説明

光電子デバイス用発光性ポリマー材料

式Iの化合物に由来する構造単位を少なくとも1つ含むか、式IIの側鎖を少なくとも1つ含むポリマーは光電子デバイスに使用できる。
【化1】


式中、R1、R3、R4及びR6は独立に水素、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルコキシ、置換オキサアルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換ヘテロアリール基であり、R1aは水素又はアルキルであり、R2はアルキレン、置換アルキレン、オキサアルキレン基、CO又はCO2であり、R2aはアルキレン基であり、R5はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、カルボキシ、置換アルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換アルコキシ基であり、Xは2,5−位又は2,7−位に位置するハロ、トリフレート、−B(OR1a2、又は次式の基であり、
【化2】


Lはフェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せに由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電子デバイス用のイリジウム錯体側基を有するポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
バイアス電圧が印加されると発光する薄膜有機材料を利用する有機発光デバイス(OLED)は、1形態のフラットパネルディスプレイ技術として益々普及すると予想される。OLEDの潜在的用途には、携帯電話、個人用情報機器(PDA)、コンピュータディスプレイ、車両用情報ディスプレイ、テレビモニター、並びに一般照明用の光源などがある。明るい色、広い視野角、速い動画像ビデオとの相性、広い温度範囲、薄く順応性の形状、少ない必要電力、そして低コストな製造方法の可能性などから、OLEDは将来陰極線管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)に代わる技術とみなされている。発光効率が高いことから、OLEDは、ある種の用途では白熱電球に、またおそらくは蛍光管に取って代わるであろう。
【0003】
OLEDからの発光は代表的にはエレクトロフルオレセンスにより起こる、即ち基底状態のエレクトロルミネセント(EL)材料にバイアス電圧をかけることにより形成される一重項励起状態からの発光である。エレクトロホスホレセンスという別の機構により発光することができる、即ち、基底状態のエレクトロフルオレセント材料にバイアス電圧をかけることにより形成される三重項励起状態からの発光が可能なOLEDは、主としてエレクトロフルオレセンスにより発光するOLEDより量子効率が著しく高くなると考えられている。ほとんどの発光性有機材料において三重項励起状態が基底状態への非放射性緩和に向かう傾向が強いので、エレクトロホスホレセンスによるOLEDからの発光は限定されている。したがって、エレクトロホスホレセント材料は、現在の技術水準より高い効率を示すOLEDデバイスその他の光電子デバイスのキー成分として有望である。例えば、エレクトロホスホレセンスにより発光するOLEDは、デバイス内の無放射失活プロセスに失われるエネルギー量の低減(主としてエレクトロフルオレセンスにより発光するOLEDに対して)を示し、これによりOLEDの動作中に温度制御する追加の手段を与えると予想される。
【0004】
発光効率の向上は、OLEDのような有機エレクトロルミネセントデバイスにホスホレセント白金含有色素を導入することにより達成されており(Baldo et al., "Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices", Nature, vol. 395, 151-154, 1998)、ホスホレセントイリジウム含有色素も使用されている(米国特許出願公開2003/0096138)。ケトピロール配位子に基づく重合性ホスホレセントイリジウム錯体は、米国特許出願第11/504552号(出願日2006年8月14日、米国予備出願第60/833935号(出願日2006年7月28日)の優先権を主張、明細書全文を本出願の先行技術として援用する)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0225464号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Baldo et al., "Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices", Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように以前の開発はあるものの、デバイスの寿命の延長を達成しながら、効率を増加し、OLEDが発光する光の色を制御するよりよい手段を提供する新規なホスホレセント材料を探し出すことが現在も強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、固体状態での共役効果から生じるイリジウム(III)色素の発光特性の変化を、イリジウム色素をポリマーの主鎖からペンダント側鎖置換基として分離することにより防止できることを見出した。したがって、第1の態様では、本発明は、次の式Iの化合物及び同化合物に由来する構造単位を少なくとも1つ含むポリマー(高分子化合物)に関する。
【0009】
【化1】

式中、R1、R3、R4及びR6は独立に水素、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルコキシ、置換オキサアルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換ヘテロアリール基であり、
1aは水素又はアルキルであり、
2はアルキレン、置換アルキレン、オキサアルキレン基、CO又はCO2であり、
2aはアルキレン基であり、
5はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、カルボキシ、置換アルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換アルコキシ基であり、
Xは2,5−位又は2,7−位に位置するハロ、トリフレート、−B(OR1a2、又は次式の基であり、
【0010】
【化2】

Lはフェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せに由来する。
【0011】
別の態様では、本発明は、次の式IIの側基を少なくとも1つ含むポリマーに関する。
【0012】
【化3】

式中、R2、R3、R4、R6及びLは式Iで定義した通り。
【0013】
他の態様では、本発明は、式Iの化合物に由来する構造単位を少なくとも1つ含むポリマー、又は式IIの側基を少なくとも1つ含むポリマーを含む光電子デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、式Iの化合物、同化合物に由来するポリマー、式IIの側基を有するポリマー、及びこれらのポリマーを1つ又は2つ以上の発光層中に含有する光電子デバイスに関する。
【0015】
構造単位又は側基はフルオレンもしくはトリアリールアミン化合物から誘導することができる。Ir錯体側基を含有するフルオレン単量体に由来する構造単位の例としては以下のものがある。
【0016】
【化4】

