光走査装置及び画像形成装置
【課題】走査レンズの配置位置精度及び成形性に優れ、レイアウトの最適化による光学ハウジングの小型化により装置全体の小型化を実現した光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】光源107と、光偏向手段106と、結像手段と、光学ハウジング100とを備え、前記結像手段は設置基準面Aを有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズ120が、(1)入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸Oとしたとき、設置基準面Aが光学基準軸Oに対し所定の角度の傾きを有する、または(2)前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形の大きさh1とh2とが異なる光走査装置である。該光走査装置を備えた画像形成装置である。
【解決手段】光源107と、光偏向手段106と、結像手段と、光学ハウジング100とを備え、前記結像手段は設置基準面Aを有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズ120が、(1)入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸Oとしたとき、設置基準面Aが光学基準軸Oに対し所定の角度の傾きを有する、または(2)前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形の大きさh1とh2とが異なる光走査装置である。該光走査装置を備えた画像形成装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、及び該光走査装置を用いたデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ等の光走査装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ等に関連して広く知られた光走査装置は一般に、光束を光偏向器などの光偏向手段で偏向させ、その偏向された光束を被走査面に微小なスポット光として結像させ、被走査面上を主走査方向に等速走査させるように構成されている。
この光走査装置は、例えばレーザ光源から射出されたレーザ光を光偏向器で偏向反射することによって像担持体等の被走査面上を走査させ、同時にレーザ光を画像信号に応じて強度変調(例えばオン、オフ)させることにより、被走査面に画像を書き込むようになっている。
【0003】
近年、画像形成装置の小型化が加速しているため、搭載される光走査装置の小型化の要求がより高くなっている。
従来の画像形成装置は、書込光学ハウジングとそれ以外の画像形成手段(現像手段や転写手段等)を配置するスペースとが明確に分かれているものが多かったが、装置全体の小型化のためには、光走査装置とそれ以外の画像形成手段を組み合わせた配置を考える必要がある。例えば、光走査装置内部のスペースを削減してできた余剰スペースに、現像手段をレイアウトしたり、筐体を斜めに構成したりする方法も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、光線の進行方向とその光学基準軸が平行となるように、一つの走査レンズを、光偏向器を設置している面から傾けて設置している光走査装置が開示されている。光偏向器と走査レンズを設置する面は互いに傾いているため、広い設置面を設けることで精度良く角度をつけている。また、特許文献2及び3では、光学ハウジングの小型化や、走査レンズの成形性の向上をはかった例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型化にあたり筐体を斜めにする構成では、走査レンズを設置する光学ハウジングの設置面と、走査レンズの光学基準軸が角度を有するレイアウトとした方が、マシン全体の小型化に適合しやすい。この場合、従来は光学ハウジング側で光学基準軸と平行となるように成型していた(図5(A)参照)。しかし、走査レンズよりも大型で複雑な金型で成型される光学ハウジングでは、設置面部のみ角度を異ならせつつ精度良く成型することが困難である。このため、結果的に走査レンズの設置角度のずれが大きくなり、ビームスポット径やビームスポット位置の劣化、ひいては画像品質の劣化につながってしまう。
【0006】
特許文献1の方法では、光学ハウジング全体の小型化をはかる際に、設置面が限られてしまい、角度などの精度が悪くなってしまうという問題がある。また、光学ハウジングでは、様々な角度などの精度を良くしようとすると、例えば、入れ子構造の金型を用いるなどの複雑な構成になり、開発コストの増大や、生産性の低下などを招く可能性がある。
【0007】
上述の通り、装置の小型化とともに、走査レンズの配置位置精度や成形性の向上、レイアウトの最適化による光学ハウジングを実現した光走査装置、該光走査装置を用いた小型化を実現した画像形成装置は未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
よって、本発明の課題は、走査レンズの配置位置精度及び成形性に優れ、レイアウトの最適化による光学ハウジングの小型化により装置全体の小型化を実現した光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る光走査装置、及び画像形成装置は、以下のとおりである。
〔1〕 光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有することを特徴とする光走査装置である。
〔2〕 光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なることを特徴とする光走査装置である。
〔3〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすことを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の光走査装置である。
〔4〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすことを特徴とする前記〔3〕に記載の光走査装置である。
〔5〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であることを特徴とする前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の光走査装置である。
〔6〕 前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられることを特徴とする前記〔5〕に記載の光走査装置である。
〔7〕 前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過することを特徴とする前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の光走査装置である。
〔8〕 複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されることを特徴とする前記〔7〕に記載の光走査装置である。
〔9〕 前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射することを特徴とする前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の光走査装置。
〔10〕 前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であることを特徴とする前記〔1〕から〔9〕に記載の光走査装置。
〔11〕 前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であることを特徴とする前記〔1〕から〔10〕に記載の光走査装置。
〔12〕 前記〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走査レンズの配置位置精度及び成形性に優れ、レイアウトの最適化による光学ハウジングの小型化により装置全体の小型化を実現した光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有する光走査装置であるので、走査レンズの配置精度を落とすことなく、光学ハウジングの構造を簡素にして成形性を向上させることができ、斜入射光学系においては特に、レイアウトの自由度が向上し、光学ハウジングの小型化をはかることができる。
請求項2の発明によれば、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なる光走査装置であるので、走査レンズを設置する光学ハウジングの設置面と、走査レンズの光学基準軸が角度を有している場合において、走査レンズの配置精度を落とすことなく、光学ハウジングの構造を簡素にして成形性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすので、走査レンズの外形形状がより鈍角に近づき、金型から走査レンズが抜きやすくなることにより、良好な成形性が得られる。
請求項4の発明によれば、請求項3に記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすので、射出面に副走査のパワーを設けることで副走査方向の結像倍率を下げることができ、公差や温度変化による光学特性の劣化を低減することができるとともに、光束が副走査方向に拡がり角を持って走査レンズに入射していくので、射出面の副走査方向有効範囲を大きくとることで、必要最小限の大きさの走査レンズで光学系を構成でき、レイアウトの自由度向上や、小型化をはかることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であるため、走査レンズの組付時の位置決めが容易となるとともに、光軸方向と副走査方向のずれが独立に制御できるため、一方のずれがあるときに、想定しないもう一方のずれが発生することなく、光学特性を安定的に保つことができる。さらに、光学ハウジングの成形性も良くなるため、高精度に走査レンズを配置することができる。
