説明

免疫細胞活性を調節する組成物およびその検出方法

本発明は、免疫細胞の細胞傷害活性を測定する新しい方法、および異常な免疫応答を治療する方法および生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2003年1月30日に出願された米国特許出願第60/443647号および2003年2月10日に出願された米国特許出願第60/446458号に優先権を主張する。
【0002】
この明細書に引用される出願および特許、並びにそれぞれの出願および特許に引用される文書または参考文献(それぞれの公表された特許の出願中を含む;「出願に引用された文書」)、およびこれらの出願および特許に対応するおよび/または優先権を主張するそれぞれの国際特許出願および外国出願または特許、およびそれぞれの出願に引用されるまたは参照されるそれぞれの文書は、ここに言及することにより明白に引用される。より一般的には、文書または参考文献は、番号のついた段落の前の参考文献のリスト中であっても明細書自体の中であっても、明細書に引用される文書または参考文献;およびこれらの文書または参考文献(「ここに引用される参考文献」)、並びにここに引用される参考文献のそれぞれに引用されるそれぞれの文書または参考文献(製造者の仕様書、指示書等を含む)は、ここに言及することにより明白に引用される。
【0003】
連邦政府による委託研究下でなされた発明に対する権利の声明
本発明の態様は、国立保険研究所助成金R01 A149757-02からの資金調達を使用して行われたかもしれない。したがって、政府は本発明に対して権利を有する可能性がある。
【0004】
発明の分野
本発明は、免疫細胞の細胞傷害活性を測定する新しい方法、および異常な免疫応答を治療するための方法および生成物に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
細胞傷害活性を有する細胞は、免疫応答に大いに寄与する。ある疾患(例えば、癌、感染)の治療において、増強された免疫応答が有効であり、従って、細胞傷害活性の増加により助長しうる。例えば、HIV感染の治療は、細胞傷害性効果を改善できることから恩恵を受けうる。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、HIV感染を対象とする強い免疫応答の提供に不可欠であるが十分ではないとされてきた。(非特許文献1。)CD4+T細胞の喪失、HIVビリオンのウィルス突然変異回避、およびHIVタンパク質(例えばnef)の直接の影響を含む様々の理由により、HIV感染は、免疫監視を回避すると考えられる。(非特許文献2参照。)HIVビリオンに対するCTLの細胞傷害活性を改善することにより、HIV感染に対する全体的な免疫応答が潜在的に増強される。
【0006】
逆に、自己免疫疾患の治療は、T細胞活性を下方調節できることにより潜在的に助長されうる。自己免疫疾患は、宿主において所望でない効果を生じさせる自己抗原に対する強力な免疫応答により特徴付けられる。CTL細胞傷害活性を減少させることができることにより、自己免疫と関連する細胞損傷が減少されうる。
【非特許文献1】Addo et al. 2003 J. Virol. 77:2081
【非特許文献2】Green et al. 2002 Nature Med. 8:673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、細胞傷害性効果の調節による免疫活性の調節は、様々の状態の治療において重要である。したがって、免疫活性を有効に調節する方法および組成物が必要とされる。特に、CTL細胞傷害活性を有効に調節する方法および組成物が必要とされる。
【0008】
そのような組成物を最も有効に同定するために、スクリーニングアッセイを生理的条件において実施すべきである。細胞傷害活性についてのスクリーニングは、一般にクロム放出アッセイを含み、これは物質がCTLを含む細胞を誘発して特定の標的細胞を溶解(破裂)させる能力の測定に使用される。このアッセイは通常、CTLおよびそれらのクロム標識された標的を、96ウェルの組織培養プレートの丸底ウェル中に配置する工程を含む。次に、細胞を所定の時間インキュベートし、その間に細胞は丸いウェルの底で互いに近接して沈殿する。4時間後、上澄みを採集し、クロム含有量を測定する。丸底培養プレートに配置される際、CTLは標的細胞の隣に位置する。しかしながら、CTLと標的細胞との関連性を強めることにより、CTLが標的細胞の方向へ積極的に移動する能力は考慮されていないので、全CTL活性は適切に評価されない。スクリーニングのための生理的条件を提供する改良された方法が、CTL細胞傷害活性を調節する組成物の検出において望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
CTLの積極的な移動は、標的細胞の有効な破壊に必要であることが発見されている。したがって、CTLの細胞傷害性効果は、CTLと標的細胞との間の距離が変化すると変わりうる。その結果、生体外でCTL活性を定量するために、標的細胞の方向へのCTLの移動を考慮し明らかにしなければならない。
【0010】
細胞傷害性における細胞移動の重要な役割が今や評価されているので、本発明の方法は、生体内における細胞傷害性効果の完全な測定を提供する。
【0011】
少なくとも3つの改良が本発明の方法に寄与する。第一に、細胞が底で共にペレットにならないように、より正確には生理的に分配されるように、平底が培養において使用される。第二に、細胞の総数は概して一定に保たれる。第三に、エフェクター細胞‐標的細胞間の距離と死滅効果との間に反比例の関係が存在するということが示されている。したがって、標的細胞を溶解するためにエフェクター細胞が移動しなければならない距離が、細胞傷害性の測定において考慮される。エフェクター細胞と標的細胞との間の平均距離は、エフェクター/標的の割合、並びに細胞の総数およびウェルのサイズを考慮に入れる数学的モデルを使用して計算できる。しかしながら、本発明は、そのようなモデルの使用に限定されるものではない;それを使用せず、ここにより詳細に説明されるように、標準曲線を作成してもよい。
【0012】
したがって、任意の所定のエフェクター細胞について、細胞傷害性細胞が様々のエフェクター/標的の割合でおよび一定の密度で標的細胞に達するために移動しなければならない距離を変えることの効果を示す、規定の標準曲線を特定してもよい。これらの関係を使用して、異なるエフェクター細胞の有効性を比較し、細胞傷害性細胞の移動パターンを変化させそれにより細胞傷害性効果を変化させるウィルス感染細胞または癌細胞のような特定の標的細胞により発現されるタンパク質の効果を研究することができる。
【0013】
したがって、ある態様において、本発明は、細胞傷害活性を有する免疫細胞(すなわち、「細胞傷害性細胞」または「細胞傷害性免疫細胞」)の細胞傷害活性を測定する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバーに配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が殺されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、殺された前記標的細胞の割合を特定する各工程を含み、前記殺された標的細胞の割合を非蛍光アッセイを使用して測定することを特徴とする。ある実施の形態において、細胞傷害活性を有する免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球であるが、これに限定されない。この場合および本発明の他の関連する態様において、免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、マクロファージ、または樹状細胞でもよい。
【0014】
この明細書において、「包含する」、「包含している」、「含有する」および「有する」等の用語は、米国特許法において与えられる意味を有し、「含む」、「含んでいる」等を意味してもよい;「実質的に構成されている」または「実質的に構成される」等の用語は、米国特許法において与えられる意味を有し、この用語は、引用される以上のものの存在により引用されるものの基本的または新しい特徴が変化しない限り、引用される以上のものの存在を許容し、制限はないが、従来技術の実施の形態を除く。
【0015】
ある実施の形態において、非蛍光アッセイには、放射能の放出が含まれる。ある実施の形態において、放出された放射能は、放射標識されたクロムである(例えば、51Cr放出)。
【0016】
ある実施の形態において、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞が予め定められた割合で存在する。この割合は、本発明を制限することを意図するものではない。これは、1000:1から1:1までの範囲でよい。別の実施の形態において、好ましい割合は、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1または5:1である。
【0017】
本発明のこのおよび他の態様において、ウェル中の細胞の絶対的な数は一定でもよい。ウェルごとの細胞の数は、本発明を制限することを意図しない。ウェルごとの細胞の数は、10000から200000までの範囲でもよいが、これに限定されない。特定の実施の形態において、ウェルごとの細胞の数は、ウェルごとに少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも25000、少なくとも50000、少なくとも75000、少なくとも100000、少なくとも125000、少なくとも150000、少なくとも175000、および少なくとも200000の細胞である。
【0018】
ある実施の形態において、本発明の方法はさらに、アッセイの結果を標準曲線と比較する工程を含む。標準曲線は、標的細胞の対照個体群を使用して作成してもよい。あるいは、細胞傷害性の程度は、対照の標的細胞溶解の割合として特定してもよい。
【0019】
別の実施の形態において、本発明の方法はさらに、エフェクター細胞と標的細胞との間の距離を測定する工程を含む。
【0020】
さらに別の実施の形態において、本発明は、細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法を提供する。本発明の方法は、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバーに配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が溶解されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、溶解された前記標的細胞の割合を特定する各工程を含み、前記溶解された標的細胞の割合をフローサイトメーターまたは放射能カウンターを使用して測定することを特徴とする。重要な実施の形態において、細胞傷害活性を有する免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球である。
【0021】
本発明のこのおよび他の態様において、溶解された標的細胞の割合または絶対的な数のどちらかを特定してもよい。しかしながら、標的の数がウェル間で異なる場合、絶対的な数よりも割合を特定するほうが一般にはより適切であろう。
【0022】
ある実施の形態において、放射能カウンターを使用して、放射性標識されたクロムの放出のような放射線の放出を測定する。別の実施の形態において、フローサイトメーターを使用して、ヨウ化プロピジウム摂取、7-AAD摂取、例えばPhiPhiLuxまたは蛍光色素結合活性化カスパーゼ抗体のようなしかしこれに限定されない蛍光発生カスパーゼ基質の摂取を測定する。
【0023】
ある実施の形態において、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞は、予め定められた割合で存在する。この割合は、本発明を制限することを意図しない。これは、1000:1から1:1までの範囲でよい。別の実施の形態において、好ましい割合は、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1または5:1である。
【0024】
ある実施の形態において、本発明の方法はさらに、アッセイの結果を標準曲線と比較する工程を含む。
【0025】
別の実施の形態において、本発明は、細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法であって、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバーに配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が溶解されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、溶解された前記標的細胞の割合を特定し、溶解された標的細胞の割合を標準曲線と比較する、各工程を含む方法を提供する。
【0026】
別の方法において、殺された標的細胞の割合は、蛍光または放射能放出により測定される。別の実施の形態において、溶解された標的細胞の割合は、フローサイトメーターまたは放射能カウンターを使用して測定される。関連する実施の形態において、放射能カウンターを使用して、放射能クロム放出を測定する。別の関連する実施の形態において、フローサイトメーターを使用して、ヨウ化プロピジウム摂取、またはここに記載される他の蛍光標識を測定する。
【0027】
ある実施の形態において、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞は、予め定められた割合で存在する。この割合は、本発明を制限することを意図しない。これは、1000:1から1:1までの範囲でよい。別の実施の形態において、好ましい割合は、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1または5:1である。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法であって、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバーに配置し、少なくとも1つの標的細胞に向かう少なくとも1つのエフェクター細胞の移動速度を特定し、溶解された標的細胞の割合を特定し、移動速度および溶解された標的細胞の割合を標準曲線と比較する、各工程を含む方法を提供する。
【0029】
本発明の方法を実施することにより、HIV gp120タンパク質は、CTLのような細胞傷害活性を有する免疫細胞のfugetaxis(すなわち、gp120の位置から遠ざかるCTLの移動)を起こすことがさらに発見され、その結果免疫系がHIV感染を全滅させることができないことが少なくとも一部説明される。この発見により、gp120に媒介されるfugetaxisを抑制する物質を治療的に使用して、例えばHIV感染のようなしかしこれに限定されない、増加した免疫細胞介入から恩恵を受ける状態を治療または予防できるということが注目される。これによりさらに、gp120自体を、異常な免疫応答を受けている患者においてまたは減少した免疫細胞介入から恩恵を受ける患者において、治療的に使用できるということが注目される。ある実施例は、Tリンパ球のような免疫細胞の患者の体内の部位への所望でない浸潤である(例えば、新生児におけるRSV感染中)。
【0030】
したがって、ある態様において、本発明は、異常な免疫応答の抑制に有効な量でgp120分子またはその機能等価物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0031】
ある実施の形態において、異常な免疫応答には、Tリンパ球の所望でない浸潤が含まれる。別の実施の形態において、可溶性のgp120は、患者の体内の部位へのTリンパ球の所望でない浸潤を抑制する。
【0032】
ある実施の形態において、異常な免疫応答は、自己免疫疾患、免疫過敏症、アレルギー、喘息、移植片対宿主疾患(GVHD)、および炎症からなる群より選択される。別の実施の形態において、異常な免疫応答は正常レベルに帰着する。
【0033】
別の実施の態様において、本発明は、抗原発現標的の方向への抗原特異的免疫細胞の移動を増強する方法であって、抗原発現標的の方向への抗原特異的免疫細胞の移動を増強するのに有効な量でgp120により媒介されるfugetaxisを抑制する物質を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0034】
ある実施の形態において、抗原特異的免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球にもなりうるTリンパ球である。抗原特異的免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ、細胞傷害性CD8+Tリンパ球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、または樹状細胞でもよい。別の実施の形態において、抗原発現標的は、無細胞HIVウィルスまたは細胞結合HIVウィルスのようなHIV抗原発現標的である。
【0035】
ある実施の形態において、物質は、抗ケモカインレセプター抗体またはその断片(例えば、抗-CXCR-4抗体またはその断片、あるいは抗-CXCR-5抗体またはその断片)、G-アルファ-I阻害剤(例えば、百日咳毒素またはその機能等価物)、キナーゼ阻害剤(例えば、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-K)阻害剤、例えばワートマニン、またはチロシンキナーゼ阻害剤、例えばゲニステインまたはハービマイシン)、およびcAMP作用薬(例えば、環状ヌクレオチド、例えば8-Br-cAMPまたはその機能等価物)からなる群より選択される。別の実施の形態において、物質は、全身的にまたは徐放性媒体で投与される。
【0036】
ある実施の形態において、本発明の方法がHIV感染を有するまたは患う危険のある患者を対象とする場合、本発明の方法はさらに、抗HIV物質を患者に投与する工程を含む。ある実施の形態において、患者はHIV感染を有する。別の実施の形態において、患者はHIV感染を患う危険がある。さらに別の実施の形態において、患者はHIVにさらされている。
【0037】
本発明のこれらのおよび他の実施の形態は、ここにより詳細に説明されるであろう。
【0038】
図面は、本発明を実施可能とするのに必須ではないということを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞傷害活性を測定するための新しいアッセイを実施する方法を提供する。本発明の方法により、免疫細胞の特異的な標的細胞を溶解する能力(すなわち、細胞傷害活性)の正確で生理学的な測定が可能となる。本発明の方法を使用して、タンパク質または他の小分子のようなテスト物質を評価し、それらの細胞移動における正のまたは負の効果、並びに細胞傷害性における全体的な正のまたは負の効果を特定することができる。
【0040】
少なくとも3つの改良が本発明の方法に寄与する。第一に、細胞が底において共にペレットにならないように、より正確には生理的に分布するように、平底が培養に使用される。第二に、細胞の総数は概して一定に保たれる。第三に、エフェクター細胞‐標的細胞間の距離と死滅効果との間に反比例の関係が存在するということが示されている。したがって、標的細胞を溶解するためにエフェクター細胞が移動しなければならない距離が、細胞傷害性の測定において考慮される。エフェクター細胞と標的細胞との間の平均距離は、エフェクター/標的の割合、並びに細胞の総数およびウェルのサイズを考慮に入れる数学的モデルを使用して計算できる。しかしながら、本発明は、そのようなモデルの使用に限定されるものではない;それを使用せず、ここにより詳細に説明されるように、標準曲線を生じてもよい。
【0041】
丸底(頂部パネル)チャンバーと対比した平底(底パネル)チャンバーにおける細胞の分布が図4Aに示される。平底チャンバーと比較して、細胞密度にかかわらず丸底チャンバー中には細胞のクラスター形成が存在する。丸底チャンバーと対比して平底チャンバーを使用することにより、特異的な溶解の量が増加した。図4Bは、丸底ウェルと相対的に平底ウェルを使用した場合に、使用されたエフェクタークローンの種類またはエフェクター:標的の割合にかかわらず、より多くの死滅が観察されたことを示す。
【0042】
さらに、エフェクター:標的の割合における変化およびチャンバーごとのウェルの総数における変化が、細胞傷害活性に影響を与えるということがいまや特定されている。したがって、好ましい実施の形態において、細胞の総数は全てのウェルで一定に保たれる。
【0043】
エフェクター細胞-標的細胞間の距離と死滅効果(細胞傷害性)との間には反比例の関係が存在することが特定されている。したがって、好ましい実施の形態において、標的細胞に達するためにエフェクター細胞が移動する平均距離が、細胞傷害性の測定において計算され考慮される。距離の計算は、チャンバー中の細胞の総数、エフェクター:標的細胞の割合、およびチャンバーの大きさ(例えば、チャンバーの容積および/または平底の表面積)を含む因子に依存する。
【0044】
エフェクター細胞と標的細胞との間の距離は、数学的モデルを使用して特定できるが、しかしながら、本発明は、モデルの使用に依存するものではなく、エフェクター:標的の割合と対比して特異的な細胞溶解のプロットに基づき異なるウェルを単純に比較することが可能である。図4Cに示されるように、数学的モデルの使用により、データを直線形状にプロットすることができる;しかしながら、上記のように、これは本発明を実施するために必須ではない。数学的モデルは、ウェルごとの細胞の総数にかかわらず、エフェクター対標的の割合の増加に伴い、エフェクター細胞と標的細胞との間の距離が増加することを示す。割合が変化しても、様々のウェル中の細胞の総数が一定に保たれる場合にこのようになる。
【0045】
本発明の方法により、細胞傷害活性を有する免疫細胞の移動に影響を与えることによって、細胞傷害活性を調節する能力についてテスト物質(例えば、タンパク質または他の小分子)のスクリーニングが可能となる。走化性(すなわち、物質に向かう移動)またはfugetaxis(すなわち、物質から遠ざかる移動)を刺激する化合物を、本発明の方法を使用して同定できる。
【0046】
本発明の方法により、患者に作用する走化性またはfugetaxisの影響力に打ち勝つ能力について、テスト物質のスクリーニングが可能となる。例えば、ここに示されるように、HIV-特異的gp120タンパク質は、Tリンパ球のfugetaxisを起こす。本発明の方法を使用して、gp120のfugetaxis影響に打ち勝つ能力について、gp120およびTリンパ球の存在下でテスト物質をスクリーニングできる。そのように同定できる化合物は潜在的に、HIV感染を有するまたは患う危険のある(例えばさらされている)患者において治療に使用できる。
【0047】
細胞傷害活性は、当該技術において知られる技術、並びにここに記載される技術を使用して測定できる。非蛍光アッセイは放射能放出でもよい。放射能放出アッセイは、例えば放射性クロム(例えば51Cr)のような放射能を最初に取り込んだ標的細胞を使用するものの1つである。標的細胞がエフェクター細胞と共にインキュベートされそれにより殺されると、放射性の内容物が培地中に放出され、その後放射能カウンターを使用してこの放出された放射能を検出できる。本発明は、使用される放射性化合物に限定されるものではなく、当業者はこのアッセイを他の放射能タイプに当然に変更できるであろう。
