説明

光量調節装置

【課題】低消費電力で作動可能な光量調節装置およびこの光量調節装置を備えた光学撮像機器を提供する。
【解決手段】入射光を制御する遮光羽根3、4を有し、入射光を通過させる開口穴1aを有する地板1に取り付けた駆動源により遮光羽根駆動レバー2を旋回駆動し、この遮光羽根駆動レバー2の遮光羽根駆動軸2bに遮光羽根3、4を旋回自在に軸支させる。地板1には、地板1に対して遮光羽根3、4の旋回支点となる支軸1b、1cを設けており、また遮光羽根3、4には支軸1b、1cが遊嵌合する角穴3a、4aが形成されていて、遮光羽根3、4が遮光羽根駆動レバーと2一体に移動し、開口穴1aを閉じる方向に移動するときに支軸1b、1cと係合する第1縁部3ab、4abと、開口穴1aを開く方向に移動するときに支軸1b、1cと係合する第2縁部3aa、4aaとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等の光学機器に用いられるシャッタ装置などの光量調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の遮光羽根を回動させることにより、地板の開口部を通った入射光の光量を調節する光量調節装置は種々の形式のものが提案されており、その一例として図7、図8に示すタイプのものがある(特許文献1)。
【0003】
図7,図8に示す従来の光量調節装置は、複数の遮光羽根13,14を、地板11に設けた支軸11b,11cに旋回可能に保持させ、遮光羽根駆動レバー12に設けた遮光羽根駆動軸12bに各遮光羽根13、14に形成した長穴13b,14bを嵌合させ、遮光羽根駆動レバー12の旋回により遮光羽根13,14を、支軸11b,11cを中心に旋回させ、入射光を制御するよう構成されている。
【0004】
光を通過させる場合は、図7に示したように、遮光羽根駆動レバー12を旋回させて、複数の遮光羽根13,14を地板11の開口穴11aの光を遮らない領域まで退避させる。
【0005】
また、遮光する場合は、図7の遮光羽根駆動レバー12を、回転軸12aを中心に時計周りに旋回させる。これにより遮光羽根駆動軸12bは、遮光羽根13,14を支軸11b,11cを中心として旋回させ、遮光羽根13,14は地板11の開口11aを遮蔽する。なお、図7に示す全開位置で遮光羽根13,14はストッパー11d、11eに当接し、全閉位置において1個のストッパー11fに遮光羽根13、14が当接する。
【特許文献1】特開2003−131287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の、シャッタ装置などの光量調節装置を必要とするデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの製品では、一度の充電で長時間の使用が求められている。必然的に光量調節装置も低消費電力の要求がある。
【0007】
従来の光量調節装置では、遮光羽根を駆動しようとすると、図7及び図8のように、駆動源に連動した遮光羽根駆動レバー12の動きに連動して動きはじめから遮光羽根13、14を地板11の支軸11b、11cを中心に旋回させるために遮光羽根の静摩擦にまさる駆動力を必要としている。
【0008】
さらに、湿度等の影響で遮光羽根13、14に粘性が加わると、さらに大きな駆動力が必要になる。
【0009】
本発明の目的は、これらの問題を解決して、低消費電力で作動可能な光量調節装置およびこの光量調節装置を備えた光学撮像機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を実現する光量調節装置の第1の構成は、請求項1に記載のように、入射光を制御する遮光羽根と、前記入射光を通過させる開口を有し、前記遮光羽根が配置される地板と、前記地板に取り付けられた駆動源により旋回駆動されると共に、前記遮光羽根を軸支手段により旋回自在に軸支する遮光羽根駆動レバーと、前記地板に対して前記遮光羽根の旋回支点となる該地板に設けた支軸と、を有し、前記遮光羽根には、該遮光羽根が前記遮光羽根駆動レバーと一体に移動し、かつ前記地板の開口を閉じる方向に移動するときに前記地板の支軸と係合する第1縁部と、該開口を開く方向に移動するときに該支軸と係合する第2縁部とを遊びを有して備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の目的を実現する光量調節装置の第2の構成は、請求項2に記載のように、上記第1の構成において、前記遮光羽根に設けられた第1縁部と第2縁部とを対向配置し、該第1縁部と第2縁部の間隔を前記地板の支軸の幅よりも広くしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の目的を実現する光量調節装置の第3の構成は、請求項3に記載のように、上記いずれかの構成において、前記遮光羽根に設けられた第1縁部と第2縁部は、前記支軸が遊嵌合する角穴の二辺であることを特徴とする。