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の光走査装置において、前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられるため、走査レンズの成型に必要なパーティングラインを容易に設定でき、簡素な金型構造で走査レンズの成型を行うことができる。
請求項7の発明によれば、請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置において、前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過するため、レイアウトの自由度が向上し、光学ハウジングの小型化をはかることができる。
請求項8の発明によれば、請求項7に記載の光走査装置において、複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されるため、前記光学基準軸がそれぞれの前記光束に対して大きく傾くことがなく、良好な光学特性が得られる。
請求項9の発明によれば、請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置において、前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射するため、水平入射の態様であっても装置の小型化をはかることができる。
請求項10の発明によれば、請求項1から9のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であるため、対向走査方式の場合において、走査レンズ上における、副走査方向まわりに回転させて、対向側に同じ走査レンズを配置することができ、全てのステーションにおいて、同形状の走査レンズで結像することができ、作製する金型などの種類を減らすことができ、開発コストや量産のコストを低減できる。
請求項11の発明によれば、請求項1から10のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であるため、全てのステーションにおいて、同形状の走査レンズで結像することができ、作製する金型などの種類を減らすことができ、開発コストや量産のコストをより低減できる。
請求項12の発明によれば、請求項1から11のいずれかに記載の光走査装置を備えた画像形成装置であるため、装置全体の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光走査装置の第一の実施態様を説明するための図であり、2ステーション分の走査を行う態様を示す斜視図である。
【図2】図1の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図3】走査レンズの光学基準軸Oを説明する断面模式図である。
【図4】本発明に係る光走査装置の第一の実施態様において、ステーションごとの光ビームに対する個別レンズをさらに備える光走査装置の斜視図である。
【図5】走査レンズと光学ハウジング設置面を説明する断面模式図であり、(A)は従来の例、(B)は本発明の例を示す。
【図6】図5に示す例と傾斜が逆の態様を説明する断面模式図である。
【図7】走査レンズの副走査方向のパワーを示す模式図であり、(A)は従来例、(B)及び(C)は本発明の例を示す。
【図8】走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた、射出面の副走査方向パワーΦ(Y)の変化を示すグラフである。
【図9】副走査方向パワーの他の例に関し、(A)は走査レンズを副走査方向にメニスカス形状とした模式図であり、(B)及び(C)は走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた副走査方向パワーの変化を示すグラフである。
【図10】走査レンズの副走査方向パワーを模式的に示した図である。
【図11】走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた副走査方向パワーの変化を示すグラフである。
【図12】図5(B)に示した走査レンズの光学ハウジングへの設置部の拡大図である。
【図13】走査レンズの光学ハウジングへの設置部の拡大図である。
【図14】走査レンズ成型の模式図である。
【図15】成型された走査レンズにおけるパーティングラインを示した説明図である。
【図16】本発明に係る光走査装置の第二の実施態様を説明するための図である。
【図17】図16の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図18】走査レンズの(A)主走査方向を対称形状としたときの配置例、(B)副走査方向を対称形状としたときの配置例を示す模式図である。
【図19】本発明に係る光走査装置の第三の実施態様を説明するための図である。
【図20】図19の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図21】図20と逆の傾斜の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図22】本発明に係る光走査装置において、光偏向手段としてMEMSミラーを用いた実施態様を説明する図である。
【図23】図22の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図24】本発明の画像形成装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光走査装置、及び画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
<光走査装置>
本発明の光走査装置は、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズが、(1)入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有する態様、及び(2)前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なる態様のいずれかである。入射光学系は、斜め入射光学系であっても、水平入射光学系であってもよい。
【0015】
(片側斜め入射光学系)
本発明の第一の実施態様として、片側斜め入射光学系の態様について説明する。
図1は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、2ステーション分の走査を行う光走査装置である。結像手段を構成する走査レンズ120上の走査方向を、走査レンズ120上の主走査方向とし、その主走査方向と画像の略中央を走査するときの光線の進行方向に直交する方向を、走査レンズ120上の副走査方向としている。図1に示すように、光走査装置全体において、主走査方向及び副走査方向を、走査レンズ120と合わせて定義している。
【0016】
光源ユニット107から射出される光束(以下、「光ビーム」という)201、202は、シリンドリカルレンズ113によってポリゴンミラー106の反射面の近傍で副走査方向に収束される。光偏向手段であるポリゴンミラー106に偏向走査された光ビーム201、202は、走査レンズ120を介して感光体ドラム101、102の被走査面上にスポット状に結像し、画像情報に基づいた潜像を形成する。
ポリゴンミラー106に、光源ユニット107からの光ビーム201、202が、ポリゴンミラー106の回転軸方向である副走査方向に対して、所定の角度をなし、かつ、略同一の点に入射しており、偏向後に光ビ−ム201、202はそれぞれ副走査方向に離間していき、共通の走査レンズ120を通過した後、折り返しミラー127〜129で、それぞれ対応する感光体ドラム101、102の被走査面に分離・導光される。
【0017】
図1に示すように、同期検知センサ136へは、ポリゴンミラー106で偏向された光ビームが、結像レンズ137により集束されて入射され、その検出信号をもとに同期検知信号を生成している。図1に示す実施態様において、結像レンズ137は、主走査方向と副走査方向に異なる曲率を有するアナモフィックレンズを用いて主走査方向及び副走査方向ともに同期検知センサ136上に結像するようにしている。ただし、水平同期検知信号の発生という機能上、副走査方向には必ずしも結像させる必要はないため、レイアウトなどの制約を優先して、副走査方向に結像しない構成であっても良い。
【0018】
図2に、図1のポリゴンミラー106よりも下流の副走査断面光路の例を示す。「上流」、「下流」とは、光ビームが光源から出射された後、感光体ドラムに至るまでに通過していく順序における、「早い」(上流)、「遅い」(下流)を指す。
図2に示すように、レイアウトの自由度確保などのため、光学ハウジング100の設置面に対し、走査レンズ120を傾けて配置している。ここでは、2つのビーム201、202が共通の走査レンズ120を通過する。その様子の拡大図を図3に示す。
【0019】
図3に示すように、走査レンズ120の光学基準軸Oは、2つの光ビーム201、202が、走査レンズ120の入射面上で走査する走査平面間の領域内に設定されている。光束が走査レンズに大きく傾いて入射する場合、種々の光学特性をバランス良く良好に保つことが難しくなるが、このように配置することにより、各光ビーム201、202の、走査レンズ120への入射角を大きく傾けることがなく、良好な光学特性を達成することができる。
【0020】
各光ビーム201、202が、走査レンズ120への入射する位置における角度を等分するような角度に光学基準軸Oを設定すると、各光ビーム201、202の走査レンズ120への入射角が等しくなり、同等の光学特性を得やすくなる。複数の光束による画像を重ね合わせてカラー画像などを形成する場合、各光束の光学特性がある程度一致していることにより、色のむらや、色再現性の劣化、色ごとの位置ずれなど、望まない画像品質劣化を防ぐことができるため、各光ビームの入射する位置における角度を等分するような角度に走査レンズ120の光学基準軸Oを設定することが好ましい。
【0021】
