説明

免震構造

【課題】 あらゆる状況の地震発生に対して、優れた免震効果を発揮できる、高い信頼性の免震構造を提供する。
【解決手段】 建物が構築される地盤に形成される地盤側基礎と、建物の下部に形成されるとともに前記地盤側基礎の上に載置される建物側基礎と、前記地盤側基礎及び建物側基礎の間に設けられる摩擦軽減手段とを具え、前記摩擦軽減手段は、地盤側基礎の上面に敷設されるセメント系の受け基板と、建物側基礎の下面に固着されるとともに前記受け基板の上に面接触して重なるセメント系の移動板とを含み、重なり合う受け基板の上面及び移動板の下面は、ポリイミド系樹脂をバインダーとする滑り塗材を塗工して形成される滑り塗膜によって被覆されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎部分に装備され、水平方向の地震振動の建物に対する伝播を抑制することにより建物に対する負荷を軽減しうる免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震エネルギーによる建物破損を抑制して、地震災害を最小限に食い止めるため種々の提案がなされている。その中でも、建物を支える基礎部分に、地盤の地震振動を一部吸収しうる装置を設けることにより、建物に伝わる地震エネルギーを低減する免震構造が多く提案されている。
【0003】
本出願人は、布基礎のフーチンング部を受けるために、地盤面に基礎スラブ状の受部を設け、受部に敷設したフッ素樹脂コーティング鋼板上に、布基礎の底面に固着されたフッ素樹脂コーティング鋼板を載置して、鋼板同士の所謂メタルタッチの滑り支承により布基礎を支持した免震構造を提案している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、コンクリートと鋼板を比較すると、ヤング率で数倍、熱膨張率で倍程度違うことから、地震の衝撃負荷を受けた際の変形、及び温度変化に伴う熱膨張が、基礎スラブ状の受部、及び布基礎と、鋼板とでは大きな差が生じる。その結果地震荷重の掛かり具合、温度など各種の状況変化によってメタルタッチの状態が微妙に変化することから、狙い通りの滑り効果を発揮することが困難となり、安定した免震効果が得られないという問題がある。また立地条件によっては、床下空間が長期間湿潤状態に置かれる場合があり、この場合鋼板に錆が発生して摩擦係数を増加させることにより免震効果に狂いが生じ、かつ耐久性が損なわれるという問題もあった。
【0005】
この問題解決のためさらに本出願人は、布基礎の下にエポキシエマルジョン系樹脂の滑り塗膜を設けたセメント系の滑り板を介在させる免震構造を特願2005−348175において提案している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−356049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エポキシエマルジョン系樹脂の滑り塗膜は、比較的大きな硬度を有するものの、地震エネルギーによって発生する動荷重は、その荷重値が大きいことは勿論、荷重周期、荷重の方向など様々な条件が想定されて、相当厳しい条件に耐える塗膜性能が要求されることから、信頼性の更なる向上が要求されていた。
【0008】
本発明は、重なり合う受け基板の上面及び移動板の下面は、ポリイミド系樹脂をバインダーとする滑り塗材を塗工して形成される滑り塗膜によって被覆されることを基本とし、あらゆる状況の地震発生に対して、優れた免震効果を発揮できる、高い信頼性の免震構造の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、建物が構築される地盤に形成される地盤側基礎と、建物の下部に形成されるとともに前記地盤側基礎の上に載置される建物側基礎と、前記地盤側基礎及び建物側基礎の間に設けられる摩擦軽減手段とを具え、前記摩擦軽減手段は、地盤側基礎の上面に敷設されるセメント系の受け基板と、建物側基礎の下面に固着されるとともに前記受け基板の上に面接触して重なるセメント系の移動板とを含み、重なり合う受け基板の上面及び移動板の下面は、ポリイミド系樹脂をバインダーとする滑り塗材を塗工して形成される滑り塗膜によって被覆されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明において、前記滑り塗膜は、膜厚が5〜50μmであり、請求項3に係る発明における滑り塗膜は、摩擦係数が0.02〜0.15であり、更に請求項4に係る発明の滑り塗膜は、ビッカース硬さが10〜30HVであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明において、前記滑り塗材は、潤滑粉を含み、請求項6に係る発明において、潤滑粉は、酸化チタン、PTFE粉末及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種類からなる。さらに、請求項7に係る発明では、潤滑粉として、粒径が0.1〜300μmのPTFE(フッ素樹脂)粉末が用いられる。
