光電変換素子
【課題】袋状のシート体に作用極及び対極を収容した光電変換素子において、作用極及び対極から延在する端子と袋状シート体との間の接着性を向上させる。
【解決手段】作用極11と電気的に接続された金属からなる端子1、及び対極15と電気的に接続された金属からなる端子15aとが袋状のシート体2の内部から外部へ延在する部分において、端子を挟んで袋状のシート体を封止する部位が、端子から外方に向かって、端子に接して、熱融着性樹脂からなる層4と、金属膜又は酸化膜3と、シート体とを順に重ねてなる封止構造を有する光電変換素子を提供する。
【解決手段】作用極11と電気的に接続された金属からなる端子1、及び対極15と電気的に接続された金属からなる端子15aとが袋状のシート体2の内部から外部へ延在する部分において、端子を挟んで袋状のシート体を封止する部位が、端子から外方に向かって、端子に接して、熱融着性樹脂からなる層4と、金属膜又は酸化膜3と、シート体とを順に重ねてなる封止構造を有する光電変換素子を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池等に用いる光電変換素子に係り、特に、作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子において、電解液の漏出を防止する集電用端子の封止構造を有する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子デバイスに対しては、軽さ、薄さ、柔軟性などが求められており、これらの要求を満たし、かつ、これら電子デバイスの性能劣化を防止するために、樹脂製の外装体を用いたキャパシタや太陽電池の開発が盛んに行われている。樹脂製の外装体を用いた電子デバイスにおいても、外装体の内部から外部へ集電用端子を延在させることが多いが、外装体を密封する必要がある場合等、樹脂製の外装体と集電用端子とを接着させる必要がある。集電用端子を樹脂製の外装体を接着する際に、これらの接着性を向上させるための技術として、特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1には、金属との接着性が良好な樹脂材料を集電用端子の表面に設けることによって、集電用端子と樹脂製の外装体との接着性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、外装体として樹脂フィルムを用いた場合の封止方法として、熱可塑性の合成樹脂フィルムなどで集電用端子を被覆する方法が開示されている。特許文献3には、集電用端子と樹脂フィルムとの間に、樹脂被膜を配置する方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献4には、ラミネートフィルムを用いて封止を行う際、集電用端子とラミネートフィルムとの接着性を向上させることを目的とした金属接着性樹脂層に加えて、ラミネートフィルムの金属層と集電用端子との短絡防止を目的として、耐熱性樹脂層を設け、2種類の樹脂を用いて封止する技術が開示されている。
その他、特許文献5には、集電用端子の封止方法として、アルミニウム電極表面の酸化膜を剥離させてから水和被膜を形成する処理を行い、極性基を有するアイオノマー樹脂との接着を向上させて熱融着防止する方法が開示されている。
【0005】
以上、列挙したように、電子デバイスの外装体として樹脂製のフィルムを使用する場合、金属製である集電用端子と樹脂製のフィルムとを接着をする際は、熱可塑性の合成樹脂フィルムなどの熱融着性樹脂を集電用端子とフィルムとの間に介在させることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−004506号公報
【特許文献2】特開平11−087195号公報
【特許文献3】特開平11−121043号公報
【特許文献4】特開2007−242548号公報
【特許文献5】特開2001−256957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽電池などの光電変換デバイスは、光をデバイス内部へ取り込まなくてはならいため、透明性の高い樹脂フィルムを外装に用いる必要があり、金属膜を挟み込んだラミネートフィルムを使用することができない。
透明性が高く、耐久性に優れた樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などがある。これらの樹脂は、極性基を持たない非極性樹脂であるため、金属との融着性が低く、金属製の集電用端子を直接封止できない。よって、上記従来技術において用いられた手法を用いて、金属やガラスに対して接着性のある熱融着性樹脂などを、樹脂フィルムと集電用端子との間に介在させる必要がある。
【0008】
一般に、金属やガラスに対して接着性が優れる熱融着性樹脂には、極性基を有する樹脂や極性基を導入した変性樹脂(極性樹脂)がある。しかしながら、このような金属やガラスに対して接着性が優れる樹脂は、極性基を持たないPET樹脂やPEN樹脂などに対しては接着性が乏しい。
つまり、非極性のPET樹脂を外装体に用いる必要がある太陽電池のような電子デバイスでは、先述の極性基を有する樹脂を介在させて金属製の集電用端子を封止しても、端子封止部において内容物の浸透や外部からの異物の進入を防ぐことが難しい。
【0009】
図11は、袋状にしたラミネートフィルム102内に、電子デバイス111を封入し、集電用端子101を外装体の外に延在させた従来の構造の断面図である。ラミネートフィルム102と集電用端子101との間には、熱融着性樹脂4が介在しており、この熱融着性樹脂4によって、ラミネートフィルム102と集電用端子101とを接着している。
しかし、この構成において、符号102のフィルムをPET樹脂からなるフィルムとした場合、PET樹脂からなるフィルム102と熱融着性樹脂4との間の接着性が低くなる。これは上記したように、PET樹脂が極性基を有さない非極性樹脂であるため、熱融着性樹脂との接着性が低いからである。特に、色素増感太陽電池のように、外装体の内部に電解液19を封入する場合、電解液がない場合と比較して、強度が10分の1以下になることがわかった。