」と記載)93で常に位置を検出して電圧制御部90にフィードバックしてもよい。
【0051】
さらに、本例の光走査装置を、主走査方向に、あるいは、副走査方向に複数並べても良く、複数並べた構成では、実効的な走査速度を速くすることができる。
【0052】
このような光走査装置は、複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置に用いられており、以下、本例の光走査装置を用いたプリンタについて、図10から図12を用いて説明する。
【0053】
現在普及しているプリンタには様々な方式があるが、そのなかの1つに光学的に書き込みを行う光書き込み方式がある。光書き込み方式の代表的なものとしては電子写真方式や銀塩方式がある。
【0054】
銀塩方式は、光書き込み方式で、かつ自己発光型の代表的なものであり、この銀塩方式では、印画紙に直接光で書き込み、光が照射されたところが現像後に照射した光の色に発色するものであり、赤(R),緑(G),青(B)の3色の光を用いて書き込むことでフルカラープリントができる。
【0055】
また、自己発色型で最近注目されているものに、フォトクロミック材料を用いたものがある。フォトクロミック材料とは、光により色が可逆的に変化するもので、光を照射した部分がその光の色に変化し、さらに、色が変化した部分に紫外線を照射することで、元の色に戻すことが可能であるため、フルカラーで、光による書き込みおよび消去が繰り返し可能なリライタブルペーパーとして期待されている。
【0056】
図10は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第1の構成例を示すブロック図であり、図11は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第2の構成例を示すブロック図、図12は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第3の構成例を示すブロック図である。
【0057】
図10においては、電子写真方式のプリンタを例に示しており、この電子写真プリンタは、図1および図9で示したものと同様の、光源(半導体レーザ)109と、誘電体または強誘電体で形成された第1のフォトニック結晶104aと、強誘電体で形成された第2のフォトニック結晶104bと、電圧制御部100と、光走査位置検出器103とで構成された光走査装置と、像担持体(感光ドラム)101、帯電器100a、現像器100b、転写器100c、定着器100e、および、クリーナー100fからなる。
【0058】
このような構成からなる電子写真プリンタにおいては、まず、像担持体(感光ドラム)101が帯電器100aによって帯電され、帯電された像担持体(感光ドラム)101上に、光走査装置により、画像データに応じて強度変調されたレーザ光108を走査させる。レーザ光108が照射された像担持体(感光ドラム)101上の領域は電荷量が減り、電荷量はレーザ光の照射量の逆数に関係するので、像担持体(感光ドラム)101上に静電潜像が形成される。
【0059】
次に、現像器100bにより、像担持体(感光ドラム)101上の電荷を帯びた部分にトナーを吸着させ、転写器100cにより、像担持体(感光ドラム)101上のトナーを転写用紙100dに転写し、定着器100eにより、転写用紙100d上のトナーを紙面に定着させることで、紙面に画像を形成する。また、像担持体(感光ドラム)101をクリーナ100fによりクリーニングし、再び同じ工程を繰り返す。
【0060】
図11においては、銀塩方式プリンタを例に示しており、この銀塩方式プリンタは、図1および図9で示したものと同様の構成(光源118a〜118c、電圧制御部110a〜110c、レンズ111g、第1のフォトニック結晶114a、第2のフォトニック結晶114b、光走査位置検出器113)からなる3つの光走査装置と、搬送ローラー111b、現像器111c、および、定着器111dとで構成される。3つの光走査装置においては、各光源(G)118a,(B)118b,(R)118cの波長はそれぞれ異なり、緑(G)と青(B)および赤(R)となっている。また、3つの光走査装置は副走査方向に並べてある。
【0061】
このような構成からなる本例の銀塩方式プリンタにおいては、まず、銀塩ペーパー111aに、3つの光走査装置により、画像データに応じて強度変調された3色の光を順次走査して、銀塩ペーパー111aを露光する。その後、現像器111cで現像し、次に定着器111dで定着し、乾燥させることで、銀塩ペーパー111aにプリントすることができる。
【0062】
なお、本例では、RGB(赤、緑、青)をそれぞれ光源とする3つの光走査装置で構成しているが、2つ以上の光走査装置を用いることで、多色のプリントが可能となる。しかしながら、本例のように、光源波長の異なる3つ以上の光走査装置で構成することで、フルカラーのプリントが可能となる。その際、RGBのようにフルカラープリントに適した波長を選ぶ必要がある。また、フォトニック結晶の構造は光源の波長に応じて変更する必要がある。
【0063】
また、本例では、銀塩ペーパー111aにプリントしているが、同様の方式で、カラーフィルムやその他のカラー記録媒体にプリントすることも可能である。
【0064】
図12においては、フォトクロミック材料からなるリライタブルペーパーを用いたリライタブルプリンタを例に示しており、このプリンタは、図1および図9で示したものと同様の構成(光源128a〜128c、電圧制御部120a〜120c、レンズ121g、第1のフォトニック結晶124a、第2のフォトニック結晶124b、光走査位置検出器123)からなる3つの光走査装置と、搬送ローラー121bおよび紫外光光源(紫外ランプ)121cで構成される。3つの光走査装置においては、各光源(G)128a,(B)128b,(R)128cの波長はそれぞれ異なり、緑(G)と青(B)および赤(R)となっている。また、3つの光走査装置は副走査方向に並べてある。
【0065】
尚、フォトクロミック材料とは、紫外光の照射により発色し、発色した材料が吸収する可視光の照射により消色するものである。波長460nm付近に吸収スペクトルのピークをもつイエロー材料と、波長530nm付近に吸収スペクトルのピークをもつマゼンタ材料と、波長630nm付近に吸収スペクトルのピークをもつシアン材料の3種類のフォトクロミック材料を混合して白色フィルム上に塗布したものは、紫外線の照射により全材料が発色した後、赤色光を照射した部分はシアン材料が消色して赤色を示し、緑色光を照射した部分はマゼンタ材料が消色して緑色を示し、青色光を照射した部分はイエロー材料が消色して青色を示し、フルカラー画像表示が可能である。
【0066】
また、紫外光を再度照射すると、全材料が発色して画像が消去できるため繰り返し書き換え可能なリライタブルペーパーとして使用することができる(川島伊久衛,高橋裕幸,平野成伸,光学 32巻12号,707(2003)参照)。
【0067】
このように、フォトクロミック材料は、ある色の光を照射すると、照射した部分が照射した光の色になり、また、紫外光を照射すると、消去することができるため、繰り返し書き換え可能なリライタブルペーパーとして使用できる。
【0068】
このような構成からなる図12に示したプリンタにおいては、まず、フォトクロミック材料からなるリライタブルペーパー(図中「フォトクロミックペーパー」と記載)121aに紫外ランプ121cにより紫外光を照射し、既にリライタブルペーパー121a上に形成されている画像を消去する。次に、画像が消去されたリライタブルペーパー121aに、3つの光走査装置により、画像データに応じて強度変調された3色の光を順次走査して、リライタブルペーパー121a上に画像をプリントする。
【0069】
なお、本例では、RGBをそれぞれ光源とする3つ光走査装置で構成しているが、図11で示した例と同様に、2つ以上の光走査装置を用いることで、多色のプリントが可能となり、また、光源波長の異なる3つ以上の光走査装置で構成することで、フルカラーのプリントが可能となる。この際、RGBのように、フルカラープリントに適した波長を選ぶ必要がある。また、フォトニック結晶の構造は光源の波長に応じて変更する必要がある。
【0070】
次に、このようなプリンタに適用する図1〜図9で説明した光走査装置に反射防止手段を設ける技術について図16と図17を用いて説明する。
【0071】
図16は、本発明に係わる光走査装置の第3の構成例を示すブロック図であり、図17は図16における光走査装置の上面図である。
【0072】
図16,17に示す光走査装置は、図1に示した光走査装置と同様に、光源(半導体レーザ)1609と、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604、強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605と、電圧制御部1610と、光走査位置検出器(フォトダイオード)1602,1603で構成されている。
【0073】
誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604においては、光を入射する面(入射面)および出射する面(出射面)を、表面無反射構造(moth eye効果を有する微細周期表面構造、無反射表面構造あるいは単に無反射構造ともいう)に形成することで、反射防止構造1611a,1611bを設けた構成としている。本例では、断面が三角の鋸歯形状となり、各歯が光の波長の1/2以下の周期で配置されるようにすることで、表面無反射構造を形成し、表面での光反射を抑制している。
【0074】