式中、R1bは水素、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、置換アルキル、置換アルコキシ又は置換オキサアルキル基であり、
1cは水素、アルキル又は置換アルキル基である。
【0017】
多くの実施形態で、R2がオキサアルキレン、特に−CH2CH2O−であるのが好ましい。
【0018】
Ir錯体側基を含有するトリアリールアミン単量体の例としては以下のものがある。
【0019】
【化5】

式中、ZはO、S又は直接結合である。
【0020】
式Iの化合物に由来するポリマー又は式IIの側基を有するポリマーは、さらに、他の単量体に由来する構造単位、特にDow社の米国特許第5929194号、同第5948552号、同第6204515号、同第6605373号、同第6815505号及び同第6916902号に記載されているようなフルオレン単量体に由来する構造単位を含有してもよい。特に、構造単位をジブロモ9,9−ジオクチルフルオレン単量体から誘導することができる。ポリマーは、フルオレン単量体に由来する構造単位に加えて又はその代わりに、少なくとも1つのトリアリールアミン化合物、特にTFBに由来する構造単位を含むことができる。適当なトリアリールアミン単量体及びこれらに由来する残基を含むポリマー並びに適当なフルオレン単量体は、Dow社の米国特許第5708130号、同第6169163号、同第6353083号、同第6255447号、同第6255449号及び同第6900285号に記載されている。例えば、ポリマーは、イリジウム錯体を含有する残基に加えて、次の式IIIの構造単位を含有することができる。
【0021】
【化6】

特に、ポリマーは式IVの構造単位を含有することができる。
【0022】
【化7】

式中、piqはフェニルイソキノリニルである。さらに特定すると、ポリマーは、下記に示すように、式IIIの構造単位約95%及び次の式IVの構造単位5%を含有することができる。
【0023】
【化8】