【0013】
本発明の目的を実現する光量調節装置の第4の構成は、請求項4に記載のように、上記いずれかの構成において、前記第1縁部と第2縁部の少なくとも一辺は屈曲していることを特徴とする。
【0014】
本発明の目的を実現する光学撮像機器の構成は、請求項5に記載のように、上記したいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置を通った被写体光が結像する撮像手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動源の起動時は遮光羽根駆動レバーと一体に遮光羽根を動かすため、従来の地板の支軸を中心に遮光羽根を旋回させる場合に比べ30%前後の軽い駆動力で起動させることができる。
【0016】
この結果、従来よりも小さい電力で遮光羽根を駆動することができ、装置の省電力化が可能となる。
【0017】
また、従来の構成の遮光羽根を駆動する起動力を持つ駆動源を使用する場合は余裕のある作動を行なうことができ、高湿度下の遮光羽根粘着や異物等の作動障害にも障害なく使用可能な閉じ時間の短い光量調節装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態である光量調節装置について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施例)
図1から図4は本発明の第1の実施例を示す。なお、図9は従来例に対する本実施例の違いを、遮光羽根の動き出しの力関係から説明した図である。
【0019】
図1および図2において、基板部材であるところの地板1に固定された駆動源Mの駆動軸には遮光羽根駆動レバー2が固定され、この遮光羽根駆動レバー2の支軸2aに遮光羽根3,4を旋回可能に軸支し、遮光羽根駆動レバー2の回転に連動して遮光羽根3,4を支軸2aを中心に回転させる。また、地板1には、遮光羽根3を旋回させるための支軸1bと、遮光羽根4を旋回させるための支軸1cが突設され、さらに、遮光羽根3の開き側ストッパー1d、遮光羽根4の開き側ストッパー1e、遮光羽根3と遮光羽根4の遮光側のストッパー1fが設けられ、さらに入射光を通過させる開口穴1aが形成されている。
【0020】
また、駆動源Mは、ステータヨークに巻き回された駆動コイルに電流を流すことによって磁界を作り、二極に着磁された永久磁石のローターマグネットの吸引・反発力で回転力を得る公知の電磁駆動方式のものを使用する。ただし駆動源の方式についてはこれに限定されるわけではなく、ステッピングモータ方式あるいはガルバノメータ方式等、電気的に駆動されるものであれば何でも良い。
【0021】
遮光羽根3には、遮光羽根駆動レバー2の遮光羽根駆動軸2bにガタなく嵌合して遮光羽根3を回転自在に軸支するための丸穴3bと、地板1の支軸1bに遊びを有して嵌合する角穴3aが形成されている。同様に、遮光羽根4には、遮光羽根駆動レバー2の遮光羽根駆動軸2bにガタなく嵌合して遮光羽根4を回転自在に軸支するための丸穴4bと、地板1の支軸1cに遊びを有して嵌合する角穴4aが形成されている。
【0022】
すなわち、遮光羽根駆動軸2bに対して回転自在に軸支されている遮光羽根3と遮光羽根4は羽根駆動レバー2と一体に羽根駆動レバー2の支軸2aを中心とする回転(公転)を行い、角穴3aおよび角穴4aが支軸1b、1cに当接して遮光羽根駆動軸2bを中心とする旋回(自転)動作が生じるという一種の遊星機構を構成している。
【0023】
また、地板1には遮光羽根3、4を覆うカバー5が取り付けられている。
【0024】
以下に図1、図2、図3、図4、図5を使って光量調節装置の動作を説明する。
図1、図3(a)、図4(a)は遮光羽根3、4が開口穴1aから退避した開放状態を示し、遮光羽根駆動レバー2に設けられた遮光羽根駆動軸2bによって、遮光羽根3、4は地板1に設けられた支軸1b、1cに角穴3a、4aの一辺3aa、4aaが当接し、また開放側ストッパー1d、1eに当接し開口穴1aから退避した状態に保持されている。
