説明

光通信モジュールおよびその製造方法

【課題】 製造コストを低減することができる光通信モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 光素子基板2は、プリント配線板5の所要位置に光素子6が接合されたプリント回路板とされている。光素子基板2は、複数の配線端子7が設けられたベース基板3に接合されている。鏡筒4が光素子基板2に接合されている。プリント配線板5の実測寸法から算出した算出位置に光素子6を接合し、この算出位置を保持しておいて、鏡筒4を光素子基板2に接合する際に、鏡筒4の中心軸が算出位置に合致するように位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信モジュールおよびその製造方法に関し、特に、プラスチック光ファイバを使用するのに適した光通信モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信モジュールとして、発光素子(VCSEL)が組み込まれて送信を行うTOSAと、受光素子(PD)が組み込まれて受信を行うROSAとがあり、図7に示すように、光素子(発光素子または受光素子)(53)が設けられたベース台(52)と、レンズ(55)が設けられた鏡筒(54)と備えており、ベース台(52)と鏡筒(54)とが位置合わせして結合されているTO−CAN型の光通信モジュール(51)が知られている。
【0003】
このような光通信モジュール(51)では、光素子(53)とレンズ(55)との光軸合わせが重要であり、この光軸合わせは、実際に光を発光させ、光量をモニタリングしながら行い、最適な状態となった位置で、ベース台(52)と鏡筒(54)とをスポット溶接して一体化する方法が一般的である(特許文献1、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−23019号公報
【特許文献2】特開平11−287931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および特許文献2に開示されている光軸合わせでは、実際に発光させる(あるいは受光感度を測定する)ための位置合わせ治具が必要であり、また、モニタリングしながらの光軸合わせに時間がかかるため、製造コストが高く付くという問題があった。
【0006】
本発明は、製造コストを低減することができる光通信モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による光通信モジュールは、光素子が設けられた光素子基板と、レンズが設けられた鏡筒とを備えている光通信モジュールにおいて、光素子基板は、プリント配線板の所要位置に光素子が接合されたプリント回路板とされており、鏡筒が光素子基板に接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明の光通信モジュールによると、プリント配線板の実測寸法から算出した算出位置に光素子を接合し、この算出位置を保持しておいて、鏡筒を光素子基板に接合する際に、鏡筒の中心軸が算出位置に合致するように位置決め(機械的な光軸合わせ)をすることができる。これにより、光素子とレンズとの光軸合わせのために実際に発光させる作業を省略することができ、製造コストを低減することができる。
【0009】
複数の配線端子が設けられたベース基板をさらに備えており、光素子基板は、長方形状とされたプリント配線板の各長辺に沿って半円形に切断された複数のビアホールが所定間隔で設けられたものとされており、ベース基板に設けられたパッドと半円形に切断された複数のビアホールとが重ねられて、各ビアホールに塗布された導電性接合部材によって光素子基板とベース基板とが接合されていることがある。
【0010】
このようにすると、層間の電気接続用としてプリント配線板に設けられるビアホールを基板接続用として利用することにより、プリント配線板のビアホールとベース基板のパッドとの位置関係を目視することができ、光素子基板とベース基板との接合作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、光素子基板に複数の配線端子が設けられていることがある。すなわち、上記のように、ベース基板を別部品(光素子基板、ベース基板および鏡筒の3部品構成)とするのに代えて、光素子基板およびベース基板を合わせた機能(光素子、ドライバIC、配線端子など)が1枚のプリント回路基板に実装されることにより、光通信モジュールを1枚の基板と鏡筒との2部品構成とすることもできる。
【0012】
このようにすると、部品数を減らすことができ、製造コストのさらなる低減が可能となる。
【0013】
