説明

光電子的応用のためのフッ素で橋かけされた会合体

本発明は、オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しているフッ素ラジカルを含むオリゴマーまたはポリマーと、異なる機能を持ち、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位からなる群より選択される、当該骨格中の最高3つのタイプの機能単位と、異なる機能を持ち、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位から選択される、フッ素ラジカルを含む1〜3つのタイプの化合物とからなるフッ素橋かけ会合体(fluorine-bridged association)に関する。本発明は、当該フッ素橋かけ会合体を用いる光電子デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しているフッ素ラジカルを含むオリゴマーまたはポリマーと、機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位からなる群より選択される、当該骨格中の最高3つのタイプの機能単位と、機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位から選択される、フッ素ラジカルを含む1〜3つのタイプの化合物とからなるフッ素橋かけ会合体(fluorine-bridged associate)に関し、また前記フッ素橋かけ会合体を用いる光電子デバイスに関する。
【0002】
有機、有機金属および/またはポリマー半導体を含む電子デバイスは、よりいっそう頻繁に商業的製品に用いられているか、あるいはまさに市場に導入されようとしているところである。ここで言及され得る例は、写真複写機における有機系電荷輸送材料(例えば、トリアリールアミンに基づく正孔輸送体)およびディスプレイデバイスにおける有機またはポリマー発光ダイオード(OLED=有機発光ダイオードもしくはPLED=ポリマー発光ダイオード)である。有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機光学増幅器および有機レーザーダイオード(O−laser)は、開発の進行段階にあり、将来主要な重要性を達成し得る。
【0003】
これらの電子または光電子デバイスは、特定の用途に関係なく、以下の一般的な層構造を有し、これは特定の用途に採用されてもよい:
(1)基板、
(2)一般的に金属または無機であるが、有機またはポリマー導電性材料から構築されていてもよい電極、
(3)一般的に1以上の導電性のドープされたポリマーから形成されている、任意の1以上の電荷注入層または電極の不均一を補うための中間層(「平坦化層」)、
(4)少なくとも1層の有機半導体、
(5)任意の1以上の更なる電荷輸送または電荷注入または電荷阻止層
(6)(2)に記載の材料を用いた対向電極
(7)封止材料。
【0004】
本発明は特に、しかし非限定的に有機発光ダイオード(OLED)を対象とし、これはポリマー材料を用いる場合には一般にポリマー発光ダイオード(PLED)としても既知である。上記配置は、種々の層が組み合わされてもよい光電子デバイスの一般構造を示し、これは最も単純な場合には、配置がその間に有機層が位置する2つの電極からなることを意味する。この場合、有機半導体層は、発光を含む全ての機能を担う。ポリ(p−フェニレン)に基づくこのタイプのシステムが、例えばWO90/13148 A1に記載されている。
【0005】
上記有機半導体層に用いられ得る光電子的応用のためのポリマーは一般に、共役したまたは部分的に共役した主鎖を有するポリマー(ここで当該ポリマー骨格自体が光電子的特性に関して重要な役割を果たす)、側鎖ポリマー、例えばPVK(ポリ−N−ビニルカルバゾール)(ここにおいて機能性は当該骨格に化学的に結合した輸送単位により達成される)、または中性ポリマー(これは薄膜形成特性を提供するに過ぎない(有機光受容体として既知であり、ここにおいて正孔輸送材料は典型的にはポリカーボネートに溶解している))である。これらのアプローチの全てが、原理上は実行可能であり、文献に記載されている。
【0006】
光電子的応用のための共役ポリマー、例えばポリフルオレン、ポリインデノフルオレン、ポリフェニレンおよびポリフェニレンビニレンなどは、OLED用途および有機光電池用途に適していることが証明された。これらのポリマーから製造されるデバイスの寿命はここ何年か絶えず増加しているが、「蒸着低分子」デバイス(SMOLED)の場合よりも発展は遅い。この理由は、例えば正孔輸送、電子輸送、結合および発光などの多層性SMOLEDに必要な機能性が各々の層に分かれている一方で、これらの全ての機能性が部分的または完全に共役したポリマーにおいて1つの層で組み合わされているという事実に起因する。共役ポリマーは特に、安定な電子輸送分子がすぐには利用できず、その結果中性マトリクスに容易には組み込むことができないため、目下、上記3つの中で最良のオプションである。この輸送部分は通常、骨格が担われるが、明らかにSMOLED中ほど安定ではない。さらに、共役単位は互いに連結し、したがってHOMO−LUMO分離をより低エネルギー方向にシフトさせ、これによって共役ポリマーの利用可能な色の範囲が制限される(完全共役ポリマーの場合、深青色は事実上不可能である)。寿命およびバンド分離の制限に関する問題のため、他の2つのアプローチは、低分子の場合とより類似しているため、より興味深いように思われる。しかしながら、マトリクス中での電子および正孔輸送分子のランダムな混合は通常、電荷移動状態をもたらし、これは通常エレクトロルミネセンスをクエンチ(quench)する。
【0007】
一方、側鎖ポリマー、例えばPVKなどは中性のPE様骨格を有し、従ってフリーラジカル、カチオン性、アニオン性または配位(coordinative)重合のいずれかにより調製される。しかしながら特に、OLEDデバイスにおけるフリーラジカルまたは荷電した末端基に関する許容性はむしろ低い(ppmレベル)ため、これらのプロセスを制御することは単純ではない。加えて、重合はランダムなプロセスであるため、機能単位は非常に接近することになり、これは電荷移動錯体または二量体形成(PVKとして既知である)が、効率および長寿命に関して大きなハードルを示すことを意味する。
【0008】
上記先行技術に鑑みて、本発明の目的は、上記既知のアプローチの不利益を持たない光電子的応用、特にOLED用途のための新規な光電子的機能性オリゴマーまたはポリマー、および当該新規な光電子的機能性オリゴマーまたはポリマーを含む光電子デバイスを提供することにある。
【0009】
本発明に従って、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体および請求項14に記載の光電子デバイスによりこの目的が達成される。従属項には本発明の有利な改良が示される。
【0010】
本発明に従って、フッ素橋かけ会合体が提供され、これは
・オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しているフッ素ラジカルを含むオリゴマーまたはポリマーと、
・機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位からなる群より選択される、当該骨格中の最高3つ、好ましくは最高2つのタイプの機能単位と、
・機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位から選択される、フッ素ラジカルを含む1〜3つのタイプの化合物と
からなる。
【0011】
