説明

光走査装置

【課題】支持壁の振動を抑制することができる光走査装置を提供する。
【解決手段】光走査装置1のケーシング100は、ポリゴンミラー40を支持する支持壁110と、支持壁110から延びて反射鏡73Aを支持する柱状の反射鏡支持部131Aと、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40とが対向する対向方向から見て、ポリゴンミラー40を挟んで反射鏡支持部131Aとは反対側で支持壁110から延び、反射鏡73Bを支持する柱状の反射鏡支持部131Bと、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40との間で支持壁110から延び、反射鏡支持部131Aと反射鏡支持部131Bとをつなぐ補強壁151とを有している。補強壁151は、光源装置20A,20Bからポリゴンミラー40に向けて出射されたレーザ光を通過させる開口153を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源を備える光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の感光体が並んで設けられたタンデム方式の画像形成装置には、感光体を露光するために、複数の光源から出射され、ポリゴンミラーなどの偏向器により偏向されたレーザ光を各感光体の表面(被走査面)上で走査する光走査装置が設けられている。
【0003】
このような光走査装置としては、レーザ光を出射する複数の光源と、レーザ光を反射して主走査方向に偏向する偏向器と、偏向されたレーザ光を被走査面に向けて反射する複数の折り返しミラーと、光源や偏向器、折り返しミラーを収容するハウジング部材とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−251308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置の印字速度の高速化など、光走査装置が設けられる機器の動作の高速化を目的として、レーザ光を偏向する偏向器も高速動作するものが採用されるようになっている。
【0006】
しかしながら、偏向器が高速動作すると、ハウジング部材の偏向器を支持する支持壁が振動するので、これによって偏向器自身も振動し、偏向器で偏向(反射)されるレーザ光がぶれるおそれがあった。レーザ光がぶれると、被走査面に対するレーザ光の入射位置が安定しなくなるので、例えば、画像形成装置では、感光体の表面を良好に露光できなくなり、結果として、画質が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、支持壁の振動を抑制することができる光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するため、本発明の光走査装置は、第1のレーザ光を出射する第1の光源と、第2のレーザ光を出射する第2の光源と、第1の光源および第2の光源と対向して配置され、第1のレーザ光および第2のレーザ光を反射して主走査方向に偏向する偏向器と、偏向された第1のレーザ光を被走査面に向けて反射する第1の反射鏡と、偏向された第2のレーザ光を被走査面に向けて反射する第2の反射鏡と、第1の光源、第2の光源、偏向器、第1の反射鏡および第2の反射鏡を収容するケーシングとを備えている。
ケーシングは、偏向器を支持する支持壁と、支持壁から延びて第1の反射鏡を支持する柱状の第1の反射鏡支持部と、第1の光源および第2の光源と偏向器とが対向する対向方向から見て、偏向器を挟んで第1の反射鏡支持部とは反対側で支持壁から延び、第2の反射鏡を支持する柱状の第2の反射鏡支持部と、第1の光源および第2の光源と偏向器との間で支持壁から延び、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部とをつなぐ補強壁とを有している。
補強壁は、第1の光源および第2の光源から偏向器に向けて出射された第1のレーザ光および第2のレーザ光を通過させる少なくとも1つの開口を有する。
【0009】
このような構成によれば、ケーシングは、偏向器を支持する支持壁から延びる柱状の第1の反射鏡支持部および第2の反射鏡支持部と、支持壁から延び、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部とをつなぐ補強壁とを有しているので、支持壁の強度を向上させることができる。これにより、偏向器が高速動作した場合であっても、支持壁の振動を抑制することができる。
【0010】