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、透明性の高い樹脂フィルムを外装体として用いる電子デバイスの集電用端子の封止構造において、より強度の高い封止をなし得る封止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る光電変換素子は、作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子であって、前記作用極と電気的に接続された金属からなる端子、及び前記対極と電気的に接続された金属からなる端子とが前記袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、前記端子を挟んで前記袋状のシート体を封止する部位が、前記端子から外方に向かって、前記端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、前記シート体とを順に重ねてなる封止構造を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に係る光電変換素子は、請求項1に記載の光電変換素子において、前記シート体が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る光電変換素子は、請求項1又は2に記載の光電変換素子において、前記熱融着性樹脂が、極性基を有する樹脂、又は極性基を導入した変性樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光電変換素子は、金属からなる端子が袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、端子を挟んで袋状のシート体を封止する部位が、端子から外方に向かって、端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、シート体とを順に重ねてなる構造とした。この構造は、シート体がPET樹脂やPEN樹脂などの非極性樹脂であっても、シート体と端子との間に介在する層と膜のそれぞれの界面において極性が合う構造であるため、シート体と端子との接着性が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光電変換素子の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う本発明の封止構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るシート体に金属膜層および熱融着性樹脂層の形成方法を示す概略図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る集電用端子を熱融着性樹脂で被覆する方法を示す概略図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図9】本発明に係る光電変換素子の別の実施形態を示す平面図である。
【図10】図10のC−C線に沿う概略断面図である。
【図11】従来の封止構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る光電変換素子の外観を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図であり、本発明の実施の形態の詳細を示している。
図1及び図2に示すように、本発明の光電変換素子10は、作用極11と、対極15と、これらの間に配置されたセパレータ18とを2枚のシート体2を袋状にしたものに収容した構成となっている。シート体2は封入した作用極等よりやや大きい矩形をなしており、その四辺において接着され、作用極11、対極15、及びセパレータ18等を封入している。
【0015】
作用極11は、基板12と、対極15と対向する面に形成された増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層14から構成されている。基板12としては光透過性の板材が用いられ、基板12の多孔質酸化物半導体層14と接する面には導電性を持たせるために透明導電膜13が配置されている。
対極15は板状の導電性基板16と作用極11と対向する面に形成された触媒膜17とから構成されている。触媒膜17は、導電性基板16に触媒の機能を持たせるために、Ptより形成されている。
袋状のシート体2内部では、多孔質酸化物半導体層14と触媒膜17とが対向するように作用極11と対極15とが配置され、これらの間にセパレータ18が挿入されている。
【0016】
作用極11を構成する基板12としては、光透過性の素材からなる基板が用いられ、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなど、通常、太陽電池の透明基板として用いられるものであればいかなるものもでも用いることができる。基板12は、これらの中から電解液19への耐性などを考慮して適宜選択されるが、用途上、できる限り光透過性に優れる基板が好ましい。
【0017】
透明導電膜13は、基板12に導電性を付与するための金属、炭素、導電性金属酸化物などからなる薄膜である。透明導電膜13として金属薄膜や炭素薄膜を形成する場合、基板12の透明性を著しく損なわない構造とする。透明導電膜13を形成する導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム−スズ酸化物(Indium−Tin Oxide、ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープの酸化スズなどが用いられる。
【0018】
多孔質酸化物半導体層14は、透明導電膜13の上に設けられており、その表面には増感色素が担持されている。多孔質酸化物半導体層14を形成する半導体としては特に限定されず、通常、太陽電池用の多孔質半導体を形成するのに用いられるものであればいかなるものでも用いることができる。このような半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)などを用いることができる。
多孔質酸化物半導体層14を形成する方法としては、例えば、ゾルゲル法からの膜形成、微粒子の泳動電着、発泡剤による多孔質化、ポリマービーズなどとの混合物塗布後における余剰成分の除去などの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
増感色素としては、例えば、N719、N3、ブラックダイなどのルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体をはじめ、エオシン、ローダミン、メロシアニン等の有機色素などを適用することができ、これらの中から用途、使用半導体に適した励起挙動をとるものを適宜選択すれば良い。
【0020】
電解液19としては、ヨウ素、ヨウ化物イオン、ターシャリーブチルピリジンなどの電解質成分が、エチレンカーボネートやメトキシアセトニトリルなどの有機溶媒やイオン液体に溶解されてなるものが用いられる。
【0021】
対極15を構成する導電性基板16は、導電性を有する板状をなし、本実施形態においてはTi板から構成されるが、導電性を有し、電解液19への耐性を有するものであればこれに限定されることはない。
