説明

免疫応答の増強

本発明は、IRM化合物により誘導される免疫応答を増強する方法を提供する。概して、本方法は、IRM化合物を細胞集団に投与する前に、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
免疫系のある主要な側面を刺激することにより作用するほかに、他のある側面を抑制することにより作用する新しい薬剤化合物を発見するために、近年多大な努力が払われ、目覚しい成功を収めた(たとえば、米国特許第6,039,969号明細書および米国特許第6,200,592号明細書参照)。免疫応答調整物質(IRM)として本明細書で言及されているこれらの化合物は、トール様受容体として知られる基本的免疫系機構を介して、選択されたサイトカイン生合成を誘導するように作用すると思われる。それらは、多種多様な疾患および病気を治療するのに有用な可能性がある。たとえば、ある種のIRMは、ウイルス性疾患(たとえば、ヒト乳頭腫ウイルス、肝炎、ヘルペス)、腫瘍形成(たとえば、基底細胞癌、扁平上皮癌、光線性角化症、黒色腫)、およびTH2介在性疾患(たとえば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、)の治療に有用な可能性があり、また、ワクチンアジュバントとしても有用である。
【0002】
IRM化合物の多くは、小さい有機分子イミダゾキノリンアミン誘導体である(たとえば、米国特許第4,689,338号明細書参照)が、多数の他の化合物類も知られており(たとえば、米国特許第5,446,153号明細書、米国特許第6,194,425号明細書、および米国特許第6,110,929号明細書参照)、またそれ以上のものが今もまだ発見されている。他のIRMは、CpGを含む、オリゴヌクレオチドのような、より大きい分子量を有する(たとえば、米国特許第6,1994,388号明細書参照)。
【0003】
既に行われた重要な研究にもかかわらず、IRMの治療可能性を考慮すれば、それらの使用および治療効果を拡大する、かなりの継続的必要性がある。
【発明の開示】
【0004】
概要
ある小分子IRMにより誘導される免疫応答は、細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理してからIRM化合物で処理することにより増強できることが分かっている。したがって、本発明は、細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理し、続いて該細胞をIRM化合物で処理することにより、該免疫応答を増強する方法を提供する。
【0005】
幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンであってもよい。
【0006】
幾つかの実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質は、TH1−促進サイトカインであってもよい。ある実施形態では、該サイトカインは、I型インターフェロン(たとえば、インターフェロン−α、IFN−α)であってもよい。他の実施形態では、該サイトカインは、II型インターフェロン(たとえば、IFN−γ)であってもよい。また他の実施形態では、該サイトカインは、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(GM−CSF)であってもよい。ある実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質は、組換え型であってもよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、本方法は、抗原を該細胞に投与することをさらに含んでもよい。
【0008】
別の態様において、本発明は、細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理し、続いて該細胞をIRM化合物で処理することにより、免疫応答を増強する方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理し、次いで該細胞をIRM化合物で処理することによって、免疫応答調整物質を投与することにより治療できる対象の病気を治療する方法を提供する。該細胞は、in vivoで処理することもin vitroで処理することも可能である。
【0010】
以下の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲および添付の図面を参照すれば、本発明の様々な他の特徴および利点は、容易に明白になるはずである。本明細書を通してあちこちに、例のリストを介して指針が提供されている。どの場合にも、列挙されたリストは、代表グループの役割を果たすに過ぎず、排他的リストとして解釈すべきではない。
【0011】
発明の例証的実施態様の詳細な説明
本発明は、IRM化合物により誘導される免疫応答を変更するための、ある種のサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの使用に関する。したがって、本発明は、細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理してから該細胞をIRM化合物で処理することにより免疫応答を増強する方法を提供する。
【0012】
本発明の方法を使用して対象の免疫応答を高めることは、様々な方法で利益を提供することができる。一部の対象では、たとえば、IRM化合物の投与により誘導される免疫応答は、ほとんどの他の対象で誘発される免疫応答より低い。こうした対象に、たとえば、インターフェロン−α(IFN−α)等のサイトカイン受容体作用物質、またはサイトカインインデューサーを予備投与することにより、該IRM化合物により誘導される免疫応答を増強することができる。本発明の方法により、これらの対象が、ほとんどの他の対象で認められるのと同じ免疫応答を達成できるようにすることが可能である。本発明の方法を使用して対象の免疫応答を高めることはまた、たとえば、別の状況では比較的低い免疫原力価を有するワクチン等の免疫学的治療に対する免疫応答、したがって該免疫学的治療の効果を、高めることもできる。また、本発明の方法は、少ない抗原を使用しても、抗原に対して所望のレベルの免疫学的応答を達成できるようにすることが可能である。該抗原が、たとえば、高価である、希少である、あるいは得ることが困難である場合、このことは、特に望ましい。
【0013】
本明細書で使用されるとき、以下の用語は指示された意味を有するものとする。
【0014】
「作用物質」およびその変形は、受容体(たとえば、サイトカイン受容体)と結合して、細胞応答(たとえば、サイトカインの産生)を引き起こすことができる、化合物を指す。作用物質は、たとえば、IFN−α受容体に直接結合できる、IFN−α等の受容体に直接結合するリガンドであってもよい。あるいは、作用物質は、たとえば、(a)受容体に直接結合する別の分子と錯体を形成することによって、または(b)別の方法で、他の化合物が該受容体に直接結合するように、別の化合物の修飾を生じさせることによって、細胞応答を間接的に引き起こしてもよい。
【0015】
