説明

光電変換装置、光電変換装置の製造方法および光電変換装置を用いた撮像システム

【課題】 ノイズを低減し、SN比を向上させた光電変換装置を提供する。
【解決手段】 半導体基板に配される第1導電型の第1の半導体領域と、その一部と光電変換素子を構成する第2導電型の第2の半導体領域と、光電変換素子で生成した電荷を第2導電型の第3の半導体領域へ転送するゲート電極とを有している。さらに、光電変換素子と隣接する素子とを電気的に分離する素子分離領域と、第2の半導体領域と素子分離領域を介して隣接する、その隣接する素子を構成する第2導電型の第4の半導体領域とを有し、ゲート電極へ電位を与えるための配線が素子分離領域上に配されている。ここで、第4の半導体領域と素子分離領域との間に、第4の半導体領域の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する第2導電型の第5の半導体領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関するものであり、光電変換装置の製造方法および光電変換装置を用いた撮像システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ、及びイメージリーダーといった画像入力装置や、それらに用いられる焦点検出装置などには、光電変換素子を含む複数の画素を1次元もしくは2次元に配列させた光電変換装置が用いられている。この光電変換装置には、例えば、CCD型、バイポーラトランジスタ型、電界効果トランジスタ型及びCMOS型等と呼ばれるものがある。これらの光電変換装置は多画素化の傾向にあり、画素面積の縮小に伴って光電変換素子の面積も減少する傾向にある。従って、より小さな電荷を扱う必要が生じ、また、ノイズをより小さくする必要が生じている。
【0003】
CMOS型の光電変換装置におけるノイズについては、特許文献1および特許文献2に開示がある。特許文献1では、CMOS型光電変換装置のチャネルストップ領域の少数キャリアが増加し生じるノイズについて開示されている。また、特許文献2では、チャネルストップ領域の多数キャリアが増加し生じるノイズについて開示されている。
【0004】
多数キャリアが増加し生じるノイズを、具体的に説明する。チャネルストップ領域が形成された素子分離領域上に配される転送用のMOSトランジスタのゲート電極により、そのチャネルストップ領域の多数キャリアが増加する。これにより、チャネルストップ領域と転送用のMOSトランジスタに隣接するFD領域との間に、大きな電界が生じてリーク電流が発生し生じるノイズである。ここで、特許文献2においては、チャネルストップ領域とFD領域との配置にてノイズの低減を図っている。
【0005】
また、一般半導体装置においては、素子分離領域を有する構造における耐圧を確保するためのMOSトランジスタの構造が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−258229号公報
【特許文献2】特開2005−142503号公報
【特許文献3】特開2001−230409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、更なる多画素化による画素面積の縮小に伴って、素子同士が近接した場合において、次のようなノイズが生じる場合がある。光電変換素子に隣接した素子と光電変換素子との間には電気的に分離するための素子分離領域が配されている。その間隔は、微細化によってより近接する傾向にある。ここで、素子分離領域上に転送用トランジスタのゲート電極、もしくはその配線が配される際、素子分離領域の下部の半導体領域において、多数キャリアが増加し、その実効的な濃度が高まる場合がある。このとき、光電変換素子に隣接する素子を構成する半導体領域と、実効的な濃度が高まった前記半導体領域と逆導電型の半導体領域との間において、大きな電界が生じ、リーク電流が生じてしまう。