光走査装置及び画像形成装置
【課題】高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うことができる光走査装置を提供する。
【解決手段】 2つの光源、該2つの光源からの光束が個別に入射する2つの液晶素子(16A、16B)を有する液晶光学デバイス16、液晶光学デバイス16に印加される電圧を制御する走査制御装置を備えている。各液晶素子は、2つの入力端子(T1、T2)、及び該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、Z軸方向に関して屈折率変化を生じる液晶層を有している。そして、走査制御装置は、各液晶素子に対して、射出される光束の光路を曲げるときには、2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、射出される光束の光路を曲げないときには、2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する。
【解決手段】 2つの光源、該2つの光源からの光束が個別に入射する2つの液晶素子(16A、16B)を有する液晶光学デバイス16、液晶光学デバイス16に印加される電圧を制御する走査制御装置を備えている。各液晶素子は、2つの入力端子(T1、T2)、及び該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、Z軸方向に関して屈折率変化を生じる液晶層を有している。そして、走査制御装置は、各液晶素子に対して、射出される光束の光路を曲げるときには、2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、射出される光束の光路を曲げないときには、2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光束により被走査面を走査する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この場合、画像形成装置は光走査装置を備え、感光性を有するドラムの軸方向(主走査方向)に偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いてレーザ光を走査しつつ、ドラムを副走査方向に回転させて潜像を形成する方法が一般的である。
【0003】
また、近年、画像形成装置には、画像の高密度化及び画像出力の高速化が求められている。上記高密度化と高速化を両立させる方法の一つとして、複数の光束で同時に被走査面を走査するいわゆるマルチビーム化が考えられた。
【0004】
そして、複数の光源を用いてマルチビーム化を実現するためには、被走査面上に形成される複数の光スポットの副走査方向に関する間隔(以下では、便宜上、「ビームピッチ」ともいう)の調整が必要である。ビームピッチの調整方法としては、複数の光源が含まれる光源ユニットを、光束の射出方向に平行な軸回りに回転する方法や、ビームピッチ調整用の光学素子を用いる方法(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
【0005】
また、高密度化に対しては、被走査面上における光スポットのビーム径の小径化が必要であり、いくつかの方法が提案されている(例えば、特許文献2〜特許文献4参照)。
【0006】
ところで、ビームピッチの調整手段として、液晶素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。液晶素子は、低電圧駆動、無発熱、無騒音、無振動、小型/軽量等の優れた特徴を有しているため、ビームピッチの調整に適している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の観点からすると、光束により被走査面を主走査方向に走査する光走査装置であって、少なくとも1つの光源と;前記少なくとも1つの光源からの光束を前記被走査面上に集光するとともに、前記被走査面上の光スポットを主走査方向に移動させる光学系と;前記少なくとも1つの光源と前記被走査面との間の光束の光路上に配置され、2つの入力端子と、該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、主走査方向に直交する副走査方向に関して、屈折率変化を生じる液晶層とを有する少なくとも1つの液晶素子と;前記少なくとも1つの液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、前記2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する制御装置と;を備える光走査装置である。
【0008】
これによれば、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うことが可能となる。
【0009】
本発明は、第2の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光束を走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0010】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置の概略構成を示す図である。
【図3】光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットの光学ハウジングへの取り付け状態を説明するための図である。
【図5】光源ユニットの調整後におけるビームピッチを説明するための図である。
【図6】液晶光学デバイスを説明するための図である。
【図7】液晶素子の構成を説明するための図である。
【図8】図8(A)は、液晶素子の透明電極を説明するための図であり、図8(B)は、液晶素子の有効領域を説明するための図である。
【図9】液晶素子における20℃での印加される実効電圧とリタデーションの関係(電圧−位相変調特性)を説明するための図である。
【図10】各入力端子に同じ電位の電圧が印加されたときの液晶分子の状態を説明するための図である。
【図11】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの液晶分子の状態を説明するための図である。
【図12】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの電位分布を説明するための図である。
【図13】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの屈折率分布を説明するための図である。
【図14】(V1−V2)とΔzとの関係を説明するための図である。
【図15】液晶光学デバイスにおける電圧信号の配線を説明するための図である。
【図16】ホルダを説明するための図である。
【図17】光学的に像面に略平行な面を説明するための図である。
【図18】光検知センサの概略構成を説明するための図である。
【図19】光検知センサにおける検知用光束Aの移動経路Aを説明するための図である。
【図20】移動経路Aのときの光検知センサの出力信号を説明するための図である。
【図21】光検知センサにおける検知用光束Bの移動経路B説明するための図である。
【図22】移動経路Bときの光検知センサの出力信号を説明するための図である。
【図23】光検知センサの出力信号における各検知用光束の時間差Δtを説明するための図である。
【図24】副走査対応方向に関する各検知用光束の入射位置の差Psを説明するための図である。
【図25】走査制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図26】図26(A)〜図26(C)は、それぞれ解像度が600dpiのときの走査制御装置の出力信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図27】図27(A)〜図27(C)は、それぞれ解像度が1200dpiのときの走査制御装置の出力信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図28】図28(A)及び図28(B)は、それぞれ解像度が1200dpiのときの各液晶素子での光束の曲がりを説明するための図である。
【図29】解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図30】液晶光学素子の変形例1を説明するための図である。
【図31】変形例1の液晶光学素子を用い、解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図(その1)である。
【図32】変形例1の液晶光学素子を用い、解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図(その2)である。
【図33】解像度を1200dpiから600dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図34】液晶光学デバイスにおける電圧信号の配線の変形例を説明するための図である。
【図35】解像度を600dpiから2400dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図36】解像度を1200dpiから2400dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図である。
【図37】カラープリンタの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図29を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0013】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0014】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0015】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0016】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0017】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0018】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0019】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0020】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0021】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0022】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0023】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0024】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0025】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0026】
ここでは、レーザプリンタ1000は、出力画像の解像度として、600dpi及び1200dpiに対応可能であり、ユーザがいずれかを選択することができる。そして、選択された解像度は、プリンタ制御装置1060から光走査装置1010に通知されるようになっている。なお、デフォルトの解像度は、600dpiに設定されているものとする。
【0027】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0028】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、2つの光源(14a、14b)、2つのカップリングレンズ(15a、15b)、液晶光学デバイス16、シリンドリカルレンズ17、光検知センサ18、光検知用ミラー19、及び走査制御装置30(図2では図示省略、図25参照)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング25(図示省略)の所定位置に組み付けられている。
【0029】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、シリンドリカルレンズ17の光軸に沿った方向をX軸方向、ポリゴンミラー13の回転軸に平行な方向をZ軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0030】
光源14a及び光源14bは、いずれも発振波長が655nmの半導体レーザである。ここでは、各光源から射出される光束は直線偏光であり、その振動方向はZ軸方向に平行となるように設定されている。
【0031】
カップリングレンズ15aは、光源14aから射出された光束を略平行光とする。また、カップリングレンズ15bは、光源14bから射出された光束を略平行光とする。
【0032】
2つの光源(14a、14b)と2つのカップリングレンズ(15a、15b)は、一例として図3に示されるように、円筒部21aを有するベース部材21に所定の位置関係で保持され、ユニット化されている。以下では、このユニットを「光源ユニット」という。
【0033】
光源ユニットは、一例として図4に示されるように、円筒部21aが、光学ハウジング25の円形の開口部に挿入されている。そして、光源ユニットは、X軸に平行な軸回りに回動が可能である。この回動により、感光体ドラム1030上に形成される光源14aから射出された光束による光スポット(Spaという)と光源14bから射出された光束による光スポット(Spbという)の副走査方向に関する間隔(ビームピッチあるいは走査線間隔)を所望の値に調整することができる。ここでは、光源ユニットは、一例として図5に示されるように、ビームピッチが42.3[μm]となるように、調整されている。このビームピッチは、出力画像の解像度として600dpiに対応している。なお、光源ユニットは、調整後、締結ネジあるいはスプリング部材等によって光学ハウジング25に保持、固定されている。
【0034】
液晶光学デバイス16は、一例として図6に示されるように、2つの液晶素子(16A、16B)を有している。液晶素子16Aと液晶素子16Bは、同じ構造の液晶素子であり、ここでは、液晶素子16Bは、液晶素子16AをX軸に平行な軸回りに180度回転させた状態と同じ姿勢で、液晶素子16Aの−Y側に配置されている。
【0035】
そこで、代表として、液晶素子16Aの構造、作用について説明する。
【0036】
液晶素子16Aは、一例として図7に示されるように、液晶層168が配向膜(165、166)及び透明電極(163、164)を介して2枚のガラス基板(161、162)で挟持されている。そして、各ガラス基板の周縁部は、シール材で密封され、いわゆるセル構造となっている。
【0037】
液晶層168の厚さ(X軸方向の長さ)は、数[μm]〜数十[μm]程度である。ここでは、液晶層として、ネマティック型の液晶分子がホモジニアスに配列された液晶層を用いている。
【0038】
液晶層168の+X側にある透明電極164は、グラウンドに接続されている。
【0039】
液晶層168の−X側にある透明電極163は、一例として図8(A)に示されるように、それぞれY軸方向を長手方向とし、Z軸方向に沿って配列された複数のストライプ電極163a、及び各ストライプ電極の+Y側端部と接続され所定の抵抗値を有する細線電極163bを有している。
【0040】
そして、細線電極163bの−Z側端部に入力端子T1が、+Z側端部に入力端子T2が接続されている。また、この場合の有効領域が、一例として図8(B)に示されている。なお、有効領域とは、外部からの電気信号により駆動され、入射光の位相を変調することが可能な領域をいう。
【0041】
各入力端子に印加される電圧は、周波数が数百Hzから数kHz程度で、直流成分をもたない交流電圧である。そして、以下では、入力端子T1に印加される交流電圧の実効値をV1、入力端子T2に印加される交流電圧の実効値をV2という。
【0042】
液晶素子における20℃での印加される実効電圧とリタデーションの関係(電圧−位相変調特性)の一例が図9に示されている。