なお、補強壁は、第1の光源および第2の光源から偏向器に向けて出射された第1のレーザ光および第2のレーザ光を通過させる開口を有するので、第1の光源および第2の光源から出射されたレーザ光が、補強壁によって遮られることはない。
【0011】
前記した光走査装置において、補強壁の開口は、第1のレーザ光または第2のレーザ光の幅を規定するアパーチャであることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、別部品としてのアパーチャ部材を設ける必要がなくなるので、部品点数を削減することができ、光走査装置の組立性を向上させたり、コストを抑制したりすることができる。また、アパーチャとしての開口を通過しなかった光は、補強壁によって遮られ、偏向器や反射鏡には到達しないので、このような光が偏向器や反射鏡で反射されて被走査面に到達することを抑制することができる。
【0013】
前記した各光走査装置において、第1の反射鏡支持部および第2の反射鏡支持部は、それぞれ、支持壁とは反対側の端部で第1の反射鏡または第2の反射鏡を支持している構成とすることができる。
この場合、補強壁は、支持壁から前記端部まで延びていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、補強壁によって、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部とを支持壁側から当該支持壁とは反対側の端部までつなぐことができるので、第1の反射鏡支持部、第2の反射鏡支持部および支持壁の強度を向上させることができる。
【0015】
前記した各光走査装置において、支持壁は、第1の反射鏡で反射して被走査面に向かう第1のレーザ光を通過させる第1の露光口と、第2の反射鏡で反射して被走査面に向かう第2のレーザ光を通過させる第2の露光口とを有する構成とすることができる。
【0016】
このような支持壁がレーザ光を通過させる露光口を有する構成では、偏向器の高速動作により支持壁が振動しやすくなるが、本発明では、補強壁により支持壁が補強されているので、偏向器の高速動作の影響を抑えることができる。
【0017】
前記した補強壁が支持壁から前記端部まで延びている光走査装置において、第1の反射鏡および第2の反射鏡は、前記対向方向から見て、偏向器を挟んで支持壁とは反対側に配置されていることが好ましい。
【0018】
このような構成では、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部の高さが高くなるため、偏向器の高速動作により第1の反射鏡支持部および第2の反射鏡支持部が振動する可能性があるが、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部とは、補強壁によって支持壁から前記した端部までつながれるので、その強度を向上させることができる。
【0019】
前記した各光走査装置は、第3のレーザ光を出射する第3の光源を備えていてもよい。
この場合、第1の反射鏡支持部は、ケーシング内における第3のレーザ光の光路上において、第3の光源と偏向器との間に設けられており、第3のレーザ光を通過させる通過口を有する構成とすることができる。
【0020】
このような構成によれば、第1の反射鏡支持部を避けて第3の光源を配置する必要がないので、第3の光源の配置の自由度を向上させることができる。これにより、光走査装置の小型化や部品点数の削減を図ることも可能となる。
【0021】
前記した補強壁の開口がアパーチャである光走査装置は、第1のレーザ光および第2のレーザ光を偏向器の反射面上でそれぞれ結像させる少なくとも1つの結像レンズを備えていてもよい。
この場合、結像レンズは、補強壁と偏向器との間に配置されていることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、結像レンズには、アパーチャにより幅が規定されたレーザ光が入射されることになるので、被走査面上におけるレーザ光の結像状態の調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、支持壁から延び、第1の反射鏡支持部と第2の反射鏡支持部とをつなぐ補強壁により支持壁の強度を向上させることができるので、偏向器が高速動作した場合であっても、支持壁の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る光走査装置の斜視図である。
【図2】光走査装置の平面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】光源装置周辺の拡大斜視図である。