そして、このリーク電流が光電変換素子やFD領域に流入し、SN比の劣化が生じてしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明においては、上述の課題を鑑みて、素子分離領域において生じるリーク電流を低減し、SN比が向上した光電変換装置および撮像システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、第1導電型の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域の一部と光電変換素子を構成する第2導電型の第2の半導体領域と、前記光電変換素子で生成した電荷を第2導電型の第3の半導体領域へ転送するゲート電極と、前記光電変換素子に隣接する素子と前記光電変換素子とを電気的に分離するための素子分離領域と、前記第2の半導体領域と前記素子分離領域を介して隣接する、前記素子を構成する第2導電型の第4の半導体領域と、前記素子分離領域上に配される、前記ゲート電極へ電位を与えるための配線と、を有する光電変換装置において、前記第4の半導体領域と前記素子分離領域との間に、前記第4の半導体領域の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する第2導電型の第5の半導体領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
素子分離領域でのリーク電流が低減されることにより、SN比が向上した光電変換装置および撮像システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光電変換装置は、光電変換素子に素子分離領域を介して隣接する半導体領域(トランジスタのソースもしくはドレイン領域)の構造に特徴がある。この素子分離領域上には、転送トランジスタのゲート電極につながる配線が配されている。このような構造において、この半導体領域の素子分離領域側に低濃度の半導体領域を有していることを特徴としている。
【0011】
本発明の構成によれば、素子分離領域下部の第1導電型の半導体領域と、光電変換素子に隣接する第2導電型の半導体領域との電界を緩和することが可能となるため、リーク電流を低減することが可能となる。よって、ノイズが低減し、SN比が向上した光電変換装置を提供することが可能となる。
【0012】
本発明の光電変換装置の製造方法は、光電変換素子に素子分離領域を介して隣接する半導体領域(トランジスタのソースもしくはドレイン領域)の製造方法に特徴がある。この素子分離領域上には、転送トランジスタのゲート電極につながる配線が配されている。このような構造において、光電変換素子と配線と素子分離領域とこの半導体領域の一部を覆って配される絶縁層を形成する工程を有している。そして、その絶縁層を利用して、半導体領域の素子分離領域側での電界を緩和する構造を形成することを特徴としている。
【0013】
本発明の製造方法によれば、リーク電流を低減する光電変換装置を用意に製造することが可能となる。また、光電変換素子上に配される絶縁層を形成することによって、光電変換素子への製造時のダメージを低減することが可能となり、さらなるノイズの低減が可能となる。よって、ノイズが低減し、SN比が向上した光電変換装置を提供することが可能となる。
【0014】
以下、本発明について、図面を用いて具体的に説明する。
【0015】
(画素回路とその駆動)
まず、光電変換装置の画素回路構成の一例を図4Aに、その駆動を図4Bに示す。図4Aは、1つの画素の回路構成を示している。画素は、光電変換素子、例えばフォトダイオード201と、転送用トランジスタ203、リセット用トランジスタ202、増幅用トランジスタ204、選択用トランジスタ205を含み構成される。ここで、電源線をVdd、出力先を206にて示している。
【0016】
フォトダイオード201は、そのアノードが接地され、そのカソードが転送用トランジスタ203のソースに接続されている。また、フォトダイオード201のカソードが転送用トランジスタ203のソースを兼ねている構成でもよい。転送用トランジスタ203のドレインがFD領域207を構成している。また、転送用トランジスタ203のゲート電極は、転送用トランジスタの駆動のための電位φtxが与えられる。更に、リセット用トランジスタ202は、そのドレインが電源Vddに接続され、そのソースがFD領域207を構成している。また、そのゲート電極は、リセット用トランジスタの駆動のための電位φresが与えられる。増幅用トランジスタ204のドレインが電源Vddに、ソースは選択用トランジスタ205のドレインに、ゲート電極はFD領域207に接続されている。選択用トランジスタ205のドレインが増幅用トランジスタ204のソースに接続され、ソースが出力線206に接続されている。そして、選択用トランジスタ205のゲート電極は垂直選択回路(不図示)によって駆動される垂直選択線に接続されている。
【0017】
