説明

光電センサおよび光電センサの動作確認作業の支援方法

【課題】検出対象物の物体の動きに伴って受光量や解析データに生じる変化を、ユーザが容易に確認できるようにする。
【解決手段】光電センサの制御部において、受光部より入力された受光量データまたは計測処理により得た計測データをメモリに蓄積すると共に、メモリに格納されたデータをサンプリングデータとして一定の間隔で読み出すサンプリング処理を、読み出しの対象となる期間を限定して実行する。さらに、サンプリングされた受光量データのうちの1番目のデータをメモリから読み出して、表示する。以後は、ユーザの表示切り替え操作を受け付ける都度、サンプリングされた順に各受光量データを読み出して、そのデータにより表示を切り替える。また、各受光量データをグラフとして表示したり、外部の表示装置に出力して表示することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する物体が目標位置を通過したことを検出したり、物体の姿勢の変化を検出する目的などに使用される光電センサに関する。また、本発明は、光電センサの動作を確認する作業を支援する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサには、投光部から出射されて検出対象物の検知エリアを通過した光を受光するタイプ(透過型)と、投光部から出射された後に検出対象物により反射した光を受光するタイプ(反射型)とがある。いずれのタイプのセンサでも、受光部から出力される受光量信号をディジタルデータに変換し、変換後のデータ(以下、「受光量データ」という。)をマイクロプロセッサを含む処理回路に入力し、受光量データの値をあらかじめ設定されたしきい値と照合して検出対象物の有無を判別し、検出対象物ありと判別されているときにオン状態となる検出信号を出力する。また、センサの使用目的によっては、受光量をしきい値と比較する処理に代えて、受光量の変化量や移動平均値などを求める演算処理を実行し、この処理により得た値をしきい値と比較する場合もある。
【0003】
いずれのタイプの光電センサでも、検出対象物を安定して検出するには、しきい値との照合対象となる計測データが物体の動きに応じてどのように変化するかを確認して、しきい値を設定するのが望ましい。しかし、検出対象物が高速で動く場合には、受光量信号やこれから得られるデータの変化も非常に早くなるため、その変化を確認するのは困難である。
【0004】
このようなことから、従来の光電センサには、所定期間内の受光量の中の最大値および最小値を抽出して、これらを並列表示することにより、検出対象物の動きに伴う信号の変化の幅を確認できるようにしたものがある(たとえば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−181343号公報
【特許文献2】特開2004−104612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、単に受光量の最大値および最小値を表示しても、適切なしきい値を設定するのが困難な場合がある。
たとえば、複雑な形状の物体を検出対象とする場合には、この検出対象物がセンサの検知エリアを通過する間に生じる受光量の変化のパターンが複雑になり、最大値と最小値との間の適当な値をしきい値に設定すると、複雑な変化の一部がしきい値による検出範囲から外れ、検出対象物を安定して検出するのが困難になる。
【0007】
また、受光量の最大値や最小値は、必ずしも検出対象物の動きに伴って生じるとは限らず、ノイズが生じる場合もある。しかし、最大値や最小値が表示されるだけでは、それらがノイズに起因するものであるかを判断するのは困難である。また、それらがノイズに起因する場合に、それを認識できずにしきい値を設定すると、そのしきい値は、検出に適した値から外れるおそれがある。
【0008】
このような理由から、現場のユーザは試行錯誤でしきい値を設定しており、設定作業を行うユーザの負担が大きなものとなっている。
さらに、現場からは、しきい値を設定する目的に限らず、高速で移動する検出対象物が正しく検出されているかどうかを確認するためにも、計測データの変化を詳細に確認したい、という要望が挙げられている。
【0009】
本発明は上記の問題に着目し、高速で動く検出対象物により計測データに生じた変化を、ユーザが容易に確認できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が適用される光電センサは、光を出射する投光部と、投光部から投光された光を受光して、その受光量データを生成する受光部と、検出対象物が検出されたことを示す検出信号を出力するための出力部と、受光部により生成された受光量データを入力して当該受光量データを対象にした計測処理を実行し、この処理により得た計測データをあらかじめ設定されたしきい値により照合して検出対象物の有無を判別し、その判別結果に応じて前記検出信号のオン/オフを切り替える信号処理部とを具備する。
【0011】
上記の構成において、受光部による受光は、投光素子からの出射光を直接受光する場合(透過型の仕様)と、出射光に対する物体からの反射光を受光する場合(反射型の仕様)の双方を含む。また信号処理部では、計測処理として、たとえば、受光部より入力した受光量データを、毎回または一定時間毎に計測する処理を実行する。さらに、この計測により得た受光量データを微分して単位時間あたりの受光量の変化量を求めたり、受光量データの移動平均値を求めるなどの解析処理を行う場合もある。
【0012】
本発明による光電センサでは、上記した課題を解決するために、信号処理部に、受光部より入力した受光量データ、または計測処理により取得した計測データを記憶するための記憶手段と、記憶手段に格納された受光量データまたは計測データをサンプリングデータとして一定の間隔で読み出すサンプリング処理を、読み出しの対象となる期間を限定して実行するサンプリング手段と、サンプリング手段により読み出されたサンプリングデータを、これらが記憶手段に格納された順序に対応づけて出力する出力手段とを具備する。
