説明

共振器、該共振器を用いるフィルタ及びデュプレクサ

【課題】フィルタに用いた場合に通過帯域外の減衰量を十分に大きくでき、かつ小型な共振器、それを備えるフィルタ及びデュプレクサを提供する。
【解決手段】共振器S4は、直列に接続された複数の共振子S4a、S4bを備えている。共振子S4aには、インダクタL5とキャパシタC2とが並列に接続されている。共振子S4bには、インダクタとキャパシタとが並列に接続されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯情報端末の帯域フィルタなどに用いられる共振器、特に、複数の共振子が直列に接続された共振器、該共振器を用いるフィルタ及びデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って、携帯電話端末などの携帯情報端末が急速に普及してきている。携帯情報端末の中には、複数の高周波帯を使用するものもある。例えば、携帯電話端末においては、送信用のTx帯(1850〜1910MHz)と、受信用のRx帯(1930〜1990MHz)とが使用されている。携帯電話端末のように、複数の高周波帯を使用する携帯情報端末では、一般的に、データの交錯を防止するために、共振器を利用した高周波フィルタや、高周波フィルタを利用したアンテナ分波器等が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、高周波フィルタに用いられる共振器が開示されている。図9は、特許文献1に開示された共振器100の構成図である。共振器100では、共振子101にインダクタ102とキャパシタ103とが並列に接続されている。このため、図10に示すように、共振周波数よりも高域側に位置する第1の反共振点と、共振周波数よりも低域側に位置する第2の反共振点とが形成される。また、インダクタ102のインダクタンスと、キャパシタ103の容量を調節することにより第1及び第2の反共振点の周波数を高域側または低域側にシフトさせることができる。従って、共振器100を用いることによって、フィルタの設計自由度を高めることができる。
【特許文献1】特開2007−36856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された共振器100を用いてフィルタを構成した場合は、通過帯域外の減衰量を十分に大きくすることが困難であった。また、共振器100の小型化も困難であった。
【0005】
本発明の目的は、フィルタに用いる場合に通過帯域外の減衰量を十分に大きくでき、かつ小型化を図り得る共振器、該共振器を用いるフィルタ及びデュプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の共振器は、直列に接続された複数の共振子と、複数の共振子のうちの少なくともひとつの共振子に並列に接続されたインダクタ及びキャパシタとを備えており、該少なくともひとつの共振子を除く、残りの共振子のうちの少なくともひとつの共振子には、インダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない。
【0007】
本発明のフィルタは、上記本発明の共振器を備えている。
【0008】
本発明のある特定の局面において、フィルタは、複数の共振子を直列腕共振子として備えるラダー型フィルタである。
【0009】
本発明のデュプレクサは、上記本発明のフィルタを送信側フィルタとして備えている。
【0010】
本発明の他の特定の局面において、デュプレクサは、インダクタと、送信側フィルタの送信側信号端子とが形成された配線基板と、複数の共振子を含む送信側フィルタの少なくとも一部が形成されていると共に、送信側信号端子に接続されたフィルタチップ側端子が形成されており、配線基板にフリップチップ実装されている送信側フィルタチップとを備え、インダクタ及びキャパシタが並列に接続された共振子がフィルタチップ側端子に直接接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る共振器では、直列に接続された複数の共振子のうちの少なくともひとつの共振子にインダクタ及びキャパシタが並列に接続されており、少なくともひとつの共振子にインダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない。このため、本発明に係る共振器を用いることによって、フィルタに用いた場合に通過帯域外の減衰量を十分に大きくできる。また、インダクタを小さくし得るので、共振器の小型化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0013】
