光走査装置及びレーザレーダ装置
【課題】精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価な光走査装置、及びレーザレーダ装置を提供する。
【解決手段】 光学素子1と、ホルダ2と、ホルダ2を移動可能に支持する支持手段3,5と、ホルダ2を光学素子1の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段4,6と、光学素子1を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子10、及び光学素子1を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子11からなる発光素子を備え、
ホルダ2に、第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターン9が形成され、
第2の発光波長を感知するセンサ12をさらに備え、
センサ12は、反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ第1発光素子10と、第2発光素子11と、センサ12とが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置、及びレーザレーダ装置。
【解決手段】 光学素子1と、ホルダ2と、ホルダ2を移動可能に支持する支持手段3,5と、ホルダ2を光学素子1の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段4,6と、光学素子1を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子10、及び光学素子1を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子11からなる発光素子を備え、
ホルダ2に、第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターン9が形成され、
第2の発光波長を感知するセンサ12をさらに備え、
センサ12は、反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ第1発光素子10と、第2発光素子11と、センサ12とが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置、及びレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を移動させることによりレーザ光をスキャンする光走査装置、及び該光走査装置を備えるレーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行中の車両の前方を監視して障害物の存在を運転者に警告する光線スキャン方式の車載レーダ装置が実用化されている。
レーダ装置は光走査装置を備え、例えば、光走査装置によりレーザ光等の光ビームを車両の周囲の所定の角度範囲の領域に走査して出射すると共に、出射した光ビームの反射波を受光し、光ビームの出射方向に存在する物体の位置や距離等を測距する。このようにレーダ装置により検知された先行車両や障害物の情報が運転者に告知され、さらに先行車両との車間距離を所定の距離に保つように自動的に車両の速度を制御するシステムが開発されている。
【0003】
光ビームを走査して物体を検出する装置としては、例えば、任意の位置に光ビームを走査させるため、アクチュエータが光学素子(レンズ)を駆動する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の装置の模式図を図16に示す。図16において、走査用レンズ222を備えたレンズホルダ234を支持するばね233が撓むことにより、レンズホルダ234及び走査用レンズ222は移動する。図外のレーザダイオードより走査用レンズに光が入射し照射される。走査用レンズを移動することにより、照射される光を走査することができる。照射される光の走査量は走査用レンズの移動量によって決まることは明らかであり、正確な走査量の制御のためには、精度の高い走査用レンズの移動量の検知が重要になる。
【0004】
走査用レンズの精度の高い制御を実現するための駆動系を備えた装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の装置の模式図を図17に示す。図17において、発光ダイオード(LED)76a,76bは、開口に発光部分が露出する状態で基板70のレンズホルダ側に固定され、照射された光はホルダ85側に射出される。ホルダ85には、発光ダイオード76a、76bに対応する位置にスリット87a、87bが設けられ、発光ダイオードからの光は、スリットを通り、レンズ156,155を経て、光の重心位置により出力電流が変化するポジションセンサ153a,153bに入射する。ポジションセンサ153a、153bは基板56に半田付けされ、図示しない制御基板に接続されている。
ポジションセンサ153aは、1方向の位置を検出する1次元のセンサであり、X軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がX軸方向となるように取り付けられている。これによりポジションセンサ153aの出力値より走査用レンズ22のX軸方向の位置を検出することができる。同様に、ポジションセンサ153bは、Y軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がY軸方向となるように取り付けられている。スリット87bからの光は、レンズホルダ部組60がエレベーション方向に移動するとY軸方向に移動し、ポジションセンサ153bで位置が検出される。ここで、レンズ156,155,158,157は、レンズホルダ部組60の移動量に対してポジションセンサ上の移動量を縮小する役割を有し、これによりポジションセンサを小型化している。
【0005】
このような小型化を実現するためのレイアウト性を高めたレーザレーダ装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3の装置の模式図を図3に示す。図3において、走査用レンズ307と受光用レンズ309を取り付けたレンズホルダ305は、変位用バネ302,304で支持されており、駆動用コイル311,314とマグネット313,316の間の磁力で変位する。走査光用のレーザダイオード306からの出射光は、走査用レンズ307により偏向され、対象物により反射した光は受光用レンズ309により偏向され、受光フォトダイオード308に入射する。この出射光と入射光より、対象物の方向や距離を算出する
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の装置のように、光走査装置において光走査量を正確に検出するためには、レンズホルダ部に設置したスリットや、発光ダイオード、ポジショニングセンサなどの取り付けが必要となる。
