光量調節装置および撮像装置
【課題】特別な部材を追加することなしに遮光羽根を高速駆動しても、羽根同士の衝突や引っかかりが無い、スムーズな駆動が可能な光量調節装置や、このような光量調節装置を搭載した撮像装置を提供する。
【解決手段】光を通過する開口部を有する地板と、地板に回動自在に支持されて、開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、それぞれの遮光羽根は、駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、開口部の面積を減少させる方向に回動し、遮光羽根同士が交差する端部には、面取りおよびR付けの少なくとも一方が設けられている。
【解決手段】光を通過する開口部を有する地板と、地板に回動自在に支持されて、開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、それぞれの遮光羽根は、駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、開口部の面積を減少させる方向に回動し、遮光羽根同士が交差する端部には、面取りおよびR付けの少なくとも一方が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルカメラ等の光学機器に用いられる光量調節装置、及びそれを搭載した撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光量調節装置を備えたスチルカメラ、ビデオカメラなどの光学機器では、高性能化と小型化が進み、そこで使用される光量調整装置においても高性能化および小型化の要求が強く求められるようになった。その結果、例えば特許文献1のような光量調節装置では、小型化のために従来のシャッタのような遮光羽根の先端部同士のオーバーラップをやめて、2枚の遮光羽根の互いの開口形成縁部が、回転中心側から羽根先端側に向けて一箇所だけで順次交差するようにしている。
【0003】
また例えば特許文献2のような複数の遮光羽根が開閉揺動して開口領域の面積を制御し、光量を調節する虹彩型光量調節装置においても、羽根の重なり方を工夫して絞りの高速駆動に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−272711
【特許文献2】特開2003−005248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1のような構成の場合、通常では各シャッタ羽根の開口形成縁部は、閉じるときにお互いが衝突しないように、回転中心に近い位置から順次重なるように工夫されている。しかし図12,図13に示すように、遮光羽根は通常シート状のロール材から打ち抜き加工によって製作されるため湾曲しており、高速で駆動すると衝突して遮光羽根が損傷し、動作が不安定になったり、破損に至る可能性があった。これを防止するために、図14のようにそれぞれの遮光羽根の間に仕切り20を入れる構成もあるが、この場合は光量調節装置として光軸方向に厚くなり、装置の小型化に支障をきたす。
【0006】
また、特許文献2のような構成の場合も、複数の遮光羽根が相互に重なり揺動する際に、羽根同士が重なり合う面が引っかかりを生じ、切りムラやヒステリシスを生じる可能性があった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためのものであり、その目的は特別な部材を追加することなしに高速駆動しても、絞り羽根同士の衝突や引っかかりが無い、スムーズな駆動が可能な光量調節装置や、このような光量調節装置を搭載した撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光量調節装置は、光を通過する開口部を有する地板と、地板に回動自在に支持されて、開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、それぞれの遮光羽根は、駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、少なくとも開口部の面積を減少させるように回動し、遮光羽根同士が交差する端部には、面取り及びR付けの少なくとも一方が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のような構成とすることにより、部材を追加する特別なスペースを必要とせず、シャッタ羽根や絞り羽根を高速駆動しても、羽根同士の衝突や引っかかりが無い、スムーズな駆動が可能な光量調節装置や、このような光量調節装置を搭載した撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施例のシャッタの平面図。