(デュプレクサ1の回路構成)
図1は、本実施形態のデュプレクサ1の回路図である。図1に示すように、デュプレクサ1は、アンテナ端子10に接続された送信側フィルタ11と、受信側フィルタ12とを備えている。
【0014】
受信側フィルタ12は、一対の平行端子である第1及び第2の受信側信号端子18a、18bに接続されている。
【0015】
送信側フィルタ11は、直列腕9と、直列腕9とグラウンド電位との間に接続された複数の並列腕13a〜13cとを備えている。直列腕9の入力端15はアンテナ端子10に接続されている。直列腕9の出力端16は、送信側信号端子17に接続されている。
【0016】
直列腕9には、直列腕共振器S1、S2、S3及びS4が配置されている。直列腕共振器S1、S2、S3及びS4は、直列腕9において直列に接続されている。
【0017】
本実施形態では、直列腕共振器S1は、直列に接続された直列腕共振子S1aと直列腕共振子S1bとの2つの共振子により構成されている。
【0018】
直列腕共振器S2は、直列に接続された直列腕共振子S2aと直列腕共振子S2bと直列腕共振子S2cとの3つの共振子により構成されている。直列腕共振子S2aと直列腕共振子S2bとには、キャパシタC1が並列に接続されている。
【0019】
直列腕共振器S3は、直列に接続された直列腕共振子S3aと直列腕共振子S3bとの2つの共振子により構成されている。
【0020】
直列腕共振器S4は、直列に接続された直列腕共振子S4aと直列腕共振子S4bとにより構成されている。出力端16に最も近い直列腕共振子S4bには、インダクタL5と、キャパシタC2とがそれぞれ並列に接続されている。直列腕共振子S4bよりも入力端15側に位置する直列腕共振子S4aには、インダクタとキャパシタとが並列に接続されていない。
【0021】
並列腕13aには、並列腕共振器P1と、インダクタL1とが直列に設けられている。並列腕共振器P1は、直列に接続された並列腕共振子P1aと並列腕共振子P1bとの2つの共振子により構成されている。
【0022】
並列腕13bには、並列腕共振器P2と、インダクタL2とが直列に設けられている。並列腕共振器P2は、直列に接続された並列腕共振子P2aと並列腕共振子P2bとの2つの共振子により構成されている。並列腕13aと並列腕13bとは接続点14に共通接続されている。接続点14とグラウンド電位との間には、インダクタL3が設けられている。
【0023】
また、並列腕13cには、並列腕共振器P3と、インダクタL4とが直列に設けられている。列腕共振器P3は、直列に接続された並列腕共振子P3aと並列腕共振子P3bとの2つの共振子により構成されている。
【0024】
なお、インダクタL1〜L4のそれぞれは、配線パターンにより得られるインダクタンス分である。
【0025】
各共振子S1a、S1b、S2a、S2b、S2c、S3a、S3b、S4a、S4bは、弾性波を利用する弾性波共振子により構成されている。利用される弾性波は、特に限定されるものではない。利用される弾性波は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)、弾性境界波(BEW:Boundary Elastic Wave)、バルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)などであってもよい。
【0026】
具体的には、本実施形態では、各共振子S1a、S1b、S2a、S2b、S2c、S3a、S3b、S4a、S4bは、弾性表面波共振子により構成されている。各共振子S1a、S1b、S2a、S2b、S2c、S3a、S3b、S4a、S4bは、圧電基板と、圧電基板の上に形成された誘電体層とを備えている。圧電基板と誘電体層との境界には、IDT(Interdigital Transducer)と、IDTの両側に配置されたグレーティング反射器とが形成されている。圧電基板としては、例えば、カット角が126°のLiNbOが用いられる。誘電体層としては、例えばSiOが用いられる。SiOからなる誘電体層の規格化膜厚が0.4より小さい場合は、弾性表面波が励振される。IDT及びグレーティング反射器は、例えば、Al、Cu、Ni、Cr及びこれらの一種以上を主成分として含む合金により形成される。
【0027】
(デュプレクサ1の具体的構成)