【0043】
(1)各入力端子に電圧が印加されていないとき
【0044】
V1=0[V]、V2=0[V]のとき、液晶層168の液晶分子は、Z軸方向に対してほぼ平行な配向状態を示す(図7参照)。通常は、応答性を良好にするため、配向膜の作用により液晶分子がZ軸方向に対してわずかにX軸方向に傾斜するように設定されている。すなわち、液晶分子はZ軸方向に対して完全に平行ではない。なお、液晶分子のZ軸方向に対するX軸方向への傾斜角は「配向角」と呼ばれている。
【0045】
各入力端子に電圧が印加されると、液晶層168の液晶分子は、印加電圧に応じた配向角を有する配向状態を示す。
【0046】
(2)各入力端子に同じ電位の電圧が印加されたとき
【0047】
V1=1.5[V]、V2=1.5[V]のときの液晶分子の配向状態が図10に示されている。なお、図10では、便宜上、液晶分子は、液晶層168の厚さ方向(ここでは、X軸方向)に関して同じ配向角としている。しかしながら、実際は、配向膜付近の液晶分子は配向膜の影響により図7に示される配向角を保っており、配向膜から離れるにつれて、すなわち液晶層168の厚さ方向における中央に近づくにつれて、配向角が大きくなる。
【0048】
この場合、液晶層168では、Z軸方向に関して電位が一様であるため、液晶素子16Aに入射した光束は、その光路が曲げられることなく透過する。
【0049】
(3)各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたとき
【0050】
V1=1.7[V]、V2=1.3[V]のときの液晶分子の配向状態が図11に示されている。
【0051】
この場合、液晶層168では、有効領域の+Z側端部と−Z側端部との間に、直線的な電位勾配(図12参照)が生じ、該電位勾配に従って液晶分子の配向状態が変化する。そして、電位勾配に応じて、有効領域の+Z側端部と−Z側端部との間に、位相差Δφに相当する屈折率分布(屈折率勾配)が生じる(図13参照)。そこで、液晶素子16Aに入射した光束は、Z軸方向に関して、その光路が電位勾配に応じた角度(以下では、「偏向角」ともいう)だけ曲げられる。なお、Z軸方向に関する有効領域の幅をH、有効領域におけるZ軸方向の両端部間の位相差をΔφとすると、偏向角θは、tanθ=Δφ/Hで表される。
【0052】
ところで、出力画像の解像度を1200dpiにするには、ビームピッチを21.2[μm]とする必要がある。ビームピッチを42.3[μm]から21.2[μm]にするには、副走査方向に関して、Spaを+10.6[μm]移動させ、Spbを−10.6[μm]移動させる必要がある。
【0053】
感光体ドラム表面での光スポットの副走査方向の移動量をΔz、Z軸方向に関する有効領域の幅をH、ポリゴンミラー14と感光体ドラム1030との間の光路上にある光学系の副走査対応方向に関する倍率をm、シリンドリカルレンズ17の焦点距離をFcyl、有効領域におけるZ軸方向の両端部間の位相差をΔφとすると、次の(1)式の関係がある。
【0054】
Δφ=(Δz×H)/(m×Fcyl) ……(1)
【0055】
H=2.0[mm]、m=1.5倍、Fcyl=100[mm]とすると、光スポットを副走査方向に+10.6[μm]移動させるためには、入射光束の波長λ(ここでは、655nm)を単位として、Δφ=0.22[λ]となる位相分布(勾配)を発生させる必要がある。
【0056】
例えば、液晶素子16Aが、(V1−V2)=1.0[V]のときに、Δφ=0.55[λ]となる特性を有している場合に、Δφ=0.22[λ]の位相差を得るには、(V1−V2)=0.4[V]とすれば良い。
【0057】
同様に、光スポットを副走査方向に−10.6[μm]移動させるためには、Δφ=−0.22[λ]となる位相分布(勾配)を発生させる必要がある。
【0058】
液晶素子16Aにおける(V1−V2)とΔzとの関係が図14に示されている。
【0059】
また、X軸方向に平行に光束が液晶素子16Aに入射し、液晶層168の屈折率をn1、配向膜165の屈折率をn2とすると、液晶層168と配向膜165の界面でのフレネル反射の反射率rは、次の(2)式で示される。そこで、液晶層168の光透過率tは、t=1−rである。
【0060】
r=|(n1−n2)/(n1+n2)| ……(2)
【0061】
一例として、n1=1.48(no:常光屈折率)〜1.80(ne:異常光屈折率)、n2=1.80の場合について説明する。各入力端子に電圧が印加されてなく、n1=1.66のときは、光透過率t=1−|(1.66−1.80)/(1.66+1.80)|=0.959となる。一方、各入力端子に電圧が印加され、n1=1.50のときは、光透過率t=1−|(1.50−1.80)/(1.50+1.80)|=0.909となる。すなわち、この場合は、各入力端子に電圧が印加されると、光透過率は5%程度低下する。
【0062】
図15には、液晶光学デバイス16における配線パターンが示されている。ここでは、一例として、各液晶素子の入力端子T1に同じ電圧V1が印加され、各液晶素子の入力端子T2に同じ電圧V2が印加されるように配線部材が配線されている。
【0063】
そして、液晶光学デバイス16は、一例として図16に示されるように、ホルダ22に保持されて、光学ハウジング25に取り付けられている。
【0064】
このホルダ22には、液晶素子16Aを透過した光束を整形するための開口部(開口部22Aという)、及び液晶素子16Bを透過した光束を整形するための開口部(開口部22Bという)が形成されている。
【0065】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、ホルダ22の開口部22Aを通過した光束及び開口部22Bを通過した光束を、それぞれポリゴンミラー13の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。すなわち、線像を形成する。
【0066】
各光源とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、2つのカップリングレンズ(15a、15b)と液晶光学デバイス16とシリンドリカルレンズ17とから構成されている。
【0067】
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、Z軸方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、シリンドリカルレンズ17からの光束を偏向する。
【0068】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
【0069】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0070】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0071】
光検知センサ18には、ポリゴンミラー13で偏向され、走査光学系を介した光束のうち画像情報の書き込み開始前の光束の一部が、検知用光束として、光検知用ミラー19を介して入射する。光検知センサ18における検知用光束の入射位置は、ポリゴンミラー13の回転に伴って、主走査対応方向(ここでは、便宜上、m方向とする)に移動する。
【0072】
光検知センサ18は、一例として図17に示されるように、その受光面が光学的に像面(設計上の像面)に略平行となるように配置されている。これにより、検知用光束は、主走査方向に関して感光体ドラム1030の延長上を移動することと等価になり、検知用光束に対する走査光学系のリニアリティ(走査等速性)を確保しておけば、光検知センサ18を通過する検知用光束の移動速度を、感光体ドラム1030の画像形成領域(有効走査領域)での走査速度と同じにすることができ、検知精度を向上させることができる。
【0073】
なお、図17における符号18´は、光検知用ミラー19がないと仮定したときの光検知センサ18の位置を示している。
【0074】
また、光検知センサ18の受光面の法線方向は、受光面での反射光が光源に戻らないように、検知用光束の入射方向に対して傾斜している(図17参照)。これにより、光検知センサ18の受光面での反射光が、光量制御に影響を与えることを回避できる。
【0075】
光検知センサ18は、一例として図18に示されるように、2つの受光部(第1受光部181、第2受光部182)を有する受光素子、該受光素子からの受光量に応じた信号(光電変換信号)が入力されるアンプ(AMP)183、該アンプ183の出力信号レベルと予め設定されている基準レベルVsとを比較し、その比較結果を出力する比較器(CMP)184を有している。この比較器184の出力信号は走査制御装置30に供給される。
【0076】
受光素子の各受光部は、副走査対応方向(ここでは、便宜上、s方向とする)の位置によってm方向の互いの間隔が異なっている。
【0077】
第1受光部181は、一例として長方形の受光部であり、長手方向がs方向と一致するように配置されている。すなわち、検知用光束が通過する2辺がいずれもs方向に平行である。
【0078】
第2受光部182は、一例として平行四辺形の受光部であり、第1受光部181の+m側に配置されている。そして、第2受光部182の長手方向は、受光面内において第1受光部181の長手方向に対して角度α(0<α<90°)だけ傾斜している。すなわち、検知用光束が通過する2辺がいずれもm方向に対して傾斜している。
【0079】
アンプ183では、入力信号の反転及び増幅が行われる。従って、受光素子の受光量が多いほど、アンプ183の出力信号レベルは低くなる。
【0080】
前記基準レベルVsは、検知用光束が受光素子で受光されたときのアンプ183の出力信号レベル(最低値)よりも若干高いレベルに設定されている。そこで、各受光部のいずれかが検知用光束を受光したときに、比較器184での判断結果が変化し、それに応じて比較器184の出力信号が変化する。
【0081】
なお、以下では、便宜上、光源14aから射出された光束による検知用光束を「検知用光束A」といい、光源14bから射出された光束による検知用光束を「検知用光束B」という。
【0082】
光検知センサ18の受光素子における検知用光束Aの入射位置の軌跡の例が図19に示されている。なお、受光素子における検知用光束Aの入射位置の移動経路を「経路A」とする。そして、このときの比較器184の出力信号が図20に示されている。ここでは、検知用光束Aが第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間をtaとする。
【0083】
また、光検知センサ18の受光素子における検知用光束Bの入射位置の軌跡の例が図21に示されている。なお、受光素子における検知用光束Bの入射位置の移動経路を「経路B」とする。そして、このときの比較器184の出力信号が図22に示されている。ここでは、検知用光束Bが第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間をtbとする。
【0084】
そこで、時間tbと時間taの差である時間差Δt(図23参照)は、s方向に関する経路Aと経路Bの差Ps(図24参照)に対応することとなる。差Psは、ビームピッチと相関関係があるため、時間差Δtからビームピッチを知ることができる。なお、時間差Δtとビームピッチとの関係は予め実験的あるいは理論的に求められ、走査制御装置30のフラッシュメモリ211(図25参照)に格納されている。
【0085】
また、第1受光部181が検知用光束を受光したときの、比較器184の出力信号における立下りタイミングは、s方向における検知用光束の入射位置の影響を受けない(図23参照)。そこで、第1受光部181が検知用光束を受光したときの、比較器184の出力信号における立下りタイミングから書込開始のタイミングを求めることができる。
【0086】
走査制御装置30は、一例として図25に示されるように、CPU210、フラッシュメモリ211、RAM212、液晶素子駆動回路213、IF(インターフェース)214、画素クロック生成回路215、画像処理回路216、書込制御回路219、光源駆動回路221、クロック信号生成回路222、周波数選択回路223、及びポリゴンミラー駆動回路224などを有している。なお、図25における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0087】
IF(インターフェース)214は、プリンタ制御装置1060との双方向の通信を制御する通信インターフェースである。上位装置からの画像データは、IF(インターフェース)214を介して供給される。
【0088】
画素クロック生成回路215は、光検知センサ18の出力信号に基づいて画素クロック信号を生成する。ここで生成された画素クロック信号は、画像処理回路216及び書込制御回路219に供給される。また、光検知センサ18の出力信号は、同期信号として書込制御回路219に出力される。
【0089】
画像処理回路216は、プリンタ制御装置1060を介して上位装置から受信した画像情報をラスター展開するとともに、所定の中間調処理などを行った後、画素クロック信号を基準とした各画素の階調を表す画像データを光源毎に作成する。そして、画像処理回路216は、光検知センサ18の出力信号に基づいて走査開始を検出すると、画素クロック信号に同期して画像データを書込制御回路219に出力する。
【0090】
書込制御回路219は、画像処理回路216からの画像データ、画素クロック生成回路215からの画素クロック信号及び同期信号に基づいて、光源毎にパルス変調信号を生成する。
【0091】
光源駆動回路221は、書込制御回路219からのパルス変調信号に基づいて各光源を駆動する。
【0092】
クロック信号生成回路222は、周波数が2000[Hz]、振幅が5.0[V](バイアス成分:+2.5[V])のクロック信号を生成する。ここで生成されたクロック信号は、周波数選択回路223に出力される。
【0093】
周波数選択回路223は、クロック信号生成回路222からのクロック信号に基づいて、CPU210の指示により、所定の周波数のクロック信号をポリゴンミラー駆動回路224及び液晶素子駆動回路213に出力する。
【0094】
ポリゴンミラー駆動回路224は、周波数選択回路223からのクロック信号に基づいて、ポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号を生成し、ポリゴンミラー13に出力する。
【0095】
液晶素子駆動回路213は、周波数選択回路223からのクロック信号に基づいて、CPU210の指示により、電圧V1を実効電圧とする交流電圧信号s1、及び電圧V2を実効電圧とする交流電圧信号s2を生成する。ここで生成された各交流電圧信号は、液晶光学デバイス16に出力される。これにより、液晶光学デバイス16の各液晶素子の入力端子T1に実効電圧V1が印加され、入力端子T2に実効電圧V2が印加される。
【0096】
フラッシュメモリ211には、CPU210にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、プログラムの実行に用いられる各種データなどが格納されている。
【0097】
RAM212は、作業用のメモリである。
【0098】
CPU210は、フラッシュメモリ211に格納されているプログラムに従って動作し、光走査装置1010の全体を制御する。
【0099】
CPU210は、初期化処理において、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示する。ここでは、周波数が2000[Hz]のクロック信号が出力される。
【0100】
そして、ポリゴンミラー駆動回路224では、一例として図26(A)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が0.0[V]〜+5.0[V]の駆動信号が生成され、ポリゴンミラー13に出力される。これにより、ポリゴンミラー13は、一例として10000[rpm]で回転駆動される。
【0101】
また、CPU210は、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0102】
これにより、液晶素子駆動回路213では、一例として図26(B)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が−1.5[V]〜+1.5[V]の交流電圧信号s1と、一例として図26(C)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が−1.5[V]〜+1.5[V]の交流電圧信号s2とが生成され、液晶光学デバイス16に出力される。この場合には、各液晶素子に入射した光束は、光路を曲げられることなく各液晶素子を透過する。そこで、ビームピッチは42.3[μm]となる。