また、発光ダイオードの光が走査光に混入しないように、また走査光がポジショニングセンサに入らないように、発光ダイオード、スリット、レンズ、及びポジショニングセンサを走査光学系から遮蔽するための構造が必要となる。このような構造を備えることにより、装置が大型化し、また高価になるという問題が生じる。同様に、そのような光走査装置を備えたレーザレーダ装置も、大型化し、高価なものになるという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価な光走査装置、及び該光走査装置を備えたレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光走査装置は、
光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、
前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する光走査装置であって、
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、
前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、
前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置である。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザレーダ装置は、
本発明の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子からの第1の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記第1発光素子が、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、前記第1の発光波長を感知するセンサが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、
前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知することを特徴とするレーザレーダ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光走査装置によれば、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価な光走査装置を提供することができる。
また、本発明のレーザレーダ装置によれば、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価なレーザレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光走査装置の第1の実施形態の例を示す正面図である。
【図2】図1に示した面の反対面を示す図である。
【図3】本発明の光走査装置の第1の実施形態の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の光走査装置の第1の実施形態における第1発光素子からの光の走査を説明する図である。
【図5】第1発光素子と、第2発光素子と、センサとの位置関係の例を示す断面の模式図である。
【図6】第2発光素子と、センサとの位置関係を説明する断面の模式図である。
【図7】第1発光素子と、第2発光素子と、センサとの位置関係の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の光走査装置の第2の実施形態の例を示す正面図である。
【図9】図8に示した面の反対面を示す図である。
【図10】本発明の光走査装置の第2の実施形態の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の光走査装置の第3の実施形態の例を示す正面図である。
【図12】本発明の光走査装置の第4の実施形態の例を示す正面図である。
【図13】図12に示した面の反対面を示す図である。
【図14】光走査装置の第4の実施形態の例を示す斜視図である。
【図15】レーザレーダ装置における発光素子とセンサとの位置関係の例を示す模式図である。
【図16】従来例(特許文献1の装置)を示す模式図である。
【図17】従来例(特許文献2の装置)を示す模式図である。
【図18】従来例(特許文献3の装置)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る光走査装置及びレーザレーダ装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明の光走査装置は、光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する。
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されている。
なお、前記構造体は、光学素子とホルダが一体成型された態様等においては、光学素子の出射面ではない面に構造体が形成されていることと同義である。
【0014】
〔第1の実施形態〕
本発明の光走査装置の第1の実施形態を図1〜7により説明する。
図1は、本実施形態の光走査装置の正面図である。
図1に示すように、光学素子1、光学素子1を保持するホルダ2を備え、ホルダ2を外枠8及び内枠7との間で光学素子1の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段3,5としてのバネ、ホルダ2を光学素子1の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段4,6としての櫛歯型の静電アクチュエータを備える。
光学素子1としては、例えば、凸レンズ、凸型のフレネル形状レンズ等が挙げられる。本実施形態においては、片凸レンズの例として説明する。
ホルダ2は、駆動手段4により図中のX方向へ移動することができ、駆動手段6により図中のY方向に移動することができる。静電アクチュエータである駆動手段4,6に電圧を印加することにより、ホルダ2に保持された光学素子1をX方向及びY方向へ自在に遥動させることができる。
【0015】
図2は、図1に示した面と反対側の面(裏面)の正面図である。
図2に示すように、ホルダ2の光学素子1の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターン9が形成されている。
前記構造体の配置は適宜選択することができ、例えば、ホルダ2のパターン9が形成された領域の単位面積当たりの前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように前記構造体を配置することができる。具体的には、図2に示すように、ホルダ2の中心部から外周部へ向けて、前記構造体の底面積を小さくし、外周部に近い領域が中心部よりも単位面積当たりの構造体の底面積の和が小さくなるように配置することができる。
【0016】
本発明の光走査装置において、ホルダ2の少なくとも前記構造体が形成された領域の材質はシリコンであることが好ましい。また、第1の発光波長が1.1μm以上であり、第2の発光波長が1.1μm以下であることが好ましい。これにより、第1の発光波長の光は光学素子1を透過して移動する光学素子1により走査され、第2の発光波長の光源は光学素子1及びホルダ2で反射され、前記構造体との反射率の差による反射光の情報をセンサ12で受信することが容易になる。
