説明

光走査装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】画像形成位置を正確に補正することができる光走査装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光ビームで感光体98を走査する光走査装置90において、光ビームを射出する光源91と、電圧印加により入射された前記光ビームを偏向させて射出する電気光学偏向手段80と、電気光学偏向手段の対向した面に配置された第一の電極80c、80dと、電気光学偏向手段の前記対向した面とは異なる対向した面に配置された第二の電極80e、80fと、第一及び第二の電極の各々に印加する電圧を制御する制御手段89と、電気光学偏向手段で偏向された光ビームで感光体を走査する際の基準信号を出力する基準信号生成手段60を備え、制御手段は、基準信号生成手段により出力された基準信号に基づいて第一及び第二の電極に印加する電圧の各々を制御することで光ビームの走査位置を制御することを特徴とする光走査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセス技術を使用した画像形成装置に実装される光走査装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置における走査光学装置は、入力された画像データに応じて半導体レーザを駆動し、その画像データに応じた静電潜像を感光体上に形成している。この走査光学装置の一例を図6に示す。この図を用いて、従来の走査光学装置につき説明する。
【0003】
走査光学装置の光源の半導体レーザ91から出射されるレーザ光は、コリメートレンズ92によりほぼ平行な光に変換された後、所定のビーム径で回転多面鏡等の偏向部材95で偏向された後、f−θレンズとしての走査レンズ96により集光作用を受ける。また、同時にf−θレンズは走査の時間的な直線性を保証するような歪曲収差の補正を行うので、f−θレンズを通過したレーザ光は、感光体98上に主走査方向B(感光体の軸方向)に等速で結合走査される。ここで感光体上での集光位置のずれが画像品質を劣化させる要因となる。
【0004】
この為、走査光学装置においては、感光体上でのレーザ光の集光位置が大きくずれないような工夫がされている。例えば、光学部品や機械部品の部品精度や設置精度を高めるとともに、これらの部品の線膨張係数の最適化を図る等の工夫がされている。
【0005】
また、回転多面鏡の製造精度や回転多面鏡駆動モータの組立精度のばらつき等により光路と反射面との角度が面毎に異なる(面倒れと称する)場合がある。この面倒れが起きた場合でも、感光体ドラム面上の結像位置が所望の位置となるようf−θレンズなどで補正されるように設計されている。図7(a)に面倒れがない場合の、図7(b)に面倒れがある場合の走査光学装置の副走査断面図を示す。
【0006】
しかし、面倒れの影響などのずれを補正するf−θレンズなどの光学部品の部品精度で補正するには限界がある。これはf−θレンズなどの光学部品は、成形上のバラツキ等により設計値からの特性のずれがあるためである。つまり、光学系のメカ的な補正では、面倒れのみならず、光学部品の製造精度、組立精度や設置精度などに大きく依存し、かつ補正限界もある。レーザ光を回転多面鏡で偏向走査させて感光体上を主走査方向に1ライン走査する区間で、レーザ光は回転多面鏡と感光体との間に設けられたf−θレンズを通過する。このため、このf−θレンズの特性のずれにより感光体上へ照射されるレーザ光は、理想的な画像形成位置からずれを生じてしまう。また、画像形成装置内での環境変動等により光学部品の屈折率分布や面精度の低下などによっても、レーザ光が理想的な画像形成位置からずれを生じてしまう。
【0007】
つまり、全走査域でレーザ光の集光位置や走査位置を高精度化するのは困難であった。そこで集光位置を補正する手段として、コリメートレンズのレーザ光の射出側に電気光学結晶を配置してレーザ光の集束性を変更する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−264420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の方法では、光学系中に機械的可動部分を要せず電気光学結晶により電気的制御を行うため応答速度が速くなるが、コリメートレンズの他に電気光学結晶等の新たな部品が必要となるため、部品点数が増え走査光学装置の大型化を招く。また、レーザ光の集光位置(ピント精度)が光学部品の設置精度に大きく依存し、部品の熱膨張により伸縮した場合に、実際の位置と計算位置とのずれや面倒れの影響もあり、主走査方向の全走査域でレーザ光の集光位置や走査位置を高精度化は困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、画像形成位置を正確に補正することができる光走査装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(3)の構成を備えるものである。