【0048】
本発明の他の態様において、アッセイは、インキュベーション中の細胞溶解の指標として蛍光シグナルまたはその欠失を検出する蛍光アッセイである。ある実施例として、最初に蛍光マーカーを取り込んでいない標的細胞を、エフェクター細胞と共にインキュベートする。インキュベーションが完了した後、蛍光マーカーを培養液に加え、任意の死んだ標的細胞に入り込ませる。死んだ細胞は通常、穴の開いた細胞膜を有し、したがって、蛍光マーカーを含む溶質はこれらの細胞により容易に取り込まれる。そのようなマーカーは、細胞に入り込みDNAに結合するヨウ化プロピジウムである。次に細胞を洗浄して死んだ細胞内にない任意のフルオロフォアを除去し、その後フローサイトメーターまたは蛍光マイクロプレートリーダーを使用して分析する。他の蛍光マーカーは、7-AAD、蛍光発生カスパーゼ基質(例えばPhiPhiLuxまたは蛍光色素結合活性化カスパーゼ抗体)を含む。7-AADは通常、生存細胞を染色しないが、死にかけている細胞を低レベルに染色し、死んでいる細胞を高レベルに染色する。ある実施の形態において、フローサイトメーターを使用して細胞を分析する。フローサイトメーターの使用により、エフェクター細胞上に存在するが標的細胞上に存在しない、または逆の場合も同様の第二のマーカーを使用することによって、死んだエフェクター細胞と死んだ標的細胞を区別することができる。
【0049】
本発明は、ある態様において細胞傷害活性を有する免疫細胞を含む。ここで用いたように免疫細胞は、抗原の認識に関係する造血起源の細胞である。免疫細胞は、樹状細胞またはマクロファージ、B細胞、T細胞、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞等のような抗原提示細胞(APC)を含む。ここで用いたように「成熟したT細胞」とは、CD4loCD8hiCD69+TCR+、CD4hiCD8loCD69+TCR+、CD4+CD45+RA+、CD4+CD3+RO+、および/またはCD8+CD3+RO+表現型を含む。細胞傷害活性を有する免疫細胞は、別の細胞を殺すことのできる免疫細胞である。ある実施の形態において、細胞は標的を直接殺す;他の実施の形態において、細胞は標的を間接的に殺す。
【0050】
ここで用いたように、「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、交換して使用され、通常の意味を前提とする。細胞傷害性T細胞は通常、CD8+T細胞のような細胞傷害活性を有するT細胞である。CD4+リンパ球の一部もまた細胞傷害活性の能力があることが最近報告されている。したがって、本発明の細胞傷害性細胞は、CD4+細胞傷害性Tリンパ球も含む。
【0051】
本発明により提供される細胞傷害性アッセイは通常、エフェクター細胞および標的細胞という2つの細胞の種類を使用する。ここで用いたように、「エフェクター細胞」とは、細胞傷害活性を有するまたは有すると考えられる任意の細胞である。「細胞傷害性」という用語は、エフェクター細胞により産生される標的細胞における毒作用を称する。毒作用は、標的細胞を溶解(すなわち破裂)させる。細胞傷害性は「細胞死滅」とも称され、細胞傷害性効果の強さは、「死滅効果」と称されてもよい。
【0052】
エフェクター細胞は通常、細胞傷害活性を有する免疫細胞である。エフェクター細胞は、細胞傷害性アッセイにおいて死滅を生じさせる細胞である。ある実施例において、エフェクター細胞はまた抗原特異的免疫細胞である。それらは、他の細胞を殺すことのできる任意の細胞でもよいが、通常は細胞傷害性T細胞のような免疫細胞である。標的細胞は、細胞傷害性アッセイにおいてエフェクター細胞により認識され殺される細胞である。標的細胞は、細胞傷害活性を有する免疫細胞により認識される任意の細胞でもよい。適切な標的細胞の実施例には、ウィルス感染細胞および腫瘍細胞が含まれる。エフェクター細胞は通常、チャンバー内で標的細胞の部位へ移動できなければならないので、非付着性である。標的細胞は付着性でも非付着性でもよい。ある実施の形態において、標的細胞は非付着性である。
【0053】
本発明の実施において、エフェクター細胞が標的細胞を殺すのに十分な時間、細胞をインキュベートする。この時間は、個別的な基準に基づき特定され、当業者は適切な時間範囲に精通している。時間は、最低30分間から12時間以上まででよく、その間の全ての時間を含む。好ましい実施の形態において、時間は2から4時間の範囲である。インキュベーションは、4、25または37℃、または室温で行ってもよい。好ましい実施の形態において、インキュベーションは37℃で行う。好ましくは、インキュベーション中に細胞を配置する培地は、細胞を健康で生存可能に維持するために必要な栄養素を含有する。したがって、任意の細胞死は、標的細胞におけるエフェクター細胞の作用に帰因する。
【0054】
殺された細胞の割合は、所定の数の細胞の死により生じるシグナルの推測的な測定と比較して特定される。例えば、これは、定められた数の標的細胞の溶解を含む対照実験を行い、洗浄後に培地中のクロムの量または蛍光シグナルの量(特にマイクロプレート蛍光リーダーを使用する場合)を測定することにより行ってもよい。フローサイトメーターを使用する場合、蛍光標識された細胞の数を直接数えることができる。
【0055】
本発明のある実施の形態において、複数のおよび潜在的に平行の細胞傷害性アッセイが行われることが必要とされる。これらのアッセイは全て、同じエフェクター-標的の割合を有してもよく、または異なる割合を有してもよい。ある重要な実施の形態において、エフェクター-標的細胞の割合は、予め定められた割合である。この割合は、本発明を制限することを意図しない。これは、1000:1から1:1までの範囲でよい。別の実施の形態において、好ましい割合は、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1または5:1である。これらの割合は、実際のアッセイにおいて使用しても、エフェクターおよび/または標的細胞の特定の供給源について標準曲線を導く場合に使用してもよい。細胞の割合は、エフェクター細胞、標的細胞、または両方の性質および活性に依存する。当業者は、細胞の特徴およびチャンバーの容積および/または面積に基づいて適切な割合を容易に特定することができるであろう。
【0056】
ウェルごとの細胞の総数は、チャンバーの容積、および特にチャンバーの平底の表面積に依存して変化する。例えば、通常、チャンバーが小さくなると加えられる細胞は少なくなる。所定のアッセイにおけるウェルごとの細胞の数は一定でもよい。一定の細胞数とは、複数のウェルを用いる所定のアッセイにおいて、ウェルがエフェクター-標的細胞の異なる割合を有し、細胞の絶対的な数(すなわち、エフェクターおよび標的細胞を合わせた全体)は細胞の割合にかかわらず同じであることを意味する。例えば、所定のアッセイにおいて、少なくとも3つのウェルが異なる割合(例えば100:1、50:1および10:1)を有してもよい。それぞれのウェル中の細胞の総数は同じである(例えばウェルごとに100000細胞)。これは、それぞれの細胞の種類の総数がウェル間で変化するということを意味する。割合が100:1の場合、約99010のエフェクター細胞および990の標的細胞が存在する(全体で100000の細胞)。割合が10:1の場合、約90909のエフェクター細胞および9091の標的細胞が存在する(全体で100000の細胞)。ウェルごとの細胞の総数は、本発明を制限することを意図しない。ウェルごとの細胞の総数は、10000から200000までの範囲でもよいが、これに限定されない。特定の実施の形態において、ウェルごとの細胞の総数は、ウェルごとに少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも25000、少なくとも50000、少なくとも75000、少なくとも100000、少なくとも125000、少なくとも150000、少なくとも175000、および少なくとも200000の細胞である。他の実施の形態において、ウェルごとの細胞の総数は、10細胞、100細胞、500細胞、1000細胞、または5000細胞でもよい。細胞の総数は、エフェクター細胞、標的細胞、または両方の性質および活性に依存する。当業者は、細胞の特徴およびチャンバーの容積および/または面積に基づいてウェルごとの細胞の適切な数を容易に特定することができるであろう。
【0057】
アッセイは、平底チャンバーで行われる。通常、これは当該技術においてよく知られる96ウェルプレートの平底ウェルである。そのようなチャンバー中の容積は、約50マイクロリットルである。しかしながら、平底チャンバーは、個々のペトリ皿、または96ウェルより少ないマルチウェルプレート(例えば6ウェル、12ウェル、24ウェル、または48ウェルプレート)でもよい。チャンバーの選択は、特定のアッセイシステムおよび使いやすさに依存する。操作がしやすく、同時に平行アッセイを行うことができるので、通常96ウェルプレートが好ましい。「チャンバー」および「ウェル」という用語は交換して使用され、本発明の細胞傷害性アッセイを行うためにエフェクターおよび標的細胞が混合される容器を称する。通常、これらのチャンバーは、インキュベーション中の培地の蒸発を防ぐために取り外しできる蓋を有してもよい。チャンバーは、平底を有するものであれば任意の形状のものでもよい。平底から上がるチャンバーの側面は、円形でもよく、また四角形または三角形の構造に配置されてもよいが、これに限定されない。必要とされる培地の量は構造に依存し、当業者は必要な量を当然に特定できるであろう。
【0058】
ある実施の形態において、アッセイは、(a)画像処理プロセッサーおよびシグナル(例えば画像)記録装置、(b)画像処理プロセッサーとつないだコンピュータ装置、および(c)データベースを含んでもよい。画像処理プロセッサーは、シグナル保存装置からの情報を受け取り、次に細胞溶解により産生されるシグナルを取得する。例えば、本発明によるシグナル保存装置は、露光調整のための自動シャッターを有し、細胞溶解を視覚化するために設定された顕微鏡アセンブリからの蛍光の光を受け取るのに適合するデジタルカメラでもよい。ここで、デジタルカメラは、画像処理プロセッサーを経由して、デスクトップパーソナルコンピュータのようなコンピュータ装置と連絡されていてもよい。コンピュータ装置により、ユーザーは本発明の方法により生じるデータを視覚化、操作、分析、提供、および処理等することが容易になる。データは、コンピュータハードドライブのようなローカルコンピュータ装置上に存在する適切なデータベース中で、または遠隔配置されたコンピュータにおいてネットワークシステム上で保存または検索してもよい。
【0059】
当業者はまた、例えば携帯用記憶媒体、ネットワーク転送を含む既知のデータ転移の方法により、またはデータの印刷されたコピーを提供することにより、このデータを他人、コンピュータ装置、または届け先に伝達できることが分かるであろう。したがって、本発明の方法から生じるデータの伝達可能性により、ここで示される特に高処理スクリーニングアッセイは、互いに離れて位置する複数の人または研究グループ間で協力しうるということを当業者は分かるであろう。例えば、第一の地球上の位置の第一の研究グループが、本発明の高処理方法の第一の部分を行い、そこと連携した第二の地球上の位置における第二の研究グループが、本発明の高処理方法の第二の部分を行うことができる。例えば、第一の研究グループにより行われる第一の部分は、所望の活性を有するテスト物質を同定するための本発明の細胞に基づくスクリーニングからのデータの生成およびアクセス可能なデータベースへの該データの提供に関してもよい。第二の研究グループにより行われる第二の部分は、データベースからのデータの取得およびテスト物質を同定およびさらに研究するためのデータの分析に関してもよい。
【0060】
ある実施の形態において、本発明は、ウェル底が平らであるという条件で、マイクロプレートにおいてマイクロウェル形態を使用して行ってもよい。例えば96、384、または1536ウェルを有するマイクロプレートは、「XY」マイクロプレートリーダー中に配置されてもよく、マイクロウェルプレートのウェルのそれぞれに含有されるシグナルは、例えばデジタルカメラまたはシンチレーションカウンターにより検出されてもよく、データはデータベースに送られる。ラップトップコンピュータのようなコンピュータ装置は、アッセイからの情報を回収し、結果を表示してもよい。本発明の細胞に基づくアッセイ、特に蛍光に基づくアッセイの結果を得るために、任意の既知のソフトウェアおよび/または画像処理技術が本発明により検討される。高処理の細胞に基づくスクリーニングからのデータおよび他のアッセイ関連データの入手、処理、および保存は当該技術において既知であり、それぞれここで言及されることにより完全に引用される、米国特許第5989835号、同第6631331号、同第6620591号、同第6633818号、および同第6416959号に記載されている。
【0061】
本発明はさらに、本発明のスクリーニング方法から生じるデータを測定、入手、検出、分析、処理、および保存するための任意の適切な将来発達する計測器を検討する。当業者は容易に、改良された蛍光リーダー、ロボット、生物情報学、ソフトウェア、およびアッセイ反応槽のように、高処理アッセイを絶えず発達させるであろう。本発明は、本発明を実施するのに適切な任意のそのような方法を検討する。
【0062】
本発明の方法を実施することにより、HIV gp120タンパク質は、CTLのような細胞傷害活性を有する免疫細胞のfugetaxisを起こすということがさらに発見される。特に、gp120はT細胞のような免疫細胞の双方向性の移動を誘発するということが示される。この点についてgp120の移動の役割はこれまで知られていない。以前gp120は、CD4+およびCD8+細胞について化学誘因性活性を有すると報告された。(Iyengar et al. 1999 J. Immunol 162:6263; Misse et al. 1999 Blood 93:2454。)
濃度に依存して、gp120は、免疫細胞の走化性(すなわちgp120に向かう免疫細胞の移動)、または免疫細胞のfugetaxis(すなわち、gp120から遠ざかる免疫細胞の移動)、または免疫細胞の化学運動性(すなわち、gp120に反応する無作為の移動)を刺激しうる。したがって、gp120は免疫細胞の走化性を刺激し、高濃度において、免疫細胞のfugetaxisを刺激する。
【0063】
したがって、本発明のある実施の形態において、gp120およびgp120の阻害剤を使用して、特に細胞傷害性T細胞のような免疫細胞の移動の刺激または抑制に関して、免疫応答を調節することができる。
【0064】
それゆえ、本発明は、不適切なまたは過度の免疫応答のような異常な免疫応答の抑制に有用である。したがって、異常な免疫応答を抑制する方法であって、gp120分子またはその機能等価物を、それを必要とする患者に異常な免疫応答の抑制に有効な量で投与する工程を含む方法が提供される。
【0065】
ここで用いたように、「抑制する」、「抑制された」または「抑制」という用語は、分子または細胞の特性または活性の減少あるいは完全な除去またはより低いレベルへの応答を称する。
【0066】
ここで用いたように、「調節する」、「調節された」または「調節」という用語は、負のまたは正の様式の分子または細胞の特性または活性の調節を称する。
【0067】
ここで用いたように、「患者」という用語は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物を含む。すべての実施の形態においてヒトの患者が好ましい。
【0068】
「gp120分子」は、走化性、fugetaxis、または両方を刺激する能力を保有するgp120核酸またはgp120ポリペプチドまたはその断片である。gp120分子は、gp120 DNA配列の縮重および非縮重変異体をコードするまたはそれによりコードされる分子を含む。好ましくは、gp120分子またはその機能等価物は、抗原性ではない。gp120の機能等価物には、gp120と配列類似性(例えば相同性または同一性)を共有し、走化性、fugetaxisまたは両方を刺激する分子が含まれる。好ましくは、配列類似性は、少なくとも75%のアミノ酸配列相同性、およびより好ましくは80%、85%、90%または95%のアミノ酸配列相同性を有する。
【0069】
異常な免疫応答は、自己免疫疾患、免疫過敏症、アレルギー、喘息、移植片対宿主疾患(GVHD)、および炎症からなる群より選択されてもよい。重要な実施の形態において、異常な免疫応答は、正常なレベルまで減少されるまたは完全に除去される。gp120分子を使用して免疫系を抗原に寛容化でき、別な方法では免疫応答が増加する。
【0070】
異常な免疫応答は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、好中球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞等を含むがこれに限定されない様々の免疫細胞の走化性またはfugetaxisを含んでもよい。ある実施例において、異常な免疫応答は、Tリンパ球の浸潤を含む。この後者の実施例において、gp120分子はTリンパ球の浸潤を抑制する。
【0071】
異常な免疫応答のある実施例は、自己免疫疾患である。ここで用いたように、「自己免疫疾患」とは、患者の免疫系が自分自身の器官または組織を攻撃する場合に生じ、ブドウ膜炎、インスリン依存性糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、リウマチ熱、クローン病、ギャン-バレー症候群、乾癬、甲状腺炎、グレイブ病、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ様関節炎、自己免疫性脳脊髄炎、ハシモト甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、天疱瘡(例えば尋常性天疱瘡)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、多発性筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎(例えば、半月体形成性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、水泡性類天疱瘡、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性、および自己免疫性糖尿病のような疾患により例示される組織の破壊と関連する臨床症状が生じるが、これに限定されない。
【0072】
自己免疫疾患は、遺伝子的疾病素質のみにより、ある外因性物質(例えばウィルス、細菌、化学物質等)により、または両方により起こりうる。自己免疫のいくつかの形態は、神経組織または眼のレンズのような通常リンパ球にさらされない領域への損傷の結果として生じる。これらの領域における組織がリンパ球にさらされるようになると、その表面タンパク質は抗原として作用し、抗体の産生および細胞の免疫応答を誘発し、次にこれは組織を破壊し始める。他の自己免疫疾患は、患者自身の組織と抗原的に類似する、すなわち交叉反応しうる抗原に患者がさらされた後に生じる。例えばリウマチ熱において、リウマチ熱を引き起こす連鎖球菌の細菌の抗原は、ヒトの心臓の一部と交叉反応しうる。抗体は、細菌の抗原と心筋の抗原とを区別できず、結果としてそれらの抗原のいずれかを有する細胞が破壊されうる。
【0073】
例えば、他の自己免疫疾患であるインスリン依存性糖尿病(ランゲルハンス島のインスリン産生ベータ細胞の破壊を含む)、多発性硬化症(神経系の伝導繊維の破壊を含む)およびリウマチ様関節炎(関節裏張り(joint-lining)組織)は、大部分が細胞性の自己免疫応答の結果であるとして特徴付けられ、主にT細胞の作用によるものであると考えられる(Sinha et al., Science, 1990, 248:1380参照)。重症筋無力症および全身性紅斑性狼瘡のようなさらに別のものは、主に体液性自己免疫応答の結果であるとして特徴付けられる。ある実施の形態において、患者は、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、またはブドウ膜炎を有する。
【0074】
異常な免疫応答の他の実施例は、移植片対宿主疾患である。
【0075】
本発明は、患者の炎症の部位への免疫細胞の移動を抑制する方法を提供する。ここで用いたように「炎症」とは、外来性(非自己)抗原により、および/または疾病または組織の破壊により誘発される局部的な防御反応であり、これは外来性抗原、有害物質、および/または損傷した組織を破壊し、弱め、または隔離する作用をする。炎症は、ウィルス、細菌、外傷、化学物質、熱、低温、または任意の他の有害な刺激により組織が損傷された場合に起こる。そのような例において、免疫系の標準的な武器(T細胞、B細胞、マクロファージ)が、細胞および炎症反応の媒介物である可溶性の産物(好中球、好酸球、好塩基球、キニンおよび凝固系、および補体カスケード)と接する。
【0076】
炎症は通常、(i)抗原(損傷)局在の部位における白血球の移動;(ii)BおよびTリンパ球、マクロファージおよび別の補体活性化経路により媒介される「外来性」および他の(壊死/損傷した組織)抗原の特異的および非特異的認識;(iii)補体成分、リンフォカインおよびモノカイン、キニン、アラキドン酸代謝産物、およびマスト細胞/好塩基球産物による特異的および非特異的エフェクター細胞の補充との炎症反応の増幅;および(iv)食作用による抗原粒子(損傷した組織)の完全な除去を伴う抗原破壊におけるマクロファージ、好中球およびリンパ球の関与により特徴付けられる。
【0077】
さらなる実施の形態において、炎症は「非自己抗原」(壊死自己物質の抗原を含む)に対する免疫応答により起こり、本発明による治療を必要とする患者は移植者であり、アテローム性動脈硬化症を有し、心筋梗塞症および/または虚血性脳卒中を患い、膿瘍を有し、および/または心筋炎を有する。これは、細胞(または器官)移植後、または心筋梗塞または虚血性脳卒中後、移植された細胞(器官)からのある抗原、または心臓または脳からの壊死細胞は、免疫リンパ球および/または自己抗体の産生を刺激し、その後炎症/拒絶(移植の場合)に関与し、または心臓または脳の標的細胞を攻撃して炎症を起こし状態を一層悪化させるからである。(Johnson et al., Sem. Nuc. Med. 1989, 19:238; Leinonen et al., Microbiol. Path., 1990, 9:67; Montalban et al., Stroke, 22:750)。
【0078】
炎症状態は、自己免疫疾患、感染、リウマチ様関節炎、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性炎症性疾患、喘息、セメント質増殖症、接触性皮膚炎、ラテックス皮膚炎、炎症性腸疾患、過敏症、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主疾患、および多発性硬化症を含むがこれに限定されない。
【0079】
「アレルギー」とは、物質(アレルゲン)への後天性過敏症を称する。「アレルギーを有する患者」とは、アレルゲンに反応してアレルギー性反応を有する患者である。
【0080】