なお、サンプリング手段により読み出されるサンプリングデータの数は、少なくとも3個あれば良いが、3よりもかなり大きな数とするのが望ましい。たとえば、検出対象物が検出を要望する動きをする時間内に記憶手段に格納されるデータの数やサンプリングの間隔に基づいてサンプリングデータの読み出し数を定めるのが望ましい。
【0013】
上記の構成によれば、受光部より毎時入力される受光量データ、または検出対象物の検出用のしきい値と照合するために計測されたデータ(受光量を示す場合と受光量の解析処理結果を示す場合とがある。)の値が、ある程度の長さの期間に限定してサンプリングされた後に、各サンプリングデータが記憶手段に格納された順序、すなわちデータが発生した順序に対応づけて出力される。よって、実際の計測データが高速で変化しても、その変化が終了した後に、当該変化をユーザが確認することが可能な速さで再現したり、当該変化の確認が容易なグラフを表すことが可能になる。よって、ユーザは、計測データの変化を容易に把握することができる。
【0014】
上記のサンプリング手段および出力手段による処理は、検出対象物を判別するためのしきい値を設定する処理に先立ち実施することができるが、しきい値の設定後に、その設定が適切であるかどうかを確認する目的で実施することもできる。また、検出対象物が正しく検出されているかどうかや、ノイズの有無を確認する用途にも利用することができる。
【0015】
好ましい一実施態様による光電センサは、サンプリングデータが示す値のディジタル表示が可能な表示部を具備する。また、出力手段は、出力対象の各サンプリングデータを記憶手段から読み出された順序に従って表示部に順に表示する手段として構成される。このようにすれば、ユーザは、検出対象物の動きに伴う受光量または計測値の変化を順を追って確認することが可能になる。
【0016】
上記の実施態様の下位概念となる一実施態様では、出力手段は、出力対象の各サンプリングデータを、これらのデータが記憶手段に格納されるのに要した時間よりも長い時間をかけて表示部に順に表示するように構成される。
【0017】
検出対象物が高速で動く場合には、受光量や計測値をリアルタイムで表示しても、これらの表示データの変化を人の目で確認するのは困難である。上記の実施態様は、この点に鑑み、出力対象の各サンプリングデータを、これらが記憶手段に格納されるのに要した時間より長い時間をかけて順に表示するので、検出対象物の動きに伴う受光量や計測値の変化を確認することが可能になる。よって、検出対象物の動きが正しく検出されているかを確認したり、しきい値などの設定値を設定する作業を容易に行うことが可能になる。
【0018】
サンプリングデータが示す値のディジタル表示が可能な表示部を具備する光電センサの他の好ましい一実施態様では、処理内容を指示する操作を受け付ける操作部を具備する。また、出力手段は、最初の出力対象のサンプリングデータが示す値を表示部に表示し、以後、操作部がサンプリングデータの表示を次に進めることを指示する操作を受け付ける都度、記憶手段から次の出力対象のサンプリングデータを読み出すステップと、表示部の表示を読み出されたサンプリングデータの値を示すものに切り換えるステップとを実行する。
【0019】
上記の実施態様によれば、サンプリング処理が終了すると、出力対象の最初のサンプリングデータの値が表示部に表示される。この後、ユーザは、サンプリングデータの表示を次に進めることを指示する操作を行うことによって、2番目以降のサンプリングデータを順に表示部に表示させて、各値を確認することが可能になる。このような表示によれば、検出対象物の動きに伴って、実際の受光量信号や計測データが高速で変化した場合でも、ユーザは、事後に、自分のペースで、検出対象物の移動に伴う計測データの変化を詳細に確認することが可能になる。また、サンプリングされた各計測データがディジタル表示されるので、これらの表示からしきい値の具体的な値を容易に定めることが可能になる。
【0020】
さらに上記の実施態様においては、操作部を、サンプリングデータの表示を次に進めることを指示する操作と、前記表示を前に戻すことを指示する操作とを受け付けることが可能に構成することができる。また、この構成に伴い、出力手段は、表示部に2番目以降の出力対象のサンプリングデータの値が表示されている状態下において、操作部において当該表示を前に戻すことを指示する操作が行われたときに、表示されているサンプリングデータより一段階前のサンプリングデータの値により表示部の表示を更新するように、構成される。
【0021】
上記の構成によれば、ユーザは、各サンプリングデータの値を時間の流れに沿って順に確認できるほか、必要に応じて、各サンプリングデータを過去に遡って確認することも可能になる。よって、検出対象物の動きに伴う計測データの変化を、より詳細に確認することが可能になる。
【0022】
他の好ましい実施態様による光電センサは、グラフを表示することが可能な表示部を具備する。また、出力手段は、記憶手段より複数のサンプリングデータを読み出し、これらのデータの値の時系列変化を示すグラフを表示部に表示する。
【0023】
上記の構成によれば、検出対象物の動きに伴う計測データの変化をグラフとして表示することができるので、ユーザは、計測データの変化をより容易に把握することが可能になる。
【0024】
他の好ましい実施態様による光電センサは、処理内容を指示する操作を受け付ける操作部とを具備し、出力手段は、グラフを表示する機能を有する外部機器との通信を行う手段として構成される。また出力手段は、記憶手段より読み出された複数のサンプリングデータを、これらが記憶手段に格納された順序に対応づけて前記外部機器に出力する。
【0025】
上記の態様によれば、光電センサにおいてサンプリングされた各データがそれらの発生順序に対応づけられて外部機器に送信される。よって、外部機器では、送信されたデータに基づき、検出対象物の動きに伴う受光量または計測値の時系列変化を示すグラフを作成して表示することができるので、ユーザは、受光量または計測値の変化を容易に把握することが可能になる。
【0026】