【0103】
CPU210は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示する。ここでは、周波数が4000[Hz]のクロック信号が出力される。
【0104】
そして、ポリゴンミラー駆動回路224では、一例として図27(A)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が0.0[V]〜+5.0[V]の駆動信号が生成され、ポリゴンミラー13に出力される。これにより、ポリゴンミラー13は、一例として20000[rpm]で回転駆動される。
【0105】
また、CPU210は、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0106】
これにより、液晶素子駆動回路213では、一例として図27(B)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が−1.7[V]〜+1.7[V]の交流電圧信号s1と、一例として図27(C)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が−1.3[V]〜+1.3[V]の交流電圧信号s2とが生成され、液晶光学デバイス16に出力される。この場合には、各液晶素子に入射した光束は、光路を曲げられて各液晶素子を透過する。
【0107】
ここでは、液晶素子16Aに入射した光束は、+Z側に光路が曲げられ(図28(A)参照)、液晶素子16Bに入射した光束は、−Z側に光路が曲げられる(図28(B)参照)。なお、各液晶素子での光束の曲げ角の大きさ(絶対値)は同じである。
【0108】
そこで、被走査面上では、図29に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaは+10.6[μm]移動し、光スポットSpbは−10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは21.2[μm]となる。このビームピッチは、1200dpiに対応するビームピッチである。
【0109】
また、CPU210は、所定のタイミング毎に、光源14a及び光源14bを個別に点灯させ、光検知センサ18の出力信号に基づいて、前記時間差Δtを求める。そして、CPU210は、時間差Δtからビームピッチを求め、所望のビームピッチであるか否かを判断する。時間差Δtから求めたビームピッチと所望のビームピッチとの差が許容範囲内でなければ、許容範囲内となるように、液晶素子駆動回路213を介して、電圧V1及び電圧V2の少なくとも一方を調整する。
【0110】
ところで、各光源の発光パワーは、V1=1.5[V]、V2=1.5[V]の状態で、感光体ドラム表面に照射される光束の光量が所望の光量となるように調整されている。
【0111】
光学ハウジング25は、支持板を介してプリンタ筐体1044に固定されている。
【0112】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置1010では、ポリゴンミラー13と走査光学系とによって光学系が構成されている。そして、ポリゴンミラー13によって偏向器が構成されている。
【0113】
また、走査制御装置30によって制御装置が構成され、光検知センサ18によって間隔検出センサが構成されている。
【0114】
また、CPU210によるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0115】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置1010によると、2つの光源(14a、14b)、光源14aからの光束が入射する液晶素子16Aと光源14bからの光束が入射する液晶素子16Bを有する液晶光学デバイス16、該液晶光学デバイス16を介した各光束を偏向するポリゴンミラー13、ポリゴンミラー13で偏向された各光束を感光体ドラム1030の表面に集光する走査光学系、液晶光学デバイス16に印加される電圧を制御する走査制御装置30を備えている。
【0116】
各液晶素子は、2つの入力端子(T1、T2)、及び該2つの入力端子に印加される実効電圧の差に応じて、Z軸方向に関して屈折率変化を生じる液晶層168を有している。
【0117】
そして、走査制御装置30は、各液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する。
【0118】
この場合には、出力画像の解像度が600dpiのときの各液晶素子の光透過率と、出力画像の解像度が1200dpiのときの各液晶素子の光透過率との差を、小さくすることができる。そこで、出力画像の解像度の違いによる感光体ドラム1030の表面に集光される光束の光量変化を抑制することができる。そして、解像度に応じて光源の発光パワーを異ならせる必要がないため、光源の駆動回路、制御回路を単純化することができる。
【0119】
従って、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うことが可能となる。
【0120】
また、走査制御装置30は、クロック信号生成回路222で生成された所定の周波数のクロック信号に基づいて、ポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号、及び液晶光学デバイス16の各液晶素子に電圧を印加するための交流電圧信号(s1、s2)を生成している。すなわち、パルス源を共用しているため、電気回路設計の簡易化、部品点数の削減を図ることが可能となる。また、個別にパルス源を設けたときに生じるノイズの影響を考慮する必要がない。さらに、ポリゴンミラー13に駆動信号が入力されているときに、常時、各液晶素子に電圧を印加することができる。
【0121】
また、走査制御装置30は、所定のタイミング毎に、光検知センサ18の出力信号に基づいて、ビームピッチを検出し、該検出結果に応じて液晶光学デバイス16の各液晶素子への印加電圧を調整している。これにより、レーザプリンタ1000のユーザ先への搬入や設置時の振動、あるいは、ユーザ先での使用時の装置内部の温度変化や経時変動等により、ビームピッチが変化した場合でも、安定的にほぼ所望のビームピッチとすることができる。
【0122】
また、解像度が600dpiのときに各入力端子に印加されている実効電圧が、解像度が1200dpiのときに入力端子T1に印加されている実効電圧と入力端子T2に印加されている各実効電圧の中間値と等しい。この場合には、解像度の切替時の印加電圧の変化が小さくなり、解像度の切替による液晶素子の光透過率の変化を更に小さくすることができる。
【0123】
また、2つの光源(14a、14b)を有しているため、同時に複数の光走査を行うことができる。
【0124】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能である。
【0125】
さらに、光走査装置1010が2つの光源を備えているため、高速で画像を形成することが可能である。また、形成される画像の高密度化を図ることも可能である。
【0126】
また、解像度が1200dpiのときのポリゴンミラー13の回転数を、解像度が600dpiのときのポリゴンミラー13の回転数の2倍としている。そこで、感光体ドラム1030の回転数(感光体ドラム表面の周速)を600dpiのときと同じにすることができる。これにより、解像度が1200dpiのときにおいても、600dpiのときと同等の画像出力速度を達成することができる。なお、この場合、1200dpiのときに感光体ドラム表面を照射する光束の光量は、600dpiのときと同じ光量にする必要がある。
【0127】
また、ネットワークを介して、レーザプリンタ1000と、電子演算装置(コンピュータ等)、画像情報通信システム(ファクシミリ等)等とを接続することにより、1台の画像形成装置で複数の機器からの出力を処理することができる情報処理システムを形成することができる。また、ネットワーク上に複数の画像形成装置を接続すれば、各出力要求から各画像形成装置の状態(ジョブの混み具合、電源が入っているかどうか、故障しているかどうか等)を知ることができ、一番状態の良い(使用者の希望に一番適した)画像形成装置を選択し、画像形成を行うことができる。
【0128】
なお、上記実施形態では、デフォルトの解像度が600dpiに設定されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、デフォルトの解像度が1200dpiに設定されていても良い。
【0129】
但し、この場合には、CPU210は、初期化処理において、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0130】
そして、CPU210は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として600dpiが選択されたことの通知を受けると、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0131】
また、上記実施形態では、クロック信号生成回路222で生成されるクロック信号が、周波数2000[Hz]、振幅5.0[V](バイアス成分:+2.5[V])の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0132】
また、上記実施形態では、(V1−V2)=0.4[V]とする際に、V1=1.7[V]、V2=1.3[V]とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0133】
また、上記実施形態では、入力端子T1と入力端子T2に同じ電位の電圧を印加する際に、V1=1.5[V]、V2=1.5[V]とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0134】
また、上記実施形態では、液晶光学デバイス16が2つの液晶素子を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、液晶光学デバイス16が前記2つの液晶素子の一方のみを有していても良い。
【0135】
例えば、図30に示されるように、液晶光学デバイス16が液晶素子16Aのみを有する場合に、走査制御装置30は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、被走査面上では、図31に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+21.2[μm]移動する。
【0136】
また、液晶光学デバイス16が液晶素子16Bのみを有しても良い。この場合には、走査制御装置30は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、被走査面上では、図32に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpbが−21.2[μm]移動する。
【0137】
また、上記実施形態では、ビームピッチが42.3[μm]となるように、光源ユニットが調整されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0138】
例えば、ビームピッチが、1200dpiに対応するビームピッチである21.2[μm]となるように、光源ユニットが調整されていても良い。
【0139】
この場合、CPU210は、初期化処理において、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.3[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.7[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、液晶素子16Aに入射した光束は、−Z側に光路が曲げられ、液晶素子16Bに入射した光束は、+Z側に光路が曲げられる。なお、各液晶素子での光束の曲げ角の大きさ(絶対値)は同じである。
【0140】
そして、被走査面上では、図33に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaは−10.6[μm]移動し、光スポットSpbは+10.6[μm]移動する。これにより、ビームピッチは42.3[μm]となる。このビームピッチは、600dpiに対応するビームピッチである。
【0141】
また、上記実施形態では、液晶素子16Aの入力端子T1と液晶素子16Bの入力端子T1に同じ電圧V1が印加され、液晶素子16Aの入力端子T2と液晶素子16Bの入力端子T2に同じ電圧V2が印加される場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0142】
例えば、図34に示されるように、各入力端子に個別に電圧が印加されても良い。ここでは、液晶素子16Aの入力端子T1に実効電圧V1aが印加され、液晶素子16Bの入力端子T1に実効電圧V1bが印加され、液晶素子16Aの入力端子T2に実効電圧V2aが印加され、液晶素子16Bの入力端子T2に実効電圧V2bが印加されている。そして、走査制御装置30の液晶素子駆動回路213は、V1aに対応する交流電圧信号s1a、V2aに対応する交流電圧信号s2a、V1bに対応する交流電圧信号s1b、及びV2bに対応する交流電圧信号s2bを生成する。
【0143】
この場合に、CPU210は、解像度を600dpiから1200dpiに切り替える際に、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示しても良い。
【0144】
同様に、CPU210は、解像度を600dpiから1200dpiに切り替える際に、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示しても良い。いずれにおいても、ビームピッチを21.2[μm]とすることができる。
【0145】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が出力画像の解像度として600dpiと1200dpiに対応している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1200dpiと2400dpiに対応していても良い。
【0146】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が出力画像の解像度として2種類の解像度に対応している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光走査装置1010が出力画像の解像度として600dpi、1200dpi、2400dpiの3種類の解像度に対応していても良い。
【0147】
この場合、CPU210は、解像度が600dpiのときに、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として2400dpiが選択されたことの通知を受けると、2400dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示する。
【0148】
これにより、被走査面上では、図35に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+21.2[μm]移動し、光スポットSpbが−10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは10.6[μm]となる。このビームピッチは、2400dpiに対応するビームピッチである。
【0149】
また、この場合、CPU210は、解像度が1200dpiのときに、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として2400dpiが選択されたことの通知を受けると、2400dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示する。
【0150】
