説明

免震装置取り付け構造

【課題】免震装置交換時、作業負担やコスト、工期を軽減することが可能な免震装置取り付け構造を提供する。
【解決手段】本発明は、弾性部材と金属板とが積層された弾性積層部101と、前記弾性積層部101の鉛直方向上端に設けられた上側フランジ部102と、前記積層部の鉛直方向下端に設けられた下側フランジ部103と、からなる免震装置100を取り付けるための免震装置取り付け構造であって、前記上側フランジ部102又は前記下側フランジ部103のいずれか一方側に、第1ローラー部材115を回動可能に装着した第1フレーム部材111と、前記第1フレーム部材111の前記第1ローラー部材115と対向する第2ローラー部材125を回動可能に装着した第2フレーム部材121と、前記第1フレーム部材111と、前記第2フレーム部材121と間に配されるスペーサー部材130を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムなどの弾性部材と剛性板である金属板とが交互に積層されてなる弾性積層部支承の免震装置の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造による建物、土木構造物、大規模モニュメントなどの各種の構築物の耐震性を向上させるために、積層ゴムを上下フランジ間に設けてなる免震装置をその構築物の地下部や中間層部に用いて免震部を形成し、地盤側から建物に達した地震時の揺れを前記免震部で抑えるようにしている。そして、この免震部を構成している前記免震装置はその耐用年数に達したり、或いは設置条件の変化により著しく劣化したり、さらには地震や火災などで損傷が加わった場合にこの免震装置の交換が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平11−13306号公報)に記載されているように、免震装置の取替えは通常、免震装置の周囲にオイルジャッキ等のジャッキを設置し、免震装置の上面が上部構造と接触しなくなる程度まで上部構造をジャッキアップし、免震装置の負担を解除させた状態で、免震装置を上部構造と下部構造から取り外し、その位置に新たな免震装置を設置する、という要領で行われる。
【特許文献1】特開平11−13306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部構造をジャッキアップするには、前記ジャッキが免震装置の負担する鉛直軸力を上回る軸力を必要とし、重量が大きい建造物の免震装置の交換の場合には、ジャッキも大型のものが必要となり、免震装置交換のための作業に多大な労力・コスト・工期を要するという問題があった。また、重量が大きい建造物の場合には、ジャッキアップに伴って上部構造の梁を損傷させる問題もあり、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、弾性部材と金属板とが積層された弾性積層部と、前記弾性積層部の鉛直方向上端に設けられた上側フランジ部と、前記積層部の鉛直方向下端に設けられた下側フランジ部と、からなる免震装置を取り付けるための免震装置取り付け構造であって、前記上側フランジ部又は前記下側フランジ部のいずれか一方側に、第1ローラー部材を回動可能に装着した第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材の前記第1ローラー部材と対向する第2ローラー部材を回動可能に装着した第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材と、前記第2フレーム部材と間に配されるスペーサー部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の免震装置取り付け構造によれば、免震装置の負担する鉛直軸力と同程度の軸力を有する支持構造物があれば、免震装置を交換することが可能となり、作業負担やコスト、工期を軽減することが可能となる。また、ジャッキアップを行うわけではないので、上部構造の損傷を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造における免震装置交換手順を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造における免震装置交換手順を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造における免震装置交換手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造を説明する図である。図1において、100は免震装置、101は弾性積層部、102は下側フランジ部、103は上側フランジ部、110は下側平板部材、111は第1フレーム部材、115は第1ローラー部材、120は上側平板部材、121は第2フレーム部材、125は第2ローラー部材、130はスペーサー部材、140は垂直支持部材をそれぞれ示している。なお、以下の実施形態においては、免震装置100の取り付け構造部が免震装置100の上に位置するようにしているが、これを免震装置100の下に位置するように配することも可能である。
【0009】
ゴムなどの弾性部材と剛性板である金属板とが交互に積層されてなる弾性積層部101支承の免震装置100において、弾性積層部101鉛直方向上端には上側フランジ部103が、また、弾性積層部101鉛直方向下端には下側フランジ部102が設けられている。これらの下側フランジ部102、上側フランジ部103は、不図示の穴部が設けられており、ボルト・ナットによる固定を行い得るようになっている。
【0010】