触媒膜17は、導電性基板16に触媒の機能を持たせるために形成された白金などの金属、炭素などからなる薄膜である。触媒膜17としては、例えば炭素や白金などの層を、蒸着、スパッタ、塩化白金酸塗布後に熱処理を行ったものが好適に用いられるが、電極として機能するものであれば特に限定されるものではない。
【0022】
作用極11と対極15との間には、作用極11と対極15との短絡を防止するために、非導電性の材料からなるセパレータ18が挿入されている。セパレータ18の材質は、ポリエチレンなどのポリオレフィンであるが、電解液に耐え、作用極11と対極15とを絶縁可能であれば、これらに限定はされない。
【0023】
さらに、作用極11、対極15、およびセパレータ18は、PET樹脂で形成されたシート体2に挟まれる構成となっており、シート体2の四辺は熱圧着(ヒートシール)によって圧着されている。これにより袋状のシート体2の内部に電解質19を封止している。
シート体2としては、PET樹脂に限ることはなく、透明性を有した樹脂であれば適宜使用可能であるが、前記PET樹脂及びPEN樹脂を含むポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0024】
集電のため、作用極11と電気的に接続された端子1、及び対極15用の端子15aが、封止部Sから袋状のシート体2外部へ延在している。端子1はTi箔により形成されているが、導電性を有し、電解液19への耐性を有するものであればこれに限定されることはない。対極15用の端子15aは、対極15を構成する導電性基板16の一部分からなるものである。
【0025】
次に、封止部について説明する。
封止部Sにおいては、作用極11と接続されている端子1、及び対極15の端子15aがシート体2によって挟まれている。端子1,15aの一部分であって、封止部Sを構成する部分(図2及び図3において符号Sで示す)には、熱融着性樹脂4が貼り付けられており、熱融着性樹脂からなる層を形成している。一方、シート体2の一部分であって、封止部Sを構成する部分、つまり端子1,15aと接触する面には、金属膜3が形成されている。
よって、封止部Sは、端子1,15aから、離れる方向に順に、端子1,15a、熱融着性樹脂からなるフィルム4、金属膜3、シート体2が重ねられた構成となっている。
【0026】
熱融着性樹脂4としては、極性基を有する樹脂や、極性基を導入した変性樹脂のフィルム、例えば、EMAAやアイオノマーなどの分子鎖中に極性基を有するエチレン系共重合体や、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの酸変性物などを使用することができる。具体的には、ハイミラン、ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、バイネル(デュポン社製)、アドテックス(日本ポリエチレン社製)、プリマコール(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
金属膜3を構成する金属としてはTiが好ましいが、組成としては、集電用端子を構成する金属と同一の組成か、または電解液に対する耐食性が同程度の金属であることが好ましい。また、金属膜3の厚さは20nm程度が好ましい。
【0027】
なお、シート体2に形成される膜としては、金属膜のみならず、ガラス(酸化ケイ素)膜であってもよい。ガラス膜としては、緻密なもの、不純物を含まないものが、好ましいが、電解液に対する耐食性を有し、熱融着性樹脂との接着性に優れるものであればこれに限ることはない。
また、シート体2に形成される膜は、酸化金属膜であってもよい。酸化金属膜としては、酸化アルミニウム、酸化チタンなどを採用することができる。なお、前記ガラス膜(酸化ケイ素膜)及び酸化金属膜は、酸化物を含む膜であることから、酸化膜と定義することができる。
【0028】
シート体2における端子1,15aに面する側の封止部Sに金属膜3を形成したことによって、熱融着性樹脂からなる層4とシート体2との接着性が向上する。熱融着性樹脂からなる層4と集電用端子1との接着性は元来高いことから、結果的に、封止部における集電用端子1とシート体2の接着性が向上し、電解液19などの漏出の少ない封止構造となる。
【0029】
次に、図3を参照して、封止部Sの形成方法について説明する。
(1)端子1,15aに、熱融着性樹脂からなるフィルム4を貼り付ける。ここで、熱融着性樹脂からなるフィルム4の幅(図3の左右方向)は、端子1,15aの幅よりも僅かに広くする。
(2)シート体2の封止部Sを構成する部分に、金属膜3を形成する。金属膜3は、スパッタリング法を用いて形成する。
シート体2を真空中に設置し、7×10−3Torrのアルゴン雰囲気下で、1分間エッチング(逆スパッタリング)を行い、シート体表面の洗浄を行い、その後、同じ雰囲気下でTiを3分間スパッタリングし、20nm相当の被膜を形成させる。金属膜3の幅(図3の左右方向)は、熱融着性樹脂4の幅の1.5倍程度とする。
(3)ヒートシーラーを用いて、上下方向より熱融着封止をすることによって、本願の封止構造が完成する(図3(b))。
【0030】
なお、シート体2に形成する金属膜3の代替として、ガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を蒸着してもよい。蒸着方法としては、抵抗加熱、又は電子線加熱による真空蒸着法が好ましい。
また、スパッタリング、またはイオンプレーティングによる蒸着方法によっても、同様の結果を得ることができる。
【0031】
このように、PET樹脂からなるシート体2に金属膜3を形成する構造としたことにより、シート体2と熱融着性樹脂からなるフィルム4との接着性が向上した。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(ピール強度0.2N/cm)と比較して強度が向上した。なお、ピール試験を行った際、剥離は、端子1,15aと熱融着性樹脂からなるフィルム4との間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照して、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成の断面構成を有する封止構造であるが、第1の実施の形態と比較して、製造方法が異なる。以下、その製造方法について説明する。
第2の実施の形態は、端子1,15aの周囲に、PET樹脂の被膜2aを形成することにより、PET樹脂からなる外装シート体2との熱融着性を高めた製造方法である。
【0033】
以下、第2の実施の形態に係る封止構造の製造方法について説明する。
(1)シート体として用いたPET樹脂などの非極性樹脂と同じ組成のシート体2aを別に用意し、シート体2aの表面に金属膜3aを形成する(図4(a))。
(2)端子1,15aと上記シート体2aとの間に、熱融着性樹脂からなるフィルム4aを挟んで、ヒートシーラーを用いて熱融着被覆を行う(図4(b))。これにより、外装フィルムとしてのシート体2と同じ組成のシート体2aで被覆された集電用端子1aが完成する。