【0025】
開口穴1aを遮光するために、駆動源Mの駆動軸2aを回転中心に遮光羽根駆動レバー2を時計回り方向に回転させると、遮光羽根3,4は図3(b)、図4(b)に示すように、遮光羽根駆動レバー2と一体に遮光羽根駆動軸2bの移動方向(図3(b)中矢印閉じ方向1)に移動し、遮光羽根3,4に形成された角穴の他辺3ab,4abが地板1の支軸1b,1cに当接する。
【0026】
さらに、遮光羽根駆動レバー2を時計方向に旋回させると、遮光羽根3,4は遮光羽根駆動軸2bと一体に移動する自転運動を行うため、この自転運動による旋回力の作用により、支軸1b,1cを回転中心とする遊星運動をしながら図3(b)中矢印閉じ方向2,図4(b)中閉じ方向2の方向に移動し、図3(c),図4(c)に示すように、遮光羽根駆動軸2bの旋回力を受けた遮光羽根3,4は遮蔽側ストッパー1fと当接すると共に、遮光羽根3,4の角穴3a、4aの他辺3ab、4abが支軸1b,1cに当接し停止する。
【0027】
一方、図3(c)、図4(c)に示す遮蔽状態から遮光羽根3,4を開口穴1aから退避した開放状態にするには、遮光羽根駆動レバー2を反時計回り方向に旋回させればよい。
【0028】
すなわち、遮光羽根駆動レバー2が反時計回り方向に旋回を始めると、シャッタ羽根3,4は図3(d)、図4(d)に示すように、遮光羽根駆動軸2bと一体に矢印の開き方向1の方向に移動し、角穴3a、4aの一辺3aa,4abが地板1の支軸1b,1cに当接する。
【0029】
さらに、遮光羽根駆動レバー2を反時計方向に旋回させると、遮光羽根3,4は遮光羽根駆動軸2bと支軸1b,1cを回転中心とする遊星運動をしながら図3(d)中の矢印開き方向2,図4(d)中の矢印開き方向2の方向に移動し、図3(a),図4(a)に示すように、遮光羽根駆動軸2bと一体に移動する遮光羽根3,4は開放側ストッパー1d,1eと、遮光羽根3,4の角穴3a、4aの一辺3aa、4aaが支軸1b,1cに当接し停止する。
【0030】
次に、遮光羽根が動き始める動き出しの遮光羽根駆動軸2bと遮光羽根との力の伝達関係を、図9(a),(b)を用いて説明する。なお、一方の遮光羽根3、13のみ図示しているが、他方の遮光羽根4、14もついても同様である。
【0031】
図9(a)に示す従来例において、駆動源によって旋回駆動される遮光羽根駆動軸12bは、遮光羽根駆動レバー12の回転方向の接線に沿った方向に力F1を働かせる。
【0032】
一方、遮光羽根駆動軸12bによって駆動される遮光羽根13の長丸穴13bには、前記F1を遮光羽根13の支軸11bを中心とした遮光羽根13の回転方向の接線に分力したF2が働く。このように、駆動源の発生する力は、遮光羽根駆動レバー12の回転中心12aと遮光羽根駆動軸12bと遮光羽根13の支軸11bが一直線上に並ぶ時以外では必ずロスを伴って遮光羽根の長丸穴13bに伝わる。
【0033】
これに対して本実施例によると、図9(b)に示すように、遮光羽根駆動軸2bが従来例と同様に遮光羽根3の丸穴3bに与える力F1は、遮光羽根3の角穴3aが支軸1bによって拘束されていないので、そのまま遮光羽根3の動き出しのための力F3となる。遮光羽根3と周囲の部材との間に摩擦力が無いとすると、F1=F3となるが、通常は地板等との間に摩擦力が働くため、F1>F3となる。しかし、従来例のような力の方向のアンマッチによるロスがなく、また遮光羽根3は最も動き易い方向に向かって動きだせるので、F3>F2となり、効率の良い動き出しが実現できる。
【0034】
また、図9(b)において、動き出してからしばらく経つと、遮光羽根3の角穴3aの一辺と支軸1bは係合して、遮光羽根3は従来例と同様に支軸1bを中心に回転運動を始め、従来例と同様の力の方向のアンマッチによるロスが発生する。しかし、その時点では駆動源は十分に慣性力を得ているので、その影響は軽微である。
【0035】
さらに、遮光羽根の動き始めは、遮光羽根と地板等との間における静摩擦力以上の力が必要であるが、本実施例によれば静摩擦から動摩擦に切り替わる遮光羽根の動き出しのとき、上述のように、駆動源の力を最も効率的に使用できるため、駆動電力の低減が図れる。
(第2の実施例)
図5は本発明の第2の実施例を示す。
【0036】
