説明

免疫疾患、炎症疾患および増殖疾患の処置のためのセリン−スレオニンキナーゼモジュレーター(p70S6K、Akt−1およびAkt−2)としての[1H−ピペラゾ[3,4−d]ピリミジン−4−イル]−ピペラジンまたは[1H−ピペラゾ[3,4−d]ピリミジン−4−イル]−ピペラジン化合物

本発明は、キナーゼ、さらに具体的には、p70S6キナーゼ、さらに好ましくは、p70S6、Akt−1およびAkt−2キナーゼを阻害する式Iの化合物および方法を提供する。本発明は、細胞の活動(例えば、増殖、分化、プログラム化細胞死、移動、化学侵襲および代謝)を調節するためのプロテインキナーゼ酵素活性を調節する化合物を提供する。本発明の化合物は、上で言及した細胞活動の変化に関連したキナーゼレセプター信号伝達経路を阻害、規制および/または調節し、そして本発明は、これらの化合物を含有する組成物、およびそれらを使用してキナーゼ依存性疾患および病態を治療する方法を包含する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、増殖、分化、プログラム細胞死、移動(migration)、化学的侵襲(chemoinvasion)および代謝のような細胞活性を調節するためのプロテインキナーゼ酵素活性を調節するための化合物に関連する。より具体的には、本発明は、上記のような細胞活性における変化に関連したキナーゼレセプターシグナル伝達経路を阻害、制御および/または調節する化合物、これらの化合物を含有する組成物、およびそれらを使用してキナーゼ依存性の疾患および状態を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の要旨)
癌を処置するために使用される薬剤の特異性についての改良は、これらの薬剤の投与に関係する副作用が減少されるか否かが確認されるという治療的利益に起因して、相当に興味深い。伝統的に、癌の処置における劇的な改良は、新規の機構を通じて作用する治療因子の同定に関連する。
【0003】
プロテインキナーゼは、タンパク質のチロシン残基、セリン残基およびスレオニン残基のヒドロキシ基におけるタンパク質のリン酸化を触媒する酵素である。ヒトゲノムのキナーゼ補体は、518個の推定プロテインキナーゼ遺伝子を含有する[非特許文献1]。この活性の結果には、細胞の分化、増殖、転写、翻訳、代謝、細胞周期の進行、アポトーシス、代謝細胞骨格再配列および移動に対する効果が挙げられる;すなわち、プロテインキナーゼは、真核細胞における信号伝達の大部分を媒介する。さらに、異常なプロテインキナーゼ活性は、疾患のホストに関連しており、これは、比較的に生命にかかわらない疾患(例えば、乾癬)から癌にまで及ぶ。染色体のマッピングにより、200を超えるキナーゼが疾患遺伝子座(癌、炎症および代謝疾患を含めて)を染色体上に置くことが明らかとなった。
【0004】
チロシンキナーゼは、レセプター型または非レセプター型に分類され得る。レセプター型チロシンキナーゼは、細胞外部分、膜貫通部分および細胞内部分を有するが、非レセプター型チロシンキナーゼは、全体的に細胞内にある。
【0005】
レセプター型チロシンキナーゼは、多様な細胞学的活性を有する多数の膜貫通型レセプターを含む。事実、レセプター型チロシンキナーゼの約20個の異なるサブファミリーが同定されている。1つのチロシンキナーゼサブファミリー(HERサブファミリーと命名されている)は、EGFR(HER1)、HER2、HER3、およびHER4から構成される。今までに同定されている、このレセプターのサブファミリーのリガンドとしては、上皮成長因子、TGF−α、アンフィレグリン(amphiregulin)、HB−EGF、βセルリンおよびヘレグリン(heregulin)が挙げられる。これらのレセプター型チロシンキナーゼの別のサブファミリーは、インスリンサブファミリー(INS−R、IGF−IR、およびIR−Rを含む)である。PDGFサブファミリーとしては、PDGF−αレセプターならびにPDGF−βレセプター、CSFIR、c−kitおよびFLK−IIが挙げられる。次に、キナーゼ挿入ドメインレセプター(KDR)、胎児肝臓キナーゼ−1(FLK−1)、胎児肝臓キナーゼ−4(FLK−4)およびfms様チロシンキナーゼ−1(Flt−1)から構成される、FLKファミリーがある。上記PDGFファミリーおよびFLKファミリーは、通常、2つの基の類似性のために、同様にみなされる。上記レセプター型チロシンキナーゼの詳細な説明については、非特許文献2を参照のこと。これは、本明細書中に参考として援用される。
【0006】
非レセプター型のチロシンキナーゼもまた、多数のサブファミリー(Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Syk/Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、およびAckを含む)から構成される。これらのサブファミリーの各々は、多様なレセプター(varying receptor)へとさらに細かく分類(sub−divide)される。例えば、上記Srcサブファミリーは、もっとも大きなサブファミリーの1つであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、およびYrkを含む。酵素の上記Srcサブファミリーは、腫瘍形成と関連している。非レセプター型のチロシンキナーゼのより詳細な説明は、非特許文献3を参照のこと。これは、本明細書中に参考として援用される。
【0007】
セリン−トレオニンキナーゼは、細胞内シグナル伝達において重要な役割を果たし、これは複数のファミリー(STE、CKI、AGC、CAMKおよびCMGCが挙げられる)を含む。重要なサブファミリーとしては、MAPキナーゼである、p38、JNKおよびERK(これらは、マイトジェン経路(mitogenic pathway)、ストレス経路(stress pathway)、前炎症性経路(proinflammatory pathway)および抗アポトーシス経路(antiapoptotic pathway)のような多様な刺激に起因するシグナル伝達を調整する)が挙げられる。MAPキナーゼサブファミリーのメンバー(p38a、JNKアイソザイムおよびRafが挙げられる)は、治療的介入のために標的とされてきた。
【0008】
プロテインキナーゼおよびそれらのリガンドは、種々の細胞の活性において重要な役割を果たしているので、プロテインキナーゼの酵素活性の脱制御(deregulation)は、細胞の特性の改変(例えば、癌に付随する、制御されない細胞増殖)を導き得る。腫瘍学的な指標に加えて、キナーゼシグナリングの改変は、多くの他の病理学的疾患に関与する。これらとしては、免疫学的疾患、心血管疾患、炎症性疾患および変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、レセプター型プロテインキナーゼおよび非レセプター型プロテインキナーゼの両方が、低分子薬物の発見のための魅力的な標的である。
【0009】
キナーゼ調節を治療的に使用することに関して、特に魅力的な目的の一つは、腫瘍学的な指標に関する。例えば、癌を処置するためのプロテインキナーゼ活性の調節は、慢性骨髄性白血病(CML)および消化管間質腫瘍の処置用のGleevec(登録商標)(イマチニブメシレート、East Hanover,NJのNovartis Pharmaceutical Corporation製造)についてのFDAの認可により首尾よく示されている。Gleevecは、選択的Ablキナーゼインヒビターである。
【0010】
細胞増殖および新脈管形成(腫瘍の増殖および生存に必要とされる、2つの重要な細胞のプロセス(非特許文献4))の調節(特に、阻害)は、低分子薬物の開発に関して、魅力的な目標である。抗脈管形成治療は、固形腫瘍および制御不全の(dysregulated)血管形成に関連する他の疾患(虚血性冠状動脈疾患、糖尿病性網膜症、乾癬および慢性関節リウマチが挙げられる)を処置するための、潜在的に重要なアプローチを代表する。さらに、抗細胞増殖性薬剤(cell antiproliferative agent)は、腫瘍の増殖を遅滞させるか、停止させるのに望ましい。
【0011】
酵素p70S6キナーゼ(p70S6K)は、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/Aktキナーゼ経路の構成要素であるセリン−スレオニンキナーゼである。Aktおよびp70S6Kの両方は、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)の下流であり、IGF−1、EGF、TGF−αおよびHGFのような増殖因子に応答して、リン酸化および活性化を受ける。酵素p70S6Kは、翻訳を促進するS6リボソームタンパク質のリン酸化により、タンパク質合成を調節する。腫瘍細胞の増殖およびアポトーシスからの細胞の保護におけるp70S6Kの役割は、増殖因子レセプターシグナル伝達へのそれらの関与、腫瘍組織における過剰発現および活性化に基づいて支持される[非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7]。p70S6K活性化の臨床的な阻害は、CCI−779(ラパマイシンエステル)(上流の活性化させるキナーゼ、mTORのインヒビター)で処置した腎癌腫患者で観察されている。疾患の進行とp70S6K活性の阻害との間での、有意な線形の関連性が報告されている[非特許文献8]。
【0012】
最近、酵素p70S6Kは、代謝疾患および代謝障害に関与することが見出されている。P70S6Kが存在しないことは、インスリン感受性が増大する一方で、加齢誘発性の肥満および食事誘発性の肥満から保護することが報告されている[非特許文献9および非特許文献10]。代謝疾患および代謝障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、高血糖、高アミノ酸尿および高脂血症)におけるp70S6Kの役割は、上記の知見に基づいて支持される。
【0013】
ホスホイノシチド3−キナーゼ(すなわち、PI3K)は、細胞の成長(growth)、増殖(proliferation)、生存、分化、代謝および細胞骨格の変化の制御に関与する、特定のイノシトール脂質を生じる。PI3K脂質産物の最もよく特徴付けられた標的の一つは、セリンスレオニンプロテインキナーゼAKT、すなわち、プロテインキナーゼB(PKB)である。静止細胞(quiescent cell)において、AKTは細胞質ゾルに、低活性のコンフォメーションで存在する。細胞の刺激時に、AKTは、PI3K脂質産物による細胞膜へのリクルートメント(recruitment)および3’ホスホイノシチド−依存性キナーゼ−1(PDPK1)によるリン酸化によって活性化され、一連の下流の標的(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3β(GSK−3β)、ラパマイシンの哺乳動物の標的(mammalian target of rapamycin)(mTOR)、p70S6キナーゼ、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)および数種の抗アポトーシス性エフェクター)の活性化を介して下流の効果のカスケードをもたらす[非特許文献11;非特許文献12]。現在までに、3つのAKTのアイソフォーム(すなわち、AKT1、AKT2およびAKT3)が同定されている。
【0014】
AKT1は、神経細胞の生存および一般的な細胞の生存、ならびにアポトーシスへの耐性において重要な役割を果たす[非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15]。AKT1は、広範な種類の癌(乳癌および甲状腺癌が挙げられる)に関与している[非特許文献16;非特許文献17]。AKT1はまた、膵臓β細胞の増殖および生存の制御を介して、代謝においても一定の役割を果たす[非特許文献18]。
【0015】
AKT2は、インスリン応答性の組織において富化され、ホルモンの代謝作用(例えば、糖尿病)に関与している[非特許文献19]。AKT2は、卵巣癌において増幅および過剰発現され、AKT2の過剰発現は、一部のヒト膵臓腺管癌(ductal pancreatic cancer)についての悪性の表現型に寄与する[非特許文献20;非特許文献21]。
【非特許文献1】Manningら、Science,(2002),298,1912
【非特許文献2】Plowmanら、DN&P(1994)7(6):334−339
【非特許文献3】Bolen,Oncogene(1993)8:2025−2031
【非特許文献4】Matter A.Drug Disc Technol(2001)6,1005−1024
【非特許文献5】Peneら、Oncogene(2002)21,6587
【非特許文献6】Miyakawaら、Endocrin J.(2003)50,77,83
【非特許文献7】Leら、Oncogene(2003)22,484
【非特許文献8】Peralbaら、Clinical Cancer Research(2003)9,2887
【非特許文献9】Umら、Nature(2004)431,200−205
【非特許文献10】Pendeら、Nature(2000)408,994−997
【非特許文献11】Hajduch,Eら、FEBS Lett.(2001)492:199−203
【非特許文献12】Vanhaesebroeck,B.およびAlessi,D.R.Biochem.J.(2000)346:561−576
【非特許文献13】Dudek H.ら、Science(1997)275:661−663
【非特許文献14】Kauffmann−Zeh A,ら、Nature(1997)385:544−548
【非特許文献15】Songyang Z.ら、Proc Natl Acad Sci U S A(1997)94:11345−11350
【非特許文献16】Liang J.ら、Nature Med.(2002)8:1153−1160
【非特許文献17】Vasco Vら、J.Med.Genet.(2004)41:161−170
【非特許文献18】Dickson LMおよびRhodes CJ、Am J Physiol Endocrinol Metab.(2004)287:E192−8
【非特許文献19】George Sら、Science(2004)304:1325−1328
【非特許文献20】Cheng,J.Q.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.(1992)89:9267−9271
【非特許文献21】Cheng,J.Q.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.(1996)93:3636−3641
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、キナーゼ(特に、p70S6K、AKT1またはAKT2キナーゼ)の上記シグナル伝達を特異的に阻害、制御および/または調節する低分子化合物の同定は、異常な細胞増殖および代謝に関連した疾患状態の処置または予防の手段として所望され、それは本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
1局面では、本発明は、キナーゼ(好ましくは、p70S6、Akt−1またはAkt−2キナーゼ)の活性を調節する化合物、これらの化合物およびそれらの医薬組成物を使用してキナーゼ(好ましくは、p70S6、Akt−1またはAkt−2キナーゼ)の活性により媒介される疾患を治療する方法を提供する。p70S6活性、Akt−1活性および/またはAkt−2キナーゼ活性により媒介される疾患には、侵襲性細胞増殖および代謝に関連した移動、侵入、増殖および他の生物活性で一部特徴付けられる疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
別の局面では、本発明は、キナーゼ活性(好ましくは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2活性)のモジュレーターをスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、本発明の組成物(典型的には、キナーゼ、好ましくは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2キナーゼ)と少なくとも1種の候補薬剤とを混ぜ合わせる工程、および該キナーゼ活性に対する該候補薬剤の効果を決定する工程を包含する。
【0019】
さらに別の局面では、本発明はまた、本発明の医薬化合物および/または組成物の成分(本明細書中で記述したキナーゼ酵素活性モジュレーター(好ましくは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2キナーゼ酵素活性モジュレーター)の1種またはそれ以上で満たされた1個またはそれ以上の容器を含むキットを提供する。このようなキットはまた、例えば、他の化合物および/または組成物(例えば、希釈剤、浸透向上剤、潤滑剤など)、これらの化合物および/または組成物を投与する装置、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態の説明書(この説明書は、この機関によるヒトへの投与のための製造、使用または販売の認可を反映し得る)を含む。
【0020】
さらに別の局面では、本発明はまた、本発明の化合物と、必要に応じて、薬学的に受容可能なアジュバントおよび賦形剤とを含有する診断薬を提供する。
【0021】
本発明のこれらの特徴および他の特徴および利点は、関連した図面に対する参照とともに、以下により詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の組成物は、異常な細胞活性、および、または、制御されていない細胞活性に関連した疾患を処置するために、使用される。本明細書中で提供される方法および組成物によって処置され得る疾患状態としては、癌(以下でさらに議論される)、免疫学的障害(例えば、慢性関節リウマチ、移植片−宿主疾患、多発性硬化症、乾癬);心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症(artheroscrosis)、心筋梗塞(myocardioinfarction)、虚血、発作および.再狭窄);代謝障害および疾患(例えば、糖尿病、肥満および高コレステロール血症);ならびに他の炎症性疾患および変性疾患(例えば、腸間疾患(interbowel diseases)、変形性関節症(osteoarthritus)、黄斑変性、糖尿病性網膜症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの症例において、その細胞は、過剰なまたは低下した、増殖性状態および/または移動性状態(異常な状態)でないかもしれず、そして処置をさらに必要とすると理解されている。例えば、創傷治癒の間、その細胞は「正常に」増殖しているかもしれないが、しかし増殖亢進および移動亢進が所望されるかもしれない。代替的に、「正常な」細胞増殖速度および/または「正常な」細胞移動速度における低下が所望され得る。
【0024】
本発明は、キナーゼ活性、好ましくは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2キナーゼ活性を調節する式Iに従った化合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩、水和物またはプロドラッグを包含する:
【0025】
【化2】