本発明に従うフッ素橋かけ会合体は、オリゴマーまたはポリマー骨格を有し、これに以下に記載するフッ素ラジカルから選択され得るフッ素ラジカルが結合する。本発明の意味において「骨格」は、フッ素ラジカルが直接的にポリマーもしくはオリゴマー骨格または当該ポリマーもしくはオリゴマーの任意の側鎖に位置してもよいことを意味する。さらに、当該オリゴマーまたはポリマー骨格(上記定義がここでも適用される)は任意に、機能、例えば正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位などに関して異なる、光電子的用途のための最高3つのタイプの機能単位を含む。これらの単位の例もまた以下に記載される。
【0012】
本発明の基本的な着想は、フッ素ラジカルを含む、機能に関して異なった3つのタイプの化合物を、フッ素親和性(fluorophilic)相互作用によってオリゴマーまたはポリマー骨格に結合させることにあり、これは例えばOLEDにおいて必要な少なくともいくつかの機能または全ての機能(即ち、正孔輸送および/または正孔注入、電子輸送および/または電子注入ならびに発光)を有するフッ素橋かけ会合体を提供する。フッ素ラジカルを含むこれらの化合物は本発明に従って、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位からなる群より選択されてよく、以下に例を記載する。
【0013】
「発光単位」は、「複数の発光単位」と同意義である。本発明において一般に、単数形の用語、例えば「a」または「an」もまた同様に、特に明示しない限りその複数形をも包含する。
【0014】
先行技術と比較して、本発明のフッ素橋かけ会合体は、光電子的機能を有する機能性化合物が化学反応を起こすことなくオリゴマーもしくはポリマー骨格(または側鎖)に結合することができ、且つ当該オリゴマーもしくはポリマー骨格(または側鎖)から所望の距離で所望の部位に位置することができるという利点を生ずる。
【0015】
本発明に従うと、例えば正孔輸送単位がオリゴマーまたはポリマー骨格に存在する場合、フッ素ラジカルを含む電子輸送および/または電子注入単位は、フッ素ラジカルによって所望の部位に正孔輸送単位から適切な距離で当該オリゴマーまたはポリマー骨格に結合するかまたは固定され、これは本発明のフッ素橋かけ会合体を含む光電子デバイスの可能な最良の性能を提供する。
【0016】
本発明のフッ素橋かけ会合体を含む光電子デバイスの寿命および効率を低下させる相互作用は、このようにして回避し得る。
【0017】
フッ素ラジカルを含む機能に関して異なったオリゴマーまたはポリマー骨格および化合物における、機能単位の種々の可能な配置が、以下に記載する好ましい実施形態に示される。
【0018】
好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマー骨格は機能単位を含み、フッ素橋かけ会合体はフッ素ラジカルを含む上記3つのタイプの化合物を含む。
【0019】
さらに好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマー骨格は、正孔輸送および/または正孔注入単位を含み、フッ素橋かけ会合体は好ましくは、フッ素ラジカルを含む化合物として電子輸送および/または電子注入単位および/または発光単位を含む。
【0020】
さらなる実施形態において、当該オリゴマーまたはポリマー骨格は、電子輸送および/または電子注入単位を含み、フッ素橋かけ会合体は、フッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位および/または発光単位を含む。
【0021】
さらなる実施形態において、オリゴマーまたはポリマー骨格は発光単位を含み、フッ素橋かけ会合体は、フッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位および/または電子輸送および/または電子注入単位を含む。
【0022】
更に好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマー骨格は正孔輸送および/または正孔注入単位ならびに電子輸送および/または電子注入単位を含み、フッ素橋かけ会合体は、フッ素ラジカルを含む化合物として1つ(以上の)の発光体単位を含む。
【0023】
更に好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマー骨格は正孔輸送および/または正孔注入単位ならびに発光単位を含み、フッ素橋かけ会合体は、フッ素ラジカルを含む化合物として電子輸送および/または電子注入単位を含む。
【0024】
更に好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマー化合物は電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位を含み、フッ素橋かけ会合体は、フッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位を含む。
【0025】
上記好ましい実施形態において、本発明のフッ素橋かけ会合体の機能は、特定の用途に関して調整されてよい。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、オリゴマーまたはポリマーは、非共役または部分的共役ホモもしくはコオリゴマーもしくはポリマーである。
【0027】
本発明の意味において、共役オリゴマーまたはポリマーは、主に主鎖に、対応するヘテロ原子により置き換えられてもよいsp混成(またはsp混成)炭素原子を含むオリゴマーまたはポリマーである。最も単純な場合、これは、主鎖中の二重および単結合の交互の存在を意味する。「主に」の語は、共役の中断をもたらす自然発生的な欠陥にもかかわらず、「共役オリゴマーまたはポリマー」の語に該当することを意味する。しかしながら、これは比較的多量の挿入された非共役セグメントを作為的に含むオリゴマーまたはポリマーを意味しない。さらに、例えば、アリールアミン単位、アリールホスフィン単位および/またはヘテロ環(即ち、N、OまたはS原子を介した共役)および/または有機金属錯体(即ち、金属原子を介した共役)が主鎖に位置する場合、本発明ではポリマーまたはオリゴマーは同様に共役したと称される。
【0028】
対照的に、単位、例えば単純な(チオ)エーテル架橋、エステル結合、アミドまたはイミド結合などは、本発明において非共役セグメントとして定義される。本発明の意味において、部分的共役オリゴマーまたはポリマーは、オリゴマーまたはポリマーを意味するものとし、これは主鎖中の非共役セグメントにより中断される比較的長い共役セグメントを含むか、または主鎖中の非共役であるポリマーの側鎖中の比較的長い共役セグメントを含む。
【0029】
特に、本発明に従うオリゴマーまたはポリマーは、ホモまたはコオリゴマーもしくはポリマーであり、ここでさらに好ましい実施形態におけるコオリゴマーまたはポリマーは、ランダムなコオリゴマーもしくはポリマー、交互のコオリゴマーもしくはポリマー、またはブロックコオリゴマーもしくはポリマーである。
【0030】
コポリマーに関連した「ランダム」、「交互」または「ブロック」の語は、当業者にとって既知であり、ここでさらに説明する必要はない。対応するコポリマーの使用は当業者に、所望の順序で所望の距離に特に単純な方法で、オリゴマーまたはポリマー骨格に結合するフッ素ラジカルを配置する可能性を提供し、それによりフッ素ラジカルを含む機能性化合物が所望の順序で所望の距離に配置されたフッ素橋かけ会合体が本発明に従って得られる。
【0031】
本発明に従って、オリゴマーは好ましくは3〜9の繰返し単位を含み、ポリマーは好ましくは9を超える(即ち、10以上の)繰返し単位を含む。
【0032】