【0011】
(1)光ビームで感光体を走査する光走査装置において、光ビームを射出する光源と、前記光源と前記感光体との間に配置され、電圧印加により、入射された前記光ビームを偏向させて射出する電気光学偏向手段と、前記電気光学偏向手段の対向した面に配置された第一の電極と、前記電気光学偏向手段の前記対向した面とは異なる対向した面に配置された第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極の各々に印加する電圧を制御する制御手段と、前記電気光学偏向手段で偏向された光ビームで前記感光体を走査する際の基準信号を出力する基準信号生成手段とを備え、前記制御手段は、前記基準信号生成手段により出力された基準信号に基づいて前記第一の電極に印加する電圧と前記第二の電極に印加する電圧の各々を制御することで前記感光体における光ビームの走査位置を制御することを特徴とする光走査装置。
【0012】
(2)前記感光体の面上を走査される像高に相当するカウント値を生成するカウンタと、前記カウンタの出力により記憶データが各々読み出される第一および第二の記憶手段を更に有し、前記感光体の面上の所定の主走査方向の位置からの副走査方向のずれ量に対する補正値が前記第二の記憶手段に記憶されており、前記制御手段は、前記第一の記憶手段の出力により前記第一の電極に印加する電圧を制御し、更に前記第二の記憶手段の出力により前記第二の電極に印加する電圧を制御することを特徴とする前記(1)記載の光走査装置。
【0013】
(3)複数の前記(1)又は(2)記載の光走査装置と、前記複数の光走査装置により光ビームがそれぞれ走査される複数の感光体と、前記複数の感光体の面上にそれぞれ生成された画像を重ね合わせ担持する中間転写体と、前記中間転写体に転写される前記複数の感光体の面上の複数の画像のずれ量を検出するセンサを有し、前記センサの出力により、前記複数の光走査装置の制御手段が前記複数の光走査装置の第二の電極に印加する電圧を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、電気光学素子を走査手段とした光学系を採用することによりポリゴンミラーの面倒れによるピッチムラを無くし、かつ画像形成位置を正確に補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施例としての走査光学装置の上視図、および図2は、本発明の第1の実施例を示す走査光学装置の側面からの断面図である。
【0017】
<走査光学装置の構成例>
走査光学装置90は、概略的には、レーザ光源としての半導体レーザ91、コリメートレンズ92、光学絞り93、偏向装置としての電気光学素子80、f−θレンズとしての走査レンズ96とを順に配設し、感光体98上を走査するように構成されている。また、走査光学装置90は、電気光学素子80に電気的に接続され、電気光学素子80に印加する電圧を制御する駆動電源部87(第一の電圧印加手段)と駆動電源部88(第二の電圧印加手段)とを備える電圧制御部89を備える。ここで主走査方向を感光体98の軸方向(図中の矢印Bの方向)、副走査方向を感光体98の回転方向(図中の矢印Aの方向)とする。電気光学素子80は、電気光学偏向手段として機能する。
【0018】
電気光学素子80には主走査方向に対向して設けられた電極80c、80dの電極対(第一の電極対)と副走査方向に対向して設けられた電極80e、80fの電極対(第二の電極対)がそれぞれ設置されている。主走査方向に対向して設けられた電極80c、80dには駆動電源部87(第一の電圧印加手段)の出力が接続されており、副走査方向に対向して設けられた電極80e、80fには駆動電源部88(第二の電圧印加手段)の出力が接続されている。上記構成において、電気光学素子80の入射面80aに入射される光束は、電極80c、80d、80e、80fに印加される電圧を制御することで、出射面80bより出射される際に偏向制御された光束となる。
【0019】
次に光路を追って説明する。半導体レーザ91から出射した発散光束の光ビームは、コリメートレンズ92により略平行光束に変換され、光学絞り93によって整形される。光学絞り93によって整形された光束は電気光学素子80の入射面80aに入射され、さらに出射面80bより出射される。この際、電極80c、80dに印加する電圧を交流制御して感光体98の主走査方向に繰り返し偏向走査する走査光とさせる。
【0020】