次に、図2及び図3を参照しながらデュプレクサ1の具体的な構成について説明する。図2に示すように、図2に示すように、デュプレクサ1は、配線基板19と、送信側フィルタチップ20と、受信側フィルタチップ21とを備えている。送信側フィルタチップ20と受信側フィルタチップ21とは、配線基板19上にフリップチップボンディングにより実装されている。なお、配線基板19には、基板表面に形成された表面電極パターンと、基板の内部に形成された内部電極パターンとが形成されている。図2では、表面電極パターンを実線で示し、内部電極パターンを破線で示している。
【0028】
受信側フィルタチップ21には、図1に示す受信側フィルタ12が設けられている。図1に示す受信側フィルタ12の端子48は、図示しないバンプにより、受信側信号端子18aを構成している電極パッド22(図2参照)に電気的に接続されている。一方、図1に示す受信側フィルタ12の端子49は、図示しないバンプにより、第2の受信側信号端子18bを構成している電極パッド23(図2参照)に電気的に接続されている。また、図1に示す受信側フィルタ12の入力端24は、図示しないバンプにより、アンテナ端子10を構成している電極パッド25(図2参照)の一方の端部25aに電気的に接続されている。
【0029】
図3は、送信側フィルタチップ20の回路構成を表す模式図である。図3に示すように、送信側フィルタ11のインダクタL1〜L5以外の部分が形成されている。送信側フィルタチップ20には、直列腕共振子S1aに電気的に接続された端子26が形成されている。この端子26により、図1に示す直列腕9の入力端15が構成されている。端子26は、図示しないバンプにより、アンテナ端子10を構成する電極パッド25(図2参照)の他方の端部25bに電気的に接続されている。
【0030】
直列腕共振子S2a及びS2bに並列に接続されているキャパシタC1は、送信側フィルタチップ20の圧電基板表面に形成された一対のくし歯電極30a、30bにより構成されている。
【0031】
直列腕共振子S4aと直列腕共振子S3bとの間の接続点には、端子31が電気的に接続されている。端子31は、図示しないバンプにより、図2に示す電極パッド33に電気的に接続されている。一方、直列腕共振子S4bには、端子32が電気的に接続されている。この端子32により、図1に示す直列腕9の出力端16が構成されている。端子32は、図示しないバンプにより、図2に示す電極パッド34に電気的に接続されている。図2に示すように、電極パッド33及び34のそれぞれは、ビアホール電極35,36を介して、内部電極パターンにより構成されたインダクタL5に電気的に接続されている。
【0032】
図3に示すように、送信側フィルタチップ20の圧電基板表面には、キャパシタC2を構成するくし歯電極37a及び37bが形成されている。
【0033】
並列腕共振子P1bは、端子38に電気的に接続されている。端子38は、図示しないバンプにより、図2に示す電極パッド39の一方の端部39aに電気的に接続されている。一方、並列腕共振子P2bは、端子40に電気的に接続されている。端子40は、図示しないバンプにより、図2に示す電極パッド39の他方の端部39bに電気的に接続されている。図2に示すように、電極パッド39は、ビアホール電極42を介して内部電極パターンにより構成されたインダクタンスL3に電気的に接続されている。インダクタL3は、ビアホール電極42を介してグラウンド電位に電気的に接続されている。なお、インダクタL1,L2は、電極パッド39により構成されたインダクタンス分である。
【0034】
図3に示すように、並列腕共振子P3bには、端子44が接続されている。端子44は、図示しないバンプにより、図2に示す電極パッド45に電気的に接続されている。図2に示すように、電極パッド45は、ビアホール電極46を介して内部電極パターンにより構成されたインダクタL4に電気的に接続されている。インダクタL4は、ビアホール電極47を介してグラウンド電位に電気的に接続されている。
【0035】
以上のように、本実施形態では、直列腕共振子S4bに対してインダクタL5とキャパシタC2とがそれぞれ並列に接続されている一方、直列腕共振子S4aには、インダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない。このため、直列腕共振子S4bは、共振周波数よりも高域側に位置する第1の反共振点fa1と、共振周波数よりも低域側に位置する第2の反共振点fa2とを有する。すなわち、直列腕共振子S4a及びS4bを設けることによって、共振周波数よりも高域側に2つの反共振点が形成される。よって、直列腕共振子S4a及びS4bの特性を変化させることによって、送信側フィルタ11のフィルタ特性を種々変化させることができる。