本発明に従って用いられ得るフッ素ラジカル、即ち、オリゴマーまたはポリマー骨格および機能性化合物に結合するフッ素ラジカルは好ましくは、一般式Cを有し、式中x≧0、y≧0およびz≧1であり、隣接し得る0または1以上のCH基がO、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、NR、PR、CO、P(R)Oにより置き換えられていてもよく、Rは各々の存在について同じまたは異なり、直鎖または分岐または環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールもしくはヘテロアルキル基であり、さらに非芳香族部分中の1以上の非隣接C原子がO、S、CO、COO、OCOにより置き換えられていてもよく、但し2つの基Rが互いに環系を形成していてもよい。
【0033】
本発明の特に好ましい実施形態において、フッ素ラジカルは、F、CF、C、CF(CHS、CFCFSまたは(CF−(CHNからなる群より選択され、式中aは好ましくは整数0〜5を示す。
【0034】
フッ素橋かけ会合体において、オリゴマーまたはポリマーは、オリゴマーまたはポリマー骨格およびフッ素ラジカルの間にスペーサーSpを含む。用いられ得るスペーサーSpはこの目的のため当業者に既知の全ての基を含む。Spは好ましくは、1〜20のC原子、特に好ましくは1〜12の原子を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、ここにおいて1以上の非隣接CH基は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−,−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)−、−CH=CH−または−CΞC−で置き換えられていてもよい。
【0035】
慣習的なスペーサー基は例えば、−(CH−、−(CHCHO)p−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−であり、式中o=2〜12、p=1〜3である。
【0036】
好ましいスペーサー基はエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンまたはブテニレンである。
【0037】
Spは特に好ましくは、2〜8のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を示す。ここでは直鎖基が特に好ましい。
【0038】
オリゴマーまたはポリマー骨格とフッ素ラジカルとの間のスペーサーSpの存在により、フッ素ラジカルを含む機能性化合物、例えば正孔導体、電子導体および発光体がオリゴマーまたはポリマー骨格から距離を保つことができ、それによりフッ素橋かけ会合体を含む光電子デバイスの最適な性能が得られる。スペーサーは、当業者によって連続する実験を行うことなく適切な長さに調整し得る。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態において、発光体は三重項発光体である。特に三重項発光体は一般に、バンド分離を減少させるオリゴマーまたはポリマー骨格中の共役した領域によりクエンチされる。共役した領域から十分に離れたオリゴマーまたはポリマー骨格の部位に三重項発光体を位置させることにより、前記クエンチを防止することができ、これにより本発明にしたがって、その中にフッ素橋かけ会合体が存在する対応する光電子デバイスの性能を向上させることができる。
【0040】
本発明に従うフッ素橋かけ会合体において使用され得るオリゴマーまたはポリマーの機能単位(繰返し単位)の具体例を以下に示す。さらに、更なる繰り返し単位が示され、これは本発明に従うフッ素橋かけ会合体のオリゴマーまたはポリマーにおいて、オリゴマーまたはポリマー骨格単位のいずれかとして使用されるか、またはそれらに更なる特別な機能を付与する。
【0041】
本発明の意味において好ましいポリマーまたはフッ素含有ポリマー(またはフッ化もしくはペルフルオロ化側鎖基を含むポリマー)は、上記共役または部分的に共役し、且つ対応するヘテロ原子により置き換えられてもよい主鎖中のsp混成炭素原子を含むポリマーである。さらに本発明の意味において、例えばアリールアミン単位および/または特定のヘテロ環(すなわち、N、OまたはS原子を介した共役)および/または有機金属錯体(即ち、金属原子を介した共役)が主鎖に位置する場合、共役の語が同様に用いられる。例えば、PLEDまたは一般的にO−SCで用いられ得る共役したポリマーの典型的代表例は、ポリ−パラ−フェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリフェナントレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリインデノフルオレンであり、最も広い意味においてポリ−p−フェニレン(PPP)に基づく系およびこれらの構造の誘導体、特にフッ素含有基を含む誘導体である。
【0042】
本発明に従って、特に好ましいのは、更なる構造要素を含み、故にコポリマーと称されるべきポリマーである。ここで特に言及されるのは、WO02/077060 A1、WO2005/014689 A2およびこれらの明細書中で引用される文献における可能な構造要素の比較的広範なリストである。これらの更なる構造単位は例えば、以下に記載されるクラスに由来し、これらの構造単位は本発明に従って、本発明に従って用いられるポリマーの繰返し単位(即ち、ポリマーまたはオリゴマーの骨格または側鎖において)およびフッ素ラジカルを含む化合物の両方を意味すると解されるべきである。後者の場合、ポリマーまたはオリゴマーの次の繰返し単位への連結を示す結合(通常、点線形で描かれる)は存在しないが、好ましくは上記の通り、代わりにフッ素ラジカルが存在する。
【0043】
グループ1:ポリマー骨格を示す構造単位。
グループ2:ポリマーの正孔注入および/または輸送特性に影響するか、または正孔注入および/または輸送単位として機能する構造単位。
グループ3:ポリマーの電子注入および/または輸送特性に影響するか、または電子注入および/または輸送単位として機能する構造単位。
グループ4:グループ2およびグループ3の個々の単位の組合せを有する構造単位。
グループ5:結果として生じるポリマーまたはフッ素橋かけ会合体の形態学的性質および/または発光色に影響する構造単位。
グループ6:エレクトロフルオレセンスの代わりにエレクトロホスホレセンスが得られる程度まで発光特性を修正する構造単位。
グループ7:一重項状態から三重項状態への移動を改善する構造単位。
【0044】
上記グループのための適切且つ好ましい単位を以下に記載するが、これらは好ましくは本発明に従って定義されるフッ素含有基を含む。
【0045】
グループ1−ポリマー骨格を示す構造単位:
グループ1の好ましい単位は特に、6〜40のC原子を有する芳香族または炭素環式構造を含むものである。適切且つ好ましい単位はとりわけ、例えばEP 0842208、WO 99/54385、WO 00/22027、WO 00/22026およびWO 00/46321に開示されるフルオレン誘導体、インデノフルオレン誘導体、さらにEP 0707020、EP 0894107およびWO 03/020790に開示されるスピロビフルオレン誘導体、フェナントレン誘導体または、例えばWO 2005/014689に開示されるジヒドロフェナントレン誘導体である。例えば、WO 02/077060に記載される2つ以上のこれらのモノマー単位の組合せを用いることも可能である。ポリマー骨格のための好ましい単位は特に、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレンおよびジヒドロフェナントレン誘導体である。
【0046】
グループ1の特に好ましい単位は、下記式の二価の単位であり、点線は隣接する単位への連結を示す:
【化1−1】