本実施態様では、結像手段を1枚の走査レンズ120で構成し、各光ビーム201、202について、共通の走査レンズを通過させている。副走査方向については、光偏向手段であるポリゴンミラー106で一度収束した光束を被走査面上において、結像させるパワーを持ち、光偏向手段106の反射面と被走査面を、略共役の関係としている。このため、各ビーム201、202が、同一の光学的有効範囲を通過すると、それぞれ副走査方向に近づく関係となり、光ビーム201と202の分離が難しくなる。
この状況を鑑みて、本実施態様においては図3に示すように、主に走査レンズ120の射出面に、副走査方向のパワーを有するようにパワー配置し、射出面を光ビーム201が通過する光学的有効範囲と、光ビーム202が通過する光学的有効範囲とに分ける形状としている。
【0022】
また、本実施態様のような、光偏向手段106に光ビームが副走査方向に所定の角度をなして入射する、いわゆる斜入射光学系においては、走査線の曲がりが必然的に発生する。この走査線の曲がりを補正する方向となるように、2つの射出面それぞれの面形状を表す、下記数式(1)で表される二次元多項式の原点を、各光ビーム201、202が通過する位置よりも、入射面の光学基準軸Oに近づくように配置している。
【0023】
X(Y,Z)=Cm・Y2/{1+√(1−(1+a0)・Cm2・Y2)}+a4・Y4+a6・Y6+・・・+Cs(Y)・Z2/{1+√(1−Cs(Y)2・Z2)} ・・・数式(1)
【0024】
数式1において、Cs(Y)=Cs+b2・Y2+b4・Y4+・・・を表わす。
また、Yは走査レンズ120上の主走査方向、Zは副走査方向を表わし、Cmは原点における主走査方向の曲率、Csは原点における副走査方向の曲率を表す。
また、a及びbは係数を表わす。
数式(1)に示すように、主走査方向、副走査方向に直交する方向のデプスデータX(Y,Z)で、レンズ面形状を表している。
【0025】
本実施態様では、光ビーム201と202との分離ができるように、走査レンズ120を通過後の各光ビームが、副走査方向について平行となるような位置に、各射出面の二次元多項式の原点を設定している。
走査レンズ120通過後の光ビームの軌跡については図示を省略する。もちろん、レイアウトによっては、ビーム201と202との分離可能性を鑑み、各射出面の二次元多項式の原点を、より入射面の光学基準軸Oに近づけたり、逆に遠ざけたりする変形も可能である。
【0026】
さらに光学特性を向上させるため、図4に示すように、ステーションごとの光ビーム201、202に対する個別レンズ122、123をさらに備える光走査装置としてもよい。
【0027】
(走査レンズの形状)
図2に示すように、走査レンズ120と、走査レンズ120が光学ハウジング100に設置される面とが傾いている場合、従来は図5(A)左図に示すように、光学ハウジング側に走査レンズ設置面100’を形成していたが、本発明では、図5(B)左図に示すように、走査レンズ120の形状を光学ハウジング100に合わせて、走査レンズ120を配置している。走査レンズ120の入射面120aの面形状は、上記数式(1)で表現できる二次元多項式で表される。
【0028】
走査レンズ120の各面上における、上記数式(1)の原点を通過する、面に対する法線を、各面の光学基準軸と定義する。図5(B)左図に示すように光学基準軸Oと、設置基準面Aを傾けて配置することにより、走査レンズ120を精度良く位置決めすることができ、良好な光学特性を確保することができる。光学基準軸Oと設置基準面Aとは、少なくとも平行ではなければよく、適宜傾斜角が設定される。
【0029】
一方、光学基準軸Oと設置基準面Aとの関係ではなく、副走査方向外形大きさの関係により、同様の効果を得ることができる。ここで、外形とは、リブなどの非有効部も含めた、走査レンズ全体の形状を指す。
従来例の図5(A)右図では、走査レンズ120の入射面120aの副走査方向外形大きさh1と、射出面120bの副走査方向外形大きさh2とが同一であるのに対し、本発明の図5(B)右図では、h1とh2とが異なる。走査レンズ120に対し光学ハウジング100の設置面が傾いている場合でも、図5(B)に示すようなh1とh2とが異なる構成とすることにより、走査レンズ120の位置決めを精度良く行うことができるとともに、良好な光学特性が得られるように配置することができる。
なお、図5(B)では、一の断面図のみを示しているが、走査レンズ120は主走査方向にも大きさがあるため、主走査方向について一箇所でも図5(B)に示す形状としても、本発明の効果が得られる。
【0030】
光学ハウジング100の外部を含む装置全体や、光学ハウジング100自体のレイアウトによっては、上述の態様における傾斜を逆にして自由度を上げてもよい。傾斜が逆の走査レンズ120の態様を図6に示す。
【0031】
本実施態様のように、複数のビームが一の走査レンズを通過する場合、走査レンズの角度、位置を精度良く設定することができれば、各ビームの走査レンズ上通過位置や角度のずれを低減することでき、光学特性の劣化を防ぐことができる。さらに各光ビームの感光体上の走査位置ずれも低減することができる。よって、複数の感光体によりカラー画像などを形成する画像形成方式において、色のむらや色再現性の劣化、色ごとの位置ずれなどを防ぐことができる。
【0032】
(走査レンズの副走査方向のパワー)
図7(A)〜(C)は、走査レンズ120の副走査方向のパワーを示す模式図である。図7(A)〜(C)では、説明をわかりやすくするため、副走査方向のパワーを実際より大きく表現し、面の凹凸がわかるように模している。また、副走査方向の外形が大きい面(本実施態様では射出面120b)のみに着目して説明するために、入射面の副走査方向パワーについては省略して平面で表わしている。
図7(A)は従来例(比較例)であり、射出面120bの副走査方向パワーが負(凹)となっている場合である。射出面120bの副走査方向パワーが図7(B)では0(平面)、図7(C)では正(凸)となっている。それぞれの図において、丸で囲んで示した部位、射出面120bが設置基準面、もしくは設置基準面と対向する面と形成する角度が、(A)、(B)、(C)の順に大きくなっている。この角度が鋭角すぎる場合、走査レンズ成型の際に、走査レンズを金型から取り出すことが困難となり、レンズのカケなどの成型不良を引き起こす可能性がある。よって、射出面120bの副走査方向パワーを図7(B)及び(C)に示すように、0以上とすることが好ましい。
【0033】
走査レンズ120の面形状は、上述の数式(1)で表される。数式(1)より、副走査方向のパワーは、主走査方向に関して変化する量である。このため、数式(1)の原点上の副走査方向パワーのみならず、主走査方向Yにおける副走査方向のパワーをΦ(Y)としたときに、下記数式(2)を満たすことが好ましい。
Φ(Y)≧0 ・・・数式(2)
【0034】
図8に、走査レンズ120の主走査方向のレンズ高さに応じた、射出面120bの副走査方向パワーΦ(Y)の変化を示す。図8に示すように、どのYにおいても、上記数式(2)を満たす面形状としている。なお、入射面120aを平面としているため、その副走査方向パワーは省略している。
【0035】
より被走査面に近いところに、強い副走査方向のパワーを持たせることにより、副走査方向の結像倍率を下げることができ、公差や温度変化による光学特性の劣化を低減することができる。
【0036】
上記数式(2)は、入射面と射出面のうち、副走査方向の外形が大きい面で満たすと良い。図5(B)に示した実施態様では射出面120bで説明したが、これに限定されず、図6の実施態様では、入射面120aの副走査方向の外形が大きいため、図11(A)に示すように、入射面120aの副走査方向パワーをY=0において0とし、それ以外では正の値となるように設定している。
【0037】
図11(B)に、射出面120bの副走査方向パワーを示す。Y=0のときの副走査方向パワーを模式的に表すと、図10のようになる。
射出面120bの副走査方向外形が入射面120aより大きい場合においては、数式(2)とは区別して、射出面120bの主走査方向Yにおける副走査方向のパワーをΦ2(Y)として、下記数式(3)を満たすことが好ましい。
Φ2(Y)≧0 ・・・数式(3)
【0038】
光ビーム201は、一度ポリゴンミラー106で副走査方向に収束されて、走査レンズ120上では発散しながら進行するため、射出面120bの光学的有効範囲が必然的に広くなる。このため、必要最小限の大きさの走査レンズ120で光学系を構成することができ、レイアウトの自由度向上や、小型化、走査レンズの低コスト化などをはかることができる。この構成のもと、上記数式(3)を満たすことにより、成形性の課題を解決することができ、かつ、光学特性の劣化を防ぐことができる。
【0039】
副走査方向パワーの変形例としては、図9(A)に示すように、走査レンズ120を副走査方向にメニスカス形状としても良い。このとき、図9(C)に示すように副走査方向の外形が大きい射出面120bの副走査方向パワーが常に0以上となっているのに対し、図9(B)に示すように、入射面120aは負になるようにしている。このように設定すると、より副走査方向の結像倍率が下がり、公差などによる光学特性劣化を低減することができる。
【0040】
(走査レンズの光軸方向位置決め)
図5(B)に示した走査レンズ120の光学ハウジング100への設置部の拡大図を、図12(A)及び(B)に示す。
光学基準軸O方向の走査レンズ120の位置決めを行う面を、光軸方向基準面Bとしている。ここで、図12(B)は、図12(A)中のE部の拡大図であるが、このように、光軸方向基準面Bは、前述した設置基準面Aと垂直となるように設けられる。これにより、光学基準軸方向と副走査方向のずれが独立に制御でき、一方のずれがあるときに、想定しないもう一方のずれが生じることがないため、光学特性を安定的に保つことが可能となる。また、量産時の走査レンズ組付でも位置決めが容易となる。さらに、水平・垂直の面で当接面を形成しているため、光学ハウジング100の成形性も良くなり、より高精度に走査レンズ120を配置することが可能となる。
【0041】
一方、図13に示すように、光軸方向基準面Bを射出面120b側に設けても良い。特に、射出面120bの副走査方向外形が大きい場合はより好ましい。
【0042】