「抗原」およびその変形は、物質を投与された対象で、免疫応答を引き起こすことができる物質を指す。様々な実施形態で、抗原は、細胞介在性免疫応答、体液性免疫応答、または両者を引き起こすことが可能である。適当な抗原は、合成であっても天然であってもよく、天然の場合、内因性(たとえば、自己抗原)であっても外因性であってもよい。適当な抗原性物質は、ペプチドまたはポリペプチド(少なくとも一部が該ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸を含む);脂質;糖脂質;多糖類;炭水化物;ポリヌクレオチド;プリオン;生きたまたは不活化した細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫;ならびに細菌、ウイルス、真菌、原性動物、腫瘍由来、または生物由来の免疫原、毒素またはトキソイドを含むがその限りではない。
【0016】
「サイトカインインデューサー」およびその変形は、サイトカインの合成を誘導することができる化合物を指す。このような化合物は、該化合物(たとえば、インターフェロンインデューサー)により誘導される1つまたは複数の特定のサイトカイン類に関して同定することが可能である。場合によっては、該サイトカインインデューサーは、受容体(たとえ、トール様受容体)に結合し、細胞シグナル伝達系を介して、最終的にサイトカインの合成および分泌をもたらす化合物であってもよい。
【0017】
「サイトカイン受容体作用物質」およびその変形は、サイトカイン受容体に対して、上述のような、作用物質の役割を果たし、それによって該サイトカインと関連した1つまたは複数の生物学的作用をもたらす化合物を指す。サイトカイン受容体作用物質は、該サイトカイン受容体の天然リガンド(すなわちサイトカイン)であってもよいが、場合によっては、サイトカインの合成(たとえば、組換え)形であってもよく、またはサイトカイン受容体に結合して細胞応答を引き起こすことができる非サイトカイン分子(たとえば抗体)であってもよい。
【0018】
また、別途指示がなければ、化合物(IRM化合物、サイトカイン、サイトカイン受容体作用物質、抗原等であろうとなかろうと)への言及は、異性体(たとえば、ジアステレオマーまたは鏡像異性体)、塩、溶媒和物、多形体等を含む、あらゆる薬学的に許容される形態の化合物を包含することができる。特に、化合物が光学活性である場合、該化合物への言及は、該化合物の鏡像異性体のそれぞれならびに該鏡像異性体のラセミ混合物を包含することができる。
【0019】
また本明細書では、端点による数値域の詳述は、その範囲内に含まれるの全ての数を包含する(たとえば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、等を包含する)。
【0020】
免疫応答調整物質(「IRM」)は、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を含むがその限りではない、強力な免疫調節活性を有する化合物を含む。ある種のIRMは、サイトカイン類の産生および分泌を調節する。たとえば、ある種のIRM化合物は、たとえば、I型インターフェロン、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、および/またはMCP−1等のサイトカイン類の産生および分泌を誘導する。別の例として、ある種のIRM化合物は、ある種のTH2サイトカイン類、たとえばIL−4およびIL−5の、産生および分泌を阻害することができる。さらに、幾つかのIRM化合物は、IL−1およびTNFを抑制すると言われる(米国特許第6,518,265号明細書)。
【0021】
ある種のIRM化合物は、たとえば、米国特許第4,689,338号明細書;米国特許第4,929,624号明細書;米国特許第5,266,575号明細書;米国特許第5,268,376号明細書;米国特許第5,346,905号明細書;米国特許第5,352,784号明細書;米国特許第5,389,640号明細書;米国特許第5,446,153号明細書;米国特許第5,482,936号明細書;米国特許第5,756,747号明細書;米国特許第6,110,929号明細書;米国特許第6,194,425号明細書;米国特許第6,331,539号明細書;米国特許第6,376,669号明細書;米国特許第6,451,810号明細書;米国特許第6,525,064号明細書;米国特許第6,541,485号明細書;米国特許第6,545,016号明細書;米国特許第6,545,017号明細書;米国特許第6,573,273号明細書;米国特許第6,656,938号明細書;米国特許第6,660,735号明細書;米国特許第6,660,747号明細書;米国特許第6,664,260号明細書;米国特許第6,664,264号明細書;米国特許第6,664,265号明細書;米国特許第6,667,312号明細書;米国特許第6,670,372号明細書;米国特許第6,677,347号明細書;米国特許第6,677,348号明細書;米国特許第6,677,349号明細書;米国特許第6,683,088号明細書;米国特許第6,756,382号明細書;米国特許第6,797,718号明細書;および米国特許第6,818,650号明細書;ならびに米国特許出願公開第2004/0091491号明細書;米国特許出願公開第2004/0147543号明細書;および米国特許出願公開第2004/0176367号明細書に開示されているもの等の、小さい有機分子(タンパク質、ペプチド類等の大きい生体分子とは対照的に、たとえば、約1000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量)である。
【0022】
小分子IRM化合物のさらなる例は、ある種のプリン誘導体(米国特許第6,376,501号明細書、および米国特許第6,028,076号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾキノリンアミド誘導体(米国特許第6,069,149号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾピリジン誘導体(米国特許第6,518,265号明細書に記載のもの等)、ある種のベンズイミダゾール誘導体(米国特許第6,387,938号明細書に記載のもの等)、ある種の、窒素含有5員複素環に縮合した4−アミノピリミジン誘導体(米国特許第6,376,501号明細書;米国特許第6,028,076号明細書および米国特許第6,329,381号明細書;ならびに国際公開第02/08905号パンフレットに記載のアデニン誘導体等)、およびある種の3−β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体(米国特許出願公開第2003/0199461号明細書に記載のもの等)を包含する。
【0023】
他のIRM化合物は、オリゴヌクレオチド配列等の大きい生体分子を含む。幾つかのIRMオリゴヌクレオチド配列は、シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含み、たとえば、米国特許第6,194,388号明細書;米国特許第6,207,646号明細書;米国特許第6,239,116号明細書;米国特許第6,339,068号明細書;および米国特許第6,406,705号に記載されている。一部のCpG含有オリゴヌクレオチドは、たとえば、米国特許第6,426,334号明細書および米国特許第6,476,000号明細書に記載のもの等の、合成の免疫調節性構造モチーフを含むことができる。他のIRMヌクレオチド配列は、CpG配列を欠き、たとえば、国際公開第00/75304号パンフレットに記載されている。
【0024】
他のIRM化合物は、リン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGP)等の生体分子を含み、また、たとえば、米国特許第6,113,918号明細書;米国特許第6,303,347号明細書;米国特許第6,525,028号明細書;および米国特許第6,649,172号明細書に記載されている。