これにより、被走査面上では、図36に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは10.6[μm]となる。このビームピッチは、2400dpiに対応するビームピッチである。なお、このとき、光スポットSpaを移動させるのに代えて、光スポットSpbを−10.6[μm]移動させ、ビームピッチを10.6[μm]としても良い。
【0151】
また、上記実施形態では、光検知センサ18が、書込の開始情報と移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報とを含む信号を出力する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、書込の終了を検知するための光検知センサが別に設けられているときには、該光検知センサに移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報を出力する機能を持たせても良い。
【0152】
また、書込の開始を検知するための光検知センサ及び書込の終了を検知するための光検知センサの両方を設け、2つの光検知センサに、移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報を出力する機能を持たせても良い。この場合には、走査線の傾き情報を得ることが可能となる。
【0153】
また、書込の開始を検知するための光検知センサ及び書込の終了を検知するための光検知センサの両方を設け、2つの光検知センサでの光検知の時間差から走査速度の変化を検出し、該検出された走査速度の変化に対して、画素クロック信号の基準周波数を再設定することができる。
【0154】
また、上記実施形態では、前記第1受光部181が長方形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知用光束が通過する2辺がs方向に平行な形状であれば良い。
【0155】
また、上記実施形態では、前記第2受光部182が、平行四辺形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知用の光束が通過する2辺がm方向に対して傾斜している形状であれば良い。
【0156】
また、上記実施形態において、2つの光源(14a、14b)は、それぞれ垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)であっても良い。
【0157】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が2つの光源を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光走査装置1010が1つの光源あるいは3つ以上の光源を有しても良い。
【0158】
また、上記実施形態において、前記2つの光源(14a、14b)に代えて、複数の発光部を有する半導体レーザアレイを含む1つの光源を用いても良い。この場合に、半導体レーザアレイとして、垂直共振器型の面発光レーザアレイを用いることができる。
【0159】
また、光検知センサ18の出力信号から、感光体ドラム1030の表面での光スポットの副走査方向の位置ずれ量(以下では、「副走査ずれ量」と略称する)を検出することができる。そして、対応する液晶素子で光束の光路を曲げることによって、副走査ずれ量を小さくすることができる。
【0160】
例えば、感光体ドラム1030の表面における光スポット位置が設計上の位置のときに、検知用光束が第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間を予め求め、基準時間tsとしてフラッシュメモリ211に格納しておく。
【0161】
次に、所定のタイミング毎に、光源を点灯させ、検知用光束が第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間を求め、基準時間tsとの差Δtを算出する。この差Δtは、光検知センサ18における検知用光束の移動経路の基準経路からのずれ量Δhと、次の(3)式の関係がある。ここで、Vは検知用光束の移動速度(走査速度)である。そして、ずれ量Δhは、副走査ずれ量と相関関係がある。
【0162】
Δh=(V/tanα)×Δt ……(3)
【0163】
そこで、CPU210は、所定のタイミング毎に、Δtがほぼ0となるように、液晶光学デバイス16への印加電圧を調整すると、感光体ドラム1030の表面における光スポット位置を設計上の位置に維持することができる。
【0164】
また、上記実施形態では、光検知センサ18の出力信号に基づいて、ビームピッチを求める場合について説明したが、これに限らず、例えば、図37に示されるカラープリンタ2000の場合には、転写ベルト2080上に形成されたトナー像(検出パターン)の画素密度を検出し(例えば、特開2008−026746号公報、特開2007−164137号公報参照)、その検出結果からビームピッチを求めても良い。
【0165】
また、上記実施形態において、ビームピッチの変動が小さく、ビームピッチを求める必要がない場合には、前記光検知センサ18に代えて、書込の開始情報のみを含む信号を出力する光検知センサを用いても良い。
【0166】
また、上記実施形態では、解像度に応じてポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号の周波数が切り替わる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、解像度が変化してもポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号の周波数は一定であっても良い。
【0167】
解像度が600dpiのときと1200dpiのときとでポリゴンミラー13が同じ回転数で駆動されている場合に、解像度が600dpiから1200dpiに切り替わると、感光体ドラムの回転数(すなわち、感光体ドラム表面の周速)を半分にする必要がある。これに伴い、感光体ドラム表面を照射する光束の光量も、半分にする必要がある。
【0168】
この場合に、仮に、解像度が600dpiのときにV1=0[V]、V2=0[V]とし、解像度が1200dpiのときにV1=1.7[V]、V2=1.3[V]とすると、解像度の切替により液晶素子の光透過率が変化するため、単純に光源の発光パワーを半分にすると、感光体ドラム表面では光量不足となる。そこで、液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正が必要となる(例えば、特許文献5参照)。ここでの補正量は、環境温度などの影響を受けて、ばらつきが大きいため、光量を高い精度で測定するための高価なセンサが必要になる。
【0169】
一方、上記実施形態では、解像度が600dpiのときにV1=1.5[V]、V2=1.5[V]とし、解像度が1200dpiのときにV1=1.7[V]、V2=1.3[V]としているため、解像度の切替による液晶素子の光透過率の変化は非常に小さい。従って、液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正は、ほとんど不要である。なお、仮に液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正を行う場合であっても、予め実験的あるいは計算で求めた補正値(固定値)を用いることができ、光量を高い精度で測定するための高価なセンサは不要である。
【0170】
また、上記実施形態における、電位差(V1−V2)と光スポットの移動距離Δzとの関係は一例であり、これに限定されるものではない。
【0171】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置1010を備えた画像形成装置であれば良い。
【0172】
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0173】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0174】
また、例えば、図37に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0175】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0176】
各感光体ドラムは、図37中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットがそれぞれ配置されている。
【0177】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。この帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光走査が行われ、各感光体ドラムに潜像が形成される。
【0178】
そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が順次転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0179】
光走査装置2010は、前記液晶光学デバイス16と同様な液晶光学デバイス、及び前記走査制御装置30と同様な走査制御装置を色毎に有している。従って、前記光走査装置1010と同様な効果を得ることができる。
【0180】
そして、カラープリンタ2000は、前記レーザプリンタ1000と同様な効果を得ることができる。
【0181】
また、このカラープリンタ2000において、光走査装置を1色毎に設けても良いし、2色毎に設けても良い。
【0182】
また、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。特に、コピーモードでの出力画像の解像度とプリンタモードでの出力画像の解像度とが異なる複合機には好適である。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上説明したように、本発明の光走査装置によれば、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成するのに適している。
【符号の説明】
【0184】
11a…偏向器側走査レンズ(光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14a…光源、14b…光源、16…液晶光学デバイス、16A…液晶素子、16B…液晶素子、18…光検知センサ(間隔検出センサ)、30…走査制御装置(制御装置)、168…液晶層、1000…レーザプリンタ(画像形成装置)、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)、T1…入力端子、T2…入力端子。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0185】
【特許文献1】特開平9−131920号公報
【特許文献2】特開平3−116112号公報
【特許文献3】特開平5−19190号公報
【特許文献4】特開2001−166237号公報
【特許文献5】特開2004−212501号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光束により被走査面を走査する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この場合、画像形成装置は光走査装置を備え、感光性を有するドラムの軸方向(主走査方向)に偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いてレーザ光を走査しつつ、ドラムを副走査方向に回転させて潜像を形成する方法が一般的である。
【0003】
また、近年、画像形成装置には、画像の高密度化及び画像出力の高速化が求められている。上記高密度化と高速化を両立させる方法の一つとして、複数の光束で同時に被走査面を走査するいわゆるマルチビーム化が考えられた。
【0004】
そして、複数の光源を用いてマルチビーム化を実現するためには、被走査面上に形成される複数の光スポットの副走査方向に関する間隔(以下では、便宜上、「ビームピッチ」ともいう)の調整が必要である。ビームピッチの調整方法としては、複数の光源が含まれる光源ユニットを、光束の射出方向に平行な軸回りに回転する方法や、ビームピッチ調整用の光学素子を用いる方法(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
【0005】
また、高密度化に対しては、被走査面上における光スポットのビーム径の小径化が必要であり、いくつかの方法が提案されている(例えば、特許文献2〜特許文献4参照)。
【0006】
ところで、ビームピッチの調整手段として、液晶素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。液晶素子は、低電圧駆動、無発熱、無騒音、無振動、小型/軽量等の優れた特徴を有しているため、ビームピッチの調整に適している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の観点からすると、光束により被走査面を主走査方向に走査する光走査装置であって、少なくとも1つの光源と;前記少なくとも1つの光源からの光束を前記被走査面上に集光するとともに、前記被走査面上の光スポットを主走査方向に移動させる光学系と;前記少なくとも1つの光源と前記被走査面との間の光束の光路上に配置され、2つの入力端子と、該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、主走査方向に直交する副走査方向に関して、屈折率変化を生じる液晶層とを有する少なくとも1つの液晶素子と;前記少なくとも1つの液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、前記2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する制御装置と;を備える光走査装置である。
【0008】
これによれば、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うことが可能となる。
【0009】
本発明は、第2の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と;前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光束を走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;を備える画像形成装置である。
【0010】
これによれば、本発明の光走査装置を備えているため、結果として、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置の概略構成を示す図である。
【図3】光源ユニットを説明するための図である。
【図4】光源ユニットの光学ハウジングへの取り付け状態を説明するための図である。
【図5】光源ユニットの調整後におけるビームピッチを説明するための図である。
【図6】液晶光学デバイスを説明するための図である。
【図7】液晶素子の構成を説明するための図である。
【図8】図8(A)は、液晶素子の透明電極を説明するための図であり、図8(B)は、液晶素子の有効領域を説明するための図である。
【図9】液晶素子における20℃での印加される実効電圧とリタデーションの関係(電圧−位相変調特性)を説明するための図である。
【図10】各入力端子に同じ電位の電圧が印加されたときの液晶分子の状態を説明するための図である。
【図11】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの液晶分子の状態を説明するための図である。
【図12】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの電位分布を説明するための図である。
【図13】各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたときの屈折率分布を説明するための図である。
【図14】(V1−V2)とΔzとの関係を説明するための図である。
【図15】液晶光学デバイスにおける電圧信号の配線を説明するための図である。
【図16】ホルダを説明するための図である。
【図17】光学的に像面に略平行な面を説明するための図である。