式中、piqはフェニルイソキノリニルである。
【0024】
ある実施形態では、式IIの側基は次式で表される。
【0025】
【化9】

これらの実施形態の一部で、Lはフェニルイソキノリニル(piq)である。
【0026】
ポリマー中、式Iの化合物に由来するか式IIの側基を有する構造単位は、ポリマーの約0.01〜約50重量%、特定すると約0.1〜約10重量%、さらに特定すると約0.5〜約5重量%の量存在することができる。ポリマーは代表的には、数平均分子量(Mn)がゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定して2000g/モル超、特定すると約5000g/モル超、約15000g/モル超、さらに特定するとGPCで測定して約25000g/モル超である。
【0027】
本発明の光電子デバイスは、式Iの化合物に由来するか式IIの側基を有するポリマーを少なくとも1つ含有する。ポリマーをフルオレセント発光性材料、例えばフルオレン単量体を主成分とする(コ)ポリマー、具体的にはF8−TFBや、市販の発光性ポリマー、具体的にはADS131BE、ADS231BE、ADS331BE、ADS431BE、ADS429BE、ADS160BE、ADS329BE、ADS229BE、ADS129BE、ADS180BE(American Dye Sources社製)及びBP105及びBP361(Sumation社製)などとブレンドすることができる。本発明のポリマーとブレンドするのに有用な他の材料には、分子状及びオリゴマー状種、例えばフルオレン三量体及びその誘導体、ポリマー状もしくは分子状トリアリールアミン材料、具体的には、米国特許第3265496号及び同第4539507号に記載されているものや、市販のトリアリールアミン化合物、例えばADS254BE、ADS12HTM及びADS04HTM(American Dye Sources社製)、置換ポリフェニレンポリマー、例えばADS120BE(American Dye Sources社製)、並びにオリゴマー単位が非共役結合基を介して連結されたポリマー、例えば米国特許第2005/0256290号に記載のものが挙げられる。
【0028】
本発明のポリマーを他の材料とブレンドする場合、他の材料の最低三重項エネルギーレベル(フォトルミネセンスその他の方法で測定)が本発明のポリマーの側鎖イリジウム系発光体(エミッタ)の三重項エネルギーより大きいことが好ましい。特に、ポリマーを青色発光性フルオレン(コ)ポリマーのような1種又は2種以上のフルオレセント材料とブレンドすることができる。これらの材料が、代表的には、本発明のポリマーの最低発光性一重項エネルギーより低い最低三重項エネルギーを有し、青色発光を示すからである。
【0029】
本発明のポリマー及び/又は同ポリマーと青色発光性フルオレン(コ)ポリマーとのブレンドは、デバイスの発光層に含有させ、その発光層を1種又は2種以上のフルオレンポリマーもしくはコポリマー、例えばBP105もしくはF8−TFBを含有する別の発光層に隣接配置して2層構造を形成することができる。これらのデバイスにおいて、2層構造は、例えばPCT/US07/68620に記載されているような様々な異なる手段により形成することができる。例えば、第1層の堆積後に、熱処理だけで、或いはポリマー鎖を相互に連結するか相互貫入高分子網目を形成する架橋性重合剤を第1層内に含有させることにより、2層構造を不溶化することができる。重合はUV照射又は熱活性化により開始することができる。少量の開始剤、例えばIRGACURE(登録商標)754、ESACURE(登録商標)開始剤(Sartomer社製)、BPO又はAIBNを添加することにより、重合過程を促進することができる。或いはまた、第1層を溶解しない溶剤から第2層を塗布するか、接触積層(Ramsdale et al. J. Appl. Phys, vol 92, p4266 (2002)参照)又は蒸着により層構造を形成することができる。所望に応じて、これらの方法を順次適用して、1つ又は2つ以上の層が本発明のポリマー1つ又は2つ以上を含有する多層構造を作成することができる。
【0030】
本発明の光電子デバイスはさらに、ポリマーと光学的にカップリングしたフォトルミネセント(PL)材料1種以上を含むことができ、こうして蛍りん光材料がポリマーが発光した電磁線の一部を吸収し、第3の波長範囲の電磁線を放出する。PL材料として用いる材料及びPL材料を含有するデバイス構造例が米国特許第7063900号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に記載されている。
【0031】
光電子デバイス、例えば有機発光デバイスは、代表的には多数の層を含み、このような層には、もっとも簡単な場合、アノード層、対応するカソード層及びこれらのアノード層とカソード層間に配置された有機エレクトロルミネセント(EL)層が含まれる。電圧バイアスを両電極間にかけると、電子がカソードからEL層中に注入され、一方電子がEL層から取り出される(「正孔」がアノードからEL層に「注入」される)。発光が起こるのは、EL層内で正孔と電子が結合して一重項又は三重項励起子(エキシトン)を形成する際で、そして一重項励起子が放射失活により環境にエネルギーを移送するにつれて発光が起こる。一重項励起子と違って、三重項励起子は代表的には放射失活を起こし得ず、したがって極めて低温以外では光を放出しない。理論的考察から、三重項励起子は一重項励起子のほぼ3倍の頻度で形成されることが分かる。したがって、三重項励起子の形成は、作動温度が通常周囲温度又はその付近である有機発光デバイスにおける効率への根本的な制約となっている。本発明のポリマーは、通常なら非生産的な三重項励起子が遭遇する際に、エネルギーを輸送する発光性の短命の励起状態種を形成する前駆体として作用することができる。
【0032】
アノード、カソード及び発光材料以外に有機発光デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層を有する有機発光デバイスの作動中、電子輸送層内に存在する電荷キャリヤ(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光は電子輸送層内に存在する正孔と電子の再結合によって起こりうる。有機発光デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送兼発光層、正孔障壁層及び電子輸送兼発光層がある。
【0033】