【図2】図1のシャッタ羽根2の平面図及び断面図。
【図3】図1のシャッタ羽根3の平面図及び断面図。
【図4】図1のシャッタ羽根の重なりが逆となったものの平面図。
【図5】図4のシャッタ羽根5の平面図及び断面図。
【図6】図4のシャッタ羽根6の平面図及び断面図。
【図7】図1のシャッタ羽根の干渉の様子。
【図8】第2の実施例の虹彩絞りであり、羽根の重なりをエンドレスにしたタイプの平面図。
【図9】図8の絞り羽根の平面図及び断面図。
【図10】第2の実施例の虹彩絞りであり、羽根の重なりがエンドレスでないタイプの平面図。
【図11】各実施例の光量調節装置を使用した撮像装置の内部構造を模式的に表す断面図。
【図12】シャッタ羽根2の打ち抜きによる湾曲状態の平面図及び側面図。
【図13】シャッタ羽根3の打ち抜きによる湾曲状態の平面図及び側面図。
【図14】間に仕切りを入れたシャッタ羽根の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施形態として、以下にシャッタにおける本発明による実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本実施のシャッタの平面図であり、図2、図3はそれぞれ図1に示すシャッタ羽根2、3の平面図と面取り方向を示した断面図である。なお、本実施形態のシャッタ装置は、カメラ本体に着脱可能なレンズ装置(光学機器)やカメラが内蔵された携帯電子機器(携帯電話、電子機器)等にも搭載することができる。
【0013】
図1は本実施例のシャッタを示しており、地板4の略中央部に設けられた、撮像光学系を通過して撮像素子に結像する光を通過させる開口部であるアパーチャ1は、遮光羽根であるシャッタ羽根2、3によって開閉される。シャッタ羽根の駆動は、図1においてシャッタ羽根2,3の地板4を挟んで反対側の面に配置された、ムービングマグネット式アクチュエータと称される、例えば特開2006−011293に公知のアクチュエータで駆動される。このアクチュエータは、2極(N極とS極)に着磁されたロータマグネットと、このロータマグネットの外周に配置されたステータヨークとを有し、電磁コイルへの通電によりロータマグネットを所定の範囲で往復回転運動させる。駆動部はこのような構成に限定されるわけではなく、同様の往復運動が可能なものであれば同様に採用することができる。
【0014】
ロータマグネットは、シャッタ羽根2,3が配置された側に地板4を貫通して延伸した駆動ピンを有し、この駆動ピンがシャッタ羽根2,3に設けられた長孔であるレバー穴2b,3bと嵌合する。シャッタ羽根2,3は、一端に設けられた丸穴である回転軸穴2a,3aが、地板4に設けられたそれぞれの回転軸に回動自在に支持されている。そしてシャッタ羽根2,3は前述のレバー穴2b,3bがロータマグネットにより往復駆動されることにより、回転軸穴2a,3aを中心に往復回転運動をする。回転軸穴2a,3aが支持される回転中心軸はアパーチャ1に関して同じ側に位置しており、シャッタ羽根2,3は、図2,図3に示すような形状をしているので、図1に示すように、お互いが一点で交差しながらアパーチャ1の面積を変化させるように開閉する。
【0015】
本実施例においては、シャッタ羽根2、3がアパーチャ1を閉じるあるいは面積を減少させる際に相互が重なる端部2c,3cには、図2、図3に示す面取りが施されている。この面取りは、端部2c,3c以外の端部に加工上形成されるダレなどによる面取り形状より大きい形状とする。
そのため、図12、図13のようにシャッタ羽根が製造時に湾曲したり、高速動作によって変形しながら回動して、遮光羽根同士が衝突しそうになっても、図7のように面取り部同士がスライダーの役割を果たし、それぞれの羽根はスムーズに所定の方向に移動して行く。これにより面取りが無い場合に比べ羽根の損傷を低減することができ、シャッタスピードのばらつきやシャッタ精度の低下を防ぐことができる。
【0016】
また、図2,図3に示す直線的な面取りの変わりに、R付けされた形状であっても同様の効果をもたらす。R付けされた形状とは、前記図2,図3のシャッタ羽根の端部2c,3cの斜面が連続した曲線で構成されたような形状を言い、この曲線の途中に直線部が含まれても実質的には同様の効果がもたらされるので、この形状の範囲に含まれる。この場合のRの半径は、最小でも遮光羽根の厚み以上であることが望ましい。
