説明

免震装置用の免震プラグの製造方法及びその製造装置

【課題】材料に鉛を使用することなく、免震装置の減衰性能及び変位追従性を向上させ得る免震プラグの製造方法、並びにかかる製造方法を実施し得る免震プラグの製造装置を提供する。
【解決手段】側壁を形成する中型7を有する金型3内に充填された粉体材料2に、加圧成形を行って免震装置用の免震プラ6グを成形するに当たり、かかる中型7と粉体材料2との界面においてせん断応力が生じるように中型7に対して外力を付与しつつ加圧成形を行なう製造方法である。また、かかる製造方法を用いて製造される免震プラグ6である。更に、かかる製造方法を実施し得る金型3及びスタンパ5を具える製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震装置の減衰性能及び変位追従性を向上させ得る免震プラグを製造する方法、並びにかかる製造方法を実施するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の粘弾性的性質を有する軟質板と鋼板等の硬質板とを交互に積層した免震構造体が、免震装置の支承等として使用されている。このような免震構造体の中には、例えば、軟質板と硬質板とからなる積層体の中心に中空部を形成し、該中空部に免震プラグが圧入されたものがある。
【0003】
上記免震プラグとしては、全体が鉛からなるものが使用されることが多く、地震の発生に伴って積層体が剪断変形する際に、かかる免震プラグが塑性変形することで振動のエネルギーを吸収する。しかしながら、鉛は、環境負荷が大きく、また、廃却時等に要するコストが大きい。そのため、鉛の代替材料を用いても、充分な減衰性能、変位追従性等を有する免震プラグの開発が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、鉛免震プラグに代えて、積層体の中空部に塑性流動材及び硬質充填材からなり、硬質充填材の隙間を塑性流動材で充填するようにした粉体材料を封入した免震装置が提案されている。かかる免震プラグは、鉛免震プラグと同様、長期の使用に際しても、その減衰性能及び変位追従性が安定して確保される。なお、塑性流動材としては、天然ゴムやアクリルゴムなどがあり、硬質充填材としては、ステンレス鋼粉、鉄粉などの金属粉体などがある。かかる免震プラグは、金型内に充填された粉体材料を加圧方向に直交する平面状の加圧面を有するスタンパにより所定の面圧にて加圧成形することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の免震プラグを具える免震装置は、鉛からなる免震プラグを使用することなく、減衰特性及び変位追従性が長期にわたり安定して確保されているものの、近年の建設物の大型化、高層化を背景に、免震装置の更なる性能向上が求められており、そのことから、免震装置の減衰特性及び変位追従性の更なる向上が希求されている。また、特許文献1には、この免震プラグの製造方法についても言及されているが、一般的な粉体材料の加圧成形法の域を出るものではない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、これまで充分に着目、検討されてこなかった免震プラグの製造方法について改良を図ることにより、材料に鉛を使用することなく、免震装置の減衰性能及び変位追従性を更に向上させ得る免震プラグを有利に製造する方法を提供することにある。また、この発明の更なる目的は、かかる製造方法を実施し得る免震プラグの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、第一発明は、側壁を形成する中型を有する金型内に充填された粉体材料に、加圧成形を行って免震装置用の免震プラグを成形するに当たり、かかる中型と粉体材料との界面においてせん断応力が生じるように該中型に対して外力を付与しつつ加圧成形を行なうことを特徴とする免震プラグの製造方法である。
【0009】
また、第一発明において、せん断応力が前記粉体材料に対する加圧方向に平行な方向に生じるように前記中型に外力を付与することが好ましい。