本実施形態において、光学素子1及びホルダ2の材質はシリコンであり、前記構造体の材質は酸化シリコンである。
第1発光素子からの第1の発光波長は1.5μm、第2発光素子からの第2の発光波長は0.9μmである。
前記構造体の厚さtは、その屈折率をn、第2の発光波長をλ、第2発光素子の光源とパターン9を形成しているホルダ2との角度をθとしたとき、2ntcosθ=λ/2を満たす厚さとしている。
第1発光素子の光源としては、コリメートされたLD光源を用いている。
【0017】
図3は、図1及び2に示した光走査装置の俯瞰図であり、図4(A)及び(B)は、第1発光素子からの第1の発光波長の光の走査関係を示した模式図である。
図4(A)に示すように、第1発光素子10のLD光源からの出射光20aが、光学素子1の中心付近に入射する場合、透過光20bは、そのまま直進する。一方、図4(B)に示すように、ホルダ2とともに光学素子1が移動し、LDからの出射光20aが光学素子1の中心から外れた外周付近に入射する場合には、透過光20bは偏向される。このように、ホルダ2とともに光学素子1を移動させることにより、光の走査を行うことができる。
【0018】
図5は、第1発光素子10と、第2発光素子11と、センサ12との位置関係の例を示す断面の模式図である。図8はその斜視図である。
本実施形態において、第2の発光波長の波長領域に感度を持ち、第2発光素子11からの第2の発光波長を感知するセンサ12として、第2の発光波長の光強度を検出するPD(フォトダイオード)を用いている。このPDは、特定の領域の光量だけを測定できるようにした光学系を搭載している。
【0019】
図7は、第2発光素子11とセンサ12(PD)との位置関係を示す図である。
第2発光素子11の光源としては、広い範囲を照明できるようにしたLED光源を用いている。LEDからの出射光19aは、ホルダ2の複数の構造体からなるパターン9が形成された領域付近を照明する。
センサ12は、第2発光素子11から出射して光学素子1及びホルダ2で反射された光19bを受光可能な位置に固定して配置され、パターン9が形成された領域付近の限定された領域からの反射光19bの光量を測定する。そのため、光学素子1及びホルダ2が移動すると、センサ12の測定対象となる領域が変化し、反射する対象の構造体が変化する。前述のように、前記構造体は、前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように配置されているため、照射する位置により反射光19bの強度も変化する。このため、センサ12により反射光量の変化を測定することで、ホルダ2の位置の変化を検出することができる。
【0020】
ホルダ2の位置を検出することにより、ホルダ2に保持された光学素子1の位置を推定することができるので、走査量読取装置を備えることにより、光学素子1を透過して照射される第1の発光波長の光の走査量を算出することができる。
すなわち、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12で受光した信号により、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0021】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、駆動手段4,6の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することができる。すなわち、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段であるアクチュエータに印加する電圧を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0022】
上述のように、本実施形態によれば、光学素子1を移動させることにより第1発光素子からの透過光を走査して照射する際に、照射光の走査量を容易に検出でき、また容易に制御することができる。
【0023】
〔第2の実施形態〕
本発明の光走査装置の第2の実施形態を図8〜10により説明する。
図8は、本実施形態の光走査装置の正面図であり、図10はその斜視図である。
図8に示すように、光学素子1として片凸レンズ、光学素子1を保持するホルダ2を備えている。また、ホルダ2がX方向及びY方向に揺動できるように、外枠8との間を移動可能に支持する支持手段3,5としてのバネを備えている。
また、ホルダ2には、永久磁石13が取り付けられており、外枠8の外部には電磁石14,15が取り付けられている。電磁石に電流を流すことにより、レンズ1が保持されたホルダ2をX、Y方向に自在に遥動させることができる。
【0024】
図9は、図8に示した面と反対側の面(裏面)の正面図である。
図9に示すように、ホルダ2の光学素子1が形成されている面と反対の面には、複数の構造体からなるパターン16が形成されている。
パターン16は、ホルダ2の位置によって異なる形状の前記構造体が配置されている。
第2の発光波長を感知するセンサ12として、形状の情報を取得できるCCDなどの撮像素子を用いることにより、パターン16を読み取ることにより、移動したホルダ2の位置を検出することができる。
【0025】
検出されたホルダ2の移動量に基づき、上述の実施形態1と同様に、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0026】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段である電磁石に流す電流量を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0027】
上述のように本実施形態によれば、センサ12で前記構造体の形状を読み取ることにより容易に照射光の走査量を容易に検出することができ、また容易に照射光の走査量を制御することができる。
【0028】
〔第3の実施形態〕
本発明の光走査装置の第3の実施形態を図11により説明する。
図11は、本実施形態の光走査装置の光学素子1の出射面の反対の面の正面図である。
本実施形態は、駆動手段4,6として、第1の実施形態と同様の静電櫛歯型のアクチュエータを使用した光走査装置である。
本実施形態において、ホルダ2に形成されたパターンは、ホルダ2の移動方向に、同じ形状の構造体が繰り返し配置されている。すなわち、図に示す内枠7のX方向に沿って、等間隔に同一形状の構造体17が整列して配置されている。また、外枠8のY方向に沿って、同じく等間隔に同一形状の構造体18が整列して配置されている。
【0029】
第2の発光波長を感知するセンサ12としては、実施形態1で用いたセンサよりも狭い範囲の光量を測定可能に調整されたPDを、X方向の構造体17及びY方向の構造体18を各々測定できるように複数搭載する。これにより、静電櫛歯アクチュエータ4,6に電圧を印加してレンズをX方向及びY方向に遥動させたとき、ホルダ2の移動に伴って、センサ12には構造体17,18の繰り返しによる明暗が測定されるため、移動したホルダ2の位置を検出することができる。
【0030】