【0012】
さらに、請求項8に係る発明では、滑り塗材は、主剤100重量部に対して、0.1〜2.0重量部の酸化チタン、5.0〜20.0重量部のPTFE粉末及び0.7〜3.0重量部のカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種類の潤滑粉を含む。
【0013】
請求項9に係る発明において、前記滑り塗材は、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤、エポキシ樹脂を含む硬化剤及び希釈シンナーを含むう塗料組成物であり、前記主剤の内部溶剤及び希釈シンナーは、エチレングリコールアセテート、キシレン、イソブタノール、トルエン、エタノール、ブタノール、IPA、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルグリコール、エチルグリコールアセテート、エチルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤を用いることを特徴とする。
【0014】
請求項10に係る発明において、前記滑り塗膜は、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤、エポキシ樹脂を含む硬化剤及び希釈シンナーを含む塗料組成物を、100〜180℃の温度で、5〜30分間加熱することにより形成された塗膜であることを特徴とする。
【0015】
請求項11に係る発明において、受け基板及び移動板は、セメント、水、油性物質である樹脂成分、乳化剤及び補強繊維を含むW/O型エマルジョンの組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明においては、滑り塗膜を形成する滑り塗材は、イミド結合が強い分子間力を発揮するポリイミド系樹脂をバインダーとするため、塗膜の摩擦係数を低減できるとともに係数値のバラツキを抑制できる。更に、ポリイミド系樹脂は寸法安定性が高いことから平滑性に富み、かつ安定した滑り性を有する塗膜表面を形成することができる。従って、地震周期の大小、震度の大小、揺れ方向の違いなどを問わず、一定の優れた免震効果が得られる。
【0017】
またポリイミド系樹脂は、強固な分子構造と分子間力を有することから、通常の高分子に比べて卓越した化学的、物理的性質を有し、そのため長期間に亘る建物荷重又は交通振動などによる負荷を継続して受けても、決して変形、変質することのない安定した滑り塗膜が維持され、その結果免震性能の信頼性を高めることができる。
【0018】
請求項2に係る発明のように、膜厚が5〜50μmの滑り塗膜を形成するときには、セメント系の受け基板、移動板の表面に微小な凹凸があったとしても、これを覆って平滑な滑り塗膜表面を形成できる。また、請求項3に係る発明のように、滑り塗膜の摩擦係数が0.02〜0.15であるときには、特に住宅規模の基礎免震において、好適な滑り性能が発揮される。また請求項4に係る発明のように、滑り塗膜のビッカース硬さが10〜30HVであるときには、安定したしかも高性能な滑り性が得られ、免震装置の信頼性が一段と向上する。
【0019】
請求項5ないし8に係る発明のように、滑り塗材に潤滑粉を含ませることにより、滑り塗膜の滑り性が一段と向上するとともに安定し、免震性能の信頼性が向上する。
【0020】
特に請求項6又は8に係る発明のように、潤滑粉として、酸化チタン、PTFE粉末又はカーボンブラックを含むときには、滑り性能の向上とともに、適度な着色が可能になる。
【0021】
請求項9に係る発明において、主剤に含まれるエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、カルボン酸基を有するポリイミドオリゴマーであり、このポリイミドオリゴマーは、一般に使用される溶剤に良く溶融し、硬化剤に含まれるエポキシ樹脂と反応してポリイミドを得ることができる。従って、主剤の内部溶剤及び希釈シンナーとして、エチレングリコールアセテート、キシレン、イソブタノール、トルエン、エタノール、ブタノール、IPA、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルグリコール、エチルグリコールアセテート、エチルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤を用いることができ、これらの溶剤は毒性が低く、かつ入手容易なものである。その結果、塗装作業のハンドリングが良いとともに特殊な塗装装置を用いる必要がないため、工場設備を簡素化でき、又汎用の塗装ラインでの生産が可能となる。
【0022】
請求項10に係る発明のように、主剤に含まれるエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、カルボン酸基を有するポリイミドオリゴマーであるため、硬化剤に含まれるエポキシ樹脂と比較的低い温度域で容易に反応してポリイミドを得ることができる。このように滑り塗材は、100〜180℃の温度で、5〜30分加熱して塗膜形成できることから、比較的熱に弱いセメント系の受け基板、移動板を損傷することなく、免震構造に必要な強度を維持することができる。