【化1−2】

【0047】
ここにおいて、個々の基は以下の意味を有する:
YYはSiまたはGeであり、
VVはO、SまたはSeであり、
式中、種々の式は自由な位置でさらに1以上の置換基Rにより置換されていてもよく、Rは以下の意味を有する:
は各々の存在について同じまたは異なり、H、1〜22のC原子を有する直鎖、分岐または環状アルキルもしくはアルコキシ鎖であり、ここでさらに1以上の非隣接C原子がO、S、CO、O−CO、CO−OまたはO−CO−Oにより置き換えられていてもよく、さらに1以上のH原子がフッ素、5〜40のC原子を有するアリールまたはアルコキシ基により置き換えられていてもよく、さらに1以上のC原子がO、SまたはNにより置き換えられていてもよく、これは1以上の非芳香族基RまたはF、CN、N(RまたはB(Rにより置換されていてもよい;および
は各々の存在について同じまたは異なり、H、1〜22のC原子を有する直鎖、分岐または環状アルキル鎖であり、ここでさらに1以上の非隣接C原子がO、S、CO、O−CO、CO−OまたはO−CO−Oにより置き換えられていてもよく、さらに1つのH原子がフッ素または5〜40のC原子を有する任意に置換されたアリール基により置き換えられていてもよく、さらに1以上のC原子がO、SまたはNにより置き換えられていてもよい。
【0048】
グループ2−ポリマーの正孔注入および/または輸送特性に影響を与えるか、または本発明の意味におけるフッ素ラジカルを含む化合物として機能する構造単位:
これらは一般に芳香族アミンまたは電子が豊富なヘテロ環、例えば置換もしくは非置換トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリーレン−パラ−フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ−p−ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、フランなど、さらに、高いHOMO(HOMO=最高被占軌道)を有するO−、S−またはN含有へテロ環である。しかしながら、例えばWO 2005/017065 A1に記載されるトリアリールホスフィンもまたここでは適している。
【0049】
グループ2の特に好ましい単位は、以下の式の二価の単位であり、ここにおいてこれらの単位がオリゴマーまたはポリマーの一部である場合、点線は隣接する単位への連結を示す:
【化2−1】

【化2−2】

【0050】
式中、R11はRについて上述した意味のうちの1つを有し、種々の式は自由な位置で1以上の置換基R11によりさらに置換されていてもよく、記号および指数は以下の意味を有する:
nは各々の存在について同じまたは異なり、0、1または2であり、
pは各々の存在について同じまたは異なり、0、1または2、好ましくは0または1であり、
oは各々の存在について同じまたは異なり、1、2または3、好ましくは1または2であり、
Ar11、Ar13は各々の存在について同じまたは異なり、2〜40のC原子を有する芳香族または芳香族複素環系であり、これはR11により一置換または多置換されていてもよいか、あるいは非置換であってもよく、ここで可能な置換基R11は場合によってはいずれかの自由な位置にあってよく、
Ar12、Ar14は各々の存在について同じまたは異なり、Ar11、Ar13または置換もしくは非置換スチルベニレンもしくはトルアニレン単位であり、
Ar15は各々の存在について同じまたは異なり、Ar11について定義する系、9〜40の芳香環原子(C原子またはヘテロ原子)を有する芳香族または芳香族複素環系のいずれかであり、これはR11により一置換または多置換されるかまたは非置換であってよく、少なくとも2つの縮合環をからなり、ここで可能な置換基R11は場合によってはいずれかの自由な位置にあってよい。
【0051】
グループ3−ポリマーの電子注入および/または輸送特性に影響を与える構造単位または本発明の意味においてこの機能を果たすフッ素ラジカルを含む化合物:
これらは一般に、電子不足芳香族またはヘテロ環化合物、例えば、置換または非置換ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピレン、ペリレン、アントラセン、ベンズアントラセン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、フェナジン、ベンズイミダゾール、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドまたはトリアジンなどだけでなく、トリアリールボランなどの化合物および、さらに低いLUMO(LUMO=最低空軌道)を有するO−、S−またはN含有へテロ環、ならびに例えばWO 05/040302に開示されるベンゾフェノンおよびそれらの誘導体である。
【0052】
グループ3の特に好ましい単位は、以下の式の二価の単位であり、これらの単位がオリゴマーまたはポリマーの一部である場合、点線は隣接する単位への連結を示す:
【化3】