この発明による光通信モジュールの製造方法は、プリント配線板の所要位置に光素子が接合されることで形成された光素子基板と、レンズが設けられた鏡筒とを備えている光通信モジュールの製造方法であって、プリント配線板の寸法を実測する工程と、実測値に基づいて、プリント配線板における光素子配置位置を算出する工程と、光素子配置の算出位置に光素子を接合して光素子基板を製作する工程と、光素子配置の算出位置に合わせて鏡筒を光素子基板に接合する工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明の光通信モジュールの製造方法によると、プリント配線板の実測寸法から算出した算出位置に光素子を接合し、この算出位置を保持しておいて、鏡筒を光素子基板に接合する際に、鏡筒の中心軸が算出位置に合致するように位置決め(機械的な光軸合わせ)をすることができる。これにより、光素子とレンズとの光軸合わせのために実際に発光させる作業を省略することができ、製造コストを低減することができる。
【0015】
光通信モジュールは、光素子基板とは別にベース基板を備えていることがあり、この場合には、光素子配置の算出位置に合わせて鏡筒を光素子基板に接合する工程の後に、光素子基板をベース基板に接合する工程が追加される。
【0016】
プリント配線板を切断する工程として、従来の切断工程に追加して、プリント配線板を精度よく切断するための切断工程を設けてもよい。プリント配線板は、通常、方形とされるが、これに限定されるものではない。また、光素子配置の算出位置は、例えば、縦を1:a(例えばa=2)に、横を1:b(例えばb=1)に分割する位置とされる。
【0017】
プリント配線板の実際の寸法は、切断による誤差が大きい(±30μm程度)ため、これを実測することなく、予め設定された位置に光素子を設置した場合、この後に接合される鏡筒の中心軸と光素子とのずれが大きくなるという問題がある。これに対し、プリント配線板の寸法を実測して、プリント配線板における光素子配置位置を算出し、光素子の接合および鏡筒の接合の両工程において、この算出位置を位置決めの基準値として使用することにより、鏡筒の中心軸と光素子とのずれを小さくすることができる。こうして得られる鏡筒の中心軸と光素子とのずれは、実際に発光させて光素子とレンズとを光軸合わせした場合に比べると大きいもの(±10μm程度)となるが、実用上は問題にならない大きさに抑えることができる。特に、光ファイバがプラスチック光ファイバの場合、大口径化が可能であるので、上記のずれの影響をなくすことができ、プラスチック光ファイバと組み合わせることで極めて実用性に優れた光通信手段が得られる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の光通信モジュールによると、光素子基板は、プリント配線板の所要位置に光素子が接合されたプリント回路板とされており、鏡筒が光素子基板に接合されているので、プリント配線板の実測寸法から算出した算出位置に光素子を接合し、この算出位置を保持しておいて、鏡筒を光素子基板に接合する際に、鏡筒の中心軸が算出位置に合致するように位置決めすることで、光軸合わせを機械的な位置合わせで行うことができる。したがって、高価な測定や位置合わせ治具が不要となり、コストを低減することができる。
【0019】
この発明の光通信モジュールの製造方法によると、プリント配線板の寸法を実測する工程と、実測値に基づいて、プリント配線板における光素子配置位置を算出する工程と、光素子配置の算出位置に光素子を接合して光素子基板を製作する工程と、光素子配置の算出位置に合わせて鏡筒を光素子基板に接合する工程とを備えているので、光軸合わせを機械的な位置合わせで行うことができる。したがって、高価な測定や位置合わせ治具が不要となり、光通信モジュールのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明による光通信モジュールの1実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は、同側面図である。
【図3】図3は、光素子基板を構成するプリント配線板の切断前の形状を示す正面図である。
【図4】図4は、光素子基板を構成するプリント配線板の切断後の形状を示す正面図である。
【図5】図5は、ベース基板の形状を示す正面図である。
【図6】図6は、光素子基板とベース基板とを接合した状態を示す正面図である。
【図7】図7は、従来の光通信モジュールの1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、この発明による光通信モジュール(1)は、光素子(6)が設けられた光素子基板(2)と、複数の配線端子(7)が設けられたベース基板(3)と、レンズ(8)が設けられた鏡筒(4)とを備えている。
【0023】