【0025】
本発明の方法は、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを細胞集団に投与することを含む。ある実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質は、該サイトカイン受容体の天然リガンドであってもよい。幾つかの実施形態では、本発明の方法は、TH1−促進サイトカインを細胞集団に投与することを含む。適当なサイトカイン類としては、たとえば、I型インターフェロン(たとえば、IFN−α)、II型インターフェロン(たとえば、IFN−γ)、および顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(GM−CSF)などがある。
【0026】
代替実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質は、サイトカイン受容体の、天然のサイトカインリガンド以外の分子であってもよいが、それでもなお該細胞集団の該細胞から細胞応答を誘導することができる。ある実施形態では、たとえば、組換えIFN−αまたは組換えIFN−γ等の、合成サイトカインまたは組換えサイトカインを該細胞に投与してもよい。別の例として、サイトカイン受容体に特異的な作動性抗体(たとえば、抗I型インターフェロン抗体)を該細胞に投与してもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、該サイトカインインデューサーは、1つまたは複数のTLRの作用物質であってもよい。たとえば、二本鎖RNA(dsRNA)および合成の類似物、ポリ(I:C)は、インターフェロン合成の誘導を引き起こすことができる公知のTLR3作用物質である。
【0028】
様々な実施形態で、本発明は、細胞介在性免疫応答、体液性免疫応答、または両者を変更することが可能である。幾つかの実施形態では、本発明は、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)を含むがその限りではない特異的免疫細胞の応答を変更することが可能である。一実施形態では、本発明を使用して、たとえば、PBMCの応答を変更することが可能である。別の実施形態では、本方法を使用して、樹状細胞の応答を変更することが可能である。別の実施形態では、本方法を使用して、Tリンパ球の応答を変更することが可能である。別の実施形態では、本方法を使用して、好中球の応答を変更することが可能である。また別の実施形態では、本方法を使用して、2つ以上のタイプの免疫細胞の応答を変更することが可能である。
【0029】
本発明の方法を使用することによって変更される個々の免疫応答は、本方法を使用した結果としてその活性が変わる個々の免疫細胞に、少なくともある程度左右される可能性がある。幾つかのタイプの免疫細胞(たとえば、Tリンパ球)では、本発明の方法を使用して、免疫細胞により分泌されるサイトカイン類またはケモカイン類のレベルを高めることができる。別の例として、本発明の方法は、たとえば、細胞移動増加または抗原提示機能亢進(たとえば、樹状細胞)を引き起こすことが可能である。また別の例として、本方法は、Bリンパ球により産生され分泌される免疫グロブリン(たとえば、IgM、IgG、またはIgA)のレベル上昇を誘導することが可能である。また別の例として、本方法は、ある種のアトピー性疾患を悪化させることが分かっているある種のサイトカイン類、たとえば、IL−4、IL−5、およびIL−13等の、より顕著な減少を誘導することが可能である。
【0030】
幾つかの実施形態では、ある特定の抗原に対する免疫応答を増強することが可能である。たとえば、サイトカイン受容体作用物質および/またはIRM化合物と一緒に適当な抗原を投与して、該投与された抗原に対する免疫応答を増強することが可能である。
【0031】
一実施形態では、本発明は、細胞にサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを予備処理することによって、IRM化合物により誘導される免疫応答を増強する方法を提供する。概して、本方法は、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの投与後に、IRM化合物を投与することを含む。本明細書で使用されるとき、「サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの投与後に、IRM化合物を投与すること」は、同時投与とは対照的に、該サイトカイン受容体作用物質(または、場合によっては、サイトカインインデューサー)および該IRM化合物を、時間的に異なる時に投与することを指す。たとえば、該細胞を、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで、約12時間〜約24時間、処理し、次いで、IRM化合物で処理してもよいが、本発明の方法は、該細胞を、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで、この範囲外の期間、処理してから、該細胞をIRM化合物で処理することにより実行することができる。他の実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与した後、12時間未満に、該IRM化合物を投与することが可能である。たとえば、該細胞を、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理し、次いで、少なくとも15分後に、IRM化合物で処理してもよい。別の実施形態では、該細胞を、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理した少なくとも30分後に、IRM化合物で処理してもよい。別の実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与した少なくとも4時間後に、該IRM化合物を投与してもよい。別の実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの投与後約36時間後まで、該IRM化合物を投与してもよい。また別の実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの投与後約48時間後まで、該IRM化合物を投与してもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、in vivoで実施することができる。たとえば、対象をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで治療し、次いでIRM化合物で治療してもよい。ある実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質治療(または、場合によってはサイトカインインデューサー治療)を、全身投与または局所投与により実行することが可能である。たとえば、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを、全身に、たとえば、静脈内に、投与することによって、対象を治療することが可能である。あるいは、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを局所に(すなわち、対象のある特定の部位に)投与することよって、対象を治療することが可能である。
【0033】