有機エレクトロルミネセント(EL)層は、デバイスの作動時に、電子及び正孔両方を有意な濃度で含有し、励起子形成及び発光にふさわしい位置を提供する、有機発光デバイス内の層である。正孔注入層は、アノードからOLEDの内部層への正孔の注入を促進する、通常はアノードと接触した層であり、電子注入層は、カソードからOLED内への電子の注入を促進する、通常はカソードと接触した層である。正孔注入層も電子輸送層もカソードと接触する必要はない。多くの場合、電子輸送層は効率よい正孔輸送手段ではなく、したがって正孔がカソードに向かって移動するのを阻止する役目を果たす。電子輸送層は、カソードから電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層である。正孔輸送層は、OLEDの作動中に、アノードから電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、この層がアノードと接触する必要はない。正孔輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が正孔であり、発光は残留電子との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの輸送を介しても生起する。電子輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が電子であり、発光は残留正孔との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの輸送を介しても生起する。
【0034】
アノードとして用いるのに適当な材料には、四点プローブ法で測定して、バルク導電率が約100Ω/□以上である材料がある。インジウム錫オキサイド(ITO)がアノードとしてよく用いられるが、それは光透過に対してほぼ透明であり、電気活性な有機層から発せられた光が抜け出るのを容易にするからである。アノード層として用いることのできる他の材料には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛オキサイド、亜鉛インジウム錫オキサイド、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0035】
カソードとして用いるのに適当な材料には、負の電荷キャリヤ(電子)をOLEDの内部層に注入することができる0価の金属がある。カソードとして用いるのに適当な種々の0価の金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタノイド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物が挙げられる。カソード層として用いるのに適当な合金には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。非合金層状構造、例えばカルシウムなどの金属もしくはLiFなどの金属フッ化物の薄い層をアルミニウム、銀などの0価金属の比較的厚い層で覆った構造もカソードに用いることができる。特に、カソードを単一の0価金属、中でもアルミニウム金属で構成することができる。
【0036】
正孔注入層に用いるのに適当な材料には、H.C.Starck社から登録商標BAYTRONにて市販されている3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)及びPEDOTとポリスチレンスルホネート(PSS)とのブレンド、及びAirProducts社から市販されているチエノ[3,4b]チオフェン(TT)モノマーに基づくポリマーなどがある。
【0037】
正孔輸送層に用いるのに適当な材料には、米国特許第6023371号に開示されているような、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル)−4,4’−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、ジアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及びポリチオフェンが挙げられる。
【0038】
電子輸送層として用いるのに適当な材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビスフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVが挙げられる。
【0039】
[定義]
本発明の文脈では、アルキルは低級アルキル及び高級アルキルなどの直鎖状、分枝状又は環状炭化水素構造及びこれらの組合せを含む。アルキル基はC20以下のものが好ましい。低級アルキルは、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基を指し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−、s−及びt−ブチルである。高級アルキルは、炭素原子数7以上、好ましくは炭素原子数7〜20のアルキル基を指し、例えば、n−、s−及びt−ヘプチル、オクチル及びドデシルである。シクロアルキルは、アルキルの一部であり、例えば炭素原子数3〜8の環状炭化水素基である。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びノルボルニルがある。アルケニル及びアルキニルはそれぞれ2つ以上の水素原子が二重結合又は三重結合によって置換されたアルキル基を指す。
【0040】
アリール及びヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する5又は6員の芳香環又はヘテロ芳香環;窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する二環式9又は10員の芳香環又はヘテロ芳香環系;又は窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する三環式13又は14員の芳香環又はヘテロ芳香環系を意味する。6〜14員の芳香族炭素環には、例えばベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン及びフルオレンがあり、5〜10員の芳香族ヘテロ環には、例えばイミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールがある。
【0041】
