説明

光音響及び超音波の結合型イメージング・システム

本開示は、同じ物体の光音響及び超音波イメージを同時に表示するようにされているシステムを提供する。イメージ・コンバイナは、結合されたイメージを生成する前に2つのイメージの空間的及び時間的補間を実施することができる。結合イメージは次に、LCD又はCRTなどの表示システムに表示される。そのシステムは、光音響イメージを強化するために超音波データから取得された動作推定を使用することができ、それによってそれの見掛けのフレーム率が増加し、アーチファクトを低減するために連続するフレームをレジスターする。そのシステムは、空間的及び時間的にレジスターされる、超音波及び光音響の結合イメージを生成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光音響及び超音波イメージングに関連するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響(PA)トモグラフィーは、新たなメディカル・イメージングの様式である(非特許文献1及び非特許文献2を参照)。通常、短レーザーパルスが対象の物体(例えば、人間又は動物の組織)に向けて放たれる。レーザー・エネルギーはその物体の内部の構造部によって吸収され、迅速な温度上昇及び熱膨張が起こる。この熱膨張が、超音波が該物体の中を伝播する原因となり、その超音波は物体の表面上に置かれた超音波トランスデューサーによって受信される。これらのシグナルはレーザーの波長における物体の吸収のイメージを生成するためにビーム形成される。レーザー放射は物体の内部で散乱するため、その照射は強く焦点が合っていなく、単一のレーザーパルスからイメージが形成されることが可能である。S/N比(SNR)を増加させるために、これらのイメージのいつくかの平均を取ってもよい。
【0003】
超音波イメージングは既に実施されているメディカル・イメージングの様式である。イメージは、超音波エネルギーの焦点が合っているパルスを体内に送り込むことによって形成される。それらのパルスは、体内の構造部間の境界に反射される。その反射は超音波トランスデューサーに伝播して戻り、ビーム形成され、1つのAライン(A-line)を生成する。それぞれの送信は、超音波イメージの1ラインの形成に使用される。従って、超音波イメージは、多重の送信によって形成される。
【0004】
近年、光音波イメージングに組み合わされた光音響イメージングに対する興味が存在している。(非特許文献3)今のところこれらのシステムは、2つのモードで操作されており:選択されたモードによって光音響又は超音波のうち一方のイメージを生成する。それは、たとえハードウェア及び処理段階の大部分が両タイプのイメージングに共通している場合も一方のイメージを生成する。
【0005】
研究者達は、その2つの様式のイメージを並べて表示するシステムを説明している。(非特許文献3)この配置の問題は、同じ解剖学的構造部から発する2つのイメージの特徴を識別するのは難しいということである。
【0006】
そのPAイメージのフレーム率は、そのレーザーのパルスの繰り返し率及び十分なS/N比を達成するためにいくつかのパルスの平均を取る(潜在的な)必要性によって限定される。典型的なレーザーのパルス繰り返し率は10Hzである。これは従って、それらのPAイメージの最大のフレーム率である。平均化することはそれを減少させる。これは、超音波よりも大幅に低い率である。超音波のフレーム率は通常、イメージングの奥行きが10cm及びイメージ・ラインが128では60Hzである。PAイメージ及び超音波イメージが交互に取得される場合、そのフレーム率はそれに応じて低減される。例えば、PAイメージが10Hzで取得された場合、超音波のフレーム率は5Hz乃至55Hz低減される。
【0007】
PAイメージの比較的低いフレーム率は異なるPAフレームの結合を困難にする。この必要性は、いくつかのPAフレームが平均化される時に発生するか、又は違った波長で取得されたPAフレームが比較される。(非特許文献4参照)イメージングがされる物体(例えば、人間又は小動物の身体)は、2つのフレームが取得される場合、その間の時間は動作してもよい。フレームが平均化される場合、これは結果として生成されるイメージの空間分解能を低下させる。それらのフレームが異なる波長に相当する場合、その動作は、図1(b)に表わされるように、誤レジストレーション及び場合によってはアーチファクトをもたらす。
【0008】
図1(a)及び図1(b)を参照すると、異なった波長(lambda1及びlambda2)で取得されたPAフレームの不正なレジストレーションの結果もたらされるアーチファクトが表示されている。グラフは、イメージの断面図を表わす。横座標がピクセル値である。図1(a)では、2つのフレームが正式にレジスターされている。その2つの波長でのイメージ間の正しい比は、黒色で表わされている。図1(b)では、フレーム間の時間の動作により、lambda2のフレームがシフトしている。その比はここでは間違いであり、第4及び第5サンプルにおいて大きなアーチファクト値を示す。