該IRM化合物は、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与するために使用されるのと同じ方法で投与してもよく、異なる方法で投与してもよい。たとえば、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーは全身投与し、該IRM化合物は局所投与してもよい。ある特定の実施形態では、たとえば、組換えIFN−αを全身投与し、次いでIRM化合物を局所投与、たとえば、局部に投与してもよい。
【0034】
代替実施形態で、本発明の方法は、in vitroで実行することが可能である。たとえば、対象から細胞を単離し、次いでサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理し、次いでIRM化合物で処理してもよい。幾つかの実施形態では、本発明の方法で処理された細胞を、対象に投与してもよい。該対象は、処理細胞の元のドナーであってもなくてもよい。たとえば、該細胞を、対象から単離し、本発明の方法にしたがってin vitroで処理し、次いで対象に投与し戻してもよい。あるいは、該細胞をドナーから採取し、in vitroで処理し、次いで処理細胞を対象に投与してもよい。
【0035】
本発明で使用するのに適するある種のIRM化合物は、窒素含有5員複素環に縮合した2−アミノピリジンを有する化合物を含む。このような化合物としては、置換イミダゾキノリンアミン類、たとえば、アミド置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンエーテル類、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、および6−、7−、8−、または9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシまたはアリールアルキレンオキシ置換イミダゾキノリンアミン類、およびイミダゾキノリンジアミン類を含むがその限りではないイミダゾキノリンアミン類;アミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンエーテル類、およびチオエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、およびテトラヒドロイミダゾキノリンジアミンを含むがその限りではないテトラヒドロイミダゾキノリンアミン類;アミド置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾピリジンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンエーテル類、およびチオエーテル置換イミダゾピリジンアミン類を含むがその限りではないイミダゾピリジンアミン類;1,2−架橋イミダゾキノリンアミン類;6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン類;イミダゾナフチリジンアミン類;テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン類;オキサゾロキノリンアミン類;チアゾロキノリンアミン類;オキサゾロピリジンアミン類;チアゾロピリジンアミン類;オキサゾロナフチリジンアミン類;チアゾロナフチリジンアミン類;およびピリジンアミン類、キノリンアミン類、テトラヒドロキノリンアミン類、ナフチリジンアミン類、またはテトラヒドロナフチリジンアミン類に縮合した1H−イミダゾダイマー等を包含する。
【0036】
具体的な一実施形態では、該IRM化合物は、4−アミノ−α,α,2−トリメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールである。別の実施形態では、該IRM化合物は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンである。別の実施形態では、該IRM化合物は、4−アミノ−α,α−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールである。別の実施形態では、該IRM化合物は、4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールである。
【0037】
ある実施形態では、該IRM化合物は、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンであってもよい。
【0038】
ある実施形態では、該IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンであってもよい。
【0039】
本明細書で使用されるとき、置換イミダゾキノリンアミンは、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、6−、7−、8−、または9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシまたはアリールアルキレンオキシ置換イミダゾキノリンアミン、またはイミダゾキノリンジアミンを指す。本明細書で使用されるとき、置換イミダゾキノリンアミン類は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンおよび4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールを具体的かつ明確に除外する。
【0040】
幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミンまたは1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミン等の、ナフチリジンアミンであってもよい。
【0041】
他の実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、2−プロピルチアゾロ[4,5−c]キノリン−4−アミン等の、チアゾロキノリンアミンであってもよい。
【0042】
さらに他の実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミドまたはN−{2−[4−アミノ−2−(エトキシメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−1、1−ジメチルエチル}メタンスルホンアミド等の、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンであってもよい。
【0043】
適当なIRM化合物はまた、プリン誘導体、イミダゾキノリンアミド誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、アデニン誘導体、および上述のオリゴヌクレオチド配列も含んでもよい。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、小分子免疫応答調整物質(たとえば、約1000ダルトン未満の分子量)であってもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、1つまたは複数のTLRの作用物質として同定された化合物であってもよい。幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、TLR6、TLR7、またはTLR8の1つまたは複数の作用物質の役割をすることができる。該IRMはまた、場合により、TLR9の作用物質であってもよい。幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、TLR7選択的作用物質等の、TLR7の作用物質であってもよい。他の実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、TLR8選択的作用物質等の、TLR8作用物質であってもよい。さらに他の実施形態では、該IRM化合物は、TLR7/8作用物質であってもよい。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「TLR8選択的作用物質」は、TLR8の作用物質の役割を果たすが、TLR7の作用物質の役割は果たさない化合物を指す。「TLR7選択的作用物質」は、TLR7の作用物質の役割を果たすが、TLR8の作用物質の役割は果たさない化合物を指す。「TLR7/8作用物質」は、TLR7およびTLR8の両者の作用物質の役割を果たす化合物を指す。