【0023】
請求項11に係る発明のように、受け基板及び移動板として、セメント、水、油性物質である樹脂成分、乳化剤及び補強繊維を含むW/O型エマルジョンの組成物の成形体を用いると、樹脂成分とセメント結晶との複合物である微細なセル構造が形成されることから補強繊維の補強効果が有効に作用して、強固な受け基板及び移動板が形成される。その結果、地震エネルギーを受けても変形、破損の恐れがなく、安定した免震効果が得られるため、建物の地震に対する信頼性が向上する。しかも樹脂成分を含有することから、表面硬度が高いとともに摩擦係数も比較的小さく形成されるため、免震効果を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、免震構造1は、建物が構築される地盤2上に形成される地盤側基礎3と、この地盤側基礎3の上に載置されて、建物を直接支える建物側基礎4と、この地盤側基礎3及び建物側基礎4間の摩擦を軽減することにより、地震の際に振動する地盤側基礎3に対し建物を相対移動させて免震効果を生じる摩擦軽減手段5とを有する。なお本明細書において、建物とは、建築構造体の中で基礎よりも上側の部分を指し、戸建住宅、集合住宅、店舗、事務所、工場など各種用途のものが含まれる。
【0025】
前記地盤側基礎3は、建物側基礎4とともに建物の基礎を構成するものである。そして本形態の地盤側基礎3は、図1、2に示すように、地盤2を浅く掘削して形成された凹所内の割栗地業11上に、セメントコンクリートを平盤状に打設して形成され、その上面が平滑に仕上げられたベタ基礎状をなす。また地盤側基礎3は、図示されない基礎鉄筋が縦横に配筋され、かつ全周に沿って小高さの立上部12が形成されている。
【0026】
前記建物側基礎4は、図1に示すように、前記地盤側基礎3の上に、建物の外壁、柱等建物の荷重を支持する位置に配され、本形態では、図2に示すように、外壁に沿う布基礎状の連続する建物側基礎4Rと、図3に示すように、柱を受ける束基礎状の独立する建物側基礎4Dとを含む。更に間仕切り壁に沿って連続する建物側基礎4Rを配置することもできる。
【0027】
なお前記建物側基礎4には、補強のための基礎鉄筋、土台、柱取り付け用のアンカーボルト(図示せず)が配筋され、前記地盤側基礎3の上に枠状に組み立てた型枠にセメントコンクリートを打設して形成される。あるいは、予め工場で型枠成形したプレキャスト基礎部材を地盤側基礎3に載置して形成することもできる。
【0028】
前記摩擦軽減手段5は、建物側基礎4の配置位置に沿って地盤側基礎3上に敷設され、上面が滑り塗膜8により被覆された受け基板6と、建物側基礎4の下部に固着されるとともに下面が滑り塗膜8により被覆され、前記受け基板6の上に面接触して重なることによって、地震振動時受け基板6に対する滑りを生じて地震エネルギーの建物への伝播を抑制しうる移動板7とからなる。そして本形態の受け基板6、移動板7は、各々図2に示すように、連続する建物側基礎4Rに沿ってのびる連続する受け基板6R、連続する移動板7R、及び図3に示すように、独立する建物側基礎4Dの下に配される独立する受け基板6D、独立する移動板7Dとを含んで構成される。
【0029】
前記連続する受け基板6Rは、図2に示すように、連続する建物側基礎4Rの移動領域を設けるため、連続する建物側基礎4Rよりも広幅に形成された帯板状をなす。また独立する受け基板6Dは、図3に示すように、独立する建物側基礎4Dの周囲に移動領域を設けるため、独立する建物側基礎4D底面より大きい矩形板状をなす。またこの受け基板6の厚さは、例えば、10〜40mm程度、好ましくは15〜30mm、本形態では20mmとしている。そしてこれら受け基板6は、地盤側基礎3の上面に薄厚で均一に盛られた敷モルタル層13を介して水平に敷設される。敷モルタル層13は、地盤側基礎3表面の僅かなうねりを補正しつつ受け基板6を整一な高さで固着している。なお連続する受け基板6Rは、長さが一定寸法、例えば1800mm程度に形成されたものを、隙間、段差を生じることなく連続して敷設される。
【0030】
前記連続する移動板7Rは、図2に示すように、連続する建物側基礎4Rから小巾で食み出すように移動板7よりも3〜10%程度広幅に形成された帯板状をなす。なお連続する建物側基礎4Rと同巾の連続する移動板7Rを用いることも良い。また前記独立する移動板7Dは、図3に示すように、独立する建物側基礎4Dの周囲から小巾で食み出すように、独立する建物側基礎4Dの底面よりも3〜10%程度大きな矩形板状をなす。なお独立する建物側基礎4Dと同大の独立する移動板7Dを用いることも良い。そしてこの移動板7の厚さは、例えば、10〜40mm程度、好ましくは15〜30mm、本形態では20mmとしている。これら移動板7は、前記受け基板6上で、移動板7を囲んで組み立てられた型枠内に配されて、前記した建物側基礎4構築用のセメントコンクリートが打設されることにより、建物側基礎4の下面に一体化して固着される。なお、前記の如くプレキャスト基礎部材を用いる場合には、移動板7は予め工場で建物側基礎4と一体化される。