(3)端子1,15aをシート体2の間に挟んで(図4(c))、シートシーラーを用いて熱融着封止を行った(図4(d))。
【0034】
上記の構成は、同じ組成のシート体同士の熱融着性が優れているため、封止の信頼性が向上する結果となった。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(0.2N/cm)と比較して強度がアップした。なお、ピール試験を行った際、剥離は、集電用端子1と熱融着性樹脂からなるフィルム4との間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0035】
(第3の実施の形態)
次に、図5、図6、及び図7を参照して、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成の断面構成を有する封止構造であるが、第1の実施の形態と比較して、製造方法が異なる。以下、その製造方法について説明する。
第3の実施の形態は、端子1,15a、および外装シート体2に対して、それぞれ、熱融着性樹脂の層を設け、これらの層同士を熱融着させる製造方法である。
【0036】
以下、第3の実施の形態に係る封止構造の製造方法について説明する。
(1)シート体として用いたPET樹脂などの非極性樹脂と同じ組成のシート体片2bを別に用意し、シート体片2bの表面に金属膜3bを形成する(図5(a))
(2)シート体2と、上記シート体片2bとが向かい合うように、シート体2と上記シート体片2bとをヒートシーラーを用いて熱融着させる。さらに、上記シート体片2bと同じ寸法にカットした熱融着性樹脂からなるフィルム4bを、シート体片2bに形成された金属膜3b上にヒートシーラーを用いて熱融着し、熱融着性樹脂外装シート体2Bを作製した。
(3)端子1,15aを、熱融着性樹脂からなるフィルム4cで挟み(図6(a))、ヒートシーラーを用いて、端子1,15aを熱融着性樹脂からなるフィルム4cで被覆した端子1cを作製した(図6(b))。
(4)(2)で作製した熱融着性樹脂外装シート体2Bと、(3)で作製した端子1cとを位置合わせし(図7(a))、集電用端子1cの上下面とシート体2Bの熱融着性樹脂面とが合わさるように重ねる(図7(b))。最後に、ヒートシーラーでこれらを熱融着して一体とする。
【0037】
上記の構成は、熱融着性樹脂と同じ組成のフィルムで端子1,15aを被覆し、外装シート体2に対しても、同じ熱融着性樹脂からなる部位を設ける構成とした。同じ組成の熱融着性樹脂同士は熱融着性が優れているため、封止の信頼性が向上した。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(0.2N/cm)と比較して強度がアップした。なお、ピール試験を行った際、剥離は、集電用端子1と熱融着性樹脂からなるフィルム4cとの間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0038】
(第4の実施の形態)
矩形形状のシート体2の四辺に金属膜3dを形成し、この金属膜3dに対応する形状の熱融着性樹脂からなるフィルム4dを作製し、端子1,15aをヒートシールする構成である。第1の実施の形態が、金属膜を端子1,15aに当接する部位にのみ形成したことに対し、金属膜3dはシート体2の外形に沿って形成されている。スパッタリングによって金属膜を形成する方法などは、第1の実施の形態と同様である。
図8に図2のB−B線に沿う断面図を示す。図8(a)は、熱融着前の概略図であり、図8(b)は、熱融着後の概略図である。
図8(a)に示すように、金属膜3dは、端子1,15aの当接する部位のみならず、シート体2の辺に沿って形成されている。熱融着性樹脂からなるフィルム4dは、この金属膜3dに対応した形状となっている。
【0039】
上記のような構成を採用することによって、端子1,15aがどのような位置にあっても確実な封止を実現することができる。
【0040】
また、本発明は、メッシュ状(テキスタイル状)の作用極を採用した光電変換素子10a(図9参照)に採用することも可能である。メッシュ状の作用極とすることによって、よりフレキシブル性の高い光電変換素子の製造が可能となる。
図9は光電変換素子10aの平面図であり、図10は図9のC−C線に沿う断面図である。
この光電変換素子は、導電性を有する線状の基材20a、20bが網状に編みこまれることでメッシュ状の作用極20を形成している。作用極20、対極21、及びセパレータ18aと重ねられた状態で、2枚のシート体2aを袋状にしたものに電解液19とともに封入されている。
【0041】
作用極20を構成する基材20a、又は20bのうち少なくとも1本と接続された端子1a、及び対極21の一部からなる端子21aは、袋状のシート体2aの外に延在している。これら端子1a,21aの封止部分Rには、熱融着性樹脂4が貼り付けられており熱融着性樹脂からなる層を形成している。一方シート体2aにおける端子1a、21aに面する側の封止領域Rには、金属膜3が形成されている。
この形態においても、金属膜3の代替として、ガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を用いることができるのは言うまでもない。
また、第2実施形態〜第4実施形態の封止形態を採用することも勿論可能である。
【0042】
なお、PET樹脂に金属膜、またはガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を蒸着する代わりに、シリカ膜がコーティングされているPET樹脂フィルム(例えばテックバリア(登録商標)、三菱樹脂製)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…端子、2…シート体、3…金属膜、4…熱融着性樹脂からなる層、10…光電変換素子、11…作用極、12…基板、13…透明導電膜、14…多孔質酸化物半導体層、15…対極、16…導電性基板、17…触媒膜、18…セパレータ、19…電解液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池等に用いる光電変換素子に係り、特に、作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子において、電解液の漏出を防止する集電用端子の封止構造を有する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子デバイスに対しては、軽さ、薄さ、柔軟性などが求められており、これらの要求を満たし、かつ、これら電子デバイスの性能劣化を防止するために、樹脂製の外装体を用いたキャパシタや太陽電池の開発が盛んに行われている。