検出されたホルダ2の移動量に基づき、上述の実施形態1と同様に、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0031】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、駆動手段4,6の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することができる。すなわち、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段であるアクチュエータに印加する電圧を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0032】
上述のように本実施形態によれば、センサ12の光量が構造体17,18の繰り返しのピッチで強弱を繰り返す変化をするので、強弱をカウントすることにより、ホルダ2の移動量が容易に計測でき、実施形態1と同様に、照射光の走査量を容易に検出でき、また容易に制御することができる。
【0033】
〔第4の実施形態:レーザレーダ装置〕
本発明の光走査装置の第4の実施形態として、レーザレーダ装置に用いられる態様を図12〜15により説明する。
本発明のレーザレーダ装置は、本発明の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子10aからの第1の発光波長を感知するセンサ10bをさらに備え、第1発光素子10aが、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、第1の発光波長を感知するセンサ10bが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知する。
【0034】
また、本発明のレーザレーダ装置は、光学素子1を複数備え、前記探査送信手段を構成する第1光学素子1a、及び探査受信手段を構成する第2光学素子1bがホルダ2に保持されてなり、前記構造体からなるパターン9が、ホルダ2の第1光学素子1aが保持された領域の出射面の反対側の面に形成されている。
【0035】
本実施形態の光走査装置において、駆動手段は、第1の実施形態と同様に静電櫛歯型のアクチュエータを使用している。
第1の発光波長の光源である第1発光素子10aは、レーザレーダ装置の投光用の光源として用いる。さらにレーザレーダ装置の受光用のセンサ10bとしては、第1の発光波長の波長領域に感度を持ち、第1の発光波長を感知するセンサであるAPD(アバランシェフォトダイオード)等が用いられる。
【0036】
前記探査送信手段として、第1の発光波長の投光用の光源の集光と偏向のための第1光学素子1a、及び探査受信手段として、第1発光波長の光のセンサ10bの受光のための第2光学素子1bがホルダ2に保持されている。
【0037】
図15に、第1の発光波長の光源10a、第2の発光波長の光源11、第1の発光波長の光を感知するセンサ10b、第2の発光波長の光を感知するセンサ12の構成を示している。実施形態1と同様に、センサ12としてPDが、第2発光素子11から出射して反射された光を受光可能な位置に固定して配置されている。
ホルダ2の第1光学素子1aが保持された領域の出射面の反対側の面に形成された構造体からなるパターン9が第2の発光波長の光源11で照射され、レーザレーダを走査するためレンズ1a及び1bが搭載されたホルダ2が遥動すると、その反射光の変化をセンサ12で受光することにより、レーザレーダの走査量を検出することができる。
【0038】
上述のように、本実施形態によれば、簡易で小型かつ安価な構造の光走査装置で光の走査ができ、簡易な構成で探査波送信用の送信用光学素子と探査波受信用の受信用光学素子を同時に走査できるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1 光学素子
2 ホルダ
3,5 支持手段
4,6 駆動手段
7 内枠
8 外枠
9 パターン
10 第1発光素子
11 第2発光素子
12 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002−162469号公報
【特許文献2】特開2008−281871号公報
【特許文献3】特開2003−177348号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を移動させることによりレーザ光をスキャンする光走査装置、及び該光走査装置を備えるレーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行中の車両の前方を監視して障害物の存在を運転者に警告する光線スキャン方式の車載レーダ装置が実用化されている。
レーダ装置は光走査装置を備え、例えば、光走査装置によりレーザ光等の光ビームを車両の周囲の所定の角度範囲の領域に走査して出射すると共に、出射した光ビームの反射波を受光し、光ビームの出射方向に存在する物体の位置や距離等を測距する。このようにレーダ装置により検知された先行車両や障害物の情報が運転者に告知され、さらに先行車両との車間距離を所定の距離に保つように自動的に車両の速度を制御するシステムが開発されている。
【0003】
光ビームを走査して物体を検出する装置としては、例えば、任意の位置に光ビームを走査させるため、アクチュエータが光学素子(レンズ)を駆動する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の装置の模式図を図16に示す。図16において、走査用レンズ222を備えたレンズホルダ234を支持するばね233が撓むことにより、レンズホルダ234及び走査用レンズ222は移動する。図外のレーザダイオードより走査用レンズに光が入射し照射される。走査用レンズを移動することにより、照射される光を走査することができる。照射される光の走査量は走査用レンズの移動量によって決まることは明らかであり、正確な走査量の制御のためには、精度の高い走査用レンズの移動量の検知が重要になる。
【0004】
走査用レンズの精度の高い制御を実現するための駆動系を備えた装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の装置の模式図を図17に示す。図17において、発光ダイオード(LED)76a,76bは、開口に発光部分が露出する状態で基板70のレンズホルダ側に固定され、照射された光はホルダ85側に射出される。ホルダ85には、発光ダイオード76a、76bに対応する位置にスリット87a、87bが設けられ、発光ダイオードからの光は、スリットを通り、レンズ156,155を経て、光の重心位置により出力電流が変化するポジションセンサ153a,153bに入射する。ポジションセンサ153a、153bは基板56に半田付けされ、図示しない制御基板に接続されている。
ポジションセンサ153aは、1方向の位置を検出する1次元のセンサであり、X軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がX軸方向となるように取り付けられている。これによりポジションセンサ153aの出力値より走査用レンズ22のX軸方向の位置を検出することができる。同様に、ポジションセンサ153bは、Y軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がY軸方向となるように取り付けられている。スリット87bからの光は、レンズホルダ部組60がエレベーション方向に移動するとY軸方向に移動し、ポジションセンサ153bで位置が検出される。ここで、レンズ156,155,158,157は、レンズホルダ部組60の移動量に対してポジションセンサ上の移動量を縮小する役割を有し、これによりポジションセンサを小型化している。