【図18】光検知センサの概略構成を説明するための図である。
【図19】光検知センサにおける検知用光束Aの移動経路Aを説明するための図である。
【図20】移動経路Aのときの光検知センサの出力信号を説明するための図である。
【図21】光検知センサにおける検知用光束Bの移動経路B説明するための図である。
【図22】移動経路Bときの光検知センサの出力信号を説明するための図である。
【図23】光検知センサの出力信号における各検知用光束の時間差Δtを説明するための図である。
【図24】副走査対応方向に関する各検知用光束の入射位置の差Psを説明するための図である。
【図25】走査制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図26】図26(A)〜図26(C)は、それぞれ解像度が600dpiのときの走査制御装置の出力信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図27】図27(A)〜図27(C)は、それぞれ解像度が1200dpiのときの走査制御装置の出力信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図28】図28(A)及び図28(B)は、それぞれ解像度が1200dpiのときの各液晶素子での光束の曲がりを説明するための図である。
【図29】解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図30】液晶光学素子の変形例1を説明するための図である。
【図31】変形例1の液晶光学素子を用い、解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図(その1)である。
【図32】変形例1の液晶光学素子を用い、解像度を600dpiから1200dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図(その2)である。
【図33】解像度を1200dpiから600dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図34】液晶光学デバイスにおける電圧信号の配線の変形例を説明するための図である。
【図35】解像度を600dpiから2400dpiに切り替えるときの各光スポットの移動を説明するための図である。
【図36】解像度を1200dpiから2400dpiに切り替えるときの光スポットの移動を説明するための図である。
【図37】カラープリンタの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図29を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0013】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0014】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0015】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
【0016】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0017】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0018】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0019】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
【0020】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0021】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0022】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0023】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0024】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0025】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0026】
ここでは、レーザプリンタ1000は、出力画像の解像度として、600dpi及び1200dpiに対応可能であり、ユーザがいずれかを選択することができる。そして、選択された解像度は、プリンタ制御装置1060から光走査装置1010に通知されるようになっている。なお、デフォルトの解像度は、600dpiに設定されているものとする。
【0027】
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
【0028】
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、2つの光源(14a、14b)、2つのカップリングレンズ(15a、15b)、液晶光学デバイス16、シリンドリカルレンズ17、光検知センサ18、光検知用ミラー19、及び走査制御装置30(図2では図示省略、図25参照)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング25(図示省略)の所定位置に組み付けられている。
【0029】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、シリンドリカルレンズ17の光軸に沿った方向をX軸方向、ポリゴンミラー13の回転軸に平行な方向をZ軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0030】
光源14a及び光源14bは、いずれも発振波長が655nmの半導体レーザである。ここでは、各光源から射出される光束は直線偏光であり、その振動方向はZ軸方向に平行となるように設定されている。
【0031】
カップリングレンズ15aは、光源14aから射出された光束を略平行光とする。また、カップリングレンズ15bは、光源14bから射出された光束を略平行光とする。
【0032】
2つの光源(14a、14b)と2つのカップリングレンズ(15a、15b)は、一例として図3に示されるように、円筒部21aを有するベース部材21に所定の位置関係で保持され、ユニット化されている。以下では、このユニットを「光源ユニット」という。
【0033】
光源ユニットは、一例として図4に示されるように、円筒部21aが、光学ハウジング25の円形の開口部に挿入されている。そして、光源ユニットは、X軸に平行な軸回りに回動が可能である。この回動により、感光体ドラム1030上に形成される光源14aから射出された光束による光スポット(Spaという)と光源14bから射出された光束による光スポット(Spbという)の副走査方向に関する間隔(ビームピッチあるいは走査線間隔)を所望の値に調整することができる。ここでは、光源ユニットは、一例として図5に示されるように、ビームピッチが42.3[μm]となるように、調整されている。このビームピッチは、出力画像の解像度として600dpiに対応している。なお、光源ユニットは、調整後、締結ネジあるいはスプリング部材等によって光学ハウジング25に保持、固定されている。
【0034】
液晶光学デバイス16は、一例として図6に示されるように、2つの液晶素子(16A、16B)を有している。液晶素子16Aと液晶素子16Bは、同じ構造の液晶素子であり、ここでは、液晶素子16Bは、液晶素子16AをX軸に平行な軸回りに180度回転させた状態と同じ姿勢で、液晶素子16Aの−Y側に配置されている。
【0035】
そこで、代表として、液晶素子16Aの構造、作用について説明する。
【0036】
液晶素子16Aは、一例として図7に示されるように、液晶層168が配向膜(165、166)及び透明電極(163、164)を介して2枚のガラス基板(161、162)で挟持されている。そして、各ガラス基板の周縁部は、シール材で密封され、いわゆるセル構造となっている。
【0037】
液晶層168の厚さ(X軸方向の長さ)は、数[μm]〜数十[μm]程度である。ここでは、液晶層として、ネマティック型の液晶分子がホモジニアスに配列された液晶層を用いている。
【0038】
液晶層168の+X側にある透明電極164は、グラウンドに接続されている。
【0039】
液晶層168の−X側にある透明電極163は、一例として図8(A)に示されるように、それぞれY軸方向を長手方向とし、Z軸方向に沿って配列された複数のストライプ電極163a、及び各ストライプ電極の+Y側端部と接続され所定の抵抗値を有する細線電極163bを有している。
【0040】
そして、細線電極163bの−Z側端部に入力端子T1が、+Z側端部に入力端子T2が接続されている。また、この場合の有効領域が、一例として図8(B)に示されている。なお、有効領域とは、外部からの電気信号により駆動され、入射光の位相を変調することが可能な領域をいう。
【0041】
各入力端子に印加される電圧は、周波数が数百Hzから数kHz程度で、直流成分をもたない交流電圧である。そして、以下では、入力端子T1に印加される交流電圧の実効値をV1、入力端子T2に印加される交流電圧の実効値をV2という。
【0042】
液晶素子における20℃での印加される実効電圧とリタデーションの関係(電圧−位相変調特性)の一例が図9に示されている。
【0043】
(1)各入力端子に電圧が印加されていないとき
【0044】
V1=0[V]、V2=0[V]のとき、液晶層168の液晶分子は、Z軸方向に対してほぼ平行な配向状態を示す(図7参照)。通常は、応答性を良好にするため、配向膜の作用により液晶分子がZ軸方向に対してわずかにX軸方向に傾斜するように設定されている。すなわち、液晶分子はZ軸方向に対して完全に平行ではない。なお、液晶分子のZ軸方向に対するX軸方向への傾斜角は「配向角」と呼ばれている。
【0045】
各入力端子に電圧が印加されると、液晶層168の液晶分子は、印加電圧に応じた配向角を有する配向状態を示す。
【0046】
(2)各入力端子に同じ電位の電圧が印加されたとき
【0047】
V1=1.5[V]、V2=1.5[V]のときの液晶分子の配向状態が図10に示されている。なお、図10では、便宜上、液晶分子は、液晶層168の厚さ方向(ここでは、X軸方向)に関して同じ配向角としている。しかしながら、実際は、配向膜付近の液晶分子は配向膜の影響により図7に示される配向角を保っており、配向膜から離れるにつれて、すなわち液晶層168の厚さ方向における中央に近づくにつれて、配向角が大きくなる。
【0048】
この場合、液晶層168では、Z軸方向に関して電位が一様であるため、液晶素子16Aに入射した光束は、その光路が曲げられることなく透過する。
【0049】
(3)各入力端子に異なる電位の電圧が印加されたとき
【0050】
V1=1.7[V]、V2=1.3[V]のときの液晶分子の配向状態が図11に示されている。
【0051】
この場合、液晶層168では、有効領域の+Z側端部と−Z側端部との間に、直線的な電位勾配(図12参照)が生じ、該電位勾配に従って液晶分子の配向状態が変化する。そして、電位勾配に応じて、有効領域の+Z側端部と−Z側端部との間に、位相差Δφに相当する屈折率分布(屈折率勾配)が生じる(図13参照)。そこで、液晶素子16Aに入射した光束は、Z軸方向に関して、その光路が電位勾配に応じた角度(以下では、「偏向角」ともいう)だけ曲げられる。なお、Z軸方向に関する有効領域の幅をH、有効領域におけるZ軸方向の両端部間の位相差をΔφとすると、偏向角θは、tanθ=Δφ/Hで表される。
【0052】
ところで、出力画像の解像度を1200dpiにするには、ビームピッチを21.2[μm]とする必要がある。ビームピッチを42.3[μm]から21.2[μm]にするには、副走査方向に関して、Spaを+10.6[μm]移動させ、Spbを−10.6[μm]移動させる必要がある。
【0053】
感光体ドラム表面での光スポットの副走査方向の移動量をΔz、Z軸方向に関する有効領域の幅をH、ポリゴンミラー14と感光体ドラム1030との間の光路上にある光学系の副走査対応方向に関する倍率をm、シリンドリカルレンズ17の焦点距離をFcyl、有効領域におけるZ軸方向の両端部間の位相差をΔφとすると、次の(1)式の関係がある。
【0054】
Δφ=(Δz×H)/(m×Fcyl) ……(1)
【0055】
H=2.0[mm]、m=1.5倍、Fcyl=100[mm]とすると、光スポットを副走査方向に+10.6[μm]移動させるためには、入射光束の波長λ(ここでは、655nm)を単位として、Δφ=0.22[λ]となる位相分布(勾配)を発生させる必要がある。
【0056】
例えば、液晶素子16Aが、(V1−V2)=1.0[V]のときに、Δφ=0.55[λ]となる特性を有している場合に、Δφ=0.22[λ]の位相差を得るには、(V1−V2)=0.4[V]とすれば良い。
【0057】
同様に、光スポットを副走査方向に−10.6[μm]移動させるためには、Δφ=−0.22[λ]となる位相分布(勾配)を発生させる必要がある。
【0058】
液晶素子16Aにおける(V1−V2)とΔzとの関係が図14に示されている。
【0059】
また、X軸方向に平行に光束が液晶素子16Aに入射し、液晶層168の屈折率をn1、配向膜165の屈折率をn2とすると、液晶層168と配向膜165の界面でのフレネル反射の反射率rは、次の(2)式で示される。そこで、液晶層168の光透過率tは、t=1−rである。
【0060】
r=|(n1−n2)/(n1+n2)| ……(2)
【0061】
一例として、n1=1.48(no:常光屈折率)〜1.80(ne:異常光屈折率)、n2=1.80の場合について説明する。各入力端子に電圧が印加されてなく、n1=1.66のときは、光透過率t=1−|(1.66−1.80)/(1.66+1.80)|=0.959となる。一方、各入力端子に電圧が印加され、n1=1.50のときは、光透過率t=1−|(1.50−1.80)/(1.50+1.80)|=0.909となる。すなわち、この場合は、各入力端子に電圧が印加されると、光透過率は5%程度低下する。
【0062】
図15には、液晶光学デバイス16における配線パターンが示されている。ここでは、一例として、各液晶素子の入力端子T1に同じ電圧V1が印加され、各液晶素子の入力端子T2に同じ電圧V2が印加されるように配線部材が配線されている。
【0063】
そして、液晶光学デバイス16は、一例として図16に示されるように、ホルダ22に保持されて、光学ハウジング25に取り付けられている。
【0064】
このホルダ22には、液晶素子16Aを透過した光束を整形するための開口部(開口部22Aという)、及び液晶素子16Bを透過した光束を整形するための開口部(開口部22Bという)が形成されている。
【0065】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、ホルダ22の開口部22Aを通過した光束及び開口部22Bを通過した光束を、それぞれポリゴンミラー13の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。すなわち、線像を形成する。
【0066】
各光源とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、2つのカップリングレンズ(15a、15b)と液晶光学デバイス16とシリンドリカルレンズ17とから構成されている。
【0067】
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、Z軸方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、シリンドリカルレンズ17からの光束を偏向する。
【0068】
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
【0069】
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0070】
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
【0071】