同様に、強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605においても、光の入射面および出射面を、各歯が光源波長の1/2以下の周期で配置された鋸歯形状とすることで、反射防止構造1611c,1611dを設けた構成としている。
【0075】
尚、このように、角錐形状を波長の1/2以下の周期で配置することにより、「表面無反射構造(moth eye(光吸収現象)構造)」として、反射防止効果を実現する技術は、例えば、「S.J.Wilson,M.C.Hutely,The optical properties of moth eye'antireflection surfaces, Opt.Acta 29(1982)993-1009)」に記載のように公知であり、図16,17に示した光走査装置において、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604および強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605における光の入射面と出射面に鋸歯形状を形成することで、表面無反射構造を形成し、反射防止効果が得られる。
【0076】
これにより、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605への光源(半導体レーザ)1609からのレーザ光1608の入射時や、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605からのレーザ光の出射時に、不要な反射を抑えることができる。
【0077】
走査光学系での不要な反射は、光量を低下させるだけでなく、迷光となって像担持体(感光ドラム)1601に不要な書込みを行い、図10〜12に示すプリンタ装置の画像品質低下の原因となるが、図16,17に示す構成にすることで、走査光学系での不要な反射を低減し、プリンタ装置の画像品質を向上させることができる。
【0078】
尚、図16,17に示した光走査装置では、反射防止機能として、入射面および出射面に、三角形状の歯を波長の1/2周期以下で配置した鋸歯形状にしているが、従来技術の誘電体多層膜による反射防止膜を形成しても良い。
【0079】
しかし、誘電体多層膜による反射防止膜を形成するためには、フォトニック結晶構造を形成する工程とは別途に、反射防止膜を形成する工程が必要となる。これに対して、本例では、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605における光の入射面と出射面を、表面無反射構造(moth eye構造)に形成しており、フォトニック結晶構造を形成する工程で同時に反射防止機能を形成することが可能である。これにより、製造コストを抑えることができ、安価に提供することができる。
【0080】
また、このような表面無反射構造(moth eye構造)、すなわち、三角形状を波長の1/2周期以下で配置した鋸歯形状を形成する面は、第1のフォトニック結晶における光の入射面と出射面、および、第2のフォトニック結晶における光の入射面と出射面のうちいずれかの面だけでも良いが、本例のように全ての面に表面無反射構造(moth eye構造)を設けることが望ましい。
【0081】
以上、図1〜図9および図16と図17を用いて説明したように、本例の光走査装置は、光源と、光源からの光を偏向する偏向器と、偏向部によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを備え、特にこの偏向角拡大器は、光源からの光に対して透明な材料で形成されたフォトニック結晶からなり、当該フォトニック結晶の、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドによって光を伝搬するようにしている。したがって、光量のばらつきがなく、非常に小型で、かつ、特殊なレーザを必要としない安価な光走査装置を容易に製造することができる。
【0082】
また、偏向角拡大器は、PLZT等の強誘電体もしくはTiO2等で形成されたフォトニック結晶で構成し、偏向器は、PLZT等の強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部とにより構成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、機械的駆動部がない光走査装置を容易に製造することができる。
【0083】
また、走査位置を検出する検出器を備え、この検出器で検出した走査位置を、電圧制御部にフィードバックして光を走査する構成としている。これにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、走査精度が高い光走査装置を容易に製造することができる。
【0084】
また、フォトニック結晶をPLZTで形成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要としなく、かつ、可視光領域の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。
【0085】
また、各光走査装置を構成する偏向器(誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604)や偏向角拡大器(強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605)のフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両面(または、いずれか一方)に、断面が三角の鋸歯形状からなり各歯が光源波長の1/2以下の周期で配置された反射防止構造1611a,1611bを形成することにより、機械的駆動部がなく、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、不要な反射を低減した光走査装置を容易に製造することができる。これにより、低騒音で、信頼性が高く、小型で、安価であり、かつ、光量の損失や迷光が少ない光走査装置を実現することができる
【0086】
また、このような光走査装置を主走査方向または副走査方向に2つ以上並べて構成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、実効的な走査速度が速い光走査装置を容易に製造することができる。
【0087】
また、このような光走査装置を2つ以上、かつ、それぞれの光源の波長が異なる構成で、副走査方向に並べることにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、異なる波長の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。
【0088】
また、このような光走査装置を3つ以上、かつ、光源波長がそれぞれ異なる構成で、副走査方向に並べることにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、3つ以上の異なる波長の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。そして、このような光走査装置を例えば銀塩式カラープリンタに用いることにより、低騒音で、信頼性が高く、非常に小型で、安価な銀塩式カラープリンタを容易に製造することができる。
【0089】
また、このような光走査装置を、電子写真式プリンタやリライタブルペーパー用カラープリンタの光走査系に用いることにより、非常に小型で、安価な電子写真式プリンタや、低騒音で、信頼性が高く、非常に小型で、安価なリライタブルペーパー用カラープリンタを容易に製造することができる。
【0090】
尚、本発明は、図1〜図12および図16,17を用いて説明した例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本例では、本発明に係わる光走査装置をプリンタ装置に用いた例を示しているが、当該光走査装置は、電子複写機やディスプレイ装置等の画像形成機構に用いることができ、これらの装置の小型化と高性能化を図ることができる。
【0091】
また、図16,17に示す例では、偏向器(第1のフォトニック結晶1604)と偏向角拡大器(第2のフォトニック結晶1605)に設ける第1,第2の反射防止手段として、その入射面と出射面の外面より外側に、断面が三角の鋸歯形状を光源波長の1/2以下の周期で配置した構成を例示しているが、入射面と出射面の外面より内側、あるいは外面の外寄り・内寄りに設ける構成としても良い。
【0092】
また、図16,17に示す第1のフォトニック結晶1604(偏向器)と第2のフォトニック結晶1605(偏向角拡大器)における入射面と出射面に、ナノ構造の円錐列(2次元配列)を作り込むことで、第1,第2の反射防止手段としての表面無反射構造を形成することでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係わる光走査装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1における光走査装置の上面図である。
【図3】図1における第1のフォトニック結晶のバンド図である。
【図4】図1における第1のフォトニック結晶の第1バンドの分散面を示す説明図である。
【図5】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面を示す説明図である。
【図6】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面と空気の分散面および第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの関係を示す説明図である。