アレルギー反応は広く研究され、関連する基本的な免疫機構がよく知られている。ヒトにおけるアレルギー状態または疾患は、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、結膜炎、気管支またはアレルギー喘息、蕁麻疹(喉頭炎)および食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;過敏症;薬物アレルギー;血管性水腫;およびアレルギー性結膜炎を含むがこれに限定されない。イヌにおけるアレルギー疾患は、季節性皮膚炎;通年性皮膚炎;鼻炎;結膜炎;アレルギー喘息;および薬物反応を含むがこれに限定されない。ネコにおけるアレルギー疾患は、皮膚炎および呼吸器疾患;および食物アレルギーを含むがこれに限定されない。ウマにおけるアレルギー疾患は、「慢性肺気腫」のような呼吸器疾患および皮膚炎を含むがこれに限定されない。ヒト以外の霊長類におけるアレルギー疾患は、アレルギー喘息およびアレルギー性皮膚炎を含むがこれに限定されない。
【0081】
アレルギー反応を起こす分子についての総称は、アレルゲンである。多くの種類のアレルゲンが存在する。アレルギー反応は、IgE型の組織感作免疫グロブリンが外来性アレルゲンと反応する際に起こる。IgE抗体は、マスト細胞および/または好塩基球に結合し、これらの分化した細胞は、抗体分子の端を架橋するアレルゲンにより刺激されるとアレルギー反応の化学的媒介物質を放出する。ヒスタミン、血小板活性化因子、アラキドン酸代謝物、およびセロトニンが、ヒトにおけるアレルギー反応の好ましい媒介物質である。ヒスタミンおよび他の血管作用性アミンは通常、マスト細胞および好塩基性白血球に貯蔵される。マスト細胞は動物組織中に分散され、好塩基球は脈管系内を循環する。これらの細胞は、IgE結合を含む分化した連続する事象が起こってその放出を誘発するまで、細胞内でヒスタミンを製造し貯蔵する。
【0082】
IgEが抗原と反応する体内の位置に依存して、アレルギー反応の症状は変化する。反応が気道上皮に沿って起こる場合、症状はくしゃみ、咳および喘息性反応である。食物アレルギーの場合のように消化管で相互作用が起こる場合、腹痛および下痢が一般的である。例えばハチに刺された後の全身性の反応は、危険であり、しばしば命にかかわる。
【0083】
IV型アレルギー反応としても知られる遅延型過敏症は、抗原がアレルギー患者に侵入してから炎症または免疫反応が現れるまで少なくとも12時間の遅延期間により特徴付けられるアレルギー反応である。アレルギー状態における個々のリンパ球(感作Tリンパ球)は抗原と反応するが、この抗原はTリンパ球が、炎症媒介物質として作用するリンフォカイン(マクロファージ移動抑制因子(MIF)、マクロファージ活性化因子(MAF)、マイトジェン因子(MF)、皮膚反応性因子(SRF)、走化性因子、新血管形成促進因子等)を放出するのを誘発し、これらのリンフォカインの生物学的活性は、局所発現リンパ球および他の炎症性免疫細胞の直接および間接的効果とともにIV型アレルギー反応を引き起こす。遅延型アレルギー反応には、ツベルクリン型反応、同種移植片拒絶反応、細胞依存型防御反応、接触性皮膚炎超過敏反応等が含まれ、これらはステロイド物質により最も強く抑制されることが知られている。その結果、ステロイド物質は、遅延型アレルギー反応により起こる疾患に対して有効である。しかしながら、現在使用されている濃度でステロイド物質を長期間使用すると、ステロイド依存として知られる深刻な副作用が生じる。本発明の方法は、より低くより少ない投与量を提供することにより、これらの問題を解決する。
【0084】
即時型の免疫過敏症(またはアナフィラキシー反応)は、非常に速く、すなわち患者が原因となるアレルゲンにさらされてから数秒または数分以内に発生するアレルギー反応の形態であり、Bリンパ球により産生されるIgE抗体により媒介される。非アレルギー性の患者においては、臨床関連性のIgE抗体は存在しない;しかし、アレルギー疾患を患うヒトにおいて、IgE抗体は、皮膚、リンパ器官、眼、鼻および口の膜組織、および気道および腸において豊富なマスト細胞を感作することにより即時型の過敏症を媒介する。
【0085】
マスト細胞は、IgEのための表面レセプターを有し、アレルギーを患う患者においてIgE抗体はそれらに結合するようになる。上記に簡単に記載されるように、結合したIgEがその後適当なアレルゲンにより接触されると、マスト細胞は脱顆粒を起こし、ヒスタミンのような生物活性媒介物質と称される様々の物質を周囲の組織中に放出する。即時型の過敏症の典型である臨床症状の原因は、これらの物質の生物学的活性である;すなわち、気道または腸内の平滑筋の収縮、微小血管の膨張および水および血漿タンパク質への透過性の増加、粘度が高く粘り気のある粘液の分泌、およびそう痒または痛みを引き起こす皮膚における、赤み、腫れおよび神経週末の刺激
多くのアレルギーは、害のないアレルゲンに対するIgE抗体の産生により起こる。Th1反応と関連する抗体の種類は通常、高い中和およびオプソニン作用能力を有するので、より防御的である。Th2反応は主に抗体によって生じ、これらは感染に対してより小さい防御効果を有し、いくつかのTh2アイソタイプ(例えばIgE)はアレルギーと関連する。強く極性化したTh1およびTh2反応は、防御において異なる役割を果たすだけでなく、異なる免疫病理学的反応を促進しうる。Th1型反応は、実験的な自己免疫性のブドウ膜網膜炎(Dubey et al, 1991, Eur Cytokine Network 2:147-152)、実験的な自己免疫性の脳炎(Beraud et al, 1991, Cell Immunol 133:379-389)およびインスリン依存性糖尿病(Hahn et al, 1987, Eur. J. Immunol. 18:2037-2042)、接触性皮膚炎(Kapsenberg et al, Immunol Today 12:392-395)、および慢性炎症疾患のような複雑な器官特異的自己免疫である。対照的にTh2型反応は、アレルギー喘息(Walker et al, 1992, Am Rev Resp Dis 148:109-115)およびアトピー性皮膚炎(van der Heijden et al, 1991, J Invest Derm 97:389-394)のようなアレルギー性アトピー疾患の誘発の原因であり、寄生虫(Finkelman et al, 1991, Immunoparasitol Today 12:A62-66)および森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)(Caceres-Dittmar et al, 1993, Clin Exp Immunol 91:500-505)のような組織居住原生動物による感染を悪化させると考えられ、高IgE症候群(Del Prete et al, 1989, J Clin Invest 84:1830-1835)およびオーメン症候群(Schandene et al, 1993, Eur J Immunol 23:56-60)のようなある原発性免疫不全に優先的に誘導され、HIV複製(Barker et al, 1995, Proc Soc Nat Acad Sci USA 92:11135-11139)を抑制する能力の減少と関連する。
【0086】
したがって、通常、アレルギー疾患は、Th2型免疫応答により媒介されるようである。Th2サイトカイン、特にIL-4およびIL-5は、喘息患者の気道中で高められる。これらのサイトカインは、IgEアイソタイプ転換、好酸球走化性および活性化、およびマスト細胞成長を含む喘息性炎症反応の重要な態様を促進する。Th1サイトカイン、特にIFN-gおよびIL-12は、Th2クローンの形成およびTh2サイトカインの産生を抑制しうる。
【0087】
ここで用いたように、「アレルゲン」とは、IgEの産生により特徴付けられる免疫応答を誘発することのできる分子である。したがって、本発明との関連で、アレルゲンという用語は、IgE抗体により媒介されるアレルギー反応を誘発しうる特定の種類の抗原を意味する。本発明の方法および製剤は、そのようなアレルゲンおよびアレルゲンの断片またはアレルゲンとして作用するハプテンの様々の種類にまで及ぶ。アレルゲンは、以下のものを含むがこれに限定されない;環境エアロアレルゲン;ブタクサのような草木の花粉/枯草熱;雑草花粉アレルゲン;花粉アレルゲン;ジョンソン草(Johnson grass);木花粉アレルゲン;ライグラス;イエダニアレルゲン;貯蔵庫(Strage)ダニアレルゲン;ニホンシーダー(Japanese cedar)花粉/枯草熱かび(Mold)胞子アレルゲン;動物アレルゲン(ネコ、イヌ、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ラット、マウス);食物アレルゲン(例えば、甲殻類;ピーナッツのようなナッツ;柑橘類の果実);昆虫アレルゲン(上記のダニ以外);毒(膜翅目、スズメバチ、ミツバチ、ハリアリ);ゴキブリ、ノミ、蚊等からの他の環境の昆虫アレルゲン;連鎖球菌抗原のような細菌;回虫属抗原のような寄生虫;ウィルス抗原;真菌胞子;薬物アレルゲン;抗生物質;ペニシリンおよび関連化合物;他の抗生物質;ホルモン(インスリン)、酵素(ストレプトキナーゼ)のような全タンパク質;不完全な抗原またはハプテンとして作用できるすべての薬物およびそれらの代謝産物;ハプテンとして作用し免疫系を刺激できる工業用化学薬品および代謝産物(例として、酸無水物(例えばトリメリット無水物)およびイソシアネート(例えばトルエンジイソシアネート));小麦粉(すなわちパン屋の喘息)、トウゴマの実、コーヒー豆、および上述の工業用化学薬品のような職業性アレルゲン;ノミアレルゲン;およびヒト以外の動物中のヒトタンパク質。
【0088】
アレルゲンは、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖類複合物、多糖および他の分子のペプチドおよび非ペプチド類似物(mimics)、小分子、脂質、糖脂質、および炭水化物を含むがこれに限定されない。しかしながら、タンパク質およびポリペプチドは通常炭水化物または脂肪よりも抗原性であるので、多くのアレルゲンは事実上タンパク質またはポリペプチドである。
【0089】
特定の天然の、動物のおよび植物のアレルゲンの実施例には、以下の属に特異的なタンパク質が含まれるがこれに限定されない:Canine(Canis familiaris);Dermatophagoides(例えばDermatophagoides farinae);Felis(Felis domesticus);Ambrosia(Ambrosia artemiisfolia);Lolium(例えばLolium perenneまたはLolium multiflorum);Cryptomeria(Cryptomeria japonica);Alternaria(Alternaria alternata);Alder;Alnus(Alnus gultinoasa);Betula(Betula verrucosa);Quercus(Quercus alba);Olea(Olea europa);Artemisia(Artemisia vulgaris);Plantago(例えばPlantago lanceolata);Parietaria(例えばParietaria officinalisまたはParietaria judaica);Blattella(例えばBlattella germanica);Apis(例えばApis multiflorum);Cupressus(例えばCupressus sempervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus macrocarpa);Juniperus(例えばJuniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus ashei);Thuya(例えばThuya orientalis);Chamaecyparis(例えばChamaecyparis obtusa);Periplaneta(例えばPeriplaneta americana);Agropiron(例えばAgropiron repens);Secale(例えばSecale cereale);Triticum(例えばTriticum aestivum);Dactylis(例えばDactylis glomerata);Festuca(例えばFestuca elatior);Poa(例えばPoa pratensisまたはPoa compressa);Avena(例えばAvena sativa);Holcus(例えばHolcus lanatus);ANthoxanthum(例えばAnthoxanthum odoratum);Arrhenatherum(例えばArrhenatherum elatius);Agrostis(例えばAgrostis alba);Phleum(例えばPhleum pratense);Phalaris(例えばPhalaris arundinacea);Paspalum(例えばPasplum notatum);Sorghum(例えばSorghum halepensis);およびBromus(例えばBromus inermis)。
【0090】
喘息は、気流通過障害の閉塞から生じる喘鳴、息切れ、および胸苦しさ、および咳の再発性症状の兆候を明らかにする慢性炎症性疾患である。喘息と関連する気道炎症は、気道上皮の剥離、基底膜下のコラーゲン沈着、水腫、マスト細胞活性化、好中球、好塩基球、およびリンパ球を含む炎症細胞の浸潤のような多くの生理的変化の観察により検出できる。気道炎症の結果として、喘息患者はしばしば、気道過敏症、気流減縮、呼吸器症状、および疾患慢性を経験する。気流減縮には、急性気管支収縮、気道水腫、粘液栓形成、および気道再構築が含まれ、しばしば気管支閉塞を起こすことを特徴とする。喘息のいくつかの場合において、基底膜部繊維症が起こり、肺機能に永続性の異常が生じうる。
【0091】
「喘息を有する患者」とは、炎症、気道狭窄および吸入物質に対する気道反応の増加により特徴付けられる呼吸器系の疾患を有する患者である。しかしながら、喘息はしばしば、アトピー性またはアレルギー性症状にのみ関連しない。ここで用いたように、「開始剤」とは、喘息を誘発する組成物または環境条件を称する。開始剤には、アレルゲン、低温、運動、ウィルス感染、SO2が含まれるがこれに限定されない。
【0092】
別の態様において、本発明は、反応低下の患者において喘息またはアレルギーを治療または予防する方法を提供する。ここで用いたように、反応低下の患者とは、以前に喘息またはアレルギーの治療または予防に向けられた処置に反応できなかった患者またはそのような処置に反応しない危険のある患者を称する。喘息またはアレルギーの治療または予防に向けられた処置は喘息/アレルギー薬でもよく、その場合反応低下の患者は喘息/アレルギー薬に対して反応が低下している患者である。過敏性の他の患者には、喘息/アレルギー薬に不応性の患者が含まれる。ここで用いたように、「不応性」という用語は、処置に抵抗力のあることまたは処置に従わないことを意味する。そのような患者は、喘息/アレルギー薬に決して反応しない患者であるか(すなわち、無反応者である患者)、あるいは、一度は喘息/アレルギー薬に反応するが、その時から薬に抵抗性となる患者でもよい。ある実施の形態において、患者は、薬のサブセットに抵抗性の患者である。薬のサブセットは、少なくとも1つの薬である。ある実施の形態において、サブセットとは、2,3,4,5,6,7,8,9または10の薬を称する。
【0093】
他の実施の形態において、反応低下の患者は、喘息またはアレルギーの治療または予防に向けられた処置に以前に反応したかしないかにかかわらず、年配の患者である。そのような処置に以前に反応していても、年配の患者は、この処置の将来の適用に反応しない危険があると考えられる。同様に、新生児の患者もまた、喘息またはアレルギーの治療または予防に向けられた処置に反応しない危険があると考えられる。
【0094】
ここで用いたように、「喘息/アレルギー薬」とは、症状を減少させ、喘息またはアレルギー反応を抑制する、またはアレルギーまたは喘息の反応の進行を予防する物質の組成物である。喘息およびアレルギーの治療のための様々の種類の薬が、ここで言及することによりその内容が完全に引用されるthe Guidelines For The Diagnosis and Management of Asthma, Expert Panel Report 2, NIH Publication No.97/4051, July 19, 1997に記載されている。NIH出版物に記載される薬の概要は、以下に示される。
【0095】
ほとんどの実施の形態において、喘息/アレルギー薬は、喘息およびアレルギーの両方の治療にある程度有用である。ある喘息/アレルギー薬は好ましくは、喘息を治療するためにgp120と組み合わせて使用される。これらは、喘息薬と称される。喘息薬には、PDE-4阻害剤、気管支拡張剤/ベータ-2作用薬、K+チャネル開口固定薬、VLA-4拮抗薬、ニューロキニン(neurokin)拮抗薬、TXA2合成阻害剤、キサンタニン(xanthanines)、アラキドン酸拮抗薬、5リポキシゲナーゼ阻害剤、トロンボキシンA2レセプター拮抗薬、トロンボキサンA2拮抗薬、5-リポックス(lipox)活性化タンパク質、およびプロテアーゼ阻害剤が含まれるがこれに限定されない。
【0096】
気管支拡張剤/ベータ-2作用薬は、気管支拡張または平滑筋弛緩を起こす化合物の一種である。気管支拡張剤/ベータ-2作用薬には、サルメテロール、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、D2522/フォルモテロール、フェノテロール、ビトルテロール、ピルブテロール(pirbuerol)メチルキサンチンおよびオルシプレナリンが含まれるがこれに限定されない。持続型β2作用薬および気管支拡張剤は、好炎症性治療に加えて症状の長期間の予防に使用される化合物である。それらは、アデニレートシクラーゼ活性化および気管支拡張の機能的拮抗効果を産生する環状AMPの増加の後に気管支拡張、または平滑筋弛緩を起こすことにより作用する。これらの化合物はまた、マスト細胞媒介物質の放出を抑制し、血管透過性を減少させ、粘膜毛様体クリアランスを増加する。持続型β2作用薬には、サルメテロールおよびアルブテロールが含まれる。これらの化合物は通常、コルチコステロイドと組み合わせて使用され、通常は任意の炎症治療なしでは使用されない。それらは、頻拍、骨格筋振動、低カリウム血症、および過剰摂取のQTc間隔の延長のような副作用と関連する。
【0097】
例えばテオフィリンを含むメチルキサンチンは、症状の長期間のコントロールおよび予防に使用されてきた。これらの化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害剤から生じる気管支拡張およびおそらくアデノシン拮抗効果を起こす。これらの化合物は、気管支粘膜中への好酸球浸潤をもたらし、上皮中のTリンパ球の数を減少させると考えられる。投与量に関連する急性毒性は、これらの種類の化合物について特に問題である。結果として、毒性および代謝クリアランスにおける個々の違いから生じる狭い治療範囲を明らかにするために、日常的な血清濃度を観察しなければならない。副作用には、頻拍、吐き気および嘔吐、頻脈性不整脈、中枢神経興奮、頭痛、発作、吐血、高血糖症および低カリウム血症が含まれる。短時間作用型β2作用薬/気管支拡張剤は、気道平滑筋を弛緩させ、気流を増加させる。これらの種類の化合物は、急性喘息系の治療に好ましい薬である。従来、短時間作用型β2作用薬は、全体的な喘息症状を改善するために定期的な基準で処方されていた。しかしながら、この種の薬を定期的に使用することにより喘息のコントロールおよび肺機能が大きく減少されるということが、後の報告により示された(Sears, et al. Lancet; 336:1391-6, 1990)。他の研究により、ある種類のβ2作用薬を定期的に使用することにより、4ヶ月間有害な効果が生じなかったが、明白な効果も生じなかったということが示された(Drazen, et al., N. Eng. J. Med.; 335:841-7, 1996)。これらの研究の結果、短時間作用型β2作用薬を日常的に使用することは通常薦められない。短時間作用型β2作用薬には、アルブテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、およびテルブタリンが含まれるがこれに限定されない。短時間作用型β2作用薬のマストレーション(mastration)と関連する副作用には、頻拍、骨格筋振動、低カリウム血症、乳酸の増加、頭痛、および高血糖症が含まれる。
【0098】
好ましくは他の喘息/アレルギー薬が、アレルギーを治療するためのgp120分子と組み合わせて使用される。これらは、アレルギー薬と称される。アレルギー薬には、抗ヒスタミン、ステロイド、およびプロスタグランジン誘導物質が含まれるがこれに限定されない。抗ヒスタミンは、マスト細胞または好塩基球により放出されるヒスタミンの影響を弱める化合物である。これらの化合物は、当該技術においてよく知られており、アレルギーの治療に通常使用される。抗ヒスタミンには、ロラチジン(loratidine)、セチリジン(cetirizine)、ブクリジン(buclizine)、セテリジン(ceterizine)類似体、フェキソフェナジン、テルフェナジン、デスロラタジン(desloratadine)、ノルアステミゾール(norastemizole)、エピナスチン、エバスチン(ebastine)、アステミゾール、レボカバスチン(levocabastine)アゼラスチン、トラニラスト、テルフェナジン、ミゾラスチン(mizolastine)、ベータタスチン(betatastine)、CS560、およびHSR609が含まれるがこれに限定されない。プロスタグランジン誘導物質は、プロスタグランジン活性を誘発する物質である。プロスタグランジンは、平滑筋弛緩を調節することにより作用する。プロスタグランジン誘導物質には、S-5751が含まれるがこれに限定されない。
【0099】
有用な喘息/アレルギー薬には、ステロイドおよび免疫調節物質も含まれる。
【0100】
ステロイドには、ベクロメタゾン、フルチカゾン、トリアムシノロン(tramcinolone)、ブデソニド、コルチコステロイドおよびブデソニドが含まれるがこれに限定されない。
【0101】
コルチコステロイドは、症状の発生の予防、および開始剤から生じる炎症を抑圧、調節、および軽減するために長期間使用される。あるコルチコステロイドは、吸入により投与してもよく、他のコルチコステロイドは、全身に投与してもよい。吸入されるコルチコステロイドは、遅発型反応アレルゲンをブロックし気道過敏症を減少させることにより、抗炎症作用を有する。これらの薬はまた、サイトカイン産生、接着タンパク質活性化、および炎症細胞移動および活性化を抑制する。
【0102】
コルチコステロイドには、二プロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、プロピオネート、およびトリアムシノロンアセトニド(triamcinoone acetonide)が含まれるがこれに限定されない。デキサメタゾンは抗炎症作用を有するコルチコステロイドであるが、非常によく吸収され、有効量で長期間の抑制副作用を有するので、通常は吸入形態で喘息/アレルギーの治療に使用されない。しかしながら、デキサメタゾンは、gp120分子と組み合わせて投与された場合副作用を減少させるために低投与量で投与することができるので、本発明により喘息/アレルギーの治療に使用できる。コルチコステロイドに関連する副作用には、咳、発音障害、口内がこう瘡(カンジダ症)、およびより多い投与量で、副腎抑制、骨粗鬆症、成長抑制、皮膚薄化(skin thinning)および打撲容易(easy bruising)のような全身的な効果が含まれるがこれに限定されない。(Barnes & Peterson, Am. Rev. Respir. Dis.; 153:1739-48, 1996)。