【0047】
TLR8選択的作用物質またはTLR7選択的作用物質は、表示のTLRおよびTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9、またはTLR10の1つまたは複数の作用物質の役割を果たす可能性がある。したがって、「TLR8選択的作用物質」は、TLR8の作用物質の役割を果たし、そのほかのTLRの役割を果たさない化合物を指すこともあり、あるいはTLR8および、たとえば、TLR6の作用物質の役割を果たす化合物を指すこともある。同様に、「TLR7選択的作用物質」は、TLR7の作用物質の役割を果たし、そのほかのTLRの役割を果たさない化合物を指すこともあるが、TLR7および、たとえば、TLR6の作用物質の役割を果たす化合物を指すこともある。
【0048】
ある特定の化合物のTLRアゴニズムは、適当な方法で評価することが可能である。たとえば、試験化合物のTLRアゴニズムを検出するためのアッセイは、たとえば、米国特許出願公開第2004/0132079号明細書に記載されており、またこのようなアッセイで使用するのに適した組換え細胞株は、たとえば、国際公開第04/053057号パンフレットに記載されている。
【0049】
使用する特定のアッセイにかかわらず、ある化合物を用いるアッセイの実施が、少なくとも、特定のTLRにより仲介される生物活性の閾値上昇をもたらす場合には、該化合物を、該特定のTLRの作用物質として同定することができる。逆に、特定されたTLRにより仲介される生物活性を検出するために考案されたアッセイを実施するために使用されるとき、化合物が、生物活性の閾値上昇を引き出すことができなければ、特定されたTLRの作用物質の役割を果たさないとして、化合物を同定することが可能である。特に指示がない限り、生物活性の上昇は、好適なコントロールで確認されたものを上回る、同一生物活性の上昇を指す。アッセイは、好適なコントロールと一緒に実施してもよく、しなくてもよい。ある特定のアッセイで化合物のTLRアゴニズムを決定するために、コントロールの実施を常に必要とするとは限らないある特定のアッセイ(たとえば、特定のアッセイ条件で、好適なコントロールで確認される値の範囲)を、経験とともに、当業者は十分に熟知することが可能である。
【0050】
所定のアッセイで、ある特定の化合物が、ある特定のTLRの作用物質であるかないかを決定するためのTLR介在性生物活性の正確な閾値上昇は、アッセイのエンドポイントとして観測される生物活性、アッセイのエンドポイントを測定または検出するために使用される方法、該アッセイの信号対雑音比、該アッセイの正確さ、および両TLRに対する化合物のアゴニズムを決定するために同じアッセイが使用されるかどうかを含むがその限りではない、当該技術分野で公知の因子によって、左右される可能性がある。したがって、可能性がある全てのアッセイについて、化合物をある特定のTLRの作用物質または非作用物質であると同定するために必要なTLR介在性生物活性の閾値上昇を全般的に述べることは、実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して、適切な閾値を容易に決定することができる。
【0051】
発現可能なTLR構造遺伝子を形質移入されたHEK293細胞を使用するアッセイは、化合物を、細胞に形質移入されたTLRの作用物質として同定するために、たとえば、約1μM〜約10μMの濃度で該化合物が提供されるとき、たとえば、TLR介在性生物活性(たとえば、NFκB活性化)の少なくとも3倍上昇という閾値を使用することが可能である。しかし、ある状況では、異なる閾値および/または異なる濃度範囲が適当なこともある。また、異なるアッセイには異なる閾値が適切なこともある。
【0052】
場合により、本発明の方法を実行することによって、あるIRM化合物により誘導される生物学的活性を、幾らか異なるTLRアゴニズムのIRM化合物により誘導される生物学的活性に変えることができる。したがって、本方法を使用して、ある特定の症状を治療するために有用な可能性がある臨床的に有効なIRM化合物のスペクトルを広げることが可能である。
【0053】
たとえば、1つのTLR7介在性生物学的活性は、たとえば、ウイルス感染症等の、ある種の症状を治療するために有益な可能性がある、IFN−αの産生を含むことができる。一方、TLR8介在性生物学的活性は、たとえば、関節リウマチ等の炎症性疾患等のある種の症状を悪化させる可能性がある、腫瘍壊死因子(TNF)の産生を含むことができる。ある特定のTLR7/8作用物質 IRM化合物は、たぶん、該化合物により誘導されるTLR7介在性生物学的活性の効果および/または範囲のため、もしかすると、たとえば、低毒性、製剤化および送達が容易なこと(製剤化可能性)、価格、安定性(たとえば、有効期限)、バイオアベイラビリティ、代謝半減期等の他の望ましい性質のため、ウイルス感染症の治療に適しているとして同定される可能性がある。しかし、関節リウマチを有する対象に投与する場合、TLR7/8作用物質 IRM化合物により誘導されるTLR8介在性生物学的活性(TNF産生)は、関節リウマチも有する患者におけるウイルス感染症の治療法として、TLR7/8作用物質 IRM化合物を考えることを避ける程度まで、関節リウマチを悪化させる可能性がある。
【0054】
本発明を実行することによって、このような対象が、第2の症状(たとえば、関節リウマチ)を耐えられない程度まで悪化させずに、1つの症状(たとえば、該ウイルス感染症)をTLR7/8作用物質 IRM化合物で治療する恩恵を享受できるようにすることが可能である。該TLR7/8作用物質 IRM化合物を投与する前に、該対象をサイトカイン受容体作用物質で予備治療することによって、ウイルス感染症の治療法を提供するのに十分なTLR7介在性生物学的活性をTLR7/8作用物質 IRM化合物により誘導し、同時にTLR7/8作用物質 IRM化合物により誘導されるTLR8介在性生物学的活性を許容し得るレベルに制限することが可能であり、場合によっては、TLR8介在性生物学的活性を完全に排除することさえ可能である。したがって、上記の例で、TLR7/8作用物質を投与する前に、該対象をサイトカイン受容体作用物質で予備治療することは、他の状況ではTLR7/8作用物質 IRM化合物を投与することに起因するであろう関節リウマチの悪化を制限−または排除さえ−しながら、ウイルス感染症の治療を続行できるように、該ウイルス感染症を治療するのに十分なIFN−αを誘導し、TLR7/8作用物質 IRM化合物により誘導されるTNFの量を十分に減らすことが可能である。
【0055】