このような回路構成を有する画素における駆動は、例えば、図5Bのパルス図のようになる。φresの高いレベルによって、リセット用トランジスタ202がオンし、FD領域207にリセット電位を与える。同時に、φtxが高いレベルになり、フォトダイオード201にもリセット電位が与えられる。そして、φtxが低いレベルになり、フォトダイオード201にて電荷が蓄積される。φselが高いレベルになり、FD領域207のリセット電位に基づく出力が出力線206にされる。φtxが再び高いレベルになった後は、フォトダイオード201の電荷がFD領域207に転送され、出力線206に電荷が転送された後のFD領域207の電位に基づいて信号が出力される。ここで、高いレベル、低いレベルとは、所定の電位を示している。例えば、+5Vと0V等である。また、φtxにおいては、フォトダイオード201にて電荷が蓄積されるように、転送用トランジスタが十分にオフとなる電位、例えば−1Vといった負の電位が与えられる。
【0018】
本発明は、ここで示した回路構成および駆動に限定されるものではなく、例えば、転送トランジスタがない回路構成、複数のフォトダイオードで増幅用トランジスタを共有する回路構成等においても、適用可能である。また、接続されている部分は、配線による接続や不純物領域を共有する構成等がある。
【0019】
また、材料基板である半導体基板を「基板」と表現するが、以下のような材料基板が処理された場合も含む。例えば、1又は複数の半導体領域等が形成された状態の部材、又は、一連の製造工程を途中にある部材、又は、一連の製造工程を経た部材を基板と呼ぶこともできる。以下、本発明について実施形態を示し詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態を説明するにあたって、まず図3に、図4Aに示した画素の一部分の平面レイアウトを示す。具体的には、フォトダイオード201、転送用トランジスタ203、FD領域207と増幅用トランジスタ204の平面レイアウトを示している。図3と図4を対応させて説明すると、103はフォトダイオード201を構成するn型の半導体領域であり、109は転送用トランジスタ203の配線でありゲート電極を含んでいる。以後、簡略してゲート電極109とする。このゲート電極109は、N型のポリシリコンやポリシリコンをシリサイド化した材料によって形成されている。104はn型の半導体領域であるFD領域207である。また、フォトダイオードに素子分離領域を介して隣接する素子として、本実施形態においては、増幅用トランジスタ204を示している。105は増幅用トランジスタ204のドレインであり、106は増幅用トランジスタ204のソース、110は増幅用トランジスタ204のゲート電極である。素子分離領域を介して、フォトダイオードを構成するn型の半導体領域103に隣接しているのは、増幅用トランジスタのドレイン領域である105のn型半導体領域である。ここで、このドレイン105には、電源Vddからの電圧が与えられている。また、白抜きの四角はコンタクトを示している。次に、図3のA−B―C線の断面模式図を図1に示す。101は、n型半導体基板である。102はp型半導体領域、103はn型半導体領域である。n型半導体領域103は、p型半導体領域102とPN接合を形成する光電変換素子の一部である。109は光電変換素子で生成しn型半導体領域103に蓄積された電荷を、n型半導体領域104へ転送するゲート電極である。ここで、n型半導体領域104は、FD領域であり、転送用トランジスタのドレインを兼ねている。そして、光電変換素子に隣接する素子として増幅トランジスタを示している。105は増幅トランジスタのドレイン、106はソース、110はゲート電極である。n型半導体領域105、106は、上述のn型半導体領域103に比べて不純物濃度が高い。また、n型半導体領域105は電源Vddからの電圧が入力されている。107は素子分離領域、108は、p型半導体領域102よりも不純物濃度の高いp型半導体領域である。p型半導体領域108は、チャネルストップ領域として機能させることができる。113はn型半導体領域であり、n型半導体領域104や105等に比べて不純物濃度が低く、トランジスタのLDD構造(Lightly doped drain)を形成する。そして、114は、n型半導体領域105とその隣接する素子分離領域107との間に配されるn型半導体領域である。ここではチャネルストップ領域108との間に配されているということもできる。このn型半導体領域114は、n型半導体領域105に比べて不純物濃度が低い。機能として考えた場合には105、114とで増幅用トランジスタのドレインを構成しているということもできる。111はトランジスタのゲート電極のチャネルに対応する領域にLDD構造を形成する際に利用されるサイドウォールである。112はn型半導体領域114、素子分離領域107、ゲート電極もしくはゲート電極に電位を与える配線109、n型半導体領域上に配される酸化膜である。112は、n型半導体領域114の形成に用いることが出来る。