は、H、ハロ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、C1〜4アルキル、C〜Cアルケニル、またはC〜Cアルキニルであり、ここで、該アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、必要に応じて、1個または2個の基で置換されており、該基は、別個に、CO10、CONR1011、OR10、およびNR1011から選択される;
は、H、NH、SH、OH、またはC〜Cアルキルである;
、R、RおよびRは、それぞれ別個に、H、オキソ、CO10、CONR1011、C1〜4アルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルコキシ−C〜Cアルキルであり、ここで、各基内の該C〜Cアルキル、C〜CアルコキシおよびC〜Cアルコキシ−C〜Cアルキルは、別個に、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基は、別個に、CO10、CONR1011、OR10、およびNR1011から選択されるか、あるいは、
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、RおよびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、架橋されたC〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、あるいは
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、架橋されたC〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されている;
Lは、C0〜4アルキル、C〜Cアルケニル、−N(R12)−、−C(O)N(R12)−、−N(R12)C(O)−、−C(O)−、−O−(CH−、または−(CH−O−であり、ここで、nは、1〜4である;
は、NまたはCR13であり、ここで、R13は、HまたはC(O)NR12(CHNR1011である;
は、結合、CR14、OまたはNであり、ここで、R14は、H、OH、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、NR1515であり、ここで、R15は、HまたはC1〜4アルキルであるか、あるいはQおよびVは、一緒になって、C(=O)を形成する;
が結合であるとき、Vは、存在せず、そしてR13は、Hではない;
がCR13であり、そしてQがCHであるとき、
Vは、H、OH、NH、C〜Cアルコキシ、NR1011、O(CHNR1011、4員〜7員ヘテロシクリルのCまたはNに結合されたO(CH、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、NR12C(O)(CHNR1011、(CHO(CHNR1011、(CHNR12(CHNR1011、(CHCHR12(CHNR1011、C1〜4アルキルであって、該C1〜4アルキルは、必要に応じて、OHまたはNR1011で置換されているか、あるいは、
Vは、4員〜7員不飽和環であり、該不飽和環は、OまたはNの1個〜3個の原子を含有するか、あるいは
Vは、二環式可溶化基である;
がNであり、そしてQがCHであるとき、あるいはQがCR13であり、そしてQがOまたはNであるとき、
Vは、H、(CHO(CHNR1011、(CHNR12(CHNR1011、(CHCHR12(CHNR1011、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルは、必要に応じて、OHまたNR1011で置換されているか、あるいは
Vは、4員〜7員飽和または不飽和環または複素環であり、該不飽和環または複素環は、OまたはNの1個〜3個の原子を含有し、必要に応じて、1個または2個のC〜Cアルコキシ基で置換されているか、あるいは
Vは、「二環式可溶化基」である;
mは、1〜3であり、
nは、1〜4であり、
Wは、C〜Cアルキル、NR1011であるか、あるいはWは、
アリール、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、あるいは5員〜12員縮合二環式または三環式飽和、部分飽和または不飽和環系であり、該環系は、N、OおよびSから選択される、0個〜4個の環原子を含有し、ここで、各アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、および縮合二環式または三環式環系は、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基は、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基は、必要に応じて、ハロでさらに置換されているか、あるいは
V、Q、LおよびWは、一緒になって、アリール環、ヘテロアリール環、C〜Cシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、あるいは5員〜12員縮合二環式または三環式飽和、部分飽和または不飽和環系を形成し、該環系は、N、OおよびSから選択される、0個〜4個の環原子を含有し、ここで、各環または環系は、必要に応じて、1個、2個または3個の基で置換されており、該基は、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、NH−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基は、必要に応じて、ハロでさらに置換されている;そして
10、R11およびR12は、それぞれ別個に、HまたはC1〜6アルキルであり、該C1〜6アルキルは、必要に応じて、アリールまたはヘテロアリールで置換されている。
【0026】
好ましい実施態様では、以下の化合物は、式Iの化合物として除外される:
4−(4−(2−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン;
4−(4−(3−クロロフェニル)ピペラジン−1−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン;
4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸エチル;
4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸第三級ブチル;そして
N−(4−フェノキシフェニル)−4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド。
【0027】
式Iの好ましい化合物には、Rが水素ではない式Iの化合物である式IIに従った化合物が挙げられる。
【0028】
式IIの好ましい化合物には、Rが、ハロ、C〜Cアルキル、OH、シアノ、またはアミノである化合物が挙げられる。
【0029】
式IIの好ましい化合物には、Rが、ハロである化合物が挙げられる。
【0030】
式IIの好ましい化合物には、Rが、ブロモである化合物が挙げられる。
【0031】
式IIの好ましい化合物には、Rが、Hである化合物が挙げられる。
【0032】
式IIの好ましい化合物には、R、R、RおよびRが、それぞれ、Hである化合物が挙げられる。
【0033】
式Iおよび式IIの好ましい化合物には、Qが、CHであり、そしてQが、CHである式Iまたは式IIの化合物である式IIIに従った化合物が挙げられる。
【0034】
式IIIの好ましい化合物には、Lが、結合である化合物が挙げられる。
【0035】
式IIIの好ましい化合物には、Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、NH−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0036】
式IIIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0037】
式IIIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される化合物が挙げられる。
【0038】
式IIIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される化合物が挙げられる。
【0039】
式IIIの好ましい化合物には、Vが、H、OH、O(CHNR1011、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、またはNR12C(O)(CHNR1011である化合物が挙げられる。
【0040】
式IIIの好ましい化合物には、Vが、H、OH、O(CHNR1011、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、またはNR12C(O)(CHNR1011であり、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである化合物が挙げられる。
【0041】
式IIIの好ましい化合物には、Rが、H、ハロまたはC〜Cアルキルであり、そしてRが、Hである化合物が挙げられる。
【0042】
式IIIの好ましい化合物には、R、R、RおよびRが、それぞれ、Hである化合物が挙げられる。
【0043】
式Iおよび式IIの好ましい化合物には、Qが、Nであり、そしてQが、CHである式Iまたは式IIの化合物である式IVの化合物が挙げられる。
【0044】
式IVの好ましい化合物には、Lが、結合である化合物が挙げられる。
【0045】
式IVの好ましい化合物には、Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0046】
式IVの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0047】
式IVの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される化合物が挙げられる。
【0048】
式IVの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される化合物が挙げられる。
【0049】
式IVの好ましい化合物には、Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、またはC1〜4アルキルである化合物が挙げられる。
【0050】
式IVの好ましい化合物には、Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、またはC1〜4アルキルであり、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである化合物が挙げられる。
【0051】
式IVの好ましい化合物には、Vが、Hである化合物が挙げられる。
【0052】
式IVの好ましい化合物には、Rが、ハロであり、そしてRが、Hである化合物が挙げられる。
【0053】
式IVの好ましい化合物には、R、R、RおよびRが、それぞれ、Hである化合物が挙げられる。
【0054】
式Iおよび式IIの好ましい化合物には、QがCHであり、そしてQがNである式Iまたは式IIの化合物である式Vの化合物が挙げられる。
【0055】
式Vの好ましい化合物には、Lが、結合である化合物が挙げられる。
【0056】
式Vの好ましい化合物には、Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0057】
式Vの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0058】
式Vの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される化合物が挙げられる。
【0059】
式Vの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される化合物が挙げられる。
【0060】
式Vの好ましい化合物には、Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルが、必要に応じて、NR1011で置換されている化合物が挙げられる。
【0061】
式Vの好ましい化合物には、Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルが、必要に応じて、NR1011で置換されており、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである化合物が挙げられる。
【0062】
式Vの好ましい化合物には、Rが、ハロであり、そしてRが、Hである化合物が挙げられる。
【0063】
式Vの好ましい化合物には、R、R、RおよびRが、それぞれ、Hである化合物が挙げられる。
【0064】
式Iおよび式IIの好ましい化合物には、Qが、CHまたはNであり、そしてQおよびVが、一緒になって、C(=O)を形成する式Iまたは式IIの化合物である式VIの化合物が挙げられる。
【0065】
式VIの好ましい化合物には、Lが、結合である化合物が挙げられる。
【0066】
式VIの好ましい化合物には、Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0067】
式VIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている化合物が挙げられる。
【0068】
式VIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される化合物が挙げられる。
【0069】
式VIの好ましい化合物には、Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される化合物が挙げられる。
【0070】
式VIの好ましい化合物には、Rが、ハロであり、そしてRが、Hである化合物が挙げられる。
【0071】
式VIの好ましい化合物には、R、R、RおよびRが、それぞれ、Hである化合物が挙げられる。
【0072】
別の例では、この化合物は、国際公開公報段落[0024]に従い、以下から選択される:
(表1)
【0073】
【表1−1】

【0074】
【表1−2】

【0075】
【表1−3】

【0076】
【表1−4】

【0077】
【表1−5】

【0078】
【表1−6】

【0079】
【表1−7】

【0080】
【表1−8】

【0081】
【表1−9】

【0082】
【表1−10】

【0083】
【表1−11】

【0084】
【表1−12】

【0085】
【表1−13】

【0086】
【表1−14】

【0087】
【表1−15】

【0088】
【表1−16】

【0089】
【表1−17】

【0090】
【表1−18】

【0091】
【表1−19】

【0092】
【表1−20】

【0093】
【表1−21】

【0094】
【表1−22】

【0095】
【表1−23】

【0096】
【表1−24】

【0097】
【表1−25】

【0098】
【表1−26】

【0099】
【表1−27】

【0100】
【表1−28】

【0101】
【表1−29】

【0102】
【表1−30】

【0103】
【表1−31】

【0104】
【表1−32】

【0105】
【表1−33】

本発明の別の局面は、国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれか1つに従った化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含有する、薬学的組成物である。
【0106】
本発明の別の局面は、国際公開公報段落[0024]〜[0072]のいずれか1つに従った化合物または薬学的組成物の代謝物である。
【0107】
本発明の別の局面は、キナーゼのインビボ活性を調節する方法であって、該方法は、被験体に、以下の少なくとも1種を含有する組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法であり:国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれかに従った化合物、国際公開公報段落[0072]に従った薬学的組成物、その組成が国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物、および国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【0108】
本発明の別の局面は、国際公開公報段落[0074]に従った方法であって、ここで、前記キナーゼは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2キナーゼから選択される。
【0109】
本発明の別の局面は、国際公開公報段落[0075]に従った方法であって、ここで、前記キナーゼのインビボ活性を調節する工程は、該キナーゼの阻害を包含する。
【0110】
本発明の別の局面は、制御できない異常および/または不要な細胞活性に関連した疾患または障害を処置する方法であって、該方法は、それを必要とする哺乳動物に、以下の少なくとも1種を含有する組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法であり:国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれかに従った化合物、国際公開公報段落[0072]に従った薬学的組成物、その組成が国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物、および国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【0111】
本発明の別の局面は、キナーゼ(好ましくは、p70S6、Akt−1および/またはAkt−2キナーゼ)のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、該方法は、国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれか1つに従った化合物、国際公開公報段落[0072]に従った薬学的組成物、その組成が国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物、および国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアと少なくとも1種の候補薬剤とキナーゼとを含有する薬学的組成物の少なくとも1種を混ぜ合わせる工程および該キナーゼの活性に対する該候補薬剤の効果を決定する工程を包含する。
【0112】
本発明の他の局面は、細胞における増殖活性を阻害する方法であって、この方法は、以下の有効量を投与する工程を包含する:国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれか1つに従った化合物、国際公開公報段落[0072]に従った薬学的組成物、その組成が国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物、および国際公開公報段落[0022]において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【0113】
本発明の他の局面は、細胞における異常な代謝活性を阻害する方法であって、該細胞または該複数の細胞に、以下の有効量を投与する工程を包含する:国際公開公報段落[0024]〜[0071]のいずれか1つに従った化合物、国際公開公報段落[0072]に従った薬学的組成物、その組成が国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物、および国際公開公報段落[0025]において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【0114】
(定義)
本明細書中で使用する以下の用語および語句は、一般に、それらが使用される文脈がそれ以外の意味を指示しているか異なる何かを意味すると明白に定義されている場合を除いて、以下で述べる意味を有すると解釈される。
【0115】
記号「−」は、単結合を意味し、「=」は、二重結合を意味し、「≡」は、三重結合を意味する。記号
【0116】
【化2−1】

は、その記号が結合する二重結合の末端におけるいずれかの位置を占めるように、二重結合上の基を意味する;すなわち、二重結合の相対位置E−またはZ−は、あいまいである。ある基がその親式から除去されて描写されているとき、「〜」の記号は、その親構造式から基を分離するために理論的に開裂された結合の末端で使用される。
【0117】
化学構造が描写または記述されているとき、特に明記しない限り、全ての炭素は、4つの原子価を満たすために、水素置換を有すると仮定される。例えば、以下の概略図の左側にある構造では、9個の水素を含む。これらの9個の水素は、右側の構造で描写されている。時には、構造内の特定の原子は、置換基として水素(明白に規定された水素)を有するように(例えば、−CHCH−)、そのままの式で記述される。前記描写方法は、複雑な構造の描写を簡潔かつ単純にするために化学の分野において一般的であることが、当業者により理解される。
【0118】
【化3】

本願では、いくつかの環構造は、一般的に描写されており、そのまま記述されている。例えば、以下のスキームでは、もし、左側の構造において、環Aが「スピロシクリル」を記述するのに使用されており、もし、環Aがシクロプロピルであるなら、環Aには、せいぜい4個の水素が存在する(このとき、「R」もまた、−Hであり得る)。他の例では、以下のスキームの右側で描写されているように、もし環Bが「フェニレン」を記述するのに使用されているなら、環Bには、せいぜい4個の水素が存在し得る(描写された開裂した結合は、C−H結合ではないと仮定して)。
【0119】
【化4】

もし、「R」基が、例えば、次式のように、環系において「浮遊している」と描写されているなら、
【0120】
【化5】

特に明記しない限り、置換基「R」は、安定な構造が形成される限り、それらの環原子の1個から、描写された水素、暗示された水素または明白に規定された水素を置換すると仮定して、その環系の任意の原子上に存在し得る。
【0121】
もし、「R」基が、例えば、次式のように、縮合環系において浮遊して描写されているなら、
【0122】
【化6】

特に明記しない限り、置換基「R」は、安定な構造が形成される限り、それらの環原子の1個から、描写された水素(例えば、上式における−NH−)、暗示された水素(例えば、上式におけるように、水素は、示されていないが、存在していると理解される)、または明白に規定された水素(例えば、ここで、上式において、「X」は、=CH−に等しい)を置換すると仮定して、その縮合環系の任意の原子上に存在し得る。描写した例では、「R」基は、この縮合環系の5員環または6員環のいずれかに存在し得る。上で描写した式では、例えば、yが2であるとき、2個の「R」は、再度、各々が環上の描写された水素、暗示され水素または明白に規定された水素を置換すると仮定して、その環系上の任意の2個の原子上に存在し得る。
【0123】
「R」基が、例えば、次式におけるように、飽和炭素を含有する環系に存在していると描写されるとき、
【0124】
【化7】

(ここで、この例では、「y」は、各々が環状にある現在描写された水素、暗示された水素または明白に規定された水素を置き換えると仮定して、1より大きくなり得る)、特に明記しない限り、得られた構造が安定である場合、2個の「R」は、同じ炭素上に存在し得る。簡単な例は、Rがメチル基であるときである;描写された環の炭素には、双性ジメチルが存在し得る(「環状」炭素)。他の例では、同じ炭素上の2個のRは、その炭素を含めて、環を形成し得、それゆえ、例えば、次式におけるように、描写された環と共に、スピロ環(「スピロシクリル」基)構造を作る:
【0125】
【化8】