【0009】
その結果、PA及び超音波イメージを有効に組み合わせたイメージング・システムの必要性が存在する。これら及び他の必要性は、本開示のアセンブリ及び方法によって対処及び/又は克服することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S. Manohar, A. Kharine, J.C.G. van Hespen, W. Steenbergen, and T. G. van Leeuwen, "The Twente Photoacoustic Mammoscope: System Overview and Performance” Physical Review E. Vol. 71, No. 11, pp.2543-2557 2005年6月
【非特許文献2】M. Xu and L. Wang, "Universal back-projection algorithm for photoacoustic computing tomography" Physical Review E, Vol. 71, No. 1, pp.16706 2005年
【非特許文献3】J. Niederhauser, M.Jaeger, R. Lemor, P. Weber, and M. Frenz, "Combined Ultrasound and Optoacoustic System for Real-Time High-Contrast Vascular Imaging In Vivo," IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol. 24, No. 4, pp. 436-440, 2005年4月
【非特許文献4】X.Wang, Y.Pang, G.Ku, X.Xie, G.Stoica, and L.Wang, "Noninvasive laser-induced photoacoustic tomography for structural and functional in vivo imaging of the brain" Nature Biotechnology, Vol. 21, No. 7, pp.803-806 2003年7月
【非特許文献5】E.E.Konofagou, T.Harrigan, and J.Ophir, "Shear strain estimation and lesion mobility assessment in elastography," Ultrasonics, Vol.38, No.1-8, pp.400-4, 2000年
【非特許文献6】J.Ohir, S.K.Alam, B.Garra, F.Kallel, E.Konofagou, T.Krouskop, and T.Varghese, "Elastography: ultrasonic estimation and imaging of the elastic properties of tissues," Proceesings of the Institution of Mechanical Engineers. Part H, Journal of Engineering in Medicine, Vol.213, No.3 pp.203-33, 1999年
【非特許文献7】J.Ophir, I.Cespedes, H.Ponnekanti, Y.Yazdi, and X.Li, "Elastography: a quantitative method for imaging the elasticity of biological tissues," Ultrasonic Imagning, Vol. 13, No.2, pp.111-34,1991年
【非特許文献8】E.J.Chen, R.S.Adler, P.L.Carson, W.K.Jenkins, and W.D.O'Brien, Jr., "Ultrasound tissues displacement imaging with application to bearst cancer,” Ultrasound in Medicine and Biology, Vol. 21, No.9, pp.1153-62, 1995年
【非特許文献9】M.O’Donnell, A.R.Skovoroda, B.M.Shapo, and S.Y.Emelianov, “Internal displacement and strain imaging using ultrasonic speckle tracking,” IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control, Vol. 41, No. 3, pp.314-25, May 1994年