【0017】
図1に示すようにシャッタ羽根が重なって配置されている場合はそれぞれの羽根に施す面取りは図2、3に示すものとなる。また、図4に示すようにシャッタ羽根の重なりが図1の逆となっている場合、それぞれの羽根に施す面取りは図2,3に示す方向とは逆となり、図5,6に示すものとなる。
【0018】
なお、図1、図4のいずれの場合においても面取りを施すシャッタ羽根はどちらか一方とすることが可能である。例えば、シャッタ羽根の重なりが図1の場合において、シャッタ羽根2の端部2c面に図2に示す面取りを施す場合には、シャッタ羽根3の端部3c面に図3に示す面取りを施すことが望ましくはあるが、シャッタ羽根3の3c面に面取りを施さないことも可能である。それらの場合でも本発明におけるシャッタ羽根同士の衝突防止という目的は達成することができる。
同様に、シャッタ羽根の重なりが図4の場合においては、逆の関係となることにより同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0019】
また、面取りの形状は、本実施例においては遮光羽根の厚み方向の全域において、遮光羽根の一方の平面の稜線から他方の平面の稜線に向けて、連続的に傾斜するように構成した。すなわち、互いの羽根の端面同士が衝突したとき、図7に示すように面取り部同士がスライダーの役割を果たすような関係となるような面取りとする。
【0020】
本実施例においては、面取りは遮光羽根の厚み方向の全域に渡って設けたが、全域でなくとも互いの羽根が対向する面側の稜線を含む、遮光羽根の厚みの半分以上に渡る範囲に面取りがあれば、ほぼ同様の効果が期待できる。また面取りは完全な面取り形状でなくとも、例えば稜線部などがRとなっていても同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0021】
以下に本発明の他の実施形態として、虹彩絞りにおける本発明の実施例を示す。図8は本実施の虹彩絞りの平面図であり、図9は図8に示す絞り羽根7〜12の平面図および断面図である。略中央部に開口部であるアパーチャを持つ地板及び駆動部は実施例1と同様なので省略している。図8の絞り羽根7〜12は、不図示の駆動部材からの駆動力を伝達する不図示の伝達部材と係合する伝達部材軸孔7a〜12aを有する。また、同じく不図示の地板に設けられた軸部材と一端が回動自在に係合して、地板に対して相対的な変位を行う為の絞り羽根回転軸孔7b〜12bを有する。そして伝達部材を介して伝達される駆動部材の移動を受けて、絞り羽根7〜12が地板の軸部材を軸として変位し、絞り羽根により形成される開口領域の面積を変化させる。
【0022】
絞り羽根はプラスチックフィルムを芯材として、炭素繊維強化プラスチック等で補強した樹脂シート材の打ち抜きや、樹脂の金型成形により作られている。駆動部としては、一般にステッピングモータが用いられる。
【0023】
絞り羽根7〜12は、それぞれの絞り羽根の両側において他の羽根と重なり合い、その端面の両方の稜線部には図9に示すように面取りが施されている。本実施例における面取りは、絞り羽根の縁部13に、より具体的には縁部13の、絞り羽根の両端面側および絞り羽根の駆動方向について両方向側に施されている。また、この面取りは、縁部13以外、すなわち羽根回転軸孔7b〜12bや伝達部材軸孔7a〜12aを形成する縁の部分に加工上形成されるダレなどによる面取り形状より大きい形状とする。
これによってそれぞれの絞り羽根が重なり合うとき、面取り部同士がスライダーの役割を果たす。これにより、絞り羽根が軸部材を軸として変位し、開口領域の面積を制御する際に羽根同士の引っかかりを防ぐことができ、良好な絞り切りムラおよびヒステリシス特性を得ることが可能となる。
【0024】
図9のように本実施例では、13aと13c側、13bと13d側のように、面取りを羽根同士が重なり合う面両方に施してあるが、これを片面のみの面取りとしてもよく、面取りを施さない場合より良い絞り特性を得ることができる。また、面取りを、13c,13dのように、各絞り羽根の両方またはいずれか一方の端面側に設けた場合、さらに画質劣化の原因となる羽根端面での反射が低減されフレアーなどに効果がある。
【0025】
図8の虹彩絞りはエンドレスと称される、すべての羽根が同じ重なり方をしたものであるが、図10に示すエンドレスでないタイプの虹彩絞りにおいても本発明は有効である。尚、図10において各部分の説明は図8と同様なので省略する。
【実施例3】
【0026】