樹脂製の走査レンズを成型する際、一対の金型を合わせたときにできる空間に樹脂材料を流し込み、冷却固化させて取り出す工程を行う。一対の金型を合わせる部分にできるラインを「パーティングライン」という。図14(A)及び(B)に成型の模式図を示す。図14中、パーティングラインは破線Pで表されている。ここでは、後述する、副走査方向に外形が対称形状となる走査レンズ形状を例として説明する。
金型320a、320bを合わせてできる空間に、高圧力で樹脂を流し込み、走査レンズ120を成型する。成型時には高圧力で樹脂が注入されるため、図14(A)の場合、金型320bの形状では、走査レンズを取り出すことが困難となる。いわゆる抜き勾配と呼ばれているこの勾配は、金型320a側のように、成型物を取り出す方向に広がるように付けられている必要がある。これを、走査レンズ120の光軸方向基準軸を、副走査方向外形が大きい面に設けることにより、図14(B)のような金型構造となり、容易に走査レンズ120を取り出すことができる。
【0043】
成型された走査レンズ120におけるパーティングラインPを、図15(A)及び(B)に示す。
【0044】
(対向斜め入射光学系)
本発明の第二の実施態様として、片側斜め入射光学系の態様について説明する。
図16は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、ポリゴンミラー106に対して対向側にビームを振り分けて走査する対向走査方式の例である。
光ビーム203、204を発する光源108、シリンドリカルレンズ114、2枚構成の走査レンズ121、125、折り返しミラー130〜132を備え、感光体103、104をさらに走査可能としている。本実施態様では、片側の光ビーム(例えば201、202)が、2枚の走査レンズ120、124を共用している。
【0045】
図17は、図16の偏向手段106よりも下流の副走査断面光路図を示す。
各走査レンズ、120、121、124、125の入射面の光学基準軸は、それぞれの光学ハウジング100に設置される設置基準面に対して傾けた形状、もしくは、入射面と射出面の副走査方向の外形が異なるように設定しており、これまでの上記第一の実施形態における構成と同様である。
【0046】
本実施形態では、走査レンズ120と121を、また、走査レンズ124と125を、同じレンズ形状としている。それぞれを同じレンズ形状で構成することにより、開発コストや、金型費などを削減できて良い。このために、各走査レンズは、主走査方向に対称形状か、もしくは、副走査方向に対称形状、もしくは、主走査方向と副走査方向ともに対称形状となるようにしている。
これは、片側のステーションと、対向側のステーションで、同じ感光体上の走査位置に向かうビームの光学特性を略同等とし、色ずれや色ムラなどの画像劣化を防ぐためである。
【0047】
主走査方向に対称形状とした場合、図18(A)に示すように、走査レンズ120、もしくは124を、ポリゴンミラー106の回転軸に対して回転させるように、対向側の走査レンズ121、もしくは125に配置することができる。
副走査方向に対称形状としても、図18(B)に示すように、走査レンズ上の主走査方向を回転軸として反転するように、対向側に配置することで、同じレンズ形状にて構成することが可能となる。
【0048】
(水平入射光学系)
本発明の第三の実施態様として、水平入射光学系の態様について説明する。
図19は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、モノクロ機用の、1ステーションを走査する光走査装置の斜視図ある。なお、カラー機を構成するためには、同様の構成を4ステーション並べることで構成することができる。1ステーションであること以外の他の構成は、図1に示す第一の実施態様における光走査装置と同様である。
【0049】
図20に、図19の光偏向手段160よりも下流の副走査断面光路図を示す。
光源ユニット107から射出される光ビーム201は、シリンドリカルレンズ113によってポリゴンミラー106の反射面の近傍で副走査方向に収束される。ポリゴンミラー106に偏向走査された光ビーム201は、走査レンズ120を介して感光体ドラム101上にスポット状に結像し、画像情報に基づいた潜像を形成する。
図20に示すように、感光体ドラム101への入射する光ビームを、副走査方向に傾けている。これは、感光体ドラム101からの正反射光が光走査装置に返ってくるのを防ぐためである。
また、図示しない光走査装置外のレイアウトからの制約もあり、光走査装置の光学ハウジング100に対して、光学系を傾けて配置している。これにより、マシン全体のレイアウト自由度の向上をはかっている。
【0050】
走査レンズ120の形状は、図5(B)に示すように、光学ハウジング100に合わせて配置している。走査レンズ120の少なくとも入射面120aは、上述の数式(1)で表現できる二次元多項式で、その面形状を表している。数式(1)と異なる式であったとしても、数式(1)で近似して表現できる形状もこの範疇とする。
走査レンズ120の各面上における、数式(1)の原点を通過する、面に対する法線を各面の光学基準軸と定義する。画像の略中央部に対応する光ビーム201が通過する方向と略一致した方向に、入射面120aの光学基準軸Oを有している。また、射出面120bの光学基準軸は図示しないが、本実施態様においては、入射面120aの光学基準軸Oと一致させている。特にポリゴンミラー106の回転軸に垂直にビームが入射する本実施態様では、このような配置とすることにより、光学特性を良好に保つことができる。
このため、光学基準軸Oと、設置基準面Aを傾けて配置することによって、走査レンズ120を精度良く位置決めすることと、良好な光学特性の確保を実現している。
【0051】
また、第一の実施態様と同様、光学基準軸Oと設置基準面Aとの関係ではなく、副走査方向外形大きさの関係により、同様の効果を得ることができる。
【0052】
光学ハウジング外も含めた、マシン全体のレイアウトによっては、図21のように、図20とは逆の傾き角とし、自由度を上げることもできる。この場合、上述した内容と同様に、図9に示すような走査レンズ形状とすると良い。
【0053】
(マイクロミラー光学系)
図22、及び図23には光偏向手段として、MEMSミラー106’を用いたマイクロミラー光学系の実施態様を示す。
本実施態様において、走査レンズ120の形状や基準軸の設定などは、上述の第一から第三の実施態様と同様の構成とする。これにより、走査レンズの配置位置精度や成形性の向上、また、レイアウトの最適化による小型化を達成することができる。
【0054】
<画像形成装置>
本発明の光走査装置を備える本発明の画像形成装置の一実施形態を、図24を参照しながら説明する。本実施形態は、本発明に係る光走査装置を、レーザプリンタに適用した例である。なお、光走査装置は光ハウジング100として図示している。
感光体ドラム901の周囲には、感光体を高圧に帯電する帯電チャージャ902、光走査装置100により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ903、現像ローラにトナーを補給するトナーカートリッジ904、ドラムに残ったトナーを掻き取って備蓄するクリーニングケース905が配置される。感光体ドラムへ光偏向手段の走査により画像記録が行われる。画像形成ステーションは転写ベルト906の移動方向に並列され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が転写ベルト上にタイミングを合わせて順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。各画像形成ステーションはトナー色が異なるだけで、基本的には同一構成である。
【0055】
記録紙は給紙トレイ907から給紙コロ908により供給され、レジストローラ対909により副走査方向の記録開始のタイミングに合わせて送りだされ、転写ベルトからトナー画像が転写されて、定着ローラ910で定着して排紙ローラ912により排紙トレイ911に排出される。
【0056】
図24に示す画像形成装置は、4ステーション構成のフルカラータンデム方式画像形成装置の例であるが、5ステーション以上のタンデム方式画像形成装置や、モノクロ機においても、本発明の光走査装置を光書込手段に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 光学ハウジング
101、102、103、104 感光体ドラム
106 光偏向手段
107 光源
113 シリンドリカルレンズ
120、121、124、125 走査レンズ
136 同期検知センサ
137 結像レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2009−48004号公報
【特許文献2】特開2009−98332号公報
【特許文献3】特開2007−155838号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、及び該光走査装置を用いたデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ等の光走査装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ等に関連して広く知られた光走査装置は一般に、光束を光偏向器などの光偏向手段で偏向させ、その偏向された光束を被走査面に微小なスポット光として結像させ、被走査面上を主走査方向に等速走査させるように構成されている。
この光走査装置は、例えばレーザ光源から射出されたレーザ光を光偏向器で偏向反射することによって像担持体等の被走査面上を走査させ、同時にレーザ光を画像信号に応じて強度変調(例えばオン、オフ)させることにより、被走査面に画像を書き込むようになっている。
【0003】
近年、画像形成装置の小型化が加速しているため、搭載される光走査装置の小型化の要求がより高くなっている。