光通信モジュール(1)は、光素子(6)をVCSELとすることで、TOSA(送信モジュール)として使用され、光素子(6)をPDとするとともに、配線端子(7)の配置の順番を変えることで、ROSA(受信モジュール)として使用される。
【0024】
光素子基板(2)は、図4に示すように、プリント配線板(5)の所要位置に光素子(6)が接合されたプリント回路板とされている。光素子基板(2)には、上記光素子(6)とこれを駆動するためのドライバとが設けられている。プリント配線板(5)には、光素子(6)などを接合するためのパッド(10)と、電気的接続のために使用される複数のビアホール(11)とが設けられている。ビアホール(11)は、一定幅のランドと、プリント配線板(5)の表裏を電気的につなぐスルーホールとを有している。光素子(6)は、250μm程度の大きさで、光素子(6)を接合するためのパッド(10)の大きさは、その2〜4倍の大きさとされており、プリント配線板(5)における光素子(6)の配置位置が多少ずれても、影響がないようになされている。
【0025】
光素子基板(2)を形成しているプリント配線板(5)の大きさは、通常の工程で得られる図3に示す長方形状のプリント配線板(20)をさらに一点鎖線で示す位置においてダイサーで切断して、その幅を狭くしたものとされている。この切断により側面となる位置には、両側面ともに、3つのビアホール(12)が並んで配置されており、切断によって、半円形とされている。この結果、光素子基板(2)を形成しているプリント回路板では、図4に示すように、各長辺に沿って半円形に切断された複数のビアホール(12)が所定間隔で設けられている。
【0026】
図5に示すように、ベース基板(3)の表面(光素子基板(2)に重ね合わされる面)には、複数箇所にパッド(14)が設けられている。ベース基板(3)の裏面には、図示省略するが、アンプやICなどの回路が設けられている。そして、図6に示すように、ベース基板(3)に設けられたパッド(14)と半円形に切断された複数のビアホール(12)とが重ねられて、各ビアホール(12)に塗布されたAgペースト(導電性接合部材)(15)によって光素子基板(2)とベース基板(3)とが接合されている。
【0027】
光素子基板(2)とベース基板(3)との接合に際し、例えば両基板(2)(3)にそれぞれ設けられたパッド同士を重ね合わせて接合することも可能であるが、この場合には、接合時にパッド位置が見えないという問題がある。そこで、層間の電気接続用としてプリント配線板に設けられるビアホール(12)をハーフカットして基板接続用として利用することにより、プリント配線板(5)のビアホール(12)とベース基板(3)のパッド(14)との位置関係を目視することができ、光素子基板(2)とベース基板(3)との接合作業を容易に行うことができる。
【0028】
この発明による光通信モジュールの製造方法は、光素子基板(2)、ベース基板(3)および鏡筒(4)を備えている上記の光通信モジュール(1)を製造する方法であって、(a)プリント配線板(5)を製作する工程と、b)プリント配線板(5)の寸法を実測する工程と、(c)実測値に基づいてプリント配線板(5)における光素子配置位置を算出する工程と、(d)光素子配置の算出位置に光素子(6)を位置合わせして接合する工程と、(e)光素子配置の算出位置に位置合わせして鏡筒(4)を光素子基板(2)に接合する工程と、(f)鏡筒(4)が接合された光素子基板(2)をベース基板(3)に接合する工程とを備えている。
【0029】
各工程は、自動で実施され、位置合わせは、公知の画像処理による位置合わせとされる。
【0030】
(a)のプリント配線板(5)を製作する工程は、(a1)1枚分のプリント配線板(20)が縦・横に複数枚一連で形成された基板シートを製作する工程と、(a2)1枚分のプリント配線板(20)を所定の大きさに切断する工程とからなる。(a2)の切断工程では、基板シートから1枚分のプリント配線板(20)を1枚ずつ切り離した後、さらに、プリント配線板(20)の幅を狭くして図4に示す光素子基板(2)用のプリント配線板(5)とする切断工程が設けられている。
【0031】
上記(a2)の切断工程には、切断による誤差(±30μm程度)があるので、プリント配線板(5)は、1枚ごとに寸法が異なっている。そこで、(b)のプリント配線板(5)の寸法を実測する工程において、各プリント配線板(5)ごとに実測して、実際の寸法を取得する。
【0032】
(c)実測値に基づいてプリント配線板(5)における光素子配置位置を算出する工程では、実測の横寸法および縦寸法に基づき、光素子(6)の配置位置を算出する。配置位置については、横方向は、例えば1:1の位置、縦方向は、例えば1:2とされる。
【0033】
(d)光素子(6)を接合する工程では、各プリント配線板(5)ごとに、上記の算出位置に基づいて、光素子(6)が接合される。
【0034】