【図5】補強壁に形成された開口の機能の説明図である。
【図6】変形例に係る光走査装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、「主走査方向」とは、被走査面の一例としての感光体D(図3参照)の表面でのレーザ光L1〜L4の走査方向である。本明細書においては、この走査のためにレーザ光L1〜L4を偏向する方向を(空間的に異なる方向であっても)すべて主走査方向とする。また、「副走査方向」とは、主走査方向およびレーザ光L1〜L4の進行方向に直交する方向である。
【0026】
また、以下の説明において、前後上下左右は、図1に示されている状態における前後上下左右をいうものとする。すなわち、以下の説明における前後上下左右は、必ずしも、光走査装置1が画像形成装置などに設けられたときの前後上下左右に対応するわけではない。
【0027】
図1に示すように、光走査装置1は、光源装置20(20A〜20D)と、結像レンズの一例としての第1シリンドリカルレンズ30(図2参照)と、偏向器の一例としてのポリゴンミラー40と、fθレンズ50と、第2シリンドリカルレンズ60と、反射鏡71〜75と、ケーシング100とを主に備えている。
【0028】
光源装置20(20A〜20D)は、光束に変換したレーザ光L1〜L4を出射する装置であり、光走査装置1が走査露光する4つの感光体Dに対応して4つ設けられている。図2に示すように、光源装置20Aと光源装置20Bは、左右方向に並んで配置されており、光源装置20Cと光源装置20Dは、左右方向において互いに向かい合った状態で、出射するレーザ光L3,L4が、光源装置20A,20Bが出射するレーザ光L1,L2に対して略直交するように配置されている。
【0029】
図4に示すように、各光源装置20A〜20Dは、それぞれ、半導体レーザ21と、コリメートレンズ22と、フレーム23とを主に備えている。
【0030】
半導体レーザ21(21A〜21D)は、レーザ光L1〜L4を出射する公知の素子である。なお、本実施形態において、半導体レーザ21Aは、第1の光源の一例であり、半導体レーザ21Bは、第2の光源の一例であり、半導体レーザ21Cは、第3の光源の一例である。
【0031】
コリメートレンズ22は、半導体レーザ21からのレーザ光L1〜L4を集光して光束に変換するレンズである。なお、本発明において、コリメートレンズ22によって変換されて得られた光束は、平行光、収束光および発散光のいずれであってもよい。
【0032】
フレーム23は、半導体レーザ21とコリメートレンズ22を支持する部材である。半導体レーザ21は、フレーム23の底壁から立設する壁に設けられた円筒状の取付部に圧入されることにより固定され、コリメートレンズ22は、フレーム23の底壁の1段高い部分に半導体レーザ21と対向するように配置され、接着剤により固定されている。
【0033】
図2に戻り、反射鏡71は、光源装置20Cからのレーザ光L3(第3のレーザ光)または光源装置20Dからのレーザ光L4をポリゴンミラー40に向けて反射する部材であり、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40との間に配置されている。なお、光源装置20Aからのレーザ光L1(第1のレーザ光)と光源装置20Bからのレーザ光L2(第2のレーザ光)は、それぞれ、反射鏡71の上を通過してポリゴンミラー40に入射される。
【0034】
第1シリンドリカルレンズ30は、ポリゴンミラー40の面倒れを補正するため、レーザ光L1,L3またはレーザ光L2,L4を屈折させて副走査方向に収束し、ポリゴンミラー40の反射面上で主走査方向に長い線状に結像させるレンズである。この第1シリンドリカルレンズ30は、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40との間、さらに言えば、ケーシング100の後述する補強壁151とポリゴンミラー40との間に配置されている。
【0035】
ポリゴンミラー40は、回転軸から等距離に設けられた6つのミラー面(反射面)を有し、ミラー面が回転軸を中心に一定速度で回転することで、第1シリンドリカルレンズ30を通過したレーザ光L1〜L4を反射して主走査方向に偏向する。このポリゴンミラー40は、ケーシング100のほぼ中央で、前後方向において光源装置20A,20Bと対向して配置されている。
【0036】
fθレンズ50は、ポリゴンミラー40によって等角速度で走査されたレーザ光L1〜L4を感光体Dの表面で主走査方向に等速度で走査するように変換するレンズであり、ポリゴンミラー40の左右に1つずつ、合計2つ設けられている。