【0010】
更に、第一発明において、せん断応力が前記粉体材料に対する加圧方向とは反対の方向に生じるように前記中型に外力を付与することが好ましい。
【0011】
第二発明は、上述した第一発明の免震プラグの種々の製造方法を用いて製造される免震プラグである。
【0012】
第三発明は、粉体材料が充填され、側壁を形成する中型を有する金型、及び該金型内の粉体材料を加圧成形するスタンパを具える、免震装置用の免震プラグの製造装置において、かかる金型の中型が、スタンパの軸線方向に移動可能であることを特徴とする免震プラグの製造装置である。このとき、スタンパの加圧成形時に、中型が、スタンパの加圧方向とは反対の方向に移動してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、鉛の代替材料である粉体材料を用いて、これを加圧成形する際に、圧縮力を効率的に利用して粉体材料を圧縮して、空気含有率の小さい成形品を得ることができる。従って、免震装置の減衰性能及び変位追従性の向上に大きく寄与する免震プラグを提供することが可能となる。また、空気含有率の小さな免震プラグを製造するために適した製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(c)は、この発明の実施形態に係る免震プラグの製造工程を示した図である。
【図2】(a)は、この発明に従って製造された免震プラグを圧入した免震装置の上面図であり、(b)は、かかる免震装置の断面図である。
【図3】(a)は、充分に圧縮されていない粉体材料の硬質充填材の相互配置を示した図であり、(b)は、充分に圧縮された粉体材料の硬質充填材の相互配置を示した図である。
【図4】(a)〜(f)は、この発明に従うその他の免震プラグの製造工程を示した図である。
【図5】(a)〜(f)は、この発明に従うその他の免震プラグの製造工程を示した図である。
【図6】(a)〜(h)は、この発明に従うその他の免震プラグの製造工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しつつ、この発明の実施形態を説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態に係る免震プラグの製造工程を示した図である。図2(a)は、本実施形態に従って製造された免震プラグを圧入した免震装置の上面図であり、図2(b)は、かかる免震装置の断面図である。図3(a)は、充分に圧縮されていない粉体材料の硬質充填材の相互配置を示した図であり、図3(b)は、充分に圧縮された粉体材料の硬質充填材の相互配置を示した図である。図4(a)〜(f)、図5(a)〜(f)及び図6(a)〜(h)は、本実施形態に係るその他の免震プラグの製造工程を示した図である。
【0016】
本実施形態に係る免震プラグの製造装置1は、図1に示すように、塑性流動材A及び硬質充填材Bからなる粉体材料2が充填され、中型が移動可能な円筒形状の金型3、並びにかかる金型3内の粉体材料2を加圧する加圧面4を夫々有するスタンパ5を具える。かかるスタンパ5は、加圧方向に直交する平面状の加圧面4aを有する平面スタンパ5aである。かかる製造装置を用いて、図1(a)〜(c)の製造工程に示すように、金型3内に充填された粉体材料2を、平面スタンパ5aにより加圧することにより免震装置用の免震プラグ6を成形する。以下にその詳細を説明する。
【0017】
はじめに、図1(a)に示すように、金型3内に免震プラグ6の材料となる塑性流動材A及び硬質充填材Bからなる粉体材料2を充填する。次いで、図1(b)に示すように、平面スタンパ5aを矢印αの方向に移動させると同時に、金型3の側壁を形成する中型7を平面スタンパ5aの加圧方向とは反対の方向(矢印βの方向)に移動させる。そうすることで、金型3の中型側にある粉体材料2と金型3の中型7との摩擦力(矢印γ)を利用して、かかる平面スタンパ5aにより圧縮変形する力(矢印Δ)とが組み合わされ、中型と粉体材料2との界面においてせん断応力が生じ、粉体材料2も強く圧縮されることから、空気含有率が全体に小さくなった免震プラグ6が得られる。