上記した第1の実施例では、遮光羽根3,4は地板1の支軸1b,1cに当接する角穴3a、4aの当接辺は直線であったが、本第2の実施例は、図5(a)に示す遮光羽根3に設けた角穴3c、および図5(b)に示す遮光羽根4に設けた角穴4cの当接辺をそれぞれ屈曲させて、遮光羽根3,4が開口穴1aから退避した開放状態から開口穴1aを遮蔽した閉じ状態にする場合、遮光羽根3,4の遮光部側が速く動くように構成している。具体的には、角穴3c、4cの一辺3aaと4aaを直線状とし、この一辺と対向している他辺について、閉じ方向への移動に伴って支軸1b,1cと当接する位置が該一辺側との対向距離を狭くするように屈曲(傾斜)している。
【0037】
これにより、遮光羽根駆動レバー2の移動速度を変えなくても開放状態から閉じ状態までに要する時間を短くすることができる。
(第3の実施例)
図6は本発明の第3の実施例を示す。
【0038】
図6において、筐体21に、レンズ22,23と、画像受光素子24を備えて構成される光学撮像装置において、上記したいずれかの実施例に示す光量調節装置25をレンズ22,23の間に設置している。なお、光量調節装置25は、レンズ22、23の前又はレンズ22,23の後に配置して構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施例である光量調節装置の開口穴開放状態を示し、(a)は上面図、(b)は(a)の一部分を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施例である光量調節装置の開口穴遮蔽状態の全体図。
【図3】(a)〜(d)は第1の実施例における一方の遮光羽根の開放状態から遮蔽状態への過渡状態の詳細説明図。
【図4】(a)〜(d)は第1の実施例における他方の遮光羽根の開放状態から遮蔽状態への過渡状態の詳細説明図。
【図5】(a)、(b)は本発明の第2の実施例を示す平面図。
【図6】本発明の第3の実施例を示す光学撮像装置の概略図。
【図7】従来の光量調節装置の平面図で、開放状態を示す。
【図8】図7の部分拡大図。
【図9】図9は従来例に対する本実施例の違いを、遮光羽根の動き出しの力関係から説明した図。
【符号の説明】
【0040】
1 地板
1a 開口穴
1b 支軸(遮光羽根回転軸)
1c 支軸(遮光羽根回転軸)
1d、1e 開放側ストッパー
1f 遮蔽側ストッパー
2 遮光羽根駆動レバー
2a 支軸
2b 遮光羽根駆動軸
3、4 遮光羽根
3a、4a 角穴 3b、4b 丸穴
3aa、4aa 一辺 3ab、4ab 他辺
21 光学撮像装置の筐体
22,23 レンズ
24 画像受光素子
25 光量調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を制御する遮光羽根と、前記入射光を通過させる開口を有し、前記遮光羽根が配置される地板と、前記地板に取り付けられた駆動源により旋回駆動されると共に、前記遮光羽根を軸支手段により旋回自在に軸支する遮光羽根駆動レバーと、前記地板に対して前記遮光羽根の旋回支点となる該地板に設けた支軸と、を有し、
前記遮光羽根には、該遮光羽根が前記遮光羽根駆動レバーと一体に移動し、かつ前記地板の開口を閉じる方向に移動するときに前記地板の支軸と係合する第1縁部と、該開口を開く方向に移動するときに該支軸と係合する第2縁部とを遊びを有して備えていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記遮光羽根に設けられた第1縁部と第2縁部とを対向配置し、該第1縁部と第2縁部の間隔を前記地板の支軸の幅よりも広くしたことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記遮光羽根に設けられた第1縁部と第2縁部は、前記支軸が遊嵌合する角穴の二辺であることを特徴とする請求項1または2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第1縁部と第2縁部の少なくとも一辺は屈曲していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置を通った被写体光が結像する撮像手段と、を有することを特徴とする光学撮像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−264159(P2007−264159A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87028(P2006−87028)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】