【0031】
前記受け基板6、及び移動板7は、例えばセメント系の成形板が用いられる。このようなセメント系の成形板としては、特に限定されるものではないが、例えば押し出し成形セメント板、フレキシブルボード(繊維強化セメント板)、木繊維混入セメントケイ酸カルシウム板、ケイ酸カルシウム板、パルプ混入セメントケイ酸カルシウム板又は繊維混入軽量セメント押し出し成形板など各種のセメントを主材とした各種の板材が使用できる。このように地盤側基礎3に敷設する受け基板6と、建物側基礎4の下部に固着する移動板7とをセメント系の板材で形成することにより、セメントコンクリートを用いて構成された地盤側基礎3及び建物側基礎4と、曲げ剛性、熱膨張率などの物性が近似した板材により摩擦軽減手段5が構成される。即ち、地盤側基礎3、建物側基礎4及び摩擦軽減手段5を構成する受け基板6、移動板7は、共に40GPa程度のヤング率を有するため、衝撃的な地震力が負荷する際に、同等の応力を生じて一体的に変形して、受け基板6及び移動板7の重なり合う面に形成された滑り塗膜8を介して、滑らかに相対移動できる。また地盤側基礎3、建物側基礎4及び摩擦軽減手段5を構成する受け基板6、移動板7は、共に7〜10×10(−6)/℃程度の熱膨張率を有することから、温度変化に対しても一体的に膨張収縮する。その結果、受け基板6と移動板7とは互いに平行な滑り塗膜8を介して重なり合う状態が維持され、滑らかに相対移動できる。そのため地震発生時に、建物の地震挙動が安定して抑制でき、構造設計通りの免震効果を発揮して、地震エネルギーによる建物の負荷が確実に軽減されて、建物の倒壊は勿論、損傷を最小限に抑えることができる。
【0032】
またセメント系の受け基板6及び移動板7自体は、鋼板に比べて概して摩擦係数が大きいとともに表面硬度も劣ることから滑り性が悪い。しかし滑り塗膜8を用いて被覆することによりこの欠点がカバーされ、むしろ錆などによる劣化が無い等耐久性に優れるとともに、前記の如く同質材料であるため地盤側基礎3及び建物側基礎4と強固に一体化でき、しかも製造コストを低減しうる。
【0033】
さらに本実施形態の受け基板6、移動板7は、セメント、水、油性物質である樹脂成分、乳化剤及び補強繊維を含むW/O型エマルジョンの組成物の成形物が用いられる。前記油性物質としては、水とW/Oエマルジョンを形成しうるものであれば特に制限はされないが、通常疎水性の液状物質を使用し、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート又は不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)などを用いることができる。これらの油性物質は、重合したポリマーがマトリックスを形成して得られるセメント複合材の物理的、機械的性質を向上すると共に、得られるセメント複合材中の独立気孔中に水が浸入しにくくなり、吸水率を低下させることができる点で好ましい。また重合性二重結合を有する油性物質を使用する場合には、油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物等の重合開始剤を併用することが望ましい。
【0034】
前記乳化剤(逆乳化剤)としては、組成物中の成分に応じて、W/Oエマルジョンを形成できるものが用いられる。例えばソルビタンセスキオレート、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート若しくはジグリセロールモノオレート等の非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤等を使用できる。乳化剤の含有量は適宜調整されるが、組成物中におけるセメント及び水(骨材を加える場合には更に骨材)の含有量の総量に対して1〜3体積%の範囲とするのが好ましい。
【0035】
前記セメントとしては、例えばポルトランドセメント、フライアッシュ又は高炉スラグ等を用いることができる。また補強繊維は、アスペクト比が100〜2000程度、長さが2〜20mm程度のアクリル繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維若しくはアラミド繊維等の合成繊維、炭素繊維又はガラス繊維等を好適に採用できる。
【0036】
前記W/O型エマルジョン組成物の成形に際しては、前記配合材料を撹拌混合してW/Oエマルジョン組成物を得、これを押出成形法、射出成形法又はプレス成形法等の通常用いられる成形方法により板状に成形した後、養生又は重合硬化させ、更に必要に応じて加熱する。前記養生又は重合硬化の条件は、例えば40〜100℃で20〜48時間とすることが好ましい。
【0037】