【0005】
このような小型化を実現するためのレイアウト性を高めたレーザレーダ装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3の装置の模式図を図3に示す。図3において、走査用レンズ307と受光用レンズ309を取り付けたレンズホルダ305は、変位用バネ302,304で支持されており、駆動用コイル311,314とマグネット313,316の間の磁力で変位する。走査光用のレーザダイオード306からの出射光は、走査用レンズ307により偏向され、対象物により反射した光は受光用レンズ309により偏向され、受光フォトダイオード308に入射する。この出射光と入射光より、対象物の方向や距離を算出する
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の装置のように、光走査装置において光走査量を正確に検出するためには、レンズホルダ部に設置したスリットや、発光ダイオード、ポジショニングセンサなどの取り付けが必要となる。
また、発光ダイオードの光が走査光に混入しないように、また走査光がポジショニングセンサに入らないように、発光ダイオード、スリット、レンズ、及びポジショニングセンサを走査光学系から遮蔽するための構造が必要となる。このような構造を備えることにより、装置が大型化し、また高価になるという問題が生じる。同様に、そのような光走査装置を備えたレーザレーダ装置も、大型化し、高価なものになるという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価な光走査装置、及び該光走査装置を備えたレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光走査装置は、
光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、
前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する光走査装置であって、
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、
前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、
前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置である。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザレーダ装置は、
本発明の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子からの第1の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記第1発光素子が、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、前記第1の発光波長を感知するセンサが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、
前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知することを特徴とするレーザレーダ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光走査装置によれば、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価な光走査装置を提供することができる。
また、本発明のレーザレーダ装置によれば、精度高く正確に走査光の走査量を測定することができるとともに、小型化が可能で、かつ安価なレーザレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光走査装置の第1の実施形態の例を示す正面図である。
【図2】図1に示した面の反対面を示す図である。
【図3】本発明の光走査装置の第1の実施形態の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の光走査装置の第1の実施形態における第1発光素子からの光の走査を説明する図である。
【図5】第1発光素子と、第2発光素子と、センサとの位置関係の例を示す断面の模式図である。
【図6】第2発光素子と、センサとの位置関係を説明する断面の模式図である。
【図7】第1発光素子と、第2発光素子と、センサとの位置関係の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の光走査装置の第2の実施形態の例を示す正面図である。
【図9】図8に示した面の反対面を示す図である。
【図10】本発明の光走査装置の第2の実施形態の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の光走査装置の第3の実施形態の例を示す正面図である。
【図12】本発明の光走査装置の第4の実施形態の例を示す正面図である。
【図13】図12に示した面の反対面を示す図である。
【図14】光走査装置の第4の実施形態の例を示す斜視図である。
【図15】レーザレーダ装置における発光素子とセンサとの位置関係の例を示す模式図である。
【図16】従来例(特許文献1の装置)を示す模式図である。
【図17】従来例(特許文献2の装置)を示す模式図である。
【図18】従来例(特許文献3の装置)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る光走査装置及びレーザレーダ装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明の光走査装置は、光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する。
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されている。
なお、前記構造体は、光学素子とホルダが一体成型された態様等においては、光学素子の出射面ではない面に構造体が形成されていることと同義である。
【0014】
〔第1の実施形態〕
本発明の光走査装置の第1の実施形態を図1〜7により説明する。
図1は、本実施形態の光走査装置の正面図である。
図1に示すように、光学素子1、光学素子1を保持するホルダ2を備え、ホルダ2を外枠8及び内枠7との間で光学素子1の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段3,5としてのバネ、ホルダ2を光学素子1の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段4,6としての櫛歯型の静電アクチュエータを備える。
光学素子1としては、例えば、凸レンズ、凸型のフレネル形状レンズ等が挙げられる。本実施形態においては、片凸レンズの例として説明する。