「アルキル」とは、直鎖、分枝または環状炭化水素構造およびそれらの組み合わせを(包括的に)含むと解釈される。例えば、「Cアルキル」は、n−オクチル、イソオクチル、シクロヘキシルエチルなどを意味し得る。低級アルキルとは、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。低級アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。高級アルキルとは、8個より多い炭素原子を含有するアルキル基を意味する。代表的なアルキル基には、C20以下のものがある。シクロアルキルとは、アルキルの下位集合であり、そして3個〜13個の炭素原子を有する環状炭化水素基を含む。シクロアルキル基の例には、c−プロピル、c−ブチル、c−ペンチル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。本願では、アルキルとは、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル残基(およびそれらの組み合わせ)を意味する;それは、シクロヘキシルメチル、ビニル、アリル、イソプレニルなどを含むと解釈される。それゆえ、特定数の炭素を有するアルキル残基の名前を付けるとき、その数の炭素を有する全ての幾何異性体が含まれると解釈される;それゆえ、例えば、「ブチル」または「Cアルキル」のいずれかは、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソブテニルおよびブタ−2−イン(yne)ラジカルを含むことを意味する;そして、例えば、「プロピル」または「Cアルキル」は、それぞれ、n−プロピル、プロペニルおよびイソプロピルを含む。そうでなければ、基の特定の定義において、もし、アルケニルおよび/またはアルキニル記述子を使用するなら(例えば、「Cアルケニル」と共に「Cアルキル」)、Cアルケニルの幾何異性体は、「Cアルキル」を含むことを意味せず、他の4炭素異性体は、例えば、Cアルキニルである。例えば、さらに一般的な記述は、全体として本発明を包含すると意図して、「C1〜8アルキル」のような特定の基を記述し得るのに対して、好ましい種は、「C1〜8アルキル」、「C1〜6アルケニル」および「C1〜5アルキニル」を含めて、同じ基を記述し得る。
【0126】
「アルキレン」とは、炭素原子および水素原子だけからなる直鎖または分枝鎖二価ラジカルを意味し、これは、不飽和を含まず、そして1個〜10個の炭素原子を有する(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n−ブチレンなど)。アルキレンは、アルキルの下位集合であり、2個の結合点を有していて具体的には完全に飽和されていること以外は、アルキルと同じ残基を意味する。アルキレンの例には、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、ジメチルプロピレン(−CHC(CHCH−)およびシクロヘキシルプロピレン(−CHCHCH(C13))が挙げられる。
【0127】
「アルキリデン」とは、炭素原子および水素原子だけからなる直鎖または分枝鎖不飽和二価ラジカルを意味し、これは、2個〜10個の炭素原子を有する(例えば、エチリデン、プロピリデン、n−ブチリデンなど)。アルキリデンは、アルキルの下位集合であり、2個の結合点および具体的には二重結合不飽和を有すること以外は、アルキルと同じ残基を意味する。存在している不飽和は、少なくとも1個の二重結合を含む。
【0128】
「アルキリジン」とは、炭素原子および水素原子だけからなる直鎖または分枝鎖不飽和二価ラジカルを意味し、これは、2個〜10個の炭素原子を有する(例えば、プロピリド−2−イニル、n−ブチリド−1−イニルなど)。アルキリジンは、アルキルの下位集合であり、2個の結合点および具体的には三重結合を有すること以外は、アルキルと同じ残基を意味する。存在している不飽和は、少なくとも1個の三重結合を含む。
【0129】
上記ラジカル「アルキレン」、「アルキリデン」および「アルキリジン」のいずれかは、必要に応じて置換されているとき、それ自体不飽和を含むアルキル置換を含有し得る。例えば、2−(2−フェニルエチニル−ブタ−3−エニル)−ナフタレン(IUPAC名)は、該ラジカルの2位置で、ビニル置換基と共に、n−ブチリド−3−イニルラジカルを含有する。
【0130】
「アルコキシ」または「アルコキシル」とは、−O−アルキル基(これは、例えば、酸素原子を介して親構造に結合した直鎖、分枝、環状構成、不飽和鎖、およびそれらの組み合わせの1個〜8個の炭素原子を含む)を意味する。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。低級アルコキシとは、1個〜6個の炭素を含有する基を意味する。
【0131】
「置換アルコキシ」とは、−O−(置換アルキル)基を意味し、そのアルキル基上の置換基は、一般に、(アルコキシで定義されるように)、炭素のみ以外のものを含む。1つの代表的な置換アルコキシ基には、「ポリアルコキシ」、すなわち、−O−必要に応じて置換したアルキレン−必要に応じて置換したアルコキシ(例えば、−OCHCHOCH)およびグリコールエーテル(例えば、ポリエチレングリコールおよび−O(CHCHO)CHであって、ここで、xは、約2と約20の間の整数、他の例では、約2と約10の間の整数、さらに他の例では、約2と約5の間の整数である)がある。他の代表的な置換アルコキシ基には、ヒドロキシアルコキシ、すなわち、−OCH(CHOHがあり、ここで、yは、例えば、約1と約10の間の整数、他の例では、yは、約1と約4の間の整数である。
【0132】
「アシル」とは、カルボニル官能基を介して親構造に結合した直鎖、分枝、環状構成、不飽和鎖、およびそれらの組み合わせの1個〜10個の炭素原子を有する基を意味する。このアシル残基中の1個またはそれ以上の炭素は、親部分への結合点がカルボニルにとどまる限り、窒素、酸素または硫黄で置換され得る。例には、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。低級アシルとは、1個〜6個の炭素を含有する基を意味する。
【0133】
「α−アミノ酸」とは、天然に存在しているアミノ酸および市販のアミノ酸およびそれらの光学異性体を意味する。典型的な天然および市販のα−アミノ酸には、グリシン、アラニン、セリン、ホモセリン、スレオニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、オミチン(omithine)、ヒスチジン、アルギニン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、フェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、フェニルグリシン、オルトチロシン、メタチロシン、パラチロシン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、プロリンおよびヒドロキシプロリンがある。「α−アミノ酸の側鎖」とは、上で定義したα−アミノ酸のα炭素上に存在しているラジカル(例えば、水素(グリシンについて)、メチル(アラニンについて)、ベンジル(フェニルアラニンについて)など)を意味する。
【0134】
「アミノ」とは、−NH基を意味する。「置換アミノ」とは、−N(H)Rまたは−N(R)R基を意味し、ここで、各Rは、別個に、以下からなる群から選択される:必要に応じて置換したアルキル、必要に応じて置換したアルコキシ、必要に応じて置換したアリール、必要に応じて置換したヘテロシクリル、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニルおよびスルホニル(例えば、ジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノおよびフラニル−オキシ−スルホンアミノ)。
【0135】
「アリール」とは、6員〜14員環状炭素(例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、フルオレンなど、一価ラジカル)を意味する。一価ラジカルとしては、前記環の例には、フェニル、ナフチル、インダニル、テトラニリルおよびフルオレニルがある。
【0136】
「アリーレン」とは、一般的に、少なくとも2個の基をそこに結合した任意のアリールを意味する。さらに特定の例としては、「フェニレン」は、二価フェニル環ラジカルを意味する。フェニレンには、それゆえ、2個より多い基が結合し得るが、最低で2個の非水素基がそこに結合していることにより、定義される。
【0137】
「アリールアルキル」とは、アルキレン、アルキリデンまたはアルキリジンラジカルの1つを介してアリール部分が親構造に結合した残基を意味する。例には、ベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリルなどが挙げられる。アリールアルキル基のアリールと、対応するアルキレン、アルキリデンまたはアルキリジンラジカル部分との両方は、必要に応じて置換され得る。「低級アリールアルキル」とは、その「アルキル」部分が1個〜6個の炭素を有するアリールアルキルを意味する;これはまた、C1〜6アリールアルキルとも呼ぶことができる。
【0138】
「エキソ−アルケニル」とは、環状炭素から発出する二重結合であって、環系内にはないものを意味し、例えば、その二重結合は、以下の式で描写される。
【0139】
【化9】

いくつかの例では、当業者が理解するように、芳香族系にある2個の隣接基は、一緒に縮合して、環構造を形成し得る。この縮合環構造は、ヘテロ原子を含有し得、そして必要に応じて、1個またはそれ以上の基で置換され得る。さらに、このような縮合基(すなわち、飽和環構造)の飽和炭素は、2個の置換基を含有できることに注目すべきである。
【0140】
「縮合−多環式」または「縮合環系」とは、架橋環または縮合環を含有する多環式環系を意味する;すなわち、ここで、2個の環は、それらの構造内において、1個より多い共有原子を有する。本願では、縮合−多環式化合物および縮合環系は、必ずしも、全て、芳香環系ではない。代表的には、必ずしもそうではないが、縮合−多環式化合物は、近接した原子のセットを共有する(例えば、ナフタレンまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン)。スピロ環系は、この定義では、縮合−多環式化合物ではないが、本発明の縮合多環式環系は、縮合−多環式化合物の単一環原子を介して、それ自体、スピロ環がそこに結合し得る。
【0141】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。「ハロアルキル」および「ハロアリール」とは、一般的に、それぞれ、1個またはそれ以上のハロゲンで置換されたアルキルおよびアリールラジカルを意味する。それゆえ、「ジハロアリール」、「ジハロアルキル」、「トリハロアリール」などは、複数のハロゲンで置換されたアリールおよびアルキルを意味するが、必ずしも、複数の同じハロゲンでなくてもよい;それゆえ、4−クロロ−3−フルオロフェニルは、ジハロアリールの範囲内に入る。
【0142】
「ヘテロアリーレン」とは、一般的に、そこに少なくとも2個の基が結合した任意のヘテロアリールを意味する。さらに特定の例としては、「ピリジレン」は、二価ピリジル環ラジカルを意味する。ピリジレンには、それゆえ、2個より多い基が結合し得るが、最低で2個の非水素基がそこに結合していることにより、定義される。
【0143】
「ヘテロ原子」は、O、S、NまたはPを意味する。
【0144】
「ヘテロシクリル」とは、安定な3員〜5員環ラジカルであって、炭素原子と1個〜5個のヘテロ原子とからなるものを意味し、このヘテロ原子は、窒素、リン、酸素および硫黄からなる群から選択される。本発明の目的のために、ヘテロシクリルラジカルは、単環式、二環式または三環式環系であり得、これは、縮合または架橋環系だけでなく、スピロ環式環系も含み得る;ヘテロシクリルラジカル内の窒素、リン、酸素および硫黄原子は、必要に応じて、種々の酸化状態に酸化され得る。特定の例では、−S(O)0〜2−基は、−S−(スルフィド)、−S(O)−(スルホキシド)および−SO−(スルホン)を意味する。便宜上、窒素(特に、環状芳香族窒素として定義されるものであるが、それに限定されない)は、それらの対応するN−オキシド形状を含むことを意味するが、特定の例では、そのような明白には定義されていない。それゆえ、例えば、ピリジル環を有する本発明の化合物について;対応するピリジル−N−オキシドは、本発明の別の化合物を含むことを意味する。それに加えて、環状窒素原子は、必要に応じて、四級化され得る;その環ラジカルは、部分的または完全に、飽和または芳香族であり得る。ヘテロシクリルラジカルの例には、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、カルバゾイル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾリル、テトラヒドロイソキノリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエリル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニルおよびオキサジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
「ヘテロ脂環族」とは、具体的には、非芳香族ヘテロシクリルラジカルを意味する。ヘテロ脂環族は、不飽和を含有し得るが、芳香族ではない。
【0146】
「ヘテロアリール」は、具体的には、芳香族ヘテロシクリルラジカルを意味する。
【0147】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、アルキレン、アルキリデンまたはアルキリジンラジカルを介してヘテロシクリルが親構造に結合した残基を意味する。例には、(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル、(モルホリン−4−イル)メチル、(ピリジン−4−イル)メチル、2−(オキサゾリン−2−イル)エチル、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−ブテニルなどが挙げられる。ヘテロシクリルアルキル基のヘテロシクリルと、対応するアルキレン、アルキリデンまたはアルキリジンラジカル部分との両方は、必要に応じて置換され得る。「低級ヘテロシクリルアルキル」とは、その基の「アルキル」部分が1個〜6個の炭素を有するヘテロシクリルアルキルを意味する。「ヘテロ脂環族アルキル」とは、具体的には、その基のヘテロシクリル部分が非芳香族であるヘテロシクリルアルキルを意味する;そして「ヘテロアリールアルキル」とは、その基のヘテロシクリル部分が芳香族であるヘテロシクリルアルキルを意味する。このような用語は、1つより多い様式で記述され得、例えば、「低級ヘテロシクリルアルキル」および「ヘテロシクリルC1〜6アルキル」は、同等の用語である。
【0148】
「任意の」または「必要に応じて」とは、引き続いて記述された事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、およびこの記述が、該事象が起こる場合および該事象が起こらない場合を含むことを意味する。当業者は、任意の分子が1個またはそれ以上の任意の置換基を含有するとして記述されていることに関して、立体的に実行可能および/または合成的に実現可能な化合物だけを含むことを意味することを理解する。「必要に応じて置換した」とは、用語内の全ての引き続いた修飾語句を意味し、例えば、「必要に応じて置換したアリールC1〜8アルキル」では、任意の置換は、その分子の「C1〜8アルキル」部分および「アリール」部分の一方または両方で起こり得る。代表的な任意の置換基のリストは、「置換した」との定義において、以下で含める。
【0149】
「飽和架橋環系」とは、芳香族ではない二環式または多環式環系を意味する。このような系は、孤立したまたは共役した不飽和を含み得るが、その核構造内に芳香環またはヘテロ芳香環を含み得ない(しかし、そこには、芳香族置換を有し得る)。例えば、ヘキサヒドロ−フロ[3,2−b]フラン、2,3,3a,4,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−インデン、7−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンおよび1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−ナフタレンは、全て、「飽和架橋環系」類に含まれる。
【0150】
「スピロシクリル」または「スピロ環式環」とは、他の環の環状炭素から作られる環を意味する。例えば、以下で描写するように、飽和架橋環系(環BおよびB’)の環原子(しかし、橋頭(bridgehead)原子ではない)は、飽和架橋環系とそこに結合されたスピロシクリル(環A)との間で共有される原子であり得る。スピロシクリルは、炭素環式またはヘテロ脂環式であり得る。
【0151】
【化10】