【図7】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第1の関係例を示す説明図である。
【図8】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第2の関係例を示す説明図である。
【図9】本発明に係わる光走査装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第1の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第2の構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第3の構成例を示すブロック図である。
【図13】従来のポリゴンミラー方式の光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】従来の発光素子をアレイ状に並べた光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】従来のフォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図16】本発明に係わる光走査装置の第3の構成例を示すブロック図である。
【図17】図16における光走査装置の上面図である。
【符号の説明】
【0094】
1,101:像担持体(感光ドラム)、2,3,93,103,113,123:光走査位置検出器、4,94,104,114,124:第1のフォトニック結晶(TiO2)、5,95,105,115,125:第2のフォトニック結晶(強誘電体(PLZT))、6,7,96,97:電極、8,98,108:レーザ光、9.99,109:光源(半導体レーザ)、10,90,100,110a〜110c,120a〜120c:電圧制御部、11:円孔、91:ビームスプリッタ、100a:帯電器、100b,111c:現像器、100c:転写器、100d:転送用紙、100e,111d:定着器、100f:クリーナー、100g,111g,121g:レンズ、111a:銀塩ペーパー、111b,121b:搬送ローラー、119a,128a:光源(G)、119b,128b:光源(B)、119c,128c:光源(C)、121a:フォトクロミックペーパー、121c:紫外光光源(紫外ランプ)、1302:ポリゴンミラー、1322:球面レンズ(第1の走査レンズ)、1326:トーリックレンズ(第2の走査レンズ)、1327:感光ドラム(感光体)、1330:光検出器、1332:シリンドリカルレンズ、1351:光源手段、1352:コリメーターレンズ、1353:絞り、1355:平行平板ガラス、1408:ガラス基板、1409:信号電極、1410:絶縁膜の第1コンタクトホール、1411:透明電極、1412:絶縁膜の第2コンタクトホール、1413:正孔輸送層、1414:発光層、1415:電子注入電極、1416:保護膜の第1コンタクトホール、1417:保護膜の第2コンタクトホール、1418:共通電極、15110:波長可変レーザ、15130:フォトニック結晶、15131:酸化シリコン膜、15132:円柱状のシリコン、1601:像担持体(感光ドラム)、1602,1603:光走査位置検出器、1604:第1のフォトニック結晶(TiO2)、1605:第2のフォトニック結晶(強誘電体(PLZT))、1608:レーザ光、1609:光源(半導体レーザ)、1610:電圧制御部、1611a〜1611d:反射防止手段(表面無反射構造)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置に用いられる光走査技術に係わり、特に、光走査系およびそれを用いた画像形成装置の小型化および高性能化を低コストに実現するのに好適な光走査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置には、光を偏向して走査する光走査装置が用いられている。
【0003】
現在の複写機や電子写真方式プリンタ等で最も多く採用されている光走査装置には、例えば、特許文献1に開示されているポリゴンミラー方式の光走査装置がある。このポリゴンミラー方式は、複数の反射面を有するポリゴンミラーを高速で回転させ、その反射面に光を当てることで、光を走査させることができる。
【0004】
図13は、従来のポリゴンミラー方式の光走査装置の構成例を示すブロック図であり、同図において、1351は光源であり、4つのビームを出射する4ビーム半導体レーザより成っている。1352はコリメーターレンズ、1353は絞り、1332はシリンドリカルレンズ、1302は光偏向器であるポリゴンミラー、1322は球面レンズ(第1の走査レンズ)、1326はトーリックレンズ(第2の走査レンズ)、1355は光学部材(間隔調整部材)としての平行平板ガラスであり、光検出器1330により検出された量(感光ドラム上を走査する複数ビームの副走査方向の位置ズレ情報)に応じて、副走査方向に傾け制御することにより、感光ドラム(感光体)1327上を走査する複数ビームの副走査方向の描画位置(走査開始位置)を調整している。
【0005】
また、従来の光走査装置の別の方式として、例えば、特許文献2に開示されている、LEDや有機ELなどの発光素子をアレイ状に並べた光走査装置がある。
【0006】
図14は、従来の発光素子をアレイ状に並べた光走査装置の構成例を示すブロック図であり、この光走査装置は、有機EL素子をアレイ状に並べた構成を有し、任意の有機EL素子を制御して点灯させることにより光を走査させることを可能にしたものである。
【0007】
同図に示す光走査装置は、ガラス基板1408上に、信号電極1409が有機ELのドット数と略同数個配置されている。各々の信号電極1409は絶縁膜の第1コンタクトホール1410を介して透明電極1411に電気的に接続されている。この透明電極1411は、絶縁膜の第2コンタクトホール1412において、正孔輸送層1413と発光層1414を挟んで、電子注入電極1415と対向している。
【0008】
この絶縁膜の第2コンタクトホール1412は発光領域に該当するので、一直線上に等間隔に配列されている。電子注入電極1415は、保護膜の第1コンタクトホール1416において、共通電極1418と電気的に接続されている。保護膜の第2コンタクトホール1417は、保護膜が信号電極1409と透明電極1411の層間に形成されているので、信号電極1409と透明電極1411を電気的に接続するために必要となっている。
【0009】
また、従来の光走査装置として、例えば、特許文献3等において提案されている、フォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置がある。
【0010】
図15は、従来のフォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置の構成例を示すブロック図であり、この光走査装置は、酸化シリコン膜15131内に円柱状のシリコン15132を周期的に並べたフォトニック結晶15130と波長可変レーザ15110を用い、波長可変レーザ15110の波長制御子に流す電流を変化させ波長を650nmから660nmまで変化させることにより、フォトニック結晶15130内での光ビームの進行方向を変化させ、これにより光ビームの偏向方向を大きく変化させて光走査を行うようにしたものである。
【0011】
しかしながら、上述したポリゴンミラー方式は、ミラーを機械的に回転させるという機械的駆動部が必要であるため、機械的摩耗が生じるという信頼性の面で問題があり、また、騒音が発生してしまうという問題がある。さらに、比較的大きな空間を占めてしまい、これを用いたプリンタ等の装置サイズが大きくなってしまうといった問題があった。
【0012】
これに対して、LEDや有機ELなどの発光素子をアレイ状に並べた光走査装置は、発光素子を並べて任意の発光素子を点灯させるので、機械的な駆動部がなく機械的摩耗や騒音が発生せず、また、占有する空間が比較的小さくプリンタ装置を小型化することができる。
【0013】
しかしながら、発光素子としてLEDをアレイ状に並べた光走査装置では、非常に長いLEDアレイチップを作製するのは非常に困難であるため、複数のLEDアレイチップを並べて実装する必要があるが、実装精度は印字品質に大きく影響するため、高精度の実装を行う必要があり、コストアップにつながっている。
【0014】
また、LEDアレイは、印字品質に大きく影響する発光ばらつきの問題がある。発光ばらつきに対して、特許文献4のように、電極の一部をレーザ光で切断して1ビット毎に調整する技術はあるが、工程数が増えることになりコストアップにつながる。
【0015】
発光素子として有機EL素子をアレイ状に並べた光走査装置では、上記特許文献2のように(図14参照)、長尺のものを一括で作製することができるため、実装工程がなく低コストにすることができる、また、発光ばらつきが比較的少ない。しかしながら、有機EL素子は、LEDに比べて寿命が短く、また、累積点灯時間が長くなるにつれて次第に輝度が低下するという問題がある。
【0016】
この問題に対しては、特許文献5に記載の技術のように、構造上単位面積あたりの発光強度を低下させて寿命を伸ばしたり、あるいは、特許文献6に記載の技術のように、有機ELアレイを複数ライン並べて、使用中のラインに寿命が来たら別のラインに切り替えて実質的に寿命を伸ばしたりするなどで対応しているが、構造が複雑になり、有機ELの低コストおよび小型化という利点が損なわれているという問題がある。さらに、有機ELアレイの寿命が短く、また、次第に輝度が低下するという問題の根本的解決にはなっていない。