アリールアルキルはアリール環にアルキル残基が結合したものを意味する。例としては、ベンジル及びフェネチルがある。ヘテロアリールアルキルはヘテロアリール環にアルキル残基が結合したものを意味する。例としては、ピリジニルメチル及びピリミジニルエチルがある。アルキルアリールは、1つ以上のアルキル基が結合したアリール残基を意味する。例としては、トリル及びメシチルがある。
【0042】
アルコキシ又はアルコキシルは、酸素を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状又は環状構造及びこれらの組合せの炭素原子数1〜8の基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ及びシクロヘキシルオキシが挙げられる。低級アルコキシは炭素原子数1〜4の基を指す。
【0043】
アシルはカルボニル官能基を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状又は環状構造、飽和、不飽和及び芳香族及びこれらの組合せの炭素原子数1〜8の基を意味する。アシル残基の1つ以上の炭素原子は、親構造への結合位置がカルボニルのままであれば、窒素、酸素又は硫黄原子により置換されていてもよい。例としては、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル及びベンジルオキシカルボニルが挙げられる。低級アシルは炭素原子数1〜4の基を指す。
【0044】
ヘテロ環(複素環)は、1又は2個の炭素原子が酸素、窒素又は硫黄などのヘテロ原子により置換されたシクロアルキル又はアリール残基を意味する。本発明の要旨に入るヘテロ環の例としては、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する場合、通常メチレンジオキシフェニルと記す)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0045】
置換はアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル及びヘテロアリールなどの残基において、3個以下のH原子が低級アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ハロアルキル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルコキシ、カルボキサミド、アシルオキシ、アミジノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、OCH(COOH)2、シアノ、1級アミノ、2級アミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリールオキシで置換されていることを意味する。
【0046】
ハロアルキルは1個以上のH原子がハロゲン原子によって置換されたアルキル残基を意味し、用語「ハロアルキル」はペルハロアルキルを含む。本発明の要旨に入るハロアルキル基の例としてはCH2F、CHFl及びCF3がある。
【0047】
ここに記載する化合物の多くが1つ又は2つ以上の非対称な中心を含有し得、エナンチオマー(鏡像異性体)、ジアステレオマー、その他の立体異性体を生じ、これらは絶対立体化学によって(R)−又は(S)−配置と定義できる。本発明はこのような可能な異性体すべて、並びにそのラセミ体及び光学的に純粋な形態も包含する。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて製造したり、普通の技術を用いて分解することができる。ここに記載する化合物がオレフィン系二重結合又は幾何非対称な他の中心を含有する場合、そして特記しないなら、該化合物がE及びZ幾何異性体両方を含むものとする。同様に、すべての互変異性体が包含されるものとする。
【0048】
オキサアルキルは、1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素に置換されたアルキル残基を指す。これはアルキル残基を介して親構造に結合される。例には、メトキシプロポキシ、3,6,9−トリオキサデシルなどがある。用語オキサアルキルは、酸素が単結合により隣接原子に結合されて(エーテル結合を形成する)化合物を指すが、カルボニル基に見られるような二重結合酸素を指さない。同様に、チアアルキル及びアザアルキルはそれぞれ1つ又は2つ以上の炭素原子が硫黄又は窒素で置換されたアルキル残基を指す。例にはエチルアミノエチル及びメチルチオプロピルがある。
【0049】
シリルは、1〜3個の炭素原子が四価のケイ素で置換され、ケイ素原子を介して親構造に結合されるアルキル残基を意味する。シロキシは、両方の炭素原子が四価のケイ素で置換され、(そのケイ素がアルキル残基、アリール残基又はシクロアルキル残基で末端封止され)、酸素原子を介して親構造に結合されるアルコキシ残基である。
【0050】
二座配位子は、2つの位置を介して金属に結合できる配位子である。同様に、三座配位子は、3つの位置を介して金属に結合できる配位子である。シクロメタル化配位子は、二座又は三座配位子が金属原子に炭素−金属単結合及び1つもしくは2つの金属−ヘテロ原子結合により結合されて環状構造を形成するものを意味し、ここでヘテロ原子はN、S、P、As又はOとすることができる。
【0051】
本明細書に記載する数値は、低い値から高い値まで1単位ずつの増分で増加するすべての値を含む。但し、任意の低い値と任意の高い値とは2単位以上離れている。例えば、ある成分の量、又は温度、圧力、時間などのプロセス変数の値が、例えば1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記載する場合、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が本明細書に明確に列挙されていると考える。1未満の値については、1単位が適宜0.0001、0.001、0.01もしくは0.1であるとみなす。これらは意図していることの例にすぎず、最小値と最大値の間の数値のすべての可能な組合せが同様に本明細書に明確に記載されているとみなすべきである。
【実施例】
【0052】
モノマーの一般的製造手順
出発材料である2,7−ジブロモフルオレンの製造に好ましい合成経路はCN1634839(スキーム1)に記載されている。この方法では水中で臭素を用いてフルオレンを所望のジブロモ生成物に高率で転化し、モノブロモ化種の形成はほとんど又は全くなく、未知の副生成物はほとんど存在しない。メタンスルホン酸中でN−ブロモスクシンイミドを用いる方法でフルオレンをブロモ化すると、これらの不十分なブロモ化生成物や未知の生成物が通常著しく多量に存在する。
【0053】
【化10】