偏向走査された光束はf−θレンズとしての走査レンズ96により被走査面としての感光体98上に結像され、さらに感光体98上を矢印B方向(主走査方向)に光走査して画像情報の記録を行っている。
【0021】
次に、副走査方向には光学絞り93によって整形された光束は電気光学素子80の入射面80aに垂直でなくある角度を有して入射される。電気光学素子80は空気中より大きな屈折率を有しているため、実線のように入射面で屈折し、さらに出射面80bも垂直でなくある角度を有して出射されるためさらに出射面でも屈折し出射される。その後走査レンズ96を介して感光体98の面上に結像される。
【0022】
このとき電気光学素子80には副走査方向に対向する電極80e、80fが設置されており、電極80e、80fに印加される電圧により電気光学素子80の屈折率が変化する。このため光束は電極80e、80fに印加される電圧により図2の点線で示したような屈折率変化に合わせた屈折を行い感光体98の面上の副走査方向の異なるポイントに結像される。
【0023】
BDセンサ60は、感光体98の主走査方向の書き込み基準信号となる水平同期(BD)信号を検出する。
【0024】
電圧制御部89は、BDセンサ60から出力されるBD信号に同期して、感光体98上での光ビームの走査位置(1ライン走査像高毎)に応じたビームの走査位置データに基づいて駆動電源部87と駆動電源部88を制御する。すなわちBDセンサ60は、基準信号生成手段として機能する。
【0025】
このビームの走査位置データは、初期組立時の1ライン走査像高毎のビームウエスト位置を電圧制御部89が備えるメモリ(後述)に、補正データとして入力される。この入力は、バーコードを読み取ってデータ入力するバーコードリーダ、或いはユーザにより操作されて各種データを入力する操作部、或いは初期組立時の1ライン走査像高毎のビームの走査位置を記憶しているEEPROM等を装着することにより行われる。
【0026】
レーザ駆動制御部62は、感光体98上で潜像を形成する画像区間で画像信号生成部63から入力された画像信号に基づいて、半導体レーザ91の駆動(発光)信号の電流値及び駆動時間を制御する。
【0027】
尚、像高とは、感光体上での位置であり、感光体中央を像高0とし、0を境に端部へ向かう位置をプラスとマイナスで表現したものである。
【0028】
<電気光学素子80の構成例>
図3は、図1における電気光学素子80の構成を概略的に示す斜視図である。
【0029】
図3に示すように、電気光学素子80は、光束の入射面80aおよび出射面80bを有する立体形状の電気光学結晶41(以下、「EO結晶」という)を備える。また、主走査方向の両端面に対向して取り付けられた一対の電極80c、80dを備え、駆動電源部87により一対の電極80c、80d間に電圧が印加されている。また、副走査方向の両端面に対向して取り付けられた一対の電極80e、80fを備え、駆動電源部88により一対の電極80e、80f間に電圧が印加されている。
【0030】
電極80c、80d、80e、80fは比較的細い電極幅d、長さLにて直線短冊形状に形成されたものである。電極80c、80d、80e、80fの材料は例えばAuが使用されるが、他の導電性材料であってもよい。製法は真空蒸着法による。
【0031】
一対の電極80c、80dは、電気光学結晶41の内部に、電気光学結晶41内を通過する光束の進路に対して垂直方向(主走査方向、図1の矢印Bの方向)の電界を形成する。一対の電極80c、80dに電圧を印加しない状態ではEO結晶41はレンズ作用を持たず、入射ビームはそのまま感光体98へ向けて出射される。
【0032】
一対の電極80e、80fは、EO結晶41の内部に、EO結晶41内を通過する光束の進路に対して垂直方向(副走査方向)の電界を形成する。一対の電極80e、80fに電圧を印加しない状態ではEO結晶41はレンズ作用を持たず、入射ビームはそのまま感光体98へ向けて出射される。
【0033】
一対の電極に最大2〜5kVの電圧を印加して電気光学結晶41内に電界を発生させることにより電界分布が生じ、ms〜ns単位の時間内に光束を副走査方向に数度、例えば3度偏向する。電気光学結晶41は、この高速かつ広角な電気光学効果により、光ビームを偏向させる。
【0034】
ここで、電気光学結晶とは、電圧を印加することにより屈折率が変化する特性を有する結晶である。電気光学結晶41は、カリウム、タンタル、ニオブおよび酸素から成る、例えば、KTN(KTaNbO:タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1−xNb)結晶等の電気光学結晶で形成されている。KTN結晶は、通常の光学ガラスと同様に扱うことが可能であり、良好な加工性を有して切削や研磨加工での表面精度の確保が容易である。また、KTN結晶の光線の透過率については、レーザの波長である赤外から可視光全域に至るまで1mあたり95%以上の内部透過率を示し、複屈折も小さい。さらに、KTN結晶の吸水率は、通常のガラス以下であって、樹脂などに対して極端に小さい。