本発明の光電センサの他の好ましい実施態様では、出力手段は、記憶手段に格納されたデータを分析することにより、あらかじめ定めた条件を満たす信号変化が現れている期間を特定し、この期間に含まれるサンプリングデータを出力対象に設定する。このようにすれば、たとえば、データが大きく変化した期間を特定することにより、受光量または計測値が検出対象物の動きに伴って変化している可能性の高い期間に記憶手段に格納されたデータをサンプリングして、出力することができる。
【0027】
さらに、本発明は、光を出射する投光部と、投光部から投光された光を受光して、その受光量を示す受光量データを生成する受光部と、検出対象物が検出されたことを示す検出信号を出力するための出力部と、受光部により生成された受光量データを入力して当該受光量データを対象にした計測処理を実行し、この処理により得た計測データをあらかじめ設定されたしきい値により照合して検出対象物の有無を判別し、その判別結果に応じて前記検出信号のオン/オフを切り替える信号処理部とを具備する光電センサを対象として、当該光電センサによる検知動作を確認する作業を支援する方法に適用される。この方法では、光電センサの検知領域に対して検出対象物が動いている状態下で光電センサを動作させながら、当該光電センサの信号処理部において、受光部より入力した受光量データまたは計測処理により取得した計測データをメモリに格納するステップと、メモリに格納された複数の受光量データまたは計測データをサンプリングデータとして一定の間隔で読み出すサンプリング処理を、読み出し対象の期間を限定して実行するステップとを実行する。さらに、光電センサに一体に設けられた表示部または光電センサの外部に設けられた表示装置において、メモリから読み出された各サンプリングデータが示す値をこれらがメモリに格納された順序に対応づけて表示するステップを実行する。
【0028】
上記の方法によれば、検出対象物の動きに伴って信号が変化する間に生じた受光量データ、またはこの受光量データに対する計測処理により生成された計測データを光電センサにおいてサンプリングし、光電センサ本体に設けられた表示部、または外部の表示装置に各サンプリングデータが示す値を、これらが発生した順序に対応づけて表示することにより、検出対象物の動きに伴って受光量または計測値が変化する状態を表示することができる。よって、ユーザは、受光量または計測値が検出対象物の動きに伴って変化する状態を容易に把握することが可能になる。
【0029】
なお、光電センサの外部の表示装置で上記の表示を行うには、たとえば、この表示装置の動作を制御するコンピュータに対し、メモリから読み出されたサンプリングデータを通信により提供すればよい。また、たとえば、メモリから読み出されたサンプリングデータを光電センサからリムーバブル記憶媒体に出力し、この記憶媒体を外部のコンピュータにセットすることによって、表示対象のサンプリングデータを読み出せるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、受光部により生成された受光量データや物体検出用のしきい値による照合処理の対象となる計測データが、検出対象物の動きに伴って高速で変化する場合でも、その変化を、後で容易に確認することができるので、検出対象物が正しく検出されているかを確認したり、しきい値などの設定値を設定する作業を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明が適用される光電センサの使用例を示す説明図である。
【図2】光電センサの外観を示す斜視図である。
【図3】光電センサのケース体の上面を正面から見た図である。
【図4】光電センサの回路構成を示すブロック図である。
【図5】ワークの移動に伴う受光量信号の例、および受光量データのサンプリングおよび表示に関する処理の例を示す説明図である。
【図6】受光量データのサンプリングおよび表示に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】受光量データのサンプリングおよび表示に関する処理の手順(図6に続くもの)を示すフローチャートである。
【図8】外部用機器でサンプリングされた受光量データによるグラフを表示した例を示す説明図である。
【図9】透過型の光電センサの使用例およびこの光電センサが得る受光量データ、ならびに受光量のサンプリングデータに基づき表示されるグラフを示す説明図である。
【図10】光電センサの他の使用例、受光量の微分値をしきい値と比較して検出対象物を検出する原理、および微分値のサンプリングデータに基づき表示されるグラフを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明が適用される光電センサの使用例を示す。
この実施例の光電センサ1は、光ファイバ式の反射型のセンサであって、工場の生産ライン3を搬送されるワークW(たとえば電子部品)を検出する目的で、ライン3の近傍に設置される。
【0033】
ワークWを検出するために、光電センサ1の本体からは、投光用の光ファイバ21と受光用の光ファイバ22とが引き出される。これらの光ファイバ21,22の先端は、共通のヘッド部20に連結されている。また、光電センサ1の本体内の各ファイバ21,22の挿入口の付近には、それぞれ図4に示すLED131、フォトダイオード(PD)141が配備されている。LED131から出射された光は、投光用ファイバ21を介してヘッド部20から出射される。また、この出射光に対するワークWからの反射光がヘッド部20に入射すると、その入射光は受光用ファイバ22を介してフォトダイオード141に導かれ、これによりフォトダイオード141の受光量が増加する。
【0034】
光電センサ1内の処理回路では、上記の受光量の増加を検出し、ワークWに対する処理を行う装置(たとえば、ワークを検査する視覚センサ)に、その検出結果を示す信号(検出信号)を出力する。
【0035】