【0021】
ここで、本実施形態における課題のメカニズムを説明する。ここでは光電変換装置の信号として扱う電荷を電子とし、上述したトランジスタがn型トランジスタの場合に関して述べる。先に述べたように光電変換装置には光電変換素子での電荷の蓄積期間がある。この蓄積期間中において、転送用トランジスタのゲート電極および配線109へ負の電圧が印加される場合がある。以後、ゲート電極とゲート電極へ電圧を印加する配線を簡単のため、ゲート電極として説明する。素子分離領域107上にゲート電極が配される構成で、そのような駆動を行うと、ゲート電極109の電位によって、素子分離領域107下部の半導体領域の実効的な濃度に変化が生じる。本実施形態においては、p型半導体領域であるチャネルストップ領域108において、多数キャリアである正孔の濃度が増加し、実効的に不純物濃度が高まる。このとき、p型半導体領域108とn型半導体領域105との間に大きな電界が生じ、リーク電流が生じやすくなる。そして、n型半導体領域105に隣接するn型半導体領域103等へ、このリーク電流が流れノイズとなる。ここで、本実施形態においては、チャネルストップ領域108を設けているが、設けない場合においても、ゲート電極109が配された素子分離領域107の下部のp型半導体領域102の実効的な濃度が高まるため、同様の課題が生じる。さらに、本実施形態では、n型半導体領域105には電源Vddから電圧が入力されている。このような場合には、より大きな電界が生じ、より大きなリーク電流が生じてしまう。また、ゲート電極109の材料によって、p型半導体領域108の実効的な濃度が高まる場合がある。その材料とは、例えば、前述のN型のポリシリコンやポリシリコンのシリサイドである。
【0022】
そこで、本実施形態においては、105に比べ不純物濃度の低いn型半導体領域114を配している。このn型半導体領域114とn型半導体領域105、LDD構造を形成するn型半導体領域113によってドレインが形成される。つまり言い換えると、トランジスタのドレインあるいはソースのn型半導体領域が、チャネル側のLDD構造に加えて、素子分離領域側に不純物濃度の低い部分を有している構造である。このn型半導体領域114によって、実効的に濃度が高まったp型半導体領域108と、n型半導体領域105との間の電界を緩和することが可能となり、リーク電流を低減することが可能となる。ドレインやソースの一部が、不純物濃度の低いn型半導体領域を有することによって、コンタクト形成時にコンタクトホールが不純物濃度の低いn型半導体領域上に形成された場合には、コンタクトの抵抗に影響を与えてしまうことがある。よって、特に効果的な場所にのみ、不純物濃度の低いn型半導体領域を形成することが望ましい。例えば、本実施形態のような電源電圧が印加されているn型半導体領域105である。
【0023】
また、同時にn型半導体領域113によるLDD構造を有することによって、短チャネル効果を低減することが可能となり、さらにノイズを低減することが可能である。
【0024】
ここで、そのゲート電極109の電位が負である場合においてはよりノイズが生じやすくなるため、n型半導体領域114を配することが効果的である。また、ゲート電極109の材料が素子分離領域107の下部との仕事関数差を有する材料である場合も同様である。
【0025】
さらに、素子分離領域107の下部にチャネルストップ領域108がある場合においても、同様である。ここで、素子分離領域107の下部にチャネルストップ領域108がある場合においては、ゲート電極109にトランジスタをオンさせるための電位が与えられている場合のノイズも低減することが可能となる。よって、チャネルストップ領域108とn型半導体領域114とを配することによって、ゲート電極109の電位によるノイズを低減した光電変換装置を提供することが可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
図2Dに、第2の実施形態の光電変換装置の断面模式図を示す。そして、図2AからDに、製造方法を説明するための断面模式図を示す。図2Dは、図1の第1の実施例に対し、n型半導体領域113と114とを同一の工程により形成していることが特徴である。また、同一の機能を有する構成については、同一の符号を付し、同一の表現にて説明を行っている。
【0027】