【0103】
全身性のコルチコステロイドには、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびプレドニゾンが含まれるがこれに限定されない。コルチコステロイドは通常、進行を予防し、炎症を軽減しおよび回復を加速するために、深刻な悪化を抑えるために使用される。これらの抗炎症性化合物には、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびプレドニゾンが含まれるがこれに限定されない。コルチコステロイドは、グルコース代謝における可逆異常、食欲の増加、体液鬱滞、体重増加、気分の変容、高血圧、消化性潰瘍、および例外的に大腿部の無菌性壊死と関連する。これらの化合物は、不完全にコントロールされた持続性の喘息における炎症反応の短期間の(3-10日間)予防に有用である。これらはまた、炎症を抑制しコントロールし実質的に軽減するために、深刻な持続性の喘息における症状の長期間の予防に有用である。全身性のコルチコステロイドに関連する副作用は、吸入されるコルチコステロイドに関連するものよりもさらに大きい。副作用には、例えば、短期間の使用に関連する、グルコース代謝における可逆異常、食欲の増加、体液鬱滞、体重増加、気分の変容、高血圧、消化性潰瘍および大腿部の無菌性壊死が含まれる。長期間の使用に関連する副作用には、副腎軸抑制(adrenal axis suppression)、成長抑制、皮膚薄化、高血圧、糖尿病、クッシング症候群、白内障、筋衰弱、およびまれな例において、免疫機能障害が含まれる。これらの種類の化合物は、最低の有効量で使用されるのを薦める(guidelines for the diagnosis and management of asthma; expert panel report to; NIH Publication No. 97-4051; 1997年7月)。吸入されたコルチコステロイドは、アレルゲンに対する遅発型の反応をブロックし、気道過敏症を減少させることにより作用すると考えられる。これらはまた、β2-レセプター下方調節を無効とし微小血管漏出を抑制すると考えられる。
【0104】
免疫調節物質には、抗炎症物質、ロイコトリエン拮抗薬、IL-4ムテイン、可溶性IL-4レセプター、免疫阻害剤(例えば寛容化するペプチドワクチン)、抗-IL-4抗体、IL-4拮抗薬、抗-IL-5抗体、可溶性IL-13レセプター-Fc融合タンパク質、抗-IL-9抗体、CCR3拮抗薬、CCR5拮抗薬、VLA-4阻害剤、およびIgEの下方調節物質からなる群が含まれるがこれに限定されない。
【0105】
ロイコトリエン修飾因子は、軽い持続性の喘息における症状の長期間のコントロールおよび予防にしばしば使用される。ロイコトリエン修飾因子は、LTD-4およびLTE-4レセプターについて選択的に競合することによりロイコトリエンレセプター拮抗薬として作用する。これらの化合物には、ザフィルルカストおよびジレウトン(zileuton)錠剤が含まれるがこれに限定されない。ジレウトン錠剤は、5-リポキシゲナーゼ阻害剤として作用する。これらの薬は、肝酵素の上昇、および場合により可逆性肝炎および高ビリルビン血症と関連してきた。ロイコトリエンは、気道平滑筋の収縮を引き起こすマスト細胞、好酸球、および好塩基球から放出される生化学的媒介物質であり、血管透過性、粘膜分泌を増加させ、喘息を有する患者の気道中の炎症細胞を活性化する。
【0106】
他の免疫調節物質には、免疫調節特性を有することが示されてきた神経ペプチドが含まれる。機能研究により、例えば物質Pは、特定のレセプターにより媒介される機構によってリンパ球の作用に影響を与えうることが示された。物質Pはまた、粘膜マスト細胞からのアラキドン酸由来媒介物質の産生を刺激することにより、明確な即時型過敏反応を調節することが示された。J. McGillies, et al., Substance P and Immunoregulation, Fed. Proc. 46:196-9(1987)。物質Pは、Von Euler and Gaddum. An unidentified depressor substance in certain tissue extracts, J. Physiol. (London) 72:74-87(1931)により1931年に最初に同定された神経ペプチドである。そのアミノ酸配列である、Arg-Pro-Lys-Pro-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH.dub.2(配列Id.No.1)は、Chang et al. in 1971. Amino acid sequence P, Nature (London) New Biol. 232:86-87(1971)により報告された。物質Pの断片の免疫調節活性は、Siemion, et al. Immunoregulatory Activity of Substance P Fragments, Molec. Immunol. 27:887-890(1990)により研究されている。
【0107】
別の種類の化合物は、IgEの下方調節物質である。これらの化合物には、IgEレセプターに結合する能力を有し、それにより抗原特異的IgEの結合を防止するペプチドまたは他の分子が含まれる。IgEの別の種類の下方調節物質は、ヒトIgE分子のIgEレセプター結合領域に対して方向付けられたモノクローナル抗体である。したがって、IgEの下方調節物質の一つの種類は、抗-IgE抗体または抗体断片である。抗-IgE抗体は、Genentechにより開発されている。当業者は、同じ機能を有する結合ペプチドの機能的活性抗体断片を調製することができる。他の種類のIgE下方調節物質は、細胞表面におけるIgE抗体のFcレセプターへの結合をブロックし、IgEがすでに結合している結合部位からIgEを移動させることができるポリペプチドである。
【0108】
IgEの下方調節物質に関連する1つの問題は、多くの分子が、天然のIgE分子とそのレセプターとの間の強い相互作用に相当するレセプターへの結合強さを有しないということである。この強さを有する分子は、レセプターに不可逆的に結合する傾向がある。しかしながら、そのような物質は、共有的に結合でき体内の他の構造的に類似する分子をブロックしうるので、相対的に有毒である。本明細書において興味あることには、IgEレセプターのアルファ鎖は、より大きい遺伝子ファミリー、すなわち異なるIgG Fcレセプターのいくつかが含まれるファミリーに属する。これらのレセプターは、細菌感染に対する体の防御に絶対的に必要である。さらに、共有結合のために活性化された分子は、しばしば相対的に不安定であり、したがって、マスト細胞および好塩基球におけるIgEレセプターのプールの継続的な更新を完全にブロックできるように、おそらく一日に数回相対的に高い濃度で投与される必要がある。これらの種類の喘息/アレルギー薬は時に、長期コントロール薬または即効(quick-relief)薬として分類される。長期コントロール薬には、コルチコステロイド(グルココルチコイドとも称される)、メチルプレドニゾロンン、プレドニゾロン、プレドニゾン、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、長時間作用型β2作用薬、メチルキサンチン、およびロイコトリエン修飾因子のような化合物が含まれる。即効薬は、アレルギーまたは喘息の反応から生じる症状の素早い除去に有用である。即効薬には、短時間作用型のβ2作用薬、抗コリン作用薬および全身性コルチコステロイドが含まれる。
【0109】
クロモリンナトリウムおよびネドクロミルは、運動から生じる喘息症状またはアレルゲンから生じるアレルギー症状を主として防止するための長期コントロール薬として使用される。これらの化合物は、塩素イオンチャネル機能を妨げることによりアレルゲンへの早期および遅発反応をブロックすると考えられる。これらはまた、マスト細胞膜を安定化し、好酸球および上皮細胞からの媒介物質の活性化および放出を抑制する。最大限の利益を達成するためには、通常4-6週間の投与が必要である。
【0110】
抗コリン作用薬は通常、急性気管支痙攣の軽減に使用される。これらの化合物は、ムスカリン性コリン作用性レセプターの競合的阻害により作用すると考えられる。抗コリン作用薬には、臭化イプラトロピウムが含まれるがこれに限定されない。これらの化合物は、コリン作用薬に媒介された気管支痙攣のみを無効化し、抗原に対する任意の反応を修飾しない。副作用には、口および気道分泌の渇き、ある個人における喘鳴の増加、眼に噴霧された場合には視力障害が含まれる。
【0111】
標準的な喘息/アレルギー薬に加えて、喘息/アレルギーを治療するための他の方法が、単独でまたは既成の薬と組み合わせて使用されている。アレルギーを軽減する1つの好ましい、しかししばしば不可能な方法は、アレルゲンまたは開始剤の回避である。アレルギー疾患を治療するための現在使用されている別の方法には、アレルゲンに対する耐性を誘発するためおよびさらなるアレルギー反応を予防するためのアレルゲンの増加量の注射が含まれる。
【0112】
アレルゲン注射治療(アレルゲン免疫療法)は、アレルギー性鼻炎の重症度を減少させることが知られる。この治療は、異なる形態の抗体、すなわち「遮断抗体」と称される防御抗体の産生を含むと理論付けられている。Cooke, RA et al., Serologic Evidence of Immunity with Coexisting Sensitization in a Type of Human Allergy, Exp. Med. 62:733(1935)。アレルギーの治療のための他の試みには、アレルゲンを化学的に修飾し、患者中で免疫応答を起こす能力は変化させずに、アレルギー反応を起こす能力を実質的に変化させるということが含まれる。
【0113】
異常な反応は、gp120分子を投与することにより抑制される。gp120分子は、gp41分子とともに、HIVのenv遺伝子によりコードされる。gp120の典型的なヌクレオチドおよびアミノ酸配列が図7に示される。他の配列は当業者に知られており、本発明において交換して使用することができる。gp120は、Austral Biologicalsを含む多くの供給源から市販されている。組換えgp120はまた、AIDS ResearchおよびReference Reagent Programから入手できる。
【0114】
gp120分子は、可溶性形態で使用することができ、細胞結合形態で使用してもよい。可溶性gp120は、細胞結合していないgp120ポリペプチドである。これは、検出可能な標識のような造影剤の治療剤のような他の物質に結合されてもよい。gp120の細胞結合形態は、細胞により発現されるまたは細胞に結合したgp120ポリペプチドである。細胞結合形態として使用される場合、gp120核酸は、適切な転写コントロール因子の下で関心のある細胞中にトランスフェクションされてもよく、これにより細胞の表面上での発現が可能となる。当業者は、細胞中の核酸のトランスフェクションおよび発現の方法に精通しているであろう。gp120の細胞結合形態は、移植の場面で使用されてもよく、移植片対宿主疾患(GVHD)の可能性を減少させるために、移植される細胞または組織は移植前に患者にトランスフェクションされてもよい。この後者の実施の形態はまた、幹細胞移植で使用してもよい。同様に、gp120分子を使用して抗原に対する免疫系を寛容化してもよく、そうでなければ免疫応答は高まる。
【0115】
gp120分子は、トランスフェクションまたは当業者に知られる他の核酸供給技術(エレクトロポレーションおよびウィルス感染を含む)により細胞に投与されてもよい。gp120核酸は通常、ベクターとの関連で提供される。ここで用いたように、「ベクター」とは、異なる遺伝子環境間の運搬または宿主細胞中での発現のために制限およびライゲーションにより所望の配列が挿入されうる多くの核酸の任意のものでもよい。RNAベクターも利用できるが、ベクターは通常DNAから構成される。ベクターは、プラスミド、ファージミドおよびウィルスゲノムを含むがこれに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞中で複製できるものであり、新しい組換えベクターが宿主細胞中で複製する能力を保持するように、特定可能にベクターが切断され所望のDNA配列がライゲーションされる1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によりさらに特徴付けられる。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、プラスミドが宿主の細菌内でコピー数で増加するので何度も起こるか、または宿主が有糸分裂により複製する前に宿主ごとに一度だけ起こってもよい。ファージの場合、複製は、溶菌段階中に積極的に起こってもよく、また溶原段階中に消極的に起こってもよい。発現ベクターは、制限およびライゲーションにより所望のDNA配列が挿入され、調節配列に動作可能に結合されてRNA転写物として発現されてもよい。ベクターはさらに、ベクターとともに形質転換またはトランスフェクションされたまたはされていない細胞を同定するための使用に適切な1つ以上のマーカー配列を含有してもよい。マーカーには、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性を増加または減少させるタンパク質をコードする遺伝子、当該技術において知られる標準アッセイにより活性が検出できる酵素をコードする遺伝子(例えばβ-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および形質転換されたまたはトランスフェクションされた細胞の表現型、宿主、コロニーまたはプラークに視覚的に影響を与える遺伝子(例えば緑色蛍光タンパク質)が含まれる。好ましいベクターは、自律増殖および動作可能に結合されるDNA断片中に存在する構造的遺伝子産物の発現が可能なものである。
【0116】
ここで用いたように、コード配列および調節配列は、コード配列の発現または転写を調節配列の影響またはコントロール下に配置するような様式で共有結合された場合に、「動作可能に」結合されたと称される。コード配列が機能タンパク質に翻訳されることが所望の場合、5’調節配列におけるプロモーターの導入によりコード配列が転写される場合、および2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入を生じない、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を方向付けることを妨げない、または(3)対応RNA転写物がタンパク質に翻訳されることを妨げない場合に、2つのDNA配列は動作可能に結合されたと称される。したがって、プロモーター領域がDNA配列の転写を達成することができ、生じた転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳される場合に、プロモーター領域はコード配列に動作可能に結合されている。
【0117】
遺伝子発現に必要とされる調節配列の正確な性質は、種または細胞の種類で変わりうるが、通常は、必要なものとして、それぞれ転写および翻訳の開始と関連する5’非転写および5’非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャップ配列、CAAT配列等を含む。特に、そのような5’非転写調節配列は、動作可能に結合された遺伝子の転写コントロールのためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、所望に応じてエンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含む。本発明のベクターは、必要に応じて5’リーダーまたはシグナル配列を含んでもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内である。
【0118】
発現に必要なエレメントをすべて含有する発現ベクターは、市販されており、当業者に知られている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989参照。PARGポリペプチドまたは断片またはそれらの変異体をコードする外来性DNA(RNA)の細胞への導入により、細胞は遺伝子操作される。外来性DNA(RNA)は、転写エレメントの動作可能なコントロール下に配置され、宿主細胞中での外来性DNAの発現を可能とする。
【0119】
哺乳類細胞におけるmRNA発現のための好ましい系は、例えば、G418耐性(安定にトランスフェクションされた細胞株の選択を容易にする)を与える遺伝子のような選択可能なマーカーを含有するpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CAから入手できる)およびヒトサイトメガロウィルス(CMV)エンハンサー-プロモーター配列である。さらに、霊長類またはイヌ科細胞株における発現に適切なのは、複製のエプスタインバーウィルス(EBV)起源を含有し、多コピー染色体外エレメントの維持を容易にするpCEP4ベクター(Invitrogen)である。別の発現ベクターは、生体外で転写を有効に刺激するポリペプチド伸長因子1αのプロモーターを含有するpEF-BOSプラスミドである。このプラスミドはMishizuma and Nagata(Nuc. Acids Res. 18:5322, 1990)に記載され、トランスフェクション実験におけるその使用が、例えばDemoulin(Mol. Cell. Biol. 16:4710-4716, 1996)に開示されている。さらに別の好ましい発現ベクターは、E1およびE3タンパク質が欠けている、Stratford-Perricaudetに記載されるアデノウィルスである(J. Clin. Invest. 90:626-630, 1992)。P1Aに対する免疫化のためのマウスにおける皮内注射において、Adeno.P1A組換え体としてのアデノウィルスの使用がWarnier et al.に開示される(Int. J. Cancer, 67:303-310,1996)。
【0120】
本発明はある態様において、単離されたgp120タンパク質を使用する。ここで用いたように、ポリペプチドに関して、「単離された」とは、天然の環境から分離され、同定または使用を可能とするのに十分な量で存在することを意味する。タンパク質またはポリペプチドについて、単離されたとは、例えば、(i)発現クローニングにより選択的に産生されることまたは(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動により精製されることを意味する。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、実質的に純粋でもよいが、そうである必要はない。
【0121】
当業者によく知られる様々の方法を使用して、単離されたgp120タンパク質を得ることができる。ポリペプチドは、クロマトグラフィー法または免疫認識によりポリペプチドを天然に産生する細胞またはウィルスから精製されてもよい。あるいは、発現ベクターを細胞中に導入し、ポリペプチドを産生させてもよい。別の方法において、mRNA転写物を細胞中に微量注入するかまたは別の方法で導入し、コード化ポリペプチドを産生させてもよい。網赤血球溶解物系のような無細胞抽出物を使用してポリペプチドを産生してもよい。当業者は、gp120ポリペプチドを単離するための既知の方法を容易に理解することができる。これらには、免疫クロマトグラフィー、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび免疫アフィニティークロマトグラフィーが含まれるがこれに限定されない。
【0122】
「実質的に純粋」という用語は、核酸またはタンパク質/ペプチドが、天然または生体外の系で見られる他の物質を、意図される使用に実用的および適切な程度まで、本質的に有しないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、当該技術においてよく知られる技術により産生してもよい。例として、単離されたタンパク質は医薬品において薬学的に許容できるキャリアと混合して使用されるので、タンパク質は、医薬品の重量の小さい割合のみ構成する。それにもかかわらずタンパク質は、生物系において関連する多くの物質から分離されるという点で単離される、すなわち特定の他のタンパク質から単離される。
【0123】
本発明は、全タンパク質、部分的タンパク質(例えばドメイン)およびペプチド断片(例えばgp120のfugetaxis誘発ペプチドまたは走化性誘発ペプチド)を含む単離されたポリペプチドの使用を含む。ポリペプチドの断片は好ましくは、ポリペプチドの明白な機能、この場合走化性、fugetaxis、または両方を刺激する能力を保持する断片である。そのようなポリペプチドは、例えば、単独でまたは抗体を産生するための融合タンパク質として、gp120を結合する免疫調節物質のためのスクリーニング化合物の標的として、イムノアッセイまたは診断アッセイの成分としてまたは治療剤として有用である。gp120ポリペプチドは、組織、細胞、またはウィルスホモジネートを含む生物学的サンプルから単離してもよく、また、発現系に適切な発現ベクターを構成し、発現ベクターを発現系に導入し、組換え発現タンパク質を単離することにより、様々の真核および原核発現系において組換え発現してもよい。上記のgp120のfugetaxis誘発ペプチドまたは走化性誘発ペプチドのようなペプチドを含む短いポリペプチドは、ペプチド合成の既知の方法を使用して化学的に合成できる。
【0124】
本発明はまた、上記のようにgp120ポリペプチドの変異体を使用する。ここで用いたように、gp120ポリペプチドの「変異体」とは、gp120ポリペプチドの本来のアミノ酸配列に1つ以上の修飾を含有するポリペプチドである。gp120ポリペプチドに、gp120ポリペプチド変異体を産生する修飾をし、以下を行ってもよい;1)gp120ポリペプチドの活性(すなわちHIVにより結合される能力)を減少または除去する;2)発現系におけるタンパク質安定性またはタンパク質-タンパク質結合の安定性のような、gp120ポリペプチドの特性を増強する;または3)検出可能な成分のような新しい活性または特性をgp120ポリペプチドに提供する(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)融合)。gp120ポリペプチドへの修飾は、gp120ポリペプチドをコードする核酸に行ってもよく、欠失、点突然変異、切断、アミノ酸置換およびアミノ酸または非アミノ酸成分の付加を含んでもよい。あるいは、開裂、リンカー分子の付加、ビオチンまたはGFPのような検出可能な成分の付加、脂肪酸の付加等のように、修飾はポリペプチドに直接行ってもよい。修飾はまた、gp120アミノ酸配列のすべてまたは一部を有する融合タンパク質を包含する。
【0125】
当業者は、保存的なアミノ酸置換をgp120ポリペプチドにおいて行い、該ポリペプチドの機能等価変異体、すなわちgp120ポリペプチドの機能を保有する変異体を提供してもよいことを理解するであろう。ここで用いたように、「保存的なアミノ酸置換」とは、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷またはサイズ特性を変えないアミノ酸置換を称する。例えばMolecular Cloning: A Laboratory Mannual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989,またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkのように、そのような方法を編集する文献に見られる当業者に知られたポリペプチド配列を変化させる方法により、変異体を調製してもよい。gp120ポリペプチドの機能等価変異体の例には、ここに開示されるタンパク質のアミノ酸配列における保存的なアミノ酸置換が含まれる。アミノ酸の保存的な置換には、以下の群内でアミノ酸間で行われる置換が含まれる:(a)M,I,L,V;(b)F,Y,W;(c)K,R,H;(d)A,G;(e)S,T;(f)Q,N;および(g)E,D。