図2は、上記の光電センサ1の本体の外観を示したものである。この光電センサ1の本体は、上面に蓋部11を有するケース体10により構成される。ケース体10の前面からは、光ファイバ21,22が引き出され、背面からは、図示しないコード線が引き出されている。ケース体10の上面には、表示部101および操作部102が設けられているが、これらは、センサ1の使用時には蓋部11により覆われる。
【0036】
図3は、表示部101および操作部102を正面視した構成を示す。表示部101には、それぞれ4桁の数字を表示する2個のディジタル表示器12A,12Bが設けられ、各ディジタル表示器12A,12Bの左手に、それぞれ動作ランプ13A,13Bが設けられている。なお、ディジタル表示器12A,12Bには、数字のほか、アルファベットによる文字列が表示される場合がある。
【0037】
操作部102には、3個の押ボタンスイッチ14,15,16および2個のスライドスイッチ17,18が設けられる。
各押ボタンスイッチ14〜15のうちの中央のスイッチ14、および左端のスイッチ15は、それぞれ右向きおよび左向きの矢印を模した形状に形成され、設定モード時の表示器12A,12Bの表示を切り替えたり、設定値の値を変更する用途に用いられる。設定値を変更する際に、スイッチ14には数値を増加させる機能が設定され、スイッチ15には数値を減少させる機能が設定されることから、以下では、これらのスイッチ14,15を「UPスイッチ14」「DOWNスイッチ15」という。
【0038】
右端の押ボタンスイッチ16は、表示器12A,12Bに表示された数値を確定したり、UPスイッチ14やDOWNスイッチ15により呼び出された機能を選択する目的などに使用される。以下、このスイッチ16を「設定スイッチ16」という。
スライドスイッチ17は、光電センサ1の動作モードとして、設定モードおよび計測モードのいずれか一方を選択する。他方のスライドスイッチ18は、光電センサ1からの出力の定義として、受光量がしきい値を超えたときに出力をオンにするモード(ライトオンモード)および受光量がしきい値を下回るときに出力をオンにするモード(ダークオンモード)のいずれか一方を選択する。
【0039】
図4は、上記の光電センサ1の回路構成を示す。
図中の表示部101には、図3に示したディジタル表示器12A,12Bや動作ランプ13A,13Bが含まれ、操作部102には、図3に示したUPスイッチ14、DOWNスイッチ15、設定スイッチ16、およびスライドスイッチ17,18が含まれる。また図中の制御部100、投光部103、受光部104、出力部105、外部機器用インターフェース106、電源部107は、ケース体10の内部に収容される。
【0040】
投光部103には、LED131およびその駆動回路(LED駆動回路)132が含まれる。受光部104には、フォトダイオード(PD)141のほか、フォトダイオードから出力された受光量信号を処理する回路(受光量処理回路142)が含まれる。受光量処理回路142には、増幅回路やA/D変換回路などが含まれており、これらの回路により、受光量信号を0〜4000の範囲の数値に変換して出力する。
【0041】
制御部100は、マイクロプロセッサにより成るもので、CPUおよび不揮発性のメモリが含まれている。メモリには、プログラムが格納されるほか、ユーザにより設定されたしきい値などのパラメータが登録される。CPUは、これらのプログラムやパラメータに基づき、投光部の発光動作を制御しつつ、受光量処理回路142による変換処理により生成されたディジタルデータ(以下、「受光量データ」という。)を入力し、この入力データが示す受光量をしきい値と照合し、検出対象物の有無を判別する。また、この実施例の制御部100のメモリには、過去の一定期間内に入力された受光量データを先入れ先出し方式で記憶する領域が設けられる。
【0042】
出力部105は、上記の判別結果を示す信号(検出信号)を外部に出力するためのものである。外部機器用インターフェース106は、後記する設定用機器200と情報をやりとりするためのものである。
【0043】
電源部107は、図示しない外部電源に接続されており、この外部電源から供給された電源を用いて、各部に駆動用の電源を供給する。
【0044】
上記構成の光電センサ1をユーザが使用するには、まず、スライドスイッチ17を設定モードに合わせた状態にして、試験的にワークWを移動させながら検出処理を実行し、操作部101を用いてしきい値の設定入力を行う。また、設定が終了すると、スライドスイッチ17を計測モードに合わせることにより、制御部100は、設定されたしきい値に基づく検出動作を開始する。
【0045】
さらに、この実施例では、設定モードにおいて、ワークWの移動に伴う受光量信号の変化を表示部101に詳細に表示することにより、ユーザがワークが正しく検出されているかを確認したり、しきい値の適正値を判断する作業を支援するようにしている。
【0046】
図5の(A)は、光電センサ1の検知エリアを複数のワークWが通過する間に生じた受光量信号の変化を示す。この信号の1つ1つの山が個々のワークWに対応するものであるが、この実施例のワークWは高速で移動するため、受光量信号の変化も非常に速い。このため、受光量信号をリアルタイムで表示しても、個々のワークWに対応する信号の変化を人の目で確認するのは困難である。
【0047】
そこで、この実施例の制御部100では、設定モードにおいて、ユーザが信号の取り込み操作を行ったことに応じて、その時点から一定の期間内に受光量処理回路142から入力されてメモリに格納される受光量データを対象にしたサンプリング処理を実行する。具体的には、制御部100は、取り込み操作後にメモリに蓄積された受光量データの中からワークWが1つ通過する間の受光量の変化を示すデータ群を特定し、このデータ群を含む一定期間内の受光量データをサンプリングデータとして読み出して、表示部101に表示するようにしている。
【0048】
図5(A)では、受光量信号のグラフ中の表示対象として特定されたデータ群に対応する範囲を、太枠で囲んで示す。図5(B)では、この太枠部分の受光量信号を時間軸の幅を引き延ばして示すと共に、その右手に、この受光量信号からサンプリングされた受光量データによる表示の例を示す。受光量のグラフでは、個々のサンプリングデータに対応する位置をドットにより示し、また右手の表示(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)とこれらに対応するサンプリングデータの位置とを、矢印により対応づけている。