【0053】
ここで、種々の式は自由な位置で1以上の上述の置換基R11により置換されていてよい。
【0054】
グループ4−グループ2およびグループ3の個々の単位の組合せを有する構造単位:
本発明に従うポリマーまたはフッ素橋かけ会合体が、正孔移動度を増加させる構造および電子移動度を増加させる構造が互いに直接的に結合する構造単位を含むか、または両方を行い得る構造を含むことも可能である。従って、青色または緑色発光の発生のために本発明に従って光電子デバイスにおいてそれらを使用することはあまり好ましくない。
【0055】
ポリマー中にグループ4の前記単位が存在する場合、それらは好ましくは以下の式の二価の単位から選択され、これらの単位がオリゴマーまたはポリマーの一部である場合、点線は隣接する単位への連結を示す:
【化4−1】

【化4−2】

【0056】
ここで、種々の式は自由な位置で1以上の置換基R11により置換されていてよく、記号R11、Ar11、pおよびoは上述の意味を有し、Yは各々の存在について同じまたは異なり、O、S、Se、N、P、SiまたはGeである。
【0057】
グループ5−結果として生じるポリマーの形態学的特性および/または発光色に影響する構造単位または本発明の意味においてこの機能を果たすフッ素ラジカルを含む化合物:
上記単位に加え、これらは上述の基に該当しない少なくとも1つのさらなる芳香族または他の共役構造を有する、即ち、電荷−キャリア移動度にほとんど影響を与えないか、有機金属錯体ではないか、または一重項−三重項移動に影響を与えないものである。このタイプの構造要素は形態学的特性ではなく、得られるポリマーまたはフッ素橋かけ会合体の発光色にも影響を与え得る。従って当該単位によっては、それらは発光体として用いられてよい。ここで好ましいのは、6〜40のC原子を有する置換または非置換芳香族構造、またはトラン、スチルベンまたはビススチリルアリーレン誘導体であり、その各々は1以上の基R11により置換されていてもよい。ここで特に好ましいのは、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−もしくは9,10−アントリレン、1,6−、2,7−もしくは4,9−ピレニレン、3,9−もしくは3,10−ぺリレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4”−テルフェニリレン、4,4’−ビ−1,1’−ナフチリレン、4,4’−スチルベニレン、または4,4”−ビススチリルアリーレン誘導体の組込みである。
【0058】
特に非常に好ましいのは、以下の式の置換または非置換構造であり、これらの単位がオリゴマーまたはポリマーの一部である場合、点線は次の繰返し単位への移行を示す:
【化5−1】