該IRM化合物および該サイトカイン受容体作用物質(または、場合によっては、サイトカインインデューサー)のそれぞれは、対象への投与に適する任意の製剤で提供することが可能である。好適なタイプの製剤は、たとえば、米国特許第5,736,553号明細書;米国特許第5,238,944号明細書;米国特許第5,939,090号明細書;米国特許第6,365,166号明細書;米国特許第6,245,776号明細書;米国特許第6,486,186号明細書;欧州特許第0 394 026号明細書;および国際公開第03/045391号パンフレットに記載されている。該IRM化合物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、または任意の形態の混合物を含むがその限りではない、適当な形態で提供することが可能である。該IRM化合物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、または媒体を含む製剤で投与することが可能である。たとえば、該製剤は、たとえば、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤、非エアゾールスプレー剤、ゲル剤、ローション剤等の、従来の局所剤形で投与することが可能である。該製剤は、アジュバント、皮膚浸透促進剤、着色料、香料、香味料、モイスチュアライザー、増粘剤等を含むがその限りではない、1つまたは複数の添加物をさらに含んでもよい。
【0056】
対象の免疫応答を高めるために有効なIRM化合物の量は、たとえば、上述の生物学的活性等の、免疫応答の上昇と関連した少なくとも1つの生物学的活性を誘導または上昇させるのに十分な量である。対象の免疫応答を高めるためのIRM化合物の正確な量は、該IRM化合物の物理的性質および化学的性質、該担体の性質、所期の投与方式、該対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該IRM化合物を投与する方法、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で公知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用について、対象の免疫応答を高めるために有効なIRM化合物の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、該対象に、たとえば、約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を提供するのに十分なIRM化合物を投与することを含むが、幾つかの実施形態では、この範囲外の濃度でIRM化合物を投与することにより、本方法を実施することが可能である。これらの実施形態の一部では、本方法は、該対象に、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、たとえば、約100μg/kg〜約1mg/kgの用量を、提供するのに十分なIRM化合物を投与することを含む。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態では、該IRM化合物を一度に投与してもよいが、幾つかの実施形態では、該IRM化合物を2回以上投与することにより、本発明を実行することが可能である。
【0059】
該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーは、溶液、懸濁液、エマルジョンまたは任意の混合物の形態を含むがその限りではない、任意の適当な形態で提供することが可能である。該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーは、任意の薬学的に許容される賦形剤、担体、または媒体を含む製剤で送達することが可能である。該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーは、適当な経路で、たとえば、皮下投与、静脈内投与、経皮的投与、または経粘膜的投与により、投与することが可能である。
【0060】
対象の免疫応答を高めるために有効なサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの量は、たとえば、上述の生物学的活性等の、免疫応答の上昇と関連した少なくとも1つの生物学的活性を誘導または上昇させるのに十分な量である。対象の免疫応答を高めるためのサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの正確な量は、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの物理的性質および化学的性質、該担体の性質、所期の投与方式、該対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与する方法、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で公知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用について、対象の免疫応答を高めるために有効なサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの十分な量は、たとえば、該対象が約1pg/mL〜約1000ng/mLの血清濃度を得るために必要な量であってもよいが、幾つかの実施形態では、この範囲外の濃度を得るのに十分な量のサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与することにより、本発明を実行することが可能である。これらの実施形態の一部では、該対象に、約5pg/mL〜約50ng/mLの用量、たとえば、約10pg/mL〜約100pg/mLの用量を、提供するために十分なサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与することにより、本発明を実行することが可能である。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーは、一度に投与してもよいが、幾つかの実施形態では、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを2回以上投与することにより、本発明を実行することが可能である。
【0063】
本明細書に記載の方法を治療法として使用することが可能な病気は、下記のものを含むがその限りではない。
(a)ウイルス性疾患、たとえば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(たとえば、HSV−I、HSV−II、CMV、またはVZV)、ポックスウイルス(たとえば、天然痘またはワクシニア等のオルトポックスウイルス、または伝染性軟属腫)、ピコルナウイルス(たとえば、ライノウイルスまたはエンテロウイルス)、オルトミクソウイルス(たとえば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(たとえば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(たとえば、SARS)、パポバウイルス(たとえば、パピローマウイルス、たとえば生殖器疣、尋常性疣贅、または足底疣贅を引き起こすもの)、ヘパドナウイルス(たとえば、B型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(たとえば、C型肝炎ウイルスまたはデングウイルス)、またはレトロウイルス(たとえば、HIV等のレンチウイルス)による感染に起因する疾患等;