このようにして得られるW/O型エマルジョン組成物の成形体を、受け基板6及び移動板7に用いると、樹脂成分とセメント結晶との複合物である微細なセル構造が形成されることから、補強繊維の補強効果が有効に作用して、強固な受け基板6及び移動板7が形成される。そのため、地震エネルギーを受けつつ摺動による衝撃負荷を受けても、変形や破損することがなく、安定した免震性能を発揮でき、建物の地震に対する信頼性が向上する。しかも樹脂成分を含有することから、表面硬度が高いとともに摩擦係数も比較的小さく形成されるため、免震効果が一層向上する。
【0038】
このように構成される受け基板6の上面及び移動板7の下面は、図4に示す模式図のように、ポリイミド系樹脂をバインダーとした滑り塗材を均一に塗工して得られる滑り塗膜8によって被覆される。前記受け基板6の滑り塗膜8と、移動板7の滑り塗膜8とは、通常同厚さに形成され、その膜厚は、好ましくは5〜50μm程度、より好ましくは5〜30μmが望ましい。前記膜厚が5μm未満では移動板7の滑り性にムラが生じがちとなるため免震効果の信頼性が低下し、逆に50μmを超えると、過剰な塗膜厚となるとともに却って厚さが不均一になり易い。すなわち、この範囲の塗膜厚さに滑り塗膜8を形成することにより、セメント系の受け基板6、移動板7の表面に微小な凹凸を生じたとしても、これを覆って平滑な滑り塗膜8を形成することができる。なお、前記の好適な範囲内において、例えば移動板7の塗膜厚を、受け基板6の塗膜厚よりも、例えば20〜50%程度薄く形成することもできる。
【0039】
前記滑り塗膜8は、その摩擦係数が例えば、0.02〜0.15程度、好ましくは0.04〜0.08が望ましい。前記摩擦係数が0.02未満では、滑り性が過度となるため僅かな震動でも動きを生じ易く、逆に0.15を超えると、震動エネルギーの吸収能力が不足する恐れがある。このように滑り塗膜の摩擦係数を0.02〜0.15の範囲とすることによって、特に住宅レベルの基礎において、好適な滑り性能が得られる。
【0040】
前記滑り塗膜8の表面硬さは、ビッカース硬さで、例えば、10〜30HV程度、好ましくは15〜25HVが望ましい。前記ビッカース硬さが10未満では移動板7が建物の荷重を支持しつつ、受け基板6に対して相対移動する際に抵抗が大き過ぎて、滑らかな滑り性が得られず、逆に30HVを超えると、硬すぎるため、建物側基礎4が地震振動と共に受け基板6の領域外にまで移動する可能性がある。
【0041】
本実施形態において、前記ポリイミド樹脂をバインダーとして用いた滑り塗材には、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤と、エポキシ樹脂を含む硬化剤と、希釈シンナーとを含む塗料組成物が用いられる。
【0042】
前記主剤は、内部溶剤中に固形分比率で、例えば20〜60%程度、好ましくは30〜50%、本形態では40%のエポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含有している。このようなエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、カルボン酸基を有するポイミドオリゴマーを形成していることから、一般に汎用される溶剤に良く溶融する特徴を具える。
【0043】
該ポリイミド樹脂としては、例えば東洋紡績社製のバイロマックス(登録商標)などを用いることができる。
【0044】
前記硬化剤は、内部溶剤中に重量比率で、例えば50〜90%程度、好ましくは60〜80%、本形態では70%のエポキシ樹脂を含有している。前記主剤のエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、硬化剤中のエポキシ樹脂と反応することにより、ポリイミド樹脂を形成する。このようにして反応し、滑り塗膜8のバインダーとして機能するポリイミド系樹脂は、イミド結合によって強く安定した分子間力を有するため、前記滑り塗膜8の摩擦係数を低減できるとともに、その係数のバラツキを小さく抑制できる。また、イミド結合したポリイミド系樹脂は寸法安定性が高いことから滑り塗膜8表面の平滑性に富み、かつ安定した滑り性を有する塗膜表面を形成する。従って、地震周期の大小、震度の大小、揺れ方向の違いなどを問わず、一定の優れた免震効果が得られる。
【0045】
またポリイミド系樹脂は、強固な分子構造を持ち、大きな分子間力を有することから、通常の高分子に比べて優れた化学的、物理的性質を有する。そのため長期間に亘る建物荷重又は交通振動などによる負荷を継続して受けても、決して変形、変質することのない安定した滑り塗膜8を維持することができ、その結果信頼性の高い免震性能を発揮することができる。
【0046】
更には前記の如くエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、一般に汎用される溶剤に良く溶融する性質を有するため、主剤、硬化剤の内部溶剤及び塗料組成物の希釈シンナーとしては、エチレングリコールアセテート、キシレン、イソブタノール、トルエン、エタノール、ブタノール、IPA、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルグリコール、エチルグリコールアセテート、エチルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤を用いることができる。これら汎用される溶剤は、毒性が低く、かつ入手容易なものである。また塗装作業のハンドリングが良いとともに特殊な塗装装置を用いる必要がないため、工場設備を簡素化でき、又汎用の塗装ラインでの生産が可能となるなど多くの特徴がある。