【0037】
第2シリンドリカルレンズ60は、ポリゴンミラー40の面倒れを補正するため、レーザ光L1〜L4を屈折させて副走査方向に収束し、感光体Dの表面上に結像させるレンズである。この第2シリンドリカルレンズ60(60A〜60D)は、4つの光源装置20A〜20Dから出射されるレーザ光L1〜L4に対応して4つ設けられている。
【0038】
図3に示すように、ポリゴンミラー40で偏向され、fθレンズ50を通過したレーザ光L1,L2が通過する第2シリンドリカルレンズ60A,60Bは、fθレンズ50の上方に配置されている。また、ポリゴンミラー40で偏向され、fθレンズ50を通過したレーザ光L3,L4が通過する第2シリンドリカルレンズ60C,60Dは、fθレンズ50とケーシング100の後述する側壁120との間で、側壁120と対向して配置されている。
【0039】
反射鏡72〜75は、ポリゴンミラー40で偏向され、fθレンズ50を通過したレーザ光L1〜L4を反射する部材である。この反射鏡72〜75は、例えば、ガラス板の表面(反射面となる面)にアルミニウムなどの反射率が高い材料を蒸着することにより形成されている。
【0040】
反射鏡72(72A,72B)は、fθレンズ50と第2シリンドリカルレンズ60C,60Dとの間に配置されており、fθレンズ50を通過したレーザ光L1,L2を第2シリンドリカルレンズ60A,60Bに向けて反射する。また、反射鏡73(73A,73B)は、fθレンズ50の上方に配置されており、第2シリンドリカルレンズ60A,60Bを通過したレーザ光L1,L2を感光体Dの表面(被走査面)に向けて反射する。なお、本実施形態において、反射鏡73Aは、第1の反射鏡の一例であり、反射鏡73Bは、第2の反射鏡の一例である。
【0041】
反射鏡74(74C,74D)は、第2シリンドリカルレンズ60C,60Dとケーシング100の側壁120との間で、側壁120に沿うように配置されており、第2シリンドリカルレンズ60C,60Dを通過したレーザ光L3,L4を反射鏡75に向けて反射する。また、反射鏡75(75C,75D)は、第2シリンドリカルレンズ60C,60Dの上方に配置されており、反射鏡74で反射されたレーザ光L3,L4を感光体Dの表面に向けて反射する。
【0042】
以上のような構成により、図2に示すように、光源装置20A,20Bからのレーザ光L1,L2は、第1シリンドリカルレンズ30を通過して、ポリゴンミラー40で主走査方向に偏向される。また、光源装置20C,20Dからのレーザ光L3,L4は、反射鏡71で反射されて進路をポリゴンミラー40に向けた後、第1シリンドリカルレンズ30を通過して、ポリゴンミラー40で主走査方向に偏向される。
【0043】
そして、図3に示すように、ポリゴンミラー40で偏向されたレーザ光L1,L2は、fθレンズ50を通過し、反射鏡72で反射され、第2シリンドリカルレンズ60を通過した後、反射鏡73で反射されて感光体Dの表面を走査露光する。また、ポリゴンミラー40で偏向されたレーザ光L3,L4は、fθレンズ50および第2シリンドリカルレンズ60を通過し、反射鏡74で反射された後、反射鏡75で反射されて感光体Dの表面を走査露光する。
【0044】
図1に示すように、ケーシング100は、光源装置20やポリゴンミラー40、第2シリンドリカルレンズ60、反射鏡71〜75などを収容する部材である。このケーシング100は、本発明の特徴部分に関わる構成として、支持壁110と、側壁120と、反射鏡支持部130,140と、補強壁151,152と、補強部161,162とを主に有している。
【0045】
支持壁110は、ケーシング100の下側の壁(底壁)であり、光源装置20やポリゴンミラー40、fθレンズ50、第2シリンドリカルレンズ60C,60D、反射鏡72,74などを支持している。図3に示すように、この支持壁110には、反射鏡73,75で反射して感光体Dの表面に向かうレーザ光L1〜L4をそれぞれ通過させる4つの露光口111〜114が形成されている。なお、本実施形態において、露光口111は、第1の露光口の一例であり、露光口112は、第2の露光口の一例である。
【0046】
ちなみに、図3には示していないが、露光口111〜114には、ケーシング100内への塵埃の侵入を抑制するため、レーザ光L1〜L4を通過させるガラスやレンズなどが嵌められていてもよい。
【0047】
側壁120は、支持壁110の露光口111〜114が並ぶ左右方向の両端部で支持壁110から立設するように設けられている。
【0048】