そして、図1(c)に示すように、免震プラグ6は、金型3から抜き出され、図2に示すように、免震装置8へ圧入される。かかる免震装置8としては、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、ゴム板9と鋼板10とを交互に積層した積層体11と、その積層体11の中央に配置した免震プラグ6とを具えるものがある。また、図1に示す製造方法では、金型3の中型7を加圧方向とは反対の方向に移動させつつ、加圧成形しているが、金型3の中型7は、上下いずれの方向に移動させても、かかる中型7近傍にある粉体材料2の流動が促され、効果的に圧縮することが可能となることから、図示は省略するが、金型3の中型7を加圧方向と平行な方向に移動させつつ、加圧成形するような製造方法も本願発明に含まれるものである。両者を比較すると、中型3の中型7を加圧方向と平行な方向に移動させつつ加圧成形するよりも、金型3の中型7を加圧方向とは反対の方向に移動させつつ加圧成形した方が、中型7と粉体材料2との界面において生じるせん断応力が大きくなることから、粉体材料2の流動が強く促される。従って、効果的に圧縮する観点からは、図1に示すように、金型3の中型7を加圧方向とは反対の方向に移動させつつ、加圧成形するほうが好ましい。
なお、粉体材料の相互配置は、従来の免震プラグの製造装置により製造された免震プラグは、粉体材料が充分に圧縮されないことから、図3(a)に示すように、粉体材料相互間の隙間が大きく、空気の残留し易い配列となっていた。それに対し上記したこの発明に従う免震プラグの製造装置により免震プラグを製造すると、粉体材料間の隙間を小さくして、粉体材料を図3(b)に示すような空気が残留し難い最密配置とすることとなる。
【0018】
また、図4の製造工程に示すように、加圧方向に対し傾斜した平面状の加圧面4bを有する傾斜スタンパ5bを用いて、加圧成形することが好ましい。この製造工程では、はじめに、図4(a)に示すように、金型3内に粉体材料2を充填し、次いで、図4(b)に示すように、傾斜スタンパ5bを矢印αの方向に移動させると同時に、金型3の中型7をスタンパによる加圧方向とは反対の方向(矢印βの方向)に移動させ、傾斜スタンパ5bの加圧面4bにより、粉体材料2に傾斜スタンパ5bの加圧方向に対して斜めの流動を促しつつ、上述したように、金型3の中型7による摩擦力を利用して粉体材料を強く圧縮することで、粉体材料2の受圧面7の形状を加圧面4bの形状に対応する形状に変形させる。その後、図4(c)に示すように、金型3の中型7を元の位置に移動(矢印β’の方向に移動)させつつ、傾斜スタンパ5bを矢印α’の方向に引き上げてから、傾斜スタンパ5bの軸線Xを中心に、例えば、180°回転させることにより、最初の加圧成形にて与えられた受圧面12に対向する加圧面4bの形状を初回とは異なる形状に変更させる。それから、図4(d)に示すように、再度、傾斜スタンパ5bを矢印αの方向に移動させると同時に、金型3の中型7を傾斜スタンパ5bの加圧方向とは反対の方向(矢印β”の方向)に移動させ、加圧面4bにより粉体材料2の受圧面12を矢印α”の方向に加圧し、粉体材料2の加圧方向に対して斜めの流動を促しつつ、金型3の中型7による摩擦力を利用して粉体材料を強く圧縮することで、粉体材料2の受圧面12の形状を新たな加圧面4bの形状に対応する形状に変形させる。上記工程により、図1に示すような平面スタンパ5aにより粉体材料2を加圧成形する場合に比べ、粉体材料2の流動が促されることから、空気含有率を更に低減した免震プラグ6が得られる。このようにして得られた免震プラグ6は、免震装置8への圧入にそのまま供することも可能であるが、更に、図4(e)〜(f)に示す工程によって成形することが好ましい。すなわち、図4(e)に示すように、粉体材料2を、金型3から抜き出し、図中の点線に沿って、受圧面12の突出した部分を切断することで、粉体材料2の形状を整え(加圧方向に直交する平面状とし)、図4(f)に示すような免震プラグ6の成形が完了する。
【0019】