図2Aから順番に製造する工程を説明する。まず、n型の半導体基板101にp型半導体領域102を形成し、表面に酸化膜を例えば15nm〜25nm成長させる。さらに、窒化シリコン(Si3N4)膜を例えば100nm〜200nm堆積する。その後、素子分離領域用のマスクを用いたフォトリソグラフィーにより、窒化シリコン膜のパターニングを行う。そして、そのパターンに対して自己整合的に、例えばホウ素イオンを注入して、p型半導体領域であるチャネルストップ領域108を形成する。その後、通常のLOCOS法により素子分離領域107を例えば300nm〜500nmに成長させる。そして、ポリシリコン膜を例えば250nm〜350nm堆積して、トランジスタのゲート電極あるいは配線109や110をフォトリソグラフィーにより形成して、図2Aに至る。ここで、チャネルストップ領域108は、素子分離領域107を形成後に、素子分離領域107を突き抜ける条件でイオン注入をして形成しても良い。この素子分離領域107の膜厚は最終的には220nm〜270nm程度となる。
【0028】
そして、フォトリソグラフィーによりレジストマスクをパターニングし、イオン注入によりフォトダイオードを構成するn型半導体領域103を形成する。さらに、例えばリンイオンを注入し、トランジスタのLDD構造を形成する不純物濃度の低いn型半導体領域113および114を形成する。
【0029】
その後、絶縁層である酸化膜を形成する。TEOS(テトラエトキシシラン)ガスなどを用いてCVD(化学的気相成長)法により酸化膜115を、例えば100nm〜300nm成膜して、図2Bの形状に至る。この酸化膜115をパターニングし、これをマスクとして用いて不純物濃度の高い領域104、105を形成することができる。さらに、フォトダイオードを構成するn型半導体領域103を保護することが出来る。以下に、詳述する。
【0030】
酸化膜115上にフォトレジスト等のマスク用材料(不図示)を形成し、パターニングしてマスクとする。そして、このマスクを用いて酸化膜115をパターニングして、図3Cのトランジスタのゲート電極109、110のサイドウォール111と酸化膜112を形成する。サイドウォール111は、n型半導体領域113に比べ不純物濃度が高いn型半導体領域104、105、106を形成するイオン注入の際にマスクとして用いることが出来る。また、酸化膜112は、ゲート電極109および素子分離領域107を覆ってトランジスタのドレイン、あるいはソースが形成される部分に延在している。n型半導体領域105を形成する際に、この酸化膜112マスクとして用いる。そして、その酸化膜112が延在した部分の下部に、n型半導体領域105の不純物濃度よりも低いn型半導体領域114のある構造を容易に形成することが可能となる。このイオン注入の工程を図2Cにて示している。イオン注入される部分に矢印を示している。具体的には、酸化膜112やサイドウォール111をマスクとして、セルフアラインで、例えば、ヒ素イオンを注入する。この時、上記リンイオンの注入時に比べて大きなドーズ量でイオン注入を行う。このことによってトランジスタのドレインは、n型半導体領域104、105、106と、それらに比べて不純物濃度が低いn型半導体領域113、114とを有する構造に形成される。
【0031】
その後の工程としては、さらに、その酸化膜112を覆って、半導体基板上に層間絶縁膜が形成される。そして、n型半導体領域105等に接続を取るためのコンタクトが形成される。そして、配線やカラーフィルタ等の形成工程を経て、光電変換装置が形成される。
【0032】
ここで、この酸化膜112は、n型半導体領域104やゲート電極109、素子分離領域107上だけでなく、n型半導体領域103上に配されている。このことによって、フォトダイオードを構成するn型半導体領域103を、例えばドライエッチングなどのダメージから保護することが可能となる。また、酸化膜12とn型半導体領域103との間に窒化膜を配してもよい。反射防止の機能を兼ねることが可能となる。この場合には、窒化膜は40nm〜60nm、酸化膜150nm〜200nm程度の膜厚にすればよい。
【0033】
また、素子分離領域107の幅をより小さくした場合、素子分離領域107のパターンとゲート電極109のパターンの重ね合わせの精度によって、ゲート電極109とn型半導体領域105とが近接してしまう場合がある。よって、素子分離領域107上の酸化膜112を、例えば、0.2μm以上、可能ならば0.3μm〜0.4μm程、素子分離領域107の端部からn型半導体領域105側へ延在させるとよい。このことで、ゲート電極109とn型半導体領域105とを離すことができる。ゲート電極109のパターニングずれが生じた場合においても、ノイズを低減することが可能となる。
【0034】
本実施形態においても、チャネルストップ領域108を設けているが、なくてもよい。また、チャネルストップ領域108の少なくとも一部にチャネルストップ領域108よりも高い不純物濃度のp型半導体領域を設けてもよい。その際には、光電変換装置の電荷の転送という駆動におけるノイズを低減することも可能となる。