図1に示すように、反射鏡支持部130(131Aおよび132A、131Bおよび132B)は、反射鏡73(73A,73B)を支持する部分であり、支持壁110から上方に向けて延びる略柱状に形成されている。
【0049】
より詳細に、反射鏡支持部131A,132Aは、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40とが対向する対向方向(前後方向)から見て(図3も参照)、ポリゴンミラー40の右側で、fθレンズ50の前後に設けられている。また、反射鏡支持部131B,132Bは、前後方向から見て、ポリゴンミラー40の左側(ポリゴンミラー40を挟んで反射鏡支持部131A,132Aとは反対側)で、fθレンズ50の前後に設けられている。
【0050】
なお、以下の説明において、反射鏡支持部131A,131Bは、前側(光源装置20が配置された側)に設けられたものを指すものとし、反射鏡支持部132A,132Bは、後側に設けられたものを指すものとする。ちなみに、本実施形態において、反射鏡支持部131Aは、第1の反射鏡支持部の一例であり、反射鏡支持部131Bは、第2の反射鏡支持部の一例である。
【0051】
反射鏡支持部130は、支持壁110とは反対側の端部である上端部133(図4参照)で反射鏡73を支持している。さらに述べると、反射鏡支持部130は、ポリゴンミラー40よりも上まで延びており、上端部133はポリゴンミラー40よりも上側に位置している。このような構成により、図3に示すように、反射鏡73(73A,73B)は、前後方向から見て、ポリゴンミラー40を挟んで支持壁110とは反対側(ポリゴンミラー40よりも支持壁110から離れた側)に配置されている。
【0052】
図2に示すように、反射鏡支持部131A,131Bは、左右方向において互いに向かい合って配置されている光源装置20Cと光源装置20Dの間であって、反射鏡71を挟むように設けられている。別の言い方をすると、反射鏡支持部131A,131Bは、光源装置20C,20Dから出射され、反射鏡71で反射されてポリゴンミラー40に向かう、略L形状のレーザ光L3,L4の光路上において、光源装置20C,20Dとポリゴンミラー40との間に設けられている。
【0053】
そのため、図4に示すように、反射鏡支持部131A,131Bには、それぞれ、レーザ光L3またはレーザ光L4を通過させる通過口134が形成されている。このような構成により、反射鏡支持部131A,131Bを避けて光源装置20C,20Dを配置する必要がないので、光源装置20の配置の自由度を向上させることができるようになっている。また、反射鏡支持部131A,131Bを避けるため、4つの光源装置20および反射鏡71を図2に示す位置よりも前側にずらして配置する場合と比較して、支持壁110(ケーシング100)の小型化を図ることができるので、光走査装置1の小型化が可能となっている。
【0054】
図1に示すように、反射鏡支持部140は、反射鏡75を支持する部分であり、支持壁110から上方に向けて延びる略柱状に形成されている。より詳細に、反射鏡支持部140は、第2シリンドリカルレンズ60C,60Dの前後に設けられている。この反射鏡支持部140も、前記した反射鏡支持部130と同様に、支持壁110とは反対側の端部である上端部(符号省略)で反射鏡75を支持している。
【0055】
補強壁151,152および補強部161,162は、ケーシング100を補強するための部分である。
【0056】
補強壁151は、光源装置20A,20Bとポリゴンミラー40との間、さらに言えば、反射鏡71と第1シリンドリカルレンズ30(図2参照)との間で支持壁110から上方に向けて延び、反射鏡支持部131Aと反射鏡支持部131Bとを連続的につないでいる。言い換えると、補強壁151は、支持壁110および反射鏡支持部131A,131Bと一体に形成されている。
【0057】
図4に示すように、この補強壁151は、支持壁110から反射鏡支持部131A,131Bの上端部133まで延びている。このような構成によれば、補強壁151によって、反射鏡支持部131Aと反射鏡支持部131Bとを支持壁110側から上端部133側までつなぐことができるので、反射鏡支持部131A,131Bおよび支持壁110の強度を向上させることができる。
【0058】
補強壁151には、光源装置20からポリゴンミラー40(図4では図示省略)に向けて出射されたレーザ光L1〜L4をそれぞれ通過させる4つの開口153(貫通孔)が形成されている。この4つの開口153は、正面から見て略正方形状をなしており、図5に示すように、それぞれ、光源装置20A〜20D(半導体レーザ21A〜21D)から出射され、コリメートレンズ22を通過したレーザ光L1〜L4の上下および左右の幅を規定するアパーチャとなっている。なお、図5では、半導体レーザ21A,21Bから出射されたレーザ光L1,L2と図4に示した上側の開口153のみを図示している。