あるいは、上記した図4(e)〜(f)の工程に替えて、以下の工程により、免震プラグ6の受圧面12の形状を加圧方向に直交する平面状とすることも可能である。すなわち、図示は省略するが、図4(d)に示す工程の後、傾斜スタンパ5bを、スタンパ5の加圧方向に直交する平面状の加圧面4aを有する平面スタンパ5aに置き換え、それを用いて免震プラグ6を加圧し、免震プラグ6の形状を整え(加圧方向に直交する平面状とし)、成形を完了させることもできる。なお、副次的な効果ではあるが、この製造工程では、図4に示す製造工程のように粉体材料2を切断する工程が無いことから、かかる切断により生じる粉体材料2の廃棄部分が無くなり、免震プラグ6の製造に際し、粉体材料を無駄なく使用すること可能となる。このことは、免震プラグ6の生産コストを削減する観点から好ましい。
【0020】
あるいは、図5の製造工程に示すように、その中央部が外周部よりも加圧方向へ突出した錐体形状の加圧面4cを有する錐体スタンパ5cを用いて、加圧成形することが好ましい。この製造工程では、図5(a)に示すように、金型3内に粉体材料2を充填し、次いで、図5(b)に示すように、錐体スタンパ5cを矢印αの方向に移動させると同時に、金型3の中型7を錐体スタンパ5cによる加圧方向とは反対の方向(矢印βの方向)に移動させ、金型3の中型7による摩擦力を利用して粉体材料を強く圧縮しつつ、錐体形状の加圧面4cにより粉体材料2を加圧成形し、粉体材料2の受圧面12の形状を、金型側の周辺部に比し中央部にて陥没した錐体形状に変形させる。次いで、図5(c)に示すように、金型3の中型7を元の位置に移動(矢印β’の方向に移動)させつつ、錐体スタンパ5cを加圧方向とは反対の方向(矢印α’の方向)に引き上げる。そして、図5(d)に示すように、かかる錐体スタンパ5cを、加圧方向に直交する平面状の加圧面4aを有する平面スタンパ5aと置き換える。次いで、図5(e)に示すように、平面スタンパ5aを矢印α”の方向に移動させると同時に、金型3の中型7を平面スタンパ5aによる加圧方向とは反対の方向(矢印β”の方向)に移動させて、金型3の中型7による摩擦力を利用して粉体材料を強く圧縮しつつ、平面スタンパ5aの加圧面4aにより粉体材料2の受圧面12を加圧成形することにより、粉体材料2の受圧面12の形状を平面状とする。この加圧工程では、前記受圧面12における周辺部12aの変形量が特に大きくなることから、金型3側における粉体材料2の流動が強く促される結果、空気含有率を更に小さくした免震プラグ6が得られる。そして、このように加圧成形された免震プラグ6は、図5(f)に示すように、金型3から抜き出され、免震装置8への圧入に供される。上述したような工程により粉体材料2を加圧成形すると、主に金型側における粉体材料2の流動が促され、粉体材料2間の隙間が小さくなるため、粉体材料2全体が図3(b)に示すような配置に更に近付くこととなる。その結果、免震プラグ6の空気含有率が小さくなり、かかる免震プラグ6を圧入した免震装置は、減衰性能及び変位追従性がともに向上する。
【0021】
なお、粉体材料2を構成する塑性流動材Aに含まれる物質としては、(天然ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ポリウレタン、ウレタン系エラストマーなどの)エストラマー成分、(ロジン樹脂、フェノール樹脂などの)樹脂、カーボンブラック、(フタル酸、マレイン酸、クエン酸などの)可塑剤、(ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油などの)軟化材などが挙げられる。また、硬質充填材Bに含まれる物質としては、銅粉、ステンレス鋼粉、ジルコニウム粉、タングステン粉、青銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、モリブデン粉、チタン粉、鉄粉などの金属粉体や金属化合物が挙げられる。なお、塑性流動材Aと硬質充填材Bの夫々について選定される材料の組成、含有率、組み合わせ等は、免震プラグ6に所望される性能に応じて適宜変更することができる。また、粉体材料2は、塑性流動材A及び硬質充填材Bからなる構成に限定されるものではなく、その他の種々の粉体材料2を適用することも可能である。