【非特許文献10】D.A. Christensen, Ultrasonic Bioinstrumentation: John Wiley & Sons, 1988年
【非特許文献11】P.Thevenaz, T.Blu, and M.Unser、”Interpolation revisited [medical images application],” Medical Imaging, IEEE Transaction, Vol.19, No.7, pp.739-758, 2000年
【非特許文献12】H.A. Larim, M. Bister, and M.U. Siddiqi, “Low rate video frame interpolation - challenges and solution,” in Proc. Acoustics, Speech, and Signal Processing, 2003. Proceedings (ICASSP ’03)
【非特許文献13】2003 IEEE International Conference on, 2003, Vol. 3, pp. III-117-20 vol. 3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は光音響イメージ及び超音波イメージをリアル・タイムで生成するためのシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に伴う模範的なイメージング・システムは:(a)光音響シグナルを発生させる手段;(b) (i)超音波を送信する;(ii)該超音波によって生成された超音波シグナルを受信する;及び(iii)該光音響シグナル手段によって生成された光音響シグナルを受信する;ようにされた少なくとも1つの第1トランスデューサー;(c)該超音波シグナルに基づいた動作を推定するようにされた動作推定器;及び(d)受信された光音響及び超音波シグナル並びに動作推定器から発せられた超音波データ、光音響データ及び動作推定データを受信し複合するためのイメージ・コンバイナ(image combiner)であり、該コンバイナは少なくとも1つの光音響イメージを生成するように動作を修正する。その光音響イメージは、動作推定器のデータを使用してイメージ・コンバイナによって修正されてもよい。模範的なイメージ・コンバイナは、受信された光音響データシグナル、超音波シグナル及び動作推定器から発せられる超音波データ、光音響データ及び動作推定データを受信して組み合わせ、複合イメージを生成するように適合されている。
【0013】
本開示による模範的なシステムにおいて、組み合わされたイメージがフレーム・バッファーから受信され:(i)該イメージ・コンバイナから発せられる組み合わされたイメージ出力を保管する;(ii)該組み合わされたイメージを表示手段に送信する;ように適合されている。通常、光音響シグナル手段は、サンプル内において光音響シグナルを生成するようにされた照射システムによって達成される。一般的に、その照射システムは、レーザーなどのエネルギー・ビームに特徴づけられる。該表示手段は、通常LCD又はCRTなど、メディカル・イメージングに使用される如何なる表示システムであってもよい。
【0014】
模範的な実施形態においてフレーム・バッファーは、約55Hzの率で組み合わされたイメージのシリーズを送信するようにされている。通常、受信された超音波シグナルは、超音波ビーム形成器によってビーム形成され、PAイメージングにおいて動作の歪みを修正するためにPAイメージのみを生成するときは、ラジオ波シグナルの全てが動作推定器によって受信される。一般的に、超音波シグナル経路は、フィルタリング、検出及び複合を含むシリーズの段階の通過を含む。動作推定器は、イメージ・コンバイナによって受信される補償シグナルを生成するようにされている。本開示に伴う模範的なイメージ・コンバイナは、約55Hzの率で超音波イメージ・シグナルを受信するようにされている。
【0015】
模範的な実施形態では、受信された光音響シグナルは、イメージ・コンバイナによって受信される光音響イメージを生成するようにされている光音響シグナル走査変換器を通過する。本開示による模範的なイメージ・コンバイナは、約10Hzの速度で光音響イメージ・シグナルを受信するようにされている。通常、動作推定器は、ラジオ波シグナルの一部分に基づいて物体の動作を推定する。模範的な実施形態では、超音波シグナルはパルス状のドップラー・モードにおいて生成することができる。
【0016】
本開示による模範的なイメージ・コンバイナは、受信された光音響シグナルによって生じた、受信された超音波シグナル及びデータから生じるデータを含む組み合わせたフレームのシーケンスを生成するように適合されている。組み合わせたフレームのシーケンスは、フレーム・バッファーに送信される。該イメージ・コンバイナは、空間的及び時間的補間並びに受信された光音響シグナルの再サンプリングを実行するようにするべきである。通常、そのイメージ・コンバイナは、少なくとも1つの超音波イメージ及び少なくとも1つの光音響イメージのピクセル値の統合に基づいた出力フレームを生成するように調整される。