【0059】
このような構成により、本実施形態では、別部品としてのアパーチャを設ける必要がなくなるので、光走査装置1の部品点数を削減することができ、組立性を向上させたり、コストを抑制したりすることができるようになっている。また、アパーチャとしての開口153を通過しなかった光は、補強壁151によって遮られるため、ポリゴンミラー40や反射鏡72〜75に到達することはない。これにより、余計な光が、いわゆる迷光として、ポリゴンミラー40や反射鏡72〜75で反射され、露光口111〜114を通って感光体Dの表面に到達することを抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、第1シリンドリカルレンズ30が補強壁151とポリゴンミラー40との間に配置されているので、第1シリンドリカルレンズ30には、アパーチャとして機能する開口153により幅が規定されたレーザ光L1〜L4が入射されることになる。これにより、感光体Dの表面(感光体Dの表面に対応する光学的な位置)上におけるレーザ光L1〜L4の結像状態の調整を容易に行うことができるようになっている。
【0061】
図1に示すように、補強壁152は、反射鏡支持部132Aと反射鏡支持部132Bとの間で支持壁110から上方に向けて延び、反射鏡支持部132Aと反射鏡支持部132Bとを連続的につないでいる。この補強壁152も、補強壁151と同様に、支持壁110および反射鏡支持部132A,132Bと一体に形成されている。
【0062】
補強部161,162は、支持壁110から上方に向けて延び、前後方向に厚い壁状に形成されている。補強部161は、反射鏡支持部131Aとその右側の反射鏡支持部140、または、反射鏡支持部131Bとその左側の反射鏡支持部140とをつないでいる。また、補強部162は、反射鏡支持部132Aとその右側の反射鏡支持部140、または、反射鏡支持部132Bとその左側の反射鏡支持部140とをつないでいる。この補強部161,162もまた、補強壁151,152と同様に、支持壁110および反射鏡支持部130,140と一体に形成されている。
【0063】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
ケーシング100は、支持壁110から延びる反射鏡支持部131A,131Bと、支持壁110から延び、反射鏡支持部131Aと反射鏡支持部131Bとをつなぐ補強壁151とを有しているので、支持壁110の強度を向上させることができる。これにより、ポリゴンミラー40が高速回転した場合であっても、支持壁110の振動を抑制することができる。
【0064】
その結果、例えば、光走査装置1がレーザプリンタなどの画像形成装置に設けられる場合には、ポリゴンミラー40が高速回転しても感光体Dの表面を良好に走査露光することができるので、画像形成装置の印字速度を高速化しつつ、画質の低下を抑制することができる。
【0065】
なお、補強壁151は、光源装置20からポリゴンミラー40に向けて出射されたレーザ光L1〜L4を通過させる開口153を有するので、光源装置20から出射されたレーザ光L1〜L4が、補強壁151によって遮られることはない。
【0066】
また、本実施形態では、ケーシング100の支持壁110がレーザ光L1〜L4を通過させる露光口111〜114を有するので、ポリゴンミラー40の高速回転により支持壁110が振動しやすくなっている。しかし、補強壁151,152や補強部161,162により支持壁110が補強されているので、ポリゴンミラー40の高速回転の影響を良好に抑えることができる。すなわち、本発明は、ケーシング100の支持壁110(底壁)が露光口111〜114を有する構成において特に有効である。
【0067】
また、本実施形態では、反射鏡73がポリゴンミラー40の上側に配置されているので、反射鏡73を支持する反射鏡支持部131A,131Bの高さが高くなるため、ポリゴンミラー40の高速回転により反射鏡支持部131A,131Bが振動する可能性がある。しかし、反射鏡支持部131Aと反射鏡支持部131Bとは、補強壁151によって支持壁110から上端部133まで連続してつながれるので、その強度を向上させることができ、ポリゴンミラー40の高速回転したときの振動を抑制することが可能となっている。これにより、支持壁110の強度もさらに向上させることができるので、ポリゴンミラー40が高速回転した場合の支持壁110の振動もより確実に抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0069】