【0022】
あるいは、図6の製造工程に示すように、対向する一対のスタンパ(図示例では、傾斜スタンパ5b及び5b’の組み合わせ、並びに、平面スタンパ5a及び5a’の組み合わせ)を用いて、粉体材料2を挟み込むように二方向から加圧成形することが好ましい。図6(a)〜(e)に示すように、加圧面4b、4b’を夫々有する一対の傾斜スタンパ5b、5b’を用いて、金型3の中型7を移動させつつ、段階的に二方向から粉体材料2を加圧成形すると、図4に示すような単一の傾斜スタンパ5bにより一方向から粉体材料2を加圧成形する場合に比べ、粉体材料2を全体に均一に圧縮しつつも、粉体材料2の空気含有率を更に小さくすることが可能となる。そして、図6(f)〜(g)に示すように、平面状の加圧面4a、4a’を夫々有する一対の平面スタンパ5a、5a’を用いて、粉体材料2を加圧することにより、図1に示すような単一の平面スタンパ5aにより一方向から粉体材料2を加圧する場合に比べ、粉体材料2を全体に均一に圧縮しつつも、粉体材料2の受圧面12の形状が平面状に成形されるため、空気含有率を更に小さくした免震プラグ6(図6(h))を製造することが可能となる。かかる免震プラグ6を具える免震装置8は、減衰性能及び変位追従性が更に向上する。また、図1に示すように一方向から加圧成形するよりも、複数方向から加圧成形する方が、粉体材料を所望の空気含有率とすることに要する時間が短縮されるため、免震プラグ6の生産性を向上することとなる。
【0023】
なお、異なる形状の加圧面4を有する複数のスタンパ5を並列配置し、この列に沿って金型3を移動させ、かかる複数のスタンパ5を用いて順次粉体材料2を加圧成形することにより、免震プラグ6を製造するような装置構成とすることが可能である。あるいは、逆に、金型3の位置を固定し、前記並列させたスタンパ5を順次移動させて、それらスタンパ5を用いて粉体材料2を連続的に加圧成形することにより、免震プラグ6を製造するような装置構成とすることも可能である。後者の装置構成は省スペース化の観点から好ましい。
【0024】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、図示例の製造工程では、粉体材料2の受圧面7を異なる形状に1〜3回圧縮変形させて免震プラグ6を製造しているが、所望の空気含有率に応じて、それら圧縮工程を更に繰り返し実施することも可能である。また、図示例の製造工程では、平面スタンパ5a、傾斜スタンパ5b及び錐体スタンパ5cの3種類のスタンパ5を用いて粉体材料2を加圧成形しているが、その他の形状の加圧面4を有するスタンパ5を採用し、スタンパ5の種類を更に増やして加圧成形することも可能である。
【実施例】
【0025】
次に、特許文献1に記載の平面スタンパを使用して製造した免震プラグ(比較例免震プラグ)、及び図1に示したところに従うこの発明の製造方法を用いて製造した免震プラグ(実施例免震プラグ)を夫々試作し、それらの性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0026】
比較例免震プラグは以下に説明する方法により製造した。はじめに、計算比重が5.54g/cmであり、表1に示す組成を有する塑性流動材及び硬質充填材からなる粉体材料を、内径が43.6mmの円筒状の金型内に充填し、次いで、かかる粉体材料を、スタンパの加圧方向に直交する平面状の加圧面を有する平面スタンパにより、123.56MPaの面圧にて粉体材料を加圧変形させることで製造した。なお、かようにして製造された免震プラグの直径は43.7mmであり、高さは49.3mmである。製造された免震プラグの空気含有率は、金型内に充填される粉体材料の計算比重に対する、製造された免震プラグの実比重から算出した。
【0027】