【0049】
図5(B)の表示例では、2つのディジタル表示器12A,12Bのうちの右側の表示器12Bに、現在のしきい値の設定値(図示例では2000)を表示し、左側の表示器12Aを受光量データの表示に使用している。
【0050】
つぎに、この実施例の光電センサ1では、ノイズの影響を考慮して、3種類のしきい値H0,H1,H2を用いて検出対象物の有無を検出するようにしている。図5(B)の表示例で表示器12Bに表示されている数値2000は、このうちのH0である。H0はデフォルトの値が2000に設定されているが、ユーザの操作により変更することができる。
残りのしきい値H1,H2(H1>H2)は、H0を基準として、このH0がH1とH2との中間に位置するように、あらかじめ定めた幅Dを隔てて設定される。
【0051】
制御部100は、計測モードにおいては、入力された受光量データが示す受光量がH1より低い状態からH1を上回る状態になったときに検出信号をオフからオンに切り替え、受光量がH2より高い状態からH2を下回る状態になったときに検出信号をオンからオフに切り替える。この点に鑑み、制御部100は、設定モードにおいても、メモリに蓄積された受光量データの中から、現在のしきい値H0〜H2により検出信号がオン状態になる期間を含む一定長さの期間を特定し、この期間に含まれる各受光用データを順に読み出して表示器12Aに表示するようにしている。さらに、この実施例では、この表示の切り替えを、ユーザ自身の指定操作(UPスイッチ14の操作)により行うようにしている。
【0052】
図6および図7は、受光量のサンプリング処理およびサンプリングデータの表示に関する処理の手順を示す。以下、このフローチャートに示す処理を、適宜、図5(B)のグラフおよび表示(イ)〜(ト)を参照しながら説明する。
【0053】
この処理は、ユーザによるデータ取り込み指示操作を受けて開始される。まず、最初のステップS1では、表示部101にサンプリング処理の開始を表示する。図5(B)の表示(イ)は、この時点の表示例を示すもので、ここでは、表示器12Aに、スタート(START)を意味する文字列「StAt」が表示されている。
【0054】
ついでステップS2では、以後に入力されるN個の受光量データP(1),P(2)・・・P(N)を分析対象のデータとして順に取り込み、メモリに格納する。なお、Nの値は、あらかじめ、受光量データの取り込み間隔ΔtやワークWの移動速度などに基づき、1個のワークWが検知エリアを通過する間に取得可能なデータ数よりも十分に大きな値になるように設定される。
【0055】
ステップS2の処理によりメモリにN個の受光量データが格納されると、以下のステップS3〜S10において、検出信号がオン状態になる期間(以下、「オン期間」という。)に対応する受光量データを特定する。
【0056】
この特定処理を具体的に説明する。まず、カウンタnを用いて、1番目の受光量データP(1)に着目し、この受光量データP(1)の値をしきい値H1と比較する(ステップS3,S4)。ここでP(1)<H1の場合(n=1、かつステップS4が「YES」の場合)、すなわち検出信号がオフになる状態下で受光量データの取り込みが開始された場合には、2番目以降の受光量データに順に着目して、しきい値H1を上回る受光量データP(n)を検索する(ステップS5〜S7)。
【0057】
一方、1番目の受光量データP(1)がしきい値H1を上回っている場合(n=1、かつステップS4が「NO」の場合)、すなわち検出信号がオンになる状態下で受光量データの取り込みが開始された場合には、2番目以降の受光量データを順に着目して、しきい値H2を下回る受光量データP(n)を検索する(ステップS8〜10)。この条件を満たす受光量データP(n)が見つかると(ステップS10が「YES」)、そのときのnの値を起点にステップS5〜S7を実行して、しきい値H1を上回る受光量データP(n)を見つける処理を実行する。
【0058】
上記ステップS5〜S7のループによりしきい値H1を上回る受光量データP(n)が特定されたときのnの値は、検出信号がオフ状態からオン状態に切り替えられる時点、すなわち図5(B)のグラフの時間軸上の点T1に相当する。以下、この点を「検出開始点」という。
【0059】
検出開始点が特定された後は、第2のカウンタmを用いて、検出開始点より後に得た受光量データP(m)に順に着目して、しきい値H2を下回る受光量データP(m)を検索する(ステップS11〜S14)。
【0060】
上記の条件を満たす受光量データP(m)が見つかったとき(ステップS12が「YES」)のmの値は、検出信号がオン状態からオフ状態に切り替えられる時点、すなわち図5(B)のグラフの時間軸上の点T2に相当する。以下、この点を「検出終了点」という。ステップS15では、検出開始点を示すカウンタn、検出終了点を示すカウンタm、および受光量データの取り込み間隔Δtを用いて、演算式T=(m−n)×Δtを実行することにより、検出信号のオン状態が維持される期間(オン期間)の長さTを算出する。以下、このTを「オン時間T」という。
【0061】
さらにステップS16では、P(n)から数えてK個の受光量データ(K>m)を表示対象に設定する。なお、Kの値は、あらかじめ定められているが、P(m)より後の受光量データの数に応じて適宜変更することも可能である。これにより、たとえば、図5(B)のグラフに示すような表示対象期間が設定される。
【0062】
ステップS17では、表示対象に設定された受光量データの中の最初のデータP(n)をメモリから読み出して表示する。図5(B)の表示(ロ)は、この表示状態を示すものである。
【0063】
この後は、UPスイッチ14が操作される都度、nをインクリメントして(ステップS18,19)、上記のステップS17を実行することにより、受光量データをメモリに格納された順に読み出して表示する。この処理により、図5(B)の表示(ハ)(ニ)(ホ)に示すように、UPスイッチ14の操作に応じて表示器12Aに表示される数値が種々に変化する。