スケールアップした反応を3回結晶化した後、次の反応でそのまま使用できる高品質の2,7−ジブロモフルオレン(純度>99.8%、LC分析)を150g得た。2,7−ジブロモフルオレンの一部を4工程(スキーム2)でトシル化エチレングリコール9,9’−二置換フルオレン[5]に転化した。
【0054】
【化11】

特開平9−255609号に記載の合成方法を若干変更してグリコシル化に用い、中性条件下で実質的に短い反応時間(12時間)で所望のフルオレン[4]を高転化率(95%)で得た。トシル化フルオレン[5]を用いて、ベンゾイルピロールIr(III)りん光体側鎖が周辺に共有結合したポリフルオレン材料に取り込むべきモノマーを製造した(スキーム3)。トシル基をフェノール求核試薬で置換することりより、フルオレンモノマー[6]にベンゾイルピロールIr(III)りん光体が共有結合される。
【0055】
【化12】

実施例1
9−(4−ヘキシルオキシフェニル)−9H−フルオレン−9−オール[2]の合成
4−ブロモフェノール(91.2g、527mmol)をブロモヘキサン(86.0g、520mmol)及びK2CO3(80.0g、580mmol)とアセトン(200mL)中で12時間還流してアルキル化することによりブロモ(4−ヘキシルオキシ)ベンゼンを製造した。濾過により塩を除去した後、反応混合物を濃縮・乾固し、油状物を得た。油状物をEtOAc(100mL)に溶解し、分液ロートに移し、各200mLの5%NaOH溶液で4回洗浄した。さらに200mLのEtOAcを分液ロートに加え、200mLのNaHCO3溶液で1回洗い、最後にMgSO4で乾燥した。EtOAc溶媒を除去して淡黄色油状物を得、これ以上精製せずに次工程に使用した。収量119g、89%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.91(t,3H),1.34(m,4H),1.45(m,2H),1.76(m,2H),3.92(t,2H),6.79(d,2H),7.36(d,2H)。乾燥した250mlの三つ口フラスコに細い削り状Mg(2.80g、118mmol)、次いで無水THF(100mL)を装入した。少量のヨウ素結晶を添加し、均一な混合物を15分間加熱還流し、その後室温まで冷却した。撹拌を止め、1,2−ジブロモエタン(0.25mL)を反応容器に加えた。5分間経過後、発熱反応が起こり、再び撹拌を20分間続けた。その後、反応溶液を20℃まで冷却し、ブロモ(4−ヘキシルオキシ)ベンゼン(27.8g、108mmol)を14〜18℃の温度に保ちながら、1時間かけて添加した。冷却槽を外し、反応溶液をさらに10分間撹拌し、この間に反応温度が28℃に上昇した。反応溶液を室温まで冷却し、トルエン(250mL)中の2,7−ジブロモフルオレン(30.0g、90.4mmol)懸濁液を冷却槽で−10℃に維持しながら撹拌し、そこにフラスコの中身をピペットで移した。冷却槽を外し、反応混合物を室温で20分間撹拌し、その後EtOH(20mL)とNH4Cl飽和溶液(5mL)とで処理した。反応混合物を濾過して不溶物を除去し、EtOAc(100mL)とH2O(100mL)とを入れた分液ロートに移した。2層が分離し、有機層を各100mLのH2Oで2回、100mLのブラインで1回洗い、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去・乾固して粗製黄色固体(50.8g)を得た。この粗製材料をヘキサン/CH2Cl2から再結晶して生成物をオフホワイトの微結晶材料として得た。収量:38.6g、79%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.91(t,3H),1.32(m,4H),1.41(m,2H),1.74(m,2H),2.66(s,1H),3.92(t,2H),6.79(d,2H),7.23(d,2H),7.43(d,2H),7.52(m,4H)。
【0056】
実施例2
9−(4−ヘキシルオキシフェニル)−9’−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[3]の合成
フェノール(24g、256mmol)と9−(4−ヘキシルオキシフェニル)−9H−フルオレン−9−オール(2)(30.0g、55.7mmol)のCH2Cl2(75mL)溶液を20滴のメタンスルホン酸で処理して溶液の色を紫に変化させた。出発材料のフルオレノールが消費されたことをTLC分析が示すまで、反応溶液を室温で撹拌した。反応混合物を分液ロートに移し、200mLのNaHCO3飽和溶液で1回、各150mLのH2Oで3回洗浄し、その後有機層をMgSO4で乾燥した。溶媒を除去・乾固して油状物を得た。油状物をCH2Cl2溶液からシリカゲルに吸着させ、溶媒を乾燥除去した。真空フラスコに取り付けた、シリカゲルのH2Oスラリー(200mL)を充填したガラス濾過器(フリットガラス付きロート)(500mL)に乾燥したシリカゲルを移した。フラスコに真空をかけることにより濾過器の中身をH2Oで洗い流し、シリカゲルからフェノールを溶出した。余分なフェノールを除去した後、生成物をシリカゲルからCH3CNで溶出した。45℃の浴を備えたロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去すると白濁溶液が形成し、この溶液から白色固体が形成した。濾過により生成物を回収し、水で洗浄し、乾燥した。ヒドロキシフェノール付加体のパラ、オルト異性体の混合物(90:10)として単離した。収量:34.0g、98%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.89(t,3H),1.32(m,4H),1.43(m,2H),1.74(m,2H),3.91(t,2H),4.90(s,1H),6.72(d,2H),6.77(d,2H),7.01(d,2H),7.04(d,2H),7.47(d,2H),7.50(d,2H),7.63(d,2H)。
【0057】
実施例3
9−(4−ヘキシルオキシフェニル)−9’−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン[4]の合成