【0126】
gp120ポリペプチドの機能等価変異体を産生するためのgp120ポリペプチドアミノ酸配列における保存的なアミノ酸置換は通常、gp120ポリペプチドをコードする核酸の変化により行われる。そのような置換は、当業者に知られる様々の方法により行うことができる。例えば、アミノ酸置換は、PCR定方向突然変異、Kunkel(Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 82:488-492, 1985)の方法による然変異誘発により、またはgp120ポリペプチドをコードする遺伝子の化学的合成により行ってもよい。アミノ酸置換がgp120の小さいペプチド断片に行われる場合、置換は直接ペプチドを合成することにより行うことができる。gp120ポリペプチドの機能等価断片の活性は、変化したgp120ポリペプチドをコードする遺伝子を細菌または哺乳類発現ベクターにクローニングし、ベクターを適切な宿主細胞に導入し、変化したgp120ポリペプチドを発現させ、ここに開示されるgp120ポリペプチドの機能について検査することにより、テストすることができる。化学的に合成されたペプチドは、機能について、例えば抗血清認識関連抗原への結合について直接テストすることができる。
【0127】
好ましくは、gp120分子またはその機能等価物は、抗原性ではない。いくつかの文献には、gp120の免疫原性断片の産生が記載されており、したがって当業者は、本発明の実施の形態において、欠失、修飾または別の方法によりこれらの断片を避ける方法を理解するであろう。例えば、免疫原性gp120断片の記載についてここに言及することによりその内容が引用される、Kim et al., 2003, Virology 305:124-137および米国特許第6585979号参照。
【0128】
ここで用いたように、タンパク質およびポリペプチドという用語は、交換して使用される。
【0129】
本発明はまた、gp120阻害剤によりgp120をターゲティングする方法を提供する。gp120阻害剤は、gp120のfugetaxisまたは走化性活性を抑制し、それにより免疫細胞の移動を調節する物質である。gp120阻害剤は、リガンドとの相互作用を妨げることによりgp120に直接作用してもよく、またgp120の上流または下流に作用してもよい。
【0130】
走化性、fugetaxisまたは化学運動性の反応は、ここに記載されるように、または「リンパ球化学誘引物質に基づくアッセイおよび治療方法」と題される1996年5月7日に出願されたSpringer, TA, et al.の米国特許第6448054B1号および米国特許第5514555号により詳細に記載される移動アッセイにより測定できる。他の適切な方法が当業者に知られるであろうし、通常の実験装置だけを使用して行うことができる。
【0131】
特に、gp120阻害剤を使用して、抗原発現標的細胞の方向への抗原特異的免疫細胞の移動を強めることができる。抗原発現標的細胞の方向への抗原特異的免疫細胞の移動を強めるために有効な量で、それを必要とする患者にgp120阻害剤を投与する。
【0132】
本発明の他の態様は、抗原特異的免疫細胞および抗原発現細胞を含む。抗原特異的免疫細胞は、抗原を特異的に認識する免疫細胞である。抗原発現細胞は、抗原を発現する細胞である。好ましくは、抗原発現は細胞の表面でされる。
【0133】
ここで用いたように、抗原とは、免疫応答を誘発することのできる分子である。抗原には、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、多糖複合体、多糖類および他の分子のペプチドおよび非ペプチド類似物、小分子、脂肪、糖脂質、炭水化物、ウィルスおよびウィルス抽出物および寄生虫およびアレルゲンのような多細胞生物が含まれるがこれに限定されない。抗原という用語には、宿主の免疫系により外来性であると認識される任意の種類の分子が広く含まれる。抗原には、癌抗原、ウィルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、および寄生虫抗原のような微生物抗原、およびアレルゲンが含まれるがこれに限定されない。
【0134】
ここで用いたように、癌抗原とは、腫瘍または癌細胞表面に結合し、MHC分子との関連で抗原提示細胞の表面上で発現されると免疫応答を誘発することができる、ペプチドまたはタンパク質のような化合物である。例えばCohen, et al., 1994, Cancer Research, 54:1055に記載されるように癌細胞の粗製抽出物を調製することにより、抗原を部分的に精製することにより、組換え技術により、または既知の抗原の新規合成により、癌抗原を癌細胞から調製することができる。癌抗原には、組換え発現された抗原、腫瘍または癌の免疫原性部分または全部が含まれるがこれに限定されない。そのような抗原は、組換えによりまたは当該技術において知られる任意の他の方法により単離または調製できる。
【0135】
ここで用いたように、微生物抗原とは、微生物の抗原であり、ウィルス、細菌、寄生虫、および真菌を含むがこれに限定されない。そのような抗原には、完全な微生物並びに自然単離物およびそれらの断片または誘導体、および天然の微生物抗原と同一のまたは類似し微生物に特異的な免疫応答を誘発する合成化合物が含まれる。天然の微生物抗原に免疫応答(体液性および/または細胞性)を誘発する場合に、化合物は天延の微生物抗原と類似する。そのような抗原は、当該技術において通常使用されており、当業者によく知られている。
【0136】
ヒトにおいて発見されたウィルスの例には以下のものが含まれるがこれに限定されない:Retroviridae(例えば、HIV-1(HDTV-III、LAVEまたはHTLV-III/LAVとも称される)、またはHIV-III;およびHIV-LPのような他の単離物のようなヒト免疫不全ウィルス);Picornaviridae(例えば、ポリオウィルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウィルス、ヒトコクサッキーウィルス、ライノウィルス、エコーウィルス);Calciviridae(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);Toaviridae(例えば、馬脳炎ウィルス、風疹ウィルス);Flaviridae(例えば、デングウィルス、脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス);Coronoviridae(例えば、コロナウィルス);Rhabdoviridae(例えば、水疱性口内炎ウィルス、狂犬病ウィルス);Filoviridae(例えば、エボラウィルス);Paramyxoviridae(例えば、パラインフルエンザウィルス、ムンプスウィルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウィルス);Bungaviridae(例えば、ハンターンウィルス、ブンガウィルス、フレボウィルスおよびナイロ(Nairo)ウィルス);Arena viridae(出血熱ウィルス);Reoviridae(例えば、レオウィルス、オルビウィルスおよびロタウィルス);Birnaviridae;Hepadnaviridae(B型肝炎ウィルス);Parvovirida(パルボウィルス);Papovaviridae(乳頭腫ウィルス、ポリオーマウィルス);Adenoviridae(多くのアデノウィルス);Herpesviridae(単純疱疹ウィルス(HSV)1および2、水疱瘡ウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、ヘルペスウィルス);Poxyviridae(天然痘ウィルス、ワクシニアウィルス、ポックスウィルス);およびIridoviridae(例えば、アフリカブタコレラウィルス);および分類されていないウィルス(例えば、デルタ肝炎の物質(B型肝炎ウィルスの欠失サテライトであると考えられる)、非A型、非B型の肝炎の物質(クラス1=内部的に感染する;クラス2=経口的に感染する(すなわち、C型肝炎);ノー
ウォークおよび関連するウィルス、および宇宙ウィルス)。
【0137】
グラム陰性およびグラム陽性の細菌はどちらも、脊椎動物において抗原として作用する。そのようなグラム陽性菌には、パスツレラ種、ブドウ球菌種、および連鎖球菌種が含まれるがこれに限定されない。グラム陰性菌には、大腸菌、シュードモナス種、およびサルモネラ種が含まれるがこれに限定されない。感染性の細菌の具体的な例には、Helicobacter pyloris、Borelia burgdorferi、Legionella pneumophilia、Mycobacteria sps(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(グループA Streptococcus)、Streptococcus agalactiae(グループB Streptococcus)、Streptococcus(ビリダンスグループ)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(嫌気性種)、Streptococcus pneumoniae、病原性Campylobacter sp.、Enterococcus sp.、Haemophilus influenzae、Bacillus antracis、corynebacterium diphtheriae、corynebacterium sp.、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides sp.、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Treponema pallidium、Treponema pertenue、Leptospira、Rickettsia、およびActinomyces israelliが含まれるがこれに限定されない。
【0138】
真菌の例には、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicansが含まれる。
【0139】
他の感染性生物(すなわち原生生物)には、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、およびPlasmodium vivaxのようなPlasmodium spp.およびToxoplasma gondiiが含まれる。血液由来および/または組織寄生虫には、Plasmodium spp.、Babesia microti、Babesia divergens、Leishmania tropica、Leishmania spp.、Leishmania braziliensis、Leishmania donovani、Trypanosoma gambienseおよびTrypanosoma rhodesiense(アフリカ睡眠病)、Trypanosoma cruzi(シャーガス病)、およびToxoplasma gondiiが含まれる。
【0140】
他の医学的に適切な微生物は、ここに言及することによりそのすべての内容が引用される文献に広く記載されている。例えば、C.G.A. Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983参照。
【0141】
「非自己」抗原は、患者の体内に入る物質上の抗原であるか、または患者中に存在するが患者自身の構成要素と検出可能に異なるまたは外来性の抗原であるのに対し、「自己」抗原は、健康な患者中で、患者自身の構成要素と検出可能に異ならないまたは外来性でない抗原である。しかしながら、ある病気の状態を含むある条件下で、個人の免疫系が自分自身の構成要素を「非自己」と同定し、「自己抗原」に対して免疫応答を開始し、時に例えば侵入してくる細菌より多くの損傷または不快を引き起こし、しばしば患者に深刻な疾患を生じる。
【0142】
gp120阻害剤は、G-アルファ-i阻害剤、キナーゼ阻害剤、またはcAMP作用薬でもよいがこれに限定されない。G-アルファ-i阻害剤の例は、百日咳毒素またはその機能等価物である。キナーゼ阻害剤は、ワートマニンのようなホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-K)、またはゲニステインまたはハービマイシンのようなチロシンキナーゼ阻害剤でもよい。cAMP作用薬は、8-Br-cAMPまたはその機能等価物のような環状ヌクレオチドでよい。このリストは本発明を制限することを意図するものでなく、本発明はこれらの物質の他の種類を包含するということを理解すべきである。
【0143】
他のキナーゼ阻害剤には、JAKキナーゼ、Cdc7キナーゼ、KSS1キナーゼ、ERKキナーゼ、ab1キナーゼ、cdk2キナーゼ、cdc2キナーゼ、環状-GMP-依存性キナーゼ、Ca2+/カルモジュリン-依存性キナーゼ、ミオシン軽鎖キナーゼ、TGF-βレセプターキナーゼ、Mosキナーゼ、Rafキナーゼ、Lckキナーゼ、Srcキナーゼ、EGFレセプターキナーゼ、PDGFレセプターキナーゼ、Wee1キナーゼ、チロシンキナーゼ、環状AMP-依存性キナーゼ、タンパク質キナーゼC、アデノシンキナーゼの阻害剤、並びに他のキナーゼ阻害剤が含まれるがこれに限定されない。キナーゼ阻害剤の具体例には、STI571(GleevecTM)、N-(トリフルオロメチルフェニル)-5-メチルイソキサゾール-4-カルボキシアミド、3-[(2,4-ジメチルピロール-5-yl)メチリデニル]インドリン-2-one、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン、4-(3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-bis(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-10-(ヒドロキシメチル)-10-ヒドロキシ-9-メチル-9,12-エポキシ-1H-ジインドロ[1,2,3-fg:3’,2’,1’-kl]ピロロ[3,4-i][1,6]ベンゾジアゾシン-1-one、SH268、ゲニステイン、STI157、CEP2563、4-(3-クロロフェニルアミノ)-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンメタンスルホネート、4-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン、4-(4’-ヒドロキシフェニル)アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N-4-クロロフェニル-4-(4-ピリジルメチル)-1-フタラジンアミン、EMD121974、H7、スタウロスポリン、SP-203580、PD98059、ゲニステインのようなイソフラボン、CGP41251、フラボピリドール、p21、cip1、オロモウシン(olomoucine)、p27kip1、スタウロスポリン、MLCK阻害剤、ヨードツベルシジン(iodotubercidin)、H7、スタウロスポリン、ゲニステイン、SP-203580、PD98059、およびインドロカルバゾール(indolocarbazole)が含まれる。
【0144】
gp120阻害剤はまた、抗gp120抗体、あるいは抗CXCR4抗体または抗CXCR5抗体のような抗ケモカイン抗体でもよい。抗体断片もまた本発明により包含される。抗体には、従来の方法により調製されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体が含まれる。
【0145】
注目すべきは、当該技術においてよく知られるように、抗体分子のほんの一部であるパラトープのみが、エピトープへの抗体の結合に関連する(概して、Clark, W.R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I. (1991) Essential Immunology, 7th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxford参照)。例えば、pFc’およびFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合に関連しない。pFc’領域が酵素開裂される、またはF(ab’)2断片と指定されるpFC’領域なしで産生される抗体は、完全な抗体の抗原結合部位をいずれも保持する。同様に、Fc領域が酵素開裂される、またはFab断片と指定されるFc領域なしで産生される抗体は、完全な抗体分子の抗原結合部位の1つを保持する。さらに進めると、Fab断片は、共有結合した抗体軽鎖およびFdと示される抗体重鎖の一部からなる。Fd断片は抗体特異性の主要決定基であり(単一のFd断片は抗体特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と結合しうる)、Fd断片は分離してエピトープ結合能力を保持する。
【0146】
当該技術においてよく知られるように、抗体の抗原結合部位内には、抗原のエピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)、およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が存在する(概してClark, 1986; Roitt, 1991参照)。IgG免疫グロブリンの重鎖Fd断片および軽鎖の両方において、3つの相補性決定領域(CDR1からCDR3まで)により選択的に分離される4つのフレームワーク領域(FR1からFR4まで)が存在する。CDR、および特にCDR3領域、およびとりわけ重鎖CDR3は、抗体特異性の大きな原因である。
【0147】
哺乳類の抗体の非CDR領域は、元の抗体のエピトープ特性を保持する同種または異種抗体の類似する領域と置換してもよいということは、当該技術において確立されている。このことは、ヒト以外のCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合し機能的抗体を産生する「ヒト化」抗体の開発および使用において最も明らかにされている。例えば、米国特許第4816567号、同第5225539号、同第5585089号、同第5693762号および同第5859205号参照。
【0148】
したがって、例えば、国際特許出願公開第92/04381号には、ネズミのFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域と置換されるヒト化ネズミRSV抗体の産生および使用が記載される。抗原結合能力を有する完全な抗体の断片を含むそのような抗体は、しばしば、「キメラ」抗体と称される。
【0149】
完全なヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖座の大部分につきマウストランスジェニックを免疫化することにより調製できる。例えば、米国特許第5545806号、同第6150584号、およびここに引用される参考文献参照。これらのマウス(例えば、XenoMouse(Abgenix)、HuMabマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化の後、モノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術により調製できる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有し、したがってヒトに投与された場合にヒト抗-マウス抗体(HAMA)反応を誘発しないであろう。
【0150】
したがって、当業者に明らかなように、本発明は以下のものを提供する:F(ab’)2、Fab、FvおよびFd断片;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたはヒト以外の配列により置換されているキメラ抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたはヒト以外の配列により置換されているキメラF(ab’)2断片抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同のヒトまたはヒト以外の配列により置換されているキメラFab断片抗体;およびFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同のヒトまたはヒト以外の配列により置換されているキメラFd断片抗体。本発明はまた、いわゆる単鎖抗体(single chain antibodies)を含む。
【0151】
ある重要な実施の形態において、抗原特異的免疫細胞は、HIVに方向付けられる。したがって、抗原特異的標的細胞は、HIV感染した細胞のようなウィルス感染細胞でもよく、また無細胞HIVウィルスのような無細胞ウィルス成分でもよい。これらの実施の形態において、患者は、HIV感染を有するかまたはそのような感染を発生させる危険がある患者でもよい。HIV感染を患う危険がある患者の例は、HIVにさらされたが、まだHIV感染の症状が明らかになっていない患者である。HIV感染を患う危険がある患者の他の例には、静脈麻薬使用者、コンドームを使用しない性行為に関与した患者等が含まれる。当該技術は、危険があると考慮されるであろう患者に精通している。HIV感染を有する患者の診断は、医療専門家により日常的に行われており、したがって当該技術において知られている。
【0152】
これらの患者は、さらに抗-HIV治療を行われてもよい。ここで用いたように、「抗-HIV治療」および「抗-HIV物質」という用語は、交換して使用される。ここで用いたように、「抗-HIV治療」とは、ウィルス量を減少させ、ウィルス感染を予防し、HIV感染の漸近段階を引き延ばし、またはHIVで感染した患者の生命を延ばすのに有用な任意の治療である。抗-HIV治療は、例えばHAART等のプロテアーゼ阻害剤のようなHIV複製の阻害剤でもよいが、これに限定されない。別の実施の形態において、抗-HIV治療はサイトカインまたはケモカインである。サイトカインは、必要に応じてIL-2のようなT細胞活性化サイトカインでもよい。ケモカインは、RANTESまたはMIP-1αでもよい。
【0153】
本発明はさらに、ここに記載される生物学的活性の調節において活性のある薬物および薬物についてのリード化合物(lead compounds)をスクリーニングおよび同定する方法を提供する。そのような生物学的活性の1つの例は、gp120媒介fugetaxisである。
【0154】
標識された生体外タンパク質-タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、イムノアッセイ、2-または3-ハイブリッドスクリーニングのような細胞に基づくアッセイ、発現アッセイ等を含む、薬物についての様々のアッセイが提供される。例えば、gp120断片の活性についてトランスフェクションされた核酸の効果を迅速に調べるために、3-ハイブリッドスクリーニングが使用される。例えば、トランスフェクションされた核酸は、組み合わせのペプチドライブラリーまたはアンチセンス分子をコードしうる。例えばGAL4融合タンパク質のような、そのようなアッセイに都合のよい試薬は、当該技術において知られている。