【0064】
表示対象の受光量データの中の最後のデータが表示されている状態(図5(B)の(ホ))でUPスイッチ14が操作され(n=K、かつステップS18が「YES」の場合)、これに応じてnがインクリメントされる(ステップS19)と、インクリメント後のnはKを上回る状態になる。これによりステップS17〜S20のループは終了し、ステップS21において、表示器101をオン時間Tの表示に切り替える。
【0065】
図5(B)の表示(ヘ)は、このオン時間の表示例を示すもので、左側の表示器12Aにオン時間Tを示す数値が表示され、右側の表示器12Bに、Tの単位を示す文字列USが表示されている。なお、Uはμを意味する。すなわち、表示(ヘ)は、オン時間が400マイクロ秒であることを示すことになる。
【0066】
さらに、UPスイッチ14が操作されると(ステップS22が「YES」)、再度、各表示部101の表示が切り替えられる(ステップS23)。図5(B)の表示(ト)は、この表示の例を示すもので、左の表示器12Aに「End」の文字列が表示され、右の表示器12Bは再びしきい値H0を表示する状態に復帰する。
この表示により処理が終了したことが報知され、一連の処理が終了する。
【0067】
なお、検出開始点を特定するためのステップS5〜S7のループおよびステップS8〜S10のループ、ならびに検出終了点を特定するためのステップS12〜S14のループのいずれかにおいて、条件を満たす受光量データが得られないままカウンタnがNを超えた場合(ステップS6,S9,S14のいずれかが「NO」)には、処理を打ち切り、エラー表示Eを実行する。たとえば、表示器12Aにエラーを示すコードを表示する文字列を表示する。
【0068】
また、上記のフローチャートでは煩雑になるので省略したが、この実施例では、表示対象の受光量データのうちの2番目以降のデータが表示されている状態下で、DOWNスイッチ15の操作に応じて表示器12Aにおける表示を一段階前の表示に戻すことができる。
【0069】
上記一連の処理によれば、ユーザは、ワークWの通過に伴う受光量の時系列的変化を自分のペースで詳細に確認することができる。また、この受光量の表示の隣にしきい値H0の現在値が表示されるので、両者を見比べることによりしきい値H0の設定が適切であるかどうかを容易に判断することができる。また、受光量データの中にノイズによる異常値が含まれる場合にも、その異常値の前後の表示との関係から、異常値を容易に認識することができる。
【0070】
さらに、この実施例では、受光量データの表示の後に、オン時間Tの値が表示されるので、ユーザは、受光量データの表示の数とオン時間Tの長さから、ワークWを検出するのに適切な数のデータが得られているかどうかを把握することができる。
【0071】
なお、図6,7に示した処理では、検出開始点T1を起点にして受光量データの表示を開始するようにしたが、これに限らず、検出開始点T1より若干前の時点を表示の起点にしてもよい。また、上記の実施例では、1つのワークWの通過に対応する期間よりやや長い期間内の受光量を表示の対象としたが、より長い期間、すなわち2以上のワークWが通過する時間に対応する期間内の受光量を表示の対象としてもよい。
【0072】
また、上記の実施例では、取り込み操作後にメモリに格納された受光量データを間引くことなくチェックして、表示対象として特定された期間に含まれる全ての受光量データをサンプリングしたが、表示対象の期間を長くする場合には、受光量データのチェックやサンプリングの対象を、2個以上の間隔をあけて設定してもよい。
【0073】
また、上記の実施例では、各受光量を示す数値を1つずつディジタル表示したが、これに代えて、たとえば、表示部101を、バーグラフを表示できるように微小なLED等を集合させた構成とし、一定期間内の受光量データを表すバーグラフを、サンプリングされた順に並べて表示してもよい。この場合にも、表示対象のデータが一度に表示しきれない場合には、UPスイッチ14やDOWNスイッチ15の操作に応じてバーグラフによる表示をスクロールさせることができる。
【0074】
また、上記の実施例では、ユーザのデータ取り込み操作に応じて図6,7に示した手順を処理するが、これに限らず、例えば、しきい値がデフォルトの状態で設定モードが開始されたときや、しきい値の設定変更メニューが選択されたことに応じて、図6,7の処理を開始してもよい。
【0075】
さらに、この実施例の光電センサ1では、計測モードにおいても、適宜、データ取り込み操作に応じて受光量データのサンプリングおよび表示を行うことができる。
計測モード時には、2つのディジタル表示器12A,12Bのうちの左側の表示器12Aに、入力された直後の受光量データ(生データ)を表示すると共に、右側の表示器12Bに、サンプリングデータを表示するようにしている。また、表示器12Aの表示は、実際のデータ入力に従って高速で切り替えられるが、表示器12Bでは、図6のステップS1〜S16と同様の手法で特定された一定期間内の受光量データを、これらのデータの入力および保存に要した時間よりも十分に長い時間(人の目での視認が可能な時間)をかけて順に表示する。このような表示によれば、ワークWが高速で移動する場合でも、ユーザは、表示器12Bにおけるサンプリングデータの表示により、その移動に伴う受光量の変化を容易に確認することが可能になる。よって、ワークWが正しく検出されているかどうかも、容易に判断することができる。
なお、計測モードでも、設定モード時と同様に、UPスイッ14やDOWNスイッチ15の操作に応じて表示部12Bの表示を切り替えるようにしてもよい。
【0076】
また、受光量データの表示は、必ずしも光電センサ1の本体で実施する必要はない。たとえば、図4に示した外部機器インターフェース106に設定用機器を接続すれば、制御部100において、受光量データをサンプリングした後に、各サンプリングデータをサンプリングされた順序、言い換えれば各データがメモリに格納された順序に対応づけて設定用機器に送信し、設定用機器において視認性の良い表示を行うことができる。