(e)鏡筒(4)を光素子基板(2)に接合する工程においては、予め設定された基準位置に鏡筒(4)を配置するのではなく、実測値に基づいて算出した光素子配置位置に鏡筒(4)の中心軸が合致するように鏡筒(4)が位置決めされる。
【0035】
(f)光素子基板(2)をベース基板(3)に接合する工程では、半円形のビアホール(12)とパッド(14)とが合わされて、各ビアホール(12)にAgペースト(15)が塗布されて、光素子基板(2)とベース基板(3)とが接合される。
【0036】
上記の製造方法においては、プリント配線板(5)の設計寸法とプリント配線板(5)の実際寸法とが相違している場合、プリント配線板(5)の設計寸法の場合に得られる配置位置と実際寸法に基づいて算出した配置位置とにずれが生じることになる。この場合、(d)光素子(6)を接合する工程においては、光素子(6)は、設計寸法の場合に得られる位置ではなく、実際寸法に基づいて算出した位置に配置される。そして、(e)鏡筒(4)を光素子基板(2)に接合する工程においても、鏡筒(4)は、その中心軸が上記の実際寸法に基づいて算出した位置となるように配置される。これにより、鏡筒(4)の中心軸と光素子(6)とのずれを小さくすることができる。こうして得られる鏡筒(4)の中心軸と光素子(6)とのずれは、実際に発光させて光素子とレンズとを光軸合わせした場合に比べると大きいもの(±10μm程度)となるが、実用上は問題にならない大きさに抑えることができる。特に、光ファイバがプラスチック光ファイバの場合、大口径化が可能であるので、上記のずれの影響をなくすことができ、プラスチック光ファイバと組み合わせることで極めて実用性に優れた光通信手段が得られる。
【0037】
上記光通信モジュール(1)において、光素子基板(2)とベース基板(3)とは、別部品とされているが、複数の配線端子(7)およびベース基板(3)の裏面に設けられている実装部品を光素子基板(2)に設けることにより、1枚のプリント回路基板すなわち光素子基板(2)と鏡筒(4)との2部品構成としてもよい。この場合、上記(f)の光素子基板(2)をベース基板(3)に接合する工程が不要となることで、製造工程が簡素化され、製造コストをさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
(1) 光通信モジュール
(2) 光素子基板
(3) ベース基板
(4) 鏡筒
(5) プリント配線板
(6) 光素子
(7) 配線端子
(8) レンズ
(12) 半円形ビアホール
(14) パッド
(15) Agペースト(導電性接合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子が設けられた光素子基板と、レンズが設けられた鏡筒とを備えている光通信モジュールにおいて、光素子基板は、プリント配線板の所要位置に光素子が接合されたプリント回路板とされており、鏡筒が光素子基板に接合されていることを特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
複数の配線端子が設けられたベース基板をさらに備えており、光素子基板は、長方形状とされたプリント配線板の各長辺に沿って半円形に切断された複数のビアホールが所定間隔で設けられたものとされており、ベース基板に設けられたパッドと半円形に切断された複数のビアホールとが重ねられて、各ビアホールに塗布された導電性接合部材によって光素子基板とベース基板とが接合されていることを特徴とする請求項1の光通信モジュール。
【請求項3】
光素子基板に複数の配線端子が設けられていることを特徴とする請求項1の光通信モジュール。
【請求項4】
プリント配線板の所要位置に光素子が接合されることで形成された光素子基板と、レンズが設けられた鏡筒とを備えている光通信モジュールの製造方法であって、プリント配線板の寸法を実測する工程と、実測値に基づいて、プリント配線板における光素子配置位置を算出する工程と、光素子配置の算出位置に光素子を接合して光素子基板を製作する工程と、光素子配置の算出位置に合わせて鏡筒を光素子基板に接合する工程とを備えていることを特徴とする光通信モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項4の光通信モジュールの製造方法で製造される光通信モジュールあって、光通信を行う光ファイバがプラスチック光ファイバとされていることを特徴とする光通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104883(P2013−104883A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246305(P2011−246305)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】