従来の画像形成装置は、書込光学ハウジングとそれ以外の画像形成手段(現像手段や転写手段等)を配置するスペースとが明確に分かれているものが多かったが、装置全体の小型化のためには、光走査装置とそれ以外の画像形成手段を組み合わせた配置を考える必要がある。例えば、光走査装置内部のスペースを削減してできた余剰スペースに、現像手段をレイアウトしたり、筐体を斜めに構成したりする方法も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、光線の進行方向とその光学基準軸が平行となるように、一つの走査レンズを、光偏向器を設置している面から傾けて設置している光走査装置が開示されている。光偏向器と走査レンズを設置する面は互いに傾いているため、広い設置面を設けることで精度良く角度をつけている。また、特許文献2及び3では、光学ハウジングの小型化や、走査レンズの成形性の向上をはかった例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型化にあたり筐体を斜めにする構成では、走査レンズを設置する光学ハウジングの設置面と、走査レンズの光学基準軸が角度を有するレイアウトとした方が、マシン全体の小型化に適合しやすい。この場合、従来は光学ハウジング側で光学基準軸と平行となるように成型していた(図5(A)参照)。しかし、走査レンズよりも大型で複雑な金型で成型される光学ハウジングでは、設置面部のみ角度を異ならせつつ精度良く成型することが困難である。このため、結果的に走査レンズの設置角度のずれが大きくなり、ビームスポット径やビームスポット位置の劣化、ひいては画像品質の劣化につながってしまう。
【0006】
特許文献1の方法では、光学ハウジング全体の小型化をはかる際に、設置面が限られてしまい、角度などの精度が悪くなってしまうという問題がある。また、光学ハウジングでは、様々な角度などの精度を良くしようとすると、例えば、入れ子構造の金型を用いるなどの複雑な構成になり、開発コストの増大や、生産性の低下などを招く可能性がある。
【0007】
上述の通り、装置の小型化とともに、走査レンズの配置位置精度や成形性の向上、レイアウトの最適化による光学ハウジングを実現した光走査装置、該光走査装置を用いた小型化を実現した画像形成装置は未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
よって、本発明の課題は、走査レンズの配置位置精度及び成形性に優れ、レイアウトの最適化による光学ハウジングの小型化により装置全体の小型化を実現した光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る光走査装置、及び画像形成装置は、以下のとおりである。
〔1〕 光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有することを特徴とする光走査装置である。
〔2〕 光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なることを特徴とする光走査装置である。
〔3〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすことを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の光走査装置である。
〔4〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすことを特徴とする前記〔3〕に記載の光走査装置である。
〔5〕 前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であることを特徴とする前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の光走査装置である。
〔6〕 前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられることを特徴とする前記〔5〕に記載の光走査装置である。
〔7〕 前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過することを特徴とする前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の光走査装置である。
〔8〕 複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されることを特徴とする前記〔7〕に記載の光走査装置である。
〔9〕 前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射することを特徴とする前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の光走査装置。
〔10〕 前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であることを特徴とする前記〔1〕から〔9〕に記載の光走査装置。
〔11〕 前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であることを特徴とする前記〔1〕から〔10〕に記載の光走査装置。
〔12〕 前記〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走査レンズの配置位置精度及び成形性に優れ、レイアウトの最適化による光学ハウジングの小型化により装置全体の小型化を実現した光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有する光走査装置であるので、走査レンズの配置精度を落とすことなく、光学ハウジングの構造を簡素にして成形性を向上させることができ、斜入射光学系においては特に、レイアウトの自由度が向上し、光学ハウジングの小型化をはかることができる。
請求項2の発明によれば、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なる光走査装置であるので、走査レンズを設置する光学ハウジングの設置面と、走査レンズの光学基準軸が角度を有している場合において、走査レンズの配置精度を落とすことなく、光学ハウジングの構造を簡素にして成形性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすので、走査レンズの外形形状がより鈍角に近づき、金型から走査レンズが抜きやすくなることにより、良好な成形性が得られる。
請求項4の発明によれば、請求項3に記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすので、射出面に副走査のパワーを設けることで副走査方向の結像倍率を下げることができ、公差や温度変化による光学特性の劣化を低減することができるとともに、光束が副走査方向に拡がり角を持って走査レンズに入射していくので、射出面の副走査方向有効範囲を大きくとることで、必要最小限の大きさの走査レンズで光学系を構成でき、レイアウトの自由度向上や、小型化をはかることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であるため、走査レンズの組付時の位置決めが容易となるとともに、光軸方向と副走査方向のずれが独立に制御できるため、一方のずれがあるときに、想定しないもう一方のずれが発生することなく、光学特性を安定的に保つことができる。さらに、光学ハウジングの成形性も良くなるため、高精度に走査レンズを配置することができる。
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の光走査装置において、前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられるため、走査レンズの成型に必要なパーティングラインを容易に設定でき、簡素な金型構造で走査レンズの成型を行うことができる。
請求項7の発明によれば、請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置において、前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過するため、レイアウトの自由度が向上し、光学ハウジングの小型化をはかることができる。
請求項8の発明によれば、請求項7に記載の光走査装置において、複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されるため、前記光学基準軸がそれぞれの前記光束に対して大きく傾くことがなく、良好な光学特性が得られる。
請求項9の発明によれば、請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置において、前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射するため、水平入射の態様であっても装置の小型化をはかることができる。
請求項10の発明によれば、請求項1から9のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であるため、対向走査方式の場合において、走査レンズ上における、副走査方向まわりに回転させて、対向側に同じ走査レンズを配置することができ、全てのステーションにおいて、同形状の走査レンズで結像することができ、作製する金型などの種類を減らすことができ、開発コストや量産のコストを低減できる。
請求項11の発明によれば、請求項1から10のいずれかに記載の光走査装置において、前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であるため、全てのステーションにおいて、同形状の走査レンズで結像することができ、作製する金型などの種類を減らすことができ、開発コストや量産のコストをより低減できる。
請求項12の発明によれば、請求項1から11のいずれかに記載の光走査装置を備えた画像形成装置であるため、装置全体の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光走査装置の第一の実施態様を説明するための図であり、2ステーション分の走査を行う態様を示す斜視図である。
【図2】図1の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図3】走査レンズの光学基準軸Oを説明する断面模式図である。
【図4】本発明に係る光走査装置の第一の実施態様において、ステーションごとの光ビームに対する個別レンズをさらに備える光走査装置の斜視図である。
【図5】走査レンズと光学ハウジング設置面を説明する断面模式図であり、(A)は従来の例、(B)は本発明の例を示す。
【図6】図5に示す例と傾斜が逆の態様を説明する断面模式図である。