【0017】
模範的な実施形態において、表示手段は、異なるイメージが空間的にレジスターされることを可能にし、各イメージに関連する解剖学的特徴が識別できるという条件を満たすようにされる。その表示手段は、グループから選択された表示オプションでイメージを表示するようにされており、該グループは:光音響イメージのみの表示、光音響イメージと超音波イメージを隣り合わせで表示する、光音響イメージを超音波イメージの上に重ねる、ドップラー情報を使用し、表示する光音響ピクセルを選択する、及びドップラー及び光音響酸化情報を統合する表示オプションから構成される。
【0018】
本開示は、サンプルのイメージを組み合わせる模範的な方法を説明し、該方法は:(a)光音響シグナルを生成するようにされている照射システムで、サンプルを照射する段階;(b)超音波シグナル及び光音響シグナルを受信するようにされている超音波送信手段によってサンプルに超音波を送る段階;(c)超音波イメージング手段を通して、受信された超音波シグナルの一部から超音波イメージを生成する段階;(d)動作推定器を通して、受信した光音響シグナルの残りの部分から動作を推定する段階;(e)光音響イメージング手段を通して、受信された光音響シグナルから光音響イメージを生成する段階;及び(f)該超音波イメージ、該動作推定及び該光音響イメージをイメージ・コンバイナで統合し、該イメージ・コンバイナはその組み合わされたイメージを表示手段に送信するようにされている、段階;を含む。
【0019】
開示されたシステム及び方法の付加的な特徴、機能及び利点は、以下の解説を、特に添付の図面と一緒に読むことによって明らかになるはずである。
【0020】
開示されたシステム及び方法を作成及び使用する技術に関して通常の技量を持つ技術者を援助するために、添付の図面を引用している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】異なる波長で取得されたPAフレームの不正確なレジストレーションから生じるアーチファクトを表わすグラフ;
【図1b】異なる波長で取得されたPAフレームの不正確なレジストレーションから生じるアーチファクトを表わすグラフ;及び
【図2】本開示に伴うPA及び超音波組み合わされたイメージング・システムを概略的に表わす;
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、光音響(PA)及び超音波イメージを組み合わせるシステム及び方法に関する。そのようなシステム及び方法は、PA又は超音波イメージの生成手段を使用してイメージを生成することを可能にする。これらのイメージの取得は交互的なため、ユーザーの視点からは、同時に取得されているように見える。2つのイメージングの様式は、異なったコントラスト・メカニズムに依存し、それらは従って、異なる情報を発する。例えば超音波のイメージは、異なる音響インピーダンスを持つ異なる組織の間の境界を表わすが、それに対してPAイメージは、レーザー・エネルギーの吸収線をそれに関連する使用した可視光線で表す。
【0023】
本開示によるシステムは、同時に同じ物体のPA及び超音波イメージを表示するのに使用される。本開示に伴うシステムの模範的な実施形態は、組み合わされたイメージを生成する前に、2つのイメージ(PA及び超音波)の空間的及び時間的補間を実行するイメージ・コンバイナを含む。その組み合わされたイメージは次に、CRT及び/又はLCDなどの表示手段に表示される。模範的な実施形態では、そのイメージは、プリンター、コンパクト・ディスク及び/又はフラッシュドライブなどのデータ・ストレージ又は処理手段へデータとして送信されることもできる。本開示による模範的なイメージ・コンバイナは、超音波データから取得した動作推定を使用して光音響イメージを強化することができるが、それは:見掛けのフレーム率を増加させる;アーチファクトを低減するために連続したフレームをレジスターする;ことである。模範的な組み合わされたシステムは、空間的及び時間的にレジスターされた超音波及びPAの結合イメージを生成することができる。
【実施例】
【0024】
図2を参照すると、PA及び超音波を組み合わせたイメージング・システムのための模範的なイメージ・コンバイナの略図が示されている。本開示による模範的なシステムは、超音波シグナル経路、PAシグナル経路、動作推定器、フレーム・バッファー及び表示デバイスと一緒に使用されている。超音波イメージは通常トランスデューサー、超音波ビーム形成器及び超音波走査変換器を使用して形成される。これらの部品は、存在している近代的な超音波マシーンに通常見られる部品と同じであってもよい。超音波エネルギーは、超音波ビーム形成器及びトランスデューサーを使用して、焦点が合わされたビームのシリーズとして送信される。そのトランスデューサーによって受信されたエネルギーは次に、ビーム形成され、Aライン(A-lines)として知られる、それに関連するラジオ波(RF)シグナルのシリーズを生成する。これらのシグナルが検出され、そしてBモード(B-mode)超音波イメージを形成するように走査変換される。また、同じ部品が、動作を検出及び測定するために、パルス状のドップラー・モードで使用されてもよい。