【化5−2】

【0059】
ここで種々の式は、自由な位置で上記1以上の置換基R11により置換されてもよい。
【0060】
適切な青色発光単位は典型的には、オリゴマーまたはポリマー骨格として一般に用いられる単位であるか、または青色発光体、例えば本発明に従うフッ化化合物として用いられるものである。一般にこれらは、少なくとも1つの芳香族または他の共役構造を有するものであるが、発光色を緑色または赤色にはシフトさせない。
【0061】
好ましいのは、4〜40のC原子を有する芳香族構造だけでなく、スチルベンおよびトラン誘導体および特定のビス(スチリル)アリーレン誘導体である。例えば、これらは以下の構造要素であり、置換または非置換であってよく、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−または9,10−アントラセニレン、2,7−または3,6−フェナントレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4”−テルフェニリレン、4,4’−ビ−1,1’−ナフチリレン、4,4’−スチルベン誘導体、9,10−ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10−テトラヒドロピレン誘導体(例えばEP−A−699699に従う)、フルオレン誘導体(例えばEP−A−0 842 208、WO 99/54385、WO 00/22027、WO 00/22026、WO 00/46321に従う)、スピロビフルオレン誘導体(例えばEP−A−0 707 020、EP−A−0 894 107、WO 03/020790、WO 02/077060に従う)、5,7−ジヒドロジベンゾキセピン誘導体、シス−およびトランス−インデノ−フルオレン誘導体(例えば、GB 0226010およびEP 03014042に従う)ならびに9,10−ジヒドロフェナントレン誘導体(例えばDE 10337346に従う)である。これらのクラスに加えて、ここではいわゆるラダー(ladder)PPP(LPPP)(例えばWO 92/18552に従う)だけでなく、係蹄(ansa)構造を含むPPP(例えばEP−A−690086に従う)もまた適切である。電子に富んでいないビス(スチリル)アリーレン誘導体がこの目的のために用いられ得る。
【0062】
1を超える前記青色発光構造単位が、本発明に従うオリゴマーもしくはポリマーまたはフッ素橋かけ会合体に用いられることが好ましいこともある。
【0063】
オリゴマーまたはポリマーまたはフッ素橋かけ会合体が緑色発光構造単位を含む場合、この目的のために適切な構造単位は好ましくは、少なくとも1つの芳香族または他の共役構造を有し、発光色を緑色にシフトさせるものである。緑色発光単位の好ましい構造は、電子に富んだビススチリルアリーレンおよびこれらの構造の誘導体の群から選択される。
【0064】
さらに好ましい緑色構造単位は、ベンゾチアジアゾールおよび対応する酸素誘導体、キノキサリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ビス(チオフェニル)アリーレン、オリゴ(チオフェニレン)およびフェナジンの群から選択される。ここで、1つの代わりに複数の異なる緑色構造単位を用いることも許容され、この場合、緑色発光単位の総割合は最大20mol%、好ましくは最大10mol%、特に好ましくは最大3mol%である。
【0065】
適切な赤色発光構造単位は好ましくは、少なくとも1つの芳香族または他の共役構造を有し、赤色に発光色をシフトさせる単位である。赤色発光単位に好ましい構造は、電子に富んだ単位、例えばチオフェンなどが緑色発光電子欠乏単位、例えばキノキサリンまたはベンゾチアジアゾールと組み合わされたものである。さらに好ましい赤色発光単位は、少なくとも4つの縮合芳香族単位、例えばルブレン、ペンタセンまたはペリレンを含む系であり、これは好ましくは置換されているか、または好ましくは共役プッシュプル(push-pull)システム(ドナーおよびアクセプター置換基により置換されているシステム)であるか、あるいは好ましくは置換されているスクアリン(squarine)またはキナクリドンなどの系である。ここでは、1つの代わりに複数の赤色発光単位を用いることも許容され、赤色発光単位の総割合が最大10mol%、好ましくは最大5mol%、特に好ましくは最大1mol%である。
【0066】
適切な青色、緑色および赤色構造単位は主に、三重項状態から発光する、即ちエレクトロフルオレセンスの代わりにエレクトロホスホレセンスを呈する単位でもあり、これは一般にエネルギー効率を向上させる。これらの単位を、以下で三重項発光体という。低分子量OLEDにおいてこのタイプの金属錯体を使用することは、例えばM. A. Baldo et al.(Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4−6)に記載される。
【0067】
・この目的のために適切なのはまず、重原子、即ち、元素周期表の36を越える原子番号を有する原子を含む化合物である。
・この目的のために特に適切なのは、上記の条件を満たすdおよびf遷移金属を含む化合物である。ここで特に非常に好ましいのは、8〜10族の元素を含む対応する構造単位である(即ち、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)。
・本発明に従うポリマーの適切な構造単位は例えば、種々の錯体であり、これは例えばWO 02/068435、DE 10116962 A1、EP 1239526およびDE 10238903 A1に記載される。
【0068】
対応する化合物は、WO 02/068435に記載される。
【0069】
ここで錯体の色は、主に用いられる金属、正確な配位子構造および配位子上の置換基により決定される。緑色および赤色発光錯体の両方が既知である。したがって例えば、非置換トリス(フェニルピリジル)イリジウム(III)は緑色の光を発光し、一方で、配位炭素原子に対するパラ位の電子供与置換基(たとえば、ジアリールアミノ置換基)は、発光をオレンジ−赤色へシフトさせる。同様に既知なのは、種々の配位子構造を有するこの錯体の誘導体であり、これは(さらなる置換なしに)直接的にオレンジまたは深赤色の発光を生じる。前記配位子の例は、2−フェニルイソキノリン、2−ベンゾチオフェニルピリジンおよび2−ナフチルピリジンである。
【0070】
青色発光錯体は例えば、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(III)骨格を電子吸引基、例えば複数のフッ素および/またはシアノ基により置換することによって得られる。
【0071】
上記構造単位は本発明に従うフッ素ラジカルにより、所望のフッ素橋かけ会合体が得られる方法で置換される。フッ素ラジカルにより置換された前記構造単位の調製のための合成技術は、関連する分野の当業者に既知である。
【0072】
本発明に従うフッ素橋かけ会合体において用いられてよいフッ素ラジカルを含む機能性化合物の具体例を、以下に示す。
【0073】
少なくとも1つのフッ素ラジカルを含む本発明の化合物として好ましい蛍光発光体は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンのクラスから選択され、その各々は少なくとも1つのフッ素ラジカルにより置換される。モノスチリルアミンは、1つのスチリル基および少なくとも1つのアミンを含む化合物を意味するものとし、これは好ましくは芳香族である。ジスチリルアミンは、2つのスチリル基および少なくとも1つのアミンを含む化合物を意味するものとし、これは好ましくは芳香族である。トリスチリルアミンは、3つのスチリル基および少なくとも1つのアミンを含む化合物を意味するものとし、これは好ましくは芳香族である。テトラスチリルアミンは、4つのスチリル基および少なくとも1つのアミンを含む化合物を意味するものとし、これは好ましくは芳香族である。本発明の意味において、アリールアミンまたは芳香族アミンは、窒素に直接的に結合する3つの芳香族または芳香族複素環系を含む化合物を意味するものとし、そのうちの少なくとも1つは好ましくは少なくとも14の芳香族環原子を有する縮合環系である。スチリル基は特に好ましくはスチルベンであり、これはさらに二重結合上または芳香族環状で置換されていてもよい。このタイプの化合物の例は、置換もしくは非置換のトリスチルベンアミン、または例えばWO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、DE 102005058543 A1およびDE 102006015183 A1に記載されるさらなる化合物である。好ましいのはさらに、WO 06/122630およびDE 102006025846 A1に従う発光体としての化合物である。
【0074】
りん光発光体化合物は好ましくは、20を越える、好ましくは36を越え且つ84未満、特に好ましくは56を越え且つ80未満の原子番号を有する少なくとも1つの元素を含む金属錯体のクラスから選択される。好ましいのは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウム、特にイリジウムを含む金属錯体の使用である。一般に、先行技術に従って用いられるりん光材料がこの目的のために適している。
【0075】
グループ6−エレクトロフルオレセンスの代わりにエレクトロホスホレセンスが得られる程度まで発光特性を修正する構造単位または本発明の意味においてこの機能を果たすフッ素ラジカルを含む化合物:
特にこれらは、室温でも高い効率で三重項状態から発光する、即ちエレクトロフルオレセンスの代わりにエレクトロホスホレセンスを呈することのできる構造単位であり、これは一般にエネルギー効率に改善をもたらす。この目的のために適切なのはまず、36を超える原子番号を有する重原子を含む化合物である。特に好ましいのは、上記条件を満たすdまたはf遷移金属を含む化合物である。ここで特に非常に好ましいのは8〜10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含む対応する構造単位である。ここでポリマーに適切な構造単位は例えば、WO 02/068435、WO 02/081488、EP 1239526およびWO 04/026886に記載される種々の錯体である。対応するモノマーはWO 02/068435およびWO 2005/042548 A1に記載される。
【0076】
グループ6の好ましい構造単位は以下の式のものである:
【化6−1】