特に、直列腕共振子S4bは、並列接続されたインダクタL5及びキャパシタC2の特性を調節することにより、共振周波数を一定にしたまま、第1の反共振点fa1における周波数(高域側の反共振周波数)と、第2の反共振点fa2における周波数(低域側の反共振周波数)とを自由に調節することができる。具体的には、インダクタL5のインダクタンスを大きくすることによって、高域側の反共振周波数と低域側の反共振周波数とのそれぞれを高域側にシフトさせることができる。また、キャパシタC2の容量を大きくすることによって、高域側の反共振周波数と低域側の反共振周波数とのそれぞれを低域側にシフトさせることができる。従って、直列腕共振子S4a及びS4bを備える共振器を用いることによって、送信側フィルタ11の設計自由度を高めることができる。
【0036】
また、直列腕共振子S4aの反共振周波数と、直列腕共振子S4bの高域側の反共振周波数とを相互に異ならせることにより、通過帯域の高域側における帯域外減衰特性を高めることができる。
【0037】
また、上述のように、直列腕共振子S4bを設けることにより、共振周波数よりも低域側に位置する第2の反共振点fa2が形成される。従って、直列腕共振子S4bを設けない場合と比較して、通過帯域の低域側における帯域外減衰特性も高めることができる。
【0038】
よって、例えば本実施形態のように、直列腕共振子S4a及びS4b、インダクタL5並びにキャパシタC2を備える共振器S4を送信側フィルタ11に用いることによって、例えば、Tx帯(1850〜1910MHz)よりも高域側に位置するRx帯(1930〜1990MHz)と、Tx帯よりも低域側に位置するGPS帯(1550〜1600MHz)との両帯域において高い減衰量を得ることができる。
【0039】
さらに、直列腕9の出力端16に最も近い直列腕共振子S4bと、出力端16に最も近い並列腕13cと直列腕9との間の接続点との間に直列腕共振子S4aを設けることにより、インダクタL5のインダクタンスの大きさを小さくすることができる。従って、インダクタL5、ひいては送信側フィルタ11、さらにはデュプレクサ1を小型化することができる。
【0040】
ところで、例えば、直列腕共振子S4bと、直列腕9の出力端16との間に他の直列腕共振子が接続されている場合、直列腕9の出力端16に接続されている端子32とは別に、直列腕共振子S4bの前後にインダクタL5接続用の一対の端子を送信側フィルタチップ20に設ける必要がある。
【0041】
それに対して本実施形態では、直列腕共振子S4bが直列腕9の出力端16に直接接続されている。このため、インダクタL5接続用の一対の端子のうちの一方の端子と、直列腕9の出力端16に接続されている端子32とを共通化することができる。従って、送信側フィルタチップ20の端子数を少なくすることができる。その結果、送信側フィルタ11の構成を簡単にすることができる。
【0042】
以下、具体的な例に基づいて、さらに詳細に説明する。
【0043】
図6は、本実施形態の送信側フィルタ11のフィルタ特性と、直列腕共振子S4a及びS4bのインピーダンス特性を表すグラフである。図7及び図8は、送信側フィルタ11のフィルタ特性を表すグラフである。
【0044】
なお、図6〜図8における各共振子の設計パラメータは、下記の表1に示す通りである。また、送信側フィルタ11の圧電基板として、カット角が126°のLiNbOを用いた。IDT及びグレーティング反射器は、圧電基板上に形成されたNiCr膜(10nm)と、NiCr膜の上に形成されたCu膜(80nm)と、Cu膜の上に形成されたAl膜(10nm)との積層体とした。圧電基板の上に、IDT及びグレーティング反射器を覆うように層厚110nmのSiO膜を形成し、さらにその上に厚さ500nmのSiO膜を形成した。インダクタL5のインダクタンスは、1.2nHとし、キャパシタC2の容量は3.4pFとした。
【0045】
【表1】

【0046】
第1の参考例として、図4に示す構成のデュプレクサ1aを作製した。デュプレクサ1aは、送信側フィルタ11aにおいて、直列腕共振子S4b、インダクタL5及びキャパシタC2が設けられていない以外は、図1に示すデュプレクサ1と同様の構成を有する。
【0047】
第2の参考例として、図5に示す構成のデュプレクサ1bを作製した。デュプレクサ1aは、送信側フィルタ11bにおいて、直列腕共振子S4aが設けられていないこと、直列腕共振子S4bの交叉幅、並びにインダクタL5のインダクタンス及びキャパシタC2の容量以外は、図1に示すデュプレクサ1と同様の構成を有する。送信側フィルタ11bにおける直列腕共振子S4bの交叉幅は、実施形態における直列腕共振子S4b及びS4aの容量と、第2の参考例における直列腕共振子S4bの容量とが等しくなるように、実施形態における直列腕共振子S4bの交叉幅よりも小さくされている。また、インダクタL5のインダクタンスは、2.4nHとし、キャパシタC2の容量は1.7pFとした。