【図7】走査レンズの副走査方向のパワーを示す模式図であり、(A)は従来例、(B)及び(C)は本発明の例を示す。
【図8】走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた、射出面の副走査方向パワーΦ(Y)の変化を示すグラフである。
【図9】副走査方向パワーの他の例に関し、(A)は走査レンズを副走査方向にメニスカス形状とした模式図であり、(B)及び(C)は走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた副走査方向パワーの変化を示すグラフである。
【図10】走査レンズの副走査方向パワーを模式的に示した図である。
【図11】走査レンズの主走査方向のレンズ高さに応じた副走査方向パワーの変化を示すグラフである。
【図12】図5(B)に示した走査レンズの光学ハウジングへの設置部の拡大図である。
【図13】走査レンズの光学ハウジングへの設置部の拡大図である。
【図14】走査レンズ成型の模式図である。
【図15】成型された走査レンズにおけるパーティングラインを示した説明図である。
【図16】本発明に係る光走査装置の第二の実施態様を説明するための図である。
【図17】図16の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図18】走査レンズの(A)主走査方向を対称形状としたときの配置例、(B)副走査方向を対称形状としたときの配置例を示す模式図である。
【図19】本発明に係る光走査装置の第三の実施態様を説明するための図である。
【図20】図19の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図21】図20と逆の傾斜の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図22】本発明に係る光走査装置において、光偏向手段としてMEMSミラーを用いた実施態様を説明する図である。
【図23】図22の光走査装置の副走査断面光路の例を示す模式図である。
【図24】本発明の画像形成装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光走査装置、及び画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
<光走査装置>
本発明の光走査装置は、光源と、前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズが、(1)入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し所定の角度の傾きを有する態様、及び(2)前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なる態様のいずれかである。入射光学系は、斜め入射光学系であっても、水平入射光学系であってもよい。
【0015】
(片側斜め入射光学系)
本発明の第一の実施態様として、片側斜め入射光学系の態様について説明する。
図1は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、2ステーション分の走査を行う光走査装置である。結像手段を構成する走査レンズ120上の走査方向を、走査レンズ120上の主走査方向とし、その主走査方向と画像の略中央を走査するときの光線の進行方向に直交する方向を、走査レンズ120上の副走査方向としている。図1に示すように、光走査装置全体において、主走査方向及び副走査方向を、走査レンズ120と合わせて定義している。
【0016】
光源ユニット107から射出される光束(以下、「光ビーム」という)201、202は、シリンドリカルレンズ113によってポリゴンミラー106の反射面の近傍で副走査方向に収束される。光偏向手段であるポリゴンミラー106に偏向走査された光ビーム201、202は、走査レンズ120を介して感光体ドラム101、102の被走査面上にスポット状に結像し、画像情報に基づいた潜像を形成する。
ポリゴンミラー106に、光源ユニット107からの光ビーム201、202が、ポリゴンミラー106の回転軸方向である副走査方向に対して、所定の角度をなし、かつ、略同一の点に入射しており、偏向後に光ビ−ム201、202はそれぞれ副走査方向に離間していき、共通の走査レンズ120を通過した後、折り返しミラー127〜129で、それぞれ対応する感光体ドラム101、102の被走査面に分離・導光される。
【0017】
図1に示すように、同期検知センサ136へは、ポリゴンミラー106で偏向された光ビームが、結像レンズ137により集束されて入射され、その検出信号をもとに同期検知信号を生成している。図1に示す実施態様において、結像レンズ137は、主走査方向と副走査方向に異なる曲率を有するアナモフィックレンズを用いて主走査方向及び副走査方向ともに同期検知センサ136上に結像するようにしている。ただし、水平同期検知信号の発生という機能上、副走査方向には必ずしも結像させる必要はないため、レイアウトなどの制約を優先して、副走査方向に結像しない構成であっても良い。
【0018】
図2に、図1のポリゴンミラー106よりも下流の副走査断面光路の例を示す。「上流」、「下流」とは、光ビームが光源から出射された後、感光体ドラムに至るまでに通過していく順序における、「早い」(上流)、「遅い」(下流)を指す。
図2に示すように、レイアウトの自由度確保などのため、光学ハウジング100の設置面に対し、走査レンズ120を傾けて配置している。ここでは、2つのビーム201、202が共通の走査レンズ120を通過する。その様子の拡大図を図3に示す。
【0019】
図3に示すように、走査レンズ120の光学基準軸Oは、2つの光ビーム201、202が、走査レンズ120の入射面上で走査する走査平面間の領域内に設定されている。光束が走査レンズに大きく傾いて入射する場合、種々の光学特性をバランス良く良好に保つことが難しくなるが、このように配置することにより、各光ビーム201、202の、走査レンズ120への入射角を大きく傾けることがなく、良好な光学特性を達成することができる。
【0020】
各光ビーム201、202が、走査レンズ120への入射する位置における角度を等分するような角度に光学基準軸Oを設定すると、各光ビーム201、202の走査レンズ120への入射角が等しくなり、同等の光学特性を得やすくなる。複数の光束による画像を重ね合わせてカラー画像などを形成する場合、各光束の光学特性がある程度一致していることにより、色のむらや、色再現性の劣化、色ごとの位置ずれなど、望まない画像品質劣化を防ぐことができるため、各光ビームの入射する位置における角度を等分するような角度に走査レンズ120の光学基準軸Oを設定することが好ましい。
【0021】
本実施態様では、結像手段を1枚の走査レンズ120で構成し、各光ビーム201、202について、共通の走査レンズを通過させている。副走査方向については、光偏向手段であるポリゴンミラー106で一度収束した光束を被走査面上において、結像させるパワーを持ち、光偏向手段106の反射面と被走査面を、略共役の関係としている。このため、各ビーム201、202が、同一の光学的有効範囲を通過すると、それぞれ副走査方向に近づく関係となり、光ビーム201と202の分離が難しくなる。
この状況を鑑みて、本実施態様においては図3に示すように、主に走査レンズ120の射出面に、副走査方向のパワーを有するようにパワー配置し、射出面を光ビーム201が通過する光学的有効範囲と、光ビーム202が通過する光学的有効範囲とに分ける形状としている。
【0022】
また、本実施態様のような、光偏向手段106に光ビームが副走査方向に所定の角度をなして入射する、いわゆる斜入射光学系においては、走査線の曲がりが必然的に発生する。この走査線の曲がりを補正する方向となるように、2つの射出面それぞれの面形状を表す、下記数式(1)で表される二次元多項式の原点を、各光ビーム201、202が通過する位置よりも、入射面の光学基準軸Oに近づくように配置している。
【0023】
X(Y,Z)=Cm・Y2/{1+√(1−(1+a0)・Cm2・Y2)}+a4・Y4+a6・Y6+・・・+Cs(Y)・Z2/{1+√(1−Cs(Y)2・Z2)} ・・・数式(1)
【0024】
数式1において、Cs(Y)=Cs+b2・Y2+b4・Y4+・・・を表わす。
また、Yは走査レンズ120上の主走査方向、Zは副走査方向を表わし、Cmは原点における主走査方向の曲率、Csは原点における副走査方向の曲率を表す。
また、a及びbは係数を表わす。
数式(1)に示すように、主走査方向、副走査方向に直交する方向のデプスデータX(Y,Z)で、レンズ面形状を表している。
【0025】
本実施態様では、光ビーム201と202との分離ができるように、走査レンズ120を通過後の各光ビームが、副走査方向について平行となるような位置に、各射出面の二次元多項式の原点を設定している。
走査レンズ120通過後の光ビームの軌跡については図示を省略する。もちろん、レイアウトによっては、ビーム201と202との分離可能性を鑑み、各射出面の二次元多項式の原点を、より入射面の光学基準軸Oに近づけたり、逆に遠ざけたりする変形も可能である。
【0026】
さらに光学特性を向上させるため、図4に示すように、ステーションごとの光ビーム201、202に対する個別レンズ122、123をさらに備える光走査装置としてもよい。
【0027】
(走査レンズの形状)
図2に示すように、走査レンズ120と、走査レンズ120が光学ハウジング100に設置される面とが傾いている場合、従来は図5(A)左図に示すように、光学ハウジング側に走査レンズ設置面100’を形成していたが、本発明では、図5(B)左図に示すように、走査レンズ120の形状を光学ハウジング100に合わせて、走査レンズ120を配置している。走査レンズ120の入射面120aの面形状は、上記数式(1)で表現できる二次元多項式で表される。
【0028】
走査レンズ120の各面上における、上記数式(1)の原点を通過する、面に対する法線を、各面の光学基準軸と定義する。図5(B)左図に示すように光学基準軸Oと、設置基準面Aを傾けて配置することにより、走査レンズ120を精度良く位置決めすることができ、良好な光学特性を確保することができる。光学基準軸Oと設置基準面Aとは、少なくとも平行ではなければよく、適宜傾斜角が設定される。