「置換」アルキル、アリールおよびヘテロシクリルとは、それぞれ、1個またはそれ以上(例えば、約5個まで、他の例では、約3個までの)水素原子を置換基で置き換えたアルキル、アリールおよびヘテロシクリルを意味し、この置換基は、別個に、以下から選択される:アルキル(例えば、フルオロメチル、ヒドロキシプロピル、ニトロメチル、アミノエチルなど)、アリール(例えば、4−ヒドロキシフェニル、2,3−ジフルオロフェニルなど)、アリールアルキル(例えば、1−フェニル−エチル、パラ−メトキシフェニルエチルなど)、ヘテロシクリルアルキル(例えば、1−ピリジン−3−イル−エチル、N−エチルモルホリノなど)、ヘテロシクリル(例えば、5−クロロ−ピリジン−3−イル、1−メチル−ピペリジン−4−イルなど)、アルコキシ(例えば、メトキシエトキシ、ヒドロキシプロピルオキシ、メチレンジオキシなど)、アミノ(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ、トリフルオロアセチルアミノなど)、アミジノ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ、パラ−クロロフェノキシ、メタ−アミノフェノキシ、パラ−フェノキシフェノキシなど)、アリールアルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ、3−クロロベンジルオキシ、メタ−フェノキシベンジルオキシなど)、カルボキシ(−COH)、カルボアルコキシ(すなわち、アシルオキシまたは−OC(=O)R)、カルボキシアルキル(すなわち、エステルまたは−COR)、カルボキサミド、ベンジルオキシカルボニルアミノ(CBZ−アミノ)、シアノ、アシル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、チオール、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、カルバミル、アシルアミノ、ヒドラジノ、ヒドロキシルアミノ、およびスルホンアミド。
【0152】
「スルファニル」とは、以下の基を意味する:−S−(必要に応じて置換したアルキル)、−S−(必要に応じて置換したアリール)、および−S−(必要に応じて置換したヘテロシクリル)。
【0153】
「スルフィニル」とは、以下の基を意味する:−S(O)−H、−S(O)−(必要に応じて置換したアルキル)、−S(O)−必要に応じて置換したアリール)、および−S(O)−(必要に応じて置換したヘテロシクリル)。
【0154】
「スルホニル」とは、以下の基を意味する:−S(O)−H、−S(O)−(必要に応じて置換したアルキル)、−S(O)−必要に応じて置換したアリール)、−S(O)−(必要に応じて置換したヘテロシクリル)、−S(O)−(必要に応じて置換したアルコキシ)、−S(O)−必要に応じて置換したアリールオキシ)、および−S(O)−(必要に応じて置換したヘテロシクリルオキシ)。
【0155】
本明細書中で記述した反応の各々について「収率」とは、理論収率の百分率として、表現される。
【0156】
本発明の化合物のいくつかは、芳香族ヘテロシクリル系から離れたイミノ、アミノ、オキソまたはヒドロキシ置換基を有し得る。本開示の目的のために、このようなイミノ、アミノ、オキソまたはヒドロキシ置換基は、それらの対応する互変異性形状(すなわち、それぞれ、アミノ、イミノ、ヒドロキシまたはオキソ)で存在し得ることが分かる。
【0157】
本発明の化合物は、the International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC),International Union of Biochemistry and Molecular Biology(IUBMB)、およびthe Chemical Abstracts Service(CAS)により認められた命名法規則の系統的な適用に従って、命名される。
【0158】
本発明の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、それらの構造内に、不斉炭素原子、酸化された硫黄原子または四級化窒素原子を有し得る。
【0159】
本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、単一の立体異性体、ラセミ化合物、および鏡像異性体およびジアステレオマーの混合物として、存在し得る。これらの化合物はまた、幾何異性体として、存在し得る。このような単一の立体異性体、ラセミ化合物およびそれらの混合物、および幾何異性体の全ては、本発明の範囲内であると解釈される。
【0160】
化合物を構成する目的のために、本発明の化合物の一般的な記述を考慮するとき、このような構成により、安定な構造が作成されると想定される。すなわち、当業者は、安定な化合物とは通常見なされないいくつかの構成(すなわち、立体的に実行可能および/または合成的に実現可能な(上記))が理論的に存在できることを認識する。
【0161】
その結合構造を有する特定の基が2個のパートナーに結合するように表示されているとき;すなわち、二価ラジカル(例えば、−OCH−)、特に明記しない限り、これらの2個のパートナーのいずれかは、一端において、特定の基に結合され得、そして他のパートナーは、必ず、この特定の基の他端に結合されることが分かる。言い換えれば、二価ラジカルは、描写された配向に限定されるとは解釈されず、例えば、「−OCH−」は、描写された「−OCH−」だけでなく、「−CHO−」も意味する。
【0162】
立体異性体のラセミ混合物または非ラセミ混合物から単一の立体異性体を調製および/または分離し単離する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、光学活性(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製され得るか、または通常の技術を使用して分割され得る。鏡像異性体(R−およびS−異性体)は、当業者に公知の方法、例えば、以下により、分割され得る:例えば、結晶化により分離され得るジアステレオマー塩または錯体の形成;例えば、結晶化により分離され得るジアステレオマー誘導体の形成、1つの鏡像異性体と鏡像異性体特異的な試薬との選択的な反応(例えば、酵素酸化または還元)に続いて、変性および非変性鏡像異性体の分離;またはキラル環境(例えば、キラル支持体(例えば、キラル配位子を結合して、またはキラル溶媒の存在下にて、シリカ))での気液または液体クロマトグラフィー。上記分離手順により、所望の鏡像異性体を他の化学要素に変換する場合、所望の鏡像異性体形状を遊離するのに、さらに別の工程が必要であり得ることが理解できる。あるいは、特定の鏡像異性体は、光学活性試薬、基質、触媒または溶媒を使用する不斉合成により、または不斉変換によって鏡像異性体を他のものに変換することにより、合成され得る。特定の鏡像異性体に富んだ鏡像異性体の混合物については、主要成分の鏡像異性体は、再結晶により、(同時に生じる収率の低下を伴って)、さらに濃縮され得る。
【0163】
本発明の目的のための「患者」としては、ヒトならびに他の動物(特に、哺乳動物)、および他の生物が挙げられる。したがって、上記方法は、ヒト治療および獣医学的適用の両方に対して適用可能である。好ましい実施形態において、上記患者は哺乳動物であり、そしてもっとも好ましい実施形態において、上記患者はヒトである。
【0164】
「キナーゼ依存性の疾患または状態」とは、1種以上のプロテインキナーゼの活性に依存する病理的状態をいう。キナーゼは、種々の細胞活性(増殖、接着、移動、分化および浸潤を含む)のシグナル伝達経路において、直接的かまたは間接的に関与する。キナーゼ活性に関連する疾患としては、腫瘍成長、固形腫瘍成長を補助する病的新血管形成、および過剰な局所的血管新生に関係する他の疾患に関連した疾患(例えば、眼球の疾患(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)および炎症(乾癬、慢性関節リウマチなど))が挙げられる。
【0165】
理論通りになることを望むわけではないが、ホスファターゼもまた、「キナーゼ依存性の疾患または状態」においてキナーゼの同族としての役割を果たす;すなわち、例えば、タンパク質基質を、キナーゼはリン酸化し、そしてホスファターゼは脱リンする。したがって、本明細書中に記載される場合、本発明の化合物はキナーゼ活性を調節する一方、ホスファターゼ活性をまた、直接的か、または間接的に調節し得る。このさらなる調節は、もし存在するならば、関連したキナーゼまたはキナーゼファミリーに関して、またはそうでなければ、相互依存的性のキナーゼまたはキナーゼファミリーに関して、本発明の化合物の活性に対して相乗的(または非相乗的)であり得る。いずれにせよ、前述のように、本発明の化合物は、異常なレベルの細胞の代謝、増殖(すなわち、腫瘍成長)、プログラム細胞死(アポトーシス)、細胞移動、ならびに腫瘍成長に関連した浸潤および新脈管形成によって部分的に特徴付けられる疾患を処置するために有用である。
【0166】
「治療的に有効な量」は、患者へ投与する場合、その疾患の症状を改善させる本発明の化合物の量である。「治療的に有効な量」を構成する本発明の化合物の量は、上記化合物、疾患の状態およびその重症度、処置される患者の年齢などに依存して変化する。上記治療的に有効な量は、当業者が自身の知見および本開示を考慮することにより、日常的に決定され得る。
【0167】
「癌」とは、細胞増殖性の疾患状態をいい、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:心臓性:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性癌腫(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支の)癌腫、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫(chondromatous hanlartoma)、中皮腫(inesothelioma);胃腸性:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌,リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌(ductal adenocarcinoma)、インシュリノーナ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、類癌腫、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器路:腎(腺癌、ウィルムス腫[腎芽細胞腫(neplrroblastoma)]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌,移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌腫、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:ヘパトーム(肝細胞癌)、胆管癌、胚芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫(malignant giant cell tumor chordoma)、骨軟骨腫(osteochronfroma)(骨軟骨外骨腫症)、良性軟骨種、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎(osteitis defornians)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫(meningiosarcoma)、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性グリア芽細胞腫、.希突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科性:子宮(子宮内膜癌腫)、頚(頚部癌腫(cervical carcinoma)、前腫瘍(pre−tumor)子宮頚部形成異常)、卵巣(卵巣癌腫[漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、未分類の癌腫(unclassified carcinoma)]、顆粒膜細胞−包膜細胞腫、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮癌、表皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫]、ファローピウス管(癌腫);血液性:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、モールディスプラスティックニーバス(mole dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および副腎部:神経芽腫。したがって、本明細書中で提供される場合、用語「癌(性)細胞」は、上記の認められる状態のいずれか1つに罹患した細胞を含む。
【0168】
「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性を保持する塩をいい、そしてそれらは生物学的にも他の局面でも望ましくないものではなく、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、ならびに有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)とともに形成される。
【0169】
「薬学的に受容可能な塩基付加塩」としては、無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩など)に由来するものが挙げられる。代表的な塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。薬学的に受容可能な有機無毒性塩基に由来する塩としては、第一級アミンの塩、第二級アミンの塩、ならびに第三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)の塩、環状アミンの塩および塩基性硫黄ン交換樹脂の塩(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン(methylglucamine)、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペラジン、ポリアミン樹脂など)、が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである(例えば、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、1977;66:1−19を参照のこと。これは、参考として本明細書中に援用される)。
【0170】
「プロドラッグ」とは、上記処方物の親化合物(parent compound)を得るために、インビボにおいて(代表的には急速に)形質転換(例えば、血液中における加水分解)された化合物をいう。一般的な例としては、カルボン酸部分を生じる活性形態を有する化合物のエステル形態およびアミド形態が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の薬学的に受容可能なエステルの例としては、アルキルエステル(例えば、約1個と約6個との間の炭素を有する)(ここで、このアルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖である)が挙げられるが、これに限定されない。受容可能なエステルとしてはまた、シクロアルキルアステルおよびアリールアルキルエステル(例えば、限定されるわけではないが、ベンジル)が挙げられる。本発明の化合物の薬学的に受容可能なアミドの例としては、第一級アミド、および第二級アルキルアミド、ならびに第三級アルキルアミド(例えば、約1個と約6個との間の炭素を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物のアミドおよびエステルは、従来の方法に従って調製され得る。プロドラッグについての考察は、T.HiguchiおよびV.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems,」A.C.S.Symposium Seriesの第14巻、およびBioreversible Carriers in Drug Design、編者Edward B.Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987において提供され、これらの両方は、本明細書中にすべての目的のために参考として援用される。
【0171】
「代謝生成物」とは、動物またはヒトの体内で、代謝または生体内変化によって生産された化合物またはその塩の分解(break−down)生成物または最終生成物をいう;例えば、(例えば、酸化による、還元による、または加水分解による)より極性な分子への生体内変化、または抱合体(conjugate)への生体内変化(生体内変化の考察については、GoodmanおよびGilman、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第8補遺版、Pergamon Press、Gilmanら(編)、1990を参照のこと)。本明細書中で使用する場合、本発明の化合物またはその塩の代謝生成物は、体内において上記化合物の生物学的活性形態であり得る。1つの例において、プロドラッグはその生物学的に活性な形態(代謝生成物)がインビボにおいて放出されるように使用され得る。別の例において、生物学的に活性な代謝生成物は予期せず発見される。すなわち、それ自体のプロドラッグ設計は行われない。本発明の化合物の代謝生成物の活性に関するアッセイは、本開示を考慮に入れ、当業者において既知である。
【0172】
さらに、本発明の化合物は、溶媒和されていない形態ならびに、薬学的に受容可能な溶媒(例えば、水、エタノールなど)と溶媒和された形態で存在し得る。一般に、本発明の目的に関して、上記溶媒和物化形態は非溶媒和物化形態と等価であるとみなされる。
【0173】
さらに、本発明は、標準の有機合成技術(コンビナトリアルケミストリーを含む)を使用するか、または生物学的方法(例えば、細菌性消化、代謝、酵素的変換など)によるかのいずかによって作られる化合物をカバーすることが意図される。
【0174】
本明細書で使用する場合、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、ヒトにおける疾患状態の処置をカバーし、この疾患状態は、異常な細胞増殖および/または異常な細胞浸襲あるいは代謝によって特徴付けられ、そして以下のうちの少なくとも1つを含む:(i)ヒトにおいて疾患状態を発症することを防ぐことであって、特に、このようなヒトは、上記疾患状態に対して罹患し易いが、疾患状態であるとはまだ診断されていない場合);(ii)上記疾患状態の抑制すること(すなわち、その発達の阻止);および(iii)上記疾患状態の軽減すること(すなわち、上記疾患状態の退行を引き起こすこと)。当該分野において公知であるように、全身送達対局所送達、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食餌、投与の時間、薬物相互作用および状態の重症度に関する調整は必要であり得、そして、当業者によって日常的な実験法で確かめられる。
【0175】
当業者は、特定の結晶化したタンパク質−リガンド複合体(特に、p70S6Kリガンド複合体)およびそれらの対応するX線構造座標(x−ray structure coordinate)は、本明細書中に記載されるようなキナーゼの生物学的活性を理解するために有用な新しい構造情報を明らかにするために使用され得ると理解する。同様に、上述のタンパク質の重要な構造的特徴(特に、リガンド結合部位の形状)は、キナーゼの選択的調節因子の設計または同定のための方法において有用であり、かつ同様の特徴を有する他のタンパク質の構造の解明において有用である。このようなタンパク質−リガンド複合体(それらのリガンド成分としての本発明の化合物を有する)は、本発明の一局面である。
【0176】
同様に、当業者は、このような適切なX線特性結晶(x−ray quality crystal)は、結合してキナーゼの活性を調節し得る候補因子の同定方法の一部として使用され得ると理解する。このような方法は、以下の局面によって特徴付けされ得る:a)適切なコンピュータープログラムに導入する局面、立体配座におけるキナーゼのリガンド結合ドメインを規定する情報を導入する局面(例えば、上述のような適切なX線特性結晶から得られたX線構造座標によって規定する場合)であって、ここで、上記コンピュータープログラムは、リガンド結合ドメインの三次元構造のモデルを創造する、b)上記コンピュータープログラムにおいて、候補因子の三次元構造のモデルを導入する局面、c)上記リガンド結合ドメインのモデル上に、この候補因子モデルを重ね合わせる局面、およびd)上記候補因子モデルが、リガンド結合ドメインに対して空間的に適合するかどうかを評価する局面。局面a)〜局面d)は、上述の順序で必ず行われるわけではない。このような方法は、三次元構造のモデルを用いた合理的な薬物設計を実施する局面、およびコンピューターモデリングとの組み合わせにおいて強力な候補因子を選択する局面をさらに伴い得る。
【0177】
さらに、当業者は、このような方法はさらに以下を必要とし得ると理解する:キナーゼ調節に関する生物学的活性アッセイにおいて、リガンド結合ドメインに対して空間的に適合させるためにこの方法で決定された候補因子の使用、およびこの候補因子が上記アッセイにおいてキナーゼ活性を調節するかどうかの測定。このような方法はまた、キナーゼ調節によって(例えば、上述のような)処置可能な状態を罹患した哺乳動物に、キナーゼ活性を調節すると決定された候補因子を投与することを含み得る。
【0178】
また、本発明の化合物は、試験因子の(キナーゼのリガンド結合ドメインを含む)分子または分子複合体と会合する能力を評価する方法において使用され得ると、当業者は理解する。このような方法は、以下の局面によって特徴付けられ得る:a)キナーゼの適切なX線特性結晶法から得られた構造座標を使用して、キナーゼ結合ポケットのコンピュータモデルを創造する局面、b)上記試験因子と上記結合ポケットのコンピューターモデルとの間の適合操作(fitting operation)を実施するために計算的アルゴリズムを利用する局面、およびc)上記試験因子と上記結合ポケットのコンピューターモデルとの間の会合を数量化するために、上記適合操作の結果を分析する局面。
【0179】
(一般的投与)
純粋形態かまたは適切な薬学的組成物での、本発明の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩の投与は、任意の容認された投与の様式、または同様の有用性を与える薬剤を介して行われ得る。したがって、投与は、例えば、経口的、経鼻的、非経口的(静脈内、筋内、または皮下)、局所的、経皮的、膣内、膀胱内、槽内、または直腸内への、固体投薬形態、半固体投薬形態、凍結乾燥粉末投薬形態、または液体投薬形態の形状(例えば、錠剤、坐剤、丸剤、柔らかな弾性材料および硬いゼラチンのカプセル剤、粉剤、液剤、懸濁液、またはエーロゾル剤など)であり得、好ましくは、正確な投薬量の単回投与のために適切な単位投薬形態である。
【0180】
上記組成物は、慣習的な薬学的キャリアまたは賦形剤および活性因子としての本発明の化合物を含み、そしてさらに、他の医薬因子、薬学的因子、薬学的キャリア、薬学的アジュバントなどを含み得る。本発明の組成物は、癌を処置するために患者に一般的に投与される制癌性因子または他の因子と組み合わせて使用され得る。アジュバントとしては、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、乳化剤、および調剤が挙げられる。微生物の作用の阻止は、種々の制菌性因子および抗真菌性因子(例えば、パラベン(paraben)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって保証され得る。等張性因子(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含むこともまた、所望され得る。注入可能な薬学的形態の持続した吸収は、吸収を遅延させる因子(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
【0181】
所望する場合、本発明の薬学的組成物はまた、少量の助剤(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化物質など(例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのような))を含み得る。
【0182】
非経口的注入のために適切な組成物は、生理的に受容可能な滅菌水もしくは非水系溶液、分散剤、懸濁剤または乳化剤、および滅菌注入可能な溶液もしくは分散剤に再構成するための滅菌粉剤を含み得る。適切な水性キャリアおよび非水系キャリア、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物性油脂(例えば、オリーブオイル)、および注入可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのような被覆物の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0183】
投与の1つの好ましい経路は、都合よい毎日の投薬レジメンを使用する経口であり、それは、処置される疾患状態の重症度の程度に従って調整され得る。
【0184】
経口投与のための固形投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固形投薬形態において、上記活性化合物は、少なくとも1つの不活性な慣習的賦形剤(またはキャリア)(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)、または、(a)充填剤(filler)もしくは増量剤(例としては、デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸)、(b)結合剤(例としては、セルロース誘導体、デンプン、アリグネート(alignates)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアラビアゴム)、(c)湿潤剤(humectant)(例としては、グリセロール)、(d)崩壊剤(例としては、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸(complex silicate)、および炭酸ナトリウム)、(e)溶液凝固遅延剤(例としては、パラフィン)、(f)吸収促進剤(例としては、四級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(wetting agent)(例としては、セチルアルコール、およびグリセロールモノステアレート、ステアリン酸マグネシウムなど)、(h)吸着剤(例としては、カオリンおよびベントナイト)および(i)滑沢剤(例としては、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合は、その投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0185】
上記のような固形投薬形態は、被覆物および外皮(例えば、腸溶被覆物および当該分野において周知である他の物)とともに調製され得る。これらは、制圧剤(pacifying agent)を含み得、そしてまた、遅れた様式で腸管のある部位において活性化合物を放出するような組成物であり得る。使用され得る包埋した組成物の例は、重合体基質およびろうである。上記活性化合物はまた、適切な場合、1種以上の上述した賦形剤とともにマイクロカプセル化形態になり得る。
【0186】
経口投与のための液状投薬形態としては、薬学的に受容可能な乳濁液、溶液、懸濁液、糖ミツ、およびエリキシルが挙げられる。このような投薬形態は、例えば、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、およびキャリア(例えば、水、生理食塩水、水溶性ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど)中の任意の薬学的アジュバント;可溶化剤および乳化剤(例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド);油状物(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル;またはこれらの基質の混合物などの溶解、分散などによって調製され、その結果、溶液または懸濁液が形成される。
【0187】
上記活性化合物に加えて、懸濁液は、懸濁剤(例としては、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天ならびにトラガカント、またはこれらの基質の混合物など)を含み得る。
【0188】
直腸投与のための組成物は、例えば坐剤であり、それは本発明の化合物と、例えば、適切な刺激の無い賦形剤またはキャリア(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス(suppository wax))とを混合することによって調製され得る。これらは常温で固体であるが、体温では液体であり、そしてその結果、適切な体腔において融解しながら、その中で活性化合物を放出する。
【0189】
本発明の化合物の局所投与のための投薬形態としては、軟膏剤、粉剤、スプレー、および吸入剤が挙げられる。上記活性成分は、必要とされる場合、生理的に受容可能なキャリアおよび任意の保存剤、緩衝剤、または噴霧剤と滅菌条件下で混合される。眼病用の処方物、眼軟膏、粉剤、および溶液もまた、本発明の範囲内にあることが企図される。
【0190】
一般に、投与の意図された態様に応じて、上記薬学的に受容可能な組成物は、約1重量%〜約99重量%の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および99重量%〜1重量%の適切な薬学的賦形剤を含む。1つの例において、上記組成物は、約5重量%と約75重量%との間の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、その残りは適切な薬学的賦形剤である。
【0191】
このような投薬形態の調製の実際の方法は、当業者にとって公知であるか、または明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1990)を参照のこと。投与される組成物は、いずれの場合にも、本発明の教示に従った疾患状態の処置のための、治療的に有効な量の本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む。
【0192】
本発明の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、種々の要因(使用する特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食餌、投与の様式および時期、排出の速度、薬物の組み合わせ、特定の疾患状態の重症度、および宿主の受けている治療を含む)に依存して変動する、治療的に有効な量で投与される。本発明の化合物は、1日あたり約0.1mg〜約1,000mgの範囲の投薬レベルで患者へ投与され得る。一例としては、約70kgの体重を有する正常なヒトの成人は、1日あたり体重について1kgあたり約0.01mg〜約100mgの範囲内の投薬量である。しかしながら、使用される特定の投薬量は、変動し得る。例えば、投薬量は、多くの要因(患者の必要とする量、処置される状態の重症度、および使用される化合物の薬理学的活性を含む)に依存し得る。特定の患者のための最適な投薬量の決定は、当業者において周知である。
【0193】
(スクリーニング因子としての本発明の化合物の有用性)
例えば、p70S6Kレセプターキナーゼに結合する候補因子に関するスクリーニングの方法において本発明の化合物を使用するために、タンパク質は支持体に結合され、そして本発明の化合物がアッセイのために添加される。代替的に、本発明の化合物は上記支持体に結合され、そしてタンパク質が添加される。探求され得る新規の結合因子の中で候補因子の分類は、特異的抗体、化学的ライブラリーのスクリーニングにおいて同定された非天然結合因子、ペプチドアナログなどが挙げられる。特に関心があるものは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する候補因子に関するスクリーニングアッセイである。広範な種々のアッセイは、この目的のために使用され得る。このアッセイとしては、標識化インビトロタンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度変化アッセイ、タンパク質結合に関する免疫学的アッセイ、機能的アッセイ(リン酸化アッセイなど)などが挙げられる。
【0194】
上記候補因子の、例えば、p70S6Kタンパク質への結合の測定は、種々の方法において実施され得る。1つの例において、上記候補因子(本発明の化合物)は、例えば蛍光性部分または放射活性部分で標識され、そして直接的に結合が測定される。例えば、上記p70S6Kタンパク質のすべてまたは一部分を固体支持体に付着させ、標識された因子(例えば、少なくとも1個の原子が検出可能な同位体で置換された、本発明の化合物)を添加し、過剰な試薬を洗い流し、そしてどれくらいの量の標識がこの固体支持体上に存在するか決定することによって、実施され得る。種々のブロッキング工程および洗浄工程は、当該分野において周知のように利用され得る。
【0195】
本明細書中において「標識された」は、化合物が、検出可能なシグナルを提供する標識(例えば、ラジオアイソトープ、蛍光タグ、酵素、抗体、粒子(例えば、磁性粒子)、化学発光タグ、または特異的に結合する分子など)を用いて直接的かまたは間接的に標識されることを意味する。特異的に結合する分子としては、対となるのもの(例えば、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなど)が挙げられる。特異的結合メンバーに関して、上記相補的メンバーは、上述の公知の手順に従って検出を提供する分子で正常に標識される。この標識は、検出可能なシグナルを直接的かまたは間接的に提供し得る。
【0196】
いくつかの実施形態において、上記成分のただ1つが標識される。例えば、p70S6Kタンパク質は、チロシン位で125Iを用いて標識され得るか、または蛍光体で標識され得る。代替的に、1つより多い成分は、異なる標識で(例えば、タンパク質に関しては125Iを使用して、そして候補因子に関してはフルオロフォアを使用して)標識され得る。
【0197】
本発明の化合物はまた、さらなる薬物候補のためのスクリーニングのための競合相手として使用され得る。本明細書中で使用する場合、「候補生理活性因子」もしくは「薬物候補」または文法的同義語は、生物活性に関して試験するための任意の分子(例えば、タンパク質、オリゴペプチド、低有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドなど)を表す。これらは、細胞増殖または代謝表現型、または、細胞増殖性または代謝配列(metabolic sequence)(核酸配列およびタンパク質配列の両方を含む)の発現を、直接的かまたは間接的に変化させ得る。他の場合では、細胞増殖性または代謝タンパク質の結合および/または活性の変化はスクリーニングされる。いくつかの実施形態は、タンパク質の結合またはタンパク質の活性がスクリーニングされた場合は、その特定のタンパク質に結合することが既に知られている分子を除外する。本明細書中に記載されるアッセイの代表的な実施形態としては、その内因性の天然状態において標的タンパク質に結合しない候補因子が挙げられ、本明細書中において「外因性」因子と名付けられた。1つの例において、外因性因子は、p70S6Kに対する抗体をさらに除外する。
【0198】
候補因子は、多数の化学的分類を含み得、しかしながら代表的には、それらは約100ダルトンより大きく、かつ約2,500ダルトンより小さい分子量を有する有機分子である。候補因子は、タンパク質との構造的相互作用(特に水素結合および親油性結合)のために必要な官能基を含み、そして代表的には、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、エーテル基、またはカルボキシル基を含む(例えば、上記官能基の少なくとも2つ)。上記候補因子は、しばしば、1つ以上の上記官能基で置換された、環状の炭素構造もしくは複素環構造および/または芳香族構造もしくはポリ芳香族構造を含む。候補因子はまた、生体分子(ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、その構造アナログ、またはその組み合わせを含む)の中で見出される。
【0199】
候補因子は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、広範な種々の供給源から獲得される。例えば、広範な種々の有機化合物および生体分子の無作為かつ直接的な合成のために、多数の手段(無作為化したオリゴヌクレオチドの発現を含む)が利用可能である。代替的に、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、利用可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然または合成的に生成されたライブラリーおよび化合物は、慣習的な化学的手段、物理学的手段および生化学的手段を介して容易に改変される。公知の薬理学的因子は、直接的または無作為の化学修飾(例えば、構造アナログを生成するためのアシル化、アルキル化、エステル化、アミジン化(amidification))に供され得る。
【0200】
1つの例において、上記候補因子の結合は、競合結合アッセイの使用を通じて決定される。この例において、その競合相手は、p70S6Kと結合することが知られている結合成分(例えば、抗体、ペプチド、結合パートナー、リガンドなど)である。ある環境下において、上記候補因子と上記結合部分との間には競合結合が存在し得、ここでは、上記結合成分が候補因子に置換されている。
【0201】
いくつかの実施形態において、上記候補因子は標識される。この候補因子または上記競合相手またはその両方は、存在する場合、結合を可能にするに十分な時間にわたり、p70S6Kタンパク質に最初に添加される。インキュベーションは、最適な活性を促進する任意の温度で実施され得、代表的には、4℃と40℃との間である。
【0202】
インキュベーション時間は、最適な活性のために選択されるだけではなく、また迅速なハイスループットスクリーニング(rapid high throughput screening)を容易にするためにも最適化され得る。代表的には、0.1時間と1時間との間で十分である。過剰な試薬は、一般に、取り除かれるかまたは洗い流される。次いで、第二の成分が添加され、標識化成分の存在または非存在は追跡することにより結合を示す。
【0203】
1つの例において、最初に上記競合相手が添加され、続いて上記候補因子が添加される。競合相手の置換は、この候補因子がp70S6Kに結合し、そしてp70S6Kに対する結合、およびp70S6Kの活性の強力な調節を可能にする指標である。この実施形態において、一方の成分は標識され得る。したがって、例えば、競合相手が標識された場合、洗浄溶液中の標識の存在は、上記因子による置換を示す。あるいは、上記候補因子が標識される場合、支持体上の標識の存在は置換を示す。
【0204】
代替的な実施形態において、候補因子が最初に添加され、インキュベーションおよび洗浄をともない、続いて競合相手が添加される。この競合相手による結合の非存在は、上記候補因子がp70S6Kに対して高い親和性で結合することを示し得る。したがって、上記候補因子が標識された場合、支持体上のこの標識の存在は、競合相手の結合の欠如と結びつけて、上記候補因子がp70S6Kに対する結合が可能であることを示し得る。
【0205】
p70S6Kの結合部位を同定することは、価値あることとなり得る。これは、種々の方法において実施され得る。1つの実施形態において、一旦p70S6Kが候補因子に結合することが同定されると、上記p70S6Kは、フラグメント化されるかまたは改変される。そしてこのアッセイは、結合のために必要な成分が同定されるまで繰り返される。
【0206】
調節は、p70S6Kの活性の調節を可能にする候補因子についてのスクリーニングによって試験され、このスクリーニングは、上記のように、候補因子とp70S6Kを合わせる工程、および上記p70S6Kの生物学的活性における変化を測定する工程を包含する。したがって、この実施形態において、上記候補因子は、本明細書中で定義される場合、結合(とはいえ、これは必要ではない場合もある)、および生物学的活性または生化学的活性の変化の両方をなすべきである。この方法は、細胞バイアビリティー、形態学などにおける変化に関する、細胞のインビトロにおけるスクリーニング方法およびインビボスクリーニングの両方を含む。
【0207】
代替的に、ディファレンシャルスクリーニングは、ネイティブなp70S6Kに結合するが、改変されたp70S6Kには結合し得ない薬物候補を同定するために使用され得る。
【0208】
陽性対照および陰性対照は、上記アッセイにおいて使用され得る。例えば、全対照および全試験試料は、統計学的に有意な結果を得るために、少なくとも3回実施される。試料のインキュベーションは、タンパク質に対する上記因子の結合に関して十分な時間である。インキュベーションに続き、試料は、非特異的な結合物質の遊離物が洗浄され、そして結合の量(通常、標識された因子)が測定される。例えば、放射標識が用いられた場合、結合化合物の量を測定するために、上記試料はシンチレーション計数器において計数され得る。
【0209】
種々の他の試薬は、スクリーニングアッセイにおいて含まれ得る。これらの含まれる試薬(塩、中性タンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などのようなもの)は、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進させるため、および/あるいは非特異的またはバックグラウンド相互作用を減少させるために使用され得る。別の方法で上記アッセイの効率を改善する試薬(例えば、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤など)もまた、使用され得る。上記成分の混合物は、要求性の結合を提供するように、任意の順序で添加され得る。
【0210】
当業者は、特定の結晶化したタンパク質−リガンド複合体(特に、p70S6Kリガンド複合体)およびそれらの対応するX線構造座標(x−ray structure coordinate)は、本明細書中に記載されるようなp70S6キナーゼの生物学的活性を理解するために有用な新しい構造情報を明らかにするために使用され得ると理解する。同様に、上述のタンパク質の重要な構造的特徴(特に、リガンド結合部位の形状)は、p70S6キナーゼの選択的調節因子の設計または同定のための方法において有用であり、かつ同様の特徴を有する他のタンパク質の構造の解明において有用である。このような複合体のリガンドには、本明細書中で記述した本発明の化合物が挙げられ得る。
【0211】
同様に、当業者は、このような適切なX線特性結晶(x−ray quality crystal)は、結合してp70S6キナーゼの活性を調節し得る候補因子の同定方法の一部として使用され得ると理解する。このような方法は、以下の局面によって特徴付けされ得る:a)適切なコンピュータープログラムに導入する局面、立体配座におけるp70S6キナーゼのリガンド結合ドメインを規定する情報を導入する局面(例えば、上述のような適切なX線特性結晶から得られたX線構造座標によって規定する場合)であって、ここで、上記コンピュータープログラムは、リガンド結合ドメインの三次元構造のモデルを創造する、b)上記コンピュータープログラムにおいて、候補因子の三次元構造のモデルを導入する局面、c)上記リガンド結合ドメインのモデル上に、この候補因子モデルを重ね合わせる局面、およびd)上記候補因子モデルが、リガンド結合ドメインに対して空間的に適合するかどうかを評価する局面。局面a)〜局面d)は、上述の順序で必ず行われるわけではない。このような方法は、三次元構造のモデルを用いた合理的な薬物設計を実施する局面、およびコンピューターモデリングとの組み合わせにおいて強力な候補因子を選択する局面をさらに伴い得る。
【0212】
さらに、当業者は、このような方法はさらに以下を必要とし得ると理解する:p70S6キナーゼ調節に関する生物学的活性アッセイにおいて、リガンド結合ドメインに対して空間的に適合させるためにこの方法で決定された候補因子の使用、およびこの候補因子が上記アッセイにおいてp70S6キナーゼ活性を調節するかどうかの測定。このような方法はまた、p70S6キナーゼ調節によって(例えば、上述のような)処置可能な状態を罹患した哺乳動物に、p70S6キナーゼ活性を調節すると決定された候補因子を投与することを含み得る。
【0213】
また、本発明の化合物は、試験因子の(p70S6キナーゼのリガンド結合ドメインを含む)分子または分子複合体と会合する能力を評価する方法において使用され得ると、当業者は理解する。このような方法は、以下の局面によって特徴付けられ得る:a)p70S6キナーゼの適切なX線特性結晶法から得られた構造座標を使用して、p70S6キナーゼ結合ポケットのコンピュータモデルを創造する局面、b)上記試験因子と上記結合ポケットのコンピューターモデルとの間の適合操作(fitting operation)を実施するために計算的アルゴリズムを利用する局面、およびc)上記試験因子と上記結合ポケットのコンピューターモデルとの間の会合を数量化するために、上記適合操作の結果を分析する局面。
【0214】
(略語およびそれらの定義)
以下の略語および用語は、本明細書全体を通じて、以下で指定した意味を有する:
【0215】
【化11】