【化6−2】

【0077】
ここにおいてMはRhまたはIrを表わし、Yは上記意味を有し、種々の式は自由な位置で上記1以上の置換基R11により置換されていてよい。
【0078】
グループ7−一重項から三重項状態への移動を改善する構造単位または本発明の意味においてこの機能を果たすフッ素ラジカルを含む化合物:
これらは特に、一重項状態から三重項状態への移動を改善し、グループ6の構造要素の支持に用いられ、これらの構造単位のホスホレセンス特性を改善する構造単位である。この目的に適しているのは特に、例えばWO 04/070772およびWO 04/113468に記載されるカルバゾールおよび架橋カルバゾール二量体単位である。この目的のために適しているのはさらに、例えばWO 2005/040302 A1に記載されるケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよび類似の化合物である。
【0079】
グループ1〜7のうちの1つの、1を超える構造単位を構造単位が同時に存在することも可能である。
【0080】
さらにポリマーは同様に金属錯体を含み、これは一般に1以上の配位子および1以上の金属中心から構築されており、主鎖または側鎖に結合している。フッ素ラジカルを含む化合物はこのクラスに由来してもよい。
【0081】
好ましいのは、さらにグループ1〜7から選択される1以上の構造単位を含むポリマーである。さらに好ましいのは、グループ1〜7から選択される1以上の構造単位をさらに含むフッ素橋かけ会合体である。
【0082】
同様に好ましくは、ポリマーまたはフッ素橋かけ会合体が電荷輸送および/または電荷注入を改善する構造単位、即ち、グループ2および/または3の構造単位を含み、これらの構造単位の1〜30mol%は特に好ましく;これらの構造単位の2〜10mol%は特に非常に好ましい。
【0083】
さらに特に好ましくは、ポリマーまたはフッ素橋かけ会合体がグループ1の構造単位、グループ2および/または3の構造単位、およびグループ5の構造単位を含む。
【0084】
ポリマーは好ましくは10〜10,000、特に好ましくは20〜5000、および特に50〜2000の繰返し単位を含む。本発明に従うフッ化オリゴマーは、3〜9の繰返し単位を含み、それらとは区別されるべきである。そうでなければ、オリゴマーは上記の全ての繰返し単位を含み、これは発光体を含んでもよい。
【0085】
ポリマーの必要な溶解性は特に、種々の繰返し単位における置換基により確実なものとなる。
【0086】
ポリマーは直鎖、分岐または架橋していてよい。本発明のコポリマーはランダムな、交互の、またはブロック状の構造を有していてよいか、あるいは交互の配置における複数のこれらの構造を有していてもよい。ブロック状の構造を有するコポリマーを得ることが出来る方法、およびどのようなさらなる構造要素がこの目的のために特に好ましいかについては、例えばWO 2005/014688に記載される。この明細書は引用により本出願に組み込まれる。
【0087】
ポリマーは一般に1以上のタイプのモノマーの重合により調製される。適切な重合反応は当業者にとって既知であり、文献に記載される。特に適切且つ好ましい重合およびカップリング反応は、その全てがC−C結合を生じ、SUZUKI、YAMAMOTO、STILLE、HECK、NEGISHI、SONOGASHIRAまたはHIYAMAに従うものである。
【0088】
重合がこれらの手法により行われ得る方法、およびポリマーが次に反応溶媒から分離されて精製され得る方法は当業者に既知であり、詳細は文献、例えばWO 2003/048225およびWO 2004/037887に記載される。
【0089】
C−C連結反応は好ましくはSUZUKIカップリング、YAMAMOTOカップリングおよびSTILLEカップリングの群から選択される。
【0090】
ポリマーの合成のために、対応するモノマーが必要である。グループ1〜7の構造単位の合成は当業者に既知であり、文献、例えばWO 2005/014689に記載される。この文献およびここにおいて引用される文献は引用により本出願に組み込まれる。本発明に従うフッ化ポリマーを得るために、対応するモノマーをフッ化モノマーによって共重合し得る。
【0091】
ポリマーは、純物質としてではなく、いずれかの所望のタイプのさらなるポリマー、オリゴマー、樹状または低分子量の物質とともに混合物(配合物(blend))として用いられることがさらに好ましいこともある。例えば、これらは電子特性を改善するかまたはそれら自体発光してもよい。従って、前記配合物もまた本発明の一部である。
【0092】
さらに本発明は、本発明に従う1以上のフッ素橋かけ会合体またはその前駆体、即ち、1以上の溶媒におけるフッ素含有ポリマーまたは配合物および低分子(フッ化した)および/またはモノマー(フッ化した)を含む溶液および調合物(formulation)に関する。このタイプの溶液を調製し得る方法は当業者に既知であり、例えばWO 02/072714、WO 03/019694およびそこで引用される文献に記載される。溶液および調合物は任意に1以上の添加剤を含んでもよい。
【0093】
これらの溶液は例えば、フッ素橋かけ会合体の薄膜(またはポリマー層または低分子の層)の製造プロセスにおいて用いることができ、例えばエリアコーティング法(例えばスピンコーティング)または印刷プロセス(例えばインクジェット印刷)による。
【0094】
さらに本発明に従って、陰極と陽極と本発明に従うフッ素橋かけ会合体とを含む層を含む光電子デバイスが提供される。
【0095】
特に、本発明のフッ素橋かけ会合体が用いられる光電子デバイスは、本発明に従う有機もしくはポリマー発光ダイオード、有機太陽電池(O−SC、例えばWO 98/48433、WO 94/05045)、有機電界効果トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC、例えばWO 95/31833、WO 99/10939)、有機電界クエンチ素子(FDQ、例えばUS 2004/017148)、有機光学増幅器、有機光受容体、有機フォトダイオードまたは有機レーザーダイオード(O−laser、例えばWO 98/03566)である。
【0096】
デバイスは相応に、用途に応じて構造化され、端子が設けられ、最後にそれ自体公知の様式で密封される。これはこのタイプのデバイスの寿命が、水および/または空気の存在下で大幅に短縮されるためである。ここで、導電性のドープされたポリマーを、1つまたは両方の電極(電極および対向電極または陽極および陰極)のための電極材料として用い、導電性のドープされたポリマーを含む中間層を導入しないことも好ましい。
【0097】
O−FETおよびO−TFTへの応用の場合、構造が電極および対向電極(ソースおよびドレイン)とは別に、さらなる電極(ゲート)を具備することがさらに必要であり、これは一般的に高い(またはまれに低い)誘電率を有する絶縁体層により有機半導体から絶縁されている。さらに、前記デバイスにさらなる層を導入することが適切なこともある。
【0098】
本発明の目的のため、電極は可能な最も効率的な電子または正孔の注入が可能であることを確実にするためにそれらの電位が隣接する有機層の電位に可能な限り一致するように選択される。
【0099】
陰極は好ましくは低い仕事関数を有する金属、金属合金または多層構造を含み、これは種々の金属、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属またはランタノイド(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。多層構造の場合、前記金属に加えて、相対的に高い仕事関数を有するさらなる金属(例えばAg)を用いることもでき、その場合、金属の組合せ、例えば、Ca/AgまたはBa/Agが一般的に用いられる。金属陰極と有機半導体との間に、高い誘電率を有する金属の薄い中間層を導入することが好ましいこともある。この目的に適しているのは、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物でだけでなく、対応する酸化物である(例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF等)。この誘電体層の厚さは、好ましくは1〜10nmである。
【0100】
陽極は、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。陽極は、好ましくは、真空に対して4.5eVより大きな電位を有する。この目的に適しているのは、一方では高い酸化還元電位を有する金属、例えば、Ag、PtまたはAuである。他方では、金属/金属酸化物電極(例えば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)が好ましいこともある。いくつかの応用のため、有機材料の照射(O−SC)または光のカップリングアウト(coupling-out)(PLED/PLED、O−laser)を可能にするため、少なくとも1つの電極が透明であるべきである。好ましい構造は、透明な陽極を使用する。ここで好ましい陽極材料は、導電性の混合金属酸化物である。特に好ましいのは、インジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいのは、導電性のドープされた有機材料、特に導電性のドープされたポリマーである。
【0101】
本発明は、実施例を参照して以下でより詳細に説明され、限定的に解されるべきではない。
【0102】
実施例
例1および2:ポリマーの調製
本発明のポリマーP1および比較ポリマーC1は、WO 03/048225 A2に従うSUZUKIカップリングにより以下のモノマー(パーセントデータ=mol%)を用いて合成される。
【0103】
例1(ポリマーP1)
【化7】