ホルダ2は、駆動手段4により図中のX方向へ移動することができ、駆動手段6により図中のY方向に移動することができる。静電アクチュエータである駆動手段4,6に電圧を印加することにより、ホルダ2に保持された光学素子1をX方向及びY方向へ自在に遥動させることができる。
【0015】
図2は、図1に示した面と反対側の面(裏面)の正面図である。
図2に示すように、ホルダ2の光学素子1の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターン9が形成されている。
前記構造体の配置は適宜選択することができ、例えば、ホルダ2のパターン9が形成された領域の単位面積当たりの前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように前記構造体を配置することができる。具体的には、図2に示すように、ホルダ2の中心部から外周部へ向けて、前記構造体の底面積を小さくし、外周部に近い領域が中心部よりも単位面積当たりの構造体の底面積の和が小さくなるように配置することができる。
【0016】
本発明の光走査装置において、ホルダ2の少なくとも前記構造体が形成された領域の材質はシリコンであることが好ましい。また、第1の発光波長が1.1μm以上であり、第2の発光波長が1.1μm以下であることが好ましい。これにより、第1の発光波長の光は光学素子1を透過して移動する光学素子1により走査され、第2の発光波長の光源は光学素子1及びホルダ2で反射され、前記構造体との反射率の差による反射光の情報をセンサ12で受信することが容易になる。
本実施形態において、光学素子1及びホルダ2の材質はシリコンであり、前記構造体の材質は酸化シリコンである。
第1発光素子からの第1の発光波長は1.5μm、第2発光素子からの第2の発光波長は0.9μmである。
前記構造体の厚さtは、その屈折率をn、第2の発光波長をλ、第2発光素子の光源とパターン9を形成しているホルダ2との角度をθとしたとき、2ntcosθ=λ/2を満たす厚さとしている。
第1発光素子の光源としては、コリメートされたLD光源を用いている。
【0017】
図3は、図1及び2に示した光走査装置の俯瞰図であり、図4(A)及び(B)は、第1発光素子からの第1の発光波長の光の走査関係を示した模式図である。
図4(A)に示すように、第1発光素子10のLD光源からの出射光20aが、光学素子1の中心付近に入射する場合、透過光20bは、そのまま直進する。一方、図4(B)に示すように、ホルダ2とともに光学素子1が移動し、LDからの出射光20aが光学素子1の中心から外れた外周付近に入射する場合には、透過光20bは偏向される。このように、ホルダ2とともに光学素子1を移動させることにより、光の走査を行うことができる。
【0018】
図5は、第1発光素子10と、第2発光素子11と、センサ12との位置関係の例を示す断面の模式図である。図8はその斜視図である。
本実施形態において、第2の発光波長の波長領域に感度を持ち、第2発光素子11からの第2の発光波長を感知するセンサ12として、第2の発光波長の光強度を検出するPD(フォトダイオード)を用いている。このPDは、特定の領域の光量だけを測定できるようにした光学系を搭載している。
【0019】
図7は、第2発光素子11とセンサ12(PD)との位置関係を示す図である。
第2発光素子11の光源としては、広い範囲を照明できるようにしたLED光源を用いている。LEDからの出射光19aは、ホルダ2の複数の構造体からなるパターン9が形成された領域付近を照明する。
センサ12は、第2発光素子11から出射して光学素子1及びホルダ2で反射された光19bを受光可能な位置に固定して配置され、パターン9が形成された領域付近の限定された領域からの反射光19bの光量を測定する。そのため、光学素子1及びホルダ2が移動すると、センサ12の測定対象となる領域が変化し、反射する対象の構造体が変化する。前述のように、前記構造体は、前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように配置されているため、照射する位置により反射光19bの強度も変化する。このため、センサ12により反射光量の変化を測定することで、ホルダ2の位置の変化を検出することができる。
【0020】
ホルダ2の位置を検出することにより、ホルダ2に保持された光学素子1の位置を推定することができるので、走査量読取装置を備えることにより、光学素子1を透過して照射される第1の発光波長の光の走査量を算出することができる。
すなわち、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12で受光した信号により、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0021】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、駆動手段4,6の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することができる。すなわち、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段であるアクチュエータに印加する電圧を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0022】
上述のように、本実施形態によれば、光学素子1を移動させることにより第1発光素子からの透過光を走査して照射する際に、照射光の走査量を容易に検出でき、また容易に制御することができる。
【0023】
〔第2の実施形態〕
本発明の光走査装置の第2の実施形態を図8〜10により説明する。
図8は、本実施形態の光走査装置の正面図であり、図10はその斜視図である。
図8に示すように、光学素子1として片凸レンズ、光学素子1を保持するホルダ2を備えている。また、ホルダ2がX方向及びY方向に揺動できるように、外枠8との間を移動可能に支持する支持手段3,5としてのバネを備えている。
また、ホルダ2には、永久磁石13が取り付けられており、外枠8の外部には電磁石14,15が取り付けられている。電磁石に電流を流すことにより、レンズ1が保持されたホルダ2をX、Y方向に自在に遥動させることができる。
【0024】
図9は、図8に示した面と反対側の面(裏面)の正面図である。
図9に示すように、ホルダ2の光学素子1が形成されている面と反対の面には、複数の構造体からなるパターン16が形成されている。
パターン16は、ホルダ2の位置によって異なる形状の前記構造体が配置されている。
第2の発光波長を感知するセンサ12として、形状の情報を取得できるCCDなどの撮像素子を用いることにより、パターン16を読み取ることにより、移動したホルダ2の位置を検出することができる。
【0025】
検出されたホルダ2の移動量に基づき、上述の実施形態1と同様に、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0026】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段である電磁石に流す電流量を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0027】