【0047】
なお、滑り塗材には、内部溶剤中に重量比率で、例えば3〜20%程度、好ましくは7〜15%、本形態では10%の固形成分を含有する硬化触媒などが配されても良い。
【0048】
本発明で用いられる滑り塗材は、必要に応じて更に、潤滑粉を配合することができる。潤滑粉としては、酸化チタン、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)粉末及び/又はカーボンブラックなどが望ましいが、必要により、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂などの粉末も用いることができる。これらの潤滑粉は、滑り塗膜8に均一でスムースな滑り性を与えることにより免震性能を高めることができる。なお、PTFE粉末は、四フッ化エチレン樹脂を原料として、乳化重合法、懸濁重合法、粉砕等の製造方法により製造される。
【0049】
前記PTFE粉末は、好ましくは平均粒径が0.1〜300μm程度、好ましくは1.0〜300μm程度が望ましい。前記平均粒径が0.1μm未満では、塗膜内に埋没してしまい、初期の摩擦係数が大きくなるおそれがあり、逆に300μmを超えると、塗膜の平滑性が損なわれ、摩擦係数が大きくなるおそれがある。このようなPTFE粉末を潤滑粉として使用した場合、良好かつ均一な滑り性が得られるため、安定した免震効果が発揮できる点で好ましい。なお滑り塗材には、潤滑粉に加えて、シリコン系スリップ剤や及び/又はワックスを配合することも良く、この場合には潤滑性がより一層向上する点で好ましい。
【0050】
また潤滑粉は、具体的には前記主剤100重量部に対して、例えば、5〜50重量部程度、好ましくは10〜25重量部を配合されるのが望ましい。潤滑粉が5重量%未満では、滑り性が不足しがちで充分な免震効果が得られず、逆に50重量%を超えると、摩擦が過剰に低減するため、免震作用を必要としない弱震においても建物が僅かに移動する恐れがある。また本形態では、樹脂をバインダーとして用いるため、潤滑粉が強固に定着されて安定した滑り性を確保でき、その結果免震性能の信頼性が向上する点で好ましい。
【0051】
前記酸化チタンは、潤滑粉として用いられるのはもとより、白色顔料としても利用でき、好ましくは前記主剤100重量部に対し、0.1〜2.0重量部程度、好ましくは0.5〜1.5重量部配合されるのが望ましい。また、前記カーボンブラックも、潤滑粉として用いられるのはもとより、黒色顔料としても利用でき、好ましくは主剤100重量部に対し、例えば、0.7〜3.0重量部程度、好ましくは1.2〜2.0重量部配合されるのが望ましい。
【0052】
次に、滑り塗膜の形成方法について説明する。塗装する受け基板6、移動板7の表面の塵埃を除去し、例えば50〜70℃程度にプレヒートする。その後、受け基板6の下面、移動板7の上面に水系バックシーラー塗材を塗工してバックシーラー層10を形成するのが望ましい。この水系バックシーラー塗材としては、エポキシ樹脂エマルジョン主剤に溶剤型アミン系硬化剤を配合したものが使用され、例えば大日本塗料株式会社製「釉元シーラー」(登録商標)を好適に採用できる。このバックシーラー層10を設けることによって、床下の湿潤環境に長期間置かれる受け基板6、移動板7の吸水が抑制されるため、反り、エフロ現象を防止でき、その結果耐久性を向上させる。更に反対面に形成される滑り塗膜とバランスすることから、両面の吸水性が略整一に抑制されて、反りの発生を防止できる。なお、さらに防水性を高めるために、バックシーラー層10の外側に、アクリル系、ウレタン系又はアクリルシリコン系のエナメル塗料を塗付して塗膜を形成しても良い。
【0053】
前記釉元シーラーを塗工する際には、主剤、硬化剤及び水を所定量調合し、ディスパーで充分に攪拌し、均一状態に復帰した後、エアレス塗装機を用いて均一に塗装する。塗布量は、例えば、50〜200g/m程度、好ましくは70〜150g/mが望ましい。1〜30分程度のセッティング時間の経過後、加熱炉に入れて塗膜を形成する。加熱条件は、例えば80〜150℃程度、好ましくは90〜130℃程度とし、加熱炉の通過時間は約3〜10分程度とする。加熱炉から搬出した後は、室温乃至40℃の雰囲気中に積載して冷却する。
【0054】
次に、裏側に前記バックシーラー層10を形成した基板6の上面、及び移動板7の下面に滑り塗膜8を形成する工程を説明する。前記と同様表面の塵埃を除去し、各板6及び7を例えば50〜70℃程度にプレヒートする。そして、受け基板6の上面及び移動板7の下面に、先ず水系アンダーシーラー塗材を塗工してアンダーシーラー層9を形成する。なおこの水系アンダーシーラー塗材は、前記水系バックシーラー塗材と同じく、釉元シーラーを用い、かつ前記と同様の方向で塗工される。