【0155】
通常、様々の濃度に対する異なる反応を得るために、複数のアッセイの混合が、異なる物質濃度で平行して行われる。通常、これらの濃度の1つは、ネガティブコントロール、すなわち物質のゼロ濃度またはアッセイ検出の限界以下の物質濃度として作用する。候補物質は、通常は有機化合物であるが、多くの化学的部類を含む。好ましくは、候補薬物は、小さい有機化合物、すなわち50以上であるが約2500未満、好ましくは約1000未満、およびより好ましくは約500未満の分子量を有するものである。候補物質には、ポリペプチドおよび/または核酸との構造的な相互作用に必要な官能化学基が含まれ、通常は少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは官能化学基の少なくとも2つおよびより好ましくは官能化学基の少なくとも3つを含む。候補物質は、1つ以上の上記の官能基で置換された環状炭素または複素環構造および/または芳香族または多芳香族構造を含んでもよい。候補物質はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、上記のものの誘導体または構造類似体、またはそれらの組合せ等のような生体分子でもよい。物質が核酸である場合、ここに明示されるように修飾された核酸も検討されるが、物質は通常DNAまたはRNA分子である。
【0156】
候補物質は、合成または天然化合物のライブラリーを含む様々の供給源から得られる。例えば、無作為化ヌクレオチドの発現、合成有機組合せライブラリー、無作為ペプチドのファージディスプレイライブラリー等を含む多数の方法が、様々の有機化合物および生体分子の無作為および定方向合成に利用できる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用でき、容易に産生できる。さらに、天然および合成産生されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的方法により容易に修飾できる。さらに、既知の薬物に、アシル化、アルキル化、エステル化、酸性化等のような定方向または無作為の化学的修飾を行い、物質の構造的類似体を産生してもよい。
【0157】
したがって、本発明は、gp120ポリペプチドに特異的に結合する様々のサイズおよび種類のポリペプチドを含む。これらのポリペプチドは、gp120のfugetaxis効果を隠すという点で、「マスク」として作用する。これらのポリペプチドは、抗体技術以外の供給源から得られてもよい。例えば、そのようなポリペプチド結合物質は、溶液で、固定化形態でまたはファージディスプレイライブラリーとして容易に調製できる変性ペプチドライブラリーにより提供できる。組合せライブラリーは、1つ以上のアミノ酸を含有するペプチドから合成できる。ライブラリーはさらに、ペプトイドおよび非ペプチド合成成分から合成されてもよい。
【0158】
ファージディスプレイは、ヒト抗体を含む、本発明により有用な結合ペプチドの同定において特に有効である。簡単には、従来の方法を使用して4-約80のアミノ酸残基のインサートを表示するファージライブラリー(例えばm13、fd、またはラムダファージを使用する)を準備する。インサートは、例えば完全に縮重したまたは偏った配列を示す。その後、gp120ポリペプチドに結合インサートを有するファージを選択できる。この方法は、gp120ポリペプチドに結合するファージの再選択のいくつかのサイクルについて反復できる。反復したラウンドにより、特定の配列を有するファージが濃縮される。DNA配列分析により、発現されたポリペプチドの配列が同定される。gp120ポリペプチドに結合する配列の最小直線部分が特定できる。最小直線部分の一部またはすべてに加えて1つ以上の追加のその上流または下流の縮重残基を含有するインサートを含む偏ったライブラリーを使用する方法を繰り返してもよい。酵母ツーハイブリッドスクリーニング法を使用して、gp120ポリペプチドに結合するポリペプチドを同定してもよい。したがって、本発明のgp120ポリペプチド、またはその断片を使用して、ファージディスプレイライブラリーを含むペプチドライブラリーをスクリーニングし、本発明のgp120ポリペプチドのペプチド結合パートナーを同定および選択できる。そのような分子は、記載されるように、スクリーニングアッセイ、精製プロトコル、gp120ポリペプチドの機能化の直接の妨害、および当業者に明らかな他の目的のために使用することができる。
【0159】
投与される際、本発明の治療剤は、薬学的に許容できる製剤で投与される。そのような製剤は通常、薬学的に許容できる濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、両立できるキャリア、アジュバントおよびサイトカインのような補足的免疫増強剤、および必要に応じて他の治療剤を含んでもよい。
【0160】
本発明の治療剤は、注射または時間をかけたゆっくりとした混注を含む任意の従来の経路により投与されてもよい。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮でもよい。抗体を治療的に使用する場合、投与の好ましい経路は肺エーロゾルによるものである。抗体を含有するエーロゾル供給システムを調製する技術は、当業者に知られている。通常、そのような系は、パラトープ結合能力のような抗体の生物学的特性を大きく損なわない成分を使用すべきである(例えば、ここに引用されるSciarra and Cutie, “Aerosols,” in Remington’s Pharmaceutical Sciences. 18th edition, 1990, pp 1694-1712参照)。当業者は、過度の実験を行わずに抗体エーロゾルの産生のための様々のパラメーターおよび条件を容易に特定できる。本発明のアンチセンス製剤を使用する場合、ゆっくりした静脈内投与が好ましい。
【0161】
非経口的投与のための製剤には、滅菌水溶性または非水溶性溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。水溶性のキャリアには、生理食塩水および緩衝培地を含む水、アルコール性/水溶性溶液、乳濁液または懸濁液が含まれる。非経口の媒介物(vehicle)には塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース(Ringer’s Dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガーまたは不揮発性油が含まれる。静脈内への媒介物には、液体および栄養補充剤(replenisher)、電解質補充剤(例えばリンガーデキストロースに基づく)等が含まれる。例えば、抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガス等の防腐剤および他の添加物が存在してもよい。
【0162】
他の実施の形態において、患者はさらに抗炎症物質を投与されてもよい。抗炎症物質は、生体内における炎症反応を減少または抑制する物質である。抗炎症物質の例には以下のものが含まれるがこれに限定されない:ピロキシカム、メフェナム酸、ナブメトン、スリンダク、トルメチン、ケトロラック、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ナプロキセン、フルルビプロフェン、セレコキシブ、オキサプロジン、ジフルニサル、エトドラク(Etodolac)、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、エトドラク、メロキシカム、アルクロフェナック、アルクロメタゾンジプロピオネート(Dipropionate)、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル(Amcinafal)、アムシナフィド(Amcinafide)、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ(Amiprilose Hydrochloride)、アナキンラ(Anakinra)、アニロラック(Anirolac)、アニトラザフェン(Anitrazafen)、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム(Balsalazide Disodium)、ベンダザック、ベノキサプロフェン(Benoxaprofen)、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモル(Broperamole)、ブデソニド(Budesonide)、カルプロフェン(Carprofen)、シクロプロフェン(Cicloprofen)、シンタゾン(Cintazone)、クリプロフェン(Cliprofen)、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタソン(Clobetasone Butyrate)、クロピラク(Clopirac)、プロピオン酸クロチカソン(Cloticasone Propionate)、酢酸クロチカソン(Cloticasone Propionate)、酢酸コルメタソン(Cormethasone Acetate)、コルトドキソン(Cortodoxone)、デフラザコート(Deflazacort)、デソニド(Desonide)、デソキシメタソン(Desoximetasone)、デキサメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム(Diflumidone Sodium)、ジフルニサ
ル、ジフルプレドネート(Difluprednate)、ジフタロン(Diftalone)、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド(Drocinonide)、エンドリソン(Endrysone)、エンリモマブ(Enlimomab)、エノリカムナトリウム(Enolicam Sodium)、エピリゾール、エトドラク(Etodolac)、エトフェナメート(Etofenamate)、フェルビナク(Felbinac)、フェナモル(Fenamole)、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク(Fenclorac)、フェンドサル(Fendosal)、フェンピパロン(Fenpipalone)、フェンチアザク、フラザロン(Flazalone)、フルアザコート(Fluazacort)、フルフェナム酸、フルミゾール(Flumizole)、フルミソリドアセテート(Flunisolid Acetate)、フルニキシン(Flunixin)、フルニキシンメグルミン(Flunixin Meglumine)、フルコルチンブチル(Fluocortin Butyl)、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン(Fluquazone)、フルルビプロフェン、フルレトフェン(Fluretofen);プロピオン酸フルチカソン(Fluticasone Propionate);フラプロフェン(Furaprofen)、フロブフェン(Furobufen)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタソル(Hlobetasol Propionate)、酢酸ハロプレドン(Halopredone Acetate)、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノル(Piconol)、イロニダップ(Ilonidap)、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソル(Indoxole)、イントラゾル(Intrazole)、酢酸イソフルプレドン(Isoflupredone Acetate)、イソゼパク(Isoxepac)、イソキシカム;ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール(Lofemizole Hydrochloride)、ロルノキシカム(Lornoxicam)、ロテプレドノルエタボネート(Loteprednol Etabonate)、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート(Meclorisone Dibutyrate)、メフェナム酸、メサラミン(Mesalamine)、メセクラゾン(Meseclazone)、メチルプレドニゾロンスレプタネート(Methylprednisolone suleptanate)、モルニフルメート(Morniflumate)、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソル(Naproxol)、ニマゾン(Nimazone)、オルサラジンナトリウム(Olsalazine Sodium)、オルパノキシン(Orpanoxin)、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン(Paranyline Hydrochloride)、ペントサンポリスルフェートナトリウム(Pentosan Polysulfate Sodium)、フェンブタゾンナトリウムグリセレート(Phenbutazone Sodium Glycerate)、ピエルフェニドン(Pirfenidone)、ピロキシカム、ピロキシカムシナメート(Piroxicam Cinnamate)、ピロキシカムオラミン(Olamine)、ピプロフェン(Piprofen)、プレドナゼート(Prednazate)、プリフェロン(Prifelone)、プロドリック酸(Prodolic Acid)、プロクアゾン(Proquazone)、プロキサゾール(Proxazole)、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン(Rimexolone)、ロマザリト(Romazarit)、サルコレックス(Salcolex)、サルナセジン(Salnacedin)、サルサラート、塩化サンギナリウム(Sanguinarium Chloride)、セクラゾン(Seclazone)、セルメタシン(Sermetacin)、スドキシカム(Sudoxicam)、スリンダク、スプロフェン(Suprofen)、タルメタシン(Talmetacin)、タルニフルメート(Talniflumate)、タロサレート(Talosalate)、テブフェロン(Tebufelone)、テニダップ(Tenidap)、テニダップナトリウム、テノキシカム(Tenoxicam)、テシカム(Tesicam)、テシミド(Tesimide)、テトリダミン(Tetrydamine)、チオピナク(Tiopinac)、チキソコートルピバレート(Tixocortol Pivalate)、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド(Triclonide)、トリフルミデート(Triflumidate)、ジドメタシン(Zidometacin)、ゾメピラックナトリウム。
【0163】
本発明はさらに、gp120分子を含む組成物および上記のように抗炎症物質、喘息薬、および/またはアレルギー薬のような他の治療剤を提供する。
【0164】
本発明の製剤は、有効な量で投与される。有効な量とは、単独でまたはさらなる投与量とともに所望の反応を生じる医薬品の量である。自己免疫疾患のような過度のまたは不適切な免疫応答により特徴付けられる状態を治療する場合、所望の反応は過度のまたは不適切な免疫応答を抑制する。これは、より好ましくは疾患の進行または発現を永久に停止させることを含むが、疾患の進行または発現を一時的に遅らせるだけの場合を含んでもよい。これは、通常の方法により観察してもよく、ここに記載される本発明の診断方法により観察してもよい。生体内で、患者から単離された細胞に生体外で、または診断、研究およびテストの目的で体外で、有効な量を投与してもよい。
【0165】
治療上有効な量は、動物試験において特定してもよい。例えば、治療反応を誘発するためのgp120媒介fugetaxisを抑制する物質および/または抗HIV治療剤の有効な量を、ウィルス量の生体内アッセイを使用して判断できる。関連する動物モデルには、サル免疫不全ウィルス(SIV)に感染した霊長類が含まれる。通常、おそらくある範囲の抗HIV治療剤投与量とともに、ある範囲の投与量を動物に投与する。活性物質の投与後の動物におけるウィルス量の減少は、ウィルス量を減少させしたがってHIV感染を治療できることを示す。
【0166】
ここに記載される化合物の患者投与量は通常、約0.1μgから10000mg、より一般的には約1μg/日から8000mg、および最も一般的には約10μgから100μgの範囲である。患者の体重に関して述べると、通常の投与量は約0.1μgから20mg/kg/日、より一般的には約1から10mg/kg/日、および最も一般的には約1から5mg/kg/日の範囲である。
【0167】
他の供給システムには、徐放性、遅延解除性または持続性の供給システムが含まれる。そのようなシステムにより、fugetaxisの物質の反復的な投与を避けることができ、患者および医者への利便性を増加する。多くの種類の放出供給システムが利用でき、当業者に知られている。これらには、ポリ(ラクチド-グリコシド)、コポリオキサレート(Copolyoxalates)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactones)、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyric acid)、およびポリアンヒドライド(Polyanhydrides)が含まれる。薬を含有する前記のポリマーのマイクロカプセルが、例えば米国特許第5075109に記載されている。供給システムには、以下の非ポリマーシステムが含まれる:コレステロール、コレステロールエステルのようなステロールおよび脂肪酸またはモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドのような天然の脂質を含む脂質;ヒドロゲル放出システム;シラスティック(sylastic)システム;ペプチドに基づくシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用する圧縮錠;一部融合移植等。特定の実施例には、以下のものが含まれるがこれに限定されない:(a)米国特許第4452775号、同4667014号、同4748034号および5239660号に記載されるように、マトリクス内に抗炎症性物質がある形態で含有される侵食システムおよび(b)米国特許第3832253号、および同3854480号に記載されるように、ポリマーからコントロールされた速度で活性成分が浸透する拡散システム。
【0168】
本発明の好ましい供給システムは、コロイド分散システムである。コロイド分散システムには、水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づくシステムが含まれる。本発明の好ましいコロイドシステムはリポソームである。リポソームは、生体内または生体外における供給ベクターとして有用な人工生体膜容器である。0.2-4.0μmの範囲のサイズの大きい単ラメラ容器(LUV)により大きい高分子を被包できることが示されている。RNA、DNA、および完全なビリオンを、水溶性の内部に被包でき、生物学的に活性の形態で細胞に供給できる(Fraley, et al., Trends Biochem. Sci.,(1981)6:77)。リポソームが有効な遺伝子伝達ベクターとなるために、以下の特徴の1つ以上が存在しなければならない:(1)生物学的活性を保ったまま高い効率での関心のある遺伝子の被包;(2)非標的細胞と比較した標的細胞に対する優先的および実質的結合;(3)高い効率での標的細胞細胞質への小胞の水溶性内容物の供給;および(4)遺伝情報の正確で有効な発現。
【0169】
リポソームは、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質のような特定のリガンドに結合させることにより特定の組織を標的としてもよい。リポソームは、例えば、N-[1-(2,3ジオレイロキシ)-プロピル]-N,N,N-塩化トリメチルアンモニウム(DOTMA)および臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)のような陽イオン脂質の形態であるリポフェクチン(商標)およびリポフェクタス(商標)として、Gibco BRLから購入できる。リポソームを作製する方法は、当該技術においてよく知られており、多くの刊行物に記載されている。リポソームは、Gregoriadis, G. in Trends in Biotechnology, (1985)3:235-241により示されている。
【0170】
ある重要な実施の形態において、好ましい媒介物は、哺乳類の受容体への移植に適切な生物学的適合性の微粒子またはインプラントである。この方法に従って有用な生物学的適合性のインプラントの例は、国際特許出願/米国/第03307号(「高分子遺伝子供給システム」と題される国際公開第95/24929号パンフレット)に記載されている。国際特許出願/米国/第03307号には、生物学的適合性の、好ましくは適切なプロモーターの調節下での外因性遺伝子を含有する生物分解性高分子マトリクスが記載されている。高分子マトリクスを使用して、患者中の外因性遺伝子の徐放を達成する。本発明によれば、ここに記載されるfugetaxisの物質は、生物学的適合性の、好ましくは国際特許出願/米国/第03307号に開示される生物分解性高分子内に被包または分散される。
【0171】
好ましくは、高分子マトリクスは、ミクロスフェア(物質が固体の高分子マトリクス中に分散される)またはマイクロカプセル(物質が高分子の殻の中心に格納される)のような微粒子の形態である。物質を含有するための高分子マトリクスの他の形態には、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、およびステントが含まれる。高分子マトリクス装置のサイズおよび組成物は、マトリクスが導入される組織に好ましい放出動力を生じるように選択される。高分子マトリクスのサイズはさらに、使用される供給の方法に従って選択される。好ましくは、エーロゾル経路が使用される場合、高分子マトリクスおよびfugetaxisの物質は界面活性媒介物中に被包される。高分子マトリクス組成物は、運搬の有効性をさらに増加するために、双方の好ましい分解速度を有し、生物接着性の物質の形態になるように選択できる。マトリクス組成物は、分解しないが、長期間の拡散により放出するように選択されてもよい。
【0172】
別の重要な実施の形態において、本発明の供給システムは、局所的、部位特異的供給に適切な生物学的適合性のミクロスフェアである。そのようなミクロフェアは、Chickering et al., Bioteh, And Bioeng.,(1996)52:96-101およびMathiowitz et al., Nature,(1997)386:410-414に開示されている。
【0173】