【0025】
PAシグナルは、短レーザーパルスで物体を照射することによって発せられる。該シグナルは、PAと超音波シグナル経路に共通するトランスデューサーによって受信される。該シグナルは、PAビーム形成器を通過し、それによって空間的に局地化される。PA走査変換器は次に、該シグナルを再サンプリングしPAイメージを生成するのに使用される。模範的な実施形態では、単一のトランスデューサーが超音波を送信し、その超音波によって生成された超音波シグナルを受信し、PAシグナルを受信するように配置される。しかし、本開示に関連するシステムはまた、複数のトランスデューサーを有する実施形態を含む。模範的な実施形態では、第1トランスデューサーが、超音波を送信し、第2トランスデューサーがその送信された超音波によって生成される超音波シグナルを受信し、PAシグナルを受信する。
【0026】
動作推定器がその超音波データを使用し、物体の動作を推定する。動作の推定を達成するためには、同じイメージの位置から異なった時間に受信されるシグナルを比較する必要がある。これは、そのシグナルが検出及び走査変換される前に、ラジオ波(RF)Aライン(A-line)シグナルを使用して実行される。それに応じて、軸方向の動作を非常に正確に推定することが可能である。そのような動作推定の方法は、以前は弾性率測定法に用いられている。(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7参照)前述の文献の内容は参照することによりここに組み込まれている。
【0027】
スペックル・トラッキング法を使用して超音波イメージのシリーズ(検出及び走査変換後)から動作を推定することも可能である。(非特許文献8、非特許文献9参照)模範的な実施形態では、動作推定器は、超音波ビーム形成器及び超音波イメージからシグナルを受信し、動作推定を生成する。
【0028】
代替のさらなる推定法は、特定のドップラー・シーケンスから得られるドップラー情報の使用を含む。(非特許文献10参照)前述の文献の内容は参照することによりここに組み込まれている。当然のことながら、超音波イメージ発生器は、動作推定を実施するために
対照的な構造を含む必要はない。
【0029】
超音波シグナルから抽出された動作情報は、超音波イメージに表示されてもよい。業務用の超音波スキャナーは通常連続波ドップラー、カラードップラー、パワードップラー及びパルスドップラーのモードを含む。いくつかはまた、弾性測定法、ドップラー歪み速度イメージング及び組織ドップラーイメージングを特色とする。
【0030】
本開示による模範的なイメージ・コンバイナは少なくとも以下の2つの機能を実行してもよく、該機能は:
1.PAイメージのシーケンスの空間的及び時間的補間並びに再サンプリング、従って超音波シグナルから得られた動作推定を使用すること;及び
2.1つ又はそれ以上の超音波イメージ及び1つ又はそれ以上のPAイメージのピクセル値の組み合わせに基づいた出力フレームを生成すること;
を含む。
【0031】
イメージ・コンバイナの出力は通常、超音波及びPA情報の両方を含む、組み合わされたフレームのシーケンスである。この情報は大体、フレーム・バッファーに保管される。そのフレーム・バッファーは、表示手段に連続的に表示されるようにされている複数個のフレームを含む。模範的な表示手段は、CRT、LCD又は他の如何なる種類の情報表示システムも含むが、それらだけに限定されない。
【0032】
本開示によるシステムは、超音波及びPA様式で取得されるイメージが、単一の表示手段で表示されることを可能にするようにされている。さらに、模範的なシステムは、これらのイメージがたとえ異なる速度で取得されたとしても、同じ速度で表示されることを可能にする。模範的なシステムは、異なるイメージが、2つのイメージに関連する解剖学的構造部が識別できるという条件を満たすように、空間的にレジスターされることを可能にする。本開示に関連するさらなる態様は、異なったPAイメージが組み合わせる前にレジスターされることを可能にすることを含み、それによって誤レジスターによるアーチファクトが減少する。
【0033】
PAイメージシーケンスの空間的及び時間的再サンプリングは以下のように機能する:
1.空間的再サンプリング: PAイメージが、超音波イメージから異なる空間グリッド上に再構築されてもよい。PAイメージの空間的補間及び再サンプリングは従って、超音波イメージの上に重ねる前に必要である。この機能はPA走査変換モジュールの内部で実行してもよい。しかし、空間的補間の前に複数のPAフレームを組み合わせるなど、ある特定の操作を実行するのが望ましい(より高い精度又はより低い計算のため)。(非特許文献11参照)