【0035】
また、本実施形態においては、同一工程によって、トランジスタのLDD構造における不純物濃度の低いn型半導体領域113と素子分離領域107側の不純物濃度の低いn型半導体領域114とを形成した。このことによって、工程が容易になると同時に、トランジスタの性能を向上し、ノイズの少ない光電変換装置を得ることが可能となる。もちろん、n型半導体領域113とn型半導体領域114は、別の工程によって形成してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態の製造方法を用いれば、素子分離領域107とn型半導体領域105との間にn型半導体領域114を形成しないことも可能である。例えば、n型半導体領域114を形成する際に、n型半導体領域103を覆うレジストマスクを、素子分離領域107とゲート電極110との間の活性領域の一部にまで延在させる。そして、n型半導体領域114を形成するためのイオン注入を行う。そして、図2Bにて示す絶縁層115を形成し、後の工程を続ける。このような工程を経れば、素子分離領域107とn型半導体領域105との間にn型半導体領域114を形成しない構造を形成することも可能である。この構造においても、ゲート電極109とn型半導体領域105との間の電界を緩和することが可能となる。
【0037】
以上、本実施形態について述べてきた。本実施形態の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に、素子分離領域107上に転送用トランジスタのゲート電極およびそのゲート電極へ電位を与える配線109が配されている。そのとき、その素子分離領域107に隣接するn型半導体領域105との間にn型半導体領域114を形成することによって、ノイズを低減することが可能となる。
【0038】
また、トランジスタがLDD構造を有するため、短チャネル効果を低減することが可能となり、さらにノイズが低減された光電変換装置を提供することが可能となる。加えて、LDD構造のn型半導体領域113とn型半導体領域114とを同一工程で形成することができ、工程が削減できる。また、n型半導体領域113とn型半導体領域114とを形成する際にマスクとして用いるサイドウォール111と酸化膜112を同一の酸化膜115から形成することが可能である。加えて、酸化膜112をn型半導体領域103上にまで配することで、n型半導体領域103が製造中に受けるエッチング等によるダメージを低減することが可能となる。よって、よりノイズの少ない光電変換素子を有する光電変換装置を形成することが可能となる。
【0039】
(撮像システムへの応用)
図5は、上述の実施形態にて説明した光電変換装置装置を、撮像システムに用いた例としてデジタルスチルカメラへ適用した場合のブロック図である。本実施形態において、光電変換装置を固体撮像素子として説明する。
【0040】
固体撮像素子4へ光を取り込むための構成として、シャッタ1、撮像レンズ2、絞り3がある。シャッタ1は固体撮像素子4への露出を制御し、入射した光は、撮像レンズ2によって固体撮像素子4に結像される。このとき、絞り3によって光量が制御される。
【0041】
取り込まれた光に応じて固体撮像素子4から出力された信号は、撮像信号処理回路5にて処理され、A/D変換器6によってアナログ信号からデジタル信号へ変換される。出力されたデジタル信号は、更に信号処理部7にて演算処理され撮像画像データが生成される。撮像画像データは、撮影者の動作モードの設定に応じ、デジタルスチルカメラに搭載されたメモリ10への蓄積や、外部I/F部13を通してコンピュータやプリンタなどの外部の機器への送信ができる。また、記録媒体制御I/F部11を通して、デジタルスチルカメラに着脱可能な記録媒体12に撮像画像データを記録することも可能である。
【0042】
固体撮像素子4、撮像信号処理回路5、A/D変換器6、信号処理部7はタイミング発生部8により制御されるほか、システム全体は制御部・演算部9にて制御される。また、これらのシステムは、固体撮像素子4と同一の半導体基板上に、同一工程によって形成することも可能である。
【0043】
(撮像システムへの応用)
図6は、上述の実施形態にて説明した光電変換装置を、撮像システムの別の一例であるビデオカメラへ適用した場合のブロック図である。以下、図6を元に詳細に説明する。
【0044】