生物分解性でない高分子マトリクスおよび生体分解性の高分子マトリクスの両方が、患者への本発明の物質の供給に使用することができる。生体分解性のマトリクスが好ましい。そのような高分子は、天然または合成ポリマーでよい。合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が所望である期間、通常は数時間から1年またはそれより長い期間、に基づき選択される。通常、数時間から3-12ヶ月の期間の放出が最も好ましい。ポリマーは必要に応じて、水中で重量の約90%まで吸収できるようにヒドロゲルの形態であり、さらに必要に応じて、多価イオンまたは他のポリマー架橋される。
【0174】
概して、fugetaxis物質は、拡散により、またはより好ましくは高分子マトリクスの分解により生物侵食性のインプラントを使用して供給される。生物侵食性の供給システムの形成に使用できる合成ポリマーの実施例には、以下のものが含まれる:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル(poly-binyl halides)、ポリビニルピロリドン、ポリグリコライド(polyglycolides)、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらの共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩(cellulose sulphate sodium salt)、ポリ(メタクリル酸メチル)ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルテレフタラート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、および乳酸およびグリコール酸の重合体、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチック酸(butic acid))、ポリ(バレリアン酸)、およびポリ(ラクチド-コカプロラクトン)、およびアルギナートやデキストランおよびセルロースを含む他の多糖類、コラーゲン、それらの化学誘導体(置換、例えばアルキル、アルキレンのような化学基の付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者により通常行われる他の修飾)のような天然ポリマー、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質、それらの共重合体および混合物。通常、これらの物質は、酵素加水分解または生体内での水への暴露によって、表面またはバルク侵食により分解する。
【0175】
生物分解性でないポリマーの例には、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらの共重合体および混合物が含まれる。
【0176】
特に関心のある生物接着性のポリマーには、ここにその内容が引用されるH.S.Sawhney, C.P.PathakおよびJ.A.Hubell in Macromolecules,(1993)26:581-587に記載される生物侵食性のヒドロゲルである、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン(glutin)、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギナート、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)が含まれる。
【0177】
さらに、本発明の重要な実施の形態には、ポンプベースハードウェア供給システム(pump-based hardware delivery systems)が含まれ、そのいくつかは移植に適応できる。そのような移植可能なポンプは、制御放出マイクロチップを含む。好ましい制御放出マイクロチップは、ここにその内容が明白に引用されるSantini, JT Jr., et al., Nature,1999,397:335-338に記載される。
【0178】
長期的徐放性インプラントの使用は、慢性症状の治療に特に適切である。ここで用いたように、長期的放出とは、治療レベルの活性成分を少なくとも30日間、好ましくは60日間供給するように、インプラントが構成され配置されることを意味する。長期的徐放性インプラントは、当業者によく知られており、既述の放出システムのいくつかを含む。
【0179】
ある実施の形態において、本発明の物質は、炎症の部位、例えばリウマチ様関節炎、アテローム性動脈硬化器官の血管等を有する患者の場合の関節に直接供給される。例えば、これは以下の方法により達成できる:物質(核酸またはポリペプチド)をバルーンカテーテルの表面に結合させる;バルーン部分が炎症の部位、例えばアテローム硬化性血管に位置するまでカテーテルを患者に挿入する;閉塞の部位においてバルーンを膨張させバルーン表面を血管壁に接触させる。この方法において、組成物は、特定の炎症部位を局所的に標的とし、これらの部位に免疫細胞を調節することができる。別の局所的投与の例には、そのような治療を必要とする部位における移植可能なポンプが含まれる。好ましいポンプは既述されている。さらなる実施例において、膿瘍の治療を伴う場合、fugetaxis物質は、例えば軟膏/皮膚形態で局所的に投与されてもよい。必要に応じて、本発明の物質は他の治療剤(例えば抗炎症薬、免疫阻害剤等)と組み合わせて供給される。
【0180】
本発明をより詳細に記載し説明の目的で与えられる以下の実施例から、本発明およびその多くの利点がより理解されるであろう。以下の実施例は、いかなる意味においても本発明の範囲を制限するものではない。本発明の開示に照らして、特許請求の範囲内の多くの実施の形態が当業者にとって明らかとなるであろう。
【実施例】
【0181】
実施例
組換えgp120の濃度の変化に対するHIV特異的CTLの移動反応を、生体外および生体内の移動アッセイシステムを使用して評価した。HIV特異的CTLクローンを、gp120を発現する標的細胞を殺す能力について、クロム放出アッセイおよびフローサイトメトリーによりテストした。細胞傷害性アッセイにおいて細胞密度を変化させ平底プレートを使用することにより、死滅効果における細胞移動の評価が可能となる。コマ撮りビデオ顕微鏡を使用して定量結果を確かめた。
【0182】
HIV-1感染した個体からのCTLクローン:HIV-1特異的CTLクローンを、刺激された末梢血単核球(PMBC)をクローニングすることにより、制限希釈でHIV-1感染した個体から入手し、記述のように特異性およびHLA制限について特徴付けた(Walker, et al., 1989, PNAS 86:9514-9518; Yang et al., 1997, J Virol 71:3120-3128)。DMD、ND-25およびASB-C11と示されるCTLクローンはすべて、HIV-1 NefエピトープFL8(アミノ酸[aa]90-97; FLKEKGGL)について特異的な、異なるドナーから単離されたHLA B8-制限CTLであった。CTLクローンMHC B60-制限クローン161JD27は、GapエピトープIL10(aa92-101; IEIKDTKEAL)を認識した。最新のクレイドB共通配列に従いアミノ酸に番号をつけた。マイコプラズマ組織培養RNA検出キット(Jen-Probe, San Diego, CA)でテストすることにより特定されたように、すべての細胞はマイコプラズマを有していなかった。
【0183】
細胞傷害性アッセイ:HLA-対応B-リンパ芽球腫細胞系(BLCL)を、適切なペプチドと共に振とうし、51Crと共にインキュベートし、洗浄し、異なる細胞濃度で丸または平底96ウェルプレートのそれぞれに分配した(Walker, et al., 1987, Nature, 328:345-8)。エフェクター対標的(E:T)の比が1:1から10:1までで、HIV-1特異的CTLを三つ揃いのウェル中でエフェクターとして使用した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、30μlの上澄みを採集した。12時間後、マイクロプレートリーダーでガンマ数を測定した(Packard Instrument Companym Downers Grove, Illinois)。特異的細胞傷害性の割合を以下のように計算した:特異的溶解の割合=[(実験的放出−自然的放出)/(最大放出−自然的放出)]×100。標的細胞からの51Crの平均の自然的放出は、常に最大放出の20%未満であった。
【0184】
単核球の調製およびT細胞の部分母集団の選別:Institutional Review Board.により示されるプロトコルに従い、健康な成人のドナーから末梢血を得た。Ficoll-Hapaque(Pharmacia Biotech Inc., Piscataway, New Jersey)密度勾配遠心分離を使用して、末梢血単核球を単離した。次に細胞を、飽和量のフィコエリトリンが結合した抗-CD4または-CD8 mAbおよびフルオレセインイソチオシアネートが結合した抗-CD45RAまたは-CD45ROで染色した(Becton Dickinson, San Jose, California)。末梢血細胞の所望の部分母集団を、FACS Vantageソーター(Becton Dickinson)を使用して選別し、移動アッセイで使用する前に0.5%ウシ胎児血清(Life Technologies, Carlsbad, California)を含有するイスコフ改変培地で一晩インキュベートした。それぞれのT細胞部分母集団の純度は、免疫表現型により99%より大きいことが特定された。
【0185】
移動アッセイ:記載されるように(Kim et al., 1998, Blood 91:4434-4443; Poznansky et al., 2000, Nat Med 6:543-548)、5μmの孔サイズを有する6.5mmの直径のポリカーボネート膜を有するトランスウェルシステム(Corning, Corning, New York)で移動アッセイを行った。精製されたT細胞部分母集団(5×104細胞)を、全容積150μlのイスコフ改変培地中でそれぞれのウェルの上部のチャンバーに加えた。SDF-1α(Pritech, Rocky Hill, New Jersey)または組換えHIV-1 gp120(Immunodiagnostics, Woburn, Massachusetts, AIDS Reagent Repository, NIHまたはRW)を、トランスウェルの低部、上部、または低部または上部両方のチャンバー中で2ng/mlから2g/mlまでの濃度範囲で使用して、陽性、陰性および勾配不存在の標準的な「チェッカーボード(checkerboard)」分析マトリクスを産生する。V1、V1.V2およびV1.V2.V3を含むHIV-1IIIBgp120の組換え可変性ループ欠失突然変異体もこれらのアッセイにおいて使用した。トランスウェルを37℃で3時間インキュベートし、その後細胞を底部のチャンバーから採集し数を数えた。
【0186】
標的細胞系の形質導入:組換えアデノ随伴ウィルス(rAAV)ベクターを使用して、HIV-1HXB2 env、またはコントロール遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)を標的細胞中に供給した。偽形質導入を追加のコントロールとして行った。BLCLをRPMI中で洗浄し、ウェルごとに106の細胞を24ウェルの組織培養プレート中で最小容積に等分した。細胞を50μlのrAAV(MOI2-4)と共に90分間インキュベートし、その後20%のウシ胎児血清を有する0.5mlのRPMIをそれぞれの細胞に加えた。形質導入の成功を、48間後にenvの場合には外被糖タンパク質についての間接的な細胞蛍光測定法またはRFPの場合には蛍光顕微鏡で確かめ、細胞傷害性アッセイにおける標的として細胞をすぐに使用した。AAV形質導入された細胞からの培養上澄みにおいてELISA(Immunodiagnostics, Woburn, MA)を行うことにより、HIV-1gp120の分泌を確かめた。実験で使用した抗体は、AIDS ResearchおよびM.RosnerからのReference Reagent Programにより得た。
【0187】
マウスの免疫化および誘発:C57/BL6マウスおよびOT-1マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, Maine)をニワトリオボアルブミン(Ova)(Sigma)に対して皮下的に免疫化し、続いて以前に記載されるように(Poznansky et al., 2000, Nat Med 6:543-548)Ovaの第二の腹腔内(IP)注射で誘発した。IP Ova誘発の24時間後、実験動物は、低い(20ng/ml)または高い(200ng/ml)の投与量のHIV-1IIIB gp120を含有する第二のIP注射を受けた。V1.V2およびV1.V2.V3ループの欠失を有する組換えHIV-1IIIB gp120も高いおよび低い投与量でテストした。コントロールのマウスをN-生理食塩水および煮沸したgp120のIP注射にさらした。マウスを第二のIP注射後3および24時間後に安楽死させ、5mlのPBSで腹膜洗浄を行った。1mlの腹水ごとの生存能力のある有核細胞の総数を、血球計数器でおよびトリパンブルー排除により特定した。このようにして得られた腹水は、0.1%未満の赤血球を含有した。腹水細胞において、マウスT細胞に対する蛍光色素結合抗体(フィコエリトリン-抗CD3、ビオチン-抗CD8およびAPC-抗CD4)(すべてCaltag Laboratoriesから)を使用してフローサイトメトリーを行った。ストレプタビジン-ペリジニン(peridinnin)クロロフィルタンパク質(Becton Dickinson)を使用してビオチン結合抗体の第二段階染色を行った。それぞれの部分母集団のT細胞の割合を、腹水中の全有核細胞分画の割合として特定した。
【0188】
統計分析:すべての実験を少なくとも三重に行い、示されるデータはすべての結果を示す。ウィルコクスン符号付順位検定(Wilcoxon signed rank exact test)または両側母集団の平均値による2標本のT分布検定(two-tailed Student’s paired T-test)を使用してデータを分析せきした。
【0189】
結果
CXCR-4-特異的組換えX4 gp120は、組換えHIVタンパク質から遠ざかるHIV特異的CTL移動を含むT細胞の移動反応を誘発した。gp120から遠ざかる移動は、濃度依存性であり、CD4非依存性であり、抗-CXCR-4、百日咳毒素および8-Br-cAMPにより抑制された。組換えgp120はもまた、抗原誘発の部位でT細胞浸潤の著しい減少において生体内で活性であることが示された。HIV特異的CTLクローンの活性移動が、等しいエフェクター:標的割合を維持するにもかかわらず、より低い細胞密度に反応して見られる細胞溶解の減少と共に標的細胞を殺す能力に不可欠であるということも示された。コマ撮りビデオ顕微鏡により、様々の細胞密度でCTL/標的細胞相互作用の定量確認が可能となった。
【0190】
CXCR4の天然のリガンドであるSDF-1は、T細胞についての双方向性の合図として作用する−一つの濃度で誘発し、CXCR-4依存性および百日咳毒素反応性機構によってより高い濃度で拒絶する(Poznansky et al., 2000, Nat Med 6:543-548)。X4 gp120についての同様の発見が前提とされてきた。健康な末梢血から単離された成熟した休止CD8+CD45RO+T細胞を移動アッセイにおいて使用し、組換えHIV-1IIIB gp120の陽性、陰性および勾配不存在への移動反応を定量化した。ヒトT細胞移動の標準的なチェッカーボード分析により、gp120は、ヒト休止末梢血CD8+T細胞の部分母集団についての双方向性の合図として作用しうるということが示された(表1)。
【表1】

【0191】
表1は、組換えHIV-1IIIB gp120に反応したCD8+CD45RO+T細胞のチェッカーボード移動分析を示す。約105の細胞を上部のチャンバー中に配置し、上部および/または下部のチャンバーに指示濃度で加え、HIV-1 gp120の陰性勾配(対角の上)、陽性勾配(対角の下)または両方のチャンバーで等しい勾配(対角に沿う)を作製した。
【0192】
20ng/mlの濃度で、HIV-1IIIB gp120は最大走化性を誘発した(13.6%+/-1.5%)−組換えタンパク質に向かう移動。対照的に、HIV-1IIIB gp120のより高い濃度(200ng/ml)により、HIV-1タンパク質から遠ざかるT細胞の最大移動が起こった(16.1%+/-1.2%)−fugetaxis。T細胞の最小の無作為移動、または化学運動性は、勾配の非存在下でHIV-1IIIB gp120に反応して示された。組換えX4 gp120の3つの異なる供給源を使用して移動実験を繰り返し、成熟したT細胞部分母集団からの同様のT細胞移動反応を観察した(データは図示せず)。X4 gp120は、生体内でT細胞についての双方向性の合図として作用し、HIV-1タンパク質に向かうまたはそれから遠ざかる移動は濃度依存性であると結論されていた。
【0193】
X4 gp120がHIV-抗原特異的CTL移動についての双方向性の合図として作用するか否かを特定するために、CTLクローンの移動における組換えHIV gp120の効果を調べた。上記と同様に、走化性は20ng/mlのピーク濃度で起こり、X4 gp120から遠ざかる最大移動、またはfugetaxisはより高い濃度の200ng/mlで起こった(図1)。結果として、始原CD8+CD45RO+細胞およびHIV特異的CD8+CTLは、生体外で、HIV-1タンパク質、X4 gp120に向かうおよびそれから遠ざかる濃度依存性移動を示す。
【0194】
SDF-1についてのGiタンパク質結合レセプターシグナル伝達経路の特異的成分は、多くの異なる化学的阻害剤によりブロックしうる(Poznansky et al., 2000, Nat Med 6:543-548; Poznansky et al., 2002, Clin.Invest. 109:1101-1110; Sotsios et al., 1999, J. Immunol. 163:5954-5963; Vlahakis et al. 2001, J. Clin. Invest. 107:207-215)。移動アッセイにおける組換えX4 gp120に向かうまたはそれから遠ざかる休止T細胞部分母集団の移動についての阻害剤特定は確立されている。HIV-1gp120に向かうまたはそれから遠ざかるCD8+CD45RO+T細胞移動は、Giタンパク質阻害剤百日咳毒素(p=0.0013)およびCXCR4結合抗体12G5(p=0.008)により大きく抑制され、これはT細胞はSDF-1と同様な様式でX4 HIV-1 gp120に向かうまたはそれから遠ざかる移動をするということを示す。
【0195】
CXCR4へのgp120の正確な結合部位はまたマッピングされていない。しかしながら、V3ループがこの相互作用において重要な役割を果たすことが示されている(Rizzuto, et al., 1998, Science 280:1949-1953; Verrier et al., 1999, AIDS Res. Hum. Retroviruses, 15:731-743)。HIV-1 gp120toCXCR4との間のレセプター-リガンド相互作用の以前の研究により示されるように(Basnaciogullari et al., 2002, J. Virol. 76:10791-10800)、どの構造成分がCD8+T細胞の観察された移動反応において役割を果たすのかを調べるために、HIV-1IIIB gp120の特定欠失突然変異体を使用した。20ng/mlまたは200ng/mlの濃度でV1.V2またはV1.V2.V3ループ欠失を有するHIV-1IIIB gp120の突然変異体に反応した休止T細胞部分母集団の移動反応を評価した(図3)。HIV-1IIIB gp120のV1およびV2ループの欠失により、gp120に向かうT細胞の排他的な移動(15%+/-1.1%)およびgp120から遠ざかる移動のためのシグナルの完全な喪失が生じた。V1、V2およびV3ループの欠失により、gp120に向かうおよびそれから遠ざかる休止T細胞の移動の抑止が生じた。これらの結果は、X4gp120のV3ループが、CD8+T細胞移動のシグナル伝達において重要な役割を果たすかもしれないことを示す。
【0196】
CTL効果において移動が直接の効果を果たすという仮説を調べるために、51Cr放出アッセイ(Siliciano, et al., 1988, Cell 554:561)を2つの点で修正した。第一に、HIV特異的CTLの細胞傷害性を、丸底96ウェルプレートで標準的な技術により定量化し、平底96ウェルプレートで行ったアッセイの結果と比較した(図4A)。エフェクターおよび標的を平底ウェルでインキュベートした場合に(丸底ウェル中で一緒にペレット化される場合と対照的に)溶解の大きい減少が示されたことにより、CTL効果の特定において細胞移動がある役割を果たすという考えが支持される。ビデオ顕微鏡により、平底ウェル中で標的と共にインキュベートされたエフェクター細胞は1つの標的細胞から別の標的細胞へ移動し溶解を誘発したのに対し、丸底ウェル中でインキュベートされた細胞はインキュベーション期間中認識可能な移動を示さなかったということが示された(データは示さず)。第二に、E:T比による割合特異的溶解と平底ウェル中に配置された細胞の総数に帰因する割合特異的溶解との間を線引きするために、アッセイをさらに修正した。この修正された平底51Cr放出アッセイにおいて、E:T比およびウェルごとの細胞の総数が減少する標準アッセイと比較して、それぞれのE:T比でウェルごとの細胞の総数を一定に保った。予想されたように、10:1のE:T比では、標準および修正された平底アッセイについて状態が同一であり(110000細胞/ウェル)、割合特異的溶解において違いが見られなかった。しかしながら、5:1および1:1のE:T比において、CTL殺傷効果は、2つの状態の間で著しく(p=0.031)異なった(図4B)。これらのデータは、51Cr放出アッセイを平底ウェルで行う場合にウェルごとの細胞の総数が重要な変数であること示す。
【0197】
確率論を使用して、平底ウェル中の標的およびエフェクター細胞の空間的関係を数学的モデル化し、ウェルごとに所定の数の細胞について標的細胞に達するためにCTLが移動しなければならない距離を計算した(Stoyan et al., 1995, Stochastic geometry and its applications, 2nd edition, John Wiley & Sons, New York; Stoyan, et al., 1994, Fractals, random shapes, and point fields, John Wiley & Sons, New York)。このモデルは、平底ウェルの表面上のエフェクターおよび標的細胞の無作為分布、および1つの種類の細胞の位置を決定する統計値は他により影響されないということを前提とする。これらの仮定の下で、CTLと標的細胞との間の予想距離(D)は、普遍的な無次元定数(K)を、平底ウェル中の標的細胞の密度の平方根により割ったものに等しい(式1)。標的細胞の密度は、ウェル中に配置された標的の数(n)をウェルの面積で割ったものに等しい。この場合、ウェルは丸く、従って式2となる。実験的に、観察されたCTL溶解とテストされたすべてのE:T比で標的に達するのに必要な計算された距離との間に、非常に重要な正相関が発見された(図4C)。これらのデータにより、CTL効果と標的細胞へ積極的に移動するそれらの能力との間の関係の概念が支持され、CTL効果において細胞移動をもたらす分子の影響を調べるモデルシステムが提供される。
【数1】

【数2】

【0198】