【0029】
一方、光学基準軸Oと設置基準面Aとの関係ではなく、副走査方向外形大きさの関係により、同様の効果を得ることができる。ここで、外形とは、リブなどの非有効部も含めた、走査レンズ全体の形状を指す。
従来例の図5(A)右図では、走査レンズ120の入射面120aの副走査方向外形大きさh1と、射出面120bの副走査方向外形大きさh2とが同一であるのに対し、本発明の図5(B)右図では、h1とh2とが異なる。走査レンズ120に対し光学ハウジング100の設置面が傾いている場合でも、図5(B)に示すようなh1とh2とが異なる構成とすることにより、走査レンズ120の位置決めを精度良く行うことができるとともに、良好な光学特性が得られるように配置することができる。
なお、図5(B)では、一の断面図のみを示しているが、走査レンズ120は主走査方向にも大きさがあるため、主走査方向について一箇所でも図5(B)に示す形状としても、本発明の効果が得られる。
【0030】
光学ハウジング100の外部を含む装置全体や、光学ハウジング100自体のレイアウトによっては、上述の態様における傾斜を逆にして自由度を上げてもよい。傾斜が逆の走査レンズ120の態様を図6に示す。
【0031】
本実施態様のように、複数のビームが一の走査レンズを通過する場合、走査レンズの角度、位置を精度良く設定することができれば、各ビームの走査レンズ上通過位置や角度のずれを低減することでき、光学特性の劣化を防ぐことができる。さらに各光ビームの感光体上の走査位置ずれも低減することができる。よって、複数の感光体によりカラー画像などを形成する画像形成方式において、色のむらや色再現性の劣化、色ごとの位置ずれなどを防ぐことができる。
【0032】
(走査レンズの副走査方向のパワー)
図7(A)〜(C)は、走査レンズ120の副走査方向のパワーを示す模式図である。図7(A)〜(C)では、説明をわかりやすくするため、副走査方向のパワーを実際より大きく表現し、面の凹凸がわかるように模している。また、副走査方向の外形が大きい面(本実施態様では射出面120b)のみに着目して説明するために、入射面の副走査方向パワーについては省略して平面で表わしている。
図7(A)は従来例(比較例)であり、射出面120bの副走査方向パワーが負(凹)となっている場合である。射出面120bの副走査方向パワーが図7(B)では0(平面)、図7(C)では正(凸)となっている。それぞれの図において、丸で囲んで示した部位、射出面120bが設置基準面、もしくは設置基準面と対向する面と形成する角度が、(A)、(B)、(C)の順に大きくなっている。この角度が鋭角すぎる場合、走査レンズ成型の際に、走査レンズを金型から取り出すことが困難となり、レンズのカケなどの成型不良を引き起こす可能性がある。よって、射出面120bの副走査方向パワーを図7(B)及び(C)に示すように、0以上とすることが好ましい。
【0033】
走査レンズ120の面形状は、上述の数式(1)で表される。数式(1)より、副走査方向のパワーは、主走査方向に関して変化する量である。このため、数式(1)の原点上の副走査方向パワーのみならず、主走査方向Yにおける副走査方向のパワーをΦ(Y)としたときに、下記数式(2)を満たすことが好ましい。
Φ(Y)≧0 ・・・数式(2)
【0034】
図8に、走査レンズ120の主走査方向のレンズ高さに応じた、射出面120bの副走査方向パワーΦ(Y)の変化を示す。図8に示すように、どのYにおいても、上記数式(2)を満たす面形状としている。なお、入射面120aを平面としているため、その副走査方向パワーは省略している。
【0035】
より被走査面に近いところに、強い副走査方向のパワーを持たせることにより、副走査方向の結像倍率を下げることができ、公差や温度変化による光学特性の劣化を低減することができる。
【0036】
上記数式(2)は、入射面と射出面のうち、副走査方向の外形が大きい面で満たすと良い。図5(B)に示した実施態様では射出面120bで説明したが、これに限定されず、図6の実施態様では、入射面120aの副走査方向の外形が大きいため、図11(A)に示すように、入射面120aの副走査方向パワーをY=0において0とし、それ以外では正の値となるように設定している。
【0037】
図11(B)に、射出面120bの副走査方向パワーを示す。Y=0のときの副走査方向パワーを模式的に表すと、図10のようになる。
射出面120bの副走査方向外形が入射面120aより大きい場合においては、数式(2)とは区別して、射出面120bの主走査方向Yにおける副走査方向のパワーをΦ2(Y)として、下記数式(3)を満たすことが好ましい。
Φ2(Y)≧0 ・・・数式(3)
【0038】
光ビーム201は、一度ポリゴンミラー106で副走査方向に収束されて、走査レンズ120上では発散しながら進行するため、射出面120bの光学的有効範囲が必然的に広くなる。このため、必要最小限の大きさの走査レンズ120で光学系を構成することができ、レイアウトの自由度向上や、小型化、走査レンズの低コスト化などをはかることができる。この構成のもと、上記数式(3)を満たすことにより、成形性の課題を解決することができ、かつ、光学特性の劣化を防ぐことができる。
【0039】
副走査方向パワーの変形例としては、図9(A)に示すように、走査レンズ120を副走査方向にメニスカス形状としても良い。このとき、図9(C)に示すように副走査方向の外形が大きい射出面120bの副走査方向パワーが常に0以上となっているのに対し、図9(B)に示すように、入射面120aは負になるようにしている。このように設定すると、より副走査方向の結像倍率が下がり、公差などによる光学特性劣化を低減することができる。
【0040】
(走査レンズの光軸方向位置決め)
図5(B)に示した走査レンズ120の光学ハウジング100への設置部の拡大図を、図12(A)及び(B)に示す。
光学基準軸O方向の走査レンズ120の位置決めを行う面を、光軸方向基準面Bとしている。ここで、図12(B)は、図12(A)中のE部の拡大図であるが、このように、光軸方向基準面Bは、前述した設置基準面Aと垂直となるように設けられる。これにより、光学基準軸方向と副走査方向のずれが独立に制御でき、一方のずれがあるときに、想定しないもう一方のずれが生じることがないため、光学特性を安定的に保つことが可能となる。また、量産時の走査レンズ組付でも位置決めが容易となる。さらに、水平・垂直の面で当接面を形成しているため、光学ハウジング100の成形性も良くなり、より高精度に走査レンズ120を配置することが可能となる。
【0041】
一方、図13に示すように、光軸方向基準面Bを射出面120b側に設けても良い。特に、射出面120bの副走査方向外形が大きい場合はより好ましい。
【0042】
樹脂製の走査レンズを成型する際、一対の金型を合わせたときにできる空間に樹脂材料を流し込み、冷却固化させて取り出す工程を行う。一対の金型を合わせる部分にできるラインを「パーティングライン」という。図14(A)及び(B)に成型の模式図を示す。図14中、パーティングラインは破線Pで表されている。ここでは、後述する、副走査方向に外形が対称形状となる走査レンズ形状を例として説明する。
金型320a、320bを合わせてできる空間に、高圧力で樹脂を流し込み、走査レンズ120を成型する。成型時には高圧力で樹脂が注入されるため、図14(A)の場合、金型320bの形状では、走査レンズを取り出すことが困難となる。いわゆる抜き勾配と呼ばれているこの勾配は、金型320a側のように、成型物を取り出す方向に広がるように付けられている必要がある。これを、走査レンズ120の光軸方向基準軸を、副走査方向外形が大きい面に設けることにより、図14(B)のような金型構造となり、容易に走査レンズ120を取り出すことができる。
【0043】
成型された走査レンズ120におけるパーティングラインPを、図15(A)及び(B)に示す。
【0044】
(対向斜め入射光学系)
本発明の第二の実施態様として、片側斜め入射光学系の態様について説明する。
図16は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、ポリゴンミラー106に対して対向側にビームを振り分けて走査する対向走査方式の例である。
光ビーム203、204を発する光源108、シリンドリカルレンズ114、2枚構成の走査レンズ121、125、折り返しミラー130〜132を備え、感光体103、104をさらに走査可能としている。本実施態様では、片側の光ビーム(例えば201、202)が、2枚の走査レンズ120、124を共用している。
【0045】
図17は、図16の偏向手段106よりも下流の副走査断面光路図を示す。
各走査レンズ、120、121、124、125の入射面の光学基準軸は、それぞれの光学ハウジング100に設置される設置基準面に対して傾けた形状、もしくは、入射面と射出面の副走査方向の外形が異なるように設定しており、これまでの上記第一の実施形態における構成と同様である。
【0046】
本実施形態では、走査レンズ120と121を、また、走査レンズ124と125を、同じレンズ形状としている。それぞれを同じレンズ形状で構成することにより、開発コストや、金型費などを削減できて良い。このために、各走査レンズは、主走査方向に対称形状か、もしくは、副走査方向に対称形状、もしくは、主走査方向と副走査方向ともに対称形状となるようにしている。
これは、片側のステーションと、対向側のステーションで、同じ感光体上の走査位置に向かうビームの光学特性を略同等とし、色ずれや色ムラなどの画像劣化を防ぐためである。
【0047】
主走査方向に対称形状とした場合、図18(A)に示すように、走査レンズ120、もしくは124を、ポリゴンミラー106の回転軸に対して回転させるように、対向側の走査レンズ121、もしくは125に配置することができる。
副走査方向に対称形状としても、図18(B)に示すように、走査レンズ上の主走査方向を回転軸として反転するように、対向側に配置することで、同じレンズ形状にて構成することが可能となる。
【0048】
(水平入射光学系)
本発明の第三の実施態様として、水平入射光学系の態様について説明する。
図19は、本発明に係る光走査装置の実施態様の一形態を説明するための図であって、モノクロ機用の、1ステーションを走査する光走査装置の斜視図ある。なお、カラー機を構成するためには、同様の構成を4ステーション並べることで構成することができる。1ステーションであること以外の他の構成は、図1に示す第一の実施態様における光走査装置と同様である。