【0216】
【化12】

【0217】
【化13】

(化合物の合成)
スキーム1は、式Iに従った本発明の代表的な化合物の一般的な合成経路を描写しているが、これに限定されるとは解釈されない。特定の例は、この一般的な合成経路に引き続いて、記述されている。これらの一般的な経路および後の特定の実施例の記述に関して、当業者は、発明の詳細な説明および請求項で記述されているように、本発明の化合物を製造できる。
【0218】
スキーム1は、一般に、式Iに従った化合物が、例えば、式Xの化合物(これは、Boc保護基とQからの適切な脱離基とを有する)と基Vの試薬試薬とを反応させることにより、線形経路を介して、製造できる。次いで、得られた化合物は、適切な溶媒(例えば、1,4−ジオキサン)に溶解され、その溶液は、EtNおよび3−R−4−クロロ−1R−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンと反応されて、式Iの化合物に到達する。式Iでは、R〜R、Q、Q、L、VおよびWは、上記のとおりである。
【0219】
(スキーム1)
【0220】
【化15】

当業者は、スキーム1に関連した記述が一般化であること、また、本発明の化合物を製造するのに使用できる工程およびアプローチの他の組み合わせが存在することを理解する。以下の実施例は、本発明の代表的な化合物を製造するさらに詳細な説明を提供する。
【実施例】
【0221】
以下の実施例は、上記の本発明を使用する様式をさらに詳細に記述するだけでなく、本発明の種々の局面を実行するために考慮される最良の形態を示すのに役立つ。これらの実施例は、決して、本発明の真の範囲を限定するために供されているのではなく、むしろ、例示の目的のために提供されていることが分かる。本明細書中で引用された全ての参考文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。一般に、必ずしもではないが、以下で示す各実施例は、上で概説した多段階合成を記述する。
【0222】
(実施例1)
【0223】
【化16】

N’−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−N,N−ジエチル−エタン−1,2−ジアミン(3):
N−Boc−4−(4−クロロベンゾイル)ピペリジン(300mg、0.92mmol)および2−(ジエチルアミノ)エチルアミン(215mg、1.85mmol)の混合物に、室温で、Ti(OPr)(1.05g、3.70mmol)を加えた。撹拌を12時間継続した。次いで、MeOH(3mL)およびAcOH(1mL)を加えた。続いて、NaBH(70mg、1.85mmol)を少しずつ慎重に加えた。次いで、その反応混合物をさらに1時間撹拌し、そしてセライトで濾過した。セライトパッドをEtOAcで洗浄した。そのEtOAc溶液を、5%NaOH、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。溶媒を除去すると、粗生成物(200mg、50%)を得、これを、次の工程で使用した。
【0224】
上で得た粗生成物を、CHCl中にて、30分間にわたって、過剰のTFAで処理した。その混合物を濃縮し、EtOAcで希釈し、10%NaOHで洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濃縮した。残渣を1,4−ジオキサン(4mL)に溶解した。この溶液に、EtN(0.33ml、2.35mmol)および3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(87mg、0.37mmol)を加えた。その反応混合物を70℃まで加熱し、そして撹拌を1時間継続した。調製用HPLCで精製すると、3(127mg、52%)が得られた。この遊離塩基化生成物をHCl塩に変換した。
【0225】
LC−MS(M+1):522.5(100%)、520.5(80%)。
H NMR(400 MHz,DMSO−d)δ 14.07(br s,1H),10.81(br s,1H), 10.05 (br s, 1 H), 8.30 (s, 1 H), 7.69 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.56 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 4.54−4.37 (m, 2 H), 3.60−3.40 (m, 5 H), 3.20−2.90
【0226】
【化17】

(m, 8 H), 2.24−2.21 (m, 1 H), 1.50−1.42 (m, 2 H), 1.24−1.15 (m, 6 H)。
【0227】
N’−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−N,N−ジエチル−エタン−N”−メチル−1,2−ジアミン
LC−MS(M+1):536.5(100%)、534.5(80%)。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.27 (s, 1 H), 7.41 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.25 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 4.50 (d, J = 13.2 Hz, 1 H), 4.34 (d, J = 12.8 Hz, 1 H), 3.36 (d, J = 10.4 Hz, 1 H), 3.20−3.00 (m, 2 H), 2.50−2.40 (m, 2 H), 2.45 (q, J = 7.1 Hz, 4 H), 2.40−2.30 (m, 2 H), 2.25−2.20 (m, 1 H), 2.18−2.10 (m, 1 H), 2.05 (s, 3 H), 1.40−1.28 (m, 2 H), 1.18−1.08 (m, 1 H), 0.92 (t, J = 7.2 Hz, 6 H).
【0228】
【化18】

N−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−3−ジエチルアミノ−プロピオンアミド:
LC−MS(M+1):550.4(100%)、548.4(80%).
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.52 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 8.28 (s, 1 H), 7.39 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 4.70 (t, J = 8.6 Hz, 1 H), 4.48 (d, J = 12.7 Hz, 1 H), 4.39 (d, J = 12.7 Hz, 1 H), 3.10−2.90 (m, 2 H), 2.70−2.50 (m, 2 H), 2.45−2.38 (m, 4 H), 2.30−2.10 (m, 2 H), 2.00−1.80 (m, 2 H), 1.40−1.30 (m, 3 H), 0.89 (t, J = 7.3 Hz, 6 H).
【0229】
【化19】