【0017】
また、フォトニック結晶と波長可変レーザで構成した光走査装置は、機械的な駆動部がなく、騒音が発生せず、プリンタ装置を小型化することができる。しかしながら、波長可変レーザという特殊なレーザを用いる必要があり、装置が高価なものになってしまうという問題がある。
【0018】
【特許文献1】特開2003−202510号公報
【特許文献2】特開平9−226172号公報
【特許文献3】特開2001−13439号公報
【特許文献4】特開平11−70695号公報
【特許文献5】特開2003−54030号公報
【特許文献6】特開2003−1864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする問題点は、従来の技術では、フォトニック結晶と波長可変レーザを用いることで、機械的な駆動部がなく、騒音が発生せず、プリンタ装置を小型化することができるが、波長可変レーザという特殊で高価なレーザを用いる必要がある点である。
【0020】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、低騒音で信頼性が高い光走査装置を、非常に小型にかつ低価格で提供すると共に、さらに高品質で、かつ、光量の損失や迷光が少ない光走査を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明では、強誘電体で形成したフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで光源からの光を偏向する偏向器と、この偏向器で偏向された光をさらに、強誘電体または誘電体で形成されたフォトニック結晶における、分散面が空気の分散面の内側にあるように設計されているフォトニックバンドによって伝搬することで、光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを設けたことを特徴とする。また、例えば、偏向器や偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射る面の両面もしくはいずれか一方を、表面無反射構造(moth eye効果を有する微細周期表面構造、無反射表面構造あるいは単に無反射構造ともいう)に形成して、反射防止手段を設けた構成とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少ないスペースで偏向角を大きくすることができると共に、フォトニック結晶の群速度の偏向角依存性が非常に少ないバンドを使うことができ、高品質の光で走査することができる。さらに、偏向器や偏向角拡大器に反射防止手段を設けることにより、不要な反射を低減でき、光量の損失や迷光を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態例を説明する。
【0024】
まず、上述の従来技術の問題点に対象するために技術として、本願発明者が提案した特願2004−249032号および特願2005−011526号のそれぞれに記載の技術について説明する。
【0025】
特願2004−249032号に記載の光走査装置では、光源からの光を偏向する偏向器として、強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部とを設け、この偏向器による走査位置を検出部で検出し、その検出結果(走査位置情報)を、フォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部にフィードバックしながらフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで、光を走査している。これにより、特殊なレーザが不要となり、光走査装置の低騒音化、信頼性向上、小型化、高速化、および低価格化が可能となる。
【0026】
また、特願2005−011526号に記載の光走査装置では、光源と、フォトニック結晶を強誘電体で形成し、強誘電体で形成されたフォトニック結晶に印加する電圧で制御する偏向器と、強誘電体または誘電体で形成された、光源からの光に対するバンドが1つのみ存在するフォトニック結晶からなる偏向した光の偏向角を拡大する偏向角拡大器で構成することで、偏向角を120°以上の光走査を行うことができ、特願2004−249032号に記載の光走査装置に比べて、装置をより小型化することができる。
【0027】
これに対して、本発明に係わる光走査装置では、強誘電体で形成したフォトニック結晶に印加する電圧を制御することで光源からの光を偏向する偏向器と、この偏向器で偏向された光を、強誘電体または誘電体で形成されたフォトニック結晶の、分散面が空気の分散面の内側にあるように設計されたフォトニックバンドによって伝搬して光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを設けた構成とする。このように、フォトニック結晶の群速度の偏向角依存性が非常に少ないバンドを使うことで、特願2005−011526号に記載の光走査装置に比べて、さらに高品質の光で走査することができる。
【0028】
以下、このような本発明に係わる光走査装置の詳細について図1から図9を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係わる光走査装置の第1の構成例を示すブロック図であり、図2は、図1における光走査装置の上面図、図3は、図1における第1のフォトニック結晶のバンド図、図4は、図1における第1のフォトニック結晶の第1バンドの分散面を示す説明図、図5は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面を示す説明図、図6は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面と空気の分散面および第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの関係を示す説明図、図7は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第1の関係例を示す説明図、図8は、図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第2の関係例を示す説明図、図9は、本発明に係わる光走査装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本例の光走査装置は、像担持体(感光ドラム)1上に光を走査するものであり、レーザ光8を発する光源(半導体レーザ)9と、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶4と、強誘電体(PLTZ:ランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛結晶)で形成された第2のフォトニック結晶5と、電極6,7と、電圧制御部10と、光走査位置検出器(フォトダイオード)2,3で構成されている。
【0031】
第2のフォトニック結晶5の上下両面には電極6,7が形成され、この電極6,7は電圧制御部10と接続されており、第2のフォトニック結晶5に電圧を制御して印加することができるようになっており、この第2のフォトニック結晶5と電圧制御部10により偏向器が構成される。
【0032】
図2には、図1に示した光走査装置の上面図を示す。本例では、第1のフォトニック結晶4は、2次元最密円孔配列構造で構成してあり、偏向器(第2のフォトニック結晶5)からの光をさらに拡大偏向する偏向角拡大器として機能する。図3においては、第1のフォトニック結晶4の、TMモード(TM偏波の対称モード)のフォトニックバンド図を示している。
【0033】
ここで、フォトニック結晶とは、屈折率の異なる透明材料を多次元的に周期配列した構造体であり、フォトニックバンドギャップ、異方性、高分散性などの特性を有することが知られている。
【0034】
フォトニック結晶の高分散性は、光の波長を若干変えるだけで屈折角が大きく変化する特性であり、また、入射角を若干変えても、屈折角が大きく変化させることができることが報告されている(H. Kosaka et al., Rhys. Rev. B 58, R10096 (1998)参照)。
【0035】
一方、強誘電体で形成したフォトニック結晶の場合には、光の波長や入射角が固定であっても、フォトニック結晶に印加する電圧を変えることで、屈折角を大きく変化させることができることが報告されている(D. Scrymgeour, N. Malkova, S. Kim and V. Gopalan, Appl. Phys. Lett., 82, 3176 (2003)参照)。
【0036】
図1および図2に示した本例の光走査装置では、TiO2で第1のフォトニック結晶4を形成し、また、PLZTで第2のフォトニック結晶5を形成し、第2のフォトニック結晶5の上下面に形成された電極6,7に電圧制御部10が接続されているので、半導体レーザ9から出射され、第2のフォトニック結晶5に入射したレーザ光8は、第2のフォトニック結晶5に印加する電圧を制御して任意の方向に偏向することができ、さらに、第1のフォトニック結晶4に入射して偏向角を拡大することができる。したがって、電圧制御部10で電圧を制御して、レーザ光8を像担持体1上に走査させることができる。
【0037】
フォトニック結晶は先に述べたように波長分散性が高いが、光走査位置検出器2,3で走査開始位置および走査終了位置を検出し、その信号を電圧制御部10にフィードバックすることで、環境温度の変化などで半導体レーザ9の発光波長が若干変動しても、正常にレーザ光8を像担持体1上で走査させることができる。