光検知センサ18には、ポリゴンミラー13で偏向され、走査光学系を介した光束のうち画像情報の書き込み開始前の光束の一部が、検知用光束として、光検知用ミラー19を介して入射する。光検知センサ18における検知用光束の入射位置は、ポリゴンミラー13の回転に伴って、主走査対応方向(ここでは、便宜上、m方向とする)に移動する。
【0072】
光検知センサ18は、一例として図17に示されるように、その受光面が光学的に像面(設計上の像面)に略平行となるように配置されている。これにより、検知用光束は、主走査方向に関して感光体ドラム1030の延長上を移動することと等価になり、検知用光束に対する走査光学系のリニアリティ(走査等速性)を確保しておけば、光検知センサ18を通過する検知用光束の移動速度を、感光体ドラム1030の画像形成領域(有効走査領域)での走査速度と同じにすることができ、検知精度を向上させることができる。
【0073】
なお、図17における符号18´は、光検知用ミラー19がないと仮定したときの光検知センサ18の位置を示している。
【0074】
また、光検知センサ18の受光面の法線方向は、受光面での反射光が光源に戻らないように、検知用光束の入射方向に対して傾斜している(図17参照)。これにより、光検知センサ18の受光面での反射光が、光量制御に影響を与えることを回避できる。
【0075】
光検知センサ18は、一例として図18に示されるように、2つの受光部(第1受光部181、第2受光部182)を有する受光素子、該受光素子からの受光量に応じた信号(光電変換信号)が入力されるアンプ(AMP)183、該アンプ183の出力信号レベルと予め設定されている基準レベルVsとを比較し、その比較結果を出力する比較器(CMP)184を有している。この比較器184の出力信号は走査制御装置30に供給される。
【0076】
受光素子の各受光部は、副走査対応方向(ここでは、便宜上、s方向とする)の位置によってm方向の互いの間隔が異なっている。
【0077】
第1受光部181は、一例として長方形の受光部であり、長手方向がs方向と一致するように配置されている。すなわち、検知用光束が通過する2辺がいずれもs方向に平行である。
【0078】
第2受光部182は、一例として平行四辺形の受光部であり、第1受光部181の+m側に配置されている。そして、第2受光部182の長手方向は、受光面内において第1受光部181の長手方向に対して角度α(0<α<90°)だけ傾斜している。すなわち、検知用光束が通過する2辺がいずれもm方向に対して傾斜している。
【0079】
アンプ183では、入力信号の反転及び増幅が行われる。従って、受光素子の受光量が多いほど、アンプ183の出力信号レベルは低くなる。
【0080】
前記基準レベルVsは、検知用光束が受光素子で受光されたときのアンプ183の出力信号レベル(最低値)よりも若干高いレベルに設定されている。そこで、各受光部のいずれかが検知用光束を受光したときに、比較器184での判断結果が変化し、それに応じて比較器184の出力信号が変化する。
【0081】
なお、以下では、便宜上、光源14aから射出された光束による検知用光束を「検知用光束A」といい、光源14bから射出された光束による検知用光束を「検知用光束B」という。
【0082】
光検知センサ18の受光素子における検知用光束Aの入射位置の軌跡の例が図19に示されている。なお、受光素子における検知用光束Aの入射位置の移動経路を「経路A」とする。そして、このときの比較器184の出力信号が図20に示されている。ここでは、検知用光束Aが第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間をtaとする。
【0083】
また、光検知センサ18の受光素子における検知用光束Bの入射位置の軌跡の例が図21に示されている。なお、受光素子における検知用光束Bの入射位置の移動経路を「経路B」とする。そして、このときの比較器184の出力信号が図22に示されている。ここでは、検知用光束Bが第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間をtbとする。
【0084】
そこで、時間tbと時間taの差である時間差Δt(図23参照)は、s方向に関する経路Aと経路Bの差Ps(図24参照)に対応することとなる。差Psは、ビームピッチと相関関係があるため、時間差Δtからビームピッチを知ることができる。なお、時間差Δtとビームピッチとの関係は予め実験的あるいは理論的に求められ、走査制御装置30のフラッシュメモリ211(図25参照)に格納されている。
【0085】
また、第1受光部181が検知用光束を受光したときの、比較器184の出力信号における立下りタイミングは、s方向における検知用光束の入射位置の影響を受けない(図23参照)。そこで、第1受光部181が検知用光束を受光したときの、比較器184の出力信号における立下りタイミングから書込開始のタイミングを求めることができる。
【0086】
走査制御装置30は、一例として図25に示されるように、CPU210、フラッシュメモリ211、RAM212、液晶素子駆動回路213、IF(インターフェース)214、画素クロック生成回路215、画像処理回路216、書込制御回路219、光源駆動回路221、クロック信号生成回路222、周波数選択回路223、及びポリゴンミラー駆動回路224などを有している。なお、図25における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0087】
IF(インターフェース)214は、プリンタ制御装置1060との双方向の通信を制御する通信インターフェースである。上位装置からの画像データは、IF(インターフェース)214を介して供給される。
【0088】
画素クロック生成回路215は、光検知センサ18の出力信号に基づいて画素クロック信号を生成する。ここで生成された画素クロック信号は、画像処理回路216及び書込制御回路219に供給される。また、光検知センサ18の出力信号は、同期信号として書込制御回路219に出力される。
【0089】
画像処理回路216は、プリンタ制御装置1060を介して上位装置から受信した画像情報をラスター展開するとともに、所定の中間調処理などを行った後、画素クロック信号を基準とした各画素の階調を表す画像データを光源毎に作成する。そして、画像処理回路216は、光検知センサ18の出力信号に基づいて走査開始を検出すると、画素クロック信号に同期して画像データを書込制御回路219に出力する。
【0090】
書込制御回路219は、画像処理回路216からの画像データ、画素クロック生成回路215からの画素クロック信号及び同期信号に基づいて、光源毎にパルス変調信号を生成する。
【0091】
光源駆動回路221は、書込制御回路219からのパルス変調信号に基づいて各光源を駆動する。
【0092】
クロック信号生成回路222は、周波数が2000[Hz]、振幅が5.0[V](バイアス成分:+2.5[V])のクロック信号を生成する。ここで生成されたクロック信号は、周波数選択回路223に出力される。
【0093】
周波数選択回路223は、クロック信号生成回路222からのクロック信号に基づいて、CPU210の指示により、所定の周波数のクロック信号をポリゴンミラー駆動回路224及び液晶素子駆動回路213に出力する。
【0094】
ポリゴンミラー駆動回路224は、周波数選択回路223からのクロック信号に基づいて、ポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号を生成し、ポリゴンミラー13に出力する。
【0095】
液晶素子駆動回路213は、周波数選択回路223からのクロック信号に基づいて、CPU210の指示により、電圧V1を実効電圧とする交流電圧信号s1、及び電圧V2を実効電圧とする交流電圧信号s2を生成する。ここで生成された各交流電圧信号は、液晶光学デバイス16に出力される。これにより、液晶光学デバイス16の各液晶素子の入力端子T1に実効電圧V1が印加され、入力端子T2に実効電圧V2が印加される。
【0096】
フラッシュメモリ211には、CPU210にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、プログラムの実行に用いられる各種データなどが格納されている。
【0097】
RAM212は、作業用のメモリである。
【0098】
CPU210は、フラッシュメモリ211に格納されているプログラムに従って動作し、光走査装置1010の全体を制御する。
【0099】
CPU210は、初期化処理において、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示する。ここでは、周波数が2000[Hz]のクロック信号が出力される。
【0100】
そして、ポリゴンミラー駆動回路224では、一例として図26(A)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が0.0[V]〜+5.0[V]の駆動信号が生成され、ポリゴンミラー13に出力される。これにより、ポリゴンミラー13は、一例として10000[rpm]で回転駆動される。
【0101】
また、CPU210は、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0102】
これにより、液晶素子駆動回路213では、一例として図26(B)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が−1.5[V]〜+1.5[V]の交流電圧信号s1と、一例として図26(C)に示されるように、周波数が2000[Hz]で電圧が−1.5[V]〜+1.5[V]の交流電圧信号s2とが生成され、液晶光学デバイス16に出力される。この場合には、各液晶素子に入射した光束は、光路を曲げられることなく各液晶素子を透過する。そこで、ビームピッチは42.3[μm]となる。
【0103】
CPU210は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示する。ここでは、周波数が4000[Hz]のクロック信号が出力される。
【0104】
そして、ポリゴンミラー駆動回路224では、一例として図27(A)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が0.0[V]〜+5.0[V]の駆動信号が生成され、ポリゴンミラー13に出力される。これにより、ポリゴンミラー13は、一例として20000[rpm]で回転駆動される。
【0105】
また、CPU210は、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0106】
これにより、液晶素子駆動回路213では、一例として図27(B)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が−1.7[V]〜+1.7[V]の交流電圧信号s1と、一例として図27(C)に示されるように、周波数が4000[Hz]で電圧が−1.3[V]〜+1.3[V]の交流電圧信号s2とが生成され、液晶光学デバイス16に出力される。この場合には、各液晶素子に入射した光束は、光路を曲げられて各液晶素子を透過する。
【0107】
ここでは、液晶素子16Aに入射した光束は、+Z側に光路が曲げられ(図28(A)参照)、液晶素子16Bに入射した光束は、−Z側に光路が曲げられる(図28(B)参照)。なお、各液晶素子での光束の曲げ角の大きさ(絶対値)は同じである。
【0108】
そこで、被走査面上では、図29に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaは+10.6[μm]移動し、光スポットSpbは−10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは21.2[μm]となる。このビームピッチは、1200dpiに対応するビームピッチである。
【0109】
また、CPU210は、所定のタイミング毎に、光源14a及び光源14bを個別に点灯させ、光検知センサ18の出力信号に基づいて、前記時間差Δtを求める。そして、CPU210は、時間差Δtからビームピッチを求め、所望のビームピッチであるか否かを判断する。時間差Δtから求めたビームピッチと所望のビームピッチとの差が許容範囲内でなければ、許容範囲内となるように、液晶素子駆動回路213を介して、電圧V1及び電圧V2の少なくとも一方を調整する。
【0110】
ところで、各光源の発光パワーは、V1=1.5[V]、V2=1.5[V]の状態で、感光体ドラム表面に照射される光束の光量が所望の光量となるように調整されている。
【0111】
光学ハウジング25は、支持板を介してプリンタ筐体1044に固定されている。
【0112】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置1010では、ポリゴンミラー13と走査光学系とによって光学系が構成されている。そして、ポリゴンミラー13によって偏向器が構成されている。
【0113】
また、走査制御装置30によって制御装置が構成され、光検知センサ18によって間隔検出センサが構成されている。
【0114】
また、CPU210によるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0115】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置1010によると、2つの光源(14a、14b)、光源14aからの光束が入射する液晶素子16Aと光源14bからの光束が入射する液晶素子16Bを有する液晶光学デバイス16、該液晶光学デバイス16を介した各光束を偏向するポリゴンミラー13、ポリゴンミラー13で偏向された各光束を感光体ドラム1030の表面に集光する走査光学系、液晶光学デバイス16に印加される電圧を制御する走査制御装置30を備えている。
【0116】
各液晶素子は、2つの入力端子(T1、T2)、及び該2つの入力端子に印加される実効電圧の差に応じて、Z軸方向に関して屈折率変化を生じる液晶層168を有している。
【0117】
そして、走査制御装置30は、各液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する。
【0118】
この場合には、出力画像の解像度が600dpiのときの各液晶素子の光透過率と、出力画像の解像度が1200dpiのときの各液晶素子の光透過率との差を、小さくすることができる。そこで、出力画像の解像度の違いによる感光体ドラム1030の表面に集光される光束の光量変化を抑制することができる。そして、解像度に応じて光源の発光パワーを異ならせる必要がないため、光源の駆動回路、制御回路を単純化することができる。
【0119】
従って、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うことが可能となる。
【0120】
また、走査制御装置30は、クロック信号生成回路222で生成された所定の周波数のクロック信号に基づいて、ポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号、及び液晶光学デバイス16の各液晶素子に電圧を印加するための交流電圧信号(s1、s2)を生成している。すなわち、パルス源を共用しているため、電気回路設計の簡易化、部品点数の削減を図ることが可能となる。また、個別にパルス源を設けたときに生じるノイズの影響を考慮する必要がない。さらに、ポリゴンミラー13に駆動信号が入力されているときに、常時、各液晶素子に電圧を印加することができる。
【0121】
また、走査制御装置30は、所定のタイミング毎に、光検知センサ18の出力信号に基づいて、ビームピッチを検出し、該検出結果に応じて液晶光学デバイス16の各液晶素子への印加電圧を調整している。これにより、レーザプリンタ1000のユーザ先への搬入や設置時の振動、あるいは、ユーザ先での使用時の装置内部の温度変化や経時変動等により、ビームピッチが変化した場合でも、安定的にほぼ所望のビームピッチとすることができる。
【0122】
また、解像度が600dpiのときに各入力端子に印加されている実効電圧が、解像度が1200dpiのときに入力端子T1に印加されている実効電圧と入力端子T2に印加されている各実効電圧の中間値と等しい。この場合には、解像度の切替時の印加電圧の変化が小さくなり、解像度の切替による液晶素子の光透過率の変化を更に小さくすることができる。
【0123】
また、2つの光源(14a、14b)を有しているため、同時に複数の光走査を行うことができる。
【0124】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能である。