上記のように修正された51Cr放出アッセイを使用し、CTL効果における標的細胞によるX4 gp120の発現の効果を調査した。HIV-1HXBc2 envをコードする組換えアデノ随伴ウィルス(rAAV)ベクターにより自己BLCLを形質導入した。コントロールrAAVベクターは、赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現した。ウィルスコンストラクトによる感染の48間後、修正された51Cr放出アッセイにおいて細胞を標的として使用した。偽形質導入されたBLCLは追加のコントロールを提供した。標的細胞によるgp120の表面発現および分泌を、それぞれ間接的な免疫蛍光法および上澄みgp120 ELISAにより確かめた。envにより形質導入された標的細胞は、RFPにより形質導入された標的(DMDについてp=0.008、ND-25についてp=0.0002)または偽形質導入された細胞(DMDについてp=0.02、ND-25についてp=0.0004)と比較して2つのnef-特異的クローンにより著しく低い割合特異的溶解を示した(図5)。HIV-1 gp120は以前に、CXCR4レセプターとの相互作用によりCD4+およびCD8+T細胞アポトーシスを媒介することが報告されている(Vlahakis et al. 1987, 328:345-8)。放射性同位元素標識を使用しない偽51Cr放出アッセイを行い、4時間後、エフェクターおよび標的細胞をAPC-抗CD8(Caltag)および7-アミノ-アクチノマイシンD(Sgima)で標識した。アポトーシスのレベルは、gp120を発現する標的細胞と共にインキュベートしたCTLとコントロールとの間で同様であった(データは示さず)。これらのデータは、標的細胞がX4 gp120を発現した場合に見られるCTL効果の減少がCTL細胞死の増加によるものでないという見解を支持する。このようにして、標的細胞によるX4 gp120発現はCTLによる溶解を減少させたということが示された。
【0199】
SDF-1およびX4 gp120についてのケモカインレセプターであるCXCR4は、ヒトとマウスとの間で構造的におよび機能的に高度に保存されており、91%のアミノ酸配列相同性を有する(Heesen et al., 1996, J Immunol 157:5455-5460)。ヒトにおけるのと同様に、X4 gp120はCD4依存様式でCXCR4を発現するマウスT細胞において走化性を誘発する(Shieh, et al., 1998, J Virol 72:4243-4249)。ヒトSDF-1および組換えX4 gp120に対する休止マウスCD8+T細胞の移動反応は、移動アッセイ内におけるヒト休止CD8+T細胞のものと非常に類似するということが確かめられた(データは示さず)。126nMのSDF-1の濃度により、マウスモデルにおける確立された免疫応答を排除できるということが以前に示されている(Poznansky et al., 2000, Nat Med 6:543-548)。同様のプロトコルを使用して、X4 gp120が同じことをできるかを調べた。ニワトリオボアルブミン(Ova)に対して免疫化されたC57 BL/6マウスをOvaの腹腔内(IP)注射で3日後に誘発した(時間0)。24時間後、実験マウスは、高い(200ng/ml)または低い(20ng/ml)の投与量のX4 gp120を含む第二のIP注射を受けた。X4 gp120の組換えループ欠失形態も高いおよび低い投与量でテストした。コントロールのマウスをN-生理食塩水および煮沸した組換えX4 gp120のIP注射にさらした。高い投与量のX4 gp120により、マウスが感作された抗原に反応したIP腔へのT細胞の浸潤において著しい反転が生じた(図6A)。コントロールの動物と比較して、200ng/mlのX4 gp120を受けたマウスは、最初のIP Ova注射の27時間後(第二の注射の3時間後)、抗原誘発(p=0.04, Student’s t test)に反応した腹腔中へのT細胞浸潤が著しく減少したことが発見された。48時間において、違いは小さくなったが、コントロールに対してX4 gp120を受けたマウスにおけるCD3+細胞の減少はまだ見られた(p=0.05)。X4 gp120の組換えループ突然変異は、腹腔への免疫エフェクター細胞
の浸潤において検出可能な効果を有しなかった。gp120の「走化性」濃度(20ng/ml)は、抗原刺激のみの場合に見られた強い反応を超えて腹腔内へのT細胞の浸潤を増加させることはなかった(データは示さず)。これらのデータは、オボアルブミンのみにより誘発されたレベルを超えて腹腔内へのT細胞の浸潤を増加させることはなかったSDF-1の低い「走化性」濃度(12.6nM)により生じたものと類似した(Poznansky et al. 2000, Nat Med. 6:543-8)。
【0200】
抗原特異的CD8+T細胞移動を、Ova特異的TCRを発現するように設計されたOT-1マウスとの関連で調べた。既述のようにして、Ovaによる誘発に反応した腹腔内へのCD3+CD8+T細胞移動の数を特定した。Ovaの腹腔内注射の48時間後、コントロールのN-生理食塩水投与(p=0.038)あるいは熱失活したHIV-1gp120(p=0.47)またはV1、V2およびV3ループの欠失したHIV-1gp120の投与(p=0.044)と比較して、組換えX4 gp120により、腹腔内へのCD3+CD8+T細胞の浸潤が著しく減少した。
【0201】
結論
上述の修正された51Cr放出アッセイにより、生態における接触依存性細胞溶解の媒介に必要なエフェクター細胞移動の重要な要素を含む様式でCTL効果を評価する。このアッセイにより、HIVの場合だけでなく、CTLの検出可能性がウィルスコントロールと常には相関しない他の感染の場合にも、CTL移動およびエフェクターの能力の調査が可能となる(Lee, et al., 1999, Nat Med 5:677-685)。HIV-1タンパク質であるX4 gp120の高濃度が、T細胞、特にHIV特異的CTLを生体外で化学運動性の刺激から遠ざかるように活発に移動させ、標的細胞におけるgp120の発現がCTL効果を減少させるということが示されてきた。免疫回避のこの新しい機構は、他のレトロウィルス、ポックスウィルスおよびヘルペスウィルスに広く適用でき、これらのすべては、細胞移動に影響を与えるウィルスタンパク質をコードすることが示されている。さらに、化学運動性およびfugetaxisのシグナルの選択的な操作により、宿主の免疫応答が増加され、その結果、新しい免疫療法が提供され、ワクチンの有効性が増強されるかもしれない。
【0202】
上記は特定の実施の形態の単なる詳細な説明であることを理解しなければならない。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、および通常の実験のみにより様々の変更および等価物をなすことが当業者にとって明らかである。そのような変更および等価物はすべて添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】図1は、20ng/mlおよび200ng/mlの濃度において組換え体HIV-1IIIB gp120を使用する代表的なHIV特異的CTLクローン(161JD27)の移動反応を示す
【図2】図2は、移動アッセイに加える前に、Gαi、阻害剤、百日咳毒素(q)、または抗-CXCR-4抗体(0)と共にインキュベートされる場合に、百日咳毒素および抗-CXCR-4抗体が、X4 gp120に向かうまたはそれから遠ざかるT細胞の活発な移動を抑制することを示す
【図3】図3は、完全なおよび可変ループ欠失を含有するX4 HIV-1 gp120に反応したCD8+T細胞の移動を示す
【図4】図4は、CTLの移動が死滅有効性に影響を与えることを示す標準51Cr放出アッセイへの修正を示す。(A)丸底96ウェルプレート中の標準51CrアッセイにおけるCTL死滅を、平底プレートで行った実験と比較した。(B)細胞の総数がウェルごとに110000で一定に保たれ、E:Tの割合だけが変化する場合に、平底ウェルプレート中での標準アッセイを、修正された51Crアッセイと平行して行った。(C)数学的モデルの実験データへの相関関係。
【図5】図5は、CTL溶解における標的細胞によるX4 gp120発現の効果を示す
【図6】図6は、生体内において抗原誘発の部位へのT細胞の浸潤をX4 HIV-1 gp120が排除することを示す。C57/BL6(図6A)およびOT-1マウス(図6B)を皮下的にOvaで免疫化し、腹腔内(IP)Ova(時間0)で誘発し、IP Ova注射の24時間後、組換え体X4 HIV-1 gp120のいくつかの形態:HIV-1IIIB gp120(/)、HIV-1IIIB gp120ΔV1V2(1,[A])、HIV-1IIIB gp120ΔV1V2V3(x)の1つを投与した。
【図7】図7は、GenBankからのgp120の一連のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な免疫応答を抑制する組成物であって、gp120分子またはその機能等価物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記異常な免疫応答が、T細胞の所望でない浸潤を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記gp120分子が、前記T細胞の所望でない浸潤を抑制することを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記異常な免疫応答が、自己免疫疾患、免疫過敏症、アレルギー、喘息、移植片対宿主疾患(GVHD)、および炎症からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記異常な免疫応答を正常レベルまで減少させることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記gp120分子が、gp120ポリペプチドまたはその断片であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記gp120分子が、gp120核酸分子であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記gp120分子が、可溶性gp120分子または細胞結合gp120分子であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
抗原発現標的へ向かう抗原特異的免疫細胞の移動を増強する組成物であって、gp120により媒介されるfugetaxisを抑制する物質を含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
前記抗原特異的免疫細胞が、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原特異的標的が、無細胞HIVウィルスまたは細胞結合HIVウィルスであることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項12】
前記物質が、抗ケモカインレセプター抗体またはその断片、G-アルファ-i阻害剤、キナーゼ阻害剤、およびcAMP作用薬からなる群より選択されることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項13】
前記G-アルファ-i阻害剤が、百日咳毒素またはその機能等価物であることを特徴とする請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記キナーゼ阻害剤が、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-K)阻害剤およびチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項12記載の組成物。
【請求項15】
前記ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-K)阻害剤が、ワートマニンであることを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲニステインまたはハービマイシンであることを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項17】
前記cAMP作用薬が、環状ヌクレオチドであることを特徴とする請求項12記載の組成物。
【請求項18】
前記環状ヌクレオチドが、8-Br-cAMP またはその機能等価物であることを特徴とする請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記物質が、全身的にまたは徐放性媒体に入れて投与されることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項20】
抗HIV物質と組み合わせて投与されることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項21】
HIV感染を有する患者に投与されることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項22】
HIV感染を患う危険のある患者に投与されることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項23】
HIVにさらされた患者に投与されることを特徴とする請求項22記載の組成物。
【請求項24】
細胞傷害活性を有する前記抗原特異的免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、およびマクロファージからなる群より選択されることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項25】
前記抗ケモカインレセプター抗体またはその断片が、抗CXCR4抗体またはその断片、あるいは抗CXCR5抗体またはその断片であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項26】
前記抗原特異的免疫細胞が、細胞傷害活性を有する抗原特異的免疫細胞であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項27】
細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法であって、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバー中に配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が溶解されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、溶解された前記標的細胞の割合を特定する各工程を含み、前記溶解された標的細胞の割合が非蛍光アッセイを使用して測定され、前記エフェクター細胞が細胞傷害活性を有する免疫細胞であることを特徴とする方法。
【請求項28】
前記非蛍光アッセイが、放射能放出であることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのエフェクター細胞および前記少なくとも1つの標的細胞が、予め定められた割合で存在することを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記予め定められた割合が、1000:1、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1、5:1および1:1からなる群より選択されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
アッセイの結果を標準曲線と比較する工程をさらに含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項32】
平底チャンバーごとの細胞の総数が一定であることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記平底チャンバーごとの細胞の総数が、少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも25000、少なくとも50000、少なくとも75000、少なくとも100000、少なくとも125000、少なくとも150000、少なくとも175000、および少なくとも200000からなる群より選択されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項34】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、およびマクロファージからなる群より選択されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球であることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項36】
細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法であって、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバー中に配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が溶解されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、溶解された前記標的細胞の割合を特定する各工程を含み、前記溶解された標的細胞の割合をフローサイトメーターまたは放射能カウンターを使用して測定し、前記エフェクター細胞が細胞傷害活性を有する免疫細胞であることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記放射能カウンターを使用して、放射性クロム放出を測定することを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記フローサイトメーターを使用して、ヨウ化プロピジウム、7-AADまたは蛍光発生カスパーゼ基質を測定することを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つのエフェクター細胞および前記少なくとも1つの標的細胞が、予め定められた割合で存在することを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記予め定められた割合が、1000:1、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1、5:1および1:1からなる群より選択されることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項41】
アッセイの結果を標準曲線と比較する工程をさらに含むことを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項42】
平底チャンバーごとの細胞の総数が一定であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記平底チャンバーごとの細胞の総数が、少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも25000、少なくとも50000、少なくとも75000、少なくとも100000、少なくとも125000、少なくとも150000、少なくとも175000、および少なくとも200000からなる群より選択されることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、およびマクロファージからなる群より選択されることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項46】
細胞傷害活性を有する免疫細胞の活性を測定する方法であって、少なくとも1つのエフェクター細胞および少なくとも1つの標的細胞を平底チャンバー中に配置し、前記少なくとも1つのエフェクター細胞により前記少なくとも1つの標的細胞が溶解されるのに十分な時間前記細胞をインキュベートし、溶解された前記標的細胞の割合を特定し、溶解された前記標的細胞の割合を標準曲線と比較する各工程を含み、前記エフェクター細胞が細胞傷害活性を有する免疫細胞であることを特徴とする方法。
【請求項47】
溶解された標的細胞の前記割合を、蛍光または放射能放出により測定することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
フローサイトメーターまたは放射能カウンターを使用して、溶解された標的細胞の前記割合を測定することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記放射能カウンターを使用して、放射性クロム放出を測定することを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記フローサイトメーターを使用して、ヨウ化プロピジウム、7-AADまたは蛍光発生カスパーゼ基質を測定することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つのエフェクター細胞および前記少なくとも1つの標的細胞が、予め定められた割合で存在することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項52】
前記予め定められた割合が、1000:1、750:1、500:1、250:1、100:1、50:1、10:1、5:1および1:1からなる群より選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
平底チャンバーごとの細胞の総数が一定であることを特徴とする請求項46記載の方法
【請求項54】
前記平底チャンバーごとの細胞の総数が、少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも25000、少なくとも50000、少なくとも75000、少なくとも100000、少なくとも125000、少なくとも150000、少なくとも175000、および少なくとも200000からなる群より選択されることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項55】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞傷害性CD4+Tリンパ球、およびマクロファージからなる群より選択されることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項56】
前記細胞傷害活性を有する免疫細胞が、細胞傷害性CD8+Tリンパ球であることを特徴とする請求項46記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−517227(P2006−517227A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503168(P2006−503168)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002592
【国際公開番号】WO2004/072296
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】