以下に、本発明の他の実施形態として、本発明による光量調節装置を備えた本発明による撮像装置の実施形態について説明する。図11は、実施例1または実施例2のシャッタ羽根または絞り羽根を使用した光量調節装置を搭載した撮像装置である。被写体の映像は撮像光学系21を通り、シャッタ装置または絞り装置23により通過光量を制御されて撮像素子22上に結像する。
【0027】
撮像装置は、撮像素子22を使用して画像を電子的に記録できるものなので、記録を消去すれば何度でも取り直しが可能となる。そのため光量調節装置の繰り返し耐久回数は以前の銀塩フィルムを使用するカメラに比較して飛躍的に増加している。また、撮像素子の高感度化により、シャッタ速度の高速化の要求も高い。そのためこれらの光量調節装置に使用されているシャッタ羽根もしくは絞り羽根は、繰り返し動作回数や、駆動速度の高速化が求められる。そこで本実施例のように、光量調節装置23に実施例1または実施例2のシャッタ羽根もしくは絞り羽根を使用することにより、この要求に答えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 アパーチャ
2、3、5、6 シャッタ羽根
4 地板
7、8、9、10、11、12 絞り羽根
14、15、16、17、18、19 絞り羽根
20 仕切り
21 撮像光学系
22 撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルカメラ等の光学機器に用いられる光量調節装置、及びそれを搭載した撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光量調節装置を備えたスチルカメラ、ビデオカメラなどの光学機器では、高性能化と小型化が進み、そこで使用される光量調整装置においても高性能化および小型化の要求が強く求められるようになった。その結果、例えば特許文献1のような光量調節装置では、小型化のために従来のシャッタのような遮光羽根の先端部同士のオーバーラップをやめて、2枚の遮光羽根の互いの開口形成縁部が、回転中心側から羽根先端側に向けて一箇所だけで順次交差するようにしている。
【0003】
また例えば特許文献2のような複数の遮光羽根が開閉揺動して開口領域の面積を制御し、光量を調節する虹彩型光量調節装置においても、羽根の重なり方を工夫して絞りの高速駆動に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−272711
【特許文献2】特開2003−005248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1のような構成の場合、通常では各シャッタ羽根の開口形成縁部は、閉じるときにお互いが衝突しないように、回転中心に近い位置から順次重なるように工夫されている。しかし図12,図13に示すように、遮光羽根は通常シート状のロール材から打ち抜き加工によって製作されるため湾曲しており、高速で駆動すると衝突して遮光羽根が損傷し、動作が不安定になったり、破損に至る可能性があった。これを防止するために、図14のようにそれぞれの遮光羽根の間に仕切り20を入れる構成もあるが、この場合は光量調節装置として光軸方向に厚くなり、装置の小型化に支障をきたす。
【0006】
また、特許文献2のような構成の場合も、複数の遮光羽根が相互に重なり揺動する際に、羽根同士が重なり合う面が引っかかりを生じ、切りムラやヒステリシスを生じる可能性があった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためのものであり、その目的は特別な部材を追加することなしに高速駆動しても、絞り羽根同士の衝突や引っかかりが無い、スムーズな駆動が可能な光量調節装置や、このような光量調節装置を搭載した撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光量調節装置は、光を通過する開口部を有する地板と、地板に回動自在に支持されて、開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、それぞれの遮光羽根は、駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、少なくとも開口部の面積を減少させるように回動し、遮光羽根同士が交差する端部には、面取り及びR付けの少なくとも一方が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のような構成とすることにより、部材を追加する特別なスペースを必要とせず、シャッタ羽根や絞り羽根を高速駆動しても、羽根同士の衝突や引っかかりが無い、スムーズな駆動が可能な光量調節装置や、このような光量調節装置を搭載した撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施例のシャッタの平面図。