前記実施形態では、光源装置20A(半導体レーザ21A)と光源装置20B(半導体レーザ21B)を並べて配置し、光源装置20C,20D(半導体レーザ21C,21D)を互いに向かい合った状態で、レーザ光L3,L4がレーザ光L1,L2に対して略直交するように配置したが、特に半導体レーザ21C,21Dの配置はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、レーザ光の出射面をポリゴンミラー40に向けた状態で、4つの半導体レーザ21A〜21Dを左右方向に並べて配置してもよい。
【0070】
なお、図6に示す構成では、反射鏡支持部131A,131Bは、ケーシング100内におけるレーザ光L3,L4の光路上において半導体レーザ21C,21Dとポリゴンミラー40との間に設けられているため、反射鏡支持部131A,131Bにはレーザ光L3,L4を通過させる通過口134が形成されている。これによれば、前記実施形態と同様に、半導体レーザ21C,21Dの配置の自由度を向上させることができる。また、図6に示す構成では、前記実施形態で説明した反射鏡71を省略することができるので、光走査装置1の部品点数を削減することができる。
【0071】
前記実施形態では、補強壁151が支持壁110から反射鏡支持部131A,131Bの上端部133まで延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、補強壁の高さは、前記実施形態の支持壁110から反射鏡支持部131A,131Bの上端部133までの高さよりも高くてもよいし、低くてもよい。
【0072】
前記実施形態では、アパーチャとして機能する開口153が、レーザ光L1〜L4の上下および左右の幅を規定するもの(形状)であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アパーチャとして機能する開口は、レーザ光の上下の幅だけを規定する形状であってもよいし、レーザ光の左右の幅だけを規定する形状であってもよい。
【0073】
前記実施形態では、補強壁151の開口153が、レーザ光L1〜L4の幅を規定するアパーチャとして機能するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、補強壁の開口は、レーザ光を遮らないためのレーザ光の径よりも大きな開口であってもよい。この場合、別途、アパーチャ部材を設けることが好ましい。
【0074】
前記実施形態では、補強壁151に、レーザ光L1〜L4をそれぞれ通過させる4つの開口153が形成された構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、補強壁の開口の数は特に限定されるものではない。例えば、前記実施形態において、開口は、レーザ光L1,L2を通過させるものと、レーザ光L3,L4を通過させるものの2つであってもよい。また、開口は1つであってもよい。
【0075】
前記実施形態では、第1シリンドリカルレンズ30(結像レンズ)を2つ備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前記実施形態(図2参照)において、結像レンズは1つだけであってもよい。また、図6に示したような構成においては、4つの光源(半導体レーザ21A〜21D)に対応させて結像レンズを4つ設けてもよい。
【0076】
前記実施形態では、ケーシング100の底壁である支持壁110に露光口111〜114が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ケーシングに設けられた光学部品を覆うようにケーシングに取り付けられて、ケーシングと共に光走査装置の筐体を構成するカバーに露光口が形成されていてもよい。
【0077】
前記実施形態では、光源として、単一のレーザ光を出射する半導体レーザ21を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数の発光点を有し、複数のレーザ光を出射する光源であってもよい。
【0078】
前記実施形態では、偏向器としてのポリゴンミラー40が6つのミラー面を有していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ミラー面は4つであってもよい。また、前記実施形態では、偏向器として、回転することでレーザ光を偏向するポリゴンミラー40を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、揺動することで光を偏向する振動ミラーなどであってもよい。