N−[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−N−(4−クロロ−フェニル)−N’−(2−ジメチルアミノ−エチル)−オキサロアミド:
観察されたM+、臭素同位体:549.1、551.1(1:1)
HNMR (d6−DMSO): 9.40 (br s, 1H), 8.90 (br t, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.47 (d, 2H), 7.28 (d, 2h), 4.95 (m, 1H), 4.50 (d, 2H), 3.21 (m, 4H), 2.86 (d, 2H), 2.71 (d, 6H), 1.94 (d, 2H), 1.5 (m, 2H) ppm.
【0230】
【化20】

1−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−3−(2−ジメチルアミノ−エチル)−尿素(6):
EtOH(25mL)およびHO(5mL)中のN−Boc−4−(4−クロロベンゾイル)ピペリジン(1.0g、3.08mmol)の混合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(536mg、7.72mmol)およびNaOAc(633mg、7.72mmol)を加えた。その反応混合物を、還流下にて、3時間撹拌した。EtOHを除去した。残渣をEtOAcに溶解し、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、所望のオキシムの混合物(1.0g、96%)が得られた。
【0231】
TiCl水溶液(4.8g、9.44mmol、2N HCl中で30%)に、撹拌しながら、NaOAc(774mg、9.44mmol)を加えた。均一な溶液に到達するまで、この撹拌を継続した。次いで、その溶液を0℃まで冷却し、そしてMeOH(15mL)溶液として、オキシム(800mg、2.36mmol)を加えた。この撹拌をさらに1時間継続し、続いて、NaBHCN(297mg、4.72mmol)を加えた。さらに1時間撹拌した後、それをEtOAcで抽出した。EtOAc層をブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。濾過後、EtOAcの容量を約40mLまで減らした。次いで、それを、1N HCl/エーテル4.7mLで処理した。固形物を濾過し、そしてEtOAcで洗浄した。室温で、真空下にて、所望の第一級アミンHCl塩を乾燥した。
【0232】
第一級アミン塩酸塩(130mg、0.36mmol)のピリジン(3mL)溶液に、2−クロロエチルイソシアネート(113mg、1.1mmol)を加えた。その溶液を、室温で、1時間撹拌した。減圧下にてピリジンを除去した。残渣を圧力容器(これは、2M MeNH/THF(4mL)を含有する)に移した。その混合物を100℃まで加熱し、そして5時間撹拌した。次いで、それを室温まで冷却し、そして濃縮した。残渣を、CHCl中にて、過剰のTFAで処理した。粗生成物を遊離塩基化し、そして次の反応で使用した。
【0233】
次いで、この粗生成物(約0.34mmol)を、EtN(172mg、1.7mmol)存在下にて、1,4−ジオキサン(2mL)中で、70℃で、1時間にわたって、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(55mg、0.23mmol)と反応させた。次いで、その反応混合物をEtOAcで希釈した。有機相をNaHCO飽和水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濃縮した。残渣をエーテルですりつぶし、そしてカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=100:10)でさらに精製した。
【0234】
LC−MS(M+1):537.5(100%)、535.4(80%)。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.25 (s, 1 H), 7.36 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.24 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 6.75 (d, J = 8.7 Hz, 1 H), 5.83 (t, J = 5.3 Hz, 1 H), 4.55−4.47 (m, 3 H), 3.20−2.80 (m, 5 H), 2.20 (t, J = 6.1 Hz, 2 H), 2.09 (s, 6 H), 1.80−1.70 (m, 1 H), 1.48−1.30 (m, 3 H).
【0235】
【化21】

2−[4−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペラジン−1−イル]−2−(4−クロロ−フェニル)−N−(2−ジメチルアミノ−エチル)−アセトアミド(9):
CCl中の(4−クロロフェニル)−酢酸メチルエステル(2.5g、13.5mmol)およびNBS(2.52g、14.1mmol)から、2−ブロモ−(p−クロロフェニル)−酢酸メチルエステルを調製した。
【0236】
2−ブロモ−(p−クロロフェニル)−酢酸メチルエステル(1.0g、3.79mmol)およびEtN(1.6ml、12mmol)のTHF(10mL)溶液に、N−Bocピペラジン(705mg、3.79mg)を加えた。その混合物を、室温で、このブロモエステルが消費されるまで撹拌した。反応の進行は、H NMRでモニターした。その反応混合物をEtOAcで希釈し、5%NaOH、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。溶媒を除去すると、粗生成物が得られた。
【0237】
上で得た粗生成物(414mg)を、1:1のMeOH−HO(4mL)に溶解した。NaOH(90mg、2.25mmol)を加えた。その混合物を、室温で、2時間撹拌し、そして濃縮した。残渣をHO(5mL)に溶解し、そしてエーテル(2×5mL)で洗浄した。水相に、PH=8まで、AcOHを加えた。次いで、それをEtOAcで抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、粗カルボン酸が得られ、これを、次の工程で使用した。
【0238】
この粗カルボン酸(76mg、0.21mmol)および2−(ジメチルアミノ)エチルアミン(75mg、0.85mmol)のCHCl(4mL)溶液に、DIEA(110mg、0.85mmol)およびHATU(155mg、0.41mmol)を加えた。その混合物を、室温で、2時間撹拌し、そしてEtOAcで希釈した。有機相を、5%NaOH、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。溶媒を除去するとすぐに、残渣を、CHCl中の過剰のTFAで処理した。次いで、粗生成物を、EtN(101mg、1.0mmol)の存在下にて、1,4−ジオキサン(2mL)中で、70℃で、1時間にわたって、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(30mg、0.14mmol)で処理した。次いで、その混合物を濃縮した。調製用HPLCで精製すると、6(25mg、34%)が得られた。
【0239】
LC−MS(M+1):523.4(100%)、521.4(80%).
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.31 (s, 1 H), 8.17 (t, J = 5.7 Hz, 1 H), 7.45−7.40 (m, 4 H), 3.95 (s, 1 H), 3.81 (br s, 4 H), 3.16 (q, J = 5.9 Hz, 2 H), 2.60−2.52 (m, 2 H), 2.50−2.44 (m, 2 H), 2.28 (t, J = 6.6 Hz, 2 H), 2.14 (s, 6 H).
【0240】
【化22】

4−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−1−(4−クロロ−ベンジル)−ピペラジン−2−オン:
LC−MS(M+1):423.3(100%)、421.3(80%).
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 13.20 (br s, 1 H), 8.45 (s, 1 H), 7.32 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.24 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 4.66 (s, 2 H), 4.63 (s, 2 H), 4.17 (t, J = 5.5 Hz, 2 H), 3.50 (t, J = 5.4 Hz, 2 H).
【0241】
【化23】

3−ブロモ−4−[4−(4−クロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イル]−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン:
観察されたM+、臭素同位体:406.9、408.9(1:1)
HNMR (d6−DMSO): 10.00 (br s, 1H), 8.42 (s, 1H), 7.54 (q, 4H), 4.40 (m, 4H), 4.41 (s, 2H), 3.46−3.20 (m, 4H) ppm.
【0242】
【化24】

2−[4−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−2−オキソ−ピペラジン−1−イル]−2−(4−クロロ−フェニル)−N−(2−ジメチルアミノ−エチル)−アセトアミド(12):
4−Bocピペラジノン(240mg、1.2mmol)のDMF(3mL)溶液に、NaH(58mg、1.44mmol、鉱油中で60%)を加えた。得られた溶液を、室温で、30分間撹拌した。次いで、2−ブロモ−(p−クロロフェニル)−酢酸メチルエステル(315mg、1.2mmol)を加えた。その反応混合物を、室温で、さらに3時間撹拌した。それをEtOAcで希釈し、そしてブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、所望生成物が得られ、次いで、これを、3時間にわたって、MeOH(2mL)およびHO(1mL)中のNaOH(102mg、2.56mmol)で処理した。減圧下にてMeOHを除去した。残渣をHO(5mL)に溶解し、そしてエーテルで洗浄した。水相を1N HClで酸性化した。固形物を濾過し、HOで洗浄し、そして真空乾燥した。粗カルボン酸(165mg、0.44mmol)を、DCM(2mL)中の2−(ジメチルアミノ)エチルアミン(157mg、1.79mmol)、HATU(680mg、1.79mmol)およびDIEA(231mg、1.79mmol)と混合した。この撹拌を2時間継続した。その混合物を濃縮し、そして残渣をEtOAcに溶解した。有機相を飽和NaHCOおよびブラインで洗浄した。溶媒を除去すると、粗カップリング生成物が得られた。
【0243】
上で得た粗生成物を、DCM中で、30分間にわたって、過剰のTFAで処理した。過剰のTFAおよびDCMを除去するとすぐに、残渣(約0.4mmol)を遊離塩基化し、次いで、EtN(126mg、2.5mmol)の存在下にて、1,4−ジオキサン(2mL)中で、70℃で、1時間にわたって、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(25mg、0.11mmol)と反応させた。その混合物を濃縮した。粗生成物を調製用HPLCで精製した。
【0244】
LC−MS(M+1):537.4(100%)、535.4(80%)。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.33−8.31 (m, 2 H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.31 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 6.21 (s, 1 H), 4.55−4.42 (m, 2 H), 4.05−4.00 (m, 3 H), 3.74−3.68 (m, 1 H), 3.32−3.22 (m, 1 H), 3.20−3.10 (m, 1 H), 3.08−3.00 (m, 1 H), 2.28 (t, J = 6.5 Hz, 2 H), 2.13 (s, 6 H).
【0245】
【化25】

1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−4−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(3−ジエチルアミノ−プロピル)−アミド(15):
1−N−Boc−4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル(2.0g、8.22mmol)の−78℃THF(30mL)溶液に、LiHMDS(THF中で1.0M、12ml、12.3mmol)を滴下した。この撹拌を45分間継続した。次いで、THF(3mL)の溶液として、塩化4−クロロベンジル(1.59g、9.86)を加えた。その混合物を、室温までゆっくりと温めつつ、5時間撹拌した。HOを加えて、この反応をクエンチした。次いで、それをEtOAcで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、粗生成物が得られた。
【0246】
粗メチルエステル(1.0g、2.72mmol)を、MeOH(5mL)およびHO(5mL)中にて、KOH(440mg、10.8mmol)と混合した。その混合物を、80℃で、10時間撹拌した。MeOHを除去した;残渣をHO(20mL)で希釈した。その水溶液をエーテルで洗浄し、そして4N HClで酸性化した。生成物をEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、90%より高い純度で、所望のカルボン酸が得られた。このカルボン酸(250mg、0.71mmol)を、DCM(6mL)中で、2−(ジメチルアミノ)プロピルアミン(275mg、2.11mmol)、HATU(535mg、1.41mmol)およびDIEA(361mg、2.8mmol)と混合した。この撹拌を2時間継続した。CHClを除去し、そして残渣をEtOAcに溶解した。有機相を飽和NaHCOおよびブラインで洗浄した。溶媒を除去すると、粗生成物が得られた。
【0247】
上で得た粗生成物(約0.7mmol)を、DCM中で、30分間にわたって、過剰のTFAで処理した。過剰のTFAおよびDCMを除去するとすぐに、残渣を遊離塩基化し、次いで、EtN(354mg、3.5mmol)の存在下にて、1,4−ジオキサン(2mL)中で、70℃で、1時間にわたって、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(98mg、0.42mmol)と反応させた。その混合物を濃縮した。粗生成物を調製用HPLCで精製した。
【0248】
HCL塩:
LC−MS(M+1):564.4(100%)、562.4(80%)。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 14.17 (br s, 1 H), 10.34 (br s, 1 H), 8.33 (s, 1 H), 8.11 (br s, 1 H), 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 2 H), 7.10 (d, J = 7.7 Hz, 2 H), 4.27 (br d, J = 13.4 Hz, 2 H), 3.28−3.27 (m, 2 H), 3.20−3.10 (m, 2 H), 3.10−3.00 (m, 4 H), 3.00−2.90 (m, 2 H), 2.85 (s, 2 H), 2.17 (br d, J = 13.0 Hz, 2 H), 1.82 (br s, 2 H), 1.64 (br s, 2 H), 1.21−1.18 (m, 6 H).
【0249】
【化26】

1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−4−(4−クロロ−フェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(3−ジエチルアミノ−プロピル)−アミド(18):
N−Boc−4−(p−クロロフェニル)−ピペリジン−4−カルバミド(135mg、0.40mmol)のDMF(4mL)溶液に、NaH(鉱油中で60%、20mg、0.5mmol)を加えた。この撹拌を30分間継続した。次いで、塩化3−(ジエチルアミノ)プロピル(90mg、0.60)を加えた。次いで、その混合物を90℃まで温めた。この撹拌をさらに3時間継続した。冷却した混合物に、HOを加えた。次いで、それをEtOAcで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。EtOAcを除去すると、粗生成物が得られた。
【0250】
上で得た粗生成物(約0.4mmol)を、DCM中で、30分間にわたって、過剰のTFAで処理した。過剰のTFAおよびDCMを除去するとすぐに、残渣を遊離塩基化し、次いで、EtN(152mg、1.5mmol)の存在下にて、1,4−ジオキサン(2mL)中で、70℃で、1時間にわたって、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(40mg、0.17mmol)と反応させた。その混合物を濃縮した。粗生成物を調製用HPLCで精製した。
【0251】
LC−MS(M+1):550.4(100%)、548.4(80%)。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ 8.31 (s, 1 H), 7.83 (t, J = 5.5 Hz, 1 H), 7.41 (s, 4 H), 4.25 (br d, J = 13.4 Hz, 2 H), 3.37 (br t, J = 11.9 Hz, 2 H), 3.08 (q, J = 6.4 Hz, 2 H), 2.63 (br d, J = 13.7 Hz, 2 H), 2.34 (q, J = 7.2 Hz, 4 H), 2.23−2.19 (m, 2 H), 1.99−1.92 (m, 2 H), 1.49−1.41 (m, 2 H), 0.85 (t, J = 7.2 Hz, 6 H).
【0252】
【化27】

ピペリド−クロロアニリン(3)。200mL回収フラスコに、4−クロロアニリン1(2.00g、15.7mmol、1.0当量)、1−Boc−4−ピペリドン2(3.44g、17.2mmol、1.1当量)、1,2−ジクロロエタン(35mL)および酢酸(3mL)を加えた。その混合物を、室温で、20分間撹拌し、それから、10分間にわたって、3回に分けて、NaBH(OAc)(5.00g、23.5mmol、1.5当量)を加えた。その反応混合物を、室温で、3時間撹拌した。TLC分析は、出発物質の完全な消費を示した。その反応混合物を濃縮し、次いで、EtOAc(200mL)で希釈した。有機層をHO(2×50mL)およびブライン(1×50mL)で洗浄した。合わせた水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、黄色がかった油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(100%CHCl〜5%CHOH/CHCl)により、無色油状物が得られ、これは、後に、灰白色固形物(2.87g、59%)に固化した。
【0253】
尿素(5)。100mL回収フラスコに、アニリン3(1.00g、3.22mmol、1.0当量)、ジクロロメタン(45mL)およびピリジン(274μL、3.38mmol、1.05当量)を加えた。トリホスゲン(574mg、1.93mmol、0.6当量)を加え、その反応混合物(これは、淡黄色に変わった)を室温で撹拌した。45分間のTLC分析により、出発物質が消費されたことが明らかとなった。ウンシム(Unsym)−ジメチルエチレンジアミン4(1.78ml、16.1mmol、5.0当量)を加え、それから、その反応混合物は濁った。数分間撹拌した後、この反応混合物は、均一になった。2.5時間の反応時間の後、TLC分析により、低いRfスポットが明らかとなった。この反応混合物をCHCl(100mL)およびNaHCO(飽和水溶液、100mL)で希釈した。この有機層をブライン(50mL)で洗浄した。合わせた水層をCHCl(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、黄色がかった油状物を得、これは、一晩で固化して、灰白色固形物が得られ、これを、さらに精製することなく、次の反応で使用した。(1.40g、100%)。
【0254】
ピペリジン二塩酸塩(6)。25mL回収フラスコに、尿素5(250mg、0.588mmol、1.0当量)およびCHOH(5mL)を加えた。4N HCl/ジオキサン(7mL)を加え、その反応混合物を、室温で、2撹拌した。この反応混合物を濃縮して、青銅色薄膜を得、これを、さらに精製することなく、次の反応で使用した。
【0255】
ブロモピラゾロピリミジン(8)。25mL回収フラスコに、6(230mg、0.708mmol、1.05当量)、THF(10mL)、EtN(470μL、3.37mmol、5.0当量)およびクロロピラゾロピリミジン7(157mg、0.674mmol、1.0当量)を加えた。その反応混合物を、還流状態で、1.5時間撹拌した。この反応物を濃縮し、そしてEtOAc(50mL)およびNaHCO(飽和水溶液、50mL)で希釈した。有機層をHO(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。合わせた水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、淡褐色油状物を得、これは、白色固形物(308mgの粗製物)にゆっくりと固化した。この粗製物質をフラッシュクロマトグラフィー(10%〜20%CHOH/CHCl)で精製して、無色油状物(205mg、58%)を得た。
【0256】
観察されたM+H:523.1(Br同位体)
NMR, DMSO−d6, HCl salt : δ 10.40 (s, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.49 (d, 2H), 7.26 (d, 2H), 4.88 (s, 1H), 4.59 (m, 2H), 4.50 (obs m, 2H), 3.34−3.23 (m, 4H), 3.07−3.03 (m, 2H), 2.73 (s, 6H), 1.94 (d, 2H), 1.38−1.34 (m, 2H) ppm.
【0257】
【化28】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−アミン:
観察されたMS 408.9(M+H),
(DMSO−d) δ 8.32 (s, 1H), 7.12 (d, 2H), 6.71 (d, 2H), 4.40 (d, 2H), 3.62 (s, 1H), 3.35 (t, 2H), 2.08 (d, 2H), 1.55 (m, 2H) ppm.
【0258】
【化29】