2.超音波無しの時間的アップサンプリング: PAイメージが、ビデオ用に開発された標準的な技術を使用して時間的にアップサンプリングされることが可能である。(非特許文献12、非特許文献13参照)これは、それぞれの超音波のフレームに対してPAフレームが補間されることを可能にする。あるいは、PAフレームと超音波フレームの両方がビデオ表示速度に対して補間されることができる。
3.超音波動作情報を使用し、感知されたPA更新速度を増加させる: 模範的なPAイメージング・システムの典型的な最大フレーム速度は、10Hzである。この率で更新がされるイメージは、ユーザーには不安定(jerky)に見える。本開示に関連する模範的なシステムを使用し、イメージの内部の動作及び変形が、動作推定器によって検出及び推定される。超音波の動作領域(通常55Hzで測定される)は次に、そのPAイメージを歪めるのに使用することができる。歪んだPAイメージはそして、65Hzの速度で表示することができる。
4.超音波動作情報を使用し、組み合わせる前にPAイメージをレジスターする:
上記で説明したように、適切にレジスターがされていない2つのPAフレームを組み合わせることは、ぼやけ又は他のアーチファクトにつながる。その超音波動作領域は、そのPAフレームの取得の間の合間に起こった物体の変形を推定するのに使用される。その動作領域は次に、PAフレームの1つを歪めるのに使用することができ、それは両フレームが物体の同じ形状に相当するという条件を満たすように使用される。これは、そのぼやけ及びアーチファクトを低減する。
5.超音波動作情報を使用し、PAイメージのどの部分を組み合わせるか決定する:
ある特定のPAイメージの視界(field of view)の中のいくつかの構造部が、超音波動作推定器で正確にトラッキングをするには過度に速い速度で動いていることが可能である。例えば、スペックル・トラッキング・アルゴリズムの相関値が一定の閾値よりも低くてもよい。イメージのそれらの部分を歪めることによってレジスターするよりも、むしろそのPAイメージのそれらの部分を組み合わせないようにすることが有利であってもよい。
6.超音波情報を使用し、プローブ(深針)の位置の大きな変化が起こり、平均化が停止された時を検出する: 上記で説明されたように、十分なS/N比を達成するためにいくつかのPAフレームを平均することが必要であってもよい。これは該模範的システムの時間解像度を減少させ、イメージに持続性を持たせる。これは、プローブが体内の別の部分又は別の方向に動いた時、その前のイメージが持続し、それがたとえ、かなり異なった体内の構造部に相当する場合も持続するという不利点を持つ。超音波はこの状態を検出するのに使用でき、平均をリセットする。それは、以前のイメージが新規のイメージの上に重ならないという条件を満たすようにされる。このシナリオでは、2、3のフレームの間、(レジスターされた)イメージが平均化され十分なS/N比で生成されるようになるまで、該PAイメージの表示を停止することも適切である。
【0034】
本開示による、組み合わされたイメージング・システムはいくつかの表示オプションを達成するようにされており:
1.PAイメージのみを表示する: PAイメージは上記で説明されたように、超音波動作情報によって強化することができる。
2.PA及び超音波イメージを互いに隣接して表示する: イメージは、同じ(ビデオ)速度で表示され、たとえそれらのイメージが異なる速度で取得されても同じ速度で表示される。
3.PAイメージを超音波イメージの上に重ねる: PAイメージは、超音波イメージを表示するのに使用された時の異なったカラーマップを使用して表示することが可能である。そのPAイメージは、閾値に設定することができ、それ以下の値のピクセルは透明に見え、その背後の超音波イメージがユーザーに透けて見るようにすることができる。そのイメージの役割は、該PAイメージの上にその超音波イメージが重なるように、逆にすることもできる。
4.ドップラー情報を使用して、表示されるPAピクセルを選択する: 超音波からのドップラーシグナル(カラードップラー又はパワードップラー)は、イメージ・スキャンの内部の動作がどこにあるか検出するのに使用される。PAイメージは、ドップラーシグナルがある一定の閾値を超えた位置では、ピクセル上のカラー・オーバーレイとしてのみ表示される。例えば血液は、通常PAイメージングにしようされる光の波長において強い吸収体である。その結果としてのイメージは、従って、ある一定の速度を超えて動いている血液のイメージである。
5.ドップラー及びPA酸化情報を組み合わせる: PAイメージを2つの異なる波長で組み合わせることによって、血液の酸化を判断することが可能である。その酸化値は、ドップラーシグナルから得られた速度をそれにかけることができ、その結果がユーザーにイメージとして表示される。そのイメージは、酸素が、イメージングがされている血管の中に輸送される速度の測定を表わす。