上述のように本実施形態によれば、センサ12で前記構造体の形状を読み取ることにより容易に照射光の走査量を容易に検出することができ、また容易に照射光の走査量を制御することができる。
【0028】
〔第3の実施形態〕
本発明の光走査装置の第3の実施形態を図11により説明する。
図11は、本実施形態の光走査装置の光学素子1の出射面の反対の面の正面図である。
本実施形態は、駆動手段4,6として、第1の実施形態と同様の静電櫛歯型のアクチュエータを使用した光走査装置である。
本実施形態において、ホルダ2に形成されたパターンは、ホルダ2の移動方向に、同じ形状の構造体が繰り返し配置されている。すなわち、図に示す内枠7のX方向に沿って、等間隔に同一形状の構造体17が整列して配置されている。また、外枠8のY方向に沿って、同じく等間隔に同一形状の構造体18が整列して配置されている。
【0029】
第2の発光波長を感知するセンサ12としては、実施形態1で用いたセンサよりも狭い範囲の光量を測定可能に調整されたPDを、X方向の構造体17及びY方向の構造体18を各々測定できるように複数搭載する。これにより、静電櫛歯アクチュエータ4,6に電圧を印加してレンズをX方向及びY方向に遥動させたとき、ホルダ2の移動に伴って、センサ12には構造体17,18の繰り返しによる明暗が測定されるため、移動したホルダ2の位置を検出することができる。
【0030】
検出されたホルダ2の移動量に基づき、上述の実施形態1と同様に、前記走査量読取装置は、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係を算出し、第2の発光波長を感知するセンサ12と第2発光素子11との位置関係から、光学素子1と第1発光素子10との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することができる。
【0031】
さらに、前記走査量読取装置の出力値から、駆動手段4,6の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することができる。すなわち、算出された照射光の走査量をもとに、ホルダ2とともに光学素子1を移動させる駆動手段であるアクチュエータに印加する電圧を変えることにより、第1の発光波長の光の走査量を正確に制御することができる。
【0032】
上述のように本実施形態によれば、センサ12の光量が構造体17,18の繰り返しのピッチで強弱を繰り返す変化をするので、強弱をカウントすることにより、ホルダ2の移動量が容易に計測でき、実施形態1と同様に、照射光の走査量を容易に検出でき、また容易に制御することができる。
【0033】
〔第4の実施形態:レーザレーダ装置〕
本発明の光走査装置の第4の実施形態として、レーザレーダ装置に用いられる態様を図12〜15により説明する。
本発明のレーザレーダ装置は、本発明の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子10aからの第1の発光波長を感知するセンサ10bをさらに備え、第1発光素子10aが、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、第1の発光波長を感知するセンサ10bが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知する。
【0034】
また、本発明のレーザレーダ装置は、光学素子1を複数備え、前記探査送信手段を構成する第1光学素子1a、及び探査受信手段を構成する第2光学素子1bがホルダ2に保持されてなり、前記構造体からなるパターン9が、ホルダ2の第1光学素子1aが保持された領域の出射面の反対側の面に形成されている。
【0035】
本実施形態の光走査装置において、駆動手段は、第1の実施形態と同様に静電櫛歯型のアクチュエータを使用している。
第1の発光波長の光源である第1発光素子10aは、レーザレーダ装置の投光用の光源として用いる。さらにレーザレーダ装置の受光用のセンサ10bとしては、第1の発光波長の波長領域に感度を持ち、第1の発光波長を感知するセンサであるAPD(アバランシェフォトダイオード)等が用いられる。
【0036】
前記探査送信手段として、第1の発光波長の投光用の光源の集光と偏向のための第1光学素子1a、及び探査受信手段として、第1発光波長の光のセンサ10bの受光のための第2光学素子1bがホルダ2に保持されている。
【0037】
図15に、第1の発光波長の光源10a、第2の発光波長の光源11、第1の発光波長の光を感知するセンサ10b、第2の発光波長の光を感知するセンサ12の構成を示している。実施形態1と同様に、センサ12としてPDが、第2発光素子11から出射して反射された光を受光可能な位置に固定して配置されている。
ホルダ2の第1光学素子1aが保持された領域の出射面の反対側の面に形成された構造体からなるパターン9が第2の発光波長の光源11で照射され、レーザレーダを走査するためレンズ1a及び1bが搭載されたホルダ2が遥動すると、その反射光の変化をセンサ12で受光することにより、レーザレーダの走査量を検出することができる。
【0038】
上述のように、本実施形態によれば、簡易で小型かつ安価な構造の光走査装置で光の走査ができ、簡易な構成で探査波送信用の送信用光学素子と探査波受信用の受信用光学素子を同時に走査できるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1 光学素子
2 ホルダ
3,5 支持手段
4,6 駆動手段
7 内枠
8 外枠
9 パターン
10 第1発光素子
11 第2発光素子
12 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002−162469号公報
【特許文献2】特開2008−281871号公報
【特許文献3】特開2003−177348号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、
前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する光走査装置であって、
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、
前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、
前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光学素子を透過して照射される照射光の走査量を算出する走査量読取装置を備え、