また、実施例免震プラグは、以下に説明する方法により製造した。はじめに、図1(a)に示すように、計算比重が5.54g/cmであり、表1に示す組成を有する塑性流動材及び硬質充填材からなる粉体材料を、内径が43.6mmの円筒状の金型内に充填する。それから、図1(b)に示すように、金型の中型をスタンパによる加圧方向とは反対の方向に移動させると同時に、平面スタンパにより123.56MPaの面圧にて粉体材料を加圧変形させることで製造した。なお、かようにして製造された免震プラグの直径は43.8mmであり、高さは45.7mmである。製造された免震プラグの空気含有率は、金型内に充填される粉体材料の計算比重に対する、製造された免震プラグの実比重から算出した。
【0028】
【表1】

*1 (天然ゴム)
未加硫、RSS#4
*2 (ポリブタジエンゴム(低シス))
未加硫、旭化成製「ジエンNF35R」
*3 カーボンブラック
ISAF、東海カーボン製「シースト6P」
*4 樹脂
日本ゼオン製「ゼオファイン」、新日本石油化学製「日石ネオポリマー140」、丸善石油化学製「マルカレッツM−890A」、「ゼオファイン」:「日石ネオポリマー140」:「マルカレッツM−890A」=40:40:20(質量比)
*5 可塑剤
ジオクチルアジペート(DOA)
*6 その他の配合剤
亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤[住友化学製「アンステージ6C」、ワックス[新日本石油製「プロトワックス1」]、亜鉛華:ステアリン酸:老化防止剤:ワックス=4:5:3:1(質量比)
【0029】
その結果、従来例の免震プラグの実比重が4.733g/cmとなり、その空気含有率が14.5%であったのに対し、実施例の免震プラグの実比重が5.072g/cmとなり、その空気含有率が8.4%まで小さくなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の説明から明らかなように、この発明によって、材料に鉛を使用することなく、免震装置の減衰性能及び変位追従性を向上させ得る免震プラグの製造方法、並びにかかる製造方法を実施し得る免震プラグの製造装置を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0031】
1 免震プラグの製造装置
2 粉体材料
3 金型
4 加圧面
4a、4a’ 平面スタンパの加圧面
4b、4b’ 傾斜スタンパの加圧面
4c 錐体スタンパの加圧面
5 スタンパ
5a、5a’ 平面スタンパ
5b、5b’ 傾斜スタンパ
5c 錐体スタンパ
6 免震プラグ
7 金型の中型
8 免震装置
9 ゴム板
10 鋼板
11 積層体
12、12’ 受圧面
12a 粉体材料の突出した部分
A 塑性流動材
B 硬質充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を形成する中型を有する金型内に充填された粉体材料に、加圧成形を行って免震装置用の免震プラグを成形するに当たり、
前記中型と前記粉体材料との界面においてせん断応力が生じるように該中型に対して外力を付与しつつ加圧成形を行なうことを特徴とする免震プラグの製造方法。
【請求項2】
前記せん断応力が前記粉体材料に対する加圧方向と平行な方向に生じるように前記中型に外力を付与する、請求項1に記載の免震プラグの製造方法。
【請求項3】
前記せん断応力が前記粉体材料に対する加圧方向とは反対の方向に生じるように前記中型に外力を付与する、請求項1又は2に記載の免震プラグの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の免震プラグの製造方法を用いて製造される免震プラグ。
【請求項5】
粉体材料が充填され、側壁を形成する中型を有する金型、及び該金型内の粉体材料を加圧成形するスタンパを具える、免震装置用の免震プラグの製造装置において、
前記金型の中型が、スタンパの軸線方向に移動可能であることを特徴とする免震プラグの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253850(P2010−253850A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108307(P2009−108307)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】