【0038】
また、本例では、第1のフォトニック結晶4において、光源(半導体レーザ)9からの光(レーザ光)8に対する第2バンド分散面が、空気の分散面の内側にあるように構成してある。
【0039】
第1のフォトニック結晶4のTMモードの第1バンドの分散面を図4において、第2バンドの分散面を図5において示している。尚、図4および図5においては、図中の数値は規格化周波数の値である。図4に示す第1バンドの分散面では、空気の分散面より内側になることはない。しかし、図5に示す第2バンドの分散面では、規格化周波数が高くなるほど分散面が小さくなるのに対して、空気の分散面は規格化周波数が大きくなるにつれて分散面が大きくなるので、第2バンドの分散面が空気の分散面の内側になる規格化周波数が存在する。
【0040】
本例では、光源の波長に応じて規格化周波数(ωa/2πc)が0.48となるような格子定数a、かつ、r/aが0.45となるようなr(円孔半径)の条件で第1のフォトニック結晶4を形成することで、図6に示すように、第1のフォトニック結晶4の第2バンド分散面が、空気の分散面の内側にあるようにしている。
【0041】
具体的には、光源8(半導体レーザ)9が赤(波長660nm)の場合は、円孔半径rを142.6nm、格子定数aを316.8nmとしており、また、緑(波長532nm)の場合は、円孔半径rを114.9nm、格子定数aを255.4nmとし、青(波長457nm)の場合は円孔半径rを98.74nm、格子定数aを219.4nmとしている。
【0042】
また、図6は第1のフォトニック結晶4への入射角θinと偏向角θpの関係を示しており、フォトニック結晶をΓ−K方向に平行な面で切断し、切断面から光を入射したとき、空気中から第1のフォトニック結晶4にθinで入射した光は、θpの角度に偏向されることを示している。
【0043】
図7は、入射角θinと偏向角θpの関係を示す図であり、入射角θinを±20°振ることで160°(+80°〜−80°)の偏向が可能であることを示しており、光走査装置全体を小型化することができる。
【0044】
また、図8に示すように、偏向角の拡大率(θp/θin)は、規格化周波数によって、任意に選択することができる。
【0045】
尚、本例の第1のフォトニック結晶4であるTiO2の2次元フォトニック結晶は、TiO2基板にEBリソグラフィ工程および金属膜蒸着工程、リフトオフ工程でメタルマスクを形成した後、フロン系のガスによるドライエッチング工程で作製することができる。
【0046】
また、第2のフォトニック結晶5であるPLZTの2次元フォトニック結晶は、ゲル状の感光性PLZT膜を紫外光でパターン露光し、酸性の水溶液で紫外光の未照射部分を溶解した後、400℃でベークすることで作製することができる。
【0047】
また、本例では、第1のフォトニック結晶4を形成する誘電体材料としてTiO2を用いているが、光源波長に対して透明であれば他の誘電体材料でも良く、強誘電体材料でも良い。
【0048】
また、本例では、第2のフォトニック結晶5を形成する強誘電体材料としてPLZTを用いたが、光源波長に対して透明な強誘電体材料であればよい。しかしながら、PLZTは可視光領域で透明であり、かつ、電気光学特性が非常に優れており、本例の光走査装置を構成するフォトニック結晶の材料として最適である。また、フォトニック結晶の構造についても、本例では、2次元最密円孔配列構造としているが、他の構造でも良い。
【0049】
また、本例では、光を偏向する手段として、PLTZで形成した第2のフォトニック結晶5の上下面に電極6,7を形成し、電圧制御部10で第2のフォトニック結晶5に印加する電圧を制御する偏向器を用いているが、ポリゴンミラーやシリコンマイクロミラーによる偏向器や音響光学素子による偏向器を用いても良い。しかしながら、本例で用いた偏向器は可動部がないので、騒音や信頼性の問題がなく、また、音響光学素子のような大きな発熱もないので本例の光走査装置を構成する偏向器として最適である。
【0050】
また、本例では、光走査位置検出器2,3で走査開始位置および走査終了位置を検出して、電圧制御部10にフィードバックしているが、光走査位置を検出する場所は走査開始位置および走査終了位置以外の場所でも良く、例えば図9に示す構成のように、フォトニック結晶94から出射したレーザ光98をビームスプリッタ91で分岐して、フォトダイオードをアレイ状に並べた位置検出器(図中「光走査位置検出器(PDアレイ)」と記載)93で常に位置を検出して電圧制御部90にフィードバックしてもよい。
【0051】
さらに、本例の光走査装置を、主走査方向に、あるいは、副走査方向に複数並べても良く、複数並べた構成では、実効的な走査速度を速くすることができる。
【0052】
このような光走査装置は、複写機やプリンタ、ディスプレイ装置等を含む画像形成装置に用いられており、以下、本例の光走査装置を用いたプリンタについて、図10から図12を用いて説明する。
【0053】
現在普及しているプリンタには様々な方式があるが、そのなかの1つに光学的に書き込みを行う光書き込み方式がある。光書き込み方式の代表的なものとしては電子写真方式や銀塩方式がある。
【0054】
銀塩方式は、光書き込み方式で、かつ自己発光型の代表的なものであり、この銀塩方式では、印画紙に直接光で書き込み、光が照射されたところが現像後に照射した光の色に発色するものであり、赤(R),緑(G),青(B)の3色の光を用いて書き込むことでフルカラープリントができる。
【0055】
また、自己発色型で最近注目されているものに、フォトクロミック材料を用いたものがある。フォトクロミック材料とは、光により色が可逆的に変化するもので、光を照射した部分がその光の色に変化し、さらに、色が変化した部分に紫外線を照射することで、元の色に戻すことが可能であるため、フルカラーで、光による書き込みおよび消去が繰り返し可能なリライタブルペーパーとして期待されている。
【0056】
図10は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第1の構成例を示すブロック図であり、図11は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第2の構成例を示すブロック図、図12は、本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第3の構成例を示すブロック図である。
【0057】
図10においては、電子写真方式のプリンタを例に示しており、この電子写真プリンタは、図1および図9で示したものと同様の、光源(半導体レーザ)109と、誘電体または強誘電体で形成された第1のフォトニック結晶104aと、強誘電体で形成された第2のフォトニック結晶104bと、電圧制御部100と、光走査位置検出器103とで構成された光走査装置と、像担持体(感光ドラム)101、帯電器100a、現像器100b、転写器100c、定着器100e、および、クリーナー100fからなる。
【0058】
このような構成からなる電子写真プリンタにおいては、まず、像担持体(感光ドラム)101が帯電器100aによって帯電され、帯電された像担持体(感光ドラム)101上に、光走査装置により、画像データに応じて強度変調されたレーザ光108を走査させる。レーザ光108が照射された像担持体(感光ドラム)101上の領域は電荷量が減り、電荷量はレーザ光の照射量の逆数に関係するので、像担持体(感光ドラム)101上に静電潜像が形成される。
【0059】
次に、現像器100bにより、像担持体(感光ドラム)101上の電荷を帯びた部分にトナーを吸着させ、転写器100cにより、像担持体(感光ドラム)101上のトナーを転写用紙100dに転写し、定着器100eにより、転写用紙100d上のトナーを紙面に定着させることで、紙面に画像を形成する。また、像担持体(感光ドラム)101をクリーナ100fによりクリーニングし、再び同じ工程を繰り返す。
【0060】
図11においては、銀塩方式プリンタを例に示しており、この銀塩方式プリンタは、図1および図9で示したものと同様の構成(光源118a〜118c、電圧制御部110a〜110c、レンズ111g、第1のフォトニック結晶114a、第2のフォトニック結晶114b、光走査位置検出器113)からなる3つの光走査装置と、搬送ローラー111b、現像器111c、および、定着器111dとで構成される。3つの光走査装置においては、各光源(G)118a,(B)118b,(R)118cの波長はそれぞれ異なり、緑(G)と青(B)および赤(R)となっている。また、3つの光走査装置は副走査方向に並べてある。
【0061】
このような構成からなる本例の銀塩方式プリンタにおいては、まず、銀塩ペーパー111aに、3つの光走査装置により、画像データに応じて強度変調された3色の光を順次走査して、銀塩ペーパー111aを露光する。その後、現像器111cで現像し、次に定着器111dで定着し、乾燥させることで、銀塩ペーパー111aにプリントすることができる。
【0062】
なお、本例では、RGB(赤、緑、青)をそれぞれ光源とする3つの光走査装置で構成しているが、2つ以上の光走査装置を用いることで、多色のプリントが可能となる。しかしながら、本例のように、光源波長の異なる3つ以上の光走査装置で構成することで、フルカラーのプリントが可能となる。その際、RGBのようにフルカラープリントに適した波長を選ぶ必要がある。また、フォトニック結晶の構造は光源の波長に応じて変更する必要がある。
【0063】
また、本例では、銀塩ペーパー111aにプリントしているが、同様の方式で、カラーフィルムやその他のカラー記録媒体にプリントすることも可能である。
【0064】