1は撮影レンズで焦点調節を行うためのフォーカスレンズ1A、ズーム動作を行うズームレンズ1B、結像用のレンズ1Cを備えている。2は絞り及びシャッタ、3は撮像面に結像された被写体像を光電変換して電気的な撮像信号に変換する光電変換装置である。4は光電変換装置3より出力された光電変換信号をサンプルホールドし、さらに、レベルをアンプするサンプルホールド回路(S/H回路)であり、映像信号を出力する。
【0045】
5は、サンプルホールド回路4から出力された映像信号にガンマ補正、色分離、ブランキング処理等の所定の処理を施すプロセス回路で、輝度信号Yおよびクロマ信号Cを出力する。プロセス回路5から出力されたクロマ信号Cは、色信号補正回路21で、ホワイトバランス及び色バランスの補正がなされ、色差信号R−Y,B−Yとして出力される。また、プロセス回路5から出力された輝度信号Yと、色信号補正回路21から出力された色差信号R−Y,B−Yは、エンコーダ回路(ENC回路)24で変調され、標準テレビジョン信号として出力される。そして、図示しないビデオレコーダ、あるいはモニタ電子ビューファインダ(EVF)等の電子ビューファインダへと供給される。
【0046】
次いで、6はアイリス制御回路で有り、サンプルホールド回路4から供給される映像信号に基づいてアイリス駆動回路7を制御する。そしてし、映像信号のレベルが所定レベルの一定値となるように、絞り2の開口量を制御すべくigメータ8を自動制御するものである。
【0047】
13及び14は、サンプルホールド回路4から出力された映像信号中より合焦検出を行うために必要な高周波成分を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)である。それぞれ異なる帯域制限である第1のバンドパスフィルタ13(BPF1)及び第2のバンドパスフィルタ14(BPF2)から出力された信号は、ゲート回路15及びフォーカスゲート枠でゲートされる。ピーク検出回路16でピーク値が検出されてホールドされる。それと共に、論理制御回路17に入力される。この信号を焦点電圧と呼び、この焦点電圧によってフォーカスを合わせている。
【0048】
また、18はフォーカスレンズ1Aの移動位置を検出するフォーカスエンコーダ、19はズームレンズ1Bの合焦を検出するズームエンコーダ、20は絞り2の開口量を検出するアイリスエンコーダである。これらのエンコーダの検出値は、システムコントロールを行う論理制御回路17へと供給される。
【0049】
その論理制御回路17は、設定された合焦検出領域内に相当する映像信号に基づいて、被写体に対する合焦検出を行い、焦点調節を行う。即ち、各々のバンドパスフィルタ13、14より供給された高周波成分のピーク値情報を取り込み、高周波成分のピーク値が最大となる位置へとフォーカスレンズ1Aを駆動する。そのために、フォーカス駆動回路9にフォーカスモーター10の回転方向、回転速度、回転もしくは停止等の制御信号を供給し、これを制御する。
【0050】
ズーム駆動回路11は、ズームが指示されると、ズームモーター12を回転させる。ズームモーター12が回転すると、ズームレンズ1Bが移動し、ズームが行われる。
【0051】
このように、本発明の光電変換装置を撮像システムに用いることによって、ノイズが低減された、SN比のよい撮像システムを提供することが可能となる。また、微細な画素においてもノイズが低減されるため、より多画素の光電変換装置、あるいは小型の光電変換装置を用いることができ、より高性能な撮像システムを提供することが可能となる。
【0052】
以上、本発明によれば、ノイズが低減し、SN比が向上した光電変換装置を得ることが可能となる。また、微細な画素においてもノイズが低減されるため、より多画素の光電変換装置、あるいは小型の光電変換装置を用いることができ、より高性能な光電変換装置および撮像システムを提供することが可能となる。
【0053】
また、本発明の形態において、導電型や製造方法は各実施形態に限られるものではない。例えば、半導体基板の導電型や画素の構成は記載の構成に限られるものではなく、また例えば、各半導体領域に関しても、その製造工程によって複数の半導体領域によってなるものでもよく、同様の機能を有していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態における光電変換装置の断面模式図
【図2】Aは第2の実施形態における光電変換装置の断面模式図、Bは第2の実施形態における光電変換装置の断面模式図、Cは第2の実施形態における光電変換装置の断面模式図、Dは第2の実施形態における光電変換装置の断面模式図
【図3】光電変換装置の画素の一部の平面模式図
【図4】Aは光電変換装置の画素回路の一例、Bは光電変換装置の駆動パルスの一例
【図5】撮像システムの一例
【図6】撮像システムの一例