【0055】
次に、前記アンダーシーラー層9の上に、滑り塗材が塗工される。この滑り塗材は、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤、エポキシ樹脂を含む硬化剤、PTFE粉末、酸化チタン、カーボンブラック及び希釈シンナーを含んで構成される。具体的には、先ず主剤に粒状のPTFE粉末、酸化チタン及びカーボンブラックを配合して、均一状態となるまでディスパーで充分に攪拌し、次いで硬化剤を添加して均一状態となるよう1分以上攪拌し、次いで硬化剤を添加して1分以上攪拌し、次いで希釈シンナーを添加して、均一状態になるよう1分以上攪拌する。なお希釈シンナーとしては、上述した有機溶剤が用いられる。
【0056】
このようにして得られた滑り塗材を、エアレス塗装機を用いてアンダーシーラー層9の上に均一に塗装する。塗布量は、例えば、50〜200g/m程度、好ましくは70〜150g/mとする。1〜30分程度のセッティング時間の経過後、加熱炉に入れて塗膜を加熱する。加熱条件は、例えば100〜180℃程度、好ましくは130〜170℃程度とし、加熱炉の通過時間は約5〜30分程度とする。加熱炉から搬出した後は、室温乃至40℃の雰囲気中に積載して冷却する。前記滑り塗材の主剤に含まれるエポキシ硬化型ポリイミド樹脂は、前記の如くカルボン酸基を有するポリイミドオリゴマーであるため、硬化剤に含まれるエポキシ樹脂と比較的低い温度域で容易に反応してポリイミドを得ることができる。従って滑り塗材は、100〜180℃程度の比較的低い温度域で加熱して塗膜形成できることから、高熱に弱いセメント系の受け基板6、移動板7を損傷することなく、免震構造に必要な強度を維持することができる。
【実施例】
【0057】
図2に示した連続する建物側基礎4Rにおける免震構造の実施例を表1に示す。寸法は、下記の通りである。
建物側基礎:幅170mm
移動板:幅185mm×厚さ20mm
受け基板:幅800mm×厚さ20mm
【0058】
受け基板及び移動板には、セメント含有W/O型エマルジョン組成物の成形物が用いられた。これは、ポルトランドセメント、水、ビニルモノマーソリューションと、補強繊維(ポリプロピレン繊維)とを体積比で、20:55:7:2の割合で配合して組成物を得、これを板状に押出成形した上、60℃、48時間の条件で養生硬化して調製することにより得られた。また、上記ビニルモノマーソリューションは、ビニルモノマー(スチレン)と乳化剤(ソルビタンモノオレート)とを体積比率で5:2となるように混合した混合物である。
【0059】
また、滑り塗材には、以下の配合が用いられた。
エポキシ硬化型ポリイミド樹脂(主剤) 100.0重量部
エポキシ樹脂からなる硬化剤 28.0重量部
硬化触媒 6.0重量部
PTFE粉末 配合量は表1中に記載
酸化チタン 配合量は表1中に記載
カーボンブラック 配合量は表1中に記載
希釈シンナー 221.7重量部
【0060】
前記PTFE粉末には、デュポン社製「TLP10F−1」が用いられた。このPTFE粉末は、見掛密度350g/L、融点325±10℃、平均粒度3μmの諸元を有し、低分子量であるために有機系物質に対して好適な親和性を有し、混合性に優れている。また、酸化チタンには、平均粒径0.2〜0.3μmのもの(石原産業社製)が、またカーボンブラックについては、平均粒径が24μmのもの(三菱化学社製)がそれぞれ採用された。
【0061】
滑り塗材は、上記各材料を混合し、ディスパーを用いて充分に攪拌することにより得られた。そして、この滑り塗材を、表面が60℃にプレヒートされた受け基板、及び移動板の表面にエアレス塗装装置を用いて100g/m塗工し、10分間放置した後、JET加熱炉(乾燥温度は表1に記載)に入れ10分加熱乾燥することにより滑り塗膜が形成された。
【0062】
このようにして形成された滑り塗膜のビッカース硬さを、JISB7774(廃止済)に従って測定した。具体的には(株)明石製作所製MVK−Cを使用し、荷重速度を0.1〜0.2mm/秒、荷重保持時間を30秒の条件のもと、正四角錐(対面角136°)のダイヤモンド圧子を試料に押し込む方法により表面硬度を測定した。
【0063】
またアンダーシーラー層を有するものについては、その塗材に、大日本塗料株式会社製「釉元シーラー」(登録商標)が用いられた。
【0064】
さらに、免震効果を確認するため、前記実施例と同様の仕様に基づき、巾5cm、長さ20cmの受け基板、及び一辺5cmの矩形状の移動板に滑り塗膜を形成した試験サンプルを作製し、各例について摩擦係数が測定された。測定方法は、受け基板上に重ねた移動板に、二種類(1490N及び2980N)の載荷荷重を負荷し、この状態において移動板に速度50mm/分の水平方向の引っ張りを加えることにより、移動板がスライドする時の引張力(摩擦力)を測定し、これを載荷荷重で除すことにより摩擦係数を求めた。なお試験は各実施例に関し、二種類の載荷荷重に対して各々3回の試験を実施し、各荷重毎にその平均値を表1に示している。