【0077】
図8は、受光量データの送信を受けた設定用機器200における表示例を示す。
この実施例の設定用機器200の前面には、液晶パネルによるモニタ201と、3個の押しボタンスイッチ202,203,204が設けられ、機体内には、光電センサ1との通信回路やマイクロプロセッサによる制御部などが設けられている。各スイッチ202,203,204には、それぞれ光電センサ1のスイッチ14,15,16と同様の機能が設定され、ここで設定された内容が光電センサ1に転送される。
【0078】
設定用機器200の制御部は、光電センサ1から出力された受光量データに基づき、モニタ201に受光量の時系列変化を曲線で表したグラフGを表示する。また、グラフGでは、しきい値H0の現在値(3000)が点線により明示され、さらにグラフGの下方にも、しきい値H0や応答時間(受光量データの取り込み間隔ΔTに相当する。)が表示されている。
【0079】
ユーザは、上記の表示を確認しながら、スイッチ202,203を用いてしきい値の設定値を変更したり、スイッチ204を用いて、設定したしきい値を確定するなどの操作を行うことができる。
【0080】
図8の例のように視認性の良い表示を行う場合には、光電センサ1のメモリに蓄積された受光量データの中から表示対象を絞ることなく、メモリに蓄積された全ての受光量データによるグラフを表示してもよい。また、複数個のワークWの通過に相当する期間の受光量をサンプリングして、サンプリングされた全てのデータによるグラフを表示してもよい。
【0081】
さらに、この設定用機器200が他の装置(パーソナルコンピュータなど)と通信をする機能を有する場合には、光電センサ1において生成される受光量信号を詳細に分析する目的に設定用機器200を利用することができる。たとえば、光電センサ1において、ある程度の期間、サンプリングを行った後に、サンプリングされた全ての受光量データを設定用機器200に送信し、さらに、設定用機器200からパーソナルコンピュータに、各受光量データを送信するようにしてもよい。
【0082】
つぎに、上記の設定用機器200によるグラフ表示は、しきい値との照合対象のデータの変化が複雑になる場合に、非常に有用なものとなる。具体的な事例を、図9および図10を用いて説明する。
【0083】
図9の実施例は、円盤状のカッター5の刃こぼれを検出するものである。この実施例では、図9(1)に示すように、透過型の光電センサの投光側のヘッド部20aと、受光側のヘッド部20bとを、カッター5の外縁部を挟んで対向する関係をもって配置し、両者の間に刃こぼれ部分が位置したときの受光量の増加を検出する。
なお、透過型の光電センサでも、外観や回路構成は図2〜4に示したものと同様であるので、以下、ヘッド部20a,20b以外の構成については、図2〜4と同じ符号を使用する。
【0084】
図9(2)の(a)は、上記のヘッド部20a,20bの配置により、光電センサ1の制御部に入力される受光量データの変化を示し、(b)は、(a)の太枠部分を対象にサンプリング処理を実行した後に、設定用機器200のモニタ201に表示されたグラフを示す。
【0085】
カッター5は高速で回転するため、従来は、その回転に伴う受光量の変化を検出するのが困難であったが、この実施例では、制御部100に入力される受光量データを一定の期間に限定してサンプリングした後に、図9(2)に示すように、サンプリングされた受光量データを用いて時間軸を引き延ばしたグラフを作成し、これを設定用機器200のモニタ201に表示する。
【0086】
このような表示によれば、ユーザは、受光量データの変化の状態を詳細に確認することができる。また、この実施例では、受光量データの通常のばらつきの範囲を特定して、その最小値HA1と最大値HA2とを表示しているので、ユーザは許容できる受光量の最大値HA2から逸脱しているデータを容易に見分けることができる。よって、HA2より高い値をしきい値として設定することにより、許容範囲内の受光量のばらつきが刃こぼれとして誤検出されたり、異常値に相当する受光量が許容値とみなされるのを防止することができる。
【0087】
図10の実施例は、透過型の光電センサ1を落下する検出対象物6を検出するもので、図10(1)に示すように、投光側のヘッド部21aと、受光側のヘッド部21bとが、検出対象物6が落下する経路を挟んで対向するように配置される。
【0088】
また、この実施例の光電センサ1の制御部100では、検出対象物6の落下に伴い受光量が高速で変化することから、図10(1)のグラフ(a)(b)に示すように、受光量信号から得た受光量を微分することにより、受光量の変化の傾きを検出し、この検出値が負のしきい値Hbと比較する。そして受光量の変化の傾きがしきい値Hbを下回る状態になる間に、検出信号をオンに設定する。
【0089】
さらに、この実施例では、受光量データに代えて、上記の微分演算の結果(b)をメモリに蓄積して、蓄積されたデータを対象にしたサンプリング処理を実行し、取得したサンプリングデータを、設定用機器200のモニタ201に、時間軸を引き延ばしたグラフとして表示する。図10(2)のグラフ(c)は、この表示例を示す。
【0090】
図10(2)のグラフ(b)(c)に示すように、検出対象物の落下に伴う受光量データの微分値は複雑な変化を示し、しかもその変化の速度が速いため、従来は、安定した検出に適したしきい値を設定するのが困難であった。図10(2)のグラフ(c)のように、時間軸を引き延ばしたグラフを表示することにより、ユーザは、しきい値と照合されるデータの具体的なパターンを認識し、しきい値の適正値を容易に決定することができる。
【符号の説明】
【0091】
W ワーク
1 光電センサ2
12A,12B ディジタル表示器
14 UPスイッチ
15 DOWNスイッチ
100 制御部
101 表示部
102 操作部
103 投光部
104 受光部
131 LED
132 LED駆動回路
141 フォトダイオード(PD)
142 受光量信号処理回路
200 外部用機器