フェノール[3](33.0g、53.7mmol)をキシレン(30mL)に溶解し、MgSO4で乾燥し、濾過した。フラスコの中身が70gになるまで、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、フェノール[3]のキシレン溶液をN2の不活性雰囲気下に置き、エチレンカーボネート(3.9mL、59.0mmol)で処理し、その後15時間加熱還流した。15時間経過後、反応溶液を室温まで冷却し、溶媒を除去し、黄色油状物を得た。油状物を2LのSiO2のクロマトグラフィーに通してCH2Cl2で溶出した。溶媒除去後、生成物を無色油状物として単離した。収量:29.1g、82%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.94(t,3H),1.36(m,4H),1.47(m,2H),1.78(m,2H),2.03(t,1H),3.94(m,4H),4.07(t,2H),6.81(d,2H),6.85(d,2H),7.08(d,2H),7.11(d,2H),7.52(d,2H),7.54(d,2H),7.67(d,2H)。
【0058】
実施例4
9−(4−ヘキシルオキシフェニル)−9’−(4−(2−p−トルエンスルホニルエトキシ)フェニル)フルオレン[5]の合成
エチレングリコール[4](29.1g、44.2mmol)のトルエン溶液(200mL)をp−トルエンスルホニルクロリド(13.3g、69.8mmol)及びトリエチルアミン(19.4mL、140mmol)で処理し、N2の不活性雰囲気下室温で60時間撹拌した。その後、反応混合物を濾過してトリエチルアミン塩酸塩を除去し、濃縮・乾固した。残留物をEtOAcに溶解し、100mLの5%HClで1回、各200mLのNaHCO3飽和溶液で2回洗浄し、MgSO4で乾燥し、溶媒を除去・乾固した。粗製油状物を1.4LのSiO2(CH2Cl2:ヘキサン、1:1)のクロマトグラフに通した。溶媒を除去後、生成物を白色無定形固体として単離した。収量:33.0g、92%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.88(t,3H),1.33(m,4H),1.43(m,2H),1.74(m,2H),2.41(s,3H),3.91(t,2H),4.09(t,2H),4.31(t,2H),6.68(d,2H),6.77(d,2H),7.03(m,4H),7.34(d,2H),7.46(d,2H),7.50(d,2H),7.63(d,2H),7.78(d,2H)。
【0059】
実施例5
[(piq)2Ir(7)]フルオレンモノマー[6]の合成
トシル化フルオレン[5](3.00g、4.00mmol)及びベンゾイルピロールイリジウム錯体[7](3.00g、3.8mmol)を含有するDMF溶液(25mL)を撹拌しながら、そこに固体のK2CO3(1.00g、7.24mmol)を添加した。この溶液を80℃で1.5時間撹拌した後、反応溶液を冷却し、H2O(75mL)を添加し、形成した赤色析出物を超音波処理し、濾過により回収し、水、MeOHで洗浄し、その後空気中で乾燥した。生成物をSiO2:トルエンのクロマトグラフに通し、溶媒を除去後、生成物を赤色固体として単離した。収量:5.00g、92%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d0.89(t,3H),1.33(m,4H),1.42(m,2H),1.73(m,2H),3.90(t,2H),4.27(m,2H),4.34(m,2H),6.30(dd,1H),6.41(dd,1H),6.45(dd,1H),6.51(t,1H),6.77(m,6H),7.00(m,8H),7.19(dd,1H),7.32(d,1H),7.43(d,1H),7.47(d,2H),7.50(dd,2H),7.53(d,1H),7.62(d,2H),7.73(m,4H),7.87(m,1H),7.92(m,1H),7.96(d,2H),8.27(d,2H),8.34(d,1H),8.99(m,2H)。
【0060】
実施例6
2−(4−ヒドロキシベンゾイル)ピロール[7]の合成
0℃に冷却したCH3CN中の4−ヒドロキシ安息香酸(5.50g、40.0mmol)の懸濁液を撹拌しながら、そこにトリフルオロ酢酸無水物(10mL、72.0mmol)を添加した。15分間経過後、4−ヒドロキシ安息香酸が溶解した。0℃に冷却したこの溶液に1−(p−トリルスルホニル)ピロール(8.85g、40.0mmol)、次いでこの温度でピロールを溶解するのに十分なCH2Cl2を添加した。高速撹拌している反応混合物に追加のトリフルオロ酢酸無水物(10mL、72.0mmol)、次いでH3PO4(2mL、37.0mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌後、さらに、トリフルオロ酢酸無水物(6mL、43.2mmol)及び4−ヒドロキシ安息香酸(4.00g、29.0mmol)を添加し、12時間撹拌し続けた。12時間経過後、溶媒を除去・乾固し、残留物を5%NaOH溶液(250mL)に懸濁し、一晩撹拌した。濾過により懸濁物を除去し、フィルターケークを5%NaOH溶液(250mL)で洗浄した。濾液にNaHCO3飽和溶液(200mL)を添加し、溶液のpHを濃HClを添加することにより中性にした。ピンクの微結晶材料が形成し、これを濾過により回収し、水で洗浄し、乾燥した。収量:3.30g、44%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d6.35(m,1H),6.90(m,1H),6.94(d,2H),7.14(m,1H),7.87(d,2H),9.70(bs,1H)。
【0061】
実施例7
[(piq)2Ir(7)][8]の合成
ケトピロール[7](1.20g、6.40mmol)を含有するEtOH溶液(100mL)を冷却(−10℃)、撹拌しながら、そこに固体の水素化ナトリウム(288mg、12.0mmol)を添加したところ、溶液の色が黄色からオレンジに変化した。この溶液を5分間撹拌した後、[(piq)2Ir(μ−Cl)]2(3.33g、2.56mmol)を添加し、その後、混合物を10時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、濾過により赤色析出物を回収した。生成物をEtOHで洗浄し、空気中で乾燥した。収量:3.85mg、96%。1H NMR(500MHz,CD2Cl2,25℃)d6.32(dd,1H),6.42(dd,2H),6.45(dd,1H),6.51(t,1H),6.73(m,1H),6.78(m,1H),6.83(d,2H),7.00(m,2H),7.18(dd,1H),7.31(d,1H),7.43(d,1H),7.53(d,1H),7.73(m,4H),7.89(m,4H),8.27(m,2H),8.34(d,1H),8.99(m,2H)。
【0062】
実施例8
9,9−ジオクチルフルオレン−トリアリールアミンコポリマーの合成
【0063】
【化13】