(b)細菌性疾患、たとえば、大腸菌属、エンテロバクター属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、シゲラ属、リステリア属、エアロバクター属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、連鎖球菌属、クラミジア属、マイコプラズマ属、肺炎球菌、ナイセリア属、クロストリジウム属、桿菌、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、カンピロバクター属、ビブリオ属、セラチア属、プロビデンシア属、クロモバクテリウム属、ブルセラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、またはボルデテラ属の細菌による感染に起因する疾患等;
(c)その他の感染症、たとえばクラミジア、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、クリプトコッカス髄膜炎を含むがその限りではない真菌病、またはマラリア、ニューモシスティスカリニ肺炎、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、およびトリパノソーマ感染症を含むがその限りではない寄生虫病等;
(d)新生物疾患、たとえば上皮内新生物、子宮頚部異形成、光線性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、腎細胞癌、カポジ肉腫、黒色腫、ならびに骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B−細胞リンパ腫、および毛様細胞白血病を含むがその限りではない白血病、および他の癌;
(e)TH2介在性アトピー性疾患、たとえばアトピー性皮膚炎または湿疹、好酸球増多、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、およびオーメン(Ommen’s)症候群等;
(f)ある種の自己免疫疾患、たとえば、全身性エリテマトーデス、本態性血小板血症、多発性硬化症、円板状ループス、円形脱毛症等;および
(g)創傷修復に随伴する疾患、たとえば、ケロイド形成および他の型の瘢痕化の抑制(たとえば、慢性創傷を含む、創傷治癒増進)。
【0064】
ある実施形態では、たとえば、上記の病気の1つと関係がある抗原等の、ある特定の抗原に対する免疫応答が求められる可能性がある。このような実施形態では、該抗原(または該抗原の少なくとも免疫原性エピトープ)を該対象に投与してもよい。該抗原は、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサー、該IRM化合物、またはその両者と共投与してもよい。あるいは、該抗原は、該サイトカイン受容体作用物質(または、場合によっては、サイトカインインデューサー)および/またはIRM化合物と別々に投与してもよい。該抗原を別に投与する場合、該抗原は、該サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーを投与する前に投与してもよく、該IRM化合物を投与した後に投与してもよく、または該サイトカイン受容体作用物質(またはサイトカインインデューサー)の投与と該IRM化合物の投与との間に投与してもよい。
【0065】
本発明のある実施形態で使用するのに有効な抗原の量は、免疫応答の上昇と関連した少なくとも1つの生物学的活性、たとえば、上述の生物学的活性等を、誘導または上昇させるのに十分な量である。対象の免疫応答を高めるための抗原の正確な量は、該抗原の物理的性質および化学的性質、該担体の性質、所期の投与方式、該対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該サイトカイン受容体作用物質(またはサイトカインインデューサー)および該IRM化合物の投与により提供される免疫応答の可能な増強、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で公知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用について、対象の免疫応答を高めるために有効な抗原の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、該対象に、たとえば、約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を提供するのに十分な抗原を投与することを含むが、幾つかの実施形態では、この範囲外の濃度で抗原を投与することにより、該方法を実施することが可能である。これらの実施形態の一部では、該方法は、該対象に、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、たとえば、約100μg/kg〜約1mg/kgの用量を、提供するのに十分な抗原を投与することを含む。
【0067】
本発明の方法は、任意の適当な対象に実施することが可能である。適当な対象は、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはウシに限定されない動物を含むがその限りではない。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本発明の特徴、利点、および他の詳細をさらに説明するために選択されたに過ぎない。しかし、該実施例はこの目的に役立つが、使用した個々の材料および量ならびに他の条件および詳細は、本発明の範囲を不当に制限する要素と解釈してはならないことは、明確に理解されるべきである。
【0069】
実施例で使用したIRM化合物を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1
単離したヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来の接着細胞を、表1にまとめた通りに処理した。処理に応答して該細胞により産生されたI型インターフェロン(IFN)および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の量も、表Iに記録する。
【0072】
【表2】

【0073】
簡単に記載すると、ヒトPBMC由来の接着細胞を、1〜100U/mLの組換えIFN−α(カリフォルニア州サンディエゴのリー・バイオモレキュラー(Lee BioMolecular,SanDiego,CA))で24時間処理し、洗浄し、次いでIRM(表Iに示す最終濃度に達するように、濃縮したIRMの細胞培地溶液を加えた)でさらに24時間処理した。別のコントロール細胞群は、IRMで24時間処理しただけであった。次いで、無細胞上澄みを全培養から分離し、I型IFNまたはTNF−αについて分析した。
【0074】