N−[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−N−(4−クロロ−フェニル)−3−ジエチルアミノ−プロピオンアミド:
観察されたMS 536.1(M+H),
(DMSO−d) δ 9.59 (br. s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.58 (d, 2H), 7.37 (d, 2H), 4.80 (m, 1H), 4.50 (d, 2H), 3.21 (m, 4H), 3.0 (m, 4H), 2.34 (m, 2H), 1.92 (d, 2H), 1.39 (m, 2H), 1.17 (t, 6H) ppm.
【0259】
【化30】

N−[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−N−(4−クロロ−フェニル)−N’−ジ−エチル−プロパン−1,3−ジアミン
観察されたMS 522.1(M+H),
(CDOD) δ 8.27 (s, 1H), 7.18 (d, 2H), 6.90 (d, 2H), 4.90 (m, 2H), 4.71 (d, 2H), 3.91 (m, 1H), 3.28 (m, 4H), 2.62 (m, 4H), 1.93 (m, 4H), 1.70 (m, 2H), 1.08 (t, 6H) ppm.
【0260】
【化31】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−カルバミン酸2−ジメチルアミノ−エチルエステル:
観察されたM+H:524.1
NMR, DMSO−d6, HCl salt: δ 10.66 (br s, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.46 (d, 2H), 7.29 (d, 2H), 4.51−4.48 (m, 3H), 4.34 (m, 2H), 3.29−3.23 (m, 4H), 2.67−2.45 (obs s, 6H), 2.01 (d, 2H), 1.47−1.41 (m, 2H) ppm.
【0261】
【化32】

スルホンアミド(9)。250mL丸底フラスコに、4−クロロアニリン(2.00g、15.7mmol、1.0当量)、ジクロロメタン(100mL)、トリエチルアミン(6.55ml、47.0mmol、3.0当量)および塩化2−クロロ−1−エタンスルホニル(2ml、18.8mmol、1.2当量)を順に加えた。室温で2時間撹拌している間、その反応物は、濁った。ジエチルアミン(8.14ml、78.3mmol、5.0当量)を加えると、この反応物は、直ちに、透明で均一になった。2時間撹拌した後、TLC分析(10%CHOH/CHCl)により、出発物質の消費が明らかとなった。その反応混合物をHO(50mL)でクエンチした。この有機層を追加HO(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。水層をCHCl(2×50mL)で抽出した。この有機層を合わせ、無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、青銅色油状物(5gの粗製物)を得た。カラムクロマトグラフィー(2%〜5%CHOH/CHCl)により、淡青銅色油状物(3.15g、69%)として、9が生じる。
【0262】
ピペリジル−スルホンアミド(10)。100mL回収フラスコに、重合体を結合したPPh(3mmol/gの装填、841mg、2.52mmol、1.5当量)、THF(30mL)、およびアゾジカルボン酸ジイソプロピル(434μL、2.19mmol、1.3当量)を加えた。このフラスコを5分間振盪した。4−ヒドロキシ−1−Boc−ピペリジン(440mg、2.19mmol、1.3当量)を加え、このフラスコをさらに5分間振盪した。スルホンアミド9(488mg、1.68mmol、1.0当量)のTHF(10mL)溶液を調製し、この反応混合物に加えた。その反応混合物を、室温で、1時間撹拌するとすぐに、LC/MS分析により、生成物の形成が明らかとなったが、多量の出発物質が存在していた。DIAD(134μL、0.673mmol、0.4当量)およびアルコール(135mg、0.673mmol、0.4当量)を追加し、その反応混合物を、50℃で、一晩加熱した。この反応混合物をセライトパッドで濾過し、そして濃縮して、黄色油状物(1.86gの粗製物)を得た。カラムクロマトグラフィー(2%〜8%CHOH/CHCl)により、淡黄色油状物(597mg、75%)として、10が生じた。
【0263】
ピペリジン二塩酸塩(11)。100mL回収フラスコに、10(597mg、1.26mmol、1.0当量)およびCHOH(15mL)を加えた。4N HCl/ジオキサン(10mL)を加え、その反応混合物を、室温で、2時間撹拌した。この反応混合物を濃縮して、青銅色薄膜を得、これを、さらに精製することなく、次の反応で使用した。
【0264】
ブロモピラゾロピリミジン(12)。25mL回収フラスコに、11(563mg、1.26mmol、2.0当量)、i−PrOH(10mL)、EtN(660μL、3.78mmol、6.0当量)およびクロロピラゾロピリミジン7(147mg、0.630mmol、1.0当量)を加えた。その反応混合物を、還流状態で、1.5時間撹拌した。この反応物を濃縮し、そしてEtOAc(50mL)およびNaHCO(飽和水溶液、50mL)で希釈した。有機層をHO(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。合わせた水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、淡褐色固形物を得、これを、逆相分取HPLCで精製した。所望生成物を含有する画分を集め、NaHCO(飽和水溶液)で中和し、そしてEtOAcで抽出した。有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、灰白色固形物(54mg、7.5%)を得た。
【0265】
観察されたM+H:572.1
NMR, DMSO−d6, HCl salt: δ 10.51 (br s, 1H), 8.89 (s, 1H), 7.52 (d, 2H), 7.39 (d, 2H), 4.78−4.75 (m, 2H), 4.50 (d, 2H), 4.33 (m, 1H), 3.86 (m, 2H), 3.41 (m, 2H), 3.26−3.18 (m, 6H), 2.12 (d, 2H), 1.42 (m, 2H), 1.24−1.14 (m, 6H) ppm.
【0266】
【化33】

3−ブロモ−4−[4−(1−フェニル−エチル)−ピペラジン−1−イル]−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン:
観察されたMS 387.0(M+H),
(DMSO−d) δ 10.18 (br. s, 1H), 8.43 (s, 1H), 7.52 (m, 5H), 4.60 (m, 2H), 4.49 (m, 1H), 3.90 (m, 2H), 3.20, (m, 2H), 3.05 (m, 2H), 2.70 (d, 3H) ppm.
【0267】
【化34】

ベンジルアルコール(2)。丸底フラスコに、ケトン1(1.24g、3.84mmol)をエタノール40mLに溶解した。この溶液に、NaBH(145mg、3.84mmol)を加え、そして室温で、2時間撹拌した。粗反応物を真空中で濃縮した。酢酸エチルおよび水を加え、そして有機層をHO(2×)およびブラインで洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、1.25g(3.84mmol)のアルコール2を得た。
【0268】
ジメチルアミノエチルエーテル(3)。丸底フラスコに、2(300mg、0.923mmol)をDMF(12mL)に溶解した。この溶液に、NaH(60%鉱油分散液)92mg(2.30)を加え、そして10分間撹拌し、続いて、(2−クロロ−エチル)−ジメチル−アミン塩化水素146mg(1.01mmol)を加えた。この反応混合物を、70℃で、12時間撹拌し、続いて、室温まで冷却した。酢酸エチルおよび10%LiClを加えた。有機層をこのLiCl溶液で3回洗浄し、蒸留水およびブラインで洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、380mgの粗生成物3を得、これを、さらに精製することなく、次に利用した。
【0269】
ジメチルアミノエチルエーテル二塩酸塩(4)。丸底フラスコにて、3(380mg、0.957mmol)をメタノール3mLに溶解した。この溶液に、4N HCl(ジオキサン中)3mLをゆっくりと加え、室温で、1時間撹拌し、そして濃縮して、定量的な量(354mg)の4を得た。
【0270】
ブロモピラゾロピリミジン(6)。丸底フラスコに、4(354mg、0.957mmol)、THF(10mL)およびNEt(0.8mL、5.74mmol)を加えた。この懸濁液に、5(223.4mg、0.957mmol)を加え、そして65℃で、30分間撹拌した。粗反応物を濃縮した。酢酸エチルおよび蒸留水を加え、そして有機層を、水で2回、そしてブラインで1回洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。粗製物質を分取HPLCで精製して、50.5mgの6(0.102mmol、10.7%)を得た。
【0271】
観察されたM+H:495.0
NMR, DMSO−d6, HCl salt: δ 8.30 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.39 (d, 2H), 4.45 (m, 2H), 4.20 (d, 1H), 3.71 (m, 2H), 3.43 (m, 1H), 3.23 (m, 2H), 3.03 (m, 2H), 2.80 (d, 3H), 2.75 (d, 3H), 2.13−1.90 (m, 2H), 1.51−1.23 (m, 2H) ppm.
【0272】
【化35】

{3−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メトキシ]−プロピル}−ジメチル−アミン
観察されたMS 509.0 (M+H),
(DMSO−d6) δ 8.30 (s, 1H), 7.46 (d, 2H), 7.32 (d, 2H), 4.41 (dd, 2H), 4.11 (d, 1H), 3.22 (m, 2H), 3.06 (m, 4H), 2.72 (s, 6H), 2.08 (d, 1H), 1.88 (m, 2H), 1.51−1.32 (m, 4H) ppm.
【0273】
【化36】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−フルオロ−フェニル)−メタノール:
観察されたM+H、臭素同位体:406.1、408.1(1:1)
HNMR (d6−DMSO): δ 8.21 (s, 1H), 7.42 (d, 2H), 7.20 (d, 2H), 4.45 (m, 3H), 2.98 (q, 2H), 1.90 (d, 1H), 1.80 (br s, 1H), 1.40 (m, 4H) ppm.
【0274】
【化37】

{2−[[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−フルオロ−フェニル)−メトキシ]−エチル}−ジメチル−アミン:
観察されたM+H、臭素同位体:477.1、479.1(1:1)
HNMR (d6−DMSO): δ10.25 (br s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.42 (t, 2H), 7.20 (t, 2H), 4.80 (m, 1H), 4.20 (d, 1H), 3.45 (m, 2H), 3.20 (m, 4H), 2.70 (d, 6H), 2.10 (d, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.40 (m, 4H) ppm.
【0275】
【化38】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メタノール:
観察されたM+、臭素同位体:421.9、423.9(1:1)
HNMR (d6−DMSO): δ 8.27 (s, 1H), 7.36 (m, 4H), 5.40 (d, 1H), 4.45 (m, 1H), 4.33(t,1H), 2.99 (m, 2H), 1.87 (m, 2H), 1.41 (m, 4H) ppm.
【0276】
【化39】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−メタノン:
観察されたM+、臭素同位体:420.4、422.4(1:1)
HNMR (d6−DMSO): δ 8.30 (s, 1H), 8.04 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 4.46 (d, 2H), 3.82 (m, 1H), 3.32 (m,2H), 1.95 (d, 2H), 1.73 (dq, 2H) ppm.
【0277】
【化40】

アリルアミン(3)。丸底フラスコにて、2(500mg、1.61mmol)をジクロロエタン10mLに溶解した。この溶液に、DIEA(1.12mL、6.44mmol)および臭化アリル1.4mL(16.1mmol)を加えた。その反応混合物を、85℃で、12時間撹拌し、そして室温まで冷却した。酢酸エチルおよび蒸留水を加え、そして有機層を、水で2回、そしてブラインで1回洗浄し、次いで、NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、粗生成物を得た。この生成物をシリカ(これは、ヘキサン:酢酸エチル(20:1)を使用する)でさらに精製して、504mgの最終アルケン生成物3(89%)を得た。
【0278】
アルデヒド(4)。丸底フラスコに、3(213.5mg、0.608mmol)を加え、続いて、水およびジオキサンの1:1混合物8mLを加えた。この懸濁液に、触媒量のOsOを加え、そして室温で、10分間撹拌し、続いて、NaIO(260.3mg)を加えた。その反応混合物を12時間撹拌した。酢酸エチルおよび蒸留水を加え、そして有機層を、水で2回、そしてブラインで1回洗浄し、次いで、NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、粗生成物を得た。この生成物をシリカ(これは、ヘキサン:酢酸エチル(7:3)を使用する)でさらに精製して、60mgの最終アルデヒド生成物4(28%)を得た。
【0279】
ジエチルアミノエチルアニリン(5)。丸底フラスコにて、4(60mg、0.170mmol)をジクロロエタン4mLに溶解した。この溶液に、ジエチルアミン88μL(0.850mmol)およびNaHB(OAc)(72.1mg、0.340mmol)を順次加え、そして室温で、2時間撹拌した。酢酸エチルおよび蒸留水を加え、そして有機層を、水で2回、そしてブラインで1回洗浄し、次いで、NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、62.6mgの粗生成物5を加え、これを、さらに精製することなく、使用した。
【0280】
ジエチルアミノエチルアニリン二塩酸塩(6)。丸底フラスコに、5(62.6mg、0.153mmol)をメタノール1mLに溶解した。この溶液に、4N HCl(ジオキサン中)1mLをゆっくりと加え、室温で、1時間撹拌し、そして濃縮して、定量的な量(52.7mg)の6を得た。
【0281】
ブロモピラゾロピリミジン(8)。丸底フラスコに、6(52.7mg、0.153mmol)、THF(3mL)およびNEt(88.5μL、0.635mmol)を加えた。この懸濁液に、7(29.8mg、0.127mmol)を加え、そして65℃で、30分間撹拌した。その粗反応物を濃縮した。酢酸エチルおよび蒸留水を加え、有機層を、水で2回、そしてブラインで1回洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。粗製物質を分取HPLCで精製して、16.4mgの最終生成物8(25%)を得た。
【0282】
観察されたM+H:508.1
NMR, DMSO−d6, HCl salt: δ 10.43 (br. s, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.22 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 4.60 (d, 2H), 4.01 (m, 1H), 3.63 (m, 2H), 3.29 (m, 2H), 3.14 (m, 4H), 3.02 (m, 2H), 1.84 (m, 4H), 1.19 (t, 6H) ppm.
【0283】
【化41】

[1−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−イル]−(4−クロロ−フェニル)−カルバミン酸 2−ジメチルアミノ−エチルエステル:
観察されたM+H:524.1
NMR, DMSO−d6, HCl salt: δ 10.66 (br s, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.46 (d, 2H), 7.29 (d, 2H), 4.51−4.48 (m, 3H), 4.34 (m, 2H), 3.29−3.23 (m, 4H), 2.67−2.45 (obs s, 6H), 2.01 (d, 2H), 1.47−1.41 (m, 2H) ppm.
【0284】
【化42】

4−(4−クロロ−ベンジル)−3−ヒドロキシメチル−ピペラジン−1−カルボン酸tertブチルエステル(8)。100mL丸底フラスコに、ピペラジン7(1.0g、4.6mmol、1.0当量)、1,2−ジクロロエタン(20mL)、4−クロロベンズアルデヒド(644mg、4.6mmol、1.0当量)、酢酸(1.0mL)およびNaBH(OAc)(1.4g、6.9mmol、1.5当量)を加えた。その反応物を一晩撹拌し、室温で、EtOAcと水の間で分配し、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、そして1:1のEtOAc:ヘキサンでカラム精製して、525mgの純粋な8(収率33%)が得られた。
【0285】
観察されたM+H:341.2
HNMR (d6−DMSO): 7.35 (dd, 4H), 4.0 (d, 1H), 3.98 (dd, 1H), 3.60 (m, 2H), 3.4 (d, 4H), 3.8 (m, 4H), 2.15 (m, 1H), 1.6 (s, 9H) ppm.
[4−(3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)−1−(4−クロロ−ベンジル)−ピペラジン−2−イル]−メタノール(10)。丸底フラスコに、8(100mg、0.29mmol、1.0当量)、MeOH(1.0mL)、およびジオキサン中の4N HCl(1.0mL)を加えた。その反応物を、室温で、1時間撹拌し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、そして1時間にわたって高真空に置いた。得られた脱boc化(de−boc’ed)残渣をTHF(5mL)およびEtN(0.1mL)に溶解した後、3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(52mg、0.25mmol、0.9当量)を加えた。その混合物を、30分間にわたって、65℃まで加熱し、ロータリーエバポレーションで濃縮し、DMSO(4mL)に溶解し、そして分取HPLC(これは、20:80%の勾配、11分間の実行時間、40mL/分を使用する)で精製した。凍結乾燥後、固形物として、60mgの8を回収した。
【0286】
観察されたM+H、臭素同位体:437、439(1:1)
HNMR (d6−DMSO): δ 10.0 (br s, 1H), 8.41 (s, 1H), 7.58 (m, 4H), 4.8 (br d, 1H), 4.70 (d, 2H), 4.50 (br d, 2H), 4.20 (m, 2H), 3.20 (m, 4H) ppm.
【0287】
【化43】

3−ブロモ−4−[4−(4−クロロ−ベンジル)−3−メチル−ピペラジン−1−イル]−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン:
観察されたM+H:422.9
NMR, DMSO−d, TFA salt: δ 10.26 (br s, 1H), 8.44 (s, 1H), 7.59−7.57 (m, 4H), 4.81 (m, 1H), 4.56−4.45 (m, 3H), 4.18 (m, 1H), 3.58 (m, 1H), 3.39−3.33 (m, 2H), 3.19 (s, 2H), 1.53 (s, 3H) ppm.
(実施例2)
【0288】
【化44】