図12においては、フォトクロミック材料からなるリライタブルペーパーを用いたリライタブルプリンタを例に示しており、このプリンタは、図1および図9で示したものと同様の構成(光源128a〜128c、電圧制御部120a〜120c、レンズ121g、第1のフォトニック結晶124a、第2のフォトニック結晶124b、光走査位置検出器123)からなる3つの光走査装置と、搬送ローラー121bおよび紫外光光源(紫外ランプ)121cで構成される。3つの光走査装置においては、各光源(G)128a,(B)128b,(R)128cの波長はそれぞれ異なり、緑(G)と青(B)および赤(R)となっている。また、3つの光走査装置は副走査方向に並べてある。
【0065】
尚、フォトクロミック材料とは、紫外光の照射により発色し、発色した材料が吸収する可視光の照射により消色するものである。波長460nm付近に吸収スペクトルのピークをもつイエロー材料と、波長530nm付近に吸収スペクトルのピークをもつマゼンタ材料と、波長630nm付近に吸収スペクトルのピークをもつシアン材料の3種類のフォトクロミック材料を混合して白色フィルム上に塗布したものは、紫外線の照射により全材料が発色した後、赤色光を照射した部分はシアン材料が消色して赤色を示し、緑色光を照射した部分はマゼンタ材料が消色して緑色を示し、青色光を照射した部分はイエロー材料が消色して青色を示し、フルカラー画像表示が可能である。
【0066】
また、紫外光を再度照射すると、全材料が発色して画像が消去できるため繰り返し書き換え可能なリライタブルペーパーとして使用することができる(川島伊久衛,高橋裕幸,平野成伸,光学 32巻12号,707(2003)参照)。
【0067】
このように、フォトクロミック材料は、ある色の光を照射すると、照射した部分が照射した光の色になり、また、紫外光を照射すると、消去することができるため、繰り返し書き換え可能なリライタブルペーパーとして使用できる。
【0068】
このような構成からなる図12に示したプリンタにおいては、まず、フォトクロミック材料からなるリライタブルペーパー(図中「フォトクロミックペーパー」と記載)121aに紫外ランプ121cにより紫外光を照射し、既にリライタブルペーパー121a上に形成されている画像を消去する。次に、画像が消去されたリライタブルペーパー121aに、3つの光走査装置により、画像データに応じて強度変調された3色の光を順次走査して、リライタブルペーパー121a上に画像をプリントする。
【0069】
なお、本例では、RGBをそれぞれ光源とする3つ光走査装置で構成しているが、図11で示した例と同様に、2つ以上の光走査装置を用いることで、多色のプリントが可能となり、また、光源波長の異なる3つ以上の光走査装置で構成することで、フルカラーのプリントが可能となる。この際、RGBのように、フルカラープリントに適した波長を選ぶ必要がある。また、フォトニック結晶の構造は光源の波長に応じて変更する必要がある。
【0070】
次に、このようなプリンタに適用する図1〜図9で説明した光走査装置に反射防止手段を設ける技術について図16と図17を用いて説明する。
【0071】
図16は、本発明に係わる光走査装置の第3の構成例を示すブロック図であり、図17は図16における光走査装置の上面図である。
【0072】
図16,17に示す光走査装置は、図1に示した光走査装置と同様に、光源(半導体レーザ)1609と、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604、強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605と、電圧制御部1610と、光走査位置検出器(フォトダイオード)1602,1603で構成されている。
【0073】
誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604においては、光を入射する面(入射面)および出射する面(出射面)を、表面無反射構造(moth eye効果を有する微細周期表面構造、無反射表面構造あるいは単に無反射構造ともいう)に形成することで、反射防止構造1611a,1611bを設けた構成としている。本例では、断面が三角の鋸歯形状となり、各歯が光の波長の1/2以下の周期で配置されるようにすることで、表面無反射構造を形成し、表面での光反射を抑制している。
【0074】
同様に、強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605においても、光の入射面および出射面を、各歯が光源波長の1/2以下の周期で配置された鋸歯形状とすることで、反射防止構造1611c,1611dを設けた構成としている。
【0075】
尚、このように、角錐形状を波長の1/2以下の周期で配置することにより、「表面無反射構造(moth eye(光吸収現象)構造)」として、反射防止効果を実現する技術は、例えば、「S.J.Wilson,M.C.Hutely,The optical properties of moth eye'antireflection surfaces, Opt.Acta 29(1982)993-1009)」に記載のように公知であり、図16,17に示した光走査装置において、誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604および強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605における光の入射面と出射面に鋸歯形状を形成することで、表面無反射構造を形成し、反射防止効果が得られる。
【0076】
これにより、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605への光源(半導体レーザ)1609からのレーザ光1608の入射時や、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605からのレーザ光の出射時に、不要な反射を抑えることができる。
【0077】
走査光学系での不要な反射は、光量を低下させるだけでなく、迷光となって像担持体(感光ドラム)1601に不要な書込みを行い、図10〜12に示すプリンタ装置の画像品質低下の原因となるが、図16,17に示す構成にすることで、走査光学系での不要な反射を低減し、プリンタ装置の画像品質を向上させることができる。
【0078】
尚、図16,17に示した光走査装置では、反射防止機能として、入射面および出射面に、三角形状の歯を波長の1/2周期以下で配置した鋸歯形状にしているが、従来技術の誘電体多層膜による反射防止膜を形成しても良い。
【0079】
しかし、誘電体多層膜による反射防止膜を形成するためには、フォトニック結晶構造を形成する工程とは別途に、反射防止膜を形成する工程が必要となる。これに対して、本例では、第1のフォトニック結晶1604および第2のフォトニック結晶1605における光の入射面と出射面を、表面無反射構造(moth eye構造)に形成しており、フォトニック結晶構造を形成する工程で同時に反射防止機能を形成することが可能である。これにより、製造コストを抑えることができ、安価に提供することができる。
【0080】
また、このような表面無反射構造(moth eye構造)、すなわち、三角形状を波長の1/2周期以下で配置した鋸歯形状を形成する面は、第1のフォトニック結晶における光の入射面と出射面、および、第2のフォトニック結晶における光の入射面と出射面のうちいずれかの面だけでも良いが、本例のように全ての面に表面無反射構造(moth eye構造)を設けることが望ましい。
【0081】
以上、図1〜図9および図16と図17を用いて説明したように、本例の光走査装置は、光源と、光源からの光を偏向する偏向器と、偏向部によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを備え、特にこの偏向角拡大器は、光源からの光に対して透明な材料で形成されたフォトニック結晶からなり、当該フォトニック結晶の、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドによって光を伝搬するようにしている。したがって、光量のばらつきがなく、非常に小型で、かつ、特殊なレーザを必要としない安価な光走査装置を容易に製造することができる。
【0082】
また、偏向角拡大器は、PLZT等の強誘電体もしくはTiO2等で形成されたフォトニック結晶で構成し、偏向器は、PLZT等の強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、このフォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御部とにより構成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、機械的駆動部がない光走査装置を容易に製造することができる。
【0083】
また、走査位置を検出する検出器を備え、この検出器で検出した走査位置を、電圧制御部にフィードバックして光を走査する構成としている。これにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、走査精度が高い光走査装置を容易に製造することができる。
【0084】
また、フォトニック結晶をPLZTで形成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要としなく、かつ、可視光領域の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。
【0085】