【0079】
前記実施形態では、本発明の光走査装置1をレーザプリンタなどの画像形成装置に設けた例を示したが、本発明は、これに限定されず、例えば、測定装置や検査装置などに設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 光走査装置
21A 半導体レーザ
21B 半導体レーザ
21C 半導体レーザ
30 第1シリンドリカルレンズ
40 ポリゴンミラー
73A 反射鏡
73B 反射鏡
100 ケーシング
110 支持壁
111 露光口
112 露光口
131A 反射鏡支持部
131B 反射鏡支持部
133 上端部
134 通過口
151 補強壁
153 開口
D 感光体
L1 レーザ光
L2 レーザ光
L3 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザ光を出射する第1の光源と、
第2のレーザ光を出射する第2の光源と、
前記第1の光源および前記第2の光源と対向して配置され、第1のレーザ光および第2のレーザ光を反射して主走査方向に偏向する偏向器と、
偏向された第1のレーザ光を被走査面に向けて反射する第1の反射鏡と、
偏向された第2のレーザ光を被走査面に向けて反射する第2の反射鏡と、
前記第1の光源、前記第2の光源、前記偏向器、前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡を収容するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、
前記偏向器を支持する支持壁と、
前記支持壁から延びて前記第1の反射鏡を支持する柱状の第1の反射鏡支持部と、
前記第1の光源および前記第2の光源と前記偏向器とが対向する対向方向から見て、前記偏向器を挟んで前記第1の反射鏡支持部とは反対側で前記支持壁から延び、前記第2の反射鏡を支持する柱状の第2の反射鏡支持部と、
前記第1の光源および前記第2の光源と前記偏向器との間で前記支持壁から延び、前記第1の反射鏡支持部と前記第2の反射鏡支持部とをつなぐ補強壁と、を有し、
前記補強壁は、前記第1の光源および前記第2の光源から前記偏向器に向けて出射された第1のレーザ光および第2のレーザ光を通過させる少なくとも1つの開口を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記開口は、第1のレーザ光または第2のレーザ光の幅を規定するアパーチャであることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第1の反射鏡支持部および前記第2の反射鏡支持部は、それぞれ、前記支持壁とは反対側の端部で前記第1の反射鏡または前記第2の反射鏡を支持しており、
前記補強壁は、前記支持壁から前記端部まで延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記支持壁は、前記第1の反射鏡で反射して被走査面に向かう第1のレーザ光を通過させる第1の露光口と、前記第2の反射鏡で反射して被走査面に向かう第2のレーザ光を通過させる第2の露光口とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡は、前記対向方向から見て、前記偏向器を挟んで前記支持壁とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項6】
第3のレーザ光を出射する第3の光源を備え、
前記第1の反射鏡支持部は、前記ケーシング内における第3のレーザ光の光路上において、前記第3の光源と前記偏向器との間に設けられており、前記第3のレーザ光を通過させる通過口を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
第1のレーザ光および第2のレーザ光を前記偏向器の反射面上でそれぞれ結像させる少なくとも1つの結像レンズを備え、
前記結像レンズは、前記補強壁と前記偏向器との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252126(P2012−252126A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124095(P2011−124095)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】