上の実施例1で示した調製方法に照らして一般的合成経路に従って、N−アミノ−ピペラジン誘導体を調製する。式I(ここで、R〜R、Q、Q、L、VおよびWは、上記のとおりであり、そしてQ=Q=Nである)に従って、実施例2の化合物を調製する。
【0289】
(生化学アッセイ)
キナーゼアッセイを、固定化されたミエリン塩基性タンパク質(MBP)へのγ−33P ATPの取り込みを測定することにより行った。高結合ホワイト384ウェルプレート(Greiner)を、ウェルあたりTris緩衝生理食塩水(TBS;50mM Tris pH8.0、138mM NaCl、2.7mM KCl)中、20μg/mL MBP(Sigma カタログ番号M−1891)を、4℃で24時間インキュベーションすることによりMBPでコートした。プレートを3回、100μl TBSで洗浄した。キナーゼ反応を、全量34μlのキナーゼ緩衝液(5mM Hepes pH7.6、15mM NaCl、0.01%ウシγグロブリン(Sigma カタログ番号I−5506)、10mM MgCl、1mM DTT、0.02% TritonX−100)中で行った。化合物の希釈をDMSOで行い、1%の最終DMSO濃度でアッセイウェルに添加した。各データポイントは、二連で測定し、それぞれ個々の化合物の測定について少なくとも2回の二連アッセイを行った。酵素を、例えば最終濃度10nMまたは20nMで添加した。非標識ATPとγ−33P ATPとの混合物を、反応を開始するために添加した(代表的には、1ウェルあたり2×10cpmのγ−33P ATP(3000Ci/mmole)および10μMまたは30μMいずれかの非標識ATP)。この反応を振盪しながら室温で1時間行った。プレートをTBSで7回洗浄し、続いて50μl/ウェルのシンチレーション溶液(Wallac)を添加した。放射活性をWallac Triluxカウンターを使用して測定した。これはそのようなアッセイのほんの1つの形式であり、当業者に公知であるように、様々な他の形式が可能である。
【0290】
上記アッセイ手順は、阻害に関してIC50および/または阻害定数(K)を測定するために使用され得る。IC50は、アッセイ条件下、酵素活性を50%減少させるのに必要とされる化合物の濃度として定義される。代表的な組成物は、例えば約100μM未満、約10μM未満、約1μM未満のIC50を有し、例えばさらには約100nM未満、例えばなおさらには約10nM未満のIC50を有する。化合物のKは、3つの前提をもとにIC50から決定され得る。第1に、1つの化合物分子のみが酵素に結合し、協同性が存在しない。第2に、活性酵素の濃度および試験化合物がわかっている(すなわち、調製時に有意な量の不純物も不活性形態も存在しない)。第3に、酵素−インヒビター複合体の酵素速度が0である。速度(すなわち、化合物の濃度)データを以下の式(1)にあてはめた;ここでVは観察された速度、Vmaxは遊離酵素の速度、Iはインヒビターの濃度、Eは酵素の濃度、Kは酵素−インヒビター複合体の解離定数である。
【0291】
【化45】

(キナーゼ特異的アッセイ)
キナーゼ活性および化合物の阻害を、下記の3つのアッセイ形式のうちの1つ以上を使用して調べる。各々のアッセイのATP濃度を、それぞれ個々のキナーゼについてミカエリス−メンテン定数(K)に近くなるように選択する。用量反応実験を、384−ウェルプレート形式中、10個の異なるインヒビター濃度で行う。このデータを、下の4つのパラメーターの式(2)にあてはめる;ここでYは観測されたシグナル、Xはインヒビター濃度、Minは酵素非存在でのシグナルのバックグラウンド(0%酵素活性)、Maxはインヒビター非存在でのシグナル(100%酵素活性)、IC50は50%酵素阻害でのインヒビター濃度、Hは協調性を測定するための経験的なヒル係数を示す。代表的にHは1に近い。
【0292】
【化46】

(p70S6キナーゼアッセイ)
p70S6キナーゼの生化学活性をルシフェラーゼ共役(coupled)化学発光キナーゼアッセイ(LCCA)形式を使用して測定した。キナーゼ活性を、キナーゼ反応後に残存しているATPの割合として評価した。残存しているATPを、ルシフェラーゼ−ルシフェリン結合化学発光により検出した。具体的には、この反応を、20μLのアッセイ緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.5、10mM MgCl、0.02% Triton X−100、100mM DTT、2mM MnCl)中、試験化合物、5μM ATP、5μM RRRLSSLRAペプチドおよび12nM p70S6K(バキュロウイルスで発現させたT412E変異を含むヒトp70S6キナーゼドメイン残基1−421)を混合することにより開始した。この混合物を、20μLのルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物を加えた後、2時間周囲温度でインキュベーションし、化学発光シグナルをWallac Victorリーダーを使用して読み取る。このルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物は、50mM HEPES、pH7.8、8.5μg/mLシュウ酸(pH7.8)、5(または50)mM DTT、0.4% Triton X−100、0.25mg/mL コエンザイムA、63μM AMP、28μg/mLルシフェリンおよび40,000ユニット/mLルシフェラーゼからなる。
【0293】
(Akt1キナーゼアッセイ)
Akt1キナーゼの生化学アッセイを、ルシフェラーゼ結合化学発光キナーゼアッセイ(LCCA)形式を使用して評価した。キナーゼ活性を、キナーゼ反応後に残存しているATPの割合として評価した。残存しているATPを、ルシフェラーゼ−ルシフェリン結合化学発光により検出した。具体的には、この反応を、20μLのアッセイ緩衝液中(20mM Tris−HCL pH7.5、10mM MgCl、0.01% Triton X−100、1mM DTT、3mM MnCl)、試験化合物、1μM ATP、5μMクロスチド(crosstide)ペプチドおよび1.3nM Akt1(バキュロウイルスで発現させたPDK1で活性化されるヒトAkt1キナーゼドメイン残基R144−A480)の混合により開始した。この混合物を、20μLのルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物を加えた後、2時間周囲温度でインキュベーションし、化学発光シグナルをWallac Victorリーダーを使用して読み取る。このルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物は、50mM HEPES、pH7.8、8.5μg/mLシュウ酸(pH7.8)、5(または50)mM DTT、0.4% Triton X−100、0.25mg/mL コエンザイムA、63μM AMP、28μg/mLルシフェリンおよび40,000ユニット/mLルシフェラーゼからなる。
【0294】
(Akt2キナーゼアッセイ)
Akt2の生化学アッセイを、ルシフェラーゼ結合化学発光キナーゼアッセイ(LCCA)形式を使用して評価した。キナーゼ活性を、キナーゼ反応後に残存しているATPの割合として評価した。残存しているATPを、ルシフェラーゼ−ルシフェリン結合化学発光により検出した。具体的には、この反応を、20μLのアッセイ緩衝液中(20mM Tris−HCl pH7.5、10mM MgCl、0.03% Triton X−100、1mM DTT、3mM MnCl)、試験化合物、2μM ATP、5μMクロスチドペプチドおよび10nM Akt2(ヒトAkt2キナーゼドメイン残基K146−R480を発現させたバキュロウイルス)の混合により開始した。この混合物を、20μLのルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物を加えた後、2時間周囲温度でインキュベーションし、化学発光シグナルをWallac Victorリーダーを使用して読み取る。このルシフェラーゼ−ルシフェリン混合物は、50mM HEPES、pH7.8、8.5μg/mLシュウ酸(pH7.8)、5(または50)mM DTT、0.4% Triton X−100、0.25mg/mL コエンザイムA、63μM AMP、28μg/mLルシフェリンおよび40,000ユニット/mLルシフェラーゼからなる。
【0295】
(構造活性相関)
表2は、選択された本発明の化合物についての構造活性相関のデータを示す。阻害を、以下の略語を用いてIC50として示す:A=50nM未満のIC50、B=50nMより大きいが500nM未満のIC50、C=500nMより大きいが2000nM未満のIC50、およびD=2000nMに等しいかまたは2000nMより大きいIC50
【0296】
(表2)
【0297】
【表2−1】

【0298】
【表2−2】

【0299】
【表2−3】

【0300】
【表2−4】

【0301】
【表2−5】

【0302】
【表2−6】

【0303】
【表2−7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに従った化合物、
【化1】

ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩、水和物およびプロドラッグであって、ここで:
は、H、ハロ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、C1〜4アルキル、C〜Cアルケニル、またはC〜Cアルキニルであり、ここで、該アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、必要に応じて、1個または2個の基で置換されており、該基は、別個に、CO10、CONR1011、OR10、およびNR1011から選択される;
は、H、NH、SH、OH、またはC〜Cアルキルである;
、R、RおよびRは、それぞれ別個に、H、オキソ、CO10、CONR1011、C1〜4アルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルコキシ−C〜Cアルキルであり、ここで、各基内の該C〜Cアルキル、C〜CアルコキシおよびC〜Cアルコキシ−C〜Cアルキルは、別個に、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基は、別個に、CO10、CONR1011、OR10、およびNR1011から選択されるか、あるいは、
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、C〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、RおよびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、架橋されたC〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されているか、あるいは
およびRは、それらが結合する炭素と一緒になって、架橋されたC〜C炭素環を形成し、ここで、該環は、必要に応じて、H、ハロ、シアノ、ニトロ、またはアミノで置換されている;
Lは、C0〜4アルキル、C〜Cアルケニル、−N(R12)−、−C(O)N(R12)−、−N(R12)C(O)−、−C(O)−、−O−(CH−、または−(CH−O−であり、ここで、nは、1〜4である;
は、NまたはCR13であり、ここで、R13は、HまたはC(O)NR12(CHNR1011である;
は、結合、CR14、OまたはNであり、ここで、R14は、H、OH、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、NR1515であり、ここで、R15は、HまたはC1〜4アルキルであるか、あるいはQおよびVは、一緒になって、C(=O)を形成する;
が結合であるとき、Vは、存在せず、そしてR13は、Hではない;
がCR13であり、そしてQがCHであるとき、
Vは、H、OH、NH、C〜Cアルコキシ、NR1011、O(CHNR1011、4員〜7員ヘテロシクリルのCまたはNに結合されたO(CH、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、NR12C(O)(CHNR1011、(CHO(CHNR1011、(CHNR12(CHNR1011、(CHCHR12(CHNR1011、C1〜4アルキルであって、該C1〜4アルキルは、必要に応じて、OHまたはNR1011で置換されているか、あるいは、
Vは、4員〜7員不飽和環であり、該不飽和環は、OまたはNの1個〜3個の原子を含有するか、あるいは
Vは、二環式可溶化基である;
がNであり、そしてQがCHであるとき、あるいはQがCR13であり、そしてQがOまたはNであるとき、
Vは、H、(CHO(CHNR1011、(CHNR12(CHNR1011、(CHCHR12(CHNR1011、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルは、必要に応じて、OHまたNR1011で置換されているか、あるいは
Vは、4員〜7員飽和または不飽和環または複素環であり、該不飽和環または複素環は、OまたはNの1個〜3個の原子を含有し、必要に応じて、1個または2個のC〜Cアルコキシ基で置換されているか、あるいは
Vは、「二環式可溶化基」である;
mは、1〜3であり、
nは、1〜4であり、
Wは、C〜Cアルキル、NR1011であるか、あるいはWは、
アリール、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、あるいは5員〜12員縮合二環式または三環式飽和、部分飽和または不飽和環系であり、該環系は、N、OおよびSから選択される、0個〜4個の環原子を含有し、ここで、各アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、および縮合二環式または三環式環系は、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基は、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基は、必要に応じて、ハロでさらに置換されているか、あるいは
V、Q、LおよびWは、一緒になって、アリール環、ヘテロアリール環、C〜Cシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、あるいは5員〜12員縮合二環式または三環式飽和、部分飽和または不飽和環系を形成し、該環系は、N、OおよびSから選択される、0個〜4個の環原子を含有し、ここで、各環または環系は、必要に応じて、1個、2個または3個の基で置換されており、該基は、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、NH−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基は、必要に応じて、ハロでさらに置換されている;そして
10、R11およびR12は、それぞれ別個に、HまたはC1〜6アルキルであり、該C1〜6アルキルは、必要に応じて、アリールまたはヘテロアリールで置換されている、
化合物。
【請求項2】
以下の化合物が、式Iの化合物として除外される、請求項1に記載の化合物:
4−(4−(2−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン;
4−(4−(3−クロロフェニル)ピペラジン−1−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン;
4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸エチル;
4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸第三級ブチル;そして
N−(4−フェノキシフェニル)−4−(1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキサミド。
【請求項3】
が、水素ではない式Iの化合物である、式IIに従った化合物。
【請求項4】
が、ハロ、C〜Cアルキル、OH、シアノ、またはアミノである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、ハロである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、ブロモである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、Hである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
、R、RおよびRが、それぞれ、Hである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、CHであり、そしてQが、CHである式Iまたは式IIの化合物である、式IIIに従った化合物。
【請求項10】
Lが、結合である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、NH−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Vが、H、OH、O(CHNR1011、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、またはNR12C(O)(CHNR1011である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Vが、H、OH、O(CHNR1011、NR12(CHNR1011、NR12C(O)NR12(CHNR1011、またはNR12C(O)(CHNR1011であり、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、H、ハロまたはC〜Cアルキルであり、そしてRが、Hである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
、R、RおよびRが、それぞれ、Hである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、Nであり、そしてQが、CHである式Iまたは式IIの化合物である、式IVに従った化合物。
【請求項20】
Lが、結合である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、またはC1〜4アルキルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、またはC1〜4アルキルであり、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
Vが、Hである、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
が、ハロであり、そしてRが、Hである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
、R、RおよびRが、それぞれ、Hである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
がCHであり、そしてQがNである式Iまたは式IIの化合物である、式Vの化合物。
【請求項31】
Lが、結合である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルが、必要に応じて、NR1011で置換されている、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
Vが、H、C(O)NR12(CHNR1011、C(O)(CHNR1011、C(O)O(CHNR1011、C(O)C(O)NR12(CHNR1011、SO(CHNR1011、C(O)−C〜Cアルケニル、またはC1〜4アルキルであり、該C1〜4アルキルが、必要に応じて、NR1011で置換されており、そしてR10およびR11が、それぞれ、CHである、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
が、ハロであり、そしてRが、Hである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
、R、RおよびRが、それぞれ、Hである、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
が、CHまたはNであり、そしてQおよびVが、一緒になって、C(=O)を形成する式Iまたは式IIの化合物である、式VIの化合物。
【請求項41】
Lが、結合である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Wが、アリールであり、該アリールが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個、2個または3個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CN、NO、CF、OH、NR1011、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、NO、C(O)OC〜Cアルキル、C(O)NR12−C〜Cアルコキシ、C(O)NR12−ヘテロシクリル、アリール、O−アリール、O−CH−アリール、N−アリールから選択され、ここで、各アリール置換基が、必要に応じて、ハロでさらに置換されている、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、ハロ、CF、C1〜4アルキル、およびC〜Cアルコキシから選択される、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
Wが、フェニルであり、該フェニルが、必要に応じて、1個または2個の置換基で置換されており、該置換基が、別個に、F、ClおよびBrから選択される、請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
が、ハロであり、そしてRが、Hである、請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
、R、RおよびRが、それぞれ、Hである、請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
表3から選択される、請求項1に記載の化合物。
(表3)
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【請求項49】
請求項1〜48のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含有する、薬学的組成物。
【請求項50】
請求項1〜49のいずれか1項に記載の化合物または薬学的組成物の代謝物。
【請求項51】
キナーゼのインビボ活性を調節する方法であって、被験体に、以下の少なくとも1種を含有する組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法:請求項1〜48のいずれかに記載の化合物、請求項49に記載の薬学的組成物、請求項2において明白に除外されている化合物、および請求項2において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【請求項52】
前記キナーゼが、p70S6Kである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
p70S6Kのインビボ活性を調節する工程が、該p70S6Kの阻害を包含する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
制御できない異常および/または不要な細胞活性に関連した疾患または障害を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳動物に、以下の少なくとも1種を含有する組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法:請求項1〜48のいずれかに記載の化合物、請求項49に記載の薬学的組成物、請求項2において明白に除外されている化合物、および請求項2において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【請求項55】
p70S6、Akt−1およびAkt−2キナーゼの少なくとも1種のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、請求項1〜48のいずれか1項に記載の化合物、またはその組成が請求項2において明白に除外されている化合物、および少なくとも1種の候補薬剤のいずれかを混ぜ合わせる工程、および該キナーゼの活性に対する該候補薬剤の効果を決定する工程を包含する、方法。
【請求項56】
細胞内における増殖活性を阻害する方法であって、以下の有効量を投与する工程を包含する、方法:請求項1〜48のいずれかに記載の化合物、請求項49に記載の薬学的組成物、その組成が請求項2において明白に除外されている化合物、およびその組成が請求項2において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。
【請求項57】
細胞内における異常な代謝活性を阻害する方法であって、以下の有効量を投与する工程を包含する、方法:請求項1〜48のいずれかに記載の化合物、請求項49に記載の薬学的組成物、その組成が請求項2において明白に除外されている化合物、およびその組成が請求項2において明白に除外されている化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物。

【公表番号】特表2008−525526(P2008−525526A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549530(P2007−549530)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/046938
【国際公開番号】WO2006/071819
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506024489)エグゼリクシス, インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】