また、各光走査装置を構成する偏向器(誘電体(TiO2)で形成された第1のフォトニック結晶1604)や偏向角拡大器(強誘電体(PLZT)で形成された第2のフォトニック結晶1605)のフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両面(または、いずれか一方)に、断面が三角の鋸歯形状からなり各歯が光源波長の1/2以下の周期で配置された反射防止構造1611a,1611bを形成することにより、機械的駆動部がなく、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、不要な反射を低減した光走査装置を容易に製造することができる。これにより、低騒音で、信頼性が高く、小型で、安価であり、かつ、光量の損失や迷光が少ない光走査装置を実現することができる
【0086】
また、このような光走査装置を主走査方向または副走査方向に2つ以上並べて構成することにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、実効的な走査速度が速い光走査装置を容易に製造することができる。
【0087】
また、このような光走査装置を2つ以上、かつ、それぞれの光源の波長が異なる構成で、副走査方向に並べることにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、異なる波長の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。
【0088】
また、このような光走査装置を3つ以上、かつ、光源波長がそれぞれ異なる構成で、副走査方向に並べることにより、光量のばらつきがなく、非常に小型で、特殊なレーザを必要とせず、かつ、3つ以上の異なる波長の光を走査できる光走査装置を容易に製造することができる。そして、このような光走査装置を例えば銀塩式カラープリンタに用いることにより、低騒音で、信頼性が高く、非常に小型で、安価な銀塩式カラープリンタを容易に製造することができる。
【0089】
また、このような光走査装置を、電子写真式プリンタやリライタブルペーパー用カラープリンタの光走査系に用いることにより、非常に小型で、安価な電子写真式プリンタや、低騒音で、信頼性が高く、非常に小型で、安価なリライタブルペーパー用カラープリンタを容易に製造することができる。
【0090】
尚、本発明は、図1〜図12および図16,17を用いて説明した例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本例では、本発明に係わる光走査装置をプリンタ装置に用いた例を示しているが、当該光走査装置は、電子複写機やディスプレイ装置等の画像形成機構に用いることができ、これらの装置の小型化と高性能化を図ることができる。
【0091】
また、図16,17に示す例では、偏向器(第1のフォトニック結晶1604)と偏向角拡大器(第2のフォトニック結晶1605)に設ける第1,第2の反射防止手段として、その入射面と出射面の外面より外側に、断面が三角の鋸歯形状を光源波長の1/2以下の周期で配置した構成を例示しているが、入射面と出射面の外面より内側、あるいは外面の外寄り・内寄りに設ける構成としても良い。
【0092】
また、図16,17に示す第1のフォトニック結晶1604(偏向器)と第2のフォトニック結晶1605(偏向角拡大器)における入射面と出射面に、ナノ構造の円錐列(2次元配列)を作り込むことで、第1,第2の反射防止手段としての表面無反射構造を形成することでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係わる光走査装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1における光走査装置の上面図である。
【図3】図1における第1のフォトニック結晶のバンド図である。
【図4】図1における第1のフォトニック結晶の第1バンドの分散面を示す説明図である。
【図5】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面を示す説明図である。
【図6】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドの分散面と空気の分散面および第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの関係を示す説明図である。
【図7】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第1の関係例を示す説明図である。
【図8】図1における第1のフォトニック結晶の第2バンドにおける入射角θinと偏向角θpの第2の関係例を示す説明図である。
【図9】本発明に係わる光走査装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第1の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第2の構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明に係わる光走査装置を用いたプリンタの第3の構成例を示すブロック図である。
【図13】従来のポリゴンミラー方式の光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】従来の発光素子をアレイ状に並べた光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】従来のフォトニック結晶の大きな波長分散特性を用いた光走査装置の構成例を示すブロック図である。
【図16】本発明に係わる光走査装置の第3の構成例を示すブロック図である。
【図17】図16における光走査装置の上面図である。
【符号の説明】
【0094】
1,101:像担持体(感光ドラム)、2,3,93,103,113,123:光走査位置検出器、4,94,104,114,124:第1のフォトニック結晶(TiO2)、5,95,105,115,125:第2のフォトニック結晶(強誘電体(PLZT))、6,7,96,97:電極、8,98,108:レーザ光、9.99,109:光源(半導体レーザ)、10,90,100,110a〜110c,120a〜120c:電圧制御部、11:円孔、91:ビームスプリッタ、100a:帯電器、100b,111c:現像器、100c:転写器、100d:転送用紙、100e,111d:定着器、100f:クリーナー、100g,111g,121g:レンズ、111a:銀塩ペーパー、111b,121b:搬送ローラー、119a,128a:光源(G)、119b,128b:光源(B)、119c,128c:光源(C)、121a:フォトクロミックペーパー、121c:紫外光光源(紫外ランプ)、1302:ポリゴンミラー、1322:球面レンズ(第1の走査レンズ)、1326:トーリックレンズ(第2の走査レンズ)、1327:感光ドラム(感光体)、1330:光検出器、1332:シリンドリカルレンズ、1351:光源手段、1352:コリメーターレンズ、1353:絞り、1355:平行平板ガラス、1408:ガラス基板、1409:信号電極、1410:絶縁膜の第1コンタクトホール、1411:透明電極、1412:絶縁膜の第2コンタクトホール、1413:正孔輸送層、1414:発光層、1415:電子注入電極、1416:保護膜の第1コンタクトホール、1417:保護膜の第2コンタクトホール、1418:共通電極、15110:波長可変レーザ、15130:フォトニック結晶、15131:酸化シリコン膜、15132:円柱状のシリコン、1601:像担持体(感光ドラム)、1602,1603:光走査位置検出器、1604:第1のフォトニック結晶(TiO2)、1605:第2のフォトニック結晶(強誘電体(PLZT))、1608:レーザ光、1609:光源(半導体レーザ)、1610:電圧制御部、1611a〜1611d:反射防止手段(表面無反射構造)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を走査する光走査装置であって、
光源と、該光源からの光を偏向する偏向器と、該偏向器によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを有し、
該偏向角拡大器は、フォトニック結晶からなり、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドを具備し、当該フォトニックバンドによって上記光源からの光を伝搬することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置であって、
上記偏向角拡大器のフォトニック結晶は、強誘電体もしくは誘電体からなることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向器は、
強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、
該フォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御手段とを有し、
該電圧制御手段により上記フォトニック結晶に印加する電圧を制御して該フォトニック結晶に入射され出射される光の偏向制御を行うことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光走査装置であって、
上記偏向器を構成するフォトニック結晶がPLZTであることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方に、第1の反射防止手段を設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光走査装置であって、
上記第1の反射防止手段は、