【0064】
【表1】

すべてのモノマーを50℃の真空オーブン内で2時間以上乾燥させてから秤量した。バブラーまでの窒素ガス導入管及びマグネチックスターラを備えた50mlの二つ口フラスコに、すべてのモノマー、トリ−o−トリルホスフィン及び15〜18mlのトルエンを装入した。この溶液を5〜10分間アルゴンで脱泡し、その後、秤量皿ロートを洗うのに残りのトルエンを用いてPd(OAc)2を添加した。同時に別のバイアルで水性成分をアルゴンで脱泡した。脱泡を15分間以上行った後、水性成分を有機溶液に添加し、フラスコを70℃の油浴に浸した。窒素正圧下での撹拌及び加熱を16〜20時間続け、その後溶液を室温にして20mgのフェニルホウ酸を添加した。フラスコを再び加熱浴に浸し、窒素下でさらに3時間撹拌した。混合物を再び放冷し、その後約10mlのトルエン及び約10mlの水で希釈した。混合物を分液ロートに移し、水相を捨て、有機相を各50mlの水で3回、50mlのNaCl飽和溶液で1回洗浄した。その後、有機溶液をセライト及びドライアライトを入れた濾過器に通し、濾液をアミン官能性シリカゲルとともに30分間以上撹拌した。溶液を再び濾過し、ロータリーエバポレーターで体積が20〜30mlになるまで濃縮し、その後トルエンで飽和したシリカゲルカートリッジ(ポリマー1g当たり約20〜30gのシリカ−注6)に入れた。トルエン(約100ml)でポリマーをカラムから溶出し、トルエン溶液を約20mlに濃縮した。激しく撹拌しながら10倍量(体積)のメタノール中で溶液から析出させることによりポリマーを単離した。濾過によりポリマーを回収し、メタノールで洗浄し、40〜50℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥後の収量は403mg(55%)であった。ゲル浸透クロマトグラフィによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は92400、数平均分子量(Mn)23000であった。
【0065】
実施例9
デバイス製造
厚さが約60nmのPEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート、HC Starck社から溶液として入手)層を、清浄なUV−オゾン処理した2.5cm×2.5cmのITOパターン付ガラス基板上にスピンコートにより成膜した。その後、被覆基板をホットプレート上で空気中160℃で30分間ベークした。その後、PEDOT/PSS被覆基板の上に、F8−TFB(オクチルフルオレン−トリアリールアミンコポリマー、Sumation社から入手)の正孔輸送層を厚さ約10〜20nmにスピンコートした。次いで、F8−TFB及びPEDOT/PSS被覆基板をホットプレート上でアルゴン中170℃で30分間ベークした。F8−TFB層の上にエレクトロルミネセントポリマーであるBP104(Sumation社から入手)及び実施例8のポリマーの1:1ブレンドの最終層をキシレン溶液でスピンキャストすることにより成膜した。この層の厚さは約40〜50nmであった。次いで、被覆基板をベルジャーエバポレータに入れ、圧力が約1×10−6torrになるまで系をポンプで引いた。被覆基板の最終層の上に厚さが約3nmのフッ化ナトリウム層(較正済み水晶天秤(QCM=quartz crystal microbalance)により測定)を物理蒸着により成膜した。その後、フッ化ナトリウム層の上に厚さが約130nmのアルミニウム金属層を真空下の蒸着により成膜して、OLEDのカソード部分を形成した。
【0066】
各デバイスについて、印加電圧に対する輝度及び電流をソースメジャーユニット236型(Keithley社製)及びピコアンメータ(Keithley社製)に連結したシリコンダイオードを用いて測定した。シリコンダイオードを輝度計LS−100(ミノルタ社製)に対して較正し、OLEDの有効面積を測定することにより、シリコンダイオードの電流応答をOLED輝度(cd/m2)に変換した。輝度(cd/A)は、いかに効率的に注入電荷が目視できる光に変換されるかを測定し、LPWは電力効率計量(一定電力量に対してどのくらいの可視光を発生したか)である。LPWデータは動作電圧及び電荷の両方の可視光変換効率への作用を含んでいる。Cd/AとLPWデータの組合せから、ポリマー材料を含有するデバイスが比較的効率的に動作し、この材料がデバイスの低電圧動作に対応していることが分かる。
【0067】
各OLEDデバイスサンプルからの発光の色(ELスペクトル)は約390nm〜約750nmの範囲で約1mAの電流密度でデバイスを作動させながら較正済み分光器を用いて測定した。BP104材料からの青色発光と赤色発光ポリマー材料からの赤色発光の両方があった。この特定のデバイスからの発光は赤色発光種に支配されており、LPW及びCd/Aグラフで示される性能が側鎖発光ポリマーの性能を表すことを示唆している。
【0068】
以上、本発明を特定の特徴だけについて例示し、説明したが、多くの変更や改変を当業者が想起することができるであろう。したがって、特許請求の範囲は本発明の要旨に入るこのようなすべての変更や改変を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物。
【化1】

式中、R1、R3、R4及びR6は独立に水素、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルコキシ、置換オキサアルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換ヘテロアリール基であり、
1aは水素又はアルキルであり、
2はアルキレン、置換アルキレン、オキサアルキレン基、CO又はCO2であり、
2aはアルキレン基であり、
5はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、カルボキシ、置換アルキル、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換アルコキシ基であり、
Xは2,5−位又は2,7−位に位置するハロ、トリフレート、−B(OR1a2、又は次式の基であり、
【化2】

Lはフェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せに由来する。
【請求項2】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化3】

式中、R1bは水素、アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、置換アルキル、置換アルコキシ又は置換オキサアルキル基である。
【請求項3】
2がオキサアルキレン基を示す、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化4】

【請求項5】
次式で表される請求項1記載の化合物。
【化5】

式中、R1cは水素、アルキル又は置換アルキル基であり、piqはフェニルイソキノリニルである。
【請求項6】
請求項1記載の化合物に由来する構造単位を少なくとも1つ含むポリマー。
【請求項7】
次式の側基を少なくとも1つ含むポリマー。
【化6】

式中、R2はアルキレン、置換アルキレン、オキサアルキレン基、CO又はCO2であり、
3、R4及びR6は独立に水素、アルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルキルアリール、置換アリール、置換アリールアルキル又は置換ヘテロアリール基であり、
Lはフェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せに由来する。
【請求項8】
さらに、少なくとも1つのフルオレン単量体に由来する構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
さらに、ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン単量体に由来する構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【請求項10】
さらに、少なくとも1つのトリアリールアミン単量体に由来する構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【請求項11】
Lがフェニルイソキノリンに由来する、請求項7記載のポリマー。
【請求項12】
2がオキサアルキレン基を示す、請求項7記載のポリマー。
【請求項13】
側基が次式である、請求項7記載のポリマー。
【化7】

【請求項14】
側基が次式である、請求項7記載のポリマー。
【化8】

式中、piqはフェニルイソキノリニルである。
【請求項15】
側基が請求項1記載の化合物に由来する、請求項7記載のポリマー。
【請求項16】
側基が下記から選択される化合物に由来する、請求項7記載のポリマー。
【化9】

式中、ZはO、S又は直接結合である。
【請求項17】
次式の構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【化10】

【請求項18】
次式の構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【化11】

式中、piqはフェニルイソキノリニルである。
【請求項19】
次式の構造単位を含む、請求項7記載のポリマー。
【化12】

式中、piqはフェニルイソキノリニルである。

【公表番号】特表2011−518764(P2011−518764A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538001(P2010−538001)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/073627
【国際公開番号】WO2009/079039
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】