【0065】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【0066】
表1−1から明らかなように、滑り塗膜の厚さが30〜50μmのものについては、良好な摩擦係数が得られていることが分かる。また、表1−2より、滑り塗膜は、潤滑粉として、酸化チタン、PTFE粉末及びカーボンブラックの3種類を含む場合に最も小さくかつ安定した摩擦係数になることが分かる。さらに、表1−3より、滑り塗膜を乾燥させる温度が高いほど、小さくかつ安定した摩擦係数が得られることが分かる。さらに、アンダーシーラー層を含む塗膜構成でも摩擦係数は変わらないことが確認できる。
【0067】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する平面図である。
【図2】その要部拡大斜視図である。
【図3】他の要部拡大分解斜視図である。
【図4】その断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 免震構造
2 地盤
3 地盤側基礎
4 建物側基礎
5 摩擦軽減手段
6 受け基板
7 移動板
8 滑り塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が構築される地盤に形成される地盤側基礎と、建物の下部に形成されるとともに前記地盤側基礎の上に載置される建物側基礎と、前記地盤側基礎及び建物側基礎の間に設けられる摩擦軽減手段とを具え、
前記摩擦軽減手段は、地盤側基礎の上面に敷設されるセメント系の受け基板と、建物側基礎の下面に固着されるとともに前記受け基板の上に面接触して重なるセメント系の移動板とを含み、
重なり合う受け基板の上面及び移動板の下面は、ポリイミド系樹脂をバインダーとする滑り塗材を塗工して形成される滑り塗膜によって被覆されていることを特徴とする免震構造。
【請求項2】
前記滑り塗膜は、膜厚が5〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の免震構造。
【請求項3】
前記滑り塗膜は、摩擦係数が0.02〜0.15であることを特徴とする請求項1又は2記載の免震構造。
【請求項4】
前記滑り塗膜は、ビッカース硬さが10〜30HVであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の免震構造。
【請求項5】
前記滑り塗材は、潤滑粉を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の免震構造。
【請求項6】
前記潤滑粉は、酸化チタン、PTFE粉末及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種類を含む請求項5に記載の免震構造。
【請求項7】
前記潤滑粉は、粒径が0.1〜300μmのPTFE粉末を含む請求項5に記載の免震構造。
【請求項8】
前記滑り塗材は、主剤100重量部に対して、0.1〜2.0重量部の酸化チタン、5.0〜20.0重量部のPTFE粉末及び0.7〜3.0重量部のカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種類の潤滑粉を含む請求項5に記載の免震構造。
【請求項9】
前記滑り塗材は、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤、エポキシ樹脂を含む硬化剤及び希釈シンナーを含む塗料組成物であり、
前記主剤の内部溶剤及び希釈シンナーは、エチレングリコールアセテート、キシレン、イソブタノール、トルエン、エタノール、ブタノール、IPA、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルグリコール、エチルグリコールアセテート、エチルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤である請求項1〜8のいずれかに記載の免震構造。
【請求項10】
前記滑り塗膜は、エポキシ硬化型ポリイミド樹脂を含む主剤、エポキシ樹脂を含む硬化剤及び希釈シンナーを含む塗料組成物を、100〜180℃の温度で、5〜30分間加熱することにより形成された塗膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の免震構造。
【請求項11】
前記受け基板及び移動板は、セメント、水、油性物質である樹脂成分、乳化剤及び補強繊維を含むW/O型エマルジョンの組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の免震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−52289(P2009−52289A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220020(P2007−220020)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】