【0125】
さらに、光走査装置1010が2つの光源を備えているため、高速で画像を形成することが可能である。また、形成される画像の高密度化を図ることも可能である。
【0126】
また、解像度が1200dpiのときのポリゴンミラー13の回転数を、解像度が600dpiのときのポリゴンミラー13の回転数の2倍としている。そこで、感光体ドラム1030の回転数(感光体ドラム表面の周速)を600dpiのときと同じにすることができる。これにより、解像度が1200dpiのときにおいても、600dpiのときと同等の画像出力速度を達成することができる。なお、この場合、1200dpiのときに感光体ドラム表面を照射する光束の光量は、600dpiのときと同じ光量にする必要がある。
【0127】
また、ネットワークを介して、レーザプリンタ1000と、電子演算装置(コンピュータ等)、画像情報通信システム(ファクシミリ等)等とを接続することにより、1台の画像形成装置で複数の機器からの出力を処理することができる情報処理システムを形成することができる。また、ネットワーク上に複数の画像形成装置を接続すれば、各出力要求から各画像形成装置の状態(ジョブの混み具合、電源が入っているかどうか、故障しているかどうか等)を知ることができ、一番状態の良い(使用者の希望に一番適した)画像形成装置を選択し、画像形成を行うことができる。
【0128】
なお、上記実施形態では、デフォルトの解像度が600dpiに設定されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、デフォルトの解像度が1200dpiに設定されていても良い。
【0129】
但し、この場合には、CPU210は、初期化処理において、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0130】
そして、CPU210は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として600dpiが選択されたことの通知を受けると、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。
【0131】
また、上記実施形態では、クロック信号生成回路222で生成されるクロック信号が、周波数2000[Hz]、振幅5.0[V](バイアス成分:+2.5[V])の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0132】
また、上記実施形態では、(V1−V2)=0.4[V]とする際に、V1=1.7[V]、V2=1.3[V]とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0133】
また、上記実施形態では、入力端子T1と入力端子T2に同じ電位の電圧を印加する際に、V1=1.5[V]、V2=1.5[V]とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0134】
また、上記実施形態では、液晶光学デバイス16が2つの液晶素子を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、液晶光学デバイス16が前記2つの液晶素子の一方のみを有していても良い。
【0135】
例えば、図30に示されるように、液晶光学デバイス16が液晶素子16Aのみを有する場合に、走査制御装置30は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、被走査面上では、図31に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+21.2[μm]移動する。
【0136】
また、液晶光学デバイス16が液晶素子16Bのみを有しても良い。この場合には、走査制御装置30は、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として1200dpiが選択されたことの通知を受けると、1200dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、被走査面上では、図32に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpbが−21.2[μm]移動する。
【0137】
また、上記実施形態では、ビームピッチが42.3[μm]となるように、光源ユニットが調整されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0138】
例えば、ビームピッチが、1200dpiに対応するビームピッチである21.2[μm]となるように、光源ユニットが調整されていても良い。
【0139】
この場合、CPU210は、初期化処理において、600dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1=1.3[V]に対応する交流電圧信号s1、及びV2=1.7[V]に対応する交流電圧信号s2の生成を指示する。これにより、液晶素子16Aに入射した光束は、−Z側に光路が曲げられ、液晶素子16Bに入射した光束は、+Z側に光路が曲げられる。なお、各液晶素子での光束の曲げ角の大きさ(絶対値)は同じである。
【0140】
そして、被走査面上では、図33に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaは−10.6[μm]移動し、光スポットSpbは+10.6[μm]移動する。これにより、ビームピッチは42.3[μm]となる。このビームピッチは、600dpiに対応するビームピッチである。
【0141】
また、上記実施形態では、液晶素子16Aの入力端子T1と液晶素子16Bの入力端子T1に同じ電圧V1が印加され、液晶素子16Aの入力端子T2と液晶素子16Bの入力端子T2に同じ電圧V2が印加される場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0142】
例えば、図34に示されるように、各入力端子に個別に電圧が印加されても良い。ここでは、液晶素子16Aの入力端子T1に実効電圧V1aが印加され、液晶素子16Bの入力端子T1に実効電圧V1bが印加され、液晶素子16Aの入力端子T2に実効電圧V2aが印加され、液晶素子16Bの入力端子T2に実効電圧V2bが印加されている。そして、走査制御装置30の液晶素子駆動回路213は、V1aに対応する交流電圧信号s1a、V2aに対応する交流電圧信号s2a、V1bに対応する交流電圧信号s1b、及びV2bに対応する交流電圧信号s2bを生成する。
【0143】
この場合に、CPU210は、解像度を600dpiから1200dpiに切り替える際に、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示しても良い。
【0144】
同様に、CPU210は、解像度を600dpiから1200dpiに切り替える際に、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.5[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.5[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示しても良い。いずれにおいても、ビームピッチを21.2[μm]とすることができる。
【0145】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が出力画像の解像度として600dpiと1200dpiに対応している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1200dpiと2400dpiに対応していても良い。
【0146】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が出力画像の解像度として2種類の解像度に対応している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光走査装置1010が出力画像の解像度として600dpi、1200dpi、2400dpiの3種類の解像度に対応していても良い。
【0147】
この場合、CPU210は、解像度が600dpiのときに、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として2400dpiが選択されたことの通知を受けると、2400dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示する。
【0148】
これにより、被走査面上では、図35に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+21.2[μm]移動し、光スポットSpbが−10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは10.6[μm]となる。このビームピッチは、2400dpiに対応するビームピッチである。
【0149】
また、この場合、CPU210は、解像度が1200dpiのときに、プリンタ制御装置1060から出力画像の解像度として2400dpiが選択されたことの通知を受けると、2400dpiに対応するクロック信号を出力するように周波数選択回路223に指示するとともに、液晶素子駆動回路213に対し、V1a=1.9[V]に対応する交流電圧信号s1a、V2a=1.1[V]に対応する交流電圧信号s2a、V1b=1.7[V]に対応する交流電圧信号s1b、V2b=1.3[V]に対応する交流電圧信号s2bの生成を指示する。
【0150】
これにより、被走査面上では、図36に示されるように、副走査方向に関して、光スポットSpaが+10.6[μm]移動する。そして、ビームピッチは10.6[μm]となる。このビームピッチは、2400dpiに対応するビームピッチである。なお、このとき、光スポットSpaを移動させるのに代えて、光スポットSpbを−10.6[μm]移動させ、ビームピッチを10.6[μm]としても良い。
【0151】
また、上記実施形態では、光検知センサ18が、書込の開始情報と移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報とを含む信号を出力する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、書込の終了を検知するための光検知センサが別に設けられているときには、該光検知センサに移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報を出力する機能を持たせても良い。
【0152】
また、書込の開始を検知するための光検知センサ及び書込の終了を検知するための光検知センサの両方を設け、2つの光検知センサに、移動経路の副走査対応方向の位置に関する情報を出力する機能を持たせても良い。この場合には、走査線の傾き情報を得ることが可能となる。
【0153】
また、書込の開始を検知するための光検知センサ及び書込の終了を検知するための光検知センサの両方を設け、2つの光検知センサでの光検知の時間差から走査速度の変化を検出し、該検出された走査速度の変化に対して、画素クロック信号の基準周波数を再設定することができる。
【0154】
また、上記実施形態では、前記第1受光部181が長方形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知用光束が通過する2辺がs方向に平行な形状であれば良い。
【0155】
また、上記実施形態では、前記第2受光部182が、平行四辺形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知用の光束が通過する2辺がm方向に対して傾斜している形状であれば良い。
【0156】
また、上記実施形態において、2つの光源(14a、14b)は、それぞれ垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)であっても良い。
【0157】
また、上記実施形態では、光走査装置1010が2つの光源を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光走査装置1010が1つの光源あるいは3つ以上の光源を有しても良い。
【0158】
また、上記実施形態において、前記2つの光源(14a、14b)に代えて、複数の発光部を有する半導体レーザアレイを含む1つの光源を用いても良い。この場合に、半導体レーザアレイとして、垂直共振器型の面発光レーザアレイを用いることができる。
【0159】
また、光検知センサ18の出力信号から、感光体ドラム1030の表面での光スポットの副走査方向の位置ずれ量(以下では、「副走査ずれ量」と略称する)を検出することができる。そして、対応する液晶素子で光束の光路を曲げることによって、副走査ずれ量を小さくすることができる。
【0160】
例えば、感光体ドラム1030の表面における光スポット位置が設計上の位置のときに、検知用光束が第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間を予め求め、基準時間tsとしてフラッシュメモリ211に格納しておく。
【0161】
次に、所定のタイミング毎に、光源を点灯させ、検知用光束が第1受光部181で検知されてから第2受光部182で検知されるまでの時間を求め、基準時間tsとの差Δtを算出する。この差Δtは、光検知センサ18における検知用光束の移動経路の基準経路からのずれ量Δhと、次の(3)式の関係がある。ここで、Vは検知用光束の移動速度(走査速度)である。そして、ずれ量Δhは、副走査ずれ量と相関関係がある。
【0162】
Δh=(V/tanα)×Δt ……(3)
【0163】
そこで、CPU210は、所定のタイミング毎に、Δtがほぼ0となるように、液晶光学デバイス16への印加電圧を調整すると、感光体ドラム1030の表面における光スポット位置を設計上の位置に維持することができる。
【0164】
また、上記実施形態では、光検知センサ18の出力信号に基づいて、ビームピッチを求める場合について説明したが、これに限らず、例えば、図37に示されるカラープリンタ2000の場合には、転写ベルト2080上に形成されたトナー像(検出パターン)の画素密度を検出し(例えば、特開2008−026746号公報、特開2007−164137号公報参照)、その検出結果からビームピッチを求めても良い。
【0165】
また、上記実施形態において、ビームピッチの変動が小さく、ビームピッチを求める必要がない場合には、前記光検知センサ18に代えて、書込の開始情報のみを含む信号を出力する光検知センサを用いても良い。
【0166】
また、上記実施形態では、解像度に応じてポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号の周波数が切り替わる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、解像度が変化してもポリゴンミラー13を回転駆動するための駆動信号の周波数は一定であっても良い。
【0167】
解像度が600dpiのときと1200dpiのときとでポリゴンミラー13が同じ回転数で駆動されている場合に、解像度が600dpiから1200dpiに切り替わると、感光体ドラムの回転数(すなわち、感光体ドラム表面の周速)を半分にする必要がある。これに伴い、感光体ドラム表面を照射する光束の光量も、半分にする必要がある。
【0168】
この場合に、仮に、解像度が600dpiのときにV1=0[V]、V2=0[V]とし、解像度が1200dpiのときにV1=1.7[V]、V2=1.3[V]とすると、解像度の切替により液晶素子の光透過率が変化するため、単純に光源の発光パワーを半分にすると、感光体ドラム表面では光量不足となる。そこで、液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正が必要となる(例えば、特許文献5参照)。ここでの補正量は、環境温度などの影響を受けて、ばらつきが大きいため、光量を高い精度で測定するための高価なセンサが必要になる。
【0169】