【0035】
また、KTN結晶は、内部に電界を作用させることで内部の屈折率が変化することが知られている。KTN結晶の両端に電極を設置(一方に電圧=V、他方に電圧=0)して内部に電界を発生させた場合には、内部に電界が傾斜して分布することにより屈折率もその影響で傾斜して分布することになり、光が方向を変えながら進むことが判っている。KTN結晶は、高速かつ広角走査が可能という特徴がある。
【0036】
電気光学結晶41は、その両端部に印加する電圧の増大に応じて、EO結晶41内を通過する光束の進路がその電界方向に大きく偏向される。
【0037】
本発明では、この現象を利用してレーザビームを透過させる際に進路を変化させるものである。
【0038】
図4は本発明の電圧制御部のブロック図である。
【0039】
同図において70はカウンタであり、1走査の開始タイミング、つまりBDセンサ60の検知でカウントを開始し、1走査の終了でリセットする。カウンタ70の出力はメモリ71(第一の記憶手段)、メモリ72(第二の記憶手段)に入力され、カウント値に応じたデジタル値(記憶データ)が出力される。メモリ71、メモリ72の出力はD/Aコンバータ83,84に入力されデジタル値はアナログ電圧に変化され出力される。D/Aコンバータ83,84の出力はローパスフィルタ85、86に入力されスムージングされたアナログ値として出力される。ローパスフィルタ85、86の出力は駆動電源部であるパワーアンプ81、82に入力され電圧増幅された出力電圧となる。パワーアンプ81、82の出力は電気光学素子80のそれぞれの電極に入力される。同図において、1走査の開始タイミングでカウンタ70がカウントを開始する。その出力によりメモリ71、72に記憶された電圧値が出力される。メモリ71の出力は主走査方向の走査位置に相当するデジタル値が格納されており、そのデジタル値の相当する電圧を電気光学素子80の電極80c、80dに印加することにより所望の像高を露光することが可能となる。カウンタ70が順次カウントすることによりメモリ71の出力も順次読み出され、同様に所望の像高を露光する。このときローパスフィルタ85の動作によりアナログ電圧はスムージングされているため、露光される像高位置は離散的な位置ではなく連続的に露光されることとなる。これにより主走査方向への連続的な走査が可能となる。
【0040】
平行してカウンタ70の出力はメモリ72にも入力されている。メモリ72にはカウント値に応じた各像高位置での感光体上の理想位置に対する副走査方向の像面湾曲を補正するための補正値が記憶されている。これにより各像高での副走査方向の像面湾曲はカウント値に応じて補正され露光される。また、副走査方向の像面湾曲もミラーの曲がり、レンズの精度等によるものであるため、連続的に変化するため、ローパスフィルタ86の動作によりアナログ電圧はスムージングされているため、段差等の画像劣化を伴うことを防ぐこととなる。
【0041】
上記したように、本実施例の画像形成装置は、回転多面鏡を使用せずに、電気光学素子を用いて主走査方向に走査しながら、各像高のおける所望の副走査方向の位置を制御することが可能となる。これにより回転多面鏡の面倒れの影響がなく、各像高における像面湾曲による画像劣化を防ぐことが可能となる。その結果、画像形成位置を正確に補正することができる走査光学装置を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0042】
本実施例は、上記実施例1の走査光学装置を4色(マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラック)の色毎に備えた画像形成装置に関するものである。図5にその主要な構成を示す断面図を示し、同図を用いてこの画像形成装置の説明を行う。
【0043】
同図のカラー画像形成装置は、2つのカセット給紙部1、2と、1つの手差し給紙部3を有しており、各給紙部1、2、3から選択的に転写紙Sが給紙される。転写紙Sは、各給紙部1、2、3のカセット4、5またはトレイ6上に積載されており、ピックアップローラ7によって最上位のものから順に繰り出される。そして、ピックアップローラ7によって繰り出された転写紙Sは搬送手段としてのフィードローラ8Aと分離手段としてのリタードローラ8Bからなる分離ローラ対8によって最上位の転写紙のみ分離され、回転停止しているレジストローラ対12へ送られる。
【0044】
この場合、レジストローラ対12までの距離が長いカセット4、5から給送された転写紙Sは複数の搬送ローラ対9、10、11に中継されてレジストローラ対12へ送られる。