【0035】
本開示に伴う模範的なシステムの可能な使用例は、人間又は小動物のメディカル・イメージングを含むがそれだけに限定されない。模範的なイメージング・システムは、例えばPhilips iU22又はiE33など、現存する近代的な超音波マシーンに追加することができる。
【0036】
本開示は、そのための模範的な実施形態及び実施方法に参照し説明をしているが、開示されているシステム及び方法は、そのような実施形態/実施方法に限定されない。むしろ、ここで提供されている説明によって当業者に明らかになるように、開示されているシステム及び方法は、本開示の精神と範囲から外れることなしに改善、変更及び強化を許容することができる。従って、本開示はそのような改善、変更及び強化をここに含まれる範囲内に明確に含む。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光音響シグナルを発生させる手段;
少なくとも第1トランスデューサーであり:
(i)超音波を送信する;(ii)前記超音波から発生する超音波シグナルを受信する;
(iii)前記超音波シグナル手段から発生する光音響シグナルを受信する;
ようにされている、第1トランスデューサー;
前記超音波シグナルに基づいて動作を推定するようにされている動作推定器;及び
前記受信された超音波及び光音響シグナル並びに前記動作推定器からの超音波データ、
光音響データ及び動作推定データを受信し組み合わせるようにされているイメージ・コン
バイナであり、少なくとも1つの光音響イメージを発生させるために動作を修正する、イ
メージ・コンバイナ;
を含むイメージング・システム。
【請求項2】
光音響シグナルを発生させる手段;
(i)超音波を送信する;(ii)前記超音波から発生する超音波シグナルを受信する;
(iii)前記超音波シグナル手段から発生する光音響シグナルを受信する;
ようにされている、少なくとも1つの第1トランスデューサー;
前記超音波シグナルに基づいて動作を推定するようにされている動作推定器;及び
前記受信された超音波及び光音響シグナル並びに前記動作推定器からの超音波データ、
光音響データ及び動作推定データを受信し結合するようにされているイメージ・コンバイ
ナであり、動作を修正するようにされている、結合イメージを生成するためのイメージ・
コンバイナ;
を含む、結合型イメージング・システム。
【請求項3】
請求項2に記載されたシステムであり、前記結合イメージはフレーム・バッファーによ
り受信され、該フレーム・バッファーが:
(i)前記イメージ・コンバイナから発せられた前記結合イメージの出力を保管する;
(ii)前記結合イメージを表示手段及び/又はデータ・ストレージ手段に送信する;
ようにされている、システム。
【請求項4】
前記光音響シグナル手段が、サンプル内で光音響シグナルを発するようにされた照射システムによって遂行される、請求項2に記載されたシステム。
【請求項5】
前記照射システムがエネルギー・ビームを特徴とする、請求項4に記載されたシステム。
【請求項6】
前記エネルギー・ビームがレーザーである、請求項5に記載されたシステム。
【請求項7】
前記表示手段がLCD及びCRTで構成されるグループから選択され、前記データ・ストレージ手段が、プリンター、ハード・ディスク、コンパクト・ディスク及びフラッシュドライブで構成されるグループから選択される、請求項3に記載されたシステム。
【請求項8】
前記フレーム・バッファーが約55Hzの率で結合イメージのシリーズを送信するように
されている、請求項3に記載されたシステム。
【請求項9】
前記受信された超音波シグナルが、超音波ビーム形成器によってビーム形成され、ラジ
オ波シグナルのシリーズを生成する、請求項3に記載されたシステム。
【請求項10】
前記ラジオ波シグナルの少なくとも一部分が前記動作推定器によって受信され、残りの
部分が超音波走査変換器を通り、前記イメージ・コンバイナによって受信されるようにさ
れている超音波イメージを生成する、請求項9に記載されたシステム。
【請求項11】
前記動作推定器が、前記イメージ・コンバイナによって受信される補償シグナルを発するようにされている、請求項10に記載されたシステム。
【請求項12】
前記イメージ・コンバイナが約55Hzの速度で超音波イメージを受信するようにされている、請求項11に記載されたシステム。
【請求項13】
前記動作推定器が、前記受信された超音波シグナル及び超音波イメージに基づいた補償シグナルを発するようにされている、請求項11に記載されたシステム。
【請求項14】
前記光音響シグナルが、前記イメージ・コンバイナによって受信されるべき光音響イメージを発するようにされている光音響走査変換器を通るようにされている、請求項3に記載されたシステム。
【請求項15】
前記イメージ・コンバイナが、約10Hzの速度で光音響イメージ・シグナルを受信するようにされている、請求項14に記載されたシステム。