【符号の説明】
【0055】
101 半導体領域
102 第1導電型の半導体領域
103 第2導電型の半導体領域
104 第2導電型の半導体領域
105 第2導電型の半導体領域
106 第2導電型の半導体領域
107 素子分離領域
108 第1導電型の半導体領域
109 ゲート電極あるいは配線
110 ゲート電極あるいは配線
111 サイドウォール
112 酸化膜
113 第2導電型の半導体領域
114 第2導電型の半導体領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域の一部と光電変換素子を構成する第2導電型の第2の半導体領域と、
前記光電変換素子で生成した電荷を第2導電型の第3の半導体領域へ転送するゲート電極と、
前記第2の半導体領域に隣接する第2導電型の第4の半導体領域と前記第2の半導体領域とを電気的に分離するための素子分離領域と、
前記素子分離領域上に配される、前記ゲート電極へ電圧を印加するための配線と、を有する光電変換装置において、
前記第4の半導体領域と前記素子分離領域との間に、前記第4の半導体領域の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する第2導電型の第5の半導体領域を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の導電型はp型であり、前記配線に負の電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第4の半導体領域は、電源からの電圧が印加されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記素子分離領域の下部に、前記第1の半導体領域の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の第6の半導体領域を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域の一部と光電変換素子を構成する第2導電型の第2の半導体領域と、
前記光電変換素子で生成した電荷を第2導電型の第3の半導体領域へ転送する転送ゲート電極と、
前記光電変換素子に隣接するトランジスタと前記光電変換素子とを電気的に分離するための素子分離領域と、
前記第2の半導体領域と前記素子分離領域を介して隣接し、前記トランジスタのソースもしくはドレインを構成する第2導電型の第4の半導体領域と、
前記素子分離領域上に配され、前記転送ゲート電極へ電圧を印加するための配線と、を有する光電変換装置の製造方法であって、
前記第1の半導体領域に前記第2の半導体領域及び第3の半導体領域を形成する第1の工程と、
前記転送ゲート電極と前記配線と前記光電変換素子に隣接するトランジスタのゲート電極を形成する第2の工程と、
前記第2の半導体領域、前記配線及び前記素子分離領域の全体と、前記素子分離領域と前記光電変換素子に隣接するトランジスタのゲート電極との間の活性領域の一部と、を覆う絶縁層を形成する第3の工程と、
前記絶縁層をマスクとして、前記活性領域の前記絶縁層が覆っていない部分に第2導電型の不純物イオン注入を行い前記第4の半導体領域を形成する第4の工程と、
前記絶縁層を覆って層間絶縁層を形成し、前記層間絶縁層に前記第4の半導体領域に対応するコンタクト用の開口を形成する第5の工程と、を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程において、前記活性領域の少なくとも一部に第2導電型の第5の半導体領域を形成し、
前記第3の工程において、前記絶縁層により前記光電変換素子に隣接するトランジスタのゲート電極にサイドウォールを形成し、
前記第4の工程において、前記サイドウォールをマスクとして、前記イオン注入を行い前記第4の半導体領域を形成し、前記第4の半導体領域は前記第5の半導体領域に比べて高い不純物濃度であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置に結像するための光学系と、
前記光電変換装置からの出力信号を処理する信号処理回路と、を有することを特徴とする撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−16771(P2008−16771A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189244(P2006−189244)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】