【0045】
レジストローラ対12へ送られた転写紙Sは、転写紙先端がレジストローラ対12のニップに突き当たって所定のループを形成すると、一旦移動が停止される。このループの形成により転写紙Sの斜行状態が矯正される。
【0046】
レジストローラ対12の下流には中間転写体である長尺の中間転写ベルト(無端ベルト)13が、駆動ローラ13a、二次転写対向ローラ13b、およびテンションローラ13cに張設され、断面視にて略三角形状に設定されている。この中間転写ベルト13は図中時計回りに回転する。中間転写ベルト13の水平部上面には、異なる色のカラートナー像を形成、担持する複数の感光体ドラム14、15、16、17が中間転写ベルト13の回転方向に沿って順次配置されている。
【0047】
なお、中間転写ベルト回転方向において最上流の感光体ドラム14はマゼンタ色のトナー像を担持し、感光体ドラム15、16、17はシアン色、イエロー色、ブラック色のトナー像をそれぞれ担持する。
【0048】
まず、最上流の感光体ドラム14上にマゼンタ成分の画像に基づくレーザ光LMの露光が開始され、感光体ドラム14上に静電潜像を形成する。この静電潜像は現像器23から供給されるマゼンタ色のトナーによって可視化される。このレーザ光LMは、実施例1の走査光学装置により、発光及び偏光等がなされるものとする。図において、91M、80M、96Mは、それぞれマゼンタ用の半導体レーザ、電気光学素子及び走査レンズを示す。なお、以下のシアン、イエロー、ブラックの走査光学装置においても同様の構成を有しているものとする。
【0049】
次に、感光体ドラム15上にシアン成分の画像に基づくレーザ光LCの露光が開始され、感光体ドラム15上に静電潜像を形成する。この静電潜像は現像器24から供給されるシアン色のトナーによって可視化される。
【0050】
次に、感光体ドラム15上にレーザ光LCの露光開始から所定時間経過後、感光体ドラム16上にイエロー成分の画像に基づくレーザ光LYの露光が開始され、感光体ドラム16上に静電潜像を形成する。この静電潜像は現像器25から供給されるイエロー色のトナーによって可視化される。
【0051】
次に、感光体ドラム16上へのレーザ光LYの露光開始から所定時間経過後、感光体ドラム17上にブラック成分の画像に基づくレーザ光LBの露光が開始され、感光体ドラム17上に静電潜像を形成する。この静電潜像は現像器26から供給されるブラック色のトナーによって可視化される。
【0052】
なお、各感光体ドラム14〜17の周りには、各感光体ドラムを均一に帯電させるための一次帯電器27〜30や、トナー像転写後の感光体ドラム上に付着しているトナーを除去するためのクリーナ31〜34などが設置されている。
【0053】
中間転写ベルト13が時計回りに回転する過程で、感光体ドラム14〜17とそれらに対応する転写帯電器900〜903との間の転写部を順次通過することにより、中間転写ベルト13上に各色のトナー像が重ねて転写される。
【0054】
一方、レジストローラ対12へ送られ斜行矯正された転写紙Sは、中間転写ベルト13上のトナー像と紙先端との位置を合わせるタイミングで回転を開始するレジストローラ対12により、2次転写部T2に送られ転写される。
【0055】
2次転写部T2を通過した転写紙Sは中間転写ベルト13によって画像定着手段である定着装置35へ送られる。そして、転写紙Sが定着装置35内の定着ローラ35Aと加圧ローラ35Bとによって形成されるニップ部を通過する過程で、定着ローラ35Aにより加熱され、加圧ローラ35Bにより加圧されて転写トナー像がシート面に定着される。
【0056】
定着装置35を通過した定着処理済み転写紙Sは搬送ローラ対36によって排出ローラ対37へ送られ、さらに機外の排出トレイ38上へ排出される。
【0057】
本実施例を用いた各色の整合を図る方法を以下に説明する。
【0058】
先ず各色の書き出し位置のずれ量を検出する必要がある。これは前述のように環境変化、経時変化により変動するため、検知のためのシーケンスが必要となる。
【0059】
このとき各色の整合量を検出する方法として特開2004−29525号公報で示されているような方法が考えられる。同方式によると転写ベルト上に各色の整合量検知用のトナー像を形成し、センサにて読み取る整合検知シーケンスを装置に搭載することにより、環境変動、経時変化による各色の書き出し位置の整合量の変化を検出することが可能になる。
【0060】
このようにして検出した整合量より書き出し位置の補正値を各色ごとに算出し、第一の実施例で示したメモリ72内にそれぞれの色の補正値として加えることにより各色の整合性の低下を防ぐことが可能になる。
【0061】