上記フォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方を、表面無反射構造に形成してなることを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光走査装置であって、
上記第1の反射防止手段は、上記フォトニック結晶の形成過程で形成されることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方に、第2の反射防止手段を設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光走査装置であって、
上記第2の反射防止手段は、
上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方を、表面無反射構造に形成してなることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光走査装置であって、
上記第2の反射防止手段は、上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶の形成過程で形成されることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光走査装置であって、
光の走査位置を検出する検出器を有し、
該検出器で検出した走査位置を、上記偏向器の偏向制御にフィードバックすることを特徴とする光走査装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、主走査方向に2つ以上並べたことを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、副走査方向に2つ以上並べたことを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光走査装置であって、
上記副走査方向に並べた2つ以上の光走査装置の各々の光源波長が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、副走査方向に少なくとも3つ以上並べてなり、かつ、それぞれの光源波長が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光を受光媒体上に受光して当該画像パターンを生成する画像生成手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によって静電潜像が形成される像担持体と、
該像担持体上の静電潜像を現像する現像器と、
該現像器で現像された像を転写用紙に転写する転写器と、
該転写用紙に転写された像を定着させる定着器と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項15に記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によって銀塩ペーパー上に形成された像を現像する現像器と、該現像器で現像された像を定着する定着器と
を有することを特徴とする銀塩式カラープリンタ。
【請求項19】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の出力を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によってリライタブルペーパー上に形成された像を消去するための紫外光を発生する紫外光光源と
を有し、
上記紫外光光源で像を消去したリライタブルペーパー上に新たな像を形成することを特徴とするリライタブルプリンタ。
【請求項1】
光を走査する光走査装置であって、
光源と、該光源からの光を偏向する偏向器と、該偏向器によって偏向された光の偏向角を拡大する偏向角拡大器とを有し、
該偏向角拡大器は、フォトニック結晶からなり、分散面が空気の分散面の内側にあるフォトニックバンドを具備し、当該フォトニックバンドによって上記光源からの光を伝搬することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置であって、
上記偏向角拡大器のフォトニック結晶は、強誘電体もしくは誘電体からなることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向器は、
強誘電体で形成されたフォトニック結晶と、
該フォトニック結晶に印加する電圧を制御する電圧制御手段とを有し、
該電圧制御手段により上記フォトニック結晶に印加する電圧を制御して該フォトニック結晶に入射され出射される光の偏向制御を行うことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光走査装置であって、
上記偏向器を構成するフォトニック結晶がPLZTであることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方に、第1の反射防止手段を設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光走査装置であって、
上記第1の反射防止手段は、
上記フォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方を、表面無反射構造に形成してなることを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光走査装置であって、
上記第1の反射防止手段は、上記フォトニック結晶の形成過程で形成されることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光走査装置であって、
上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方に、第2の反射防止手段を設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光走査装置であって、
上記第2の反射防止手段は、
上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶における光の入射面と出射面の両方もしくはいずれか一方を、表面無反射構造に形成してなることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光走査装置であって、
上記第2の反射防止手段は、上記偏向角拡大器を構成するフォトニック結晶の形成過程で形成されることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光走査装置であって、
光の走査位置を検出する検出器を有し、
該検出器で検出した走査位置を、上記偏向器の偏向制御にフィードバックすることを特徴とする光走査装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、主走査方向に2つ以上並べたことを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、副走査方向に2つ以上並べたことを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光走査装置であって、
上記副走査方向に並べた2つ以上の光走査装置の各々の光源波長が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光走査装置を、副走査方向に少なくとも3つ以上並べてなり、かつ、それぞれの光源波長が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光を受光媒体上に受光して当該画像パターンを生成する画像生成手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によって静電潜像が形成される像担持体と、
該像担持体上の静電潜像を現像する現像器と、
該現像器で現像された像を転写用紙に転写する転写器と、
該転写用紙に転写された像を定着させる定着器と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項15に記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の強度を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によって銀塩ペーパー上に形成された像を現像する現像器と、該現像器で現像された像を定着する定着器と
を有することを特徴とする銀塩式カラープリンタ。
【請求項19】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置が走査する光の出力を画像データに応じて制御する露光制御手段と、
該露光制御手段で制御された上記光走査装置からの光によってリライタブルペーパー上に形成された像を消去するための紫外光を発生する紫外光光源と
を有し、
上記紫外光光源で像を消去したリライタブルペーパー上に新たな像を形成することを特徴とするリライタブルプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−285191(P2006−285191A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296175(P2005−296175)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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