【0104】
例2(比較ポリマーC1)
【化8】

【0105】
例3および4:発光層の製造および測定
本発明に従う発光体T1およびT2を有するポリマーP1およびC1の溶液は、高純度の乾燥した酸素フリーのトルエン中で調製される。各場合において濃度は、ポリマーに基づき8%重量の発光体であり、総サンプル重量は12.5mg/mlである(即ち、1mg/mlのT1またはT2、および11.5mg/mlのP1またはC1)。層の厚さが80nmのフィルムをそれらから石英試験片上にスピンコーティングすることにより製造し、続いて窒素充填サンプルスペースを有するPLスペクトロメーター(Hitachi F−4500蛍光分光計)中で測定した。効率的な励起エネルギーの移動、およびOLED中でのポリマーから発光体への再結合により発生する励起子の尺度は、前記薄膜中の発光体の発光に対するポリマーの残りの発光の比である。
【化9】

【0106】
図1は、P1中T1およびC1中T1のスペクトルを示し、図2はP1中T2およびC1中T2のスペクトルを示す。各々の場合、励起波長は395nmのポリマーの吸収極大にある。どちらの場合もスペクトルは、同様にフッ化されたマトリクスP1についてより高い赤色の割合を示す、即ち、励起エネルギー移動はF−F相互作用のためより良好に機能する。
【0107】
表1は、簡略化のため、規格化したスペクトルおよび最大値の比から計算した結果をまとめる。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】P1中T1およびC1中T1のスペクトル。
【図2】P1中T2およびC1中T2のスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しているフッ素ラジカルを含むオリゴマーまたはポリマーと、
・機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位からなる群より選択される、当該骨格中の最高3つのタイプの機能単位と、
・機能に関して異なり、正孔輸送および/または正孔注入単位、電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位から選択される、フッ素ラジカルを含む1〜3つのタイプの化合物と
からなるフッ素橋かけ会合体(fluorine-bridged associate)。
【請求項2】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が機能単位を含まず、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む3種類の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項3】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が正孔輸送および/または正孔注入単位を含み、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として電子輸送および/または電子注入単位および/または発光単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項4】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が電子輸送および/または電子注入単位を含み、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位および/または発光単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項5】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が発光単位を含み、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位および/または電子輸送および/または電子注入単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項6】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が正孔輸送および/または正孔注入単位ならびに電子輸送および/または電子注入単位を含み、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として発光単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項7】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が正孔輸送および/または正孔注入単位ならびに発光単位を含み、且つ前記フッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として電子輸送および/または電子注入単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項8】
前記オリゴマーまたはポリマー骨格が電子輸送および/または電子注入単位ならびに発光単位を含み、且つフッ素橋かけ会合体がフッ素ラジカルを含む化合物として正孔輸送および/または正孔注入単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項9】
前記オリゴマーまたはポリマーが、非共役、部分的共役または共役ホモもしくはコオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする、請求項1〜8の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項10】
前記フッ素ラジカルが、一般式Cを有し、式中x≧0、y≧0およびz≧1であり、隣接し得る0または1以上のCH基がO、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、NR、PR、CO、P(R)Oにより置き換えられていてもよく、Rは各々の存在について同じまたは異なり、直鎖、分岐または環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールもしくはヘテロアルキル基であり、さらに非芳香族部分における1以上の非隣接C原子がO、S、COO、OCOにより置き換えられていてもよく、但し2つの基Rが互いに環系を形成していてもよいことを特徴とする、請求項1〜9の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項11】
前記オリゴマーまたはポリマーが、前記オリゴマーまたはポリマー骨格と前記フッ素ラジカルとの間にスペーサーを含むことを特徴とする、請求項1〜10の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項12】
前記発光体が三重項発光体であることを特徴とする、請求項1〜11の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体。
【請求項13】
1以上の溶媒とともに、請求項1〜12の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体またはその前駆体を含む調合物(formulation)。
【請求項14】
陰極と陽極と請求項1〜12の1項以上に記載のフッ素橋かけ会合体を含む層とを含む、光電子デバイス。
【請求項15】
前記光電子デバイスが、有機もしくはポリマー発光ダイオード、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機集積回路、有機電界クエンチ素子、有機光学増幅器、有機光受容体、有機フォトダイオード、または有機レーザーダイオードであることを特徴とする、請求項14に記載の光電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−502117(P2012−502117A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524222(P2011−524222)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005707
【国際公開番号】WO2010/025802
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】