樹脂製の外装体を用いた電子デバイスにおいても、外装体の内部から外部へ集電用端子を延在させることが多いが、外装体を密封する必要がある場合等、樹脂製の外装体と集電用端子とを接着させる必要がある。集電用端子を樹脂製の外装体を接着する際に、これらの接着性を向上させるための技術として、特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1には、金属との接着性が良好な樹脂材料を集電用端子の表面に設けることによって、集電用端子と樹脂製の外装体との接着性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、外装体として樹脂フィルムを用いた場合の封止方法として、熱可塑性の合成樹脂フィルムなどで集電用端子を被覆する方法が開示されている。特許文献3には、集電用端子と樹脂フィルムとの間に、樹脂被膜を配置する方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献4には、ラミネートフィルムを用いて封止を行う際、集電用端子とラミネートフィルムとの接着性を向上させることを目的とした金属接着性樹脂層に加えて、ラミネートフィルムの金属層と集電用端子との短絡防止を目的として、耐熱性樹脂層を設け、2種類の樹脂を用いて封止する技術が開示されている。
その他、特許文献5には、集電用端子の封止方法として、アルミニウム電極表面の酸化膜を剥離させてから水和被膜を形成する処理を行い、極性基を有するアイオノマー樹脂との接着を向上させて熱融着防止する方法が開示されている。
【0005】
以上、列挙したように、電子デバイスの外装体として樹脂製のフィルムを使用する場合、金属製である集電用端子と樹脂製のフィルムとを接着をする際は、熱可塑性の合成樹脂フィルムなどの熱融着性樹脂を集電用端子とフィルムとの間に介在させることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−004506号公報
【特許文献2】特開平11−087195号公報
【特許文献3】特開平11−121043号公報
【特許文献4】特開2007−242548号公報
【特許文献5】特開2001−256957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽電池などの光電変換デバイスは、光をデバイス内部へ取り込まなくてはならいため、透明性の高い樹脂フィルムを外装に用いる必要があり、金属膜を挟み込んだラミネートフィルムを使用することができない。
透明性が高く、耐久性に優れた樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などがある。これらの樹脂は、極性基を持たない非極性樹脂であるため、金属との融着性が低く、金属製の集電用端子を直接封止できない。よって、上記従来技術において用いられた手法を用いて、金属やガラスに対して接着性のある熱融着性樹脂などを、樹脂フィルムと集電用端子との間に介在させる必要がある。
【0008】
一般に、金属やガラスに対して接着性が優れる熱融着性樹脂には、極性基を有する樹脂や極性基を導入した変性樹脂(極性樹脂)がある。しかしながら、このような金属やガラスに対して接着性が優れる樹脂は、極性基を持たないPET樹脂やPEN樹脂などに対しては接着性が乏しい。
つまり、非極性のPET樹脂を外装体に用いる必要がある太陽電池のような電子デバイスでは、先述の極性基を有する樹脂を介在させて金属製の集電用端子を封止しても、端子封止部において内容物の浸透や外部からの異物の進入を防ぐことが難しい。
【0009】
図11は、袋状にしたラミネートフィルム102内に、電子デバイス111を封入し、集電用端子101を外装体の外に延在させた従来の構造の断面図である。ラミネートフィルム102と集電用端子101との間には、熱融着性樹脂4が介在しており、この熱融着性樹脂4によって、ラミネートフィルム102と集電用端子101とを接着している。
しかし、この構成において、符号102のフィルムをPET樹脂からなるフィルムとした場合、PET樹脂からなるフィルム102と熱融着性樹脂4との間の接着性が低くなる。これは上記したように、PET樹脂が極性基を有さない非極性樹脂であるため、熱融着性樹脂との接着性が低いからである。特に、色素増感太陽電池のように、外装体の内部に電解液19を封入する場合、電解液がない場合と比較して、強度が10分の1以下になることがわかった。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、透明性の高い樹脂フィルムを外装体として用いる電子デバイスの集電用端子の封止構造において、より強度の高い封止をなし得る封止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る光電変換素子は、作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子であって、前記作用極と電気的に接続された金属からなる端子、及び前記対極と電気的に接続された金属からなる端子とが前記袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、前記端子を挟んで前記袋状のシート体を封止する部位が、前記端子から外方に向かって、前記端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、前記シート体とを順に重ねてなる封止構造を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に係る光電変換素子は、請求項1に記載の光電変換素子において、前記シート体が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る光電変換素子は、請求項1又は2に記載の光電変換素子において、前記熱融着性樹脂が、極性基を有する樹脂、又は極性基を導入した変性樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光電変換素子は、金属からなる端子が袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、端子を挟んで袋状のシート体を封止する部位が、端子から外方に向かって、端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、シート体とを順に重ねてなる構造とした。この構造は、シート体がPET樹脂やPEN樹脂などの非極性樹脂であっても、シート体と端子との間に介在する層と膜のそれぞれの界面において極性が合う構造であるため、シート体と端子との接着性が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光電変換素子の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う本発明の封止構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るシート体に金属膜層および熱融着性樹脂層の形成方法を示す概略図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る集電用端子を熱融着性樹脂で被覆する方法を示す概略図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す概略図である。