【図2】図1のシャッタ羽根2の平面図及び断面図。
【図3】図1のシャッタ羽根3の平面図及び断面図。
【図4】図1のシャッタ羽根の重なりが逆となったものの平面図。
【図5】図4のシャッタ羽根5の平面図及び断面図。
【図6】図4のシャッタ羽根6の平面図及び断面図。
【図7】図1のシャッタ羽根の干渉の様子。
【図8】第2の実施例の虹彩絞りであり、羽根の重なりをエンドレスにしたタイプの平面図。
【図9】図8の絞り羽根の平面図及び断面図。
【図10】第2の実施例の虹彩絞りであり、羽根の重なりがエンドレスでないタイプの平面図。
【図11】各実施例の光量調節装置を使用した撮像装置の内部構造を模式的に表す断面図。
【図12】シャッタ羽根2の打ち抜きによる湾曲状態の平面図及び側面図。
【図13】シャッタ羽根3の打ち抜きによる湾曲状態の平面図及び側面図。
【図14】間に仕切りを入れたシャッタ羽根の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施形態として、以下にシャッタにおける本発明による実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本実施のシャッタの平面図であり、図2、図3はそれぞれ図1に示すシャッタ羽根2、3の平面図と面取り方向を示した断面図である。なお、本実施形態のシャッタ装置は、カメラ本体に着脱可能なレンズ装置(光学機器)やカメラが内蔵された携帯電子機器(携帯電話、電子機器)等にも搭載することができる。
【0013】
図1は本実施例のシャッタを示しており、地板4の略中央部に設けられた、撮像光学系を通過して撮像素子に結像する光を通過させる開口部であるアパーチャ1は、遮光羽根であるシャッタ羽根2、3によって開閉される。シャッタ羽根の駆動は、図1においてシャッタ羽根2,3の地板4を挟んで反対側の面に配置された、ムービングマグネット式アクチュエータと称される、例えば特開2006−011293に公知のアクチュエータで駆動される。このアクチュエータは、2極(N極とS極)に着磁されたロータマグネットと、このロータマグネットの外周に配置されたステータヨークとを有し、電磁コイルへの通電によりロータマグネットを所定の範囲で往復回転運動させる。駆動部はこのような構成に限定されるわけではなく、同様の往復運動が可能なものであれば同様に採用することができる。
【0014】
ロータマグネットは、シャッタ羽根2,3が配置された側に地板4を貫通して延伸した駆動ピンを有し、この駆動ピンがシャッタ羽根2,3に設けられた長孔であるレバー穴2b,3bと嵌合する。シャッタ羽根2,3は、一端に設けられた丸穴である回転軸穴2a,3aが、地板4に設けられたそれぞれの回転軸に回動自在に支持されている。そしてシャッタ羽根2,3は前述のレバー穴2b,3bがロータマグネットにより往復駆動されることにより、回転軸穴2a,3aを中心に往復回転運動をする。回転軸穴2a,3aが支持される回転中心軸はアパーチャ1に関して同じ側に位置しており、シャッタ羽根2,3は、図2,図3に示すような形状をしているので、図1に示すように、お互いが一点で交差しながらアパーチャ1の面積を変化させるように開閉する。
【0015】
本実施例においては、シャッタ羽根2、3がアパーチャ1を閉じるあるいは面積を減少させる際に相互が重なる端部2c,3cには、図2、図3に示す面取りが施されている。この面取りは、端部2c,3c以外の端部に加工上形成されるダレなどによる面取り形状より大きい形状とする。
そのため、図12、図13のようにシャッタ羽根が製造時に湾曲したり、高速動作によって変形しながら回動して、遮光羽根同士が衝突しそうになっても、図7のように面取り部同士がスライダーの役割を果たし、それぞれの羽根はスムーズに所定の方向に移動して行く。これにより面取りが無い場合に比べ羽根の損傷を低減することができ、シャッタスピードのばらつきやシャッタ精度の低下を防ぐことができる。
【0016】
また、図2,図3に示す直線的な面取りの変わりに、R付けされた形状であっても同様の効果をもたらす。R付けされた形状とは、前記図2,図3のシャッタ羽根の端部2c,3cの斜面が連続した曲線で構成されたような形状を言い、この曲線の途中に直線部が含まれても実質的には同様の効果がもたらされるので、この形状の範囲に含まれる。この場合のRの半径は、最小でも遮光羽根の厚み以上であることが望ましい。