本発明では、上記のような免震装置100を、建物の上部構造(基礎版など)及び下部構造(免震装置用ペデスタル)の間に取り付けるときにおいては、その交換時の作業性等が配慮された取り付け構造が採用されている。
【0011】
上側フランジ部103上部には、金属製の下側平板部材110がボルト・ナットによって固定されており、この下側平板部材110の上面部には第1フレーム部材111が載置される。なお、下側平板部材110と第1フレーム部材111とを固定するようにしても良い。
【0012】
第1フレーム部材111は、複数の第1ローラー部材115が回転可能に軸支(中心:O)されており、第1フレーム部材111から露出する第1ローラー部材115の外周面は、当該外周面と当接するスペーサー部材130の紙面水平方向の移動に伴い、回転するようになっている。
【0013】
また、建物の上構造部の下部には、金属製の上側平板部材120がボルト・ナットによって固定されており、この上側平板部材120の下面部には第2フレーム部材121が不図示の固定構造により固定されている。
【0014】
第2フレーム部材121は、複数の第2ローラー部材125が回転可能に軸支(中心:O’)されており、第2フレーム部材121から露出する第2ローラー部材125の外周面は、当該外周面と当接するスペーサー部材130の紙面水平方向の移動に伴い、回転するようになっている。
【0015】
第1フレーム部材111と、第2フレーム部材121と間にはスペーサー部材130が配された状態で、複数の垂直支持部材140によって、下側平板部材110と上側平板部材120との間が固定されるようになっている。このような垂直支持部材140は図1不図示の分も含めて4枚設けることが好ましい。
【0016】
図1に示すような免震装置100の取り付け構造においては、免震装置交換時には下側平板部材110の下端面から上側平板部材120の上端面までの空間が、交換時スペースとし確保することが可能となる。
【0017】
以上のように構成される本発明の免震装置取り付け構造において、免震装置100の交換時の手順を説明する。図2乃至図4は本発明の実施形態に係る免震装置取り付け構造における免震装置交換手順を説明する図である。
【0018】
免震装置100の交換時においては、不図示の支持構造物を建物の上構造物と下構造物との間に配するようにして上構造部を支えるようにする。本発明においては、従来のように上構造部をジャッキアップするまでのものは必要なく、上構造物と下構造物との間の間隔が維持できるような支持構造物を準備すればよい。
【0019】
前記のような支持構造物を上構造物と下構造物との間に配した後、図2に示すように、下側平板部材110と上側平板部材120との間を固定していた垂直支持部材140を取り外す。これにより、スペーサー部材130が露出することとなる。このような状態となった上で、スペーサー部材130を水平方向に引き抜く。第1フレーム部材111の第1ローラー部材115、及び、これに対向する第2フレーム部材121の第2ローラー部材125は共に、スペーサー部材130の引き抜きに伴い回転するので、スペーサー部材130は強い抵抗を受けることなく、引き抜きが可能である。
【0020】
上記のようにスペーサー部材130が取り去られた後には、図3に示すように、上側平板部材120と第2フレーム部材121が取り外される。
【0021】
この後、図4に示すように、免震装置100上部の下側平板部材110と第1フレーム部材111とが取り外され、さらに、免震装置100の下側フランジ部102を、下構造部に固定していたナット類が取り外される。これにより、免震装置100は固定が解かれ、新しい免震装置と交換することが可能となる。
【0022】
以上のように、本発明の免震装置取り付け構造によれば、免震装置100の負担する鉛直軸力と同程度の軸力を有する支持構造物があれば、免震装置100を交換することが可能となり、作業負担やコスト、工期を軽減することが可能となる。また、ジャッキアップを行うわけではないので、上部構造の損傷を低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
100・・・免震装置、101・・・弾性積層部、102・・・下側フランジ部、103・・・上側フランジ部、110・・・下側平板部材、111・・・第1フレーム部材、115・・・第1ローラー部材、120・・・上側平板部材、121・・・第2フレーム部材、125・・・第2ローラー部材、130・・・スペーサー部材、140・・・垂直支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材と金属板とが積層された弾性積層部と、前記弾性積層部の鉛直方向上端に設けられた上側フランジ部と、前記積層部の鉛直方向下端に設けられた下側フランジ部と、からなる免震装置を取り付けるための免震装置取り付け構造であって、
前記上側フランジ部又は前記下側フランジ部のいずれか一方側に、第1ローラー部材を回動可能に装着した第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材の前記第1ローラー部材と対向する第2ローラー部材を回動可能に装着した第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材と、前記第2フレーム部材と間に配されるスペーサー部材を設けたことを特徴とする免震装置取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214601(P2011−214601A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80881(P2010−80881)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】