【0049】
図20に、図19の光偏向手段160よりも下流の副走査断面光路図を示す。
光源ユニット107から射出される光ビーム201は、シリンドリカルレンズ113によってポリゴンミラー106の反射面の近傍で副走査方向に収束される。ポリゴンミラー106に偏向走査された光ビーム201は、走査レンズ120を介して感光体ドラム101上にスポット状に結像し、画像情報に基づいた潜像を形成する。
図20に示すように、感光体ドラム101への入射する光ビームを、副走査方向に傾けている。これは、感光体ドラム101からの正反射光が光走査装置に返ってくるのを防ぐためである。
また、図示しない光走査装置外のレイアウトからの制約もあり、光走査装置の光学ハウジング100に対して、光学系を傾けて配置している。これにより、マシン全体のレイアウト自由度の向上をはかっている。
【0050】
走査レンズ120の形状は、図5(B)に示すように、光学ハウジング100に合わせて配置している。走査レンズ120の少なくとも入射面120aは、上述の数式(1)で表現できる二次元多項式で、その面形状を表している。数式(1)と異なる式であったとしても、数式(1)で近似して表現できる形状もこの範疇とする。
走査レンズ120の各面上における、数式(1)の原点を通過する、面に対する法線を各面の光学基準軸と定義する。画像の略中央部に対応する光ビーム201が通過する方向と略一致した方向に、入射面120aの光学基準軸Oを有している。また、射出面120bの光学基準軸は図示しないが、本実施態様においては、入射面120aの光学基準軸Oと一致させている。特にポリゴンミラー106の回転軸に垂直にビームが入射する本実施態様では、このような配置とすることにより、光学特性を良好に保つことができる。
このため、光学基準軸Oと、設置基準面Aを傾けて配置することによって、走査レンズ120を精度良く位置決めすることと、良好な光学特性の確保を実現している。
【0051】
また、第一の実施態様と同様、光学基準軸Oと設置基準面Aとの関係ではなく、副走査方向外形大きさの関係により、同様の効果を得ることができる。
【0052】
光学ハウジング外も含めた、マシン全体のレイアウトによっては、図21のように、図20とは逆の傾き角とし、自由度を上げることもできる。この場合、上述した内容と同様に、図9に示すような走査レンズ形状とすると良い。
【0053】
(マイクロミラー光学系)
図22、及び図23には光偏向手段として、MEMSミラー106’を用いたマイクロミラー光学系の実施態様を示す。
本実施態様において、走査レンズ120の形状や基準軸の設定などは、上述の第一から第三の実施態様と同様の構成とする。これにより、走査レンズの配置位置精度や成形性の向上、また、レイアウトの最適化による小型化を達成することができる。
【0054】
<画像形成装置>
本発明の光走査装置を備える本発明の画像形成装置の一実施形態を、図24を参照しながら説明する。本実施形態は、本発明に係る光走査装置を、レーザプリンタに適用した例である。なお、光走査装置は光ハウジング100として図示している。
感光体ドラム901の周囲には、感光体を高圧に帯電する帯電チャージャ902、光走査装置100により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ903、現像ローラにトナーを補給するトナーカートリッジ904、ドラムに残ったトナーを掻き取って備蓄するクリーニングケース905が配置される。感光体ドラムへ光偏向手段の走査により画像記録が行われる。画像形成ステーションは転写ベルト906の移動方向に並列され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が転写ベルト上にタイミングを合わせて順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。各画像形成ステーションはトナー色が異なるだけで、基本的には同一構成である。
【0055】
記録紙は給紙トレイ907から給紙コロ908により供給され、レジストローラ対909により副走査方向の記録開始のタイミングに合わせて送りだされ、転写ベルトからトナー画像が転写されて、定着ローラ910で定着して排紙ローラ912により排紙トレイ911に排出される。
【0056】
図24に示す画像形成装置は、4ステーション構成のフルカラータンデム方式画像形成装置の例であるが、5ステーション以上のタンデム方式画像形成装置や、モノクロ機においても、本発明の光走査装置を光書込手段に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 光学ハウジング
101、102、103、104 感光体ドラム
106 光偏向手段
107 光源
113 シリンドリカルレンズ
120、121、124、125 走査レンズ
136 同期検知センサ
137 結像レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2009−48004号公報
【特許文献2】特開2009−98332号公報
【特許文献3】特開2007−155838号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し傾斜するように設定されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすことを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項8】
複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されることを特徴とする請求項7に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項10】
前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であることを特徴とする請求項1から9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であることを特徴とする請求項1から10に記載の光走査装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、入射面の形状を規定する二次元多項式の原点における法線を光学基準軸としたとき、前記設置基準面が前記光学基準軸に対し傾斜するように設定されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
光源と、
前記光源から出射された光束を偏向走査する光偏向手段と、
前記光偏向手段によって偏向走査された前記光束を、対応する被走査面に結像する結像手段と、
前記結像手段を収容する光学ハウジングとを備え、
前記結像手段は、前記光学ハウジングに設置されるための設置基準面を有し、
前記結像手段に含まれる少なくとも1つの走査レンズが、前記光束が走査される主走査方向と直交する副走査方向について、入射面と射出面の外形面積が異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ(Y)が、Φ(Y)≧0を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記射出面の副走査方向の外形が前記入射面の副走査方向の外形よりも大きく、かつ前記射出面の主走査方向Yにおける副走査方向のパワーΦ2(Y)が、Φ2(Y)≧0を満たすことを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記結像手段の少なくとも1つの走査レンズにおいて、前記光束の進行方向に対して略垂直な光軸方向基準面をさらに有し、該光軸方向基準面が、前記設置基準面に対して略垂直であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光軸方向基準面が、前記入射面及び前記射出面のうち、副走査方向の外形が大きい方の面に設けられることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光源が複数の光源を有し、前記複数の光源から出射された複数の前記光束は、前記光偏向手段の同一の反射面に、該光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し所定の有限の角度をなして入射し、前記光偏向手段により偏向走査された複数の前記光束は、共に前記結像手段の前記走査レンズを通過することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項8】
複数の前記光束が走査する平面の間の領域内に、前記光学基準軸が設定されることを特徴とする請求項7に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記光束が、前記光偏向手段の回転軸に垂直な面に対し、略平行に入射することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項10】
前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、主走査方向について、対称形状であることを特徴とする請求項1から9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記結像手段の前記走査レンズの少なくとも画像領域に対応する有効領域の面形状が、副主走査方向について、対称形状であることを特徴とする請求項1から10に記載の光走査装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−185983(P2011−185983A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47991(P2010−47991)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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