一方、上記実施形態では、解像度が600dpiのときにV1=1.5[V]、V2=1.5[V]とし、解像度が1200dpiのときにV1=1.7[V]、V2=1.3[V]としているため、解像度の切替による液晶素子の光透過率の変化は非常に小さい。従って、液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正は、ほとんど不要である。なお、仮に液晶素子の光透過率の変化を考慮した補正を行う場合であっても、予め実験的あるいは計算で求めた補正値(固定値)を用いることができ、光量を高い精度で測定するための高価なセンサは不要である。
【0170】
また、上記実施形態における、電位差(V1−V2)と光スポットの移動距離Δzとの関係は一例であり、これに限定されるものではない。
【0171】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置1010を備えた画像形成装置であれば良い。
【0172】
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0173】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0174】
また、例えば、図37に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
【0175】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0176】
各感光体ドラムは、図37中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットがそれぞれ配置されている。
【0177】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。この帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光走査が行われ、各感光体ドラムに潜像が形成される。
【0178】
そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が順次転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0179】
光走査装置2010は、前記液晶光学デバイス16と同様な液晶光学デバイス、及び前記走査制御装置30と同様な走査制御装置を色毎に有している。従って、前記光走査装置1010と同様な効果を得ることができる。
【0180】
そして、カラープリンタ2000は、前記レーザプリンタ1000と同様な効果を得ることができる。
【0181】
また、このカラープリンタ2000において、光走査装置を1色毎に設けても良いし、2色毎に設けても良い。
【0182】
また、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。特に、コピーモードでの出力画像の解像度とプリンタモードでの出力画像の解像度とが異なる複合機には好適である。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上説明したように、本発明の光走査装置によれば、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を安定して行うのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成するのに適している。
【符号の説明】
【0184】
11a…偏向器側走査レンズ(光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14a…光源、14b…光源、16…液晶光学デバイス、16A…液晶素子、16B…液晶素子、18…光検知センサ(間隔検出センサ)、30…走査制御装置(制御装置)、168…液晶層、1000…レーザプリンタ(画像形成装置)、1010…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)、T1…入力端子、T2…入力端子。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0185】
【特許文献1】特開平9−131920号公報
【特許文献2】特開平3−116112号公報
【特許文献3】特開平5−19190号公報
【特許文献4】特開2001−166237号公報
【特許文献5】特開2004−212501号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束により被走査面を主走査方向に走査する光走査装置であって、
少なくとも1つの光源と;
前記少なくとも1つの光源からの光束を前記被走査面上に集光するとともに、前記被走査面上の光スポットを主走査方向に移動させる光学系と;
前記少なくとも1つの光源と前記被走査面との間の光束の光路上に配置され、2つの入力端子と、該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、主走査方向に直交する副走査方向に関して、屈折率変化を生じる液晶層とを有する少なくとも1つの液晶素子と;
前記少なくとも1つの液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、前記2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する制御装置と;を備える光走査装置。
【請求項2】
前記光学系は、所定の周波数のクロック信号から生成された駆動信号によって駆動され、前記少なくとも1つの光源からの光束を偏向する偏向器を有し、
前記制御装置は、前記クロック信号に基づいて前記少なくとも1つの液晶素子に印加する電圧信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、各光源にそれぞれ対応する2つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔の一方が選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第1の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記2つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、前記2つの光源の一方からの光束が入射する1つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔の一方が選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第1の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記1つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の差に基づいて、前記1つの液晶素子の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、各光源にそれぞれ対応する2つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔、並びに前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の間の第3の走査線間隔のうちのいずれかが選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第3の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第3の走査線間隔が選択されたときに、前記2つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第3の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第2の走査線間隔と前記第3の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記第3の走査線間隔は、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の中間の走査線間隔であり、
前記第1の走査線間隔が選択されたときに前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に印加される実効電圧の差の絶対値は、前記第2の走査線間隔が選択されたときに前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に印加される実効電圧の差の絶対値と等しいことを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記被走査面上における走査線間隔を検出する間隔検出センサを更に備え、
前記制御装置は、前記間隔検出センサの出力信号に基づいて、前記2つの液晶素子に印加する実効電圧を調整することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記2つの入力端子に同じ実効電圧が印加されるときの実効電圧は、前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧が印加されるときの2つの実効電圧の平均の実効電圧と等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源は、垂直共振器型の面発光レーザを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項10】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光束を走査する少なくとも1つの請求項1〜9のいずれか一項に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項11】
前記画像情報は、多色の画像情報であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項1】
光束により被走査面を主走査方向に走査する光走査装置であって、
少なくとも1つの光源と;
前記少なくとも1つの光源からの光束を前記被走査面上に集光するとともに、前記被走査面上の光スポットを主走査方向に移動させる光学系と;
前記少なくとも1つの光源と前記被走査面との間の光束の光路上に配置され、2つの入力端子と、該2つの入力端子に印加される電圧の差に応じて、主走査方向に直交する副走査方向に関して、屈折率変化を生じる液晶層とを有する少なくとも1つの液晶素子と;
前記少なくとも1つの液晶素子に対して、入射した光束の光路を曲げて射出するときには、該曲げの大きさ及び方向に応じて前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、入射した光束の光路を曲げないで射出するときには、前記2つの入力端子に同じ実効電圧を印加する制御装置と;を備える光走査装置。
【請求項2】
前記光学系は、所定の周波数のクロック信号から生成された駆動信号によって駆動され、前記少なくとも1つの光源からの光束を偏向する偏向器を有し、
前記制御装置は、前記クロック信号に基づいて前記少なくとも1つの液晶素子に印加する電圧信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、各光源にそれぞれ対応する2つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔の一方が選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第1の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記2つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、前記2つの光源の一方からの光束が入射する1つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔の一方が選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第1の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記1つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の差に基づいて、前記1つの液晶素子の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光源は、2つの光源であり、
前記少なくとも1つの液晶素子は、各光源にそれぞれ対応する2つの液晶素子であり、
前記被走査面上における走査線間隔として、互いに異なる第1の走査線間隔及び第2の走査線間隔、並びに前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の間の第3の走査線間隔のうちのいずれかが選択され、
前記2つの光源の副走査方向に関する間隔は、前記第3の走査線間隔に対応し、
前記制御装置は、前記第3の走査線間隔が選択されたときに、前記2つの液晶素子の各入力端子に同じ実効電圧を印加し、前記第1の走査線間隔が選択されたときに、前記第1の走査線間隔と前記第3の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加し、前記第2の走査線間隔が選択されたときに、前記第2の走査線間隔と前記第3の走査線間隔の差に基づいて、前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記第3の走査線間隔は、前記第1の走査線間隔と前記第2の走査線間隔の中間の走査線間隔であり、
前記第1の走査線間隔が選択されたときに前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に印加される実効電圧の差の絶対値は、前記第2の走査線間隔が選択されたときに前記2つの液晶素子の少なくとも一方の前記2つの入力端子に印加される実効電圧の差の絶対値と等しいことを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記被走査面上における走査線間隔を検出する間隔検出センサを更に備え、
前記制御装置は、前記間隔検出センサの出力信号に基づいて、前記2つの液晶素子に印加する実効電圧を調整することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記2つの入力端子に同じ実効電圧が印加されるときの実効電圧は、前記2つの入力端子に互いに異なる実効電圧が印加されるときの2つの実効電圧の平均の実効電圧と等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源は、垂直共振器型の面発光レーザを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項10】
少なくとも1つの像担持体と;
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光束を走査する少なくとも1つの請求項1〜9のいずれか一項に記載の光走査装置と;を備える画像形成装置。
【請求項11】
前記画像情報は、多色の画像情報であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図15】
【図28】
【図34】
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【図9】
【図12】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
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【図29】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図15】
【図28】
【図34】
【公開番号】特開2010−217351(P2010−217351A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62179(P2009−62179)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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