【請求項16】
前記動作推定器が、ラジオ波シグナルの一部分に基づいて物体の動作及び変形を推定するようにされている、請求項10に記載されたシステム。
【請求項17】
前記超音波シグナルが、パルス状のドップラー・モードで発せられる、請求項2に記載されたシステム。
【請求項18】
請求項3に記載されたシステムであり、前記イメージ・コンバイナが、前記フレーム・バッファーに送信されるべき前記受信された光音響シグナルによって発せられた、前記受信された超音波シグナル及びデータによって発せられたデータを含む、前記組み合わされたフレームのシーケンスを発するようにされている、システム。
【請求項19】
前記イメージ・コンバイナが空間的/時間的補間及び前記受信された光音響シグナルの再サンプリングを実施するようにされている、請求項2に記載されたシステム。
【請求項20】
前記イメージ・コンバイナが、少なくとも1つの超音波イメージ及び少なくとも1つの光音響イメージのピクセル値の結合に基づいた出力フレームを生成するようにされている、請求項19に記載されたシステム。
【請求項21】
前記表示手段が、異なったイメージが、それぞれのイメージに関連する解剖学的特徴が識別できるという条件を満たすように空間的にレジスターされることを可能にする、請求項3に記載されたシステム。
【請求項22】
請求項3に記載されたシステムであり、前記表示手段がグループより選択された表示オプションにおいてイメージを表示するようにされており、該グループは:
光音響イメージのみを表示すること;光音響イメージ及び超音波イメージを互いに隣り合わせで表示すること;光音響イメージを超音波イメージの上に重ねること;表示される光音響ピクセルを選択するためにドップラー情報を使用すること;並びにドップラー情報及び光音響酸化情報を結合すること;によって構成される。
【請求項23】
サンプルのイメージを結合する方法であり:
光音響シグナルを発するようにされている照射システムでサンプルを照射する段階;
超音波シグナル及び光音響シグナルを受信するようにされている超音波送信手段で前記
サンプルに超音波を送信する段階;
前記受信された前記超音波シグナルの一部分から、超音波イメージング手段を通して、
少なくとも1つの超音波イメージを発生させる段階;
前記受信された超音波シグナルの残りの部分から動作推定器を通して動作推定を生成す
る段階;
前記受信された光音響シグナルから、光音響イメージング手段を通して、少なくとも1
つの光音響イメージを発生させる段階;及び
前記超音波イメージ、前記動作推定及び前記光音響イメージを結合し、前記結合イメー
ジを表示手段に送信するようにされているイメージ・コンバイナにおいて動作を修正する
段階;
を含む、方法。
【請求項24】
光音響シグナルを発生させる手段;
超音波を送信するようにされている少なくとも1つの第1トランスデューサー;
少なくとも1つの第2トランスデューサーであり:
(i)前記超音波から発せられる超音波シグナルを受信する;及び(ii)前記光音響シグナル手段から発生させられる光音響シグナルを受信する;
ようにされている第2トランスデューサー;
前記超音波シグナルに基づいて動作を推定するようにされている動作推定器;及び
前記受信された超音波及び光音響シグナルから発せられた超音波データ、光音響データ
及び動作推定データを受信及び結合し、動作を修正するようにされている、結合イメージを生成するためのイメージ・コンバイナ;
を含む、結合型イメージング・システム。
【請求項25】
光音響シグナルを発生させる手段;
(i)超音波を送信する;(ii)前記超音波から発せられた超音波シグナルを受信する;及び
(iii)前記光音響シグナル手段から発せられる超音波シグナルを受信する;ようにさせられている、少なくとも1つの第1トランスデューサー;及び
前記受信された超音波及び光音響シグナルから発せられた超音波データ、光音響データ
及び動作推定データを受信および結合し、動作を修正するようにされている、結合イメージを生成するためのイメージ・コンバイナ;
を含む、結合型イメージング・システム。
【請求項26】
前記超音波シグナルが、該超音波シグナルに基づいて動作を推定し、前記イメージ・コンバイナによって受信された動作推定データを生成し、動作の歪みを修正するようにされている動作推定器によって受信される、請求項25に記載されたシステム。

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−512929(P2010−512929A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542368(P2009−542368)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055231
【国際公開番号】WO2008/075299
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】