【0048】
図7及び図8に、送信側フィルタ11、11a及び11bのフィルタ特性を示す。図7及び図8において、符号11を附し、実線で示すグラフが実施形態の送信側フィルタ11のフィルタ特性を表す。符号11aを附し、一点破線で示すグラフが第1の参考例の送信側フィルタ11aのフィルタ特性を表す。符号11bを附し、二点破線で示すグラフが第2の参考例の送信側フィルタ11bのフィルタ特性を表す。
【0049】
また、下記表2に直列腕共振子S4a、S4bの共振周波数及び反共振周波数を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
上記の表2及び図6に示すように、本実施形態では、Rx帯(1930〜1990MHz)に、直列腕共振子S4aの反共振周波数(1935MHz)と、直列腕共振子S4bの高域側の反共振周波数(1970MHz)との両方が位置している。このため、図6〜図8に示すように、Rx帯(1930〜1990MHz)の高域側の部分と低域側の部分との両方において大きな減衰量が実現されている。
【0052】
それに対して、直列腕共振子S4b、インダクタL5及びキャパシタC2が設けられていない送信側フィルタ11aでは、図7及び図8に示すように、直列腕共振子S4aの共振周波数が1935MHzであり、1935MHzよりも高域側には、反共振点が存在しない。このため、Rx帯の低域側の部分における減衰量は大きいものの、Rx帯の高域側の部分における減衰量は、送信側フィルタ11よりも小さくなった。その結果、Rx帯において最も減衰量の小さい部分を比較すると、送信側フィルタ11aよりも送信側フィルタ11の方が、減衰量が5dB大きかった。
【0053】
また、直列腕共振子S4aが設けられていない送信側フィルタ11bでは、直列腕共振子S4bの高域側の反共振周波数が1970MHzであり、1970MHzよりも低域側には反共振点が存在しない。このため、Rx帯の高域側の部分における減衰量は大きいものの、Rx帯の低域側の部分における減衰量は、送信側フィルタ11よりも小さくなった。その結果、Rx帯において最も減衰量の小さい部分を比較すると、送信側フィルタ11bよりも送信側フィルタ11の方が、減衰量が8dB大きかった。
【0054】
また、本実施形態では、GPS帯(1550〜1600MHz)付近に直列腕共振子S4bの反共振周波数(1530MHz)が位置している。このため、図6〜図8に示すように、GPS帯において大きな減衰量が実現されている。
【0055】
それに対して、送信側フィルタ11aでは、直列腕共振子S4b、インダクタL5及びキャパシタC2が設けられていないため、GPS帯付近に反共振点が存在しない。従って、GPS帯における減衰量が小さくなった。具体的には、GPS帯において最も減衰量の小さい部分を比較すると、送信側フィルタ11aよりも送信側フィルタ11の方が、減衰量が7dB大きかった。
【0056】
以上より、インダクタL5とキャパシタC2とのそれぞれが並列に接続されている直列腕共振子S4bと、インダクタとキャパシタとが並列に接続されていない直列腕共振子S4aとの両方を送信側フィルタ11に設けることによって、Rx帯とGPS帯との両方における減衰特性を向上できることがわかる。
【0057】
なお、上記実施形態では、インダクタとキャパシタとのそれぞれが並列に接続されている直列腕共振子と、インダクタとキャパシタとが並列に接続されていない直列腕共振子とを送信側フィルタ11に設ける例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。インダクタとキャパシタとのそれぞれが並列に接続されている直列腕共振子と、インダクタとキャパシタとが並列に接続されていない直列腕共振子とは、例えば受信側フィルタに設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ラダー型フィルタを例に挙げて説明した。但し、本発明のフィルタはラダー型フィルタに限定されない。本発明のフィルタは、例えば縦結合共振子型フィルタであってもよい。
【0059】