【0017】
図1に示すようにシャッタ羽根が重なって配置されている場合はそれぞれの羽根に施す面取りは図2、3に示すものとなる。また、図4に示すようにシャッタ羽根の重なりが図1の逆となっている場合、それぞれの羽根に施す面取りは図2,3に示す方向とは逆となり、図5,6に示すものとなる。
【0018】
なお、図1、図4のいずれの場合においても面取りを施すシャッタ羽根はどちらか一方とすることが可能である。例えば、シャッタ羽根の重なりが図1の場合において、シャッタ羽根2の端部2c面に図2に示す面取りを施す場合には、シャッタ羽根3の端部3c面に図3に示す面取りを施すことが望ましくはあるが、シャッタ羽根3の3c面に面取りを施さないことも可能である。それらの場合でも本発明におけるシャッタ羽根同士の衝突防止という目的は達成することができる。
同様に、シャッタ羽根の重なりが図4の場合においては、逆の関係となることにより同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0019】
また、面取りの形状は、本実施例においては遮光羽根の厚み方向の全域において、遮光羽根の一方の平面の稜線から他方の平面の稜線に向けて、連続的に傾斜するように構成した。すなわち、互いの羽根の端面同士が衝突したとき、図7に示すように面取り部同士がスライダーの役割を果たすような関係となるような面取りとする。
【0020】
本実施例においては、面取りは遮光羽根の厚み方向の全域に渡って設けたが、全域でなくとも互いの羽根が対向する面側の稜線を含む、遮光羽根の厚みの半分以上に渡る範囲に面取りがあれば、ほぼ同様の効果が期待できる。また面取りは完全な面取り形状でなくとも、例えば稜線部などがRとなっていても同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0021】
以下に本発明の他の実施形態として、虹彩絞りにおける本発明の実施例を示す。図8は本実施の虹彩絞りの平面図であり、図9は図8に示す絞り羽根7〜12の平面図および断面図である。略中央部に開口部であるアパーチャを持つ地板及び駆動部は実施例1と同様なので省略している。図8の絞り羽根7〜12は、不図示の駆動部材からの駆動力を伝達する不図示の伝達部材と係合する伝達部材軸孔7a〜12aを有する。また、同じく不図示の地板に設けられた軸部材と一端が回動自在に係合して、地板に対して相対的な変位を行う為の絞り羽根回転軸孔7b〜12bを有する。そして伝達部材を介して伝達される駆動部材の移動を受けて、絞り羽根7〜12が地板の軸部材を軸として変位し、絞り羽根により形成される開口領域の面積を変化させる。
【0022】
絞り羽根はプラスチックフィルムを芯材として、炭素繊維強化プラスチック等で補強した樹脂シート材の打ち抜きや、樹脂の金型成形により作られている。駆動部としては、一般にステッピングモータが用いられる。
【0023】
絞り羽根7〜12は、それぞれの絞り羽根の両側において他の羽根と重なり合い、その端面の両方の稜線部には図9に示すように面取りが施されている。本実施例における面取りは、絞り羽根の縁部13に、より具体的には縁部13の、絞り羽根の両端面側および絞り羽根の駆動方向について両方向側に施されている。また、この面取りは、縁部13以外、すなわち羽根回転軸孔7b〜12bや伝達部材軸孔7a〜12aを形成する縁の部分に加工上形成されるダレなどによる面取り形状より大きい形状とする。
これによってそれぞれの絞り羽根が重なり合うとき、面取り部同士がスライダーの役割を果たす。これにより、絞り羽根が軸部材を軸として変位し、開口領域の面積を制御する際に羽根同士の引っかかりを防ぐことができ、良好な絞り切りムラおよびヒステリシス特性を得ることが可能となる。
【0024】
図9のように本実施例では、13aと13c側、13bと13d側のように、面取りを羽根同士が重なり合う面両方に施してあるが、これを片面のみの面取りとしてもよく、面取りを施さない場合より良い絞り特性を得ることができる。また、面取りを、13c,13dのように、各絞り羽根の両方またはいずれか一方の端面側に設けた場合、さらに画質劣化の原因となる羽根端面での反射が低減されフレアーなどに効果がある。
【0025】
図8の虹彩絞りはエンドレスと称される、すべての羽根が同じ重なり方をしたものであるが、図10に示すエンドレスでないタイプの虹彩絞りにおいても本発明は有効である。尚、図10において各部分の説明は図8と同様なので省略する。
【実施例3】
【0026】