前記走査量読取装置が、前記第2の発光波長を感知するセンサで受光した信号により、前記第2の発光波長を感知するセンサと前記第2発光素子との位置関係を算出し、前記第2の発光波長を感知するセンサと前記第2発光素子との位置関係から、前記光学素子と前記第1発光素子との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記走査量読取装置の出力値から前記駆動手段の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記パターンは、前記ホルダの該パターンが形成された領域の単位面積当たりの前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように前記構造体が配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記パターンは、前記ホルダの移動方向に、同じ形状の前記構造体が繰り返し配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記パターンは、前記ホルダの位置によって異なる形状の前記構造体が配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光学素子が、凸レンズまたは凸型のフレネル形状レンズであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置
【請求項8】
前記ホルダの少なくとも前記構造体が形成された領域の材質がシリコンであり、かつ
前記第1の発光波長が1.1μm以上であり、前記第2の発光波長が1.1μm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子からの第1の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記第1発光素子が、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、前記第1の発光波長を感知するセンサが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、
前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知することを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項10】
前記光学素子を複数備え、
前記探査送信手段を構成する第1光学素子、及び探査受信手段を構成する第2光学素子が、前記ホルダに保持されてなり、
前記構造体からなるパターンが、前記ホルダの前記第1光学素子が保持された領域の出射面の反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のレーザレーダ装置。
【請求項1】
光学素子と、該光学素子を保持するホルダと、該ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動可能に支持する支持手段と、前記ホルダを前記光学素子の光軸に垂直な方向に移動させる駆動手段と、発光する波長が異なる複数の発光素子とを備え、
前記複数の発光素子のうち、一の発光素子からの光が前記光学素子を透過し、前記光学素子を移動させることにより、透過光を走査して照射する光走査装置であって、
前記複数の発光素子は、前記光学素子を透過する第1の波長の光を発光する第1発光素子、及び前記光学素子を透過しない第2の波長の光を発光する第2発光素子からなり、
前記ホルダの前記光学素子の出射面の反対側の面に、前記第2の波長の光を透過しない構造体からなるパターンが形成され、
前記第2の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記センサは、前記第2発光素子から出射して前記光学素子及び前記ホルダで反射された光を受光可能な位置に配置され、かつ前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記センサとが、相対的に固定された位置に配置されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光学素子を透過して照射される照射光の走査量を算出する走査量読取装置を備え、
前記走査量読取装置が、前記第2の発光波長を感知するセンサで受光した信号により、前記第2の発光波長を感知するセンサと前記第2発光素子との位置関係を算出し、前記第2の発光波長を感知するセンサと前記第2発光素子との位置関係から、前記光学素子と前記第1発光素子との位置関係を算出して、前記照射光の走査量を算出することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記走査量読取装置の出力値から前記駆動手段の駆動量を算出し、該駆動量に基づき、前記照射光の走査量を制御することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記パターンは、前記ホルダの該パターンが形成された領域の単位面積当たりの前記構造体の底面積の和が、位置により異なるように前記構造体が配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記パターンは、前記ホルダの移動方向に、同じ形状の前記構造体が繰り返し配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記パターンは、前記ホルダの位置によって異なる形状の前記構造体が配置されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光学素子が、凸レンズまたは凸型のフレネル形状レンズであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置
【請求項8】
前記ホルダの少なくとも前記構造体が形成された領域の材質がシリコンであり、かつ
前記第1の発光波長が1.1μm以上であり、前記第2の発光波長が1.1μm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光走査装置と、該光走査装置の第1発光素子からの第1の発光波長を感知するセンサをさらに備え、
前記第1発光素子が、探査領域に対して探査波を送信する探査送信手段を、前記第1の発光波長を感知するセンサが、前記探査領域内に存在する障害物からの反射波を受信する探査受信手段をそれぞれ構成し、
前記探査送信手段により前記探査波を送信した時刻と、前記探査受信手段により前記反射波を受信した時刻との時間差に基づいて、前記障害物との相対的位置関係を検知することを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項10】
前記光学素子を複数備え、
前記探査送信手段を構成する第1光学素子、及び探査受信手段を構成する第2光学素子が、前記ホルダに保持されてなり、
前記構造体からなるパターンが、前記ホルダの前記第1光学素子が保持された領域の出射面の反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のレーザレーダ装置。
【図2】
【図5】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図5】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−104771(P2013−104771A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248498(P2011−248498)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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