【図9】本発明に係る光電変換素子の別の実施形態を示す平面図である。
【図10】図10のC−C線に沿う概略断面図である。
【図11】従来の封止構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る光電変換素子の外観を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図であり、本発明の実施の形態の詳細を示している。
図1及び図2に示すように、本発明の光電変換素子10は、作用極11と、対極15と、これらの間に配置されたセパレータ18とを2枚のシート体2を袋状にしたものに収容した構成となっている。シート体2は封入した作用極等よりやや大きい矩形をなしており、その四辺において接着され、作用極11、対極15、及びセパレータ18等を封入している。
【0015】
作用極11は、基板12と、対極15と対向する面に形成された増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層14から構成されている。基板12としては光透過性の板材が用いられ、基板12の多孔質酸化物半導体層14と接する面には導電性を持たせるために透明導電膜13が配置されている。
対極15は板状の導電性基板16と作用極11と対向する面に形成された触媒膜17とから構成されている。触媒膜17は、導電性基板16に触媒の機能を持たせるために、Ptより形成されている。
袋状のシート体2内部では、多孔質酸化物半導体層14と触媒膜17とが対向するように作用極11と対極15とが配置され、これらの間にセパレータ18が挿入されている。
【0016】
作用極11を構成する基板12としては、光透過性の素材からなる基板が用いられ、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなど、通常、太陽電池の透明基板として用いられるものであればいかなるものもでも用いることができる。基板12は、これらの中から電解液19への耐性などを考慮して適宜選択されるが、用途上、できる限り光透過性に優れる基板が好ましい。
【0017】
透明導電膜13は、基板12に導電性を付与するための金属、炭素、導電性金属酸化物などからなる薄膜である。透明導電膜13として金属薄膜や炭素薄膜を形成する場合、基板12の透明性を著しく損なわない構造とする。透明導電膜13を形成する導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム−スズ酸化物(Indium−Tin Oxide、ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープの酸化スズなどが用いられる。
【0018】
多孔質酸化物半導体層14は、透明導電膜13の上に設けられており、その表面には増感色素が担持されている。多孔質酸化物半導体層14を形成する半導体としては特に限定されず、通常、太陽電池用の多孔質半導体を形成するのに用いられるものであればいかなるものでも用いることができる。このような半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)などを用いることができる。
多孔質酸化物半導体層14を形成する方法としては、例えば、ゾルゲル法からの膜形成、微粒子の泳動電着、発泡剤による多孔質化、ポリマービーズなどとの混合物塗布後における余剰成分の除去などの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
増感色素としては、例えば、N719、N3、ブラックダイなどのルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体をはじめ、エオシン、ローダミン、メロシアニン等の有機色素などを適用することができ、これらの中から用途、使用半導体に適した励起挙動をとるものを適宜選択すれば良い。
【0020】
電解液19としては、ヨウ素、ヨウ化物イオン、ターシャリーブチルピリジンなどの電解質成分が、エチレンカーボネートやメトキシアセトニトリルなどの有機溶媒やイオン液体に溶解されてなるものが用いられる。
【0021】
対極15を構成する導電性基板16は、導電性を有する板状をなし、本実施形態においてはTi板から構成されるが、導電性を有し、電解液19への耐性を有するものであればこれに限定されることはない。
触媒膜17は、導電性基板16に触媒の機能を持たせるために形成された白金などの金属、炭素などからなる薄膜である。触媒膜17としては、例えば炭素や白金などの層を、蒸着、スパッタ、塩化白金酸塗布後に熱処理を行ったものが好適に用いられるが、電極として機能するものであれば特に限定されるものではない。
【0022】
作用極11と対極15との間には、作用極11と対極15との短絡を防止するために、非導電性の材料からなるセパレータ18が挿入されている。セパレータ18の材質は、ポリエチレンなどのポリオレフィンであるが、電解液に耐え、作用極11と対極15とを絶縁可能であれば、これらに限定はされない。
【0023】
さらに、作用極11、対極15、およびセパレータ18は、PET樹脂で形成されたシート体2に挟まれる構成となっており、シート体2の四辺は熱圧着(ヒートシール)によって圧着されている。これにより袋状のシート体2の内部に電解質19を封止している。
シート体2としては、PET樹脂に限ることはなく、透明性を有した樹脂であれば適宜使用可能であるが、前記PET樹脂及びPEN樹脂を含むポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0024】
集電のため、作用極11と電気的に接続された端子1、及び対極15用の端子15aが、封止部Sから袋状のシート体2外部へ延在している。端子1はTi箔により形成されているが、導電性を有し、電解液19への耐性を有するものであればこれに限定されることはない。対極15用の端子15aは、対極15を構成する導電性基板16の一部分からなるものである。
【0025】
次に、封止部について説明する。