I型IFN産生は、脳心筋炎を負荷したA549ヒト肺癌細胞を使用するウイルス中和バイオアッセイを使用して分析した。該バイオアッセイ法の詳細は、G.L.ブレナン(Brennan)およびL.H.クローネンベルグ(Kronenberg)により、「Automated Bioassay of Interferon in Micro−test Plates」、Biotechniques、1983年6月/7月、78(参照により本明細書に援用する)に記載されている。簡単に記載すると、該方法は、以下の通りである。A549細胞を、サンプルの希釈液または標準インターフェロンとともに、37℃で24時間、インキュベートする。次いで、インキュベートした細胞を、脳心筋炎ウイルス接種源に感染させる。感染した細胞を、37℃でさらに24時間インキュベートしてから、ウイルスの細胞変性作用について評価する。該ウイルスの細胞変性作用は、クリスタルバイオレット染色後、プレートを視覚的に採点することによって定量化する。結果は、NIHヒト白血球IFN標準に関して得られた値を基準にして、IFN−αレファレンス単位/mLとして表す。TNF−α産生は、エリサ(ELISA)(カリフォルニア州カマリロのバイオソース・インターナショナル・インコーポレーテッド(Biosource International,Inc.,Camarillo,CA))で決定した。結果を表1に示す。
【0075】
実施例2
接着細胞を入手し、実施例1に記載の通りに調製する。該細胞は、ポリ(I:C)、組換えIFN−γ、組換えIFN−αのいずれかで実施例1に記載の通りに前処理するか、または前処理を受けない。該細胞を実施例1に記載の通りに洗浄し、次いで、実施例1に記載の通りに、IRM1、IRM2、IRM3、IRM4、IRM5、IRM6、IRM7、IRM8、またはIRM9のいずれかで24時間、処理する。
【0076】
無細胞上澄みを、全培養から分離し、I型IFNまたはTNF−αについて分析する。サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで前処理するとき、該細胞は、非処理細胞と比べて、より多いI型インターフェロンおよびより少ないTNFを産生することが結果から分かるであろう。
【0077】
本書に引用した、特許の全開示内容、特許文献および出版物は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体を参照により本書に援用する。係争の場合には、定義を含む本明細書が、調整するであろう。
【0078】
本発明に対する様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。説明に役立つ実施形態および実施例は、例として提供されているに過ぎず、本発明の限定を意図するものではない。本発明の範囲は、以下の通りに記載されている特許請求の範囲によって限定されるだけである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を増強する方法であって、
細胞集団をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理すること;および次いで、
前記細胞集団をIRM化合物で処理すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記IRM化合物は、オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IRM化合物は、プリン誘導体、イミダゾキノリンアミド誘導体、イミダゾピリジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、または窒素含有5員複素環に縮合した4−アミノピリミジンの誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IRM化合物は、約1000ダルトン以下の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IRM化合物は、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記IRM化合物は、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IRM化合物は、ナフチリジンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記IRM化合物は、チアゾロキノリンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サイトカイン受容体作用物質は、サイトカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サイトカイン受容体作用物質は、合成物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サイトカインインデューサーは、トール様受容体の作用物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記IRM化合物は、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーの投与後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記IRM化合物は、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーが投与された少なくとも30分後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記IRM化合物は、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーが投与された少なくとも4時間後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記IRM化合物は、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーが投与された少なくとも24時間後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
抗原を前記細胞集団に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
免疫応答調整物質を投与することにより治療できる対象における症状を治療する方法であって、
細胞をサイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーで処理すること;および次いで、
前記細胞を免疫応答調整物質で処理すること
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記細胞を、in vivoで、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーおよび前記免疫応答調整物質で処理する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞を、in vitroで、前記サイトカイン受容体作用物質またはサイトカインインデューサーおよび前記免疫応答調整物質で処理する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記処理細胞を対象に投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞は、前記対象ではないドナーから採取される、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2007−517055(P2007−517055A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547500(P2006−547500)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/043705
【国際公開番号】WO2005/067500
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】