以下に、本発明の他の実施形態として、本発明による光量調節装置を備えた本発明による撮像装置の実施形態について説明する。図11は、実施例1または実施例2のシャッタ羽根または絞り羽根を使用した光量調節装置を搭載した撮像装置である。被写体の映像は撮像光学系21を通り、シャッタ装置または絞り装置23により通過光量を制御されて撮像素子22上に結像する。
【0027】
撮像装置は、撮像素子22を使用して画像を電子的に記録できるものなので、記録を消去すれば何度でも取り直しが可能となる。そのため光量調節装置の繰り返し耐久回数は以前の銀塩フィルムを使用するカメラに比較して飛躍的に増加している。また、撮像素子の高感度化により、シャッタ速度の高速化の要求も高い。そのためこれらの光量調節装置に使用されているシャッタ羽根もしくは絞り羽根は、繰り返し動作回数や、駆動速度の高速化が求められる。そこで本実施例のように、光量調節装置23に実施例1または実施例2のシャッタ羽根もしくは絞り羽根を使用することにより、この要求に答えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 アパーチャ
2、3、5、6 シャッタ羽根
4 地板
7、8、9、10、11、12 絞り羽根
14、15、16、17、18、19 絞り羽根
20 仕切り
21 撮像光学系
22 撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通過する開口部を有する地板と、前記地板に回動自在に支持されて、前記開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、前記遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、前記それぞれの遮光羽根は、前記駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、少なくとも前記開口部の面積を減少させるように回動し、前記遮光羽根同士が交差する端部には、面取り及びR付けの少なくとも一方が設けられていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の他の端部の面取り及びR付けの少なくとも一方より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の両方の端部の稜線部に設けられていることを特徴する、請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の交差する端部の厚み方向の全域において連続して設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光量調節装置を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
光を通過する開口部を有する地板と、前記地板に回動自在に支持されて、前記開口部の面積を変化させる複数の遮光羽根と、前記遮光羽根を駆動する駆動手段とを有し、前記それぞれの遮光羽根は、前記駆動手段により他の遮光羽根と端部が交差するように重なり合いながら、少なくとも前記開口部の面積を減少させるように回動し、前記遮光羽根同士が交差する端部には、面取り及びR付けの少なくとも一方が設けられていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の他の端部の面取り及びR付けの少なくとも一方より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の両方の端部の稜線部に設けられていることを特徴する、請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記遮光羽根同士が交差する端部の面取り及びR付けの少なくとも一方は、前記遮光羽根の交差する端部の厚み方向の全域において連続して設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光量調節装置を具備することを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−76041(P2011−76041A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230422(P2009−230422)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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