走査光学装置を4色(マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラック)の色毎に備えた画像形成装置においては、第一の実施例で示してきた湾曲などの影響が複合して画像に対し影響を及ぼす。この際、計測した補正データ又は検知シーケンスにより算出した補正データを再度演算して総合的な補正データを生成してメモリに格納し、順次読み出して補正動作を行うことで、1つの補正機構で複数の要因による複合的な画像劣化を防ぐことが可能となる。すなわち、カラーの画像形成装置において、各色の画像の書き出し位置が重なるように印加電圧を制御することにより色ずれを補正することが可能となる。これにより電気光学素子を走査手段とした光学系を採用することによりポリゴンミラーの面倒れによるピッチムラを無くし、かつ画像形成位置を正確に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第一の実施例の走査光学装置の主走査断面図
【図2】本発明の第一の実施例の走査光学装置の副走査断面図
【図3】本発明の第一の実施例の電気光学素子の構成を示す図
【図4】本発明の第一の実施例の電圧制御部のブック図
【図5】本発明の第二の実施例の画像形成装置の構成を示す図
【図6】従来の走査光学装置を示した図
【図7】従来の走査光学装置の面倒れを説明するための図
【符号の説明】
【0063】
13 中間転写ベルト(中間転写体に対応)
60 BDセンサ(基準信号生成手段に対応)
62 レーザ駆動制御部
63 画像信号生成部
70 カウンタ
71 メモリ(第一の記憶手段に対応)
72 メモリ(第二の記憶手段に対応)
80 電気光学素子(電気光学偏向手段に対応)
80a 入射面
80b 出射面
80c、80d 電極(第一の電極に対応)
80e、80f 電極(第二の電極に対応)
81、82 パワーアンプ
83、84 D/Aコンバータ
85、86 ローパスフィルタ
87 駆動電源部
88 駆動電源部
89 電圧制御部(制御手段に対応)
90 走査光学装置
91 半導体レーザ(光源に対応)
92 コリメーターレンズ
93 光学絞り
94 シンドリカルレンズ
95 光偏向器
95a 偏向面
96 走査レンズ
97 折返しミラー
98 感光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームで感光体を走査する光走査装置において、
光ビームを射出する光源と、
前記光源と前記感光体との間に配置され、電圧印加により、入射された前記光ビームを偏向させて射出する電気光学偏向手段と、
前記電気光学偏向手段の対向した面に配置された第一の電極と、
前記電気光学偏向手段の前記対向した面とは異なる対向した面に配置された第二の電極と、
前記第一の電極と前記第二の電極の各々に印加する電圧を制御する制御手段と、
前記電気光学偏向手段で偏向された光ビームで前記感光体を走査する際の基準信号を出力する基準信号生成手段と、を備え、
前記制御手段は、前記基準信号生成手段により出力された基準信号に基づいて前記第一の電極に印加する電圧と前記第二の電極に印加する電圧の各々を制御することで前記感光体における光ビームの走査位置を制御することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記感光体の面上を走査される像高に相当するカウント値を生成するカウンタと、前記カウンタの出力により記憶データが各々読み出される第一および第二の記憶手段を更に有し、
前記感光体の面上の所定の主走査方向の位置からの副走査方向のずれ量に対する補正値が前記第二の記憶手段に記憶されており、
前記制御手段は、前記第一の記憶手段の出力により前記第一の電極に印加する電圧を制御し、更に前記第二の記憶手段の出力により前記第二の電極に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
複数の請求項1又は2記載の光走査装置と、前記複数の光走査装置により光ビームがそれぞれ走査される複数の感光体と、
前記複数の感光体の面上にそれぞれ生成された画像を重ね合わせ担持する中間転写体と、
前記中間転写体に転写される前記複数の感光体の面上の複数の画像のずれ量を検出するセンサを有し、
前記センサの出力により、前記複数の光走査装置の制御手段が前記複数の光走査装置の第二の電極に印加する電圧を制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300833(P2009−300833A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156466(P2008−156466)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】