上記実施形態では、インダクタ及びキャパシタが並列に接続された共振子と、インダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない共振子とがそれぞれひとつずつ設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、インダクタ及びキャパシタが並列に接続された共振子と、インダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない共振子との少なくとも一方が複数設けられていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、直列腕共振器S1、S2及びS3並びに並列腕共振器P1,P2及びP3のそれぞれが2つまたは3つの共振子により構成されている例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。直列腕共振器S1、S2及びS3並びに並列腕共振器P1,P2及びP3のそれぞれは、ひとつの共振子により構成されていてもよく、複数の共振子により構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態に係るデュプレクサの回路図である。
【図2】実施形態に係るデュプレクサの略図的平面図である。
【図3】送信側フィルタチップの回路構成を表す模式図である。
【図4】第1の参考例に係るデュプレクサの回路図である。
【図5】第2の参考例に係るデュプレクサの回路図である。
【図6】実施形態に係る送信側フィルタのフィルタ特性と、直列腕共振子S4a、S4bのインピーダンス特性を表すグラフである。
【図7】実施形態並びに第1及び第2の参考例の送信側フィルタのフィルタ特性を表すグラフである。
【図8】実施形態並びに第1及び第2の参考例の送信側フィルタのフィルタ特性を表すグラフである。
【図9】特許文献1に開示された共振器の構成図である。
【図10】特許文献1に開示された共振器の通過特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1…デュプレクサ
9…直列腕
10…アンテナ端子
11…送信側フィルタ
12…受信側フィルタ
13a〜13c…並列腕
14…接続点
15…入力端
16…出力端
17…送信側信号端子
18a…第1の受信側信号端子
18b…第2の受信側信号端子
19…配線基板
20…送信側フィルタチップ
21…受信側フィルタチップ
22、23、25、33、34、39、41、45…電極パッド
24…入力端
26、31、32、38、40、44、48、49…端子
30a、30b、37a、37b…くし歯電極
35、36、42、46、47…ビアホール電極
S1〜S4…直列腕共振器
S1a、S1b、S2a、S2b、S2c、S3a、S3b、S4a、S4b…直列腕共振子
P1〜P3…並列腕共振器
P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b…並列腕共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の共振子と、
前記複数の共振子のうちの少なくともひとつの共振子に並列に接続されたインダクタ及びキャパシタとを備え、
前記少なくともひとつの共振子を除く、残りの共振子のうちの少なくともひとつの共振子には、インダクタ及びキャパシタが並列に接続されていない、共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器を備える、フィルタ。
【請求項3】
前記複数の共振子を直列腕共振子として備えるラダー型フィルタである、請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のフィルタを送信側フィルタとして備える、デュプレクサ。
【請求項5】
前記インダクタと、前記送信側フィルタの送信側信号端子とが形成された配線基板と、前記複数の共振子を含む前記送信側フィルタの少なくとも一部が形成されていると共に、前記送信側信号端子に接続されたフィルタチップ側端子が形成されており、前記配線基板にフリップチップ実装されている送信側フィルタチップとを備え、前記インダクタ及びキャパシタが並列に接続された共振子が前記フィルタチップ側端子に直接接続されている、請求項4に記載のデュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−11300(P2010−11300A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170566(P2008−170566)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】