封止部Sにおいては、作用極11と接続されている端子1、及び対極15の端子15aがシート体2によって挟まれている。端子1,15aの一部分であって、封止部Sを構成する部分(図2及び図3において符号Sで示す)には、熱融着性樹脂4が貼り付けられており、熱融着性樹脂からなる層を形成している。一方、シート体2の一部分であって、封止部Sを構成する部分、つまり端子1,15aと接触する面には、金属膜3が形成されている。
よって、封止部Sは、端子1,15aから、離れる方向に順に、端子1,15a、熱融着性樹脂からなるフィルム4、金属膜3、シート体2が重ねられた構成となっている。
【0026】
熱融着性樹脂4としては、極性基を有する樹脂や、極性基を導入した変性樹脂のフィルム、例えば、EMAAやアイオノマーなどの分子鎖中に極性基を有するエチレン系共重合体や、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの酸変性物などを使用することができる。具体的には、ハイミラン、ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、バイネル(デュポン社製)、アドテックス(日本ポリエチレン社製)、プリマコール(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
金属膜3を構成する金属としてはTiが好ましいが、組成としては、集電用端子を構成する金属と同一の組成か、または電解液に対する耐食性が同程度の金属であることが好ましい。また、金属膜3の厚さは20nm程度が好ましい。
【0027】
なお、シート体2に形成される膜としては、金属膜のみならず、ガラス(酸化ケイ素)膜であってもよい。ガラス膜としては、緻密なもの、不純物を含まないものが、好ましいが、電解液に対する耐食性を有し、熱融着性樹脂との接着性に優れるものであればこれに限ることはない。
また、シート体2に形成される膜は、酸化金属膜であってもよい。酸化金属膜としては、酸化アルミニウム、酸化チタンなどを採用することができる。なお、前記ガラス膜(酸化ケイ素膜)及び酸化金属膜は、酸化物を含む膜であることから、酸化膜と定義することができる。
【0028】
シート体2における端子1,15aに面する側の封止部Sに金属膜3を形成したことによって、熱融着性樹脂からなる層4とシート体2との接着性が向上する。熱融着性樹脂からなる層4と集電用端子1との接着性は元来高いことから、結果的に、封止部における集電用端子1とシート体2の接着性が向上し、電解液19などの漏出の少ない封止構造となる。
【0029】
次に、図3を参照して、封止部Sの形成方法について説明する。
(1)端子1,15aに、熱融着性樹脂からなるフィルム4を貼り付ける。ここで、熱融着性樹脂からなるフィルム4の幅(図3の左右方向)は、端子1,15aの幅よりも僅かに広くする。
(2)シート体2の封止部Sを構成する部分に、金属膜3を形成する。金属膜3は、スパッタリング法を用いて形成する。
シート体2を真空中に設置し、7×10−3Torrのアルゴン雰囲気下で、1分間エッチング(逆スパッタリング)を行い、シート体表面の洗浄を行い、その後、同じ雰囲気下でTiを3分間スパッタリングし、20nm相当の被膜を形成させる。金属膜3の幅(図3の左右方向)は、熱融着性樹脂4の幅の1.5倍程度とする。
(3)ヒートシーラーを用いて、上下方向より熱融着封止をすることによって、本願の封止構造が完成する(図3(b))。
【0030】
なお、シート体2に形成する金属膜3の代替として、ガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を蒸着してもよい。蒸着方法としては、抵抗加熱、又は電子線加熱による真空蒸着法が好ましい。
また、スパッタリング、またはイオンプレーティングによる蒸着方法によっても、同様の結果を得ることができる。
【0031】
このように、PET樹脂からなるシート体2に金属膜3を形成する構造としたことにより、シート体2と熱融着性樹脂からなるフィルム4との接着性が向上した。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(ピール強度0.2N/cm)と比較して強度が向上した。なお、ピール試験を行った際、剥離は、端子1,15aと熱融着性樹脂からなるフィルム4との間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照して、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成の断面構成を有する封止構造であるが、第1の実施の形態と比較して、製造方法が異なる。以下、その製造方法について説明する。
第2の実施の形態は、端子1,15aの周囲に、PET樹脂の被膜2aを形成することにより、PET樹脂からなる外装シート体2との熱融着性を高めた製造方法である。
【0033】
以下、第2の実施の形態に係る封止構造の製造方法について説明する。
(1)シート体として用いたPET樹脂などの非極性樹脂と同じ組成のシート体2aを別に用意し、シート体2aの表面に金属膜3aを形成する(図4(a))。
(2)端子1,15aと上記シート体2aとの間に、熱融着性樹脂からなるフィルム4aを挟んで、ヒートシーラーを用いて熱融着被覆を行う(図4(b))。これにより、外装フィルムとしてのシート体2と同じ組成のシート体2aで被覆された集電用端子1aが完成する。
(3)端子1,15aをシート体2の間に挟んで(図4(c))、シートシーラーを用いて熱融着封止を行った(図4(d))。
【0034】
上記の構成は、同じ組成のシート体同士の熱融着性が優れているため、封止の信頼性が向上する結果となった。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(0.2N/cm)と比較して強度がアップした。なお、ピール試験を行った際、剥離は、集電用端子1と熱融着性樹脂からなるフィルム4との間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0035】
(第3の実施の形態)
次に、図5、図6、及び図7を参照して、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成の断面構成を有する封止構造であるが、第1の実施の形態と比較して、製造方法が異なる。以下、その製造方法について説明する。
第3の実施の形態は、端子1,15a、および外装シート体2に対して、それぞれ、熱融着性樹脂の層を設け、これらの層同士を熱融着させる製造方法である。
【0036】
以下、第3の実施の形態に係る封止構造の製造方法について説明する。
(1)シート体として用いたPET樹脂などの非極性樹脂と同じ組成のシート体片2bを別に用意し、シート体片2bの表面に金属膜3bを形成する(図5(a))