201 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物の有無を検出する光電センサであって、
光を出射する投光部と、
前記投光部から投光された光を受光して、その受光量を示す受光量データを生成する受光部と、
前記検出対象物が検出されたことを示す検出信号を出力するための出力部と、
前記受光部により生成された受光量データを入力して当該受光量データを対象にした計測処理を実行し、この処理により得た計測データをあらかじめ設定されたしきい値により照合して検出対象物の有無を判別し、その判別結果に応じて前記検出信号のオン/オフを切り替える信号処理部とを具備し、
前記信号処理部は、
前記受光部より入力した受光量データ、または前記計測処理により取得した計測データを記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に格納された受光量データまたは計測データをサンプリングデータとして一定の間隔で読み出すサンプリング処理を、読み出しの対象となる期間を限定して実行するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により読み出されたサンプリングデータを、これらが記憶手段に格納された順序に対応づけて出力する出力手段とを、
具備することを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
前記サンプリングデータが示す値のディジタル表示が可能な表示部をさらに備え、
前記出力手段は、出力対象の各サンプリングデータを前記記憶手段から読み出された順序に従って前記表示部に順に表示する手段として構成される、光電センサ。
【請求項3】
請求項2に記載された光電センサにおいて、
前記出力手段は、出力対象の各サンプリングデータを、これらのデータが前記記憶手段に格納されるのに要した時間よりも長い時間をかけて前記表示部に順に表示するように構成される、光電センサ。
【請求項4】
請求項2に記載された光電センサにおいて、
処理内容を指示する操作を受け付ける操作部とをさらに備え、
前記出力手段は、最初の出力対象のサンプリングデータが示す値を前記表示部に表示し、以後、前記操作部が前記サンプリングデータの表示を次に進めることを指示する操作を受け付ける都度、前記記憶手段から次の出力対象のサンプリングデータを読み出すステップと、前記表示部の表示を読み出されたサンプリングデータの値を示すものに切り換えるステップとを実行する、光電センサ。
【請求項5】
前記操作部は、前記サンプリングデータの表示を次に進めることを指示する操作と、前記表示を前に戻すことを指示する操作とを受け付けることが可能に構成され、
前記出力手段は、表示部に2番目以降の出力対象のサンプリングデータの値が表示されている状態下において、前記操作部において当該表示を前に戻すことを指示する操作が行われたとき、表示されているサンプリングデータより一段階前のサンプリングデータの値により前記表示部の表示を更新する、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項6】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
グラフを表示することが可能な表示部をさらに備え、
前記出力手段は、前記記憶手段より複数のサンプリングデータを読み出し、これらのデータの値の時系列変化を示すグラフを前記表示部に表示する、光電センサ。
【請求項7】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
処理内容を指示する操作を受け付ける操作部をさらに備え、
前記出力手段は、グラフを表示する機能を有する外部機器との通信を行う手段として構成され、前記記憶手段より読み出された複数のサンプリングデータを、これらが記憶手段に格納された順序に対応づけて前記外部機器に出力する、光電センサ。
【請求項8】
前記出力手段は、前記記憶手段に格納されたデータを分析することにより、あらかじめ定めた条件を満たす信号変化が現れている期間を特定し、この期間に含まれるサンプリングデータを出力対象に設定する、請求項1〜7のいずれかに記載された光電センサ。
【請求項9】
光を出射する投光部と、投光部から投光された光を受光して、その受光量を示す受光量データを生成する受光部と、検出対象物が検出されたことを示す検出信号を出力するための出力部と、前記受光部により生成された受光量データを入力して当該受光量データを対象にした計測処理を実行し、この処理により得た計測データをあらかじめ設定されたしきい値により照合して検出対象物の有無を判別し、その判別結果に応じて前記検出信号のオン/オフを切り替える信号処理部とを具備する光電センサを対象として、当該光電センサによる検知動作を確認する作業を支援する方法であって、
前記光電センサの検知領域に対して検出対象物が動いている状態下で光電センサを動作させながら、当該光電センサの前記信号処理部において、前記受光部より入力した受光量データまたは前記計測処理により取得した計測データをメモリに格納するステップと、前記メモリに格納された受光量データまたは計測データをサンプリングデータとして一定の間隔で読み出すサンプリング処理を、読み出しの対象となる期間を限定して実行するステップとを実行し、
前記光電センサに一体に設けられた表示部または光電センサの外部に設けられた表示装置において、前記メモリから読み出された各サンプリングデータが示す値を、これらがメモリに格納された順序に対応づけて表示するステップを実行する、
光電センサの動作確認作業の支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−185679(P2011−185679A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49720(P2010−49720)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】