(2)シート体2と、上記シート体片2bとが向かい合うように、シート体2と上記シート体片2bとをヒートシーラーを用いて熱融着させる。さらに、上記シート体片2bと同じ寸法にカットした熱融着性樹脂からなるフィルム4bを、シート体片2bに形成された金属膜3b上にヒートシーラーを用いて熱融着し、熱融着性樹脂外装シート体2Bを作製した。
(3)端子1,15aを、熱融着性樹脂からなるフィルム4cで挟み(図6(a))、ヒートシーラーを用いて、端子1,15aを熱融着性樹脂からなるフィルム4cで被覆した端子1cを作製した(図6(b))。
(4)(2)で作製した熱融着性樹脂外装シート体2Bと、(3)で作製した端子1cとを位置合わせし(図7(a))、集電用端子1cの上下面とシート体2Bの熱融着性樹脂面とが合わさるように重ねる(図7(b))。最後に、ヒートシーラーでこれらを熱融着して一体とする。
【0037】
上記の構成は、熱融着性樹脂と同じ組成のフィルムで端子1,15aを被覆し、外装シート体2に対しても、同じ熱融着性樹脂からなる部位を設ける構成とした。同じ組成の熱融着性樹脂同士は熱融着性が優れているため、封止の信頼性が向上した。また、ピール強度は8N/cmとなり、シート体2に金属膜3を形成しない構成(0.2N/cm)と比較して強度がアップした。なお、ピール試験を行った際、剥離は、集電用端子1と熱融着性樹脂からなるフィルム4cとの間で発生した。
実際にPET樹脂からなるシート体を使用して、色素増感太陽電池を作製しても、電解液の漏れがなくなったことを確認することができた。
【0038】
(第4の実施の形態)
矩形形状のシート体2の四辺に金属膜3dを形成し、この金属膜3dに対応する形状の熱融着性樹脂からなるフィルム4dを作製し、端子1,15aをヒートシールする構成である。第1の実施の形態が、金属膜を端子1,15aに当接する部位にのみ形成したことに対し、金属膜3dはシート体2の外形に沿って形成されている。スパッタリングによって金属膜を形成する方法などは、第1の実施の形態と同様である。
図8に図2のB−B線に沿う断面図を示す。図8(a)は、熱融着前の概略図であり、図8(b)は、熱融着後の概略図である。
図8(a)に示すように、金属膜3dは、端子1,15aの当接する部位のみならず、シート体2の辺に沿って形成されている。熱融着性樹脂からなるフィルム4dは、この金属膜3dに対応した形状となっている。
【0039】
上記のような構成を採用することによって、端子1,15aがどのような位置にあっても確実な封止を実現することができる。
【0040】
また、本発明は、メッシュ状(テキスタイル状)の作用極を採用した光電変換素子10a(図9参照)に採用することも可能である。メッシュ状の作用極とすることによって、よりフレキシブル性の高い光電変換素子の製造が可能となる。
図9は光電変換素子10aの平面図であり、図10は図9のC−C線に沿う断面図である。
この光電変換素子は、導電性を有する線状の基材20a、20bが網状に編みこまれることでメッシュ状の作用極20を形成している。作用極20、対極21、及びセパレータ18aと重ねられた状態で、2枚のシート体2aを袋状にしたものに電解液19とともに封入されている。
【0041】
作用極20を構成する基材20a、又は20bのうち少なくとも1本と接続された端子1a、及び対極21の一部からなる端子21aは、袋状のシート体2aの外に延在している。これら端子1a,21aの封止部分Rには、熱融着性樹脂4が貼り付けられており熱融着性樹脂からなる層を形成している。一方シート体2aにおける端子1a、21aに面する側の封止領域Rには、金属膜3が形成されている。
この形態においても、金属膜3の代替として、ガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を用いることができるのは言うまでもない。
また、第2実施形態〜第4実施形態の封止形態を採用することも勿論可能である。
【0042】
なお、PET樹脂に金属膜、またはガラス膜、酸化金属膜などの酸化膜を蒸着する代わりに、シリカ膜がコーティングされているPET樹脂フィルム(例えばテックバリア(登録商標)、三菱樹脂製)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…端子、2…シート体、3…金属膜、4…熱融着性樹脂からなる層、10…光電変換素子、11…作用極、12…基板、13…透明導電膜、14…多孔質酸化物半導体層、15…対極、16…導電性基板、17…触媒膜、18…セパレータ、19…電解液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子であって、
前記作用極と電気的に接続された金属からなる端子、及び前記対極と電気的に接続された金属からなる端子とが前記袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、前記端子を挟んで前記袋状のシート体を封止する部位が、前記端子から外方に向かって、前記端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、前記シート体とを順に重ねてなる封止構造を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記シート体は、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記熱融着性樹脂は、極性基を有する樹脂、又は極性基を導入した変性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項1】
作用極と対極とが電解液とともに袋状のシート体に封入されてなる光電変換素子であって、
前記作用極と電気的に接続された金属からなる端子、及び前記対極と電気的に接続された金属からなる端子とが前記袋状のシート体の内部から外部へ延在する部分において、前記端子を挟んで前記袋状のシート体を封止する部位が、前記端子から外方に向かって、前記端子に接して、熱融着性樹脂からなる層と、金属膜又は酸化膜と、前記シート体とを順に重ねてなる封止構造を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記シート体は、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記熱融着性樹脂は、極性基を有する樹脂、又は極性基を導入した変性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−76727(P2011−76727A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223767(P2009−223767)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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